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JP3635644B2 - エコーキャンセラ - Google Patents

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JP3635644B2
JP3635644B2 JP2003161066A JP2003161066A JP3635644B2 JP 3635644 B2 JP3635644 B2 JP 3635644B2 JP 2003161066 A JP2003161066 A JP 2003161066A JP 2003161066 A JP2003161066 A JP 2003161066A JP 3635644 B2 JP3635644 B2 JP 3635644B2
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  • Filters That Use Time-Delay Elements (AREA)
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エコーキャンセラに関する。
【0002】
【従来の技術】
エコーキャンセラとして、従来、例えば著者“村野”らによる文献「“情報・通信におけるディジタル処理” 昭晃堂,昭和62年11月25日,pp.163〜176」に示されているようなものが知られている。
【0003】
図8は上述の文献に示されているような一般的なエコーキャンセラの構成例を示す図であり、エコーキャンセラは、スピーカとマイクによる双方同時通話を行なう機器などにおいて発生するエコーを減衰させる機能を有している。すなわち、図8において、受信信号はスピーカ1から出力信号として出力されるが、その一部はエコーパス(エコー経路)2を経由して、マイク3に回り込んで、入力信号に混入し、従って、送信信号にはスピーカ1から出力された出力信号が入力信号に混入したものとなる。これがエコーであり、エコーを減衰させるものがエコーキャンセラである。
【0004】
図8の構成例では、エコーキャンセラは、フィルタなどのエコーキャンセル部4として構成されており、エコーパス2のインパルス応答を推定し、これを受信信号に畳み込んで生成した擬似エコーを逆位相で入力信号(送信信号)に加えることでエコーを減衰させるようになっている。
【0005】
このエコーキャンセル部4の構成および動作については、上述した文献に詳述されている。すなわち、エコーキャンセラの扱うエコー遅延量を厳密に定義すると、図9に示すように設置局から加入者通信回線を経てエコーが戻ってくるまでの絶対遅延量と、エコーパス2の伝達特性によって決まるインパルス応答を合わせたもので、これをインパルス応答系列と呼ぶ。エコーキャンセラの機能は、8kHzのサンプリング周期を持つトランスバーサル・フィルタと、そのタップ係数(フィルタ係数)を逐次更新する係数修正部の基本機能のほかに、双方同時通話時(ダブルトーク時)に話者音声によってタップ係数(フィルタ係数)の更新が誤らないようにするエコーキャンセラ保護部,およびエコーレベルが低い時に、エコーの抑圧効果をさらに高めるために微弱エコー信号を無条件で零値に抑圧する非線形処理(センタクリッパ)などがある。いま、サンプリング間隔をTとして時刻nTでの受信信号をxn,エコーパス2のインパルス応答系列をwiで表わせば、エコー信号ynは、両者の畳み込みとして次式のように表わされる。
【0006】
【数1】
Figure 0003635644
【0007】
一方、トランスバーサル・フィルタのタップ係数(フィルタ係数)をhiとすれば、エコーキャンセル部4で発生される擬似エコーyn’は、次式のようになる。
【0008】
【数2】
Figure 0003635644
【0009】
従って、エコーパス2の推定誤差である残留エコーenは、回線雑音を無視して次式のようになる。
【0010】
【数3】
Figure 0003635644
【0011】
