JP3790460B2 - 熱接着性複合繊維とその製造方法、及びこれを用いた不織布 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、繊維製造時の生産性および不織布製造時の生産性に優れ、低温接着性に優れるとともに風合が柔軟な不織布を得るのに好適な熱接着性複合繊維、および不織布強力に優れ、触感が柔軟で肌触りのよい不織布に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、衛生材料、包装材、フィルター、ウェットティッシュ、ワイパー、電池セパレーター、ヒートシール紙などの様々な用途において、低融点成分の少なくとも一部が繊維表面に露出した熱接着性複合繊維で繊維間を熱接着させた熱接着不織布が使用されている。熱接着性複合繊維としては、低融点(鞘)成分/高融点(芯)成分(以下、この組合せで示す)の組合せがポリエチレン/ポリプロピレン、ポリエチレン/ポリエステルが代表的であるが、両者の相溶性が必ずしも良好でないために、成分間剥離(鞘芯型複合繊維の場合は鞘芯間剥離)が生じ接着強力が必ずしも十分でないという欠点があるため、エチレン−プロピレン共重合体(以下EP、またはEP共重合体と示すことがある)/ポリプロピレン(以下PPと示すことがある)、エチレン−ブテン−プロピレン三元共重合体(以下EBP、またはEBP共重合体と示すことがある)/ポリプロピレンの組合せからなる複合繊維が種々提案され、実用に供されている。この組み合わせの場合、両成分の相溶性が良いため、剥離の問題が生じにくく優れた熱接着能を示す。また、上記共重合体は若干のゴム的性質を有するため比較的柔軟な不織布が得られる。
【0003】
例えば、特開平4−73214号公報では、プロピレン系共重合体を鞘成分とし、結晶性ポリプロピレンを芯成分とし、鞘成分/芯成分のメルトフローレート比を2〜10の範囲とした熱接着性繊維が提案されている。特開平5−9810号公報では、プロピレン系共重合体を鞘成分とし、結晶性ポリプロピレンを芯成分とし、DSC曲線でダブルピークを示すように低融点プロピレン系共重合体を選択することが提案されている。特開平6−108310号公報および特表2001−502388号公報では、鞘成分を低融点プロピレン共重合体とし、芯成分を結晶性ポリプロピレンとし、延伸倍率を低くして樹脂の配向結晶性を抑制した熱接着性複合繊維が提案されている。
【0004】
また、鞘成分に2種類以上の樹脂を混合する提案がいくつかなされており、例えば、特開平6−184822号公報では、鞘成分に高密度ポリエチレンと少量のエチレン−プロピレン共重合体とを混合した熱接着性複合繊維を提案している。特開平6−116815号公報では、鞘成分をプロピレン系2元または三元共重合体と融点または軟化点が125〜60℃の少量の飽和炭化水素ワックスとを混合した熱接着性複合繊維が提案している。本出願人においても、特開2000−45125号公報には、鞘成分に2種類のエチレン−プロピレン共重合体の混合体からなる複合繊維を提案している。特開2000−110024号公報では、MFR4〜100のエチレン-プロピレン共重合体100重量部に対し、MFR4〜100のポリエチレンを0.5〜20重量部配合したポリプロピレン繊維を提案している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記複合繊維には以下の問題点が挙げられる。例えば、特開平4−73214号公報記載の複合繊維は、鞘成分/芯成分のMFR比を2〜10と大きくすることにより欠点を解消しようと試みているが、紡糸性、延伸性が悪く、製造工程中、特に紡糸工程時に繊維間融着を引き起こしたりする。特開平5−9810号公報では、芯成分と鞘成分の間に融点差を設けているため、145℃以上の熱風処理など高温加工には適しているが、145℃未満の熱処理において検討がなされておらず、選択されるプロピレン系共重合体は、エチレン含有量の比較的少ない樹脂を用いており低温での接着性は十分とはいえない。それを解消するためにエチレン含有量の大きい樹脂を用い、プロピレン系共重合体の融点を低くすることが考えられるが、エチレン含有量の大きいプロピレン系共重合体を用いた繊維は、ゴム的性質が過剰になるだけでなく、かつ繊維自体のコシが乏しくなるため、繊維製造時におけるクリンパーの通過性に劣る。また、プロピレン系共重合体の結晶化速度が遅いことから、紡糸時の冷却効率に劣り、融着が発生しやすい。さらに、不織布製造時においてネップが発生するなど高速カード通過性にも劣り、また得られた不織布の触感においてべたつき感が大きいという欠点を有している。特開平6−108310号公報および特表2001−502388号公報では、融点の低い樹脂を採用し、延伸倍率を低く抑えて芯成分と鞘成分に温度差を設けようと試みているが、融点の低いプロピレン系共重合体は繊維間融着を引き起こし易く、延伸倍率を低く抑えるため、短繊維強力が小さく単繊維伸度が大きくなり、繊維自体にコシがなく、高速カード通過性に劣る。
【0006】
