JP3783422B2 - 筒内噴射式エンジンの排気還流制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、筒内噴射式エンジンの排気還流制御装置に関し、特に、吸気通路に吸気絞り弁が配設されているものにおいて、車両の運転者によるアクセルペダルの踏み込みが予測されるときの前記吸気絞り弁の制御の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、この種の筒内噴射式エンジンの排気還流制御装置として、例えば特開昭63−50544号公報に開示されるように、過給機付ディーゼルエンジンにおいて排気中の窒素酸化物(NOx)を減少させるために、排気還流量を調節することによって空気過剰率λを制御するようにしたものが知られている。このものでは、エンジンの吸気及び排気系を連通する排気還流通路の途中にアクチュエータにより作動される排気還流量調節弁(排気ガス循環調節装置)を設け、この弁の開度を制御することにより、排気還流量を調節するようにしている。
【0003】
また、一般に、アイドル運転時等の低速運転状態ではエンジンの吸気負圧が小さくなるので、前記排気還流量調節弁を全開状態にしていても十分な排気還流量を得られないことがあるが、これに対し、特開平9−4519号公報に開示される排気還流制御装置では、通常、スロットル弁等が備わらない小型ディーゼルエンジンの吸気通路に吸気絞り弁を配設し、上述の如き吸気負圧の小さい運転状態で、吸気絞り弁の開度を絞ることにより吸排気系の間の差圧を高めて、十分な排気還流量を得られるようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ディーゼルエンジンは、通常、空燃比がかなりリーン(希薄)な状態で運転されるため、NOxの排出量が多くなることが知られている。これに対し、排気還流量を多くすることによってNOxの排出量を低減できるが、一方、排気還流量を多くすると、そのことによって吸気中の酸素量が減少するため、スモークが発生し易くなる。つまり、空燃比がリッチになると、スモークが発生し易くなる。また、筒内噴射式ガソリンエンジンにおいても、空燃比がリーンな状態で排気還流量を多くすると、スモークが発生し易くなる。
【0005】
そこで、本発明者は空燃比とスモーク量との関係を調べ、その結果、空燃比がある値を越えてリッチになると、スモーク量が急増するという特性を見出した。この特性を考慮すれば、前記NOx低減とスモーク低減とを両立させるためには、スモーク量が急増し始める手前のできるだけリッチ側の空燃比を目標として、排気還流量を制御すればよいことになる。
【0006】
しかしながら、前記従来の排気還流制御装置においては、排気還流通路の途中に設けた排気還流量調節弁により排気還流量を調節するようにしているので、上述の如きできる限りリッチ側の空燃比を目標として、排気還流量を制御すると、車両の加速開始時に空燃比が過度にリッチな状態になってしまい、排気中のスモーク量が急増するという不具合が生じる。すなわち、車両の加速開始時には、運転者によるアクセルペダルの踏み込みに対応して燃料噴射量が増量されるとともに、排気還流量調節弁が閉じ側に作動されて、排気還流量の減少により吸入空気量を増大させるという制御が行われるが、その際、前記排気還流量調節弁の作動遅れによって、空燃比が一時的に目標よりもリッチ側にずれてしまうのである。
【0007】
特に、アイドル運転時を含むエンジンの低速運転状態では、排気還流量の確保のために排気還流量調節弁が全開状態にされており、その状態でアクセルペダルが急に踏み込まれた場合、全開状態の排気還流量調節弁が全閉状態になるまでに時間がかかるので、その間のスモーク量の増大が問題になる。
【0008】
この問題に対し、エンジンが低速運転状態にあるときには、アクセル操作に対応する燃料噴射量の増量を前記排気還流量調節弁の作動遅れに相当する時間、抑制することが考えられるが、そのようにすると、アクセルペダルが踏み込まれた直後の燃料噴射量が不足してしまい、車両の加速性能が損なわれる。
【0009】
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、排気中のNOx及びスモークを両方共に低減させるべく、排気還流量を制御して空燃比を所定の目標値に保つようにした排気還流制御装置において、運転者によるアクセルペダルの踏み込みが予測されるときの吸気絞り弁の制御に工夫を凝らし、アクセル操作に対応する車両の加速性能を良好に維持しつつ、排気中のスモーク量の低減を図ることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明は、例えば車両の走行中に運転者がアクセルペダルを離したとき等のアクセル戻し状態で、吸気絞り弁を閉じ側に作動させるようにした。
【0011】
具体的には、請求項1記載の発明では、図1に示すように、エンジン1の気筒2内の燃焼室4に燃料を直接噴射する燃料噴射弁5と、前記燃焼室4への吸気通路10に配設された吸気絞り弁14と、該吸気絞り弁14よりも下流の吸気通路10に排気の一部を還流させる排気還流通路23と、該排気還流通路23における排気還流量を調節する排気還流量調節弁24と、前記吸気通路10における吸入空気量を計測するセンサ11と、アクセル操作量に応じて前記燃料噴射弁5による燃料噴射量を制御する燃料噴射制御手段35aと、前記吸入空気量及び燃料噴射量に基づいて、空燃比が所定の目標値になるように前記排気還流量調節弁24の開度を制御する排気還流制御手段35bとを備えた筒内噴射式エンジンの排気還流制御装置Aを前提とする。そして、アクセル操作量が所定以上、減少したアクセル戻し状態を判定するアクセル戻し状態判定手段35eと、前記アクセル戻し状態が判定されたとき、前記吸気絞り弁24を閉じ側に作動させる吸気絞り弁制御手段35dと、前記アクセル戻し状態が判定されたときから、その後の再加速時のアクセル踏み込みに対応する設定時間が経過するまでの間、前記排気還流制御手段による排気還流量調節弁の制御ゲインを増大補正するゲイン増大補正手段と、を設け、その上で、前記排気還流制御手段35bは、アクセル操作量が所定以上、大きく変化した加速運転状態で前記排気還流量調節弁24を閉じ側に作動させるとともに、前記アクセル戻し状態が判定されたときにも排気還流量調節弁24を閉じ側に作動させるように構成する。
【0012】
この構成によれば、車両の走行中に運転者が何らかの理由でアクセルペダルを離したとき、アクセル操作量の減少に伴い、アクセル戻し状態判定手段35eによりアクセル戻し状態が判定される。そして、吸気絞り弁24が吸気絞り弁制御手段35dにより閉じ側に作動されて、そのことによる吸入空気量の減少に対応して、排気還流制御手段35bにより排気還流量調節弁24の開度が小さくされる(即ち、排気還流量調節弁24が閉じ側に作動される)。従って、運転者が一旦、離したアクセルペダルを再び踏み込んだとき、このアクセル操作量の増大に対応して、燃料噴射制御手段35aにより燃料噴射量が増量されるとともに、前記排気還流制御手段35bにより排気還流量調節弁24が閉じ側に作動されるが、その際、該排気還流量調節弁24の開度が既に小さくされているので、その分、排気還流量が早く減少して、吸入空気量が速やかに増大する。
【0013】
つまり、前記アクセル戻し状態では運転者によるアクセルペダルの踏み込みが予測されるので、これに対応して排気還流量調節弁24を閉じ側に作動させることで、その後、アクセルペダルが踏み込まれたとき、燃料噴射量を抑制することなく、排気還流量調節弁24の閉作動の遅れを低減することができ、よって、車両の加速性能を良好に維持しつつ、排気中のスモーク量を低減できる。
