JP3624425B2 - 無段変速機の制御装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は無段変速機の制御装置に関するものであり、特に制動系に,車輪のロックを防止しながら舵取り効果や制動距離を確保可能なアンチスキッド制御装置を介装した車両に好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
このような車両のアンチスキッド制御装置では、前記車輪のロックを防止しながら舵取り効果や制御距離を確保可能とするために,アンチスキッド制御の対象となる車輪の回転速度,つまり車輪速を検出し、この車輪速と車体速(所謂車速と等価である)との偏差から得られる実際のスリップ率(以下,実スリップ率とも記す)が予め設定された目標スリップ率の範囲内になるような目標車輪速を算出し、この目標車輪速を達成するために,例えば流体圧ホイルシリンダを用いた制動装置にあっては,当該流体圧ホイルシリンダへの作動流体圧を増減圧する。具体的に例えば、前記予め設定された目標スリップ率の範囲としては,現今のタイヤ特性から約10〜30%の範囲に設定されることが多く、車輪速と車速との偏差から得られた実スリップ率が前記目標スリップ率の範囲の上限を上回って逸脱する或いは逸脱しそうな状況では,前記流体圧ホイルシリンダへの作動流体圧を増圧して制動力を増加し、実スリップ率が前記目標スリップ率の範囲の下限を下回って逸脱する或いは逸脱しそうな状況では,前記流体圧ホイルシリンダへの作動流体圧を減圧して制動力を減少するようにしている。なお、前記したアンチスキッド制御装置でスリップ率を算出するために用いられる車速とは,各輪の車輪速の最大値,つまりセレクトハイ車輪速であり、一般に疑似車速,或いは推定車速と称される。そして、前述の範囲の目標スリップ率が達成されている限り,車輪速と実際の車速とはほぼ等価であると考えられるから、前記制動力の増減に伴って車輪速が増減すれば車速も増減すると考えてよい。また、特に制動力を減少するアンチスキッド制御で車輪速が増速するのは,具体的な増速入力があるわけではなく、あくまでも路面にグリップしているタイヤが走行慣性による車体速に追従するように車輪を回転させるためである。
【0003】
一方、ベルトとプーリとの接触点半径を変化させる,所謂プーリ比を変化させることで入出力の変速比を変更するベルト式無段変速機にあっては、その性能上,昨今のトルクコンバータ及び歯車伝達機構を用いた自動変速機とその出力側との間に介装されているワンウエイクラッチのような動力伝達方向規制手段を介装しないのが好ましいとされている。ここでは、ベルト式無段変速機より上流側,つまり機関(エンジン)側を入力側、下流側,即ちプロペラシャフトやディファレンシャル装置等の動力伝達系及び車輪側を出力側と定義する。一般に、この種の無段変速機では、その変速比を制御するための変速パターンは,車速と機関回転数又は機関回転速度(以下,これらを総称して機関回転状態とも記す)とに依存しており、具体的には例えば車速とスロットルバルブの開度(以下,単にスロットル開度とも記す)等とを変数として変速パターンを制御している。従って、制動中はスロットル開度が低減しているから実際の機関回転状態に関わらず,無段変速機の変速パターンは或る一定の変速比に設定され続けることも考えられる。なお、このようにスロットル開度が低減し且つ車速が或る程度大きい場合を、通常の変速パターンにおいてコースト状態,つまり惰性走行状態に等しいと考えれば、前記制動中の変速パターンで設定され続けると考えられる或る一定の変速比とは、実際の車両の変速比における減速比が最も小さい状態になる。
【0004】
しかし、このような無段変速機の実際の変速及び動力伝達系の出力側端である車輪速が,前記アンチスキッド制御装置によって強制的に変動すると、アンチスキッド制御装置の作動中,つまりブレーキペダルの踏込み中は前述のようにスロットル開度が低減して当該無段変速機の変速パターンが或る一定の変速比に設定され続けているために、この車輪速変動(前述より換言すれば車速変動と等価であるとも考えられる)が無段変速機の入力側,つまり機関出力軸にまで回転変動として伝達されてしまう。
【0005】
このような問題を解決するために、例えば特開平3−200433号公報に記載される無段変速機の制御装置が提案されている。この無段変速機の制御装置では、前記のようにアンチスキッド制御装置が作動して機関の回転状態がある所定の回転状態を下回ったときに,当該無段変速機の入力側と機関との間に介装されたクラッチ機構を遮断し、前述のような無段変速機の出力側端から入力される回転変動が機関に及ばないようにしている。これによって、車輪速が極めて小さくなり,前記制動中に車両の減速比が小さくなるように無段変速機の変速比が維持された場合でも、機関の停止,即ちエンジンストップを回避することができる。また、この無段変速機の制御装置では、前記のようにアンチスキッド制御装置が作動したときに、機関の回転駆動力によって発生し且つ無段変速機の変速比を制御するために必要な流体圧を確保できるように、スロットル開度が低減している状態での当該機関の回転状態,具体的にはアイドル回転数を上昇するようにしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前述のようなアンチスキッド制御装置は、既知のように氷雪路面や濡れたタイル路面のような低μ路面で特に有効である。しかしながら、このような低μ路面では、タイヤと路面との摩擦係数そのものが小さいからタイヤ特性としてのグリップ力(摩擦力)も小さい。ここで、出力側に前記ワンウエイクラッチのような動力伝達方向規制手段を持たない無段変速機では、例え前記特開平3−200433号公報に記載される無段変速機の制御装置にあっても,前記アンチスキッド制御装置による車輪速変動(車速変動)は、回転変動として少なくとも無段変速機まで伝達する。つまり、このアンチスキッド制御装置の作動中,即ち制動中は、無段変速機の入出力間で最も小さい減速比となる変速比に維持されていることから、車輪速変動に必要な車輪からの入力伝達系は最も大きい減速比,即ち車輪は最も回り易い状態ではあるというものの、当該車輪速変動に必要な車輪からの入力伝達系は,その末端に当該無段変速機の回転系が持つ慣性重量を備えていると言える。しかも、車輪への入力はタイヤと路面とのグリップ力に依存しているから、前述のような低μ路面では,前記アンチスキッド制御装置によって各車輪への制動力を減少しても当該車輪の車輪速は,前記末端の慣性重量に抗して増速しにくく、前記所望する目標スリップ率の範囲に車輪速を制御することが困難になる虞れがある。
【0007】
本発明はこれらの諸問題に鑑みて開発されたものであり、アンチスキッド制御装置による車輪のロックを防止しながら舵取り効果や制動距離を確保するといった効果を十分に発現可能な無段変速機の制御装置を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本件発明者は前記諸問題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下の知見を得て本発明を開発した。即ち、前述の特開平3−200433号公報に記載される無段変速機の制御装置のように、無段変速機の入力側に設けられたクラッチをアンチスキッド制御装置の作動時に遮断することは、機関の停止、つまりエンジンストップを回避するためには有効である。しかし、機関と車輪との動力伝達系を完全に遮断してしまったのでは、具体的に前記アンチスキッド制御装置によって各車輪への制動力を減少した際、当該車輪の車輪速を低μ路面で増速させることは依然としてできない。そこで、機関と車輪とは動力伝達系によって接続された状態に維持し、同時に車輪速と等価な車速変動に応じて無段変速機の変速比を制御することによって、前記アンチスキッド制御装置により各車輪への制動力が減少された際の、当該車輪の車輪速を増速させる入力の一部に適用できることを見出した。この際、問題となるのは、走行、制動、停止を含む通常の変速パターンで変速比を制御したのでは、前記車速変動に応じた最適な無段変速機の変速比を設定制御することはできない。しかし、アンチスキッド制御装置の作動中は、変速比を一定とせず且つ車速変動に応じて変速比を変化するアンチスキッド制御用の変速パターンに移行すればよいことに着目した。このアンチスキッド制御用の変速パターンには種々の形態が考えられるが、車速が減少する、即ち車両の減速に応じて、変速比を大きく(つまり実車両における減速比を大きくする)したほうが所謂エンジンブレーキの効果は高まるから、完全制動中であるアンチスキッド制御装置の作動中においては、制動距離を確保すると行った意味からも望ましい。つまり、アンチスキッド制御用の変速パターンはアンチスキッド制御の作動開始時の変速比と最大変速比とを結ぶ制御曲線に従って設定することは、制動距離の確保にも有効となる。これは特に車両の減速開始時に、できるだけ早く変速比を大きくすることで、より一層その効果が大きくなる。
【0009】
而して本発明のうち請求項1に係る無段変速機の制御装置は図1の基本構成図に示すように、車輪速から疑似車速を推定し、その疑似車速に対するスリップ率が所定の範囲となる目標車輪速の範囲内に収まるように車輪速を制御するアンチスキッド制御装置を制動系に備えた車両にあって、無段変速機の変速パターンを制御する変速パターン制御手段を備えた無段変速機の制御装置において、前記制動系のアンチスキッド制御装置からの信号に基づいて当該アンチスキッド制御装置が作動中であることを検出するアンチスキッド作動検出手段と、駆動輪速を車速として検出する車速検出手段と、前記アンチスキッド作動検出手段の検出信号に基づいて、アンチスキッド制御装置の作動中の前記変速パターン制御手段による無段変速機の変速パターンを、前記車速検出手段で検出された車速変動のみに対して変速比が変化する変速パターンに変更設定する変速パターン変更手段とを備え、前記変速パターン変更手段は、前記アンチスキッド制御装置の作動中の前記変速パターン制御手段による無段変速機の変速パターンを、アンチスキッド制御装置の作動開始時の変速比に応じて変更設定することを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明のうち請求項2に係る無段変速機の制御装置は、前記変速パターン変更手段は、前記アンチスキッド制御装置の作動中の前記変速パターン制御手段による無段変速機の変速パターンを、当該無段変速機の最大変速比とアンチスキッド制御装置の作動開始時の変速比とを結ぶ変速制御線に従って変更設定することを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明のうち請求項3に係る無段変速機の制御装置は、前記変速パターン変更手段は、前記アンチスキッド制御装置の作動中の前記変速パターン制御手段による無段変速機の変速パターンを、アンチスキッド制御装置の作動開始時の機関回転数を一定に保持した状態での当該無段変速機の最大変速比と、アンチスキッド制御装置の作動開始時の変速比とを結ぶ変速制御線に従って変更設定することを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明のうち請求項4に係る無段変速機の制御装置は、車輪速から疑似車速を推定し、その疑似車速に対するスリップ率が所定の範囲となる目標車輪速の範囲内に収まるように車輪速を制御するアンチスキッド制御装置を制動系に備えた車両にあって、無段変速機の変速パターンを制御する変速パターン制御手段を備えた無段変速機の制御装置において、前記制動系のアンチスキッド制御装置からの信号に基づいて当該アンチスキッド制御装置が作動中であることを検出するアンチスキッド作動検出手段と、駆動輪速を車速として検出する車速検出手段と、前記アンチスキッド作動検出手段の検出信号に基づいて、アンチスキッド制御装置の作動中の前記変速パターン制御手段による無段変速機の変速パターンを、前記車速検出手段で検出された車速変動及びスロットル開度のみに対して変速比が変化する変速パターンに変更設定する変速パターン変更手段とを備え、前記変速パターン変更手段は、前記アンチスキッド制御装置の作動中の前記変速パターン制御手段による無段変速機の変速パターンを、前記変速パターン制御手段による通常の変速パターンで変速比の制御が開始される最大変速比と、アンチスキッド制御装置の作動開始時の変速比とを結ぶ変速制御線に従って変更設定することを特徴とするものである。
