JP3657013B2 - 白血球除去フィルター材料、白血球除去装置および白血球除去方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は白血球除去用のフィルター材料、白血球除去フィルター装置および白血球除去方法に関する。詳しくは、輸血用全血製剤または赤血球製剤から副作用の原因となる混入白血球を除去するためのフィルター材料、フィルター装置および方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
輸血分野においては、供血者から採血した血液に抗凝固剤を添加した全血製剤を輸血するいわゆる全血輸血に加え、全血製剤から授血者の必要とする血液成分を分離しこれを輸注するいわゆる成分輸血が一般的に行われている。成分輸血には、授血者が必要とする血液成分によって赤血球輸血、血小板輸血、血漿輸血などがあり、これらに用いられる血液成分製剤には赤血球製剤、血小板製剤、血漿製剤、などがある。また近年これら全血輸血及び成分輸血において、血液製剤中に含まれる混入白血球を除去して輸血する、いわゆる白血球除去輸血が行われるようになってきている。これは製剤中に混入している白血球が、輸血に伴う頭痛、吐き気、悪寒、非溶血性発熱反応、アロ抗原感作、輸血後GVHD、ウィルス感染などの副作用を誘発させることが明らかになったためである。
【0003】
頭痛、吐き気、悪寒、発熱などの比較的軽微な副作用を防止するためには、1回の輸血で授血者に注入される白血球数を1億個程度以下に抑える必要があるとされており、このためには血液製剤中の混入白血球数を10-1〜10-2以下になるまで除去する必要がある。また重篤な副作用の1つであるアロ抗原感作を予防するには、1回の輸血で注入される白血球数を500万個ないしは100万個以下に抑える必要があるとされ、このためには製剤中の白血球数を10-4以下になるまで除去することが必要である。輸血後GVHDやウィルス感染については、いまだ定説はないが、輸血後GVHD及びサイトメガロウィルスや成人T細胞白血病ウィルスのように、白血球内にのみ存在すると考えられているウィルスについては、製剤中の混入白血球数を10-4〜10-6以下にまで除去することで、その発症及び感染を予防できると期待されている。
【0004】
血液製剤から白血球を除去する方法には大別して、血液成分の比重差を利用した遠心分離法と、繊維素材や連続気孔を有する多孔質体を濾材とするフィルター法の2種類があるが、白血球除去能力の高いこと、操作が簡便であること、コストが低いことなどの理由によりフィルター法が広く用いられている。
【0005】
上記の繊維素材または多孔質体を用いたフィルター装置による白血球除去の主たる機序は、繊維或いは多孔質体の表面と接触した白血球がそれら材料表面に吸着されることによると考えられている。従来の白血球除去フィルター装置における高性能化の検討は、主にフィルター材料表面と白血球との接触頻度を高めること即ち繊維フィルター素子の平均繊維直径を小さくすること、フィルター装置内におけるフィルター材料の充填密度を高めること、或いはより均一な繊維径分布を有する不織布を用いること(特開平2−203909号)などに集中してい る。しかしながら、赤血球製剤或いは全血製剤の様に、製剤中に高い割合で赤血球を含む製剤において、上に挙げられるような手段のみを用いて高性能化を行うには限界がある。即ち、上記方法のようなフィルター材料の物理的構造をもって白血球の材料への接触頻度を高めるに伴い、製剤中に高濃度で存在する赤血球のフィルター材料表面への接触頻度および通過抵抗も高まり、処理時間の著しい延長や赤血球膜の破壊に伴う溶血が生じる等の問題があった。従って、上に挙げた高性能化手法を採用する場合には、赤血球の通過抵抗を考慮すると、おのずと許容し得るフィルター材料の物理的構造の範囲が存在し、またそれに伴って得られる白血球除去性能にも限界が存在する。従って、アロ抗原感作、輸血後GVH D、ウィルス感染などの重篤な副作用を予防するために製剤中の混入白血球数を10−4〜10−6以下にまで除去しようとすると、良好な処理時間の範囲内で濾過することが困難であった。
【0006】
一方、前述のような白血球除去機構(吸着)を考えれば、フィルター材料表面に適切な化学的性状を付与することによって、白血球のフィルター材料に対する吸着確率を高めることも可能であろうと考えられる。しかしながら、これまで輸血用の白血球除去フィルター材料の研究において、材料表面の化学的性状に着目して白血球除去率を高めようとしたものはほとんど無かった。
【0007】
材料表面の化学的性状に着目した検討例としては、特開平1−249063、WO87/05812、EP0500472A2、特公表3−502094(WO89/03717)などがある。
しかしながら、特開平1−249063で開示されている技術は、輸血用の血小板製剤から白血球を選択的に除去するのが目的であって、一般に吸着性の高い細胞として知られる血小板の通過率を向上させつつ、白血球の吸着性を維持するために適した材料表面の化学的性状として、親水性且つ不電荷を有するものが有用であることを開示しているに過ぎない。
またWO87/05812も同様に、白血球を選択的に吸着除去し、血小板は除去せずに通過させる「白血球の選択除去」技術を開示したものであるが、明細書中に「塩基性含窒素官能基を有する材料は、細胞を浮遊させるような生理的液体中で材料表面が正荷電を有するようになり、負荷電を有する血小板および白血球をともによく粘着させるというのが一般的な現象であった」との記載があり、この記載内容を裏付けるように、表面改質不織布を用いた実施例および比較例において、繊維の周囲表面部分を構成する材料の組成に占める塩基性含窒素官能基の割合が増すに従って白血球が10-2弱まで除去されたことが、新鮮全血を処理した実験によって示されている。更にWO87/05812の発明者らによる発表文献(Advanced methods for leucocyte removal by blood filtration.In:Brozovic B,ed.The Role of Leucocyte Depletion in Blood Transfusion Practice.oxford:Blackwell Scientific Publication.1989:35−40.)にも同様の内容の実験結果が開示されている。しかしながら、これらの公報および文献に記載されているフィルター材料を作成し、実際に血液製剤を濾過してみると、本願の比較例2および比較例5に示すごとく、赤血球製剤では期待される白血球除去率改善効果が得られなかった。また全血製剤、赤血球製剤いずれの場合にも、製剤中の混入白血球数を10-4〜10-6以下にまで除去することが出来なかった。更に、必ずしも該官能基の割合に比例して白血球除去率が高まるわけではなく、該官能基を高含有率で有するにもかかわらず、該官能基を有しない材料に比べてむしろ白血球除去率が低下する場合さえあった。
【0008】
またEPO500472A2は、赤血球製剤から白血球及び血小板を除去するに際し、ゼータ電位がプラスのフィルター材料を用いることによって良好な赤血球の通過性を維持しつつ血小板の除去率を高めることを目的とした技術であり、白血球の除去率を高めることを目的としたものではない。明細書中には、ここで開示されている表面改質技術を適用せずとも、白血球は良好に除去される旨の記載があり、当然ながら白血球除去率を高めるための具体的要件(例えば本願によって開示される塩基性官能基の非イオン性官能基に対する比率や塩基性官能基の密度など)についての具体的な記載はない。実際、実施例と比較例とを対比しても、該技術によって白血球除去率が高まることを明確に示すものはなく、逆に白血球除去率が低下している例も見られる。実施例6において、4級アンモニウム塩を有するコーティング材を被覆したポリウレタン製のスポンジによって、赤血球製剤中の白血球が10-3.7まで除去されたことが示されているが、10-4〜10-6以下にまで除去した例はない。またフィルター材料用の基材についても、エジプト綿、ポリビニルホルマール多孔質体、ポリウレタン多孔質体について開示しているのみであり、好適なフィルター材料もしくはフィルター材料用の基材として広く用いられている、合成繊維からなる不織布をはじめ上記以外の素材及び形態を有するものに付いての具体的詳細な記載はない。また4級アンモニウム塩は抗菌性を有することが広く知られているが、その作用は4級アンモニウム塩が細菌の細胞膜を破壊することによってもたらされると考えられている(池田富樹(いけだとみき)他、「抗菌性ポリカチオン」。竹本喜一他編、高分子と医療、459〜496ページ、三田出版会、1989年)。従って赤血球膜に対してもダメージを与える恐れがきわめて強く、輸血用フィルターとしての安全性、有効性に問題があった。
