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JP3716984B2 - 吸放湿性繊維の製造方法 - Google Patents

吸放湿性繊維の製造方法 Download PDF

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JP3716984B2
JP3716984B2 JP2002258051A JP2002258051A JP3716984B2 JP 3716984 B2 JP3716984 B2 JP 3716984B2 JP 2002258051 A JP2002258051 A JP 2002258051A JP 2002258051 A JP2002258051 A JP 2002258051A JP 3716984 B2 JP3716984 B2 JP 3716984B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は吸放湿性繊維に関する。さらに詳しくは、調湿材として実用性能上要求されるRH50%〜95%の湿度範囲で水蒸気吸着等温線が急峻に立ち上がっていることにより、その湿度範囲において優れた調湿機能を有し、かつ抗菌性を有するともに、加工性も優れた吸放湿性繊維及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
シリカゲル,ゼオライト,硫酸ナトリウム,活性アルミナ,活性炭等の吸湿剤は、吸湿量が少なく吸湿速度が遅く再生に高温を要するという欠点があり、いずれも種々の用途に実用化するには問題があった。またB型シリカゲルは高い吸湿率差を有するが、ヒステリシス現象があることや球状形態のために該吸湿剤が脱落し易いために不織布等に加工するには繁雑な工程を要する等の問題がある。
【0003】
この問題点を解決する方法として、潮解性塩類を高吸水性繊維に含浸させた特許第2623771号公報の手段を提案したが、この手段により得られた繊維は、編物・織物・不織布等への加工が容易で吸放湿速度が速く、さらに吸湿剤の脱落もない実用性能を備えたものではあるが、繊維表面がヒドロゲルであるため、吸湿すると粘着性を帯び、特に壁紙やふとん綿への適用が困難であること、及び最近社会的ニーズとして高まりつつある抗菌性を満たすものではなかった。
【0004】
東洋紡績(株)製の高吸湿性繊維(N−38)は特開平9ー158040号公報の手段で提案され、吸湿性と放湿性を有し繰り返し使用に耐え、かつ抗菌性も兼ね備え、加工性が良好な高吸放湿性繊維である。しかしながらこの繊維は、調湿材の分野で実用性能上の要求はRH50%〜95%の湿度範囲での吸湿率差が大きいことと言うのに対し、わずか吸湿率差が35%しかないという問題点があった。
【0005】
鐘紡(株)製のベルオアシスは高い吸湿率差を有するが、調湿材の一用途である畳表中敷き等では水をこぼすと繊維が膨潤して畳表が盛り上がる、また一度膨潤すると乾燥しない等の問題があり、かつ繊維物性が低く不織布等に加工するには繁雑な工程を要する等の問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような従来の調湿材が抱える課題を解消したものであり、低湿度と高湿度の環境間で従来品よりも非常に高い吸湿率差を示し、吸放湿速度が速く、しかも取扱が容易で、吸湿後の形態保持性に優れ、容易に再生し得る、さらに抗菌性も兼ね備えた改善された調湿材に適する吸放湿性繊維及びその製造方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は高い繊維物性を有し、調湿材で実用性能上要求される吸湿率差の大きい吸放湿性繊維について鋭意研究を続けてきた。即ち本発明は、膨潤度が3.0g/g以下、減菌率が90%以上で、且つ20℃×50%RH条件と20℃×95%RH条件との吸湿率差が50重量%以上の架橋アクリル系繊維であることを特徴とする吸放湿性繊維である。
【0008】
