JP3715997B2 - 複合原動機の制御装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、電動機と内燃機関とを備えた複合原動機の制御装置に関し、特に複合電気自動車における内燃機関を有効かつ適切に制御し、内燃機関に付加されるべき機能及び内燃機関と電動機を機械的に連結するための動力伝達制御等の技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
蓄電池の貯蔵電力のみによって走行する電気自動車や、太陽電池を主たる電源として走行する電気自動車に対して、補助的に内燃機関を備えるタイプの複合電気自動車が現実的な近未来の自動車として開発されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このような複合電気自動車に使用される複合原動機では、内燃機関の運転制御がシステムの成否を決する重要課題となっている。
即ち、
1.内燃機関を燃費率最良の条件で、いかに多頻度運転するか。
【0004】
2.そのような運転状態に内燃機関が耐えうるか。
3.主たる原動機である電動機を制御しながら内燃機関を制御できるか。
4.どのような物理的信号によって内燃機関を制御するか
5.その他
という課題が開発担当者に対して大きなバリアとなっている。内燃機関をただ漫然と運転していたのでは複合原動機としての効果を減殺するし、やみくもに最良燃費の運転領域に誘導すると、それは暖機運転もなくかなり大きな出力領域を使用することになるので、耐久性に支障を来すことになる。また、間断なく実行されている電動機の制御の間隙を利用して、始動、出力制御など、複雑な操作を要する内燃機関の制御を実行できるのか否か、といった問題もある。制御のための信号も必須のもの、設置されていることが望ましいもの、殆ど効果のないもの、等がある。
【0005】
本発明はこのような従来の課題に鑑みてなされたもので、複合原動機における内燃機関を有効かつ適切に制御可能な複合原動機の制御装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このため、本発明にかかる複合原動機の制御装置では、図1に示すように、電動機と内燃機関からなり、かつ、内燃機関と電動機との間で内燃機関の動力を出力として伝達・遮断が切り換え自由な動力伝達手段を含んで構成された複合原動機の制御装置において、前記複合原動機に要求される出力レベルを検出する出力要求レベル検出手段と、前記電動機の現在の運転状態を検出する電動機運転状態検出手段と、前記内燃機関の現在の運転状態を検出する内燃機関運転状態検出手段と、これら各検出手段からの信号に基づいて、内燃機関の動力伝達手段による動力の伝達・遮断に対応する運転の始動・停止、及び内燃機関の運転中の駆動制御を行う制御手段と、を備え、かつ、前記制御手段は、前記動力伝達手段により内燃機関の動力を伝達から遮断に切り換えるときに、該動力伝達遮断前の内燃機関の回転速度を維持しつつ、内燃機関を無負荷運転に制御した後、動力伝達を遮断する構成であるようにした。
【0023】
【作用】
請求項1の発明にかかる複合原動機の制御装置の構成によれば、各検出手段からの信号に基づいて、制御手段により、内燃機関の運転の始動・停止、及び運転中の駆動制御が行われるので、内燃機関は、常に電動機の運転状態に適合した状態で運転され、内燃機関を有効かつ適切に制御することが可能となる。
【0024】
また、内燃機関の動力伝達遮断前の回転速度を維持しつつ、内燃機関を無負荷運転に制御した後、遮断制御を行うことにより、オーバーランを招いたり、多量の排気を発生したりすることが防止される。
【0041】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図2〜図27に基づいて説明する。
本実施例では、複合電気自動車に使用される複合原動機の内燃機関を最適な運転条件で運転するように以下のような制御を行う。
1.内燃機関の運転準備から、始動、停止までの制御
2.内燃機関を電動機に接続する動力伝達装置の制御
3.内燃機関を最適運転条件へ誘導するための制御
全体構成を示す図2において、内燃機関1と電動機3には、動力伝達制御装置2が介装され、動力伝達制御装置2には、始動電動機5が連結されている。内燃機関1と電動機3の総合出力は、出力軸12、変速機4を介して出力される。
【0042】
燃料供給制御装置6は、内燃機関1に燃料等を供給する装置である。
パワートランジスタ8は、制御装置11によって制御され、オン・オフして点火コイル7に高電圧を発生させる。
次にこの複合原動機に備えられた種々のセンサについて説明する。
内燃機関と電動機を備える複合原動機において、電動機を精密に効果的な状態に制御する必要があることは言うまでもないが、内燃機関を適時、適切に運転又は停止して、その能力を最大限まで引き出すことが全体の能力を高めるうえで必須の要件となっている。
【0043】
複合原動機における内燃機関の役割は、蓄電池の貯蔵電力が欠乏した時の補給、電動機のみによる出力不足の補完、その他内燃機関を必要とする補機類の運転時に大別されるが、いずれの時も運転される時は可能なかぎり燃費率が最も良好な運転条件を選んで運転される。しかし、それを実現するためには運転者がなにを望んでいるか、また、現在自動車と複合原動機を構成する主要な要素はどのような状態であるかを知らなければならない。それらを検知するためには次のセンサが必要である。
【0044】
まず、アクセルペダルには、アクセル踏込みセンサ24が備えられている。
アクセル踏込みセンサ24は運転者が要求する出力レベルを検知するためには必須のものであり、回転速度に対して設定された閾値又は他の基準により設定された閾値を越えてアクセルが踏み込まれた時には内燃機関1の運転要求があったものと判別される。この閾値は蓄電池の電圧、直前まで供給していた電流によりいくらか調整もされる。例えば、蓄電池の電圧が十分に高い時は閾値は多少上方に調整されたり、低い時には下方に調整される。また、直前までの電流値が小さい時は、一瞬の気まぐれによってアクセルが踏み込まれたかもしれないので確認のために閾値を上方にそらしておく。直前までの電流値が相当に大きい時には閾値を下方に調整して内燃機関1の始動受入れ準備体制をとるようにする。
【0045】
車速センサ25は、現在の自動車走行速度を検出するためのセンサであり、電動機3とプロペラシャフトの間に変速機を備えた形式の複合電気自動車には必須のセンサである。尚、電動機3がプロペラシャフトに直結する形式の複合電気自動車では、車速センサ25を電動機3の回転センサに代用できる。
車速センサ25のセンサ信号は、車速が低く、かつ、市街地を走行していると判別されたり、渋滞中であると判別されたりするときに、内燃機関1の運転を遠慮する方向に制御するか否かを判別するときの判断材料として利用される。例えば、車速が低く渋滞中であると判別されたとき、蓄電池9の電圧が内燃機関1の運転を要求するレベルであっても内燃機関1の始動を延期し、さらに要求レベルが高まるまで蓄電池9のみによって運転を続けるように制御するが、このような制御を行うためには車速センサ25が必要である。
【0046】
出力センサ21は、内燃機関1の出力を検出するためのセンサである。尚、燃料制御弁の位置や吸気絞り弁開度又は吸気管内圧力等、内燃機関1の出力を代弁する信号を出力するようなセンサであれば、出力センサ21の代わりに採用してもよい。この出力センサ21は、暖機が必要な時には暖機にふさわしい状態で運転し、最良燃費率が要求される時には、内燃機関1の運転状態をその状態に誘導するのに必須のセンサである。
【0047】
内燃機関1、電動機3には、夫々、内燃機関1、電動機3の回転速度を検出する回転速度センサ22,23が備えられている。
回転速度センサ22,23は、夫々、内燃機関1、電動機3を運転する上で必須の信号を提供する。電動機3の単独運転から内燃機関1も含めた協働運転モードに移る際には、電動機3と内燃機関1の運転速度が略一致したことを確認して両者を連結する必要があるし、その過渡的な状態では内燃機関1を無負荷で運転し、電動機3の回転速度に同期させる必要もあり、このような制御を行うには、内燃機関1、電動機3の回転速度を把握しながら実行する必要があり、回転速度センサ22,23は、そのために用いられる。
【0048】
電流センサ26,電圧センサ27は、夫々、蓄電池9の電流、電圧を検出するためのセンサであり、蓄電池9の現状と使用状況を知る上で必須の役割を果たしている。現在の走行速度や走行履歴により市街地走行であると判定される状況のもとでは内燃機関1の使用は控えめにするよう調整されるが、基本的には電源電圧が低下して、蓄電量が不足してきたことが観測されたとき、又は、消費電流が大きくなって蓄電池9の供給能力を上回ったとき、内燃機関1が運転されて不足する電力を補うのであるから、電流センサ26,電圧センサ27は内燃機関1の運転制御の主役的重要性を有するセンサであると言える。
【0049】
この他にも、内燃機関1には、通常の内燃機関と同様の冷却水温を検出する温度センサ、排気温度センサ、が備えられ、内燃機関1がガソリンエンジンの場合には、吸気負圧センサも備えられているが、これらセンサについては後述する。また、複合電気自動車には、図示しないが、内燃機関1を使用したいという運転者からの意志表示を伝達するための内燃機関運転要求スイッチや緊急停止スイッチなども備えられている。
【0050】
さらに、外気温度を検出する外気温度センサ、電動機3、蓄電池9、大電流制御素子温度等を検出する温度センサも備えられている。これらのセンサは、内燃機関1を最適運転条件で運転する制御には必須のものではないが、より細かな制御を行う場合、又は各種機器を保護して複合原動機の実用性を高め、信頼性を確保する為には、極めて有効な手段である。
【0051】
データ入力装置10は、各センサからの信号を積算し、A/D変換してデジタル値に変換し、このデジタル化したセンサの信号値をマイクロコンピュータ11に出力する。
制御装置11は、データ入力装置10から入力された各センサからの信号値に基づいて内燃機関1の始動、調整速度、調整力、停止を含む総合制御を実行するマイクロコンピュータシステムであり、CPU,ROM,RAM等を備えている。
【0052】
次に、本実施例の内燃機関1には、運転開始の準備をするためのシステムが備えられている。
複合原動機の一部を構成する内燃機関は、通常の走行が主として電動機によって行われるために停止状態であることが多く、冬期などでは冷え過ぎたり油膜が形成不十分な状態に陥りがちである。しかも、運転を要求されているのは電動機の出力又は蓄電池9の能力を越えるハードな運転を要求されている状況になっていることが多く、内燃機関を突然始動すると、急に激しい運動が要求されることになり、耐久性に問題を生じてしまう。
【0053】
そこで、走行中に内燃機関1の保温や潤滑油を圧送して油膜を保持する必要がある。また、内燃機関1の運転が必要である時に、なかなか始動出来ないのでは折角の内燃機関1搭載の効果を損なうし、寒冷地などでは金属に脆さを帯びているので極低温から始動して、いきなり負荷の大きい運転状態にはいるのは温度の変化に伴うストレスも大きい。これを解消するために、内燃機関1が冷え過ぎないようにして内燃機関1をいつでも運転できるように、一定の温度以上に保温しておくシステム、予め潤滑油を圧送しておくシステムが必要である。また、このようなシステムは、冷始動直後のHc 排出量を減じる上にも必要である。
【0054】
また、油膜の保持にはオイルの選択も重要な問題であるが、始動直前に油圧をかけて内燃機関1の摺動部に潤滑油を散布しておくのも極めて効果的である。
図3、図4は、内燃機関1の保温システムを示す。
図3において、内燃機関1は中間ケース41を介して電動機3と接続している。この中間ケース41は、例えばアルミニューム、銅等、熱伝導良好な材料で形成されたもの、あるいはヒートパイプ等を組み込んだものであり、動力伝達制御装置2のハウジングを兼用している。電動機3で発生した熱が内燃機関1に伝達して内燃機関1が加熱される。
【0055】
図4において、内燃機関1には温度センサ28と、ヒータ42と、コントローラ43と、が備えられ、制御装置11は、温度センサ28の検出信号に基づいてコントローラ43を制御し、蓄電池9からヒータ42に通電し、内燃機関1を一定の温度以上に保温する。
尚、内燃機関1をバーナで保温するようにしてもよい。その場合、内燃機関1にバーナを備え、燃料タンクからコントローラを介してバーナに燃料を供給する構成となる。
【0056】
図5は、潤滑油の圧送等を行って始動準備をするためのシステムを示す。
図5において、制御装置11に備えられたCPU51には、車速センサ25、電流センサ26、電圧センサ27の各センサ信号が入力ポート54を介して入力される。
ROM52には、始動準備を行うため、車速、蓄電池9の電流、電圧の閾値を記憶しておく。
【0057】
RAM53は、経過データ(走行履歴)等を記憶するためのメモリである。
燃料供給制御装置6には、燃料ポンプ56とオイルポンプ57とが備えられている。
オイルポンプ57は、小型の電動式オイルポンプであり、通常内燃機関1に設置されているオイルポンプと並列的に設置される。
【0058】
CPU51は、各センサ信号の信号レベルと前記ROM52に記憶された各閾値とを比較し、内燃機関1を始動する条件を判別し、その前段階に達した時に、出力ポート55を介して制御信号を、夫々、燃料ポンプ56、オイルポンプ57に出力する。
次に、内燃機関1の始動・停止制御を行うシステムについて説明する。
【0059】
複合原動機の内燃機関は、必要な時のみ運転される形態であり、原則的には運転者の意志によって運転や停止を実行するのではなく、複合原動機としての必要性に応じて運転されるので自動的に始動したり、停止する必要がある。
図6は始動制御を行うためのシステムを示す。内燃機関1には、前述したように、アクセル踏込みセンサ24、回転速度センサ23等の他に、吸気負圧センサ29、排気温度センサ30が備えられ、これらのセンサ信号は入力ポート54を介して入力される。
【0060】
本実施例では、内燃機関1の始動条件を以下のように設定しておく。
〔始動条件〕
(1) 運転者が始動を要求していると見なされる場合
例えば、アクセルペダルが一杯に踏み込まれている時、手動スイッチによる内燃機関1の始動要求があった時、内燃機関1により駆動される補機のスイッチがオンの時のいずれかの時には、運転者が始動を要求していると見なされる。このセンサ信号は、オン−オフ信号としてもたらされる。
【0061】
(2) 運転状態が電動機3の能力を越えていると見なされる場合
例えば、アクセル踏込み量の平均値が閾値を越えた時、電動機3の回転速度の平均値が閾値を越えた時には、運転状態が電動機3の能力を越えていると見なされる。
(3) 蓄電池9の放電状態が能力を越えていると見なされる場合
例えば、蓄電池9の端子電圧の平均値が閾値を下回った時、放電電流の平均値が閾値を上回った時には、蓄電池9の放電状態が能力を越えていると見なされる。
【0062】
原則としては上記のいずれかの条件を満足すると内燃機関1は始動する。
内燃機関1の始動を確認するための物理量は、ROM52に記憶される。この物理量は、例えば始動確認用の回転速度閾値、吸気負圧閾値、排気温度閾値のデータ、その他の補助データとしてセルモータ運用限度時間、セルモータ休止時間、始動試行限度回数等のデータであり、これらの物理量は実験的に求められた値である。
【0063】
始動確認用の回転速度閾値は、停止状態から始動処理を開始して、ある回転速度に達したならば始動したものと判定するための閾値である。クラッチを遮断した状態でセルモータによって始動する形式のものの場合には、この閾値は有効な判断材料になる。
また、吸気負圧閾値は、内燃機関の出力を代表する物理量として吸気負圧を検知する構造を採用できるガソリンエンジンの場合に、始動を確認する手段として始動確認回転速度閾値に加えて利用される閾値である。
【0064】
但し、内燃機関がディーゼルエンジンのように事実上吸気絞り弁のない構造のものの場合には、始動が完了しても吸気負圧が発生する訳ではないので、吸気負圧閾値を始動確認用として用いても効果がない。
排気温度閾値は、シリンダ内で完爆状態になると排気温度が急上昇するという現象を利用して、始動確認物理量として設定された閾値である。真夏でも通常の停止状態ではありえないという温度を閾値として設定しておくことにより、始動処理中に排気温度がこの閾値を越えると始動したものと判断できる。また、時間当たりの温度変化を検知する構造とすれば始動の成否をさらに正確に確認できる。
【0065】
また、セルモータによるのではなく、クラッチを接続して、所謂押しがけのような状態で主電動機によって始動する時には、始動できていない時でも相当な回転速度まで上昇し、吸気負圧も観測される。このようなとき、排気温度も判別材料として利用することにより、始動できたかどうかの判別が、より正確なものとなる。
【0066】