【0009】
また特公表3−502094(WO89/03717)は、フィルター材料に親水性を付与して血液によるプライミングを容易にするのが目的であり、白血球除去率を高めるのが目的ではない。実際ここで開示されている表面改質技術によって白血球の吸着確率が向上したという記載もない。
これらの公知技術には、フィルター材料表面に適切な化学的性状を付与することによって、白血球のフィルター材料に対する吸着確率を高めようという観点はなく、従って、白血球除去率を高めるための材料として具備すべき化学的性状についての記載もなかった。更にこれらの技術によって白血球除去率が改善したことを示す記載もほとんど見あたらなかった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、輸血用の白血球除去フィルター材料において、白血球の吸着力向上に顕著な効果を持ち、全血及び赤血球製剤を通じて混入白血球数を10−4〜10−6以下にまで除去するために必要且つ十分な材料表面の化学的性状につい て、本格的に言及したものはなく、上記の目標を達成しようとすれば多量のフィルター材料を用いることが必要であった。従って濾過時の流速を良好に維持しようとすれば、フィルター装置内におけるフィルター材料の充填密度を下げざるを得ないためにフィルター装置の容積が大きくなって、一般にフィルター装置と共に廃棄する血液量が増えて赤血球回収率が低く、また、赤血球回収率を90%以上にしようとすれば、フィルター装置内におけるフィルター材料の充填密度を高めざるを得ず、このために血液処理時の低い流速及びその経時的な著明な低下を容認せざるを得なかった。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の目的は、赤血球製剤もしくは全血製剤を輸血する際に用いられる白血球除去用フィルター装置に好適に用いることのできる、白血球除去能力の高いフィルター材料を提供すること、より詳しくはフィルター材料表面に一定の化学的性質を与えることによって、白血球を10-4〜10-6以下にまで除去出来ると同時に、90%以上の赤血球回収率と良好なる処理時間を達成できる優れたフィルター材料を提供することにある。
また本発明の第2の目的は、赤血球製剤もしくは全血製剤用の白血球除去能力の高い白血球除去用フィルター装置を提供すること、より詳しくは一定の化学的性質を付与したフィルター材料を適切にフィルター装置内に配置する事によって、白血球を10-4〜10-6以下にまで除去出来る優れたフィルター装置を提供することにある。
また本発明の第3の目的は、赤血球製剤もしくは全血製剤を輸血する際に高い白血球除去率を達成出来る、白血球除去方法を提供すること、より詳しくは一定の化学的性質を付与したフィルター材料を用いて上記血液製剤を濾過する事によって、白血球を10-4〜10-6以下にまで除去出来る白血球除去方法を提供することにある。
【0012】
本発明者らは上記の目的に従い、フィルター材料表面への荷電の導入による白血球吸着力の向上を考え、導入する荷電の種類、またその導入量について鋭意検討を進めてきた。正の荷電を有する種々の塩基性官能基を持つ重合性モノマー を、放射線グラフト法によって表面に直接重合させた不織布及び高分子多孔質 体、または該モノマーを重合して得たポリマーを表面にコーティングした不織布及び高分子多孔質体を用い、これらの白血球除去性能を検討したが、意外なことに、これらの不織布または高分子多孔質体がその表面部分に高含有率で塩基性窒素原子を持つにも関わらず白血球除去性能が改善されないか、むしろ低下する場合もあることを見いだした。そこで、塩基性官能基が白血球の吸着に顕著な改善効果を持ち得る材料表面の化学的性質とは何かという観点から更に検討を行った結果、驚くべきことに、塩基性官能基を有する材料表面が高い白血球除去性能を持つには、材料表面が塩基性官能基と非イオン性親水基とを至適範囲の比率で含有する必要があり、且つ材料表面の塩基性官能基密度が好適な範囲に制御されている必要があることを見いだし本発明を完成させるに至った。
【0013】
即ち、本発明は表面にジメチルアミノエチルアクリレートまたはジメチルアミノエチルメタアクリレートのいずれかに由来する塩基性官能基と2−ヒドロキシルエチルアクリレートまたは2−ヒドロキシルエチルメタアクリレートのいずれかに由来する非イオン性親水基とを有し、該表面における塩基性官能基の非イオン性親水基に対するモル比が0.7〜2.5の範囲にあり、かつ塩基性官能基が5×10−5〜0.1meq/m2 の密度で該表面に存在することを特徴とする、繊維または連続気孔を有する高分子多孔質体からなる、全血または赤血球製剤から白血球を除去するためのフィルター材料、血液の入口及び出口を有する容器内に、繊維及び/または連続気孔を有する高分子多孔質体からなる白血球除去フィルター材料を充填し、該材料によって前記血液の入口及び出口が隔てられてなる白血球除去フィルター装置において、該材料の一部もしくは全部が、表面にジメチルアミノエチルアクリレートまたはジメチルアミノエチルメタアクリレートのいずれかに由来する塩基性官能基と2−ヒドロキシルエチルアクリレートまたは2−ヒドロキシルエチルメタアクリレートのいずれかに由来する非イオン性親水基とを有し、該表面における塩基性官能基の非イオン性親水基に対するモル比が0.7〜2.5の範囲にあり、かつ塩基性官能基が5×10−5〜0.1meq/m2 の密度で該表面に存在するフィルター材料であることを特徴とする白血球除去フィルター装置及び輸血用全血製剤または赤血球製剤から白血球を除去するに際し、これらの製剤を、表面にジメチルアミノエチルアクリレートまたはジメチルアミノエチルメタアクリレートのいずれかに由来する塩基性官能基と2−ヒドロキシルエチルアクリレートまたは2−ヒドロキシルエチルメタアクリレートのいずれかに由来する非イオン性親水基とを有し、該表面における塩基性官能基の非イオン性親水基に対するモル比が0.7〜2.5の範囲にあり、かつ塩基性官能基が5×10−5〜0.1meq/m2 の密度で該表面に存在する、繊維または連続気孔を有する高分子多孔質体からなるフィルター材料を用いて濾過することを特徴とする白血球の除去方法である。
【0014】
本発明のフィルター材料においては、材料の表面が塩基性官能基と非イオン性親水基とを有しており、該表面部分に含有される塩基性官能基の非イオン性親水基にたいするモル比が0.6〜6であることが必要である。塩基性官能基含量が非イオン性親水基含量の0.6倍モル未満であると十分な白血球除去性能の向上効果が得られず、また塩基性官能基含量が非イオン性親水基含量の6倍モルを越える場合にも、理由は必ずしも明らかではないが、十分な白血球除去性能の向上効果が得られないことがあるため不適である。より好ましい塩基性官能基含量の非イオン性親水基に対する比は0.6〜4.0であり、さらに好ましくは0.7〜2.5である。
本発明において塩基性官能基とは、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基などのアミノ基、ピリジル基、イミダゾリル基などの含窒素芳香環基をいう。この中でも、医療用具としての安全性が高いという点でアミノ基は好ましい官能基であり、第3級アミノ基がより好ましい。
