JP3756030B2 - 防曇性基材およびその形成方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、浴室用、洗面所用等の防曇鏡、自動車用等の防曇窓ガラスあるいは防曇鏡、建築用の防曇窓ガラス等各種の用途に用いることが可能な防曇性基材およびその形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
吸水性高分子を使用した単層膜からなる防曇性基材としては、特開平5−51471号公報には表層部分が−P=N−骨格を有する高分子化合物からなる基材上に、防曇性被膜としてケン化度70mol%以上、平均重合度300以上のポリビニルアルコールに架橋剤加えたものを硬化性被膜として設けてなる防曇性を付与した被覆積層体が開示されており、また、特開平6−157794号公報にはポリビニールアセタール樹脂のみを塗布した後、常温で乾燥させて防曇膜とする塗布型防曇剤が開示されており、特開平6−158031号公報には、ガラス、鏡、プラスチックフィルム等の物品表面に、アセタール化度2〜40mol%のポリビニルアセタール樹脂からなる防曇層を設けるか、あるいは、物品表面に、水溶性樹脂層が設けられ、その上にアセタール化度2〜40mol%のポリビニルアセタール樹脂からなる防曇層が設けられてている防曇性物品が開示されている。
【0003】
また、特開平10−212471号公報には水酸基を有する有機物であるポリビニルアルコールと、金属有機化合物であるテトラメトキシシランと、これらを縮合重合させる触媒である塩酸と、からなる防曇剤が開示されている。
【0004】
積層構成とした防曇性基材としては、特開平9−136374号公報には、成形された樹脂基体上に、親水性無機微粒子及びカップリング剤を含有する第1層と、親水性樹脂及び/または界面活性剤よりなる第2層を設けてなることを特徴とする防曇維持性を有する樹脂成型品が開示されており、特開平11−84102号公報には光学基材の表面に内層としてポリアクリル酸類およびポリビニルアルコールから選ばれる少なくとも1つの吸水性高分子を使用し、外層が多孔質膜からなることを特徴とする防曇性被膜及びこれを用いた光学部品が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平5−51471号公報あるいは、特開平6−157794号公報、特開平6−158031号公報、特開平10−212471号公報および特開平9−136374号公報記載のものは、吸水性高分子樹脂が表面に曝された構成となっているために、防曇性能は優れているが、乾燥時の耐擦傷性が十分ではなく、吸湿時の耐擦傷性はさらに悪化する傾向にあり、日常的に拭き取りを行う物品への使用は難しく、耐擦傷性を高めるために硬化性添加物を添加すると防曇性能が劣るために、良好な耐擦傷性と防曇性を得ることができない。
【0006】
また、特開平11−84102号公報のものは、外層の膜厚を明記していないが使用用途から多孔質膜を得るためには、特定の成膜法に限定される。
【0007】
【問題点を解決するための手段】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなしたものであって、基材表面に吸水性を有するポリビニルアセタアール樹脂とアルキルシリルイソシアネートの加水分解物もしくは部分加水分解物からなる吸水性複合膜を形成し、さらにその上層に膜厚が3〜10nmの単分子レベルの透水性の保護膜を積層することにより、防曇性、耐水拭き性、耐摩耗性に優れ、長期間にわたり防曇性能を維持することが可能な防曇性基材およびその形成方法を開発した。
【0008】
すなわち、本発明の防曇性基材は、基材の表面に、下記に示す吸水性を有するポリビニルアセタアール樹脂よりなるA成分とアルキルシリルイソシアネートの加水分解物もしくは部分加水分解物であるB成分が混在されてなる吸水性複合膜と、透水性を有する膜厚3〜10nmの保護膜とが積層されてなることを特徴とする。
A成分;アセタール化度が10mol%以下のポリビニルアセタール樹脂
B成分:一般式R2nSiR14-n(式中、R1は炭素数1または2のアルキル基、R2はイソシアネート基、nは1または2を示す)で表わされるアルキルシリルイソシアネートの加水分解物もしくは部分加水分解物
また、本発明の防曇性基材は、吸水性複合膜は、重量比率としてポリビニルアセタアール樹脂が95wt%〜99wt%、アルキルシリルイソシアネートの加水分解物もしくは部分加水分解物が1wt%〜5wt%含まれることを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明の防曇性基材は、保護膜が一般式R2nSiR14-n(式中、R1は炭素数1または2のアルキル基、R2はイソシアネート基、nは1または2を示す。)で表わされるアルキルシリルイソシアネートの加水分解物もしくは部分加水分解物よりなるなることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の防曇性基材の形成方法は、上記の防曇性基材を形成するに際し、
(a)基材を用意する工程と、
