JP3724512B2 - 情報記録媒体および情報記録方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、電源を不要とし、かつ非接触で情報の読取りが可能であるとともに、個別情報の偽造を確実に防止できる情報記録媒体およびその情報記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の情報記録媒体としては、例えば、キャシュカードやクレジットカードなどのようにカードの片側に帯状の磁気記録部が設けられた磁気カードや、テレフォンカードのように内部に磁気記録層が設けられた磁気カードが普及している。
ところが、上述した磁気カードにおいては、情報の再生時には再生ヘッドに接触摺動させることによって情報の読出しを行なう必要があり、再生操作が面倒となる不具合や、強い外部磁界によって記録情報が消去されてしまうなどの問題があり、耐久性や情報保持に難点がある。
【0003】
そこで、これらの問題を解消するために、カード内の中間部に金属片を埋め込んだり、カード内部に金属蒸着層を設け、前記金属片や金属蒸着層を所定のパターンに従って部分的に除去することによって個別の情報パターンを形成した磁気カードとして、例えば、1)特開昭55ー146570号公報や、2)特開平5ー294095号公報に提案されたものが知られている。
【0004】
前記1)の磁気カード41は、図14および図15に示すように、プラスチックなどの薄い平板43の一部に磁気記録部45を設けるとともに、磁気記録部45が施されていない空白部47に縦横方向に所定の規則に従って配列された多数のアルミニュームのような非磁性金属小片49を埋め込むことで形成される。
【0005】
前記2)の磁気カード51は、図16および図17に示すように、基材53上に形成した磁性層55上に所定の面積の金属蒸着層57を形成し、この金属蒸着層57を間欠的に除去することにより、金属蒸着層57が存在する非除去部分59と、部分的に除去した除去部分61との組み合わせで情報パターンを形成し、さらに、金属蒸着層57の上面に隠蔽層63および耐摩耗性の保護層65を積層する構造になっている。
【0006】
そして、個別の情報パターンを形成する際の金属蒸着層57の除去は、通常の感熱記録方式に従って、保護層65の表面から不図示の感熱記録ヘッドを接触させて加熱することにより行なわれる。
例えば、図17に示すように、複数の層が積層されたカード51の保護層65側から不図示の感熱記録ヘッドを接触させ、この感熱記録ヘッドの発熱体に通電する。この通電により発生した熱は、保護層65を経由して金属蒸着層57に伝導され、金属蒸着層57を加熱溶融することで金属蒸着層57に除去部分61を形成する。
【0007】
記録情報の読取りは、カード51と読取りヘッド67を一定速度で相対移動することにより読取られる。
また、磁気カード51の保護層の厚さは0.1〜10μmであり、不透可視層とすることにより、記録データを隠蔽し、その情報パターンを不正に読取ることを防止する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した1)のような金属小片を埋め込むタイプの磁気カードによれば、磁気カードの製作の中間工程において情報の記録を行なわねばならず、その製作作業が複雑となる問題がある。
また、データの設定手段やデータの読取り装置等が大がかりにならざるを得ないという不具合がある。
【0009】
前記2)のような金属蒸着層が存在する非除去部分と存在しない除去部分とを組み合わせて情報記録を行なうタイプの磁気カードでは、通常の感熱記録ヘッドにより記録する構成であるため、比較的容易にデータを不正に追記できる可能性があり、さらに、保護層の厚さが制約されることからカードの耐久性がやや劣るという問題がある。
また、前記1)および2)ともに、情報の読取りに当たって、読取り装置の所定の位置に磁気カードを挿入する時、カードはカード保持者から一時的にも手放されるため、情報の読取りに時間がかかり、カードの挿入、受取りの労力が必要になる不具合があった。
【0010】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたもので、カードの保護層を厚くして耐久性を高め、カードの製作時に非接触で中間層の記録を可能とし、情報の読取り時に読取り装置にカードを差し込むことなく非接触で記録情報の読取りを可能とした情報記録媒体および情報記録方法を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る情報記録媒体は、読取り装置からの電磁波を受信して個別データを電磁波により返送し、非接触で読取りが可能な情報記録媒体であって、金属基材の少なくとも一方の表面に、弾性表面波がレイリー波である弾性表面波素子が埋設された誘電体層と、前記誘電体層上の前記弾性表面波素子を除く表面に設けられた金属薄膜層と、前記金属薄膜上に設けられ、弾性表面波素子の表面上に空隙部を形成する窓部を有する分離層と、前記分離層上に設けられ、前記弾性表面波素子に設けられた記録情報を隠す隠蔽層と、前記隠蔽層上に設けられた透明な保護層とを順次積層して形成したことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る情報記録媒体は、読取り装置からの電磁波を受信して個別データを電磁波により返送し、非接触で読取りが可能な情報記録媒体であって、金属基材の両表面のそれぞれに、弾性表面波がレイリー波である弾性表面波素子が埋設された誘電体層と、前記誘電体層上の前記弾性表面波素子を除く表面に設けられた金属薄膜層と、前記金属薄膜上に設けられ、弾性表面波素子の表面上に空隙部を形成する窓部を有する分離層と、前記分離層上に設けられ、前記弾性表面波素子に設けられた記録情報を隠す隠蔽層と、前記隠蔽層上に設けられた透明な保護層とを順次積層して形成したことを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る情報記録媒体は、前記金属薄膜層に、蒸着およびエッチング処理により形成された受信用および送信用のマイクロストリップアンテナをそれぞれ独立的に備え、前記受信用および送信用のそれぞれのマイクロストリップアンテナのアンテナ端子が、前記弾性表面波素子の入力電極および出力電極にそれぞれ前記蒸着時に接続されてデータの送受信回路を形成するようにしたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る情報記録媒体は、前記送受信回路が、受信電力のみで動作し給電用の電池を必要としない送受信回路であって、BPSK変調されたDS方式信号を受信する受信回路と、受信符号の一致した際にバースト信号を出力する固定コードマッチドフィルタに形成された送信回路とから成ることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る情報記録媒体は、前記透明な保護層の表面に、印刷又は他の方法により視認可能な図柄の視認情報を形成したことを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る情報記録媒体は、読取り装置からの電磁波を受信して個別データを電磁波により返送し、非接触で読取りが可能な情報記録媒体であって、金属基材の少なくとも一方の表面に、弾性表面波がストンリー波である弾性表面波素子が埋設された誘電体層と、前記誘電体層上の前記弾性表面波素子を除く表面に設けられた金属薄膜層と、前記弾性表面波素子の表面上に設けられた赤外線吸収層と、前記赤外線吸収層上に設けられ、前記弾性表面波素子に記録された記録情報を隠す隠蔽層と、前記隠蔽層上に設けられた透明な保護層とを順次積層して形成されたことを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る情報記録媒体は、前記透明な保護層の表面に、印刷又は他の方法により視認可能な図柄の視認情報を形成したことを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る情報記録媒体は、前記金属薄膜層と透明な保護層との間に、赤外線および紫外線が透過する印刷による隠蔽層を設け、前記弾性表面波素子および金属薄膜層に形成された回路を隠蔽するようにしたことを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る情報記録媒体の情報記録方法は、金属基材の少なくとも一方の表面に、弾性表面波素子が埋設された誘電体層、前記弾性表面波素子を除く表面に設けられた金属薄膜層、弾性表面波素子の表面上に空隙部を形成する窓部を有する分離層又は赤外線吸収層、前記弾性表面波に記録された記録情報を隠す隠蔽層、および透明な保護層が順次積層された情報記録媒体の情報記録方法であって、前記弾性表面波素子の出力電極にレーザビームの熱ビームにより個別情報を記録するようにしたことを特徴とする。
【0020】
【作用】
このような情報記録媒体においては、読取り装置から送信された送信信号は、カードの受信用のマイクロストリップアンテナにより受信され、受信された信号は電気信号として弾性表面波素子の入力電極に伝達される。
この入力電極の電気信号は、弾性表面波素子の圧電効果によって弾性表面波を発生させ、この弾性表面波が弾性表面波素子の内部を通り出力電極まで伝搬し、出力電極により電気信号として検出される。
さらに、出力電極から送信用のマイクロストリップアンテナに伝達されて弾性表面波素子から読取り装置に向けて送信される。
そして、読取り装置によって送信用のマイクロストリップアンテナからの送信信号が読取られ、これにより、カードの個別の情報パターンが検知される。
【0021】
したがって、読取り装置からの電磁波を弾性表面波素子の入力電極により受信することにより動作するので、専用の電池が不要となる。
また、マイクロストリップアンテナと固定コードマッチドフィルタを利用して情報記録媒体に個別情報を記録したので、個別情報の読取るために同期が不要となるとともに、非接触で読取ることが可能になり、この結果、情報の読取り時に、情報記録媒体を読取り装置に差し込む必要がなくなり、読取り操作が簡便になる。