セルモータ運用限度時間と休止時間は、セルモータ又は主電動機を使用する形式の複合原動機における始動のためのクラッチの接続時間を判別するためのデータであり、始動しなかった時に再度始動処理を実行するために用いられるデータである。
RAM53は、始動条件(2) 、(3) についての各センサ信号の現在値を用いる場合には不用であるが、経過データを用いる場合に必要である。この場合、各センサからのデータは、CPU51によりサンプリング収集され、RAM53には、サンプリング収集された各センサからのデータ及び過去の一定時間内に発生した頻度(回数)に基づいて計算された平均値が随時記録される。
【0067】
次に、内燃機関1の停止条件を以下のように設定する。
〔停止条件〕
(1) 始動条件がすべて解消されたこと
即ち、アクセル踏込み量、回転速度又は車速、放電電流を所定閾値と比較し、各センサ信号が閾値未満になったとき、あるいは各値が比較的低レベルになったときには、始動条件がすべて解消されたとみなされる。
【0068】
(2) 蓄電池9が所定の充電状態になったこと
蓄電池9の端子電圧が停止条件時の所定閾値に達したときには所定の充電状態になったと判断される。
尚、始動と停止の頻度を抑制するように、始動条件時の閾値と停止条件時の閾値との間に差を設けておく。
【0069】
図8は、これらの閾値の関係を示した説明図であり、始動条件時の閾値を停止条件時の閾値よりも低く設定しておく。アクセル踏込み量等が始動条件時の閾値を越えると内燃機関1の運転は開始される。時間と運転状態にもよるが、内燃機関1の運転が開始されると蓄電池9の電圧が上昇する。そして始動条件がすべて解消され、かつ蓄電池9が所定の充電状態になって停止条件が成立したとき、内燃機関1の運転が停止され、電動機3のみによる運転となる。
【0070】
もし、始動条件時の閾値と停止条件時の閾値に差がなければ、内燃機関1は頻繁に始動・停止され、内燃機関1自体の耐久性に問題を引き起こすばかりでなく、始動や停止の際に炭化水素の発生など排気の面でも問題を生じてしまう。したがって、始動条件時の閾値と停止条件時の閾値とを図8のように設定しておくことにより、内燃機関1が一旦始動されたならば長時間運転が継続され、停止したならば長時間停止し、このような不都合が生じなくなる。
【0071】
停止条件時の閾値は、ROM52に記憶され、停止条件(1),(2) に使用する各センサ信号の経過データを用いて停止条件を判定する場合には、始動条件時と同様にRAM53が必要である。
停止条件(2) の場合、電圧の瞬間値でも判別の効果はあるが、例えば減速中、一瞬電動機3が強い回生状態になったとき、瞬間的に高い電圧になることがあり、電圧の瞬間値では判別がつきにくい場合がある。このため、正確な判別を得るためには経過を示す平均値を重視するのが得策である。
【0072】
次に、始動制御時に必要な点火コイル7へ強力送電をするシステムについて説明する。
内燃機関としてガソリンエンジンを採用した場合、抵抗を経由させないで蓄電池の電圧を直接、点火コイル7に印加すると容易に始動することが知られている。通常の自動車では運転者がスターターキーを操作して内燃機関の始動を実行し、点火コイルに直接蓄電池の電圧が印加される。しかし、複合原動機では運転者がスターターキーを操作する訳ではないので、制御装置によりこの処理を実行しなければならない。
【0073】
そのため、始動を開始してから始動が完了するまで出力する点火電源と、始動が完了してから出力する点火電源の2系統を備え、前者は抵抗を経由しないで点火コイルに、後者は抵抗を経由して点火コイルに接続する方式とする。
図7は、そのシステムを示す。図7において、蓄電池9からリレー60を介して点火コイル7に送電される直接送電系と、蓄電池9からリレー61、電流制限抵抗62を介して点火コイル7に送電される間接送電系と、が備えられている。点火コイル7に電力が送電されるとスパークプラグ63が点火する。
【0074】
尚、このシステムを始動時以外に使用してもよい。複合原動機における内燃機関は通常の自動車に搭載されている内燃機関よりも高負荷で運転される割合が多く、点火プラグの選定は当然耐熱番手の大きいものとなる。このことは耐久性の確保のために必須ではあるが、低温・低負荷運転ではくすぶりや濡れを発生しやすく、次回の始動を困難にする原因になっている。これを防止するために、内燃機関の温度が既定値以下の低温のとき、低負荷で運転されているときなど、必要に応じて始動後であっても直接送電系を介して電力を出力して通電量が増大すると、点火栓が濡れることもなく、次回の始動性も良好となる。
【0075】
以上の構成により図9〜図15のフローチャートに基づいて内燃機関1の運転準備、始動、停止の制御を行う。
図9のステップ(図中では「S」と記してあり、以下同様とする)1では、内燃機関1を始動する前に、内燃機関1の始動準備制御を行う。
内燃機関1の温度がROM52に記憶された閾値よりも低い場合、図4に示すように蓄電池9からコントローラ43を介してヒータ42に給電し、内燃機関1を一定の温度以上に保温する。
【0076】
また、図5に示すように、燃料ポンプ56、オイルポンプ57に、制御信号を出力し、潤滑油の圧送、燃料油の圧送、ディーゼルエンジンでは予熱栓58への送電などのいずれか、またはこれらを組み合わせて実行する。これにより予め燃料、潤滑油が圧送されて油膜が保持され、また始動の準備は行われる。
内燃機関1が運転される前段階の水準に達したか否かを判断するには、正確さを得るために、各センサの信号値の経過データを参照するとよい。
【0077】
この要否判断を行うための処理は図10のフローチャートに基づいて行われる。
まず、初期処理を行い(ステップ11)、データ入力装置10で積算され、A/D変換された各センサからのセンサ信号のデジタル値を入力する(ステップ12)。
ステップ13では、RAM53上にこのデータの記入を行い、経過データを更新する。これにより過去の走行履歴が随時、RAM53に記録される。
【0078】
ステップ14では、現在値による重み付けをする。
ステップ15では、経過データによる重み付けを行う。
要否判定は、図11のフローチャートに基づいて行われる。
即ち、RAM53に記憶された経過データを参照し、実行要求信号をセットするか(ステップ17)、あるいは実行要求信号をリセットして(ステップ18)出力ポートから出力する(ステップ19)。
【0079】
次に、始動の要否を判別する(図9のステップ2)。始動条件は前述の通りである。
始動条件が成立した時、ステップ2→3に進み、始動制御を行う。
始動制御は図12のフローチャートに基づいて行われる。尚、ROM52には、予め設定された所定の既定値として、停止ループ数srp,運転ループ数mrp,始動トライ限度数str を記憶し、RAM53には、初期値としてsrps(=0),mrps(=0),stry(=0),sts(=1),flg(=0)を記憶しておく。
【0080】
運転開始時、始動電動機ステータスsts の初期値が1であるので、ステップ21→22に進み、停止中ループ数カウンタsrpsを0にセットする。
そして運転中ループカウンタmrpsをインクリメントし(ステップ23)、このカウント値が規定値以上に達するまでは、始動処理信号をセットする(ステップ24→25)。この処理は、図13のフローチャートに基づいて行われる。
【0081】
図13において、ステップ41では、燃料又は混合気制御を行う。
内燃機関1がガソリンエンジンである場合、点火コイル送電信号をセットする(ステップ42→43)。尚、始動時は前記したように直接送電系を介して強力送電することにより容易に始動できるようにする。これにより内燃機関1を回転させると所定の点火時期で点火が行われる。
【0082】
始動電動機5の駆動前、つまり内燃機関1の回転前は、吸気負圧センサ29のセンサ信号の信号レベルは、大気圧レベル相当値であり、ROM52に記憶されている始動確認用吸気負圧閾値を越えない。このときは始動電動機5の送電信号をセットし、始動電動機5を駆動してクランキングを開始する。
クランキングにより、点火及び混合気の供給が行われて内燃機関1が着火、燃焼して完爆状態、つまり内燃機関1の始動が完了すると、吸気負圧センサ29,排気温度センサ30,回転速度センサ23のセンサ信号の信号レベルが、ROM52に記憶されている始動確認用回転速度閾値、吸気負圧閾値、排気温度閾値のすべての閾値を越えるようになるので、ステップ48に進み、始動電動機送電信号をリセットする。これにより始動電動機5は停止する。ガソリンエンジンの場合、一旦、始動が完了すると、原則として点火コイル7には、運転が停止するまで抵抗62を経由する間接送電系を介して小電力で送電される。
【0083】
また、吸気負圧センサ29,排気温度センサ30,回転速度センサ23のセンサ信号の信号レベルのうち、いずれかの信号レベルが閾値以下である場合には、内燃機関1は始動が完了していないと判定され、ステップ45に進み、始動電動機送電信号のセットを継続する。
尚、内燃機関1がディーゼルエンジンである場合、ディーゼルエンジンは事実上吸気絞り弁がない構造であり、始動が完了しても吸気負圧が発生する訳ではないので、ガソリンエンジンの場合とは異なり、吸気負圧の比較判定は行わず、夫々、排気温度、及び内燃機関1の回転速度についてだけ各閾値との比較判定を行う(ステップ46,47)。
【0084】
始動電動機5によるクランキング開始後、全てのセンサの信号レベルが閾値を越えて始動の完了が確認されると、既述したように、始動電動機5への送電信号がリセットされて始動電動機5が停止されるが、所定時間経過しても始動の完了が確認されないときは、一旦、始動電動機5を停止し、一定時間おいてから始動制御を再開する。
【0085】
即ち、図12において、運転ループ数カウンタmrpsが運転ループ数mrp を越えた時、つまり、所定時間経過しても始動されないときには、始動電動機ステータスを0にセットし、一旦、始動準備状態に戻す。
始動電動機ステータスが0になると、運転中ループカウンタmrpsを0にセットし(ステップ21→28)、停止中ループ数カウンタsrpsをインクリメントし(ステップ29)、停止中ループ数カウンタsrpsが停止ループ数srp 以上になるまで、始動電動機5が停止される。
【0086】
停止中ループ数カウンタsrpsが所定の停止ループ数srp 以上になったとき、つまり、始動電動機5を停止後、所定時間経過後に始動電動機ステータスを1にセットし(ステップ31)、始動トライ数stryをインクリメントして(ステップ32)始動電動機5を再度、駆動する(ステップ5)。
もし、始動トライ数stryが始動トライ限度数str を越えたとき、即ち、何度始動制御を行っても内燃機関1が始動しないときは、始動禁止フラグflg をオンにする(ステップ33→34)。
【0087】
始動禁止フラグflg がオンになった場合、始動不可能と判断して当面の始動を取り止め、所定時間(前記、始動制御期間の停止時間より十分長い時間)の経過後に再度、始動を試みる(ステップ35,36)。
内燃機関1の始動が確認されたとき、図9のステップ4に進み、電動機3の回転速度を基準として、この回転速度に内燃機関1の回転速度を同期させるように回転速度制御を行う。この制御は、図14のフローチャートに基づいて進められる。
【0088】
ステップ51では、電動機3の回転速度mrpmをサンプリングし、ステップ52では、内燃機関1の回転速度erpmをサンプリングする。
そして内燃機関1の回転速度erpmが、電動機3の回転速度mrpmよりも小さいときには、燃料供給を増やして内燃機関1の回転速度erpmを速め(ステップ53→54)、電動機3の回転速度mrpmよりも大きいときには、燃料供給を減らして内燃機関1の回転速度を低下させ(ステップ53→55→56)、等しいときには、直前の状態をそのまま維持する。
【0089】
ステップ7では、動力伝達制御装置2を介して連結制御を行い、電動機3と内燃機関1とで併用運転を行う。この連結制御については後述する。
電動機3と内燃機関1とが併用運転されているときに内燃機関1の停止条件が成立したときには、内燃機関1を停止する制御を行う(ステップ6→7)。停止条件は前述の通りである。
【0090】
内燃機関1を停止させるとき、内燃機関1を力行させたまま、いきなりクラッチを遮断したり点火電源を遮断すると、オーバーランを招いたり、多量の生ガスを発生したり、あるいは次回の始動を困難にしてしまう。これを避けて順当に停止させるためには、無負荷運転を実行する。
無負荷運転を実行するには、予め実験により内燃機関1を無負荷運転した時の吸気負圧又はスロットル弁開度、噴射量制御レバー位置など、出力を調節するための要素の値を求めておき、回転速度に対して内燃機関1の制御テーブルとしてROM52に記録する。そして回転速度を与えると、その時の無負荷運転を実行する吸気負圧値等を応答するような処理を行うソフトを内蔵しておき、スロットルバルブや噴射量の制御を応答値になるまで調節し、応答値に収束するように制御する。尚、内燃機関1を無負荷運転に移行させるにつれて、電動機3のトルクを、内燃機関1の低下分、増大し、電動機3単独運転で現状回転速度を維持できるトルクまで高めるように制御して出力トルクを維持するのがよい。
【0091】
内燃機関1を無負荷運転にしたあと、内燃機関1の動力の伝達を遮断する。このように連結中に内燃機関1を無負荷運転とすることにより、伝達を遮断した後も、内燃機関1、電動機3、夫々のトルクに変動がないので、遮断時のトルクショックを防止できる。
尚、内燃機関1の動力の伝達・遮断を行う際、クラッチを備える形式の複合原動機ではクラッチを接続・遮断する。電動機又はソレノイドによる電動制御方式のクラッチを備えた形式のものでは、クラッチを遮断するときはクラッチを遮断する方向に電動機を回転させるか、ソレノイドを駆動すればよい。また、油圧駆動クラッチを備えた形式のものでは、クラッチを遮断するときは油圧を解放するか、又は構造によっては油圧をかけて、遮断する方向に制御すればよい。
【0092】
但し、一方向クラッチのように電動機の回転速度よりも内燃機関側の回転速度が低くなった時に自動的に連結状態から解放される構造を採用している場合には、特別なクラッチの制御を考慮する必要はない。
クラッチを遮断した後は、アイドリング運転を実行する。
内燃機関1の運転を停止する前に内燃機関1をアイドリング速度に制御し、必要に応じてその状態を既定時間維持する。この制御は図15のフローチャートに基づいて行われる。
【0093】
内燃機関1の停止条件が成立したとき(ステップ61)、アイドリング維持カウンタのカウント値idlsに1を加える(ステップ62)。
カウント値idlsがアイドリング維持時間idl 以下であるとき、内燃機関1の回転速度erpmをサンプリングし(ステップ64)、内燃機関1の回転速度erpmがアイドリング回転速度idrpm 以下であるときには燃料供給量を増やして内燃機関1の回転速度erpmを高め(ステップ65→66) 、アイドリング回転速度idrpm を越えているときには、燃料供給を減らして内燃機関1の回転速度erpmを低くする(ステップ67→68) 。
【0094】
但し、アイドリング速度はそれほど厳密に制御する必要はないので上下に幅を持たせてアイドリング速度近傍になれば、それをもって制御が完了したものと見做す。
カウント値idlsがアイドリング維持時間idl を越えたとき、内燃機関1の停止処理を実行し(ステップ63)、アイドリング維持時間idl を0に設定する。
【0095】
このように、内燃機関1の運転を停止する前に内燃機関1をアイドリング速度に制御したとき、必要に応じてその状態を既定時間維持する。
即ち、アイドリング運転は総合的な燃費率を悪化させる要因となるのでできるだけ短時間で切り上げるのを原則とするが、内燃機関1の構造によっては温度バランスや油膜の回復のためにアイドリングを継続した方が望ましい場合もある。その時はアイドリング継続時間をROM52に保持し、制御装置のクロックとの比較によって、その継続時間を経過するまではアイドリングを持続する。
【0096】
内燃機関1の運転を停止させるには、内燃機関1に供給する燃料を遮断したり、点火コイルへの送電を停止する。また、内燃機関1の直接的な停止操作に加えて、燃料フィードポンプや、内燃機関1の冷却を電動ファンによって行っている場合などでは、そのような補機類の運転も停止する。
以上で内燃機関1の運転準備から停止までの制御が完了する。
【0097】
かかる構成によれば、内燃機関1の始動、調整速度、調整力、停止を含む総合制御が実行され、内燃機関1の能力を最大限まで引き出すことが出来、複合原動機全体の能力を高めることが出来る。
そして、始動準備段階では、中間ケースを介して電動機3の熱が伝達され、また、ヒータによって内燃機関1は一定温度以上に保温されているので、内燃機関1の冷え過ぎを防止することが出来る。また、始動準備中に燃料、潤滑油を圧送しておくので、内燃機関1をすぐに始動させることができる。
【0098】
