JP3620369B2 - 流体封入式能動的マウント - Google Patents
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Description
【技術分野】
本発明は、自動車用エンジンマウント等に用いられて、防振すべき振動に対して能動的な防振効果を発揮する、新規な構造の流体封入式の能動的マウントに関するものである。
【0002】
【背景技術】
振動伝達系を構成する部材間に介装される防振連結体や防振支持体等としての防振装置の一種として、互いに防振連結される部材に取り付けられる第一の取付部材と第二の取付部材を離間配置せしめて、本体ゴム弾性体で連結する一方、それら第一の取付部材と第二の取付部材の間に加振力を及ぼす加振力発生手段を設けて防振特性を調節するようにした能動的マウントが知られている。例えば、特開昭61−2939号公報等に記載の防振装置が、それである。このような能動的マウントは、例えば、防振連結される部材に対して、防振すべき振動に対応した加振力を及ぼすことにより、振動を相殺的に抑制したり、或いは、マウントのばね特性を入力振動に応じて積極的に変更して低動ばね化等させることにより、防振性能の向上を図ることが出来るのであり、例えば、自動車用エンジンマウントやボデーマウントなどへの適用が考えられている。
【0003】
ところで、このような能動的マウントでは、加振力を発生する加振器が必要であり、かかる加振器においては、発生加振力の優れた周波数制御性が要求される。そこで、能動的マウント用の加振器としては、例えば、前記公報等にも記載されているように、永久磁石とコイルを離間して対向配設すると共に、該コイルに通電することによりローレンツ力や電磁力を利用して加振力を得るようにしたボイスコイル型の加振器を採用することが提案されている。
【0004】
しかしながら、ボイスコイル型の加振器では、得られる加振力が小さく、十分な加振力を得ようとすると、消費電力や発熱の他、加振器の大型化等が問題となり易いという問題があった。しかも、ボイスコイル型の加振器においては、コイル側と永久磁石側が軸方向の相対変位に際して摺接し易く、摺接部位における異音の発生やエネルギの損失、部品の劣化等が問題となり易いという問題もあった。
【0005】
また一方、特開平10−227329号公報等には、能動的マウント用の加振器として、電磁石型の電磁式加振器を採用したものが提案されている。かかる加振器は、一般に、磁性材からなるヨーク部材に対して軸方向一方の側に開口する環状凹溝を設けて該環状凹溝にコイルを収容配置することにより、該コイルへの通電によって該コイルの周囲に磁路が形成されるようにすると共に、該ヨーク部材における環状凹溝の開口部の内周側壁部と外周側壁部にそれぞれ該磁路の両磁極を設定する一方、磁性材からなる加振部材を、前記ヨーク部材における環状凹溝の開口部側に離間して軸方向で対向位置せしめて、前記コイルへの通電により該加振部材に磁力を及ぼして、それら加振部材とヨーク部材の間に軸方向の加振力を及ぼすようにした構造とされている。
【0006】
このような電磁式の加振器においては、コイルへの通電を制御することによって、発生加振力の周波数や位相等を高精度に制御することが出来ることに加えて、前述の如きボイスコイル型の加振器よりも大きな加振力を容易に得ることが可能となる。
【0007】
ところが、従来の電磁式の加振器においては、加振部材の変位方向(軸方向)で、ヨーク部材の磁極面と加振部材が直接に対向位置せしめられており、その対向面間距離が、発生加振力の大きさに与える影響が非常に大きいという特徴があった。そのために、加振部材とヨーク部材の相対的な初期位置が僅かに違うと目的とする大きさの加振力、ひいては能動的防振効果を有効に得ることが出来なくなり、安定した防振性能を得ることが難しいという問題があった。
【0008】
特に、自動車用のエンジンマウント等のように、装着状態下でパワーユニット重量等の支持荷重が及ぼされる場合には、支持荷重の大きさによっても、ヨーク部材の磁極面と加振部材の対向面間距離が変化する場合があることから、たとえ加振器自体の製品寸法精度等を向上させても、それを組み込んだマウントを装着した状態下で、ヨーク部材の磁極面と加振部材の対向面間距離を高精度に設定することが極めて難しいために、目的とする防振性能を安定して得ることが一層困難となるという問題があった。
【0009】
【解決課題】
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、例えば、初期荷重等が及ぼされる装着状態下でも、目的とする能動的防振効果が有効に且つ安定して発揮され得る、新規な構造の流体封入式能動的マウントを提供することにある。
【0010】
【解決手段】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様は、任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載され、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
【0011】
本発明の第一の態様は、防振連結される部材にそれぞれ取り付けられる第一の取付部材と第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結すると共に、該本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成されて非圧縮性流体が封入された流体室を形成する一方、該流体室の壁部の別の一部を変位可能な可動壁で構成すると共に、該可動壁を加振駆動するアクチュエータを設けた流体封入式能動的マウントにおいて、
