JP3618088B2 - リン酸エステルの製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リン酸エステルの製造法に関する。更に詳しくは、例えば、シャンプー、洗顔剤、固型洗浄剤等に有用なリン酸エステルの製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
リン酸エステルは、洗浄剤、乳化剤、繊維処理剤、防錆剤、医療品等の分野で使用されている。リン酸エステルの中でも特に、長鎖アルキル基を有するモノアルキルリン酸エステルのナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩やトリエタノールアミン等のアルカノールアミン塩は、水溶性で起泡力や洗浄力に優れ、しかも毒性や皮膚刺激性が低いことから、シャンプーや洗顔剤等の人体に直接使用する商品に有用である。このような人体に直接使用する商品にリン酸エステルを配合する場合、そのリン酸エステルに基づく臭いが弱いことが品質として重要となる。
【0003】
通常、リン酸エステルは、有機ヒドロキシ化合物と、五酸化リン、ポリリン酸、オキシ塩化リン等のリン酸化剤とを反応させることによって製造されている。
【0004】
しかしながら、このリン酸エステル中には、未反応の有機ヒドロキシ化合物や、有機ヒドロキシ化合物に由来の化合物、更にはリン酸化反応中に生成する副生物等が不純物として存在する。これらの不純物は、有臭成分として臭いに悪影響を及ぼすことがあるため、リン酸化反応後に有臭成分を除去するための煩雑な工程が必要とされている。
【0005】
一般に、リン酸エステルは、熱履歴によって分解を生じやすい化合物であるので、熱履歴をできるだけ受けないようにするために、有臭成分を除去する脱臭方法として、溶剤を用いてリン酸エステルを再結晶する方法や、リン酸エステルを塩基性化合物によりリン酸エステル塩に対して水層に抽出し、有臭成分を有機層に抽出する方法が提案されている(特公平03−027558 号公報)。
【0006】
しかしながら、リン酸エステルを再結晶する方法には、リン酸エステルに対して大量の溶剤を必要とするため、リン酸エステルの溶剤への損失を避けることができないという欠点がある。また、リン酸エステルを抽出する方法には、溶剤を大量に使用する必要があるため、生産性に劣るとともに、溶剤を回収するための設備等が必要となることから、コスト高となるという欠点がある。
【0007】
一方、溶剤を使用しない脱臭方法として、攪拌膜型蒸発機、濡壁塔等を用いてリン酸エステルの液膜を形成し、このリン酸エステルの液膜と不活性ガスとを接触させる方法が提案されている(特開昭57−35595号公報)。
【0008】
しかし、これらの装置では、液膜と脱臭用ガスとが装置の壁面でしか接触しないため、有臭成分の除去処理の速度が小さく、装置が大きくなるという欠点がある。また、攪拌膜型蒸発機は、円筒状の本体の内周面とスクレーパーの外周面とのクリアランスが非常に小さいので(約0.1mm)、このクリアランスを保持するために本体及びスクレーパーには精密な真円加工が必要となるため、結果的にコスト高となるという欠点がある。
【0009】
従って、リン酸エステルの収率を維持しつつ、残存している有臭成分量を容易に低減しうる経済的に有利なリン酸エステルの工業的製造法の開発が望まれている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、有臭成分量が低減されたリン酸エステルを効率よく容易に製造しうる方法を提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
(A)接触装置内で、リン酸エステルを100 〜 160 ℃に加熱した後、不活性ガスと該リン酸エステルとを接触させ、該リン酸エステルに含有されている有臭成分量を低減する工程、及び