【0014】
しかも、前記のように運転者によるアクセル操作量が急変するような状況では、その変化に遅れないように制御の応答性を高めることを優先し、アクセル戻し状態が判定されたときから設定時間が経過するまでの間、排気還流制御手段による排気還流量調節弁の制御ゲインが増大補正される。そのことによって、排気還流量調節弁の作動の応答性を高めることができる。尚、前記設定時間を比較的短い時間(例えば、1〜2秒)とすれば、その間の制御の収束性の悪化は問題にならない。
【0015】
請求項2記載の発明では、請求項1記載の発明におけるアクセル戻し状態は、車両の加速運転時におけるマニュアルトランスミッションの変速操作に伴うものであり、設定時間は、前記マニュアルトランスミッションの変速操作が終了して、アクセル戻し状態でなくなるまでの期間を含むように設定されているものとする。
【0016】
このことで、変速操作に伴うアクセル戻し状態において排気還流量調節弁の開度を小さくさせておくことで、変速操作を終了して加速運転状態に移行したときのエンジンのもたつきを低減でき、しかも、制御ゲインの増大補正により排気還流量調節弁の作動の応答性が高められているので、前記のもたつきを事実上、解消できる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基いて説明する。
【0018】
(全体構成)
図1は、本発明の実施形態の全体構成を示し、1は4つの気筒2(1つのみ図示する)を有する直列4気筒ディーゼルエンジンであって、このエンジン1はマニュアルトランスミッションを装備した車両に搭載されている。前記各気筒内にはピストン3が往復動可能に嵌装されていて、このピストン3により各気筒2内に燃焼室4が区画されており、この燃焼室4の上面の略中央部に、電磁弁からなるインジェクタ(燃料噴射弁)5が設けられている。その各インジェクタ5は高圧の燃料を蓄える共通のコモンレール(蓄圧室)6に接続されていて、各気筒毎の所定の噴射タイミングで開閉作動されて、燃焼室4に直接燃料を噴射するようになっている。
【0019】
前記コモンレール6には、その内部の燃圧(コモンレール圧)を検出する圧力センサ6aが配設されているとともに、クランク軸7により駆動される高圧供給ポンプ8が接続されており、該高圧供給ポンプ8は圧力センサ6aにより検出されるコモンレール6内の燃圧が所定値(例えば、アイドル運転時に40MPa、それ以外の運転状態では80MPa以上)に保持されるように作動する。さらに、前記クランク軸7の端部には、該クランク軸7の回転角度を検出するクランク角センサ9が設けられている。このクランク角センサ9は電磁ピックアップ等からなり、前記クランク軸7の端部に設けた被検出用プレート(図示せず)の外周に対応する箇所に配置されていて、その外周部に突設された突起部の通過に対応してパルス信号を出力する。
【0020】
また、10は前記エンジン1の各気筒2に吸入空気(吸気)を供給する吸気通路であり、この吸気通路10の下流端部は図示しないサージタンクを介して気筒毎に分岐していて、それぞれ図示しない吸気ポートにより各気筒2の燃焼室4に接続されている。また、そのサージタンクには、各気筒2に過給される過給圧力が検出できる吸気圧力センサ10aが設けられている。一方、吸気通路10の上流端部は図示しないエアクリーナに接続され、その下流には上流側から順に、吸気流量を計測するエアフローセンサ11と、後述のタービン21により駆動されて吸気を圧縮するブロワ12と、このブロワ12により圧縮した吸気を冷却するインタークーラ13と、通路断面積を絞る吸気絞り弁14とが設けられている。この吸気絞り弁14は、全閉状態でも吸気が流通可能なように切り欠きが設けられたバタフライバルブからなり、後述のEGR弁24と同様、ダイヤフラム15に作用する負圧の大きさが負圧制御用の電磁弁16により調節されることで、弁の開度が調節されるものである。
【0021】
前記エアフローセンサ11は、流速変動があっても空気流量を確実にとらえることのできる定温度型ホットフィルム式エアフローセンサであり、図示しないが、吸気通路10に吸気流れ方向と直交するように配されたヒータと、このヒータを挟んで上流側と下流側とに配置されたホットフィルムとを備えていて、両ホットフィルムの温度の高低に基づいて、吸気通路10を下流側(各気筒2の側)に向かう正方向流及び上流側に向かう逆流をそれぞれ検出するものである。このエアフローセンサ11による計測値に基づいて、正方向の空気流量のみを計測することができ、排気還流量の制御に逆流による誤差が入ることを避けることができる。尚、前記エアフローセンサ11の代わりに、吸気通路10の吸気管圧力を検出するセンサを採用してもよい。
【0022】
前記図1において、20は各気筒2の燃焼室4から排ガスを排出する排気通路であり、この排気通路20の上流端部は分岐してそれぞれ図示しない排気ポートにより各気筒2の燃焼室4に接続されていて、その下流には順に、排ガスにより回転されるタービン21と、排ガス中のHC、CO及びNOx並びにパティキュレートを浄化するいわゆる4ウエィ触媒を有する触媒コンバータ22とが配設されている。
【0023】
前記タービン21及びブロワ12からなるターボ過給機25は、エンジン1の加速運転時や高負荷運転時等に十分な過給を行なうためのものであり、図2に示すように、タービン21を収容するタービン室21aに該タービン21aの全周を囲むように複数のフラップ21b,21b,…が設けられ、その各フラップ21bが排気流路のノズル断面積Aを変化させるように回動可能なVGT(バリアブルジオメトリーターボ)である。このVGTでは、同図(a)に示すように、フラップ21b,21b,…をその先端がタービン21に対し周方向を向くように位置付け、ノズル断面積Aを小さくしていわゆるA/Rを小さくすると、排気流量が少ないエンジン1の低回転域では過給効率が高くなり、反対に同図(b)に示すように、フラップ21b,21b,…をその先端がタービン21の中心に向くように位置付けて、ノズル断面積Aを大きくしてA/Rを大きくすると、同じく排気流量が少ないエンジン1の低回転域では過給効率が低くなる。
【0024】
また、前記排気通路20は、タービン21と触媒コンバータ22との間で、排ガスの一部を吸気側に還流させる排気還流通路(以下EGR通路という)23の上流端に分岐接続されている。このEGR通路23の下流端は吸気通路10におけるインタークーラ13の下流側に接続され、その途中には、開度調節可能な負圧作動式の排気還流量調節弁(以下EGR弁という)24が配置されていて、排気通路20の排ガスの一部をEGR弁24により流量調節しながら吸気通路10に還流させるようになっている。
【0025】
前記EGR弁24は、図3に示すように、弁箱を仕切るダイヤフラム24aに弁棒24bが固定され、この弁棒24bの両端にEGR通路23の開度をリニアに調節する弁本体24cとリフトセンサ26とが設けられている。前記弁本体24cはスプリング24dによって閉方向(図の下方)に付勢されている一方、弁箱の負圧室(ダイヤフラム24aよりも上側の室)には負圧通路27が接続されている。この負圧通路27は、負圧制御用の電磁弁28を介してバキュームポンプ(負圧源)29に接続されており、電磁弁28が後述のECU35からの制御信号(電流)によって負圧通路27を連通・遮断することによって、負圧室のEGR弁駆動負圧が調節され、それによって、弁本体24cによりEGR通路23の開度がリニアに調節されるようになっている。
【0026】
つまり、図4(a)に示すように、電流が大きくなるに従ってEGR弁駆動負圧が大きく(圧力が低く)なり、そのEGR弁駆動負圧に比例して、同図(b)に示すようにEGR弁本体24cのリフト量が変化する。但し、EGR弁本体24cのリフト量の変化にはヒステリシスが見られる。