(b)アセタール化度が10mol%以下のポリビニルアセタール樹脂と、一般式R2nSiR14-n(式中、R1は炭素数1または2のアルキル基、R2はイソシアネート基、nは1または2を示す)で表わされるアルキルシリルイソシアネートとを、溶媒とを含む液に添加し、混合して吸水性複合膜用の塗布液を調製する工程と、
(c)前記塗布液を、前記基材表面上に塗布し、少なくとも90℃〜150℃の低温で熱処理して吸水性複合膜を成膜する工程と、
(d)前記吸水性複合膜の上層に、一般式R2nSiR14-n(式中、R1は炭素数1または2のアルキル基、R2はイソシアネート基、nは1または2を示す)で表わされるをアルキルシリルイソシアネート塗布して、少なくとも90℃〜120℃の低温で熱処理して保護膜を成膜する工程と、
によって基材表面に防曇性硬化膜を形成することを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
吸水性複合膜を形成する一方の成分であるポリビニルアセタール樹脂としては、アセタール化度が10mol%以下のポリビニルアセタール樹脂を使用することにより良好な防曇性透明膜を形成することができる。なお、ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度が10mol%以上では防曇性に乏しく、曇りが生じ易すくなり好ましくない。なお、吸水性とは物質(ポリビニルアセタール樹脂膜)内部に水分を取り込む能力を示すものであり、該吸水性が高いほど膜内に取り組む水分許容量が多くなるため過飽和後の結露までの時間が長くなる。また、通常使用においては取り組んだ水分は再放出されるため防曇性を繰り返し維持することが可能となる。
【0012】
また、吸水性複合膜を形成する他方の成分であるアルキルシリルイソシアネートの加水分解物もしくは部分加水分解物の原料としては、一般式R2nSiR14-n(式中、R1は炭素数1または2のアルキル基、R2はイソシアネート基、nは1または2を示す)で表わされるアルキルシリルイソシアネートを用いることができる。なお、これらの成分は、ポリビニルアセタール樹脂とのバインディング性に優れ、防曇性、耐水拭き性等各種物性にバランスよく優れさせるために、ポリビニルアセタール樹脂とアルキルシリルイソシアネートの加水分解物もしくは部分加水分解物は、該吸水性複合膜中の重量比率として95:5〜99:1とすることが好ましく、そのの比率が1wt%未満であると、膜強度が弱くなり耐水拭き性が悪化し、5wt%を超えると防曇性が劣ってくる。
【0013】
次に、上記の吸水性複合膜の各形成原料は、希釈溶媒に添加し、更に必要であればレベリング剤を添加、混合して塗布液とする。
なお、希釈溶媒としては、水およびアルコ−ル系溶媒が好ましく、具体例としては、メタノ−ル、エタノ−ル、プロパノ−ル、エチレングリコ−ル、プロピレングリコール、ヘキシレングリコ−ル、さらには酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミルなどのエステル類、さらにはメチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ類及びこれらを混合した溶媒で、レベリング剤としてジメチルシリコーンなどのメチルシリコーン類を適量加えても良い。本来溶液中に含まれるアルコ−ル系やセロソルブ系のものの単独または混合物を、該溶液の蒸発速度や被膜粘度を勘案して選択すればよい。
【0014】
次いでこれらを塗布液として、基材上へ塗布する。塗布手段としてはディップコート、フローコート、スピンコート、ロールコート、スプレーコート、スクリーン印刷、フレキソ印刷等の公知手段が採用できる。
【0015】
塗布後、90℃〜150℃の比較的低温で、30分〜60分加熱することにより、溶媒の殆どが飛散するのと同時にアルキルシリルイソシアネートの加水分解物もしくは部分加水分解物がマトリックスとして作用する。
なお、前記吸水性複合膜は、ポリビニルアセタール樹脂のOH基とアルキルシリルイソシアネートのイソシアネート基とが架橋反応して強固に結合するので膜強度が強くなる。
【0016】
吸水性複合膜の膜厚は熱処理後において3〜10μm程度にするのが望ましく、3μm未満であると、防曇耐久性が劣る傾向にあり、他方10μmを越えると外観品質において光学歪みが発生する可能性がある。
【0017】
次に、保護膜としてのアルキルシリルイソシアネートの加水分解物もしくは部分加水分解物の原料としては、一般式R2nSiR14-n(式中、R1は炭素数1または2のアルキル基、R2はイソシアネート基、nは1または2を示す。)で表わされるアルキルシリルイソシアネートを用いることができる。この保護膜形成の原料は、エステル、炭化水素等の溶媒に添加し、更に必要であればレベリング剤を添加、混合して塗布液とする。
【0018】
次いでこれらを塗布液として、ガラス基板上へ塗布する。塗布手段としてはディップコート、フローコート、スピンコート、ロールコート、スプレーコート、スクリーン印刷、フレキソ印刷等の公知手段が採用できる。
【0019】