磁性材からなるヨーク部材に対して軸方向一方の側に開口する環状凹溝を設けて該環状凹溝にコイルを収容配置することにより、該コイルへの通電によって該コイルの周囲に磁路が形成されるようにすると共に、該ヨーク部材における環状凹溝の開口部の内周側壁部と外周側壁部にそれぞれ該磁路の両磁極を設定する一方、磁性材からなる加振部材を、前記ヨーク部材における環状凹溝の開口部側に離間して軸方向で対向位置せしめて、前記コイルへの通電により該加振部材に磁力を及ぼして、それら加振部材とヨーク部材の間に軸方向の加振力を及ぼすようにした電磁式加振器を用い、前記ヨーク部材を前記第二の取付け部材によって固定支持せしめると共に、前記加振部材を前記可動壁に固定的に設けることにより、該可動壁に加振力を及ぼす前記アクチュエータを構成し、更に、かかるアクチュエータにおける前記ヨーク部材の磁極が設定された前記環状凹溝の開口部の内周側壁部および外周側壁部の少なくとも一方と、それに最も接近して位置せしめられる前記加振部材の内周部分及び/又は外周部分とを、軸方向で直接に対向位置せしめると共に、かかるヨーク部材における内周側壁部および外周側壁部の少なくとも他方の角部と、それに最も接近して位置せしめられる前記加振部材の内周部分及び/又は外周部分の角部とを、軸直角方向にずらせて軸方向で傾斜して対向位置せしめたことを特徴とする。
【0012】
このような本態様に従う構造とされた流体封入式能動的マウントにおいては、上述の如き構造の電磁式加振器を前記可動壁に加振力を及ぼすアクチュエータとして採用していることから、コイルへの通電によってヨーク部材の磁極部間に磁界が形成され、この磁界中に配された加振部材に対して磁気吸引力等が作用せしめられて、以て可動壁に加振力が及ぼされることとなる。それ故、コイルへの供給電流を制御することにより、加振部材を目的とする周波数で加振することが出来るのである。
【0013】
そこにおいて、ヨーク部材の少なくとも一方の磁極部は、加振部材に対して、加振部材の変位方向(軸方向)で直接に対向位置せしめられるが、ヨーク部材の少なくとも他方の磁極部は、加振部材に対して、加振部材の変位方向(軸方向)に対して傾斜した方向で対向位置せしめられることとなる。そして、前者の、軸方向で直接対向位置せしめられたヨーク部材の少なくとも一方の磁極部と加振部材の間で、大きな磁気吸引力等が確保され得る。また一方、後者の、軸方向に傾斜して対向位置せしめられたヨーク部材の少なくとも他方の磁極部と加振部材の間では、作用する磁気吸引力等の方向も軸方向に傾斜することとなり、ヨーク部材に対する加振部材の軸方向での相対位置の変化量に対して、作用する磁気吸引力等の大きさの変化量が小さく抑えられる。
【0014】
それ故、このような本態様に従う構造とされた流体封入式能動型マウントにおいては、加振部材とヨーク部材の相対位置のばらつきに起因する発生加振力のばらつきが抑えられて安定した加振力が生ぜしめられる特定構造の電磁式加振器をアクチュエータとして採用したことにより、例えば、装着状態下で及ぼされる静的な初期荷重等によって加振部材とヨーク部材の相対位置が変化するような場合でも、可動壁に安定した加振力を作用せしめることが出来るのであり、以て、目的とする能動的防振効果を有効に且つ安定して得ることが可能となるのである。
【0015】
また、本発明の第二の態様は、前記第一の態様に従う構造とされた流体封入式能動的マウントにおいて、前記第二の取付部材で支持された仕切壁にて前記流体室を仕切ることにより、壁部の一部が前記本体ゴム弾性体で構成された主液室と、壁部の一部が前記可動壁で構成された副液室を形成すると共に、それら主液室と副液室を相互に連通するオリフィス通路を形成したことを、特徴とする。このような本態様においては、オリフィス通路を流通せしめられる流体の共振作用等の流動作用を利用することにより、可動壁の加振に基づいて主液室に生ぜしめられる圧力変化を、一層効率的に得ることが可能となり、それによって、より優れた防振効果を得ることが出来るのである。
【0016】
また、本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に従う構造とされた流体封入式能動的マウントにおいて、前記アクチュエータの前記加振部材が前記ヨーク部材側に変位せしめられることにより、それら加振部材とヨーク部材において互いに軸直角方向にずらされて軸方向に傾斜して対向位置せしめられた部分の軸方向先端面が、相互に当接することなく、少なくとも軸直角方向で重なる位置まで達し得るようにしたことを、特徴とする。このような本態様に従って加振部材とヨーク部材の相対位置を設定することにより、大きな加振力をより効率的に得ることが出来ると共に、加振部材とヨーク部材の相対距離のばらつきに起因する発生加振力のばらつきを抑えてより安定した加振力を得ることが可能となる。
【0017】
また、本発明の第四の態様は、前記第一乃至第三の何れかの態様に従う構造とされた流体封入式能動的マウントにおいて、前記アクチュエータの前記加振部材と前記ヨーク部材において互いに軸直角方向にずらせて軸方向で傾斜して対向位置せしめた部分の相互に近接する内外周面を、それぞれ、軸方向に延びる筒状面とすると共に、軸方向の投影においてそれら内外周面間に隙間が形成されるように、それら内周面および外周面の各径方向寸法を設定したことを、特徴とする。このような本態様に従えば、加振部材とヨーク部材において軸直角方向にずらせて軸方向で傾斜して対向位置せしめた部分間での磁気吸引力を、それぞれ筒形状をもって形成された加振部材とヨーク部材の内外周面により、一層効率的に且つ安定して得ることが可能となる。
【0018】
また、本発明の第五の態様は、前記第一乃至第四の何れかの態様に従う構造とされた流体封入式能動的マウントにおいて、前記アクチュエータの、前記加振部材と前記ヨーク部材において、互いに対向位置せしめた部分の軸直角方向での対向間距離の大きさを、互いに軸方向で直接に対向位置せしめた部分の対向面間距離の大きさ以下としたことを、特徴とする。このような本態様においては、加振部材とヨーク部材の相対距離のばらつきに起因する発生加振力のばらつきがより一層有利に軽減され得る。なお、特に、本態様において前記第四の態様を併せて採用するに際しては、加振部材のヨーク部材に対する相対移動範囲の全体に亘って、それぞれ筒状面をもって形成された内周面と外周面の半径寸法の差が、加振部材とヨーク部材において互いに軸方向で直接に対向位置せしめられた部分の対向面間距離よりも小さくなるように設定した構成が、より好適に採用され得る。
【0019】
