JP3697355B2 - 蛍光性多層膜被覆粉体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は蛍光性多層膜被覆粉体に関し、詳しくは基体粒子表面に多層膜を有し、蛍光性を有するカラー印刷、塗工等のインキ、顔料、塗料として有用な蛍光性多層膜被覆粉体に関する。
【0002】
【従来の技術】
粉体の表面を他の物質の膜で被覆することにより、その粉体の性質を改善したり、その性質に多様性を与えることが知られ、従来そのための方法として種々の手段が提案されている。
例えば、物体の表面に保護や装飾のために膜を形成する被覆技術には、塗着法、沈着法、スパッタリング、真空蒸着法、電着法や陽極酸化法等多くの手段が知られている。しかし、塗着法や沈着法では膜の厚みを均一にすることが困難であり、スパッタリングや真空蒸着法では膜厚の厚い被膜を得ることが困難である。また、電着法や陽極酸化法は被処理物を電極とする関係上粉体の処理には向かないという問題点を有している。
種々の技術分野における進歩に伴い、特異な性質を備えた粉体、特に金属粉体或は金属化合物粉体を求める要望が増しており、粉体、特に金属粉体または金属化合物粉体だけが備える性質の他に別の性質を合わせ持ち、複合した機能を有する粉体が求められている。これらの粉体を製造するには、基体粒子の上に均一な厚さの金属酸化物膜等を複数層設けることが考えられた。
【0003】
上記のような新しい要求に応えられる複合した性質を有し、複合した機能を果たし得る粉体、特に金属または金属化合物粉体を提供するための金属酸化物の形成方法の有用なものとして、先に、本発明者らは、金属粉体又は金属酸化物粉体を金属アルコキシド溶液中に分散し、該金属アルコキシドを加水分解することにより、金属酸化物の皮膜を形成し、金属または金属化合物の基体の表面に、均一な0.01〜20μmの厚みの、前記基体を構成する金属とは異種の金属を成分とする金属酸化物膜を有する粉体を発明した(特開平6ー228604号公報)。
【0004】
この粉体において、前記の金属酸化物膜を複数層設ける場合には、前記膜の各層の厚さを調整することにより特別の機能を与えることができるものであって、例えば、基体の表面に、屈折率の異なる被覆膜を、光の4分の1波長に相当する厚さで設けるようにすると、光はすべて反射される。この手段を鉄、コバルト、ニッケルなどの金属粉末或は金属の合金粉末、或いは窒化鉄の粉末などの磁性体を基体とするものに適用すると、光を全反射して白色に輝く磁性トナー用磁性粉体を得ることができる。さらに、その粉体の上に着色層を設け、その上に樹脂層を設ければ、カラー磁性トナーが得られることを開示している(特開平7ー90310号公報)。
【0005】
また、本発明者らは多層膜の物質の組み合わせおよび膜厚を制御することにより、多層膜の反射光干渉波形を調整できることを見出し、染料や顔料を用いずとも、長期保存においても安定な色調を有する多層膜被覆粉体を提供することを開示した(WO96/28269)。
【0006】
前記したように、本発明者らは金属粉体又は金属化合物粉体の表面に金属酸化物や金属の被膜を形成して、基体になる金属又は金属化合物粉体が備えている性質の他に別の性質を付与して機能性の高い金属又は金属化合物粉体を開発することに努めてきた。
近年需要が伸びているギフト券やチケットカードなどのカラー印刷やカラー磁気印刷の場合には、着色の優美さに加えて、目視や磁気読み取りのほかに偽造防止のための特殊な機能が求められている。この動向に対応して、上記の多層膜の反射光干渉波形を調整することにより、染料や顔料を用いずとも青、緑、黄色などの美麗で安定な色調のインキとなり、しかも、可視光域以外にも干渉反射ピークを有するため、紫外線や赤外線による反射光を用いた読み取り機と組み合せることで、目視や磁気読み取り以外の新たな方式によって印刷物の偽造防止性能を更に高めることができる機能をも有するカラーインキ組成物を提供した(特開平10ー60350号公報)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のカラーインキ組成物においては、紫外線や赤外線による反射光を用いた読み取り機と組み合せることで、真偽を判別するため、検査機器が必要である。容易に真偽を判別できることが、機能的に必須であり、改良の余地があった。
従って、本発明の目的は、これらの問題点を解決し、染料や顔料を加えずとも、青、緑、黄色などの単色の美麗で安定な色調のカラーインキの色材として用いることができ、しかも検査機器を用いずに、例えば、室内で蛍光灯あるいは赤外線ランプのような光源を照射するなどの簡便な方式によって印刷物等の偽造防止性能を更に高めることができる機能をも有する蛍光性多層膜被覆粉体を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究を進めた結果、粉体表面に屈折率の異なる多層の薄膜を形成し多層膜の反射光干渉波形を調整すること、およびその多層膜の少なくとも一層にその色とは異なる、蛍光を発する顔料を含有させるか、または光干渉に関与しない蛍光物質の層(膜)を形成することにより、染料や顔料を用いずとも青、緑、黄色などの美麗で安定な色調のインキとなり、しかも同時に蛍光の有無による印刷物の識別で偽造防止が可能となることを見い出し、本発明を完成するに至った。
