JP3793779B2 - サトウキビポリフェノール含有物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、サトウキビの有効成分であるサトウキビポリフェノールを含有するサトウキビポリフェノール含有物の製造方法と、その含有物及び、その有効成分を含有する食品、皮膚外用剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
サトウキビは、ショ糖を効率的に蓄積できる植物であることから、従来、そのショ糖成分だけが栄養学的な食資源として重視され高価値利用されてきた。しかし、最近では、非糖成分に中性脂肪・コレステロ−ル上昇抑制作用などの生活習慣病予防効果があることが明らかにされるようになり、精製白糖にない黒糖成分が注目を浴びるようになってきた。
【0003】
例えば、黒糖のラット血清のコレステロ−ルおよび中性脂肪の濃度上昇抑制作用〔Sho.H,Yamasiro.I:J.Jpn.Soc.Food.Nutr,25,462(1972)〕、黒糖のメタノ−ル抽出物〔木村善行,他:薬学雑誌,102,666(1982)〕のラット血清の中性脂肪、インスリンの濃度上昇抑制作用および黒糖中のアルブチン、タキオシド、3,4-ジメトキシフェニルグリコシド(BS-1)によるグルコ-ス吸収阻害作用、黒糖の抗酸化作用〔山口直彦,山田篤美:Nippon.Shokuhin.Kogyo.Gakkaishi,28,303(1981)〕、黒糖中のフェニルプロパノイドによる抗酸化作用〔Nakasone.Y et al.:Biosci.Biotech.Biochem,60, 1714(1996)〕、サトウキビ圧搾汁〔玉城一,他:農化大会要旨,64,802(1990)〕、黒糖、廃糖蜜〔高尾哲也,他:精糖技研誌,41,37(1993)〕およびサトウキビ酢〔吉元誠,他:農化西日本支部大会要旨,39(1998)〕の抗変異原作用、サトウキビ酢のアンジオテンシン1変換酵素阻害作用〔吉元誠,他:農化西日本支部大会要旨,39(1998)〕、黒糖または糖蜜中のアルブチン、タキオシド、BS−1による美肌作用〔山下文夫,他:精糖技研誌,41,43(1993)〕などである。
【0004】
一方、原料のサトウキビにクロロゲン酸〔Gross.D,Coombs.J:Int.Sugar.J,73,100(1971)〕やアントシアン、カテキン、カルコン、フラボノ-ル、フラボンなどのフラボノイド〔Smith.P,Paton.NH:Sugar.Technol.Reviews,12,117(1985)〕が見出され、糖製品〔Farber.L,Carpenter.FG:Proc.Tech.Sess.Cane.Sugar.Ref.Res,23(1972)〕〔Legaz.ME et al.:Int.Sugar.J.-Cane.Sugar.Ed,100,433(1998)〕からもフラボノイド、フェノール酸、それらの誘導体などが見出されている。一般に、これらのフェノール化合物の中には、抗酸化、抗変異原、抗菌、血圧上昇抑制などの作用を示す物質が多い。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このように、サトウキビおよびその製品の生理作用を有する成分の研究が数多く行われてきているが、葉、茎、あるいは黒糖においては、それら成分の含有率が低く、また、夾雑物が多いことから、現在まで、サトウキビあるいはその製品からポリフェノールなどの有効成分を抽出し、特に抗酸化、活性酸素および紫外線吸収等のために使用できるような製品の開発には至っていない。
【0006】
一般に、熱帯・亜熱帯性の植物は強烈に降り注ぐ紫外線から自らを防御する手段としての抗酸化物質、活性酸素消去物質、紫外線吸収物質などを多く含んでいるといわれ、特に甘味資源作物として豊富に存在するサトウキビから砂糖以外のポリフェノールなどの有効成分を探索し、その利用法を開発することが、サトウキビからの収益性を高める上から望まれていた。
【0007】