また、始動段階では、始動に失敗したときには、再始動を行うようにしたので、確実に始動するようになる。また、内燃機関としてガソリンエンジンを採用した場合、始動開始時、点火コイルには直接送電系を介して給電されるので、始動し易くなる。特に複合原動機の内燃機関は高負荷で運転される場合が多く、耐熱番手の大きい点火プラグが選定されるため、低温・低負荷運転ではくすぶりや濡れを発生しやすいが、始動時以外で直接送電系を介して点火コイルに送電することにより、点火プラグの濡れを防止することが出来、再始動時の始動性も良好となる。
【0099】
また、過去の平均値として計算・記録されている経過データに基づいて各種の判断を行うことにより、問題とすべき現象が一時的なものか、あるいは恒常的なものかが判別され、正確さを得ることができる。
また、内燃機関1を始動・停止する時に電動機3の回転速度を基準として、内燃機関1の回転を電動機3の回転に同期させて連結することにより、円滑な連結・遮断制御を行うことが出来る。
【0100】
また、内燃機関1を停止させるときには内燃機関1をアイドリング速度に制御し、内燃機関1の構造に応じてその状態を既定時間維持することにより、温度バランス、油膜の回復が良好となり、内燃機関1の耐久性が増す。
また、停止条件時の閾値を始動条件時の閾値よりも高くして始動条件と停止条件の間に差を設けることにより、内燃機関1が一旦始動されたならばなるべく長時間運転が継続され、停止したならば出来るだけ長時間停止するようになるので、始動と停止の頻度を抑制することが出来、内燃機関1自体の耐久性も向上し、排気の面でも炭化水素の発生を出来るだけ抑えることができる。
【0101】
次に、内燃機関1の始動条件と停止許可条件を運転者が操作するレバーによって調節できるようにしたシステムについて説明する。
図16は、システムを示す。
図16において、レバー71は、運転者が操作する操作レバーであり、このレバー71には、マイクロスイッチ72が取り付けられている。そしてレバー71の位置はマイクロスイッチ72により検出される。
【0102】
始動・停止条件は、表に示すように例えば蓄電池9の電圧値に基づいて高出力運転、通常運転、静粛運転モードにおける条件の3段階に分かれている。そして、高出力を必要とするときほど、始動・停止条件の蓄電池9の電圧値を高く設定しておく。これらの始動条件、停止条件はマイクロスイッチ72によって選択される。尚、正確さを得るために、蓄電池9の電圧の観測回数を10回とする。
【0103】
このように設定しておいて、例えば、レバー71により高出力運転モードを選択した場合、 210〜220 Vが10回観測された時、内燃機関1が始動して蓄電池9の充電が開始され、260 Vを越えた電圧が10回観測された時、内燃機関1が停止して蓄電池9の充電も停止する。
これにより内燃機関1は通常よりも早めに始動し、遅く停止するため、蓄電池9の電圧は 210〜260 Vに保たれ、結果として内燃機関1を併用した高出力運転領域が拡大する。
【0104】
逆にレバー71を静粛運転モードに切り替えれば、蓄電池9のみによる電動機3単独運転での走行範囲が拡大することになる。
かかる構成によれば、レバー71を操作することにより、始動・停止条件を必要に応じて手動で可変することが出来る。
次に、内燃機関1の始動条件と停止許可条件を電気自動車の外部からの信号に応じて自動調節するようにしたシステムについて説明する。
【0105】
図17は、そのシステムを示す。
道路施設又はこれに準ずる定置施設又は人工衛星などの空中施設に、始動条件、停止条件を送信する発信機73を備え、複合電気自動車74側にこれらの条件を受信する受信機74を備えておく。受信機75で受信された条件情報は、制御装置11に入力される。
【0106】
例えば、付近に病院等がある時、道路側の発信機73から複合電気自動車74に信号を送り、複合電気自動車74側では、受信機75でこの信号を受信して内燃機関1を停止し、電動機3のみによる走行に切り換える。または内燃機関1の使用許可条件を制限して内燃機関1の使用を抑制するように制御する。
かかる構成によれば、電気自動車74が走行している外部の状況に応じて、適切に内燃機関1を運転することが出来る。
【0107】
次に、内燃機関1を電動機3に接続する動力伝達装置について説明する。
従来、複合原動機ではクラッチを駆動するために電動機を使用していたが、連結又は遮断の実行にはかなり大きな駆動力を必要とするので、装置自体が高価になるばかりでなく、駆動のための電力も無視できないものであった。しかし、通常の自動車のように、クラッチペダルを設けて、クラッチマスターシリンダによって油圧を発生し、足踏みによってクラッチを駆動する方式を使用したのでは、複合原動機において円滑な作動を得ることは難しい。簡易に利用できる油圧又は負圧等を発生する装置があれば、この装置を利用すればよいが、油圧等を発生する装置を備えるにはコストや重量の点で不都合である。
【0108】
本実施例では、複合原動機においてクラッチを駆動する必要がある時は、内燃機関1の運転中に限られることに着目し、内燃機関1の潤滑油の油圧を利用してクラッチを操作するようにした。
図18は、かかる内燃機関1の潤滑油圧力により駆動されるクラッチを備えた動力伝達制御装置2を示す。
【0109】
内燃機関1には、オイルポンプ81が備えられ、オイルポンプ81は、内燃機関1が運転されている状態では、コントロールバルブ82に潤滑油を供給する。ソレノイドバルブ83を制御してシリンダ84に潤滑油を供給すると、ピストンロッド85を介してレリーズフォーク86がスプリング87の弾性力に抗して支点を中心にして回動し、プレッシャープレート90を出力軸の軸方向に移動させる。そしてプレッシャープレート90がクラッチディスク89をフライホイール88に圧着することにより、内燃機関1は電動機3に連結される。
【0110】
ソレノイドバルブ83を制御して潤滑油を内燃機関1に戻すことにより、シリンダ82内の潤滑油圧力が低下し、クラッチディスク89、プレッシャープレート90がフライホイール88から離れ、内燃機関1は電動機3から遮断される。
また、内燃機関1が運転されていない状態でも、オイルポンプ81が作動しないので内燃機関1は遮断状態に保たれる。
【0111】
即ち、内燃機関のみ有する自動車に備えられた装置では、非作動状態でクラッチが接続されている構造であるが、本実施例の装置は、内燃機関のみ有する自動車に備えられた装置とは逆の機能を有している。
この方式の利点はクラッチ操作のための動力源が内燃機関1の潤滑油の油圧から得られるので、専用のオイルポンプを必要とせず、小型化、低価格化、軽量化が可能である。また、内燃機関1が停止している時にはクラッチを接続することが不可能であり、内燃機関1になんらかの異常が発生して停止した時には、クラッチも自動的に遮断状態になるので、クラッチの制御がかなり簡易になる。
【0112】
次に、動力伝達制御装置2における連結・遮断制御について説明する。
尚、連結とは内燃機関1と電動機3の回転系を連結すること(ひいては、内燃機関1と駆動車軸との連結)を意味し、遮断とは内燃機関1と電動機3の回転系を遮断すること(ひいては内燃機関1と駆動車軸との遮断)を意味する。
電動機3の回転速度が規定値以下の時は遮断処理を実行し、それ以外で連結の時には電動機3の回転速度を基準に内燃機関1の回転速度を同等に制御した後に、両者の速度差が規定値以内であれば連結処理を実行し、遮断の時には電動機3の回転速度で内燃機関1が無負荷運転するように制御因子を調整し、その後遮断処理を実行するように制御する。
【0113】
連結・遮断制御を行うときの条件は次の通りである。
内燃機関1が運転されている時に以下の項目を満足した時を、クラッチを接続する条件、即ち、内燃機関1と電動機3を連結する条件とする。
〔連結条件〕
(1) クラッチ接続可能な回転速度以上の速度に達したこと
(2) 電動機3と内燃機関1の回転速度差が既定値以下であること
(3) 耐用最高速度を越えていないこと
また、以下の項目を満足した時を、クラッチを切る条件、即ち、内燃機関1と電動機3を遮断する条件とする。
〔遮断条件〕
(1) 内燃機関1が運転されていない時、クラッチ遮断回転速度以下の速度に達したとき
(2) クラッチ遮断回転速度以下の速度に達したこと
また、前記判定のための閾値を以下の値等とする。
〔判定閾値〕
(1) クラッチ接続可能な回転速度
(2) 回転速度差の規定値
(3) 耐用限界速度
これらの閾値は、予め実験により最適値が決定され、ROM52上に記憶される。
【0114】
電動機3の回転速度は、回転速度センサ23により、常に監視されているが、この電動機3の制御のために必須のセンサの信号をクラッチ制御用にも流用する。但し、回転速度センサ23には、30rpm 程度の精度の高いものが必要である。また、内燃機関1の回転速度センサ22からのセンサ信号も利用するが、内燃機関1は約600RPM以下では運転されないことを考慮すればガソリンエンジンの場合では、点火装置のオン−オフ信号(いわゆるポイントの開閉信号)等も実用に供し得る。点火装置の場合、4サイクル2気筒エンジンの例では、600RPMにつき毎分600 パルスを発生するが、毎秒10パルスに相当し、サンプリング時間を0.5 秒とすれば120rpm/パルスに相当するので、ラフではあるが制御信号として実用に供し得るものと考えられる。
【0115】
また、内燃機関1が運転されていると確認するための条件を、以下のように設定する。
a.内燃機関1の回転速度が始動確認回転速度以上であること
b.吸気負圧が観測されたこと
c.燃料ポンプに電力が供給されていること
d.ガソリンエンジンでは点火装置に電力が供給されていること
e.内燃機関1の潤滑油の油圧が観測されたこと
f.排気温度が規定値以上であること
g.排気圧力が規定値以上であること
次に、図19、及び図20のフローチャートに基づいてこの連結・遮断制御の動作を説明する。
【0116】
まず、図19のルーチンでは、連結要求信号、遮断要求信号のセット・リセットを行う。
図19において、前述の確認条件に従って内燃機関1が運転中であると確認され(ステップ71)、内燃機関1を電動機3に連結する条件を満しているとき(ステップ72→73)に、すでに内燃機関1が電動機3に連結されている場合には、連結要求信号、遮断要求信号をともにリセットする(ステップ74→75)。遮断している場合には、遮断要求信号をリセットし、連結要求信号をセットする(ステップ76)。
【0117】
また、内燃機関1が運転中ではないとき、または運転中に内燃機関1を電動機3から遮断する条件が成立したとき、すでに遮断している場合には、連結要求信号、遮断要求信号をともにリセットする(ステップ77→75)、連結している場合には、連結要求信号をリセットし、遮断要求信号をセットする(ステップ78)。
このように連結要求信号、遮断要求信号をセット又はリセットすると連結又は遮断処理を実行する(ステップ79)。
【0118】
この連結・遮断処理は図20のフローチャートに基づいて行われる。尚、この制御を行う前に、先行処理として電動機3の回転速度mrpm,内燃機関1の回転速度erpmをサンプリングしておく。
連結要求信号がセットされ、遮断要求信号がリセットされているときには、連結要求があったものと判断する(ステップ80)。
【0119】
連結可能回転速度であるとき、連結可能回転速度であると判断したときは、電動機3の回転速度mrpmをデータとして与え、この回転速度において無負荷条件となる設定値、即ち、内燃機関1を空転させる燃料制御弁の開度値、吸気圧力値を求める(ステップ81→82)。これらの電動機3の回転速度に応じた値は、ROM52に記憶され、回転速度が与えられると応答してROM52から出力される。
【0120】
この時、内燃機関1の回転速度erpmが電動機3の回転速度mrpmよりも小さいときには、燃料供給量を増加して内燃機関1の回転速度erpmを高めるように制御し(ステップ83→84)、電動機3の回転速度mrpmよりも大きいときには、燃料供給量を絞って内燃機関1の回転速度を低減する(ステップ85→86)。そして内燃機関1の回転速度erpmと電動機3の回転速度mrpmの差がクラッチ接続許容回転差未満になったとき、連結処理を実行する(ステップ87→88)。
【0121】
連結処理は、油圧レリーズソレノイドを作動させ、潤滑油が内燃機関1に戻らないように制御することにより行われる。これにより油圧が発生し、通常遮断されていた内燃機関1と電動機3とは油圧シリンダ等の作動により連結される。連結処理が完了すると、スロットルバルブ等により燃費等を重視した目的の負荷まで運転条件を調節する。
【0122】
尚、連結可能回転速度ではないと判断されたとき(ステップ81)、クラッチ接続許容回転差以上のとき(ステップ87)は、この連結処理を行わないで終了する。
次に、遮断要求信号がセットされ、連結要求信号がリセットされているときには、遮断要求があったものと判断する(ステップ80)。
【0123】
遮断時においてもステップ82と同様に、現在の回転速度における無負荷条件となる燃料制御弁の開度値、吸気圧力値を求め(ステップ90)、燃料制御弁を同上条件に合わせる(ステップ91)。
即ち、クラッチ遮断と同時並行的に、内燃機関1の出力を低下させる制御を行う。例えば、ガソリンエンジンではスロットルバルブを絞り、ディーゼルエンジンでは噴射量を絞るようにする。これにより、現在の回転速度における無負荷運転に向けて調節することが可能となる。これはクラッチを遮断したとき、内燃機関1がから吹かしの状態になるのを避けるためである。
【0124】
無負荷条件が成立した時には、遮断処理を実行し(ステップ92→93)、内燃機関1は電動機3から滑らかに遮断される。
以上で内燃機関1と電動機3との連結・遮断処理が完了する。
尚、前述のようにクラッチ遮断が完了した後は、内燃機関1のアイドリング制御が実行され、蓄電池9に十分電力が蓄えられ、内燃機関1を停止することを目的とするクラッチ遮断処理であれば内燃機関1は、その後、停止されるが、信号待ち等の一時的なクラッチ遮断処理の時はアイドリング制御が継続される。
【0125】
かかる構成によれば、内燃機関1の潤滑油の油圧を利用してクラッチを操作するようにしたので、特に油圧等を発生する装置を備えずにクラッチ制御を行うことが出来、小型化、低価格化、軽量化が可能となる。また、内燃機関1が停止している時はクラッチを接続することが不可能であるとともに、内燃機関1がなにかの異常状態によって停止するとクラッチも自動的に遮断状態になるので、安全であり、クラッチの制御もかなり簡易となる。
【0126】
尚、この実施例では、内燃機関1の油圧を駆動源とするクラッチと制御方法について述べたが、電動機等で油圧を発生する装置を採用しても、また、電動機で制御する方式を採用しても基本的な作動のロジックは同じであり、同様な結果を得ることができるが、電動機で油圧や負圧を発生する方式では、クラッチ操作の前後で電動機の起動や停止を実行する必要がある。また、電動機によって直接駆動する方式では、正転・逆転などの制御を必要とするが、装置そのものの価格も高くなる。また、電磁クラッチという方法がもっとも簡便に考えやすいが、クラッチを接続又は遮断している間中、常に電力が消費されるので節電を旨とする電気自動車に適用するためにはいまのところ改良の余地がある。
【0127】
また、トルクコンバータとクラッチ、特に望ましくは簡易な一方向クラッチを直列的に組み合わせて構成してもよい。
複合原動機を備える電気自動車の内燃機関と電動機の連結には、予想されたことではあったがトルクコンバータが極めて良好な結果を示している。電動機のみによる通常の運転から、内燃機関と電動機による協働運転に移る時及びその逆の変更時にショックを伴いがちであるが、この方法によれば非常に滑らかであり、高級車には相応しい装置であるといえる。また、トルクコンバータは、低速において大きな出力を発生させるような能力を備えているので、トルクコンバータの出力軸でみたトルク特性は低速で大トルクが得られる形になっている。
【0128】
電気自動車が必要とするトルクとの相性については、電動機そのものが低速で大きなトルクを発生し得るので変速機を設置する必要はないが、大トルクを得るためには大電流が必要であり、内燃機関からトルクコンバータを経由して大きなトルクを供給するようにすれば、電動機や電流を制御する電子機器には負荷を軽減する上で好都合であり、加速性能を向上するためにも効果が大きい。
【0129】
制御の難易度という観点からも、クラッチの制御を必要とせず、内燃機関の制御が簡易になる等の効果がある。
ただ、内燃機関を停止して電動機のみによって走行している通常運転においては、単純に内燃機関と電動機の間にトルクコンバータを設置したというだけの構造では問題を起こす。それは電動機でトルクコンバータを駆動するには問題がある。即ち、通常の内燃機関のみによって走行する自動車において、トルクコンバータを備えたAT車の場合に経験するように、エンジンブレーキの状態が常時、発生する訳であり、電動機に余計な負荷をかけ、電力を無駄に浪費してしまうばかりでなく、トルクコンバータの作動油の温度を上昇させ、トルクコンバータにも影響を及ぼしてしまう。AT車のエンジンブレーキは機械式の変速機をもつマニュアル車のそれには及ばないが、省エネルギー走行を要求される電気自動車においてこのような現象を見過ごすわけには行かない。
【0130】
