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JP3808938B2 - 核酸運搬体 - Google Patents

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JP3808938B2
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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、細胞に核酸を導入するための新規核酸運搬体に関する。より詳しくは、本発明は核酸を細胞内に効率良く安全に導入するための核酸結合性領域を有する核酸運搬体に関するものである。
【0002】
本発明はまた、当該核酸運搬体および核酸を含む、核酸の細胞内への導入を促進するための調節剤に関する。
【0003】
【従来の技術】
遺伝子治療とは、薬剤として作用する外来遺伝子(以下、「薬物遺伝子」という)を体内に導入し発現させることで疾患の治療を行おうとする全く新しい治療方法である。遺伝子治療によって治療効果が期待できる疾患は先天性、後天性を問わず遺伝子の異常が原因で発症する疾患すべてが含まれるが、特に、致死的であり、かつ治療法が確立されていない癌やAIDSに対しては非常に有用性の高い治療方法であると考えられている。
【0004】
遺伝子治療は、異常(原因)遺伝子をそのままにして、新しい(正常)遺伝子を付け加える付加遺伝子療法(Augumentation Gene Therapy)と、異常遺伝子を正常遺伝子で置き換える置換遺伝子療法(Replacement Gene Therapy)に大別される。
【0005】
遺伝子治療の臨床応用としては、1989年米国において初めて遺伝子治療の臨床試験が行われて以来、すでにイタリア、オランダ、フランス、イギリス、中国においても臨床試験が開始されている。しかしながら、遺伝子治療の臨床応用において、薬物遺伝子を効率良く安全に標的細胞へ導入するための最適な遺伝子の形態や方法の開発が大きな技術的課題の1つとなっている。
【0006】
1980年代初期には、マイクロインジェクション等物理的手法の応用が試みられたが、疾患治療のために必要な薬物遺伝子を安定かつ効率良く導入することができず、臨床応用には至らなかった。その後、外来遺伝子を効率良く細胞に導入するための担体となる組み換えウイルス(ウイルスベクター)が開発され、初めて遺伝子治療の臨床応用が可能となった(Miller,A.D.,Hum. Gene Ther., 1:5-14、1990)。
【0007】
現在最も注目されているウイルスベクターは、マウス白血病ウイルス(Molony Murine Leukemia Virus:以下、MoMLV)由来のレトロウイルスベクタ一であり、本ウイルスの生活環の利点を利用したものである。レトロウイルスは宿主に感染後、白己の遺伝情報をゲノムDNAに組み込ませるという性質を持つ(Miller D.G.,et al.,Mol.Cell.Biol.,10,8,4239,1990)ことから、薬物遺伝子を持続的に発現させるためには都合が良い。また、種々の細胞種に感染可能であることから、これら多くの種類の細胞がMoMLVべクターを用いた治療の対象となりうる。一方、この性質はウイルスベクターの生体への投与を不可能にしている。宿主範囲が広いということは、言い換えれば生体に投与した際に標的細胞への集積性が乏しいということであり、治療効果や副作用の点から静脈内投与法などの全身性の投与法は行なうことができない。従って、現在の治療法は標的細胞を生体から一度分離し、試験管内で遺伝子導入を行なった後、再び生体に戻す治療法(米国特許第5,399,346号)が行われている(ex vivo遺伝子導入法)。この方法は標的細胞に対して確実に薬物遺伝子を導入でき、治療効果も期待できるが、ウイルスベクターを取り扱うための特殊な設備や、細胞を大量に培養する設備を必要とすることからこのような治療を実施できる施設は限定されてしまう。以上のような理由から、in vivoでも遺伝子導入が可能なウイルスベクターの開発が望まれている。
