JP3806181B2 - ナフタレンアルデヒド類の製造方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、ナフタレンアルデヒド類の製造方法に関するものであり、さらに詳しくはセリウムイオン(Ce(III)/Ce(IV))、コバルトイオン(Co(II)/Co(III))、マンガンイオン(Mn(II)/Mn(III))等をレドックスメディエーターとするナフタレンアルデヒド類の製造方法に関するものである。
ナフタレンアルデヒド類は、現在、ファインケミカル、薬学、農学等の分野で工業的に重要な中間体であり、特にその一つであるナフタレン−1−アルデヒドは染料中間体、光沢はんだめっき浴の添加剤等として広く利用されている。
【0002】
【従来の技術】
ナフタレンアルデヒド類、例えばナフタレン−1−アルデヒドの化学的合成法には、我々がこれまでに出願したトリフルオロ酢酸の存在下、ヘキサメチレンテトラミンとナフタレンを反応させ、加水分解して生成物を得る方法がある(特願平4−092385号)。また、酢酸水溶液中で1−クロロメチルナフタレンにヘキサメチレンテトラミンを作用させる方法(S.J.アンジアル、J.R.テトラツ及びJ.G.ウイルソン、Org.Synth.IV 690(1963))、希硝酸を用いて1−クロロメチルナフタレンを酸化する方法がある。一方、電解合成法では、1−ナフチルメタノールの電解酸化による合成法等がある。しかし、これらの方法では、原料の価格が高く入手が困難であり、多品種の薬剤が必要であり、製造工程が長い等の問題点がある。
【0003】
例えば、ナフタレンを出発原料物質とするナフタレンアルデヒドの製造方法は、原料が安価で入手が容易であるという利点はあるが、生成物と未反応ナフタレンを分解する蒸留工程において、ナフタレンの固化析出が原因となって蒸留操作を困難にする問題がある。従って、ナフタレンの固化析出を防ぐ対策が各反応工程において必要であり、製造設備費に大きな負担を招いている。
また、トリフルオロ酢酸の存在下でヘキサメチレンテトラミンを用いてナフタレンアルデヒドを合成する方法(ダッフ法及び改良ダッフ法)では、反応後にトリフルオロ酢酸の一部を再利用できる長所はあるが、生成物とトリフルオロ酢酸を分離する際に、反応溶液のpH値を6〜8の範囲に中和処理する工程を要し、アルカリ塩になったトリフルオロ酢酸を無水トリフルオロ酢酸として回収する操作に多大な労力を要すると共に製造工程が長い等の問題点がある。
さらに、メチルナフタレンの直接電解酸化でナフタレンアルデヒドを合成する際には、反応速度が遅い、目的生成物の選択性に欠け、生産効率が低い等の問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来技術における前記のような問題点を解決し、原料の価格が安く入手が容易であり、多品種の薬剤が必要とせず、製造設備が簡単で製造工程が短いナフタレンアルデヒドの製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
まず、本発明者は、前記した従来技術の方法とは異なった方法として、セリウムイオン等をメディエーターに用いたナフタレン化合物類を間接的に電解合成する工業的製造方法を検討した。
例えば、1−メチルナフタレンを電極上で直接酸化した場合、電極上で1−メチルナフタレン基質の吸着による樹脂化が生じて電流が流れにくくなり、その現象が電流効率と目的生成物の選択性を低下させ、目的とするナフタレン−1−アルデヒドの生成を困難なものにする。しかし、鋭意検討した結果、電極上で基質を直接酸化させることが困難な場合には、酸化剤的作用を示すレドックス系メディエーターを基質と電極の電子移動の媒介体として用いて間接的に電解酸化を行う合成方法が非常に有効であることを見出した。
【0006】
