JP3752739B2 - 発光素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般式Inx Ga y Alz N(ただし、x+y+z=1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1)で表される3−5族化合物半導体を用いてなる発光素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
紫外もしくは青色の発光ダイオードまたは紫外もしくは青色のレーザダイオード等の発光素子の材料として、一般式Inx Ga y Alz N(ただし、x+y+z=1、0<x≦1、0≦y<1、0≦z<1)で表される3−5族化合物半導体が知られている。以下、この一般式中のx、yおよびzをそれぞれInN混晶比、GaN混晶比、およびAlN混晶比と記すことがある。該3−5族化合物半導体では、特にInNを混晶比で10%以上含むものは、InN混晶比に応じて可視領域での発光波長を調整できるため、表示用途に重要である。
【0003】
該3−5族化合物半導体は、サファイア、GaAs、ZnO等の種々の基板の上に成膜することが試みられているが、格子定数や化学的性質が該化合物半導体と大きく異なるため、充分高品質の結晶が得られていない。このため、該化合物半導体と格子定数、化学的性質がよく似ているGaNの結晶をまず成長し、この上に該化合物半導体を成長することで優れた結晶を得ることが試みられている(特公昭55−3834号公報)。
【0004】
ところで、該3−5族化合物半導体の格子定数は、InN混晶比に大きく依存し、InN混晶比が増大するにつれて格子定数が大きくなる。このため、InN混晶比の大きな該3−5族化合物半導体を、GaNなどInを含まない3−5族化合物半導体の上に成長しようとすると、膜厚が充分小さいものでしか良好な結晶性のものを得ることができない。ところが、膜厚が小さい場合には、いわゆる格子定数の引込効果により、下地層と大きく格子定数の異なる結晶を得ることが難しいことが知られている。つまりこのことはGaNなどのInを含まない半導体層の上に高いInN混晶比の該化合物半導体の薄膜を形成することが難しいことを示している。したがって、発光素子の発光波長を、InN混晶比を大きくすることにより長くすることも難しかった。
【0005】
一方、低いInN混晶比の発光層を用いて発光波長の長い発光素子を得る方法として、該3−5族化合物半導体を用いた量子井戸構造を発光層とする発光素子において、引っ張り応力を発光層に加えることで発光波長を実質的に長くする方法が提案されている(EP0716457号公開明細書)。しかし、下地層より格子定数の大きな化合物半導体に引っ張り応力を加えるためには、下地層と発光層との接合界面に多くのミスフィット転位が発生することが避けられず、発光層の結晶性の低下が避けられなかった。ここで、ミスフィット転位とは、積層した2つの層の格子定数が異なることにより、2つの層の界面に生じる転位のことをいう。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、発光層の界面におけるミスフィット転位の発生が抑えられた発光素子を提供することにある。
本発明のもう一つの目的は、発光層の界面におけるミスフィット転位の発生が抑えられ、かつ、より長い波長の発光が容易に得られる発光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らはこのような状況をみて鋭意検討の結果、発光層の格子定数を下地層の格子定数より大きくし、該発光層を圧縮歪をもって該下地層と接しせしめることにより、ミスフィット転位の発生が抑えられることを見出すとともに、さらに該下地層のAlN混晶比を特定の範囲内にすることにより、発光波長も長くなることを見出し、本発明に至った。
即ち本発明は、一般式GabAlcN(式中、0<b<1、0<c<1、b+c=1)で表される3−5族化合物半導体よりなる下地層と、該下地層よりバンドギャップの小さい一般式InxGayAlzN(式中、0<x≦1、0≦y<1、0≦z<1、x+y+z=1)で表される3−5族化合物半導体層よりなるノンドープの発光層と、該発光層よりバンドギャップが大きく一般式Gab'Alc'N(式中、0<b’<1、0<c’<1、b’+c’=1)で表される3−5族化合物半導体よりなるノンドープの保護層とがこの順に積層されてなり、該発光層の膜厚が5Å以上90Å以下であり、該発光層の格子定数が該下地層の格子定数より大きく、かつ発光層に対して接合方向に圧縮応力が加わってなる構造を有することを特徴とする発光素子を提供するものである。