【0008】
また、ウイルスベクターを生産するために種々のウイルスベクター産生細胞が開発されている(Miller A.D.and Buttlmore C., Mol.Cell.Biol., 6, 2895, 1986)が、治療に必要な量のウイルスベクターを生産するためには大量の細胞を培養する必要があり、一般的な薬物の生産コストに比べて非常に高価になってしまうという欠点もある。
【0009】
このようなウイルベクターにかわる遺伝子導入のための担体として、核醗が負電荷を有していることを利用し、これを正電荷を有する合成ポリアミノ酸へ結合させ、生成された複合体(以下、ボリアミノ酸/遺伝子複合体)を目的の細胞もしくは細胞内へ送達しようとする試みがなされている。Wuらは、ポリリジンを遺伝子の担体としてポリアミノ酸/遺伝子複合体を調製し、これを細胞に作用させることで遺伝子を導入して発現させることに成功している(G.Y.Wu and C.H.Wu, Advanced Drug Delivery Revlews,12,159,1993)。
【0010】
しかしながら、この複合体は濃度が増加と共に沈殿を生じることが知られている。このような性質は、実際に疾患の治療を行なう際に大きな問題となる。特に、静脈内へポリアミノ酸/遺伝子複合体を投与することは血管の塞栓や血栓等を引き起こす原因となりうるため不可能である。また、局所的に投与される場合でも、注射針の詰まりの問題や、標的細胞に対して治療をするために必要な量の遺伝子を導入できない等の問題があり、実際に治療で用いるためにはこれらの問題を解決しなければならない。
【0011】
一方、生体に投与された薬物遺伝子は、標的細胞に特異的に作用し、その他の細胞には影響を及ぼさないことが必須である。これは特に副作用の点から極めて重要な問題である。従来の薬物療法においても、薬物等の体内挙動を厳密に制御し、標的器官の細胞に望ましいパターンで薬効を発現させることで薬物投与の最適化を計ろうとする薬物送達システム(Drug Delivery System:DDS)が盛んに検討されている。
【0012】
標的部位の細胞にのみ薬物等を集積させるための手段としては、従来より標的細胞の表面に存在する各種受容体によるエンドサイトーシス(ReceptorMediated Endocytosls:RME〉機構が多く用いられている。RMEは低濃度の高分子ぺブチドやタンパク質等のリガンドを濃縮的に細胞内に取り込むことが可能であり、肝臓、腎臓、小腸、肺、筋肉、脂肪、胎盤などの組織細胞または上皮細胞の他、各種分泌細胞、種々の組織の毛細血管内皮細胞、更には赤血球、白血球、肥満細胞、貪食細胞、繊維芽細胞などといった非常に多くの細胞に存在することが知られている。
【0013】
取り込むリガンドは細胞によって異なるが、栄養物質輸送タンパク質、ペプチド ホルモン、成長因子、免疫グロブリン、血漿中タンパク質、リソソーム酵素、細胞毒素など多数の高分子ペブチドやタンパク質がRME機構によって取り込まれることが報告されている。なかでも、糖鎖末端にガラクトース残基(Gal)やN−アセチルガラクトサミン残基(GalNAc)を持つ物質を取り込む機構は肝実質細胞に特異的であり、高分子キャリアーとしてのアシアロ糖タンパク質の利用のみならず、既に知られている生理活性ペプチドに適切な糖鎖を結合したり、逆に糖鎖を切り離したりすることによって(ただし生理活性が低下しない場合)、肝指向性を持たせたり持たせなかったりすることができる、このような糖鎖によるターゲティングは現在活発に研究されている(M.Monslgny,et al., Advanced Drug Delivery Revlews,14,1,1994)。
【0014】
