JP3747249B2 - 高分子乳化剤、その製造法及びそれを用いる乳化重合法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な高分子乳化剤、その製造法及びそれを用いる乳化重合法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、乳化重合により得られる水性樹脂エマルションは、塗料、接着剤等の樹脂成分として、塗膜形態にて幅広く用いられている。
【0003】
従来の水性樹脂エマルションには、乳化重合時に使用した低分子乳化剤が塗膜中に残留することに起因して、塗膜の耐水性、接着性等の物性が低下するという問題があった。
【0004】
かかる問題を、解決する方法として、有機溶剤中でカルボキシル基含有モノマー等を重合して得られた高分子物質のアルカリ水溶液を、高分子乳化剤として用いて、ラジカル重合性不飽和モノマーを乳化重合して水性樹脂エマルションを得る方法が開示されている(特開平7−316470号公報、特開平8−3895号公報及び特開平8−176486号公報)。
【0005】
しかしながら、これらの方法には、使用する高分子乳化剤が、カルボキシル基含有モノマー等を有機溶剤中で溶液重合後、生成した高分子物質を分離しアルカリ水溶液に溶解して得られるものであることから、重合時に有機溶剤を大量に使用するため、有機溶剤の回収、処理が煩雑であること、有機溶剤により環境問題を引き起こすこと、資源節約の観点からも好ましくないこと等の問題がある。
【0006】
従って、上記問題が解消された高分子乳化剤等が、要望されているのが、現状である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、前記従来技術の諸問題が解消された、新規な高分子乳化剤、その製造法及び該乳化剤を用いる乳化重合法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意研究した結果、特定の三種のモノマーを、有機溶剤及び乳化剤を使用することなく、乳化重合して得られる三元共重合体をアルカリ加水分解してなる高分子乳化剤により、上記課題を全て達成できることを見出し、これに基づき本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、以下の高分子乳化剤、その製造法及び乳化重合法に係るものである。
【0010】
1.スチレン、アクリル酸メチル及びアクリル酸を、乳化剤の不存在下に、乳化共重合してこれらの三元共重合体を合成し、次いで該三元共重合体のメチルエステル基をアルカリ加水分解して、スチレン−アクリル酸二元共重合体に変換してなる高分子乳化剤。
【0011】
2.スチレン、アクリル酸メチル及びアクリル酸のモノマー比率が、これらのモノマーの合計モル量に対して、スチレンが5〜20モル%、アクリル酸メチルが94〜65モル%及びアクリル酸が1〜15モル%である上記項1に記載の高分子乳化剤。
【0012】
3.スチレン、アクリル酸メチル及びアクリル酸を、乳化剤の不存在下に、乳化共重合してこれらの三元共重合体を合成し、次いで該三元共重合体のメチルエステル基を、アルカリ加水分解して、スチレン−アクリル酸二元共重合体に変換することを特徴とする高分子乳化剤の製造法。
【0013】
4.スチレン、アクリル酸メチル及びアクリル酸のモノマー比率が、これらのモノマーの合計モル量に対して、スチレンが5〜20モル%、アクリル酸メチルが94〜65モル%及びアクリル酸が1〜15モル%である上記項3に記載の高分子乳化剤の製造法。
【0014】
5.上記項1に記載の高分子乳化剤の存在下に、ラジカル重合性不飽和モノマーを乳化重合して、樹脂エマルションを得ることを特徴とする乳化重合法。
【0015】
6.スチレン、アクリル酸メチル及びアクリル酸を、乳化剤の不存在下に、乳化共重合してこれらの三元共重合体を合成し、該三元共重合体のメチルエステル基をアルカリ加水分解して、スチレン−アクリル酸二元共重合体に変換して得られた高分子乳化剤を分離することなく用い、その存在下で、ラジカル重合性不飽和モノマーを乳化重合する上記項5に記載の乳化重合法。
【0016】