【0015】
また本発明において非イオン性親水基とは、ヒドロキシル基、アミド基、エーテル基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホキシド基、スルホニル基、ホスホリル基、ホスホ基、カルボキサミド、スルホンアミド、チオ酸アミド、シアノ基、シアナート、チオシアナート、イソシアナート、イソチオシアナート、チオカルボン酸などを言うが、親水性の高いヒドロキシル基、アミド基、エーテルのうちエチレンオキシド単位の繰り返しからなるポリエチレンオキシド鎖が好ましい。ただしポリエチレンオキシド鎖については、そのエチレンオキシド単位の繰り返し数によらず、即ちポリエチレンオキシド鎖の長さに関わらず、ポリエチレンオキシド鎖1本を1官能基と数える。材料に含まれるポリエチレンオキシド鎖の鎖長が一律でない場合には、ポリエチレンオキシド鎖の数平均鎖長を求め、該平均鎖長に含まれるエチレンオキシド単位数相当を1官能基と数える。
【0016】
また本発明において、フィルター材料表面に含有される塩基性官能基の密度 は、5×10−5〜0.1meq/m2 であることが必要である。フィルター材料表面の塩基性官能基の密度が5×10−5未満の場合には、塩基性官能基と非イオン性親水基との比率が至適範囲内にある場合でも十分な白血球除去率改善効果が得られないため不適である。また0.1meq/m2 を越えると、赤血球に対して損傷を与える傾向が出てくるため不適である。材料表面の好ましい塩基性官能基密度は10−4〜5×10−2meq/m2 であり、より好ましくは5×10−4〜1×10−2meq/m2 である。
【0017】
なお、材料表面に含有される塩基性官能基の非イオン性親水基に対する比率はX線光電子分光法(XPS)、オージュ電子分光法(AES)、2次イオン質量分析法(SIMS)、多重全反射フーリエ変換赤外線分光法(ATR−FTIR)などの公知の方法により測定することが出来る。また、材料表面を適当な方法を用いて抽出し、その抽出物質の該官能基の比率を上記の公知の手法や核磁気共鳴スペクトル法(NMR)などを用いて分析してもよい。また塩基性官能基の量は、トリパンブルーなどの酸性色素の吸着量や、酸塩基滴定から求めることも出来る。
また、本発明における材料表面の塩基性官能基密度は以下の方法で求められる値を言う。まず、上記の手法の何れかを用いて該フィルター材料単位重量当たりの表面塩基性官能基量を測定する。次に単位重量当たりの全細孔表面積を水銀圧入法を用いて測定し、この値をもって材料単位重量当たりの表面塩基性官能基量を除し、材料単位表面積当たりの表面塩基性官能基量、即ち塩基性官能基表面密度を算出する。
【0018】
フィルター材料の単位重量当たりの全細孔表面積の水銀圧入法による測定は、以下の方法で行う。
フィルター材料の一部をサンプリングし、その重量(W)を測定する。該サンプルについて水銀ポロシメーター(ポアサイザー9310 PC2A形、株式会社島津製作所、京都、日本または同等の機種)で0.1〜180psiaの圧力範囲で全細孔表面積(A)を測定し、次式から単位重量当たりの全細孔表面積を求める。
単位重量当たりの全細孔表面積=A/W
なお、単位重量当たりの全細孔表面積を求めるに当たっては、フィルター材料の3箇所以上をサンプリングし、その平均値を求めるのが好ましいが、複数箇所を測定した結果、その一部箇所が本発明で規定する範囲に入り、残る箇所が該範囲を逸脱している場合、このような材料も本特許の権利範囲内に含まれると考えるべきである。
【0019】
本発明における塩基性官能基及び非イオン性親水基は、フィルター材料を構成する高分子自身が持つ塩基性官能基及び非イオン性親水基であっても、また本来塩基性官能基もしくは非イオン性親水基或いは両官能基を持たないフィルター用の材料(以下フィルター材料用の基材もしくは単に基材と称す)に塩基性官能基及び非イオン性親水基を有するモノマー、ポリマーなどを共有結合、イオン結合、物理吸着、包埋或いは材料の基材表面への沈澱不溶化などのあらゆる公知の方法を用いて固定することによって導入してもよいが、放射線グラフトやプラズマグラフトなどのグラフト重合法によって、塩基性官能基を有するモノマー及び非イオン性親水基を有するモノマーを基材表面へ直接グラフト重合させる方法及び、塩基性官能基と非イオン性親水基とを有するポリマーを基材表面にコーティングする方法が比較的簡便に製造可能であること、且つ性能の安定性にも優れるため好ましい。なおポリマーコーティングをする場合には、ポリマーの基材からの脱落を防ぐため、コーティング後にポリマーを架橋しても良い。
【0020】
これら好ましい方法によりフィルター材料用の基材の表面に固定化出来る物質の例を挙げるならば、グラフト重合法により固定化出来る塩基性官能基を有する物質としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの(メ タ)アクリル酸の誘導体、p−ジメチルアミノメチルスチレン、p−ジエチルアミノエチルスチレンなどのスチレン誘導体、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、4−ビニルイミダソールなどの含窒素芳香族化合物のビニル誘導体などがあげられる。以上の物質の中でも、入手のしやすさ、グラフト重合時の扱いやすさなどから、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸の誘導体が好ましく用いられる。
【0021】
またグラフト重合法により固定化出来る非イオン性親水基を有する物質の例としては、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸の誘導体や酢酸ビニル(重合後、加水分解させてビニルアルコールとする)などのヒドロキシル基を有するもの、(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドンなどのアミド基を有するもの、またポリエチレングリコール鎖を有するモノマーとしてメトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシノナエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクタエチレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
更に非イオン性親水基と塩基性官能基とを共に有する物質の例としては、エポキシ環を有する物質例えばグリシジル(メタ)アクリレートなどにジメチルアミンなどの第1級もしくは第2級アミノ基を有する物質を反応させた誘導体、などが挙げられる。
【0022】
またコーティングによって固定化できる物質としては、上記の塩基性官能基を有するモノマー(以下、単に塩基性モノマーと称す)1種以上と非イオン性親水基を有するモノマー(以下、単に親水性モノマーと称す)1種以上とを重合して得られる共重合体、及びこれらの塩基性モノマー1種以上と親水性モノマー1種以上に加え、イオン的に中性で非イオン性親水基を持たない重合性モノマー(以下単に中性モノマーと称す)1種以上及び/または酸性官能基を有する重合性モノマー(以下、単に酸性モノマーと称す)1種以上とを重合して得られる共重合体などが挙げられる。更には非イオン性親水基と塩基性官能基とを共に有するモノマー(以下、単に親水且つ塩基性モノマーと称す)の単独重合体または2種以上の親水且つ塩基性モノマーを重合して得られる共重合体、もしくは1種以上の親水且つ塩基性モノマーと、塩基性モノマー、親水性モノマー、中性モノマー、酸性モノマーの中から任意に選択した1種以上のモノマーとを重合して得られる共重合体などがある。これらのモノマーを重合する際には、ランダム共重合法、ブロック共重合法、、交互共重合法や、モノマーの一部をあらかじめ重合してマクロモノマー化した後、該マクロモノマーとモノマーとを共重合するなどあらゆる公知の方法を用いることができるが、重合のしやすさからランダム共重合法が特に好ましい。
