JP3685136B2 - 固体高分子型燃料電池 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は固体高分子型燃料電池、特に、酸素利用率を高めたことを特徴とする固体高分子型燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の環境問題、特に自動車の排気ガスによる大気汚染や二酸化炭素による地球温暖化の問題に対して、クリーンな排気および高いエネルギー変換効率を可能とする燃料電池技術が注目されている。燃料電池は、その燃料となる水素あるいは水素リッチな改質ガス、および空気を供給することにより電気化学反応を起こし、化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換するエネルギー変換システムである。その中でも特に高い出力密度を有する固体高分子電解質型燃料電池が自動車用移動体電源あるいは、家庭用定置電源として注目されている。
【0003】
固体高分子型燃料電池では、生成水または加湿水の凝縮によりガス流路内で水詰まりがおこり、よってガス供給不足による電池性能低下の問題が知られている。これを防止する手段として、取り出す負荷電流に対してファラデーの法則から算出される必要反応ガス流量よりも大きなガス流量を燃料電池に供給することが一般的に行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら空気流量の増加は、燃料電池へ空気を供給する空気送風機あるいは空気圧縮機において余分な電力消費をもたらすため、燃料電池システムの効率が下がるという問題点があった。
【0005】
上記従来の問題点に鑑み、本発明の目的は、高い酸素利用率で運転することにより空気送風機又は空気圧縮機の消費電力を低減することができる固体高分子型燃料電池を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、燃料電池本体の排水素および排空気を利用して過酸化水素を合成し、該過酸化水素を分解して得られる酸素を前記燃料電池本体の空気供給系に戻すことを要旨とする固体高分子型燃料電池である。
【0007】
上記目的を達成するために、請求項2記載の発明は、燃料電池本体の排水素および排空気から過酸化水素を合成する過酸化水素発生器と、該過酸化水素発生器が合成した過酸化水素を分解して酸素を生成する酸素発生器と、該酸素発生器が発生した酸素を燃料電池本体の空気供給系へ循環させる空気循環手段と、を備えたことを要旨とする固体高分子型燃料電池である。
【0008】
上記目的を達成するために、請求項3記載の発明は、請求項2記載の固体高分子型燃料電池において、前記過酸化水素発生器は、プロトン導電性液体電解質を容れる電解質槽および一対の過酸化水素合成用電極触媒を備えた燃料電池型過酸化水素発生器であり、該燃料電池型過酸化水素発生器が合成した過酸化水素は、前記液体電解質中に溶解し、前記酸素発生器の容器が保持する液体電解質中に拡散移動することを要旨とする。
【0009】
上記目的を達成するために、請求項4記載の発明は、請求項3記載の固体高分子型燃料電池において、前記酸素発生器中に設けられた過酸化水素分解触媒により過酸化水素を酸素と水に分解して酸素発生器中の酸素分圧およびガス全圧を上昇せしめ、前記空気循環手段に設けられた所定の圧力差で開閉する逆止弁または制御弁を通じて発生酸素を燃料電池の空気供給系に戻すことを要旨とする。
【0010】
上記目的を達成するために、請求項5記載の発明は、請求項3記載の固体高分子型燃料電池において、前記過酸化水素発生器は、前記過酸化水素合成用電極触媒と前記プロトン導電性液体電解質との界面にプロトン導電性固体高分子膜を設けることにより、前記プロトン導電性液体電解質の圧力上昇による電解質の排ガスラインへの漏れを防止することを要旨とする。
【0011】
上記目的を達成するために、請求項6記載の発明は、請求項3記載の固体高分子型燃料電池において、前記燃料電池型過酸化水素発生器における一対の過酸化水素合成用電極触媒間を短絡して得られる電力を使用して、前記酸素発生器中の電解質水溶液を加熱して水蒸気分圧を高め、燃料電池の空気加湿の要求に応じて、酸素とともに水蒸気を空気供給系に戻すことを要旨とする。
【0012】
〔作用〕
上記構成の請求項1または請求項2によれば、燃料電池本体の排水素および排空気から過酸化水素を合成し、該過酸化水素を分解して得られる酸素を燃料電池本体の空気供給系に戻し、よって酸素利用率を高めることができるが、以下にその作用につき説明する。
【0013】
水素および空気を燃料電池型反応装置に導入して過酸化水素を合成することは特開2001−236968号公報に開示されている。
【0014】
この反応装置は、水素が導入されるアノード室、空気(酸素)が導入されるカソード室、および硫酸等のプロトン導電性電解質溶液を存在させた中間室を備えている。アノード室と電解質との界面に設けられたアノード電極の白金または金触媒上で水素分子からプロトンと電子が生成する。プロトンは電解質溶液中をカソード極へ移動し、カソード室と電解質との界面に設けたカソード電極触媒の金あるいはカーボン上で酸素および電子と結合し、過酸化水素(H2O2)が生成される。
【0015】