また、上記粉体の基体として強誘電体や導電体など様々な性質を有するものを活用することができ、基体として磁性体を使用した場合でも、該多層膜被覆粉体が磁性を損なわずに鮮やかな着色および蛍光発色性が得られることを見い出した。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)基体粒子上に複数の被覆膜を有する多層膜被覆粉体において、該多層膜が光干渉作用を示し、該被覆膜の少なくとも1層が蛍光物質を主成分とし且つ可視光干渉に関与することを特徴とする蛍光性多層膜被覆粉体。
(2)前記基体粒子が磁性粒子であることを特徴とする前記(1)記載の蛍光性多層膜被覆粉体、である。
【0010】
本発明の蛍光性多層膜被覆粉体は上記のように、蛍光を有するカラー印刷、塗工等のインキ、顔料または塗料として有用であり、基体として磁性体を用いた場合には、高性能カラー磁気印刷用インキの色材としても適用可能であり、可視光、蛍光発色および磁気の3種の識別機能をもち、印刷物の偽造防止効果を高めることが可能である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明において用いる多層膜被覆粉体の基体としては特に限定されるものではなく、磁性、強誘電性、導電性など様々な性質を有する粉体を用いることができる。物質の種類としては、金属、金属化合物、有機物、無機物など広範な物質を用いることができる。
金属としては、鉄、ニッケル、クロム、チタン、アルミニウム等の金属、また鉄−ニッケルや鉄−コバルト合金等の金属合金、さらには鉄・ニッケル合金窒化物や鉄・ニッケル・コバルト合金窒化物、また金属酸化物としては例えば鉄、ニッケル、クロム、チタン、アルミニウム、ケイ素(この場合ケイ素は金属に分類するものとする)等の酸化物の他、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属酸化物あるいはこれらの複合酸化物、粘土類、ガラス類等が挙げられる。
【0012】
本発明においては、その目的の一つがカラー磁性トナーやカラー磁性インクのような磁性も共有する粉体を製造することにあるので、その場合本発明の蛍光性多層膜被覆粉体の基体としては強磁性体を使用することが好ましい。強磁性体としては鉄、ニッケル、クロム、チタン、アルミニウム等の透磁率の大きい金属でもよいが、フェライト、γ−酸化鉄のような強磁性酸化物や強磁性合金も使用される。
また、有機物としては樹脂粒子が好ましく、その具体例としては、セルロースパウダー、酢酸セルロースパウダー、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリエステル、メラミン樹脂、ポリウレタン、酢酸ビニル樹脂、ケイ素樹脂、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル、スチレン、エチレン、プロピレン及びこれらの誘導体の重合または共重合により得られる球状または破砕の粒子などが挙げられる。特に好ましい樹脂粒子はアクリル酸またはメタアクリル酸エステルの重合により得られる球状のアクリル樹脂粒子である。
更に、無機物としてはシラスバルーン(中空ケイ酸粒子)などの無機中空粒子、微小炭素中空球(クレカスフェアー)、電融アルミナバブル、アエロジル、ホワイトカーボン、シリカ微小中空球、炭酸カルシウム微小中空球、炭酸カルシウム、パーライト、タルク、ベントナイト、カオリン等を用いることができる。
【0013】
粉体核粒子の形状としては、球体、亜球状態、正多面体等の等方体、直方体、回転楕円体、菱面体、板状体、針状体(円柱、角柱)などの多面体、さらに粉砕物のような全く不定形な粉体も使用可能である。
これらの基体は、粒径については特に限定するものでないが、0.01μm〜数mmの範囲のものが好ましい。
また、基体粒子の比重としては、0.1〜10.5の範囲のものが用いられるが、流動性、浮遊性の面から0.1〜5.5が好ましく、より好ましくは0.1〜2.8、更に、好ましくは0.5〜1.8の範囲である。基体の比重が0.1未満では液体中での浮力が大きすぎ、膜を多層あるいは非常に厚くする必要があり、不経済である。一方、10.5を超えると、浮遊させるための膜が厚くなり、同様に不経済である。
【0014】
本発明においては、屈折率が互いに異なる複数の被膜層を用い、上記基体粒子を、各被膜層の屈折率および層厚を適宜選択して被覆することにより、その干渉色により着色させることができる。
各被膜層を構成する材料は無機金属化合物、金属または合金、および有機物のうちから任意に選択することが望ましい。