また、RME機構の中には、細胞が必要とする栄養素を血漿中タンパク質と結合したまま受容体介在的に取り込む場合がある。このようなタンパク質は特に輸送タンパク質またはキャリアータンパク質と呼ばれ、その受容体は輸送受容体(Transport Receptor)と呼ばれることがある。輸送タンパク質は細胞内で分解される場合と、分解されずに再利用される場合とがある。これに対し、内在化された受容体は多くの場合速やかに細胞膜表面にリサイクルして再利用されるため、標的組織が比較的高濃度のリガンドにさらされても表面受容体数が負に制御されにくく、リガンドの取り込みが持続的で、DDSへの応用に好適である。低密度リポタンバク質(LDL)、ビタミンB12の輸送タンパク質であるトランスコバラミン11、鉄の輸送タンパク質であるトランスフェリン、ブロテアーゼの輸送タンパク質であるα2−マクログロブリンも受容体とともに内在化され、細胞内で結合リガンドを遊離することによって必須栄養物質の細胞内取り込みを担っていることが知られている。このような生体機能をDDSに利用することができれば、特異性および効率性が高まるのみならず、異物として認識されないために細網内皮系の細胞群に捕捉されることがないなどの、生体適合性の面からも極めて優れたシステムを構築することが可能となる。このシステムを用いれば、単に標的細胞に結合してゆっくりと薬物を放出するのではなく、RMEを利用して細胞内に薬物キャリアー複合体を速やかに取り込んだ後にリソソーム内におけるキャリアータンバク質の分解によって薬物を遊離し効果を現わすため、受容体を持つ細胞に対して徴量で治療効果を期待でき、同時に副作用を抑えることも可能となる。
【0015】
以上述べたようなDDSの手法を遺伝子治療の分野に応用しようとする試みもなされるようになってきた。Wuらは、肝実質細胞に存在するアシアロ糖蛋白レセブターに着目し、アシアロオロソムコイドを結合させたポリ−L−リジンとプラスミドDNAの複合体を調製し、これを肝実質細胞に作用させることでプラスミドDNA由来の遺伝子を発現させることに成功している(G.Y.Wu and C.H.Wu,Advanced Drug Delivery Revlews,12,159,1993)。
【0016】
しかしながら、前述したようにポリ−L−リジンとDNAの複合体は沈殿物を生じやすく、沈殿を生じないように複合体を形成させるための諸条件には制限がある。一方、沈殿を生じないように複合体を形成させると、複合体における運搬体と核酸との比は遺伝子導入効率に人きく影響するため(G.Y.Wu and C.H.Wu,Biochem.,2 7,887,1988)、この比率が必ずしも遺伝子治療をするための最適な比率にならない、という矛盾した問題があった。
【0017】
よって、遺伝子治療において薬物遺伝子を標的細胞に導入するための特異的、且つ効率が高い運搬体が必要とされていた。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、細胞に核酸を導入するための新規核酸運搬体を提供することを目的とする。本発明の核酸運搬体は、核酸を細胞内に効率良く安全に導入するための核酸結合性領域を有することを特徴とする。
【0019】
本発明はまた、当該核酸運搬体および核酸を含む、核酸の細胞内への導入を促進するための調節剤を提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題解決のため鋭意研究に努めた結果、遺伝子を運搬するための核酸運搬体中の核酸結合領域として、1つまたは複数の塩基性アミノ酸残基、及び分子内に水酸基を有する1つまたは複数のアミノ酸残基を含むぺブチドを用いれば、核酸を細胞内に効率良く安全に導入できることを見いだし、本願発明を完成した。即ち、本発明の核酸運搬体は核酸結合領域として上記構成を採用することにより核酸と可溶性の複合体を形成するため、ポリ−L−リジンを用いた場合のように沈殿を生じるという問題を生じることなく、核酸を効率よく細胞内に導入することを初めて可能にしたものである。
【0021】
さらに、本発明の核酸運搬体は、核酸を標的細胞または細胞内の標的部位に特異的に運ぶための標的指向性付与領域を有する。核酸と複合体を形成した本発明の核酸運搬体は、この標的指向性領域の存在により、生体に投与後分解されることなく核酸を標的細胞または標的部位に特異的に送達する。