【0027】
尚、前記びターボ過給機25のフラップ21b,21b,…にもEGR弁24と同様にダイヤフラム30が取り付けられていて、負圧制御用の電磁弁31によりダイヤフラム30に作用する負圧が調節されることで、前記フラップ21b,21b,…の作動量が調節されるようになっている。
【0028】
前記各インジェクタ5、高圧供給ポンプ8、吸気絞り弁14、EGR弁24、ターボ過給機25のフラップ21b,21b,…等はコントロールユニット(Electronic Contorol Unit:以下ECUという)35からの制御信号によって作動するように構成されている。このECU35には、前記圧力センサ6aからの信号出力と、クランク角センサ9からの出力信号と、エアフローセンサ11からの出力信号と、EGR弁24のリフトセンサ26からの出力信号と、車両の運転者による図示しないアクセルペダルの操作量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ32からの出力信号とが少なくとも入力されている。
【0029】
(制御システムの全体構成)
前記ECU35におけるエンジン制御の基本的な処理の概要は図5のブロック図に示されており、インジェクタ5の作動による燃料噴射制御及びEGR弁24の作動による排気還流制御(EGR弁制御)が行われ、これに加えて、高圧供給ポンプ8の作動によるコモンレール圧力、即ち燃量噴射圧の制御と、吸気絞り弁14の作動制御と、ターボ過給機25のフラップ21b,21b,…の作動制御(VGT制御)とが行われる。
【0030】
1)排気還流及び燃料噴射制御の概要
排気還流及び燃料噴射制御は、アクセル開度に基づいて基本となる燃料噴射量を決定するとともに、EGR弁24の作動によりEGR率を調節して、各気筒の空燃比を均一かつ高精度に制御するものである。このEGR率は全排気量中の還流される排ガス量(EGR量)の割合をいう。
【0031】
EGR率=EGR量/全排気量
ここで、EGR通路23から吸気通路10に還流される排ガスの各気筒への分配性はそれぞれ異なり、加えて各気筒2毎の空気吸入特性自体にもばらつきがあるので、EGR通路23におけるEGR弁24の開度を同じにしても、各気筒2におけるEGR率及び吸入空気量偏差にばらつきを生じ、EGR率の高い気筒ではその吸入空気量が少なく、EGR率の低い気筒ではその吸入空気量が多くなる。そこで、基本的には全気筒に共通の目標空燃比を定め、各気筒2毎に吸入空気量を検出して、この吸入空気量に応じて前記目標空燃比となるように気筒毎に排気還流量を制御する。つまり、各気筒2の吸入空気量に対するEGR量の割合の均一化を図るのではなく、所定の空燃比を目標として気筒毎に排気還流量を制御することで、各気筒2の空燃比を均一かつ高精度に制御している。
【0032】
具体的に、前記ECU35には、アクセル開度accel及びエンジン回転数Neの変化における、実験的に決定された最適な目標トルクtrqsolを記録した二次元マップ36と、エンジン回転数Ne、目標トルクtrqsol及び新気量(吸入空気量のことであり燃料を含まない。以下、同じ。)FAirの変化における、実験的に決定された最適な目標燃料噴射量Fsolを記録した三次元マップ37と、エンジン回転数Neと目標トルクtrqsolの変化における、実験的に決定された最適な目標空燃比A/Fsolを記録した二次元マップ38とがそれぞれメモリ上に電子的に格納されている。
【0033】
前記目標空燃比A/FsolがNOxの低減とスモークの低減とを両立させるための排気還流量を決定する基準となるものである。すなわち、図6にディーゼルエンジンの空燃比と排気中のNOx量との関係を例示するように、空燃比が上昇するとNOx量が増大する傾向があるので、排気還流量を多くして空燃比を下げれば(リッチ側にする)NOxの発生を少なくできる。
【0034】
しかし、図7に例示すように、同じエンジンの空燃比と排気中のスモーク値との関係に依れば、空燃比がリッチ側に変化してある空燃比以下になると、スモーク量が急に増大することが分かる。このことから、排気還流量を多くするにも限界があり、排気中のNOx量の低減とスモーク量の増大抑制との両立を図るには、目標とする空燃比をNOxの低減が図れるようにできるだけリッチ側に、かつスモーク量が急増し始める手前の値に定め、これを目標として排気還流量を制御する必要がある、ということができる。
【0035】
2)排気還流制御
そこで、この実施形態における排気還流制御では、まず、アクセル開度センサ32により検出されたアクセル開度accelとクランク角センサ9により検出されたエンジン回転数Neとを用いて、目標トルク演算部41において前記メモリ上の二次元マップ36を参照して目標トルクtrqsolを決定する。この目標トルクtrqsolと、エアフローセンサ11によって計測された新気量FAirとエンジン回転数Neとを用いて、目標噴射量演算部42において前記メモリ上の三次元マップ37を参照して目標噴射量Fsolを決定する。一方、前記目標トルクtrqsolとエンジン回転数Neとを用いて、目標空燃比演算部43において前記メモリ上の二次元マップ38を参照して前記両立を図るための目標空燃比A/Fsolを決定する。
【0036】
そして、前記目標噴射量Fsolと目標空燃比A/Fsolとを用いて、目標新気量演算部44において目標新気量FAsolを算出し(FAsol=Fsol×A/Fsol)、この目標新気量FAsolを目標として、新気量制御部45において新気量FAirのフィードバック制御を行う。この制御は新気供給量自体を直接調節するのではなく、排気還流量を調節することによって新気量を変化させるというものであり、つまり、新気の補正量を決定するのではなく、目標とするEGR弁24の操作量EGRsolを決定し、そのEGR弁24の目標操作量EGRsolに基づいて、EGR弁制御を実行する。尚、前記目標新気量演算部44及び新気量制御部45が排気還流手段35bに対応している。
【0037】
3)燃料噴射制御
また、ECU35には、目標トルクtrqsol及びエンジン回転数Neの変化における、実験的に決定された最適なコモンレール圧力CRPsolを記録した二次元マップ50がメモリ上に電子的に格納して備えられており、前記目標トルク演算部41において得られた目標トルクtrqsolとエンジン回転数Neとを用いて、コモンレール圧力演算部46において当該マップ50を参照して目標コモンレール圧力CRPsolを演算し、これを用いてコモンレール圧力を制御する。そして、この制御されたコモンレール圧力CRPと、前記目標噴射量演算部42において決定された目標噴射量Fsolとに基づいて、各インジェクタ5の励磁時間を決定し、それぞれ制御するようにしている。尚、前記目標噴射量演算部42が燃料噴射制御手段35aに対応している。
【0038】
4)吸気絞り弁制御
ECU35には、目標燃料噴射量Fsol及びエンジン回転数Neの変化における、実験的に決定された最適な目標吸気絞り量THsolを記録した二次元マップ51をメモリ上に電子的に格納して備えており、前記目標噴射量演算部42において得られた目標噴射量Fsolとエンジン回転数Neとを用いて、目標吸気絞り量演算部47において当該マップ51を参照して目標吸気絞り量THsolを演算し、これを用いて吸気絞り弁14の開度を制御する。尚、前記目標吸気絞り量演算部47が吸気絞り弁制御手段手段35dに対応している。
【0039】
5)VGT制御