被膜層を構成する無機金属化合物としては、その代表的なものとして金属酸化物が挙げられ、具体例として例えば鉄、ニッケル、クロム、チタン、アルミニウム、ケイ素、カルシウム、マグネシウム、バリウムなどの酸化物、あるいはこれらの複合酸化物が挙げられる。さらに、金属酸化物以外の金属化合物としてはフッ化マグネシウム、鉄窒化物などの金属窒化物、金属炭化物などが挙げられる。
被膜層を構成する金属単体としては金属銀、金属コバルト、金属ニッケル、金属鉄などが挙げられ、金属合金としては鉄・ニッケル合金、鉄・コバルト合金、鉄・ニッケル合金窒化物、鉄・ニッケル・コバルト合金窒化物などが挙げられる。
【0015】
被膜層を構成する有機物としては、基体を構成する上記の有機物と同一でも異なってもよく、特に限定されるものではないが、好ましくは樹脂である。樹脂の具体例としては、セルロース、酢酸セルロース、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリエステル、メラミン樹脂、ポリウレタン、樹脂ビニル樹脂、ケイ素樹脂、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル、スチレン、エチレン、プロピレン及びこれらの誘導体の重合体または共重合体などが挙げられる。
このように、被膜層を構成する材料として種々の材料を使用することができるが、それらの材料の組合せは各被膜層の屈折率を考慮した上で、用途に応じて適宜選択することが必要である。
本発明に係わる蛍光性多層膜被覆粉体の粒径は、特に限定されず、目的に応じて適宜調整することができるが、通常は0.01μm〜数mmの範囲である。
【0016】
本発明において、その1回に形成させる被覆膜の膜の厚さとしては、5nm〜10μmの範囲とすることが可能であり、従来の形成法より厚くすることができる。
複数回に分けて形成する被覆膜の合計の厚さとしては、前記したカラー粉体の場合、その干渉による反射率が良い被覆膜を形成するためには、10nm〜20μmの範囲が好ましい、さらに好ましくは20nm〜5μmの範囲とすることである。粒径が制限されるなど特に薄い膜厚で可視光を干渉反射させるためには0.02〜2.0μmの範囲とすることが好ましい。
【0017】
また、前記複数の被膜層を構成する各単位被膜層は、特定の同一波長の干渉反射ピークまたは干渉透過ボトムを有するように各単位被膜層の膜厚を設定したものである。さらに好ましくは、各単位被膜層の膜厚の設定は、下記式(1):
N×d=m×λ/4 (1)
〔但し、Nは複素屈折率、dは基本膜厚、mは整数(自然数)、λは前記干渉反射ピークまたは干渉透過ボトムの波長を表し、Nは下記式(2):
N=n+iκ (2)
(nは各単位被膜層の屈折率、iは複素数、κは減衰係数を表す)〕
を満たす基本膜厚とし、屈折率の減衰係数κによる位相ずれ、膜界面での位相ずれ、屈折率の分散および粒子形状に依存するピークシフトからなる関数より、各単位被膜層が前記特定の同一波長の干渉反射ピークまたは干渉透過ボトムを有するように、該各単位被膜層の実膜厚を補正したものである。
【0018】
その膜の形成方法としては、その形成する物質に応じて次のような方法を挙げることができるが、その外の方法を使用することもできる。
(1)有機物膜(樹脂膜)を形成する場合
a.液相中での重合法
基体となる粒子を分散させて乳化重合させることにより、その粒子の上に樹脂膜を形成させる方法などが使用できる。
b.気相中での製膜法(CVD)(PVD)
(2)無機金属化合物膜を形成する場合
a.液相中での固相析出法
基体となる粒子を金属アルコキシド溶液中に分散し、金属アルコキシドを加水分解することにより、その粒子の上に金属酸化物膜を形成する方法が好ましく、緻密な金属酸化物膜を形成することができる。また、金属塩水溶液の反応により粒子の上に金属酸化物膜等を形成することができる。
b.気相中での製膜法(CVD)(PVD)
【0019】
(3)金属膜あるいは合金膜を形成する場合
a.液相中での金属塩の還元法
金属塩水溶液中で金属塩を還元して金属を析出させて金属膜を形成する、いわゆる化学メッキ法が使用される。
b.気相中での製膜法(CVD)(PVD)
金属の真空蒸着などにより、粒子の表面に金属膜を形成することができる。
【0020】
本発明の蛍光性多層膜被覆粉体において、蛍光物質を有する被覆層(以下、蛍光発色層という)とは、前記多層膜被覆粉体に蛍光発色性を付与する層である。蛍光発色層の含有物質としては、前記多層膜被覆粉体の蛍光発色性、即ち、紫外線光や可視光を照射することにより、容易に判別できる蛍光を発する特性を有するものであれば特に限定されないが、長期に蛍光発色性を保持できる蛍光物質が好ましい。
蛍光物質は、その機能が、特定の波長に電磁波(光)によって一時的に励起され、特定の波長の光(特に可視光)を発光する物質を言い、光源無しでは発光しないものである。
前記蛍光発色層に適用される蛍光物質としては、外部のエネルギーを吸収して蛍光を発する染料の総称である蛍光染料または蛍光顔料であり、その染料自体の色のほかに、ほぼ同一波長の蛍光が加わるので、光輝性の色彩を呈するものであり、例えば、緑の蛍光を発する黄色酸性染料のC.I.Acid Yellow7、黄〜橙の蛍光を発する赤色塩基性染料のC.I.Basic Red等である。