メディエーターを利用する間接的電解酸化反応では、目的生成物を得る反応の選択性がメディエーターの種類によって大きな影響を受ける。これは、還元電位がメディエーターとして利用する金属イオン種並びに電解溶液種によって異なる(J.Org.Chem.48、9(1983))ことが原因であって、このために基質に対する反応作用に相違を生じる。
メディエーターを用いた間接的電解酸化を行う場合には、このメディエーターの種類によって異なる還元電位と基質の酸化電位との間に適切な関係が成り立つときに、目的生成物の反応選択性が向上する。
そこで、我々は、電解酸化法により、種々な酸溶液を用い、ナフタレンアルデヒド類を合成するための最適な方法及びその条件について種々な研究を行い、本発明を完成するに至った。
【0007】
【課題を解決するための手段】
発明の概要
即ち、本発明は、メチルナフタレンを溶解した有機溶媒相をCe(IV)イオン、Co(III)イオン又はMn(III)イオンを溶解させた高濃度酸水溶液相と接触させることによってメチルナフタレンを酸化してナフタレンアルデヒドを製造することを特徴とする、ナフタレンアルデヒド類の製造方法である。
【0008】
本発明の方法に従う酸化反応は、メチルナフタレンを含有する有機溶媒相とメディエーターイオン種を含有する酸水溶液相との二相系で撹拌下に接触させることにより行われる。反応は、メチルナフタレンがナフタレンアルデヒドに酸化されるにつれて、メディエーターイオン種が還元されて不活性になると停止する。反応は、20℃〜80℃、好ましくは40℃〜75℃、さらに好ましくは約60℃前後で行われる。約60℃ほどの穏やかな反応温度は、作業条件が温和であって、アルデヒド類の生成に対する選択性を高めるとともに、メディエーター種の反応速度を増加させて反応時間の短縮化に寄与する。好ましい方法によれば、所定の温度に保持したメディエーターイオン種を含有する酸水溶液相にメチルナフタレンを含有する有機溶媒相を激しく撹拌しながら滴下し、二つの相を接触させることによって反応を進行させることができる。
【0009】
メチルナフタレンを溶解させるのに使用される有機溶媒は、メチルナフタレンを溶解させるとともに反応条件下で不活性であることが必要であり、更に、反応後の主成分とメディエーター相との分離、回収及びメディエーターの再利用を進めるために、水との相互溶解性が低いものが好ましく、特にベンゼン、ヘキサン、リグロイン等が好ましい。
【0010】
本発明において使用されるメディエーターイオン種を含有する酸水溶液相を与える物質は、セリウム、コバルト及びマンガンの塩類である。例えば、これら金属の硫酸、硝酸、過塩素酸、クロルスルホン酸、メタンスルホン酸、酢酸等のような酸との塩類が挙げられる。例えば、硫酸、過塩素酸、メタンスルホン酸、酢酸等の酸のセリウム(IV)塩、コバルト(III)塩、マンガン(III)塩等が特に好ましい。本発明で使用される高濃度酸水溶液相は、これらの塩類をそれら塩を構成する酸と同種の酸に溶解させることによって調製される。酸水溶液相の濃度は、一般に0.1〜8M、好ましくは2〜4Mの範囲である。
本発明の方法で使用されるセリウム、コバルト及びマンガンの塩類は、酸水溶液中でCe(IV)イオン、Co(III)イオン及びMn(III)イオンをそれぞれ与えるものである。これらのイオンは、メチルナフタレンの酸化の結果として、Ce(III)イオン、Co(II)イオン及びMn(II)イオンに還元される。このように還元されるとこれらのイオン種は不活性となり、酸化反応は終了する。このように還元された形態のイオン種は、廃棄処分される。
しかし、セリウム、コバルト及びマンガンイオンは、高価なものであるから、そのまま廃棄することは望ましくない。そこで、本発明では、Ce(III)イオン、Co(II)イオン及びMn(II)イオンを電解酸化によりCe(IV)イオン、Co(III)イオン及びMn(III)イオンに変換し、これをメチルナフタレンの酸化に使用した後、上記のように還元されたイオン種を回収し、再生再利用することが可能であることがわかった。また、これらのメディエーターの再生工程は、同一セル内に基質が存在していても実施可能であり、この場合には、基質の酸化とメディエーターの再生を同時に行うことができる。電解酸化は通常の電解酸化に使用される電解セルにおいて行われる。電解酸化の条件は当業者により容易に決定することができる。