【0022】
以下、この発明の構成および好ましい態様について詳説する。
【0023】
核酸運搬体
本発明の核酸運搬体は、核酸結合領域、標的指向性付与領域およびポリエチレングリコール領域を含む。
【0024】
「核酸結合領域」とは核酸と親和性を有する領域である。この領域の存在により核酸運搬体は所望の核酸と複合体を形成することが可能となる。本発明の核酸結合領域は、1つまたは複数の塩基性アミノ酸残基、及び分子内に水酸基を有する1つまたは複数のアミノ酸残基を含むぺブチドであることを特徴とする。限定するわけではないが、前記塩基性アミノ酸は、L−リジン、D−リジン、L−アルギニン、D−アルギニン、L−オルニチン、D−オルニチン、L−ヒスチジンおよびD−ヒスチジンからなるグループから選択され、一つの分子内に水酸基を有するアミノ酸はL−セリン、D−セリン、L一トレオニン、D−トレオニン、L−チロシンおよびD−チロシンからなるグループから選択されるのが好ましい。塩基性アミノ酸残基と水酸基を有するアミノ酸残基の組成比はモル比で50:1から1:50、好ましくは20:1から1:20であり、より好ましくは10:1から1:10である。
【0025】
好ましい核酸結合領域は、限定するけではないが、例えば、ポリ−L−リジン−L−セリン コポリマー、ポリ−Dーリジン−L−セリン コポリマー、ポリ−L−リジン−D−セリン コポリマー、ポリ−D−リジン−D−セリン コポリマー、ポリ−L−オルニチン−L−セリン コポリマー、ボリ−D−オルニチン−L−セリン コポリマー、ポリ−L−オルニチン−D−セリン コポリマー、ポリ−D−オルニチン−D−セリン コポリマー、ポリ−L−ヒスチジン−L−セリン コポリマー、ポリ−D−ヒスチジン−L−セリン コポリマー、ポリ−L−ヒスチジン−D−セリン コポリマー、ポリ−D−ヒスチジン−D−セリン コポリマー、ポリ−L−リジン−L−セリン PEGブロックコボリマー、ポリ−D−リジン−L−セリン PEGブロックコポリマー、ポリ−L−リジン−D−セリン PEGブロックコボリマー、ポリ−D−リジン−D−セリン PEGブロックコボリマー、ポリ−L−オルニチン−L−セリン PEGブロックコボリマー、ポリ−D−オルニチン−L−セリン PEGブロックコポリマー、ポリ−L−オルニチン−D−セリン PEGブロックコボリマー、ポリ−D−オルニチン−D−セリン PEGブロックコボリマー、ポリ−L−ヒスチジン−L−セリン PEGブロックコポリマー、ポリ−D−ヒスチジン−L−セリン PEGブロックコポリマー、ポリ−L−ヒスチジン−D−セリン PEGブロックコポリマー、ポリ−D−ヒスチジン−D−セリン PEGブロックコポリマー等である。特に好ましい核酸結合領域は、ポリ−L−リジン−L−セリン コポリマーである。
【0026】
これらの核酸結合領域の分子量は、約200から約500,000であり、好ましくは1000以上500,000以下であり、より好ましくは2,000以上100,000以下である。
【0027】
「標的指向性付与領域」は、遺伝子治療の対象となる標的細胞の表面若しくは標的細胞内部位に存在する各種受容体に対するリガンド、細胞が必要とする栄養素を取り込むための輸送タンパク質に対するリガンド等、特に制限なく用いることができる。当業者は、核酸を標的となる細胞等に特異的に運搬するのに必要なそのような領域を容易に選択することができるであろう。例えば、ペブチドホルモン、成長因子、免疫グロブリン、リソゾーム酵素、細胞毒素を用いることが可能である。または、末端にガラクトース残基(Gal)、N−アセチルガラクトサミン残基(GalNac)を用いることにより、肝指向性を持たせることもせることもできる。あるいは、細胞膜との融合性を高めるために、例えば、インフルエンザ由来の膜融合性タンパク質やアデノウイルス由来膜融合性タンパク質を遺伝子担体に付加することも可能である。
【0028】
ポリエチレングリコール(PEG)の分子量は200から250,000以上まで用いることが可能であるが、1,000以上100,000以下であることが好ましく、1,000以上50,000以下であることがより好ましい。