この過酸化水素は中間室の電解質溶液中に溶解し蓄積されていく。同時に両電極間を中間室の外部で負荷等を接続して電流を流すことで、過酸化水素の生成量を増加させることができる。また、電解質溶液としては前記硫酸等の酸性溶液の他に、中性、アルカリ性の電解質溶液も用いられる。
【0016】
本発明では燃料電池本体からの排ガスを、上記と同等の燃料電池型過酸化水素発生器に導入して過酸化水素を生成せしめる。
【0017】
かかる過酸化水素から酸素を取り出すために、その容器の一部が液体電解質により満たされ、電解質溶液を満たしたテフロン配管等により過酸化水素発生装置の中間室(電解質槽)と接続されている酸素発生用容器を設ける構成としてある。生成した過酸化水素は電解質溶液中に蓄積するが、その濃度勾配に従って、酸素発生器内の電解質溶液中に拡散移動していく(請求項3)。
【0018】
酸素発生器内の電解質溶液中には過酸化水素分解用触媒として、例えばカーボンあるいは金あるいは白金、パラジウム等から構成される触媒板を複数設けてあり、過酸化水素がこの触媒上で酸素と水に分解し、酸素は酸素発生器中の気相中に放出され、その酸素分圧および全ガス圧力が増加する。酸素発生器中のガス圧力が、燃料電池の空気入口圧力以上になった場合、所定の圧力差で開閉する逆止弁または制御弁を通じて発生酸素を燃料電池本体の空気供給系に戻し、よって酸素利用率を高めることができる(請求項4)。
【0019】
燃料電池空気供給系からの空気が、酸素発生器へ逆流しないように逆止弁のみ使用する場合は、簡便に低コストで酸素発生器において生成した空気を燃料電池空気供給系に戻すことができる。開閉圧力は所望の値のものを用いることができるが、生成酸素を速やかに燃料電池空気供給系に戻すためには、その開閉圧力はなるべく小さいことが好ましい。
【0020】
また制御弁を用いて空気を戻す場合は、酸素発生器のガス圧力P1と空気供給系のガス圧力P2をモニターして、その圧力差が常にP1>P2となるように制御弁を開閉することにより、酸素発生器において生成した空気を燃料電池本体の空気供給系に戻すことができる。制御弁を使用する場合は、燃料電池の運転状態に応じて、酸素発生器側の空気を燃料電池本体の空気供給系に戻すことが可能になるメリットがある。たとえば、水詰まり等で燃料電池性能が低下した場合などは、発生酸素をなるべく高い圧力になるまで保持し、速やかに制御弁を開閉することにより、水詰まりを解消できる。
【0021】
本発明の特徴の一つは、上記の過酸化水素発生器と酸素発生器とを組み合わせたことにより、酸素濃縮を行えることにある。通常、空気から酸素濃度の高い空気を取り出すためには圧力スイング吸着法(PSA:Pressure Swing Adsorption )が行われているが、酸素濃縮を行う場合、高圧力を発生させるためのポンプ等の駆動力が必要になり、実質的には燃料電池システム効率を増加させる効果がない。
【0022】
一方、本発明においては、燃料電池本体の排水素と排空気とを燃料電池型反応器で電気化学反応させて過酸化水素を生成し、この過酸化水素を触媒により分解せしめるのみなので、電力消費をする補機が必要でないばかりでなく、過酸化水素発生時においてはむしろ電力を得ることができるという、優れたメリットがある。酸素発生器内で生じた酸素の一部は電解質溶液に溶解するものの、酸素発生器から燃料電池本体の空気供給系に常に酸素をもどすために酸素溶解平衡をずらすことが可能であり、酸素の過酸化水素発生器への逆流を防ぐことが可能である。
【0023】
以上の酸素濃縮効果ゆえに、供給空気中の酸素濃度より高い濃度の酸素を得ることができるので、通常の水素・空気燃料電池では行うことができない空気循環を行うことが可能になり、酸素利用率を高めることができる。
【0024】
ところで、酸素発生器中の酸素ガス分圧および全ガス圧力が増加するにつれ、酸素発生器中および過酸化水素発生器中の電解質溶液圧力も増加するため、過酸化水素発生容器におけるアノード多孔質電極およびアノード多孔質電極の電解質溶液側からガス供給側へ圧力差が生じ、電解質溶液がガス供給室に逆流する恐れがでてくる。この電解質溶液の逆流を防止するために、請求項5に示したように電解質溶液と電極界面にプロトン導電性固体高分子電解質膜を設けることができる。
【0025】
また、請求項6の発明によれば、燃料電池型過酸化水素発生器における一対の過酸化水素合成用電極触媒間を短絡して得られる電力を使用して液体プロトン電解質水溶液を加熱して水蒸気分圧を高め、燃料電池の空気加湿の要求に応じて、酸素とともに水蒸気を空気供給系に戻すことができる。
【0026】
具体的には、酸素発生器周囲又は内部に抵抗発熱体を設け、この抵抗発熱体とは別に外部負荷を設け、過酸化水素発生器の発電電力を抵抗発熱体または外部負荷に切り替え可能に供給する切替手段を設ける。
【0027】
そして、酸素発生器が所望の温度以下の場合は、抵抗発熱体に通電して酸素発生器を加熱し、所望の温度以上であれば、外部負荷で電力を消費すればよい。温度の設定は燃料電池のセル電圧の経時変化やあるいは内部抵抗測定により、燃料電池高分子膜の乾燥状態を判断し、必要な加湿量に相当する露点温度を目標値として、温度設定を行うことができる。
【0028】
なお、請求項6において、酸素発生器中の水分を系外に除去することにより、過酸化水素分解時に発生した水により低下した電解質溶液濃度を回復させる効果がある。従って、電解質溶液の交換あるいは補充までの時間を延長させることができる。
