JP3744810B2 - 端子・コネクタ用銅合金及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は端子、コネクタ、ワイヤハーネス及びターミナル等に用いられる銅合金に関し、さらに詳しくは耐応力緩和特性及びはんだ耐候性に優れた、自動車等、民生及び産業用の端子・コネクタ用銅合金に関する。
【0002】
【従来の技術】
上記の用途には従来、強度−導電率バランスや廉価であることなどの点から、いわゆる黄銅が多用されてきた。しかしながら、例えば近年の自動車エンジン電子制御の進展によって、自動車車載用ジャンクションブロック通電材料及びその中継部品、端子・コネクタなどの接続部品にもエンジンルームのような高温環境下で信頼性を確保できる性能が求められるようになってきた。
【0003】
この高温環境下での信頼性において最も重要な特性のひとつは、接点嵌合力の維持特性、いわゆる耐応力緩和特性である。すなわち銅及び銅合金のばね形状部品に定常の変位を与えた場合、例えばオス端子のタブをメス端子のばね形状をした接点で嵌合しているような場合、これらの接続部品がエンジンルームのような高温環境下に保持されていると、経時とともにその接点嵌合力を失っていくが、それに対する抵抗特性である。黄銅ではこの耐応力緩和特性が低いという問題があった。また、黄銅より高強度の要求される端子用としてりん青銅が多用されているが、りん青銅においても耐応力緩和特性が低く、導電率及び耐マイグレーション性と共に問題となっている。
【0004】
これに対して特開平4−154942号公報には耐応力緩和特性に優れるCu−Ni−Sn−P合金が開示されている。この合金はNi−P金属間化合物を均一微細に分散させて、強度、導電率、ばね限界値、耐応力緩和特性などを向上させる析出型銅合金である。コルソン銅合金で知られるCu−Ni−Si合金の析出物であるNi−Si金属間化合物の析出活性化エネルギーが約80kJ/molと比較的高い値であるのに比べると、Ni−P金属間化合物はその析出活性化エネルギーが約25kJ/molと低い。これはNi−P金属間化合物が容易に析出し、さらには凝集粗大化しやすいことを示しており、前記公報にも、Ni−P化合物の凝集粗大化を防止して、ばね限界値、耐応力緩和特性及び曲げ加工性等の特性を得るためには、熱間圧延の冷却開始、終了温度、その冷却速度、さらにはその後の冷間圧延工程途中で施す5〜720分の熱処理の温度と時間とを厳密に制御する必要性が述べられている。
【0005】
しかしながら、例えば焼鈍の場合では製品の焼鈍炉への挿入に要する時間と昇温に要する時間、さらには5〜720分の保持時間と、製品が不必要な酸化をきたさない温度まで冷却する時間などを要するために、このような厳密な熱処理工程の制御は生産の非効率性につながり、さらにはそれが製品価格にまで反映されてしまうという問題があった。
一方、特開平5−311288号公報には、P添加量を0.005〜0.5重量%とし、さらに0.005〜0.5重量%のFe、Ni、Coなどを共添してPと金属間化合物を形成せしめ、固溶Pを低減させる方法が開示されている。しかしながら、このような方法では加工・熱処理条件によっては、曲げ加工性やめっき性を劣化させる粗大な金属のりん化合物を形成してしまう可能性が常に残る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
いずれにしても、Cu−Ni−Sn−P系合金の耐応力緩和特性を高めるため、従来はNi−P化合物を積極的に析出させている。そして、Ni−P化合物を均一微細に析出させるために厳密な熱処理を要求され、製品が高価となっていた。
従って、本発明は、Cu−Ni−Sn−P系合金について、高度な鋳造あるいは熱処理技術を必要とせず、きわめて短時間の焼鈍熱処理で製造可能な、廉価で耐応力緩和特性に優れた銅合金を得ることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、従来析出型銅合金として積極的にNi−P化合物を析出させていたCu−Ni−Sn−P系合金について、Ni−P化合物の析出をできるだけ抑え、いわば固溶型銅合金として取り扱うことで、上記目的を達成することができた。
すなわち、本発明に係る端子・コネクタ用銅合金は、Ni:0.8〜1.5質量%、Sn:0.5〜2.0質量%、Zn:0.015〜5.0質量%、P:0.005〜0.1質量%を含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなるとともに、析出物の面積率が5%以下であることを特徴とする。