すなわち、エコーを消去するということは、インパルス応答系列すなわちフィルタ係数{hi}をいかにwiに近づけるかということである。トランスバーサル・フィルタのフィルタ係数{hi}の推定手法すなわち係数更新手法としては、一般に、安定性と収束性の点で優れ演算的にも比較的単純で実際にLSIによる装置化が行なわれている学習同定法を用いることができる。学習同定法は、サンプル単位での残留エコーenの2乗値を受信信号系列{xi}の電力で正規化したものを評価関数Dnとして、最大傾斜法と同様に逐次タップ係数を求める方法で、そのアルゴリズムは、Dn=(en)2として、次式のように表わされる。
【0012】
【数4】
Figure 0003635644
【0013】
ここで、hi(n)は時刻nにおけるタップ係数hiを表わしている。αは制御係数(ステップゲイン)と呼ばれ、収束の速度とエコー抑圧量(ERLE:Echo Return Loss Enhancement)を決める制御パラメータである。また、Nはトランスバーサル・フィルタのタップ数である。
【0014】
このようなエコーキャンセラを用いたものとして、従来では、例えば特開平4−150127号に示されている電話機の通話回路や、特開昭61−172471号に示されている会議通話拡声電話機の回り込み防止方式が案出されている。
【0015】
すなわち、特開平4−150127号の通話回路では、上述のような基本的なエコーキャンセラに、さらに信号レベルによってオンオフするいわゆるボイススイッチを付加して、残留エコーの低減を図っている。
【0016】
また、特開昭61−172471号の回り込み防止方式では、上述のような基本的なエコーキャンセラとともに可変損失回路がさらに設けられており、受信信号のパワーレバル(受信側入力レベル),送信信号のパワーレベル(送信側出力レベル)を監視し、これらのレベルに応じて損失回路に対するバイパス制御を行なうことによって、不適切なループゲインによって生じる回り込み信号を消去し、ハウリングを防止することを意図している。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、学習同定法を用いてトランスバーサル・フィルタのフィルタ係数(タップ係数)を修正更新する従来の一般的なエコーキャンセラでは、無相関信号を仮定していながら音声信号を主に対象とすることや、トランスバーサル・フィルタのタップ長を部屋の残響時間に対して必ずしも十分には取ることができないなどのため、エコーを完全に消去することは難しかった。
【0018】
また、ボイススイッチを付加した特開平4−150127号の方法では、残留エコーの低減を図るものの、ダブルトーク状態の対応が困難であり、近端話者音声の立ち上がりが切れてしまうというボイススイッチ特有の頭切れの問題が生じてしまう。
【0019】
また、学習同定法では、受信信号の二乗和を計算するが、電源電圧不安定,周囲電磁雑音,回路経時変化などによって、入力信号に直流成分や低周波雑音等のバイアスが混入した場合、受信信号にもバイアス成分が含まれてしまうため、二乗和計算の誤差が増大し、性能が低下してしまうという問題も生ずる。また、通常この種のエコーキャンセラではダブルトーク検出などにパワーレベルの比較が使われるが、バイアスを含む信号を扱う場合、無信号時でもパワーが大きくなるため、ダイナミックレンジが狭くなり、しきい値設定が難しくなるという問題も生ずる。このような問題は、特開昭61−172471号の場合のようにハウリング検出などの目的にパワーレベルを用いる場合も同様に生ずる。
【0020】
本発明は、上述のような従来の問題を解決し、残留エコーをより確実に低減することの可能なエコーキャンセラを提供することを目的としている。
【0021】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、エコー経路を模擬するフィルタに受信信号を通すことによって擬似エコーを生成し、入力信号にこの擬似エコーを位相反転して加えることにより、エコーを消去するエコーキャンセル手段と、信号のパワーが小さいときにはカットオフ周波数が低く、信号のパワーが大きいときにはカットオフ周波数が高くなるように、カットオフ周波数が変化するローパスフィルタを用いたノイズ抑制手段とを備え、エコーキャンセル手段からの出力をノイズ抑制手段に与え、エコーキャンセル手段の出力に含まれているノイズ成分をノイズ抑制手段により除去することを特徴としている。