ECU35には、目標トルクtrqsol及びエンジン回転数Neの変化における、実験的に決定された最適な目標過給圧力Boostsolを記録した二次元マップ52をメモリ上に電子的に格納して備えており、前記目標トルク演算部41において得られた目標トルクtrqsolとエンジン回転数Neとを用いて、目標過給圧力演算部48において当該マップ52を参照して目標過給圧力Boostsolを演算する。そして、この目標過給圧力Boostsolと吸気圧力センサ10aにより検出された吸気絞り弁14下流の吸気通路10の吸気圧力Boostとを用いて、過給圧力制御部49において、吸気圧力Boostが目標過給圧力Boostsolになるようなターボ過給機25のフラップ21b,21b,…の開度(作動制御量)VGTsolを演算し、これを用いてフラップ21b,21b,…を適正な開度になるように制御する。
【0040】
(排気還流及び燃料噴射制御の全体の流れ)
次に、前記ECU35による基本的な排気還流及び燃料噴射制御の流れを図8により説明する。この制御はメモリ上に電子的に格納された制御プログラムに従い、エンジン1の回転に同期して実行される。
【0041】
まず、同図のステップS1〜S3に示すように、エアフローセンサ11によって検出される吸入空気量及びクランク角センサ9によって検出されるクランク角度に基づいて、気筒毎に吸入空気量FAirが求められる。また、クランク角センサ9によって検出されるエンジン回転数Ne、アクセル開度センサ32によって検出されるアクセル開度accel及び前記吸入空気量FAirに基づいて目標燃料噴射量Fsolが求められる(ステップS4〜S6)。
【0042】
アクセル開度accel、エンジン回転数Ne等に基づいてエンジン1が低負荷ないし中負荷の定常運転状態にあるか、或いは加速運転状態にあるかの過渡判定が行なわれ(ステップS7)、定常運転時には基本目標空燃比が設定され、それに基づいて目標吸入空気量が求められて、EGR弁基本制御が行なわれ、さらに、この基本制御が気筒毎の吸入空気量FAirに基づく気筒毎のEGR弁制御によって補正される(ステップS8〜S11)。一方、加速運転時には加速時の目標空燃比が設定され、加速時のEGR弁制御及び噴射量制御が行なわれる(ステップS12〜S14)。
【0043】
(気筒毎の吸入空気流量の検出及び吸入空気量の算出)
前記エアフローセンサ11により検出された吸入空気流量の例は、図9に示すようになる。同図の斜線を入れた部分が吸気の逆流分であり、この逆流分を差し引いた積分値、即ち実際に各気筒2に吸入された吸入空気量が僅かながら変動していることが見てとれる。
【0044】
図10に前記エアフローセンサ11を用いた気筒毎の吸入空気量の算出(図8のステップS1〜S3)の具体的な制御手順を示す。吸入空気流量を積分していくとともに、経過時間を計測していき、クランク角度が180度に達する都度、その180度分の吸入空気流量の積分値Qを当該気筒(i)の吸入空気量Qiとし、その所要時間(クランクタイマ時間T)を当該気筒(i)のクランク間隔Tiとし、得られた4気筒の吸入空気量Qiの平均値を基本吸入空気量Qavとして求める(ステップA1〜A7)。尚、4気筒の各々には便宜上、気筒番号「0,1,2,3」を与えている。
【0045】
また、吸気行程の時期が1つの前の気筒(i-1) を基準とする、当該気筒(i)の吸入空気量の変化率ΔQi=Qi/Qi-1 とクランク間隔の変化率ΔTi=Ti/Ti-1 を求め、吸気行程の時間を加味した吸入空気量の変化指数ΔQti=ΔQi/ΔTiを求める(ステップA8〜A10)。ここで、ΔTiを考慮するのは、トルク変動(クランク軸7の角速度変動)による外乱をできるだけ排除するためであり、この処理は特にトルク変動の大きなアイドル運転時に効を奏する。そして、この変化指数ΔQtiに基づいて各気筒2の吸入空気量特性ΔQt'(i)を次式により求める(ステップA11)。
【0046】
ΔQt'(i)=ΔQti×r+ΔQti´(1−r)
但し、0<r≦1
すなわち、ΔQti´は変化指数ΔQtiの前回値であり、今回の変化指数ΔQtiに前回値を所定の割合で反映させるものである。これにより、吸入空気量に関する気筒間の固体差が徐々に明瞭になっていく。
【0047】
(過渡判定)
図11に過渡判定(図8のステップS4〜S7)の具体的な制御手順を示す。この過渡判定は加速判定であり、アクセル開度の変化による判定と、燃料噴射量の変化による判定とがある。エンジン1の加速運転時には、燃料噴射量の増大に応じて吸入空気量を増やす必要があり、そのためには、EGR弁24を速やかに閉じ側に作動させて、排気還流量を減らす必要がある。このような排気還流量の低減制御を行なうための過渡判定である。
【0048】
すなわち、アクセル開度Accとエンジン回転数Neと吸入空気量Qavとを用いて、図5の三次元マップ37より燃料噴射量F(=目標噴射量Fsol)を読み込むとともに、アクセル開度の今回値Acc と前回値Acc'とに基づいてその変化量ΔAcc=Acc−Acc'を求める(ステップB1〜B3)。燃料噴射量Fとエンジン回転数Neとを用いて二次元マップから加速判定基準αccを読み込む(ステップB4)。
【0049】
このαccは、前記アクセル開度変化量ΔAccに基づいて加速判定をするためのものであり、例えばエンジン回転数Neが高いほど大きくなって加速が判定され難くなる一方、燃料噴射量Fが多いほど小さくなって加速が判定され易くなるというように、燃料噴射量Fとエンジン回転数Neの変化における最適な値が実験的に決定されて、メモリ上に電子的に格納されている。低負荷運転時はもともと排気還流量が多いため、アクセル開度の増大変化(燃料噴射量の増大変化)が大きいときに、排気還流量の低減制御に速やかに移行することができるように、燃料噴射量が多いほど前記αccを小さくしている。
【0050】
そして、加速係数α=ΔAcc/αccが1よりも大のときにエンジン1が加速運転状態にあると判定され、加速係数αと別途、求められた目標空燃比TA/Fとに基づいて過渡時のEGR弁操作量KTegrをマップより読み込む(ステップB5〜B7)。すなわち、アクセル開度の増大変化が大きい場合には、排気還流によるNOxの低減よりも運転者の加速要求を優先させるために、排気還流量を速やかに減らすようにしており、そのために、EGR弁操作量KTegrのマップは、加速係数αが大きくなるほどEGR弁24の開度が小さくなるようにその操作量が実験的に求められて作成され、メモリ上に電子的に格納されている。
【0051】
前記アクセル開度による加速判定のときは、その判定に基づいて言わば見込みでEGR弁操作量を決定するものであるが、次の燃料噴射量に基づく過渡判定は実際の加速要求を燃料噴射量に基づいてチェックし、その加速要求に合致した燃料噴射制御を行なうためのものである。
【0052】
すなわち、燃料噴射量の今回値Fと前回値F´とに基づいてその変化率ΔF=F/F´が求められ、燃料噴射量Fとエンジン回転数Neとを用いて二次元マップから加速判定基準Fk を読み込む(ステップB8,B9)。このFk も前記αccと同様に設定されてメモリ上に電子的に格納されている。そして、噴射量変化係数β=ΔF/Fk が1よりも大のときに加速時の制御がなされ、小のときには定常時の制御がなされる(ステップB10,B11)。
【0053】
(定常時の制御)
定常時の制御は図12に示されており、エンジン回転数Neとアクセル開度Accとを用いて図5の二次元マップ36より目標トルクTtrq(=Trqsol)を読み込み、このTtrqとNeとを用いて二次元マップ38より目標空燃比TA/Fを読み込んで、目標吸入空気量TQ=TA/F×Fが求められる(ステップC1〜C3)。そして、吸入空気量偏差Qerr=TQ−Qavが求められ、この偏差Qerrが零になるようにPID制御則に従って基本EGR弁操作量Tegrを求める(ステップC4,C5)。