【0021】
上記蛍光発色層に適用される蛍光物質の具体例として次のものが挙げられるが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
具体的には、例えば、有機蛍光顔料としては、ウラニン、エオシン、ジアミノチルベン、チオフラビンT、ローダミンB、インターナショナルオレンジ等が挙げられ、無機蛍光顔料としては、タングステン酸カルシウム、鉛含有珪酸バリウム、ユーロピウム含有燐酸ストロンチウム、ユーロピウム含有イットリア、セリウム含有イットリア、銅あるいは銀、錫、マンガン、砒素、アルミニウム、カドミウムの一種あるいは複数含有硫化亜鉛、マンガン含有ガリウム酸マグネシウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、酸素欠損酸化亜鉛、ユーロピウム含有酸化亜鉛、セリウム含有酸化亜鉛、セシウム含有酸化亜鉛、マンガンあるいは砒素含有珪酸亜鉛、ビスマス含有硫化亜鉛カドミウム、ビスマス含有硫化カルシウムストロンチウム等が挙げられる。
【0022】
本発明において、蛍光発色層は、蛍光性多層膜被覆粉体の基体となる粒子の表面、基体の表面上に形成された光干渉性多層被覆膜中、または多層膜被覆粉体の表面上のいずれかに、形成させることができる。
そのための蛍光発色層の構成としては、下記の三つの方法がある。
(1)蛍光物質を主成分とする層を設け、この蛍光発色層が可視光干渉に関与する。
(2)蛍光物質を主成分とする層を設け、この蛍光発色層は可視光干渉に関与しない。(可視光干渉の効果を減じないことが好ましい)。
(3)光干渉に関与する被覆膜中に蛍光物質を分散させて含有した層として設ける。
【0023】
上記(1)、(2)および(3)の蛍光発色層の形成法の概要としては、次の方法が挙げられる。
(1)蛍光物質を主成分とする層を設け、この蛍光発色層が可視光干渉に関与する場合、屈折率の大小から干渉の高屈折率層あるいは低屈折率層に用い、干渉条件が合うように屈折率と膜厚を設計し、可視光干渉反射が起こり着色され、同時に蛍光を発する膜とする。
製膜はゾル−ゲル法や水溶液からの固層析出等の表面への析出を利用する方法がある。
これらの得られた粉体を必要によっては熱処理することが望ましい。膜物質が熱分解する場合には、最外層に蛍光発色層を形成することが望ましい。
【0024】
(2)光干渉に関与しない蛍光物質を主成分とする層を設け、この蛍光発色層が可視光干渉に関与しない場合、最外層に干渉が起こらないように十分薄く蛍光物質膜を形成する。この場合蛍光物質膜は微粒子からなる膜でもよい。
製膜はゾル−ゲル法や水溶液からの固層析出等の表面への析出を利用する方法がある。
また、溶媒中に分散した蛍光物質微粒子(被覆される基体となる粒子より粒径の小さい蛍光質粒子)を混合し、ヘテロ凝集などで付着させる方法がある。
上記の二つの方法の場合、これらの得られた粉体を必要によっては熱処理することが望ましい。膜物質が熱分解する場合には、最外層に蛍光発色層を形成することが望ましい。
【0025】
(3)光干渉に関与する被覆膜中に蛍光物質を分散させて含有した層として設ける場合の一つの方法は、原料組成物に蛍光物質を溶解または分散により混合し、これを用いて被膜形成を行う。
干渉の高屈折率層あるいは低屈折率層に蛍光物質を含有させるために、製膜時に原料を含む溶媒中に蛍光物質微粒子(被覆される基体となる粒子より粒径の小さい蛍光質粒子)を混合し、製膜し1層以上の層中に粒子を含有させる。この場合より外側の層に含有させること、また、多くの層に含有させることが望ましい。更に、ヘテロ凝集等により蛍光物質微粒子を基体粒子に吸着させてから製膜することも可能である。
【0026】
(4)光干渉に関与する被覆膜中に蛍光物質を分散させて含有した層として設ける場合の他の方法は、多層膜被覆粉体を形成し、熱処理をした後、多層膜被覆粉体を蛍光物質溶解液に浸漬し、含浸させる。
最外層を熱処理する場合、例えば、製膜時に添加剤をいれたり、温度や熱処理時間を長くすることにより、最外層を多孔質とし、その空隙に溶媒に分散あるいは溶解した蛍光物質を含浸させることにより形成する。
【0027】