かかる吸放湿性繊維は、アクリロニトリル含有率が85〜95重量%であるアクリル系繊維にヒドラジン系化合物による架橋処理を行い、この架橋結合の導入による窒素含有量の増加が、1.0〜5.0重量%の範囲内となるように調整し、引き続き酸処理、次いでアルカリによる加水分解を行うことによって、残存しているニトリル基の一部を3.0〜6.0meq/gのアルカリ金属塩型カルボキシル基に変換すること、により製造することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳述する。本発明は架橋アクリル系繊維であるが、その出発アクリル系繊維としてはアクリロニトリル(以下、ANという)を85〜95重量%含有するAN系重合体により形成された繊維であり、短繊維、トウ、糸、編織物、不織布等いずれの形態のものでも良く、また、製造工程中途品、廃繊維などでも構わない。AN系重合体は、AN単独重合体、ANと他の単量体との共重合体のいずれでも良く、他の単量体としては、ハロゲン化ビニル及びハロゲン化ビニリデン;(メタ)アクリル酸エステル;メタリルスルホン酸、pースチレンスルホン酸等のスルホン酸含有単量体及びその塩;(メタ)アクリル酸、イタコン酸等のカルボン酸含有単量体及びその塩;アクリルアミド、スチレン、酢酸ビニル等の単量体が挙げられるが、ANと共重合可能な単量体であれば特に限定されない。
【0010】
該アクリル系繊維に、ヒドラジン系化合物による架橋を導入する方法としては、窒素含有量の増加が1.0〜5.0重量%の範囲内に調整し得る手段である限り採用できるが、ヒドラジン系化合物の濃度5〜60%,温度50〜120℃で5時間以内で処理する手段が工業的に好ましい。ここで、窒素含有量の増加とは原料アクリル系繊維の窒素含有量とヒドラジン系化合物による架橋が導入されたアクリル系繊維の窒素含有量との差をいう。
【0011】
なお、窒素含有量の増加が上記下限に満たない場合には、最終的に実用上満足し得る物性の繊維が得られず、上限を越えると繊維の膨潤率が低くなり、吸湿率差の大きい吸放湿性繊維が得られない。ここに使用するヒドラジン系化合物としては、水加ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、塩酸ヒドラジン、臭素酸ヒドラジン、ヒドラジンカーボネート等、この他エチレンジアミン、硫酸グアニジン、塩酸グアニジン、リン酸グアニジン、メラミン等のアミノ基を複数含有する化合物が例示される。
【0012】
本発明者は、ヒドラジン系化合物による架橋処理後の残存ニトリル基の一部を3.0〜6.0meq/gのアルカリ金属塩型カルボキシル基に変換する方法として、ヒドラジン系化合物処理による架橋結合導入の後、引き続き酸処理A、次いでアルカリ化合物による加水分解を行うことによって上述の課題を達成するに到った。この方法によれば、架橋結合の導入後の酸処理Aの酸濃度、次工程のアルカリ化合物濃度のいずれもを一段階でアルカリ加水分解するという従来の方法よりも低くすることができ、容易に多量のアルカリ金属塩型カルボキシル基に変換でき、加工に耐えうる強度を維持した吸放湿性繊維が与えられる。
【0013】
ここに使用する酸としては、硝酸、硫酸、塩酸等の鉱酸の水溶液、有機酸等が挙げられるが特に限定されない。この処理の前に架橋処理で残留したヒドラジン系化合物は、十分に除去しておく。また、加水分解を行うのに使用するアルカリとしては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アンモニア等の塩基性水溶液等が挙げられるが、加水分解可能なアルカリであれば特に限定されない。使用する酸、アルカリの濃度についても特に限定されないが、ともに1〜10重量%、温度50〜120℃で2時間以内で処理する手段が工業的、繊維物性的にも好ましい。
【0014】
加水分解によって生成するカルボキシル基をアルカリ金属塩型に変換する方法としては、大別して2つある。その1つは、アルカリ金属水酸化物による加水分解であり、直接アルカリ金属塩型カルボキシル基を生成させるものである。第2はアルカリ土類金属水酸化物やアンモニア等により加水分解して一旦目的とは異なる型のカルボキシル基を生成させ、次いで該基を目的のアルカリ金属塩型に置換するという方法である。
【0015】
第2の方法におけるカルボキシル基の塩型の置換には、アルカリ金属の水酸化物や該金属の塩化合物により直ちにアルカリ金属塩型にする手段や、一旦酸処理(前述の酸処理Aと区別して酸処理B)してカルボキシル基をH(酸)型にした後上記のアルカリ金属化合物によりアルカリ金属塩型にする手段がある。尚本願発明が必要とするアルカリ金属塩型カルボキシル基の量は3.0〜6.0meq/gであるので、この量が確保されれば、残余のカルボキシル基の「型」は問わない。