電解酸化によって上記のようなイオン種を与えるのに使用される物質は、例えば、硫酸、過塩素酸、メタンスルホン酸、酢酸等の酸のセリウム(III)塩、コバルト(II)塩、マンガン(II)塩等が特に好ましい。メタンスルホン酸の塩類の場合には、炭酸のセリウム(III)塩、コバルト(II)塩、マンガン(II)塩等をメタンスルホン酸と反応させることにより調製されたものを使用することができる。
【0011】
しかして、本発明によれば、上記のCe(III)イオン、Co(II)イオン又はMn(II)イオンから選ばれるイオンを含有する高濃度酸水溶液相と、メチルナフタレンを溶解した有機溶媒相の二相を同一の電解セル中に仕込み、電解してメディエーターの生成とメチルナフタレンの酸化反応及びメディエーターの再生工程を同時に行い、次いで得られたナフタレンアルデヒドを含有する有機相と還元されたCe(III)イオン、Co(II)イオン又はMn(II)イオンを含有する水性相とを分離し、有機相からナフタレンアルデヒドを回収することを特徴とする、ナフタレンアルデヒド類の製造方法が提供される。
本発明のさらに好ましい具体例においては、本発明の上記の方法は、分離されたCe(III)イオン、Co(II)イオン又はMn(II)イオンを含有する水性相を高濃度酸水溶液に再調整した後、電解槽に再循環することを包含する。
【0012】
上記の方法において、ナフタレンアルデヒドを含有する有機相と還元されたイオン種を含有する水性相との分離及びナフタレンアルデヒドの回収は、通常の液−液分離法によって行うことができる。例えば、反応終了後に、反応槽から水性相をデカンテーションにより回収する。次いで、反応槽に蒸留水を導入して少量の残留酸を希釈すると共に有機相を洗浄する。次いで、水性相と有機相を分離した後、有機相に適量のエーテル溶媒類を添加して全溶液からナフタレンアルデヒドをエーテル相に抽出し、次いでエーテル抽出相に硫酸マグネシウムのような乾燥剤を添加して水分を除去する。エバポレーターのような蒸発器を使用してエーテルを除去した後、濃縮し、必要ならばろ過操作を行い、高濃度のナフタレン−1−アルデヒドを得ることができる。
一方、回収された還元されたイオン種を含有する水性相については、イオン濃度及び酸濃度を再調整した後に、高濃度酸水溶液として上記方法の電解槽に再循環することができる。これはメディエーターイオン種の再利用を可能にし、また高濃度の酸水溶液の廃棄処理の問題も解消させる。従って、本発明の方法は環境保全の点からも優れたものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の方法の基礎となる、メディエーターとしてのセリウムイオン(Ce(III) /Ce(IV))イオンの電解酸化還元と、一例としての1−メチルナフタレンのナフタレン−1−アルデヒドへの間接的電解酸化に関する原理を第一段階及び第二段階に分けて説明する。
まず、1−メチルナフタレンの間接的電解酸化を行うに際して、第一段階として、メディエーターとなるCe(III)イオンの電解酸化が行なわれる。
メディエーター(酸化剤)種の生成のために用いる硫酸セリウム(III)水溶液又は過塩素酸セリウム(III) 水溶液は、0.01〜0.3M、好ましくは0.1Mのセリウム塩(硫酸セリウム(III)又は過塩素酸セリウム(III)を2M〜8M、好ましくは4Mの対応する酸(硫酸又は過塩素酸)を含む水溶液に溶解させて調製する。メタンスルホン酸セリウム(III)水溶液の場合は、0.01〜0.3M、好ましくは0.1Mの炭酸セリウム(III)を2M〜8M、好ましくは4.3Mのメタンスルホン酸を含む水溶液に加え、反応させて調製する。この反応は以下の反応式に従って進行し、反応には二酸化炭素の発生を伴う。
