JP3681263B2 - 油中水型油脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、油中水型油脂組成物に関するものであり、詳しくは、酵素活性が長期間保持され、ベーカリー製品に用いた場合、風味がよく且つ食感がクチャつかないベーカリー製品が得られ、しかも作業性がよい油中水型油脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、菓子やパンなどのベーカリー製品を軟らかくし、容積を大きくし、経日的な硬化を抑える為に、乳化剤を配合した油脂組成物が使われてきた。一方、乳化剤以外にベーカリー製品の物性を改良するものとして、近年、酵素が注目されているが、酵素を使用した油脂組成物の殆どが乳化剤の併用を必須要件としている(特開平3−292846号公報、特開平3−292847号公報、特開平3−292848号公報、特開平3−297345号公報、特開平4−23940号公報、特開平4−207143号公報、特開平5−161446号公報、特開平8−173033号公報などを参照)。
また、特開平6−292505号公報には、乳化剤の併用を必須要件としない水中油型乳化油脂組成物が開示され、また、特開平9−94052号公報には、乳化剤の併用を必須要件とせず、化工澱粉を必須成分とする油脂組成物が開示されている。また、市場には、乳化剤を含まず酵素を配合したベーカリー製品物性改良用の無水系の油脂組成物が市販されており、また、特開平9−135656号公報には、酵素を配合した粉体状のベーカリー製品用物性改良剤が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
乳化剤を配合した油脂組成物は、ベーカリー製品に用いた場合、ベーカリー製品の容積を大きくし、軟らかくし、且つ軟らかさを長期間保持するものの、乳化剤利用の弊害として、小麦などの素材が持つ自然な風味を損ない、ベーカリー製品の食感がクチャつくという問題があった。また、酵素を使用した油脂組成物でも、乳化剤を併用したものは、上記と同様の問題があった。
また、特開平6−292505号公報に開示されている乳化剤の併用を必須要件としない水中油型乳化油脂組成物は、十分な酵素活性を維持できないという問題があった。
また、特開平9−94052号公報に開示されている油脂組成物は、ショートニング又はマーガリンの形態をとり得るが、ショートニングの場合は、酵素を油脂中に添加するため、疎水性の油脂中に分散させられた酵素の高次構造が変化し、かなりの比率の酵素活性が失われ、非常に効率が悪いという問題があり、また、ショートニング又はマーガリンの形態に拘らず、実施例では、乳化剤を併用しており、上記の乳化剤と酵素を併用した油脂組成物と同様の問題を抱えている。また、特開平9−135656号公報に開示されている酵素を配合した粉体状のベーカリー製品用物性改良剤は、ベーカリー製品製造時に、この粉体改良剤とは別に油脂組成物を配合しなければならず、作業が煩雑になるという問題があった。
【0004】
従って、本発明の目的は、酵素活性が長期間保持され、ベーカリー製品に用いた場合、風味がよく且つ食感がクチャつかないベーカリー製品が得られ、しかも作業性がよい油中水型油脂組成物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、油脂と水と酵素からなり、乳化剤を含まず、該水の配合量は0.1〜17.0重量%であり、該酵素は水に添加されていることを特徴とする油中水型油脂組成物を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の油中水型油脂組成物について詳細に説明する。
本発明に用いられる油脂としては、パーム油、大豆油、菜種油、ヒマワリ油、サフラワー油、綿実油、カカオ脂、乳脂、牛脂、豚脂、魚油、鯨油などの天然油脂、該天然油脂に水素添加、分別及びエステル交換の内、1種又は2種以上の処理を施した加工油脂などが挙げられ、これらの中から1種又は2種以上を適宜選択して使用することができる。
上記油脂の配合量は、50.0〜99.989重量%、好ましくは、60.0〜99.989重量%、さらに好ましくは60.0〜90.0重量%である。油脂の配合量が50.0重量%より少ないと、安定な油中水型油脂組成物が得られ難く、99.989重量%より多いと、酵素を水溶液の形で配合するのが難しくなるので好ましくない。
【0007】
また、水の配合量は、0.1〜17.0重量%である。
【0008】
また、本発明に用いられる酵素としては、加水分解酵素及び/又は酸化還元酵素が用いられる。