また、健康維持のためにはサトウキビ中の砂糖以外の成分も積極的に使用されるべきであるが、例えば梢頭部や葉は製糖原料とした場合、製品の貯蔵性、着色性、嗜好性などに影響を与える理由から、家畜飼料に使われるほかは用途がなく、畑に放置または鍬込まれている。わずかに茎の表皮部分が黒糖原料の一部分として利用されるだけであった。
【0008】
しかし、サトウキビは野菜などに比べて農薬の使用量が極めて少ない作物であり、成熟期に至ってから収穫されるため農薬の影響を受けることもないので安全性が高く利用価値が非常に大きいと考えられる。
【0009】
本発明は、このような種々の問題に鑑みてなされたものであり、安全で天然由来の抗酸化作用、活性酸素消去作用および紫外線吸収作用を有するサトウキビポリフェノールをサトウキビから抽出し、精製することにより、サトウキビポリフェノール含有物及びそれを用いた各種製品を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、サトウキビを原料とする黒糖が古くから健康食品として多くの人に好まれ、また、美容にもよいとされ化粧品に用いられることから、原料であるサトウキビから抗酸化作用、活性酸素消去作用等を有し、人体に対し有害な作用を示さない物質を見出すべく鋭意研究を行った結果、サトウキビ穂抽出物中に極めて有効な抗酸化作用、活性酸素消去作用および紫外線吸収作用を有するサトウキビポリフェノールが高濃度に存在することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、サトウキビ穂を水または有機溶媒を用いて、含有成分を抽出し、その抽出液を濃縮乾固することにより、サトウキビポリフェノールを含有する抽出物を提供できるものである。また、さらにその濃縮乾固物の水溶液を溶媒分画または、カラム分画することにより精製することにより、より純度の高いサトウキビポリフェノール含有物を提供できる。
【0012】
また、得られたサトウキビポリフェノール含有物は、抗酸化作用、活性酸素消去作用、及び紫外線吸収作用などを有するため、液状や粉状、錠剤状などに加工することにより、医療用や化粧用などの抗酸化剤や活性酸素消去剤、あるいは紫外線吸収剤などとして提供できる。また、食品類や外用薬に配合して健康食品や皮膚外用剤などとしても提供できる。
【0013】
さらに、抽出前のサトウキビ穂を蒸熱処理及び乾燥処理して通水性容器にパック詰めし、健康飲料用ティーバッグや食品用パック製品や浴用パック剤などとしても提供できる。
【0014】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0015】
本発明で用いられるサトウキビ穂は、サトウキビ属(Saccharum)の植物の穂の部分である。サトウキビは、成熟期に達すると、成長点で花の原基を形成して栄養生長から生殖生長へ転換し、原基は生長して穂状花序を着ける。図1(引用文献:サトウキビとその栽培/宮里清松著)に示すように、穂軸(図示せず)から数多くの枝梗1および小枝梗2を出し、それに多数の小穂(花)3を着ける。小穂(花)3の基部には、輪状に出た穂毛4が密生している。1つの穂に生ずる小穂3の数は品種、生育条件によって異なるが約8,000個に及ぶと言われる。花3は黄色又は赤紫色であり、成熟すれば褐色に変わり、受精によって種子を生ずる。
【0016】
本発明による溶媒抽出に用いるサトウキビ穂は、サトウキビの穂の全体、あるいは穂軸を除いた枝梗1、2および枝梗1、2に付いた種子(図示しない)および花(小穂)3、あるいは枝梗1、2を除いた種子および花(小穂)3、あるいは穂全体の粉砕物、あるいは穂毛4を除いた穂全体の粉砕物のいずれかを用いる。
【0017】
また、サトウキビ穂抽出用の溶媒は、水、メタノ−ル、エタノ−ル、イソプロパノ−ル、ブタノ−ル、プロピレングリコ−ル、ブチレングリコ−ル、グリセリン、アセトン、酢酸エチルおよびメチルエチルケトンから選ばれた1種類以上の溶媒を用いることができる。特に水、エタノ−ルが好適である。
【0018】
抽出溶媒は5〜10倍容量を用いて2〜3回繰り返し抽出すると良い。抽出操作は室温で行ってもよいが、好ましくは還流冷却下加熱すると、成分が効率よく速やかに抽出される。
【0019】
抽出温度が70℃以上、好ましくは80℃〜100℃の加温下で行うと抽出物が効率よく、かつ純度よく得られる。