また、特開平6−184822号公報では、高密度ポリエチレンに少量のエチレン−プロピレン共重合体を混合することにより、鞘の融点を上昇させ、圧着時の樹脂の広がりを抑制して、熱ロール時の穴開き現象の発生を抑制することができるが、高密度ポリエチレンが主体であるため、鞘成分と芯成分との相溶性は良好とはいえず、鞘芯間剥離が生じて接着強力は十分とはいえない。特開平6−116815号公報では、紡糸融着やクリンパーの通過性などの工程性に優れ、得られた繊維も低温接着性に優れるものの、飽和炭化水素ワックスは紡糸時の発煙し、作業環境面で悪影響を及ぼすだけでなく、熱劣化によりノズル口金へ分解物が付着し、長期生産性に劣るという問題を含んでいる。さらに、ワックス成分が混合されているため、繊維自体に「コシ」がなくなり、高速カード通過性が十分でないという欠点がある。特開2000−45125号公報では、面反発性やクッション性には効果があるが、熱接着性、柔軟性においては十分とはいえなかった。特開2000−110024号公報では、ポリエチレンを少量配合することにより低温ヒートシール性を向上させているが、エチレン−プロピレン共重合体とポリエチレンとは、相溶性が悪く、安定した紡糸性が得られない。さらに、相溶性が悪いため、熱接着強力がばらつき安定した不織布強力が得られない。
【0007】
本発明の目的は、上記の観点から、紡糸時の融着、延伸時のクリンパーの通過性など繊維生産性ならびにカード通過性、特に高速カード通過性など不織布生産性が改善され、不織布製造時における熱接着加工温度の範囲が広く、低温での熱接着性に優れ、触感が柔軟であり、かつべたつき感がなく肌触りのよい不織布を得るのに好適な熱接着性複合繊維および不織布を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記課題につき鋭意検討した結果、エチレン、またはエチレンとブテンの含有量が3.5mol%以上、15mol%以下の範囲であり、融点が120℃以上、140℃以下の範囲であり、ASTM−D−1238に準ずるメルトフローレート(温度230℃、荷重21.2N)をMFR(EP)としたとき10≦MFR(EP)(g/10min)≦100の範囲を満たすプロピレン系共重合体(EP)を70mass%以上、99mass%以下の範囲で含有し、
エチレン、またはエチレンとブテンの含有量が2mol%以下であり、メルトフローレートをMFR(PP)としたとき15≦MFR(PP)(g/10min)≦100の範囲であり、0.4×MFR(EP)≦MFR(PP)≦4×MFR(EP)の範囲を満たすプロピレン系重合体(PP)を1mass%以上、30mass%以下の範囲で含有する第一成分と、
第一成分におけるプロピレン系共重合体(EP)の融点より10℃以上高い融点を持つ繊維形成性重合体またはその共重合体からなる第二成分とで構成され、第一成分を鞘成分とし、第二成分を芯成分とした同心円鞘芯型に配置するように複合紡糸されてなる熱接着性複合繊維とすることによって、上記課題を解決したものである。
【0009】
前記第二成分の繊維形成性重合体またはその共重合体は、エチレン、またはエチレンとブテンの含有量が0.5mol%以下からなるプロピレン系重合体であると、鞘成分と同質の重合体であり相溶性に優れ、鞘芯間剥離が生じることがなく、熱接着性、特にはエンボスロールによる熱圧着性に優れ、好ましい。
【0010】
前記複合繊維は、第一成分を鞘成分とし、第二成分を芯成分とした同心円鞘芯型に配置されていると、熱接着性に優れ、好ましい
【0011】
本発明の不織布は、前記熱接着性複合繊維を少なくとも10mass%含有する繊維ウェブからなり、前記熱接着性複合繊維における第一成分の少なくとも一部を溶融し、熱接着することにより得られる。さらに、前記熱接着性複合繊維の性能は、前記繊維ウェブがカードウェブであると、最大限に発揮され、好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の熱接着性複合繊維において、第一成分に含まれるプロピレン系共重合体(EP)のエチレン、またはエチレンとブテン(以下、エチレン(+ブテン)とする)の含有量は、3.5mol%以上、15mol%以下の範囲である。好ましい含有量の下限は、5mol%以上である。好ましい含有量の上限は、10mol%以下である。エチレン(+ブテン)含有量が3.5mol%を下回る、低温での熱接着性に劣り、第二成分をプロピレン系重合体としたとき、第一成分と第二成分を構成する樹脂の融点差が小さくなる傾向となり、不織布製造時の熱接着加工温度の範囲が狭くなり、加工温度の管理が困難となるだけでなく、第二成分も熱の影響を受けて風合いが硬くなる恐れがある。一方、エチレン(+ブテン)含有量が15mol%を超えると、軟化点が低くなりすぎて紡糸時に融着が生じる恐れがあり、また得られる繊維自体もコシが弱く、ゴム的性質が強くなりすぎるため、延伸時のクリンパー通過性や、不織布製造時の高速カード通過性に劣り、さらに触感においてもべたつき感が大きくなるため、使用者が不快に感じる恐れがある。この傾向はプロピレン系重合体(PP)を混合しても改善が困難である。なお、エチレン(+ブテン)含有量は、13C−NMRスペクトルにより定法により求められる。
【0013】
前記プロピレン系共重合体(EP)の融点は、120℃以上、140℃以下の範囲である。好ましい融点の下限は、125℃以上である。なお、融点は、JIS−K−7122に準じてDSC法により測定される。融点が120℃を下回ると、軟化点が低くなりすぎて紡糸時に融着が生じる恐れがあり、また得られる繊維自体もコシが弱く、ゴム的性質が強くなりすぎるため、延伸時のクリンパー通過性や、不織布製造時の高速カード通過性に劣る傾向にある。融点が140℃を超えると、低温での熱接着性に劣り、第二成分をプロピレン系重合体としたとき、第一成分との融点差が小さく、不織布製造時の熱接着加工温度の範囲が狭くなり、加工温度の管理が困難となるだけでなく、第二成分も熱の影響を受けて風合いが硬くなる恐れがある。
【0014】
