JP3603886B2 - 分離装置およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、試料を分離する装置および方法に関し、さらに詳細には、微小スケールで様々なサイズの核酸断片をはじめとする物質、例えば細胞、核酸断片、あるいは、アミノ酸・ペプチド・タンパク質などの有機分子、金属イオン、コロイド、ラテックスビーズなどを分離する際などに用いて好適な分離装置および分離方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
細胞や核酸・タンパク質など生体物質の分析では、試料をあらかじめ分離精製したり、試料をサイズや電荷に応じて分離する操作が行われる。たとえば塩基配列決定法として広く利用されているマクサム・ギルバート法においては、DNAの一端を32Pで標識し、これをさまざまな長さの断片が得られるように化学的に分解した後、これらを電気泳動にかけて分離し、その後オートラジオグラフィを行って塩基配列を読み取るというプロセスが行われる。こうした分離操作は、分析時間の長短を決定する重要な因子となっており、分離に要する時間を短縮することは、この分野における重要な技術的課題となっている。この目的のため、充分に高い分離能を有し、この結果、短時間でも所望の物質を正確に分離できる分離装置の開発が望まれている。
【0003】
従来、分離装置として、超遠心分離装置やキャピラリ電気泳動装置が広く用いられてきた。しかしながら、超遠心分離装置やキャピラリ電気泳動は、分離に長時間を要する上、試料が大量に必要となる。また、分解能についても、必ずしも満足できる水準にはない。
【0004】
一方、目的物質を分離する装置として、米国特許5,837,115号には、多数の障害物をアレイ状に配置した分離装置が開示されている。分離対象としては、細胞やウイルス、巨大分子、微小粒子等が例示されている。しかしながらこの技術は、以下の点でなお改善の余地を有していた。
【0005】
第一に、巨大分子や粒子が原因となって目詰まりが生じる場合があり、スループットの向上に限界があった。第二に、多数の障害物を狭い間隔で精密に作製することが困難なため、障害物の間隔を充分に小さくすることは困難であった。特に、200nm以下の間隔で多数の障害物を精密に作製することは、当時の技術水準ではきわめて困難であった。したがって、その適用範囲も一定のものに限られていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、様々なサイズの物質を含む試料を短時間かつ優れた分解能で分別でき、同時に目詰まり等の問題も少ない分離技術を提供することを目的とする。また、核酸やタンパク質等の小さいサイズの物質を、少量の試料で短時間に優れた分解能で分別できる技術を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、試料の通る流路と、当該流路中に設けられた試料分離領域とを備える分離装置であって、上記試料分離領域は、複数の柱状体が配設された柱状体配設部を含み、前記柱状体の表面が親水性膜で覆われたことを特徴とする分離装置が提供される。
【0008】
また本発明によれば、基板上に形成された溝部からなる試料の通る流路と、上記流路に試料を導く試料導入部と、上記流路中に設けられた、試料を複数の成分に分離する試料分離領域と、上記試料分離領域で分離された試料を分析または分取する試料回収部と、を備え、上記試料分離領域は、上記流路内壁に複数の柱状体が形成されてなる柱状体配設部を含み、前記柱状体の表面が親水性膜で覆われたことを特徴とする分離装置が提供される。
【0009】
この分離装置は、複数の柱状体が形成された柱状体配設部を試料分離領域とする。隣接する柱状体間の間隙が篩としての役割を果たす。本発明においてはこのような方式により試料分離が行われるので、たとえば核酸やタンパク質等、従来では分離困難であったさまざまな微小サイズの物質を分離、分別することができる。なお本発明において、複数の柱状体とは、分離機能を担保しうる程度の数の柱状体のことをいう。
【0010】