次に一例として、高屈折率の金属酸化物と、低屈折率の蛍光物質を含む金属酸化物の交互多層膜を形成する方法について具体的に説明する。まず、チタンあるいはジルコニウムなどのアルコキシドを溶解したアルコール溶液に基体粒子を分散し、攪拌させながら水とアルコール及び触媒の混合溶液を滴下し、前記アルコキシドを加水分解することにより、基体粒子表面に高屈折率膜として酸化チタン膜あるいは酸化ジルコニウム膜を形成する。その後、この粉体を固液分離し、乾燥後、熱処理を施す。乾燥手段としては、真空加熱乾燥、真空乾燥、自然乾燥のいずれでもよい。また、雰囲気調整しながら不活性雰囲気中で噴霧乾燥機などの装置を用いることも可能である。熱処理は、酸化しない被膜組成物は空気中で、酸化しやすい被膜組成物は不活性雰囲気中で、150〜1100℃(粉体核粒子が無機粉体の場合)または150〜500℃(粉体核粒子が無機粉体以外の場合)で1分〜3時間熱処理する。続いて、ケイ素アルコキシド、アルミニウムアルコキシドなどの、酸化物になったときに低屈折率となる金属アルコキシドおよび蛍光物質を溶解したアルコール溶液に、前記の高屈折率膜を形成した粉体を分散し、攪拌させながら水とアルコール及び触媒の混合溶液を滴下し、前記アルコキシドを加水分解することにより、前記高屈折率膜被覆粉体表面に低屈折率膜として酸化ケイ素あるいは酸化アルミニウムの膜を形成する。その後、粉体を固液分離し、真空乾燥後、前記と同様に熱処理を施す。この操作により、粉体基体粒子の表面に2層の、高屈折率の金属酸化物膜を形成する操作を繰り返すことにより、多層の金属酸化物膜を有する蛍光性多層膜被覆粉体が得られる。
【0028】
また、基体粒子の表面に形成する屈折率の異なる交互被覆膜の各層の厚さを調整することにより特別の機能を与えることができる。例えば、基体粒子の表面に、屈折率の異なる交互被覆膜を、次の式(3)を満たすように、被膜を形成する物質の屈折率nと可視光の波長の4分の1の整数m倍に相当する厚さdを有する交互膜を適当な厚さと膜数設ける。これにより、特定の波長λの光(フレネルの干渉反射を利用したもの)が反射または吸収される。
nd=mλ/4 (3)
この作用を利用して、基体粒子の表面に目標とする可視光の波長に対し式(3)を満たすような膜の厚みと屈折率を有する膜を製膜し、さらにその上に屈折率の異なる膜を被覆することを1度あるいはそれ以上交互に繰り返すことにより可視光域に特有の反射あるいは吸収波長幅をする膜が形成される。このとき製膜する物質の順序は次のように決める。まず基体粒子自体の屈折率が高いときには第1層目が屈折率の低い膜、逆の関係の場合には第1層目が屈折率の高い膜とすることが好ましい。
【0029】
膜厚は、膜屈折率と膜厚の積である光学膜厚の変化を分光光度計などで反射波形として測定、制御するが、反射波形が最終的に必要な波形になるように各層の膜厚を設計する。例えば、多層膜を構成する各単位被膜の反射波形のピーク位置がずれた場合に白色の粉体となるが、各単位被膜の反射波形のピーク位置を精密に合わせると、染料や顔料を用いずとも青、緑、黄色などの単色の着色粉体とすることができる。
【0030】
ただし、実際の粉体の場合、粉体の粒径、形状、膜物質および核粒子物質の相互の界面での位相ずれ及び屈折率の波長依存性によるピークシフトなどを考慮して設計する必要がある。例えば、核粒子の形状が平行平板状である場合には、粒子平面に形成される平行膜によるフレネル干渉は上記式(3)のnを次の式(4)のNに置き換えた条件で設計する。特に、粉体の形状が平行平板状である場合でも金属膜が含まれる場合には、式(4)の金属の屈折率Nに減衰係数κが含まれる。なお、透明酸化物(誘電体)の場合にはκは非常に小さく無視できる。
N=n+iκ(iは複素数を表す) (4)
この減衰係数κが大きいと、膜物質および核粒子物質の相互の界面での位相ずれが大きくなり、さらに多層膜のすべての層に位相ずれによる干渉最適膜厚に影響を及ぼす。
【0031】
これにより幾何学的な膜厚だけを合わせてもピーク位置がずれるため、特に単色に着色する際に色が淡くなる。これを防ぐためには、すべての膜に対する位相ずれの影響を加味し、コンピュータシミュレーションであらかじめ膜厚の組合せが最適になるように設計する。
さらに、金属表面にある酸化物層のための位相ずれや、屈折率の波長依存性によるピークシフトがある。これらを補正するためには、分光光度計などで、反射ピークや吸収ボトムが最終目的膜数で目標波長になるよう最適の条件を見出すことが必要である。
【0032】
球状粉体などの曲面に形成された膜の干渉は平板と同様に起こり、基本的にはフレネルの干渉原理に従う。したがって、着色方法も単色に設計することができる。ただし曲面の場合には、粉体に入射し反射された光が複雑に干渉を起こす。これらの干渉波形は膜数が少ない場合には平板とほぼ同じである。しかし、総数が増えると多層膜内部での干渉がより複雑になる。多層膜の場合もフレネル干渉に基づいて、反射分光曲線をコンピュータシミュレーションであらかじめ膜厚の組合せが最適になるよう設計することができる。特に基体粒子表面への被膜形成の場合、基体粒子表面とすべての膜に対する位相ずれの影響を加味し、コンピュータシミュレーションであらかじめ膜厚の組合せが最適になるよう設計する。さらに、基体粒子表面にある皮膜層のためのピークシフトや屈折率の波長依存性によるピークシフトも加味する。実際のサンプル製造では設計した分光曲線を参考にし、実際の膜においてこれらを補正するために、分光光度計などで反射ピークや吸収ボトムが最終目的膜数で目標波長になるよう膜厚を変えながら最適の条件を見出さねばならない。不定形状の粉末に着色する場合も多層膜による干渉が起こり、球状粉体の干渉多層膜の条件を参考にし基本的な膜設計を行う。上記の多層膜を構成する各単位被膜のピーク位置は各層の膜厚により調整することができ、膜厚は溶液組成および反応時間および原料の添加回数による調整することができ所望の色に着色することができる。以上のように、反射ピークや吸収ボトムが最終目的膜数で目標波長になるよう膜形成溶液などの製膜条件を変えながら最適の条件を見出すことにより、単色の粉体を得ることができる。また、多層膜を構成する物質の組合せおよび各単位被膜の膜厚を制御することにより多層膜干渉による発色を調整することができる。これにより、染料や顔料を用いなくても粉体を所望の色に鮮やかに着色することができる。