【0029】
【発明の効果】
請求項1または請求項2記載の発明によれば、固体高分子型燃料電池における排水素および排空気を利用して過酸化水素を合成し、この過酸化水素を分解して得られる酸素を燃料電池の空気供給系に戻すことにより酸素利用率を高めることができるため、高効率の固体高分子型燃料電池を得ることができるという効果がある。
【0030】
請求項3記載の発明によれば、燃料電池型過酸化水素発生器で過酸化水素を発生させると共に、発生した過酸化水素が液体電解質中を拡散移動により酸素発生器へ移動するため、エネルギーを使用することなく過酸化水素を発生させ、且つ発生した過酸化水素を酸素発生器へ移動させることができるという効果がある。
【0031】
請求項4記載の発明によれば、酸素発生器中で触媒により過酸化水素を分解して酸素分圧およびガス全圧を上昇せしめ、この圧力を利用して燃料電池の空気供給系に酸素濃度の高い空気を供給することが出来るので、発生した酸素を空気供給系に戻すためにエネルギーを不要とすることができるという効果がある。
【0032】
請求項5記載の発明によれば、プロトン導電性液体電解質の圧力上昇による電解質の排ガスラインへの漏れを防止し取り扱いを容易にすることができるという効果がある。
【0033】
請求項6記載の発明によれば、外部からエネルギーを供給することなく、酸素発生器中の電解質水溶液を加熱して水蒸気分圧を高め、燃料電池の空気加湿の要求に応じて、酸素とともに水蒸気を空気供給系に戻すことができるという効果がある。
【0034】
【発明の実施の形態】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明に係る固体高分子型燃料電池の第1実施形態を説明する構成図である。
【0035】
固体高分子型の燃料電池スタック3には、図外の空気圧縮機から空気供給ライン1を介して空気、図外の水素供給装置から水素供給ライン2を介して水素がそれぞれ供給される。燃料電池スタック3のガス出口部に設けた背圧制御弁4および5により、それぞれ空気および水素の運転圧力が調整されている。背圧制御弁4および5を通過した排気ガスは、過酸化水素発生器6のカソード室11に空気の排気ガスが、アノード室7に水素の排気ガスが供給される。
【0036】
過酸化水素発生器6は、特開2001−236968号公報等に記載された所謂燃料電池型反応装置である。過酸化水素発生器6は、排水素が供給されるアノード室7と、排空気が供給されるカソード室11と、プロトン導電性液体電解質として硫酸溶液が満たされた電解質槽9と備えている。
【0037】
アノード室7と電解質槽9とは、プロトン導電性固体高分子膜に白金または金を含むアノード触媒を被着したガス拡散電極8により分画されている。カソード室11と電解質槽9とは、プロトン導電性固体高分子膜に金を含むカソード触媒を被着したガス拡散電極10により分画されている。
【0038】
ガス拡散電極8においては、水素分子からプロトンおよび電子が生成し、プロトンは硫酸電解質溶液を満たした電解質槽9を移動してガス拡散電極10の金触媒上に到達し、電子は外部負荷12を通過したのちガス拡散電極10において、酸素とプロトンとの還元反応により過酸化水素を生成する。
【0039】
過酸化水素発生器6の電解質槽9に接続するように硫酸電解質溶液を満たした配管18を設けてあり、酸素発生器13中に存在する硫酸電解質溶液14と電解質槽9内の硫酸電解質溶液とを連絡している。酸素発生器13には硫酸電解質溶液14と接触するように過酸化水素分解触媒である金板15を設けてある。過酸化水素分解触媒としては、本実施形態で用いた金以外に、カーボン、白金も利用可能である。
【0040】
電解質槽9で生成された過酸化水素は徐々にその濃度が増加するため、酸素発生器13の硫酸電解質溶液14に向かって拡散移動していく。酸素発生器13中で金板15の表面に到達した過酸化水素は、酸素と水に分解し、発生酸素により酸素発生器13の容器内のガス圧力は増加していく。
【0041】
酸素発生器13から空気供給ライン1に空気循環配管16を設け、空気循環配管16の途中には開閉圧力が1〔psi〕の逆止弁17を設けてある。酸素発生器13内圧力と空気供給ライン1の空気供給圧力との差が、逆止弁17の開閉圧力以上になった場合に、逆止弁17が開き酸素発生器13中の酸素分圧の高まった空気を空気供給ライン1に戻すことができる。以上から酸素利用率を高めることができるため、高効率の固体高分子型燃料電池を得ることができる。
【0042】
第1実施形態で示した燃料電池と、第1実施形態から過酸化水素発生器と酸素発生器と空気循環系を除いた以外は同じ構成とした比較対照の燃料電池とを、それぞれ大気圧下、セル加湿温度70℃、水素ガス利用率70%、空気ガス利用率67%の条件で運転して、燃料電池セル性能を比較したところ、本実施形態の燃料電池は、比較対照より、電流密度1〔A/cm2〕でのセル電圧が約4%向上した。
【0043】
〔第2実施形態〕
図2は、本発明に係る固体高分子型燃料電池の第2実施形態を説明する構成図である。