【0023】
ここで用いられる中性モノマーの例としてはスチレン、メチル(メタ)アクリレートなどのビニル基を有するもの、アセチレン基を有するものなどがあり、また酸性モノマーとしてはメタクリル酸などのカルボキシル基を有するもの、スチレンスルホン酸、などのスルオン酸基を有するもの、モノ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、モノ(2−(メタ)アクリロイルオキシブチル)アシッドホスフェートなどのリン酸基を有するものなどが挙げられる。
【0024】
また、上記の塩基性モノマーを重合して得られる(共)重合体と、親水性モノマーを重合して得られる(共)重合体とをブレンドしコーティングする方法を採用しても良い。更に、エポキシ環を有する物質、例えばグリシジル(メタ)アクリレートを重合して得た重合体をフィルター材料用の基材にコーティングし、これにジメチルアミンなどの第1級もしくは第2級アミノ基を有する物質を反応させ塩基性官能基と非イオン性親水基を誘導させる方法を採用しても良い。
【0025】
本発明におけるフィルター材料ないしフィルター材料用の基材は、メルトブロー法やフラッシュ紡糸法或いは抄造法などにより作成された不織布の他、紙、織布、メッシュ及び多孔質体などの公知のフィルター材料の何れの形態であってもよいが、不織布は特に好適な形態である。なおここで不織布とは、編織によらずに繊維或いは繊維の集合体が、化学的、熱的、または機械的に結合された布状のものをいう。繊維と繊維とが互いに接触することによる摩擦により、或いは互いにもつれ合うことなどにより一定の形状を保っている場合、機械的に結合されたことに含める。
【0026】
フィルター材料用の基材が繊維よりなる場合、その繊維素材の例を挙げるならば、ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリトリフルオロクロルエチレン、ポリメチルメタアクリレート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成繊維や、セルロースアセテート、キュプラアンモニウムレーヨン、ビスコースレーヨンなどの再生繊維、麻、綿、絹、毛繊維などの天然繊維であるが、次に述べる本発明に好ましい特性をもつ繊維を形成させる際の製造のし易さなどから合成繊維はより好ましい素材である。また、この中でもポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンはより好ましい。
【0027】
本発明においてフィルター材料が繊維よりなる場合には、これらの繊維からなる繊維フィルター素子の平均繊維直径が0.3〜5μmであることが好ましく、0.3〜3.5μmであることがより好ましく、更に0.5〜2.5μmであることがより好ましい。これは、平均繊維直径が0.3μm未満の場合には、赤血球製剤や全血製剤を濾過する際の圧力損失が高まりすぎて実用的でなく赤血球を破壊する恐れがあり、一方平均繊維直径が5μmを越えると繊維表面と白血球の接触頻度が低すぎるために発明の効果が十分に発揮されない恐れがあるためである。
【0028】
本発明でいう平均繊維直径とは以下の手順で求められる値をいう。即ちフィルター材料を構成する1枚または複数枚の不織布、織布、紙、メッシュから実質的に均一と認められる繊維フィルター素子の一部分をサンプリングし、走査型電子顕微鏡などを用いて写真撮影する。サンプリングに際しては、繊維フィルター素子を1辺が0.5cmの正方形によって区分し、その中から6箇所をランダムサンプリングする。このサンプリングした6区分の内、3区分はフィルター装置内に充填する場合に血液の入口側に配置されると想定される面(便宜上、以下a面と呼ぶ)を、また残りの3区分は血液の出口側に配置されると想定される面(便宜上、以下b面と呼ぶ)について中央部分を拡大倍率2500倍で写真にとる。サンプリングした各区分につき写真を撮影していき、その写真にとられた繊維の合計本数が100本を越えるところで撮影を終了する。こうして得た写真について、写っている全ての繊維の直径を測定する。ここでいう直径とは、繊維軸に対して垂直方向の繊維の幅をいう。測定した全ての繊維直径の和を、測定した繊維の数で割った値を平均直径とする。但し複数の繊維が重なりあっており、他の繊維の陰になってその幅が測定できない場合、また複数の繊維が溶融するなどして太い繊維になっている場合、更に著しく繊維直径の異なる繊維が混在している場合、等々の場合には、これらのデータは削除する。また測定を行った繊維フィルター素子において、a面、b面の繊維径の間に統計的有意差があった場合には、もはやこれを同一の繊維フィルター素子とは認めない。この場合、このa面側とb面側とを異なる繊維フィルター素子とする。
なおここで繊維フィルター素子とは、不織布、織布、紙及びメッシュなどよりなる繊維布層の1層または複数層から構成され、該繊維布層の各平均繊維直径が該複数繊維布層全体の平均繊維直径と実質的に同一である繊維布構造体である。
また、繊維フィルター素子のF値は、1.6〜10g/秒/mであることが好ましく、2.0〜8g/秒/mであることがより好ましく、2.4〜6g/秒/mであることが更に好ましい。ここでF値とは、日本工業規格JISL−1096に規定されている試験によって測定した繊維フィルター素子の通気量、即ち、20℃において繊維フィルター素子の表裏面に差圧12.7mmAqを設けた際に該素子を1秒間に通過する空気の量を該素子1cm2 当たりに換算した値(単位=L/秒/cm2 )、と該素子の1cm2 当たりの重量即ち目付(単位=g/cm2 )をかけた値を言う。F値が1.6を下回ると血液の通過抵抗が高まって十分な流速が得られなかったり、血液処理に伴う経時的な流速の低下が大きく実用に適さない傾向が強まるため好ましくない。またF値が10を越えると、白血球とフィルター材料との接触頻度が少なく、白血球除去率が低くなる傾向があり好ましくない。
【0029】
繊維より成る本発明のフィルター材料を容器内に充填し白血球除去フィルター装置として用いる場合には、その充填密度は、0.08〜0.4g/cm3 であることが好ましく、0.1〜0.35g/cm3 であることがより好ましく、更に0.15〜0.3g/cm3 であることがより好ましい。0.08g/cm3 未満の場合には繊維間の間隙が大きすぎるため、白血球の繊維表面への接触頻度が低下し本発明の効果が十分に得られない恐れがあるため好ましくなく、また0.4g/cm3 を越えると繊維間の間隙が小さくなりすぎ赤血球通過の際の圧力損失が高まり実用的でないため好ましくない。なおここで充填密度とは、容器内に納められた状態での有効濾過面積部分についてのフィルター材料の重量を、その(有効濾過面積×厚み)で割った値である。
また、白血球除去フィルター装置のP値は、3〜50mmAq/gであることが好ましく、7〜40mmAq/gであることがより好ましく、13〜30mmAq/gであることが更に好ましい。ここでP値とは、白血球除去フィルター装置の通気圧損を、該装置に充填されている平均繊維直径0.3〜5μmのフィルター材料の有効濾過断面部分における重量で割った値である。なお、通気圧損は以下の方法によって測定される値を言う。フィルター装置の血液入口側から血液出口側に向かって、室温下、3L/分の一定流速で乾燥空気を流し、該フィルター装置における圧力損失を測定する。P値が3を下回る場合には、白血球除去率が低下する傾向があり、また50を越える場合には、処理時間が延長する傾向が強まるため好ましくない。
【0030】
フィルター材料もしくはフィルター材料用の基材が連続気孔を有する高分子多孔質体である場合、その多孔質体基材の素材の例としては、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、セルロース、セルロースアセテート、ポリビニルアセタール、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0031】