上記加水分解酵素としては、蛋白分解酵素であるペプシン、トリプシン、キモトリプシン、パパイン、レンネットや、糖分解酵素であるα−アミラーゼ、β−アミラーゼ、アミログルコシダーゼ、プルラナーゼ、ペントサナーゼ、セルラーゼや、脂質分解酵素であるリパーゼ、ホスフォリパーゼが挙げられ、これらの中でもα−アミラーゼ、アミログルコシダーゼ、ペントサナーゼが好ましく、特にα−アミラーゼが好ましい。加水分解酵素は2種以上併用することができる。
【0009】
また、上記酸化還元酵素としては、カタラーゼ、リポキシゲナーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ、スルフィドリルオキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼが挙げられ、これらの中でもヘキソースオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼが好ましく、特にグルコースオキシダーゼが好ましい。酸化還元酵素も2種以上併用することができる。
【0010】
上記酵素の添加量は、0.001〜1.0重量%、好ましくは0.005〜0.5重量%、さらに好ましくは0.01〜0.1重量%である。酵素の添加量が0.001重量%より少ないと、ベーカリー製品の軟らかさや容積の改良効果がみられないので好ましくなく、1.0重量%よりも多いと、ベーカリー生地の扱いが難しくなるので好ましくない。
この酵素の添加量を本発明の油中水型油脂組成物中の酵素活性で規定すると、加水分解酵素の例としてのα−アミラーゼ活性は0.1〜10AU/gが好ましく、酸化還元酵素の例としてのグルコースオキシダーゼ活性は0.5〜50GU/gが好ましい。
【0011】
以下に、加水分解酵素の例としてのα−アミラーゼ活性と、酸化還元酵素の例としてのグルコースオキシダーゼ活性の測定方法を示す。
【0012】
「α−アミラーゼ活性」
(1)試薬
A液:2.0M 酢酸緩衝液(pH4.8)
B液:2.0% 澱粉−0.1M酢酸緩衝溶液(A液使用)
C液:ヨウ素希釈液(下記▲1▼〜▲3▼のように調整する)
▲1▼ヨウ素5.50gとヨウ化カリウム11.0gを蒸留水100mlに溶解する。
▲2▼完全に溶解したら、250mlまで蒸留水でメスアップし、これをヨウ素原液とする。
▲3▼ヨウ化カリウム20.0gを蒸留水300mlに溶解し、ヨウ素原液2.00ml加え、蒸留水で500mlにメスアップし、ヨウ素希釈液とする。
D液:酵素入り希釈液(所定量の酵素入りサンプルを蒸留水で100mlにメスアップしたもの)
(2)酵素活性の測定法(下記▲1▼〜▲7▼のように測定する)
▲1▼B液5.00mlを試験管にとり、40.0±0.1℃に予備保温する。
▲2▼D液1.00mlを加え混合する。
▲3▼12、14、16、18、20分反応後、各々1.00mlを採取し、C液5.00mlに加える。
▲4▼OD620nmを測定する。
▲5▼片対数グラフにODとt(分)をプロットする。
▲6▼OD=0.48に相当する時間を読み取る。
▲7▼次式によりAU/gを計算する。
0.1×60/(S×T)=AU/g
T:OD=0.48に相当する時間(分)
S:D液1.00mlに含まれるサンプル量(g)
【0013】
「グルコースオキシダーゼ活性」
(1)試薬
▲1▼0.1M酢酸緩衝液(pH5.6)
▲2▼パーオキシダーゼ(POD)保管液
シグマ社のPOD P8125(〜80単位/mg)5mgを0.1M酢酸緩衝液(pH5.6)で10mlにメスアップし30分間攪拌する。
▲3▼グルコース−POD−ABTS−R液
D−グルコース4.05gとABTS−R液{2.2アジノ−ジ(3−アセチルベンゾチアゾリン)−6スルフォネート}55.5mgを約200mlの0.1M酢酸緩衝液(pH5.6)に溶かし、2.5mlのPOD保管液を加え、0.1M酢酸緩衝液(pH5.6)で250mlにメスアップする。
▲4▼過酸化水素保管液
A液:30%過酸化水素原液1mlを0.1M酢酸緩衝液(pH5.6)で100mlにメスアップする。
B液:A液1mlに0.1M酢酸緩衝液(pH5.6)を加え、100mlにメスアプする。
C液(標準液)
std1:2.5mlのB液を0.1M酢酸緩衝液(pH5.6)を加え、25mlにメスアップする。
std2:5mlのB液を0.1M酢酸緩衝液(pH5.6)を加え、25mlにメスアップする。
std3:7.5mlのB液を0.1M酢酸緩衝液(pH5.6)を加え、25mlにメスアップする。
(2)酵素活性の測定法(下記▲1▼〜▲3▼のように測定する)