【0013】
【作用】
本発明のうち請求項1に係る無段変速機の制御装置では図1の基本構成図に示すように、前記アンチスキッド作動検出手段が、制動系のアンチスキッド制御装置からの信号に基づいて当該アンチスキッド制御装置が作動中であることを検出し、前記車速検出手段が、車両の前後方向車速を検出する。そして、前記変速パターン変更手段は、前記アンチスキッド作動検出手段の検出信号に基づいて、アンチスキッド制御装置の作動中の前記変速パターン制御手段による無段変速機の変速パターンを、車速変動のみに対して変速比が変化する、即ち一定とならない変速パターンに変更設定するから、前記アンチスキッド制御装置によって車輪速が変動し、その結果、車速に変動が生じると、その車速に応じた変速比が、当該アンチスキッド制御用に変更設定された変速パターンから設定される。ここで、アンチスキッド制御装置によって、減速し過ぎた車輪の制動力を減少した際には、機関の回転駆動力が当該車輪の車輪速を増速するから、前記した目標スリップ率の範囲内に各車輪の車輪速を制御し易くなり、その結果、各車輪のロックは防止しながらも、車両としての舵取り効果と制動距離とを確保できる。また、前記アンチスキッド制御装置の作動中の前記変速パターン制御手段による無段変速機の変速パターンを、アンチスキッド制御装置の作動開始の変速比に応じて変更設定することにより、当該変速パターンに従った変速比制御に現れる不連続性を回避することができる。
【0015】
また、本発明のうち請求項2に係る無段変速機の制御装置では、前記アンチスキッド制御装置の作動中の前記変速パターン制御手段による無段変速機の変速パターンを、当該無段変速機の最大変速比とアンチスキッド制御装置の作動開始時の変速比とを結ぶ変速制御線に従って変更設定することにより、車速が減速するにつれて変速比(つまり車両の減速比)は大きくなり、その結果、エンジンブレーキの効果を得て良好な制動距離を確保又は短縮することが可能となる。
【0016】
また、本発明のうち請求項3に係る無段変速機の制御装置のように、前記アンチスキッド制御装置の作動中の前記変速パターン制御手段による無段変速機の変速パターンを、アンチスキッド制御装置の作動開始時の機関回転数を一定に保持した状態での当該無段変速機の最大変速比と、アンチスキッド制御装置の作動開始時の変速比とを結ぶ変速制御線に従って変更設定するとか、或いは請求項4に係る無段変速機の制御装置のように、当該アンチスキッド制御装置の作動中の変速パターンを、前記変速パターン制御手段による通常の変速パターンで変速比の制御が開始される車速及びスロットル開度における最大変速比と、アンチスキッド制御装置の作動開始時の変速比とを結ぶ変速制御線に従って変更設定することにより、アンチスキッド制御の作動開始直後からの車速の減速に伴って変速比(車両減速比)は速やかに大きくなり、前記エンジンブレーキは更に良好に車両に作用してより一層良好な制動距離を確保することができる。
【0017】
【実施例】
次に本発明の無段変速機の制御装置を実際の車両に適用した第1実施例を図2〜図9に基づいて説明する。この第1実施例の基本的な車両構造は,後述する無段変速油圧制御回路やコントローラであるマイクロコンピュータ等を含めて,本出願人が先に提案した特開昭61−105353号公報に記載される無段変速機の制御装置と同等かほぼ同等であり、このうち同等の部分は夫々各構造の説明部位で同等であることを説明したのち,当該公報を参照するものとして詳細な説明を割愛することもある。
【0018】
図2は無段変速機の動力伝達機構を示すものであり、この無段変速機はフルードカップリング12,前後進切換機構15,Vベルト式無段変速機構29,差動装置56等を有しており、エンジン10の出力軸10aの回転を所定の変速比及び回転方向で出力軸66及び68に伝達することができる。この無段変速機は、フルードカップリング12(ロックアップ油室12a,ポンプインペラ12b,タービンライナ12c,ロックアップクラッチ12d等を有している)、回転軸13、駆動軸14、前後進切換機構15、駆動プーリ16(固定円錐部材18,駆動プーリシリンダ室20(室20a,室20b),可動円錐部材22,溝22a等からなる)、遊星歯車機構17(サンギヤ19,ピニオンギヤ21,ピニオンギヤ23,ピニオンキャリア25,インターナルギヤ27等からなる)、Vベルト24、従動プーリ26(固定円錐部材30,従動プーリシリンダ室32,可動円錐部材34等からなる)、従動軸28、前進用クラッチ40、駆動ギヤ46、アイドラギヤ48、後進用ブレーキ50、アイドラ軸52、ピニオンギヤ54、ファイナルギヤ44、差動装置56(ピニオンギヤ58,ピニオンギヤ60,サイドギヤ62,サイドギヤ64等からなる)、出力軸66、出力軸68等から構成されているが、これらのついての詳細な説明を省略する。なお、説明を省略した部分の詳細な構成については本出願人が先に提案した前記特開昭61−105353号公報を参照されたい。また、前記従動プーリ26のシリンダ室32の受圧面積は前記駆動プーリ16のシリンダ室20の各室20a,20bの受圧面積の約1/2程度に設定してあり、当該従動プーリ26のシリンダ室32には後述する油圧制御装置から,共通作動油圧としてのライン圧が供給されており、駆動プーリ16のシリンダ室20の各室20a,20bに当該油圧制御装置から制御された作動油圧が供給されて駆動プーリ16のV字状プーリ溝の幅を拡狭変更して,Vベルト24と駆動プーリ16との接触位置半径を変更制御すると、このVベルト24に掛かるエンジン10からの回転駆動力に抗して当該Vベルト24と従動プーリ26とが滑らないように挟持しながら,且つ駆動プーリ16のV字状プーリ溝の幅の拡狭変更量に反比例するように当該従動プーリ26のV字状溝の幅を拡狭変更して当該従動プーリ26とVベルト24との接触位置半径を変更制御し、これにより所望する両プーリ16,26間のプーリ比を達成してこれを無段変速機の入出力間の変速比にするように構成されている。
【0019】
図3は本実施例の無段変速機の油圧制御装置である。この油圧制御装置は、オイルポンプ101、ライン圧調圧弁102、マニュアル弁104、変速制御弁106、調整圧切換弁108、ステップモータ110、変速操作機構112、スロットル弁114、一定圧調圧弁116、電磁弁118、カップリング圧調圧弁120、ロックアップ制御弁122等を有しており、これらは互いに図示のように接続されており、また前進用クラッチ40、後進用ブレーク50、フルードカップリング12、ロックアップ油室12a、駆動プーリシリンダ室20及び従動プーリシリンダ室32とも図示のように接続されている。これらの弁等についての詳細な説明は前記特開昭61−105353号公報に記載されているものと同等かほぼ同等であるために,当該公報を参照されるものとしてここでは割愛するが、前記マニュアル弁104のスプール136の切換え停止位置には,LレンジとDレンジとの間に所謂2レンジを介装して,計6つのポジションで当該スプール136が停止するものとした。この停止ポジション増加に係る当該油圧制御装置における具体的な作動油圧の変化はなく、後述するマイクロコンピュータでの演算処理が若干異なる程度である。なお、図3中の各参照符号は次の部材を示す。ピニオンギヤ110a、リザーバタンク130、ストレーナ131、油路132、リリーフ弁133、弁穴134、ポート134a〜134e、スプール136、ランド136a〜136b、油路138、一方向オリフィス139、油路140、油路142、一方向オリフィス143、弁穴146、ポート146a〜146g、スプール148、ランド148a〜148e、スリーブ150、スプリング152、スプリング154、変速比伝達部材158、油路164、油路165、オリフィス166、オリフィス170、弁穴172、ポート172a〜172e、スプール174、ランド174a〜174c、スプリング175、油路176、オリフィス177、レバー178、油路179、ピン181、ロッド182、ランド182a,182b、ラック182c、ピン183、ピン185、弁穴186、ポート186a〜186d、油路188、油路189、油路190、弁穴192、ポート192a〜192g、スプール194、ランド194a「194e、負圧ダイヤフラム198、オリフィス199、オリフィス202、オリフィス203、弁穴204、ポート204a〜204e、スプール206、ランド206a,206b、スプリング208、油路209、フィルタ211、オリフィス216、ポート222、ソレノイド224、プランジャ224a、スプリング225、弁穴230、ポート230a〜230e、スプール232、ランド232a,232b、スプリング234、油路235、オリフィス236、弁穴240、ポート240a〜240h、スプール242、ランド242a〜242e、油路243、油路245、オリフィス246、オリフィス247、オリフィス248、オリフィス279、チョーク型絞り弁250、リリーフバルブ251、保圧弁252、チョーク型絞り弁253、油路254、クーラ256、クーラ保圧弁258、オリフィス259、切換検出スイッチ278である。
【0020】