前記プロピレン系共重合体(EP)は、ASTM−D−1238に準ずるメルトフローレート(温度230℃、荷重21.2N(2.16kgf))をMFR(EP)としたとき10≦MFR(EP)(g/10min)≦100の範囲を満たす。好ましいMFR(EP)の下限は、15g/10min以上である。好ましいMFR(EP)の上限は、50g/10min以上である。MFR(EP)が10g/10min未満であると、EPの分子量が大きすぎるため溶融粘度が低くなり、紡糸時の糸切れなどの問題を発生しやすい。一方、MFR(EP)が100g/10minを超えると、EPの分子量が小さすぎるため、プロピレン系重合体(PP)を混合しても、紡糸時の融着が生じる恐れがあり、また繊維自体のコシに乏しくなるため、延伸時のクリンパー通過性および不織布製造時の高速カード通過性が劣る傾向にある。
【0015】
前記エチレン含有量、融点、およびMFRを満たすプロピレン系共重合体(EP)としては、例えば、サンアロマー(株)製のPM940M(エチレン含有量9mol%、融点138℃、MFR35g/10min)等がある。
【0016】
次に、本発明の熱接着性複合繊維において、第一成分には前記プロピレン系共重合体(EP)の他に、エチレン、またはエチレンとブテンの含有量が2mol%以下からなるプロピレン系重合体(PP)が混合される。好ましいエチレン、またはエチレンとブテンの含有量は、1mol%以下である。プロピレン系重合体(PP)におけるエチレン、またはエチレンとブテンの含有量が2mol%を超えると、プロピレン系重合体(PP)の性質がプロピレン系共重合体(EP)の性質に近くなるため、紡糸時の融着が解消されない恐れがあり、EPの持つゴム的性質も解消されないため、延伸時のクリンパー通過性や、不織布製造時の高速カード通過性に劣る恐れがある。
【0017】
前記プロピレン系重合体(PP)のASTM−D−1238に準ずる温度230℃、荷重21.2Nでのルトフローレート(以下、MFR(PP)という)は、15≦MFR(PP)(g/10min)≦100の範囲である。好ましいMFR(PP)の下限は、20g/10min以上である。好ましいMFR(PP)の上限は、80g/10min以下である。より好ましいMFR(PP)の下限は、30g/10min以上である。より好ましいMFR(PP)の上限は、60g/10min以下である。MFR(PP)が15g/10min未満であると、ベース樹脂であるプロピレン系共重合体(EP)との混合ムラが発生しやすくなるため、紡糸時の融着防止性も安定しにくく、また、糸切れが発生しやすくなる恐れがある。また、得られる不織布の熱接着性がばらつきやすい傾向にある。一方、MFR(PP)が100g/10minを超えると、PPが繊維表面を覆いやすくなる傾向にあり、紡糸時の融着や得られる不織布のべたつき感の点では良い傾向であるが、低温での熱接着性は劣る傾向にある。
【0018】
また、前記プロピレン系重合体(PP)のMFR(PP)は、前記プロピレン系共重合体(EP)のMFR(EP)に対する割合も同時に満たす必要があり、0.4×MFR(EP)≦MFR(PP)≦4×MFR(EP)の範囲とする。好ましいMFR(PP)のMFR(EP)に対する割合の下限は、0.6×MFR(EP)である。好ましいMFR(PP)のMFR(EP)に対する割合の上限は、3×MFR(EP)である。より好ましいMFR(PP)のMFR(EP)に対する割合の下限は、0.8×MFR(EP)である。より好ましいMFR(PP)のMFR(EP)に対する割合の上限は、2.5×MFR(EP)である。MFR(PP)のMFR(EP)に対する割合が0.4×MFR(EP)より小さいと、ベース樹脂であるプロピレン系共重合体(EP)との混合ムラが発生しやすくなるため、紡糸時の融着防止性も安定しにくく、また、糸切れが発生しやすくなる恐れがある。また、延伸時でもクリンパー通過性が安定しにくく、捲縮ムラを生じ、高速カード通過性も安定しにくくなる恐れがあるだけでなく、得られる不織布の嵩高感も乏しくなったり、柔軟性も乏しくなる恐れがある。一方、MFR(PP)のMFR(EP)に対する割合が4×MFR(EP)より大きいと、プロピレン重合体(PP)がベース樹脂であるプロピレン系共重合体(EP)よりも低分子量になりすぎるため、PPが繊維表面を覆いやすくなる傾向にあり、紡糸時の融着や得られる不織布のべたつき感の点では良い傾向であるが、低温での熱接着性は劣る傾向にある。また、繊維のコシもさらに低下し、クリンパー通過性、高速カード通過性に劣る傾向にある。
【0019】
本発明の熱接着性複合繊維において、第一成分に混合するプロピレン系共重合体(EP)とプロピレン系重合体(PP)の含有量は、プロピレン系共重合体(EP)が70mass%以上、99mass%以下の範囲である。プロピレン系重合体(PP)の含有量は、1mass%以上、30mass%以下の範囲である。好ましいEPの下限は、80mass%以上である。好ましいEPの上限は、97mass%以下である。好ましいPPの下限は、3mass%以上である。好ましいPPの上限は、20mass%以下である。より好ましいEPの下限は、90mass%以上である。より好ましいEPの上限は、96mass%以下である。好ましいPPの下限は、4mass%以上である。好ましいPPの上限は、10mass%以下である。EPの含有量が99mass%を超える、あるいはPPの含有量が1mass%を下回ると、EPの性質が強くなり、混合の効果が認められない。一方、EPの含有量が80mass%を下回る、あるいはPPの含有量が30mass%を超えると、PPの性質に近づくため、繊維生産性や不織布製造時の高速カード通過性、さらに得られる不織布のべたつき感は改善される傾向であるが、低温での熱接着性が著しく低下するだけでなく、得られる不織布の触感も硬くなる傾向にある。
【0020】