【0008】
上記銅合金は、さらに、Mg;0.001〜0.2質量%とFe:0.001〜0.1質量%のいずれか一方又は双方を含有することことができる。また、O含有量:50ppm以下、H含有量:2ppm以下とするのが望ましい。そして、上記銅合金は、必要に応じて、Ag、Ti、Si、Ca、Mn、Be、Al、V、Cr、Co、Zr、Nb、Mo、In、Pb、Hf、Ta、Bの1種又は2種以上を、各々0.0005〜0.03質量%、かつ総量で0.0005〜0.3質量%含むことができる。
【0009】
上記端子・コネクタ用銅合金は、必要に応じて熱間圧延した後、冷間圧延し、その冷間圧延途中で少なくとも1度焼鈍して再結晶させ、最終冷間圧延後さらに安定化焼鈍して製造されるが、優れた耐応力緩和特性を得るためには、安定化焼鈍後において、析出物等の未固溶物の面積率が5%以下となっている必要がある。あるいは、当該合金を焼鈍して得られる導電率の最大値に対して90%以下の導電率となっている必要がある。そのため、冷間圧延工程の途中での焼鈍を連続炉において450〜850℃の温度範囲で5秒以上1分以下の条件で実施し、最終冷間圧延後の安定化焼鈍を連続炉において250〜850℃の温度範囲で5秒以上1分以下の条件で実施し、かついずれもそのときの昇温及び冷却速度を10℃/秒以上とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に本発明に係る端子・コネクタ用銅合金について詳細に説明する。先ず、各添加元素の添加理由及び組成限定理由について説明する。
(Ni)
母相に固溶したNiは応力負荷時の転位の移動速度を減少させる作用を有する。この作用により耐応力緩和特性及び強度を向上させる。しかしながら、焼鈍により本発明の銅合金に含まれるPとの化合物を形成した場合は、固溶量が減少するため耐応力緩和特性が著しく低下する。従って、本発明の銅合金においてはNiを固溶させる必要がある。その含有量が0.8質量%未満では目標とする耐応力緩和特性及び強度が得られず、また、1.5質量%を超えて含有されるとPとの化合物が形成されやすくなるとともに、電気伝導度及びはんだ耐候性の低下を招き、コスト的にも不利である。従って、Niの添加量は0.8〜1.5質量%とした。
【0011】
(Sn)
Snは、機械的性質の向上、特に耐力と伸びのバランスひいては成形加工性及びばね限界値並びに耐応力緩和特性の向上に効果をもたらすが、0.5質量%未満では効果が得られず、また、2.0質量%を超えて含有されると電気伝導度の低下を招き、経済的でない。従って、Snの添加量は0.5〜2.0質量%とした。
(Zn)
Znは、電圧が印加された電気・電子部品の極間に水の侵入又は結露等が生じた場合のCuのマイグレ−ション形成を抑制し、漏洩電流を抑制するための必須元素である。さらに、強度向上、はんだの密着性向上及びSnめっき後のウイスカー発生を抑制する元素である。Zn含有量が0.015質量%未満では耐マイグレーション性やはんだの密着性向上、ウイスカー発生の抑制効果が小さく、Zn含有量が5.0質量%を超えた場合は導電率が低くなり、また、応腐食割れを起こし易くなる。従って、Zn含有量は0.015〜5.0質量%とする。
【0012】
(P)
Pは主として鋳塊の健全性向上(脱酸、湯流れ等)に寄与する元素である。Pは含有量が、0.005質量%未満では、溶湯中の脱酸効果が得られない。一方、0.1質量%を超えて添加されると容易にNi−P金属間化合物を析出し、これが凝集粗大化して製品の機械的性質や曲げ加工性あるいはめっき性を阻害する。また、Ni−P化合物を析出させない範囲での熱処理が行われたとしても、0.1質量%を超えて添加されるとはんだ及びSnめっきの剥離現象を引き起こす。従って、P添加量は0.005〜0.1質量%とする。前記範囲においてPの含有量は0.03質量%未満であることが望ましく、0.02質量%未満であることが更に望ましい。
【0013】
(Mg、Fe)
これらの元素は微量添加により、さらに耐応力緩和特性を向上させる効果を有するが、いずれも0.001質量%未満では効果がなく、Mgが0.2質量%、Feが0.1質量%を超えて含有されると導電率、はんだ耐候性及び曲げ加工性の低下を招く。従って、Mg添加量は0.001〜0.2質量%、Fe添加量は0.001〜0.1質量%とする。
【0014】
(O、H)
