JP3775228B2 - 伝動ベルトの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、ブロックあるいはエレメントと称される多数の板片を互いに対面させて環状に配列するとともに、それらの板片をフープと称される金属バンドで環状に結束した伝動ベルトを製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の伝動ベルトが無段変速機に使用されている。その一例を説明すると、図6にその伝動ベルトで使用される板片(以下、ブロックと記す)1を示してあり、ここに示すブロック1は、左右の両側面がテーパ状の傾斜面とされた基体部分2を有し、そのテーパ状に傾斜した左右両側面が、プーリー3のベルト巻掛け溝に摩擦接触してトルクを伝達する摩擦面4,5とされている。
【0003】
その基体部分2の幅方向における中央部に、図での上方に延びた首部6が形成されている。その首部6の上端部には、基体部分2の幅方向での両側に傘状に延びた頂部7が一体に形成されている。したがって基体部分2の図での上側のエッジ部分と頂部7の図での下側のエッジ部分との間に、左右方向に開いたスリット部8,9が形成されている。このスリット部8.9は、互いに密着して環状に配列されたブロック1を環状に結束する金属バンドであるフープ10を巻掛けるための部分であり、したがって基体部分2の図での上側のエッジ部分が、フープ10の接触するサドル面11,12となっている。
【0004】
このブロック1は、環状に配列された状態でフープ10によって結束され、その状態で駆動側および従動側のそれぞれのプーリー3に巻掛けられる。したがってプーリー3に巻掛けられた状態では、各ブロック1が、プーリー3の中心に対して扇状に拡がり、かつ互いに密着する必要があるので、各ブロック1の図での下側の部分(環状に配列した状態での中心側の部分)が薄肉に形成されている。すなわち、基体部分2の一方の面(例えば図6の(B)における左側面)における前記サドル面11,12より所定寸法下がった部分から下側の部分が削り落とされた状態で薄肉化されている。したがって各ブロック1が扇形に拡がって接触する場合、その板厚の変化する境界部分で接触する。そして、その境界部分のエッジがロッキングエッジ13となっている。
【0005】
また、各ブロック1には、相対的な位置を決めるための凸部14と凹部15とが形成されている。すなわち、前述した首部6の延長位置(あるいは頂部7の中心部)には、一方の面側(図の例では、前記ロッキングエッジ13のある面側)に凸となる断面円形のディンプル14が形成されている。このディンプル14とは反対側の面に、隣接するブロック1におけるディンプル14を緩く嵌合(挿入)させる有底円筒状のホール15が形成されている。したがってこれらのディンプル14とホール15とが嵌合することにより、ブロック1同士の図での左右方向(X方向)および上下方向(Y方向)の相対位置を決めるようになっている。
【0006】
上記のブロック1を環状に配列し、かつフープ10でブロック1を結束した伝動ベルトの一部を図7に示してある。ここに示す部分は、いずれか一つのブロック1における首部6が短い部分であり、そのブロック1におけるホール15に、隣接するブロック1のディンプル14が嵌合し、かつ上下方向(Y方向)で密着している(図7のC部)。すなわち、互いに隣接するブロック1同士が、そのディンプル14とホール15とによって干渉し、首部6の短いブロック1が引き上げられた状態となっている。これに対してフープ10は、張力によって直線状に引き伸びされているので、その引き上げられたブロック1におけるサドル面11,12に密着し、そのブロック1を引き下げるように荷重を生じている。
【0007】
その結果、首部6の短いブロック1には、その首部6を上下方向に引っ張るように荷重が作用する。これは、前記基体部分2において首部6の根元の部分から左右に延びる部分に対して曲げモーメントが作用している状態である。その曲げモーメントは、首部6と基体部分2との境界部分で最も大きく、そのためにこの部分に疲労破損が生じることがある。そこで従来では、ディンプル14およびホール15位置精度および相互のクリアランスを、サドル面11,12を基準にして管理している。