また本発明は、上記発光素子における一般式Gab Alc Nにおいて、cが0.05≦c<1であることを特徴とする実用的に一層優れた発光素子を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
次に、本発明を詳細に説明する。
本発明における発光素子とは、一般式Ina Gab Alc N(ただし、a+b+c=1、0≦a<1、0<b<1、0≦c<1)で表される下地層と、一般式Inx Ga y Alz N(ただし、x+y+z=1、0<x≦1、0≦y<1、0≦z<1)で表される発光層と、一般式Ina'Gab'Alc'N(式中、0≦a’<1、0<b’≦1、0≦c’<1、a’+b’+c’=1)で表される保護層とが順に積層された構造を有することを特徴とする。また、発光層は下地層および保護層よりもバンドギャップが小さく、この3つの層の積層構造はいわゆる量子井戸構造を形成する。下地層および保護層は発光層へ電荷を注入する作用を有するため、以下この2つの層を電荷注入層と呼ぶことがある。
【0009】
本発明の3−5族化合物半導体の構造の1例を図1に示す。図1に示す例は、基板1の上に、バッファ層2、n型GaN層3、下地層4、発光層5、保護層6、p型層7とをこの順に積層したものである。n型層3にn電極、p型層7にp電極を設け、順方向に電圧を加えることで電流が注入され、発光層5から発光が得られる。
【0010】
以下、下地層、発光層、および保護層について説明する。
下地層はAlN混晶比が0.05以上1未満であることが好ましい。AlN混晶比が0.05より小さい場合、発光波長の変化は小さくなるので0.05以上が好ましい。より好ましいAlNの混晶比は0.1以上、さらに好ましくは0.15以上である。またAlN混晶比が0.9を超えると駆動電圧が高くなる場合があるので好ましくない。したがってAlN混晶比は0.9以下が好ましい。
下地層の膜厚は、10Å以上1μm以下が好ましい。下地層の膜厚が10Åより小さい場合、本発明の効果が顕著でなく、また、下地層の膜厚が1μmを超える場合、下地層の成長に時間がかかるため、あまり実用的でない。
【0011】
本発明の下地層は、結晶性を損なわない範囲で不純物をドープしてもよい。特にn型にドープされている場合、発光素子の駆動電圧、発光効率などの特性が向上する場合があるので好ましい。具体的に好ましいドープ量の範囲としては、キャリア濃度が1×1016cm-3以上1×1022cm-3以下が挙げられる。さらに好ましくは下地層のキャリア濃度の範囲は、1×1017cm-3以上1×1021cm-3以下である。キャリア濃度が1×1016cm-3より小さい場合、電荷の注入効率が充分でない場合があり、またキャリア濃度が1×1022cm-3より大きい場合、下地層の結晶性が低下し、発光効率の低下を招く場合がある。
【0012】
下地層と基板の間には、n型またはノンドープの該化合物半導体よりなる層を1層または複数層積層してもよい。特に、格子定数が異なる該化合物半導体の薄膜を複数積層した構造は、その上に成長させる層の結晶性を向上させる場合があるので好ましい。
【0013】
次に発光層について説明する。
本発明における3−5族化合物半導体の格子定数は、混晶比により大きく変化するため、該3−5族化合物半導体の発光層と電荷注入層との間の格子定数に大きな差がある場合、格子不整合による歪みの大きさに応じて発光層の厚さを小さくすることが好ましい。
好ましい発光層の厚さの範囲は、該歪みの大きさに依存する。電荷注入層として、Gaa Alb N(ただし、a+b=1、0≦a≦1、0≦b≦1)で表される層の上にInN混晶比が10%以上の発光層を積層する場合、発光層の好ましい厚さは5Å以上90Å以下である。この場合、発光層の厚さが5Åより小さい場合、発光効率があまり充分でなくなり、また、90Åより大きい場合、欠陥が発生し、やはり発光効率があまり充分でなくなる。
【0014】
また、発光層の厚さを小さくすることで、電荷を高密度に発光層に閉じ込めることができるため、発光効率を向上させることができる。このため、格子定数の差が上記の例よりも小さい場合でも、発光層の厚さは上記の例と同様にすることが好ましい。
また、発光層がAlを含む場合、O等の不純物を取り込みやすく、発光効率が下がることがある。このような場合には、発光層としては、Alを含まない一般式Inx Gay N(ただし、x+y= 1、0<x≦1、0≦y<1)で表されるものを利用することができる。
【0015】