また本発明におけるフィルター材料として用いられる高分子多孔質体は、平均孔径が1〜60μmであることが好ましく、1〜30μmであることがより好ましく、更に1〜20μmであることがより好ましい。平均孔径が1μm未満では、赤血球の通過が困難になる恐れがあるため好ましくなく、逆に60μmを越えると多孔質体表面と白血球の接触頻度が低すぎるために、本発明の効果が十分発揮されない恐れがあるため好ましくない。
【0032】
また高分子多孔質体の平均空隙率は、45〜95%であることが好ましく、70〜95%であることがより好ましく、更に80〜95%であることがより好ましい。平均空隙率が45%未満では、赤血球を通過させる空間を十分に提供できない恐れがあるため、また逆に95%を越える場合には、フィルター材料としての機械的強度が不足する傾向があるため好ましくない。
【0033】
なお、本発明において、平均空隙率及び平均孔径とは以下に示す水銀圧入法によって求められる。
フィルター材料を構成する多孔質フィルター素子からランダムに3箇所を一定面積(S)サンプリングし、それぞれの厚み(t)をピーコック厚み計を用いて測定し、これらの値から各サンプルの見かけの体積(V1 =S×T)を求める。各サンプルについて0.1〜180psiaの圧力範囲で測定される全細孔容積(V2 )及び全細孔表面積(A)を求める。これらの値を用いて下記の▲1▼式から空隙率を、▲2▼式から平均孔径を求める。
空隙率=(V2 /V1 )×100(%) ………▲1▼
3箇所の空隙率の平均値を求め、これを多孔質体の平均空隙率とする。
平均孔径=(4×V2 )/A ………▲2▼
3箇所の平均孔径の平均値を求め、これを多孔質体の平均孔径とする。
なお、ここで多孔質体素子とは、連続気孔を有する高分子多孔質体の1層または複数層から構成され、該多孔質体層の各平均孔径及び平均空隙率が該複数多孔質体層全体の平均気孔率及び平均空隙率と実質的に同一である多孔質構造体である。
【0034】
本発明において、繊維または連続気孔を有する高分子多孔質体からなるフィルター材料の純水湿潤時間は、40秒未満であることが好ましく、30秒未満であることがより好ましく、10秒以下であることが更に好ましい。純水湿潤時間が40秒以上の場合、純水とほぼ同じ表面張力を持つ血漿に対してフィルター材料の湿潤性が低いため、本発明の材料を用いた白血球除去フィルターで血液製剤を濾過する際に血液の流れが阻害される恐れがあり好ましくない。
なおここで言う純水湿潤時間とは以下の手順により求められる値である。即ち、蒸留水10μlを測定する材料表面上に滴下し、滴下直後からこの水滴が材料に湿潤吸収されるまでの時間を計測する。この試験を5回繰り返して行い、これら測定値の平均値を求め、材料の純水湿潤時間とする。
【0035】
また繊維及び/または連続気孔を有する高分子多孔質体からなるフィルター材料を容器内に充填し白血球除去フィルター装置として用いる場合には、平均繊維直径が0.3〜5μmである繊維よりなるフィルター材料及び/または平均孔径が1〜60μmである多孔質体よりなるフィルター材料の合計の厚みが、1〜10mmであることが好ましく、2〜8mmがより好ましく、3〜6mmが更に好ましい。1mm未満では十分な白血球除去率を得られない傾向があり、また10mmを超えると処理時間が延長する傾向が強まる。
【0036】
繊維よりなる本発明のフィルター装置は、血液の入口側から出口側にかけて、順次平均繊維直径の小さい繊維フィルター素子が配置されていることが好まし く、特に平均繊維直径の最も小さい素子よりも血液の入口に近い位置に、該素子の1.2倍以上且つ5μm以下の平均繊維直径を有するフィルター素子が配置されていることが好ましい。平均繊維直径の最も小さい素子は、最も白血球吸着効率に優れた素子であるが、それ故に吸着した白血球によって目詰まりを起こしやすく、血液製剤がここに至る前に、比較的平均繊維直径の大きなフィルター素子によって、白血球を粗く除去しておくことが好ましい。
【0037】
本発明のフィルター装置は、有効濾過面積/フィルター厚みが、50〜300であることが好ましく、70〜250であることがより好ましく、90〜200であることが更に好ましい。ここでフィルター厚みとは、平均繊維直径が0.3〜5μmの繊維からなるフィルター材料及び/または平均孔径が1〜60μmの高分子多孔質体からなるフィルター材料のフィルター装置内における厚み、即ちフィルター材料内を血液が流れる際の最短距離を言う。有効濾過面積/厚みが50を下回ると、血液処理に際しての経時的な流速低下及び白血球除去率の低下が大きく、微小凝集物数や白血球数の異なる種々の血液製剤を処理する場合に、安定した性能を発揮する事が難しくなる傾向が強まるため好ましくない。また有効濾過面積/厚みが300を越えると、赤血球回収率90%以上を達成しようとした場合に許容されるフィルター厚みが小さすぎて、白血球残存率10−4〜10−6を達成するために必要な量のフィルター材料を充填することが難しくなり、安定的に製造する事が困難になる傾向が強まるため好ましくない。
【0038】
本発明の白血球除去フィルター装置及び白血球除去方法は、平均繊維直径が 0.3〜5μmの繊維からなるフィルター材料及び/または平均孔径が1〜30μmの高分子多孔質体からなるフィルター材料の重量1g当たりの処理血液量 が、0.1〜0.5単位であることが好ましく、0.15〜0.45単位であることがより好ましい。ここで処理血液量1単位とは、500mLの血液に抗凝固剤を必要量添加して得た全血製剤、もしくは該全血製剤から遠心分離などの方法によって貧血小板血漿、多血小板血漿、バフィーコート等を除去して得た赤血球製剤、更には全血製剤から遠心分離などの方法によって貧血小板血漿、多血小板血漿、バフィーコート等を除去した後、SAGM、AS−1、AS−3、MAP等の赤血球保存液を添加して得た赤血球製剤を言う。0.1単位を下回る場合には、フィルター材料またはフィルター装置とともに廃棄される血液が多いために赤血球回収率が低下する傾向があり、0.5単位を越える場合には白血球除去率及び流速が低い傾向が強まるため好ましくない。
【0039】
【実施例】
次に実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。
なお、処理時間は全ての実施例で25分以下であり、良好な流速を維持することができた。
【0040】
【実施例1】
特級エタノール中に、ジメチルアミノエチルメタアクリレート(以下DMと略す)を0.5モル/L、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート(以下HEMAと略す)を0.5モル/Lの濃度になるように加え、全量を250mlとした。重合開始剤としてV−65を0.01モル/Lの濃度になるように加え、窒素雰囲気下、45℃にて4.5時間重合させた後、蒸留水に滴下して析出した物質を集めて凍結乾燥し、DMとHEMAとの共重合体を得た。
平均繊維直径1.8μmのメルトブロー法により製造されたポリエステル不織布を充填密度0.18g/cm3 、厚み1.5mmに、その下層に平均繊維直径1.2μmのポリエステル不織布を充填密度0.2g/cm3 、厚み3mmになるように、有効濾過面積67mm×67mmの容器に充填した後、上記の共重合体を特級エタノールに0.01g/dlの濃度になるように溶解した共重合体液を上記容器に充填し1分間静置した。ついで窒素ガスによって充填した共重合体液を追い出した後、更に10分間窒素ガスを5L/分で流し続け、更に70℃で7時間真空乾燥させることにより、上記共重合体をポリエステル不織布にコーティングした白血球除去フィルター材料及び該材料からなる白血球除去フィルター装置を作成した。