【0008】
また、上記の伝動ベルトをプーリーに巻掛けて各ブロック1が扇形に拡がった状態を図8に示してある。前述したように、各ブロック1はそのロッキングエッジ13で接触状態を維持するので、各ブロック1の間隔は、ロッキングエッジ13の上側(半径方向で外側)で拡がり、下側(半径方向で内側)で狭くなる。そして、各ブロック1の形状および寸法が揃っていれば、各ロッキングエッジ13の上下方向(プーリーに巻き掛かった状態では半径方向)での位置がほぼ同じになるので、各ブロック1にはトルクの伝達に伴う圧縮力が生じる。
【0009】
このように、多数のブロック1を環状に配列し、かつフープ10で結束した伝動ベルトは、プーリーの間では直線状に並び、プーリーに巻き掛かった状態では、扇状に拡がるように傾動する。したがって伝動ベルトが走行している間は、各ブロック1が繰り返し傾動動作をおこなうので、これが原因となって振動や騒音が生じる。そこで特開平4−83940号公報に記載された発明では、上記のサドル面からロッキングエッジまでの寸法が異なる複数種類のブロックを組み合わせて伝動ベルトを構成している。そしてこの公報に記載された発明によれば、ブロックが繰り返し傾動動作することによる特定の周波数レベルを抑制し、音振特性が良好になるとしている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上述した公報に記載されているように、ロッキングエッジの上下方向(Y方向)での位置が異なる複数のブロックを使用して伝動ベルトを構成した場合、それらのブロックがプーリーに巻き掛かって扇状に拡がると、相互に荷重を及ぼし合う位置にずれが生じる。その状態を図9に示してある。
【0011】
ここに示す例は、サドル面11,12からロッキングエッジ13までの寸法が短いブロック1Aが混在している例を示しており、プーリーに巻き掛かって扇状に拡がった状態では、そのブロック1Aは隣接するブロック1にロッキングエッジ13で接触し、その接触位置をP1 で示してある。また、これとは反対側(図9での左側)に位置するブロック1におけるサドル面11,12からロッキングエッジ13までの寸法が特に短く設定されていないので、上記のP1 点より下側(プーリーに巻掛けた状態での内周側)のP2 点で、上記のブロック1Aに接触する。
【0012】
したがって、ロッキングエッジ13が相対的に上側に形成されているブロック1Aには、上下方向(Y方向)にずれた2点P1 ,P2 で圧縮方向に荷重が作用する。その結果、これらの荷重に基づいてモーメントMが生じ、図9の例では、ブロック1Aは、その頂部7が後側(図9での左側)に倒れるように傾動する。その結果、大きく傾いたブロック1Aとこれに隣接する他のブロック1とにおけるディンプル14とホール15との嵌合深さが深くなる。これらディンプル14とホール15とのクリアランスCy は、両者が正常な姿勢で嵌合した場合の寸法に設定してあるから、上記のように大きく傾動して嵌合した場合には、ディンプル14とホール15とが接触し、さらには積極的に噛み合った状態となり、それに伴って上下方向(Y方向)に荷重が生じることがある。
【0013】
これに対して各ブロック1,1Aは、フープによって結束され、上下方向(Y方向)への移動が規制されているので、上記のようにディンプル14とホール15との噛み合いによって上下方向(Y方向)の荷重が作用すると、前述した図8に示す状態と同様の状態が生じる。すなわち、ロッキングエッジ13のサドル面11,12からの寸法が、互いに隣接するブロック1,1Aにおいて大きく異なっていると、頂部7もしくは首部6を上下方向(Y方向)に引っ張るいわゆる首吊り状態の荷重が大きくなって、ブロック1,1Aに疲労破損が生じる可能性が高くなり、結局は、伝動ベルトの耐久性が低下するおそれがある。
【0014】