また、本発明の第六の態様は、前記第一乃至第五の何れかの態様に従う構造とされた流体封入式能動的マウントにおいて、前記アクチュエータの前記ヨーク部材における内周側壁部を外周側壁部よりも軸方向に突出せしめる一方、前記加振部材の該ヨーク部材に対する軸方向対向面の中央部分に凹所を設けて、該加振部材の軸方向対向面の外周部分を該ヨーク部材の外周側壁部に対して軸方向で直接に対向位置せしめると共に、該加振部材の凹所の開口角部を該ヨーク部材の内周側壁部の外周角部に対して軸方向で傾斜して対向位置せしめ、更に、該加振部材の凹所の底面を該ヨーク部材の内周側壁部に対して、それら加振部材の開口角部とヨーク部材の内周側壁部の外周角部との対向面間距離よりも大きな対向面間距離をもって軸方向で直接に対向位置せしめたことを、特徴とする。このような本態様に従えば、ヨーク部材と加振部材の間において、軸方向で直接に対向位置して磁気吸引力等が作用せしめられる部分と、軸方向に傾斜して対向位置して磁気吸引力等が作用せしめられる部分とが、共に有利に形成され得る。
【0020】
また、本発明の第七の態様は、前記第一乃至は第六の態様に従う構造とされた流体封入式能動形マウントにおいて、壁部の一部が変位容易な可撓性膜で構成されて容積変化が許容される平衡室を形成すると共に、該平衡室を前記流体室に連通する流体流路を形成したことを、特徴とする。このような本態様においては、装着状態下で初期荷重が及ぼされることによって本体ゴム弾性体が弾性変形する場合でも、流体室の内圧が流体流路を通じて平衡室に逃がされることにより、流体室の内圧変化が軽減乃至は回避されることから、目的とする防振効果をより安定して得ることが可能となる。なお、特に、本態様において前記第二の態様を併せて採用するに際しては、流体流路を前記オリフィス通路よりも低周波数域にチューニングすることが望ましく、それによって、オリフィス通路を流動せしめられる流体の流動作用に基づく能動的防振作用の向上効果が、流体流路の影響を殆ど受けることなく安定して発揮され得る。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0022】
先ず、図1には、本発明の一実施形態としての自動車用エンジンマウント10が示されている。このエンジンマウント10は、第一の取付部材としての第一の取付金具12と第二の取付部材としての第二の取付金具14が本体ゴム弾性体16によって連結された構造とされている。そして、第一の取付金具12が自動車のパワーユニットに取り付けられる一方、第二の取付金具14が自動車のボデーに取り付けられることにより、パワーユニットをボデーに対して防振支持せしめるようになっている。なお、以下の説明中、上下方向とは、原則として図中の上下方向をいうものとする。
【0023】
より詳細には、第一の取付金具12は、略逆円錐台形のブロック形状を有していると共に、大径側端面から軸方向上方に向かって突出する螺着部13が一体形成されており、この螺着部13に設けられたねじ穴によって、第一の取付金具12が、図示しない自動車のパワーユニットに固定的に取り付けられるようになっている。また、第一の取付金具12の大径側端部外周面には、径方向外方に向かって突出する鍔状のストッパ部22が一体形成されている。
【0024】
また、この第一の取付金具12には、本体ゴム弾性体16が加硫接着されている。かかる本体ゴム弾性体16は、全体として大径の略円錐台形状を呈していると共に、大径側端面に開口する大径の凹部18を有しており、その小径側端面から第一の取付金具12が軸方向に差し込まれた状態で同一中心軸上に配されて加硫接着されている。また、本体ゴム弾性体16の大径側端部外周面には、大径円筒形状の金属スリーブ20が重ね合わされて加硫接着されている。これにより、本体ゴム弾性体16は、第一の取付金具12と金属スリーブ20を有する一体加硫成形品として形成されている。また、第一の取付金具12のストッパ部22には、緩衝ゴム23が、軸方向上方に向かって突出して、本体ゴム弾性体16と一体形成されている。
【0025】
一方、第二の取付金具14は、大径の略段付き円筒形状を有しており、軸方向中間部分に形成された段差部24を挟んで、軸方向上部が大径部26とされていると共に、軸方向下部が小径部28とされている。また、これら大径部26および小径部28の内周面には、略全面を覆う薄肉のシールゴム層30が設けられて加硫接着されていると共に、小径部28側の開口部には、略薄肉の円板形状を有する薄肉ゴム膜からなるダイヤフラム32が配設されており、このダイヤフラム32の外周縁部が第二の取付金具14の開口周縁部に加硫接着されることによって、第二の取付金具14の下側開口部が流体密に閉塞されている。なお、本実施形態では、このダイヤフラム32が、シールゴム層30と一体形成されていると共に、このダイヤフラム32によって可撓性膜が構成されている。
【0026】
そして、第二の取付金具14は、その大径部26が金属スリーブ20に外挿されて、圧入や絞り加工等で嵌着固定されることによって、本体ゴム弾性体16の外周面に固着されている。これにより、第一の取付金具12と第二の取付金具14が、同一中心軸上で軸方向に相互に離間して配設されており、本体ゴム弾性体16によって弾性的に連結されている。また、第二の取付金具14の大径部26が本体ゴム弾性体16に固着されることにより、第二の取付金具14の上側開口部が本体ゴム弾性体16によって流体密に閉塞されている。更に、かかる第二の取付金具14には、図示されているように、軸方向上側からストッパ筒金具37が被せられて第二の取付金具14の大径部26に外嵌固定されている。このストッパ筒金具37は、軸方向中間部分に形成された段差部39を挟んだ軸方向上下に小径部41と大径部43を有していると共に、軸方向上端部において径方向内方に突出する円環板状の当接突起45が一体形成されており、この当接突起45が、第一の取付金具12のストッパ部22に対して軸方向上方に離間して対向位置せしめられている。そして、大きな振動荷重が入力された際、ストッパ部22が緩衝ゴム23を介して当接突起45に当接することにより、第一の取付金具12と第二の取付金具14のリバウンド方向(軸方向離間方向)での相対変位量が制限されるようになっている。
【0027】