7.ラジカル重合性不飽和モノマーが、スチレン系モノマー、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド系モノマー、シリル基含有(メタ)アクリレート、ニトリル基含有モノマー、ビニル系モノマー、オレフィン系モノマー、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート及びカルボキシル基含有モノマーからなる群から選ばれる少なくとも一種のモノマーである上記項5又は6に記載の乳化重合法。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の高分子乳化剤は、スチレン、アクリル酸メチル及びアクリル酸の三種のモノマーを、乳化剤の不存在下に、有機溶剤を実質的に使用することなく、水中で、乳化共重合してこれらの三元共重合体を合成し、次いで該三元共重合体中のアクリル酸メチルに由来するメチルエステル基を、アルカリ加水分解して、スチレン−アクリル酸二元共重合体に変換することにより、製造されるものである。
【0018】
上記スチレン、アクリル酸メチル及びアクリル酸のモノマー比率は、これらのモノマーの合計モル量に対して、スチレンが5〜20モル%、アクリル酸メチルが94〜65モル%及びアクリル酸が1〜15モル%であるのが好ましい。疎水性モノマーであるスチレンが上記範囲よりも多くなると、無乳化剤乳化重合の完結に長時間を要すると共に、得られる高分子乳化剤の乳化性能が低下する傾向にあり、一方この範囲より少なくなっても得られる高分子乳化剤の乳化性能が低下する傾向にある。水溶性モノマーであるアクリル酸が上記範囲より多くなると凝集粒子が発生し、乳化重合が進み難くなる傾向にあり、一方この範囲より少ないとアクリル酸メチルに由来するメチルエステル基のアルカリ加水分解の完結に長時間を要する傾向にある。また、親水性モノマーであるアクリル酸メチルは、上記範囲内に調整することにより、スチレン及びアクリル酸と共に、三元乳化共重合をすることを容易にする作用を有すると共に、重合後のアルカリ加水分解を受けてアクリル酸成分に変わり、重合体を水中に溶解乃至分散させて、乳化剤としての機能を発現させる役割を有する。
【0019】
スチレン、アクリル酸メチル及びアクリル酸のモノマー比率は、より好ましくは、これらのモノマーの合計モル量に対して、スチレンが10〜15モル%、アクリル酸メチルが89〜75モル%及びアクリル酸が1〜10モル%である。
【0020】
上記スチレン、アクリル酸メチル及びアクリル酸である三種のモノマーを、無乳化剤乳化共重合する際には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、例えばアクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸、α−メチルスチレン等のその他のモノマーを、適宜、代用又は併用することも可能である。
【0021】
上記無乳化剤乳化共重合を行う際には、ラジカル重合開始剤、還元剤、緩衝剤等を使用することができる。該重合開始剤としては、例えば、開始剤切片として硫酸基を重合体末端に導入できる、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類;アニオン性のカルボキシル基を重合体末端に導入できる、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリン酸塩;カチオン性のアミジニウム基を重合体末端に導入できる、2,2’−アゾビス−2−アミジノプロパン塩酸塩等のアゾ化合物類を使用できる。4,4’−アゾビス−4−シアノバレリン酸塩の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等を挙げることができる。還元剤としては、例えば、チオ硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄等を使用できる。また、緩衝剤としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、硼酸ナトリウム等を使用できる。
【0022】
一方、得られる高分子乳化剤を用いてラジカル重合性不飽和モノマーを乳化重合して得られる樹脂エマルションの塗膜の物性低下を、防止するため、乳化剤は使用しない。
【0023】
上記無乳化剤乳化共重合をする際のモノマー濃度は、特に限定されず、適宜決定される。通常は、1〜30重量%程度とするのが適当である。
【0024】