なお、このような不都合を解消するために、ディンプル14とホール15との上下方向(Y方向)におけるクリアランスを大きくすることが考えられる。しかしながら、ディンプル14とホール15とのクリアランスを大きくした場合には、ブロック同士の相対的な位置決め精度が低下してしまう。
【0015】
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、上記のブロックもしくはこれに相当する板片の相対的な位置決め精度を損なうことなく、耐久性を向上させることのできる伝動ベルトを製造する方法を提供することを目的とするものである。
【0016】
【課題を解決するための手段およびその作用】
この発明は、上記の目的を達成するために、互いに隣接するブロック同士における、ロッキングエッジの予め定めた基準位置からの寸法差と、上記のディンプルおよびホールあるいはこれらに相当する凹凸部の隙間との関係を所定の関係に設定して伝動ベルトを構成したことを特徴とする発明である。より具体的には、請求項1の発明は、互いに対向して環状に配列される多数の板片に環状の帯状材が巻掛けられて前記板片が環状に結束され、各板片の配列方向での一方の面に、各板片が円弧状に湾曲した配列状態となった場合に隣接する板片に接触するロッキングエッジが形成され、また各板片において前記ロッキングエッジに対して前記帯状材の内外周方向にずれた所定位置に、隣接する板片に向けて凸となる突起部が形成され、かつその突起部が形成されている面とは反対側の面に、隣接する板片の突起部が挿入される凹部が形成された伝動ベルトの製造方法において、隣接する板片同士における、前記ロッキングエッジで押している板片におけるロッキングエッジの予め定めた基準位置からの寸法に対する、押されている板片におけるロッキングエッジの予め定めた基準位置からの寸法の差もしくは比率と、それら互いに隣接する板片における前記突起部および凹部の前記ロッキングエッジと突起部もしくは凹部とを結ぶ方向での隙間と、の関係により規定される前記寸法の相違が大きい場合に前記隙間が大きくなる関係を満たす許可領域を設定し、隣接する板片同士における前記寸法の相違と前記隙間との関係が前記許可領域から外れている場合には、前記許可領域内にある板片と交換あるいは配列位置を変更し、隣接する板片同士の前記寸法の相違と前記隙間との関係が前記許可領域内となるように各板片を配列することを特徴とする伝動ベルトの製造方法である。
【0018】
したがってこの発明では、多数の板片が互いに対向して環状に配列され、その状態で環状帯状材によって結束される。このように配列された各板片は、それぞれに形成された突起部が、隣接する板片の凹部に挿入され、その結果、両者の相対位置が決められる。また、各板片が円弧状に湾曲して配列される部分では、各板片における円弧の内周側の部分の間隔が狭く、かつ外周側の間隔が広くなり、その結果、各板片がロッキングエッジで接触する。そのロッキングエッジの所定の基準位置からの寸法の、隣接する板片同士での差もしくは比率が、それらの隣接する板片同士での突起部および凹部の隙間に対して、ロッキングエッジ距離差がゼロの場合にクリアランスが所定の負の値となる横軸上の点と、クリアランスがゼロの場合にロッキングエッジ距離差が所定の正の値となる縦軸上の点とを結んだ直線よりも上側の領域に入らないような関係となるように設定される。その隙間は、ロッキングエッジと突起部もしくは凹部とを結んだ方向での隙間である。その関係とは、一例として前記寸法の相違が大きい場合には、前記隙間が大きくなる関係である。
【0019】
その結果、この発明によれば、隣接する板片同士の間で、基準位置からのロッキングエッジの位置が異なっていれば、それに応じて突起部と凹部との隙間が設定されるので、ロッキングエッジの位置の相違に起因して、板片が隣接する板片に対して大きく傾くとしても、これらの板片における突起部と凹部とが接触したり、あるいは噛み合い状態になって大きい応力が生じたりすることが回避され、それに伴い伝動ベルトの耐久性が良好になる。また、隣接する板片同士の間で、ロッキングエッジの位置の相違が特にない場合あるいは僅少の場合には、これらの板片での突起部と凹部との隙間を小さくすることができる。そのため、板片同士の位置決め精度が相対的に良好になり、言い換えれば、伝動ベルトの形状の安定性が良好になる。