【0029】
調節剤
本発明はさらに、前記核酸運搬体および核酸を含む調節剤を提供する。本発明の核酸運搬体は核酸と複合体を形成し、所望の核酸を標的細胞または細胞部位に送達する。
【0030】
本発明の運搬体によって細胞内に導入できる核酸の大きさ、種類等は特に限定されない。核酸の種類としては、例えば、線状二本鎖DNA、環状二本鎖DNA、オリゴヌクレオチド、RNA等がある。例えば、本発明の運搬体の利用により、細胞に有用なタンパク質をコードする構造遺伝子を導入して、該遺伝子を発現させることができる。構造遺伝子が導入された場合、後述の実施例5に示すように非常に高い遺伝子発現を示す。また、アンチセンスを導入して特定の遺伝子の発現の制御を行うことができる。このほか、リボザイム、トリプレックス、アプタマー等の運搬体としても利用できる。さらに、核酸には、ホスフェート結合をホスフォチオエート結合に置換した、ホスフォチオエートヌクレオチド等の誘導体も含む。
【0031】
また、限定されるわけではないが、核酸1μgに対して約0.1−1000μg、好ましくは1−200μgの運搬体を使用する。
【0032】
一例として、構造遺伝子及び当該遺伝子を細胞内で発現させるための発現カセットを含む遺伝子発現ベクターを、本発明の核酸運搬体を用いて細胞に導入することができる。
【0033】
遺伝子は例えば、疾患に対応する薬剤遺伝子、即ち、疾患に対して拮抗的に作用する遺伝子が用いられる。薬剤遺伝子には、例えば、酵素欠損症に対しては止常な酵素をコードする遺伝子、ウイルス感染症に対してはウイルス感染細胞を殺傷するためのチミジンキナーゼ、ジフテリアトキシン等の毒素をコードする遺伝子やウイルスの複製等を阻害するアンチセンス、トリブルヘリックス、リボザイム、デコイ、トランスドミナントミュータント等をコードする遺伝子、癌に対しては癌細胞を殺傷するためのチミジンキナーゼ、ジフテリアトキシン等の毒素をコードする遺伝子や癌遺伝子を不活性化するためのアンチセンス、リボザイム、トリブルヘリックス等をコードする遺伝子や、癌細胞を正常化するためのp53等の癌抑制遺伝子、抗癌剤に対する多剤耐性に関与する遺伝子を不活性化するためのアンチセンス、トリブルヘリックス、リボザイム等をコードする遺伝子、家族性高コレステロール血症に対してはLDLレセブターをコードする遺伝子が含まれる。
【0034】
発現カセットは、標的細胞内で遺伝子を発現させることができるものであれば、特に制限されることなく何でも用いることができる。当業者はそのような発現カセットを容易に選択することができる。好ましくは、動物由来の細胞内で遺伝子発現が可能な発現カセットであり、より好ましくは、哺乳類由来の細胞内で遺伝子発現が可能な発現カセットであり、特に好ましくは、ヒト由来の細胞内で遺伝子発現が可能な発現カセットである。発現カセットに用いられる遣伝子プロモーターは、例えばアデノウイルス、サイトメガロウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、シミアンウイルス40、ラウス肉腫ウイルス、単純ヘルペスウイルス、マウス白血病ウイルス、シンビスウイルス、センダイウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、バピローマウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、インフルエンザウイルス、日本脳炎ウイルス、JCウイルス、バルボウイルスBI9、ポリオウイルス等のウイルス由来のプロモーター、アルブミンや熱ショック蛋白等の哺乳類由来のプロモーター、CAGプロモーター等のキメラ型プロモーター等を含む。
【0035】
本発明の調節剤は、まず患者から標的細胞を体外に取り出し、目的とする遺伝子を導入した後に再びその細胞を患者の体内に戻すという自家移植による遺伝子治療(ex vivo 遺伝子治療)にも、遺伝子を直接患者に投与する遺伝子治療(in vivo 遺伝子治療)にも使用できる。また、遺伝子治療は、異常(原因)遺伝子をそのままにして、新しい(正常)遺伝子を付け加える方法(Augmentation Gene Therapy)と、異常遺伝子を正常遺伝子で置き換える方法(Replacement Gene Therapy)に大別できるが、どちらにも使用できる。
