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JP3609395B2 - 哺乳類の不死化肝臓細胞 - Google Patents

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直哉 小林
フィリップ レブルシュ
紀章 田中
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Description

【0001】
[本発明の分野]
本発明は、哺乳類の不死化肝臓細胞に関する。さらに詳細には、本発明は、遺伝子工学的手法を用いて得られる哺乳類の不死化肝臓細胞に関する。
【0002】
[本発明の背景]
肝移植は、代謝性肝疾患や肝不全の患者に利用できる唯一の治療法である。しかしながら、その治療は、ドナー肝の不足、手術リスクに伴う無視できぬ術後死亡率、高費用、および長期に及ぶ免疫抑制剤の使用などの問題を抱えている。近年、分離肝臓細胞の移植や生きた肝臓細胞を使用したバイオ人工肝臓が、肝移植または肝臓再生までのつなぎとして期待されている。分離肝臓細胞移植やバイオ人工肝臓の利点としては、肝移植手術に比べ経済的であること、リスクが少ない点などが挙げられる。しかしながら、分離肝臓細胞の移植やバイオ人工肝臓においても、やはりドナー肝の不足のため、臨床使用が制限されている。
【0003】
分離肝臓細胞の代用として、インビトロで大量に増殖でき、分離肝臓細胞の性質を保持し、さらに移植後に代謝補助を提供できる肝臓細胞株が含まれる。大量増殖可能でかつ高度な肝機能を有する肝臓細胞株の樹立および細胞株バンクの発達は、必要時に必要量の肝臓細胞の移植を可能としドナー肝の不足を解消し得るものと期待されている。
【0004】
癌遺伝子を導入する細胞の不死化により、適度な分化機能を保持した細胞株を産出できることが知られている(ケイ エイ ウェスタマン(K. A. Westerman)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA.第93巻、8971頁、1996年)。しかしながら、不死化細胞株を、生体内に注入することにより、またはバイオ人工肝臓などの体外循環補助装置に使用することにより、予期せぬ癌化の危険性に患者を曝す可能性がある。異種動物の細胞や非適合の同種のヒトの細胞を用いたとしても移植細胞が最終的に拒絶される保証はない。異種動物細胞との安定なキメラ状態やHLA非適合の同種腫瘍の偶発的な生着がヒトにおいて報告されている(ガートナー(Gartner)ら、N.Eng.J.Med.第335巻、1494頁、1996年;ケイ パラディス(K. Paradis)ら、Science、第285巻、1236頁、1999年)。したがって、安全性の高い肝臓細胞を容易にかつ大量に入手できることが望まれている。
【0005】
しかしながら、従来の培養技術では、安全性の高い肝臓細胞を大量に増殖させることは困難であった。
【0006】
本発明の目的は、前記のような点に鑑みて、最終的に多数の安全性の高い肝臓細胞が得られるように特に設計された、無限に増殖可能な哺乳類の不死化肝臓細胞を提供することにある。
【0007】
[発明の開示]
本発明者らは、前記問題点に鑑み鋭意検討を重ねた結果、細胞増殖因子(cell proliferation factor)遺伝子を哺乳類の肝臓細胞に導入することにより、大量増殖が可能な哺乳類の不死化肝臓細胞(または不死化肝臓細胞株)を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、インビトロにて、哺乳類の肝臓細胞に一対の部位特異的組換え配列に挟まれた細胞増殖因子遺伝子を導入することにより得られる不死化肝臓細胞を提供する。
【0009】
前記不死化肝臓細胞において、哺乳類の肝臓細胞がヒトの肝臓細胞であることが好ましく、さらに該ヒトの肝臓細胞がヒトの成人の肝臓細胞であることが好ましい。
【0010】
前記不死化肝臓細胞において、細胞増殖因子遺伝子がhTERT(ヒトテロメラーゼ逆転写酵素)遺伝子であることが好ましく、さらに該細胞増殖因子遺伝子がレトロウイルスベクターを用いて導入されることが好ましい。
【0011】
また、前記不死化肝臓細胞において、一対の部位特異的組換え配列がLoxP配列であることが好ましく、また、一対の部位特異的組換え配列の間にさらにGFP(緑色蛍光タンパク質)遺伝子がコードされていることが好ましい。
【0012】
また、前記不死化肝臓細胞が無血清培地で培養されることが好ましい。
【0013】
さらに、本発明は、前記インビトロ不死化肝臓細胞を含有する人工肝臓を提供する。
【0014】
本発明は、前記インビトロ不死化肝臓細胞を含有する肝疾患治療剤を提供する。
【0015】
本発明は、前記インビトロ不死化肝臓細胞を含有する薬物代謝検定モデル、および肝炎ウイルスの感染モデルを提供する。
【0016】