(B)工程(A)で有臭成分量が低減されたリン酸エステルを前記接触装置の出口で冷却装置を用いて 90 ℃以下に冷却する工程
を繰り返す、有臭成分量が低減されたリン酸エステルの製造法
に関する。
【0012】
【発明の実施の形態】
リン酸エステルの代表例としては、有機ヒドロキシ化合物のリン酸エステルが挙げられる。
【0013】
有機ヒドロキシ化合物は、水酸基をもつ有機化合物である。有機ヒドロキシ化合物としては、例えば、直鎖又は分岐鎖の飽和若しくは不飽和のアルコール、これらのアルキレンオキサイド付加物(アルキレンオキサイドの炭素数:2〜4)等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中では、炭素数6〜30のアルコール及びこのアルコールに炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを平均付加モル数1〜10モルで付加したポリオキシアルキレンアルキルエーテルが好ましく、炭素数8〜14のアルコール及びこのアルコールに炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを平均付加モル数2〜4 モルで付加したポリオキシアルキレンアルキルエーテルがより好ましい。
【0014】
有機ヒドロキシ化合物のリン酸エステル化は、有機ヒドロキシ化合物をリン酸化剤でエステル化させることによって得ることができる。
【0015】
リン酸化剤としては、例えば、五酸化リン、ポリリン酸、オキシ塩化リン等が挙げられ、これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中では、塩酸ガス等の副生がなく、設備的に負荷がかかり難い点から、五酸化リン及びポリリン酸が好ましい。
【0016】
五酸化リン及びポリリン酸をリン酸化剤として使用する場合には、通常、リン酸エステルを原料に用いた洗浄剤等の製品の安定性等に悪影響を及ぼすオルトリン酸の副生を低減する観点及び洗浄性に悪影響を及ぼすリン酸ジエステルの副生を低減する観点から、五酸化リン(オルトリン酸換算で138 重量%とした値、ポリリン酸の場合には、ポリリン酸濃度を138 で除した値をP2O5相当重量比とする。以下同じ)1モルに対して、水の量が0.5 〜1.5 モルであり、有機ヒドロキシ化合物の量が1〜3モルであることが好ましい。
【0017】
リン酸エステルには、通常、有臭成分として、未反応の有機ヒドロキシ化合物や有機ヒドロキシ化合物に由来の化合物、更にはリン酸化反応中に生成する副生成物等が含まれている。
【0018】
本発明においては、有臭成分量が低減されたリン酸エステルは、
(A)リン酸エステルを加熱した後、不活性ガスと該リン酸エステルとを接触させ、該リン酸エステルに含有されている有臭成分量を低減する工程、及び
(B)工程(A)で有臭成分量が低減されたリン酸エステルを冷却する工程
を繰り返すことによって製造することができる。
【0019】
工程(A)において、まず、リン酸エステルを加熱する。リン酸エステルの加熱温度は、リン酸エステルと不活性ガスとを接触させる際の温度(接触温度)が所望の温度となるように調整する。接触温度は、不活性ガス量を低減させ、高真空を必要としない観点、及びリン酸エステルの熱分解を回避し、それによる有臭成分量の増大や色相の悪化を回避する観点から、100 〜160 ℃、好ましくは120 〜140 ℃であることが望ましい。
【0020】
次に、不活性ガスと加熱されたリン酸エステルとを接触させる。リン酸エステルと不活性ガスとを接触させる際のリン酸エステル及び不活性ガスの流動方向は、水平流及び鉛直流のいずれであってもよい。これらの流動方向の中では、脱臭効率を向上させる観点から、鉛直流が好ましい。また、リン酸エステルの流動方向に対する不活性ガスの流動方向には、向流及び並流がある。これらの流動方向の中では、脱臭効率を向上させる観点から、向流が好ましい。