さらに、金属基材の両面に弾性表面波素子が設けることができるので、情報記録媒体の裏表に関係なく通信による読取りが可能となる。
【0022】
また更に、マイクロストリップアンテナを設けたことにより、アンテナの角度方向による受信感度の変化が起こらず、その上、両面に送信および受信アンテナを設けることにより、更に指向性を広げることができ、その結果、任意の方向での通信が可能となる。
また、赤外線に対して透明な保護層を介してレーザビームによる熱ビームを赤外線吸収層に照射して金属薄膜層を溶融させ、これにより情報パターンが記録されるので、従来とは異なり、保護層を厚くすることが可能となり、積層された情報記録媒体の耐久性および強度を確保することができる。
さらに、弾性表面波素子の出力電極に個別情報を記録する際に、出力電極のトリミングによって全てのマッチングコードが電極配列の位相で書込まれるので、追記が不可能となり、例え、追記しても情報記録媒体自体が使用不能になり、電極を復元させることが困難となり、この結果、情報記録の追記および改ざんすることを確実に防止できる。
また、情報記録媒体の金属薄膜層と透明な保護層との間に赤外線に対して透明な隠蔽層や印刷層を設け、さらに、保護層の表面に視認情報を印刷することにより、金属薄膜層に記録された情報を可視光により読めないようにすることが可能となり、その結果、目視による認識を不可能とし、記録されたパターンの読取りを困難とすることが可能となる。
【0023】
さらに、弾性表面波がストンリー波である弾性表面波素子においては、金属薄膜層と隠蔽層との間に設けられる分離層に代えて、赤外線吸収層を設けることにより、照射するレーザエネルギー効果を向上させ、レーザ光源のパワーを低減できるという効果を得ることが可能となる。
【0024】
【実施例】
以下に本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
尚、本実施例では、情報記録媒体として積層カードに適用した場合を例に採って説明する。
図1は本実施例の積層カードの積層構造を示す縦断面図、図2は積層カードのマイクロストリップアンテナを示す平面図、図3はSAW(Surface Acoustic Wave:弾性表面波)素子の入力電極および出力電極を示す平面図、図4はSAWマッチドフィルタの等価回路を示す回路図、図5はSAW素子に設けられた入力電極および出力電極を示す斜視図、図6は情報パターン形成前のSAW素子の入力電極および出力電極を示す平面図である。
【0025】
本実施例の積層カード1は、図2に示すように矩形状をなし、そして中央部に位置する金属基材3と、この金属基材3の両面には、SAW素子5を埋め込んだ誘電体層7、金属薄膜層9、分離層11、隠蔽層13、透明な保護層15が順次積層された構造になっている。
前記金属基材3は、所定の支持強度を有するとともに導電性を有し、本実施例では、厚さ150μmの銅板を用いて構成されている。
尚、この金属基材3の厚さとしては、必要な強度が得られれば、特に制限されない。また、金属基材3の材料としては、支持強度および導電性を有するものであれば、例えば、アルミニュームなどにより構成することもできる。
【0026】
前記誘電体層7は、厚さ100μmのガラスエキポシ樹脂を用いて構成されており、この誘電体層7の中央部分にはSAW素子5が埋設されている。
尚、誘電体層7用の他の材料としては、誘電率の高いポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂、エキポシ樹脂およびポリカーボネートなどの合成樹脂、芳香族ポリアミド(アラミド)、ポリエチレン、ポリスチレン、パイレックスガラス、合成紙、あるいはセラミック平板などを用いることもできる。
【0027】
前記金属薄膜層9は、アルミニュームを蒸着することにより厚さ1μm程度に形成されるもので、この金属薄膜層9を、エッチングすることにより、図2に示す受信用および送信用のMSA(マイクロストリップアンテナ)17、19が形成される。
これらのMSA17、19は、図1に示すように、蒸着された金属薄膜層9を図2に示す形状にエッチング処理により形成され、それぞれ、後述する入力端子および出力端子を介して前記電極入力電極や出力電極に接続される。
また、MSA17、19のアンテナ寸法は、導電膜(金属膜)の厚さt、誘電体層7の比誘電率εx および厚さhによって決定される。本実施例におけるアンテナ寸法では、入力信号周波数fを2GHzにした場合、約33mm(h=0.1mm、εx =5)である。
また、この金属薄膜層9の蒸着時は、SAW素子5の表面と対向する箇所に、金属薄膜層9が形成されず、空隙層21が形成される。
尚、金属薄膜層9の膜厚としては、好ましくは0.5〜2μmであり、材料としては、金、銀、銅などの金属単体や、合金などにより形成することができる。また、薄膜の形成には、蒸着によらず、前記と同等性能の金属箔を張り付け、SAW(弾性表面波)のIDT電極(櫛形電極)と超音波接合してもよい。
【0028】
前記分離層11は、厚さ100μmのアクリル平板により形成され、このアクリル平板のSAW素子5に正対する箇所には透明なガラス平板を埋め込んで形成される窓部11aが設けられた構成となっており、このガラス平板からなる窓部11aにより、SAW素子5の表面側に空隙層21が形成される。
尚、分離層11の厚さは、必要な強度が得られれば、特に制限はされない。
また、窓部11aの材料としては、機械的に支持できる強度を有し、レーザ光が透過できるものであれば、何でも使用可能であり、例えば、前記誘電体層7や後述する保護層15と同様な材質のものでも使用することができる。
【0029】
前記隠蔽層13は、半導体レーザの波長域である赤外線に対し高い透過率を有し、可視光に対しては適度な不透明性を有する材料により形成される。この材料には、本実施例では、イエロー、マゼンダ、シアンの顔料を混合した混色スミが用いられるほか、隠蔽層13の表面に絵柄印刷を設けるなどの方法にしてもよい。
尚、前記隠蔽層13を前記混合スミ等で構成する場合は、分離層11上に混合スミ等を塗布し乾燥することにより形成される。この時の隠蔽層13の厚さは0.5μmから5μmであり、好ましくは1μmから3μmである。
【0030】
前記隠蔽層13を覆う透明保護層15は、ポリ塩化ビニルにより、6μmから200μmの厚さに形成され、好ましくは10μmから150μmであり、本実施例では70μmに設定されている。
また、保護層15の他の材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド、ポリカーボネート、セルロースエステル、フッ化ポリマー、ポリアセタール、ポリオレフィン、ポリイミド、アラミド、ポリアセタール、フッ素樹脂などの耐摩耗性および耐熱性を有する材料などが用いられる。
【0031】
尚、前記構成の積層カード1において、他の形態によっては、隠蔽層13を設けなくともよいし、必要によっては透明保護層15の表面に視認可能な画像を形成するために印刷層などを設けるようにしてもよい。
【0032】
次に、誘電体層7に埋設されたSAW素子5について説明する。
SAW素子5は、基板と、この基板の表面に設けられた圧電体膜と、この圧電体膜の表面に図3および図5に示すように形成されたSAW(弾性表面波)の励振用の入力電極23および出力電極25を構成する金属電極とにより構成され、SAWがレイリー波とされている。
前記基板には、本実施例では、サファイヤ基板が使用されるほか、水晶や、ガラスや、ダイヤモンドなどが使用可能であり、特に、ダイヤモンドの場合には、10キロメートル/秒以上の高音速を有するために好適である。
前記圧電体膜は、前記サファイヤ基板の表面に窒化アルミニューム(AIN)の膜をスパッタリング処理によって形成される。
また、基板に形成される圧電体膜の他の材料としては、ZnO、LiNb3 、LiTaO3 、α- Al203などが用いられている。
【0033】
前記SAW素子5の入力電極23は、図3に示すように、受信用のMSA17に端子17aを介して接続され、出力電極25は、送信用のMSA19に端子19aを介して接続されており、入力電極23は一対の櫛形のセグメントを2つ組み合わせて構成され、前記出力電極25は一対の櫛形のセグメントを4つ組合わせて構成されている。
そして、入力電極23および出力電極25は、前記圧電体膜の表面に、約2000オングストロームのアルミニュームをイオンビームスパッタリング処理した後、一般的なフォトリソグラフィー処理によって各々の櫛形の電極パターンが形成され、入力電極23に接続された入力端子17a、出力電極25に接続された出力端子19a、およびコモン端子27が同時に形成されている。
また、前記入力電極23と出力電極25との電極間隔は、レイリー波である弾性表面波の周波数、つまり、入力信号周波数fとSAW素子5の材料の音速特性Vsにより決定され、例えば、Vsを10キロメートル/秒とすると、弾性表面波の波長λが5μmとなり、電極間隔は、弾性表面波の波長λの整数倍に設定されている。
【0034】
ここで、前記構成のSAW素子5の原理につて説明する。
まず、MSA(マイクロストリップアンテナ)17、19について説明する。
MSA17、19は、薄い銅箔付きプリント基板上に、円形や方形の開放型平面回路用共振素子をエッチング等により形成され、電波の放射器として、用いられるものである(最新平面アンテナ技術、羽石 操 鑑修、総合技術センター 発行)。
このMSA17、19は、通常、送受信する電波の半波長程度の寸法に形成され、また、供試励振モードとしては主モード(基本モード)が用いられる。また、このようなMSA17、19の中で、アンテナの回転方向の角度に依存しない円偏波タイプのMSA(マイクロストリップアンテナ)があり、円偏波を発生する手法として、大別して2点給電方式と1点給電方式とがある。
【0035】
前記2点給電方式は、クロスダイポールなどの通常の線状アンテナに適用される円偏波発生方式と原理的には等価である。