また、第二の取付金具14には、軸方向中間部分に位置して仕切部材34が収容配置されており、本体ゴム弾性体16とダイヤフラム32の対向面間の中間部分に配設されている。この仕切部材34は、金属や合成樹脂等の硬質材で形成されて略円板形状を有しており、第二の取付金具14の軸直角方向に広がる状態で配設されて、外周縁部を、第二の取付金具14の段差部24と金属スリーブ20の軸方向端面との間で挟圧保持されることによって、第二の取付金具14に固設されている。これにより、第二の取付金具14の中空内部が、仕切部材34を挟んで、本体ゴム弾性体16側とダイヤフラム32側とに流体密に仕切られている。そして、本体ゴム弾性体16と仕切部材34の間には、壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成されて、内部に非圧縮性流体が封入された主液室35が形成されている。そして、この主液室35には、第一の取付金具12と第二の取付金具14の間に振動が入力された際、本体ゴム弾性体16の弾性変形に基づいて内圧変化が生ぜしめられるようになっている。なお、封入流体としては、水やアルキレングリコール,ポリアルキレングリコール,シリコーン油等が採用され得るが、特に本実施形態では、後述するように流体の共振作用に基づく防振効果が有効に発揮されるように、粘性が0.1Pa・s以下の低粘性流体が好適に採用される。また、かかる非圧縮性流体の充填は、例えば、第二の取付金具14に対する本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品の組み付けを非圧縮性流体中で行うこと等によって、有利に為され得る。
【0028】
また、仕切部材34の外周部分には、金属や合成樹脂等の硬質材で形成された円環ブロック形状のオリフィス部材36が、下面に重ね合わされて配設されており、該オリフィス部材36の外周面上に突設されたフランジ状の環状支持片38が、仕切部材34の外周縁部と共に、第二の取付金具14の段差部24と金属スリーブ20の軸方向端面の間で挟持されることにより、かかるオリフィス部材36が第二の取付金具14に固設されている。
【0029】
更にまた、このオリフィス部材36の軸方向下側開口部には、可動壁44が配設されている。かかる可動壁44においては、下方に開口する逆カップ形状の可動金具46が中央部分に配設されると共に、L字形断面で周方向に延びる環状の嵌着金具48が外周部分に配設されており、これら可動金具46と嵌着金具48の筒壁部間に円環板形状を有する壁ゴム弾性体50が介装されて、該壁ゴム弾性体50の内周面が可動金具46の筒壁部に加硫接着されていると共に、該壁ゴム弾性体50の外周面が嵌着金具48に加硫接着されている。要するに、壁ゴム弾性体50は、可動金具46と嵌着金具48を備えた一体加硫成形品として形成されている。
【0030】
そして、かかる可動壁44は、嵌着金具48がオリフィス部材36に圧入固定されることによって、オリフィス部材36の下側開口部を流体密に覆蓋する状態で組み付けられている。また、これにより、オリフィス部材36の中空内部には、仕切部材34と可動壁44の対向面間において、壁部の一部が可動壁44で構成されて、主液室35と同じ非圧縮性流体が内部に封入された副液室52が形成されており、この副液室52には、可動壁44の変位に基づいて内圧変化が生ぜしめられるようになっている。
【0031】
また、オリフィス部材36には、上面に開口して周方向に一周弱の長さで延びる周溝40が形成されており、この周溝40が仕切部材34で覆蓋されることによって、周方向に延びるオリフィス通路42が形成されている。そして、該オリフィス通路42は、その周方向一方の端部が、仕切部材34に設けられた連通孔を通じて主液室35に連通されている一方、周方向他方の端部が、オリフィス部材36に設けられた連通孔(図示せず)を通じて副液室52に連通されており、以て、主液室35と副液室52の相対的な圧力差に基づいて、オリフィス通路42を通じての流体流動が生ぜしめられるようになっている。
【0032】
なお、オリフィス通路42は、その内部を流動せしめられる流体の共振作用等の流動作用に基づいて、可動壁44の変位によって副液室52に生ぜしめられる圧力変化が主液室35に対してより効率的に伝達されて優れた能動的防振効果が発揮されるように、能動的防振効果が要求される周波数域に応じて断面積や長さ等が設定されている。
【0033】
さらに、第二の取付金具14の内部には、可動壁44の下方に位置する小径部28内において、加振器としてのアクチュエータ54が収容状態で組み込まれている。このアクチュエータ54は、厚肉の略円筒形状を有するホルダブロック56にヨーク部材58やコイル64,加振板74等の駆動力発生機構が組み付けられており、該ホルダブロック56が、第二の取付金具14の小径部28に対して、圧入や絞り加工等により、シールゴム層30を挟んで流体密に嵌着固定されることによって、第二の取付金具14で支持されている。また、ホルダブロック56の軸方向上端面は、嵌着金具48を介して、オリフィス部材36の軸方向下端面に対して流体密に重ね合わされている。
【0034】
そこにおいて、ホルダブロック56は、合成樹脂やアルミニウム等の非磁性材で形成されることが望ましい。一方、ヨーク部材58は、鉄等の強磁性材で形成されて円形のブロック形状を有しており、中心軸上を軸方向に貫通して延びる挿通孔60が設けられていると共に、該挿通孔60の周りには、軸方向上方に向かって開口する環状凹溝62が設けられている。そして、この環状凹溝62にコイル64が収容されて固定的に組み付けられていることによって、ヨーク部材58により、コイル64の周りにヨークが形成されており、コイル64への通電によって環状磁路が形成されるようになっている。
【0035】
そして、ヨーク部材58に形成された環状凹溝62にコイル64が収容配置されていることにより、コイル64の周りに形成されたヨークが、コイル64の内周側に位置する内周側壁部66と、コイル64の外周側に位置する外周側壁部68と、それら内周側壁部66と外周側壁部68の軸方向下端部を相互に接続する環状底壁部70とから構成されており、軸方向上方において、内周側壁部66の上端開口部と外周側壁部68の上端開口部との間で分断されている。また、内周側壁部66の軸方向上端面は、外周側壁部68の軸方向上端面よりも軸方向上方に所定高さだけ大きく突出されており、コイル64の軸方向上端面よりも軸方向上方に飛び出して突出せしめられている。
【0036】