そのうえ、本発明は、哺乳類の肝臓細胞に一対の部位特異的組換え配列に挟まれた細胞増殖因子遺伝子を導入することにより得られるインビトロ不死化肝臓細胞であって、凝固因子を産生するインビトロ不死化肝臓細胞を提供する。
【0017】
本発明はまた、哺乳類の肝臓細胞に一対の部位特異的組換え配列に挟まれた細胞増殖因子遺伝子を導入することにより得られるインビトロ不死化肝臓細胞であって、アルブミンを産生するインビトロ不死化肝臓細胞を提供する。
【0018】
さらに本発明は、薬剤誘導性プロモーターの下流に部位特異的組換え酵素をコードするDNA配列が染色体に組み込まれた前記インビトロ不死化肝臓細胞を提供する。
【0019】
[発明を実施するための最良の形態]
本発明で用いられる哺乳類の肝臓細胞としては、たとえば豚、猿、類人猿、ヒトの肝臓細胞などである。その中でもヒトの肝臓細胞が好ましく、ヒトの成人肝臓細胞が最も好ましい。ヒトの胎児肝臓細胞もまた応用可能である。本明細書に記載される用語「肝臓細胞」とは、たとえば肝機能の指標であるアルブミンや様々な血液凝固因子などのタンパク質の産生能、糖新生能、尿素産生能、血液の解毒および浄化能、ならびに、アミノ酸、糖質、および脂質代謝能を有する細胞を意味する。具体的には、肝細胞、肝類洞内皮細胞、肝星状細胞、肝ピット細胞およびクッパー細胞などがあげられる。
【0020】
本発明に使用される細胞増殖因子遺伝子は正常細胞から提供され、導入されることにより哺乳類の肝臓細胞を不死化できるものである。該細胞増殖因子遺伝子の産物は、正常細胞の細胞増殖およびシグナル伝達に基本的に関与するものである。その具体例としては、増殖因子として機能するもの、細胞膜に存在しチロシンキナーゼ活性を有するもの、細胞膜内側に存在しGTPと結合するもの、細胞質に存在しセリン/トレオニンキナーゼ活性を有するもの、核内に存在しDNAに結合能を有するものが含まれる。該細胞増殖因子遺伝子としては、ラス遺伝子、myc遺伝子、hTERT遺伝子などがある。hTERT遺伝子の発現は、血液、皮膚、腸管粘膜、子宮内膜などの、生涯にわたり再生を繰り返している臓器の幹・前駆細胞、および特定の抗原に暴露するたびにクローン増殖しているリンパ球において自然と発現増強しているため、hTERT遺伝子が好ましい。
【0021】
本発明において、細胞増殖因子遺伝子を哺乳類の肝臓細胞に導入するためにレトロウイルスベクターが用いられる。レトロウイルスベクターは、動物細胞に対する外来遺伝子導入手段として利用され、導入された遺伝子は、宿主細胞の染色体DNAに組み込まれるために遺伝子は確実に嬢細胞に受け継がれ、組み込まれた遺伝子は長期の安定した発現が可能である。
【0022】
レトロウイルスベクターの導入方法としては、インビボでは静脈内投与、腹腔内投与、門脈内投与および直接穿刺による投与、インビトロでは培養細胞へのレトロウイルスベクターの直接播種による方法などが知られている。門脈内投与および直接穿刺による投与ならびに培養細胞への直接播種による方法が好ましい。
【0023】
レトロウイルスベクターを培養細胞に直接播種することによって培養細胞にレトロウイルスベクターを導入する方法としては、本発明の目的を達成するものであればどのような方法でも用いることができる。たとえば、レトロウイルスベクター産生細胞を培養し、その培養上清を、別途培養中の肝臓細胞に播種することにより導入を達成することもできる。各細胞の培養条件および播種濃度など種々の条件は、当該技術分野で周知の方法で決定することができる。
【0024】
また、培養細胞への播種回数は、細胞への影響、たとえば染色体の安定性を考えると、1回のみが好ましい。しかしながら、該ベクターの導入効率を考慮すると、細胞への播種回数は多い方が好ましい。これらのことから、本発明では、4時間感染を1日に2回、計3日間実施することが最も好ましい。
【0025】
さらに本発明で用いられる細胞増殖因子遺伝子は、肝臓細胞に導入されたプロウイルスからのちに該遺伝子を切り出し可能なように一対の部位特異的組換え配列に挟まれている。「部位特異的組換え配列」とは、部位特異的組換え酵素によって認識される特異的な塩基配列であり、この配列間でDNA鎖の切断、鎖の交換、および結合が起こる。
【0026】
部位特異的組換え配列としては、LoxP配列およびFRT配列などがある。それらの中でも、LoxP配列が好ましい。LoxP配列は、Cre組換え酵素により相同組換えを単独に行うための「ATAACTTCGTATAGCATACATTATACGAAGTTAT」の34塩基から成る配列である。同一のDNA分子上に同方向の一対のLoxP配列が存在する場合は、その間に挟まれたDNA配列が切り出されて環状分子となる(切り出し反応)。異なるDNA分子上にそれぞれ一対のLoxP配列が存在し、DNA分子のそれぞれおよびその一方が環状DNAである場合はLoxP配列を介して環状DNAが他方のDNA分子上に挿入される(挿入反応)。
【0027】