固体高分子型の燃料電池スタック3には、図外の空気圧縮機から空気供給ライン1を介して空気、図外の水素供給装置から水素供給ライン2を介して水素がそれぞれ供給される。燃料電池スタック3のガス出口部に設けた背圧制御弁4および5により、それぞれ空気および水素の運転圧力が調整されている。背圧制御弁4および5を通過した排気ガスは、過酸化水素発生器6のカソード室11に空気の排気ガスが、アノード室7に水素の排気ガスが供給される。
【0044】
過酸化水素発生器6は、特開2001−236968号公報等に記載された所謂燃料電池型反応装置である。過酸化水素発生器6は、排水素が供給されるアノード室7と、排空気が供給されるカソード室11と、プロトン導電性液体電解質として硫酸溶液が満たされた電解質槽9と備えている。
【0045】
アノード室7と電解質槽9とは、プロトン導電性固体高分子膜に白金または金を含むアノード触媒を被着したガス拡散電極8により分画されている。カソード室11と電解質槽9とは、プロトン導電性固体高分子膜に金を含むカソード触媒を被着したガス拡散電極10により分画されている。
【0046】
ガス拡散電極8においては、水素分子からプロトンおよび電子が生成し、プロトンは硫酸電解質溶液を満たした電解質槽9を移動してガス拡散電極10の金触媒上に到達し、電子は外部負荷12又はヒータ23を通過したのちガス拡散電極10において、酸素とプロトンとの還元反応により過酸化水素を生成する。
【0047】
過酸化水素発生器6の電解質槽9に接続するように硫酸電解質溶液を満たした配管18を設けてあり、酸素発生器13中に存在する硫酸電解質溶液14と電解質槽9内の硫酸電解質溶液とを連絡している。酸素発生器13には硫酸電解質溶液14と接触するように過酸化水素分解触媒である金板15を設けてある。
【0048】
電解質槽9で生成された過酸化水素は徐々にその濃度が増加するため、酸素発生器13の硫酸電解質溶液14に向かって拡散移動していく。酸素発生器13中で金板15の表面に到達した過酸化水素は、酸素と水に分解し、発生酸素により酸素発生器13の容器内のガス圧力は増加していく。
【0049】
酸素発生器13と空気供給ライン1の間には空気循環配管16を設け、空気循環配管16の途中には制御弁17を設けてある。また、酸素発生器13内の圧力を測定するため圧力計19を、また、空気供給ライン1の圧力を測定するために圧力計20を設けてある。
【0050】
制御部21には、圧力計19、20、及び燃料電池スタック3のセル電圧を検出するセル電圧モニタ22が入力信号として接続されている。これらの入力信号に基づいて、制御部21は、制御弁17の開閉信号、SW24の切り替え信号を出力する。
【0051】
SW24は、過酸化水素発生器6が発電した電力を外部負荷12を介して消費するか、ヒータ23を介して消費するかを切り替える。ヒータ23は、酸素発生器13の周囲又は内部に配置され、酸素発生器13又はその内部の硫酸電解質溶液14を加熱するようになっている。
【0052】
制御部21は、圧力計19の圧力が常に圧力計20より高くなる範囲で制御弁17を開閉することにより、酸素発生器13中の酸素分圧の高まった空気を空気供給ライン1に戻すことができる。
【0053】
また、制御部21は、セル電圧モニタ22が検出したセル電圧により、経時変化から燃料電池スタック3内の高分子膜が乾燥状態であると判断した場合には、SW24を外部負荷12からヒータ23へ切り替える。これにより、ヒータ23が酸素発生器13又は硫酸電解質溶液14を加熱して、酸素発生器13内の水蒸気分圧以上を増加せしめ、酸素発生器13で発生している酸素とともに所望の温度に温調した水蒸気を空気供給ライン1へ供給する。
【0054】
以上説明したように本実施形態によれば、酸素利用率を高めるとともに、過酸化水素発生器で発生する電力を無駄に使用することなく、燃料電池の水蒸気加湿にも利用して、高効率の固体高分子型燃料電池を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明に係る固体高分子型燃料電池の第1実施形態の構成図である。
【図2】図2は、本発明に係る固体高分子型燃料電池の第2実施形態の構成図である。
【符号の説明】
1…空気供給ライン
2…水素供給ライン
3…燃料電池スタック
4…背圧制御弁
5…背圧制御弁
6…過酸化水素発生器
7…アノード室
8…ガス拡散電極
9…電解質槽
10…ガス拡散電極
11…カソード室
12…外部負荷
13…酸素発生器
14…硫酸電解質溶液
15…金板
16…空気循環配管
17…逆止弁
18…配管
【発明の属する技術分野】
本発明は固体高分子型燃料電池、特に、酸素利用率を高めたことを特徴とする固体高分子型燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の環境問題、特に自動車の排気ガスによる大気汚染や二酸化炭素による地球温暖化の問題に対して、クリーンな排気および高いエネルギー変換効率を可能とする燃料電池技術が注目されている。燃料電池は、その燃料となる水素あるいは水素リッチな改質ガス、および空気を供給することにより電気化学反応を起こし、化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換するエネルギー変換システムである。その中でも特に高い出力密度を有する固体高分子電解質型燃料電池が自動車用移動体電源あるいは、家庭用定置電源として注目されている。
【0003】