この問題の解決のために、通常知られているトルクコンバータの機能に加えて一方向クラッチを備えた構造とすれば、複合原動機の内燃機関と電動機を連結又は遮断する動力伝達制御装置として最適な機構である。
図21はこの一方向クラッチの構造を示す。
図21において、トルクコンバータ出力軸93に連結されたインペラー92は、トルクコンバータ外部ケース91内に収納され、一方向クラッチアウターケース内には、一方向クラッチ出力軸95が収納されている。
【0131】
この一方向クラッチをトルクコンバータの前後いずれに設置してもよいが、内燃機関1が回転力を発生している時にのみ接続されるか、内燃機関1の回転力は電動機3に伝達するが電動機3の回転力を内燃機関1には伝達しない、という機能を持つものであればよい。一方向クラッチとして採用しうると考えられるのは、機構の簡便さからすれば、
(1) 遠心クラッチ
(2) 前述の内燃機関1の潤滑油圧力によるクラッチ
(3) その他の一方向クラッチ
等であろうが、もちろん一方向ではなく本格的なクラッチを採用しても機能の上では問題ないが、コストや制御の面で簡易な一方向クラッチが望ましいと考えられる。尚、慣性モーメントの点からはクラッチの設置位置は電動機3側として、遮断時にトルクコンバータが電動機3によって回転されることのないような配置が望ましい。
【0132】
次に、内燃機関1を最適運転条件へ誘導するための制御について説明する。
内燃機関は一般に最も低速のアイドリング運転速度から、許容最高速度までの各回転速度に応じて、無負荷から発生しうる最高トルクの範囲で動力を発生することができる。従って、内燃機関の熱効率は一定ではなく運転条件によっては、アイドリングや無負荷運転のように全く有効な仕事を成しえない熱効率ゼロの領域や、20数%から機種によっては30%を越える熱効率を得られる領域も存在する。優れた熱効率を得られる領域は一般的には、回転速度ではそのエンジンの最高トルクを得られる回転速度の付近で、発生負荷では最高トルクの80%程度の位置に存在する。これは自動車用として一般的に使用される内燃機関について述べたもので、船舶用や航空用の内燃機関ではこれよりも異なる位置に熱効率の最高点が存在するものもある。
【0133】
排気の排出特性については、炭化水素と一酸化炭素の場合は熱効率が良い領域と排出が少ない領域が重なるので都合が良いが、窒素酸化物はその領域では多く排出されるので低減対策を必要とする。熱効率が良好な領域というのは、元来エンジンが快調に運転できる領域であり、わずかに熱効率を犠牲にする必要があるが窒素酸化物対策はやりやすく、その効果も大きい。また、内燃機関を頻繁に始動又は停止すると、炭化水素の排出に問題を起こす恐れがある。これを回避するためには、内燃機関の始動をできる限り控え、一旦始動したならば蓄電池がかなりの充電量に至るまで運転を継続するという配慮に加えて、多少高めの回転速度で、低めの負荷によって運転すれば炭化水素の排出を抑制する効果を得やすいという特性を利用するのが得策である。
【0134】
耐久性に及ぼす影響度を見た場合は、冷たい内燃機関を始動していきなり熱効率が最良の運転領域まで誘導するのは問題である。始動直後は必要な油膜も形成不十分であり、各部の急激な温度変化によってシリンダブロック等内燃機関の主要な部分に悪影響を及ぼす。始動の直後には暖機という緩衝的な運転をはさんで、耐久性の確保を図るべきである。尚、緩衝的な運転期間は内燃機関の状態及び外気温度などによっては長時間又は短時間に調節される。
【0135】
以上のようであるから、複合原動機においてその効果を最大限に発揮するには、ただ漫然と内燃機関を運転すれば良いと言うものではなく、熱効率は排気の特性、耐久性に及ぼす影響度等を考慮しながら、必要最小限の利用を図るべく制御される必要がある。
そのため、内燃機関1を以下のように制御する。
〔制御〕
(1) 内燃機関1の温度によって暖機条件を調節する。
【0136】
(2) 内燃機関1の温度に対する許容回転速度データを予め記録し、温度データを与えて許容回転速度を応答するようにする。
(3) 現在の回転速度に対し、出力値又は出力を代表する物理量を与えるようにする。
(4) 過去の運転履歴に基づいて単独又は複合して観測された状況を判別し、その結果によって停車時も内燃機関1の運転を継続するか、又は停止する制御を行う。
【0137】
これらの制御(1) 〜(4) は、暖機、力行運転、臨時アイドリング段階において、必要に応じて実行される。
まず、暖機の段階では、内燃機関が始動されると冷却水の温度によって運転可能な回転速度と出力が求められる。内燃機関の冷却水温に対する許容回転速度と出力をROMに記録しておき、データとして内燃機関の冷却水温を与えれば許容回転速度と出力が得られるようにしておく。マイクロコンピュータにより、その応答値を検出しながら、現在の回転速度が応答値に比較して小さければスロットルバルブを開いて回転速度を増すように調節し、そうでなければ逆の調節を実行する。また、内燃機関1と電動機3の間にクラッチを備える形式では、現在の走行速度が応答された許容回転速度の範囲内にある時には、暖機中ではあってもクラッチを接続する処理を実行する。
【0138】
クラッチを接続した暖機状態の時は許容出力の判別が行われる。回転速度については走行速度に応じたものとなり、それが許容回転速度の範囲内であればそのまま続行される。許容出力の判別で、現在の出力が許容値未満であればスロットルバルブを開いて出力を増す方向に調節する。そうではない状況が発生した時には逆の調節を実行する。
【0139】
また、増速されて暖機中の許容回転速度を越えるときはクラッチを遮断して、無負荷運転による回転速度制御のみの暖機運転を実行する。尚、冷却水温に対する許容回転速度や負荷は冷却水温が高まるにつれて制限のない力行条件に近づくように設定されているので、暖機状態から力行に無段階的に移行することができる。
【0140】
具体的に、内燃機関1の冷却水温に対する許容回転速度、暖機条件を調節するための負荷率は、夫々、図23、25のフローチャートで示されるルーチンに基づいて制御される。尚、ROM52には、図22に示すような内燃機関1の冷却水温に対する許容回転速度データと、図24に示すような内燃機関1の冷却水温に対する負荷率データと、を記録しておく。これらのデータは、予め実施された耐久試験の結果に基づいて得られたものである。
【0141】
まず、図23のルーチンにおいて、自動車の走行速度crpm、内燃機関1の回転速度erpm、内燃機関1の冷却水温etmpをサンプリングし(ステップ101)、図22のデータに基づいて内燃機関1の冷却水温に応じた許容回転速度maxrpmを得る(ステップ102)。走行速度crpmが、許容回転速度maxrpm未満のときには内燃機関1を電動機3に連結して運転し(ステップ104)、電動機3が内燃機関1と連結中であり、走行速度crpmが許容回転速度maxrpmを越えているときには、内燃機関1を電動機3から遮断して内燃機関1を無負荷で運転する(ステップ103 →105 →106)。また、このとき、直前の状態が遮断状態であるときには、直前の状態をそのまま維持する(ステップ105 →107)。
【0142】
また、図25のルーチンにおいて、電動機3の回転速度データ、内燃機関1の温度データをサンプリングし(ステップ111)、内燃機関1の回転速度を与え、既定負荷で運転するための運転パラメータ、即ち、例えば燃料弁開度、吸気負圧等を算出する(ステップ112)。そして図24のデータに基づいて、内燃機関1の負荷率を算出し(ステップ113)。既定負荷パラメータに負荷率を乗算し、実施負荷パラメータを算出する(ステップ114)。実際の運転は、この算出された実施負荷を参照して行われる。
【0143】
次に、力行運転の段階は、内燃機関1の出力によって走行負荷の一部又は全部を賄い、さらに余剰があれば電力に変換して蓄電池9に蓄えるという処理を行うという熱効率を重視した運転領域である。
前述したように排気の排出に気配りしながら、できる限り熱効率の優れた運転領域を使用するべく調節する。熱効率の優れた運転領域は、以下の値に基づいて設定される。
【0144】
a.高出力を得ながら熱効率も良好な限界値
b.熱効率の最適値
c.排気を抑制しながら熱効率も良好な限界値
d.低出力を得ながら熱効率も良好な限界値
これらの値は、実験によって予め設定され、ROM52に記録しておき、現在の回転速度を与えると、常時、それらの限界値及び最適値を応答するようにしておく。
【0145】
現在最も相応しい出力値は、現在の走行状態によって前記の4種類の基準値から計算され、決定される。例えば、アクセルペダルが強く踏み込まれ、それは、現在の走行速度をさらに高めることを要求するものであれば、前記の限界値a、又はそれに近い値が現在最も相応しい出力値として採用される。逆に走行速度も低く、アクセルペダルも軽く踏まれている状況で、熱効率の最適値によって運転したのでは出力が余り過ぎるために、発電量が過大となり蓄電池を痛めてしまうという制限の下では限界値d、又はその近くの値が適切な出力値として採用される。
【0146】
また、排気を抑制したい市街地走行などでは限界値cが意味を持つ。格別の制限がない状況では最適値bを採用して走行する。
採用すべき最適な出力値が決まったならばスロットルバルブなど出力を調節するための装置を操作して、現在値と目標となる上限値と下限値の範囲内に運転状態を誘導する。
【0147】
図27は、内燃機関1の出力を制御するルーチンの具体的なフローチャートを示す。尚、ROM52には、図26に示すような、例えば内燃機関1の回転速度に対する出力データを記録しておく。このデータも、図22,図24のデータと同様に、予め実施された耐久試験の結果に基づいて得られたものである。
電動機3の回転速度をサンプリングし(ステップ121)、電動機3の回転速度を与え、図26のデータに基づいて、内燃機関1を運転するための回転速度及び出力パラメータを設定する(ステップ122)。
【0148】
このパラメータに基づいてアクセル値、電圧値などの経過値と現在値によって、実施上限値と実施下限値の計算をする(ステップ123)。
そして吸気圧力の現在値が、上限値を越えているときは、スロットルバルブを閉方向に移動させて出力を絞り(ステップ124 →125)、実施下限値未満のときは、スロットルバルブを開方向に移動させて出力を増加させ(ステップ124 →126 →127)、実施下限値以上、実施上限値以下のときは、直前の状態をそのまま維持する(ステップ126 →128)。
【0149】
このようにして内燃機関1の出力が制御される。
次に、臨時アイドリング段階では、例えば、必要があって内燃機関を運転している途中に信号待ちなどの一時的な状況により停車することがある。停車すると電動機も電源を遮断されて停止しているので、内燃機関の運転を継続する必要はなくなるのであるが、直後に従来の走行に復帰するかも知れない。このような時、その都度、内燃機関の運転を停止したり、始動したりを繰り返したのでは、排気、とりわけ炭化水素の発生を増加してしまうばかりでなく、内燃機関の耐久性をも損なうものである。
【0150】
そこで、走行速度以外の条件は内燃機関の運転を要求する状況下では、現在停車しているために内燃機関の運転の必要がなくても、それまでの運転経過によっては内燃機関の運転を継続することがある。例えば、過去の数分間の走行速度が相当に高速である時、後退運転を含まない時、ハンドルの大きな操作を伴わない時、極数又は前後進セレクトレバー等が入ったままアクセルを踏まないことで停車している時、足踏みブレーキが踏まれているか駐車ブレーキが操作されていない時などの状態が単独又は複合して観測される時には臨時的な停車であると見做し、臨時アイドリング段階として内燃機関の運転を継続する。
【0151】
しかし、このような状況での内燃機関の運転は燃費率等を考慮した前述のものではなく、内燃機関と電動機の動力伝達を遮断した状態におけるアイドリング運転である。再び車速が上昇してクラッチ等を接続可能となった時には力行運転に復帰する。また、アイドリング運転を継続するうちに駐車ブレーキが操作されたり、後退運転がなされて停車が一時的なものでないことが確認されたならば運転を停止する。
【0152】
具体的に、駐車・停車に応じた内燃機関1の運転制御を図28のフローチャートに基づいて説明する。尚、この処理は、車速が略ゼロのときに行われる。
判別データをサンプリングし(ステップ131)、一時的な停車か、あるいは例えば駐車のように長時間の停車であるかを判別する(ステップ132)。
長時間の停車と判別したときは、当分の間、運転走行再開の意志がないものと判断して、例えば、燃料遮断、点火コイル送電オフ等、内燃機関1の停止処理を実行する(ステップ133)。
【0153】
長時間の停車と判別する条件は、以下の通りである。
(1) メインスイッチ・オフ
(2) 現在セレクトレバーがパーキング位置にあるとき
(3) 直前のセレクトレバー位置がリバース(後退)で、既定時間経過のとき
(4) 直前のハンドル操作角が既定値以上で、既定時間経過のとき
(5) 駐車ブレーキが作動し、足踏みブレーキが作動しないで、既定時間経過のとき
(6) ドアロックがされたとき
(7) 商用電源からの充電が開始されたとき
また以上の条件が成立していないときには、停車と判別し、直後に走行を再開する意志があるものとしてアイドリング運転を行い、それまでの状態を維持する。
【0154】
以上が内燃機関1を最適運転条件へ誘導するための制御の内容である。
かかる構成によれば、内燃機関1の温度によって負荷率、許容回転速度が設定され、また内燃機関1の回転速度に基づいて吸気圧力が設定され、設定された負荷率、許容回転速度、吸気圧力になるように内燃機関1の運転が制御されるので、熱効率が良好となり、有害な排気を低減することが出来、さらに内燃機関1の耐久性を向上させることが出来る。
【0155】
また、内燃機関1の温度が低いときには、無負荷運転による暖機が行われるので、内燃機関1を素早く最適運転条件に移行させることが出来る。
さらに、内燃機関1が停止しても一時的な停車であると判断したときは、内燃機関1の運転の停止させないように制御することにより、例えば信号待ち等の一時的な停止の場合でも、その都度、内燃機関1の運転を停止したり、始動したりを繰り返すことがなく、排気の発生を最小限に抑えることが可能となり、内燃機関1の耐久性も向上する。
【0156】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明にかかる複合原動機の制御装置では、内燃機関は、常に、電動機の運転状態に適合した状態で運転され、内燃機関を有効かつ適切に制御することが出来る。
また、内燃機関の動力伝達遮断前の回転速度を維持しつつ、内燃機関を無負荷運転に制御した後、遮断制御を行うことにより、オーバーランを招いたり、多量の排気を発生したりすることが防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の構成図。
【図2】複合原動機の全体構成図。
【図3】内燃機関を保温するための中間ケースを示す図。
【図4】内燃機関の保温システムの構成図。
【図5】内燃機関の始動準備を行うシステムの構成図。
【図6】同上構成図。
【図7】点火コイルへの送電システムの構成図。
【図8】蓄電池の電圧による始動条件と停止条件の説明図。
【図9】内燃機関の始動・停止制御の処理を示すフローチャート。
【図10】経過データを作成する処理を示すフローチャート。
【図11】経過データを参照して実行要求を行うためのフローチャート。
【図12】始動制御の処理を示すフローチャート。
【図13】始動電動機に送電信号をセット・リセットする処理を示すフローチャート。
【図14】回転速度制御の処理を示すフローチャート。
【図15】アイドリング制御を行う処理を示すフローチャート。
【図16】運転者によって始動・停止条件を調節するシステムの説明図。
【図17】外部から内燃機関の運転範囲を調整するシステムの説明図。
【図18】動力伝達制御装置の構成を示す図。
【図19】図18の制御処理を示すフローチャート。
【図20】同上フローチャート。
【図21】一方向クラッチの構造図。
【図22】内燃機関の温度に対する許容回転速度データを示す図。
【図23】図22の特性に基づいて内燃機関の制御を示すフローチャート。
【図24】内燃機関の温度に対する負荷率データを示す図。
【図25】図24の特性に基づいて内燃機関の制御を示すフローチャート。
【図26】内燃機関の回転速度に対する出力データを示す図。
【図27】図26の特性に基づいて内燃機関の制御を示すフローチャート。
【図28】駐車・停車に応じた内燃機関の運転制御を示すフローチャート。
【符号の説明】
1 内燃機関
3 電動機
8 蓄電池
11 制御装置
【産業上の利用分野】
本発明は、電動機と内燃機関とを備えた複合原動機の制御装置に関し、特に複合電気自動車における内燃機関を有効かつ適切に制御し、内燃機関に付加されるべき機能及び内燃機関と電動機を機械的に連結するための動力伝達制御等の技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