【0033】
次にかくして得られる本発明に係る蛍光性多層膜被覆粉体を用いてカラーインキ組成物を調製する方法について説明する。
本発明において用いるインキ用分散媒としては、カラー印刷用あるいはカラー磁気印刷に用いられる従来公知のワニスを用いることができ、例えば液状ポリマー、有機溶媒に溶解したポリマーやモノマーなどを粉体の種類やインキの適用方法、用途に応じて適宜に選択して使用することができる。
【0034】
液状ポリマーとしては、ポリペンタジエン、ポリブタジエン等のジエン類、ポリエチレングリコール類、ポリアミド類、ポリプロピレン類、ワックス類あるいはこれらの共重合体編成体等を挙げることができる。
有機溶媒に溶解するポリマーとしては、オレフィン系ポリマー類、オリゴエステルアクリレート等のアクリル系樹脂類、ポリエステル類、ポリアミド類、ポリイソシアネート類、アミノ樹脂類、キシレン樹脂類、ケトン樹脂類、ジエン系樹脂類、ロジン変性フェノール樹脂、ジエン系ゴム類、クロロプレン樹脂類、ワックス類あるいはこれらの変性体や共重合体などを挙げることができる。
有機溶媒に溶解するモノマーとしては、スチレン、エチレン、ブタジエン、プロピレンなどを挙げることができる。
有機溶媒としては、エタノール、イソプロパノール、ノルマルプロパノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、ケロシン、ベンジン炭化水素類、エステル類、エーテル類あるいはこれらの変性体や共重合体などを挙げることができる。
【0035】
本発明の蛍光性多層膜被覆粉体を用いたカラーインキ組成物には、そのほか着色剤あるいは調色剤として、油性染料や、乾燥の遅い樹脂には固化剤、粘性を上げるために増粘剤、粘性を下げるための流動化剤、粒子同志の分散のために分散剤などの成分を含ませることができる。
本発明の蛍光性多層膜被覆粉体によるカラーインキ組成物は、単一の粉体ないしは分光特性の異なる複数の粉体の組み合せにより、カラー印刷やカラー磁気印刷に適用できるほか、3原色の粉体を用いて、可視光、蛍光および磁気の3種の識別機能をもち、印刷物の偽造防止用カラー磁性インキなどセキュリティ機能を必要とする他の用途に適用することができる。
【0036】
【実施例】
以下に本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、勿論本発明の範囲は、これらによって限定されるものではない。
〔実施例1〕
(磁性体を用いた蛍光性多層膜被覆粉体1;第2層目チタニアコーティングに蛍光体含有の場合)
(1層目シリカコーティング)
BASF製カーボニル鉄粉(平均粒径1.8μm,10kOeでの磁化は203emu/g)10gをエタノール100ml中に分散し、容器をオイルバスで加熱して液の温度を55℃に保持した。これにシリコンエトキシド6gとアンモニア水(29%)8gおよび水8gを添加し、攪拌しながら2時間反応させた。反応後エタノールで希釈洗浄し、濾過し、真空乾燥機で110℃3時間乾燥した。乾燥後、回転式チューブ炉を用いて加熱処理を650℃で30分施しシリカコート粉体Aを得た。得られたシリカコート膜の膜厚は98nmであり、分散状態は非常に良かった。
【0037】
(2層目チタニアコーティング)
加熱処理後再度、得られたシリカコート粉体A1 10g及び蛍光物質である銅含有硫化亜鉛カドミウム微粒子(平均粒径0.01μm)8gをエタノール200mlに分散した。容器をオイルバスで加熱して液の温度を55℃に保持した。これにチタンエトキシド4.7g加え攪拌する。これにエタノール30mlと水8.0gの混合溶液を60分かけて滴下した後、2時間反応させ、真空乾燥および加熱処理を施しチタニア−シリカコート粉体A2を得た。得られたチタニア−蛍光体銅含有硫化亜鉛カドミウム微粒子/シリカコート粉体A2は分散性が良く、それぞれ単粒子であった。チタニア−シリカコート粉体A2のチタニア膜の厚さは77nmであった。
またこの粉体の分光反射曲線のピーク波長は450nmであり、ピーク波長での反射率は35%で、鮮やかなシアン色であった。
さらにこの粉体の10kOeでの磁化は167emu/gであった。
【0038】
(3層目シリカコーティング)