【0020】
【発明の実施の形態】
つぎにこの発明をより具体的に説明する。この発明の伝動ベルトは、要は、一対のプーリーに巻掛けられてこれらのプーリーの間で動力の伝達をおこなうベルトであり、単なる伝動装置における伝動ベルトとして使用され、あるいは無段変速機の伝動ベルトとして使用される。
【0021】
また、この発明の伝動ベルトは、多数の板片を、互いに対面させて環状に配列し、環状の帯状材をそれらの板片に巻掛けて結束した構造であり、その点では、前述した従来の伝動ベルトと同様の構造である。したがってそれらの板片がプーリーに接触し、両者の間でトルクの伝達がおこなわれる。そのため、伝動ベルトには、その走行方向に板片を押す力が作用し、プーリーを介して伝達するトルクが板片の押圧力として現れる。帯状のベルトを直接、プーリーに巻掛ける一般的な巻掛け伝動機構では、伝達するべきトルクがベルトの張力として現れるのとは異なっている。
【0022】
上記の板片は、プーリーとの間でトルクを伝達するので、プーリーに接触する摩擦面あるいは伝動面を備えている。その一例が、図6に示してある摩擦面であるが、板片の形状によってはその摩擦面とは異なる形状および部位の面を伝動面とすることができる。
【0023】
この発明における板片を環状に結束する帯状材は、従来知られている積層構造のフープを使用できるが、要は、環状に配列した板片を結束し、トルクの伝達に必要な接触圧を生じるようにこれらの板片をプーリーに対して押し付けることのできる強度を有し、さらに可撓性のあるものであればよい。また、一本の帯状材によって板片を結束するように構成することもできる。使用する帯状材の本数に応じて板片の形状を変えればよい。すなわち、図6に示す構造では、二本のフープを使用する構造であるから、左右二箇所にサドル面が設けられているが、一本の帯状材を使用する場合には、左右方向での中央部にサドル面を形成した板片を使用することになる。
【0024】
板片は、プーリーに巻掛けられた状態では、帯状材によってプーリーに押し付けられるが、プーリーの間では、帯状材によって吊り下げられた状態になる。したがって板片と帯状材とを連結する構造は、板片の一部で帯状材を表裏両面から挟み込む構造が一般的である。そのため図6に示す構造では、スリット部8,9を形成してある。この発明における板片と帯状材とを連結する部分の構造は、上記のスリット部のような解放構造でなくてもよく、帯状材の外周を完全に包囲する構造であってもよい。
【0025】
この発明の伝動ベルトにおける板片は、ロッキングエッジを備えている。そのロッキングエッジは、各板片がプーリーに巻き掛かって扇状に拡がることにより相対的に傾斜した場合に、板片同士を接触状態に維持する部分であり、一般的には、その名称のとおり、線状の部分として構成される。これに替えて複数の点によって構成することもできる。
【0026】
そのロッキングエッジを挟んだ両側もしくはそのうちのいずれか一方の側の所定位置、すなわちロッキングエッジを外れた位置に、隣接する板片に向けて凸となる突起部が形成されている。この突起部は、図6に示すディンプル14に相当する部分である。この発明における突起部の数は、各板片ごとに一つである必要はなく、複数設けられていてもよい。またその形状は断面円形である必要はなく、適宜の形状であってよい。
【0027】
その突起部に対応して凹部が形成されている。その凹部は、図6に示すホール15に相当する部分であり、突起部を挿入させるためのものであるから、その位置は、各板片において突起部とは反対側の位置である。またその凹部は、前記ホール15のように閉じた構造でなくてもよく、貫通孔として形成されたものであってもよい。
【0028】