固体高分子型燃料電池では、生成水または加湿水の凝縮によりガス流路内で水詰まりがおこり、よってガス供給不足による電池性能低下の問題が知られている。これを防止する手段として、取り出す負荷電流に対してファラデーの法則から算出される必要反応ガス流量よりも大きなガス流量を燃料電池に供給することが一般的に行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら空気流量の増加は、燃料電池へ空気を供給する空気送風機あるいは空気圧縮機において余分な電力消費をもたらすため、燃料電池システムの効率が下がるという問題点があった。
【0005】
上記従来の問題点に鑑み、本発明の目的は、高い酸素利用率で運転することにより空気送風機又は空気圧縮機の消費電力を低減することができる固体高分子型燃料電池を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、燃料電池本体の排水素および排空気を利用して過酸化水素を合成し、該過酸化水素を分解して得られる酸素を前記燃料電池本体の空気供給系に戻すことを要旨とする固体高分子型燃料電池である。
【0007】
上記目的を達成するために、請求項2記載の発明は、燃料電池本体の排水素および排空気から過酸化水素を合成する過酸化水素発生器と、該過酸化水素発生器が合成した過酸化水素を分解して酸素を生成する酸素発生器と、該酸素発生器が発生した酸素を燃料電池本体の空気供給系へ循環させる空気循環手段と、を備えたことを要旨とする固体高分子型燃料電池である。
【0008】
上記目的を達成するために、請求項3記載の発明は、請求項2記載の固体高分子型燃料電池において、前記過酸化水素発生器は、プロトン導電性液体電解質を容れる電解質槽および一対の過酸化水素合成用電極触媒を備えた燃料電池型過酸化水素発生器であり、該燃料電池型過酸化水素発生器が合成した過酸化水素は、前記液体電解質中に溶解し、前記酸素発生器の容器が保持する液体電解質中に拡散移動することを要旨とする。
【0009】
上記目的を達成するために、請求項4記載の発明は、請求項3記載の固体高分子型燃料電池において、前記酸素発生器中に設けられた過酸化水素分解触媒により過酸化水素を酸素と水に分解して酸素発生器中の酸素分圧およびガス全圧を上昇せしめ、前記空気循環手段に設けられた所定の圧力差で開閉する逆止弁または制御弁を通じて発生酸素を燃料電池の空気供給系に戻すことを要旨とする。
【0010】
上記目的を達成するために、請求項5記載の発明は、請求項3記載の固体高分子型燃料電池において、前記過酸化水素発生器は、前記過酸化水素合成用電極触媒と前記プロトン導電性液体電解質との界面にプロトン導電性固体高分子膜を設けることにより、前記プロトン導電性液体電解質の圧力上昇による電解質の排ガスラインへの漏れを防止することを要旨とする。
【0011】
上記目的を達成するために、請求項6記載の発明は、請求項3記載の固体高分子型燃料電池において、前記燃料電池型過酸化水素発生器における一対の過酸化水素合成用電極触媒間を短絡して得られる電力を使用して、前記酸素発生器中の電解質水溶液を加熱して水蒸気分圧を高め、燃料電池の空気加湿の要求に応じて、酸素とともに水蒸気を空気供給系に戻すことを要旨とする。
【0012】
〔作用〕
上記構成の請求項1または請求項2によれば、燃料電池本体の排水素および排空気から過酸化水素を合成し、該過酸化水素を分解して得られる酸素を燃料電池本体の空気供給系に戻し、よって酸素利用率を高めることができるが、以下にその作用につき説明する。
【0013】
水素および空気を燃料電池型反応装置に導入して過酸化水素を合成することは特開2001−236968号公報に開示されている。
【0014】
この反応装置は、水素が導入されるアノード室、空気(酸素)が導入されるカソード室、および硫酸等のプロトン導電性電解質溶液を存在させた中間室を備えている。アノード室と電解質との界面に設けられたアノード電極の白金または金触媒上で水素分子からプロトンと電子が生成する。プロトンは電解質溶液中をカソード極へ移動し、カソード室と電解質との界面に設けたカソード電極触媒の金あるいはカーボン上で酸素および電子と結合し、過酸化水素(H2O2)が生成される。
【0015】
この過酸化水素は中間室の電解質溶液中に溶解し蓄積されていく。同時に両電極間を中間室の外部で負荷等を接続して電流を流すことで、過酸化水素の生成量を増加させることができる。また、電解質溶液としては前記硫酸等の酸性溶液の他に、中性、アルカリ性の電解質溶液も用いられる。
【0016】
本発明では燃料電池本体からの排ガスを、上記と同等の燃料電池型過酸化水素発生器に導入して過酸化水素を生成せしめる。
【0017】
かかる過酸化水素から酸素を取り出すために、その容器の一部が液体電解質により満たされ、電解質溶液を満たしたテフロン配管等により過酸化水素発生装置の中間室(電解質槽)と接続されている酸素発生用容器を設ける構成としてある。生成した過酸化水素は電解質溶液中に蓄積するが、その濃度勾配に従って、酸素発生器内の電解質溶液中に拡散移動していく(請求項3)。
【0018】