【0036】
本発明の調製剤の投与は、限定するわけではないが、一般に非経口的に行われ、例えば注射投与することにより好ましく実施できる。本発明の調節剤の使用量は、その使用方法、使用目的等により異なるが、例えば、注射投与して用いる場合には、1日量約0.1μg/kg−1000mg/kgを投与するのが好ましく、より好ましくは、1日量約1μg/kg−100mg/kgである。
【0037】
さらに、本発明を利用することにより、温度刺激により各種マーカー遺伝子および治療用遺伝子が発現されるように設計されたベクターを導入した後、例えば温熱療法等の温度刺激を与えることにより、遺伝子刺激における部位特異的遺伝子発現が可能となる。
【0038】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって制限されるものではない。
【0039】
【実施例】
実施例1:ガラクトース修飾ポリーLーリジン−Lーセリン PEGブロックコポリマー(Gal−PLSP)の調製
ε−カルボベンゾキシ−L−リジン−N−カルボン酸無水物1.0g(シグマ社)及びペンジル−L−セリン−N−カルボン酸無水物1.0g(シグマ社〉を、DMF(和光純薬)30mlに溶解し、クロロホルム(和光純薬)15mlを添加した。片末端メトキシ片末端アミノ基のポリエチレンオキシド日本油脂)4.0gをクロロホルム15mlに溶解した液を添加した。
【0040】
26時間後、反応混合液を330mlのジエチルエーテル(和光純薬)に滴下することで生成したポリマーを沈殿させ、ろ過により回収した。さらにジエチルエーテルで洗浄後、減圧乾燥し、臭化水素酢酸液(和光純薬)で脱保護を行ないポリ−L−リジン−L−セリン PEGブロックコポリマー(PLSP)4.6gを得た。PLSPのガラクトース修飾はMonslgnyらの方法(Monsigny M. et. al., Biol. Cell, 51,187,1984)に従った。
【0041】
実施例2:ブラスミドpCAGGSLucの構築
図1に示したように、CMV−IEエンハンサー、ニワトリ3−アクチンブロモーター配列の下流にルシフェフーゼをコードする遺伝子配列を挿入したプラスミドを遺伝子組み換え法(J.Sambrook,et al., Molecular C1oning)により構築した。
【0042】
実施例3:Gal −PLSP/pCAGGSLuc複合体及びポリ−L−リジン/pCAGGSLuc複合体の調製
実施例1で得られたGal−PLSPあるいはポリ−L−リジン(Sigma社)、及び実施例2の操作により得られたブラスミドpCAGGSLucを各々0.15MのNaClを含む20mMHEPES緩衝液、pH7.3(以下、HBS)に溶解した。ブラスミドpCAGGSLucは3μgを175μlのHBSに溶解した。Gal−PLSP及びポリ−L−リジンはブラスミドpCAGGSLucに対して様々な重量比になるように秤量し、75μlのHBSに溶解した。各々の溶液を混合後、室温で30分放置してGal−PLSP/pCAGGSLuc複合体、あるいはポリ−L−リジン/pCAGGSLuc複合体を調製した。
【0043】
実施例4:Gal −PLSP/pCAGGSLuc複合体及びポリ−L−リジン/pCAGGSLuc複合体のフィルターによるろ過
実施例3により調製したGal−PLSP/pCAGGSLuc複合体及びポリ−L−リジン/pCAGGSLuc複合体を膜孔径0.22μmのフィルター(ミリポア社)で濾過した。ろ液を回収し、分光光度計(ベックマン社 DU640型)により波長260nmでの吸光度を測定した。
【0044】