▲1▼3mlのグルコース−POD−ABTS−R液を試験管に採り、30℃で10分間予備加熱する。
▲2▼0.1mlの試料液{又は0.1M酢酸緩衝液(pH5.6)、標準液}をこの試験管に加え、30℃で20分間インキュベートする。
▲3▼20分たったらすぐに、OD412nmを測定する。
(3)活性の算出法
▲1▼過酸化水素濃度
3つの標準液の過酸化水素濃度を以下のように算出する。
106 ×mf×C×V/(104 ×100×25×MW)=μmol/ml
上式で、
106 =gをμgに換算する係数
mf=過酸化水素原液の比重(1.11g/ml)
C=過酸化水素原液の濃度(30%)
V=標準液25ml中の過酸化水素保管液の体積(ml)
104 =過酸化水素原液の最終希釈率
100=パーセント
25=標準液の体積(ml)
MW=過酸化水素の分子量(34.01)
▲2▼過酸化水素濃度のファクター
{μmol(std1)/ΔOD(std1)+μmol(std2)/ΔOD(std2)+μmol(std3)/ΔOD(std3)}/3=Fm
上式で、
ΔOD=試料又は標準液のOD−ブランク(緩衝液のみ)のOD
▲3▼酵素活性
Fm×ΔOD×D/(20×A)=GU/g
上式で、
D=試料液の希釈率
20=インキュベーション時間(分)
A=試料グラム数
【0014】
また、本発明の油中水型油脂組成物には、必要に応じ、蛋白質、食塩、保湿剤、酸化還元剤及びアルカリ土類金属塩からなる群から選ばれた1種又は2種以上を添加することができる。これらの添加物を水相に配合することにより、酵素の周りの環境を、酵素が生体内にあった時の条件に近づけ、油中水型油脂組成物の流通保管中の酵素の活性を一層良好に保持することができる。
【0015】
上記蛋白質としては、乳蛋白、魚肉蛋白、畜肉蛋白、血清蛋白、卵蛋白、大豆蛋白、小麦蛋白、ゼラチンなどの各種蛋白源、その他、各種ポリペプチド、各種アミノ酸の中から選ばれた1種又は2種以上が挙げられる。さらに、上記乳蛋白源の例としては、生乳、生クリーム、全脂乳、脱脂乳、練乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、トータルミルクプロテイン、濃縮乳、濃縮脱脂乳、バターミルク、バターミルクパウダー、カゼイン、酸カゼイン、カゼインカリウム、カゼインカルシウム、カゼインマグネシウム、カゼインナトリウム、ホエーパウダー、ラクトアルブミン、醗酵乳、ヨーグルト、ケフィア、クアルク、チーズなどが挙げられ、上記卵蛋白源の例としては、卵白粉末、卵白、全卵、卵黄、酵素処理卵黄が挙げられる。
上記蛋白質の添加量は、0.05〜5.00重量%が好ましい。蛋白質の添加量が0.05重量%より少ないと、酵素活性の維持が難しく、5.00重量%より多く添加しても、酵素活性の維持機能が変わらない。
【0016】
食塩を用いる場合、添加量は0.01〜15.00重量%とするのが好ましい。食塩の添加量が0.01重量%より少ないと、酵素活性の維持効果がなく、15.00重量%より多いと、酵素活性の維持機能が変わらなくなったり、食塩結晶が油脂組成物中に析出する場合がある。
【0017】
また、上記 保湿剤としては、ぶどう糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、酵素糖化水飴、還元麦芽糖水飴、乳糖、還元澱粉糖化物、異性化糖、ショ糖結合水飴、各種オリゴ糖、各種還元糖、ポリデキストロース、グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコールなどのポリオール類、乳酸ナトリウムの中から選ばれた1種又は2種以上が挙げられる。
上記保湿剤の添加量は、好ましくは0.01〜40.00重量%、さらに好ましくは1〜35重量%である。保湿剤の添加量が0.01重量%より少ないと、酵素活性の維持効果がなく、40.00重量%より多いと、酵素活性の維持機能が変わらなくなったり、保湿剤が油脂組成物中の水に溶けきれなくなったりする。
【0018】
また、上記酸化還元剤としては、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、グルタチオン、システイン、臭素酸カリウム、過硫酸アンモニウム、アスコルビン酸脂肪酸エステル、エリソルビン酸、エリソルビン酸エステル、デヒドロアスコルビン酸、次亜塩素酸ナトリウム、フェリシアン化カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオグリコールの中から選ばれた1種又は2種以上が挙げられる。