【0020】
抽出に用いるサトウキビ穂は穂をそのまま、あるいは冷風乾燥、天日乾燥等の乾燥処理をしたもの、また、それを粉砕したものを使用する。特に、冷風乾燥した場合には、抽出物は取り扱いが容易なサラサラした性状のものが得られる。
【0021】
また、ポリフェノール含有率の低い穂軸、枝梗1,2やカサ比重の大きい繊維である穂毛4を除去したものを使用する。特に、専用ブラシ等により花(小穂)3、種子部分を穂軸、枝梗1,2から分離回収したり、花(小穂)3や種子に結合している穂毛4部分を粉砕・篩い処理によって除去して用いると、図2の表に示すように花3・種子・枝梗1,2からの抽出率が高まり、溶媒使用量および作業量が減り、抽出操作が効率的に行える。また、抽出しないで粉砕処理のみを行って、ティーバッグやペット、家畜、養殖魚等の飼料とする場合にも、穂毛4は除いた方が好ましい。
【0022】
抽出操作の後、不溶性の残渣をろ過して除去し、常法により減圧下濃縮し、噴霧乾燥、凍結乾燥等の通常の乾燥手段により乾燥すると、本発明のサトウキビ穂抽出物であるサトウキビポリフェノール含有物が得られる。得られたサトウキビポリフェノール含有物はその精度によって、黄色から赤褐色である。
【0023】
本発明者らは、鋭意研究の結果、さらに抗酸化作用、活性酸素抑制作用、紫外線吸収作用の有効成分がポリフェノールまたはポリフェノールと糖を含む成分であることを見出した。
【0024】
ポリフェノールは、フェノール性水酸基を複数有する化合物群の総称であり、さらにフラボノイド類、フェノールカルボン酸類、タンニン類など多くの化合物群に分類される。ポリフェノール製品の起源植物では、例えばぶどう、茶、りんご果実などが知られている。
【0025】
サトウキビ穂の水抽出物について、Folin−Dennis法による定量試験を行ったところ、ポリフェノールが約14%含まれており、他の植物におけるよりも多量にポリフェノールが含まれることを見出した。
【0026】
このため、そのままでも使用可能であるが、なお、より高純度に精製したポリフェノール製品を得たい場合には、サトウキビ穂をヘキサンなどの非極性溶媒を用いて脱脂してから水抽出したり、さらに水のかわりに高濃度のアルコ−ルを用いて抽出すると有効成分の濃度を上昇させることができる。
【0027】
また、得られた抽出物を酢酸エチルと水に分配することによって、あるいは抽出物を合成吸着剤カラムクロマトグラフィ−に付すことによって、含まれる有効成分を精製することが可能である。
【0028】
例えば、サトウキビ粗抽出物の水溶液から酢酸エチルに分配される画分は、ポリフェノール量が数倍高くなっており、強いDPPHラジカル消去作用と320〜400nmの紫外線(UV−A)領域および290〜320nmの紫外線(UV−B)領域の広い波長領域にわたって強い吸収作用を示し、酢酸エチルで抽出されない水溶性画分は強いリノ−ル酸酸化抑制作用を有している。
【0029】
また、サトウキビ粗抽出物の水溶液を合成吸着剤ダイヤイオンHP−20カラムクロマトグラフィ−に付し、エタノ−ル濃度を替えて通液することによって、ポリフェノールと糖を主体としたリノ−ル酸酸化抑制作用の強い水溶出画分とプロアントシアニジンを主体としたβ−カロチン退色抑制作用、DPPHラジカル消去作用の強いエタノ−ル溶出画分に分離できる。
【0030】
本発明により製造されたサトウキビポリフェノール含有物は、液状、ペ−スト状、錠剤状、粉状、顆粒上などに加工することができ、抗酸化、活性酸素消去および紫外線吸収作用を有するポリフェノール製品として、飲料、発酵飲料、調理の原料として用いる他、一般に使用される担体、助剤、添加剤等とともに製剤化することができ、常法に従って、経口、非経口の製品として、また、食品、皮膚外用剤等の分野で利用することができる。
【0031】
また、抽出処理をしていない花、種子、枝梗を含む粉砕物は、家畜飼料やワイン発酵原料として用いることができる。また、この粉砕物を乾燥処理してティバッグに封入し、各種の茶飲料やだしパックあるいは、入浴剤パックとして用いることができる。
【0032】
【実施例】
次に本発明を実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はこれらにより制限されるものではない。