さらに本発明において、細胞増殖因子遺伝子を哺乳類の肝細胞に導入する際には、常に同時にGFP遺伝子などの選択マーカーが、一対の部位特異的組換え配列間に存在する必要がある。「一対の部位特異的組換え配列間」とは、一対の部位特異的組換え配列に挟まれた位置を意味する。該GFP遺伝子は、レトロウイルスベクターが感染し、プロウイルスがゲノムに組み込まれた肝臓細胞をFACS(蛍光活性化セルソーター)にて選択的に同定するために用いられる。よって、プロウイルスがゲノムに組み込まれた肝臓細胞が同定されれば、GFP遺伝子の代わりに薬剤耐性遺伝子を用いてもよい。
【0028】
該薬剤耐性遺伝子の例としては、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、大腸菌gpt遺伝子などがあり、とくにそれらに限定されない。
【0029】
本明細書に記載される「不死化肝臓細胞」とは、腫瘍原性が無く、正常肝臓細胞に近い形態を呈し、肝特異的機能を比較的保持し、特別な培養条件を必要とせず短期間に増殖する特徴を有する細胞を意味する。
【0030】
該不死化細胞の培養は、増殖速度が速いことが好ましい。しかし、容器の取り扱いが容易であるという点から、コラーゲンなどによる培養容器表面の特別なコーティングを必要としないことがさらに好ましい。該不死化細胞の倍化時間は24〜72時間であり、好ましくは24〜48時間、さらに好ましくは24〜36時間である。培養培地としては、人畜共通感染症を回避するために、ウシなどの動物由来の血清が添加されていない無血清培地が好ましい。不死化細胞が機能的にもアルブミンの産生量を増加させることから無血清培地が好ましい。CS−C培地がより好ましく、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で2ないし3倍に希釈されたCS−C培地を用いてもよい。
【0031】
本発明の不死化細胞は、導入された細胞増殖因子遺伝子を部位特異的組換え酵素により除去できる可逆的な不死化細胞である。部位特異的組換え酵素は、部位特異的組換え配列を特異的に認識し、切断、結合からなる相同組換えを単独で行う酵素である。部位特異的組換え酵素としては、Cre組換え酵素やFLP組換え酵素などがある。それらの中でも、Cre組換え酵素が好ましい。Cre組換え酵素はLoxP配列を特異的に認識する酵素である。
【0032】
部位特異的組換え酵素は、アデノウイルスおよびプラスミドベクターなどの発現ベクターによってコードされることができる。あるいは、部位特異的組換え酵素は、ヒト免疫不全ウイルスI型由来のTATタンパク質(Green, M. and Loewenstein, P. M., Cell 55, p179−1188, 1988: Frankel, A. D. and Pabo, C. O., Cell 55, p1189−1193, 1988: Nagahara, H. et al., Nat. Med. 1988, 4, 1449−1452)に融合されてもよい。TATタンパク質はタンパク質導入ドメイン(protein transudation domain)を有しているため、融合タンパク質を培養培地に添加することにより、本発明の不死化細胞内で部位特異的組換え反応が起こる。アデノウイルスは細胞傷害性である。そのようなリスクを回避するための目的において、部位特異的組換え酵素はアデノウイルスベクター以外の発現ベクターにコードされるか、またはTATタンパク質に融合されることが好ましい。
【0033】
本発明で用いられる発現ベクターは、部位特異的組換え酵素をコードする配列を含有するものである限り、とくに限定されない。部位特異的組換え酵素に対するプロモーターとしては、薬剤誘導性プロモーターが好ましい。本明細書において「薬剤誘導性プロモーター」は、薬剤を添加することにより遺伝子発現を誘導するプロモーターを意味する。薬剤誘導性プロモーターと部位特異的組換え酵素の両方を含有する発現ベクターが染色体に組み込まれた不死化肝臓細胞株を樹立すれば、ウイルスの感染効率を考慮する必要がない。そのような細胞株を用いた場合、部位特異的組換え酵素の発現時期は任意に設定できる。
【0034】
前記薬剤誘導性プロモーターはとくに限定されるものではなく、テトラサイクリン誘導性プロモーターおよびタモキシフェン誘導性プロモーターなど、公知のプロモーターを使用することができる。これらの薬剤誘導性プロモーターは、当業者により適宜選択され得る。
【0035】
したがって、本発明の不死化細胞は、TERT遺伝子配列に加え、薬剤誘導性プロモーターの下流に部位特異的組換え酵素をコードするDNA配列が染色体に組み込まれた不死化細胞であることが好ましい。
【0036】
本発明の不死化肝臓細胞は、ヒトの肝臓の薬物代謝検定モデルとして利用可能である。環境汚染または薬剤使用時に人体への影響が問題となる毒性物質および発癌性物質の代謝経路は、ヒトと動物では異なる。これまで、薬剤を含む化学物質の毒性および発癌性ならびに体内での代謝経路の検定はラット、イヌまたはブタなどの実験動物を用いて検討されてきた。しかしながら、ヒトと実験動物との化学物質の代謝経路の違いは明らかであるので、動物実験でのデータをヒトに当てはめるには慎重でなけらばならない。また、近年の動物愛護の立場より、できるだけ動物を用いた研究は控え、ヒトの病態変化はヒトで研究されるという研究手段の開発が重要な課題となっている。本発明の不死化肝臓細胞は、高度に肝機能を発現しており、実験動物の代わりでなくよりヒト肝機能に近づいた新しい薬物代謝検定モデルとして大きな意義を有する。具体的には、1)肝臓での薬物の代謝系の解析、2)薬物の相互作用の検討、3)肝臓における薬物からの変異原性物質産生の検定などに利用される。