前記第一成分には、繊維生産性、不織布生産性、および低温での熱接着性、触感を阻害しない範囲であれば、他の重合体あるいは無機物(例えば、炭酸カルシウム、タルク等)等の公知の結晶核剤を10mass%以下で混合してもよい。結晶核剤を混合すると、紡糸時の繊維間融着防止効果をさらに向上させることができ、また、触感の柔らかい不織布を得ることができるという利点をもたらす。さらに、第一成分には、その他の添加剤、例えば、帯電防止剤、顔料、艶消し剤、熱安定剤、光安定剤、難燃材、抗菌剤、滑剤、可塑剤、柔軟剤等を用途等に応じて混合することができる。
【0021】
次に、本発明の熱接着性複合繊維における第二成分は、第一成分におけるプロピレン系共重合体(EP)の融点よりも10℃以上高い融点を有する繊維形成性重合体またはその共重合体である。好ましくは、EPの融点よりも20℃以上高い融点を有する繊維形成性重合体またはその共重合体である。第二成分が第一成分におけるプロピレン系共重合体(EP)の融点との差が10℃未満であると、不織布製造時の熱接着加工温度の範囲が狭くなり、加工温度の管理が困難となるだけでなく、第二成分も熱の影響を受けて風合いが硬くなる恐れがある。
【0022】
上記範囲を満たす繊維形成性重合体またはその共重合体としては、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのエステル系重合体、ナイロン6やナイロン66などのアミド系重合体、あるいはポリプロピレン、ポリメチルペンテン、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのオレフィン系重合体と、それらの共重合体などが用いられる。なかでも、オレフィン系重合体またはその共重合体は、第一成分に含まれるEPとPPの混合体との相溶性がよく、成分間で剥離が生じにくいので、鞘芯間剥離に伴う第一成分のゴム的性質が強調されることがない。さらに、オレフィン系重合体またはその共重合体は、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートのような硬質のエステル系重合体に比べ、重合体自体が軟質であるため、これを使用すれば、繊維そのものを柔軟にでき、ひいては当該繊維を含む不織布の触感の柔軟性をより向上させることができる。例えば、第二成分に用いられるオレフィン系重合体またはその共重合体の融点は150℃以上、250℃以下の範囲、MFRは5g/10min以上、60g/10min以下の範囲であることが好ましい。
【0023】
特に、第二成分の繊維形成性重合体またはその共重合体は、エチレン、またはエチレンとブテンの含有量が0.5mol%以下からなるプロピレン系重合体であることが好ましい。より好ましくは、エチレン、またはエチレンとブテンの含有量が実質的に0mol%のホモポリプロピレンである。上記プロピレン系重合体であると、鞘成分と同質の重合体であり相溶性に優れ、好ましい。プロピレン系重合体のエチレン、またはエチレンとブテンの含有量が0.5mol%を超えると、重合体自体が軟質となりすぎて、延伸時のクリンパー通過性や不織布製造時の高速カード通過性に劣る傾向にある。
【0024】
前記第二成分もまた、必要に応じて各種の添加剤を含んでよい。具体的には、帯電防止剤、顔料、艶消し剤、熱安定剤、光安定剤、難燃材、抗菌剤、滑剤、可塑剤、柔軟剤等を含んでよい。
【0025】
次に、本発明の熱接着性複合繊維は、前記第一成分および第二成分で構成され、第一成分が繊維表面の少なくとも一部に露出するように配置される。ここで、「第一成分が繊維表面の少なくとも一部に露出する」とは、繊維断面の周の少なくとも一部を第一成分が占めていることをいう。本発明の熱接着性複合繊維において、第一成分は、好ましくは繊維断面の周の20%以上、100%以下、より好ましくは、50%以上、100%以下を占め、もっとも好ましくは、100%を占める。
【0026】
前記構造を有する複合繊維としては、例えば、同心円状あるいは偏心状に配置された鞘芯型複合繊維、並列型複合繊維、分割型複合繊維、海島型複合繊維等がある。本発明の熱接着性複合繊維の繊維断面形状は、円状、異形状、中空状のいずれであってもよい。特に、同心円状に配置された鞘芯型複合繊維は、熱接着加工したときの熱接着点が多く、熱接着能を十分に発揮することができるので都合がよい。
【0027】
前記第一成分/前記第二成分の複合比(容積比)は、8/2〜2/8であることが好ましい。より好ましくは7/3〜3/7である。複合比が8/2を超えると、熱収縮が大きくなる恐れがある。複合比が2/8未満であると、この繊維を用いて熱接着不織布を製造した場合、十分な不織布強力を有する不織布を得ることができない恐れがある。
【0028】
本発明の熱接着性複合繊維の繊度は、特に限定されず、用途に応じて適宜選択すればよい。例えば、衛生材料、ウェットティッシュ等の低目付の不織布(約10〜80g/m2)を製造する場合であれば、触感のよい不織布が得られるよう熱接着性複合繊維の繊度は、0.5dtex以上、4dtex以下の範囲とすることが好ましい。
【0029】