上記無乳化剤乳化共重合により、スチレン、アクリル酸メチル及びアクリル酸の三元ランダム共重合体の水分散液を得る。該共重合体である分散粒子の粒径は、流体力学的径(hydrodynamic diameter)で、通常、50〜1,000nm程度である。
【0025】
次いで、上記無乳化剤乳化共重合により得られた、スチレン、アクリル酸メチル及びアクリル酸の三元共重合体をアルカリ加水分解する。これにより、アクリル酸メチルに由来するメチルエステル基が、加水分解されてカルボキシル基に変換される。即ち、上記三元共重合体が、スチレン−アクリル酸二元共重合体に変換することになる。この二元共重合体が、本発明の高分子乳化剤の有効成分である。この際、アクリル酸成分は、アルカリ添加により直ちに中和されて粒子のアルカリ膨潤を生じさせることに働き、結果として迅速な加水分解反応の進行に寄与する。
【0026】
上記アルカリ加水分解に使用するアルカリ化合物としては、アルカリ金属水酸化物、アンモニア、有機アミン等を挙げることができる。アルカリ金属水酸化物としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。また、有機アミンとしては、例えばジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン等のアルキルアミン;モノエタノールアミン、エチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン等が挙げられる。これらのアルカリ化合物の一種又は二種以上を使用する。
【0027】
アルカリ化合物の使用量は、通常、原料として用いたアクリル酸メチル1モル当たり、0.5〜10モル量程度とするのが適当である。
【0028】
かくして、通常、スチレン−アクリル酸二元共重合体の水分散液又は水溶液として、本発明の高分子乳化剤を得る。但し、当該乳化剤中に、スチレン−アクリル酸メチル−アクリル酸三元共重合体の一部が、アルカリ加水分解されずに残存していても何ら差し支えない。
【0029】
上記水分散液又は水溶液として得られた本発明高分子乳化剤における上記二元共重合体の濃度は、通常、1〜30重量%程度である。当該乳化剤は、通常、上記二元共重合体中のアクリル酸に基づくカルボキシル基が、用いたアルカリ化合物との塩を形成した状態で、水中で、イオン化しているものである。
【0030】
本発明の高分子乳化剤は、通常、水を分離することなく、そのまま水分散液又は水溶液の状態で、好適に使用できる。この際、必要に応じて、適宜、所望の濃度に希釈又は濃縮して用いることもできる。希釈は、通常、水希釈により行われる。更に、必要に応じて、水を分離して固体状にして使用することもできる。
【0031】
本発明の高分子乳化剤を、乳化剤として用いて、ラジカル重合性不飽和モノマーを乳化重合することにより、樹脂エマルションを好適に得ることができる。
【0032】
また、特に、本発明乳化剤を、前記水分散液から分離することなく、そのまま又は適宜希釈若しくは濃縮して、ラジカル重合性不飽和モノマーの乳化重合に、好適に使用することができる。
【0033】
即ち、スチレン、アクリル酸メチル及びアクリル酸を、乳化剤の不存在下に、乳化共重合してこれらの三元共重合体を合成し、該三元共重合体のメチルエステル基をアルカリ加水分解して、スチレン−アクリル酸二元共重合体に変換して得られた本発明の高分子乳化剤を分離することなく用い、その存在下で、ラジカル重合性不飽和モノマーを乳化重合することにより、樹脂エマルションを、より好適に得ることができる。
【0034】
本発明乳化剤を用いて、乳化重合されるラジカル重合性不飽和モノマーとしては、特に限定されず、広い範囲から適宜使用できる。
【0035】
上記ラジカル重合性不飽和モノマーとしては、例えば、スチレン系モノマー、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、シリル基含有(メタ)アクリレート、ニトリル基含有モノマー、ビニル系モノマー、オレフィン系モノマー、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、カルボキシル基含有モノマー等を挙げることができる。これらのモノマーは、いずれか一種を単独で用いてもよいし、いずれか二種以上を任意の組み合わせ及び割合で、混合して用いてもよい。
【0036】