【0037】
また、本発明の不死化肝臓細胞は創薬にも利用できる。ヒト由来不死化肝臓細胞株の大量培養により、生理活性物質の大量産生が可能となる。これらの産生物は、遺伝子操作による酵母、大腸菌、またはクローン動物により産生される生理活性物質より除去しにくい夾雑物をあまり含まず、容易に単離される。創薬の応用例としては、各種の血液凝固因子、アルブミンなどの産生を含む。
【0038】
さらに、本発明の不死化肝臓細胞はヒト肝炎ウイルスの感染モデルとしても利用できる。ヒトB型肝炎ウイルス(HBV)およびヒトC型肝炎ウイルス(HCV)の全容はいずれも明らかに成りつつあるが、未だにウイルス本体は確認されていない。これは、インビトロの培養系が未だに確立されていないためであり、たとえばウイルスの複製、粒子形成、変異といった生物学及び発癌機構の解明などの基礎的研究の大きな障害となっている。本発明の不死化肝臓細胞を用いてHBVおよびHCVの感染実験系を確立し、ついで感染の機構および予防ならびに治療の方策をたてる基礎実験の系を確立することも可能である。
【0039】
本発明の肝疾患用の治療剤は、細胞増殖因子遺伝子を哺乳類の肝臓細胞に導入して得られる肝臓細胞を含有する。肝疾患用の治療剤は、他に肝臓細胞を保護するために、電解質、アミノ酸および糖質を含んでもよい。本発明における「肝疾患」としては、たとえばウイルス、薬剤、そして中毒(キノコ等)による急性肝不全などの肝不全、血友病、α1−抗トリプシン欠損症、ガラクトース血症、肝腎性チロシン血症、カエデシロップ尿症、糖原病1a型、肝性ポルフィリン症、低ベータリポ蛋白血症、高コレステロール血症、原発性高シュウ酸尿症1型、クリグラー−ナジャー症候群1型、高フェニルアラニン血症などの代謝性肝疾患、慢性肝疾患の急性増悪などが含まれる。本発明の治療剤は、肝不全および代謝性肝疾患の治療に用いられることが好ましい。
【0040】
本発明の治療剤の投与経路としては、門脈内持続点滴投与、脾動脈内持続点滴投与または腹腔内移植が好ましく、門脈内持続点滴投与、脾動脈内持続点滴投与がさらに好ましく、門脈内持続点滴投与がもっとも好ましい。治療剤の投与量は少なくとも1×1010細胞であり、1.5×1010細胞が好ましく、2.0×1010細胞がさらに好ましい。
【0041】
本発明の人工肝臓は、哺乳類の肝臓細胞に細胞増殖因子遺伝子を導入し、得られた不死化細胞を増加させることにより得られる不死化肝臓細胞からなる。本明細書における「人工肝臓」とは、マイクロ孔質糖マイクロキャリヤーまたは毛管やセラミックのような他の生体適合性支持マトリックス系を基盤とした機能的不死化肝臓細胞の集合体がグルコースや尿素を新生し、肝性脳症の原因物質であるアンモニア等を速やかに解毒すると共に患者のアミノ酸異常を是正するといった適確な肝機能の再現が行える体外循環肝補助装置として定義される。
【0042】
前記人工肝臓においては、少なくとも、CYP3A4およびCYP2C9を発現する不死化肝細胞を用いることが好ましい。CYP3A4およびCYP2C9は、薬物の代謝酵素でありチトクロームP450関連酵素である。また、本発明により、不死化肝細胞のCYP3A4およびCYP2C9発現が、不死化肝星状細胞との共培養により増強されることが初めて示された。したがって、人工肝臓を製造する際には、不死化肝細胞とともに不死化肝星状細胞を用いることが好ましい。使用する肝細胞の不死化細胞株としては、TTNT−1(産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、受託番号FERM BP−7498)がとくに好ましい。使用する不死化肝星状細胞としては、TWNT−1(産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、受託番号FERM BP−7843)がとくに好ましい。不死化肝星状細胞株TWNT−1はCYP3A4およびCYP2C9を発現しない。しかしながら、TWNT−1は不死化肝細胞とともに培養されると、不死化肝細胞により発現されるCYP3A4およびCYP2C9を増加させることができる。不死化肝細胞と不死化肝星状細胞の割合としては、10:1〜1:1が好ましく、10:1〜5:1がさらに好ましい。とくに、生体内における肝細胞と不死化肝星状細胞の割合が9:1であることから、不死化肝細胞と不死化肝星状細胞の使用割合を9:1とすることが最も好ましい。
【0043】