次に、本発明の熱接着性複合繊維の製造方法について説明する。まず、第一成分として、エチレン(+ブテン)含有量が3.5mol%以上、15mol%以下の範囲であり、融点が120℃以上、140℃以下の範囲であり、MFR(EP)が10≦MFR(EP)(g/10min)≦100の範囲を満たすプロピレン系共重合体を一種または複数種用意する。エチレン、またはエチレンとブテンの含有量が2mol%以下であり、メルトフローレートをMFR(PP)としたとき15≦MFR(PP)(g/10min)≦100の範囲であり、0.4×MFR(EP)≦MFR(PP)≦4×MFR(EP)の範囲を満たすプロピレン系重合体(PP)を一種または複数種用意する。次いで、EP:PPを70:30〜99:1の割合で混合し、必要に応じて他の繊維形成性樹脂あるいは結晶核剤や添加剤とを混合して第一成分の原料樹脂とする。上記樹脂を混合する方法としては、公知の混合方法を用いるとよく、EPの重合調製後に直接混練りしてもよいし、紡糸前に各々の樹脂をヘンシュルミキサーやリボンブレンダーなどでドライブレンドしてもよい。第二成分として、第一成分の融点よりも10℃以上高い融点を有する繊維形成性重合体または共重合体を用意する。
【0030】
前記第一成分および第二成分を公知の溶融紡糸機を用いて溶融紡糸し、繊度1dtex以上、75dtexの範囲の紡糸フィラメントを作製する。例えば、紡糸温度200℃以上、350℃以下の範囲で押し出し、引取速度100m/min以上、1500m/min以下の範囲で溶融紡糸するとよい。第一成分の紡糸温度が200℃未満であると、溶融した樹脂の溶融粘度が高いために糸切れが発生しやすい。第一成分の紡糸温度が350℃を超えると、溶融粘度が低いために紡糸フィラメント同士が融着しやすく、また樹脂の熱分解により紡糸性が低下する。第一成分の好ましい紡糸温度は、230℃以上、300℃以下の範囲である。一方、第二成分としてエチレン、またはエチレンとブテンの含有量が0.5mol%以下からなるプロピレン系重合体を用いた場合、好ましい紡糸温度は、230℃以上、300℃以下の範囲である。
【0031】
前記紡糸フィラメントにおける引取繊度は、1dtex以上、75dtexの範囲であることが好ましい。紡糸フィラメントの引取繊度が1dtex未満であると、糸切れ等が生じて繊維生産性が低下する。紡糸フィラメントの引取繊度が75dtexを超えると、繊度の小さい熱接着性複合繊維を得ることが困難となる。本発明の熱接着性複合繊維で不織布を形成する場合、不織布の風合いを良好なものとするためには、紡糸フィラメントの引取繊度を3dtex以上、20dtex以下の範囲とすることが好ましい。
【0032】
次いで、紡糸フィラメントを公知の延伸処理機を用いて延伸処理して、延伸フィラメントを得る。延伸処理は、延伸温度を30℃以上、95℃以下の範囲とし、延伸倍率を2倍以上、5倍以下の範囲で実施することが好ましい。より好ましい延伸倍率の下限は、2.5倍以上である。より好ましい延伸倍率の上限は、4.5倍以下である。延伸倍率が2倍未満であると、得られる繊維自体にコシがなく、低強度高伸度の繊維となる傾向であり、高速カード通過性に劣る傾向があるだけでなく、不織布強力が低下することがある。延伸倍率が5倍を超えると、プロピレン系共重合体の結晶化が進み、低温での熱接着性が低下する恐れがある。延伸方法は、温水または熱水中で実施する湿式延伸法、または乾式延伸法のいずれであってもよい。
【0033】
本発明の熱接着性複合繊維の製造過程においては、延伸処理の前、延伸処理の間、または延伸処理の後のいずれかの段階で、60℃以上、120℃以下の範囲の温度でアニーリング処理を施すことが好ましい。アニーリング処理は、乾熱、湿熱、または蒸熱を用いて、緊張状態あるいは弛緩状態で実施される。アニーリング処理は、繊維の結晶性を高めて繊維にコシを付与し、不織布製造時の高速カード通過性等の向上に寄与する。また、アニーリング処理の条件によって、不織布の風合いを調整することが可能である。
【0034】
例えば、得られた延伸フィラメントを、ステープル繊維、あるいはエアレイ用短繊維の形態で得ようとする場合、得られた延伸フィラメントには、必要に応じて、所定量の繊維処理剤を付着させ、クリンパー(捲縮付与装置)で捲縮を与える。捲縮付与後のフィラメントに60℃以上、120℃以下の範囲の温度で数秒から約30分間、アニーリング処理を施す。繊維処理剤を付着させた後でアニーリング処理を実施する場合、アニーリング処理温度を80℃以上、115℃以下の範囲とし、処理時間を5分以上として、アニーリング処理を実施すると同時に繊維処理剤を乾燥させることがより好ましい。アニーリング処理の温度を低く設定することにより、不織布強力の高い不織布を得ることができ、アニーリング処理の温度を高く設定することにより、風合いが柔軟な不織布を得ることができる。アニーリング処理終了後、フィラメントは用途等に応じて所定の長さにカットされる。ステープル繊維であれば、30mm以上、100mm以下の範囲であることが好ましい。エアレイ用短繊維であれば、1mm以上、50mm以下の範囲であることが好ましい。このようにして得られる本発明の熱接着性複合繊維は、例えば、本発明の不織布を製造するために用いることができる。
【0035】
続いて、本発明の不織布を、その製造方法とともに説明する。本発明の不織布は、前記熱接着性複合繊維を少なくとも10mass%含有するように繊維ウェブを作製し、繊維ウェブを熱処理し、熱接着性複合繊維の表面の少なくとも一部(すなわち第一成分)を溶融させて繊維間を熱接着させることにより得ることができる。本発明の不織布は、前記熱接着性複合繊維を熱接着成分として使用しており、低温での熱接着性に優れているので、熱接着加工温度の範囲が広く、低温で熱処理を行っても優れた熱接着強力を有している。また、第二成分(芯成分)の融点よりも十分に低い温度で繊維間を熱接着し得るから、第二成分の溶融または軟化に起因する不織布の柔軟性の低下が生じない。さらに、プロピレン系重合体(PP)が混合されているので、柔軟性を維持しつつ、べたつき感のない触感を有し、実用的な強力と柔軟な触感を両立するものである。
【0036】