また、本発明の分離装置は、上記柱状体の表面が親水性膜で覆われた構成となっている。親水性膜としては、たとえば上記柱状体を構成する材料の酸化膜とすることができる。具体的には、基板材料としてシリコンを用い、柱状体の表面に親水性膜としてシリコン酸化膜を設けた構成とすることができる。試料の分離に際しては装置内に緩衝液(水溶液)等を導入することが必要となるが、上記のような構成とすることによって、緩衝液等を装置内部に円滑に導入することができる。柱状体の間隔が200nm以下、さらには100nm以下となると、試料の分離に際して使用する緩衝液等を装置内に導入することが困難になるが、親水性膜の形成により、かかる困難が解消される。また、緩衝液等を導入して実際に装置を使用する際にも、空隙の形成を抑制し、試料の流動を円滑にする等の効果が得られる。
【0011】
本発明の分離装置において、上記柱状体の断面形状が、頂部よりも底部において幅広となっている構成を採用することができる。こうすることによって、高いアスペクト比の柱状体を制御性良く形成でき、また、各柱状体のアスペクト比のばらつきを有効に低減することができる。たとえば、柱状体を熱処理してその表面に酸化膜を形成する場合、直方体状の柱状体であると、隣接柱状体間の凹部の底面において柱状体が進行し柱状体側壁に所望の膜厚の酸化膜を形成しようとすると、凹部底面の酸化膜が厚くなりすぎてしまい、柱状体の高さが実質的に減少し、酸化前よりもアスペクト比が低くなる。これに対し、上記のような構成を採用すれば、柱状体底部近傍の酸化の進行を抑制することができ、これにより、ばらつきの少ない高いアスペクト比の柱状体を形成することができる。
【0012】
本発明の分離装置において、上記複数の柱状体は、隣接する柱状体の側面が、当該柱状体の底部において互いに接する程度に近接して形成された構成を採用することができる。こうすることによって、隣接柱状体間の凹部底面における酸化膜の肥大化が抑制され、ばらつきの少ない高いアスペクト比の柱状体を形成することができる。隣接柱状体間の距離が大きいと、隣接する柱状体間に平坦な基板面が露出した状態となり、この部分で酸化膜の膜厚の増加が進行し、柱状体のアスペクト比低下をもたらす結果となる。これに対して上記構成を採用した場合、隣接柱状体間の凹部底面はもはや平面でなくなり、通常、曲面となる。たとえば図17では、柱状体が円錐状であり、各柱状体が近接して配置しており、これらの間の凹部は先端が曲面となる。このような曲面上に酸化が進行する場合、酸化による体積膨脹が曲面形状によって抑制され、この部分に圧縮応力が発生することが考えられる。このような圧縮応力が発生すると、体積膨脹をともなう酸化の進行が抑えられ、結果として凹部底面では薄膜ないし柱状体側面と同等の膜厚となった段階で酸化が停止する。この結果、ばらつきの少ない高いアスペクト比の柱状体を形成することができる。
【0013】
本発明の分離装置は、高いアスペクト比の柱状体が複数密集して配設されることによって高い分離性能を発現するものである。それぞれの柱状体が均一な形状・寸法で形成可能であることは、最適設計と製造を容易にする。かかる観点から、柱状体を末広がりな形状にし、また、隣接する柱状体の側面が、当該柱状体の底部において互いに接する程度に近接して形成することは、分離装置の性能向上に大きく寄与する。
【0014】
このような狭い間隔で柱状体を形成することは、従来技術ではなしえなかったが、本発明者は、このような構造の分離装置を、後述するように微細加工用レジストのカリックスアレーンを用いた電子線リソグラフィ技術を利用して柱状体を形成することにより、作製できることを見いだした。カリックスアレーンの分子構造の一例を以下に示す。カリックスアレーンは電子線露光用のレジストとして用いられ、ナノ加工用のレジストとして好適に利用することができる。
【0015】
【化1】
【0016】
本発明の分離装置において、上記試料分離領域が上記柱状体配設部を複数含み、隣接する柱状体配設部間に上記試料が通過するパスが設けられた構成を採用することができる。
【0017】