図4は前記ステップモータ110及びソレノイド224の作動を制御する電子制御装置(マイクロコンピュータ)300を示すものである。このマイクロコンピュータ300は、入力インターフェース311、基準パルス発生器312、中央演算処理装置(CPU)313、リードオンリメモリ(ROM)314、ランダムアクセスメモリ(RAM)315及び出力インターフェース316を有しており、これらはアドレスバス319及びデータバス320によって連結されている。このマイクロコンピュータには、エンジン回転速度センサ301、車速センサ302、スロットル開度センサ303、シフトポジションスイッチ304、タービン回転速度センサ305、エンジン冷却水温センサ306、ブレーキセンサ307、切換検出スイッチ298及びアンチスキッド制御装置(ABSコントローラ)391からの信号が直接又は波形成形器308,309及び322、及びAD変換器310を介して入力され、一方、増幅器317及び信号線317a〜317dを介してステップモータ110へ信号が出力され、またソレノイド224へも信号が出力されるが、これらの詳細な説明は前記特開昭61−105353号公報に記載されるものと同等又はほぼ同等であるので,そちらを参照されるものとして割愛する。なお、当該公報に記載されていないものとしては、前述のようにシフトポジションとしてLレンジとDレンジとの間に2レンジが新たに設けられているため、前記シフトポジションスイッチ304からはこの2レンジを加えた計6つのポジション信号がマイクロコンピュータ300に入力される。また、前記ABSコントローラ391からは,前述した制動系のアンチスキッド制御が実行されている間,アンチスキッド制御作動中を示すABS作動信号ASが当該マイクロコンピュータ300に入力される。
【0021】
そして、前記マイクロコンピュータ300により前記無段変速機の変速比制御は図5のフローチャートに示す基準演算処理に従って実行される。この演算処理の基本的なロジック体系は前記特開昭61−105353号公報に記載されるものとほぼ同等であるが、前記シフトポジションに2レンジが付加された関係で,検索される変速パターンとして当該2レンジに相当する変速パターンが付加される。この変速比制御の基準演算処理について簡単に説明すれば、図5の演算処理は所定時間(ΔT)毎のタイマ割込みによって実行され、まずステップ502で前記シフトポジションスイッチ304からのシフトポジションを読込み、次いでステップ504でシフトポジションがD,2,L,Rレンジであると判定された場合にはステップ508に移行し、そうでない場合にはステップ506に移行する。前記ステップ508では前記スロットル開度センサ303からの信号に基づいてスロットル開度THを読込み、次いでステップ510で車速センサ302からの信号に基づいて車速Vを読込み、次いでステップ512でエンジン回転速度センサ301からの信号に基づいてエンジン回転速度NE を読込み、次いでステップ514でタービン回転速度センサ305からの信号に基づいてタービン回転速度Nt を読込む。次にステップ516に移行して,前記エンジン回転速度NE とタービン回転速度Nt との回転偏差ND を算出し、次にステップ518で,予め記憶されている制御マップに従ってロックアップ車速VON及びロップアップオフ車速VOFF を検索する。
【0022】
次にステップ520に移行して、ロップアップルラグLUFが設定されている場合にはステップ544に移行し、そうでない場合にはステップ522に移行する。前記ステップ544では、当該車速Vが前記ロックアップオフ車速VOFF よりも小さい場合にステップ540に移行し、そうでない場合にステップ546に移行する。一方、前記ステップ522で当該車速Vが前記ロックアップ車速VONよりも大きいと判定された場合にはステップ524に移行し、そうでない場合には前記ステップ540に移行する。前記ステップ524では、前記回転偏差ND から第1の目標値Nm1 を減じて回転目標値偏差eを算出し、次にステップ526で予め記憶された制御マップから前記回転目標値偏差eに応じた第1のフィードバックゲインG1 を検索し、次にステップ528で前記回転偏差ND が制御系切換閾値N0 よりも小さい場合にはステップ530に移行し、そうでない場合にはステップ538に移行する。前記ステップ530では、前回デューティ比に微小所定値αを加えて今回デューティ比を設定し、次にステップ532でこの今回デューティ比が100%より小さいと判定された場合にはステップ602に移行し、そうでない場合にはステップ534に移行する。前記ステップ534では、今回ディーティ比を100%に修正し、次にステップ536でロップアップフラグLUFを設定して前記ステップ602に移行する。一方、前記ステップ538では今回デューティ比を,前記回転目標値偏差e及び第1のフィードバックゲインG1 を変数とする演算式に基づいて算出し、前記ステップ602に移行する。一方、前記ステップ540では今回デューティ比を0%に設定し、次にステップ542でロックアップフラグLUFを算出し、前記ステップ602に移行する。また、前記ステップ546では今回デューティ比を100%に設定して、前記ステップ602に移行する。
【0023】
前記ステップ602で、当該車速Vが変速比制御開始閾値V0 よりも小さいと判定された場合はステップ604に移行し、そうでない場合はステップ624に移行する。前記ステップ604でスロットル開度THがアイドル判定閾値TH0 よりも小さいと判定された場合はステップ610に移行し、そうでない場合にはステップ606に移行する。前記ステップ606では、今回デューティ比を0%に設定し、次にステップ608でステップモータ110への目標パルスPD を最大変速比パルスP1 に設定してステップ630に移行する。一方、前記ステップ506では、今回デューティ比を0%に設定して前記ステップ630に移行する。
【0024】
一方、前記ステップ624ではシフトポジションがDレンジである場合にステップ626に移行し、当該Dレンジに相当する変速パターンから車速V及びスロットル開度THに応じた変速比を検索して前記ステップ630に移行する。シフトポジションがDレンジでない場合にはステップ639に移行して、シフトポジションが2レンジである場合にはステップ640に移行し、当該2レンジに相当する変速パターンから車速V及びスロットル開度THに相当する変速比を検索して前記ステップ630に移行する。シフトポジションが2レンジでない場合にはステップ642に移行して、シフトポジションがLレンジである場合にはステップ628に移行し、当該Lレンジに相当する変速パターンから車速V及びスロットル開度THに相当する変速比を検索して前記ステップ630に移行する。またシフトポジションがLレンジでない場合にはステップ644に移行して、シフトポジションRレンジに相当する変速パターンから車速V及びスロットル開度THに相当する変速比を検索して前記ステップ630に移行する。
【0025】
一方、前記ステップ610で,前記切換検出スイッチ298がオン状態である場合にはステップ612に移行し、そうでない場合にはステップ620に移行する。前記ステップ612では前記回転偏差ND から第2の目標値Nm2 を減じて回転目標値偏差eを算出し、次にステップ614で予め記憶された制御マップから前記回転目標値偏差eに応じた第2のフィードバックゲインG2 を検索し、次にステップ616で今回デューティ比を,前記回転目標値偏差e及び第2のフィードバックゲインG2 を変数とする演算式に基づいて算出し、次にステップ618でステップモータ110への現在のパルス数PA を“0”に設定してステップ636に移行する。一方、前記ステップ630で現在パルス数PA が目標パルス数PD に等しいと判定された場合には前記ステップ636に移行する。また、前記ステップ630で現在パルス数PA が目標パルス数PD より小さいと判定された場合には、ステップ632に移行してステップモータ駆動信号をアップシフト方向に移動し、次にステップ634で現在パルス数PA に“1”を加えて新たな現在パルス数PA として更新記憶した後、前記ステップ636に移行する。一方、前記ステップ630で現在パルス数PA が目標パルス数PD より大きいと判定された場合には、前記ステップ620に移行してステップモータ駆動信号をダウンシフト方向に移動し、次にステップ622で現在パルス数PA から“1”を減じて新たな現在パルス数PA として更新記憶した後、前記ステップ636に移行する。
【0026】
前記ステップ636では、前記ステップモータ駆動信号を出力し、次にステップ638でソレノイド駆動信号を出力してメインプログラムに復帰する。
本実施例では、前記ステップ644のRレンジ相当変速パターン検索を除くステップ626,628,640で検索される変速パターンは、後述するマイナプログラムによって,アンチスキッド制御装置の作動時にはアンチスキッド制御用に補正されるのであるが、このアンチスキッド制御装置の作動時以外の通常時には,凡そ図6のような変速パターンに従って無段変速機の変速比が設定されると考えてよい。即ち、各変速パターンにおける変速比は,車速Vとスロットル開度THとを変数とする制御マップ上で,それらの変数に従って検索すれば一意に設定される。この図6を,車速Vを横軸,エンジン回転速度Neを縦軸,スロットル開度THをパラメータとする変速パターンの総合制御マップであると仮定すれば、原点を通る傾き一定の直線は変速比が一定であると考えればよく、例えば変速パターンの全領域において最も傾きの大きい直線は,車両全体の減速比が最も大きい,即ち最大変速比CHiであり、逆に最も傾きの小さい直線は,車両全体の減速比が最も小さい,即ちDレンジ最小変速比CDLO であり、このDレンジ最小変速比よりも傾きの大きい車両全体の減速比が2レンジ最小変速比C2LO であると考えてよい。従って、具体的には前記Lレンジの変速パターンは車速V及びスロットル開度THに関わらず前記最大変速比CHiに固定され、前記2レンジの変速パターンは前記最大変速比CHiと2レンジ最小変速比C2LO との間の領域で車速V及びスロットル開度THに応じて設定される変速比の経時的軌跡からなる制御曲線となり、前記Dレンジの変速パターンは前記最大変速比CHiとDレンジ最小変速比CDLO との間の領域で車速V及びスロットル開度THに応じて設定される変速比の経時的軌跡からなる制御曲線となろう。従って、前記に触れたLレンジのアンチスキッド制御用の変速パターン変更は実際にはなされないと考えてもよい。なお、車速Vが前記変速比制御開始閾値V0 よりも小さい領域では,各シフトポジションのレンジに関係なく,変速比(即ち変速パターン)は前記最大変速比CHiに固定される。つまり、この変速比制御開始閾値V0 は自動変速機搭載車両で発生するクリープ状態の制御上限値であると考えればよい。ここで、最大変速比CHiにおける変速比制御開始閾値V0 のときのスロットル開度THを同じく変速比制御開始閾値TH1 と定義し、この変速比制御開始スロットル開度閾値TH1 において2レンジ最小変速比C2LO となる車速Vを2レンジ最小変速比車速V21,同じく変速比制御開始スロットル開度閾値TH1 においてDレンジ最小変速比CDLO となる車速VをDレンジ最小変速比車速VD1と定義し、これらの各レンジ最小変速比車速V21,VD1を単にレンジ最小変速比車速Vj1とも記すこととする。
【0027】