塗布後、90℃〜120℃の比較的低温で、10分〜60分加熱することにより、溶媒の殆どが飛散するのと同時にアルキルシリルイソシアネートの加水分解物もしくは部分加水分解物が硬化膜となる。
なお、保護膜としてアルキルシリルイソシアネートの加水分解物もしくは部分加水分解物を用いることにより耐擦傷性、耐水拭き性を改善することができる。
【0020】
また、保護膜の膜厚は、熱処理後において膜の立体構造から得られる透水性を利用するために3〜10nm程度と単分子レベルに薄くすることが望ましく、3nm未満であると、保護膜としての役割を果たせず耐摩耗性、耐水拭き性が劣り、10nmを超えると透水性が悪くなり防曇性能が劣ってくる。なお、透水性とは保護膜に係る性能であり、透水性が悪くなると膜表面に付着した水分が吸水膜まで透過し難くなり表層にたまり結露が発生し易くなるので、適切な透水性を有する保護膜にしないと、高吸水性物質を使用しても防曇性能は得られなくなる。
【0021】
本発明に使用する基材としては、代表的なものとしてはガラスが用いられるが、そのガラスは自動車用ならびに建築用、産業用ガラス等に通常用いられている板ガラス、所謂フロート板ガラスなどであり、クリアをはじめグリ−ン、ブロンズ等各種着色ガラスや各種機能性ガラス、強化ガラスやそれに類するガラス、合せガラスのほか複層ガラス等、さらに平板あるいは曲げ板等各種板ガラス製品として使用できることは言うまでもない。また板厚としては例えば約1.0mm程度以上約12mm程度以下であり、建築用としては約3.0mm程度以上約10mm程度以下が好ましく、自動車用としては約2.0mm程度以上約5.0mm程度以下のガラスである。なお、比較的低温でガラス、プラスチック等の基材表面に防曇性被膜を形成することができるので、例えば鏡加工をしたガラス、曲げ加工、成型まで完了した自動車用ガラス等に、全面もしくは部分的に容易に成膜することがもできる。
また、本発明の基材はガラスに限定されるものではなく、ガラス以外でも樹脂、金属、セラミックスなど、上記温度範囲で乾燥処理をしても変質しないものであれば使用することができる。
【0022】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
なお、本発明および比較例で得られた、防曇性被膜を有する防曇性光学部品は、以下に示す測定法により諸物性を測定した。
【0023】
〔繰返防曇性〕:JIS S 4030(眼鏡用くもり止め剤試験法)により43℃に設定した温水の水蒸気中に3分保持した時の曇り具合と、保持後に常温(23℃、63%RH)中に取り出したときの呼気による曇り具合を観察し、この操作を10サイクルまで行い、外観に異常がなく曇りが発生にしないものを合格とした。
【0024】
〔冷温防曇性〕:4℃に設定した冷蔵庫内に防曇性光学部品を30分保持した後、常温(23℃、63%RH)中に取り出したときの外観、曇り具合、呼気による曇りを観察し、この操作を10サイクルまで行い、外観が異常なく曇りを合格とした。
【0025】
〔耐水性〕:室温(23±2℃)の蒸留水中に6時間浸漬し、浸漬後に外観にがなく、呼気により曇りの発生しないものを合格とした。
【0026】
〔耐水拭き性〕:布に水を含ませてしぼったもので防曇膜表面を拭いていき、10回おきに呼気による曇り具合を観察し、50回拭き取りで曇りが発生しないものを合格とした。
【0027】
〔トラバース摩耗性〕:キャンバス布を用いての荷重100g/cm2でトラバース試験を実施し、300回おきに外観観察及び呼気による曇り具合を観察し、3000回トラバースで外観に異常がなく曇りが発生しないものを合格とした。
【0028】
実施例1
(吸水性複合膜用薬液の調整)
吸水性樹脂としてのアセタール化度8mol%のポリビニルアセタール樹脂(商品名「KX−1」、固形分8%、積水化学製)と、アルキルシリルイソシアネートコーティング剤(商品名「オルガチックスSIC−003」、固形分10%、松本製薬製)とを、エタノールと水の混合溶媒を用いて固形分濃度3wt%になるように調製した。
【0029】
なお、成膜後の吸水性複合膜中のポリビニルアセタール樹脂とアルキルシリルイソシアネートの加水分解物もしくは部分加水分解物の重量比率が97.5wt%:2.5wt%になるようし、混合溶媒を添加して混合処理することにより吸水性複合膜用薬液を調製した。
【0030】
(吸水性複合膜の形成)
この薬液を塗布液とした浸漬槽内に、片面をマスキングしたガラス板を浸漬し引き上げるデッピング法により塗布し、該被塗布ガラス板を約120℃で約30分程度加熱乾燥することにより、膜厚7.5μmの膜を形成した。
【0031】
(保護膜用薬液の形成)
滑り性を有するアルキルシリルイソシアネートコーティング剤(商品名「オルガチックスSIC−003」、固形分10%、松本製薬製)に酢酸エチルを加えて固形分濃度1%に調整して保護膜用薬液とした。
【0032】
(保護膜の形成)
この薬液を塗布液とした浸漬槽内に反吸湿性被膜成膜面をマスキングした吸湿性被膜成膜板をディッピング法により塗布し、該被塗布ガラス板を約120℃で約30分程度加熱乾燥することにより、膜厚10nmの透湿性の膜を形成した。
【0033】
上記方法で得られた防曇性被膜を有するガラスは、表1に示すように、各種防曇性能、耐摩耗性,外観が優れたガラスであることが確認された。