【0021】
これらのことから、リン酸エステル及び不活性ガスの流動方向は、鉛直流で向流であることがより好ましい。また、重力による充填塔内でのリン酸エステルの自由落下を利用し、動力を不要とする観点から、リン酸エステルを接触装置の上部から供給し、不活性ガスを接触装置の底部から供給することがより好ましい。
【0022】
不活性ガスとリン酸エステルとを接触させる際には、接触装置を用いることができる。接触装置としては、例えば、吹き込み管が用いられた回分式接触装置、棚段式接触装置、攪拌膜型接触装置、充填塔、流下薄膜式接触装置、上昇薄膜式接触装置等が挙げられる。
【0023】
接触装置の中では、特殊な装置を必要としないことから、吹き込み管が用いられた回分式接触装置、比較的高粘度のリン酸エステルを用いた場合であっても、効率よく不活性ガスと接触させることができる攪拌膜型接触装置、コンパクトであり、不活性ガスとリン酸エステルとの接触面積を大きくすることができ、また含有されている有臭成分量を効率的に低減することができる充填塔が好ましく、充填塔がより好ましい。
【0024】
充填塔とは、充填材をその内部に充填した塔をいう。充填塔は、攪拌膜型蒸発機、多段塔及び濡壁塔と比べて、装置容積あたりの気液接触面積が大きいため、有臭成分量を低減させるための処理速度を高めることができるので、装置自体を小型化することができ、また攪拌膜型蒸発機のような駆動部を有していないので、エネルギー効率及びメンテナンスの面からも優れている。
【0025】
充填塔に用いられる充填材は、ステンレス鋼、チタン、ハステロイ等の金属やセラミック等で製造されている。充填材は、塔内での圧力損失を低減させるために、空隙率90〜99%を有することが好ましい。
【0026】
充填材の種類は、2種類に大別される。その1つは、スルザー社製のスルザーパッキング(商品名)及びスルザーラボパッキング(商品名)、モンツ社製のモンツパッキン(商品名)等の規則充填物であり、他の1つは、ラシヒリングやベルルサドル、マクマホン等の不規則充填物である。これらの充填材は、それぞれ単独で用いてもよく、あるいは併用してもよい。これらの充填材の中では、取り扱いが簡便で、圧力損失が小さく、充填方法による偏流が生じにくいことから、規則充填物が好ましい。
【0027】
不活性ガスの流量とリン酸エステルの流量との比〔不活性ガスの流量(m3/h)/リン酸エステルの流量(kg/h)〕の値は、高真空が必要となるのを回避する観点、及びリン酸エステルと不活性ガスとを向流接触させる場合には、フラッディングのため充填塔の内径が大きくなるのを回避する観点から、0.1 〜3が好ましく、0.2 〜1.5 がより好ましい。なお、本明細書にいう「不活性ガスの流量(m3/h)」は標準状態、すなわち温度が0℃、圧力が101.3kPaであるときの値である。
【0028】
本明細書にいう「不活性ガス」とは、リン酸エステルの品質や有臭成分量が低減されたリン酸エステルの収量に悪影響を与えないガスを意味する。不活性ガスの例としては、水蒸気、窒素ガス、空気、炭酸ガス等が挙げられる。これらの中では、凝縮させやすいので凝縮器への熱エネルギー的負荷が小さく、また排気系への負荷も小さいことから、水蒸気が好ましい。
【0029】
不活性ガスとリン酸エステルとの接触時間は、不活性ガスとリン酸エステルとの接触条件等によって異なるので一概には決定することができない。通常、リン酸エステルの熱分解を抑制するとともに、含有されている有臭成分量を低減するための不活性ガス量が多くならないようにする観点から、不活性ガスとリン酸エステルとの接触時間は、1〜100 分間が好ましく、1〜30分間がより好ましい。
【0030】
不活性ガスとリン酸エステルとを接触させる際の圧力は、熱履歴、不活性ガス量及び装置の大きさを考慮して、20kPa 以下が好ましく、14kPa 以下がより好ましく、7kPa 以下が更に好ましい。