本発明の人工肝臓においてはマイクロキャリアーを含有してもよい。マイクロキャリアーは、不死化肝臓細胞の基質として単位面積当たりの培養不死化肝臓細胞総数を増加させるのに有用である。マイクロキャリアーは、球型のデキストラン、多孔質樹脂またはコラーゲンミクロスフィアが好ましい。
【0044】
くわえて、生体適合性に優れたセルロースビーズが好ましく、細胞接着性ペプチドを付着させたセルロースビーズがより好ましい。細胞接着性ペプチドとしては、GRGDSおよびRGDS(G:グリシン、R:アルギニン、D:アスパラギン酸、S:セリン)などのアミノ酸配列が挙げられ、RGDのアミノ酸配列が含まれる限り特に限定されない。
【0045】
コラーゲンミクロスフィアのなかでもコラーゲンのフィブリンのみからなるコラーゲンミクロスフィアが、生体内に類似した培養環境を作ることができるため、最も好ましい。
【0046】
本発明においては、不死化肝臓細胞の付着占拠率を考えると、細胞接着性ペプチドを表面に付着させたセルロースビーズ、およびコラーゲンのフィブリンのみからなるコラーゲンミクロスフィアが好ましい。コラーゲンのフィブリンのみからなるコラーゲンミクロスフィアは、ウシ真皮をペプシンで処理し、可溶化し、精製し、ついでビーズ状に成形することにより製造することができる。細胞接着性ペプチドを表面に付着させたセルロースビーズでは、不死化肝臓細胞の付着占拠率は80〜90%であり、コラーゲンのフィブリンのみからなるコラーゲンミクロスフィアでは、不死化肝臓細胞の付着占拠率はほぼ100%である。したがって、コラーゲンのフィブリンのみからなるコラーゲンミクロスフィアが最も好ましい(図4(a)および図4(b)参照)。
【0047】
本発明の人工肝臓は、前記不死化肝臓細胞を内蔵するための容器を含んでもよい。容器としては、ホローファイバー型、平板状に培養不死化肝臓細胞をモジュール内に積み上げた積層型、不織布充填型などが挙げられ、細胞密度が高く、機能的に長期間の培養維持が可能であれば、特に限定されない。
【0048】
本発明の人工肝臓は、さらに導管を有してもよい。患者の血液から有害物質を含む血漿の一部が血漿分離装置によって分離さる。分離された血漿は導管をとおしてバイオ人工肝臓モジュール側回路へ移動し、バイオ人工肝臓モジュールで有害物質が解毒され、グルコースやその他の物質の新生が行われる。処理された血漿を患者体内へと導くために導管を使用してもよい。導管はバイオ人工肝臓モジュール内の培養不死化肝臓細胞への酸素供給のためにガス交換装置や活性炭カラム等を直列に連結するために用いる。バイオ人工肝臓モジュールとは、患者側からの血漿流入部路と処理された血漿が患者側に導かれる流出路を有するものであれば、特に限定されない。
【0049】
以下、実施例および比較例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
製造例1
レトロウイルスベクターSSR#197の製造
レトロウイルスベクターSSR#197(図1参照)は、従来の方法(ケイ エイ ウェスタマンら、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA.93巻、8971頁、1996年)にしたがい、具体的には以下の方法にて製造した。
【0051】
1. LXSNレトロウイルスをEcoRIとRsr2で消化した。バックボーンベクター由来のEcoR1を変異させたのち、制限部位(Not1、BamH1、Hind3、EcoR1、Hpa1、Sal1、Sfi1、Cla1およびRsr2)を含有するポリリンカーを挿入した。合成した511LoxP配列を、得られたベクターのNot1/Hind3部位に挿入した。hTERT遺伝子はEcoR1/Sal1部位に挿入した。
【0052】
2. IRES−GFP、511LoxP配列およびB型肝炎転写後調節因子(ティー エス エン(T. S. Yen)、Mol Cell Biol.、1995年)を含有するカセットベクターを、以下のようにして製造した。
【0053】
pUC19をEcoRIとHind3で消化した。バックボーンベクター由来のEcoR1を変異させたのち、制限部位(Xho1、Sal1、EcoRV、Not1、Hpa1、Hind3、EcoR1、Cla1、Sfi1およびHind3)を含有するポリリンカーを挿入した。合成した511LoxP配列を、得られたベクターのNot1およびHind3部位に挿入した。ついで、pCITE−Novagen(ノバゲン社(Novagen)製)由来のIRESとEGFP遺伝子(クロンテク社(Clontech Inc)製)とがNco1部位で連結され、一方の末端がSal1部位、他方の末端が平滑にしたCla1部位である断片を製造した。この断片をバックボーンベクターのSal1および平滑にしたBgl2部位に挿入した。
【0054】
3. 前記工程1で製造したベクターのSal1およびCla1部位に、前記工程2で製造したカセットベクター由来のXho1およびCla1断片を挿入し、SSR#197ベクターを完成させた。
【0055】
実施例1
不死化ヒト成人肝細胞株TTNT−1の樹立