酸素発生器内の電解質溶液中には過酸化水素分解用触媒として、例えばカーボンあるいは金あるいは白金、パラジウム等から構成される触媒板を複数設けてあり、過酸化水素がこの触媒上で酸素と水に分解し、酸素は酸素発生器中の気相中に放出され、その酸素分圧および全ガス圧力が増加する。酸素発生器中のガス圧力が、燃料電池の空気入口圧力以上になった場合、所定の圧力差で開閉する逆止弁または制御弁を通じて発生酸素を燃料電池本体の空気供給系に戻し、よって酸素利用率を高めることができる(請求項4)。
【0019】
燃料電池空気供給系からの空気が、酸素発生器へ逆流しないように逆止弁のみ使用する場合は、簡便に低コストで酸素発生器において生成した空気を燃料電池空気供給系に戻すことができる。開閉圧力は所望の値のものを用いることができるが、生成酸素を速やかに燃料電池空気供給系に戻すためには、その開閉圧力はなるべく小さいことが好ましい。
【0020】
また制御弁を用いて空気を戻す場合は、酸素発生器のガス圧力P1と空気供給系のガス圧力P2をモニターして、その圧力差が常にP1>P2となるように制御弁を開閉することにより、酸素発生器において生成した空気を燃料電池本体の空気供給系に戻すことができる。制御弁を使用する場合は、燃料電池の運転状態に応じて、酸素発生器側の空気を燃料電池本体の空気供給系に戻すことが可能になるメリットがある。たとえば、水詰まり等で燃料電池性能が低下した場合などは、発生酸素をなるべく高い圧力になるまで保持し、速やかに制御弁を開閉することにより、水詰まりを解消できる。
【0021】
本発明の特徴の一つは、上記の過酸化水素発生器と酸素発生器とを組み合わせたことにより、酸素濃縮を行えることにある。通常、空気から酸素濃度の高い空気を取り出すためには圧力スイング吸着法(PSA:Pressure Swing Adsorption )が行われているが、酸素濃縮を行う場合、高圧力を発生させるためのポンプ等の駆動力が必要になり、実質的には燃料電池システム効率を増加させる効果がない。
【0022】
一方、本発明においては、燃料電池本体の排水素と排空気とを燃料電池型反応器で電気化学反応させて過酸化水素を生成し、この過酸化水素を触媒により分解せしめるのみなので、電力消費をする補機が必要でないばかりでなく、過酸化水素発生時においてはむしろ電力を得ることができるという、優れたメリットがある。酸素発生器内で生じた酸素の一部は電解質溶液に溶解するものの、酸素発生器から燃料電池本体の空気供給系に常に酸素をもどすために酸素溶解平衡をずらすことが可能であり、酸素の過酸化水素発生器への逆流を防ぐことが可能である。
【0023】
以上の酸素濃縮効果ゆえに、供給空気中の酸素濃度より高い濃度の酸素を得ることができるので、通常の水素・空気燃料電池では行うことができない空気循環を行うことが可能になり、酸素利用率を高めることができる。
【0024】
ところで、酸素発生器中の酸素ガス分圧および全ガス圧力が増加するにつれ、酸素発生器中および過酸化水素発生器中の電解質溶液圧力も増加するため、過酸化水素発生容器におけるアノード多孔質電極およびアノード多孔質電極の電解質溶液側からガス供給側へ圧力差が生じ、電解質溶液がガス供給室に逆流する恐れがでてくる。この電解質溶液の逆流を防止するために、請求項5に示したように電解質溶液と電極界面にプロトン導電性固体高分子電解質膜を設けることができる。
【0025】
また、請求項6の発明によれば、燃料電池型過酸化水素発生器における一対の過酸化水素合成用電極触媒間を短絡して得られる電力を使用して液体プロトン電解質水溶液を加熱して水蒸気分圧を高め、燃料電池の空気加湿の要求に応じて、酸素とともに水蒸気を空気供給系に戻すことができる。
【0026】
具体的には、酸素発生器周囲又は内部に抵抗発熱体を設け、この抵抗発熱体とは別に外部負荷を設け、過酸化水素発生器の発電電力を抵抗発熱体または外部負荷に切り替え可能に供給する切替手段を設ける。
【0027】
そして、酸素発生器が所望の温度以下の場合は、抵抗発熱体に通電して酸素発生器を加熱し、所望の温度以上であれば、外部負荷で電力を消費すればよい。温度の設定は燃料電池のセル電圧の経時変化やあるいは内部抵抗測定により、燃料電池高分子膜の乾燥状態を判断し、必要な加湿量に相当する露点温度を目標値として、温度設定を行うことができる。
【0028】
なお、請求項6において、酸素発生器中の水分を系外に除去することにより、過酸化水素分解時に発生した水により低下した電解質溶液濃度を回復させる効果がある。従って、電解質溶液の交換あるいは補充までの時間を延長させることができる。
【0029】
【発明の効果】
請求項1または請求項2記載の発明によれば、固体高分子型燃料電池における排水素および排空気を利用して過酸化水素を合成し、この過酸化水素を分解して得られる酸素を燃料電池の空気供給系に戻すことにより酸素利用率を高めることができるため、高効率の固体高分子型燃料電池を得ることができるという効果がある。
【0030】
請求項3記載の発明によれば、燃料電池型過酸化水素発生器で過酸化水素を発生させると共に、発生した過酸化水素が液体電解質中を拡散移動により酸素発生器へ移動するため、エネルギーを使用することなく過酸化水素を発生させ、且つ発生した過酸化水素を酸素発生器へ移動させることができるという効果がある。
【0031】
請求項4記載の発明によれば、酸素発生器中で触媒により過酸化水素を分解して酸素分圧およびガス全圧を上昇せしめ、この圧力を利用して燃料電池の空気供給系に酸素濃度の高い空気を供給することが出来るので、発生した酸素を空気供給系に戻すためにエネルギーを不要とすることができるという効果がある。