それでは次に、前記アンチスキッド制御装置の作動中に各レンジの変速パターンを変更するために、前記図5の演算処理中,ステップ626,628,640(実際には前述のようにステップ628のLレンジ変速パターンは変更されない)で実行されるマイナプログラムの演算処理を図7に従って説明する。なお、演算処理中の制御フラグFは“1”のセット状態でアンチスキッド制御用の変速パターン(単にABS変速パターンとも記す)に変更中であることを示し、“0”のリセット状態で通常の変速パターン,即ち前記図6の変速パターンであることを示す。また、同演算処理中のABS作動直前のスロットル開度TH(N) や目標変速比CD(N)は,前記図5の演算処理によって,前記RAM315等に形成されている図示されないシフトレジスタ等の既知の順次更新記憶装置に記憶されているものとし、図示されない個別の演算処理によって例えばスロットル開度THが急激に減少した時刻からABS作動開始時刻までの経過時間を計測し、この経過時間分だけ前のスロットル開度TH及び目標変速比CD を,前記順次更新記憶装置から読込んでくるものとする。
【0028】
この図7の演算処理は所定時間(Δt)毎のタイマ割込みによって実行され、まずステップS1で前記ABSコントローラ391からのABS作動信号ASを読込む。
次にステップS2に移行して、前記ステップS1で読込まれたABS作動信号ASからアンチスキッド制御装置(ABS)が作動中であるか否かを判定し、アンチスキッド制御装置が作動中である場合にはステップS3に移行し、そうでない場合にはステップS4に移行する。
【0029】
前記ステップS4では、通常の各レンジ変速パターン,即ち前記図6に示す変速パターンにおいて,前記図5の演算処理のステップ510で読込まれた車速V及びステップ508で読込まれたスロットル開度THに応じた目標変速比CD を検索し、次にステップS5で制御フラグFを“0”にリセットし、次いでステップS6に移行する。
【0030】
一方、前記ステップS3では制御フラグFが“1”でないか否かを判定し、制御フラグFが“1”のセット状態でない場合にはステップS7に移行し、そうでない,即ち制御フラグFが“1”のセット状態である場合にはステップS8に移行する。
前記ステップS7では、前記シフトレジスタ等の順次更新記憶装置からABS作動直前のスロットル開度TH(N) 及びABS作動直前の目標変速比CD(N)を読込み、これらを夫々直前スロットル開度THAS及び直前変速比CDAS として前記RAM315に更新記憶してステップS9に移行する。
【0031】
前記ステップS9では、前記ステップS7で読込まれ且つ更新記憶された直前スロットル開度THASにおける直前変速比CDAS と、直前スロットル開度TH AS における最大変速比CHiとを結ぶ直線から、車速Vを変数とするABS変速パターンCDPTN=g(V)を算出し、次いでステップS10に移行する。
前記ステップS10では、前記ステップS9で算出したABS変速パターンCDPTNにおける最大変速比CHi及び各レンジ最小変速比CjLO における各車速を、夫々最大変速比車速VHi及び最小変速比車速VLOとして算出し、次いでステップS11に移行する。
【0032】
前記ステップS11では、前記ステップS9で算出されたABS変速パターンCDPTN,ステップS10で算出された最大変速比車速VHi及び最小変速比車速VLOを、夫々前記RAM315に更新記憶してステップS12に移行する。
前記ステップS12では、前記制御フラグFを“1”にセットしてから前記ステップS6に移行する。
【0033】
一方、前記ステップS8では、前記図5のステップ510で読込まれた車速Vが,RAM315に記憶されている最新の最大変速比車速VHiより大きいか否かを判定し、当該車速Vが最大変速比車速VHiより大きい場合にはステップS13に移行し、そうでない場合にはステップS14に移行する。
前記ステップS13では、前記図5のステップ510で読込まれた車速Vが,RAM315に記憶されている最新の最小変速比車速VLOより小さいか否かを判定し、当該車速Vが最小車速VLOより小さい場合にはステップS15に移行し、そうでない場合にはステップS16に移行する。
【0034】
前記ステップS15では、RAM315に記憶されている最新のABS変速パターンCDPTNを読込んでからステップS17に移行する。
前記ステップS17では、前記図5のステップ510で読込まれた車速Vを用いて,前記ステップS15で読込まれたABS変速パターンCDPTNに従って目標変速比CD を算出してから前記ステップS6に移行する。
【0035】
一方、前記ステップS14では,目標変速比CD を最大変速比CHiに設定してから前記ステップS6に移行する。
また、前記ステップS16では,目標変速比CD を当該レンジのレンジ最小変速比CDLO に設定してから前記ステップS6に移行する。
前記ステップS6では、前記ステップS4,S17,S14,S16で算出設定された目標変速比CD に応じた目標パルス数PD を予め設定された算出式やマップ検索によって設定して,前記図5の演算処理に復帰する。
【0036】
次に、前記図7のマイナプログラムによるABS変速パターンについて図8を用いながら説明する。ここでは、前記2レンジ又はDレンジにおける変速領域を代表してjレンジで表記するものとし、このjレンジにおいては前記最小変速比CjLO として考察する。
今、アクセルペダルを踏込んで車両が通常に走行している状態では、ブレーキペダルの踏込みがなく、その結果,ブレーキ液圧が増加していない状態では、前記ABSコントローラ391からABS作動信号ASは出力されておらず、従って前記図7の演算処理が実行される所定サンプリング時間毎に,ステップS1ではABS作動信号が読込まれず、その結果,ステップS2からステップS4に移行して通常の各レンジ変速パターンに従って,当該車速V及びスロットル開度THに応じた目標変速比CD が検索設定され、ステップS5で制御フラグFは“0”にリセットされ続け、前記ステップS4で設定された目標変速比CD に応じた目標パルス数PD がステップS6で算出される。
【0037】
従って、この目標パルス数PD に応じて前記図5の演算処理では、目標パルス数PD と現在パルス数PA との偏差が零になるようにステップモータ駆動信号をアップシフト又はダウンシフト方向に移動し、その結果、目標変速比CD が達成されている。
この状態からアクセルペダルの踏込みを解除し、次いでブレーキペダルを踏込んだ結果、ブレーキ液圧が増加すると、前記ABSコントローラ391からABS作動信号ASが出力され、前記所定サンプリング時間毎に実行される図7の演算処理のステップS1で、このABS作動信号ASが読込まれると、同ステップS2でABS作動中であると判定されるから次いで同ステップS3に移行する。この同ステップS3では、未だ制御フラグFが“0”のままであるから、同ステップS7に移行し、このステップS7で、前記シフトレジスタ等の順次更新記憶装置から前記ABS作動直前のスロットル開度TH(N) 及び目標変速比CD(N)が読込まれ、同時にこれらのスロットル開度TH(N) 及び目標変速比CD(N)が直前スロットル開度THAS及び直前変速比CDAS としてRAM315に更新記憶される。次に、前記ステップS10では、前記直前スロットル開度THASにおける直前変速比CDAS と、直前スロットル開度TH AS における最大変速比CDHi とを結ぶ直線を、図8に示すようなABS変速パターンCDPTNに設定すると共に、このABS変速パターンCDPTNに従う変速比制御曲線を車速Vに関する演算式に置換する。次いで、前記ステップ11では、このABS変速パターンCDPTNにおいて、最大変速比CHiとなる最大変速比車速VHi及びレンジ最小変速比CjLO となる最小変速比車速VLOを算出する。即ち、前記図5のステップ510で読込まれる車速Vが前期最大変速比車速VHi以上最小変速比車速VLO以下の領域では、少なくとも当該ABS作動中における目標変速比CD は当該ABS変速パターンに従って設定されるものと判定することができる。
【0038】
そして、前記ステップS12で制御フラグFを,ABS変速パターンに変更中であることを示す“1”にセットし、次いで前記ステップS7で読込まれ且つ直前目標変速比CDAS として更新記憶された目標変速比CD に応じた目標パルス数PD をステップS6で算出する。
この直前目標変速比CDAS に応じた目標パルス数PD に対し、前記図5の演算処理では,当該目標パルス数PD と現在パルス数PA との偏差が零になるようにステップモータ駆動信号を,主としてダウンシフト方向に移動し、その結果,直前目標変速比CDAS が達成されている。これを子細に考察すれば、前述のようにABS作動信号ASがABSコントローラ391から出力されるまでの間に,前記図7の演算処理が実行されるサンプリング時間毎に、前記ステップS2では,未だアンチスキッド制御装置は作動していないと判定されて前記ステップS4,S5を経て通常の各レンジ変速パターンから目標変速比CD が設定される。ところが、同じくこの時間では,スロットル開度THは急激に低減しているはずであり、従って当該目標変速比CD は,その時点での車速Vが同等かほぼ同等の状態(つまりコースト走行状態,惰性走行状態であると考えられる)で一旦、レンジ最小変速比CjLO まで変化する。そして、このコースト走行,惰性走行により同じく車速Vが同等かほぼ同等の状態で、ブレーキペダルの踏込みによりブレーキ液圧が増加すると,ABS作動信号ASがABSコントローラ391から出力されて、その結果,前述のように図7の演算処理でステップS2からステップS3〜S6で直前目標変速比CDAS が達成されるために、実際の変速比は図8の仮想線に示すように変化しているはずである。この間,車速Vそのものは同等かほぼ同等であると仮定すれば、ブレーキペダルが踏込まれた直後にエンジンの回転数が上昇するために,運転者には当該エンジン回転数の増加に伴う若干の違和感は極めて短時間に発生するものの、同時に無段変速機の変速比が大きくなる(つまり車両の減速比が大きくなる)から,実際の車両にはエンジンブレーキによる大きな負の加速度(減速度)が発生し、その結果,次の瞬間にこの違和感は解消されるであろう。
【0039】
その後、継続してブレーキペダルを踏込み続けたために、前記ABSコントローラ391からはABS作動信号ASが出力され続け、図7の演算処理が実行されるサンプリング時間毎にステップS2からステップS3に移行する。ところが未だ制御フラグFは“1”にセットされたままであるから、当該ステップS3から前記ステップS8に移行する。ここで、この図7の演算処理が実行されているタイミングは前記ABS作動開始時からさほど時間が経過していないと仮定すれば、図8のABS作動開始点の車速に比して当該演算処理が実行されている時点の車速Vはやや減少している程度であり、前記ステップS10で算出されたABS変速パターンCDAS の最大変速比車速VHiよりも大きく、勿論,前記最小変速比車速VLOよりも小さいと考えられる。従って、この図7の演算処理のステップS8からステップS13を経てステップS15に移行し、前記ステップS11でRAM315に更新記憶されているABS変速パターンCDAS が読込まれ、次いでステップS17では,前記図5の演算処理のステップ510で読込まれた現在車速Vに応じた目標変速比CD が算出され、次いでステップS6でこの目標変速比CD に応じた目標パルス数PD が算出され、以下,車速が次第に低下し、当該車速Vが前記最大変速比車速VHiよりも小さくなるまで、このフローが繰り返される。