チタニア−シリカコート粉体A2 10gをエタノール100ml中に分散し、容器をオイルバスで加熱して液の温度を55℃に保持した。これにシリカコンエトキシド6gとアンモニア水(29%)8gおよび水8gを添加し、攪拌しながら2時間反応させた。反応後エタノールで希釈洗浄し、濾過し、真空乾燥機で110℃3時間乾燥した。乾燥後、回転式チューブ炉を用いて加熱処理を650℃で30分施しシリカ−チタニアコード粉体A3を得た。得られたシリカ−チタニアコート粉体A3の膜厚は99nmであり、分散状態は非常に良かった。
【0039】
(4層目チタニアコーティング)
加熱処理後再度、得られたシリカ−チタニアコート粉体A3 10gをエタノール200mlを加え分散し、容器をオイルバスで加熱して液の温度を55℃に保持した。これにチタンエトキシド5.3g加え攪拌する。これにエタノール30mlと水8.0gの混合溶液を60分かけて滴下した後、2時間反応させ、真空乾燥および加熱処理を施しチタニア−シリカコート粉体A4を得た。得られたチタニア−シリカコート粉体A4は分散性が良く、それぞれ単粒子であった。チタニア−シリカコート粉体A4のチタニア膜の厚さは75nmであった。
この粉体の反射ピークは553nmで、反射率は47%で鮮やかな緑色であった。
さらにこの粉体の10kOeでの磁化は146emu/gであった。
【0040】
(カラーインキ組成物の調製および分光特性)
このようにして得られた粉体を、ポリエステル樹脂系ワニス35部に対し、粉体65部で混合した後、ブレードコーターで白紙に塗布した。
塗布した紙の反射ピークは可視光域では553nmで、反射率は53%であった。また、蛍光灯を照らすと、黄色の蛍光を発色した。
【0041】
〔比較例1〕
(磁性体を用いた多層膜被覆粉体1;蛍光体を含有しない場合)
実施例1と同じ操作を行った。但し、2層目チタニアコーティングにおける反応液中に蛍光体銅含有硫化亜鉛カドミウム微粒子を分散、混合をしなかった。
塗布した紙の反射ピークは可視光域では553nmで、反射率は53%であったが、蛍光灯を照らしても、蛍光の発色は認められなかった。
【0042】
〔実施例2〕
(磁性体を用いた蛍光性多層膜被覆粉体2;蛍光体含浸の場合)
(1層目シリカコーティング)
BASF製カーボニル鉄粉(平均粒径1.8μm,10kOeでの磁化は203emu/g)20gを、あらかじめエタノール158.6gにシリコンエトキシド3.0gを溶解したエタノール溶液に分散させた後、攪拌しながら、あらかじめ用意しておいたアンモニア水8.0gと脱イオン水8.0gの混合溶液を添加した。添加後5時間常温で反応し、十分のエタノールで洗浄後、真空乾燥し、さらに回転式チューブ炉を用いて、窒素雰囲気で500℃で、30分熱処理し、シリカコートカーボニル鉄粉B1を得た。
【0043】
(2層目チタニアコーティング)
シリカコートカーボニル鉄粉B1 20gを、あらかじめエタノール198.3gにチタンエトキシド3.0gを溶解したエタノール溶液に分散させた後、攪拌しながら、あらかじめ用意しておいた脱イオン水3.0gとエタノール23.7gの混合溶液を1時間かけて滴下した。滴下後5時間常温で反応し、十分のエタノールで洗浄後、真空乾燥し、さらに回転式チューブ炉を用いて、窒素雰囲気で500℃で、30分熱処理し、チタニア−シリカコートカーボニル鉄粉B2を得た。
【0044】
(3層目シリカコーティング)
チタニア−シリカコートカーボニル鉄粉B2 20gを、あらかじめエタノール158.6gにシリコンエトキシド3.0gを溶解したエタノール溶液に分散させた後、攪拌しながら、あらかじめ用意しておいたアンモニア水8.0gと脱イオン水8.0gの混合溶液を添加した。添加後5時間常温で反応し、十分のエタノールで洗浄後、真空乾燥し、さらに回転式チューブ炉を用いて、窒素雰囲気で500℃で、30分熱処理し、シリカ−チタニアコートカーボニル鉄粉B3を得た。
【0045】
(4層目チタニアコーティング)
シリカ−チタニアコートカーボニル鉄粉B3 20gを、あらかじめエタノール198.3gにチタンエトキシド3.0gを溶解したエタノール溶液に分散させた後、攪拌しながら、あらかじめ用意しておいた脱イオン水3.0gとエタノール23.7gの混合溶液を1時間かけて滴下した。滴下後5時間常温で反応し、十分のエタノールで洗浄後、真空乾燥し、さらに回転式チューブ炉を用いて、窒素雰囲気で500℃で、30分熱処理し、チタニア−シリカコートカーボニル鉄粉B4を得た。
【0046】
(5層目シリカコーティング)
チタニア−シリカコートカーボニル鉄粉B4 20gを、あらかじめエタノール158.6gにシリコンエトキシド3.0gを溶解したエタノール溶液に分散させた後、攪拌しながら、あらかじめ用意しておいたアンモニア水8.0gと脱イオン水8.0gの混合溶液を添加した。添加後5時間常温で反応し、十分のエタノールで洗浄後、真空乾燥し、さらに回転式チューブ炉を用いて、窒素雰囲気で500℃で、30分熱処理し、シリカ−チタニアコートカーボニル鉄粉B5を得た。
【0047】
(6層目チタニアコーティング)