電荷注入層と発光層とのバンドギャップの差は、0.1eV以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.3ev以上である。電荷注入層と発光層のバンドギャップの差が0.1eVより小さい場合、発光層へのキャリアの閉じ込めが充分でなく、発光効率が低下する。ただし、電荷注入層のバンドギャップが5eVを越えると電荷注入に必要な電圧が高くなるため、電荷注入層のバンドギャップは5eV以下が好ましい。
本発明において、発光層は1層であってもよいが、複数あってもよい。このような構造の例としては、n層の発光層と、発光層よりもバンドギャップの大きな(n+1)層の層とが、交互に積層してなる(2n+1)層の積層構造が挙げられる。ここでnは正の整数であり、1以上50以下であることが好ましく、さらに好ましくは2以上30以下である。nが50を超える場合には、発光効率が下がり、成長に時間がかかるのであまり好ましくない。このような複数の発光層を有する構造は、強い光出力が必要な半導体レーザーを作製する場合に特に有用である。
【0016】
本発明において、発光層に不純物をドープすることで、発光層のバンドギャップとは異なる波長で発光させることができる。これは不純物からの発光であるため、不純物発光と呼ばれる。不純物発光の場合、発光波長は、発光層の3族元素の組成と不純物元素により決まる。この場合、発光層のInN混晶比は5%以上が好ましい。InN混晶比が5%より小さい場合、発光する光はほとんど紫外線であり、充分な明るさを感じることができない。InN混晶比を増やすにつれて発光波長が長くなり、発光波長を紫から青、緑へと調整できる。
【0017】
不純物発光に適した不純物としては、2族元素が好ましい。2族元素のなかでは、Mg、Zn、Cdをドープした場合、発光効率が高いので好適である。特にZnが好ましい。これらの元素の濃度は、いずれも1018〜1022cm-3が好ましい。発光層にはこれらの2族元素とともにSiまたはGeを同時にドープしてもよい。Si、Geの好ましい濃度範囲は1018〜1022cm-3である。
【0018】
不純物発光の場合、一般に発光スペクトルがブロードになり、また注入電荷量が増すにつれて発光スペクトルがシフトする場合がある。このため、高い色純度が要求される場合や狭い波長範囲に発光パワーを集中させることが必要な場合、バンド端発光を利用する方が有利である。バンド端発光による発光素子を実現するためには、発光層に含まれる不純物の量を低く抑えなければならない。具体的には、Si、Ge、Mg、CdおよびZnの各元素について、いずれもその濃度が1019cm-3以下が好ましい。さらに好ましくは1018cm-3以下である。
【0019】
次に、保護層について説明する。
該3−5族化合物半導体においては、発光層のInNの混晶比が高い場合、熱的な安定性が充分でなく、結晶成長中、または半導体プロセスで劣化を起こす場合がある。このような劣化を防止する目的のため発光層の上に、発光層のInN混晶比より低いInN混晶比を有する電荷注入層6を積層し、この層に保護層としての機能を持たせることができる。該保護層に充分な保護機能をもたせるためには、該保護層のInNの混晶比は10%以下が好ましく、AlNの混晶比は5%以上が好ましい。さらに好ましくはInN混晶比が5%以下、AlN混晶比が10%以上である。
【0020】
また、該保護層に充分な保護機能を持たせるためには、該保護層の厚さは10Å以上1μm以下が好ましく、さらに好ましくは、50Å以上5000Å以下である。保護層の厚さが10Åより小さい場合には充分な効果が得られにくく、また、1μmより大きい場合には発光効率が減少するのであまり好ましくない。
【0021】
なお、該保護層は発光素子の電流注入効率の点からはp型の伝導性を有することが好ましい。該保護層にp型の伝導性を持たせるためにはアクセプタ型不純物を高濃度にドープする必要がある。アクセプタ型不純物としては、具体的には2族元素が挙げられる。これらのうちでは、Mg、Znが好ましく、Mgがより好ましい。ただし、保護層に高濃度の不純物をドープした場合、保護層の結晶性が低下し、発光素子の特性をかえって低下させる場合がある。このような場合には、不純物濃度を低くする必要がある。結晶性を低下させない不純物濃度の範囲としては、好ましくは1×1019cm-3以下、さらに好ましくは1×1018cm-3以下である。
【0022】
以上説明した下地層、発光層、保護層の積層構造において、発光層に対して、接合方向に圧縮応力が加わってなる構造、すなわち接合界面と平行方向へ圧縮応力が加わってなる構造とするためには、発光層の格子定数を下地層の格子定数より大きくすればよい。このためには、例えば、発光層のInN混晶比を下地層のInN混晶比より大きくする方法が挙げられる。