【0054】
すなわち、例えば、前記偏差Qerrに比例制御動作の制御ゲイン(Pゲイン)を積算した比例制御項と、前記偏差Qerrの積分値に積分制御動作の制御ゲイン(Iゲイン)を積算した積分制御項と、前記偏差Qerrの微分値に微分制御動作の制御ゲイン(Dゲイン)を積算した微分制御項とを合算して、基本EGR弁操作量Tegrを決定する。ここで、前記P,I,Dの各制御ゲインはそれぞれ基本値にゲイン係数Kを乗算して得られるもので、後述の如く、ゲイン係数Kが減少又は増大補正されることで、制御の応答性や収束性が変えられるようになっている。
【0055】
上述のNOx低減とスモーク低減との両立が図れる空燃比はエンジン回転数Ne及びエンジントルクTtrq(換言すれば、燃料噴射量F)に応じて少しずつ異なる。特に、ターボ過給機25により十分な過給が行なわれる運転領域では、燃焼室での空気と燃料との予混合が良好になり、燃料の燃え残りが少なくなる(スモークが少なくなる)ので、高回転側の過給領域と低回転側の非過給領域とでは前者の方が目標空燃比をよりリッチ側に設定することが可能になり、そのことはNOxの低減にも有利に働く。
【0056】
そこで、アクセル開度変化量ΔAcc の絶対値が所定閾値Thacc よりも小さい状態が所定数nサイクル連続し且つ燃料噴射が行なわれている、という定常判定のための条件をチェックする(ステップC6)。これは、このフローの制御はアイドル運転時及びその後の定常運転時におけるエミッションの向上を目的とするからである。尚、車両の減速時におけるフューエルカット領域(F=0)では、EGR弁24の開度は零とされ、排気還流は行なわれない。
【0057】
そして、定常運転が確認されると、先に求めた吸入空気量特性ΔQt'(i)とEGR補正ゲインE(i)とによって気筒毎のEGR弁補正操作量ΔTegr(i)が求められる(ステップC7)。すなわち、
ΔTegr(i)=ΔQt'(i)×E(i)+ΔTegr'(i)
但し、ΔTegr'(i)は当該気筒iのEGR弁補正操作量の前回値である。
【0058】
この積分は、ΔQt'(i)の値自体は強調されたものであるが、EGR弁補正操作量をさらに気筒間の固体差に応じた適切な補正量に到達させるためのものである。
【0059】
そして、4気筒すべてのEGR弁補正操作量が求められると、この4気筒のEGR弁補正操作量の平均値ΔTegr-avが求められる。この平均値は本来は零になるべきものであるが、前記ステップC7の処理を行なうと、種々の要因でその平均値がマイナスになったりプラスになったりして、基本EGR弁操作量Tegr を基準として各気筒2のEGR弁操作量を補正制御するという本来の目的が損なわれる。そこで、当該平均値にマイナスが出たらその絶対値を前記各気筒2のΔTegr(i)に加算し、プラスが出たら逆に減算することによって、平均値を常に零にする処理を毎回行なう(ステップC8,C9)。このようにして得られたΔTegr(i)を前記基本EGR弁操作量Tegrに加えて、各気筒2のEGR弁操作量Tegr(i)を求める(ステップC10)。
【0060】
(加速係数αに基づく加速判定時の制御)
一方、図11のステップB6において加速判定がなされたときに、ステップB7で求められる過渡時の目標EGR弁操作量KTegrは、加速係数α及びTA/Fの大きさに応じて異なり、加速係数αが大きいときにはEGR弁24の開度は零になる。よって、その場合は、排気還流が行なわれないことにより各気筒2の吸入空気量が増大するので、燃料噴射量が増大しても、スモーク量の増大を招くことなくエンジン出力を高めることができる。加えて、その場合にはEGR弁24に対しプリセットを与える制御を行ない、その後の排気還流制御に速やかに移行することができるようにする。
【0061】
すなわち、EGR弁24は、排気還流制御中においてEGR通路23を閉じたときでも、弁本体24cがスプリング24dによって弁座に押圧される力が小さくなるように、ひいては押圧力が零となるように、所定のEGR弁駆動負圧(プリセット負圧)を負圧室に及ぼすことによって、スプリング24dによる閉方向の押圧力とEGR弁駆動負圧とを釣り合わせるようにしている。このプリセット負圧は、図4(b)に示すように、EGR弁24を閉方向に制御しEGR弁リフト量が零に到達した時点のEGR弁駆動負圧である。
【0062】
具体的に、EGR弁24にプリセット負圧を与えるための制御フローが図13に示されている。すなわち、EGR弁操作量Tegr が、EGR弁リフト量が零となる操作量であるときは、リフトセンサ26の値EGRVliFtを読み込む(ステップD1,D2)。このEGRVliFtがEGR弁リフト量零EGRV0よりも大きいときは、EGRV0となるまでEGR弁制御を行なう(ステップD3,D4)。つまり、前記EGR弁駆動負圧をプリセット負圧EGRV0になるまで低下させる。排気還流のためにEGR弁操作量Tegrがプリセットが零とならない操作量であるときは、通常のEGR弁制御が行なわれる(ステップD1→D4)。
【0063】
このようなEGR弁24のプリセット制御によれば、エンジン1が定常運転状態から加速運転状態に移行したときに、一旦、排気還流量を零にし、その後、再び定常運転状態に移行して排気還流を再開するとき、EGR弁24にはプリセット負圧が作用しているから、EGR弁24はTegrの増大に応じて応答遅れをほとんど生ずることなく速やかに開作動される。
【0064】
(噴射量変化係数βに基づく加速判定時の制御)
また、図11のステップB11において加速判定がなされたときには、図14の各ステップに示すような制御が行われる。すなわち、まず、エンジン1の加速運転状態が判定されたとき、噴射量変化係数β、燃料噴射量F及びエンジン回転数Neを用いて、これらの変化における最適な過渡時目標空燃比KTA/Fを記録した三次元マップを参照して、KTA/Fを読み込む(ステップG1)。この過渡時目標空燃比KTA/Fは、排気還流量を低下させることによって、スモークの発生を抑えながら速やかにエンジン出力を高めることができるように、定常時の目標空燃比TA/Fよりもリーン側に設定されている。前記三次元マップは、燃料噴射量Fに応じて低負荷側ほど、また噴射量変化係数βが大きいほど、さらにはエンジン回転数Neが低いほどそれぞれリーン側になるように、それぞれの変化における最適なKTA/Fの値を実験的に求めてメモリ上に電子的に格納したものである。
【0065】
そして、得られた過渡時目標空燃比KTA/Fと燃料噴射量Fとに基づいて過渡時の目標吸入空気量TQが算出され(ステップG2)、このTQに基づいて、先の定常運転時と同様にEGR弁操作量が決定されて、排気還流量の速やかな低減制御により吸入空気量が増大される(以下のステップG5に続く図12のステップC4〜C6,図13のステップD1〜D4)。
【0066】
このように、過渡時目標空燃比KTA/Fが定常時よりもリーン側に設定されていても、例えば、運転者が車両を急発進させるためにアクセルペダルを特に大きく踏み込んだとき(アクセル操作量が所定以上、急増したとき)には、各気筒2の燃焼室4に余剰の燃料が噴射され、その余剰燃料が殆ど燃焼されずに排出されて、スモーク量の著しい増大を招くことがある。そこで、このフローでは、燃料の増量を一時的に抑制すべくその増量に一定の制限を与えるようにしている。すなわち、まず、燃料噴射量Fとエンジン回転数Neのマップより限界空燃比LimitA/Fを読み込む(ステップG3)。この限界空燃比LimitA/Fは、スモークの発生を抑えるためのものであり、且つその限界スモーク量は定常時の限界スモーク量よりも多くしている。例えば2BU程度のスモーク量となるようにするものであり、この程度であれば、エンジンの出力トルクの増大に支障はない。