かかる構成の装置は、前述した米国特許5,837,115号等に開示されている従来の技術とは異なる原理で試料を分離する。米国特許5,837,115号に代表される技術では、分子サイズの大きい物質ほど、障害物によって通過を阻害される程度が大きくなる。したがって、大きいサイズの物質は、小さいサイズの物質よりも後から排出される形で分離がなされる。これに対して本発明の装置は、被分離対象となる物質の大きさが小さいほど、試料分離領域中で柱状体にトラップされ、長い経路を通ることになる。すなわち、小さいサイズの物質は、大きいサイズの物質よりも後から排出される形で分離がなされる。サイズの大きい物質は比較的スムーズに分離領域を通過する方式となるので、目詰まりの問題が低減され、スループットが顕著に改善される。特に核酸やタンパク質等の分離においては、分子の慣性半径もきわめて広い範囲に及ぶため、巨大サイズの物質が目詰まりしやすく、また、いったんこうした物質が目詰まりすると洗浄しても脱離させることが困難となる。本発明によれば、このような問題が解決されるため、核酸やタンパク質等の分離に好適に適用できる。
【0018】
この発明において、パスの幅は、柱状体配設部中の柱状体間の平均間隔よりも大きい構成とすることができる。このようにすれば、大きいサイズの物質は試料分離領域中のパスの部分を円滑に通過するとともに、小さいサイズの物質は柱状体配設部を通り、そのサイズに応じて長い経路を経た末に試料分離領域を通過する。
【0019】
ここで、柱状体配設部中の柱状体間の間隔は、柱状体配設部ごとに任意の値に設定することができる。したがってこの発明においては、柱状体配設部中の柱状体間の距離および上記パスの幅の2種類のパラメータを任意に設定でき、これにより、サイズの分布が広い試料についても、目詰まりの発生やスループットの低下をもたらすことなく高い分解能で分離することができる。たとえば、小さいサイズの分子を高い分解能で分離するために、柱状体間の間隔を数ナノ〜数十ナノメートルオーダーと狭くする一方、上記試料分離領域中のパスの幅を大きくすることによって大きいサイズの分子を円滑に移動させ、目詰まりや分離効率の低下を防止することができる。
【0020】
また、上記パスは流路の試料進行方向とは異なる方向に設けることもできる。このようにすることにより、試料に含まれる分子と柱状体配設部との接触頻度が上昇する。従って、柱状体配設部を構成する柱状体同士の間隔よりも小さいサイズの分子が柱状体配設部に捕捉される確率が高くなるため、分離能がさらに向上する。具体的には、試料進行方向とパスの方向とのなす角度が10〜80度であることが好ましく、30〜60度であることがさらに好ましい。試料進行方向とパスの方向とのなす角度が小さすぎる場合、試料に含まれる分子と柱状体配設部との接触頻度が充分に確保できなくなる。一方、試料進行方向とパスの方向とのなす角度が大きすぎる場合は、試料の流速が低下するため、スループットが低下してしまうためである。
【0021】
また上記の分離装置において、上記柱状体配設部中の柱状体間の平均間隔が100nm以下とすることができる。ここで「間隔」とは柱状体の中心間距離をいう。この場合、柱状体の間隔がきわめて狭いため、従来では分離の困難であったさまざまな物質を分離、分別することができる。たとえばタンパク質や核酸の分離に際しては、数百ナノメートルオーダー以下の微小な間隙を有する構造が必須となる。大きな間隙のみが設けられた構造では、核酸やタンパク質の分子サイズに対して大きすぎるため、間隙が篩としての機能を充分に果たし得ない。さらに上記柱状体配設部中の柱状体間の平均間隔が70nm以下とすることができる。この場合、さらに精密な分析を実現することができる。
また、上記パスの幅や柱状体間の距離は、分離しようとする試料に含まれる複数の成分の大きさの中央値Mや標準偏差σなどを考慮して適宜選択することもできる。こうすることにより、分離効率を最適化することができる。例えば、柱状体の間隔をM、パスの幅をM+2σとすることができる。また、柱状体の間隔を2M、パスの幅を2M+2σとすることもできる。
【0022】
また上記の分離装置において、上記柱状体配設部を構成する複数の柱状体の密度が、流路の試料進行方向に向かって次第に低くすることもできる。このようにすることにより、柱状体配設部に捕捉された分子の柱状体配設部における滞在時間が長くなるため、柱状体配設部に捕捉されない分子との保持時間の差が顕著となる。そのため、分離能の向上を図ることが可能となる。