上記スチレン系モノマーの具体例としては、例えば、スチレン及びα−メチルスチレン、p−メチルスチレン、クロルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体を挙げることができる。
【0037】
アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベへニル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0038】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0039】
(メタ)アクリルアミド系モノマーの具体例としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等を挙げることができる。
【0040】
シリル基含有(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0041】
ニトリル基含有モノマーの具体例としては、例えば、(メタ)アクリロニトリル、シアン化ビニリデン、α−シアノエチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0042】
ビニル系モノマーの具体例としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系モノマー、塩化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル系モノマー、ビニルピロリドン、ビニルピリジン等を挙げることができる。
【0043】
オレフィン系モノマーの具体例としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、イソブチレン等を挙げることができる。
【0044】
ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0045】
カルボキシル基含有モノマーの具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸のハーフアルキルエステル、マレイン酸のハーフアルキルエステル等を挙げることができる。
【0046】
本発明乳化剤を用いて、ラジカル重合性不飽和モノマーを乳化重合させる際には、ラジカル重合開始剤、還元剤、緩衝剤等を使用することができる。該重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類;4,4’−アゾビス−4−シアノバレリン酸塩、2,2’−アゾビス−2−アミジノプロパン塩酸塩等のアゾ化合物類;過酸化水素、tert-ブチルハイドロペルオキシド、クメンハイドロペルオキシド等の過酸化物類等を使用できる。還元剤としては、例えば、チオ硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄等を使用できる。また、緩衝剤としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、硼酸ナトリウム等を使用できる。
【0047】
本発明の高分子乳化剤は、疎水性部分と親水性部分とを併有する高分子物質であることから、ラジカル重合性不飽和モノマーを乳化重合する場合の重合の場として機能するため、重合速度を向上させることができ、又生成した樹脂エマルションの分散安定性に優れる。
【0048】
【実施例】
以下、実施例を挙げて、本発明をより一層具体的に説明する。
【0049】
実施例1
300mlの四ツ口セパラブルガラス製重合フラスコに、脱イオン水190g、スチレン1.2g、アクリル酸メチル8.4g、アクリル酸0.4g及び過硫酸カリウム0.05gを入れ、窒素雰囲気下、半円型攪拌棒による120rpmの撹拌下に、70℃で24時間、乳化共重合反応を行って、これらのモノマーの三元共重合体の5重量%水分散液を得た。ここで、スチレン、アクリル酸メチル及びアクリル酸のモノマー比率は、これらのモノマーの合計モル量に対して、スチレンが10モル%、アクリル酸メチルが85モル%及びアクリル酸が5モル%であった。上記水分散液は乳白色であった。また、上記三元共重合体が生成していることを、1H−NMRスペクトルにより、確認した。また、この水分散液中の上記共重合体粒子の流体力学的径を、動的光散乱装置(以下「DLS」と略す)により測定したところ、250nmであった。