蓄電池の貯蔵電力のみによって走行する電気自動車や、太陽電池を主たる電源として走行する電気自動車に対して、補助的に内燃機関を備えるタイプの複合電気自動車が現実的な近未来の自動車として開発されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このような複合電気自動車に使用される複合原動機では、内燃機関の運転制御がシステムの成否を決する重要課題となっている。
即ち、
1.内燃機関を燃費率最良の条件で、いかに多頻度運転するか。
【0004】
2.そのような運転状態に内燃機関が耐えうるか。
3.主たる原動機である電動機を制御しながら内燃機関を制御できるか。
4.どのような物理的信号によって内燃機関を制御するか
5.その他
という課題が開発担当者に対して大きなバリアとなっている。内燃機関をただ漫然と運転していたのでは複合原動機としての効果を減殺するし、やみくもに最良燃費の運転領域に誘導すると、それは暖機運転もなくかなり大きな出力領域を使用することになるので、耐久性に支障を来すことになる。また、間断なく実行されている電動機の制御の間隙を利用して、始動、出力制御など、複雑な操作を要する内燃機関の制御を実行できるのか否か、といった問題もある。制御のための信号も必須のもの、設置されていることが望ましいもの、殆ど効果のないもの、等がある。
【0005】
本発明はこのような従来の課題に鑑みてなされたもので、複合原動機における内燃機関を有効かつ適切に制御可能な複合原動機の制御装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このため、本発明にかかる複合原動機の制御装置では、図1に示すように、電動機と内燃機関からなり、かつ、内燃機関と電動機との間で内燃機関の動力を出力として伝達・遮断が切り換え自由な動力伝達手段を含んで構成された複合原動機の制御装置において、前記複合原動機に要求される出力レベルを検出する出力要求レベル検出手段と、前記電動機の現在の運転状態を検出する電動機運転状態検出手段と、前記内燃機関の現在の運転状態を検出する内燃機関運転状態検出手段と、これら各検出手段からの信号に基づいて、内燃機関の動力伝達手段による動力の伝達・遮断に対応する運転の始動・停止、及び内燃機関の運転中の駆動制御を行う制御手段と、を備え、かつ、前記制御手段は、前記動力伝達手段により内燃機関の動力を伝達から遮断に切り換えるときに、該動力伝達遮断前の内燃機関の回転速度を維持しつつ、内燃機関を無負荷運転に制御した後、動力伝達を遮断する構成であるようにした。
【0023】
【作用】
請求項1の発明にかかる複合原動機の制御装置の構成によれば、各検出手段からの信号に基づいて、制御手段により、内燃機関の運転の始動・停止、及び運転中の駆動制御が行われるので、内燃機関は、常に電動機の運転状態に適合した状態で運転され、内燃機関を有効かつ適切に制御することが可能となる。
【0024】
また、内燃機関の動力伝達遮断前の回転速度を維持しつつ、内燃機関を無負荷運転に制御した後、遮断制御を行うことにより、オーバーランを招いたり、多量の排気を発生したりすることが防止される。
【0041】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図2〜図27に基づいて説明する。
本実施例では、複合電気自動車に使用される複合原動機の内燃機関を最適な運転条件で運転するように以下のような制御を行う。
1.内燃機関の運転準備から、始動、停止までの制御
2.内燃機関を電動機に接続する動力伝達装置の制御
3.内燃機関を最適運転条件へ誘導するための制御
全体構成を示す図2において、内燃機関1と電動機3には、動力伝達制御装置2が介装され、動力伝達制御装置2には、始動電動機5が連結されている。内燃機関1と電動機3の総合出力は、出力軸12、変速機4を介して出力される。
【0042】
燃料供給制御装置6は、内燃機関1に燃料等を供給する装置である。
パワートランジスタ8は、制御装置11によって制御され、オン・オフして点火コイル7に高電圧を発生させる。
次にこの複合原動機に備えられた種々のセンサについて説明する。
内燃機関と電動機を備える複合原動機において、電動機を精密に効果的な状態に制御する必要があることは言うまでもないが、内燃機関を適時、適切に運転又は停止して、その能力を最大限まで引き出すことが全体の能力を高めるうえで必須の要件となっている。
【0043】
複合原動機における内燃機関の役割は、蓄電池の貯蔵電力が欠乏した時の補給、電動機のみによる出力不足の補完、その他内燃機関を必要とする補機類の運転時に大別されるが、いずれの時も運転される時は可能なかぎり燃費率が最も良好な運転条件を選んで運転される。しかし、それを実現するためには運転者がなにを望んでいるか、また、現在自動車と複合原動機を構成する主要な要素はどのような状態であるかを知らなければならない。それらを検知するためには次のセンサが必要である。
【0044】
まず、アクセルペダルには、アクセル踏込みセンサ24が備えられている。
アクセル踏込みセンサ24は運転者が要求する出力レベルを検知するためには必須のものであり、回転速度に対して設定された閾値又は他の基準により設定された閾値を越えてアクセルが踏み込まれた時には内燃機関1の運転要求があったものと判別される。この閾値は蓄電池の電圧、直前まで供給していた電流によりいくらか調整もされる。例えば、蓄電池の電圧が十分に高い時は閾値は多少上方に調整されたり、低い時には下方に調整される。また、直前までの電流値が小さい時は、一瞬の気まぐれによってアクセルが踏み込まれたかもしれないので確認のために閾値を上方にそらしておく。直前までの電流値が相当に大きい時には閾値を下方に調整して内燃機関1の始動受入れ準備体制をとるようにする。
【0045】
車速センサ25は、現在の自動車走行速度を検出するためのセンサであり、電動機3とプロペラシャフトの間に変速機を備えた形式の複合電気自動車には必須のセンサである。尚、電動機3がプロペラシャフトに直結する形式の複合電気自動車では、車速センサ25を電動機3の回転センサに代用できる。
車速センサ25のセンサ信号は、車速が低く、かつ、市街地を走行していると判別されたり、渋滞中であると判別されたりするときに、内燃機関1の運転を遠慮する方向に制御するか否かを判別するときの判断材料として利用される。例えば、車速が低く渋滞中であると判別されたとき、蓄電池9の電圧が内燃機関1の運転を要求するレベルであっても内燃機関1の始動を延期し、さらに要求レベルが高まるまで蓄電池9のみによって運転を続けるように制御するが、このような制御を行うためには車速センサ25が必要である。
【0046】
出力センサ21は、内燃機関1の出力を検出するためのセンサである。尚、燃料制御弁の位置や吸気絞り弁開度又は吸気管内圧力等、内燃機関1の出力を代弁する信号を出力するようなセンサであれば、出力センサ21の代わりに採用してもよい。この出力センサ21は、暖機が必要な時には暖機にふさわしい状態で運転し、最良燃費率が要求される時には、内燃機関1の運転状態をその状態に誘導するのに必須のセンサである。
【0047】
内燃機関1、電動機3には、夫々、内燃機関1、電動機3の回転速度を検出する回転速度センサ22,23が備えられている。
回転速度センサ22,23は、夫々、内燃機関1、電動機3を運転する上で必須の信号を提供する。電動機3の単独運転から内燃機関1も含めた協働運転モードに移る際には、電動機3と内燃機関1の運転速度が略一致したことを確認して両者を連結する必要があるし、その過渡的な状態では内燃機関1を無負荷で運転し、電動機3の回転速度に同期させる必要もあり、このような制御を行うには、内燃機関1、電動機3の回転速度を把握しながら実行する必要があり、回転速度センサ22,23は、そのために用いられる。
【0048】
電流センサ26,電圧センサ27は、夫々、蓄電池9の電流、電圧を検出するためのセンサであり、蓄電池9の現状と使用状況を知る上で必須の役割を果たしている。現在の走行速度や走行履歴により市街地走行であると判定される状況のもとでは内燃機関1の使用は控えめにするよう調整されるが、基本的には電源電圧が低下して、蓄電量が不足してきたことが観測されたとき、又は、消費電流が大きくなって蓄電池9の供給能力を上回ったとき、内燃機関1が運転されて不足する電力を補うのであるから、電流センサ26,電圧センサ27は内燃機関1の運転制御の主役的重要性を有するセンサであると言える。
【0049】
この他にも、内燃機関1には、通常の内燃機関と同様の冷却水温を検出する温度センサ、排気温度センサ、が備えられ、内燃機関1がガソリンエンジンの場合には、吸気負圧センサも備えられているが、これらセンサについては後述する。また、複合電気自動車には、図示しないが、内燃機関1を使用したいという運転者からの意志表示を伝達するための内燃機関運転要求スイッチや緊急停止スイッチなども備えられている。
【0050】
さらに、外気温度を検出する外気温度センサ、電動機3、蓄電池9、大電流制御素子温度等を検出する温度センサも備えられている。これらのセンサは、内燃機関1を最適運転条件で運転する制御には必須のものではないが、より細かな制御を行う場合、又は各種機器を保護して複合原動機の実用性を高め、信頼性を確保する為には、極めて有効な手段である。
【0051】
データ入力装置10は、各センサからの信号を積算し、A/D変換してデジタル値に変換し、このデジタル化したセンサの信号値をマイクロコンピュータ11に出力する。
制御装置11は、データ入力装置10から入力された各センサからの信号値に基づいて内燃機関1の始動、調整速度、調整力、停止を含む総合制御を実行するマイクロコンピュータシステムであり、CPU,ROM,RAM等を備えている。
【0052】
次に、本実施例の内燃機関1には、運転開始の準備をするためのシステムが備えられている。
複合原動機の一部を構成する内燃機関は、通常の走行が主として電動機によって行われるために停止状態であることが多く、冬期などでは冷え過ぎたり油膜が形成不十分な状態に陥りがちである。しかも、運転を要求されているのは電動機の出力又は蓄電池9の能力を越えるハードな運転を要求されている状況になっていることが多く、内燃機関を突然始動すると、急に激しい運動が要求されることになり、耐久性に問題を生じてしまう。
【0053】
そこで、走行中に内燃機関1の保温や潤滑油を圧送して油膜を保持する必要がある。また、内燃機関1の運転が必要である時に、なかなか始動出来ないのでは折角の内燃機関1搭載の効果を損なうし、寒冷地などでは金属に脆さを帯びているので極低温から始動して、いきなり負荷の大きい運転状態にはいるのは温度の変化に伴うストレスも大きい。これを解消するために、内燃機関1が冷え過ぎないようにして内燃機関1をいつでも運転できるように、一定の温度以上に保温しておくシステム、予め潤滑油を圧送しておくシステムが必要である。また、このようなシステムは、冷始動直後のHc 排出量を減じる上にも必要である。
【0054】
また、油膜の保持にはオイルの選択も重要な問題であるが、始動直前に油圧をかけて内燃機関1の摺動部に潤滑油を散布しておくのも極めて効果的である。
図3、図4は、内燃機関1の保温システムを示す。
図3において、内燃機関1は中間ケース41を介して電動機3と接続している。この中間ケース41は、例えばアルミニューム、銅等、熱伝導良好な材料で形成されたもの、あるいはヒートパイプ等を組み込んだものであり、動力伝達制御装置2のハウジングを兼用している。電動機3で発生した熱が内燃機関1に伝達して内燃機関1が加熱される。
【0055】
図4において、内燃機関1には温度センサ28と、ヒータ42と、コントローラ43と、が備えられ、制御装置11は、温度センサ28の検出信号に基づいてコントローラ43を制御し、蓄電池9からヒータ42に通電し、内燃機関1を一定の温度以上に保温する。
尚、内燃機関1をバーナで保温するようにしてもよい。その場合、内燃機関1にバーナを備え、燃料タンクからコントローラを介してバーナに燃料を供給する構成となる。
【0056】
図5は、潤滑油の圧送等を行って始動準備をするためのシステムを示す。
図5において、制御装置11に備えられたCPU51には、車速センサ25、電流センサ26、電圧センサ27の各センサ信号が入力ポート54を介して入力される。
ROM52には、始動準備を行うため、車速、蓄電池9の電流、電圧の閾値を記憶しておく。
【0057】
RAM53は、経過データ(走行履歴)等を記憶するためのメモリである。
燃料供給制御装置6には、燃料ポンプ56とオイルポンプ57とが備えられている。
オイルポンプ57は、小型の電動式オイルポンプであり、通常内燃機関1に設置されているオイルポンプと並列的に設置される。
【0058】
CPU51は、各センサ信号の信号レベルと前記ROM52に記憶された各閾値とを比較し、内燃機関1を始動する条件を判別し、その前段階に達した時に、出力ポート55を介して制御信号を、夫々、燃料ポンプ56、オイルポンプ57に出力する。
次に、内燃機関1の始動・停止制御を行うシステムについて説明する。
【0059】
複合原動機の内燃機関は、必要な時のみ運転される形態であり、原則的には運転者の意志によって運転や停止を実行するのではなく、複合原動機としての必要性に応じて運転されるので自動的に始動したり、停止する必要がある。
図6は始動制御を行うためのシステムを示す。内燃機関1には、前述したように、アクセル踏込みセンサ24、回転速度センサ23等の他に、吸気負圧センサ29、排気温度センサ30が備えられ、これらのセンサ信号は入力ポート54を介して入力される。
【0060】
本実施例では、内燃機関1の始動条件を以下のように設定しておく。
〔始動条件〕
(1) 運転者が始動を要求していると見なされる場合
例えば、アクセルペダルが一杯に踏み込まれている時、手動スイッチによる内燃機関1の始動要求があった時、内燃機関1により駆動される補機のスイッチがオンの時のいずれかの時には、運転者が始動を要求していると見なされる。このセンサ信号は、オン−オフ信号としてもたらされる。
【0061】
(2) 運転状態が電動機3の能力を越えていると見なされる場合
例えば、アクセル踏込み量の平均値が閾値を越えた時、電動機3の回転速度の平均値が閾値を越えた時には、運転状態が電動機3の能力を越えていると見なされる。
(3) 蓄電池9の放電状態が能力を越えていると見なされる場合
例えば、蓄電池9の端子電圧の平均値が閾値を下回った時、放電電流の平均値が閾値を上回った時には、蓄電池9の放電状態が能力を越えていると見なされる。
【0062】
原則としては上記のいずれかの条件を満足すると内燃機関1は始動する。
内燃機関1の始動を確認するための物理量は、ROM52に記憶される。この物理量は、例えば始動確認用の回転速度閾値、吸気負圧閾値、排気温度閾値のデータ、その他の補助データとしてセルモータ運用限度時間、セルモータ休止時間、始動試行限度回数等のデータであり、これらの物理量は実験的に求められた値である。
【0063】
始動確認用の回転速度閾値は、停止状態から始動処理を開始して、ある回転速度に達したならば始動したものと判定するための閾値である。クラッチを遮断した状態でセルモータによって始動する形式のものの場合には、この閾値は有効な判断材料になる。
また、吸気負圧閾値は、内燃機関の出力を代表する物理量として吸気負圧を検知する構造を採用できるガソリンエンジンの場合に、始動を確認する手段として始動確認回転速度閾値に加えて利用される閾値である。
【0064】
但し、内燃機関がディーゼルエンジンのように事実上吸気絞り弁のない構造のものの場合には、始動が完了しても吸気負圧が発生する訳ではないので、吸気負圧閾値を始動確認用として用いても効果がない。
排気温度閾値は、シリンダ内で完爆状態になると排気温度が急上昇するという現象を利用して、始動確認物理量として設定された閾値である。真夏でも通常の停止状態ではありえないという温度を閾値として設定しておくことにより、始動処理中に排気温度がこの閾値を越えると始動したものと判断できる。また、時間当たりの温度変化を検知する構造とすれば始動の成否をさらに正確に確認できる。
【0065】
また、セルモータによるのではなく、クラッチを接続して、所謂押しがけのような状態で主電動機によって始動する時には、始動できていない時でも相当な回転速度まで上昇し、吸気負圧も観測される。このようなとき、排気温度も判別材料として利用することにより、始動できたかどうかの判別が、より正確なものとなる。
【0066】
セルモータ運用限度時間と休止時間は、セルモータ又は主電動機を使用する形式の複合原動機における始動のためのクラッチの接続時間を判別するためのデータであり、始動しなかった時に再度始動処理を実行するために用いられるデータである。
RAM53は、始動条件(2) 、(3) についての各センサ信号の現在値を用いる場合には不用であるが、経過データを用いる場合に必要である。この場合、各センサからのデータは、CPU51によりサンプリング収集され、RAM53には、サンプリング収集された各センサからのデータ及び過去の一定時間内に発生した頻度(回数)に基づいて計算された平均値が随時記録される。
【0067】