【0040】
この間、ABSコントローラ391により作動液圧の増減圧制御が繰り返される制御対象車輪では,後段に詳述するようにミクロ的には車輪速の増減を繰り返しながら、マクロ的には,つまり全体的には車速の減少に伴って車輪速が減少してゆく。この車輪速の増減は、当該車輪のグリップ力の範囲内で車体の速度,即ち車速Vにも反映し、その結果,車速Vも当該車輪速の増減に対して遅れは生じながらも増減する。従って、前記図7の演算処理が実行されるサンプリング時間毎に算出される無段変速機の目標変速比CD も,ミクロ的には車速Vの増減に伴って増減し(車両の減速比で考えれば減増する)、マクロ的には,即ち全体的には車速Vの減少に伴って大きくなる。
【0041】
このミクロ的な増減を繰り返す目標変速比CD に応じた目標パルス数PD に対し、前記図5の演算処理では、当該目標パルス数PD と現在パルス数PA との偏差が零になるようにステップモータ駆動信号を、アップシフト方向とダウンシフト方向とに往復移動し、その結果、ミクロ的に増減する目標変速比CD が達成されながら、マクロ的な目標変速比CD は次第に大きくなるように変速比制御されている。これを子細に考察すれば、前記ABS変速パターンCDPTNではエンジンの回転数は一定であり、一方、車速Vの変動に応じて変速比をミクロ的に増減しながら、更にマクロ的には変速比が大きくなっている。従って、エンジンの回転駆動力は増減する車速V、つまり増減しようとする車輪速の回転駆動力として作用する。このことは、後段に詳述するように、ABSコントローラ391がブレーキ液圧を減少して当該制御対象車輪への制動力を減少した際に、低μ路面等でも当該制御対象車輪を回転駆動しようとするから、所望する車輪速への復帰が速やかに実施され、アンチスキッド制御によって有効に車輪速を所望の状態に制御することを可能としている。
【0042】
その後も、ブレーキペダルを踏込み続け,やがてマクロ的な車速Vが前記最大変速比車速VHiよりも小さくなった状態を想定する。この状態でも前記ABSコントローラ391からはABS作動信号ASが出力され続け、図7の演算処理が実行されるサンプリング時間毎にステップS2からステップS3に移行し、未だ制御フラグFは“1”にセットされたままであるから、当該ステップS3から前記ステップS8に移行する。ここで、現在車速Vは前記最大変速比車速VHiよりも小さいから,当該ステップS8からステップS14に移行し、このステップS14で目標変速比CD は前記最大変速比CHiに設定され、次いでステップS6でこの目標変速比CD ,即ち最大変速比CHiに応じた目標パルス数PD が算出され、以下,車速が更に低下しても図7の演算処理が実行されるサンプリング時間毎に、このフローが繰り返される。
【0043】
従って、前記現在車速Vが前記最大変速比車速VHiより小さくなる時刻以後は,この最大変速比CHiに設定された目標変速比CD に応じた目標パルス数PD に対し、前記図5の演算処理では,当該目標パルス数PD と現在パルス数PA との偏差が零になるようにステップモータ駆動信号をダウンシフト方向に移動し、その結果,当該最大変速比CHiである目標変速比CD が達成されると、それ以後,無段変速機の変速比を当該最大変速比CHiに維持する。これを子細に考察すると、前記現在車速Vが前記最大変速比車速VHiより小さくなる時刻までの時間,つまり無段変速機の変速比が,前記ABS変速パターンに従って制御されている時間は、前記ABSコントローラ391及びエンジンブレーキによって十分な制動効果を発揮し、その結果,車体の速度,即ち車速Vは、車輪のグリップ力の範囲内で発揮される減速度によって十分に減速されている。従って、前記現在車速Vが前記最大変速比車速VHiより小さくなる時刻以後に,無段変速機の変速比を最大変速比CHiに維持しても、車輪がロックしたり車輪速が増速しなかったりといった,所謂スキッド状態になることはないと考えられ、その後,当該最大変速比CHiに維持された無段変速機を介してエンジンブレーキが有効に車両の減速度の一助として作用し、前記ABSコントローラ391による制動効果を十分に発揮することができる。
【0044】
なお、ABSコントローラ391からABS作動信号ASが出力されている,つまりブレーキペダルを踏込んでいるにも関わらず、例えば下り坂のように重力加速度の影響で車速Vが増速し、その結果,現在車速Vが前記最小変速比車速VLOより大きくなってしまった場合には、前記図7の演算処理のステップS8からステップS16で目標変速比CD にレンジ最小変速比CjLO が設定され、この目標変速比CD に応じた目標パルス数PD が同ステップS6で算出される。このような状況下で,低μ路面を走行していることを想定すると、無段変速機の変速比を最大変速比CHi側に変化させてエンジンブレーキの補助を積極的に利用することは、前記路面とタイヤとのグリップ力が当該車輪を回転してくれるトルクを増大せしめることになって,却ってアンチスキッド制御による車輪速制御の効果が減少する虞れがある。従って、むしろ低μ路面でも路面とタイヤとのグリップ力が当該車輪を回転してくれるように,その車輪回転に必要なトルクをできるだけ小さくしておくほうがアンチスキッド制御の効果から言えば好ましく、従って現在車速Vが前記最小変速比車速VLOより大きくなる状況下で無段変速機の変速比をレンジ最小変速比CjLO に維持することは車両の制動効果には殊更に支障を来さないと考えられる。
【0045】
一方、ブレーキペダルの踏込みを解除してブレーキ液圧が所定値(凡そ大気圧程度)まで減少し、その結果,ABSコントローラ391からのABS作動信号ASが出力されなくなった通常走行状態への移行時を想定すると、この段階で最初に前記図7の演算処理が実行されると,ステップS2からステップS4に移行し、ここで通常走行における各レンジ変速パターンから目標変速比CD が検索され、次いでステップS5では制御フラグFがABS変速パターンに変更していないことを示す“0”にリセットされ、この通常走行の目標変速比CD に応じた目標パルス数PD がステップS6で算出され、以後,再びABS作動信号ASが出力されるまで,同図の演算処理が実行されるサンプリング時間毎にこのフローが繰り返される。
【0046】
このうち、前記車速Vが最大変速比車速VHiより大きい領域でミクロ的には増減しているものの,マクロ的には次第に減少している状態、つまり前記ABS変速パターンに従って変速比が制御されている状態におけるプーリ入力軸の回転数と変速比との相関を図9に示す。このタイムチャートでは、時刻t0 にABS作動信号ASが出力されたものとし、実際にABSコントローラで検出されている車輪速VWjが,疑似車速VC に対するスリップ率が10〜30%となる目標車輪速VWj * の範囲内に納まるように制御する場合を示している。なお、前記スリップ率を10〜30%の範囲内に納める理由は前述のとおりであるが、ここでは実際の車速の代わりに,前記ABSコントローラで推定された疑似車速VC を用いる。このような疑似車速をアンチスキッド制御で用いる理由は公知であるためにここでは詳述しないが、簡潔に述べれば一般の車速センサ等で検出される車速には極僅かであっても誤差が発生するが、この誤差の範囲内に車輪速=零の領域が包含されてしまうと、実際の車両で当該制御対象車輪がロックしていることを正確に検出できなくなる虞れがあるためなどであり、実際には検出される各車輪速のうち,最も大きい車輪速を疑似車速として採用するなどの例がある。
【0047】
前述のようにアンチスキッド制御装置では、車輪速VWjが目標車輪速VWj * の範囲内に納まるように制動力の増減制御を行うため、実際の車輪速VWjも図9に示すように増減している。このうち、車輪速VWjが減速している領域では制動力が増加され、車輪速VWjが増速している領域では制動力が減少されていると考えてよく、前記図5及び図7の演算処理で用いられる実際の車速Vは、少なくともタイヤと路面との間にわずかでもグリップ力の発生している限り、当該車輪速VWjに対して機械的な遅れはあるものの当該車輪速VWjと同様に増減していると考えてよい。さて、前記ABS変速パターンに従う無段変速機の変速比は、このように車輪速VWjとほぼ同様に増減している車速Vに応じて変化するが、この間、無段変速機のプーリ入力軸の回転数、即ち増減する車輪速が無段変速機を介してプーリ入力軸を回転させた結果、発生するプーリ入力軸の回転数は一定又はほぼ一定となる。一方、実際のスロットル開度は大きく低減しており、この回転数一定のプーリ入力軸の回転が、エンジンの出力軸を回転させようとし、所謂エンジンブレーキの安定した制動効果を得ることができる。その一方で、このスロットル全閉状態のエンジンの回転数とエンジンの出力軸を回転させようとするプーリ入力軸の回転数との偏差が大きすぎると、氷雪路面等の低μ路面でタイヤのグリップ力が小さい状態では、このエンジンの出力軸を回転させようとするトルクを得にくく、その結果、前記アンチスキッド制御装置によって制御対象車輪への制動力を減少しても当該車輪は増速しにくくなってしまう。従って、前記スロットル全閉状態のエンジンの回転数とエンジンの出力軸を回転させようとするプーリ入力軸の回転数との偏差を適切に設定することで、前記アンチスキッド制御装置によって制動力が減少された制御対象車輪は増速し易くなる。従って、前述のようにこのエンジンの出力軸を回転させようとするプーリ入力軸の回転数が、ABS変速パターンへの移行開始時に設定されてしまうことから、例えばアイドルバルブの開度を強制的に若干大きくすることで、この問題を解決し、これによって最適なアンチスキッド制御装置による制動効果、つまり舵取り効果や制動距離の確保といった効果を得ることができる。
【0048】
それでは、前記図7の演算処理を実行せず,図5の演算処理のステップ626,640(,628)で通常のレンジ変速パターンのみに従って無段変速機の変速比を設定した場合,即ち従来の減速比制御の作用を図10,図11に基づいて説明する。前述のようにABS作動開始点では,既にスロットル開度THは大幅に低減しているから、このABS作動開始時点と同時又はほぼ同時に,車速VN 一定の下に目標変速比CD がレンジ最小変速比DjLO に変化し、その後の車速Vの減少に伴って,現在車速Vがレンジ最小変速比車速Vj1より小さくなる時刻までの時間、目標変速比CD はレンジ最小変速比DjLO に維持されてしまう。その後、現在車速Vがレンジ最小変速比車速Vj1から変速比制御開始車速閾値V0 まで減少する時間は,目標変速比CD は当該車速Vに応じて適宜に設定され、現在車速Vが変速比制御開始車速閾値V0 より小さくなると目標変速比CD は最大変速比CHiに維持される。