【0034】
【表1】
【0035】
実施例2
吸水性複合膜中のポリビニルアセタール樹脂とアルキルシリルイソシアネートの加水分解物もしくは部分加水分解物の重量比率が99wt%:1wt%になるように調製した以外は、実施例1と同様の操作で吸水性複合膜膜厚8μm、保護膜膜厚10nmの膜を形成した。
評価結果は、実施例1同様優れた物性を有するものであった。
【0036】
実施例3
吸水性複合膜中のポリビニルアセタール樹脂とアルキルシリルイソシアネートの加水分解物もしくは部分加水分解物の重量比率が95wt%:5wt%になるように調製した以外は、実施例1と同様の操作で吸水性複合膜膜厚7μm、保護膜膜厚10nmの膜を形成した。
評価結果は、実施例1同様優れた物製を有するものであった。
【0037】
実施例4
保護膜の膜厚を4nmになるよう調製した以外は、実施例1と同様の操作で吸水性複合膜膜厚7μm、保護膜膜厚4nmの膜を形成した。
評価結果は、実施例1同様優れた物性を有するものであった。
【0038】
比較例1
吸水性複合膜用薬液としてポリビニルアセタール樹脂単独組成としたと以外は、実施例1と同様の操作で吸水性複合膜膜厚7μm、保護膜膜厚10nmの膜を形成した。
評価結果は、トラバース摩耗性において、300回の試験後に表面に無数のキズが確認された。また、耐水拭き性においても、10回の拭き取りで膜が剥離した。
【0039】
比較例2
保護膜の膜厚を2nmになるよう調製した以外は、実施例1と同様の操作で吸水性複合膜膜厚7μm、保護膜膜厚2nmの膜を形成した。
評価結果は、トラバース摩耗性において、600回の試験後に表面に無数のキズが確認された。また、耐水拭き性においても、30回の拭き取りで膜が剥離した。
【0040】
比較例3
保護膜の膜厚を20nmになるよう調製した以外は、実施例1と同様の操作で吸水性複合膜膜厚7μm、保護膜膜厚20nmの膜を形成した。
評価結果は、初期防曇性において呼気により曇りが発生した。
【0041】
比較例4
吸水性複合膜用薬液のポリビニルアセタール樹脂としてアセタール化度70mol%以上の樹脂(積水化学製 商品名「エスレックKS−5」)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行い、吸水性複合膜膜厚6μm、保護膜10nmの膜を形成した。
評価結果は、初期防曇性において呼気により曇りが発生した。
【0042】
比較例5
吸水性複合膜用薬液のポリビニルアセタール樹脂のかわりとしてポリビニルアルコール樹脂を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行い、吸水性複合膜膜厚約6μm、保護膜10nmの膜を形成した。
評価結果は、耐水拭き性において、20回の拭き取りで膜が剥離した。また、耐水性試験においても、試験後1日以上放置しても呼気による曇りが発生した。
【0043】
比較例6
実施例1において保護膜を成膜せず吸水性複合膜単層膜とした以外は、実施例1と同様の操作で吸湿性膜膜厚7μmの膜を得た。
評価結果は、トラバース 摩耗性において、300回の試験後に表面に無数のキズが確認された。また、耐水拭き性においても、20回の拭き取りで膜が剥離した。
【0044】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、吸水性複合膜は、ポリビニルアセタール樹脂のOH基とアルキルシリルイソシアネートのイソシアネート基とが架橋反応して強固に結合するので膜強度が強くなっているとともに、該吸水性複合膜の上層に膜厚が3〜10nmの単分子レベルの透水性の保護膜を積層しているので、防曇性、耐水拭き性、耐摩耗性が優れ長期間にわたり防曇性能を維持することが可能であり、自動車用、鏡用等に広く使用することができる。さらに、比較的低温でガラス、プラスチック等の基材表面に防曇性被膜を形成することができるので、例えば鏡加工をしたガラス、曲げ加工、成型まで完了した自動車用ガラス等に、全面もしくは部分的に容易に成膜することがもできる利点を有する
【発明の属する技術分野】
本発明は、浴室用、洗面所用等の防曇鏡、自動車用等の防曇窓ガラスあるいは防曇鏡、建築用の防曇窓ガラス等各種の用途に用いることが可能な防曇性基材およびその形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
吸水性高分子を使用した単層膜からなる防曇性基材としては、特開平5−51471号公報には表層部分が−P=N−骨格を有する高分子化合物からなる基材上に、防曇性被膜としてケン化度70mol%以上、平均重合度300以上のポリビニルアルコールに架橋剤加えたものを硬化性被膜として設けてなる防曇性を付与した被覆積層体が開示されており、また、特開平6−157794号公報にはポリビニールアセタール樹脂のみを塗布した後、常温で乾燥させて防曇膜とする塗布型防曇剤が開示されており、特開平6−158031号公報には、ガラス、鏡、プラスチックフィルム等の物品表面に、アセタール化度2〜40mol%のポリビニルアセタール樹脂からなる防曇層を設けるか、あるいは、物品表面に、水溶性樹脂層が設けられ、その上にアセタール化度2〜40mol%のポリビニルアセタール樹脂からなる防曇層が設けられてている防曇性物品が開示されている。