【化1】
6CH3SO3H + Ce2(CO3)3
→2[(CH3SO3)3Ce]+ 3H2O + 3CO2
【0014】
これらの水溶液を、ナフィオン膜(カチオン交換膜)を隔膜として装備した電解セル中に仕込み、N2 ガスで電解セル内を脱気した後、室温から好ましくは30〜50℃に保ち、各々の溶液に対応した酸化電位で撹拌させながら、Ce(III)を定電位電解する。電解に要する電気量は、Ce(III)のモル数の70%以上、好ましくは90%以上を酸化できる理論電気量を通電した。次いでCe(IV)イオンが生成したアノード室の電解液をメディエーター相として分取し、次工程の酸化反応に使用した。カソード電解液は、水素発生による液面低下を補うために酸を補足添加した。各々のCe(III)水溶液の酸化還元電位(Ered)を以下の表1に示す。
Ce(IV)濃度は、硫酸第一鉄アンモニウム水溶液と過マンガン酸カリウム水溶液による逆適定で定量した。
【0015】
【表1】
【0016】
一方、原料となる1−メチルナフタレンは、ベンゼン等の有機溶媒に溶解した後、有機相として反応槽に加える。
【0017】
次に、第二段階となる1−メチルナフタレン基質の酸化反応を行う。まず、Ce(IV)イオン含有水溶液を反応槽に仕込み、窒素ガスで槽内を脱気した後、恒温槽等で反応温度を40℃〜75℃、好ましくは60℃前後に保持した。反応液を激しく撹拌しながら、反応槽の上部より1−メチルナフタレンを溶解した有機相を滴下し、二相を接触させて基質の酸化反応を進行させる。好ましくは、この酸化反応時に窒素ガスのフローを行う方法がよく、また反応は短時間で終了させる方法が好ましい。
【0018】
反応は、メディエーター種であるCe(IV)イオンがCe(III)イオンに還元された場合に進行が停止するので、反応終了後、還元されたCe(III)イオン含有相の一部を回収する。回収された溶液のCe(III)イオン濃度と酸濃度の調整を行った後、再び電解槽に仕込んでCe(III)イオンの電解酸化によるCe(IV)への再生を行う。この方法で再生したCe(IV)イオン含有溶液は、再びメディエーターとして使用することが可能であり、繰り返して使用できる。
【0019】
原料の1−メチルナフタレンの殆どがナフタレン−1−アルデヒドに酸化するまで、Ce(IV)メディエーターによる基質の酸化反応を数回繰り返した後、全てのCe(III)イオン含有水性相を回収する。次いで、槽内に蒸留水を加えて少量残った酸を希釈すると共に有機相の洗浄を行う。有機相は、適量のエーテル溶液類を用いて槽内の全溶液から抽出、次いで硫酸マグネシウムを添加して水分を除去する。エバポレーター等を用いてエーテル類を除去した後、濃縮、必要であれば濾過操作を行い、高濃度のナフタレン−1−アルデヒドを得た。回収したCe(III) イオン含有相は、再びCe(IV)イオンに酸化し、繰り返し使用することが可能であった。
【0020】
本発明の方法は、上で説明したメディエーターの生成とメチルナフタレンの酸化反応を同一セル内で行おうとするものであり、上記と同様のCe(III)イオンを含む高濃度酸水溶液と、メチルナフタレンを溶解させた有機溶媒の両方を同一セル内に仕込み、一定の条件下で電解して、基質の酸化とメディエーターの生成・再生を同時に行うことからなる。反応後は、二相を分離し、ナフタレンアルデヒドを含有する有機相から生成物を回収し、メディエーター相は濃度調節を行った後、再びセル内に循環させる。この方法は、 "in−cell法" に基づくものである。
【0021】
また、上記のCe(III)イオンと同様に、Co(II)イオン及びMn(II)イオンも、上記のように電解酸化することによってそれぞれCo(III)イオン及びMn(III)イオンを含有する高濃度酸水溶液を調製することができる。
【0022】
【実施例】