【0049】
ここで、特に前記車速VがABS作動開始時の車速VN からレンジ最小変速比車速Vj1まで減少する時間、無段変速機の変速比が最小変速比CjLO に維持される状態について図11を引用しながら考察する。同図においてアンチスキッド制御装置による制動力の増減制御及び実際の車輪速VWjの増減は図9に示すものと同等かほぼ同等であると仮定する。さて、前記考察時間中の無段変速機の変速比は,車輪速VWjとほぼ同様に増減している車速Vに関わらず最小変速比に維持されるため、増減する車輪速が無段変速機を介して回転しようとするプーリ入力軸の回転数も,当該車輪速の増減に相当するものとなる。一方、実際のスロットル開度は大きく低減しており、このように増減するプーリ入力軸の回転が,エンジンの出力軸を回転させようとする力も増減すると考えてよい。このうち、スロットル全閉状態のエンジンの回転数とエンジンの出力軸を回転させようとするプーリ入力軸の回転数との偏差が大きくなる状況では、氷雪路面等の低μ路面でタイヤのグリップ力が小さい状態にあって,このエンジンの出力軸を回転させようとするトルクを得にくく、その結果,前記のようにアイドルバルブの開度を若干大きく設定したとしても、エンジンの回転駆動力は当該制御対象車輪に有効に伝達されないから,前記アンチスキッド制御装置によって制御対象車輪への制動力を減少しても当該車輪は増速しにくいままとなる。従って、実際の車輪速VWjは目標車輪速VWj * の範囲から次第に減速し続け、アンチスキッド制御効果が発現しにくくなる。
【0050】
以上より、前記図7の演算処理のステップS1、S2がアンチスキッド作動検出手段に相当し、以下同様に、ステップS4、S5を除くステップS3〜ステップS17が変速パターン変更手段に相当し、前記図5の演算処理が変速パターン制御手段に相当する。
【0051】
次に本発明の無段変速機の制御装置を実際の車両に適用した第2実施例を図12〜図14に基づいて説明する。この第2実施例の基本的な車両構造は,後述する無段変速油圧制御回路やコントローラであるマイクロコンピュータ等を含めて,本出願人が先に提案した特開昭61−105353号公報に記載される無段変速機の制御装置と同等かほぼ同等であり、このうち同等の部分は夫々各構造の説明部位で同等であることを説明したのち,当該公報を参照するものとして詳細な説明を割愛することもある。
【0052】
まず、本実施例の無段変速機の動力伝達機構は、前記第1実施例に相当する図2の無段変速機の動力伝達機構と同等又はほぼ同等であり、同時にこれが前記特開昭61−105353号公報に記載されるものと同等かほぼ同等であるために、ここでは詳細な説明を割愛する。
また、本実施例の無段変速機の油圧制御装置は、前記第1実施例に相当する図3の無段変速機の油圧制御装置と同等又はほぼ同等であり、同時にこれが前記特開昭61−105353号公報に記載されるものと同等かほぼ同等であるために、ここでは詳細な説明を割愛する。
【0053】
また、本実施例の変速制御装置に相当するコントローラの一部を構成するマイクロコンピュータは、前記第1実施例に相当する図4の電子制御装置(マイクロコンピュータ)300と同等又はほぼ同等であり、同時にこれが前記特開昭61−105353号公報に記載されるものと同等かほぼ同等であるために、ここでは詳細な説明を割愛する。なお、ABSコントローラ391との接続及び信号の授受に関しては,前記第1実施例と同等である。
【0054】
また、前記マイクロコンピュータ300により実行される通常の無段変速機の変速比制御は、前記図5のフローチャートに示す基準演算処理に従って前記第1実施例と同等又はほぼ同等に実施され、同時にこれが前記特開昭61−105353号公報に記載されるものと同等かほぼ同等であるために、ここでは詳細な説明を割愛する。なお、前記2レンジ変速パターン検索に関しては,前記第1実施例と同等である。従って、Rレンジを除く前記各レンジの変速パターンによる変速比制御は凡そ図6に示す前記第1実施例と同等かほぼ同等であるから、その詳細な説明も割愛する。また、この図5の演算処理中のステップ644のRレンジ相当変速パターン検索を除くステップ626,628,640で検索される変速パターンは、前記第1実施例と同様に,後述するマイナプログラムによって,アンチスキッド制御装置の作動時にはアンチスキッド制御用に補正される。
【0055】
それでは次に、前記アンチスキッド制御装置の作動中に各レンジの変速パターンを変更するために、前記図5の演算処理中,ステップ626,628,640(実際には前述のようにステップ628のLレンジ変速パターンは変更されない)で実行されるマイナプログラムの演算処理を図12に従って説明する。なお、演算処理中の制御フラグFは“1”のセット状態でアンチスキッド制御用の変速パターン(単にABS変速パターンとも記す)に変更中であることを示し、“0”のリセット状態で通常の変速パターン,即ち前記図6の変速パターンであることを示す。また、同演算処理中のABS作動直前のスロットル開度TH(N) ,車速V(N) や目標変速比CD(N)は,前記図5の演算処理によって,前記RAM315等に形成されている図示されないシフトレジスタ等の既知の順次更新記憶装置に記憶されているものとし、図示されない個別の演算処理によって例えばスロットル開度THが急激に減少した時刻からABS作動開始時刻までの経過時間を計測し、この経過時間分だけ前のスロットル開度TH及び目標変速比CD を,前記順次更新記憶装置から読込んでくるものとする。
【0056】
この図12の演算処理は所定時間(Δt)毎のタイマ割込みによって実行され、まずステップS21で前記ABSコントローラ391からのABS作動信号ASを読込む。
次にステップS22に移行して、前記ステップS1で読込まれたABS作動信号ASからアンチスキッド制御装置(ABS)が作動中であるか否かを判定し、アンチスキッド制御装置が作動中である場合にはステップS23に移行し、そうでない場合にはステップS24に移行する。
【0057】
前記ステップS24では、通常の各レンジ変速パターン,即ち前記図6に示す変速パターンにおいて,前記図5の演算処理のステップ510で読込まれた車速V及びステップ508で読込まれたスロットル開度THに応じた目標変速比CD を検索し、次にステップS25で制御フラグFを“0”にリセットし、次いでステップS26に移行する。
【0058】
一方、前記ステップS23では制御フラグFが“1”でないか否かを判定し、制御フラグFが“1”のセット状態でない場合にはステップS27に移行し、そうでない,即ち制御フラグFが“1”のセット状態である場合にはステップS28に移行する。
前記ステップS27では、前記シフトレジスタ等の順次更新記憶装置からABS作動直前のスロットル開度TH(N) ,ABS作動直前の車速V(N) 及びABS作動直前の目標変速比CD(N)を読込み、これらを夫々直前スロットル開度THAS,直前車速VAS及び直前変速比CDAS として前記RAM315に更新記憶してステップS29に移行する。
【0059】
前記ステップS29では、前記ステップS27で読込まれ且つ更新記憶された直前スロットル開度THAS及び直前車速VASにおける直前変速比CDAS と,前記変速比制御開始スロットル開度閾値TH1 及び変速比制御開始車速閾値V0 における最大変速比CHiとを結ぶ直線から、スロットル開度TH及び車速Vを変数とするABS変速パターンCDPTN=f(V,TH)を算出し、次いでステップS30に移行する。
【0060】
前記ステップS30では、前記ステップS29で算出されたABS変速パターンCDPTNを、前記RAM315に更新記憶してステップS31に移行する。
前記ステップS31では、前記制御フラグFを“1”にセットしてから前記ステップS26に移行する。
一方、前記ステップS28では、RAM315に記憶されている最新のABS変速パターンCDPTNを読込んでからステップS32に移行する。
【0061】
前記ステップS32では、前記図5のステップ510で読込まれた車速V及びステップ508で読込まれたスロットル開度THを用いて,前記ステップS28で読込まれたABS変速パターンCDPTNに従って目標変速比CD を算出してから前記ステップS26に移行する。
前記ステップS26では、前記ステップS24,S32で算出設定された目標変速比CD に応じた目標パルス数PD を予め設定された算出式やマップ検索によって設定して,前記図5の演算処理に復帰する。
【0062】
次に、前記図12のマイナプログラムによるABS変速パターンについて図13を用いながら説明する。ここでは、前記2レンジ又はDレンジにおける変速領域を代表してjレンジで表記するものとし、このjレンジにおいては前記最小変速比CjLO として考察する。
今、アクセルペダルを踏込んで車両が通常に走行している状態では、ブレーキペダルの踏込みがなく、その結果,ブレーキ液圧が増加していない状態では、前記ABSコントローラ391からABS作動信号ASは出力されておらず、従って前記図12の演算処理が実行される所定サンプリング時間毎に,ステップS21ではABS作動信号が読込まれず、その結果,ステップS22からステップS24に移行して通常の各レンジ変速パターンに従って,当該車速V及びスロットル開度THに応じた目標変速比CD が検索設定され、ステップS25で制御フラグFは“0”にリセットされ続け、前記ステップS24で設定された目標変速比CD に応じた目標パルス数PD がステップS26で算出される。
【0063】
従って、この目標パルス数PD に応じて前記図5の演算処理では,目標パルス数PD と現在パルス数PA との偏差が零になるようにステップモータ駆動信号をアップシフト又はダウンシフト方向に移動し、その結果,目標変速比CD が達成されている。
この状態からアクセルペダルの踏込みを解除し、次いでブレーキペダルを踏込んだ結果,ブレーキ液圧が増加すると、前記ABSコントローラ391からABS作動信号ASが出力され、前記所定サンプリング時間毎に実行される図12の演算処理のステップS21で,このABS作動信号ASが読込まれると、同ステップS22でABS作動中であると判定されるから次いで同ステップS23に移行する。このステップS23では、未だ制御フラグFが“0”のままであるから,同ステップS27に移行し、このステップS27で,前記シフトレジスタ等の順次更新記憶装置から前記ABS作動直前のスロットル開度TH(N) ,車速V(N) 及び目標変速比CD(N)が読込まれ、同時にこれらのスロットル開度TH(N) ,車速V(N) 及び目標変速比CD(N)が直前スロットル開度THAS,直前車速VAS及び直前変速比CDAS としてRAM315に更新記憶される。次に、前記ステップS29では、前記直前スロットル開度THAS及び直前車速VASにおける直前変速比CDAS と,変速比制御開始スロットル開度閾値TH1 及び変速比制御開始車速閾値V0 における最大変速比CDHi とを結ぶ直線を,図8に示すようなABS変速パターンCDPTNに設定すると共に、このABS変速パターンCDPTNに従う変速比制御曲線をスロットル開度TH及び車速Vに関する演算式に置換する。次いで、前記ステップS31では制御フラグFを,ABS変速パターンに変更中であることを示す“1”にセットし、次いで前記ステップS27で読込まれ且つ直前目標変速比CDAS として更新記憶された目標変速比CD に応じた目標パルス数PD を前記ステップS26で算出する。