上記酸化還元剤の添加量は、0.01〜0.50重量%が好ましい。酸化還元剤の添加量が0.01重量%より少ないと、酵素活性の維持効果がなく、0.50重量%より多いと、酵素活性の維持機能が変わらなくなったり、ベーカリー製品の生地が硬くなりすぎたり、軟らかくなりすぎたり、ベーカリー製品の風味に悪い影響を与えることがある。
【0019】
また、上記アルカリ土類金属塩としては、塩化マグネシウム、硫化マグネシウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、酸性ピロリン酸カルシウム、酸性リン酸カルシウム、水酸化カルシウム、ステアリル乳酸カルシウム、第一リン酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、ピロリン酸二水素カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸二水素カルシウムから選ばれた1種又は2種以上が挙げられる。
上記アルカリ土類金属塩の添加量は、0.001〜0.500重量%が好ましい。アルカリ土類金属塩の添加量が0.001重量%より少ないと、酵素活性の維持効果がなく、0.500重量%より多いと、酵素活性の維持機能が変わらなくなったり、ベーカリー製品の風味に悪い影響を与えることがある。
【0020】
また、本発明の油中水型油脂組成物には、必要に応じて、上記以外の任意の添加物や食品素材を配合することができ、該添加物及び食品素材としては、塩化カリウム、増粘多糖類、澱粉類、膨張剤、酸味剤、ステビアなどの甘味料、果実、果汁、コーヒー、茶、ナッツペースト、香辛料、カカオマス、ココアパウダー、チョコレート、うま味調味料、酸化防止剤、着色料、香料、酒類、醗酵風味料、トランスグルタミナーゼなどの酵素類、保存料、穀類、豆類、野菜類、魚介類、肉類などが挙げられ、これらを単独もしくは混合物として、本発明の効果を損なわない範囲内で配合することができる。
また、本発明の油中水型油脂組成物は、必要に応じて、製造後又は製造中、空気、窒素、炭酸ガスなどにより抱気させてもよい。
【0021】
次に、本発明の油中水型油脂組成物の製造方法を説明する。
本発明の油中水型油脂組成物は、その製造方法が特に制限されるものではなく、例えば次のようにして得られる。必要に応じて油溶性物質を油脂に添加した油相に、必要に応じて水溶性物質を水に添加した水相を加え、油中水型に混合する。この時、ホモミキサー、ホモゲナイザー、コロイドミルなどを使用し、ポンプで循環させながら乳化及び均質化することもできる。次いで、殺菌処理を施した後、又は殺菌処理をせずに冷却する。冷却はダイヤクーラーとコンプレクターの組み合わせ、ボテーター、コンビネーター、パーフェクターなどのマーガリン製造機やプレート式熱交換機で急冷したり、他の手段で徐冷する。酵素は他の水溶性物質と共に水に添加し、酵素の失活温度と製造工程の温度履歴を考慮して、酵素の活性が失われないよう、予備乳化物や冷却後の油中水型油脂組成物に混合する。
【0022】
本発明の油中水型油脂組成物を流通させる場合は、常温、冷蔵、冷凍いずれでも構わないが、酵素の活性を維持するには冷蔵が好ましく、使用する酵素の種類によっては、保管・配送中に油中水型油脂組成物の組成が変化しないよう、酵素活性を止めておくために、冷凍条件で流通させることもできる。
本発明の油中水型油脂組成物は、食パン、菓子パン、フランスパンなどのパン類、ビスケット、クッキー、クラッカーなどの菓子類を始め様々なベーカリー製品に使用でき、特に製菓・製パンに使用すると、酵素の作用により、製造時に使い易く、素材の持つ自然な風味を生かし、食感がクチャつかないベーカリー製品が得られ、また、酵素の活性は油脂組成物製造の際に失われず、油脂組成物の流通中にも充分維持される。
本発明の油中水型油脂組成物は、従来用いられているこの種の練り込み用油脂と同様に用いられ、またその使用量も、通常の範囲内で良い。パン生地に練り込む場合は、対粉約20重量%以下でよく、ケーキ生地に練り込む場合も通常の配合でよい。また、本発明の油中水型油脂組成物と通常の油脂組成物を混合して使用しても良い。
【0023】
【実施例】
以下に、実施例、比較例及び使用例を挙げ、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、例中の「部」及び「%」は特記しない限り重量基準である。
【0024】
実施例1〜7及び比較例1〜2