次に、本発明を実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、他のナフタレンアルデヒド類に適用できるものである。
なお、実施例中で、「部」とあるのは重量部を意味する。また、「M」はモル/リットルの単位を表すものである。
【0023】
参考例1
ナフィオン膜(カチオン交換膜)を備えたH型の電解セル内に、0.05MのCe2(SO4)3と2MのH2SO4を含む水溶液を197部仕込み、作用極に白金板、対極にGC板(グラシーカーボン)を使用して1.50V(vs. SCE)の定電圧で電解酸化を行った。この際の電流値は10〜50mAであった。
電解には、Ce(III)の90%以上を電解するのに必要な理論電気量を通電し、次いで、ナフィオン膜で仕切られたアノード室電解液中のCe(IV)濃度を定量した。
その結果、約92%の電流効率でCe(IV)が生成した。
【0024】
参考例2
参考例1に従った方法で、Ce2(SO4)3/H2SO4、Ce(CH3SO3)3/CH3SO3H、Ce(Cl O4)3/HClO4の3種類のメディエーターを生成させた。これらメディエーター種の酸化還元電位の測定結果を示した表1から、酸化力の強さは、CeClO4)3>Ce(CH3SO3)3>Ce2(SO4)3の順であった。
次いで、これら3種類のメディエーター種が反応に関与する影響を検討するために、0.1Mの1−メチルナフタレンを含むベンゼン溶液を調製し、この溶液10ml とメディエーター溶液25ml の合計35mlを三角フラスコに仕込み、窒素又はアルゴンガスでフラスコ内を脱気した。三角フラスコを25℃の恒温槽内に設置し、マグネットスターラーで激しく撹拌して二相を接触させ、1−メチルナフタレン基質の酸化を行った。下記の表2は、所定の反応時間終了後のCe(IV)の反応消費量と1−メチルナフタレン及びナフタレン−1−アルデヒド濃度をガスクロマトグラフィー分析等で測定した値から計算した電流効率、選択率及び反応率を示したものである。
【0025】
【表2】
【0026】
ナフタレン−1−アルデヒドの生成に対する電流効率と選択率は、メディエーター種によって異なり、各メディエーター種の酸化還元電位、即ち酸化力と相関した結果が得られた。本反応条件では、“Ce2(SO4)3/H2SO4”系を1−メチルナフタレン酸化のメディエーターに使用した際に、反応所要時間は要するが、電流効率とアルデヒド選択性に優れた結果が得られた。
【0027】
参考例3
参考例2に従って作製した“Ce2(SO4)3/H2SO4”系メディエーターを用いて、1−メチルナフタレン基質濃度の影響及びメディエーター相と有機相との容量比の影響を検討した結果を、以下の表3及び表4にそれぞれ示す。
【0028】
【表3】
【0029】
【表4】
【0030】
表3及び表4の結果から、ナフタレン−1−アルデヒドの生成は、基質濃度の影響が大きく、メディエーター相と有機相の容量比の影響は実験を行った範囲では殆どないことがわかる。
【0031】
参考例4
参考例3と同様に、“Ce2(SO4)3/H2SO4”系のメディエーターを用いて、ナフタレン−1−アルデヒドの選択性に対する、温度の影響を10℃と60℃の温度条件で検討した。得られた結果を下記の表5に示す。
【0032】
【表5】
【0033】
表5に示した結果から、反応温度を上昇させることによって、Ce(IV)と基質の反応速度が増加すると共に、アルデヒド生成の選択性及びCe(IV)の反応率が向上して反応時間の短縮化が可能であることが明かになった。
【0034】
参考例5
参考例1〜4に記載の操作に従って、0.05Mの1−メチルナフタレンを含む有機相と“Ce2(SO4)3/H2SO4”系のメディエーター相を調製した後、有機相:メディエーター相=10ml :25ml の合計35ml を三角フラスコ中に仕込み、60℃の温度で反応を行い、メディエーターの再生利用効率を検討した。反応3時間後にメディエーターの回収と再生を行い、さらに引続き3時間の連続反応を実施した結果を下記の表6に示す。