次に、内燃機関1の停止条件を以下のように設定する。
〔停止条件〕
(1) 始動条件がすべて解消されたこと
即ち、アクセル踏込み量、回転速度又は車速、放電電流を所定閾値と比較し、各センサ信号が閾値未満になったとき、あるいは各値が比較的低レベルになったときには、始動条件がすべて解消されたとみなされる。
【0068】
(2) 蓄電池9が所定の充電状態になったこと
蓄電池9の端子電圧が停止条件時の所定閾値に達したときには所定の充電状態になったと判断される。
尚、始動と停止の頻度を抑制するように、始動条件時の閾値と停止条件時の閾値との間に差を設けておく。
【0069】
図8は、これらの閾値の関係を示した説明図であり、始動条件時の閾値を停止条件時の閾値よりも低く設定しておく。アクセル踏込み量等が始動条件時の閾値を越えると内燃機関1の運転は開始される。時間と運転状態にもよるが、内燃機関1の運転が開始されると蓄電池9の電圧が上昇する。そして始動条件がすべて解消され、かつ蓄電池9が所定の充電状態になって停止条件が成立したとき、内燃機関1の運転が停止され、電動機3のみによる運転となる。
【0070】
もし、始動条件時の閾値と停止条件時の閾値に差がなければ、内燃機関1は頻繁に始動・停止され、内燃機関1自体の耐久性に問題を引き起こすばかりでなく、始動や停止の際に炭化水素の発生など排気の面でも問題を生じてしまう。したがって、始動条件時の閾値と停止条件時の閾値とを図8のように設定しておくことにより、内燃機関1が一旦始動されたならば長時間運転が継続され、停止したならば長時間停止し、このような不都合が生じなくなる。
【0071】
停止条件時の閾値は、ROM52に記憶され、停止条件(1),(2) に使用する各センサ信号の経過データを用いて停止条件を判定する場合には、始動条件時と同様にRAM53が必要である。
停止条件(2) の場合、電圧の瞬間値でも判別の効果はあるが、例えば減速中、一瞬電動機3が強い回生状態になったとき、瞬間的に高い電圧になることがあり、電圧の瞬間値では判別がつきにくい場合がある。このため、正確な判別を得るためには経過を示す平均値を重視するのが得策である。
【0072】
次に、始動制御時に必要な点火コイル7へ強力送電をするシステムについて説明する。
内燃機関としてガソリンエンジンを採用した場合、抵抗を経由させないで蓄電池の電圧を直接、点火コイル7に印加すると容易に始動することが知られている。通常の自動車では運転者がスターターキーを操作して内燃機関の始動を実行し、点火コイルに直接蓄電池の電圧が印加される。しかし、複合原動機では運転者がスターターキーを操作する訳ではないので、制御装置によりこの処理を実行しなければならない。
【0073】
そのため、始動を開始してから始動が完了するまで出力する点火電源と、始動が完了してから出力する点火電源の2系統を備え、前者は抵抗を経由しないで点火コイルに、後者は抵抗を経由して点火コイルに接続する方式とする。
図7は、そのシステムを示す。図7において、蓄電池9からリレー60を介して点火コイル7に送電される直接送電系と、蓄電池9からリレー61、電流制限抵抗62を介して点火コイル7に送電される間接送電系と、が備えられている。点火コイル7に電力が送電されるとスパークプラグ63が点火する。
【0074】
尚、このシステムを始動時以外に使用してもよい。複合原動機における内燃機関は通常の自動車に搭載されている内燃機関よりも高負荷で運転される割合が多く、点火プラグの選定は当然耐熱番手の大きいものとなる。このことは耐久性の確保のために必須ではあるが、低温・低負荷運転ではくすぶりや濡れを発生しやすく、次回の始動を困難にする原因になっている。これを防止するために、内燃機関の温度が既定値以下の低温のとき、低負荷で運転されているときなど、必要に応じて始動後であっても直接送電系を介して電力を出力して通電量が増大すると、点火栓が濡れることもなく、次回の始動性も良好となる。
【0075】
以上の構成により図9〜図15のフローチャートに基づいて内燃機関1の運転準備、始動、停止の制御を行う。
図9のステップ(図中では「S」と記してあり、以下同様とする)1では、内燃機関1を始動する前に、内燃機関1の始動準備制御を行う。
内燃機関1の温度がROM52に記憶された閾値よりも低い場合、図4に示すように蓄電池9からコントローラ43を介してヒータ42に給電し、内燃機関1を一定の温度以上に保温する。
【0076】
また、図5に示すように、燃料ポンプ56、オイルポンプ57に、制御信号を出力し、潤滑油の圧送、燃料油の圧送、ディーゼルエンジンでは予熱栓58への送電などのいずれか、またはこれらを組み合わせて実行する。これにより予め燃料、潤滑油が圧送されて油膜が保持され、また始動の準備は行われる。
内燃機関1が運転される前段階の水準に達したか否かを判断するには、正確さを得るために、各センサの信号値の経過データを参照するとよい。
【0077】
この要否判断を行うための処理は図10のフローチャートに基づいて行われる。
まず、初期処理を行い(ステップ11)、データ入力装置10で積算され、A/D変換された各センサからのセンサ信号のデジタル値を入力する(ステップ12)。
ステップ13では、RAM53上にこのデータの記入を行い、経過データを更新する。これにより過去の走行履歴が随時、RAM53に記録される。
【0078】
ステップ14では、現在値による重み付けをする。
ステップ15では、経過データによる重み付けを行う。
要否判定は、図11のフローチャートに基づいて行われる。
即ち、RAM53に記憶された経過データを参照し、実行要求信号をセットするか(ステップ17)、あるいは実行要求信号をリセットして(ステップ18)出力ポートから出力する(ステップ19)。
【0079】
次に、始動の要否を判別する(図9のステップ2)。始動条件は前述の通りである。
始動条件が成立した時、ステップ2→3に進み、始動制御を行う。
始動制御は図12のフローチャートに基づいて行われる。尚、ROM52には、予め設定された所定の既定値として、停止ループ数srp,運転ループ数mrp,始動トライ限度数str を記憶し、RAM53には、初期値としてsrps(=0),mrps(=0),stry(=0),sts(=1),flg(=0)を記憶しておく。
【0080】
運転開始時、始動電動機ステータスsts の初期値が1であるので、ステップ21→22に進み、停止中ループ数カウンタsrpsを0にセットする。
そして運転中ループカウンタmrpsをインクリメントし(ステップ23)、このカウント値が規定値以上に達するまでは、始動処理信号をセットする(ステップ24→25)。この処理は、図13のフローチャートに基づいて行われる。
【0081】
図13において、ステップ41では、燃料又は混合気制御を行う。
内燃機関1がガソリンエンジンである場合、点火コイル送電信号をセットする(ステップ42→43)。尚、始動時は前記したように直接送電系を介して強力送電することにより容易に始動できるようにする。これにより内燃機関1を回転させると所定の点火時期で点火が行われる。
【0082】
始動電動機5の駆動前、つまり内燃機関1の回転前は、吸気負圧センサ29のセンサ信号の信号レベルは、大気圧レベル相当値であり、ROM52に記憶されている始動確認用吸気負圧閾値を越えない。このときは始動電動機5の送電信号をセットし、始動電動機5を駆動してクランキングを開始する。
クランキングにより、点火及び混合気の供給が行われて内燃機関1が着火、燃焼して完爆状態、つまり内燃機関1の始動が完了すると、吸気負圧センサ29,排気温度センサ30,回転速度センサ23のセンサ信号の信号レベルが、ROM52に記憶されている始動確認用回転速度閾値、吸気負圧閾値、排気温度閾値のすべての閾値を越えるようになるので、ステップ48に進み、始動電動機送電信号をリセットする。これにより始動電動機5は停止する。ガソリンエンジンの場合、一旦、始動が完了すると、原則として点火コイル7には、運転が停止するまで抵抗62を経由する間接送電系を介して小電力で送電される。
【0083】
また、吸気負圧センサ29,排気温度センサ30,回転速度センサ23のセンサ信号の信号レベルのうち、いずれかの信号レベルが閾値以下である場合には、内燃機関1は始動が完了していないと判定され、ステップ45に進み、始動電動機送電信号のセットを継続する。
尚、内燃機関1がディーゼルエンジンである場合、ディーゼルエンジンは事実上吸気絞り弁がない構造であり、始動が完了しても吸気負圧が発生する訳ではないので、ガソリンエンジンの場合とは異なり、吸気負圧の比較判定は行わず、夫々、排気温度、及び内燃機関1の回転速度についてだけ各閾値との比較判定を行う(ステップ46,47)。
【0084】
始動電動機5によるクランキング開始後、全てのセンサの信号レベルが閾値を越えて始動の完了が確認されると、既述したように、始動電動機5への送電信号がリセットされて始動電動機5が停止されるが、所定時間経過しても始動の完了が確認されないときは、一旦、始動電動機5を停止し、一定時間おいてから始動制御を再開する。
【0085】
即ち、図12において、運転ループ数カウンタmrpsが運転ループ数mrp を越えた時、つまり、所定時間経過しても始動されないときには、始動電動機ステータスを0にセットし、一旦、始動準備状態に戻す。
始動電動機ステータスが0になると、運転中ループカウンタmrpsを0にセットし(ステップ21→28)、停止中ループ数カウンタsrpsをインクリメントし(ステップ29)、停止中ループ数カウンタsrpsが停止ループ数srp 以上になるまで、始動電動機5が停止される。
【0086】
停止中ループ数カウンタsrpsが所定の停止ループ数srp 以上になったとき、つまり、始動電動機5を停止後、所定時間経過後に始動電動機ステータスを1にセットし(ステップ31)、始動トライ数stryをインクリメントして(ステップ32)始動電動機5を再度、駆動する(ステップ5)。
もし、始動トライ数stryが始動トライ限度数str を越えたとき、即ち、何度始動制御を行っても内燃機関1が始動しないときは、始動禁止フラグflg をオンにする(ステップ33→34)。
【0087】
始動禁止フラグflg がオンになった場合、始動不可能と判断して当面の始動を取り止め、所定時間(前記、始動制御期間の停止時間より十分長い時間)の経過後に再度、始動を試みる(ステップ35,36)。
内燃機関1の始動が確認されたとき、図9のステップ4に進み、電動機3の回転速度を基準として、この回転速度に内燃機関1の回転速度を同期させるように回転速度制御を行う。この制御は、図14のフローチャートに基づいて進められる。
【0088】
ステップ51では、電動機3の回転速度mrpmをサンプリングし、ステップ52では、内燃機関1の回転速度erpmをサンプリングする。
そして内燃機関1の回転速度erpmが、電動機3の回転速度mrpmよりも小さいときには、燃料供給を増やして内燃機関1の回転速度erpmを速め(ステップ53→54)、電動機3の回転速度mrpmよりも大きいときには、燃料供給を減らして内燃機関1の回転速度を低下させ(ステップ53→55→56)、等しいときには、直前の状態をそのまま維持する。
【0089】
ステップ7では、動力伝達制御装置2を介して連結制御を行い、電動機3と内燃機関1とで併用運転を行う。この連結制御については後述する。
電動機3と内燃機関1とが併用運転されているときに内燃機関1の停止条件が成立したときには、内燃機関1を停止する制御を行う(ステップ6→7)。停止条件は前述の通りである。
【0090】
内燃機関1を停止させるとき、内燃機関1を力行させたまま、いきなりクラッチを遮断したり点火電源を遮断すると、オーバーランを招いたり、多量の生ガスを発生したり、あるいは次回の始動を困難にしてしまう。これを避けて順当に停止させるためには、無負荷運転を実行する。
無負荷運転を実行するには、予め実験により内燃機関1を無負荷運転した時の吸気負圧又はスロットル弁開度、噴射量制御レバー位置など、出力を調節するための要素の値を求めておき、回転速度に対して内燃機関1の制御テーブルとしてROM52に記録する。そして回転速度を与えると、その時の無負荷運転を実行する吸気負圧値等を応答するような処理を行うソフトを内蔵しておき、スロットルバルブや噴射量の制御を応答値になるまで調節し、応答値に収束するように制御する。尚、内燃機関1を無負荷運転に移行させるにつれて、電動機3のトルクを、内燃機関1の低下分、増大し、電動機3単独運転で現状回転速度を維持できるトルクまで高めるように制御して出力トルクを維持するのがよい。
【0091】
内燃機関1を無負荷運転にしたあと、内燃機関1の動力の伝達を遮断する。このように連結中に内燃機関1を無負荷運転とすることにより、伝達を遮断した後も、内燃機関1、電動機3、夫々のトルクに変動がないので、遮断時のトルクショックを防止できる。
尚、内燃機関1の動力の伝達・遮断を行う際、クラッチを備える形式の複合原動機ではクラッチを接続・遮断する。電動機又はソレノイドによる電動制御方式のクラッチを備えた形式のものでは、クラッチを遮断するときはクラッチを遮断する方向に電動機を回転させるか、ソレノイドを駆動すればよい。また、油圧駆動クラッチを備えた形式のものでは、クラッチを遮断するときは油圧を解放するか、又は構造によっては油圧をかけて、遮断する方向に制御すればよい。
【0092】
但し、一方向クラッチのように電動機の回転速度よりも内燃機関側の回転速度が低くなった時に自動的に連結状態から解放される構造を採用している場合には、特別なクラッチの制御を考慮する必要はない。
クラッチを遮断した後は、アイドリング運転を実行する。
内燃機関1の運転を停止する前に内燃機関1をアイドリング速度に制御し、必要に応じてその状態を既定時間維持する。この制御は図15のフローチャートに基づいて行われる。
【0093】
内燃機関1の停止条件が成立したとき(ステップ61)、アイドリング維持カウンタのカウント値idlsに1を加える(ステップ62)。
カウント値idlsがアイドリング維持時間idl 以下であるとき、内燃機関1の回転速度erpmをサンプリングし(ステップ64)、内燃機関1の回転速度erpmがアイドリング回転速度idrpm 以下であるときには燃料供給量を増やして内燃機関1の回転速度erpmを高め(ステップ65→66) 、アイドリング回転速度idrpm を越えているときには、燃料供給を減らして内燃機関1の回転速度erpmを低くする(ステップ67→68) 。
【0094】
但し、アイドリング速度はそれほど厳密に制御する必要はないので上下に幅を持たせてアイドリング速度近傍になれば、それをもって制御が完了したものと見做す。
カウント値idlsがアイドリング維持時間idl を越えたとき、内燃機関1の停止処理を実行し(ステップ63)、アイドリング維持時間idl を0に設定する。
【0095】
このように、内燃機関1の運転を停止する前に内燃機関1をアイドリング速度に制御したとき、必要に応じてその状態を既定時間維持する。
即ち、アイドリング運転は総合的な燃費率を悪化させる要因となるのでできるだけ短時間で切り上げるのを原則とするが、内燃機関1の構造によっては温度バランスや油膜の回復のためにアイドリングを継続した方が望ましい場合もある。その時はアイドリング継続時間をROM52に保持し、制御装置のクロックとの比較によって、その継続時間を経過するまではアイドリングを持続する。
【0096】
内燃機関1の運転を停止させるには、内燃機関1に供給する燃料を遮断したり、点火コイルへの送電を停止する。また、内燃機関1の直接的な停止操作に加えて、燃料フィードポンプや、内燃機関1の冷却を電動ファンによって行っている場合などでは、そのような補機類の運転も停止する。
以上で内燃機関1の運転準備から停止までの制御が完了する。
【0097】
かかる構成によれば、内燃機関1の始動、調整速度、調整力、停止を含む総合制御が実行され、内燃機関1の能力を最大限まで引き出すことが出来、複合原動機全体の能力を高めることが出来る。
そして、始動準備段階では、中間ケースを介して電動機3の熱が伝達され、また、ヒータによって内燃機関1は一定温度以上に保温されているので、内燃機関1の冷え過ぎを防止することが出来る。また、始動準備中に燃料、潤滑油を圧送しておくので、内燃機関1をすぐに始動させることができる。
【0098】
また、始動段階では、始動に失敗したときには、再始動を行うようにしたので、確実に始動するようになる。また、内燃機関としてガソリンエンジンを採用した場合、始動開始時、点火コイルには直接送電系を介して給電されるので、始動し易くなる。特に複合原動機の内燃機関は高負荷で運転される場合が多く、耐熱番手の大きい点火プラグが選定されるため、低温・低負荷運転ではくすぶりや濡れを発生しやすいが、始動時以外で直接送電系を介して点火コイルに送電することにより、点火プラグの濡れを防止することが出来、再始動時の始動性も良好となる。
【0099】
また、過去の平均値として計算・記録されている経過データに基づいて各種の判断を行うことにより、問題とすべき現象が一時的なものか、あるいは恒常的なものかが判別され、正確さを得ることができる。