【0016】
アルカリ金属塩型としては文字通りLi,Na,Kであり、かかる塩型カルボキシル基が上述の量形成されていると、繊維は1.0〜3.0g/gの膨潤度を有するものとなる。尚カルボキシル基の塩の種類はLi,Na,Kであるが、この中のいずれか1種類に限定される訳ではなく、同一の製品繊維にこれらの2種以上が混在していても構わない。又、膨潤度の評価手段は後述する。かかるアルカリ金属塩型への変換処理の後は、被処理繊維は水洗,乾燥や必要に応じ油剤処理等を施す。
【0017】
なお、アルカリ金属塩型カルボキシル基が3.0meq/gに満たない場合には吸放湿性が得られず、また6.0meq/gを越えると、実用上満足し得る繊維物性が得られない。架橋の導入が適正に行われ、ニトリル基の一部がアルカリ金属塩型カルボキシル基3.0〜6.0meq/gに変換された結果、発明の繊維の膨潤度は1.0〜3.0g/gを示し、引張強度も0.7dN/tex以上,減菌率も90%以上を有するものとなる。かかる繊維は従来技術である特開平9−158040号公報が開示する発明では得られなかった、20℃×50%RH条件と20℃×95%RH条件との吸湿率差が50重量%以上150重量%以下という吸湿率差の大きい繊維であり、従来の繊維あるいは方法よりも実用性能上有効な吸湿率差が大幅に改善される。
【0018】
本発明の繊維は製造工程中のアルカリ金属塩型カルボキシル基形成されたところで膨潤しているので、乾燥工程での負荷を軽減するためや、最終製品に向けての加工例えば不織布にするための加工性を向上する目的で油剤付着をするが、油剤としてアルキルアミド第4級カチオン油剤を1.0〜2.5%omfの範囲で繊維に付着すると、前記した異なる条件間での吸湿率差は変わらないで繊維の膨潤度が1g/g低下することを見出した。
【0019】
本知見は本発明繊維の工業的有利な製造方法を与える。油剤付着量が1.0%omf未満では膨潤度は低下しない。また油剤付着量が2.5%omf以上ではかえって不織布等への加工性が悪くなる等の問題点が発生する。かかるアルキルアミド第4級カチオン油剤として好ましい例はアルキルアミドプロピルジメチルβ−ヒドロキシエチルアンモニウム硝酸塩R=(C16〜C18),ステアリルアミドエチルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロライド,セチルアミドエチルジエチルメチルアンモニウムメチルサルフェート等が挙げられる。本発明により、引張強度が0.7dN/tex以上で、吸放湿速度が速く、吸湿率差が大きくて抗菌性を兼備する繊維を提供することが出来る。
【0020】
本発明の出発繊維は前述の通り、アクリル系繊維製造工程途中のものであっても、繊維に紡績加工等を施した後のものでも良い。出発アクリル系繊維として、延伸後熱処理前の繊維(AN系重合体の紡糸原液を常法に従って紡糸し、延伸配向され、乾燥緻密化、湿熱緩和処理等の熱処理の施されていない繊維、中でも湿式又は乾/湿式紡糸、延伸後の水膨潤ゲル状繊維:水膨潤度 30〜150%)を使用することにより、反応液中への繊維の分散性、繊維中への反応液の浸透性などが改善され、以て架橋結合の導入や加水分解反応が均一かつ速やかに行われるので望ましい。
【0021】
なお、これらの出発アクリル系繊維を、ポンプ循環系を備えた容器内に充填し、上記架橋結合の導入、酸処理A、アルカリ処理、及びアルカリ金属塩型カルボキシル基の形成、水洗、油剤処理等の手段をとることが、装置上、安全性、均一反応性等の諸点から望ましい。かかる装置(ポンプ循環系を備えた容器)としては染色機が例示される。
【0022】
このように大きな吸湿率差があることにより、本発明の繊維は、従来なかった用途、或いは、従来繊維では要求に応えられなかった用途に適用できる。例えば、結露する前の水蒸気を吸湿し、また吸水する作用による結露防止素材、水蒸気を吸収する事を利用した吸放湿素材(衣服、建材、壁紙、中綿等)、環境の調湿,調温素材等が挙げられる。また、高い吸湿率差性能を利用した、押入れ,地下室,床下,浴室等の乾燥,除湿素材や、水分を非常に嫌う電子材料等の被覆素材の一部として使う等の使用方法も例示できる。また、この繊維は親水性が高いので、水分を吸収,水蒸気を放出する様な用途にも適用できる。このような効果は、出発繊維を細デニール糸にする、中空糸にする、多孔繊維とする等で更に高めることができる。また、フィブリル化繊維形態、起毛或いは植毛した布や紙等にすることも有効である。