【0022】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載のエコーキャンセラにおいて、ノイズ抑制手段は、信号のパワーレベルを計算するパワー計算手段と、パワー計算手段によって計算された信号のパワーレベルを所定のノイズ判定しきい値と比較する比較手段と、比較の結果、信号のパワーレベルがノイズ判定しきい値以下のときに、信号に対してローパスフィルタによるノイズ抑制処理を行なうノイズ抑制処理手段とを備えていることを特徴としている。
【0023】
また、請求項3記載の発明は、エコー経路を模擬するフィルタに受信信号を通すことによって擬似エコーを生成し、入力信号にこの擬似エコーを位相反転して加えることにより、エコーを消去するエコーキャンセル手段と、信号のパワーが小さいときにはカットオフ周波数が低く、信号のパワーが大きいときにはカットオフ周波数が高くなるように、カットオフ周波数が変化するローパスフィルタを用いたノイズ抑制手段と、入力信号に加わっているバイアス成分を検出し、該バイアス成分を除去するバイアス除去手段とを備え、前記バイアス除去手段によって入力信号に加わっているバイアス成分を除去し、また、エコーキャンセル手段からの出力をノイズ抑制手段に与え、エコーキャンセル手段の出力に含まれているノイズ成分をノイズ抑制手段により除去することを特徴としている。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の各図において、図8と対応する箇所には同様の符号を付している。図1は本発明に係るエコーキャンセラの第1の構成例を示す図である。図1を参照すると、この第1の構成例のエコーキャンセラは、エコーキャンセル部4と、ノイズ抑制部11とを有している。
【0025】
ここで、エコーキャンセル部4は、前述した従来のエコーキャンセラと同様の機能を有している。すなわち、エコー経路2を模擬するフィルタに受信信号を通すことによって擬似エコーを生成し、入力信号にこの擬似エコーを位相反転して加えることにより、エコーを消去する機能を有している。
【0026】
また、ノイズ抑制部11は、信号のパワーが小さいときはカットオフ周波数が低く、信号のパワーが大きいときにカットオフ周波数が高くなるようなローパスフィルタを用いて構成されており、このエコーキャンセラでは、エコーキャンセル部4の出力をノイズ抑制部11に通してから送信信号として送信するようになっている。
【0027】
図2はノイズ抑制部11の構成例を示す図である。図2の例では、ノイズ抑制部11は、エコーキャンセル部4から出力された信号xiのパワーを計算する(パワーに変換する)パワー計算部21と、パワー計算部21によって計算されたパワーを2のべき乗表現し、そのときの指数の値を取り出すパワー指数取出部22と、2のべき乗表現されたパワーの指数の値をノイズ判定しきい値から減算して、これを移動平均区間長ビット数mとする減算部23と、ノイズ抑制処理部24と、移動平均区間長ビット数mが負か否かを判定し、移動平均区間長ビット数mが負の場合は、エコーキャンセル部4から出力された信号(すなわち、ノイズ抑制部11に入力した信号)xiのレベルがノイズのしきい値よりも大きく、この信号xiが送信すべき近端話者音声信号であると判断し、ノイズ抑制処理を施さずにこれをそのまま送信信号として出力させる一方、移動平均区間長ビット数mが負ではない場合には、ノイズ抑制処理部24においてこの信号xiにノイズ抑制処理を施したものを送信信号として出力させる判定切替制御部25とにより構成されている。
【0028】
ここで、ノイズ判定しきい値は、2のべき乗表現の指数の形で例えばメモリに予め記憶されているとする。
【0029】
また、パワー計算部21は、例えば図3のように構成されている。図3の例では、パワー計算部21は、エコーキャンセル部4から出力された信号(すなわち、ノイズ抑制部11に入力した信号)xiの2乗値xi 2をとる2乗演算回路31と、パワーの更新近似値Pを格納するためのパワーレジスタ32と、パワー区間長np(定数)をnp=2mpで表現するとき、パワーレジスタ32に格納されている前回の信号xi-1についてのパワー近似値Pi-1にnp−1を乗じて、(np−1)Pi-1の演算を行なう乗算器33と、乗算器33の乗算結果をmpビット右シフトして、{(np−1)/np}Pi-1の演算を行なうシフタ34と、シフタ34の出力を2乗演算回路31からの2乗値xi 2に加算して新たなパワーの近似値Piを計算(更新)する加算器35とにより構成されている。
【0030】