【0023】
また逆に、上記の分離装置において、上記柱状体配設部を構成する複数の柱状体の密度が、流路の試料進行方向に向かって次第に高くすることもできる。この場合、柱状体配設部における目詰まりが抑制されるため、スループットの向上を図ることができる。
【0024】
さらに、上記の分離装置において、上記柱状体の頂部と上記流路の壁面とが離間していてもよい。このようにすることにより、大きなサイズの分子の通過経路が増えるため、目詰まりの解消に資することとなる。また、小さなサイズの分子についても、柱状体配設部の上方から進入することが可能となることから、柱状体配設部に捕捉される機会が増える。このため、さらなる分離能の向上効果が得られる。
【0025】
また本発明によれば、上記の分離装置において、柱状体が一列に配設された堰止部をさらに有することを特徴とする分離装置が提供される。この分離装置は、拡散した試料を当該堰止部に隣接する一定の領域に集積することが可能である。分離に先立ち、試料を一定の領域に集積し、試料のバンドを細くせしめることは、分離能の向上に有利である。
【0026】
上記の分離装置において、上記堰止部が上記試料分離領域に隣接して配設されている構成としてもよい。この分離装置によれば、試料が上記試料分離領域を通過する前に、試料のバンドを細くせしめることができるため、分離能が向上する。そのため高精度の分離を実現することが可能である。
【0027】
また本発明によれば、上記の分離装置において、上記流路内壁の表面が親水化処理されたことを特徴とする分離装置が提供される。この分離装置は、試料に含まれる分子が粘着しにくいため、常に良好な分離能を発揮することができる。
【0028】
各柱状体配設部を構成する柱状体は、同一サイズで等間隔に形成されたものとすることができる。このようにすれば、柱状体配設部における分離の感度を高めることができる。柱状体配設部内の柱状体が複数になるほど、分解能が向上する。
【0029】
柱状体配設部は、それぞれ異なるサイズの柱状体により構成してもよい。すなわち、各柱状体配設部中に、それぞれ異なるサイズおよび間隔で柱状体が形成された構成を採用することもできる。このようにすれば、サイズの分布がきわめて広い試料についても、目詰まりの発生やスループットの低下をもたらすことなく高い分解能で分離することができる。
【0030】
本発明の分離装置において、上記試料に外力を付与して上記試料を上記流路中で移動せしめる外力付与手段をさらに備えた構成を採用することができる。このようにすれば、外力を負荷する程度に応じて分離精度および分離に要する時間を目的に応じて適切に設定することができる。ここで、外力としては、圧力や電界を用いることが便利である。大がかりな外力付与部材が不要だからである。また、毛細管現象を利用して試料を移動させることもできる。この場合、外力付与手段が不要となり、装置の小型化に有利となる。
【0031】
本発明の分離装置において分離対象となる試料としては、微小スケールで様々なサイズの核酸断片をはじめとする核酸、あるいは、アミノ酸・ペプチド・タンパク質などの有機分子、金属イオン、コロイド、ラテックスビーズ等が挙げられる。このうち、たとえば核酸またはタンパク質を試料とした場合、より効果的である。これらの試料の分離に際しては、小さいサイズの分子を高い分解能で分離しなければならないため、数百ナノメートルオーダー以下の微小な間隙が設けられた構造が必須となる。一方、巨大物質による目詰まりを効果的に抑制することも要求される。本発明によれば、これらの要求の双方に充分に対応できるため、核酸またはタンパク質の分離に好適である。
【0032】
上記分離装置において、上記試料分離領域が、スリットを介して複数に分割された構成とすることができる。スリットは単一または複数のいずれでもよい。また、上記分離装置において、上記試料分離領域と、上記試料分離領域よりも柱状体が疎に形成された調整領域とが、流路中の試料進行方向に対して交互に形成された構成とすることができる。
【0033】
このような構成とすることにより、検出部でのバンドの形状が直線的となり、検出領域を広げることが可能となり検出感度を向上することができる。
【0034】