【0003】
また、特開平10−212471号公報には水酸基を有する有機物であるポリビニルアルコールと、金属有機化合物であるテトラメトキシシランと、これらを縮合重合させる触媒である塩酸と、からなる防曇剤が開示されている。
【0004】
積層構成とした防曇性基材としては、特開平9−136374号公報には、成形された樹脂基体上に、親水性無機微粒子及びカップリング剤を含有する第1層と、親水性樹脂及び/または界面活性剤よりなる第2層を設けてなることを特徴とする防曇維持性を有する樹脂成型品が開示されており、特開平11−84102号公報には光学基材の表面に内層としてポリアクリル酸類およびポリビニルアルコールから選ばれる少なくとも1つの吸水性高分子を使用し、外層が多孔質膜からなることを特徴とする防曇性被膜及びこれを用いた光学部品が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平5−51471号公報あるいは、特開平6−157794号公報、特開平6−158031号公報、特開平10−212471号公報および特開平9−136374号公報記載のものは、吸水性高分子樹脂が表面に曝された構成となっているために、防曇性能は優れているが、乾燥時の耐擦傷性が十分ではなく、吸湿時の耐擦傷性はさらに悪化する傾向にあり、日常的に拭き取りを行う物品への使用は難しく、耐擦傷性を高めるために硬化性添加物を添加すると防曇性能が劣るために、良好な耐擦傷性と防曇性を得ることができない。
【0006】
また、特開平11−84102号公報のものは、外層の膜厚を明記していないが使用用途から多孔質膜を得るためには、特定の成膜法に限定される。
【0007】
【問題点を解決するための手段】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなしたものであって、基材表面に吸水性を有するポリビニルアセタアール樹脂とアルキルシリルイソシアネートの加水分解物もしくは部分加水分解物からなる吸水性複合膜を形成し、さらにその上層に膜厚が3〜10nmの単分子レベルの透水性の保護膜を積層することにより、防曇性、耐水拭き性、耐摩耗性に優れ、長期間にわたり防曇性能を維持することが可能な防曇性基材およびその形成方法を開発した。
【0008】
すなわち、本発明の防曇性基材は、基材の表面に、下記に示す吸水性を有するポリビニルアセタアール樹脂よりなるA成分とアルキルシリルイソシアネートの加水分解物もしくは部分加水分解物であるB成分が混在されてなる吸水性複合膜と、透水性を有する膜厚3〜10nmの保護膜とが積層されてなることを特徴とする。
A成分;アセタール化度が10mol%以下のポリビニルアセタール樹脂
B成分:一般式R2nSiR14-n(式中、R1は炭素数1または2のアルキル基、R2はイソシアネート基、nは1または2を示す)で表わされるアルキルシリルイソシアネートの加水分解物もしくは部分加水分解物
また、本発明の防曇性基材は、吸水性複合膜は、重量比率としてポリビニルアセタアール樹脂が95wt%〜99wt%、アルキルシリルイソシアネートの加水分解物もしくは部分加水分解物が1wt%〜5wt%含まれることを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明の防曇性基材は、保護膜が一般式R2nSiR14-n(式中、R1は炭素数1または2のアルキル基、R2はイソシアネート基、nは1または2を示す。)で表わされるアルキルシリルイソシアネートの加水分解物もしくは部分加水分解物よりなるなることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の防曇性基材の形成方法は、上記の防曇性基材を形成するに際し、
(a)基材を用意する工程と、
(b)アセタール化度が10mol%以下のポリビニルアセタール樹脂と、一般式R2nSiR14-n(式中、R1は炭素数1または2のアルキル基、R2はイソシアネート基、nは1または2を示す)で表わされるアルキルシリルイソシアネートとを、溶媒とを含む液に添加し、混合して吸水性複合膜用の塗布液を調製する工程と、
(c)前記塗布液を、前記基材表面上に塗布し、少なくとも90℃〜150℃の低温で熱処理して吸水性複合膜を成膜する工程と、
(d)前記吸水性複合膜の上層に、一般式R2nSiR14-n(式中、R1は炭素数1または2のアルキル基、R2はイソシアネート基、nは1または2を示す)で表わされるをアルキルシリルイソシアネート塗布して、少なくとも90℃〜120℃の低温で熱処理して保護膜を成膜する工程と、
によって基材表面に防曇性硬化膜を形成することを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