結果を図2に示す。ポリ−L−リジン/pCAGGSLuc複合体では、ろ液中へのブラスミド遺伝子の回収率が20%以下であったのに対し、Gal−PLSP/pCAGGSLuc複合体では78%以上であった。この結果は、ポリ−L−リジン/pCAGGSLuc複合体が不溶性の粒子状物質を形成しているのに対し、Gal−PLSP/pCAGGSLuc複合体では、膜孔径0.22μmのフィルターを通過することが可能な、より小さなサイズの複合体が形成されていることを示すものである。
【0045】
実施例5:Gal−PLSP/pCAGGSLuc複合体によるHepG2細胞への遺伝子導入
HepG2細胞を10%のウシ胎児血清(FCS、BIO WHITTAKER社)を含むDMEM(GIBCO BRL社)中で50%コンフレントの状態になるまで培養(12ウェルの細胞培養プレートを使用)した。培養液を1%のFCSを含むDMEMに交換した後、実施例3により調製したGal−PLSP/pCAGGSLuc複合体、あるいは、ポリ−L−リジン/pCAGGSLuc複合体の全量(250μl)を添加した。37℃のC02インキュベーター内に4時間放置し、培養液を10%のFCSを含むDMEMに交換した後、さらに72時間、37℃のC02インキュベーター内で培養した。
【0046】
実施例6:HepG2細胞におけるルシフェフーゼ活性の測定
実施例5の操作後、各ウェル内の培養液を取り除き、PBSで2回洗浄した。100μlのピッカジーン培養細胞溶解剤LUC/PGC−50(東洋インキ社)を加え室温で15分間放置後、溶解させた細胞をエッペンチューブに入れ、12000rpmで2分間遠心分離して上清(細胞抽出液)を回収した。上記細胞抽出液10μlとLUC 混合液(東洋インキ社)400μlを混合し、ルミノメーター(Lumat LB95601,Berthold社)でルシフェフーゼ活性を測定した。基質溶液として100μlのlmMルシフェリンを用いた。
【0047】
結果を図3に示す。遺伝子発現の指標となるルシフェフーゼ活性は、Gal −PLSPの比が大きくなるほど増加した。これと比較して、ポリ−L−リジン/pCAGGSLuc複合体では、ポリ−L−リジンの比に関係なくルシフェフーゼ活性はGal−PLSP/pCAGGSLuc複合体よりも低かった。これらの結果はGal−PLSPが遺伝子治療用の遺伝子担体として非常に有用性が高いことを示すものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、ブラスミドpCAGGSLucの模式図を示す。
【図2】 図2は、本発明の核酸運搬体Gal−PLSP及び対照のポリ−L−リジンを用いた場合のブラスミドpCAGGSLucの回収率を示す。
【図3】 図3は、本発明の核酸運搬体Gal−PLSP及び対照のポリ−L−リジンを用いた場合のルシフェラーゼ活性を示す。

Claims (8)

  1. 核酸結合領域、標的指向性付与領域およびポリエチレングリコール領域を含む核酸運搬体であって、前記核酸結合領域が、ポリ−L−リジン−L−セリンである、前記核酸運搬体。
  2. 核酸結合領域に含まれるL−リジンとL−セリンの組成比がモル比で、50:1から1:50であり、核酸結合領域の分子量が200から500,000であり、そしてポリエチレングリコール領域の分子量が200から250,000である、請求項1に記載の核酸運搬体。
  3. 標的指向性付与領域が、細胞膜若しくは細胞内に存在する受容体、または物質輸送タンパク質に対応するリガンドである、請求項1または2に記載の核酸運搬体。
  4. 標的指向性付与領域が、少なくとも1残基以上のガラクトース残基を含む、請求項3に記載の核酸運搬体。
  5. 請求項1ないし4のいずれか1項に記載の核酸運搬体および核酸を含む、核酸の細胞内への導入を促進するための調節剤。
  6. 前記核酸が、細胞内で発現させる遺伝子配列を含む遺伝子発現ベクターである、請求項5に記載の調節剤。
  7. 遺伝子発現ベクターが哺乳動物由来の細胞内で発現させるための遺伝子配列を含む、請求項6に記載の調節剤。
  8. 遺伝子発現ベクターが遺伝子治療用の薬物遺伝子を含む、請求項6または7に記載の調節剤。
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