【0067】
前記定常時の目標空燃比TA/F、過渡時の目標空燃比KTA/F及び限界空燃比LimitA/Fの関係は図15に示す通りであり、定常時の目標空燃比TA/Fよりもリーン側に過渡時の目標空燃比KTA/Fが設定され、定常時の目標空燃比TA/Fよりもリッチ側に限界空燃比LimitA/Fが設定されている。この限界空燃比LimitA/Fは、基本的には燃料噴射量が多いほどリーン側に、また、エンジン回転数が高いほどリッチ側に設定することができ、燃料噴射量Fとエンジン回転数Neの変化における、実験的に求めた最適な値をメモリ上に電子的に記録している。
【0068】
得られた限界空燃比LimitA/Fと現在の吸入空気量Q(i)とに基づいて燃料噴射量のリミット値FLimitが算出され、基本噴射量F、リミット値FLimit及び最大噴射量Fmaxのうちの最も少ない値が目標噴射量TFとして設定される(ステップG4,G5)。基本噴射量Fは、エンジン回転数Neとアクセル開度Accとによって定まる燃料噴射量であり、最大噴射量Fmaxはエンジン1の破壊を招かない燃料噴射量の上限値である。このような燃料噴射量の設定により、車両の急加速時に排気還流量が低下していても空燃比の過度のリッチ化を抑えることができ、運転者の加速要求を満たしつつ、スモーク量の著しい増大を防止できる。
【0069】
前記ステップG3〜G5の各ステップが、アクセル操作量が所定以上、急増したとき、該アクセル操作量の増加に対応する燃料噴射量の増量を抑制する燃料増量抑制手段に対応している。
【0070】
また、前記のβによる加速判定時には、燃料噴射時期を燃料噴射量の増大に応じて漸次進角させ、MBT(Minimum advance for Best Torque)よりもかなり遅角した位置に設定されている定常時の噴射時期よりも前に進めるようにする。この噴射時期の進角によって空気と燃料の予混合が十分に行われるので、燃焼が急速に進行して、排気中のスモーク量が減少する。一方、そのことによって燃焼温度が高まるのでNOxの排出量は増大するが、もともと多量の排気還流によってNOxの生成を抑えるようにしているので、NOxの排出量はあまり増大しない。
【0071】
(吸気絞り弁制御)
本発明の特徴は、上述の如き排気還流制御等の基本的な制御に加えて、アイドル運転時等、運転者によるアクセルペダルの踏み込みが予測されるときに、その踏み込みに先んじてEGR弁24の開度が小さくなるように、吸気絞り弁14を閉じ側に制御するようにしたことにある。
【0072】
その吸気絞り弁14の制御は、排気還流制御と同様、メモリ上に電子的に格納された制御プログラムに従いエンジン1の回転に同期して実行される。すなわち、図16のフローチャート図に示すように、まず、前記排気還流制御と同様にアクセル開度Acc及びエンジン回転数Neを検出し、燃料噴射量Fを読み込む(ステップH1〜H3)。
【0073】
続いて、ステップH4において、アクセル戻し状態か否かを判定する。すなわち、アクセル操作量が所定以上、減少して、アクセル開度が略零になったYESならば、ステップH5に進んで、アクセル戻し判定フラグFlagの値をFlag=1とし、続くステップH6で、アクセル戻し状態が判定されてからの経過時間を計測するためのカウンタをリセットして(Tup=0)、その後、ステップH9に進む。一方、前記ステップH4でアクセル戻し状態でないNOと判定されて進んだステップH7では、前記アクセル戻し判定フラグFlagの値が1であるか否かを判定し、Flag=0でNOであれば後述のステップH12に進む一方、Flag=1でYESであればステップH8に進んで、前記カウンタの値をインクリメントして(Tup=Tup+Δt)、ステップH9に進む。
【0074】
このステップH9では、前記カウンタ値Tupが予め設定した設定時間に対応する所定値Tup1以下であるか否かを判定し、カウンタ値Tupが所定値Tup1よりも大きいNOと判定されれば、ステップH11に進む一方、カウンタ値Tupが所定値Tup1以下でYESであれば、即ち、アクセル戻し状態が判定されてから設定時間が経過するまでの間は、ステップH10に進んで、EGR弁制御の制御ゲインを補正するためのゲイン補正係数γ1を二次元マップから読み込む。
【0075】
この二次元マップは、アクセル戻し状態に対応してEGR弁制御の応答性が高まるように、前記ゲイン補正係数γとして相対的に大きな値γ1を設定したもので、図17に例示するように、吸気絞り量TH及びエンジン回転数Neに対応する最適なゲイン補正係数値γ1を実験的に決定して記録したものである。γ1の値は0<γ1<1の範囲でエンジン回転数Neが高いほど、また吸気絞り量THが大きいほど小さくなるように設定されている。尚、このステップで用いる吸気絞り量THは、前回の制御サイクルで設定された吸気絞り量THである。
【0076】
一方、前記ステップH9においてカウンタ値Tupが所定値Tup1よりも大きいNOと判定されて進んだステップH11では、アクセル戻し判定フラグをクリアする(Flag=0)。すなわち、アクセル戻し状態が判定されてから設定時間が経過すれば、その次の制御サイクルにおけるステップH7でNOと判定されてステップH12に進むことになり、このステップH12では、前記二次元マップ(図17参照)と同様の別の二次元マップからゲイン補正係数γ2を読み込む。この別の二次元マップは、アクセル戻し状態でない通常時のゲイン補正係数γ2を設定したもので、マップの全設定領域において、γ2<γ1になっている。
【0077】
前記ステップH10,11,12に続いて、図18のフローチャート図におけるステップH13では、エンジン1がアイドル運転状態にあるか否かを判定する。すなわち、アクセル全閉でかつ車両の走行速度が零のアイドル運転状態でYESならば後述のステップH17に進む一方、アイドル運転状態でないNOならばステップH14に進み、二次元の吸気絞りマップをサーチする。この吸気絞りマップは図5のマップ51に相当するものであるが、詳しくは図19に示すように、燃料噴射量F及びエンジン回転数Neに対応する最適な吸気絞り量TH(=THsol)が実験的に決定されて記録されたデジタルのマップである。
【0078】
このマップによれば、エンジン1が高速ないし高負荷運転状態にあって、燃料噴射量Fないしエンジン回転数Neが大きければ、吸気絞り量THが零に設定されて、吸気絞り弁14が全開状態に制御される。すなわち、エンジン1の高速運転状態では吸排気の間の差圧が高いことから、排気還流量が多くなって吸入空気量が不足する虞れがあり、一方、高負荷運転状態では燃料噴射量が多くなるので、この燃料噴射量に対する吸入空気量が不足する虞れがある。これに対し、吸気絞り弁14を全開状態にして、吸入空気量を十分に確保することで、吸入空気量の不足に起因するスモーク量の増大を防止できる。また、前記以外の相対的に低負荷の運転状態では、吸気絞り量THは燃料噴射量Fが小さいほど、またエンジン回転数Neが低いほど大きく設定されている。すなわち、エンジン回転数Neが低いほど吸排気の間の差圧が小さくなるので、これに対応して、吸気絞り弁14の開度を小さくさせて差圧を高めることで、低負荷運転状態において排気還流量を十分に確保できるようにしている。
【0079】
前記ステップH14に続いて、ステップH15では、アクセル戻し判定フラグFlagの値と吸気絞りマップのサーチ結果とに基づいて、吸気を絞るか否かを判定する。すなわち、Flag=0であるか、或いはFlag=1であってもエンジン1が高負荷ないし高回転運転状態になっていて、吸気を絞らないNOであれば、ステップH19に進む一方、Flag=1であってかつ前記以外の運転状態で、吸気を絞るYESであれば、ステップH16に進み、吸気絞りマップに設定されている値を読み込んで、吸気絞り量THを設定する。また、前記ステップH14において、アイドル運転状態でYESと判定されて進んだステップH17では、アイドル運転状態に対応して、吸気絞り弁14が全閉になるように吸気絞り量THを設定する。