前記1点給電方式は、給電系に3dBハイブリッドなどの位相調整回路を用いることなく円偏波を発生できるため、給電系の構成が極めて簡素になり、2点給電方式よりも小形化できるという利点がある。
また、この方式のアンテナでは、右旋用と左旋用とがあり、本実施例では、一方を受信用として用い、他方を送信用として用いている。
【0036】
次に、SAW素子5を利用したSAWマッチドフィルタの一般的な原理について説明する。
SAW素子5を含むSAWデバイスは、弾性体の表面に沿って伝わる弾性表面波を利用したものであり、例えば、遅延線、フィルタ、共振器、発振器などに利用されている。
このSAWデバイスを伝搬する弾性表面波の伝搬速度は、一般に、電磁波の約10万分の1と極めて遅く、弾性表面波が1波長程度の深さでSAW素子5の表面を伝搬するので、SAWデバイスの任意の箇所で駆動および検出ができ、SAW素子5の小形軽量化ができる特徴があり、また、弾性表面波の周波数としては、10MHzから数GHzの範囲で使用可能である。
これらの特徴により、高精度のトランスバーサルフィルタが可能となり、SAWデバイスの代表的な実用例としては、TV用SAW IFフィルタがある。
このSAWフィルタは、水晶、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウムなどの圧電体基板上に櫛形形状の金属電極をフォトリソグラフィや、蒸着や、スパッタリングなどにより形成され、動作的には、このTV用SAW IFフィルタの延長線上にSAWマッチドフィルタを考えることができる。
【0037】
SAWマッチドフィルタは、トランスバーサルフィルタの特殊な例であり、その原理図を図4のように構成することができる。
図4において、Dn-1 (n=1,2,……,n)は遅延回路を示し、Wn(n=1,2,……,n)は重み付け回路を示す。
また、SAW素子5は、その一例を図5に示すように、弾性表面波を伝搬させる誘電体基板と、電気信号と弾性波とのエネルギー変換させるトランスデューサ(変換器)とから構成される。
前記トランスデューサは、櫛形パターンに形成された入力電極23と出力電極25とから構成され、入力電極23が、電気信号を弾性表面波に変換するトランスデューサとして動作し、出力電極25が、伝搬してきた弾性表面波を電気信号に変換するトランスデューサとして動作する。
この場合、入力電極23は、広帯域の電気信号を弾性表面波に変換する変換器として動作し、入力電極23に高周波信号を入力すると、圧電体表面の左右方向へ弾性波を発生させる。
そして、本実施例では、図5に示すように、入力電極23を2つのセグメントからなる櫛形電極に形成され、出力電極25を4つのセグメントからなる櫛形電極に形成され、出力電極25の各対の櫛形電極対の連なりが図4に示す遅延回路に対応し、この隣接した櫛形電極の交差幅が図4に示す重み付け回路に対応する。
【0038】
図5はBPSK(Bi−Phase Shift Keying)変調されたDS(Direct SS)方式の信号検出用のSAWマッチドフィルタの一例を示す。
図5において、23は入力電極、25は出力電極を示し、入力電極23は入力信号を忠実にSAW変換する広帯域トランスデューサであり、出力電極25は目的信号の位相パターンに対応するように電極パターンが形成された出力トランスデューサである。
【0039】
このようなSAW素子5が設けられた積層カード1においては、図示しない読取り装置から送信された目的信号パターンを受信用のMSA17により受信すると、電気信号として入力電極23に入力され、入力電極23により弾性表面波に変換される。
前記弾性表面波は、出力電極25の一連の櫛形電極対により形成された遅延回路上を伝搬し、出力電極25において、入力された弾性表面波信号パターンと出力電極25の重み付けパターンとが一致した時にピーク出力が得られる。このピーク出力信号は、送信用のMSA19によって個別情報として電波輻射することにより前記読取り装置に返送される。
そして、送信用のMSA19から返送された個別情報は読取り装置により読取られ、この読取り装置において、前記個別情報が、重み付けパターンに記録された個別情報と目的信号に一致するかが確認され、積層カード1の個別の情報パターンが検知される。
したがって、個別情報の識別が可能となるとともに、キャリヤ同期もコード同期も不要となるため、極めて簡便にして確実なデータの識別が可能となる。
【0040】
次に、前記構成の積層カード1を製作する場合について説明する。
積層カード1を製作するには、最初に、図6に示すように、櫛形状の入力電極23および出力電極25、コモン端子27、入力端子17a、および出力端子19aが形成されたSAW素子5を、図7(a)に示すように、金属基材3上に接着し、コモン端子27を金属基材3にハンダ付けする。
さらに、図7(b)に示すように、金属基材3上にSAW素子5を中央部に埋め込むように誘電体層7を装着する。
【0041】
次に、誘電体層7を固定した後、図7(c)に示すように、誘電体層7の上に金属薄膜層9を蒸着し、さらに、図7(c)および図8(a)に示すように、金属薄膜層9上にレジストRを塗布し、その後、露光し、不要部をエッチングにより除去することにより、図7(d)および図8(b)に示すように、1点給電式円偏波の受信用および送信用のMSA17、19を形成する。
その後、図7(e)に示すように、SAW素子5の回路面の上部に空隙部21を形成する窓部11aが設けられた分離層11を金属薄膜層9上に接着する。
さらに、図7(f)および図8(c)に示すように、その上に隠蔽層13を塗布し、図7(g)に示すように、その上に耐摩耗性の透明な保護層15を接着する。
【0042】
そして、前記金属基材3の他方の表面にも、同様な処理を行なうことにより、両面に同様な個別情報を有する積層カード1が形成され、積層カード1の両面にSAW素子5が設けられていることから、カード1の裏表に関係なく通信による読取りが可能になる。
尚、両面に設けられる個別情報としては、同一な情報ではなく、意図的にデータパターンを変えて記録するようにすることもできる。
【0043】
次に、前記工程により製作された積層カード1にレーザ照射により個別情報を記録する場合について説明する。
まず、積層カード1に設けられたSAW素子5の櫛形情報の出力電極25の不要箇所、すなわち、図9に×で示す櫛形の一端部であるトリミング部31に、前記窓部11aから、図10に示すように、集光したレーザビーム33を照射し、その照射熱により櫛形状の金属電極のトリミング部31を溶融し、金属薄膜に孔をあけることにより行なわれる。
この場合、溶融した金属は、表面張力によりボールアップという小さな金属粒子が集合した状態となる。
出力電極25においては、図9に示すように、個々の情報パターンに基づいて、櫛形の不要なトリミング部31をレーザビーム33により溶断することにより、図5に示すように、積層カード1の個別情報に対応した情報パターンが形成され、これにより、固定コードSAWマッチドフィルタのデータとして記録される。尚、入力電極23のパターンは、形成段階から図9に示すパターンに形成しておく。
【0044】
そして、このよな積層カード1においては、読取り装置から送信された送信信号が受信用のMSA17により受信され、受信された信号が電気信号としてSAW素子5の入力電極23に伝達され、入力電極23の電気信号がSAW素子5の圧電効果によって弾性表面波に変換して出力電極25まで伝搬し、出力電極25により電気信号として検出され、送信用のMSA19から前記読取り装置に向けて返送され、読取り装置によって読取ることにより積層カード1の個別の情報パターンが検知される。
【0045】
したがって、本実施例においては、読取り装置からの電磁波を弾性表面波素子のMSA17によって受信することにより動作するので、専用の電池が不要となる。
また、MSA17、19と固定コードマッチドフィルタを利用して積層カード1に個別情報を記録したので、個別情報の読取るために同期が不要となるとともに、非接触で読取ることができ、この結果、情報の読取り時に、情報記録媒体を読取り装置に差し込む必要がなくなり、読取り操作が簡便となる。
さらに、金属基材3の両面にSAW素子5が設けられているので、積層カード1の裏表に関係なく通信による読取りが可能となる。
【0046】
また更に、MSA17、19を設けたことにより、アンテナの角度方向による受信感度の変化が起こらず、その上、両面に送信および受信用のMSA17、19を設けることにより、更に指向性を広げることができ、その結果、任意の方向での通信が可能となる。
また、赤外線を透過する保護層13を介してレーザビーム33による熱ビームを赤外線吸収層に照射して櫛形状の金属電極の不要部分を溶融させ、これにより情報パターンが記録されるので、従来とは異なり、保護層13を厚くすることが可能となり、積層された情報記録媒体である積層カード1の耐久性および強度を確保することができる。
【0047】
さらに、SAW素子5の出力電極25に個別情報を記録する際に、出力電極25のトリミングによって全てのマッチングコードが電極配列の位相で書込まれるので、追記が不可能となり、例え、追記しても積層カード1自体が使用不可能となり、電極を復元させることが困難となり、この結果、情報記録の追記および改ざんすることを確実に防止できる。
また、積層カード1の金属薄膜層9と透明な保護層15との間に赤外線に対して透明な隠蔽層13や印刷層を設け、更に、保護層15の表面に視認情報を印刷することにより、金属薄膜層9に記録された情報を可視光により読めないようにすることが可能となり、その結果、目視による認識を不可能とし、記録されたパターンの読取りをほとんど不可能にすることができる。
【0048】
次に、本発明の他の実施例について説明する。
図11は本実施例の情報パターン形成前のSAW素子の入力電極および出力電極を示す平面図、図12(a)〜(g)は情報パターン形成の工程を順次示す縦断面図、図13(a)〜(c)はマイクロストリップアンテナの形成工程を説明する平万図である。
【0049】
本実施例では、弾性表面波がストンリー波であるSAW素子5に適用したものであり、金属薄膜層9と隠蔽層13との間に設けられる分離層11に代えて、赤外線吸収層35を設け、空隙層21を不要とした構成としたものである。