本発明の不織布には、前記熱接着性複合繊維以外に他の繊維を混綿、積層してもよく、例えば、コットン、シルク、ウール、麻、パルプなどの天然繊維、レーヨン、キュプラなどの再生繊維、アクリル系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系などの合成繊維から1種または複数種の繊維を用途などに応じて選択するとよい。他の繊維として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、あるいはエチレン−ブテン−プロピレン三元共重合体等からなるポリオレフィン系繊維と組み合わせて不織布を製造するのに適しており、特に、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、あるいはエチレン−ブテン−プロピレン三元共重合体等からなるポリプロピレン系繊維と良好に接着する。本発明の不織布を前記熱接着性複合繊維のみで構成してもよいことはいうまでもない。
【0037】
本発明の不織布を製造するに際して、繊維ウェブの形態は特に限定されず、ステープル繊維からなるパラレルウェブ、セミランダムウェブ、ランダムウェブ、クロスウェブ、クリスクロスウェブなどのカードウェブ、短繊維を湿式抄紙した湿式ウェブ、短繊維からなるエアレイウェブ、長繊維からなるスパンボンドウェブ、あるいはメルトブローウェブなどから目的に応じて任意に選択することができる。繊維ウェブは、異なる種類の繊維ウェブを2種類以上積層してもよい。不織布の柔軟性をより重視する場合には、ステープル繊維からなるカードウェブを用いて不織布を製造することが好ましい。また、繊維間を絡合させるために、繊維ウェブには、必要に応じて熱処理前および/または熱処理後にニードルパンチ処理や水流交絡処理等の二次加工を施してもよい。
【0038】
前記繊維ウェブを形成した後、繊維ウェブに公知の熱処理手段により熱処理を施し、熱接着性複合繊維の少なくとも一部を溶融させて熱接着する。熱処理手段としては、熱風吹き付け法および熱圧着法から選ばれた少なくとも1種の熱処理方法を用いることが好ましい。特に、エンボスロールを用いた熱圧着法は、より低温で熱接着でき、また圧接面積が小さいので、不織布の柔軟性を重視する場合には好ましい熱処理手段である。
【0039】
前記熱処理方法における熱処理温度等の熱処理条件は、採用する熱処理方法に応じて適宜設定される。例えば、熱風吹き付け法(エアースルー法)を採用する場合、熱処理温度は、第一成分におけるプロピレン系共重合体(EP)の融点以上であり、第二成分の融点未満、好ましくは第二成分の融点より10℃低い温度以下の範囲に設定するとよい。熱処理温度は、EPの融点未満であると、十分な熱接着強力が得られず、第二成分の融点を超えると、不織布の柔軟性を損なうからである。
【0040】
エンボスロールを用いた熱圧着法(エンボス法)を採用する場合、ロール間の圧力(線圧)は、150N/cm以上、1500N/cm以下の範囲であることが好ましい。線圧が150N/cm未満であると、不織布強力が低下する恐れがある。線圧が1500N/cmを超えると、エンボス部分において穴開き(ピンホール)が発生し、不織布の外観を損なう恐れがある。
【0041】
前記エンボスロールを用いた熱圧着法におけるロール温度(T℃)は、第一成分におけるプロピレン系共重合体(EP)の融点−20(℃)≦T(℃)<第二成分の融点−15(℃)であることが好ましい。より好ましくは、EPの融点−15(℃)≦T(℃)<第二成分の融点−25(℃)の範囲である。ロール温度がEPの融点−20(℃)未満であると、十分な熱接着強力が得られず、第二成分の融点−15(℃)を超えると、不織布の柔軟性を損なうからである。
【0042】
本発明の不織布は、実用的な強力及び柔軟でべたつき感のない触感を有するから、衛生材料、包装材、フィルター、ウェットティッシュ、ワイパー、電池セパレーター、ヒートシール紙等の用途に好適である。
【0043】
【実施例】
以下、本発明の内容について実施例を挙げて具体的に説明する。なお、紡糸時融着、紡糸糸切れ、クリンパー通過性、高速カード通過性、および単繊維強力については、以下のように測定した。
【0044】
[紡糸時融着、紡糸糸切れ]
芯成分(第二成分)の紡糸温度を300℃、鞘成分(第一成分)の紡糸温度を250℃に設定し、ノズル単孔吐出量を0.3g/min、引取速度を500m/min、チムニー冷却風温度を40℃として、約1時間連続紡糸したとき、得られた紡糸フィラメントの融着度合いは、○:融着なし、×:融着あり、と判定し、糸切れの度合いは、○:糸切れなし、×:糸切れあり、と判定した。
【0045】
[クリンパー通過性]
5dtexの紡糸フィラメントを、90℃で3.3倍に延伸し延伸フィラメントを得る。この延伸フィラメントをトータル22万dtexになるように束ね、200Nの張力をかけながら幅30mmのスタファボックス型クリンパーを用い40m/minの速度で、ロール圧力0.1MPa、フラップ圧力0.2MPaにて通過させたときのクリンパーの通過性を下記の3等級で判定した。
1級:クリンパーで詰まりトウが排出しない。
2級:トウの排出はするが詰まり気味で安定しない。
3級:良好にトウが排出する。
【0046】
[高速カード通過性]
原綿をオープナーにて予備開繊し、ラップフォーマーにて順次供給し、カード速度100m/minのローラーカードでウェブを排出したときのネップの発生量を下記の3等級で判定した。
1級:ネップが明らかに多い、あるいは絶えず出ている。
2級:たまにネップが出る。
3級:ネップが認められない。
【0047】
[単繊維強力]
JIS−L−1015に準じ、引張試験機を用いて、試料のつかみ間隔を20mmとしたときの繊維切断時の荷重値を測定し、単繊維強力とした。