したがってこれらの突起部と凹部とは、相互に嵌合して隣接する板片の相対位置を決めるように作用する。その場合、板片同士の相対位置には所定の許容幅があるので、突起部と凹部とは所定の隙間(クリアランス)をもって嵌合するように構成される。
【0029】
上記のロッキングエッジの位置は、各板片上に予め定められた基準位置から所定の寸法の位置とされる。その基準位置は、帯状材を巻掛けるサドル面に相当する位置であってよいが、ここに限定されない。例えば、プーリーとの間でトルクを伝達する上記の伝動面や、上記の突起部もしくは凹部を基準位置とすることができる。もっとも、これら伝動面や突起部もしくは凹部が、サドル面に相当する部分を基準にその位置が設定されている場合には、ロッキングエッジの位置は、結局、サドル面に相当する部分を基準として決められることになる。
【0030】
ロッキングエッジの位置は、理想的には、各板片で完全に同一であることが望ましいが、製造技術上の理由で不可避的なばらつきが生じる。そのため、隣接する板片におけるロッキングエッジの位置が互いに相違することがある。その場合、板片を押圧する荷重の掛かる位置がずれてしまう。その状態を図1に模式的に示してある。ここに示す例は、ロッキングエッジRE の位置にδのズレが生じている二枚の板片Ba ,Bb が隣接して組み付けられ、これが図示しないプーリーに巻き掛かって扇状に拡がった状態を示している。ロッキングエッジRE の位置がずれていることによるモーメントによって板片Ba が、正常な状態に対して所定角度θ、傾斜したとすると、その角度は
tan(θ)=δ/t
で表される。ここで、tは板片Ba の板厚である。
【0031】
板片Ba がこのように過剰に傾斜することにより、これに隣接する板片Bb の突起部Pj と凹部Ha との嵌合深さが深くなり、また相対的な傾斜角度が大きくなった状態での嵌合のため、突起部Pj の外面と凹部Ha の内面とのクリアランス(ロッキングエッジRE と凹部Ha もしくは突起部Pj とを結んだY方向でのクリアランスでかつロッキングエッジRE に対して遠い方のクリアランス)Cy が小さくなる。なお、このクリアランスCy の設定は、Y方向の寸法を調整する以外に、突起部の外形の寸法もしくは凹部の内法を調整することによって設定することができる。
【0032】
この発明においては、そのクリアランスCy と隣接する板片でのロッキングエッジRE の基準位置からの寸法差(距離差)δ(以下、仮にロッキングエッジ距離差δと記す)もしくはその寸法の比率とが、所定の関係に設定されている。より具体的には、ロッキングエッジ距離差δもしくはその寸法の比率が大きいほど、クリアランスCy が大きくなる関係に設定されている。
【0033】
ここで、ロッキングエッジ距離差δは、ロッキングエッジで押している板片におけるロッキングエッジの基準位置からの寸法に対する、押されている板片におけるロッキングエッジの基準位置からの寸法の差であり、後者の寸法が小さい場合を正としている。したがって後者の寸法が大きい場合には、ロッキングエッジ距離差δが負の値となる。また、上記のクリアランスCy が負の値になることがあり、これは、突起部の上記Y方向での外側の面が凹部の内面に接触し、さらには積極的に噛み合った状態である。その場合、その突起部が形成されている板片Bb にはプーリー側に押圧する圧縮力が作用し、これに対してその凹部が形成されている板片Ba に対してはプーリーから引き離す方向の引っ張り力が作用する。その荷重の大きさは、上記クリアランスCy の負の値の大きさ(絶対値の大きさ)に比例する。
【0034】
この発明における上記のロッキングエッジ距離差δとクリアランスCy との関係の一例を図に示せば、図2のとおりである。図2は、縦軸にロッキングエッジ距離差δを採り、横軸に上記のクリアランスCy を採って示す図であり、直線Sを越えてロッキングエッジ距離差δが大きい領域あるいはクリアランスCy が小さい領域が不許可領域であり、これとは反対の領域が許可領域である。この不許可領域は、ロッキングエッジ距離差δがゼロの場合にクリアランスCy が所定の負の値(−Cy )より小さく(負の方向に大きく)、かつクリアランスCy がゼロの場合にロッキングエッジ距離差δが所定値(+δ)以上となる領域であり、言い換えれば、横軸上の所定の負の値(−Cy )の点と、縦軸上の所定の正の値(+δ)の点とを結んだ直線Sより上側の領域である。この発明の伝動ベルトでは、隣接する板片同士の各寸法の関係がこの不許可領域に入らないように、各板片が配列されている。