すなわち、本実施例の積層カード1は、図に示すように、金属基材3の両面に、SAW素子5が設けられた誘電体層7、金属薄膜層9、赤外線吸収層35、隠蔽層13、および透明な保護層15が、順次積層された構造になっている。
このストンリー波は、2つの固体を接合した境界面にエネルギーを集中させて伝搬する境界波であり、この場合の境界面は、SAW素子5表面と赤外線吸収層35と接する面をいう。
【0050】
次に、前記構成の積層カード1を製作する場合について説明する。
本実施例の積層カード1を製作するには、最初に、図11に示すように、櫛形状の入力電極23および出力電極25、コモン端子27、入力端子17a、および出力端子19aが形成されたSAW素子5を、図12(a)に示すように、金属基材3上に接着し、コモン端子を金属基材3にハンダ付けする。
さらに、図12(b)に示すように、金属基材3上にSAW素子5が中央部に位置して埋め込まれるように誘電体層7を接着する。
次に、誘電体層7を固定した後、図12(c)に示すように、誘電体層7の上に金属薄膜層9を蒸着し、さらに、図13(a)に示すように、金属薄膜層9上に受信用および送信用のMSA17、19をレジストRを塗布し、その後、露光し、不要部をエッチングにより除去し、図12(d)および図13(b)に示すように、1点給電式円偏波のMSA17、19を形成する。
その後、図12(e)に示すように、SAW素子5の表面に赤外線吸収層35を塗布し、図12(f)および図13(c)に示すように、この赤外線吸収層35の上に隠蔽層13を塗布し、図12(g)に示すように、その上に耐摩耗性の透明な保護層15を接着する。
【0051】
前記赤外線吸収層35は、赤外線吸収発熱剤とバインダとから構成され、赤外線吸収発熱剤としては、ポリメチン系のシアニン色素を用いており、その他の材料としては、アゾ系色素、ナフトキノン系やアントラノン系のキノン系色素などでもよい。
前記バインダとしては、ポリエステル系樹脂、エチルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリアクリルアミドなどのビニル系樹脂、ポリメチルアクリレート、ポリアクリル酸などのアクリル系樹脂類、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類、ポリアクリレート樹脂類、エキポシ樹脂、フェノール樹脂類などが使用することができる。
本実施例では、シニアン色素が2重量%、溶媒が70重量%、ポリエステル系樹脂が28重量%からなる溶剤を金属薄膜上に塗布し乾燥させることにより、膜厚が0.5μmから5μmの塗布膜に形成されている。好ましくは、1μm〜3μmである。
【0052】
そして、情報パターンの記録は、積層カード1の透明な保護層15からレーザビーム33を赤外線吸収層35に集光して照射することにより行なわれ、赤外線吸収層35に照射されたレーザビーム33は赤外線吸収層35に含まれる赤外線吸収発熱剤に吸収され、光エネルギーを熱エネルギーに変換し、この熱によって金属層が溶融されて情報パターンが形成される。
尚、この場合、積層カード1の金属薄膜層9と透明な保護層15との間に赤外線および紫外線に対して透明な隠蔽層13や印刷層を設けてもよく、透明な保護層15の表面に視認情報を印刷するようにしてもよい。
【0053】
本実施例においては、弾性表面波がストンリー波であるSAW素子5を用いたことにより、金属薄膜層9と隠蔽層13との間に設けられる分離層11に代えて赤外線吸収層35を設けるだけで、空隙層21を不要とすることができ、さらに、赤外線吸収層35を設けることにより、照射するレーザエネルギー効果を向上させ、レーザ光源のパワーを低減できるという効果が得られる。
【0054】
尚、前記実施例においては、円偏波MSA17、19を1点給電式とした場合について説明したが、2点給電式の円偏波MSA17、19により構成するようにしても同等の効果を得ることができる。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、読取り装置からの電磁波を弾性表面波素子の入力電極で受信することにより動作するので、専用の電池が不要となる。
また、マイクロストリップアンテナと固定コードマッチドフィルタを利用して情報記録媒体に個別情報を記録したので、個別情報の読取るための同期が不要になるとともに、非接触で読取ることができ、この結果、情報の読取り時に、情報記録媒体を読取り装置に差し込む必要がなくなり、読取り操作が簡便となる。
さらに、金属基材の両面に弾性表面波素子が設けることができるので、情報記録媒体の裏表に関係なく通信による読取りが可能となる。
【0056】
加えて、マイクロストリップアンテナを設けたことにより、アンテナの角度方向による受信感度の変化が起こらず、その上、両面に送信および受信アンテナを設けることにより、更に指向性を広げることができ、その結果、任意の方向での通信が可能となる。
また、赤外線に対して透明な保護層を介してレーザビームによる熱ビームを赤外線吸収層に照射して金属薄膜層を溶融させ、これにより情報パターンが記録されるので、従来とは異なり、保護層を厚くすることが可能となり、積層された情報記録媒体の耐久性および強度を確保することができる。
【0057】
さらに、弾性表面波素子の出力電極に個別情報を記録する際に、出力電極のトリミングによって全てのマッチングコードが電極配列の位相で書込まれるので、追記が不可能となり、例え、追記しても情報記録媒体自体が使用不能となり、電極を復元させることが困難となり、この結果、情報記録の追記および改ざんすることを確実に防止できる。
また、情報記録媒体の金属薄膜層と透明な保護層との間に赤外線に対して透明な隠蔽層や印刷層を設け、更に、保護層の表面に視認情報を印刷することにより、金属薄膜層に記録された情報を可視光により読めないようにすることが可能となり、その結果、目視による認識を不可能とし、記録されたパターンの読取りを困難とすることが可能となる。
【0058】
さらに、弾性表面波がストンリー波である弾性表面波素子においては、金属薄膜層と隠蔽層との間に設けられる分離層に代えて、赤外線吸収層を設けることにより、照射するレーザエネルギー効果を向上させ、レーザ光源のパワーを低減できるという効果を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係り、積層カードの積層構造を示す縦断面図である。
【図2】積層カードのマイクロストリップアンテナを示す平面図である。
【図3】SAW素子の入力電極および出力電極を示す平面図である。
【図4】SAWマッチドフィルタの等価回路を示す回路図である。
【図5】SAW素子に設けられた入力電極および出力電極を示す斜視図である。
【図6】情報パターン形成前のSAW素子の入力電極および出力電極を示す平面図である。
【図7】(a)〜(g)は情報パターン形成の工程を順次示す縦断面図である。
【図8】(a)〜(c)はマイクロストリップアンテナの形成工程を説明する平万図である。
【図9】レーザビームにより情報パターンをSAW素子の出力電極に形成する工程を説明する平面図である。
【図10】レーザビームにより情報パターンをSAW素子の出力電極に形成する工程を説明する縦断面図である。
【図11】本発明の他の実施例に係り、情報パターン形成前のSAW素子の入力電極および出力電極を示す平面図である。
【図12】(a)〜(g)は情報パターン形成の工程を順次示す縦断面図である。
【図13】(a)〜(c)はマイクロストリップアンテナの形成工程を説明する平万図である。
【図14】従来例に係り、磁気カードを示す平面図である。
【図15】図14中のA−A矢視断面図である。
【図16】従来例に係り、磁気カードを示す縦断面図である。
【図17】一部破砕して示す磁気カードの斜視図である。
【符号の説明】
1 情報記録媒体
3 金属基材
5 弾性表面波素子(SAW素子)
7 誘電体層
9 金属薄膜層
11 分離層
11a 窓部
13 隠蔽層
15 保護層
17 受信用マイクロストリップアンテナ
17a アンテナ端子
19 送信用マイクロストリップアンテナ
19a アンテナ端子
23 入力電極
25 出力電極
35 赤外線吸収層
【産業上の利用分野】
本発明は、電源を不要とし、かつ非接触で情報の読取りが可能であるとともに、個別情報の偽造を確実に防止できる情報記録媒体およびその情報記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の情報記録媒体としては、例えば、キャシュカードやクレジットカードなどのようにカードの片側に帯状の磁気記録部が設けられた磁気カードや、テレフォンカードのように内部に磁気記録層が設けられた磁気カードが普及している。
ところが、上述した磁気カードにおいては、情報の再生時には再生ヘッドに接触摺動させることによって情報の読出しを行なう必要があり、再生操作が面倒となる不具合や、強い外部磁界によって記録情報が消去されてしまうなどの問題があり、耐久性や情報保持に難点がある。
【0003】
そこで、これらの問題を解消するために、カード内の中間部に金属片を埋め込んだり、カード内部に金属蒸着層を設け、前記金属片や金属蒸着層を所定のパターンに従って部分的に除去することによって個別の情報パターンを形成した磁気カードとして、例えば、1)特開昭55ー146570号公報や、2)特開平5ー294095号公報に提案されたものが知られている。
【0004】
前記1)の磁気カード41は、図14および図15に示すように、プラスチックなどの薄い平板43の一部に磁気記録部45を設けるとともに、磁気記録部45が施されていない空白部47に縦横方向に所定の規則に従って配列された多数のアルミニュームのような非磁性金属小片49を埋め込むことで形成される。
【0005】