すなわち、パワー計算部21は、xiを入力信号のi番目のサンプル,npをパワー区間長とするとき、次式のようにして、パワーの近似値Piを計算するようになっている。
【0031】
【数5】
i={(np−1)/np}Pi-1+xi 2
【0032】
このようにして、パワー計算部21は、パワーに適応してカットオフ周波数を変化させるためのパワー計算を行なうことができる。すなわち、図3の例では、パワーに適応してカットオフ周波数を変化させるためのパワー計算を数1によって求められるPiで近似的に置き換えて、行なうことができる。なお、パワー計算部12において、np,mpは、いずれも定数であるので、これらは、メモリなどに予め記憶しておくことができる。
【0033】
また、図2を参照すると、ノイズ抑制処理部24は、ローパスフィルタの機能を移動平均処理によって実現し、ローパスフィルタのカットオフ周波数の変化を、移動平均処理の移動平均区間長の変化によって実現するようになっている。すなわち、図2の例では、ノイズ抑制処理部24は、移動平均区間長ビット数m分だけ“1”を左へビットシフトして、移動平均区間長n=2mの演算を行なうシフタ41と、シフタ41の演算結果nから“1”を減じて、(n−1)とする減算器42と、入力信号xiの移動平均区間合計近似値Xiが格納される合計レジスタ43と、減算器42の減算結果(n−1)と合計レジスタ43に格納されている前回の入力信号xi-1についての移動平均区間合計近似値Xi-1との乗算を行ない、(n−1)Xi-1を求める乗算器44と、乗算器44の乗算結果(n−1)Xi-1を移動平均区間長ビット数m分だけ右へビットシフトして、(n−1)Xi-1/nの演算を行なうシフタ45と、シフタ45の演算結果(n−1)Xi-1/nに今回の入力信号xiを加算して、〔{(n−1)Xi-1/n}+xi〕=Xiの演算を行なう加算器46と、加算器46の演算結果Xiをmビット右シフトして、Xi/nの演算を行ない、これを移動平均の近似値として出力するシフタ47とにより構成されている。
【0034】
換言すれば、ノイズ抑制処理部24は、xiを入力信号のi番目のサンプル,nを移動平均区間長,Xiを移動平均区間合計の近似値とするとき、次式のようにして、移動平均の近似値Aiを求めるようになっている。
【0035】
【数6】
i=Xi/n
i={(n−1)/n}Xi-1+xi
【0036】
このことからわかるように、このノイズ抑制処理部24の処理によって、パワーの小さい信号ほど、すなわちmの大きな信号ほど、長い区間の移動平均処理が施されることになり、結果として、信号は、これにカットオフ周波数の低いローパスフィルタを施したような信号になり、このローパスフィルタと等価な処理によって、信号に含まれる残留エコー成分(ノイズ成分)を良好に除去することができる。すなわち、図2の例では、ローパスフィルタは、ビット数表現された可変区間長をもつ移動平均として実現することができる。
【0037】
次に、このような第1の構成例のエコーキャンセラの動作について説明する。この第1の構成例では、エコーキャンセル部4から出力された信号xiをノイズ抑制部11に通す。ノイズ抑制部11では、先ず、パワー計算部21,パワー指数取出部22において、エコーキャンセル部4から出力された信号xiのパワーレベルを計算する。このようにしてパワー計算がなされると、信号xiが近端話者音声などの大きなパワーの信号であるか、残留エコーや背景雑音などのパワーの小さな信号であるかを、計算された信号xiのパワーレベルとノイズ判定しきい値とを比べることで判別する。
【0038】
この結果、信号xiのパワーレベルがノイズ判定しきい値よりも大きいときには、この信号xiが送信すべき近端話者音声信号であると判断し、ノイズ抑制処理を施さずにこれをそのまま送信信号として出力させる。
【0039】
これに対し、信号xiのパワーレベルがノイズ判定しきい値よりも小さいときには、この信号xiをノイズ抑制処理部24に与える。ノイズ抑制処理部24では、信号xiのパワーレベルが小さいときにはカットオフ周波数が低く、信号xiのパワーレベルが大きいときにはカットオフ周波数が高くなるようなローパスフィルタに、信号xiを通すことによって、信号xiに含まれる残留エコー成分(ノイズ成分)を除去し、これを送信信号として出力する。
【0040】