【0033】
(実施例1)サトウキビの穂から穂軸を除いた部分552gを15lの水で2時間加熱還流により抽出した。この抽出を2回繰り返した。抽出液をろ過して合し、減圧濃縮したのち、乾固させ、水抽出物97.4gを得た。
【0034】
この粗抽出物のポリフェノール量はFolin-Dennis法〔Folin,O.and Dennis,W.:J.Biol.Chem.,22,305(1915)〕により、カテキン換算量として「OD760nm」14.2%、縮合型タンニン量はバニリン/硫酸法〔Decendit,A:Plant Cell Reports 15,762(1996)〕により、カテキン換算量「OD500nm」として2.4%、プロアントシアニジン量をブタノ−ル/塩酸法〔Beta-Smith,E.C,:Phytochemistry,20,211(1981)〕により、シアンニジン換算量「OD550nm」としてプロアントアニジン量は3.3%であった。
【0035】
(実施例2)実施例1で得られた粗抽出物3gを300mlの水に溶解させ、それに等容量のヘキサンを加えて激しく振り混ぜ、ろ過により水可溶性成分を分離した。この水可溶性成分の水溶液に等容量の酢酸エチルを加えて激しく振り混ぜ、ろ過により酢酸エチル可溶性成分を分離した。この操作を2回繰り返した。
【0036】
それぞれを合し、減圧濃縮したのち乾固し、黄色の抽出物297mg(ポリフェノール量44.2%)を得た。また、酢酸エチルで抽出されない画分からは、赤褐色の抽出物2.12g(ポリフェノール量15.6%)を得た。
【0037】
(実施例3)実施例1で得られた粗抽出物1gを脱イオン水100mlに溶解し、スチレン系吸着樹脂を充填したカラム(ダイヤイオンHP−20;カラムφ30×350cm)に室温で通液した。
【0038】
まず、脱イオン水を1l通液し、カラム通過液を画分1とした。次に20%V/Vエタノ−ル水溶液を1l通液し、その通過液を画分2とした。さらに70%V/Vエタノ−ル水溶液を1l通液し、その通過液を画分3とした。得られた溶出液を減圧濃縮して乾燥し、画分1から黄色粘質物641mg、画分2から黄褐色粉末166mgと画分3から褐色粉末100mgを得た。
【0039】
各画分のポリフェノール量はそれぞれ2.4%、29.3%、43.6%である。これらのことを実施例1および実施例2の結果とともに図3に示す表にまとめた。
【0040】
次に、実施例で得られたサトウキビ穂抽出物の抗酸化作用、活性酸素消去作用、紫外線吸収作用についての実験例を示す。
【0041】
(実験例1)穂抽出物の抗酸化作用をβ−カロチンの退色法〔津志田 他:日食志,41,611(1994)〕により調べた。この方法はリノ−ル酸の自動酸化に伴い生じる過酸化物がβ−カロチンの二重結合と反応することによって、β−カロチンの色が消失することを利用したものである。
【0042】
即ち、0.225mgのβ−カロチン、10mgのリノ−ル酸、100mgのツイ−ン40を含むリノ−ル酸−β−カロチン溶液45mlに5mlのリン酸緩衝液を加え、静かに撹拌した後、4.9mlを試験管に分注し、これにポリフェノール5mgを含む実施例1で得られた粗抽出物および実施例3で得られた分画物の各35.5mg/100mlの水溶液または50%エタノ−ル溶液から100μlを添加し、50℃にて反応させながら経時的にO.D470nmを測定した。
【0043】
対照に水を用い、また、5mg/100mlの化学合成抗酸化剤BHA(ブチルヒドロキシアニソ−ル)溶液を添加した区も並行して行った。対照区の15分処理後の吸光度に対する45分後の吸光度の減少率を100とした場合との比較を図4に示した。
【0044】
対照区に比べ、サトウキビ穂から水抽出した区は明らかな酸化抑制作用を示した。また、この粗抽出物を酢酸エチルを用いる溶媒分画およびダイヤイオンHP−20を用いるカラム分画により、それぞれより高い抗酸化作用を示す画分が得られることを示している。すなわち、ポリフェノール量の高い酢酸エチル画分およびエタノ−ル溶出画分(EtOH−20%,70%)が強い抗酸化作用を示している。
【0045】