400mlの血液に56mlのCPDを加えて調製した全血456mlから、採血後8時間以内に遠心分離によって多血小板血漿200mlを除去して調製し、4℃で3日保存した赤血球濃厚液(ヘマトクリット69%)320mlを、25℃になるまで室温(26℃)に放置した後、上記フィルター装置にて濾過した。濾過を開始する際、フィルター装置を血液回路を介して赤血球製剤が入っている血液バッグに接続した後、血液バッグを手でつかんで加圧し強制的にフィルター装置内に血液を満たした。かくしてフィルター装置内に血液が満たされた後、落差1.0mで血液を流し、血液バッグ内に血液が無くなるまで濾過を行い濾過した血液を回収した(以下、回収された赤血球製剤を回収液という)。
【0041】
濾過前の赤血球製剤(以下、濾過前液という)及び回収液の体積、白血球数を測定し白血球残存率を求めた。
白血球残存率=(回収液中の白血球数)/(濾過前液中の白血球数)
なお、濾過前液及び回収液の体積は、それぞれの重量を血液の比重(1.075)で割った値とした。また濾過前液の白血球濃度の測定は次の方法で行った。
濾過前液の白血球濃度の測定:チュルク液によって、10倍希釈した濾過前液をバーガーチュルク型の血球計算盤に注入し、光学顕微鏡を用いて大区画4区画中に存在する白血球をカウントし、この値をn1 とした。
濾過前液白血球濃度=n1 ×(1/4)×105 個/ml
濾過前液中の白血球数=(濾過前液白血球濃度)×{濾過前液体積(ml)}
【0042】
また、回収液の白血球数の測定は、以下に示す方法によって行った。
回収液の白血球数の測定:回収液100mlに5%フィコール400DLのEBSS溶液(以下フィコール液という)100mlを振とう混和しながら加えた後、40分間静置した。静置後、沈降している赤血球層を乱さないように注意深く上澄を回収した後、再び100mlのフィコール液を加え、同様の操作を繰り返した。2回の操作により回収された上澄をコーニング25350遠心チューブに分注し、840×g、15分間遠心し、沈査を吸い上げぬように注意しながら、上澄をアスピレータで廃棄した。各遠心チューブに200mlの溶血液(1.145%しゅう酸アンモニウム生理食塩液)を加えて振とう混和し、ただちに468×g、10分間遠心し、沈査を吸い上げぬように注意しながら、上澄をアスピレータで廃棄した。
沈査を容量15mlの遠心チューブに集め、溶血液を加えて全量を15mlとした後、10分間室温に静置した。静置後、468×g、10分間遠心し、沈査を含む0.5mlを残して、上澄を慎重に廃棄した。沈査を含む液を十分に攪拌して単一細胞浮遊液とした後、蛍光染色液(69.9mg/Lアクリジンオレンジ液)50μlを加え、更に攪拌した。この液を、改良型ノイバウエル式血球計算盤6枚に注入し、落射式蛍光顕微鏡を用いて大区画108区画中に存在する白血球をカウントした。
このカウント値n2 から次式によって、回収液白血球数を算出した。
回収液白血球数=n 2 ×(1/108)×10 4 ×0.55×(1/0.55)×{回収液体積(ml)}/100
下線部が回収液100mlからフィコール液を用いて最終的に0.55mlまで濃縮した液(以下濃縮液という)中の白血球濃度(個/ml)であり、これに濃縮液の体積0.55mlを乗じて白血球数を算出する。更に0.55で割るのは、フィコール液を用いて白血球を回収する際の回収率が55%であるためである。以上の結果、白血球残存率は10 −5 であった。
なお、本実験で用いたフィルター材料の塩基性官能基の非イオン性親水基に対する比は0.97、塩基性官能基の表面密度は1.2×10 −3 meq/m2 であった。また、F値は平均繊維直径1.8μmの繊維フィルター素子が5.5g/秒/m、平均繊維直径1.2μmの繊維フィルター素子が3.3g/秒/mであった。また純水湿潤時間は、平均繊維直径1.8μm、1.2μmのフィルター材料ともに19秒であった。
また、フィルター装置のP値は、14.2mmAq/gであった。
【0043】
【比較例1】
平均繊維直径1.8μmのポリエステル不織布を充填密度0.18g/cm3 、厚み1.5mmに、その下層に平均繊維直径1.2μmのポリエステル不織布を充填密度0.2g/cm3 、厚み3mmになるように、有効濾過面積67mm×67mmの容器に充填した。このようにして作成したフィルター装置に、実施例1と同一の条件、方法で血液を流し実験を行った。その結果、白血球残存率は10-3.7であった。
なお、本実験の不織布繊維表面の塩基性官能基、非イオン性親水基の比を測定しようとしたが、両官能基を検出することはできなかった。又、F値は平均繊維直径1.8μmの繊維フィルター素子が5.7g/秒/m、平均繊維直径1.2μmの繊維フィルター素子が3.2g/秒/mであった。
また、各不織布の純水湿潤時間を測定したところ、平均繊維直径1.8μm、1.2μmの不織布ともに1分以上であった。
また、フィルター装置のP値は、14.7mmAq/gであった。
【0045】
【実施例2】
特級エタノール中に加えるDM濃度、HEMA濃度をそれぞれ0.6モル/L、0.4モル/Lにした以外は、実施例1と同一の条件で実験を行った。その結果、白血球残存率は10−5.2であった。
なお、本実験で用いたフィルター材料の塩基性官能基の非イオン性親水基に対する比は1.49、塩基性官能基の表面密度は1.4×10−3meq/m2 であった。又、F値は平均繊維直径1.8μmの繊維フィルター素子が5.4g/秒/m、平均繊維直径1.2μmの繊維フィルター素子が3.0g/秒/mであった。また純水湿潤時間は、平均繊維直径1.8μm、1.2μmのフィルター材料ともに20秒であった。
また、フィルター装置のP値は、15.1mmAq/gであった。
【0046】
【実施例3】
特級エタノール中に加えるDM濃度、HEMA濃度をそれぞれ0.7モル/L、0.3モル/Lにした以外は、実施例1と同一の条件で実験を行った。その結果、白血球残存率は10−5.2であった。
なお、本実験で用いたフィルター材料の塩基性官能基の非イオン性親水基に対する比は2.31、塩基性官能基の表面密度は1.6×10−3meq/m2 であった。又、F値は平均繊維直径1.8μmの繊維フィルター素子が5.4g/秒/m、平均繊維直径1.2μmの繊維フィルター素子が3.1g/秒/mであった。また純水湿潤時間は、平均繊維直径1.8μm、1.2μmのフィルター材料ともに22秒であった。
また、フィルター装置のP値は、14.3mmAq/gであった。
【0048】
【比較例2】
DMの代わりにジエチルアミノエチルメタアクリレート(以下DEと略す)を用い、特級エタノール中に加えるDE濃度、HEMA濃度をそれぞれ0.2モル/L、0.8モル/Lにした以外は、実施例1と同一の条件で実験を行った。その結果、白血球残存率は10-3.8であった。
なお、本実験で用いたフィルター材料の塩基性官能基の非イオン性親水基に対する比は0.25、塩基性官能基の表面密度は4.7×10-4meq/m2 であった。又、F値は平均繊維直径1.8μmの繊維フィルター素子が5.3g/秒/m、平均繊維直径1.2μmの繊維フィルター素子が3.3g/秒/mであった。また純水湿潤時間は、平均繊維直径1.8μm、1.2μmのフィルター材料ともに11秒であった。
また、フィルター装置のP値は、14.9mmAq/gであった。
【0049】
【比較例3】
特級エタノール中に加えるDM濃度、HEMA濃度をそれぞれ0.3モル/L、0.7モル/Lにした以外は、実施例1と同一の条件で実験を行った。その結果、白血球残存率は10-3.9であった。
なお、本実験で用いたフィルター材料の塩基性官能基の非イオン性親水基に対する比は0.43、塩基性官能基の表面密度は7.2×10-4meq/m2 であった。又、F値は平均繊維直径1.8μmの繊維フィルター素子が5.6g/秒/m、平均繊維直径1.2μmの繊維フィルター素子が3.6g/秒/mであった。また純水湿潤時間は、平均繊維直径1.8μm、1.2μmのフィルター材料ともに13秒であった。
また、フィルター装置のP値は、15.3mmAq/gであった。