【0032】
請求項5記載の発明によれば、プロトン導電性液体電解質の圧力上昇による電解質の排ガスラインへの漏れを防止し取り扱いを容易にすることができるという効果がある。
【0033】
請求項6記載の発明によれば、外部からエネルギーを供給することなく、酸素発生器中の電解質水溶液を加熱して水蒸気分圧を高め、燃料電池の空気加湿の要求に応じて、酸素とともに水蒸気を空気供給系に戻すことができるという効果がある。
【0034】
【発明の実施の形態】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明に係る固体高分子型燃料電池の第1実施形態を説明する構成図である。
【0035】
固体高分子型の燃料電池スタック3には、図外の空気圧縮機から空気供給ライン1を介して空気、図外の水素供給装置から水素供給ライン2を介して水素がそれぞれ供給される。燃料電池スタック3のガス出口部に設けた背圧制御弁4および5により、それぞれ空気および水素の運転圧力が調整されている。背圧制御弁4および5を通過した排気ガスは、過酸化水素発生器6のカソード室11に空気の排気ガスが、アノード室7に水素の排気ガスが供給される。
【0036】
過酸化水素発生器6は、特開2001−236968号公報等に記載された所謂燃料電池型反応装置である。過酸化水素発生器6は、排水素が供給されるアノード室7と、排空気が供給されるカソード室11と、プロトン導電性液体電解質として硫酸溶液が満たされた電解質槽9と備えている。
【0037】
アノード室7と電解質槽9とは、プロトン導電性固体高分子膜に白金または金を含むアノード触媒を被着したガス拡散電極8により分画されている。カソード室11と電解質槽9とは、プロトン導電性固体高分子膜に金を含むカソード触媒を被着したガス拡散電極10により分画されている。
【0038】
ガス拡散電極8においては、水素分子からプロトンおよび電子が生成し、プロトンは硫酸電解質溶液を満たした電解質槽9を移動してガス拡散電極10の金触媒上に到達し、電子は外部負荷12を通過したのちガス拡散電極10において、酸素とプロトンとの還元反応により過酸化水素を生成する。
【0039】
過酸化水素発生器6の電解質槽9に接続するように硫酸電解質溶液を満たした配管18を設けてあり、酸素発生器13中に存在する硫酸電解質溶液14と電解質槽9内の硫酸電解質溶液とを連絡している。酸素発生器13には硫酸電解質溶液14と接触するように過酸化水素分解触媒である金板15を設けてある。過酸化水素分解触媒としては、本実施形態で用いた金以外に、カーボン、白金も利用可能である。
【0040】
電解質槽9で生成された過酸化水素は徐々にその濃度が増加するため、酸素発生器13の硫酸電解質溶液14に向かって拡散移動していく。酸素発生器13中で金板15の表面に到達した過酸化水素は、酸素と水に分解し、発生酸素により酸素発生器13の容器内のガス圧力は増加していく。
【0041】
酸素発生器13から空気供給ライン1に空気循環配管16を設け、空気循環配管16の途中には開閉圧力が1〔psi〕の逆止弁17を設けてある。酸素発生器13内圧力と空気供給ライン1の空気供給圧力との差が、逆止弁17の開閉圧力以上になった場合に、逆止弁17が開き酸素発生器13中の酸素分圧の高まった空気を空気供給ライン1に戻すことができる。以上から酸素利用率を高めることができるため、高効率の固体高分子型燃料電池を得ることができる。
【0042】
第1実施形態で示した燃料電池と、第1実施形態から過酸化水素発生器と酸素発生器と空気循環系を除いた以外は同じ構成とした比較対照の燃料電池とを、それぞれ大気圧下、セル加湿温度70℃、水素ガス利用率70%、空気ガス利用率67%の条件で運転して、燃料電池セル性能を比較したところ、本実施形態の燃料電池は、比較対照より、電流密度1〔A/cm2〕でのセル電圧が約4%向上した。
【0043】
〔第2実施形態〕
図2は、本発明に係る固体高分子型燃料電池の第2実施形態を説明する構成図である。
固体高分子型の燃料電池スタック3には、図外の空気圧縮機から空気供給ライン1を介して空気、図外の水素供給装置から水素供給ライン2を介して水素がそれぞれ供給される。燃料電池スタック3のガス出口部に設けた背圧制御弁4および5により、それぞれ空気および水素の運転圧力が調整されている。背圧制御弁4および5を通過した排気ガスは、過酸化水素発生器6のカソード室11に空気の排気ガスが、アノード室7に水素の排気ガスが供給される。
【0044】
過酸化水素発生器6は、特開2001−236968号公報等に記載された所謂燃料電池型反応装置である。過酸化水素発生器6は、排水素が供給されるアノード室7と、排空気が供給されるカソード室11と、プロトン導電性液体電解質として硫酸溶液が満たされた電解質槽9と備えている。
【0045】
アノード室7と電解質槽9とは、プロトン導電性固体高分子膜に白金または金を含むアノード触媒を被着したガス拡散電極8により分画されている。カソード室11と電解質槽9とは、プロトン導電性固体高分子膜に金を含むカソード触媒を被着したガス拡散電極10により分画されている。
【0046】
ガス拡散電極8においては、水素分子からプロトンおよび電子が生成し、プロトンは硫酸電解質溶液を満たした電解質槽9を移動してガス拡散電極10の金触媒上に到達し、電子は外部負荷12又はヒータ23を通過したのちガス拡散電極10において、酸素とプロトンとの還元反応により過酸化水素を生成する。