【0048】
[実施例1]
第一成分(鞘成分)として、融点が138℃、エチレン含有量が9mol%、MFRが35g/10minのエチレン−プロピレン共重合体(サンアロマー(株)製、PM940M)を95mass%と、融点が165℃、エチレン含有量が0mol%、MFRが45g/10minのポリプロピレン(サンアロマー(株)製、PLA0C)を5mass%とを混合した樹脂を用い、第二成分(芯成分)として、融点165℃、エチレン含有量が0mol%のポリプロピレン(日本ポリケム(株)、SA03A)を用い、同心円状芯鞘複合ノズルを用いて、第一成分/第二成分の複合比(容積比)を5/5、鞘成分の紡糸温度を250℃、芯成分の紡糸温度を300℃として両成分を溶融押し出し、5.6dtexの紡糸フィラメントを得た。前記紡糸フィラメントを90℃の温水中で3.3倍に延伸し、2dtexの延伸フィラメントとした。次いで、延伸フィラメントに繊維処理剤を付与した後、スタフィンボックス型クリンパーを用いて機械的捲縮を付与し、100℃に設定した熱風貫通式乾燥機にてアニーリング処理と同時に乾燥した。得られたフィラメントを45mmの繊維長に切断して、本発明の熱接着性複合繊維を得た。
【0049】
[実施例2]
第一成分に混合するポリプロピレンの含量を10mass%としたこと以外は、実施例1と同様の方法で、本発明の熱接着性複合繊維を得た。
【0050】
[比較例1]
第一成分を実施例1のエチレン−プロピレン共重合体のみ(100mass%)としたこと以外は、実施例1と同様の方法で熱接着性複合繊維を得た。
【0051】
[比較例2]
第一成分を融点が143℃、エチレン含有量が6mol%、MFRが18g/10minのエチレン−プロピレン共重合体(日本ポリケム(株)製、SX02R)のみ(100mass%)としたこと以外は、実施例1と同様の方法で熱接着性複合繊維を得た。
【0052】
[比較例3]
第一成分に混合するポリプロピレンの含量を40mass%としたこと以外は、実施例1と同様の方法で熱接着性複合繊維を得た。
【0053】
[比較例4]
第一成分に混合するポリプロピレンをMFRが10g/10minのポリプロピレン(グランドポリマー(株)製、J705)としたこと以外は、実施例1と同様の方法で熱接着性複合繊維を得た。
【0054】
[比較例5]
第一成分に混合するポリプロピレンをMFRが200g/10minのポリプロピレン(PLA0CをCRし分子量を降下したもの)としたこと以外は、実施例1と同様の方法で熱接着性複合繊維を得た。
【0055】
[比較例6]
第一成分に混合するプロピレン系共重合体を、比較例2のエチレン−プロピレン共重合体としたこと以外は、実施例1と同様の方法で熱接着性複合繊維を得た。
【0056】
実施例1〜2、および比較例1〜6の熱接着性複合繊維を下記の熱処理を施してエアースルー不織布およびエンボス不織布を得た。得られたエアースルー不織布の比容積、引張強力、破断伸度、静摩擦力、およびエンボス不織布のドレープ係数は、以下のように測定した。
【0057】
[エアースルー不織布の作製]
前記熱接着性複合繊維100mass%を準備し、パラレルカードで目付約30g/m2および約50g/m2のカードウェブを作製し、熱風貫通式熱処理機を用い、熱処理温度140℃および145℃に加熱した加熱空気を風速1.5m/min、熱処理時間12秒で、このカードウェブを熱風加工処理し、エアースルー不織布を得た。
【0058】
[エンボス不織布の作製]
前記熱接着性複合繊維100mass%を準備し、パラレルカードで目付約25g/m2のカードウェブを作製し、エンボスパターンが円形であり、エンボス面積が20%であるエンボスロールと、フラットロールとが一対となったエンボス熱圧着処理機を用い、エンボスロール/フラットロール間の線圧を500N/cmとし、エンボスロール/フラットロールの温度をCD引張強力が7.8N/5cmとなるように設定し、このカードウェブをエンボス処理し、エンボス不織布を得た。
【0059】
[不織布の比容積]
前記エアースルー不織布(目付約30g/m2、熱処理温度140℃および145℃)を試料とし、厚み測定機((株)大栄科学精機製作所製、THICKNESS GAUGE モデルCR−60A)を用い、試料1cm2あたり29.4mNの荷重を加えた状態で、不織布の厚みを測定し、不織布の厚みと不織布の目付から比容積を算出した。
【0060】
[不織布の引張強力、破断伸度]
前記エアースルー不織布(目付約30g/m2、熱処理温度140℃、145℃)を試料とし、JIS−L−1096に準じ、幅5cm、長さ15cmの試料片をつかみ間隔10cmで把持し、定速伸長型引張試験機を用いて引張速度30cm/minで伸長し、切断時の荷重値および伸長率をそれぞれ引張強力、破断伸度とした。なお、試料片は不織布の幅方向(CD方向)が試料片の長さ方向になるよう作製した。
【0061】
[不織布の静摩擦力]
前記エアースルー不織布(目付約50g/m2、熱処理温度145℃)を試料とし、JIS−K−7125に準じ、幅80mm、長さ200mmにカットした試料片をガラス板にのせ、その上に200gのおもりをのせ、100mm/minの速度で始動したとき、試料片が動き始める最初の最大荷重「静摩擦力:Fs(N)」を測定し、これを、不織布のべたつき性の判定基準とした。静摩擦力の値が大きいほど不織布にべたつき感があることを示す。
【0062】
[不織布のドレープ係数]
前記エンボス不織布を試料とし、JIS−L−1096−6.19.7法(ドレープ係数)に準じて測定した。ドレープ係数の値が小さいほど不織布が柔軟であることを示す。