【0031】
次に、不活性ガスと接触したリン酸エステルを工程(B)で冷却する。
【0032】
リン酸エステルの冷却は、リン酸エステルの熱分解を十分に抑制する観点から、接触装置の出口で冷却装置を用いてできるだけ速やかに行うことが好ましい。冷却装置には、一般的な熱交換器を用いることができる。冷却装置としては、例えば、多管式、二重管式、スパイラル式、プレート式の冷却装置等が挙げられ、いずれの冷却装置を用いることもできるが、コンパクトで熱交換効率がよいことから、スパイラル式の冷却装置が好ましい。
【0033】
リン酸エステルの冷却温度は、リン酸エステルの熱分解を抑制するために、90℃以下、好ましくは80℃以下、より好ましくは60℃以下である。
【0034】
冷却温度の下限は、リン酸エステルの種類によって異なるので一概には決定することができない。
【0035】
リン酸エステルは、一般に、その温度の低下にしたがって急激に増粘する性質を有している。このようなリン酸エステルの増粘が生じた場合には、冷却装置内で圧力が増大したり、熱交換効率が低下し、さらには閉塞によって運転が困難となるおそれがある。このことから、冷却温度の下限は、リン酸エステルが流動性を保持しうる温度とすることが好ましい。
【0036】
リン酸エステルが流動性を保持しうる温度としては、有機ヒドロキシ化合物の種類によって異なるので、一概には決定することができないが、例えば、炭素数11のアルコールにエチレンオキサイドが平均3モル付加した有機ヒドロキシ化合物のリン酸エステルの場合には、5℃とすることが好ましい。
【0037】
なお、必要以上のリン酸エステルの冷却は、次に工程(A)で加熱する際における熱エネルギーの面から好ましくない。
【0038】
リン酸エステルを所望の温度にまで冷却するのに要する時間は、特に限定されないが、リン酸エステルの熱分解を十分に抑制する観点から、できるだけ短いほうが好ましい。リン酸エステルの温度を所望の温度にまで短時間で低下させる方法としては、冷媒の温度を下げる方法、熱交換器の伝熱面積を大きくする方法等が挙げられ、これらの方法は、それぞれ単独で又は併用することができる。
【0039】
次に、接触装置に供給されるリン酸エステルが受槽に入っている場合には、冷却されたリン酸エステルをすべて接触装置に供給されるリン酸エステルが入っている受槽とは別の受槽に回収した後、再度、前記工程(A)に供するという回分操作で行うことができるほか、接触装置を通過したリン酸エステルを接触装置に供給されるリン酸エステルが入っている受槽に回収しながら回収されたリン酸エステルを前記工程(A)に供するという連続操作で行うこともできる。
【0040】
工程(A)及び工程(B)の操作を上述したように回分操作又は連続操作で行うことにより、リン酸エステルに含有されている有臭成分量を低減することができる。
【0041】
工程(A)と工程(B)の繰り返し回数は、リン酸エステルに含有されている有臭成分量、不活性ガスとの接触条件等によって異なるので一概には決定することができないが、通常、有臭成分量が所望の量以下となるまで繰り返すことが好ましい。通常の場合、工程(A)と工程(B)とを1サイクルとしたときの繰り返し回数は、1〜10回であることが好ましい。
【0042】
次に、本発明のリン酸エステルの製造法を図面に基づいて説明する。図1は、本発明のリン酸エステルの製造法の概略説明図である。
【0043】
図1に示されている方法では、主として、受槽1、フィードポンプ2、加熱部3、充填塔4及び冷却部9で構成されている循環系を利用することにより、リン酸エステルに含まれている有臭成分量を低減することができる。
【0044】
まず、有臭成分が含有されているリン酸エステルを受槽1内に導入する。
【0045】
この受槽1内からフィードポンプ2により、リン酸エステルが加熱部3に導入され、加熱部3でリン酸エステルが所定温度に加熱される。
【0046】