【0050】
次に、上記水分散液200gに、1N水酸化カリウム水溶液70gを入れ、撹拌下に、80℃で12時間、アルカリ加水分解反応を行って、スチレン−アクリル酸二元共重合体のカリウム塩水溶液である高分子乳化剤を得た。この加水分解反応において、三元共重合体を構成するアクリル酸メチルと水酸化カリウムとのモル比は、アクリル酸メチル1モル当たり水酸化カリウム5モルであった。上記水溶液は透明であった。また、この二元共重合体が生成していることを、1H−NMRスペクトルにより、確認した。更に、この二元共重合体の多くが水中において会合体を形成しており、水難溶性の疎水性モノマーのいわゆる可溶化能を有することが、ピレンのUVスペクトルにより、確認された。
【0051】
かくして得られた高分子乳化剤を、水希釈して、スチレンの乳化重合を行った。即ち、別の300mlの四ツ口セパラブルガラス製重合フラスコに、スチレン5.3g、過硫酸カリウム13mg、該高分子乳化剤2.7mg(濃度0.025g/l)及び水100gの配合割合の混合液(当初pH9.8)を、窒素雰囲気下、半円型攪拌棒による120rpmの撹拌下に、70℃で6時間、乳化重合反応を行って、ポリスチレンを得た。6時間後の重合率は、約90%であり、高かった。これに対して、該高分子乳化剤を使用しない場合は、6時間後の重合率は約45%であり、低かった。
【0052】
実施例2
300mlの四ツ口セパラブルガラス製重合フラスコに、脱イオン水190g、スチレン1.8g、アクリル酸メチル7.9g、アクリル酸0.4g及び過硫酸カリウム0.05gを入れ、窒素雰囲気下、半円型攪拌棒による120rpmの撹拌下に、70℃で24時間、乳化共重合反応を行って、これらのモノマーの三元共重合体の5重量%水分散液を得た。ここで、スチレン、アクリル酸メチル及びアクリル酸のモノマー比率は、これらのモノマーの合計モル量に対して、スチレンが15モル%、アクリル酸メチルが80モル%及びアクリル酸が5モル%であった。上記水分散液は乳白色であった。また、上記三元共重合体が生成していることを、1H−NMRスペクトルにより、確認した。また、この水分散液中の上記共重合体粒子の流体力学的径を、DLSにより測定したところ、270nmであった。
【0053】
次に、上記水分散液200gに、1N水酸化カリウム水溶液65gを入れ、撹拌下に、80℃で12時間、アルカリ加水分解反応を行って、スチレン−アクリル酸二元共重合体のカリウム塩水溶液である高分子乳化剤を得た。この加水分解反応において、三元共重合体を構成するアクリル酸メチルと水酸化カリウムとのモル比は、アクリル酸メチル1モル当たり水酸化カリウム5モルであった。上記水溶液は青みがかった透明液であった。また、この二元共重合体が生成していることを、1H−NMRスペクトルにより、確認した。
【0054】
かくして得られた高分子乳化剤を種々の濃度に調整して、スチレンの乳化重合を行った。即ち、別の300mlの四ツ口セパラブルガラス製重合フラスコに、スチレン5.3g、過硫酸カリウム13mg、該高分子乳化剤の濃度が0.025g/l、0.05g/l又は0.5g/lとなる量の乳化剤及び水100gの配合割合の混合液を、窒素雰囲気下、半円型攪拌棒による120rpmの撹拌下に、70℃で6時間、乳化重合反応を行って、ポリスチレンを得た。
【0055】
図1は、上記乳化重合における、重合率の経時変化を示すグラフである。図1の縦軸は重合率(%)を、横軸は重合時間(hr)を、それぞれ示す。図1において、○はコントロール(乳化剤なし)を、●は乳化剤濃度0.5g/lを、▲は乳化剤濃度0.05g/lを、■は乳化剤濃度0.025g/lを、それぞれ示す。図1の結果より、本発明の高分子乳化剤を用いることにより、重合速度が増大し、重合率も高くなることが明らかである。
【0056】
実施例3
300mlの四ツ口セパラブルガラス製重合フラスコに、脱イオン水190g、スチレン2.3g、アクリル酸メチル7.3g、アクリル酸0.4g及び過硫酸カリウム0.05gを入れ、窒素雰囲気下、半円型攪拌棒による120rpmの撹拌下に、70℃で24時間、乳化共重合反応を行って、これらのモノマーの三元共重合体の5重量%水分散液を得た。ここで、スチレン、アクリル酸メチル及びアクリル酸のモノマー比率は、これらのモノマーの合計モル量に対して、スチレンが20モル%、アクリル酸メチルが75モル%及びアクリル酸が5モル%であった。上記水分散液は乳白色であった。また、上記三元共重合体が生成していることを、1H−NMRスペクトルにより、確認した。また、この水分散液中の上記共重合体粒子の流体力学的径を、DLSにより測定したところ、230nmであった。