また、ヨーク部材58の挿通孔60には、挿通孔60よりも十分に小径の断面形状を有する連結ロッド72が挿通配置されており、挿通孔60から上下両側に突出せしめられた連結ロッド72の上端部と下端部に対して、加振部材としての加振板74と安定板76が、それぞれ軸直角方向に広がる状態で固着されている。そして、これら加振板74と安定板76は、連結ロッド72で相互に連結されて、全体として一体的に、ヨーク部材58に対する軸方向の相対変位が許容されるようになっている。即ち、加振板74と安定板76はヨーク部材58およびコイル64の軸方向両側において、それぞれ軸方向外方に離間して、それらヨーク部材58およびコイル64に対して軸方向で対向位置せしめられている。
【0037】
かかる安定板76は、上方に開口する略カップ形状を有しており、該安定板76の周囲には、L字形断面で周方向に延びる環状の固定金具78が、径方向外方に離間して配設されている。更に、これら安定板76と固定金具78の筒壁部間には、円環板形状を有する支持ゴム弾性体80が介装されており、該支持ゴム弾性体80の内周面が安定板76の筒壁部に加硫接着されていると共に、該支持ゴム弾性体80の外周面が固定金具78に加硫接着されている。そして、固定金具78が、ホルダブロック56の軸方向下面に対して流体密に重ね合わされて、ボルトや溶接等によって固着されており、それによって、安定板76が、ホルダブロック56、ひいては第二の取付金具14により、支持ゴム弾性体80を介して弾性的に位置決め支持されている。
【0038】
また、このようなアクチュエータ54が第二の取付金具14に組み込まれることにより、第二の取付金具14の小径部28内には、安定板76とダイヤフラム32の対向面間において、壁部の一部がダイヤフラム32で構成されて、該ダイヤフラム32の変形に基づいて容積変化が容易に許容される平衡室82が形成されている。そして、この平衡室82には、主液室35や副液室52と同じ非圧縮性流体が封入されている。また、アクチュエータ54を構成するホルダブロック56には、外周面を軸方向に延びる軸方向溝84が設けられており、この軸方向溝84が第二の取付金具14の小径部28で覆蓋されることによって流体流路86が形成されている。そして、該流体流路86の一方の端部が、オリフィス部材36に設けられた通孔88によって、オリフィス通路42を介して主液室35に連通されていると共に、該流体流路86の他方の端部が、平衡室82に連通されている。
【0039】
要するに、主液室35と平衡室82の間では、流体流路86を通じて相互に流体流動が生ぜしめられるようになっている。そして、エンジンマウント10の装着状態下において、パワーユニットの支持荷重が及ぼされて本体ゴム弾性体16が弾性変形すると、流体流路86を通じての主液室35から平衡室82への流体流動により、主液室35の圧力増大が軽減乃至は回避されるようになっている。また、振動入力時には、主液室35と平衡室82の間での相対的な圧力差に基づいて流体流路86を通じての流体流動が生ぜしめられることにより、流体の共振作用等の流動作用に基づく防振効果が発揮されるようになっている。特に、本実施形態では、流体流路86を流動せしめられる流体の流動作用に基づく防振効果が、前記オリフィス通路42を通じての流体流動作用に基づく防振効果よりも低周波数域で発揮されるように、かかる流体流路86がオリフィス通路42よりも低周波数域にチューニングされている。
【0040】
一方、アクチュエータ54において、連結ロッド72の上端部に固設された加振板74は、鉄等の強磁性材で形成されており、全体として略厚肉の円板形状を有している。また、この加振板74の中央部分には、下面において下方に開口する円形の中央凹所90が形成されていると共に、上面において上方に突出する円形の中央凸部92が一体形成されている。即ち、これら中央凹所90と中央凸部92により、加振板74は、全体として略ハット形状とされている。また、加振板74は、その外径寸法が、ヨーク部材58の外周側壁部68の外径寸法と略同じにされていると共に、中央凹所90の筒状内周面94の内径寸法が、ヨーク部材58の内周側壁部66の筒状外周面96の外径寸法よりも所定量だけ大きくされている。
【0041】
そして、かかる加振板74は、可動壁44の下方に配されて、その中央凸部92が、可動金具46の筒壁部に対して圧入固定されている。これにより、加振板74が、壁ゴム弾性体50を介して、オリフィス部材36、ひいては第二の取付金具14により弾性的に位置決め支持されている。要するに、連結ロッド72で一体的に連結された加振板74と安定板76は、軸方向上下両端部において、それぞれ軸直角方向に広がる壁ゴム弾性体50と支持ゴム弾性体80を介して、第二の取付金具14によって所定位置に弾性的に支持されているのであり、それら壁ゴム弾性体50と支持ゴム弾性体80の弾性変形に基づいて、軸方向の変位が許容されるようになっているのである。
【0042】
このように弾性支持された加振板74は、ヨーク部材58における磁路の開口部側(軸方向上側)に離間して対向配置されており、ヨーク部材58の外周側壁部68の軸方向上端面が、加振板74の外周縁部98の下面に対して、軸方向に離間して直接に対向位置せしめられていると共に、ヨーク部材58の内周側壁部66の軸方向上端部が、加振板74の中央凹部90の開口角部100に対して、軸方向で直接に対向することなく、径方向内方にずれて対向位置せしめられている。なお、特に本実施形態では、加振板74の外周部下面が、ヨーク部材58の内周側壁部66の軸方向上端面と軸直角方向に広がる略同一平面上に位置せしめられるように、加振板74の中立位置(コイル64への非通電状態下での弾性支持位置)が設定されている。
【0043】
なお、加振板74の中央凹部90の底面は、ヨーク部材58の内周側壁部66の軸方向上端面に対して軸方向で離間して直接に対向位置せしめられているが、その対向面間距離が、軸方向に傾斜して対向位置せしめられたヨーク部材58の内周側壁部66の軸方向上端部と加振板74の中央凹部90の開口角部100との対向間距離よりも大きく設定されている。特に本実施形態では、図2にモデル的に示されているように、加振板74における中央凹部90の筒状内周面94と、ヨーク部材58における内周側壁部66の筒状外周面96との径方向対向面間に、全体に亘って径方向寸法:Dの隙間が形成されるように設定されていると共に、加振板74における中央凹部90の底面と、ヨーク部材58における内周側壁部66の軸方向上端面との対向面間距離:Lが、D≦Lとなるように設定されている。また、特に本実施形態では、加振板74における外周縁部98の下面と、ヨーク部材58における外周側壁部68の軸方向上端面との対向面間距離:Mが、D≦Mとなるように設定されている。