シリカ−チタニアコートカーボニル鉄粉B5 20gを、あらかじめエタノール198.3gにチタンエトキシド3.0gを溶解したエタノール溶液に分散させた後、攪拌しながら、あらかじめ用意しておいた脱イオン水3.0gとエタノール23.7gの混合溶液を1時間かけて滴下した。滴下後5時間常温で反応し、十分のエタノールで洗浄後、真空乾燥し、さらに回転式チューブ炉を用いて、窒素雰囲気で500℃で、30分熱処理し、チタニア−シリカコートカーボニル鉄粉B6を得た。
【0048】
かくして得られた多層膜被覆粉体を蛍光物質であるインターナショナルオレンジを酢酸エチルに溶解した濃度0.5g/100gの溶液に浸漬し、固液分離後、真空乾燥し、蛍光体含浸チタニア−シリカコートカーボニル鉄粉B7を得た。
【0049】
(カラーインキ組成物の調製および分光特性)
これをポリエステル樹脂系ワニス10gに対し、チタニア−シリカコートカーボニル鉄粉B72gを、さらに溶剤としてキシレン7gを混合し、インキとし、このインキ5gをブレードコーターでA4判アート紙に一様にコートし乾燥した。
乾燥後得られた塗布紙の色は460nmで、反射率64%の鮮やかな青色となった。また、蛍光灯を照らすと、オレンジ色の蛍光を発色した。
【0050】
〔実施例3〕
(磁性体を用いた蛍光性多層膜被覆粉体3、蛍光体単独層被覆の場合)
(1層目シリカコーティング)
BASF製カーボニル鉄粉(平均粒径1.8μm,10kOeでの磁化は203emu/g)20gを、あらかじめエタノール158.6gにシリコンエトキシド3.5gを溶解したエタノール溶液に分散させた後、攪拌しながら、あらかじめ用意しておいたアンモニア水8.0gと脱イオン水8.0gの混合溶液を添加した。添加後5時間常温で反応し、十分のエタノールで洗浄後、真空乾燥し、さらに回転式チューブ炉を用いて、窒素雰囲気で800℃で、30分熱処理し、冷却し、シリカコートカーボニル鉄粉C1を得た。
【0051】
(2層目硫化亜鉛コーティング)
セパラブルフラスコにシリカコートカーボニル鉄粉C120gを、あらかじめエタノール198.3gに対し、亜鉛エトキシド5.6gを溶解したエタノール溶液に分散させた後、攪拌しながら、硫化水素ガスを100ml/min.の割合でバブル通気し、更に、あらかじめ用意しておいた3%硫酸第1銅エタノール溶液55.9gを1時間かけて滴下した。滴下後、4時間常温で反応し、十分のエタノールで洗浄後、真空乾燥し、さらに回転式チューブ炉を用いて、窒素雰囲気で800℃で、30分熱処理し、冷却し、シリカコートカーボニル鉄粉C2を得た。この硫化亜鉛の厚さは55nmであり、この粉体の反射ピークは420nmで、反射率30%の青色であった。この粉体に蛍光灯を当てると、緑色の蛍光色がみられた。
【0052】
(3層目シリカコーティング)
シリカ−硫化亜鉛コートカーボニル鉄粉C220gを、あらかじめエタノール158.6gにシリコンエトキシド3.5gを溶解したエタノール溶液に分散させた後、攪拌しながら、あらかじめ用意しておいたアンモニア水8.0gと脱イオン水8.0gの混合溶液を添加した。添加後5時間常温で反応し、十分のエタノールで洗浄後、真空乾燥し、さらに回転式チューブ炉を用いて、窒素雰囲気で800℃で、30分熱処理し、冷却し、シリカ−硫化亜鉛コートカーボニル鉄粉C3を得た。
【0053】
(4層目硫化亜鉛コーティング)
セパラブルフラスコにシリカ−硫化亜鉛コートカーボニル鉄粉C320gを、あらかじめエタノール198.3gに対し、亜鉛エトキシド5.6gを溶解したエタノール溶液に分散させた後、攪拌しながら、硫化水素ガスを100ml/min.の割合でバブル通気し、更に、あらかじめ用意しておいた3%硫酸第1銅エタノール溶液55.9gを1時間かけて滴下した。滴下後、4時間常温で反応し、十分のエタノールで洗浄後、真空乾燥し、さらに回転式チューブ炉を用いて、窒素雰囲気で800℃で、30分熱処理し、冷却し、シリカ−硫化亜鉛コートカーボニル鉄粉C4を得た。この硫化亜鉛の厚さは55nmであり、この粉体の反射ピークは385nmで、反射率41%の紫色であった、この粉体に蛍光灯を当てると、緑色の蛍光色がみられ、2層より明るくなった。
【0054】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、染料や顔料を用いずとも青、緑、黄色などの美麗で安定な色調のインキとなる。しかも特別な読取り機器を用いずに、蛍光の有無による印刷物の識別で偽造防止が可能となる。
これらの優れた機能を有すると共に、基体として磁性体を活用すると、高性能カラー磁気印刷用インキの色材としても適用可能であり、可視光、蛍光および磁気の3種の識別機能をもち、印刷物の偽造防止効果を高めることが可能であり、極めて高い実用性を有するものである。
Claims (2)
- 基体粒子上に複数の被覆膜を有する多層膜被覆粉体において、該多層膜が光干渉作用を示し、該被覆膜の少なくとも1層が蛍光物質を主成分とし且つ可視光干渉に関与することを特徴とする蛍光性多層膜被覆粉体。
- 前記基体粒子が磁性粒子であることを特徴とする請求項1記載の蛍光性多層膜被覆粉体。
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