また、内燃機関1を始動・停止する時に電動機3の回転速度を基準として、内燃機関1の回転を電動機3の回転に同期させて連結することにより、円滑な連結・遮断制御を行うことが出来る。
【0100】
また、内燃機関1を停止させるときには内燃機関1をアイドリング速度に制御し、内燃機関1の構造に応じてその状態を既定時間維持することにより、温度バランス、油膜の回復が良好となり、内燃機関1の耐久性が増す。
また、停止条件時の閾値を始動条件時の閾値よりも高くして始動条件と停止条件の間に差を設けることにより、内燃機関1が一旦始動されたならばなるべく長時間運転が継続され、停止したならば出来るだけ長時間停止するようになるので、始動と停止の頻度を抑制することが出来、内燃機関1自体の耐久性も向上し、排気の面でも炭化水素の発生を出来るだけ抑えることができる。
【0101】
次に、内燃機関1の始動条件と停止許可条件を運転者が操作するレバーによって調節できるようにしたシステムについて説明する。
図16は、システムを示す。
図16において、レバー71は、運転者が操作する操作レバーであり、このレバー71には、マイクロスイッチ72が取り付けられている。そしてレバー71の位置はマイクロスイッチ72により検出される。
【0102】
始動・停止条件は、表に示すように例えば蓄電池9の電圧値に基づいて高出力運転、通常運転、静粛運転モードにおける条件の3段階に分かれている。そして、高出力を必要とするときほど、始動・停止条件の蓄電池9の電圧値を高く設定しておく。これらの始動条件、停止条件はマイクロスイッチ72によって選択される。尚、正確さを得るために、蓄電池9の電圧の観測回数を10回とする。
【0103】
このように設定しておいて、例えば、レバー71により高出力運転モードを選択した場合、 210〜220 Vが10回観測された時、内燃機関1が始動して蓄電池9の充電が開始され、260 Vを越えた電圧が10回観測された時、内燃機関1が停止して蓄電池9の充電も停止する。
これにより内燃機関1は通常よりも早めに始動し、遅く停止するため、蓄電池9の電圧は 210〜260 Vに保たれ、結果として内燃機関1を併用した高出力運転領域が拡大する。
【0104】
逆にレバー71を静粛運転モードに切り替えれば、蓄電池9のみによる電動機3単独運転での走行範囲が拡大することになる。
かかる構成によれば、レバー71を操作することにより、始動・停止条件を必要に応じて手動で可変することが出来る。
次に、内燃機関1の始動条件と停止許可条件を電気自動車の外部からの信号に応じて自動調節するようにしたシステムについて説明する。
【0105】
図17は、そのシステムを示す。
道路施設又はこれに準ずる定置施設又は人工衛星などの空中施設に、始動条件、停止条件を送信する発信機73を備え、複合電気自動車74側にこれらの条件を受信する受信機74を備えておく。受信機75で受信された条件情報は、制御装置11に入力される。
【0106】
例えば、付近に病院等がある時、道路側の発信機73から複合電気自動車74に信号を送り、複合電気自動車74側では、受信機75でこの信号を受信して内燃機関1を停止し、電動機3のみによる走行に切り換える。または内燃機関1の使用許可条件を制限して内燃機関1の使用を抑制するように制御する。
かかる構成によれば、電気自動車74が走行している外部の状況に応じて、適切に内燃機関1を運転することが出来る。
【0107】
次に、内燃機関1を電動機3に接続する動力伝達装置について説明する。
従来、複合原動機ではクラッチを駆動するために電動機を使用していたが、連結又は遮断の実行にはかなり大きな駆動力を必要とするので、装置自体が高価になるばかりでなく、駆動のための電力も無視できないものであった。しかし、通常の自動車のように、クラッチペダルを設けて、クラッチマスターシリンダによって油圧を発生し、足踏みによってクラッチを駆動する方式を使用したのでは、複合原動機において円滑な作動を得ることは難しい。簡易に利用できる油圧又は負圧等を発生する装置があれば、この装置を利用すればよいが、油圧等を発生する装置を備えるにはコストや重量の点で不都合である。
【0108】
本実施例では、複合原動機においてクラッチを駆動する必要がある時は、内燃機関1の運転中に限られることに着目し、内燃機関1の潤滑油の油圧を利用してクラッチを操作するようにした。
図18は、かかる内燃機関1の潤滑油圧力により駆動されるクラッチを備えた動力伝達制御装置2を示す。
【0109】
内燃機関1には、オイルポンプ81が備えられ、オイルポンプ81は、内燃機関1が運転されている状態では、コントロールバルブ82に潤滑油を供給する。ソレノイドバルブ83を制御してシリンダ84に潤滑油を供給すると、ピストンロッド85を介してレリーズフォーク86がスプリング87の弾性力に抗して支点を中心にして回動し、プレッシャープレート90を出力軸の軸方向に移動させる。そしてプレッシャープレート90がクラッチディスク89をフライホイール88に圧着することにより、内燃機関1は電動機3に連結される。
【0110】
ソレノイドバルブ83を制御して潤滑油を内燃機関1に戻すことにより、シリンダ82内の潤滑油圧力が低下し、クラッチディスク89、プレッシャープレート90がフライホイール88から離れ、内燃機関1は電動機3から遮断される。
また、内燃機関1が運転されていない状態でも、オイルポンプ81が作動しないので内燃機関1は遮断状態に保たれる。
【0111】
即ち、内燃機関のみ有する自動車に備えられた装置では、非作動状態でクラッチが接続されている構造であるが、本実施例の装置は、内燃機関のみ有する自動車に備えられた装置とは逆の機能を有している。
この方式の利点はクラッチ操作のための動力源が内燃機関1の潤滑油の油圧から得られるので、専用のオイルポンプを必要とせず、小型化、低価格化、軽量化が可能である。また、内燃機関1が停止している時にはクラッチを接続することが不可能であり、内燃機関1になんらかの異常が発生して停止した時には、クラッチも自動的に遮断状態になるので、クラッチの制御がかなり簡易になる。
【0112】
次に、動力伝達制御装置2における連結・遮断制御について説明する。
尚、連結とは内燃機関1と電動機3の回転系を連結すること(ひいては、内燃機関1と駆動車軸との連結)を意味し、遮断とは内燃機関1と電動機3の回転系を遮断すること(ひいては内燃機関1と駆動車軸との遮断)を意味する。
電動機3の回転速度が規定値以下の時は遮断処理を実行し、それ以外で連結の時には電動機3の回転速度を基準に内燃機関1の回転速度を同等に制御した後に、両者の速度差が規定値以内であれば連結処理を実行し、遮断の時には電動機3の回転速度で内燃機関1が無負荷運転するように制御因子を調整し、その後遮断処理を実行するように制御する。
【0113】
連結・遮断制御を行うときの条件は次の通りである。
内燃機関1が運転されている時に以下の項目を満足した時を、クラッチを接続する条件、即ち、内燃機関1と電動機3を連結する条件とする。
〔連結条件〕
(1) クラッチ接続可能な回転速度以上の速度に達したこと
(2) 電動機3と内燃機関1の回転速度差が既定値以下であること
(3) 耐用最高速度を越えていないこと
また、以下の項目を満足した時を、クラッチを切る条件、即ち、内燃機関1と電動機3を遮断する条件とする。
〔遮断条件〕
(1) 内燃機関1が運転されていない時、クラッチ遮断回転速度以下の速度に達したとき
(2) クラッチ遮断回転速度以下の速度に達したこと
また、前記判定のための閾値を以下の値等とする。
〔判定閾値〕
(1) クラッチ接続可能な回転速度
(2) 回転速度差の規定値
(3) 耐用限界速度
これらの閾値は、予め実験により最適値が決定され、ROM52上に記憶される。
【0114】
電動機3の回転速度は、回転速度センサ23により、常に監視されているが、この電動機3の制御のために必須のセンサの信号をクラッチ制御用にも流用する。但し、回転速度センサ23には、30rpm 程度の精度の高いものが必要である。また、内燃機関1の回転速度センサ22からのセンサ信号も利用するが、内燃機関1は約600RPM以下では運転されないことを考慮すればガソリンエンジンの場合では、点火装置のオン−オフ信号(いわゆるポイントの開閉信号)等も実用に供し得る。点火装置の場合、4サイクル2気筒エンジンの例では、600RPMにつき毎分600 パルスを発生するが、毎秒10パルスに相当し、サンプリング時間を0.5 秒とすれば120rpm/パルスに相当するので、ラフではあるが制御信号として実用に供し得るものと考えられる。
【0115】
また、内燃機関1が運転されていると確認するための条件を、以下のように設定する。
a.内燃機関1の回転速度が始動確認回転速度以上であること
b.吸気負圧が観測されたこと
c.燃料ポンプに電力が供給されていること
d.ガソリンエンジンでは点火装置に電力が供給されていること
e.内燃機関1の潤滑油の油圧が観測されたこと
f.排気温度が規定値以上であること
g.排気圧力が規定値以上であること
次に、図19、及び図20のフローチャートに基づいてこの連結・遮断制御の動作を説明する。
【0116】
まず、図19のルーチンでは、連結要求信号、遮断要求信号のセット・リセットを行う。
図19において、前述の確認条件に従って内燃機関1が運転中であると確認され(ステップ71)、内燃機関1を電動機3に連結する条件を満しているとき(ステップ72→73)に、すでに内燃機関1が電動機3に連結されている場合には、連結要求信号、遮断要求信号をともにリセットする(ステップ74→75)。遮断している場合には、遮断要求信号をリセットし、連結要求信号をセットする(ステップ76)。
【0117】
また、内燃機関1が運転中ではないとき、または運転中に内燃機関1を電動機3から遮断する条件が成立したとき、すでに遮断している場合には、連結要求信号、遮断要求信号をともにリセットする(ステップ77→75)、連結している場合には、連結要求信号をリセットし、遮断要求信号をセットする(ステップ78)。
このように連結要求信号、遮断要求信号をセット又はリセットすると連結又は遮断処理を実行する(ステップ79)。
【0118】
この連結・遮断処理は図20のフローチャートに基づいて行われる。尚、この制御を行う前に、先行処理として電動機3の回転速度mrpm,内燃機関1の回転速度erpmをサンプリングしておく。
連結要求信号がセットされ、遮断要求信号がリセットされているときには、連結要求があったものと判断する(ステップ80)。
【0119】
連結可能回転速度であるとき、連結可能回転速度であると判断したときは、電動機3の回転速度mrpmをデータとして与え、この回転速度において無負荷条件となる設定値、即ち、内燃機関1を空転させる燃料制御弁の開度値、吸気圧力値を求める(ステップ81→82)。これらの電動機3の回転速度に応じた値は、ROM52に記憶され、回転速度が与えられると応答してROM52から出力される。
【0120】
この時、内燃機関1の回転速度erpmが電動機3の回転速度mrpmよりも小さいときには、燃料供給量を増加して内燃機関1の回転速度erpmを高めるように制御し(ステップ83→84)、電動機3の回転速度mrpmよりも大きいときには、燃料供給量を絞って内燃機関1の回転速度を低減する(ステップ85→86)。そして内燃機関1の回転速度erpmと電動機3の回転速度mrpmの差がクラッチ接続許容回転差未満になったとき、連結処理を実行する(ステップ87→88)。
【0121】
連結処理は、油圧レリーズソレノイドを作動させ、潤滑油が内燃機関1に戻らないように制御することにより行われる。これにより油圧が発生し、通常遮断されていた内燃機関1と電動機3とは油圧シリンダ等の作動により連結される。連結処理が完了すると、スロットルバルブ等により燃費等を重視した目的の負荷まで運転条件を調節する。
【0122】
尚、連結可能回転速度ではないと判断されたとき(ステップ81)、クラッチ接続許容回転差以上のとき(ステップ87)は、この連結処理を行わないで終了する。
次に、遮断要求信号がセットされ、連結要求信号がリセットされているときには、遮断要求があったものと判断する(ステップ80)。
【0123】
遮断時においてもステップ82と同様に、現在の回転速度における無負荷条件となる燃料制御弁の開度値、吸気圧力値を求め(ステップ90)、燃料制御弁を同上条件に合わせる(ステップ91)。
即ち、クラッチ遮断と同時並行的に、内燃機関1の出力を低下させる制御を行う。例えば、ガソリンエンジンではスロットルバルブを絞り、ディーゼルエンジンでは噴射量を絞るようにする。これにより、現在の回転速度における無負荷運転に向けて調節することが可能となる。これはクラッチを遮断したとき、内燃機関1がから吹かしの状態になるのを避けるためである。
【0124】
無負荷条件が成立した時には、遮断処理を実行し(ステップ92→93)、内燃機関1は電動機3から滑らかに遮断される。
以上で内燃機関1と電動機3との連結・遮断処理が完了する。
尚、前述のようにクラッチ遮断が完了した後は、内燃機関1のアイドリング制御が実行され、蓄電池9に十分電力が蓄えられ、内燃機関1を停止することを目的とするクラッチ遮断処理であれば内燃機関1は、その後、停止されるが、信号待ち等の一時的なクラッチ遮断処理の時はアイドリング制御が継続される。
【0125】
かかる構成によれば、内燃機関1の潤滑油の油圧を利用してクラッチを操作するようにしたので、特に油圧等を発生する装置を備えずにクラッチ制御を行うことが出来、小型化、低価格化、軽量化が可能となる。また、内燃機関1が停止している時はクラッチを接続することが不可能であるとともに、内燃機関1がなにかの異常状態によって停止するとクラッチも自動的に遮断状態になるので、安全であり、クラッチの制御もかなり簡易となる。
【0126】
尚、この実施例では、内燃機関1の油圧を駆動源とするクラッチと制御方法について述べたが、電動機等で油圧を発生する装置を採用しても、また、電動機で制御する方式を採用しても基本的な作動のロジックは同じであり、同様な結果を得ることができるが、電動機で油圧や負圧を発生する方式では、クラッチ操作の前後で電動機の起動や停止を実行する必要がある。また、電動機によって直接駆動する方式では、正転・逆転などの制御を必要とするが、装置そのものの価格も高くなる。また、電磁クラッチという方法がもっとも簡便に考えやすいが、クラッチを接続又は遮断している間中、常に電力が消費されるので節電を旨とする電気自動車に適用するためにはいまのところ改良の余地がある。
【0127】
また、トルクコンバータとクラッチ、特に望ましくは簡易な一方向クラッチを直列的に組み合わせて構成してもよい。
複合原動機を備える電気自動車の内燃機関と電動機の連結には、予想されたことではあったがトルクコンバータが極めて良好な結果を示している。電動機のみによる通常の運転から、内燃機関と電動機による協働運転に移る時及びその逆の変更時にショックを伴いがちであるが、この方法によれば非常に滑らかであり、高級車には相応しい装置であるといえる。また、トルクコンバータは、低速において大きな出力を発生させるような能力を備えているので、トルクコンバータの出力軸でみたトルク特性は低速で大トルクが得られる形になっている。
【0128】
電気自動車が必要とするトルクとの相性については、電動機そのものが低速で大きなトルクを発生し得るので変速機を設置する必要はないが、大トルクを得るためには大電流が必要であり、内燃機関からトルクコンバータを経由して大きなトルクを供給するようにすれば、電動機や電流を制御する電子機器には負荷を軽減する上で好都合であり、加速性能を向上するためにも効果が大きい。
【0129】
制御の難易度という観点からも、クラッチの制御を必要とせず、内燃機関の制御が簡易になる等の効果がある。
ただ、内燃機関を停止して電動機のみによって走行している通常運転においては、単純に内燃機関と電動機の間にトルクコンバータを設置したというだけの構造では問題を起こす。それは電動機でトルクコンバータを駆動するには問題がある。即ち、通常の内燃機関のみによって走行する自動車において、トルクコンバータを備えたAT車の場合に経験するように、エンジンブレーキの状態が常時、発生する訳であり、電動機に余計な負荷をかけ、電力を無駄に浪費してしまうばかりでなく、トルクコンバータの作動油の温度を上昇させ、トルクコンバータにも影響を及ぼしてしまう。AT車のエンジンブレーキは機械式の変速機をもつマニュアル車のそれには及ばないが、省エネルギー走行を要求される電気自動車においてこのような現象を見過ごすわけには行かない。
【0130】
この問題の解決のために、通常知られているトルクコンバータの機能に加えて一方向クラッチを備えた構造とすれば、複合原動機の内燃機関と電動機を連結又は遮断する動力伝達制御装置として最適な機構である。
図21はこの一方向クラッチの構造を示す。
図21において、トルクコンバータ出力軸93に連結されたインペラー92は、トルクコンバータ外部ケース91内に収納され、一方向クラッチアウターケース内には、一方向クラッチ出力軸95が収納されている。
【0131】