【0044】
そして、このような中立位置が設定されることにより、加振板74は、壁ゴム弾性体50と支持ゴム弾性体80の弾性変形に基づいて軸方向に変位せしめられることによって、ヨーク部材58に対して軸方向に接近/離間せしめられることとなり、接近方向への変位によって、加振板74の中央凹所90にヨーク部材58の内周側壁部66が、接触することなく入り込むこととなる。
【0045】
上述の如き構造とされたエンジンマウント10においては、コイル64への通電によって、コイル64の周りに配設されたヨーク部材58によってヨークが構成され、ヨーク部材58の内外周壁部66,68の先端部に形成される両磁極によって、それに対向位置せしめられた加振板74に対して磁界が及ぼされることにより、かかる加振板74がヨーク部材58側、即ち図中の軸方向下方に吸引駆動せしめられる。それ故、コイル64への通電周波数や電流を制御することにより、加振板74を目的の周波数と振幅で加振することが出来るのである。
【0046】
そして、加振板74の加振に対応して副液室52に生ぜしめられる圧力変化を、オリフィス通路42を通じて主液室35に伝達せしめて、主液室35の内圧を入力振動に対して能動的に制御することにより、振動に対して能動的な防振効果を得ることが出来るのである。また、そこにおいて、オリフィス通路42を流動せしめられる流体の共振作用等の流動作用を利用することによって、より効率的な能動的防振効果を得ることが可能となる。特に、本実施形態では、主液室35の圧力変化に基づいて、主液室35と平衡室82との間での流体流路86を通じての流体流動も生ぜしめられることから、この流体流路86を通じての流体流動を利用することによって、オリフィス通路42のチューニング周波数とは異なる周波数域において、受動的防振効果を得ることが出来ると共に、能動的防振効果を効率的に得ることも可能となる。
【0047】
そこにおいて、加振板74は、コイル64への通電によってヨーク部材58に生ぜしめられる磁力の作用で吸引駆動されることから、例えばボイスコイル型等の電磁駆動手段に比して、大きな加振力を効率的に得ることが出来るのである。
【0048】
しかも、加振板74の内周側において、該加振板74とヨーク部材58の磁極部の対向部分が、軸方向で傾斜して対向位置せしめられていることから、加振板74が変位せしめられた際にも、加振板74とヨーク部材58の相対距離の変化量に対する、加振板74に作用せしめられる磁気吸引力の変化量が小さく抑えられるのであり、その結果、加振板74のヨーク部材58に対する初期位置にばらつきがあった場合でも、目的とする加振力が安定して生ぜしめられて、目的とする能動的防振効果が安定して発揮されるのである。
【0049】
なお、このように加振板74のヨーク部材58に対する軸方向での相対位置の変化に伴う磁気吸引力の変化量が抑えられる技術的理由は、加振板74の内周側におけるヨーク部材58の磁極部との対向方向が軸方向に傾斜しており、軸方向の駆動力が分力として生ぜしめられることに加えて、加振板74とヨーク部材58における対向磁極部が、それら加振板74やヨーク部材58の軸方向端面だけでなく、筒状内外周面94,96によっても構成されており、加振板74のヨーク部材58に対する軸方向変位に伴って、それら加振板74やヨーク部材58における有効な磁極部がそれぞれ変位せしめられることなどによるものと考えられる。
【0050】
因みに、上述の如き構造のエンジンマウント10に装着されたアクチュエータ54において、D=1mmに設定して、一定の電流をコイル64に給電することにより加振板74に及ぼされる軸方向駆動力(発生力)を求めた結果を、図3に示す。なお、かかるアクチュエータ54においては、図2に示されているように、加振板74の下面とヨーク部材58における内周側壁部66の軸方向上端面とが同じ軸直角平面上となる位置を基準位置とし、その基準位置から、加振板74を、ヨーク部材58に対する離隔方向に1mm変位させた離隔位置と、ヨーク部材58に対する接近方向に0.5mm変位させた接近位置との3位置について、それぞれ軸方向駆動力を求め、図3中に、基準位置で生ぜしめられる発生力に対する割合値で示した。なお、図3中、ギャップ値は、図2中におけるMの値を示す。
【0051】
また、比較例として、図4に示されているように、内周側壁部66と外周側壁部68を同一の軸方向高さとしたヨーク部材58aと、下面の全体を平坦面とした加振板74aを備えた比較例としてのアクチュエータを採用した場合について、ヨーク部材58aと加振板74aの軸方向対向面間距離:Mが2.5mmとなる位置を基準位置として、かかる基準位置から1mm離隔させた離隔位置と、0.5mm接近させた接近位置との3位置について、それぞれ軸方向駆動力を求めた結果を、図3に比較例として併せ示す。
【0052】
かかる図3に示された結果からも、本実施形態のアクチュエータ54を採用したエンジンマウント10においては、従来構造とされた比較例のアクチュエータを用いたエンジンマウントに比して、加振板のヨーク部材58に対する相対位置に同じだけのばらつきがあった場合でも、発生力のばらつきを大幅に抑えることの出来ることが、明らかである。換言すれば、従来構造とされた比較例のアクチュエータを用いたエンジンマウントでは、本実施形態のアクチュエータ54を採用したエンジンマウント10と同じ程度に発生力のばらつきを抑えるためには、加振板の位置のばらつきを、図3中にαで示される極めて狭い範囲に抑えることが必要となるのである。
【0053】
以上、本発明の一実施形態について詳述してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものでない。
【0054】