本発明合金も溶湯の段階では気体元素であるH及びOを吸収している。これらは凝固時に溶湯中から追い出されてくるため、O含有量を50ppm以下でかつH含有量を2ppm以下に規制しておかなければ鋳造時の湯流れ性や鋳塊肌が劣化する。また、特にHの残留は、板材加工まで至ったとしても、途中工程の圧延や焼鈍で表面に膨れを生じる原因となり、これは製品としての価値を損なう。従って、O含有量を50ppm以下でかつH含有量を2ppm以下に規制する。なお、O含有量を30ppm以下でかつH含有量を1ppm以下とすることがより望ましい。
【0015】
(その他の選択元素)
Ag、Ti、Si、Ca、Mn、Be、Al、V、Cr、Co、Zr、Nb、Mo、In、Pb、Hf、Ta、Bは、各元素の含有量が0.0005〜0.03質量%、かつその1種又は2種以上の含有量が0.0005〜0.3質量%の範囲であれば、本発明の銅合金の耐応力緩和特性を損なわず耐熱性を向上させる効果があるため、前記の範囲内で含有させても問題ない。1種又は2種以上の含有量が0.3質量%を越えると、溶解鋳造時、熱間圧延時あるいは加工熱処理中に酸化物が形成されやすく、また粗大な晶出物が発生しやすいため、熱間加工性、めっき性、曲げ加工性等を低下させやすい。
【0016】
(析出物の面積率)
前記銅合金において耐応力緩和特性を向上させるためには、透過型電子顕微鏡で観察可能な結晶粒内部の微視的構造の制御が必要である。前記銅合金は最終板厚まで冷間圧延する途中少なくとも1回の中間焼鈍が必要であるが、その焼鈍時にNi−P化合物を主体とする析出物が形成されない条件を選定することが、耐応力緩和特性を飛躍的に向上させるために重要である。すなわち、焼鈍時の析出物形成を0とすることは原理的に難しいが、析出物の面積率を5%以下(添加元素の殆どを固溶させた状態)とすることにより、母相自体の応力緩和に対する抵抗力(すべり線の移動や転位消滅をブロックする作用)を維持することができるため、応力緩和特性が向上する。前記面積率が5%を超えると、母相中の転位は消滅するようになり、結果、材料特性が低下し、十分な耐応力緩和特性が得られなくなる。従って、析出物の面積率を5%以下とする。なお、安定化焼鈍後の製品の析出物の面積率を5%以下にするには、中間焼鈍後(安定化焼鈍前)の析出物の面積率が5%以下である必要がある。
【0017】
(導電率の規定)
前記銅合金の導電率は、冷間圧延工程の途中あるいは最終冷間圧延後の焼鈍を行うと、450〜500℃・4Hrの焼鈍条件でほぼ最大となる。これは、焼鈍により析出物が最大量生成するためである。本発明の合金においては前述のように、Ni−P化合物を主体とする析出物の生成により耐応力緩和特性が劣化するため、導電率は最大値の90%以下とすることが必要である。導電率90%以下は析出物の面積率5%以下とほぼ一致する。
(応力緩和率)
端子等の場合、耐応力緩和特性の劣化に伴って、端子間の嵌合力が低下するなどの支障を来たし、信頼性を損なうものとなる。しかしながら、Ni−P化合物を主体とする析出物の生成を上記のように抑制することにより、170℃・1000Hr後にて30%以下の良好な耐応力緩和特性を達成できる。
【0018】
(加工熱処理工程)
本発明の銅合金は、最終冷間圧延前に再結晶させておく必要があるが、焼鈍後の析出物の面積率を5%以下とすることが必要である。そのための熱処理条件として、450〜850℃、より好ましくは550〜650℃の範囲内の温度に10℃/秒以上の速度で昇温し、前記範囲内の温度に5秒以上1分未満の加熱保持後、10℃/秒以上の速度で冷却する必要がある。この範囲よりも低温あるいは短時間では完全再結晶組織は得られず、この範囲よりも高温又は長時間、あるいは温度及び保持時間が上記範囲であっても昇温又は冷却速度が10℃/秒未満では析出物の面積率が大きくなり、耐応力緩和特性は低下する。また、結晶粒径が大きくなるため、機械的性質等の劣化を生じる。
【0019】
耐応力緩和特性及びばね限界値を更に向上させるためには、最終圧延後に安定化焼鈍を行うことが望ましいが、そのためには250〜850℃より好ましくは300〜450℃の温度範囲内の温度で5秒以上1分未満の加熱保持時間で行うことが望ましい。この範囲よりも低温あるいは短時間では冷間圧延で導入された転位が適切に解放されるに至らず、耐応力緩和特性や材料特性を向上させることができない。また、この範囲よりも高温又は長時間、あるいは温度及び保持時間が上記範囲であっても昇温又は冷却速度が10℃/秒未満では析出物の面積率が大きくなり、耐応力緩和特性が低下し、さらに経済的にも不利である。
【0020】