レトロウイルスベクターSSR#197産生細胞であるCrip細胞(Crip細胞のレトロウイルスベクターSSR#197産生能力、すなわち力価は、1×10cfu/ml)を、T−75フラスコに1×10細胞/cmで播種し、15mlのDMEM+10%NCS(新生仔ウシ血清)培養液で培養した。細胞密度が約90%となった時点で、培養液をDMEM+10%NCS培養液10mlに交換した。
【0056】
培養液交換24時間後に、レトロウイルスベクターSSR#197を含有するCrip細胞上清2mlを0.45μmのフィルターで濾過することにより得た液に12μg/mlのポリブレン(polybrene)(シグマ(Sigma)社製)を加えた。得られた液を、継代数1の成人ヒト肝細胞(大日本製薬株式会社製、カタログ番号CS−ABI−3716)1×10個が培養された培養液と交換し、4時間感染させた。同様な感染処置を1日に2回、計3日間施行した。各日の最終感染後は、培養液を新鮮なCS−C培養液に交換して肝細胞を培養した。
【0057】
最終感染後2日後に細胞をトリプシンにて処理し、回収した。FACSカリバー(FACS Calibur)(ベクトンディッキンソン社(Becton Dickinson)製)を用いてGFP陽性細胞を回収した(図2(a)および図2(b)参照)。CS−C無血清培地キット(大日本製薬株式会社、カタログ番号CS−SF−4ZO−500)を用いて、限界希釈法(1/2細胞/穴で播種)にてTTNT−1を樹立した。TTNT−1細胞は寄託された(受託番号FERM BP−7498)。TTNT−1細胞は、増殖が停止する危機もなく不死化し、CS−C培地において単層に増殖し、約24時間でその数が倍加した。TTNT−1細胞は、数個の核小体を有する大きな核をもち細胞内顆粒に富んだ、肝臓の実質細胞の形態学的な特徴を示した。
【0058】
実施例2
不死化ヒト成人肝細胞株における遺伝子発現
RT−PCR法により、TTNT−1細胞において肝臓代謝に重要な遺伝子、すなわち、ビリルビン−UGT遺伝子、CYP3A4遺伝子、GK遺伝子、GS遺伝子、GST−π遺伝子およびヒトβ−アクチン遺伝子、ならびにhTERT遺伝子の発現を調べた。
【0059】
RT−PCR法では、RNAzol(シンナ/バイオテックス社(Cinna/Bio Tecx)製、フレンズウッド、テキサス州、アメリカ合衆国)を用いてTTNT−1細胞からRNAを抽出し、2μgの総RNAを22℃で10分間、さらに42℃で20分間、RNA逆転写酵素を用いて逆転写反応させた。
【0060】
得られた2μgの逆転写産物を、各プライマー20pmol/mlおよびAmpliTag Goldキット(アプライドバイオシステムズ社(Applied Biosystems)製、CA、アメリカ合衆国)を用い、そのプロトコールにしたがってPCR増幅を行なった。PCRは、95℃で10分間インキュベーションしたのち、95℃で30秒、60℃で30秒および72℃で30秒のインキュベーションを35サイクル行ない、最後に72℃で7分間インキュベーションして実施した。各遺伝子に対するプライマーには下記のものを使用した。
【0061】
ビリルビン−UGT遺伝子
5′プライマー:ATGACCCGTGCCTTTATCAC
3′プライマー:TCTTGGATTTGTGGGCTTTC
CYP3A4遺伝子
5′プライマー:CCAAGCTATGCTCTTCACCG
3′プライマー:TCAGGCTCCACTTACGGTGC
GK遺伝子
5′プライマー:ATCAAACGGAGAGGGGACTT
3′プライマー:AGCGTGCTCAGGATGTTGTA
GS遺伝子
5′プライマー:ATGCTGGAGTCAAGATTGCG
3′プライマー:TCATTGAGAAGACACGTGCG
GST−π遺伝子
5′プライマー:GCCCTACACCGTGGTCTATT
3′プライマー:GGCTAGGACCTCATGGATCA
hTERT遺伝子
5′プライマー:CTGACCAGGGTCCTATTCCA
3′プライマー:TGGTTATCCCAAGCAAGAGG
ヒトβ−アクチン遺伝子
5′プライマー:TGACGGGGTCACCCACACTGTGCCCATCTA
3′プライマー:CTAGAAGCATTTGCGGTGGACGATGGAGGG
TTNT−1細胞では、上記いずれの遺伝子の発現も認められた(図3参照)。
【0062】
実施例3
不死化ヒト成人肝星状細胞TWNT−1の樹立
継代数1の成人ヒト肝細胞(カタログ番号CS−ABI−3716、大日本製薬株式会社製)1×10個の代わりに1×10個のヒト肝星状細胞株LI90を用いたほかは実施例1と同様にして、TWNT−1を樹立した。LI90は、日本国東京都港区西新橋3−19−18の松浦先生より万人に提供され得る。TWNT−1細胞を寄託した(FERM BP−7843)。TWNT−1細胞は、紡錘形で細胞内に脂肪滴を含んだ、肝臓の星状細胞の形態学的な特徴を示した。
【0063】
実施例4
マイクロキャリアーへのTTNT−1細胞の付着