例えば、前記実施形態のエンジンマウント10では、ヨーク部材58の外周側壁部68と加振板74の外周部分との間に、軸方向の対向部位が形成されていると共に、ヨーク部材58の内周側壁部66と加振板74の内周部分との間に、軸方向に傾斜した対向部位に形成されていたが、それとは反対に、例えば図5〜7に要部が概略的に示されているように、それらヨーク部材58の外周側壁部68と加振板74の外周部分との間に、軸直角方向にずれて軸方向に傾斜した対向部位を形成することも可能である。なお、図5〜7においては、その理解を容易とするために、前記実施形態におけるエンジンマウント10のアクチュエータ54と同様な構造とされた部材および部位について、それぞれ、図中に同一の符号を付しておく。
【0055】
すなわち、図5に示されたエンジンマウント用のアクチュエータにおいては、ヨーク部材58の内周側壁部66よりも外周側壁部68の方が、軸方向上方に突出せしめられていると共に、加振板74として、下面が全体に亘って平坦面とされたものが採用されており、且つ加振板74の外径寸法が、ヨーク部材58における外周側壁部68の内径寸法よりも僅かに小さく設定されている。また、図6に示されたエンジンマウント用のアクチュエータにおいては、ヨーク部材58の内周側壁部66と外周側壁部68が、何れも軸方向上方に突出せしめられていると共に、下面が全体に亘って平坦面とされた加振板74の外周縁部において、軸方向下方に突出する環状突出部104が、ヨーク部材58における外周側壁部68の内径寸法よりも僅かに小さな外径寸法をもって一体形成されている。更にまた、図7に示されたエンジンマウント用のアクチュエータにおいては、外周側壁部68よりも内周側壁部66の方が軸方向上方に突出せしめられた、前記実施形態と同じ構造のヨーク部材58が採用されていると共に、下面が全体に亘って平坦面とされた加振板74の外周縁部において、軸方向下方に突出する環状突出部106が、ヨーク部材58における外周側壁部68の外径寸法よりも僅かに大きな内径寸法をもって一体形成されている。
【0056】
これら図5〜7の何れに記載されたエンジンマウント用のアクチュエータにおいても、ヨーク部材58における内周側壁部66の軸方向上端面と加振板74が軸方向で直接に対向位置せしめられて有効な磁気吸引力が作用せしめられると共に、ヨーク部材58における外周側壁部68の軸方向上端部と加振板74が軸方向に傾斜して対向位置せしめられており、加振板74のヨーク部材58に対する軸方向相対位置のばらつきに起因する加振力のばらつきが有効に軽減されて、加振板74に対して安定して加振力が及ぼされることとなり、以て、前記実施形態におけるアクチュエータと同様な効果が有効に発揮されるのである。
【0057】
さらに、本発明に従う構造とされた能動的マウントにおいては、そのアクチュエータを構成するヨーク部材における内外周側壁部の少なくとも一方において、加振部材に対して軸方向で直接に対向位置する部分が設けられると共に、それら内外周壁部の他方において、少なくとも加振部材に対して軸直角方向でずらされて傾斜して対向位置する部分が設けられていれば良く、例えば、加振部材に対して軸方向で直接に対向位置する部分が設けられた、ヨーク部材における内外周側壁部の何れか一方において、更に加振部材に対して軸直角方向でずらされて傾斜して対向位置する部分を付加して設けることも可能であり、また、加振部材に対して軸直角方向でずらされて傾斜して対向位置する部分が設けられた、ヨーク部材における内外周壁部の他方において、更に加振部材に対して軸方向で直接に対向位置する部分を付加して設けることも可能である。
【0058】
具体的には、例えば、図8に示されているように、ヨーク部材58の内周側壁部66と外周側壁部68を、何れも軸方向上方に突出させると共に、下面が全体に亘って平坦面とされた加振板74の径方向中間部分において、軸方向下方に突出する環状突出部108を、ヨーク部材58における内周側壁部66の外径寸法よりも僅かに大きな内径寸法と、外周側壁部68の内径寸法よりも僅かに小さな外径寸法をもって、一体形成した構造をもって、能動的マウント用のアクチュエータを構成することも可能である。このような構造の能動的マウント用アクチュエータにおいては、加振板74の下面と、ヨーク部材58における内周側壁部66および外周側壁部68の各軸方向上端面とが、それぞれ、軸方向で直接に対向位置せしめられていると共に、加振板74の環状突出部108の内周側角部とヨーク部材58の内周側壁部66の外周側角部、および加振板74の環状突出部108の外周側角部とヨーク部材58の外周側壁部68の内周側角部が、それぞれ、軸直角方向にずれて対向位置せしめられている。要するに、かかるアクチュエータにおいては、ヨーク部材58の内周側壁部66と外周側壁部68の何れにおいても、加振板74に対して、軸方向で直接に対向位置する磁極部分と、軸直角方向にずれて傾斜して対向位置する磁極部分とが、それぞれ形成されているのである。そして、このような構造とされた能動的マウント用アクチュエータにおいても、加振板74のヨーク部材58に対する軸方向相対位置のばらつきに起因する加振力のばらつきが有効に軽減されて、加振板74に対して安定して加振力が及ぼされることとなり、以て、前記実施形態における能動的マウント用アクチュエータと同様な効果が有効に発揮されるのである。
【0059】
また、オリフィス通路42や流体流路86の具体的構造は、要求される防振特性や防振装置の基本的構造等に応じて適宜に変更されるものであって限定されるものでない。
【0060】
さらに、本発明は、例示の如き構造のマウントだけでなく、例えば、第一の取付部材としての軸部材の径方向外方に離間して、第二の取付部材としての外筒部材が配設されると共に、それら軸部材と外筒部材が、両部材間に介装された本体ゴム弾性体によって連結された構造を有し、FF型自動車用エンジンマウント等に好適に採用される筒型マウント等にも適用可能である。
【0061】
また、前記実施形態では、本発明を、自動車用エンジンマウントに適用したものの具体例を示したが、自動車用エンジンマウントの他、自動車用やそれ以外の各種装置用の各種マウントにも、本発明が適用可能であることは、勿論である。
【0062】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【0063】
【発明の効果】