ただし、発光層のInN混晶比を下地層のInN混晶比より大きくしても、これらの層を成長させる方法、条件によっては発光層と下地層との界面にミスフィット転位が発生し、発光層が格子緩和して、発光層に対して圧縮応力が加わらずに、高い結晶性の発光層を得ることができない場合がある。特に発光層を成長した後、保護層を形成せずに長時間1000℃を超える高温に保持した場合、または保護層を1000℃を超える高温で成長した場合、発光層の熱的劣化が進行する場合がある。この点で、保護層の結晶成長において、成長温度を1000℃以下とすることが好ましい。
【0023】
次に、本発明に用いられる基板について説明する。
本発明における3−5族化合物半導体の結晶成長用基板としては、サファイア、ZnO、GaAs、Si、SiC、NGO(NdGaO3 )、スピネル(MgAl2 O4 )等が用いられる。特にサファイアは透明であり、また大面積の高品質の結晶が得られるため重要である。
これらの基板を用いた成長では、基板上にZnO、SiC、GaN、AlN、GaAlNの薄膜、およびその積層膜をバッファ層として成長する、いわゆる2段階成長法により、高い結晶性のGaN、AlN、GaAlN、InGaAlN等の半導体が成長できるため好ましい。
【0024】
次に、本発明における3−5族化合物半導体の製造方法について説明する。
該3−5族化合物半導体の製造方法としては、分子線エピタキシー(以下、MBEと記すことがある。)法、有機金属気相成長(以下、MOVPEと記すことがある。)法、ハイドライド気相成長(以下、HVPEと記すことがある。)法などが挙げられる。なお、MBE法を用いる場合、窒素原料としては、窒素ガス、アンモニア、およびその他の窒素化合物を気体状態で供給する方法である気体ソース分子線エピタキシー(以下、GSMBEと記すことがある。)法が一般的に用いられている。この場合、窒素原料が化学的に不活性で、窒素原子が結晶中に取り込まれにくいことがある。その場合には、マイクロ波などにより窒素原料を励起して、活性状態にして供給することで、窒素の取り込み効率を上げることができる。
【0025】
次に、本発明における3−5族化合物半導体のMOVPE法による製造方法について説明する。
MOVPE法の場合、以下のような原料を用いることができる。
即ち、3族原料としては、トリメチルガリウム[(CH3 )3 Ga、以下TMGと記すことがある。]、トリエチルガリウム[(C2 H5 )3 Ga、以下TEGと記すことがある。]等の一般式R1 R2 R3 Ga(ここで、R1 、R2 、R3 は低級アルキル基を示す。)で表されるトリアルキルガリウム;トリメチルアルミニウム[(CH3 )3 Al]、トリエチルアルミニウム[(C2 H5 )3 Al、以下TEAと記すことがある。]、トリイソブチルアルミニウム[(i−C4 H9 )3 Al]等の一般式R1 R2 R3 Al(ここで、R1 、R2 、R3 は前記の定義と同じである。)で表されるトリアルキルアルミニウム;トリメチルアミンアラン[(CH3 )3 N:AlH3 ];トリメチルインジウム[(CH3 )3 In、以下TMIと記すことがある。]、トリエチルインジウム[(C2 H5 )3 In]等の一般式R1 R2 R3 In(ここで、R1 、R2 、R3 は前記の定義と同じである。)で表されるトリアルキルインジウム等が挙げられる。これらは単独または混合して用いられる。
【0026】
次に、5族原料としては、アンモニア、ヒドラジン、メチルヒドラジン、1、1−ジメチルヒドラジン、1、2−ジメチルヒドラジン、t−ブチルアミン、エチレンジアミンなどが挙げられる。これらは単独または混合して用いられる。これらの原料のうち、アンモニアとヒドラジンは分子中に炭素原子を含まないため、半導体中への炭素の汚染が少なく好適である。
【0027】
本発明における3−5族化合物半導体のp型ドーパントとして、2族元素が重要である。具体的にはMg,Zn,Cd,Hg,Beが挙げられるが、このなかでは低抵抗のp型のものがつくりやすいMgが好ましい。
Mgドーパントの原料としては、ビスシクロペンタジエニルマグネシウム、ビスメチルシクロペンタジエニルマグネシウム、ビスエチルシクロペンタジエニルマグネシウム、ビス−n−プロピルシクロペンタジエニルマグネシウム、ビス−i−プロピルシクロペンタジエニルマグネシウム等の一般式(RC5 H4 )2 Mg(ただし、Rは水素または炭素数1以上4以下の低級アルキル基を示す。)で表される有機金属化合物が適当な蒸気圧を有するために好適である。
【0028】