【0023】
また、本発明の繊維は吸放湿性繊維であるが、吸湿したときの繊維の状態がべとつかずに、適度に湿り気があり、かつ適度な伸度も有している。このため、しっとりとしていてしなやかな繊維である。この性質を利用して、保湿素材、美容素材、高風合い素材等への適用もできる。また、親水性の薬品等をしみ込ませた布、紙等へ適用した場合にも、保湿性が高いため含浸量が高く、乾きにくい素材にできるといった効果がある。このような例としては、消毒液、化粧水、芳香剤、消臭剤、殺菌剤、防虫剤等を含浸させたものが例示できる。
【0024】
本発明の繊維の吸放湿性は、主にアルカリ金属塩型カルボキシル基によって発現する。この量を制御する事によって吸放湿性を制御できる。例えば、加水分解により多量のカルボキシル基を導入し、アルカリ金属塩型カルボキシル基への変換量を制御して吸放湿性を制御する等の方法も行い得る。このような方法を採用する場合には、アルカリによる加水分解に次いで酸処理を行う等種々の方法があるが、アルカリ金属塩型カルボキシル基を3.0〜6.0meq/g存在せしめられる方法であれば特に限定されない。しかし、工業的には前述の第2の方法である、アルカリによる加水分解に次いで、酸処理Bを行ってからアルカリ金属塩処理を行ってアルカリ金属塩型カルボキシル基の量を制御するという方法が好ましい。
【0025】
本発明の繊維は吸放湿速度が速いが、この速度も繊維自体や繊維でなる成形体の密度などによって制御することができる。非常に速い吸放湿速度が要求される場合には、細い吸放湿性繊維を用いたり、フィブリル化した吸放湿性繊維を用いたり、繊維密度を低くしたり、起毛,植毛等を行い、吸放湿性繊維と湿分含有気体と接触する面積を大きくする等の方法を採用する事ができる。また、緩慢な吸放湿速度が要求される場合には、不織布、紙への加工の密度を高める或いは紡績時に高い撚り数にする等により繊維密度を高くしたり、太い吸放湿性繊維を用いたり、本発明の繊維を水蒸気を透過する事のできる他の物質で覆う等の方法が採用できる。
【0026】
本発明の繊維は先に述べたように高い吸湿率差及び吸放湿性、抗菌性も有する。抗菌性とは、実施例に示すようなシェークフラスコ法で測定した時の減菌率で示すが、本発明繊維は90%以上の減菌率を示す。
【0027】
本発明の繊維は、これらの特性を有する為、非常に安全に取り扱うことができる。通常の繊維は水分を吸収すると菌の発生し易い環境になるため、衛生上、抗菌性を付与した繊維等の併用が必要になる事が多いが、特にこれを行う必要がないという優れた性能を持ち合わせているのである。また難燃性を有する為、再生等で高温を適用するような事を行っても、出火の心配は殆ど無く家庭で使用しても非常に安全な素材である。
【0028】
本発明の素材は、耐薬品性に優れた架橋構造を有しているため、種々の薬品による処理を行っても繊維形態を保持することができる。よって、酸やアルカリ等を含む構造材料の構造保持材等としても適用できる。
【0029】
【作用】
本発明に係る吸放湿性繊維並びに該製造方法が、抗菌性を有しつつ高い吸湿率差及び吸放湿性を兼ね備える理由は、十分に解明するに至っていないが、概ね次のように考えられる。
【0030】
即ち、本発明に係る繊維は、AN系重合体から出発していながら、実質的にニトリル基が減少している所から、ポリマー鎖に結合している側鎖は、ヒドラジン系化合物との反応により生成した窒素を含有する架橋構造と、ニトリル基の加水分解反応により生成したアルカリ金属塩型カルボキシル基が大部分を占めていると考えられる。
【0031】
一般にアルカリ金属塩型カルボキシル基は吸湿性を有するが、本発明はこの量が非常に多いことに加え、窒素の多い架橋構造を有するため吸湿性を更に高めていると考えている。また、カルボキシル基がアルカリ金属塩型であることと、適度な架橋構造があることにより、吸湿性に関与するはずの官能基同士が水素結合してしまい吸湿性に寄与しないといった機構が抑制され、非常に高い吸湿率差及び吸放湿性を持つと推定している。
【0032】