下記〔表1〕に示す配合組成に従い、次のようにして油中水型油脂組成物を得た。油脂と油相配合物を混合槽に入れ、60℃前後に調温し均一に溶解もしくは分散させて油相を調製した。また、水相配合物を水に投入して適温に調温し水相を調製した。上記水相を上記油相に添加し均一に攪拌均質化を行い、油中水型混合物とした。これをマーガリン製造機で急冷捏和し、これに予め水に溶解した酵素溶液を加え、縦型ミキサーで均一に混合し、油中水型油脂組成物を得た。配合した酵素は、α−アミラーゼが油脂組成物1g中1AU相当、グルコースオキシダーゼが油脂組成物1g中5GU相当である。
【0025】
使用例1
〔食パン焼成テスト〕
実施例1〜7及び比較例1〜2で得られた油中水型油脂組成物を、パン生地練り込み用油脂として用い、下記原料配合で下記製パン工程により食パンを製造した。
実施例及び比較例とも同一配合及び同一工程で食パンを製造したが、水分、糖分、塩分及び油分量が同一となるように、各配合物の量は微調整した。
得られた食パンの各種試験結果を下記〔表1〕の下部に示す。尚、下記〔表1〕におけるパン製造時の生地のベタツキ、パンの官能評価は次のようにして判定した。
*1 生地のベタツキは、パン製造者が感じた生地のベタツキを官能評価した。ベタツキが大きい(1点)〜ベタツキが無い(5点)の5段階評価を行った。
*2 パンの官能評価は、パンを20名に試食してもらい、各項目共、1(悪い)〜5(大変良い)の5段階評価を平均した。
【0026】
【表1】
【0027】
上記使用例1は、本発明の油中水型油脂組成物をパン生地練り込み用油脂として使用した場合の1例であり、本発明の油中水型油脂組成物を、食パンに限らず、各種パン、ケーキなどに利用した場合にも、同様の効果が得られることが確認されている。
【0028】
【発明の効果】
本発明の油中水型油脂組成物は、酵素活性が長期間保持され、ベーカリー製品に用いた場合、風味がよく且つ食感がクチャつかないベーカリー製品が得られ、しかも作業性がよいものであり、特に練り込み用油脂として好適なものである。
本発明の油中水型油脂組成物を練り込み用油脂として使用した場合の顕著な効果として次のような効果があげられる。
▲1▼添加した酵素の活性が油脂組成物の製造時に殆ど失われない。
▲2▼添加した酵素の活性が油脂組成物中に長期間保たれる。酵素活性は、酵素を水に溶かすより、油脂に分散した方が、長期間一定に保たれることが知られているが、酵素の高次構造は、内部が親油性で外部が親水性なので、酵素を油脂に分散した場合、分子の内部の親油性部位が外側に位置しようとして、酵素の高次構造が変わってしまい、かなりの割合で失活してしまう。本発明では、酵素が油中水型油脂組成物の水相中に存在させることにより、製造時の酵素の失活を抑えている。
▲3▼パン生地及びケーキ生地の調製に際し、作業性が向上する。
▲4▼パン及びケーキの食感がクチャつかない。
▲5▼パン及びケーキの素材の持つ自然な風味を損なわない。
Claims (7)
- 油脂と水と酵素からなり、乳化剤を含まず、該水の配合量は0.1〜17.0重量%であり、該酵素は水に添加されていることを特徴とする油中水型油脂組成物。
- 酵素が加水分解酵素及び/又は酸化還元酵素からなることを特徴とする請求項1記載の油中水型油脂組成物。
- 加水分解酵素がペプシン、トリプシン、キモトリプシン、パパイン、レンネット、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、アミログルコシダーゼ、プルラナーゼ、ペントサナーゼ、セルラーゼ、リパーゼ及びホスフォリパーゼからなる群から選ばれた1種又は2種以上であることを特徴とする請求項2記載の油中水型油脂組成物。
- 酸化還元酵素がカタラーゼ、リポキシゲナーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ、スルフィドリルオキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼ及びグルコースオキシダーゼからなる群から選ばれた1種又は2種以上であることを特徴とする請求項2記載の油中水型油脂組成物。
- 蛋白質、食塩、保湿剤、酸化還元剤及びアルカリ土類金属塩からなる群から選ばれた1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の油中水型油脂組成物。
- 練り込み用油脂であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の油中水型油脂組成物。
- 請求項1〜6の何れかに記載の油中水型油脂組成物を用いたことを特徴とするベーカリー製品。
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