【実施例】
以下に本合金の実施例について比較例として比較してその特性を説明する。実施例1にて板材の製造可否、添加元素の効果について実証する。実施例2にて析出物の面積率の効果及び熱処理条件の効果について検証する。
(実施例1)
表1に示す組成の銅合金を電気炉により大気中で木炭被覆下で溶解した。その鋳塊を熱間圧延し、厚さ15mmに仕上げた。これらの板材について冷間圧延と本発明の熱処理を組み合わせて厚さ0.25mmの板材を得た。これらについて下記要領で材料特性を評価した。なお、本発明に係る銅合金は熱間圧延を必要としない横型連続鋳造によっても製造可能である。
【0021】
【表1】
【0022】
(機械的強度)
耐力、引張強さは試験片の長手方向を圧延方向に平行としたJIS5号試験片(n=2)にて測定した。
(応力緩和特性)
EMAS−3003に記載の片持ち梁式にて、初期応力として室温耐力の8割を負荷し、170℃又は200℃で1000Hr保持した後応力を除去し、たわみ量を測定、応力緩和率を算出した(各温度にてn=5)。
(電気伝導性)
電気伝導性は導電率を測定することにより評価した。導電率はJISH0505に基づいて測定した。
(はんだ耐候性)
MIL−STD−202F METHOD 208Dに基づいて、はんだ付けを行なった後、大気中150℃・1000Hr経過後1mmφで180°曲げ戻しを行い、はんだの剥離の有無を目視で確認した(n=3)。
【0023】
(耐マイグレーション性)
上記板材から、幅3.0mm、長さ80mmの試験片を採取し、2枚1組として試験を行った(n=4)。図1及び図2は、上記試験片を使用した漏洩電流を測定する試験方法の説明図である。図1及び図2において2a、2bは試験片、3は厚さ1mmのABS樹脂、3aはこのABS樹脂に形成された穴、4はこのABS樹脂3の押え板である。5は押え板4を押圧固定するため表面に絶縁塗料を塗布したクリップ、6はバッテリ−、7は電線である。試験片2a、2bは端部に電線6が接続されている。図1及び図2に示す2枚の試験片2a、2bにバッテリ−6から直流電流14Vを印加して、水道水中に5分間浸漬した後、続いて10分間乾燥する乾燥試験を50回行い、その間の最大漏電流を高感度レコ−ダ−(図示せず)で測定した。
【0024】
(曲げ加工性)
CESM0002金属材料W曲げ試験に規定されているB型曲げ治具で、幅10mm、長さ35mmに加工した供試材をはさみ、島津製作所製万能試験機RH−30を使用して1tの荷重でR/t=0にて先ずW曲げ加工を行った後、さらに1tの荷重で90°曲げ部を密着曲げして、曲げ部の割れの有無を判別した(n=2)。
(耐応力腐食割れ性)
上記板材から0.25mmt×12.7mmw×150mmlの試験片を切り出し、応力腐食割れ試験をトンプソンの方法(Materials Research & Standards(1961)1081) に準じて行った(n=4)。すなわち、試験片を図3に示すループ状にした後、14wt%のアンモニア水を入れ、40℃の温度で飽和蒸気を充満させたデシケータ中に暴露し、試験片が破断するまでの時間を測定した。
【0025】
以上の測定結果を表2に示す。
【0026】
【表2】
【0027】
表2に示すNo.1〜5では、耐力、導電率、密着曲げ加工性は良好で、耐マイグレーション性におる最大漏洩電流値は低く抑制されており、さらにはんだ耐候性、耐応力腐食割れ性も良好であり、応力緩和特性にも優れている。
一方、No.6はNiが不足しているため耐力が低く、応力緩和特性にも劣る。No.7はNi及びSnが過剰に添加されているため導電率が低く、さらに曲げ加工性が劣り、はんだ耐候性試験で剥離が生じている。No.8はZnが不足するため、はんだ耐候性試験にて剥離が生じ、さらに耐マイグレーション性における最大漏洩電流値が高く、自動車端子用には致命的である。No.9はZnが過剰に添加されているため、導電率が低く、さらに耐応力腐食割れ性試験において短時間で破損が認められる。No.10はPが不足するため、脱酸不足により健全な鋳塊が得られなかった。No.11はPが過剰に添加されているため、はんだ耐候性試験で剥離が生じ、耐応力腐食割れ性にも劣っている。No.12はOが請求範囲上限を上回っており、湯流れ性が極端に低下したため、鋳造を断念した。No.13は、Hが請求範囲上限を上回っており、鋳塊は得られたが、熱間圧延時に割れが生じたため断念した。
【0028】
(実施例2)