吸水性複合膜を形成する一方の成分であるポリビニルアセタール樹脂としては、アセタール化度が10mol%以下のポリビニルアセタール樹脂を使用することにより良好な防曇性透明膜を形成することができる。なお、ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度が10mol%以上では防曇性に乏しく、曇りが生じ易すくなり好ましくない。なお、吸水性とは物質(ポリビニルアセタール樹脂膜)内部に水分を取り込む能力を示すものであり、該吸水性が高いほど膜内に取り組む水分許容量が多くなるため過飽和後の結露までの時間が長くなる。また、通常使用においては取り組んだ水分は再放出されるため防曇性を繰り返し維持することが可能となる。
【0012】
また、吸水性複合膜を形成する他方の成分であるアルキルシリルイソシアネートの加水分解物もしくは部分加水分解物の原料としては、一般式R2nSiR14-n(式中、R1は炭素数1または2のアルキル基、R2はイソシアネート基、nは1または2を示す)で表わされるアルキルシリルイソシアネートを用いることができる。なお、これらの成分は、ポリビニルアセタール樹脂とのバインディング性に優れ、防曇性、耐水拭き性等各種物性にバランスよく優れさせるために、ポリビニルアセタール樹脂とアルキルシリルイソシアネートの加水分解物もしくは部分加水分解物は、該吸水性複合膜中の重量比率として95:5〜99:1とすることが好ましく、そのの比率が1wt%未満であると、膜強度が弱くなり耐水拭き性が悪化し、5wt%を超えると防曇性が劣ってくる。
【0013】
次に、上記の吸水性複合膜の各形成原料は、希釈溶媒に添加し、更に必要であればレベリング剤を添加、混合して塗布液とする。
なお、希釈溶媒としては、水およびアルコ−ル系溶媒が好ましく、具体例としては、メタノ−ル、エタノ−ル、プロパノ−ル、エチレングリコ−ル、プロピレングリコール、ヘキシレングリコ−ル、さらには酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミルなどのエステル類、さらにはメチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ類及びこれらを混合した溶媒で、レベリング剤としてジメチルシリコーンなどのメチルシリコーン類を適量加えても良い。本来溶液中に含まれるアルコ−ル系やセロソルブ系のものの単独または混合物を、該溶液の蒸発速度や被膜粘度を勘案して選択すればよい。
【0014】
次いでこれらを塗布液として、基材上へ塗布する。塗布手段としてはディップコート、フローコート、スピンコート、ロールコート、スプレーコート、スクリーン印刷、フレキソ印刷等の公知手段が採用できる。
【0015】
塗布後、90℃〜150℃の比較的低温で、30分〜60分加熱することにより、溶媒の殆どが飛散するのと同時にアルキルシリルイソシアネートの加水分解物もしくは部分加水分解物がマトリックスとして作用する。
なお、前記吸水性複合膜は、ポリビニルアセタール樹脂のOH基とアルキルシリルイソシアネートのイソシアネート基とが架橋反応して強固に結合するので膜強度が強くなる。
【0016】
吸水性複合膜の膜厚は熱処理後において3〜10μm程度にするのが望ましく、3μm未満であると、防曇耐久性が劣る傾向にあり、他方10μmを越えると外観品質において光学歪みが発生する可能性がある。
【0017】
次に、保護膜としてのアルキルシリルイソシアネートの加水分解物もしくは部分加水分解物の原料としては、一般式R2nSiR14-n(式中、R1は炭素数1または2のアルキル基、R2はイソシアネート基、nは1または2を示す。)で表わされるアルキルシリルイソシアネートを用いることができる。この保護膜形成の原料は、エステル、炭化水素等の溶媒に添加し、更に必要であればレベリング剤を添加、混合して塗布液とする。
【0018】
次いでこれらを塗布液として、ガラス基板上へ塗布する。塗布手段としてはディップコート、フローコート、スピンコート、ロールコート、スプレーコート、スクリーン印刷、フレキソ印刷等の公知手段が採用できる。
【0019】
塗布後、90℃〜120℃の比較的低温で、10分〜60分加熱することにより、溶媒の殆どが飛散するのと同時にアルキルシリルイソシアネートの加水分解物もしくは部分加水分解物が硬化膜となる。
なお、保護膜としてアルキルシリルイソシアネートの加水分解物もしくは部分加水分解物を用いることにより耐擦傷性、耐水拭き性を改善することができる。
【0020】
また、保護膜の膜厚は、熱処理後において膜の立体構造から得られる透水性を利用するために3〜10nm程度と単分子レベルに薄くすることが望ましく、3nm未満であると、保護膜としての役割を果たせず耐摩耗性、耐水拭き性が劣り、10nmを超えると透水性が悪くなり防曇性能が劣ってくる。なお、透水性とは保護膜に係る性能であり、透水性が悪くなると膜表面に付着した水分が吸水膜まで透過し難くなり表層にたまり結露が発生し易くなるので、適切な透水性を有する保護膜にしないと、高吸水性物質を使用しても防曇性能は得られなくなる。
【0021】