【0050】
【比較例4】
特級エタノール中に加えるDM濃度、HEMA濃度をそれぞれ0.9モル/L、0.1モル/Lにした以外は、実施例1と同一の条件で実験を行った。その結果、白血球残存率は10-3.9であった。
なお、本実験で用いたフィルター材料の塩基性官能基の非イオン性親水基に対する比は8.94、塩基性官能基の表面密度は2.0×10-3meq/m2 であった。又、F値は平均繊維直径1.8μmの繊維フィルター素子が5.8g/秒/m、平均繊維直径1.2μmの繊維フィルター素子が3.4g/秒/mであった。また純水湿潤時間は、平均繊維直径1.8μm、1.2μmのフィルター材料ともに38秒であった。
また、フィルター装置のP値は、14.2mmAq/gであった。
【0051】
【比較例5】
特級エタノール中にDEを1モル/Lになるように加えた以外は、実施例1と同一の条件で実験を行った。その結果、白血球残存率は10-3.8であった。
なお、本実験で用いたフィルター材料の表面には非イオン性親水基は検出されなかった。塩基性官能基の表面密度は1.8×10-3meq/m2 であった。又、F値は平均繊維直径1.8μmの繊維フィルター素子が5.5g/秒/m、平均繊維直径1.2μmの繊維フィルター素子が3.4g/秒/mであった。また純水湿潤時間は、平均繊維直径1.8μm、1.2μmのフィルター材料ともに45秒であった。
また、フィルター装置のP値は、14.7mmAq/gであった。
【0052】
【比較例6】
実施例1で用いた共重合体をコーティングする際に、用いる共重合体溶解液の共重合体濃度を0.0003g/dlにする以外は、実施例1と同一の条件で実験を行った。その結果、白血球残存率は10−3.8であった。
なお、本実験で用いたフィルター材料の塩基性官能基の非イオン性親水基に対する比は0.97、塩基性官能基の表面密度は3.5×10−5meq/m2 であった。又、F値は平均繊維直径1.8μmの繊維フィルター素子が6.0g/秒/m、平均繊維直径1.2μmの繊維フィルター素子が3.5g/秒/mであった。また純水湿潤時間は、平均繊維直径1.8μm、1.2μmのフィルター材料ともに19秒であった。
また、フィルター装置のP値は、14.5mmAq/gであった。
【0053】
【比較例7】
実施例1で用いた共重合体をコーティングする際に、用いる共重合体溶解液の共重合体濃度を1g/dlにする以外は、実施例1と同一の条件で実験を行った。しかしながら、本実験においては、赤血球濃厚液のフィルター濾過時の処理流速の低下が著しく、実験に用いた320mlの赤血球濃厚液の内、フィルター濾過処理できたのは僅か60mlのみであり、従って白血球残存率を測定することが出来なかった。またこの濾過処理後の赤血球濃厚液において、顕著な赤血球の溶血が観察された。
なお、本実験で用いたフィルター材料の塩基性官能基の非イオン性親水基に対する比は0.97、塩基性官能基の表面密度は1.2×10−1meq/m2 であった。又、F値は平均繊維直径1.8μmの繊維フィルター素子が2.5g/秒/m、平均繊維直径1.2μmの繊維フィルター素子が1.3g/秒/mであった。また純水湿潤時間は、平均繊維直径1.8μm、1.2μmのフィルター材料ともに23秒であった。
また、フィルター装置のP値は、15.4mmAq/gであった。
以上の実施例1〜3及び比較例1〜7の結果を表1にまとめて示す。
【0054】
【表1】
【0055】
【実施例4】
特級エタノール中に、ジメチルアミノエチルアクリレート(以下DMAと略す)を0.7モル/L、2−ヒドロキシエチルアクリレート(以下HEAと略す)を0.3モル/Lの濃度になるように加え、全量を250mlとした。重合開始剤としてV−65を0.01モル/Lの濃度になるように加え、窒素雰囲気下、45℃にて4.5時間重合させた後、ノルマルヘキサンに滴下して析出した物質を集めて凍結乾燥し、DMAとHEAとの共重合体を得た。
ゲル及び凝集物除去用フィルターとしてスパンボンド法により製造された、平均繊維直径32μm、19μm及び13μmのポリエステル不織布を、平均充填密度0.28g/cm3 、厚み0.9mmになるように、更に微小凝集物除去用フィルターとしてパネロンPF860(ダイニック)及び抄造法により製造された平均繊維直径5.1μmのポリエステル不織布を平均充填密度0.20g/cm3 、厚み0.7mmになるように、有効濾過断面積67mm×67mmの容器に容器下流側に向かって順次充填し、更に同一容器内下流側に白血球除去用フィルターとして、メルトブロー法により製造された平均繊維直径1.8μmのポリエステル不織布を充填密度0.18g/cm3 、厚み1.5mmになるように、更にその下流側に同じくメルトブロー法により製造された平均繊維直径1.2μmのポリエステル不織布を充填密度0.20g/cm3 、厚み3.0mmになるように充填した。これに、上記の共重合体を特級エタノール溶液に0.01g/dlの濃度になるように溶解した共重合体液を上記容器に充填し1分間静置した。ついで窒素ガスによって充填した共重合体液を追い出した後、更に10分間5L/分で窒素ガスを流し続け、更に70℃で7時間真空乾燥させることにより、上記共重合体をポリエステル不織布にコーティングした白血球除去フィルター材料及び該材料からなる白血球除去フィルター装置を作成した。
400mlの血液に56mlのCPDを加えて調製した全血456mlから、採血後8時間以内に遠心分離によって多血小板血漿200mlを除去して調製し、4℃で14日保存した赤血球濃厚液(ヘマトクリット70%)320mlを、25℃になるまで室温(26℃)に放置した後、上記フィルター装置にて濾過した。濾過を開始する際、フィルター装置を血液回路を介して赤血球製剤が入っている血液バッグに接続した後、血液バッグを手でつかんで加圧し強制的にフィルター装置内に血液を満たした。かくしてフィルター装置内に血液が満たされた後、落差1.0mで血液を流し、血液バッグ内に血液が無くなるまで濾過を行った。
その結果、白血球残存率は10−4.3であった。
なお、本実験で用いたフィルター材料の塩基性官能基の非イオン性親水基に対する比は2.3、塩基性官能基の表面密度は1.7×10−3meq/m2 であった。又、F値は平均繊維直径1.8μmの繊維フィルター素子が5.6g/秒/m、平均繊維直径1.2μmの繊維フィルター素子も3.3g/秒/mであった。また純水湿潤時間は、平均繊維直径1.8μm、1.2μmのフィルター材料ともに8秒であった。
また、フィルター装置のP値は、14.7mmAq/gであった。
【0058】
【比較例8】
不織布にコーティングを行わずに、ポリエステル不織布をそのままフィルター材料として用いた以外は、実施例4と同一の条件、方法で実験を行った。その結果、白血球残存率は10−3.4であった。
なお、本実験の不織布繊維表面のの塩基性官能基、非イオン性親水基の比を測定しようとしたが、両官能基を検出することはできなかった。
又、F値は平均繊維直径1.8μmの繊維フィルター素子が5.6g/秒/m、平均繊維直径1.2μmの繊維フィルター素子が3.6g/秒/mであった。また各不織布の純水湿潤時間を測定したところ、平均繊維直径1.8μm、1.2μmの不織布ともに1分以上であった。
また、フィルター装置のP値は、15.1mmAq/gであった。
【0059】
【比較例9】
特級エタノール中に加えるDMA濃度、HEA濃度をそれぞれ0.3モル/L、0.7モル/Lにした以外は、実施例4と同一の条件、方法で実験を行った。その結果、白血球残存率は10−3.6であった。
なお、本実験で用いたフィルター材料の塩基性官能基の非イオン性親水基に対する比は0.43、塩基性官能基の表面密度は8.0×10−4meq/m2 であった。又、F値は平均繊維直径1.8μmの繊維フィルター素子が5.5g/秒/m、平均繊維直径1.2μmの繊維フィルター素子が3.7g/秒/mであった。また純水湿潤時間は、平均繊維直径1.8μm、1.2μmのフィルター材料ともに1秒以内であった。