【0064】
この直前目標変速比CDAS に応じた目標パルス数PD に対し、前記図5の演算処理では,当該目標パルス数PD と現在パルス数PA との偏差が零になるようにステップモータ駆動信号を,主としてダウンシフト方向に移動し、その結果,直前目標変速比CDAS が達成されている。これを子細に考察すれば、前述のようにABS作動信号ASがABSコントローラ391から出力されるまでの間に,前記図12の演算処理が実行されるサンプリング時間毎に、前記ステップS22では,未だアンチスキッド制御装置は作動していないと判定されて前記ステップS24,S25を経て通常の各レンジ変速パターンから目標変速比CD が設定される。ところが、同じくこの時間では,スロットル開度THは急激に低減しているはずであり、従って当該目標変速比CD は,その時点での車速Vが同等かほぼ同等の状態(つまりコースト走行状態,惰性走行状態であると考えられる)で一旦、レンジ最小変速比CjLO まで変化する。そして、このコースト走行,惰性走行により同じく車速Vが同等かほぼ同等の状態で、ブレーキペダルの踏込みによりブレーキ液圧が増加すると,ABS作動信号ASがABSコントローラ391から出力されて、その結果,前述のように図12の演算処理でステップS22からステップS23〜S26で直前目標変速比CDAS が達成されるために、実際の変速比は図13の仮想線に示すように変化しているはずである。この間,車速Vそのものは同等かほぼ同等であると仮定すれば、ブレーキペダルが踏込まれた直後にエンジンの回転数が上昇するために,運転者には当該エンジン回転数の増加に伴う若干の違和感は極めて短時間に発生するものの、同時に無段変速機の変速比が大きくなる(つまり車両の減速比が大きくなる)から,実際の車両にはエンジンブレーキによる大きな負の加速度(減速度)が発生し、その結果,次の瞬間にこの違和感は解消されるであろう。
【0065】
その後、継続してブレーキペダルを踏込み続けたために、前記ABSコントローラ391からはABS作動信号ASが出力され続け、図12の演算処理が実行されるサンプリング時間毎にステップS22からステップS23に移行する。ところが未だ制御フラグFは“1”にセットされたままであるから、当該ステップS23からステップS28に移行する。ここで、この図12の演算処理が実行されているタイミングは前記ABS作動開始時からさほど時間が経過していないと仮定すれば、図13のABS作動開始点の車速に比して当該演算処理が実行されている時点の車速Vはやや減少している程度である。従って、この図12の演算処理のステップS28でRAM315に更新記憶されているABS変速パターンCDAS が読込まれ、次いでステップS32では、前記図5の演算処理のステップ510で読込まれた現在車速V及びスロットル開度THに応じた目標変速比CD が算出され、次いでステップS26でこの目標変速比CD に応じた目標パルス数PD が算出され、以下、車速Vが次第に低下し、当該車速Vが前記変速比制御開始車速閾値V0 寄りも小さくなるまで、このフローが繰り返される。
【0066】
この間、ABSコントローラ391により作動液圧の増減圧制御が繰り返される制御対象車輪では,後段に詳述するようにミクロ的には車輪速の増減を繰り返しながら、マクロ的には,つまり全体的には車速の減少に伴って車輪速が減少してゆく。この車輪速の増減は、当該車輪のグリップ力の範囲内で車体の速度,即ち車速Vにも反映し、その結果,車速Vも当該車輪速の増減に対して遅れは生じながらも増減する。従って、前記図12の演算処理が実行されるサンプリング時間毎に算出される無段変速機の目標変速比CD も,ミクロ的には車速Vの増減に伴って増減し(車両の減速比で考えれば減増する)、マクロ的には,即ち全体的には車速Vの減少に伴って大きくなる。
【0067】
このミクロ的に増減を繰り返す目標変速比CD に応じた目標パルス数PD に対し、前傷5の演算処理では、当該目標パルス数PD と現在パルス数PA との偏差が零になるようにステップモータ駆動信号を、アップシフト方向とダウンシフト方向とに往復移動し、その結果、ミクロ的に増減する目標変速比CD が達成されながら、マクロ的な目標変速比CD は次第に大きくなるように変速比制御されている。これを子細に考察すれば、前記ABS変速パターンCDPTNでは、車速Vの変動に応じて変速比をミクロ的に増減しながら、更にマクロ的には変速比が大きくなっており、従って無段変速機の入力軸の回転は、一定か若しくは車速Vのマクロ的な減少に伴ってやや減少すると考えられる。従って、エンジンの回転駆動力は増減する車速V、つまり増減しようとする車輪速の回転駆動力として作用する。このことは、後段に詳述するように、ABSコントローラ391がブレーキ液圧を減少して当該制御対象車輪への制動力を減少した際に、低μ路面等でも当該制御対象車輪を回転駆動しようとするから、所望する車輪速への復帰が速やかに実施され、アンチスキッド制御によって有効に車輪速を所望の状態に制御することを可能とする。
【0068】
その後も、ブレーキペダルを踏込み続け,やがてマクロ的な車速Vが前記変速比制御開始車速閾値V0 よりも小さくなると、前記図12の演算処理が実行される前に,前記図5の演算処理のステップ602からステップ604,610又は630を経てステップ636,638で、無段変速機の変速比制御では最大変速比CHiが達成される。
【0069】
これを子細に考察すると、前記現在車速Vが前記変速比制御開始車速閾値V0 より小さくなる時刻までの時間,つまり無段変速機の変速比が,前記ABS変速パターンに従って制御されている時間は、前記ABSコントローラ391及びエンジンブレーキによって十分な制動効果を発揮し、その結果,車体の速度,即ち車速Vは、車輪のグリップ力の範囲内で発揮される減速度によって十分に減速されている。従って、前記現在車速Vが前記変速比制御開始車速閾値V0 より小さくなる時刻以後に,無段変速機の変速比を最大変速比CHiに維持しても、車輪がロックしたり車輪速が増速しなかったりといった,所謂スキッド状態になることはないと考えられ、その後,当該最大変速比CHiに維持された無段変速機を介してエンジンブレーキが有効に車両の減速度の一助として作用し、前記ABSコントローラ391による制動効果を十分に発揮することができる。
【0070】
一方、ブレーキペダルの踏込みを解除してブレーキ液圧が所定値(凡そ大気圧程度)まで減少し、その結果,ABSコントローラ391からのABS作動信号ASが出力されなくなった通常走行状態への移行時を想定すると、この段階で最初に前記図12の演算処理が実行されると,ステップS22からステップS24に移行し、ここで通常走行における各レンジ変速パターンから目標変速比CD が検索され、次いでステップS25では制御フラグFがABS変速パターンに変更していないことを示す“0”にリセットされ、この通常走行の目標変速比CD に応じた目標パルス数PD がステップS26で算出され、以後,再びABS作動信号ASが出力されるまで,同図の演算処理が実行されるサンプリング時間毎にこのフローが繰り返される。
【0071】
このうち、前記車速Vが最大変速比車速VHiより大きい領域でミクロ的には増減しているものの,マクロ的には次第に減少している状態、つまり前記ABS変速パターンに従って変速比が制御されている状態におけるプーリ入力軸の回転数と変速比との相関を図14に示す。このタイムチャートでは、時刻t0 にABS作動信号ASが出力されたものとし、実際にABSコントローラで検出されている車輪速VWjが,疑似車速VC に対するスリップ率が10〜30%となる目標車輪速VWj * の範囲内に納まるように制御する場合を示している。なお、前記スリップ率を10〜30%の範囲内に納める理由は前述のとおりであるが、ここでは実際の車速の代わりに,前記ABSコントローラで推定された疑似車速VC を用いる。このような疑似車速をアンチスキッド制御で用いる理由は公知であるためにここでは詳述しないが、簡潔に述べれば一般の車速センサ等で検出される車速には極僅かであっても誤差が発生するが、この誤差の範囲内に車輪速=零の領域が包含されてしまうと、実際の車両で当該制御対象車輪がロックしていることを正確に検出できなくなる虞れがあるためなどであり、実際には検出される各車輪速のうち,最も大きい車輪速を疑似車速として採用するなどの例がある。
【0072】
前述のようにアンチスキッド制御装置では,車輪速VWjが目標車輪速VWj * の範囲内に納まるように制動力の増減制御を行うため、実際の車輪速VWjも図14に示すように増減している。このうち,車輪速VWjが減速している領域では制動力が増加され、車輪速VWjが増速している領域では制動力が減少されていると考えればよく、前記図5及び図12の演算処理で用いられる実際の車速Vは,少なくともタイヤと路面との間に僅かでもグリップ力の発生している限り、当該車輪速VWjに対して機械的な遅れはあるものの当該車輪速VWjとほぼ同様に増減していると考えてよい。さて、前述のように前記ABS変速パターンに従う無段変速機の変速比は,このように車輪速VWjとほぼ同様に増減している車速Vに応じて変化すると共に,全体的には次第に大きくなっている。従って、この間,無段変速機のプーリ入力軸の回転数,即ち増減する車輪速が無段変速機を介してプーリ入力軸を回転させた結果,発生するプーリ入力軸の回転数は一定又はやや減少する傾向にある。一方、実際のスロットル開度は大きく低減しており、この回転数一定のプーリ入力軸の回転が,エンジンの出力軸を回転させようとし、当該車速の全体的な減少に合わせて所謂エンジンブレーキの安定した制動効果を得ることができる。その一方で、このスロットル全閉状態のエンジンの回転数とエンジンの出力軸を回転させようとするプーリ入力軸の回転数との偏差が大きすぎると、氷雪路面等の低μ路面でタイヤのグリップ力が小さい状態では,このエンジンの出力軸を回転させようとするトルクを得にくく、その結果,前記アンチスキッド制御装置によって制御対象車輪への制動力を減少しても当該車輪は増速しにくくなってしまう。従って、前記スロットル全閉状態のエンジンの回転数とエンジンの出力軸を回転させようとするプーリ入力軸の回転数との偏差を適切に設定することで、前記アンチスキッド制御装置によって制動力が減少された制御対象車輪は増速し易くなる。従って、前述のようにこのエンジンの出力軸を回転させようとするプーリ入力軸の回転数が,ABS変速パターンへの移行開始時に設定されてしまうことから、例えばアイドルバルブの開度を強制的に若干大きくすることで,この問題を解決し、これによって最適なアンチスキッド制御装置による制動効果,つまり舵取り効果や制動距離の確保といった効果を得ることができる。