【0057】
次に、上記水分散液200gに、1N水酸化カリウム水溶液60gを入れ、撹拌下に、80℃で12時間、アルカリ加水分解反応を行って、スチレン−アクリル酸二元共重合体のカリウム塩水分散液である高分子乳化剤を得た。この加水分解反応において、三元共重合体を構成するアクリル酸メチルと水酸化カリウムとのモル比は、アクリル酸メチル1モル当たり水酸化カリウム5モルであった。上記乳化剤は乳白色の分散液であった。また、この二元共重合体が生成していることを、1H−NMRスペクトルにより、確認した。
【0058】
かくして得られた高分子乳化剤を水希釈して用いてスチレンの乳化重合を行った。即ち、別の300mlの四ツ口セパラブルガラス製重合フラスコに、スチレン5.3g、過硫酸カリウム13mg、該高分子乳化剤2.7mg及び水100gの配合割合の混合液を、窒素雰囲気下、いかり型攪拌棒の120rpmの撹拌下に、70℃で6時間、乳化重合反応を行って、ポリスチレンを得た。6時間後の重合率は、約90%であり、高かった。これに対して、該高分子乳化剤を使用しない場合は、6時間後の重合率は約50%であり、低かった。
【0059】
【発明の効果】
本発明により、次のような格別顕著な効果が奏される。
【0060】
(1)本発明の高分子乳化剤は、無乳化剤乳化重合により、製造されるため、有機溶剤の使用に基づく煩雑な工程が不要であり、又環境問題、資源問題等を生じない。また、水分散液又は水溶液の状態で得ることができるため、そのまま又は適宜希釈若しくは濃縮して、ラジカル重合性不飽和モノマーの乳化重合に好適に使用できる。
【0061】
(2)本発明の高分子乳化剤を用いてラジカル重合性不飽和モノマーを乳化重合する場合には、重合速度が増大し、重合率も高くなる。
【0062】
(3)本発明高分子乳化剤を用いてラジカル重合性不飽和モノマーを乳化重合して得られる樹脂エマルションは、低分子乳化剤を含んでいないため、その塗膜の耐水性、接着性等の物性が優れている。
【0063】
(4)本発明高分子乳化剤を用いてラジカル重合性不飽和モノマーを乳化重合して得られる樹脂エマルションは、高い分散安定性を有している。従って、該樹脂エマルションの樹脂濃度を高くすること、即ちハイソリッド化することが容易にできる。また、ハイソリッド化が必要でない場合には、該乳化剤の使用量を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例2で得た本発明の高分子乳化剤を用いて、スチレンを乳化重合した場合における、重合率の経時変化を示すグラフである。
Claims (3)
- スチレン、アクリル酸メチル及びアクリル酸を、これらのモノマーの合計モル量に対して、スチレンが5〜20モル%、アクリル酸メチルが94〜65モル%及びアクリル酸が1〜15モル%である比率で、乳化剤の不存在下に、乳化共重合してこれらの三元共重合体を合成し、次いで該三元共重合体のメチルエステル基を、アルカリ加水分解して、スチレン−アクリル酸二元共重合体に変換することを特徴とする高分子乳化剤の製造法。
- スチレン、アクリル酸メチル及びアクリル酸を、乳化剤の不存在下に、乳化共重合してこれらの三元共重合体を合成し、該三元共重合体のメチルエステル基をアルカリ加水分解して、スチレン−アクリル酸二元共重合体に変換して得られた高分子乳化剤を分離することなく用い、その存在下に、ラジカル重合性不飽和モノマーを乳化重合して、樹脂エマルションを得ることを特徴とする乳化重合法。
- ラジカル重合性不飽和モノマーが、スチレン系モノマー、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド系モノマー、シリル基含有(メタ)アクリレート、ニトリル基含有モノマー、ビニル系モノマー、オレフィン系モノマー、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート及びカルボキシル基含有モノマーからなる群から選ばれる少なくとも一種のモノマーである請求項2に記載の乳化重合法。
Priority Applications (1)
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