加熱部3で所定温度に加熱されたリン酸エステルは、充填塔4に導入される。充填塔4内では、不活性ガスとリン酸エステルとの接触が行われる。この場合、リン酸エステルは、充填塔4の頂部に配設された導入口5から導入し、重力を利用して下方に落下させることが好ましい。他方、不活性ガスは、充填塔4の下方に配設されたガス導入口6から導入し、充填塔4の上部に配設されている排気口7から排出することが好ましい。このようにリン酸エステル及び不活性ガスを充填塔4内に導入した場合には、両者の接触効率が高められる。
【0047】
なお、リン酸エステルに含まれている有臭成分は、不活性ガスと接触することにより、リン酸エステルから離脱し、不活性ガス中に取り込まれ、排気口7から充填塔4の系外に排出される。
【0048】
また、不活性ガスと接触したリン酸エステルは、充填塔4の下部の排出口8から排出され、冷却部9で所定温度に冷却され、流動性を保ちながら熱分解が十分に抑制された状態となる。連続操作の場合、冷却されたリン酸エステルは、受槽1に導入される。
【0049】
受槽1に回収されたリン酸エステルは、受槽1内にすでに存在しているリン酸エステルと受槽1内で十分に混合されながら、同時にフィードポンプ2を介して充填塔4内に導入され、前記と同様に処理される。回分操作の場合、冷却されたリン酸エステルは受槽10に導入される。受槽10に回収されたリン酸エステルに含有されている有臭成分量が所望量よりも多い場合には、該リン酸エステルは再度、フィードポンプ2を介して充填塔4内に導入され、冷却部9で冷却された後、空となった受槽1に導入される。この操作は、リン酸エステルに含有されている有臭成分量が所望量に低減されるまで繰り返して行われる。
【0050】
かくして有臭成分量が所望量まで低減されたリン酸エステルは、受槽1又は受槽10内からフィードポンプ2を介して回収バルブ11を開くことにより、回収することができる。
【0051】
【実施例】
実施例1
〔リン酸エステルの製造〕
エチレンオキサイドが3モル付加されたウンデシルアルコール(シェル社製、商品名:ネオドール1−3)862.5 g(2.85モル)と、85%リン酸水溶液66.6g(五酸化リン0.288 モル、水1.422 モル相当)とを混合し、温度を40〜50℃に保ちながら五酸化リン162.9 g(1.13モル)を徐々に添加した後、80℃に昇温して12時間反応させた。その後、イオン交換水54.6gをこの反応混合物に添加し、80℃で3時間加水分解を行い、リン酸エステルを得た。
【0052】
得られたリン酸エステルの臭い評価(初期のリン酸エステルの臭い評価)を以下の方法にしたがって調べた。その結果を表1に示す。
【0053】
(臭い評価)
容量が110 mLのガラス製広口規格ビンにリン酸エステル50mLを入れ、専門パネラー1名が直接ビン口の臭いを嗅ぐ。臭いの強さを0〜6(0を無臭とし、6を最も臭いが強いとする)の7段階で評価する。
【0054】
〔工程A(1回目)〕
図1に示されているように、2L容の受槽1及び受槽10と充填塔〔内径50mm、高さ22cm、充填材:住友重機械工業(株)製、商品名:スルザーラボパッキング:4エレメント〕4とが配管で連結された装置を用いた。
【0055】
前記で得られたリン酸エステル500gを受槽1に導入した。この受槽1の底部からのリン酸エステルをフィードポンプ2を介して加熱部3で連続的に130 ℃まで昇温しながら、塔頂における圧力が4kPa となるように制御された充填塔4に流量25g/min で供給するとともに、充填塔4の塔底から水蒸気を流量5g/min で供給することにより、リン酸エステルと水蒸気とを130 ℃、1パス接触時間3分間で向流接触させた後、塔底の排出口8からリン酸エステルを排出した。1パス接触時間は、充填塔4の頂部の導入口5から供給されたリン酸エステルが充填塔4の下部の排出口8から排出されるまでに充填塔4の内部で水蒸気と接触する時間である。
【0056】
〔工程B〕