【0047】
過酸化水素発生器6の電解質槽9に接続するように硫酸電解質溶液を満たした配管18を設けてあり、酸素発生器13中に存在する硫酸電解質溶液14と電解質槽9内の硫酸電解質溶液とを連絡している。酸素発生器13には硫酸電解質溶液14と接触するように過酸化水素分解触媒である金板15を設けてある。
【0048】
電解質槽9で生成された過酸化水素は徐々にその濃度が増加するため、酸素発生器13の硫酸電解質溶液14に向かって拡散移動していく。酸素発生器13中で金板15の表面に到達した過酸化水素は、酸素と水に分解し、発生酸素により酸素発生器13の容器内のガス圧力は増加していく。
【0049】
酸素発生器13と空気供給ライン1の間には空気循環配管16を設け、空気循環配管16の途中には制御弁17を設けてある。また、酸素発生器13内の圧力を測定するため圧力計19を、また、空気供給ライン1の圧力を測定するために圧力計20を設けてある。
【0050】
制御部21には、圧力計19、20、及び燃料電池スタック3のセル電圧を検出するセル電圧モニタ22が入力信号として接続されている。これらの入力信号に基づいて、制御部21は、制御弁17の開閉信号、SW24の切り替え信号を出力する。
【0051】
SW24は、過酸化水素発生器6が発電した電力を外部負荷12を介して消費するか、ヒータ23を介して消費するかを切り替える。ヒータ23は、酸素発生器13の周囲又は内部に配置され、酸素発生器13又はその内部の硫酸電解質溶液14を加熱するようになっている。
【0052】
制御部21は、圧力計19の圧力が常に圧力計20より高くなる範囲で制御弁17を開閉することにより、酸素発生器13中の酸素分圧の高まった空気を空気供給ライン1に戻すことができる。
【0053】
また、制御部21は、セル電圧モニタ22が検出したセル電圧により、経時変化から燃料電池スタック3内の高分子膜が乾燥状態であると判断した場合には、SW24を外部負荷12からヒータ23へ切り替える。これにより、ヒータ23が酸素発生器13又は硫酸電解質溶液14を加熱して、酸素発生器13内の水蒸気分圧以上を増加せしめ、酸素発生器13で発生している酸素とともに所望の温度に温調した水蒸気を空気供給ライン1へ供給する。
【0054】
以上説明したように本実施形態によれば、酸素利用率を高めるとともに、過酸化水素発生器で発生する電力を無駄に使用することなく、燃料電池の水蒸気加湿にも利用して、高効率の固体高分子型燃料電池を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明に係る固体高分子型燃料電池の第1実施形態の構成図である。
【図2】図2は、本発明に係る固体高分子型燃料電池の第2実施形態の構成図である。
【符号の説明】
1…空気供給ライン
2…水素供給ライン
3…燃料電池スタック
4…背圧制御弁
5…背圧制御弁
6…過酸化水素発生器
7…アノード室
8…ガス拡散電極
9…電解質槽
10…ガス拡散電極
11…カソード室
12…外部負荷
13…酸素発生器
14…硫酸電解質溶液
15…金板
16…空気循環配管
17…逆止弁
18…配管
Claims (6)
- 燃料電池本体の排水素および排空気を利用して過酸化水素を合成し、該過酸化水素を分解して得られる酸素を前記燃料電池本体の空気供給系に戻すことを特徴とする固体高分子型燃料電池。
- 燃料電池本体の排水素および排空気から過酸化水素を合成する過酸化水素発生器と、
該過酸化水素発生器が合成した過酸化水素を分解して酸素を生成する酸素発生器と、
該酸素発生器が発生した酸素を燃料電池本体の空気供給系へ循環させる空気循環手段と、
を備えたことを特徴とする固体高分子型燃料電池。 - 前記過酸化水素発生器は、プロトン導電性液体電解質を容れる電解質槽および一対の過酸化水素合成用電極触媒を備えた燃料電池型過酸化水素発生器であり、
該燃料電池型過酸化水素発生器が合成した過酸化水素は、前記液体電解質中に溶解し、前記酸素発生器の容器が保持する液体電解質中に拡散移動することを特徴とする請求項2記載の固体高分子型燃料電池。 - 前記酸素発生器中に設けられた過酸化水素分解触媒により過酸化水素を酸素と水に分解して酸素発生器中の酸素分圧およびガス全圧を上昇せしめ、
前記空気循環手段に設けられた所定の圧力差で開閉する逆止弁または制御弁を通じて発生酸素を燃料電池の空気供給系に戻すことを特徴とする請求項3記載の固体高分子型燃料電池。 - 前記過酸化水素発生器は、前記過酸化水素合成用電極触媒と前記プロトン導電性液体電解質との界面にプロトン導電性固体高分子膜を設けることにより、前記プロトン導電性液体電解質の圧力上昇による電解質の排ガスラインへの漏れを防止することを特徴とする請求項3記載の固体高分子型燃料電池。
- 前記燃料電池型過酸化水素発生器における一対の過酸化水素合成用電極触媒間を短絡して得られる電力を使用して、前記酸素発生器中の電解質水溶液を加熱して水蒸気分圧を高め、燃料電池の空気加湿の要求に応じて、酸素とともに水蒸気を空気供給系に戻すことを特徴とする請求項3記載の固体高分子型燃料電池。
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