本発明に使用する基材としては、代表的なものとしてはガラスが用いられるが、そのガラスは自動車用ならびに建築用、産業用ガラス等に通常用いられている板ガラス、所謂フロート板ガラスなどであり、クリアをはじめグリ−ン、ブロンズ等各種着色ガラスや各種機能性ガラス、強化ガラスやそれに類するガラス、合せガラスのほか複層ガラス等、さらに平板あるいは曲げ板等各種板ガラス製品として使用できることは言うまでもない。また板厚としては例えば約1.0mm程度以上約12mm程度以下であり、建築用としては約3.0mm程度以上約10mm程度以下が好ましく、自動車用としては約2.0mm程度以上約5.0mm程度以下のガラスである。なお、比較的低温でガラス、プラスチック等の基材表面に防曇性被膜を形成することができるので、例えば鏡加工をしたガラス、曲げ加工、成型まで完了した自動車用ガラス等に、全面もしくは部分的に容易に成膜することがもできる。
また、本発明の基材はガラスに限定されるものではなく、ガラス以外でも樹脂、金属、セラミックスなど、上記温度範囲で乾燥処理をしても変質しないものであれば使用することができる。
【0022】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
なお、本発明および比較例で得られた、防曇性被膜を有する防曇性光学部品は、以下に示す測定法により諸物性を測定した。
【0023】
〔繰返防曇性〕:JIS S 4030(眼鏡用くもり止め剤試験法)により43℃に設定した温水の水蒸気中に3分保持した時の曇り具合と、保持後に常温(23℃、63%RH)中に取り出したときの呼気による曇り具合を観察し、この操作を10サイクルまで行い、外観に異常がなく曇りが発生にしないものを合格とした。
【0024】
〔冷温防曇性〕:4℃に設定した冷蔵庫内に防曇性光学部品を30分保持した後、常温(23℃、63%RH)中に取り出したときの外観、曇り具合、呼気による曇りを観察し、この操作を10サイクルまで行い、外観が異常なく曇りを合格とした。
【0025】
〔耐水性〕:室温(23±2℃)の蒸留水中に6時間浸漬し、浸漬後に外観にがなく、呼気により曇りの発生しないものを合格とした。
【0026】
〔耐水拭き性〕:布に水を含ませてしぼったもので防曇膜表面を拭いていき、10回おきに呼気による曇り具合を観察し、50回拭き取りで曇りが発生しないものを合格とした。
【0027】
〔トラバース摩耗性〕:キャンバス布を用いての荷重100g/cm2でトラバース試験を実施し、300回おきに外観観察及び呼気による曇り具合を観察し、3000回トラバースで外観に異常がなく曇りが発生しないものを合格とした。
【0028】
実施例1
(吸水性複合膜用薬液の調整)
吸水性樹脂としてのアセタール化度8mol%のポリビニルアセタール樹脂(商品名「KX−1」、固形分8%、積水化学製)と、アルキルシリルイソシアネートコーティング剤(商品名「オルガチックスSIC−003」、固形分10%、松本製薬製)とを、エタノールと水の混合溶媒を用いて固形分濃度3wt%になるように調製した。
【0029】
なお、成膜後の吸水性複合膜中のポリビニルアセタール樹脂とアルキルシリルイソシアネートの加水分解物もしくは部分加水分解物の重量比率が97.5wt%:2.5wt%になるようし、混合溶媒を添加して混合処理することにより吸水性複合膜用薬液を調製した。
【0030】
(吸水性複合膜の形成)
この薬液を塗布液とした浸漬槽内に、片面をマスキングしたガラス板を浸漬し引き上げるデッピング法により塗布し、該被塗布ガラス板を約120℃で約30分程度加熱乾燥することにより、膜厚7.5μmの膜を形成した。
【0031】
(保護膜用薬液の形成)
滑り性を有するアルキルシリルイソシアネートコーティング剤(商品名「オルガチックスSIC−003」、固形分10%、松本製薬製)に酢酸エチルを加えて固形分濃度1%に調整して保護膜用薬液とした。
【0032】
(保護膜の形成)
この薬液を塗布液とした浸漬槽内に反吸湿性被膜成膜面をマスキングした吸湿性被膜成膜板をディッピング法により塗布し、該被塗布ガラス板を約120℃で約30分程度加熱乾燥することにより、膜厚10nmの透湿性の膜を形成した。
【0033】
上記方法で得られた防曇性被膜を有するガラスは、表1に示すように、各種防曇性能、耐摩耗性,外観が優れたガラスであることが確認された。
【0034】
【表1】
【0035】
実施例2
吸水性複合膜中のポリビニルアセタール樹脂とアルキルシリルイソシアネートの加水分解物もしくは部分加水分解物の重量比率が99wt%:1wt%になるように調製した以外は、実施例1と同様の操作で吸水性複合膜膜厚8μm、保護膜膜厚10nmの膜を形成した。
評価結果は、実施例1同様優れた物性を有するものであった。
【0036】
実施例3
吸水性複合膜中のポリビニルアセタール樹脂とアルキルシリルイソシアネートの加水分解物もしくは部分加水分解物の重量比率が95wt%:5wt%になるように調製した以外は、実施例1と同様の操作で吸水性複合膜膜厚7μm、保護膜膜厚10nmの膜を形成した。
評価結果は、実施例1同様優れた物製を有するものであった。
【0037】
実施例4
保護膜の膜厚を4nmになるよう調製した以外は、実施例1と同様の操作で吸水性複合膜膜厚7μm、保護膜膜厚4nmの膜を形成した。
評価結果は、実施例1同様優れた物性を有するものであった。
【0038】
比較例1