前記2)の磁気カード51は、図16および図17に示すように、基材53上に形成した磁性層55上に所定の面積の金属蒸着層57を形成し、この金属蒸着層57を間欠的に除去することにより、金属蒸着層57が存在する非除去部分59と、部分的に除去した除去部分61との組み合わせで情報パターンを形成し、さらに、金属蒸着層57の上面に隠蔽層63および耐摩耗性の保護層65を積層する構造になっている。
【0006】
そして、個別の情報パターンを形成する際の金属蒸着層57の除去は、通常の感熱記録方式に従って、保護層65の表面から不図示の感熱記録ヘッドを接触させて加熱することにより行なわれる。
例えば、図17に示すように、複数の層が積層されたカード51の保護層65側から不図示の感熱記録ヘッドを接触させ、この感熱記録ヘッドの発熱体に通電する。この通電により発生した熱は、保護層65を経由して金属蒸着層57に伝導され、金属蒸着層57を加熱溶融することで金属蒸着層57に除去部分61を形成する。
【0007】
記録情報の読取りは、カード51と読取りヘッド67を一定速度で相対移動することにより読取られる。
また、磁気カード51の保護層の厚さは0.1〜10μmであり、不透可視層とすることにより、記録データを隠蔽し、その情報パターンを不正に読取ることを防止する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した1)のような金属小片を埋め込むタイプの磁気カードによれば、磁気カードの製作の中間工程において情報の記録を行なわねばならず、その製作作業が複雑となる問題がある。
また、データの設定手段やデータの読取り装置等が大がかりにならざるを得ないという不具合がある。
【0009】
前記2)のような金属蒸着層が存在する非除去部分と存在しない除去部分とを組み合わせて情報記録を行なうタイプの磁気カードでは、通常の感熱記録ヘッドにより記録する構成であるため、比較的容易にデータを不正に追記できる可能性があり、さらに、保護層の厚さが制約されることからカードの耐久性がやや劣るという問題がある。
また、前記1)および2)ともに、情報の読取りに当たって、読取り装置の所定の位置に磁気カードを挿入する時、カードはカード保持者から一時的にも手放されるため、情報の読取りに時間がかかり、カードの挿入、受取りの労力が必要になる不具合があった。
【0010】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたもので、カードの保護層を厚くして耐久性を高め、カードの製作時に非接触で中間層の記録を可能とし、情報の読取り時に読取り装置にカードを差し込むことなく非接触で記録情報の読取りを可能とした情報記録媒体および情報記録方法を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る情報記録媒体は、読取り装置からの電磁波を受信して個別データを電磁波により返送し、非接触で読取りが可能な情報記録媒体であって、金属基材の少なくとも一方の表面に、弾性表面波がレイリー波である弾性表面波素子が埋設された誘電体層と、前記誘電体層上の前記弾性表面波素子を除く表面に設けられた金属薄膜層と、前記金属薄膜上に設けられ、弾性表面波素子の表面上に空隙部を形成する窓部を有する分離層と、前記分離層上に設けられ、前記弾性表面波素子に設けられた記録情報を隠す隠蔽層と、前記隠蔽層上に設けられた透明な保護層とを順次積層して形成したことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る情報記録媒体は、読取り装置からの電磁波を受信して個別データを電磁波により返送し、非接触で読取りが可能な情報記録媒体であって、金属基材の両表面のそれぞれに、弾性表面波がレイリー波である弾性表面波素子が埋設された誘電体層と、前記誘電体層上の前記弾性表面波素子を除く表面に設けられた金属薄膜層と、前記金属薄膜上に設けられ、弾性表面波素子の表面上に空隙部を形成する窓部を有する分離層と、前記分離層上に設けられ、前記弾性表面波素子に設けられた記録情報を隠す隠蔽層と、前記隠蔽層上に設けられた透明な保護層とを順次積層して形成したことを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る情報記録媒体は、前記金属薄膜層に、蒸着およびエッチング処理により形成された受信用および送信用のマイクロストリップアンテナをそれぞれ独立的に備え、前記受信用および送信用のそれぞれのマイクロストリップアンテナのアンテナ端子が、前記弾性表面波素子の入力電極および出力電極にそれぞれ前記蒸着時に接続されてデータの送受信回路を形成するようにしたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る情報記録媒体は、前記送受信回路が、受信電力のみで動作し給電用の電池を必要としない送受信回路であって、BPSK変調されたDS方式信号を受信する受信回路と、受信符号の一致した際にバースト信号を出力する固定コードマッチドフィルタに形成された送信回路とから成ることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る情報記録媒体は、前記透明な保護層の表面に、印刷又は他の方法により視認可能な図柄の視認情報を形成したことを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る情報記録媒体は、読取り装置からの電磁波を受信して個別データを電磁波により返送し、非接触で読取りが可能な情報記録媒体であって、金属基材の少なくとも一方の表面に、弾性表面波がストンリー波である弾性表面波素子が埋設された誘電体層と、前記誘電体層上の前記弾性表面波素子を除く表面に設けられた金属薄膜層と、前記弾性表面波素子の表面上に設けられた赤外線吸収層と、前記赤外線吸収層上に設けられ、前記弾性表面波素子に記録された記録情報を隠す隠蔽層と、前記隠蔽層上に設けられた透明な保護層とを順次積層して形成されたことを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る情報記録媒体は、前記透明な保護層の表面に、印刷又は他の方法により視認可能な図柄の視認情報を形成したことを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る情報記録媒体は、前記金属薄膜層と透明な保護層との間に、赤外線および紫外線が透過する印刷による隠蔽層を設け、前記弾性表面波素子および金属薄膜層に形成された回路を隠蔽するようにしたことを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る情報記録媒体の情報記録方法は、金属基材の少なくとも一方の表面に、弾性表面波素子が埋設された誘電体層、前記弾性表面波素子を除く表面に設けられた金属薄膜層、弾性表面波素子の表面上に空隙部を形成する窓部を有する分離層又は赤外線吸収層、前記弾性表面波に記録された記録情報を隠す隠蔽層、および透明な保護層が順次積層された情報記録媒体の情報記録方法であって、前記弾性表面波素子の出力電極にレーザビームの熱ビームにより個別情報を記録するようにしたことを特徴とする。
【0020】
【作用】
このような情報記録媒体においては、読取り装置から送信された送信信号は、カードの受信用のマイクロストリップアンテナにより受信され、受信された信号は電気信号として弾性表面波素子の入力電極に伝達される。
この入力電極の電気信号は、弾性表面波素子の圧電効果によって弾性表面波を発生させ、この弾性表面波が弾性表面波素子の内部を通り出力電極まで伝搬し、出力電極により電気信号として検出される。
さらに、出力電極から送信用のマイクロストリップアンテナに伝達されて弾性表面波素子から読取り装置に向けて送信される。
そして、読取り装置によって送信用のマイクロストリップアンテナからの送信信号が読取られ、これにより、カードの個別の情報パターンが検知される。
【0021】
したがって、読取り装置からの電磁波を弾性表面波素子の入力電極により受信することにより動作するので、専用の電池が不要となる。
また、マイクロストリップアンテナと固定コードマッチドフィルタを利用して情報記録媒体に個別情報を記録したので、個別情報の読取るために同期が不要となるとともに、非接触で読取ることが可能になり、この結果、情報の読取り時に、情報記録媒体を読取り装置に差し込む必要がなくなり、読取り操作が簡便になる。
さらに、金属基材の両面に弾性表面波素子が設けることができるので、情報記録媒体の裏表に関係なく通信による読取りが可能となる。
【0022】
また更に、マイクロストリップアンテナを設けたことにより、アンテナの角度方向による受信感度の変化が起こらず、その上、両面に送信および受信アンテナを設けることにより、更に指向性を広げることができ、その結果、任意の方向での通信が可能となる。
また、赤外線に対して透明な保護層を介してレーザビームによる熱ビームを赤外線吸収層に照射して金属薄膜層を溶融させ、これにより情報パターンが記録されるので、従来とは異なり、保護層を厚くすることが可能となり、積層された情報記録媒体の耐久性および強度を確保することができる。
さらに、弾性表面波素子の出力電極に個別情報を記録する際に、出力電極のトリミングによって全てのマッチングコードが電極配列の位相で書込まれるので、追記が不可能となり、例え、追記しても情報記録媒体自体が使用不能になり、電極を復元させることが困難となり、この結果、情報記録の追記および改ざんすることを確実に防止できる。
また、情報記録媒体の金属薄膜層と透明な保護層との間に赤外線に対して透明な隠蔽層や印刷層を設け、さらに、保護層の表面に視認情報を印刷することにより、金属薄膜層に記録された情報を可視光により読めないようにすることが可能となり、その結果、目視による認識を不可能とし、記録されたパターンの読取りを困難とすることが可能となる。
【0023】
さらに、弾性表面波がストンリー波である弾性表面波素子においては、金属薄膜層と隠蔽層との間に設けられる分離層に代えて、赤外線吸収層を設けることにより、照射するレーザエネルギー効果を向上させ、レーザ光源のパワーを低減できるという効果を得ることが可能となる。
【0024】
【実施例】