本発明の繊維はアルカリ金属塩型カルボキシル基を多量に含んでいても、種々の加工に耐えうる繊維強度を持つ。このことについては次のように推定している。即ち、酸処理A、アルカリ処理と二段階の加水分解を行うので、反応試薬の濃度が非常に低く且つ処理時間が短縮できる。このため苛酷な処理をうけず、アルカリ金属塩型カルボキシル基の量が多くても高い繊維強度を有すると推定している。当然、架橋構造を有していることにも起因していよう。
【0033】
抗菌性は窒素を含有する架橋構造によりもたらされていると推定される。さらに、吸湿時でもべとつき感がないのは高度に架橋されていること並びに油剤の効果のためであろう。
【0034】
【実施例】
以下実施例により本発明を具体的に説明する。実施例中の部及び百分率は、断りのない限り重量基準で示す。なお、繊維中のアルカリ金属塩型カルボキシル基量、吸湿率、膨潤度、油剤付着率及び抗菌性は以下の方法により求めた。
【0035】
(1)アルカリ金属塩型カルボキシル基量(meq/g)
十分乾燥した供試繊維約1gを精秤し(Xg )、これに200mlの水を加えた後、50℃に加温しながら1N塩酸水溶液を添加してpH2にし、次いで0.1N苛性ソーダ水溶液で常法に従って滴定曲線を求めた。該滴定曲線から全カルボキシル基に消費された苛性ソーダ水溶液消費量(Ycc)を求め、次式によって全カルボキシル基量(meq/g)を算出した。
(全カルボキシル基量)=0.1Y/X
【0036】
別途、上述の全カルボキシル基量測定操作中の1N塩酸水溶液の添加によるpH2への調整をすることなく同様に滴定曲線を求め酸型カルボキシル基量(meq/g)を求めた。これらの結果から次式によりアルカリ金属塩型カルボキシル基量を算出した。
(アルカリ金属塩型カルボキシル基量)=(全カルボキシル基量)−(酸型カルボキシル基量)
【0037】
(2) 吸湿率(%)
試料繊維約5.0gを熱風乾燥機で120℃、5時間乾燥して重量を測定する(W1g)。次に試料を温度20℃で所定の恒湿槽(50%RH及び95%RH)に24時間入れておく。このようにして吸湿した試料の重量を測定する(W2g)。以上の測定結果から、次式によって算出した。
(吸湿率)=(W2−W1)/W1×100吸湿率差とは、かくして得た20℃における50%RHと95%RHの吸湿率の差を言う。
【0038】
(3) 膨潤度(g/g)
試料繊維約3gを熱風乾燥機で70℃、3時間乾燥して重量を測定する(W1g)。次に試料を水が300ml入ったビーカーに30分間浸漬した後、膨潤した試料を卓上遠心脱水機(160G×5分)で脱水した後の試料の重量を測定する(W2g)。
(膨潤度)=(W2−W1)/W1
【0039】
(4) 油剤付着率(%omf)
試料繊維約3gを精秤(W1)してガラス円筒濾紙に入れ、これを抽出円筒に入れ予め溶剤(1級エチルアルコール)100〜120mlが入ったコルベンを接合する。更に、冷却菅を接合し、ウォーターバス上で97℃以上で2時間抽出する。コルベンの中の溶剤を抽出円筒に充分上げた時点でコルベンを外し、溶剤をシャーレに入れ、これをウォーターバスで蒸発乾固する。シャーレに残留した油剤の重量(W2)を求め次式により算出する。
(油剤付着率)=W2/(W1−W2)×100
【0040】
(5) 抗菌性試験菌を肺炎桿菌とし、抗菌防臭加工製品の加工効果評価試験マニュアル・シェークフラスコ法(繊維製品衛生加工協議会,昭和63年)により試験し、減菌率%で示した。
【0041】
実施例1
AN90%及びアクリル酸メチル(以下、MAという)10%からなるAN系重合体(30℃ジメチルホルムアミド中での極限粘度〔η〕:1.2)10部を48%のロダンソーダ水溶液90部に溶解した紡糸原液を、常法に従って紡糸、延伸(全延伸倍率;10倍)した後、乾球/湿球=120℃/60℃の雰囲気下で乾燥(工程収縮率14%)して単繊維繊度1.5dの原料繊維Iを得た。
【0042】
原料繊維Iを、表1に示した条件で架橋処理及びニトリル基のアルカリ金属塩型カルボキシル基への変換を行った後、脱水、水洗、乾燥を行い繊維No.1〜8を得た。得られた繊維の特性を調べ、その結果を表1に併記した。
【0043】
【表1】
Figure 0003716984
【0044】
窒素増加量が1.0〜5.0重量%の範囲にあってNa型カルボキシル基が3.0〜6.0meq/gの範囲である本発明例の繊維No.1〜4は、膨潤度1.0〜3.0g/gと高い吸湿率差を示し、高い引張強度と抗菌性も兼ね備えていることが判る。
【0045】