(実験例2)穂抽出物の抗酸化作用をロダン鉄法〔満田久輝 他:栄食誌,19,210(1966)〕により調べた。この方法はリノ−ル酸の自動酸化に伴い生じる過酸化物量を測定するものである。
【0046】
即ち、2mlの2.8%(W/V)リノ−ル酸含有99.5%エタノ−ルを0.05Mリン酸塩緩衝液(PH7.0)4ml、実施例1で得られたポリフェノール2mgを含む粗抽出物および実施例3で得られた分画物の各14.2mg/2mlのエタノ−ルおよび蒸留水2mlの混合液を試験管に入れ密栓し、40℃遮光下にて1週間保存した。
【0047】
また、試料の代わりに2mlの水を添加した区(対照)、2mg/2mlのα−トコフェロ−ル、BHA溶液を添加した区も並行して行った。保存試料0.1ml、75%エタノ−ル水溶液4.7ml、30%チオシアン酸アンモニウム水溶液0.1mlの混合液に0.02Mの塩化第一鉄の3.5%塩酸溶液0.1mlを加えてから正確に3分後、500nmにおける吸光度測定した。
【0048】
その結果を図5に示す。図より明らかなように、対照区に比べ、サトウキビ穂からの水抽出した区は、明らかな酸化抑制作用を示した。また、この粗抽出物を酢酸エチルを用いる溶媒分画およびダイヤイオンHP−20を用いるカラム分画により、それぞれより高い抗酸化作用を示す画分が得られることを示している。ここでは図4の結果と異なって、水溶性画分、すなわち、非酢酸エチル画分およびポリフェノール量の低い水溶出画分(EtOH−0%)が強い抗酸化作用を示している。
【0049】
(実験例3)穂抽出物の活性酸素消去作用を1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル(DPPH、安定ラジカル)に対する消去活性を分光光度計を用い測定する方法で調べた。
【0050】
DPPHの200μMエタノ−ル溶液を1ml、蒸留水1mlをそれぞれ6本の試験管にとり、それぞれに50%エタノ−ルを600、580、560、540、520、500μlを加えた後、実施例1で得られたポリフェノール56mgを含む粗抽出物および実施例3で得られた分画物の各400mg/100mlの50%エタノ−ル溶液をそれぞれに0、20、40、60、80、100μlを30秒間隔で加え、それぞれ2分間反応後に520nmを測定した。
【0051】
56mg/100mlのα−トコフェロ−ル、BHA溶液を添加した区も並行して行った。紫色が退色していく変化が認められ、図6に示すように、少量でDPPHラジカルを半減させることから、サトウキビ穂からの水抽出物は明らかな活性酸素消去作用を示した。
【0052】
また、この粗抽出物を酢酸エチルを用いる溶媒分画およびダイヤイオンHP−20を用いるカラム分画により、それぞれより高い抗酸化作用を示す画分が得られることを示している。すなわち、ポリフェノール量の高い酢酸エチル画分およびエチルアルコ−ル溶出画分(EtOH−20,70%)が強い活性酸素消去作用を示している。
【0053】
(実験例4)実施例3で得られた活性酸素消去活性は低いが抗酸化活性と粗抽出物に占める割合が最も高かった画分1の100μl(3.85mg)をWaters Sep-Pak C18-1gカラムに室温で通液した。
【0054】
まず、脱イオン水を1ml通液し、カラム通過液を画分1とした。さらに続けて脱イオン水1mlづつで3回通液し、それぞれのカラム通過液を順次、画分2,画分3および画分4とした。次に50%V/Vエタノ−ル水溶液を1ml通液し、その通過液を画分5とした。さらに続けて50%V/Vエタノ−ル水溶液を1lmlづつで3回通液し、それぞれの通過液を順次、画分6、画分7および画分8とした。
【0055】
得られた溶出液を5倍に希釈した後、実験例2に準じて抗酸化活性を測定した。また、ポリフェノール量とアンスロン/硫酸法〔製糖便覧,精糖技術会編,31(1962)〕による全糖量(グルコ−ス換算)も測定した。その結果を図7の表3に示す。この結果から、ポリフェノールと糖を含む画分6が強い抗酸化作用を示している。
【0056】
(実験例5)実施例2で得られた酢酸エチル画分抽出物を10mg秤取り、これをそれぞれ200mlの蒸留水に溶解して調整した被験液として、分光光度計を用いて波長200〜400nmの光を照射しながらスキャニングして紫外線吸収量を測定した。