このように、第1の構成例では、エコーキャンセル部4からの出力信号xiをノイズ抑制部11に通してから送信信号として出力するので、エコーキャンセル部4で残留エコー成分(ノイズ成分)を完全には取り除くことができずとも、エコーキャンセル部4で完全には取り除くことができなかった残留エコー成分(ノイズ成分)を除去して送信信号を生成し出力することができる。
【0041】
すなわち、この第1の構成例では、適応フィルタによって生成した擬似エコーによってエコーをキャンセルするエコーキャンセル部4の出力を、パワーによってカットオフ周波数が変化するローパスフィルタの機能をもつノイズ抑制部11に通すことによって、エコーをさらに減衰させ、エコー減衰率を向上させることができる。
【0042】
さらに、この第1の構成例では、移動平均を数6によって求められるAiで近似的に置き換えることによって、通常、移動平均区間サンプル数分必要な区間合計を計算するためのバッファが1つだけで済むため、メモリを節約できる。また、移動平均区間サンプル数分必要な加算を1回に抑えることができるため、演算量を削減できる。このように、移動平均処理にかかわるハードウェアコストすなわちカットオフ周波数の可変なローパスフィルタを実現するためのハードウェアコストを著しく低減できる。
【0043】
また、パワーに適応してカットオフ周波数を変化させるためのパワー計算を数5によって求められるPiで近似的に置き換えることによって、通常、パワー区間サンプル数分必要な区間合計を計算するためのバッファが1つだけで済み、メモリを節約できる。また、パワー区間サンプル数分必要な加算を1回に抑えることができるため、演算量を削減できる。このように、パワー計算にかかわるハードウェアコストをも著しく低減できる。
【0044】
また、移動平均区間長やパワー区間長がn=2mやnp=2mpとなるように設定し、n,npによる除算をm,mpビット右シフトによって行なっており、デジタル信号プロセッサが苦手とする除算をビットシフトで実現できるため、演算量を著しく削減することができる。
【0045】
図4は本発明に係るエコーキャンセラの第2の構成例を示す図である。図4を参照すると、第2の構成例のエコーキャンセラは、エコーキャンセル部4と、バイアス除去部60とを有している。
【0046】
ここで、エコーキャンセル部4は、前述した従来のエコーキャンセラと同様の機能を有している。すなわち、エコー経路2を模擬するフィルタに受信信号を通すことによって擬似エコーを生成し、入力信号にこの擬似エコーを位相反転して加えることにより、エコーを消去する機能を有している。
【0047】
また、バイアス除去部60は、例えば図5に示すように、入力信号に加わっている直流成分や低周波成分などのバイアス成分を検出し、このバイアス成分を除去するようになっている。すなわち、図5の例では、バイアス除去部60は、バイアスを計算するバイアス計算部62と、バイアス計算部62で計算されたバイアスを入力信号から除去(減算)する減算器63と、入力信号xiを例えば電源投入時から一定時間、バイアス計算部62側に切替え、この一定時間にわたってバイアス計算部62でバイアスが計算された後、入力信号を減算器63側に切替える切替器64とを有している。
【0048】
ここで、バイアス計算部62は、一定区間(区間長n=2m)における入力信号サンプルxi(n=2m個のサンプル)の平均をバイアス値として計算するように構成されており、1サンプル前の時点でのバイアス値Xi-1が格納されるバイアスレジスタ65と、バイアスレジスタ65に格納されている1サンプル前の時点でのバイアス値Xi-1に(n−1)=(2m−1)を乗算し、(n−1)Xi-1の演算を行なう乗算器66と、乗算器66の乗算結果(n−1)Xi-1をmビット右シフトし、{(n−1)/n}Xi-1の演算を行なうシフタ67と、今回の時点での入力信号サンプルxiとシフタ67の出力{(n−1)/n}Xi-1とを加算して、新たなバイアス値Xiを求める加算器68とを有している。
【0049】
換言すれば、このバイアス計算部62は、バイアス成分を検出するローパスフィルタの機能を、次式によって求められるAiで表わされる近似的平均値によって逐次簡易的に計算することで、実現するようになっている。なお、次式において、xiは入力信号のi番目のサンプル、nは平均区間長である。
【0050】
【数7】
i=Xi/n
i={(n−1)/n}Xi-1+xi
【0051】