【0080】
そして、前記ステップH16又はH17に続くステップH18では、それらの各ステップで設定された吸気絞り量THに基づいて、負圧制御用の電磁弁16に制御信号を出力して、吸気絞り弁14の開度制御を実行する。続いて、ステップH19では、前記ステップH10又はステップH12のいずれか読み込んだゲイン補正係数γに基づいて、EGR弁制御における制御ゲインの値を決定するゲイン係数Kを演算して、しかる後にリターンする。
【0081】
K = K×(1+γ)
ここで、アクセル戻し状態に対応するゲイン補正係数γ1が読み込まれている場合、γ1の値がγ2の値よりも大きい分だけ、ゲイン係数Kが通常の運転状態よりも増大され、上述のEGR弁制御(図12参照)における制御ゲイン、即ちP,I,Dの各制御ゲインが大きくなって、その結果、EGR弁24の作動応答性が高まる。つまり、アクセル戻し状態が判定されたときから設定時間が経過するまでの間は、運転者によるアクセル操作量が急変しているような状況であり、その変化に遅れないようにEGR弁24の作動応答性を高めるのである。尚、前記設定時間は、例えばマニュアルトランスミッションの変速操作に対応する比較的短い時間(例えば1〜2秒)とされているので、その間の制御の収束性の悪化は問題にならない。
【0082】
前記図16及び図18に示す吸気絞り弁制御フローにおいて、ステップH4が、アクセル操作量が所定以上、減少したアクセル戻し状態を判定するアクセル戻し状態判定手段35eに、また、ステップH13が、エンジン1の低速低負荷運転状態(この実施例ではアイドル運転状態)を判定する運転状態判定手段35cにそれぞれ対応している。
【0083】
また、ステップH10が、アクセル戻し状態が判定されたときから設定時間が経過するまでの間、排気還流制御手段35bによるEGR弁24の制御ゲインを増大補正するゲイン増大補正手段、及び、アクセル戻し状態が判定されかつエンジン1が低速運転状態にあるとき、前記EGR弁24の制御ゲインを増大補正するアクセル戻し時ゲイン増大補正手段に対応している。さらに、前記ステップH10及びH12は、吸気絞り弁14の開度が小さいほど、前記EGR弁24の制御ゲインを小さくなるように補正するゲイン減少補正手段に対応している。
【0084】
次に、前記実施形態に係る排気還流制御装置Aの作用・効果を、第1にエンジン1がアイドル運転状態から加速運転状態に移行する場合について、図20〜22を参照しながら説明する。
【0085】
まず、同図(a)に示すようにアクセル開度が略零になっているエンジン1のアイドル運転状態では、同図(b)に示すように、吸気絞り弁制御により吸気絞り弁14が略全閉状態に制御され、そのことによる吸入空気量の減少に対応して、同図(d)に実線で示すように、EGR弁制御によりEGR弁24の開度は全開及び全閉状態の略中央の半開状態に制御されている。すなわち、エンジン1の吸気及び排気通路10、20の空気圧は、それぞれ図21に示すように吸気絞り弁14の開度に応じて変化するので、吸気絞り弁14を略全閉状態にすれば、前記吸気及び排気通路の間の差圧が最大限に高まり、その結果、図22に示すように、EGR弁24が半開状態でも十分な排気還流量を確保できるのである。また、アイドル運転状態では燃料噴射量も少ないので、吸気絞り弁14を全閉状態にしていても十分な吸入空気量が確保され、不具合は生じない。
【0086】
そして、前記アイドル運転状態で運転者によりアクセルペダルが踏み込まれ、図20(a)に示すようにアクセル開度が増大したとき(t=t1)、そのアクセル開度の増大に対応して燃料噴射制御により燃料噴射量が増量されるとともに、同図(b)に示すように吸気絞り弁14が速やかに開作動され、かつ同図(d)に実線で示すようにEGR弁24が閉じ側に作動される。その際、該EGR弁24が既に半開状態にされているので、同図(d)に一点差線で示すように全開状態になっている従来例の場合に比べて短時間で全閉状態になり、その分、排気還流量が早く減少して、同図(e)に示すように吸入空気量が速やかに増大する。
【0087】
よって、車両の発進時にエンジン1がアイドル運転状態から加速運転状態に移行したとき、EGR弁24の閉作動の遅れを低減させることができるので、燃料噴射量を抑制することなく空燃比のリッチ化を抑えることができ、同図(f)に示すようにエンジン回転数Neを速やかに上昇させて車両の加速性能を良好に維持しつつ、排気中のスモーク量を低減できる。
【0088】
特に、この実施形態の排気還流制御装置Aでは、加速運転時の目標空燃比KTA/Fを排気中のスモーク量が急増するときに対応づけて設定しているので(図15参照)、仮にEGR弁24の作動遅れを低減できなければ、空燃比のリッチ化に伴いスモーク量の急増を招くことになる。従って、特にこのような場合に、上述の如き吸気絞り弁14の制御によってEGR弁24の作動遅れを低減できることは、極めて有効な作用効果を有する。
【0089】
尚、図20(c)に示すように、EGR弁24の制御ゲインは、吸気絞り弁14の開度(絞り量TH)やエンジン回転数Neに伴い変化している。
【0090】
第2に、車両の加速運転中に運転者によるマニュアルトランスミッションの変速操作が行われた場合について、図23を参照しながら説明する。
【0091】
まず、車両の加速運転中に運転者がマニュアルトランスミッションの変速操作を行うためにアクセルペダルを離したとき(t=t1)、同図(a)に示すようにアクセル開度(アクセル操作量)が減少し、そのことによってアクセル戻し状態が判定される。そして、同図(c)に示すように吸気絞り弁24が閉じ側に作動され、そのことによる吸入空気量の減少に対応して、同図(e)に実線で示すようにEGR弁24の開度が小さくされる。
【0092】
そして、その後、運転者がマニュアルトランスミッションの変速操作を終了して、一旦、離したアクセルペダルを再び踏み込んだとき(t=t2)、アクセル開度の増大に対応して燃料噴射量が増量されるとともに、同図(c)に示すように吸気絞り弁14が速やかに開作動され、かつ同図(d)に実線で示すようにEGR弁24が閉じ側に作動されて、吸入空気量が増大される。その際、前記EGR弁24はアクセル戻し状態の判定に伴い既に閉じ側に作動されていて、弁の開度が小さくされているので、上述の車両の発進時の場合と同様に排気還流量を早く減少させて、吸入空気量を速やかに増大させることができる。
【0093】
つまり、車両の加速運転中のアクセル戻し状態においてEGR弁24を閉じ側に作動させることで、その後、アクセルペダルが踏み込まれたとき、EGR弁24の閉作動の遅れを低減することができ、そのことで、燃料噴射量を抑制することなく空燃比のリッチ化を抑えることができる。よって、同図(f)に実線で示すように、再加速時のエンジン回転数Neが速やかに上昇し、同図に一点差線で示すようにもたつくことがなく、しかも、排気中のスモーク量も低減できる。
【0094】
また、この実施形態では、前記吸気絞り弁14の開度をエンジン回転数Neが低いほど小さくさせるようにしているので、エンジン回転数Neが低いほどエンジン1の出力トルクが小さくもたつきやすい低速運転状態にあって、エンジン回転数Neが低いほど再加速時のEGR弁24の作動遅れを小さくすることができるので、再加速時のもたつきを十分に抑制できる。
【0095】