【0035】
この発明におけるロッキングエッジ距離差δと上記のクリアランスCy とは相対的な関係にあり、両者の値が上述した許可領域に入る関係にあればよい。したがって、隣接する板片同士の前記クリアランスCy を決めておき、そのクリアランスCy となる板片を多数の母集団から選び出し、その選ばれた板片のうちから、ロッキングエッジ距離差δが所定の関係となる板片を選んで、隣接位置に配置することとしてもよい。あるいは反対に、隣接する板片同士の前記ロッキングエッジ距離差δを決めておき、そのロッキングエッジ距離差δとなる板片を多数の母集団から選び出し、その選ばれた板片のうちから、クリアランスCy が所定の関係となる板片を選んで、隣接位置に配置することとしてもよい。
【0036】
さらに、多数の板片におけるロッキングエッジの基準位置からの寸法や突起部および凹部の各寸法などのデータを数値データとして記憶装置に入力しておき、コンピュータなどのデータ処理装置によってそのデータを処理して、ロッキングエッジ距離差δと前記クリアランスCy とが所定の関係となる板片を選び出してその配列順序を決定することとしてもよい。この発明の方法による板片の配列の仕方は、これらのいずれであってもよい。
【0037】
【実施例】
つぎにこの発明の実施例を説明する。なお、この発明は以下に述べる実施例に限定されないことは勿論である。図3において、符号1はこの発明の板片に相当するV型ブロックを示し、この多数のV型ブロック1が互いに板厚方向に対面して環状に並べて配置され、その左右のサドル面11,12に環状の金属帯状体であるフープ10が通されて各V型ブロック1が結束され、図4に示す全体として無端(環状)の伝動ベルト20を構成している。そのV型ブロック1の形状は、図6を参照して説明したものと同様であり、したがって図3および図4に図6に付した符号と同じ符号を付してその説明を省略する。
【0038】
この伝動ベルト20を構成しているV型ブロック1についての前述したクリアランスCy およびロッキングエッジ距離差δが測定されており、その測定結果を図5に示してある。この発明に係る上記の伝動ベルト20におけるロッキングエッジ距離差δとクリアランスCy との関係は、図5に直線Sを境界とする領域として示してある。すなわちこの直線Sの下側が許可領域であり、上側が不許可領域である。
【0039】
当初、組み立てた伝動ベルト20においては、図5に符号Xで示すV型ブロックが混在している。このV型ブロックXとこれに隣接するV型ブロックとの前記クリアランスCy の基準値からのズレ量が特には大きくないが、ロッキングエッジ距離差δが相対的に大きいために、このV型ブロックXは不許可領域に属している。
【0040】
この発明の方法では、このV型ブロックXのように、ロッキングエッジ距離差δと前記クリアランスCy との関係が所定の関係を外れている場合、そのV型ブロックを他のものと交換する。あるいはその配列位置を変更して、隣接するV型ブロック同士におけるロッキングエッジ距離差δと前記クリアランスCy との関係が所定の関係となるように、V型ブロックを並べ替える。
【0041】
こうして得られるこの発明による伝動ベルト20では、ロッキングエッジ距離差δがたとえ大きい場合であっても、そのディンプル14とホール15とが干渉して首部6と基体部分2との連結部分に大きい曲げモーメントが生じることがない。その結果、この部分での疲労破損の可能性を回避もしくは皆無にして伝動ベルト20の耐久性を向上させることができる。また、ロッキングエッジ距離差δが小さいV型ブロック同士では、そのディンプル14とホール15とのクリアランスCy を小さくすることができるので、V型ブロック同士の相対的に位置決め精度を向上させることができる。