次にこのような第2の構成例のエコーキャンセラの動作について説明する。一般に、マイク3から例えばオーディオ系アナログ回路を通して入力された音声信号(入力信号)は、A/D変換される。この第2の構成例では、この一連の過程において音声信号(入力信号)xiに加わったバイアス成分をバイアス除去部60によって除去するようにしている。
【0052】
より具体的に、入力信号xiがバイアス除去部60に加わるとき、入力信号xiは、最初、切替器64によりスイッチングされる。すなわち、入力信号xiは、例えばシステム起動時(電源投入時)から一定時間だけ加算器68側に切替り、その後、減算器63側に接続される。なお、前者の場合をバイアス計算モード、後者の場合をバイアス除去モードと呼ぶことにする。
【0053】
まず、バイアス計算モードにおいては、バイアス計算部62は、一定区間にわたる入力信号サンプルの平均を計算することによって、入力信号に加わっているバイアス値を求める。すなわち、前述したように、バイアスレジスタ65に格納されている1サンプル前の時点でのバイアス値に、定数2m−1を乗じてmビット右シフトし、これにいま入力した入力信号サンプルxiを加算することによって、数7に示すように、逐次的にバイアス値Xiを求める。これを2m回繰り返した後のバイアスレジスタ65の値(すなわち、一定時間経過した後のバイアスレジスタ65の値)は、2m個の入力信号サンプルの近似的な平均値となるので、以降の処理において(バイアス除去モードの処理において)、これをバイアス値として用いることができる。一定時間が経過し、2m回逐次計算を繰り返した後のバイアス値がバイアスレジスタ65に格納された時点でバイアス計算モードを終了し、切替器64を減算器63側に切り替えて、バイアス除去モードに入る。
【0054】
バイアス除去モードでは、減算器63において、入力信号xiからバイアスレジスタ65に格納されているバイアス値を一律に減ずることによって、入力信号xiからバイアス成分を除去し、バイアス成分の除去された入力信号をエコーキャンセル部4に与えることができる。
【0055】
このように、第2の構成例では、バイアス除去部60を設けることによって、入力信号に加わっているバイアスを取り除くことができ、例えば、遠端,近端の双方にこのバイアス除去部60を設けることによって、送受信信号ともに、バイアスが無い状態となり、正しいパワーレベルの計算が可能となる。
【0056】
さらに、図6に示すように、上述のバイアス除去部60と同様のバイアス除去部70を受信信号を受信した直後にも挿入することにより、近端の処理だけで送受信信号ともにバイアスが無い状態となり、通信相手の装置に依存せず、正しいパワーレベルの計算が可能となる。
【0057】
なお、バイアス除去部としては、電気的フィルタを使う方法も考えられ、この場合、バイアス除去部はハイパスフィルタとして機能するが、上述の第2の構成例のようにデジタル演算によってローパスフィルタとしてのバイアス除去部を実現することで、少ない演算量,メモリ量のより簡単な構成のものにすることができる。すなわち、ローパスフィルタを数7によって求められるAiで表される近似的平均値によって、逐次簡易的に計算することによって、デジタル演算によって実現する際に非常に少ない演算量,メモリ量で済む。
【0058】
さらに、第1の構成例と第2の構成例とを任意に組合せたエコーキャンセラを構成することも可能である。図7は第1の構成例と第2の構成例とを組合せた一例を示す図であり、図7のエコーキャンセラでは、入力信号xiに加わっているバイアスをバイアス除去部60で除去した上で、エコーキャンセル部4に与え、また、エコーキャンセル部4によっては完全には取り除くことができなかった残留エコーをノイズ抑制部11によって取り除くことが可能となる。
【0059】
また、上述のエコーキャンセラは、テレビ会議端末などのスピーカーとマイクによる双方向同時通話を行なう機器に適用可能であるが、これに限らず、エコーが発生する任意の機器等に適用することができる。
【0060】
【発明の効果】
以上に説明したように、請求項1乃至請求項3記載の発明によれば、エコー経路を模擬するフィルタに受信信号を通すことによって擬似エコーを生成し、入力信号にこの擬似エコーを位相反転して加えることにより、エコーを消去するエコーキャンセル手段と、信号のパワーに適応してカットオフ周波数が変化するローパスフィルタを用いたノイズ抑制手段とを備え、エコーキャンセル手段からの出力をノイズ抑制手段に与え、エコーキャンセル手段の出力に含まれているノイズ成分をノイズ抑制手段により除去するようにしているので、残留エコーをさらに低減することができる。特に、適応フィルタによるエコーキャンセラが苦手とし、耳に付く高域の残留エコーを低減できる。また、近端話者音声など送信すべき信号への影響を最小限に抑えることができ、さらに残留エコー以外の背景雑音などをも同時に抑えることができて、聞き易い極めて良好な送信信号を得ることが可能となる。