この一方向クラッチをトルクコンバータの前後いずれに設置してもよいが、内燃機関1が回転力を発生している時にのみ接続されるか、内燃機関1の回転力は電動機3に伝達するが電動機3の回転力を内燃機関1には伝達しない、という機能を持つものであればよい。一方向クラッチとして採用しうると考えられるのは、機構の簡便さからすれば、
(1) 遠心クラッチ
(2) 前述の内燃機関1の潤滑油圧力によるクラッチ
(3) その他の一方向クラッチ
等であろうが、もちろん一方向ではなく本格的なクラッチを採用しても機能の上では問題ないが、コストや制御の面で簡易な一方向クラッチが望ましいと考えられる。尚、慣性モーメントの点からはクラッチの設置位置は電動機3側として、遮断時にトルクコンバータが電動機3によって回転されることのないような配置が望ましい。
【0132】
次に、内燃機関1を最適運転条件へ誘導するための制御について説明する。
内燃機関は一般に最も低速のアイドリング運転速度から、許容最高速度までの各回転速度に応じて、無負荷から発生しうる最高トルクの範囲で動力を発生することができる。従って、内燃機関の熱効率は一定ではなく運転条件によっては、アイドリングや無負荷運転のように全く有効な仕事を成しえない熱効率ゼロの領域や、20数%から機種によっては30%を越える熱効率を得られる領域も存在する。優れた熱効率を得られる領域は一般的には、回転速度ではそのエンジンの最高トルクを得られる回転速度の付近で、発生負荷では最高トルクの80%程度の位置に存在する。これは自動車用として一般的に使用される内燃機関について述べたもので、船舶用や航空用の内燃機関ではこれよりも異なる位置に熱効率の最高点が存在するものもある。
【0133】
排気の排出特性については、炭化水素と一酸化炭素の場合は熱効率が良い領域と排出が少ない領域が重なるので都合が良いが、窒素酸化物はその領域では多く排出されるので低減対策を必要とする。熱効率が良好な領域というのは、元来エンジンが快調に運転できる領域であり、わずかに熱効率を犠牲にする必要があるが窒素酸化物対策はやりやすく、その効果も大きい。また、内燃機関を頻繁に始動又は停止すると、炭化水素の排出に問題を起こす恐れがある。これを回避するためには、内燃機関の始動をできる限り控え、一旦始動したならば蓄電池がかなりの充電量に至るまで運転を継続するという配慮に加えて、多少高めの回転速度で、低めの負荷によって運転すれば炭化水素の排出を抑制する効果を得やすいという特性を利用するのが得策である。
【0134】
耐久性に及ぼす影響度を見た場合は、冷たい内燃機関を始動していきなり熱効率が最良の運転領域まで誘導するのは問題である。始動直後は必要な油膜も形成不十分であり、各部の急激な温度変化によってシリンダブロック等内燃機関の主要な部分に悪影響を及ぼす。始動の直後には暖機という緩衝的な運転をはさんで、耐久性の確保を図るべきである。尚、緩衝的な運転期間は内燃機関の状態及び外気温度などによっては長時間又は短時間に調節される。
【0135】
以上のようであるから、複合原動機においてその効果を最大限に発揮するには、ただ漫然と内燃機関を運転すれば良いと言うものではなく、熱効率は排気の特性、耐久性に及ぼす影響度等を考慮しながら、必要最小限の利用を図るべく制御される必要がある。
そのため、内燃機関1を以下のように制御する。
〔制御〕
(1) 内燃機関1の温度によって暖機条件を調節する。
【0136】
(2) 内燃機関1の温度に対する許容回転速度データを予め記録し、温度データを与えて許容回転速度を応答するようにする。
(3) 現在の回転速度に対し、出力値又は出力を代表する物理量を与えるようにする。
(4) 過去の運転履歴に基づいて単独又は複合して観測された状況を判別し、その結果によって停車時も内燃機関1の運転を継続するか、又は停止する制御を行う。
【0137】
これらの制御(1) 〜(4) は、暖機、力行運転、臨時アイドリング段階において、必要に応じて実行される。
まず、暖機の段階では、内燃機関が始動されると冷却水の温度によって運転可能な回転速度と出力が求められる。内燃機関の冷却水温に対する許容回転速度と出力をROMに記録しておき、データとして内燃機関の冷却水温を与えれば許容回転速度と出力が得られるようにしておく。マイクロコンピュータにより、その応答値を検出しながら、現在の回転速度が応答値に比較して小さければスロットルバルブを開いて回転速度を増すように調節し、そうでなければ逆の調節を実行する。また、内燃機関1と電動機3の間にクラッチを備える形式では、現在の走行速度が応答された許容回転速度の範囲内にある時には、暖機中ではあってもクラッチを接続する処理を実行する。
【0138】
クラッチを接続した暖機状態の時は許容出力の判別が行われる。回転速度については走行速度に応じたものとなり、それが許容回転速度の範囲内であればそのまま続行される。許容出力の判別で、現在の出力が許容値未満であればスロットルバルブを開いて出力を増す方向に調節する。そうではない状況が発生した時には逆の調節を実行する。
【0139】
また、増速されて暖機中の許容回転速度を越えるときはクラッチを遮断して、無負荷運転による回転速度制御のみの暖機運転を実行する。尚、冷却水温に対する許容回転速度や負荷は冷却水温が高まるにつれて制限のない力行条件に近づくように設定されているので、暖機状態から力行に無段階的に移行することができる。
【0140】
具体的に、内燃機関1の冷却水温に対する許容回転速度、暖機条件を調節するための負荷率は、夫々、図23、25のフローチャートで示されるルーチンに基づいて制御される。尚、ROM52には、図22に示すような内燃機関1の冷却水温に対する許容回転速度データと、図24に示すような内燃機関1の冷却水温に対する負荷率データと、を記録しておく。これらのデータは、予め実施された耐久試験の結果に基づいて得られたものである。
【0141】
まず、図23のルーチンにおいて、自動車の走行速度crpm、内燃機関1の回転速度erpm、内燃機関1の冷却水温etmpをサンプリングし(ステップ101)、図22のデータに基づいて内燃機関1の冷却水温に応じた許容回転速度maxrpmを得る(ステップ102)。走行速度crpmが、許容回転速度maxrpm未満のときには内燃機関1を電動機3に連結して運転し(ステップ104)、電動機3が内燃機関1と連結中であり、走行速度crpmが許容回転速度maxrpmを越えているときには、内燃機関1を電動機3から遮断して内燃機関1を無負荷で運転する(ステップ103 →105 →106)。また、このとき、直前の状態が遮断状態であるときには、直前の状態をそのまま維持する(ステップ105 →107)。
【0142】
また、図25のルーチンにおいて、電動機3の回転速度データ、内燃機関1の温度データをサンプリングし(ステップ111)、内燃機関1の回転速度を与え、既定負荷で運転するための運転パラメータ、即ち、例えば燃料弁開度、吸気負圧等を算出する(ステップ112)。そして図24のデータに基づいて、内燃機関1の負荷率を算出し(ステップ113)。既定負荷パラメータに負荷率を乗算し、実施負荷パラメータを算出する(ステップ114)。実際の運転は、この算出された実施負荷を参照して行われる。
【0143】
次に、力行運転の段階は、内燃機関1の出力によって走行負荷の一部又は全部を賄い、さらに余剰があれば電力に変換して蓄電池9に蓄えるという処理を行うという熱効率を重視した運転領域である。
前述したように排気の排出に気配りしながら、できる限り熱効率の優れた運転領域を使用するべく調節する。熱効率の優れた運転領域は、以下の値に基づいて設定される。
【0144】
a.高出力を得ながら熱効率も良好な限界値
b.熱効率の最適値
c.排気を抑制しながら熱効率も良好な限界値
d.低出力を得ながら熱効率も良好な限界値
これらの値は、実験によって予め設定され、ROM52に記録しておき、現在の回転速度を与えると、常時、それらの限界値及び最適値を応答するようにしておく。
【0145】
現在最も相応しい出力値は、現在の走行状態によって前記の4種類の基準値から計算され、決定される。例えば、アクセルペダルが強く踏み込まれ、それは、現在の走行速度をさらに高めることを要求するものであれば、前記の限界値a、又はそれに近い値が現在最も相応しい出力値として採用される。逆に走行速度も低く、アクセルペダルも軽く踏まれている状況で、熱効率の最適値によって運転したのでは出力が余り過ぎるために、発電量が過大となり蓄電池を痛めてしまうという制限の下では限界値d、又はその近くの値が適切な出力値として採用される。
【0146】
また、排気を抑制したい市街地走行などでは限界値cが意味を持つ。格別の制限がない状況では最適値bを採用して走行する。
採用すべき最適な出力値が決まったならばスロットルバルブなど出力を調節するための装置を操作して、現在値と目標となる上限値と下限値の範囲内に運転状態を誘導する。
【0147】
図27は、内燃機関1の出力を制御するルーチンの具体的なフローチャートを示す。尚、ROM52には、図26に示すような、例えば内燃機関1の回転速度に対する出力データを記録しておく。このデータも、図22,図24のデータと同様に、予め実施された耐久試験の結果に基づいて得られたものである。
電動機3の回転速度をサンプリングし(ステップ121)、電動機3の回転速度を与え、図26のデータに基づいて、内燃機関1を運転するための回転速度及び出力パラメータを設定する(ステップ122)。
【0148】
このパラメータに基づいてアクセル値、電圧値などの経過値と現在値によって、実施上限値と実施下限値の計算をする(ステップ123)。
そして吸気圧力の現在値が、上限値を越えているときは、スロットルバルブを閉方向に移動させて出力を絞り(ステップ124 →125)、実施下限値未満のときは、スロットルバルブを開方向に移動させて出力を増加させ(ステップ124 →126 →127)、実施下限値以上、実施上限値以下のときは、直前の状態をそのまま維持する(ステップ126 →128)。
【0149】
このようにして内燃機関1の出力が制御される。
次に、臨時アイドリング段階では、例えば、必要があって内燃機関を運転している途中に信号待ちなどの一時的な状況により停車することがある。停車すると電動機も電源を遮断されて停止しているので、内燃機関の運転を継続する必要はなくなるのであるが、直後に従来の走行に復帰するかも知れない。このような時、その都度、内燃機関の運転を停止したり、始動したりを繰り返したのでは、排気、とりわけ炭化水素の発生を増加してしまうばかりでなく、内燃機関の耐久性をも損なうものである。
【0150】
そこで、走行速度以外の条件は内燃機関の運転を要求する状況下では、現在停車しているために内燃機関の運転の必要がなくても、それまでの運転経過によっては内燃機関の運転を継続することがある。例えば、過去の数分間の走行速度が相当に高速である時、後退運転を含まない時、ハンドルの大きな操作を伴わない時、極数又は前後進セレクトレバー等が入ったままアクセルを踏まないことで停車している時、足踏みブレーキが踏まれているか駐車ブレーキが操作されていない時などの状態が単独又は複合して観測される時には臨時的な停車であると見做し、臨時アイドリング段階として内燃機関の運転を継続する。
【0151】
しかし、このような状況での内燃機関の運転は燃費率等を考慮した前述のものではなく、内燃機関と電動機の動力伝達を遮断した状態におけるアイドリング運転である。再び車速が上昇してクラッチ等を接続可能となった時には力行運転に復帰する。また、アイドリング運転を継続するうちに駐車ブレーキが操作されたり、後退運転がなされて停車が一時的なものでないことが確認されたならば運転を停止する。
【0152】
具体的に、駐車・停車に応じた内燃機関1の運転制御を図28のフローチャートに基づいて説明する。尚、この処理は、車速が略ゼロのときに行われる。
判別データをサンプリングし(ステップ131)、一時的な停車か、あるいは例えば駐車のように長時間の停車であるかを判別する(ステップ132)。
長時間の停車と判別したときは、当分の間、運転走行再開の意志がないものと判断して、例えば、燃料遮断、点火コイル送電オフ等、内燃機関1の停止処理を実行する(ステップ133)。
【0153】
長時間の停車と判別する条件は、以下の通りである。
(1) メインスイッチ・オフ
(2) 現在セレクトレバーがパーキング位置にあるとき
(3) 直前のセレクトレバー位置がリバース(後退)で、既定時間経過のとき
(4) 直前のハンドル操作角が既定値以上で、既定時間経過のとき
(5) 駐車ブレーキが作動し、足踏みブレーキが作動しないで、既定時間経過のとき
(6) ドアロックがされたとき
(7) 商用電源からの充電が開始されたとき
また以上の条件が成立していないときには、停車と判別し、直後に走行を再開する意志があるものとしてアイドリング運転を行い、それまでの状態を維持する。
【0154】
以上が内燃機関1を最適運転条件へ誘導するための制御の内容である。
かかる構成によれば、内燃機関1の温度によって負荷率、許容回転速度が設定され、また内燃機関1の回転速度に基づいて吸気圧力が設定され、設定された負荷率、許容回転速度、吸気圧力になるように内燃機関1の運転が制御されるので、熱効率が良好となり、有害な排気を低減することが出来、さらに内燃機関1の耐久性を向上させることが出来る。
【0155】
また、内燃機関1の温度が低いときには、無負荷運転による暖機が行われるので、内燃機関1を素早く最適運転条件に移行させることが出来る。
さらに、内燃機関1が停止しても一時的な停車であると判断したときは、内燃機関1の運転の停止させないように制御することにより、例えば信号待ち等の一時的な停止の場合でも、その都度、内燃機関1の運転を停止したり、始動したりを繰り返すことがなく、排気の発生を最小限に抑えることが可能となり、内燃機関1の耐久性も向上する。
【0156】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明にかかる複合原動機の制御装置では、内燃機関は、常に、電動機の運転状態に適合した状態で運転され、内燃機関を有効かつ適切に制御することが出来る。
また、内燃機関の動力伝達遮断前の回転速度を維持しつつ、内燃機関を無負荷運転に制御した後、遮断制御を行うことにより、オーバーランを招いたり、多量の排気を発生したりすることが防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の構成図。
【図2】複合原動機の全体構成図。
【図3】内燃機関を保温するための中間ケースを示す図。
【図4】内燃機関の保温システムの構成図。
【図5】内燃機関の始動準備を行うシステムの構成図。
【図6】同上構成図。
【図7】点火コイルへの送電システムの構成図。
【図8】蓄電池の電圧による始動条件と停止条件の説明図。
【図9】内燃機関の始動・停止制御の処理を示すフローチャート。
【図10】経過データを作成する処理を示すフローチャート。
【図11】経過データを参照して実行要求を行うためのフローチャート。
【図12】始動制御の処理を示すフローチャート。
【図13】始動電動機に送電信号をセット・リセットする処理を示すフローチャート。
【図14】回転速度制御の処理を示すフローチャート。
【図15】アイドリング制御を行う処理を示すフローチャート。
【図16】運転者によって始動・停止条件を調節するシステムの説明図。
【図17】外部から内燃機関の運転範囲を調整するシステムの説明図。
【図18】動力伝達制御装置の構成を示す図。
【図19】図18の制御処理を示すフローチャート。
【図20】同上フローチャート。
【図21】一方向クラッチの構造図。
【図22】内燃機関の温度に対する許容回転速度データを示す図。
【図23】図22の特性に基づいて内燃機関の制御を示すフローチャート。
【図24】内燃機関の温度に対する負荷率データを示す図。
【図25】図24の特性に基づいて内燃機関の制御を示すフローチャート。
【図26】内燃機関の回転速度に対する出力データを示す図。
【図27】図26の特性に基づいて内燃機関の制御を示すフローチャート。
【図28】駐車・停車に応じた内燃機関の運転制御を示すフローチャート。
【符号の説明】
1 内燃機関
3 電動機
8 蓄電池
11 制御装置
Claims (1)
- 電動機と内燃機関からなり、かつ、内燃機関と電動機との間で内燃機関の動力を出力として伝達・遮断が切り換え自由な動力伝達手段を含んで構成された複合原動機の制御装置において、
前記複合原動機に要求される出力レベルを検出する出力要求レベル検出手段と、前記電動機の現在の運転状態を検出する電動機運転状態検出手段と、
前記内燃機関の現在の運転状態を検出する内燃機関運転状態検出手段と、
これら各検出手段からの信号に基づいて、内燃機関の動力伝達手段による動力の伝達・遮断に対応する運転の始動・停止、及び内燃機関の運転中の出力制御を行う制御手段と、
を備え、
かつ、前記制御手段は、前記動力伝達手段により内燃機関の動力を伝達から遮断に切り換えるときに、該動力伝達遮断前の内燃機関の回転速度を維持しつつ、内燃機関を無負荷運転に制御した後、動力伝達を遮断する構成である
ことを特徴とする複合原動機の制御装置。
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