【0073】
それでは、前記図12の演算処理を実行せず,図5の演算処理のステップ626,640(,628)で通常のレンジ変速パターンのみに従って無段変速機の変速比を設定した場合,即ち従来の減速比制御の作用を図10,図11に基づいて説明する。前述のようにABS作動開始点では,既にスロットル開度THは大幅に低減しているから、このABS作動開始時点と同時又はほぼ同時に,車速VN 一定の下に目標変速比CD がレンジ最小変速比DjLO に変化し、その後の車速Vの減少に伴って,現在車速Vがレンジ最小変速比車速Vj1より小さくなる時刻までの時間、目標変速比CD はレンジ最小変速比DjLO に維持されてしまう。その後、現在車速Vがレンジ最小変速比車速Vj1から変速比制御開始車速閾値V0 まで減少する時間は,目標変速比CD は当該車速Vに応じて適宜に設定され、現在車速Vが変速比制御開始車速閾値V0 より小さくなると目標変速比CD は最大変速比CHiに維持される。
【0074】
ここで、特に前記車速VがABS作動開始時の車速VN からレンジ最小変速比車速Vj1まで減少する時間、無段変速機の変速比が最小変速比CjLO に維持される状態について図11を引用しながら考察する。同図においてアンチスキッド制御装置による制動力の増減制御及び実際の車輪速VWjの増減は図14に示すものと同等かほぼ同等であると仮定する。さて、前記考察時間中の無段変速機の変速比は,車輪速VWjとほぼ同様に増減している車速Vに関わらず最小変速比に維持されるため、増減する車輪速が無段変速機を介して回転しようとするプーリ入力軸の回転数も,当該車輪速の増減に相当するものとなる。一方、実際のスロットル開度は大きく低減しており、このように増減するプーリ入力軸の回転が,エンジンの出力軸を回転させようとする力も増減すると考えてよい。このうち、スロットル全閉状態のエンジンの回転数とエンジンの出力軸を回転させようとするプーリ入力軸の回転数との偏差が大きくなる状況では、氷雪路面等の低μ路面でタイヤのグリップ力が小さい状態にあって,このエンジンの出力軸を回転させようとするトルクを得にくく、その結果,前記のようにアイドルバルブの開度を若干大きく設定したとしても、エンジンの回転駆動力は当該制御対象車輪に有効に伝達されないから,前記アンチスキッド制御装置によって制御対象車輪への制動力を減少しても当該車輪は増速しにくいままとなる。従って、実際の車輪速VWjは目標車輪速VWj * の範囲から次第に減速し続け、アンチスキッド制御効果が発現しにくくなる。
【0075】
以上より、前記図12の演算処理のステップS21、S22がアンチスキッド作動検出手段に相当し、以下同様に、ステップS24、S25を除くステップS23〜ステップS32が変速パターン変更手段に相当し、前記図5の演算処理が変速パターン制御手段に相当する。
【0077】
なお、更に厳密なABS変速パターン変更制御を行う場合には、アンチスキッド制御装置に用いられるのと同様の疑似車速を、前記ABS変速パターンの変数として用いるのが好ましいが、この疑似車速をそのまま、通常の無段変速機の変速比制御に用いることは燃費向上の面からは好ましくないから、十分に考慮する必要がある。
【0078】
また、前記各実施例は,本出願人が先に提案した特開昭61−105353号公報に記載される無段変速機の制御装置を基体としたものであるが、本発明はこれ以外のベルト式無段変速機に広く展開可能であることは言うまでもない。
また、前記各実施例では、変速比制御コントローラをマイクロコンピュータで構築したものについてのみ詳述したが、これに限定されるものではなく、演算回路等の電子回路を組み合わせて構成してもよいことは言うまでもない。
【0079】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の無段変速機の制御装置によれば、アンチスキッド制御装置の作動中の変速パターンを、車速変動のみに対して変速比が変化する変速パターンに変更設定して、アンチスキッド制御装置によって変動する車輪速と共に車速に変動が生じると、その車速に応じた変速比が、当該アンチスキッド制御用に変更設定された変速パターンから設定されるため、減速し過ぎた車輪の制動力を減少した際には、機関の回転駆動力が当該車輪の車輪速を増速するから、氷雪路面等の低μ路面にあっても目標スリップ率の範囲内に各車輪の車輪速を制御し易くなり、その結果、各車輪のロックは防止しながらも、車両としての舵取り効果と制動距離とを確保できる。また、前記アンチスキッド制御装置の作動中の変速パターンを、アンチスキッド制御装置の作動開始時の変速比に応じて設定することにより、変速比制御に現れる不連続性を回避することができる。また、前記アンチスキッド制御装置の作動中の変速パターンを、当該無段変速機の最大変速比とアンチスキッド制御装置の作動開始時の変速比とを結ぶ変速制御線に従って変更設定して、車速の減速につれて変速比が大きくなるようにすれば、エンジンブレーキの効果を得て良好な制動距離の確保又は短縮することが可能となる。また、前記アンチスキッド制御装置の作動中の変速パターンを、アンチスキッド制御装置の作動開始時の機関回転数を一定に保持した状態での最大変速比と、アンチスキッド制御装置の作動開始時の変速比とを結ぶ変速制御線に従って設定するとか、或いは通常の変速パターンで変速比の制御が開始される車速及びスロットル開度における最大変速比と、アンチスキッド制御装置の作動開始時の変速比とを結ぶ変速制御線に従って設定することにより、アンチスキッド制御の作動開始直後からの車速の減速に伴って、変速比は速やかに大きくなり、前記エンジンブレーキは更に良好に車両に作用してより一層良好な制動距離を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の無段変速機の制御装置の基本構成図である。
【図2】無段変速機の動力伝達機構の一例を示す構成図である。
【図3】無段変速機の油圧制御装置の一例を示す構成図である。
【図4】無段変速機の変速比制御装置に相当するコントローラの一例を示す構成図である。
【図5】図4のコントロ−ラで実行される通常の無段変速機の変速比制御の演算処理の一例を示すフローチャートである。
【図6】図5の演算処理による変速パターンの説明図である。
【図7】本発明の無段変速機の制御装置の第1実施例を示すアンチスキッド制御用変速パターンへの変更制御を行う演算処理のフローチャートである。
【図8】図7に示す演算処理によるアンチスキッド制御用変速パターンの説明図である。
【図9】図7に示す演算処理によるアンチスキッド制御用変速パターンに従った変速比制御の作用説明図である。
【図10】通常の変速パターンのアンチスキッド制御作動中の説明図である。
【図11】通常の変速パターンに従った変速比制御のアンチスキッド制御作動中の作用説明図である。
【図12】本発明の無段変速機の制御装置の第2実施例を示すアンチスキッド制御用変速パターンへの変更制御を行う演算処理のフローチャートである。
【図13】図12に示す演算処理によるアンチスキッド制御用変速パターンの説明図である。
【図14】図12に示す演算処理によるアンチスキッド制御用変速パターンに従った変速比制御の作用説明図である。
【符号の説明】
10はエンジン(機関)
29は無段変速機構(無段変速機)
110はステップモータ
118は電磁弁
224はソレノイド
300はマイクロコンピュータ
302は車速センサ(車速検出手段)
303はスロットル開度センサ
304はシフトポジションスイッチ
391はABSコントローラ(アンチスキッド制御装置)
Claims (4)
- 車輪速から疑似車速を推定し、その疑似車速に対するスリップ率が所定の範囲となる目標車輪速の範囲内に収まるように車輪速を制御するアンチスキッド制御装置を制動系に備えた車両にあって、無段変速機の変速パターンを制御する変速パターン制御手段を備えた無段変速機の制御装置において、前記制動系のアンチスキッド制御装置からの信号に基づいて当該アンチスキッド制御装置が作動中であることを検出するアンチスキッド作動検出手段と、駆動輪速を車速として検出する車速検出手段と、前記アンチスキッド作動検出手段の検出信号に基づいて、アンチスキッド制御装置の作動中の前記変速パターン制御手段による無段変速機の変速パターンを、前記車速検出手段で検出された車速変動のみに対して変速比が変化する変速パターンに変更設定する変速パターン変更手段とを備え、前記変速パターン変更手段は、前記アンチスキッド制御装置の作動中の前記変速パターン制御手段による無段変速機の変速パターンを、アンチスキッド制御装置の作動開始時の変速比に応じて変更設定することを特徴とする無段変速機の制御装置。
- 前記変速パターン変更手段は、前記アンチスキッド制御装置の作動中の前記変速パターン制御手段による無段変速機の変速パターンを、当該無段変速機の最大変速比とアンチスキッド制御装置の作動開始時の変速比とを結ぶ変速制御線に従って変更設定することを特徴とする請求項1に記載の無段変速機の制御装置。
- 前記変速パターン変更手段は、前記アンチスキッド制御装置の作動中の前記変速パターン制御手段による無段変速機の変速パターンを、アンチスキッド制御装置の作動開始時の機関回転数を一定に保持した状態での当該無段変速機の最大変速比と、アンチスキッド制御装置の作動開始時の変速比とを結ぶ変速制御線に従って変更設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の無段変速機の制御装置。
- 車輪速から疑似車速を推定し、その疑似車速に対するスリップ率が所定の範囲となる目標車輪速の範囲内に収まるように車輪速を制御するアンチスキッド制御装置を制動系に備えた車両にあって、無段変速機の変速パターンを制御する変速パターン制御手段を備えた無段変速機の制御装置において、前記制動系のアンチスキッド制御装置からの信号に基づいて当該アンチスキッド制御装置が作動中であることを検出するアンチスキッド作動検出手段と、駆動輪速を車速として検出する車速検出手段と、前記アンチスキッド作動検出手段の検出信号に基づいて、アンチスキッド制御装置の作動中の前記変速パターン制御手段による無段変速機の変速パターンを、前記車速検出手段で検出された車速変動及びスロットル開度のみに対して変速比が変化する変速パターンに変更設定する変速パターン変更手段とを備え、前記変速パターン変更手段は、前記アンチスキッド制御装置の作動中の前記変速パターン制御手段による無段変速機の変速パターンを、前記変速パターン制御手段による通常の変速パターンで変速比の制御が開始される最大変速比と、アンチスキッド制御装置の作動開始時の変速比とを結ぶ変速制御線に従って変更設定することを特徴とする無段変速機の制御装置。
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-
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