該3−5族化合物半導体のn型ドーパントとして、4族元素と6族元素が重要である。具体的にはSi、Ge、Oが挙げられるが、この中では低抵抗のn型がつくりやすく、原料純度の高いものが得られるSiが好ましい。Siドーパントの原料としては、シラン(SiH4 )、ジシラン(Si2 H6 )、モノメチルシラン(CH3 SiH3 )などが好適である。
【0029】
該3−5族化合物半導体の製造に用いられるMOVPE法による成長装置としては、通常の単枚取りまたは複数枚取りのものが挙げられる。複数枚取りのものでは、ウエファ面内でのエピ膜の均一性を確保するためには、減圧で成長することが好ましい。複数枚取り装置での好ましい成長圧力の範囲は、0.001気圧以上0.8気圧以下である。
【0030】
本発明における3−5族化合物半導体の製造に用いられるキャリアガスとしては、水素、窒素、アルゴン、ヘリウム等のガスを単独または混合して用いることができる。ただし、水素をキャリアガス中に含む場合、高いInN混晶比の化合物半導体を成長すると充分な結晶性が得られない場合がある。この場合、キャリアガス中の水素分圧を低くする必要がある。好ましい、キャリアガス中の水素の分圧は、0.1気圧以下である。
【0031】
これらのキャリアガスのなかでは、動粘係数が大きく対流を起こしにくいという点で水素とヘリウムが挙げられる。ただし、ヘリウムは他のガスに比べて高価であり、また水素を用いた場合、前述のように該化合物半導体の結晶性がよくない。窒素およびアルゴンは比較的安価であるため、大量にキャリアガスを使用する場合には好適に用いることができる。
【0032】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
MOVPE法により図2の構造の3−5族化合物半導体を作製した。
基板1としてサファイアC面を鏡面研磨したものを有機洗浄して用いた。成長方法については、低温成長バッファ層としてGaNを用いる2段階成長法を用いた。1/8気圧、550℃で厚みが約300ÅのGaNバッファ層2、1050℃で厚さが約2.5μmのSiをドープしたGaNからなるn型層3、1500ÅのノンドープGaN層8を水素をキャリアガスとして成長した。
【0033】
次に、基板温度を750℃、キャリアガスを窒素とし、キャリアガス、TEG、TMI、窒素で1ppmに希釈したシランおよびアンモニアをそれぞれ4slm、0.04sccm、0.6sccm、5sccm、4slm供給して、SiをドープしたIn0.3 Ga0.7 N層9を70秒間成長した。以下、この層を歪層と記すことがある。
さらに同じ温度にてTEG、TEA、上述のシランおよびアンモニアをそれぞれ0.032sccm、0.008sccm、、5sccm、4slm供給して、SiをドープしたGa0.8 Al0.2 Nからなる下地層4を10分間成長した。
ただし、slmおよびsccmとは気体の流量の単位で1slmは1分当たり、標準状態で1リットルの体積を占める重量の気体が流れていることを示し、1000sccmは1slmに相当する。
なお、この層9と層4の膜厚に関しては、同一の条件でより長い時間成長した層の厚さから求めた成長速度がそれぞれ43Å/分、30Å/分であるので、上記成長時間から求められる膜厚は、それぞれ50Å、300Åと計算できる。
【0034】
下地層4を成長後、歪層および下地層と同じ原料供給量によりノンドープのIn0.3 Ga0.7 Nの発光層5を50ÅとノンドープのGa0.8 Al0.2 Nの保護層6を300Å成長した。
保護層6を成長後、成長圧力を1気圧、基板の温度を1100℃とし、MgをドープしたGaNからなるp型層7を5000Å成長した。こうして作製した試料を1気圧の窒素中800℃、20分の熱処理を行ない、Mgドープ層を低抵抗にした。
このようにして得られた試料を常法に従い、電極を形成し、発光素子とした。p電極としてNi−Au合金、n電極としてAlを用いた。この発光素子に順方向に20mAの電流を流したところ、明瞭な青色発光を示し、発光ピークの中心波長は4600Åであった。
【0035】
つぎに歪層9を成長した後に、Ga0.8 Al0.2 N層3にかえてGa0.7 Al0.3 N層4を成長したことを除いては、上記の実施例と同様にして発光素子を作製した。これを同様にして評価したところ、発光ピーク波長5050Åであり、上記の実施例に比べて発光波長が長波長化した。
【0036】
実施例2
実施例1と同様にしてGa0.8 Al0.2 Nの下地層4までを成長した後、温度を785℃、圧力を1気圧とし、TMI、TEGにより、ノンドープのInGaN発光層を50Å、TEAとTEGによりGaAlN保護層6を300Å成長した。さらに温度を1100℃とし、実施例1と同様にしてMgをドープしたGaN層7を5000Å成長した。また下地層4をGaNとしたことを除いては上記の試料と同様の試料を作製した。