表3に示す化学成分の銅合金をクリプトル炉において大気中の木炭被覆下で溶解した。表3では添加元素は全て本発明の規定範囲内に位置しているため容易に良好な熱間圧延材が得られ、冷間圧延性も良好であった。これらの板材に表4に示す種々の加工熱処理を行って0.25mmの板材を得た。これらの板材に対して材料特性、さらには析出物の面積率及び結晶粒径を下記要領で測定した。その結果を表5に示す。
(析出物の面積率)
TEMを用いて90000倍(析出物を確認するのに最も適当な倍率であった)の倍率で3視野観察し単位面積あたりに占める析出物の割合を測定し、平均値を面積率とした。
(結晶粒径)
JISH0501の伸銅品結晶粒度試験方法に準拠し、切断法にて求めた。
【0029】
【表3】
【0030】
【表4】
【0031】
【表5】
【0032】
表5に示すように、No.14−1〜14−3は本発明に規定する加工熱処理条件の範囲内であり、析出物の面積率が5%以下であり、耐応力緩和特性が優れ、耐力、密着曲げ加工性、耐マイグレーション性、耐応力腐食割れ性にも優れている。また、導電率は導電率が最大となる条件で焼鈍を行ったNo.14−8に比較して90%以下となっている。
一方、No.14−4〜14−8は冷間圧延途中の焼鈍によってNi−P化合物を主体とする析出が発生するため、いずれも析出物の面積率が5%を越え、かつ導電率も最大値に対して90%以上となり、耐応力緩和特性が低下している。なお、No.14−4は焼鈍温度が低く再結晶組織とならなかったため、またNo.14−5〜14−8は結晶粒が粗大化したため、いずれも曲げ加工性にも劣る。
【0033】
No.14−9は、冷間圧延途中の焼鈍の温度が低く時間が短いため、析出物の面積率は5%以下であったが、再結晶してないため曲げ加工性が劣る。耐応力緩和特性もNo.14−1〜14−3に比べてよいとはいえない。No.14−10は、冷間圧延途中の焼鈍の温度が高いため、析出物の面積率は5%以下であったが、結晶粒が粗大化して曲げ加工性が劣る。耐応力緩和特性もNo.14−1〜14−3に比べてよいとはいえない。
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、特に耐応力緩和特性に優れ、強度、密着曲げ加工性、耐マイグレ−ション性、耐応力腐食割れ性、はんだ耐候性等にも優れた端子・コネクタ用銅合金を、低コストで生産性良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 最大漏洩電流の測定方法を説明するための平面図である。
【図2】 その側面図である。
【図3】 耐応力腐食割れ試験に用いたループ状試験片を示す図である。
【符号の説明】
2a、2b 試験片
Claims (6)
- Ni:0.8〜1.5質量%、Sn:0.5〜2.0質量%、Zn:0.015〜5.0質量%、P:0.005〜0.1質量%を含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなるとともに、析出物の面積率が5%以下であることを特徴とする端子・コネクタ用銅合金。
- さらに、Mg;0.001〜0.2質量%とFe:0.001〜0.1質量%のいずれか一方又は双方を含有することを特徴とする請求項1に記載された端子・コネクタ用銅合金。
- O含有量:50ppm以下、H含有量:2ppm以下としたことを特徴とする請求項1又は2に記載された端子・コネクタ用銅合金。
- Ag、Ti、Si、Ca、Mn、Be、Al、V、Cr、Co、Zr、Nb、Mo、In、Pb、Hf、Ta、Bの1種又は2種以上を、各々0.0005〜0.03質量%、かつ総量で0.0005〜0.3質量%含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載された端子・コネクタ用銅合金。
- 焼鈍して得られる導電率の最大値に対して90%以下の導電率を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載された端子・コネクタ用銅合金。
- 請求項1〜4のいずれかに記載された銅合金に対し、冷間圧延工程の途中での焼鈍を連続炉において450〜850℃の温度範囲で5秒以上1分以下実施し、最終冷間圧延後の安定化焼鈍を連続炉において250〜850℃の温度範囲で5秒以上1分以下実施し、かついずれもそのときの昇温及び冷却速度を10℃/秒以上とすることを特徴とする端子・コネクタ用銅合金の製造方法。
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