また、フィルター装置のP値は、13.9mmAq/gであった。
【0060】
【比較例10】
特級エタノール中に加えるDMA濃度、HEA濃度をそれぞれ0.9モル/L、0.1モル/Lにした以外は、実施例4と同一の条件、方法で実験を行った。その結果、白血球残存率は10−3.6であった。
なお、本実験で用いたフィルター材料の塩基性官能基の非イオン性親水基に対する比は7.7、塩基性官能基の表面密度は2.2×10−3meq/m2 であった。又、F値は平均繊維直径1.8μmの繊維フィルター素子が5.7g/秒/m、平均繊維直径1.2μmの繊維フィルター素子が3.5g/秒/mであった。また純水湿潤時間は、平均繊維直径1.8μm、1.2μmのフィルター材料ともに16秒であった。
また、フィルター装置のP値は、14.8mmAq/gであった。
【0061】
【比較例11】
実施例4で用いた共重合体をコーティングする際に、用いる共重合体溶解液の共重合体濃度を0.0003g/dlにする以外は、実施例4と同一の条件で実験を行った。その結果、白血球残存率は10−3.7であった。
なお、本実験で用いたフィルター材料の塩基性官能基の非イオン性親水基に対する比は0.66、塩基性官能基の表面密度は3.2×10−5meq/m2 であった。又、F値は平均繊維直径1.8μmの繊維フィルター素子が5.4g/秒/m、平均繊維直径1.2μmの繊維フィルター素子が3.4g/秒/mであった。また純水湿潤時間は、平均繊維直径1.8μm、1.2μmのフィルター材料ともに1秒以内であった。
また、フィルター装置のP値は、13.8mmAq/gであった。
【0062】
【比較例12】
実施例4で用いた共重合体をコーティングする際に、用いる共重合体溶解液の共重合体濃度を1.5g/dlにする以外は、実施例4と同一の条件で実験を行った。しかしながら、本実験においては、赤血球濃厚液のフィルター濾過時の処理流速の低下が著しく、実験に用いた320mlの赤血球濃厚液の内、フィルター濾過処理できたのは僅か30mlのみであり、従って白血球残存率を測定することが出来なかった。またこの濾過処理後の赤血球濃厚液において、顕著な赤血球の溶血が観察された。
なお、本実験で用いたフィルター材料の塩基性官能基の非イオン性親水基に対する比は0.66、塩基性官能基の表面密度は1.6×10−1meq/m2 であった。又、F値は平均繊維直径1.8μmの繊維フィルター素子が2.0g/秒/m、平均繊維直径1.2μmの繊維フィルター素子が1.0g/秒/mであった。また純水湿潤時間は、平均繊維直径1.8μm、1.2μmのフィルター材料ともに1秒以内であった。
また、フィルター装置のP値は、16.8mmAq/gであった。
実施例4〜6及び比較例8〜12の結果を表2にまとめて示す。
【0063】
【表2】
【0066】
【実施例5】
ゲル及び凝集物除去用フィルターとしてスパンボンド法により製造された、平均繊維直径32μm、19μm及び13μmのポリエステル不織布を、平均充填密度0.27g/cm3 、厚み1.5mmになるように、有効濾過断面積67mm×67mmの容器に容器下流側に向かって順次充填し、更に同一容器内下流側に白血球除去用フィルターとして、メルトブロー法により製造された平均繊維直径1.7μmのポリエステル不織布を充填密度0.22g/cm3 、厚み0.6mmになるように、更にその下流側に同じくメルトブロー法により製造された平均繊維直径1.2μmのポリエステル不織布を、充填密度0.28g/cm3 、厚み4.0mmになるように充填し、実施例1で用いた共重合体をコーティングする際に、用いる共重合体溶解液の共重合体濃度を0.1g/dlにする以外は、実施例1と同一の条件で実験を行った。その結果、白血球残存率は10−6.3であった。 なお、本実験で用いたフィルター材料の塩基性官能基の非イオン性親水基に対する比は0.97、塩基性官能基の表面密度は1.2×10−2meq/m2 であった。又、F値は平均繊維直径1.7μmの繊維フィルター素子が5.2g/秒/m、平均繊維直径1.2μmの繊維フィルター素子が2.5g/秒/mであった。また純水湿潤時間は、平均繊維直径1.7μm、1.2μmのフィルター材料ともに25秒であった。
また、フィルター装置のP値は、23.4mmAq/gであった。
【0067】
【実施例6】
ゲル及び凝集物除去用フィルターとしてスパンボンド法により製造された、平均繊維直径32μm、19μm及び13μmのポリエステル不織布を、平均充填密度0.24g/cm3 、厚み2.0mmになるように、有効濾過断面積67mm×67mmの容器に容器下流側に向かって順次充填し、更に同一容器内下流側に白血球除去用フィルターとして、メルトブロー法により製造された平均繊維直径1.7μmのポリエステル不織布を充填密度0.21g/cm3 、厚み0.6mmになるように、更にその下流側に同じくメルトブロー法により製造された平均繊維直径1.2μmのポリエステル不織布を、充填密度0.32g/cm3 、厚み3.5mmになるように充填し、実施例1で用いた共重合体をコーティングする際に、用いる共重合体溶解液の共重合体濃度を0.3g/dlにする以外は、実施例5と同一の条件で実験を行った。その結果、白血球残存率は10−6.7であった。 なお、本実験で用いたフィルター材料の塩基性官能基の非イオン性親水基に対する比は0.97、塩基性官能基の表面密度は3.5×10−2meq/m2 であった。又、F値は平均繊維直径1.7μmの繊維フィルター素子が5.0g/秒/m、平均繊維直径1.2μmの繊維フィルター素子が2.4g/秒/mであった。また純水湿潤時間は、平均繊維直径1.7μm、1.2μmのフィルター材料ともに28秒であった。
また、フィルター装置のP値は、25.8mmAq/gであった。
Claims (3)
- 表面にジメチルアミノエチルアクリレートまたはジメチルアミノエチルメタアクリレートのいずれかに由来する塩基性官能基と2−ヒドロキシルエチルアクリレートまたは2−ヒドロキシルエチルメタアクリレートのいずれかに由来する非イオン性親水基とを有し、該表面における塩基性官能基の非イオン性親水基に対するモル比が0.7〜2.5の範囲にあり、かつ塩基性官能基が5×10−5〜0.1meq/m2 の密度で該表面に存在することを特徴とする、繊維または連続気孔を有する高分子多孔質体からなる、全血または赤血球製剤から白血球を除去するためのフィルター材料。
- 血液の入口及び出口を有する容器内に、繊維及び/または連続気孔を有する高分子多孔質体からなる白血球除去フィルター材料を充填し、該材料によって前記血液の入口及び出口が隔てられてなる白血球除去フィルター装置において、該材料の一部もしくは全部が、表面にジメチルアミノエチルアクリレートまたはジメチルアミノエチルメタアクリレートのいずれかに由来する塩基性官能基と2−ヒドロキシルエチルアクリレートまたは2−ヒドロキシルエチルメタアクリレートのいずれかに由来する非イオン性親水基とを有し、該表面における塩基性官能基の非イオン性親水基に対するモル比が0.7〜2.5の範囲にあり、かつ塩基性官能基が5×10−5〜0.1meq/m2 の密度で該表面に存在するフィルター材料であることを特徴とする白血球除去フィルター装置。
- 輸血用全血製剤または赤血球製剤から白血球を除去するに際し、これらの製剤を、表面にジメチルアミノエチルアクリレートまたはジメチルアミノエチルメタアクリレートのいずれかに由来する塩基性官能基と2−ヒドロキシルエチルアクリレートまたは2−ヒドロキシルエチルメタアクリレートのいずれかに由来する非イオン性親水基とを有し、該表面における塩基性官能基の非イオン性親水基に対するモル比が0.7〜2.5の範囲にあり、かつ塩基性官能基が5×10−5〜0.1meq/m2 の密度で該表面に存在する、繊維または連続気孔を有する高分子多孔質体からなるフィルター材料を用いて濾過することを特徴とする白血球の除去方法。
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