これらに対して、繊維No.5は窒素増加量が1.0重量%未満のため、Na型カルボキシル基量は本願が推奨する範囲にあり吸湿率差も大きいが、引張強度が0.2dN/texと低い値である。このため繊維が脆く、カード掛け等の加工に耐える物性を有するものではなかった。また、同様にNa型カルボキシル基量は満たすものの窒素増加量が本発明の推奨量より過大である繊維No.6は、十分な引張強度を有するものの繊維の膨潤度、吸湿率差共に目的が達成されない。
【0046】
一方、窒素増加量は満たすもののNa型カルボキシル基への変換が本発明の推奨量より少ない繊維No.7は、引張強度はあるが繊維の膨潤度、吸湿率差共に目的を達するものではない。また、同様に窒素増加量は適当であるもののNa型カルボキシル基への変換が本発明の推奨量より大きい繊維No.8は吸湿率差は十分であるが、繊維の膨潤度が高く、引張強度が0.4dN/texと低い値である。このため繊維が脆く、カード掛け等の加工に耐える物性を有するものではなかった。
【0047】
実施例2
実施例1で得られたNo.1の繊維5gを、表2に示したアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物の5%水溶液1Lに温度40℃で5時間浸漬した後水洗、乾燥し、塩型の異なる繊維No.9〜11を得た。得られた繊維の特性を調べ、その結果を表2に併記した。
【0048】
【表2】
Figure 0003716984
【0049】
本発明例繊維No.1のNa型に変換された繊維やLi型であるNo.9,K型であるNo.10の繊維と比較すると、繊維No.11のCa型カルボキシル基を有する繊維は繊維の膨潤度が低くなり、引張強度は向上するが、吸湿率差が低くて目的を達せず、カルボキシル基の塩型としてはアルカリ金属が有効であることが判る。
【0050】
実施例3
実施例1で得られたNo.1の繊維5gを、アルキルアミド第4級カチオン油剤であるアルキルアミドプロピルジメチルβ−ヒドロキシエチルアンモニウム硝酸塩(R=C16〜C18)の0.5%水溶液と1.5%水溶液に40℃で1時間浸漬した後脱水、乾燥し、表3に示す油剤付着量の異なる繊維No.12、13を得た。得られた繊維の特性を調べ、その結果を表3に併記した。
【0051】
【表3】
Figure 0003716984
【0052】
アルキルアミド第4級カチオン油剤付着量1.5%の繊維No.12と同油剤付着量0.5%の繊維No.13とを比較すると、吸湿率差は変わらないが、No.12では繊維の膨潤度が低下することにより製造工程で繊維の乾燥負担が軽減されるため、工業的有利に製造し得ることが判る。一方油剤付着量0.5%では、繊維No.1と較べて膨潤度に差がなく、乾燥負担軽減の目的には1.0%以上の付着が必要であることが理解される。
【0053】
【発明の効果】
加工上問題のない繊維物性を有し、調湿材で実用性能上必要とされる吸湿率差の大きい吸放湿性繊維を、工業的に有利に製造する手段を提供し得た点が本発明の特筆すべき効果である。このようにして得られた吸放湿性繊維は、吸放湿性が向上したばかりでなく吸湿率差が大幅に改善された為、従来適用できなかった用途にも展開できる。そして、抗菌性をも兼ね備えていること、再生温度が低いこと、さらに、繊維状であるために、不織布,編物,織物などさまざまな形態に加工でき、アルカリ金属塩型カルボキシル基量、繊維の太さ、密度等の制御により吸放湿速度も制御することができるため、吸放湿性、或いは吸湿による発熱性が求められる分野に広く展開することができる。

Claims (1)

  1. アクリロニトリル含有率が85〜95重量%であるアクリル系繊維にヒドラジン系化合物による架橋処理を行い、この架橋結合の導入による窒素含有量の増加が1.0〜5.0重量%の範囲内となるように調整し、引き続き酸処理、次いでアルカリによる加水分解を行うことによって、残存しているニトリル基の一部を3.0〜6.0meq/gのアルカリ金属塩型カルボキシル基に変換し、アルキルアミド第4級カチオン油剤を1.0〜2.5omfの範囲で付着することを特徴とする吸放湿性繊維の製造方法。
JP2002258051A 2002-09-03 2002-09-03 吸放湿性繊維の製造方法 Expired - Lifetime JP3716984B2 (ja)

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