【0063】
実施例1〜2、および比較例1〜6の熱接着性複合繊維、ならびこれを用いた不織布の性能を表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
表1に示すように、実施例1〜2の熱接着性複合繊維は、糸切れがなく、繊維間融着も認められず紡糸性に優れていた。クリンパー通過性にも優れ、安定した機械的捲縮を得ることができた。さらに捲縮が安定しており、繊維表面のゴム的性質も軽減されていたので、不織布製造時の高速カード通過性も優れていた。そして、熱処理により得られた不織布は、嵩高であり、良好な低温接着性を示していた。さらに、静摩擦力が小さくべたつき感がなく、ドレープ係数も小さく、柔軟な不織布であった。
【0066】
一方、比較例1の熱接着性複合繊維は、紡糸時に若干の融着が発生していた。また、繊維表面がゴム的性質を有し、単繊維強力が小さく、繊維自体にコシがないため、クリンパー通過性および高速カード通過性が良好とはいえなかった。得られた不織布は、低温での接着性、柔軟性において優れていたが、べたつき感があった。比較例2の熱接着性複合繊維は、EPの融点が高く、低温での接着性が十分ではなかった。比較例3の熱接着性複合繊維は、PPを混合する割合が大きすぎたため、低温での接着性が不十分であった。比較例4の熱接着性複合繊維は、混合ムラのためか糸切れが多発し、紡糸を中止した。比較例5の熱接着性複合繊維は、単繊維強力が小さく、繊維自体のコシが低いため、クリンパー通過性、高速カード通過性は十分なものとはいえず、低温での熱接着性も不十分であった。比較例6の熱接着性複合繊維は、ベース樹脂が融点の高いEPを用いたため、比較例2同様、低温での接着性に劣るものであった。
【0067】
【発明の効果】
本発明の熱接着性複合繊維は、特定のエチレン−プロピレン共重合体またはエチレン−ブテン−プロピレン三元共重合体に、特定のポリプロピレンを所望の量で混合した樹脂を熱接着成分とすることにより、紡糸性、クリンパー通過性などの繊維生産性に優れ、不織布製造時の高速カード通過性など不織布生産性に優れるとともに、広い範囲の温度で熱接着性能を有し、べたつき感のない柔軟な不織布を得るのに好適である。
【0068】
前記熱接着性複合繊維を少なくとも10mass%含有し、該熱接着性複合繊維の少なくとも一部が溶融し、熱接着されている不織布は、高い不織布強力を有するとともに柔軟でべたつき感のない触感を呈するので、衛生材料、包装材、フィルター、ウェットティッシュ、ワイパー、電池セパレーター、ヒートシール紙等に好適である。
Claims (5)
- エチレン、またはエチレンとブテンの含有量が3.5mol%以上、15mol%以下の範囲であり、融点が120℃以上、140℃以下の範囲であり、ASTM−D−1238に準ずるメルトフローレート(温度230℃、荷重21.2N)をMFR(EP)としたとき10≦MFR(EP)(g/10min)≦100の範囲を満たすプロピレン系共重合体(EP)を70mass%以上、99mass%以下の範囲で含有し、
エチレン、またはエチレンとブテンの含有量が2mol%以下であり、メルトフローレートをMFR(PP)としたとき15≦MFR(PP)(g/10min)≦100の範囲であり、0.4×MFR(EP)≦MFR(PP)≦4×MFR(EP)の範囲を満たすプロピレン系重合体(PP)を1mass%以上、30mass%以下の範囲で含有する第一成分と、
第一成分におけるプロピレン系共重合体(EP)の融点より10℃以上高い融点を持つ繊維形成性重合体またはその共重合体からなる第二成分とで構成され、第一成分を鞘成分とし、第二成分を芯成分とした同心円鞘芯型に配置するように複合紡糸されてなる熱接着性複合繊維。 - 第二成分の繊維形成性重合体またはその共重合体がエチレン、またはエチレンとブテンの含有量が0.5mol%以下からなるプロピレン系重合体である請求項1記載の熱接着性複合繊維。
- 請求項1〜2のいずれかに記載の熱接着性複合繊維を少なくとも10mass%含有する繊維ウェブからなり、前記熱接着性複合繊維における第一成分の少なくとも一部を溶融し、熱接着してなる不織布。
- 繊維ウェブがカードウェブである請求項3記載の不織布。
- エチレン、またはエチレンとブテンの含有量が3.5 mol %以上、15 mol %以下の範囲であり、融点が120℃以上、140℃以下の範囲であり、ASTM−D−1238に準ずるメルトフローレート(温度230℃、荷重21.2N)をMFR(EP)としたとき10≦MFR(EP)( g/10min )≦100の範囲を満たすプロピレン系共重合体(EP)を70 mass %以上、99 mass %以下の範囲で含有し、
エチレン、またはエチレンとブテンの含有量が2 mol %以下であり、メルトフローレートをMFR(PP)としたとき15≦MFR(PP)( g/10min )≦100の範囲であり、0.4×MFR(EP)≦MFR(PP)≦4×MFR(EP)の範囲を満たすプロピレン系重合体(PP)を1 mass %以上、30 mass %以下の範囲で含有する第一成分と、
第一成分におけるプロピレン系共重合体(EP)の融点より10℃以上高い融点を持つ繊維形成性重合体またはその共重合体からなる第二成分とで構成され、第一成分を鞘成分とし、第二成分を芯成分とした同心円鞘芯型に配置するように複合紡糸し、延伸し、延伸処理の前、延伸処理の間、または延伸処理の後、いずれかの段階で、80℃以上、120℃以下の範囲の温度でアニーリング処理を施す、熱接着性複合繊維の製造方法。
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