工程A1回目で排出されたリン酸エステルを冷却部9で連続的に60℃まで冷却して受槽1に戻した。
【0057】
〔工程A(2回目以降)〕
戻したリン酸エステルを受槽1内のリン酸エステルと混合しながら、前記と同様にして受槽1の底部からフィードポンプ2を介して充填塔4へ供給し、リン酸エステルと水蒸気とを130 ℃、1パス接触時間3分間で向流接触させた。
【0058】
工程A2回目以降及び工程Bを繰り返し、工程A1回目の開始時からの繰り返し時間を40分間とした。
【0059】
工程Aにおける受槽1中の初期リン酸エステル全量に対する接触時間である平均接触時間は、6分間であった。また、工程Aを終了した後には、冷却操作を行ったので、130 ℃における平均加熱時間は、平均接触時間と同じ6分間であった。平均接触時間は、式(I):
〔平均接触時間〕
=〔全循環量〕÷〔初期リン酸エステル量〕×〔1パス接触時間〕 (I)
に従って求められる。
【0060】
なお、本実施例では、25g/min で40分間循環させたので、全循環量は1000gであり、初期リン酸エステル量は500 gであった。
【0061】
かくして得られた有臭成分が低減されたリン酸エステルを回収バルブ11から回収し、その臭い評価(処理後のリン酸エステルの臭い評価)を前記と同様にして調べた。その結果を表1に示す。
【0062】
実施例2
実施例1の工程Bにおいて、工程Aで排出されたリン酸エステルを受槽1に戻す代わりにバルブ12を切り換えて受槽10に戻した後、戻したリン酸エステルを受槽10の底部からフィードポンプ2を介して再び充填塔4へ供給した後、受槽1に戻すという回分操作に変えた以外は、実施例1と同様にしてリン酸エステルを得た。
【0063】
得られた有臭成分が低減されたリン酸エステルの臭い評価を実施例1と同様にして調べた。その結果を表1に示す。
【0064】
実施例3
〔リン酸エステルの製造〕
実施例1において、ウンデシルアルコール862.5 g(2.85モル)、85%リン酸水溶液66.6g及び五酸化リン162.9 g(1.13モル)の代わりに、ドデシルアルコール840.0 g(4.516 モル)、85%リン酸77.2g(五酸化リン0.336 モル、水1.644 モル相当)及び五酸化リン251.4 g(1.744モル)を用い、またイオン交換水を添加しなかった以外は、実施例1と同様にしてリン酸エステルを得た。
【0065】
得られた有臭成分が低減されたリン酸エステルの臭い評価を実施例1と同様にして調べた。その結果を表1に示す。
【0066】
〔工程A及び工程B〕
前記で得られたリン酸エステルを用い、実施例1の工程Aにおいて1パス接触時間を3分間から6分間に変更することによって平均接触時間と平均加熱時間をそれぞれ12分間に変更し、また冷却温度を60℃から80℃に変更した以外は、実施例1と同様にしてリン酸エステルを得た。
【0067】
得られた有臭成分が低減されたリン酸エステルの臭い評価を実施例1と同様にして調べた。その結果を表1に示す。
【0068】
実施例4
実施例1の工程Aにおいて、充填塔4に充填する充填材として、不規則充填物〔三協特殊金網化工(株)製、商品名:マクマホンパッキング、外径:6 mm、目開き100 メッシュ(タイラーメッシュ)〕を用いた以外は、実施例1と同様にしてリン酸エステルを得た。
【0069】
得られた有臭成分が低減されたリン酸エステルの臭い評価を実施例1と同様にして調べた。その結果を表1に示す。
【0070】
実施例5
実施例1の工程Aにおいて、充填塔4の代わりに攪拌膜型蒸発機〔神鋼パンテック(株)製、型番:2−03型、伝熱面積:0.03m2、ガラス製〕を用い、工程Aにおいてリン酸エステルと水蒸気との1パス接触時間を2分間に変更することにより、平均接触時間と平均加熱時間をそれぞれ4分間に変更した以外は、実施例1と同様にしてリン酸エステルを得た。
【0071】