以下に本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
尚、本実施例では、情報記録媒体として積層カードに適用した場合を例に採って説明する。
図1は本実施例の積層カードの積層構造を示す縦断面図、図2は積層カードのマイクロストリップアンテナを示す平面図、図3はSAW(Surface Acoustic Wave:弾性表面波)素子の入力電極および出力電極を示す平面図、図4はSAWマッチドフィルタの等価回路を示す回路図、図5はSAW素子に設けられた入力電極および出力電極を示す斜視図、図6は情報パターン形成前のSAW素子の入力電極および出力電極を示す平面図である。
【0025】
本実施例の積層カード1は、図2に示すように矩形状をなし、そして中央部に位置する金属基材3と、この金属基材3の両面には、SAW素子5を埋め込んだ誘電体層7、金属薄膜層9、分離層11、隠蔽層13、透明な保護層15が順次積層された構造になっている。
前記金属基材3は、所定の支持強度を有するとともに導電性を有し、本実施例では、厚さ150μmの銅板を用いて構成されている。
尚、この金属基材3の厚さとしては、必要な強度が得られれば、特に制限されない。また、金属基材3の材料としては、支持強度および導電性を有するものであれば、例えば、アルミニュームなどにより構成することもできる。
【0026】
前記誘電体層7は、厚さ100μmのガラスエキポシ樹脂を用いて構成されており、この誘電体層7の中央部分にはSAW素子5が埋設されている。
尚、誘電体層7用の他の材料としては、誘電率の高いポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂、エキポシ樹脂およびポリカーボネートなどの合成樹脂、芳香族ポリアミド(アラミド)、ポリエチレン、ポリスチレン、パイレックスガラス、合成紙、あるいはセラミック平板などを用いることもできる。
【0027】
前記金属薄膜層9は、アルミニュームを蒸着することにより厚さ1μm程度に形成されるもので、この金属薄膜層9を、エッチングすることにより、図2に示す受信用および送信用のMSA(マイクロストリップアンテナ)17、19が形成される。
これらのMSA17、19は、図1に示すように、蒸着された金属薄膜層9を図2に示す形状にエッチング処理により形成され、それぞれ、後述する入力端子および出力端子を介して前記電極入力電極や出力電極に接続される。
また、MSA17、19のアンテナ寸法は、導電膜(金属膜)の厚さt、誘電体層7の比誘電率εx および厚さhによって決定される。本実施例におけるアンテナ寸法では、入力信号周波数fを2GHzにした場合、約33mm(h=0.1mm、εx =5)である。
また、この金属薄膜層9の蒸着時は、SAW素子5の表面と対向する箇所に、金属薄膜層9が形成されず、空隙層21が形成される。
尚、金属薄膜層9の膜厚としては、好ましくは0.5〜2μmであり、材料としては、金、銀、銅などの金属単体や、合金などにより形成することができる。また、薄膜の形成には、蒸着によらず、前記と同等性能の金属箔を張り付け、SAW(弾性表面波)のIDT電極(櫛形電極)と超音波接合してもよい。
【0028】
前記分離層11は、厚さ100μmのアクリル平板により形成され、このアクリル平板のSAW素子5に正対する箇所には透明なガラス平板を埋め込んで形成される窓部11aが設けられた構成となっており、このガラス平板からなる窓部11aにより、SAW素子5の表面側に空隙層21が形成される。
尚、分離層11の厚さは、必要な強度が得られれば、特に制限はされない。
また、窓部11aの材料としては、機械的に支持できる強度を有し、レーザ光が透過できるものであれば、何でも使用可能であり、例えば、前記誘電体層7や後述する保護層15と同様な材質のものでも使用することができる。
【0029】
前記隠蔽層13は、半導体レーザの波長域である赤外線に対し高い透過率を有し、可視光に対しては適度な不透明性を有する材料により形成される。この材料には、本実施例では、イエロー、マゼンダ、シアンの顔料を混合した混色スミが用いられるほか、隠蔽層13の表面に絵柄印刷を設けるなどの方法にしてもよい。
尚、前記隠蔽層13を前記混合スミ等で構成する場合は、分離層11上に混合スミ等を塗布し乾燥することにより形成される。この時の隠蔽層13の厚さは0.5μmから5μmであり、好ましくは1μmから3μmである。
【0030】
前記隠蔽層13を覆う透明保護層15は、ポリ塩化ビニルにより、6μmから200μmの厚さに形成され、好ましくは10μmから150μmであり、本実施例では70μmに設定されている。
また、保護層15の他の材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド、ポリカーボネート、セルロースエステル、フッ化ポリマー、ポリアセタール、ポリオレフィン、ポリイミド、アラミド、ポリアセタール、フッ素樹脂などの耐摩耗性および耐熱性を有する材料などが用いられる。
【0031】
尚、前記構成の積層カード1において、他の形態によっては、隠蔽層13を設けなくともよいし、必要によっては透明保護層15の表面に視認可能な画像を形成するために印刷層などを設けるようにしてもよい。
【0032】
次に、誘電体層7に埋設されたSAW素子5について説明する。
SAW素子5は、基板と、この基板の表面に設けられた圧電体膜と、この圧電体膜の表面に図3および図5に示すように形成されたSAW(弾性表面波)の励振用の入力電極23および出力電極25を構成する金属電極とにより構成され、SAWがレイリー波とされている。
前記基板には、本実施例では、サファイヤ基板が使用されるほか、水晶や、ガラスや、ダイヤモンドなどが使用可能であり、特に、ダイヤモンドの場合には、10キロメートル/秒以上の高音速を有するために好適である。
前記圧電体膜は、前記サファイヤ基板の表面に窒化アルミニューム(AIN)の膜をスパッタリング処理によって形成される。
また、基板に形成される圧電体膜の他の材料としては、ZnO、LiNb3 、LiTaO3 、α- Al203などが用いられている。
【0033】
前記SAW素子5の入力電極23は、図3に示すように、受信用のMSA17に端子17aを介して接続され、出力電極25は、送信用のMSA19に端子19aを介して接続されており、入力電極23は一対の櫛形のセグメントを2つ組み合わせて構成され、前記出力電極25は一対の櫛形のセグメントを4つ組合わせて構成されている。
そして、入力電極23および出力電極25は、前記圧電体膜の表面に、約2000オングストロームのアルミニュームをイオンビームスパッタリング処理した後、一般的なフォトリソグラフィー処理によって各々の櫛形の電極パターンが形成され、入力電極23に接続された入力端子17a、出力電極25に接続された出力端子19a、およびコモン端子27が同時に形成されている。
また、前記入力電極23と出力電極25との電極間隔は、レイリー波である弾性表面波の周波数、つまり、入力信号周波数fとSAW素子5の材料の音速特性Vsにより決定され、例えば、Vsを10キロメートル/秒とすると、弾性表面波の波長λが5μmとなり、電極間隔は、弾性表面波の波長λの整数倍に設定されている。
【0034】
ここで、前記構成のSAW素子5の原理につて説明する。
まず、MSA(マイクロストリップアンテナ)17、19について説明する。
MSA17、19は、薄い銅箔付きプリント基板上に、円形や方形の開放型平面回路用共振素子をエッチング等により形成され、電波の放射器として、用いられるものである(最新平面アンテナ技術、羽石 操 鑑修、総合技術センター 発行)。
このMSA17、19は、通常、送受信する電波の半波長程度の寸法に形成され、また、供試励振モードとしては主モード(基本モード)が用いられる。また、このようなMSA17、19の中で、アンテナの回転方向の角度に依存しない円偏波タイプのMSA(マイクロストリップアンテナ)があり、円偏波を発生する手法として、大別して2点給電方式と1点給電方式とがある。
【0035】
前記2点給電方式は、クロスダイポールなどの通常の線状アンテナに適用される円偏波発生方式と原理的には等価である。
前記1点給電方式は、給電系に3dBハイブリッドなどの位相調整回路を用いることなく円偏波を発生できるため、給電系の構成が極めて簡素になり、2点給電方式よりも小形化できるという利点がある。
また、この方式のアンテナでは、右旋用と左旋用とがあり、本実施例では、一方を受信用として用い、他方を送信用として用いている。
【0036】
次に、SAW素子5を利用したSAWマッチドフィルタの一般的な原理について説明する。
SAW素子5を含むSAWデバイスは、弾性体の表面に沿って伝わる弾性表面波を利用したものであり、例えば、遅延線、フィルタ、共振器、発振器などに利用されている。
このSAWデバイスを伝搬する弾性表面波の伝搬速度は、一般に、電磁波の約10万分の1と極めて遅く、弾性表面波が1波長程度の深さでSAW素子5の表面を伝搬するので、SAWデバイスの任意の箇所で駆動および検出ができ、SAW素子5の小形軽量化ができる特徴があり、また、弾性表面波の周波数としては、10MHzから数GHzの範囲で使用可能である。
これらの特徴により、高精度のトランスバーサルフィルタが可能となり、SAWデバイスの代表的な実用例としては、TV用SAW IFフィルタがある。
このSAWフィルタは、水晶、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウムなどの圧電体基板上に櫛形形状の金属電極をフォトリソグラフィや、蒸着や、スパッタリングなどにより形成され、動作的には、このTV用SAW IFフィルタの延長線上にSAWマッチドフィルタを考えることができる。
【0037】
SAWマッチドフィルタは、トランスバーサルフィルタの特殊な例であり、その原理図を図4のように構成することができる。
図4において、Dn-1 (n=1,2,……,n)は遅延回路を示し、Wn(n=1,2,……,n)は重み付け回路を示す。
また、SAW素子5は、その一例を図5に示すように、弾性表面波を伝搬させる誘電体基板と、電気信号と弾性波とのエネルギー変換させるトランスデューサ(変換器)とから構成される。