これらの試料を実施例1と同様にして評価したところ、下地層がGa0.8 Al0.2 Nのものでは発光ピークの中心波長が4800Åであったのに対して、下地層がGaNのものでは4600Åであった。
【0037】
実施例3
圧力が1気圧であることを除いては実施例1と同様にして、550℃でバッファ層2、1100℃でn型のGaN層3(膜厚約3μm)、n型のGa0.8 Al0.2 N下地層4、800℃で、InGaN活性層5、Ga0.8 Al0.2 N保護層6、1100℃でMgドープのGaN層7を成長した。またノンドープのGaNを下地層4とするほかは上記実施例と同様の試料を作製した。
こうして得られた試料を実施例1と同様にして評価したところ、下地層がGaNのものでは発光波長は20mAで4500Åであったのに対して、下地層がGa0.8 Al0.2 Nのものでは4800Åであった。
【0038】
実施例3−2
なお、上記実施例と同様にして1100℃でノンドープGaN、800℃でノンドープInGaN活性層、さらにこの温度でノンドープGaAlN保護層を積層した量子井戸構造を作製し、電子顕微鏡により格子像を観察したところ、活性層の前後でミスフィット転位の発生は見られなかった。InGaNはGaNより格子定数が大きいため、量子井戸構造の前後でミスフィット転位が発生していないことから、InGaN層には界面方向に圧縮応力が加わっていることがわかる。
【0039】
実施例4
800℃で600ÅのnGa0.6 Al0.4 Nを下地層4として成長したことを除いては実施例3と同様にして試料を作製した。これを実施例1と同様にして評価したところ、明瞭な緑色発光が認められた。1mAでの発光波長は5200Åであった。
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば、発光層の界面におけるミスフィット転位の発生が抑えられる結果、高品質の発光素子が得られる。また、本発明によれば、より長い波長の発光が容易に得られる結果、広い範囲で発光波長の制御が容易であり、本発明はその工業的価値が大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の発光素子で用いる3−5族化合物半導体の1例を示す断面図。
【図2】実施例1で作製した本発明の発光素子で用いる3−5族化合物半導体を示す概略断面図。
【符号の説明】
1...基板
2...バッファ層
3...n型層
4...下地層
5...発光層
6...保護層
7...p型層
8...ノンドープGaN層
9...歪層
Claims (6)
- 一般式GabAlcN(式中、0<b<1、0<c<1、b+c=1)で表される3−5族化合物半導体よりなる下地層と、該下地層よりバンドギャップの小さい一般式InxGayAlzN(式中、0<x≦1、0≦y<1、0≦z<1、x+y+z=1)で表される3−5族化合物半導体層よりなるノンドープの発光層と、該発光層よりバンドギャップが大きく一般式Gab'Alc'N(式中、0<b’<1、0<c’<1、b’+c’=1)で表される3−5族化合物半導体よりなるノンドープの保護層とがこの順に積層されてなり、該発光層の膜厚が5Å以上90Å以下であり、該発光層の格子定数が該下地層の格子定数より大きく、かつ発光層に対して接合方向に圧縮応力が加わってなる構造を有することを特徴とする発光素子。
- 一般式GabAlcNにおいて、cが0.05≦c<1であることを特徴とする請求項1記載の発光素子。
- 下地層におけるn型キャリア濃度が1×1016cm-3以上1×1022cm-3以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の発光素子。
- 発光層に含まれるSi、Ge、Zn、CdおよびMgの各元素の濃度がいずれも1×1019cm-3以下であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の発光素子。
- 保護層に含まれるMgの濃度が1×1019cm-3以下であることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の発光素子。
- 保護層を1000℃以下の温度で成長することを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の発光素子の製造方法。
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