得られた有臭成分が低減されたリン酸エステルの臭い評価を実施例1と同様にして調べた。その結果を表1に示す。
【0072】
実施例6
実施例1の工程Aにおいて、充填塔4の代わりに回分式接触装置〔ガラス製、2L容の四つ口フラスコ、吹込管を装備〕を用い、受槽1に導入したリン酸エステルの量を1000g に、接触温度を100 ℃に、圧力を2kPaに、水蒸気を流量12.5g/min で供給することにより、不活性ガス/リン酸エステルの流量比の値を0.5 に、回分式接触装置に供給されたリン酸エステルが排出される間の1パス接触時間を30分間に変更し、工程Aおよび工程Bの繰り返し時間を120 分間に変更することにより、平均接触時間と平均加熱時間をそれぞれ90分間に変更した以外は、実施例1と同様にしてリン酸エステルを得た。
【0073】
得られた有臭成分が低減されたリン酸エステルの臭い評価を実施例1と同様にして調べた。その結果を表1に示す。
【0074】
比較例1
実施例1の工程Bにおいて、リン酸エステルを冷却部9で60℃に冷却させずに130 ℃に維持させた以外は、実施例1と同様にしてリン酸エステルを得た。工程Bにおいてもリン酸エステルの温度が130 ℃であったため、平均加熱時間は、繰り返し時間と同じ40分間であった。
【0075】
得られた有臭成分が低減されたリン酸エステルの臭い評価を実施例1と同様にして調べた。その結果を表1に示す。
【0076】
比較例2
実施例6の工程Bにおいて、リン酸エステルを冷却部9で60℃に冷却させずにその液温を100 ℃に維持させた以外は、実施例6と同様にしてリン酸エステルを得た。工程Bにおいてもリン酸エステルの温度が100 ℃であったため、平均加熱時間は繰り返し時間と同じ120 分間であった。
【0077】
得られた有臭成分が低減されたリン酸エステルの臭い評価を実施例1と同様にして調べた。その結果を表1に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
表1に示された結果から、各実施例によれば、リン酸エステルを加熱した後、不活性ガスと該リン酸エステルとを接触させ、次いで該リン酸エステルを冷却するという操作が繰り返されているので、リン酸エステルに含有されている有臭成分が効率よく除去されることがわかる。
【0080】
【発明の効果】
本発明の製造法によれば、有臭成分量が低減されたリン酸エステルを効率よく容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明のリン酸エステルの製造法の概略説明図である。
【符号の説明】
1 受槽
2 フィードポンプ
3 加熱部
4 充填塔
5 導入口
6 ガス導入口
7 排気口
8 排出口
9 冷却部
10 受槽
11 回収バルブ
12 バルブ
Claims (5)
- (A)接触装置内で、リン酸エステルを100 〜 160 ℃に加熱した後、不活性ガスと該リン酸エステルとを接触させ、該リン酸エステルに含有されている有臭成分量を低減する工程、及び
(B)工程(A)で有臭成分量が低減されたリン酸エステルを前記接触装置の出口で冷却装置を用いて 90 ℃以下に冷却する工程
を繰り返す、有臭成分量が低減されたリン酸エステルの製造法。 - 不活性ガスとリン酸エステルとを20kPa以下の圧力下で接触させる請求項1記載の製造法。
- 工程(A)において、不活性ガスとリン酸エステルとを接触させる際に、前記接触装置として、回分式接触装置、攪拌膜型接触装置又は充填塔を用いる請求項1又は2記載の製造法。
- 工程(A)において、不活性ガスの流量とリン酸エステルの流量との比〔不活性ガスの流量(m3/)/リン酸エステルの流量(kg/h)〕の値が0.1〜3である請求項1〜3いずれか記載の製造法。
- 工程(A)において、不活性ガスが水蒸気である請求項1〜4いずれか記載の製造法。
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