前記トランスデューサは、櫛形パターンに形成された入力電極23と出力電極25とから構成され、入力電極23が、電気信号を弾性表面波に変換するトランスデューサとして動作し、出力電極25が、伝搬してきた弾性表面波を電気信号に変換するトランスデューサとして動作する。
この場合、入力電極23は、広帯域の電気信号を弾性表面波に変換する変換器として動作し、入力電極23に高周波信号を入力すると、圧電体表面の左右方向へ弾性波を発生させる。
そして、本実施例では、図5に示すように、入力電極23を2つのセグメントからなる櫛形電極に形成され、出力電極25を4つのセグメントからなる櫛形電極に形成され、出力電極25の各対の櫛形電極対の連なりが図4に示す遅延回路に対応し、この隣接した櫛形電極の交差幅が図4に示す重み付け回路に対応する。
【0038】
図5はBPSK(Bi−Phase Shift Keying)変調されたDS(Direct SS)方式の信号検出用のSAWマッチドフィルタの一例を示す。
図5において、23は入力電極、25は出力電極を示し、入力電極23は入力信号を忠実にSAW変換する広帯域トランスデューサであり、出力電極25は目的信号の位相パターンに対応するように電極パターンが形成された出力トランスデューサである。
【0039】
このようなSAW素子5が設けられた積層カード1においては、図示しない読取り装置から送信された目的信号パターンを受信用のMSA17により受信すると、電気信号として入力電極23に入力され、入力電極23により弾性表面波に変換される。
前記弾性表面波は、出力電極25の一連の櫛形電極対により形成された遅延回路上を伝搬し、出力電極25において、入力された弾性表面波信号パターンと出力電極25の重み付けパターンとが一致した時にピーク出力が得られる。このピーク出力信号は、送信用のMSA19によって個別情報として電波輻射することにより前記読取り装置に返送される。
そして、送信用のMSA19から返送された個別情報は読取り装置により読取られ、この読取り装置において、前記個別情報が、重み付けパターンに記録された個別情報と目的信号に一致するかが確認され、積層カード1の個別の情報パターンが検知される。
したがって、個別情報の識別が可能となるとともに、キャリヤ同期もコード同期も不要となるため、極めて簡便にして確実なデータの識別が可能となる。
【0040】
次に、前記構成の積層カード1を製作する場合について説明する。
積層カード1を製作するには、最初に、図6に示すように、櫛形状の入力電極23および出力電極25、コモン端子27、入力端子17a、および出力端子19aが形成されたSAW素子5を、図7(a)に示すように、金属基材3上に接着し、コモン端子27を金属基材3にハンダ付けする。
さらに、図7(b)に示すように、金属基材3上にSAW素子5を中央部に埋め込むように誘電体層7を装着する。
【0041】
次に、誘電体層7を固定した後、図7(c)に示すように、誘電体層7の上に金属薄膜層9を蒸着し、さらに、図7(c)および図8(a)に示すように、金属薄膜層9上にレジストRを塗布し、その後、露光し、不要部をエッチングにより除去することにより、図7(d)および図8(b)に示すように、1点給電式円偏波の受信用および送信用のMSA17、19を形成する。
その後、図7(e)に示すように、SAW素子5の回路面の上部に空隙部21を形成する窓部11aが設けられた分離層11を金属薄膜層9上に接着する。
さらに、図7(f)および図8(c)に示すように、その上に隠蔽層13を塗布し、図7(g)に示すように、その上に耐摩耗性の透明な保護層15を接着する。
【0042】
そして、前記金属基材3の他方の表面にも、同様な処理を行なうことにより、両面に同様な個別情報を有する積層カード1が形成され、積層カード1の両面にSAW素子5が設けられていることから、カード1の裏表に関係なく通信による読取りが可能になる。
尚、両面に設けられる個別情報としては、同一な情報ではなく、意図的にデータパターンを変えて記録するようにすることもできる。
【0043】
次に、前記工程により製作された積層カード1にレーザ照射により個別情報を記録する場合について説明する。
まず、積層カード1に設けられたSAW素子5の櫛形情報の出力電極25の不要箇所、すなわち、図9に×で示す櫛形の一端部であるトリミング部31に、前記窓部11aから、図10に示すように、集光したレーザビーム33を照射し、その照射熱により櫛形状の金属電極のトリミング部31を溶融し、金属薄膜に孔をあけることにより行なわれる。
この場合、溶融した金属は、表面張力によりボールアップという小さな金属粒子が集合した状態となる。
出力電極25においては、図9に示すように、個々の情報パターンに基づいて、櫛形の不要なトリミング部31をレーザビーム33により溶断することにより、図5に示すように、積層カード1の個別情報に対応した情報パターンが形成され、これにより、固定コードSAWマッチドフィルタのデータとして記録される。尚、入力電極23のパターンは、形成段階から図9に示すパターンに形成しておく。
【0044】
そして、このよな積層カード1においては、読取り装置から送信された送信信号が受信用のMSA17により受信され、受信された信号が電気信号としてSAW素子5の入力電極23に伝達され、入力電極23の電気信号がSAW素子5の圧電効果によって弾性表面波に変換して出力電極25まで伝搬し、出力電極25により電気信号として検出され、送信用のMSA19から前記読取り装置に向けて返送され、読取り装置によって読取ることにより積層カード1の個別の情報パターンが検知される。
【0045】
したがって、本実施例においては、読取り装置からの電磁波を弾性表面波素子のMSA17によって受信することにより動作するので、専用の電池が不要となる。
また、MSA17、19と固定コードマッチドフィルタを利用して積層カード1に個別情報を記録したので、個別情報の読取るために同期が不要となるとともに、非接触で読取ることができ、この結果、情報の読取り時に、情報記録媒体を読取り装置に差し込む必要がなくなり、読取り操作が簡便となる。
さらに、金属基材3の両面にSAW素子5が設けられているので、積層カード1の裏表に関係なく通信による読取りが可能となる。
【0046】
また更に、MSA17、19を設けたことにより、アンテナの角度方向による受信感度の変化が起こらず、その上、両面に送信および受信用のMSA17、19を設けることにより、更に指向性を広げることができ、その結果、任意の方向での通信が可能となる。
また、赤外線を透過する保護層13を介してレーザビーム33による熱ビームを赤外線吸収層に照射して櫛形状の金属電極の不要部分を溶融させ、これにより情報パターンが記録されるので、従来とは異なり、保護層13を厚くすることが可能となり、積層された情報記録媒体である積層カード1の耐久性および強度を確保することができる。
【0047】
さらに、SAW素子5の出力電極25に個別情報を記録する際に、出力電極25のトリミングによって全てのマッチングコードが電極配列の位相で書込まれるので、追記が不可能となり、例え、追記しても積層カード1自体が使用不可能となり、電極を復元させることが困難となり、この結果、情報記録の追記および改ざんすることを確実に防止できる。
また、積層カード1の金属薄膜層9と透明な保護層15との間に赤外線に対して透明な隠蔽層13や印刷層を設け、更に、保護層15の表面に視認情報を印刷することにより、金属薄膜層9に記録された情報を可視光により読めないようにすることが可能となり、その結果、目視による認識を不可能とし、記録されたパターンの読取りをほとんど不可能にすることができる。
【0048】
次に、本発明の他の実施例について説明する。
図11は本実施例の情報パターン形成前のSAW素子の入力電極および出力電極を示す平面図、図12(a)〜(g)は情報パターン形成の工程を順次示す縦断面図、図13(a)〜(c)はマイクロストリップアンテナの形成工程を説明する平万図である。
【0049】
本実施例では、弾性表面波がストンリー波であるSAW素子5に適用したものであり、金属薄膜層9と隠蔽層13との間に設けられる分離層11に代えて、赤外線吸収層35を設け、空隙層21を不要とした構成としたものである。
すなわち、本実施例の積層カード1は、図に示すように、金属基材3の両面に、SAW素子5が設けられた誘電体層7、金属薄膜層9、赤外線吸収層35、隠蔽層13、および透明な保護層15が、順次積層された構造になっている。
このストンリー波は、2つの固体を接合した境界面にエネルギーを集中させて伝搬する境界波であり、この場合の境界面は、SAW素子5表面と赤外線吸収層35と接する面をいう。
【0050】
次に、前記構成の積層カード1を製作する場合について説明する。
本実施例の積層カード1を製作するには、最初に、図11に示すように、櫛形状の入力電極23および出力電極25、コモン端子27、入力端子17a、および出力端子19aが形成されたSAW素子5を、図12(a)に示すように、金属基材3上に接着し、コモン端子を金属基材3にハンダ付けする。
さらに、図12(b)に示すように、金属基材3上にSAW素子5が中央部に位置して埋め込まれるように誘電体層7を接着する。
次に、誘電体層7を固定した後、図12(c)に示すように、誘電体層7の上に金属薄膜層9を蒸着し、さらに、図13(a)に示すように、金属薄膜層9上に受信用および送信用のMSA17、19をレジストRを塗布し、その後、露光し、不要部をエッチングにより除去し、図12(d)および図13(b)に示すように、1点給電式円偏波のMSA17、19を形成する。
その後、図12(e)に示すように、SAW素子5の表面に赤外線吸収層35を塗布し、図12(f)および図13(c)に示すように、この赤外線吸収層35の上に隠蔽層13を塗布し、図12(g)に示すように、その上に耐摩耗性の透明な保護層15を接着する。
【0051】
前記赤外線吸収層35は、赤外線吸収発熱剤とバインダとから構成され、赤外線吸収発熱剤としては、ポリメチン系のシアニン色素を用いており、その他の材料としては、アゾ系色素、ナフトキノン系やアントラノン系のキノン系色素などでもよい。