さらに、この実施形態では、前記図23の(b)に示すように、アクセル戻し状態が判定されてから、リセットされたカウンタ値Tupが所定値Tup1になって設定時間が経過するまでの間、同図(d)に示すように、制御ゲインが増大補正される。すなわち、運転者による変速操作に伴うアクセル戻し状態、及び変速操作の終了に伴う再加速時のアクセル踏み込みに対応して、EGR弁24の作動応答性を高めることで、該EGR弁24をより迅速に閉作動させることができるので、エンジン1のもたつきをさらに低減できる。
【0096】
また、前記EGR制御の制御ゲインはエンジン回転数Neが低いほど増大補正される(同図(d)(f)参照)ので、エンジン1の低速運転状態でEGR制御の実行間隔が相対的に長くなっても、そのことによるEGR弁24の作動応答性の低下を補うことができる。
【0097】
さらにまた、前記EGR制御の制御ゲインは吸気絞り弁14の開度が小さいほど小さくなるように補正される(同図(c)(d)参照)。すなわち、一般に、吸気絞り弁14の開度が小さいほど吸排気の間の差圧が大きくなって、EGR弁24の開度の変化に対する排気還流量の変化の度合が大きくなるので、排気還流制御の応答性が高くなり過ぎて収束性が悪化する虞れがあるが、この実施形態では、前記吸気絞り弁14の開度が小さいほど、EGR制御の制御ゲインが小さくされることで、制御の収束性の悪化を防止できる。
【0098】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の実施形態を包含するものである。すなわち、前記実施形態では、エンジン1の各気筒2における空燃比が共通の目標空燃比になるように、各気筒毎に検出した吸入空気量に応じて、各気筒毎に排気還流量を制御するようにしているが、これに限らず、全気筒の平均的な吸入空気量に基づいて、排気還流量を全気筒まとめて制御するようにしてもよい。
【0099】
また、前記実施形態では、エンジン1の吸気通路10に配設したエアフローセンサ11からの出力信号に基づいて吸入空気量を直接的に検出するようにしているが、これに限らず、例えば、前記吸気通路10の吸気管圧力を検出するセンサを採用し、このセンサ及びEGR弁24のリフトセンサからの出力信号に基づいて排気還流量を求め、この排気還流量から間接的に吸入空気量を検出するようにしてもよい。
【0100】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1記載の発明における筒内噴射式エンジンの排気還流制御装置によれば、車両の走行中のアクセル戻し状態で吸気絞り弁を閉作動させ、その後に予測されるアクセルペダルの踏み込みに先立って排気還流量調節弁を閉じ側に作動させるようにしたので、その後、アクセルペダルが踏み込まれたとき、燃料噴射量を抑制することなく、排気還流量調節弁の閉作動の遅れを低減することができ、よって、車両の加速性能を良好に維持し、変速時のエンジンのもたつきを防止しつつ、排気中のスモーク量も低減できる。
【0101】
しかも、そのように運転者によるアクセル操作量が急変するような状況で、排気還流量調節弁の制御ゲインを増大させるようにしたので、アクセル操作量の変化に遅れないように制御の応答性を高めることができる。
【0102】
請求項2記載の発明によれば、運転者による変速操作に伴うエンジンのもたつきを事実上、解消できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係るエンジンの全体構成図である。
【図2】 ターボ過給機の一部をA/R小の状態(a)、又はA/R大の状態(b)でそれぞれ示す説明図である。
【図3】 EGR弁及びその駆動系の構成図である。
【図4】 EGR弁の駆動電流と駆動負圧(a)、又はリフト量(b)との関係をそれぞれ示すグラフ図である。
【図5】 エンジンの制御系の全体構成図である。
【図6】 空燃比とNOx排出量との関係を示すグラフ図である。
【図7】 空燃比とスモーク値との関係を示すグラフ図である。
【図8】 制御の基本フローを示す図である。
【図9】 エンジンの吸入空気流量の時間変化を示すグラフ図である。
【図10】 吸入空気量算出のフローチャート図である。
【図11】 過渡判定のフローチャート図である。
【図12】 EGR弁操作量算出のフローチャート図である。
【図13】 プリセットを与える制御のフローチャート図である。
【図14】 過渡時の燃料噴射量制御のフローチャート図である。
【図15】 定常時の目標空燃比、過渡時の目標空燃比及び過渡時の限界空燃比の関係を示すグラフ図である。
【図16】 排気還流制御の制御ゲインを補正する手順を示すフローチャート図である。
【図17】 吸気絞り量及びエンジン回転数に対するゲイン補正係数を設定したマップ図である。
【図18】 吸気絞り弁制御のフローチャート図である。
【図19】 燃料噴射量及びエンジン回転数に対する吸気絞り量を設定したマップ図である。
【図20】 アイドル運転状態から加速運転状態への移行時のアクセル開度、吸気絞り量、EGR弁制御ゲイン、EGR弁開度、吸入空気量及びエンジン回転数の変化を互いに関係づけて示したタイムチャート図である。
【図21】 吸気絞り弁の開度の変化に対する吸気通路内圧力と、排気通路内圧力とをそれぞれ示したグラフ図である。
【図22】 EGR弁の開口面積と排気還流量との関係を示すグラフ図である。
【図23】 車両の加速時にマニュアルトランスミッションの変速操作が行われるときに関する、図20相当図である。
【符号の説明】
1 ディーゼルエンジン
2 気筒
4 燃焼室
5 インジェクタ(燃料噴射弁)
10 吸気通路
11 エアフローセンサ
14 吸気絞り弁
20 排気通路
23 排気還流通路
24 EGR弁(排気還流量制御弁)
35a 燃料噴射制御手段
35b 排気還流制御手段
35c 運転状態判定手段
35d 吸気絞り弁制御手段
34e アクセル戻し状態判定手段
Claims (2)
- エンジンの気筒内の燃焼室に燃料を直接噴射する燃料噴射弁と、前記燃焼室への吸気通路に配設された吸気絞り弁と、
前記吸気絞り弁よりも下流の吸気通路に排気の一部を還流させる排気還流通路と、該排気還流通路における排気還流量を調節する排気還流量調節弁と、
前記吸気通路における吸入空気量を計測するセンサと、
アクセル操作量に応じて前記燃料噴射弁による燃料噴射量を制御する燃料噴射制御手段と、
前記吸入空気量及び燃料噴射量に基づいて、空燃比が所定の目標値になるように前記排気還流量調節弁の開度を制御する排気還流制御手段とを備えた筒内噴射式エンジンの排気還流制御装置において、
アクセル操作量が所定以上、減少したアクセル戻し状態を判定するアクセル戻し状態判定手段と、
前記アクセル戻し状態が判定されたとき、前記吸気絞り弁を閉じ側に作動させる吸気絞り弁制御手段と、
前記アクセル戻し状態が判定されたときから、その後の再加速時のアクセル踏み込みに対応する設定時間が経過するまでの間、前記排気還流制御手段による排気還流量調節弁の制御ゲインを増大補正するゲイン増大補正手段と、を設け、
前記排気還流制御手段は、アクセル操作量が所定以上、大きく変化した加速運転状態で前記排気還流量調節弁を閉じ側に作動させるとともに、前記アクセル戻し状態が判定されたときにも排気還流量調節弁を閉じ側に作動させるように構成したことを特徴とする筒内噴射式エンジンの排気還流制御装置。 - 請求項1において、
アクセル戻し状態は、車両の加速運転時におけるマニュアルトランスミッションの変速操作に伴うものであり、
設定時間は、前記マニュアルトランスミッションの変速操作が終了して、アクセル戻し状態でなくなるまでの期間を含むように設定されていることを特徴とする筒内噴射式エンジンの排気還流制御装置。
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