1×10細胞個のTTNT−1細胞を50ml容積のスピンナーフラスコ(カタログ番号1967−00050、ベルコガラス社(BELLCO GLASS, Inc.)製)に播種し、25mlのCS−C培地にて培養した。培養は、4ポジションマグネチックスターラー(4 Position Magnetic Stirrer)(モデル1104S、和研薬株式会社)を用いて、95%酸素、5%二酸化炭素および37℃に設定したCOガスインキュベータ(シリーズ5300、和研薬株式会社)の中で24時間旋回培養した。
【0064】
図4(a)は、コラーゲンのフィブリンのみからなるコラーゲンミクロスフィア(商品番号KO−0000−01、フナコシ社製)に付着した不死化肝臓細胞の顕微鏡像である。図4(a)中、コラーゲンのフィブリンのみからなるコラーゲンミクロスフィア1は不死化肝臓細胞2に完全に覆われているのが認められる。図4(b)は、細胞接着性ペプチドを付着させたセルロースビーズ(株式会社クラレ製)に付着した不死化肝臓細胞の顕微鏡像である。図4(b)中、細胞接着性ペプチドを付着させたセルロースビーズ3は、(a)より低い占拠率で不死化肝臓細胞2により覆われており、かつ、細胞の付着していないビーズ表面4が観察される。
【0065】
実施例5
腫瘍形成試験
1.0×10個のTTNT−1を重症複合型免疫(SCID)マウスの皮下に移植した。また、ポジティブコントロールとして、1.0×10個のヒト肝臓癌由来のPLC/PRF/5細胞を、同じマウスの皮下に移植した。PLC/PRF/5細胞は、東北大学医学加齢研究所(日本国宮城県仙台市青葉区星陵町4−1)により万人に提供され得る細胞である。その結果、TTNT−1は、移植の1ヵ月後において、腫瘍を形成しなかった(図5の矢印5)。一方、移植の1週間後に腫瘍が肉眼で観察され、移植の1ヵ月後には約3cmの大きさの腫瘍が観察された(図5の矢印6)。したがって、TTNT−1は極めて安全であることが示された。
【0066】
実施例6
TTNT−1とTWNT−1との共培養
1.8×10個のTTNT−1と0.2×10個のTWNT−1とを混合し、その混合物を直径10cmのシャーレに播種して、10mlのCS−C培地で培養した。培養は、95%酸素、5%二酸化炭素および37℃に設定したCOインキュベータ(シリーズ5300、和研薬株式会社)の中で1週間実施した。コントロールとして、1.8×10個のTTNT−1のみを同様の方法で培養した。
【0067】
共培養の結果、肝小葉様の構造が観察された。TTNT−1およびTWNT−1細胞を1週間共培養したのち細胞の位相差顕微鏡像を観察した。図6において、矢印7はTTNT−1を示し、矢印8はTWNT−1を示す。
【0068】
次に、培養した細胞を氷上でPBS(リン酸緩衝生理食塩水)ですすぎ、スクレイパーを用いて回収し、ついで遠心(3000rpm、3分間)して沈殿させた。上清を除いた。得られたペレットに約3倍量の細胞溶解液(150mM NaCl、5mM EDTA、1% Triton X−100、1mM DTT、10μg/ml ロイペプチン、10μg/ml アプロチニン、200μg/ml フェニルメタンスルホニルフルオリド、10mM Tris、pH7.3)を添加した。得られた混合物液をピペッティングにより混ぜ、得られた懸濁液を氷上で10分間放置した。懸濁液を遠心(15000rpm、20分間)し、不溶性タンパク質を沈殿させることにより、上清を回収した。ついで、上清に含まれるタンパク質30μgを用い、通常の方法でウェスタンブロットを実施した。ついで、ウェスタンブロットにおいて検出されたアクチンに対するCYP3A4の比を、NIH画像ソフトを用いて得た。NIH画像ソフトは、NIHのホームページで無料で配布されている。また、ウェスタンブロットにおいて検出されたアクチンに対するCYP2C9の比についても同様にして得た。アクチンは、内因性のコントロールとして用いた。その結果を図7(a)および図7(b)に示す。図7(a)は、TTNT−1とTWNT−1との共培養では、CYP3A4の発現量がコントロールに対して1.9倍増加したことを示す。図7(b)は、共培養ではCYP2C9の発現量がコントロールに対して1.5倍増加したことを示す。
【0069】
[産業上の利用可能性]
インビトロにて哺乳類の肝臓細胞に一対の部位特異的組換え配列に挟まれた細胞増殖因子遺伝子を導入することにより、インビトロ不死化肝臓細胞を得ることができる。本願発明のインビトロ不死化肝臓細胞は、人工肝臓に有用である。さらに、本願発明のインビトロ不死化肝臓細胞は、肝疾患治療剤、薬物代謝検定モデル、ヒト肝炎ウイルスの感染モデルとしても有用である。そのうえ、本願発明のインビトロ不死化肝臓細胞は、凝固因子および/またはアルブミンの製造に用いることができる。
【0070】
[配列表フリーテキスト]
配列番号1:LoxP配列
配列番号2:ビリルビン−UGT遺伝子を検出するためのポリメラーゼ連鎖反応用5′プライマー
配列番号3:ビリルビン−UGT遺伝子を検出するためのポリメラーゼ連鎖反応用3′プライマー
配列番号4:CYP3A4遺伝子を検出するためのポリメラーゼ連鎖反応用5′プライマー