吸水性複合膜用薬液としてポリビニルアセタール樹脂単独組成としたと以外は、実施例1と同様の操作で吸水性複合膜膜厚7μm、保護膜膜厚10nmの膜を形成した。
評価結果は、トラバース摩耗性において、300回の試験後に表面に無数のキズが確認された。また、耐水拭き性においても、10回の拭き取りで膜が剥離した。
【0039】
比較例2
保護膜の膜厚を2nmになるよう調製した以外は、実施例1と同様の操作で吸水性複合膜膜厚7μm、保護膜膜厚2nmの膜を形成した。
評価結果は、トラバース摩耗性において、600回の試験後に表面に無数のキズが確認された。また、耐水拭き性においても、30回の拭き取りで膜が剥離した。
【0040】
比較例3
保護膜の膜厚を20nmになるよう調製した以外は、実施例1と同様の操作で吸水性複合膜膜厚7μm、保護膜膜厚20nmの膜を形成した。
評価結果は、初期防曇性において呼気により曇りが発生した。
【0041】
比較例4
吸水性複合膜用薬液のポリビニルアセタール樹脂としてアセタール化度70mol%以上の樹脂(積水化学製 商品名「エスレックKS−5」)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行い、吸水性複合膜膜厚6μm、保護膜10nmの膜を形成した。
評価結果は、初期防曇性において呼気により曇りが発生した。
【0042】
比較例5
吸水性複合膜用薬液のポリビニルアセタール樹脂のかわりとしてポリビニルアルコール樹脂を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行い、吸水性複合膜膜厚約6μm、保護膜10nmの膜を形成した。
評価結果は、耐水拭き性において、20回の拭き取りで膜が剥離した。また、耐水性試験においても、試験後1日以上放置しても呼気による曇りが発生した。
【0043】
比較例6
実施例1において保護膜を成膜せず吸水性複合膜単層膜とした以外は、実施例1と同様の操作で吸湿性膜膜厚7μmの膜を得た。
評価結果は、トラバース 摩耗性において、300回の試験後に表面に無数のキズが確認された。また、耐水拭き性においても、20回の拭き取りで膜が剥離した。
【0044】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、吸水性複合膜は、ポリビニルアセタール樹脂のOH基とアルキルシリルイソシアネートのイソシアネート基とが架橋反応して強固に結合するので膜強度が強くなっているとともに、該吸水性複合膜の上層に膜厚が3〜10nmの単分子レベルの透水性の保護膜を積層しているので、防曇性、耐水拭き性、耐摩耗性が優れ長期間にわたり防曇性能を維持することが可能であり、自動車用、鏡用等に広く使用することができる。さらに、比較的低温でガラス、プラスチック等の基材表面に防曇性被膜を形成することができるので、例えば鏡加工をしたガラス、曲げ加工、成型まで完了した自動車用ガラス等に、全面もしくは部分的に容易に成膜することがもできる利点を有する
Claims (4)
- 基材の表面に、下記に示すポリビニルアセタール樹脂よりなるA成分とアルキルシリルイソシアネートの加水分解物もしくは部分加水分解物であるB成分が混在されてなる吸水性複合膜と、透水性を有する膜厚3〜10nmの保護膜とが積層されてなることを特徴とする防曇性基材。
A成分;アセタール化度が10mol%以下のポリビニルアセタール樹脂
B成分:一般式R2nSiR14-n(式中、R1は炭素数1または2のアルキル基、R2はイソシアネート基、nは1または2を示す)で表わされるアルキルシリルイソシアネートの加水分解物もしくは部分加水分解物 - 吸水性複合膜は、重量比率としてポリビニルアセタール樹脂が95wt%〜99wt%、アルキルシリルイソシアネートの加水分解物もしくは部分加水分解物が1wt%〜5wt%より構成されてなることを特徴とする請求項1記載の防曇性基材。
- 保護膜は、一般式R2nSiR14-n(式中、R1は炭素数1または2のアルキル基、R2はイソシアネート基、nは1または2を示す。)で表わされるアルキルシリルイソシアネートの加水分解物もしくは部分加水分解物よりなることを特徴とする請求項1記載の防曇性基材。
- 前記請求項1記載の防曇性基材を製造するに際し、
(a)基材を用意する工程と、
(b)アセタール化度が10mol%以下のポリビニルアセタール樹脂と、一般式R2nSiR14-n(式中、R1は炭素数1または2のアルキル基、R2はイソシアネート基、nは1または2を示す)で表わされるアルキルシリルイソシアネートとを、溶媒とを含む液に添加し、混合して塗布液を調製する工程と、
(c)前記塗布液を前記基材表面上に塗布し、90℃〜150℃の低温で熱処理して吸水性複合膜を成膜する工程と、
(d)前記吸水性複合膜の上層に、一般式R2nSiR14-n(式中、R1は炭素数1または2のアルキル基、R2はイソシアネート基、nは1または2を示す)で表わされるアルキルシリルイソシアネートを塗布して、90℃〜120℃の低温で熱処理して保護膜を成膜する工程と、
によって基材表面に防曇性硬化膜を形成することを特徴とする防曇性基材の形成方法。
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