【0057】
その結果を図8に示す。UVB線の領域に対応する290nm〜320nmおよびUVA線の領域に対応する320〜400nmに吸収スペクトルを示す。また、実施例3で得られた画分1も290nm〜320nmに吸収スペクトルを示す。紫外線吸収剤として、着色性の低い酢酸エチル画分または画分1よりなるポリフェノール群は有用であると判断された。
【0058】
【発明の効果】
以上、詳細に説明した本発明では、サトウキビ穂抽出物が抗酸化、活性酸素消去および紫外線吸収などの作用を有するので、食品や皮膚外用剤における油脂酸化や生体内に生成した活性酸素や過酸化脂質によって引き起こされる傷害を抑制する能力を有するサトウキビポリフェノール含有物を製造することができる。
【0059】
従って、健康上の傷害、美容上の傷害の発生を抑制することができ、食品、皮膚外用剤等にも応用することが可能となり、医療用、化粧用、食品用など幅広い産業に活用することができる。また、サトウキビの製糖産業にかわる新たな産業創出に大きく貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】サトウキビの花序を示す模式図である。
【図2】サトウキビ穂の粉砕・篩いによる分画処理と抽出率の表を示す図である。
【図3】サトウキビ穂からの租抽出物および溶媒・吸着カラム分画物のポリフェノール成分量の表を示す図である。
【図4】サトウキビ穂抽出物のβ−カロチン退色率による抗酸化作用を示す図である。
【図5】サトウキビ穂抽出物のリノール酸過酸化度による抗酸化作用を示す図である。
【図6】サトウキビ穂抽出物の活性酸素消去作用を示す図である。
【図7】HP−20画分1のカラム精製物の抗酸化作用を示す図である。
【図8】酢酸エチル画分の紫外線吸収作用を示す図である。
【符号の説明】
1 枝梗
2 小枝梗
3 小穂(花)
4 穂毛
Claims (10)
- サトウキビ穂を水または有機溶媒を用いて、含有成分を抽出し、その抽出液を濃縮乾固することを特徴とするサトウキビポリフェノール含有物の製造方法。
- サトウキビ穂を水または有機溶媒を用いて、含有成分を抽出し、その抽出液を濃縮乾固し、さらにその濃縮乾固物の水溶液を溶媒分画または、カラム分画することにより精製することを特徴とするサトウキビポリフェノール含有物の製造方法。
- 前記のサトウキビ穂は、サトウキビ属(Saccharum)のサトウキビの穂である請求項1または請求項2の項に記載のサトウキビポリフェノール含有物の製造方法。
- 前記のサトウキビ穂がサトウキビの穂全体、あるいは穂軸を除いた枝梗および枝梗に付いた種子および花、あるいは枝梗を除いた種子および花、あるいはサトウキビの穂全体の粉砕物、あるいは穂毛を除いた穂全体の粉砕物のいずれかである請求項1から請求項3までのいずれかの項に記載のサトウキビポリフェノール含有物の製造方法。
- 前記の溶媒が水、メタノ−ル、エタノ−ル、イソプロパノ−ル、ブタノ−ル、プロピレングリコ−ル、ブチレングリコ−ル、グリセリン、アセトン、酢酸エチルおよびメチルエチルケトンの少なくとも一種以上である請求項1から請求項4までのいずれかの項に記載のサトウキビポリフェノール含有物の製造方法。
- 前記の請求項1から請求項5までのいずれかの方法により製造されたサトウキビポリフェノール含有物を用いたことを特徴とする抗酸化剤。
- 前記の請求項1から請求項5までのいずれかの方法により製造されたサトウキビポリフェノール含有物を用いたことを特徴とする活性酸素消去剤。
- 前記の請求項1から請求項5までのいずれかの方法により製造されたサトウキビポリフェノール含有物を用い、さらに、酢酸エチルで抽出処理したことを特徴とする紫外線吸収剤。
- 前記の請求項1から請求項5までのいずれかの方法により製造されたサトウキビポリフェノール含有物が配合されたことを特徴とする加工食品。
- 前記の請求項1から請求項5までのいずれかの方法により製造されたサトウキビポリフェノール含有物が配合されたことを特徴とする皮膚外用剤。
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