前記バインダとしては、ポリエステル系樹脂、エチルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリアクリルアミドなどのビニル系樹脂、ポリメチルアクリレート、ポリアクリル酸などのアクリル系樹脂類、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類、ポリアクリレート樹脂類、エキポシ樹脂、フェノール樹脂類などが使用することができる。
本実施例では、シニアン色素が2重量%、溶媒が70重量%、ポリエステル系樹脂が28重量%からなる溶剤を金属薄膜上に塗布し乾燥させることにより、膜厚が0.5μmから5μmの塗布膜に形成されている。好ましくは、1μm〜3μmである。
【0052】
そして、情報パターンの記録は、積層カード1の透明な保護層15からレーザビーム33を赤外線吸収層35に集光して照射することにより行なわれ、赤外線吸収層35に照射されたレーザビーム33は赤外線吸収層35に含まれる赤外線吸収発熱剤に吸収され、光エネルギーを熱エネルギーに変換し、この熱によって金属層が溶融されて情報パターンが形成される。
尚、この場合、積層カード1の金属薄膜層9と透明な保護層15との間に赤外線および紫外線に対して透明な隠蔽層13や印刷層を設けてもよく、透明な保護層15の表面に視認情報を印刷するようにしてもよい。
【0053】
本実施例においては、弾性表面波がストンリー波であるSAW素子5を用いたことにより、金属薄膜層9と隠蔽層13との間に設けられる分離層11に代えて赤外線吸収層35を設けるだけで、空隙層21を不要とすることができ、さらに、赤外線吸収層35を設けることにより、照射するレーザエネルギー効果を向上させ、レーザ光源のパワーを低減できるという効果が得られる。
【0054】
尚、前記実施例においては、円偏波MSA17、19を1点給電式とした場合について説明したが、2点給電式の円偏波MSA17、19により構成するようにしても同等の効果を得ることができる。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、読取り装置からの電磁波を弾性表面波素子の入力電極で受信することにより動作するので、専用の電池が不要となる。
また、マイクロストリップアンテナと固定コードマッチドフィルタを利用して情報記録媒体に個別情報を記録したので、個別情報の読取るための同期が不要になるとともに、非接触で読取ることができ、この結果、情報の読取り時に、情報記録媒体を読取り装置に差し込む必要がなくなり、読取り操作が簡便となる。
さらに、金属基材の両面に弾性表面波素子が設けることができるので、情報記録媒体の裏表に関係なく通信による読取りが可能となる。
【0056】
加えて、マイクロストリップアンテナを設けたことにより、アンテナの角度方向による受信感度の変化が起こらず、その上、両面に送信および受信アンテナを設けることにより、更に指向性を広げることができ、その結果、任意の方向での通信が可能となる。
また、赤外線に対して透明な保護層を介してレーザビームによる熱ビームを赤外線吸収層に照射して金属薄膜層を溶融させ、これにより情報パターンが記録されるので、従来とは異なり、保護層を厚くすることが可能となり、積層された情報記録媒体の耐久性および強度を確保することができる。
【0057】
さらに、弾性表面波素子の出力電極に個別情報を記録する際に、出力電極のトリミングによって全てのマッチングコードが電極配列の位相で書込まれるので、追記が不可能となり、例え、追記しても情報記録媒体自体が使用不能となり、電極を復元させることが困難となり、この結果、情報記録の追記および改ざんすることを確実に防止できる。
また、情報記録媒体の金属薄膜層と透明な保護層との間に赤外線に対して透明な隠蔽層や印刷層を設け、更に、保護層の表面に視認情報を印刷することにより、金属薄膜層に記録された情報を可視光により読めないようにすることが可能となり、その結果、目視による認識を不可能とし、記録されたパターンの読取りを困難とすることが可能となる。
【0058】
さらに、弾性表面波がストンリー波である弾性表面波素子においては、金属薄膜層と隠蔽層との間に設けられる分離層に代えて、赤外線吸収層を設けることにより、照射するレーザエネルギー効果を向上させ、レーザ光源のパワーを低減できるという効果を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係り、積層カードの積層構造を示す縦断面図である。
【図2】積層カードのマイクロストリップアンテナを示す平面図である。
【図3】SAW素子の入力電極および出力電極を示す平面図である。
【図4】SAWマッチドフィルタの等価回路を示す回路図である。
【図5】SAW素子に設けられた入力電極および出力電極を示す斜視図である。
【図6】情報パターン形成前のSAW素子の入力電極および出力電極を示す平面図である。
【図7】(a)〜(g)は情報パターン形成の工程を順次示す縦断面図である。
【図8】(a)〜(c)はマイクロストリップアンテナの形成工程を説明する平万図である。
【図9】レーザビームにより情報パターンをSAW素子の出力電極に形成する工程を説明する平面図である。
【図10】レーザビームにより情報パターンをSAW素子の出力電極に形成する工程を説明する縦断面図である。
【図11】本発明の他の実施例に係り、情報パターン形成前のSAW素子の入力電極および出力電極を示す平面図である。
【図12】(a)〜(g)は情報パターン形成の工程を順次示す縦断面図である。
【図13】(a)〜(c)はマイクロストリップアンテナの形成工程を説明する平万図である。
【図14】従来例に係り、磁気カードを示す平面図である。
【図15】図14中のA−A矢視断面図である。
【図16】従来例に係り、磁気カードを示す縦断面図である。
【図17】一部破砕して示す磁気カードの斜視図である。
【符号の説明】
1 情報記録媒体
3 金属基材
5 弾性表面波素子(SAW素子)
7 誘電体層
9 金属薄膜層
11 分離層
11a 窓部
13 隠蔽層
15 保護層
17 受信用マイクロストリップアンテナ
17a アンテナ端子
19 送信用マイクロストリップアンテナ
19a アンテナ端子
23 入力電極
25 出力電極
35 赤外線吸収層
Claims (9)
- 読取り装置からの電磁波を受信して個別データを電磁波により返送し、非接触で読取りが可能な情報記録媒体であって、
金属基材の少なくとも一方の表面に、
弾性表面波がレイリー波である弾性表面波素子が埋設された誘電体層と、
前記誘電体層上の前記弾性表面波素子を除く表面に設けられた金属薄膜層と、
前記金属薄膜上に設けられ、弾性表面波素子の表面上に空隙部を形成する窓部を有する分離層と、
前記分離層上に設けられ、前記弾性表面波素子に設けられた記録情報を隠す隠蔽層と、
前記隠蔽層上に設けられた透明な保護層と、
を順次積層して形成したことを特徴とする情報記録媒体。 - 読取り装置からの電磁波を受信して個別データを電磁波により返送し、非接触で読取りが可能な情報記録媒体であって、
金属基材の両表面のそれぞれに、
弾性表面波がレイリー波である弾性表面波素子が埋設された誘電体層と、
前記誘電体層上の前記弾性表面波素子を除く表面に設けられた金属薄膜層と、 前記金属薄膜上に設けられ、弾性表面波素子の表面上に空隙部を形成する窓部を有する分離層と、
前記分離層上に設けられ、前記弾性表面波素子に設けられた記録情報を隠す隠蔽層と、
前記隠蔽層上に設けられた透明な保護層と、
を順次積層して形成したことを特徴とする情報記録媒体。 - 前記金属薄膜層に、蒸着およびエッチング処理により形成された受信用および送信用のマイクロストリップアンテナをそれぞれ独立的に備え、前記受信用および送信用のそれぞれのマイクロストリップアンテナのアンテナ端子が、前記弾性表面波素子の入力電極および出力電極にそれぞれ前記蒸着時に接続されてデータの送受信回路を形成するようにした請求項1又は2記載の情報記録媒体。
- 前記送受信回路が、受信電力のみで動作し給電用の電池を必要としない送受信回路であって、BPSK変調されたDS方式信号を受信する受信回路と、受信符号の一致した際にバースト信号を出力する固定コードマッチドフィルタに形成された送信回路とから成る請求項3記載の情報記録媒体。
- 前記透明な保護層の表面に、印刷又は他の方法により視認可能な図柄の視認情報を形成した請求項1、2、3又は4記載の情報記録媒体。
- 読取り装置からの電磁波を受信して個別データを電磁波により返送し、非接触で読取りが可能な情報記録媒体であって、
金属基材の少なくとも一方の表面に、
弾性表面波がストンリー波である弾性表面波素子が埋設された誘電体層と、
前記誘電体層上の前記弾性表面波素子を除く表面に設けられた金属薄膜層と、
前記弾性表面波素子の表面上に設けられた赤外線吸収層と、
前記赤外線吸収層上に設けられ、前記弾性表面波素子に記録された記録情報を隠す隠蔽層と、
前記隠蔽層上に設けられた透明な保護層と、
を順次積層して形成されたことを特徴とする情報記録媒体。 - 前記透明な保護層の表面に、印刷又は他の方法により視認可能な図柄の視認情報を形成した請求項6記載の情報記録媒体。
- 前記金属薄膜層と透明な保護層との間に、赤外線および紫外線が透過する印刷による隠蔽層を設け、前記弾性表面波素子および金属薄膜層に形成された回路を隠蔽するようにした請求項6又は7記載の情報記録媒体。
- 金属基材の少なくとも一方の表面に、弾性表面波素子が埋設された誘電体層、前記弾性表面波素子を除く表面に設けられた金属薄膜層、弾性表面波素子の表面上に空隙部を形成する窓部を有する分離層又は赤外線吸収層、前記弾性表面波に記録された記録情報を隠す隠蔽層、および透明な保護層が順次積層された情報記録媒体の情報記録方法であって、
前記弾性表面波素子の出力電極にレーザビームの熱ビームにより個別情報を記録するようにしたことを特徴とする情報記録媒体の情報記録方法。
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