【0061】
特に、請求項2記載の発明によれば、ノイズ抑制手段は、信号のパワーレベルを計算するパワー計算手段と、パワー計算手段によって計算された信号のパワーレベルを所定のノイズ判定しきい値と比較する比較手段と、比較の結果、信号のパワーレベルがノイズ判定しきい値以下のときに、信号に対してローパスフィルタによるノイズ抑制処理を行なうノイズ抑制処理手段とを備えているので、残留エコーや背景雑音などの送信すべきでない信号についてのみノイズ抑制処理がなされ、近端話者音声など送信すべき信号への影響を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るエコーキャンセラの第1の構成例を示す図である。
【図2】ノイズ抑制部の構成例を示す図である。
【図3】パワー計算部の構成例を示す図である。
【図4】本発明に係るエコーキャンセラの第2の構成例を示す図である。
【図5】バイアス除去部の構成例を示す図である。
【図6】図4のエコーキャンセラの変形例を示す図である。
【図7】本発明に係るエコーキャンセラの他の構成例を示す図である。
【図8】一般的なエコーキャンセラの構成例を示す図である。
【図9】エコーインパルス応答系列を説明するための図である。
【符号の説明】
1 スピーカ
2 エコーパス(エコー経路)
3 マイク
4 エコーキャンセル部
11 ノイズ抑制部
21 パワー計算部
22 パワー指数取出部
23 減算部
24 ノイズ抑制処理部
25 判定切替制御部
31 2乗演算回路
32 パワーレジスタ
33 乗算器
34 シフタ
35 加算器
41 シフタ
42 減算器
43 合計レジスタ
44 乗算器
45 シフタ
46 加算器
47 シフタ
60 バイアス除去部
62 バイアス計算部
63 減算器
64 切替器
65 バイアスレジスタ
66 乗算器
67 シフタ
68 加算器
70 バイアス除去部

Claims (3)

  1. エコー経路を模擬するフィルタに受信信号を通すことによって擬似エコーを生成し、入力信号にこの擬似エコーを位相反転して加えることにより、エコーを消去するエコーキャンセル手段と、信号のパワーが小さいときにはカットオフ周波数が低く、信号のパワーが大きいときにはカットオフ周波数が高くなるように、カットオフ周波数が変化するローパスフィルタを用いたノイズ抑制手段とを備え、エコーキャンセル手段からの出力をノイズ抑制手段に与え、エコーキャンセル手段の出力に含まれているノイズ成分をノイズ抑制手段により除去することを特徴とするエコーキャンセラ。
  2. 請求項1記載のエコーキャンセラにおいて、前記ノイズ抑制手段は、信号のパワーレベルを計算するパワー計算手段と、パワー計算手段によって計算された信号のパワーレベルを所定のノイズ判定しきい値と比較する比較手段と、比較の結果、信号のパワーレベルがノイズ判定しきい値以下のときに、信号に対してローパスフィルタによるノイズ抑制処理を行なうノイズ抑制処理手段とを備えていることを特徴とするエコーキャンセラ。
  3. エコー経路を模擬するフィルタに受信信号を通すことによって擬似エコーを生成し、入力信号にこの擬似エコーを位相反転して加えることにより、エコーを消去するエコーキャンセル手段と、信号のパワーが小さいときにはカットオフ周波数が低く、信号のパワーが大きいときにはカットオフ周波数が高くなるように、カットオフ周波数が変化するローパスフィルタを用いたノイズ抑制手段と、入力信号に加わっているバイアス成分を検出し、該バイアス成分を除去するバイアス除去手段とを備え、前記バイアス除去手段によって入力信号に加わっているバイアス成分を除去し、また、エコーキャンセル手段からの出力をノイズ抑制手段に与え、エコーキャンセル手段の出力に含まれているノイズ成分をノイズ抑制手段により除去することを特徴とするエコーキャンセラ。
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