【0035】
【表6】
【0036】
反応3時間毎のCe(IV)の反応効率は約55%、メディエーターの回収と再生を約3時間の短時間サイクルで実施すると、アルデヒドの生成に対する選択率の著しい低下を防止することが出来た。
更に、合計8時間の反応を実施した後、メディエーター相を回収し、フラスコ内に残った有機相を蒸留水で洗浄後中和し、有機相をジエチルエーテルにて抽出した。抽出物に含まれるジエチルエーテル等をエバポレーターで減圧除去した後、ガスクロマトグラフィーにて成分分析を行ない、その結果を下記の表7に示した。
【0037】
【表7】
【0038】
分析結果から、反応溶媒であるベンゼンが12%残留、含有副生成物25%中の23%成分がナフタレン−1−アルデヒドよりも低沸点の物質であった。
さらに、濃縮操作を連続して行った結果、高濃度のナフタレン−1−アルデヒドを容易に得ることができた。
【0039】
参考例6
参考例1に従った方法で、Cu(II)、Fe(III)、Mn(III)、Ce(IV)及びCo(III)イオンからなる各種のメディエーターを調製した後、メディエーター種が1−メチルナフタレンの酸化に与える影響を検討した。下記の表8は、各種メディエーターのナフタレン−1−アルデヒド生成に対する選択率と各種メディエーターの反応率を測定した結果である。
【0040】
【表8】
【0041】
Cu(II)イオン又はFe(III)イオンをメディエーターに用いた場合には、メディエーターの反応率が低く、アルデヒドの生成が認められなかった。一方、Co(III)イオンを用いた場合には、Co(III)イオンは100%の高い反応性を示したが、副生成物が多く、アルデヒドの選択率は27%であった。
【0042】
実施例1
ナフィオン膜(カチオン交換膜)を備えたH型の電解セルを用い、アノード室に5×10-3MのCe2(SO4)3と2MのH2SO4を含有する水溶液70mlと、1×10-2Mの1−メチルナフタレンを含有するベンゼン溶液10mlを仕込み、カソード室には2MのH2 SO4を含有する水溶液70mlを仕込んだ。N2ガスでセル内を脱気した後、アノード室を激しく撹拌しながら、0.25mA/cm3の定電流で電解し、7時間後に、有機相中の生成物の分析をガスクロマトグラフィーによって行った。
得られた結果を下記の表9に示す。
【0043】
【表9】
【0044】
【発明の効果】
反応系の中にメディエーター種を取り入れた従来の方法とは全く異なった反応系で、ナフタレンアルデヒドを合成することができた。反応後のメディエーター相は回収及び再生処理することによって、繰り返して反応に再利用できる工業的利点を有している。また、メディエーター種の生成に電気エネルギーを用いることや、製造時に高濃度の酸廃液等を殆ど生じないことは、環境保全の観点からも優れた製造方法と言えよう。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の方法において使用されるメディエーターの生成工程の一例を示すフローシートである。
【図2】 本発明のナフタレンアルデヒド類の製造工程の一例を示すフローシートである。
Claims (1)
- Ce(III)イオン、Co(II)イオン又はMn(II)イオンから選ばれるイオンを含有する高濃度酸水溶液相と、メチルナフタレンを水との相互溶解性が低い有機溶媒に溶解してなる有機溶媒相との二相を同一の電解槽中に仕込み、電解してメディエーターの生成とメチルナフタレンの酸化反応及びメディエーターの再生工程を同時に行い、ナフタレンアルデヒドを含有する有機相を回収し、次いでこの有機相からナフタレンアルデヒドを分離・精製することを特徴とする、ナフタレンアルデヒド類の製造方法。
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