配列番号5:CYP3A4遺伝子を検出するためのポリメラーゼ連鎖反応用3′プライマー
配列番号6:GK遺伝子を検出するためのポリメラーゼ連鎖反応用5′プライマー
配列番号7:GK遺伝子を検出するためのポリメラーゼ連鎖反応用3′プライマー
配列番号8:GS遺伝子を検出するためのポリメラーゼ連鎖反応用5′プライマー
配列番号9:GS遺伝子を検出するためのポリメラーゼ連鎖反応用3′プライマー
配列番号10:GST−π遺伝子を検出するためのポリメラーゼ連鎖反応用5′プライマー
配列番号11:GST−π遺伝子を検出するためのポリメラーゼ連鎖反応用3′プライマー
配列番号12:hTERT遺伝子を検出するためのポリメラーゼ連鎖反応用5′プライマー
配列番号13:hTERT遺伝子を検出するためのポリメラーゼ連鎖反応用3′プライマー
配列番号14:ヒトβ−アクチン遺伝子を検出するためのポリメラーゼ連鎖反応用5′プライマー
配列番号15:ヒトβ−アクチン遺伝子を検出するためのポリメラーゼ連鎖反応用3′プライマー
配列番号16:細胞接着性ペプチド
配列番号17:細胞接着性ペプチド
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
【図1】図1はレトロウイルスベクターSSR#197を示す図である。ここで、ATGは開始コドン、Ψはパッケージングシグナル、LoxPはLoxP配列、hTERTはhTERT遺伝子、EGFPは増強GFP遺伝子、MoMLV LTRはモロニーマウス白血病ウイルス長末端反復、IRESは脳心筋炎ウイルス内リボゾームエントリー部位をそれぞれ示す。
【図2a】図2(a)はレトロウイルスベクターSSR#197に感染した肝細胞の位相差顕微鏡像である。
【図2b】図2(b)は図2(a)に示した細胞の蛍光顕微鏡像である。
【図3】図3は、TTNT−1細胞における肝特異的遺伝子およびhTERT遺伝子の発現を示す。レーン1から7は、それぞれ肝臓性ビリルビン−ウリジンジフォスフェートグルクロノシルトランスフェラーゼ(以下、ビリルビン−UGTという)遺伝子、チトクローム P 450 3A4(以下、CYP3A4という)遺伝子、グルコキナーゼ(以下、GKという)遺伝子、グルタミンシンセターゼ(以下、GSという)遺伝子、グルタチオン−S−トランスフェラーゼπ(以下、GST−πという)遺伝子、hTERT遺伝子およびヒトβ−アクチン遺伝子の発現を示す。Mはマーカーを示す。
【図4a】図4(a)は、コラーゲンのフィブリンのみからなるコラーゲンミクロスフィアに付着した不死化肝臓細胞の顕微鏡像である。
【図4b】図4(b)は、細胞接着性ペプチドを表面に付着させたセルロースビーズに付着した不死化肝臓細胞の顕微鏡像である。
【図5】図5は、TTNT−1細胞およびPLC/PRF/5細胞の移植1ヵ月後のマウスを示す図である。
【図6】図6は、TTNT−1細胞とTWNT−1細胞とを1週間共培養した後に観察された肝小葉様の構造を示す位相査顕微鏡像である。
【図7a】図7(a)は、ウェスタンブロッティングにより検出されたアクチンに対するCYP3A4の比を示すグラフである。
【図7b】図7(b)は、ウェスタンブロッティングにより検出されたアクチンに対するCYP2C9の比を示すグラフである。

Claims (12)

  1. 哺乳類の肝細胞に一対の部位特異的組換え配列に挟まれた細胞増殖因子遺伝子を導入することにより得られるインビトロ哺乳類不死化肝細胞および哺乳類の星状細胞に一対の部位特異的組換え配列に挟まれた細胞増殖因子遺伝子を導入することにより得られるインビトロ哺乳類不死化星状細胞からなるインビトロ哺乳類不死化肝臓細胞。
  2. 哺乳類がヒトである請求項1記載のインビトロ哺乳類不死化肝臓細胞。
  3. ヒトが成人である請求項2記載のインビトロ哺乳類不死化肝臓細胞。
  4. 細胞増殖因子遺伝子がhTERT遺伝子である請求項1記載のインビトロ哺乳類不死化肝臓細胞。
  5. 細胞増殖因子遺伝子がレトロウイルスベクターを用いて導入される請求項1記載のインビトロ哺乳類不死化肝臓細胞。
  6. 一対の部位特異的組換え配列がLoxP配列である請求項1記載のインビトロ哺乳類不死化肝臓細胞。
  7. 一対の部位特異的組換え配列の間にGFP遺伝子が存在する請求項1記載のインビトロ哺乳類不死化肝臓細胞。
  8. 無血清培地で増殖される請求項1記載のインビトロ哺乳類不死化肝臓細胞。
  9. ヒト不死化肝細胞株TTNT-1(寄託番号 FERM BP-7498 およびヒト不死化星状細胞株TWNT-1(寄託番号 FERM BP-7843 からなるインビトロ哺乳類不死化肝臓細胞。
  10. 請求項1または9記載のインビトロ哺乳類不死化肝臓細胞を含有する、人工肝臓を製造するための材料。
  11. 請求項1または9記載のインビトロ哺乳類不死化肝臓細胞からなる薬物代謝検定モデル。
  12. 請求項1または9記載のインビトロ哺乳類不死化肝臓細胞からなるヒト肝炎ウイルスの感染モデル。
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