上述の説明から明らかなように、本発明に従う構造とされた流体封入式能動的マウントにあっては、ヨーク部材と加振部材の間で磁力が及ぼされる部分を、加振部材の変位方向に対して傾斜して対向位置せしめたことにより、ヨーク部材と加振部材の相対位置のばらつきに伴う加振部材の駆動力のばらつきが抑えられるのであり、それによって、目的とする能動的防振効果が有効に且つ安定して発揮され得る。それ故、例えばマウント装着状態下で入力される初期荷重によって加振器におけるヨーク部材と加振部材の相対位置に影響が及ぼされるおそれがある場合等においても、能動的防振特性の安定化が図られ得るのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態としての自動車用エンジンマウントを示す縦断面説明図である。
【図2】図1に示されたエンジンマウントに用いられているアクチュエータの要部を示すモデル図である。
【図3】図1に示されたエンジンマウントに用いられているアクチュエータの出力特性を示すグラフである。
【図4】比較例としての従来構造のエンジンマウントに用いられるアクチュエータの要部を示すモデル図である。
【図5】図1に示されたエンジンマウントに採用され得るアクチュエータの別の構造例を示す要部概略図である。
【図6】図1に示されたエンジンマウントに採用され得るアクチュエータの更に別の構造例を示す要部概略図である。
【図7】図1に示されるエンジンマウントに採用され得るアクチュエータの更に別の構造例を示す要部概略図である。
【図8】図1に示されるエンジンマウントに採用され得るアクチュエータの更に別の構造例を示す要部概略図である。
【符号の説明】
10 エンジンマウント
12 第一の取付金具
14 第二の取付金具
16 本体ゴム弾性体
34 仕切部材
35 主液室
42 オリフィス通路
44 可動壁
52 副液室
54 アクチュエータ
58 ヨーク部材
64 コイル
66 内周側壁部
68 外周側壁部
74 加振板
82 平衡室
86 流体流路
90 中央凹所
98 外周縁部
100 開口角部
Claims (6)
- 防振連結される部材にそれぞれ取り付けられる第一の取付部材と第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結すると共に、該本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成されて非圧縮性流体が封入された流体室を形成する一方、該流体室の壁部の別の一部を変位可能な可動壁で構成すると共に、該可動壁を加振駆動するアクチュエータを設けた流体封入式能動的マウントにおいて、
磁性材からなるヨーク部材に対して軸方向一方の側に開口する環状凹溝を設けて該環状凹溝にコイルを収容配置することにより、該コイルへの通電によって該コイルの周囲に磁路が形成されるようにすると共に、該ヨーク部材における環状凹溝の開口部の内周側壁部と外周側壁部にそれぞれ該磁路の両磁極を設定する一方、磁性材からなる加振部材を、前記ヨーク部材における環状凹溝の開口部側に離間して軸方向で対向位置せしめて、前記コイルへの通電により該加振部材に磁力を及ぼして、それら加振部材とヨーク部材の間に軸方向の加振力を及ぼすようにした電磁式加振器を用い、前記ヨーク部材を前記第二の取付け部材によって固定支持せしめると共に、前記加振部材を前記可動壁に固定的に設けることにより、該可動壁に加振力を及ぼす前記アクチュエータを構成し、更に、かかるアクチュエータにおける前記ヨーク部材の磁極が設定された前記環状凹溝の開口部の内周側壁部および外周側壁部の少なくとも一方と、それに最も接近して位置せしめられる前記加振部材の内周部分及び/又は外周部分とを、軸方向で直接に対向位置せしめる一方、かかるヨーク部材における内周側壁部および外周側壁部の少なくとも他方の角部と、それに最も接近して位置せしめられる前記加振部材の内周部分及び/又は外周部分の角部とを、軸直角方向にずらせて軸方向で傾斜して対向位置せしめたことを特徴とする流体封入式能動的マウント。 - 前記第二の取付部材で支持された仕切壁にて前記流体室を仕切ることにより、壁部の一部が前記本体ゴム弾性体で構成された主液室と、壁部の一部が前記可動壁で構成された副液室を形成すると共に、それら主液室と副液室を相互に連通するオリフィス通路を形成した請求項1に記載の流体封入式能動的マウント。
- 前記アクチュエータにおいて前記加振部材が前記ヨーク部材側に変位せしめられることにより、それら加振部材とヨーク部材において互いに軸直角方向にずらせて軸方向で傾斜して対向位置せしめた部分の先端面が、相互に当接することなく、少なくとも軸直角方向で重なる位置まで達し得るようにした請求項1又は2に記載の流体封入式能動的マウント。
- 前記アクチュエータにおける前記加振部材と前記ヨーク部材において、互いに軸直角方向にずらせて軸方向で傾斜して対向位置せしめた部分の相互に近接する内外周面を、それぞれ、軸方向に延びる筒状面とすると共に、軸方向の投影においてそれら内外周面間に隙間が形成されるように、それら内周面および外周面の各径方向寸法を設定した請求項1乃至3の何れかに記載の流体封入式能動的マウント。
- 前記アクチュエータにおける前記加振部材と前記ヨーク部材において、互いに対向位置せしめた部分の軸直角方向での対向間距離の大きさを、互いに軸方向で直接に対向位置せしめた部分の対向面間距離の大きさ以下とした請求項1乃至4の何れかに記載の流体封入式能動的マウント。
- 前記アクチュエータにおいて、前記ヨーク部材における内周側壁部を外周側壁部よりも軸方向に突出せしめる一方、前記加振部材の該ヨーク部材に対する軸方向対向面の中央部分に凹所を設けて、該加振部材の軸方向対向面の外周部分を該ヨーク部材の外周側壁部に対して軸方向で直接に対向位置せしめると共に、該加振部材の凹所の開口角部を該ヨーク部材の内周側壁部の外周角部に対して軸方向で傾斜して対向位置せしめ、更に、該加振部材の凹所の底面を該ヨーク部材の内周側壁部に対して、それら加振部材の開口角部とヨーク部材の内周側壁部の外周角部との対向面間距離よりも大きな対向面間距離をもって軸方向で直接に対向位置せしめた請求項1乃至5の何れかに記載の流体封入隙能動的マウント。
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