【0042】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明に係る伝動ベルトを製造する方法によれば、隣接する板片同士の間で、基準位置からのロッキングエッジの位置が異なっていれば、それに応じて突起部と凹部との隙間が設定されるので、ロッキングエッジの位置の相違に起因して、板片が隣接する板片に対して大きく傾くとしても、これらの板片における突起部と凹部とが接触したり、あるいは噛み合い状態になって大きい応力が生じたりすることが回避され、それに伴い伝動ベルトの耐久性を向上させることができる。また、隣接する板片同士の間で、ロッキングエッジの位置の相違が特にない場合あるいは僅少の場合には、これらの板片での突起部と凹部との隙間を小さくすることができるため、板片同士の相対的に位置決め精度が良好になり、言い換えれば、伝動ベルトの形状の安定性を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ロッキングエッジ距離差があることに起因して板片が傾動している状態を示す模式図である。
【図2】 この発明におけるロッキングエッジ距離差δとクリアランスCy との関係の一例を示す図である。
【図3】 この発明に係る伝動ベルトの一部を模式的に示す斜視図である。
【図4】 この発明に係る伝動ベルトの全体的な構造を示す斜視図である。
【図5】 図4に示す伝動ベルトの組立当初のV型ブロックについてのロッキングエッジ距離差δとクリアランスCy との測定結果を示す図である。
【図6】 この発明の伝動ベルトを構成するブロックの一例を示す図であり、(A)は正面図、(B)は一部破断した側面図である。
【図7】 そのブロックの配列状態を模式的に示す図である。
【図8】 そのブロックが扇形に拡がった状態を模式的に示す図である。
【図9】 ロッキングエッジ距離差に基づいてブロックが傾動する状況を説明するために模式図である。
【符号の説明】
1…(V型)ブロック、 2…基体部分、 10…フープ、 11,12…サドル面、 13,RE …ロッキングエッジ、 14…ディンプル、 15…ホール、 Pj …突起部、 Ha …凹部、 δ…ロッキングエッジ距離差、 Cy…クリアランス。
Claims (1)
- 互いに対向して環状に配列される多数の板片に環状の帯状材が巻掛けられて前記板片が環状に結束され、各板片の配列方向での一方の面に、各板片が円弧状に湾曲した配列状態となった場合に隣接する板片に接触するロッキングエッジが形成され、また各板片において前記ロッキングエッジに対して前記帯状材の内外周方向にずれた所定位置に、隣接する板片に向けて凸となる突起部が形成され、かつその突起部が形成されている面とは反対側の面に、隣接する板片の突起部が挿入される凹部が形成された伝動ベルトの製造方法において、
隣接する板片同士における、前記ロッキングエッジで押している板片におけるロッキングエッジの予め定めた基準位置からの寸法に対する、押されている板片におけるロッキングエッジの予め定めた基準位置からの寸法の差もしくは比率と、それら互いに隣接する板片における前記突起部および凹部の前記ロッキングエッジと突起部もしくは凹部とを結ぶ方向での隙間と、の関係により規定される前記寸法の相違が大きい場合に前記隙間が大きくなる関係を満たす許可領域を設定し、隣接する板片同士における前記寸法の相違と前記隙間との関係が前記許可領域から外れている場合には、前記許可領域内にある板片と交換あるいは配列位置を変更して、隣接する板片同士の前記寸法の相違と前記隙間との関係が前記許可領域内となるように各板片を配列することを特徴とする伝動ベルトの製造方法。
Priority Applications (4)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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