さらに、本発明によれば、基板表面に複数の柱状体が配設されてなるナノ構造体であって、上記柱状体の断面形状が、頂部よりも底部において幅広となっており、上記複数の柱状体は、隣接する柱状体の側面が、当該柱状体の底部において互いに接する程度に近接して形成されていることを特徴とするナノ構造体が提供される。
【0035】
この構造体は、前述したように柱状体底部近傍の酸化の進行を抑制することができ、これにより、ばらつきの少ない高いアスペクト比の柱状体群を形成することができる。このため、分離装置の部材として好適な構造が得られるほか、各種素子の構成部材として好適に適用できる。
【0040】
なお、本発明における分離装置は、試料分離領域を備えているものであればよく、サンプル導入領域や外力付与手段は装置自体に備わっていなくてもよい。たとえば、本発明における分離装置を使い捨て型のカートリッジタイプとし、これを、所定のユニットに組み込んで使用する方式とすることもできる。
【0043】
【発明の実施の形態】
本発明において、流路や試料分離領域は、シリコン基板や石英等のガラス基板あるいはシリコン樹脂等の樹脂基板の表面に形成することができる。たとえば、これらの基板の表面に溝部を設け、これを表面部材によって封止し、これらによって囲まれた空間内に流路や試料分離領域を形成することができる。
【0044】
本発明における柱状体は、たとえば、上記基板を所定のパターン形状にエッチングすることにより形成することができるが、その作製方法は特に制限はない。
【0045】
柱状体は、円柱、楕円柱等、擬円柱形状;円錐、楕円錐、三角錐等の錐体;三角柱、四角柱等の角柱のほか、ストライプ状の突起等、さまざまな形状を含む。柱状体のサイズは、例えば、幅は10〜200nm程度、高さは10〜1000nm程度である。
【0046】
隣接する柱状体の間隔は、分離目的に応じて適宜設定される。たとえば、
(i)細胞とその他の成分の分離、濃縮
(ii)細胞を破壊して得られる成分のうち、固形物(細胞膜の断片、ミトコンドリア、小胞体)と液状分画(細胞質)の分離、濃縮
(iii)液状分画の成分のうち、高分子量成分(DNA、RNA、タンパク質、糖鎖)と低分子量成分(ステロイド、ブドウ糖等)の分離、濃縮
といった処理において、
(i)の場合、1μm〜10μm、
(ii)の場合、100nm〜1μm、
(iii)の場合、1nm〜100nm、
とすることができる。
【0047】
本発明において、柱状体配設部は試料分離領域中に一または二以上設けることができる。柱状体配設部に含まれる柱状体群は、それぞれ同一サイズで、ほぼ等間隔に規則正しく形成してもよいし、異なるサイズの柱状体を任意の間隔で形成することもできる。各柱状体配設部中の柱状体群は、互いに異なるサイズ、間隔で形成することができる。
【0048】
隣接する柱状体配設部間の間隔には、試料の通過し得るパスが形成される。ここで、柱状体配設部間の間隔を柱状体間の間隔よりも大きくすると、巨大サイズの分子等を円滑に移動させることができるので、分離効率を一層向上させることができる。
【0049】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態についてさらに説明する。実施形態中、「ピラー」は柱状体の一形態として示したものであり、円柱ないし楕円柱の形状を有する微小な柱状体をいう。また、「ピラーパッチ」および「パッチ領域」は、柱状体配設部の一形態として示したものであり、多数のピラーが群をなして形成された領域をいう。
【0050】
図1は、本発明に係る分離装置の一例を示す図である。基板110上に分離用流路112が形成され、これと交差するように投入用流路111および回収用流路114が形成されている。投入用流路111,分離用流路112および回収用流路114には、それぞれその両端に液溜め101a、b、102a、b、103a、bが形成されている。各々の液溜めには電極が設けられており、これを用いて例えば分離用流路112の両端に電界が印加することができる。
【0051】
また、分離用流路112には、検出部113が設けられている。装置の外形寸法は用途に応じて適宜な値が選択されるが、通常は、図示したように、縦5mm〜5cm、横3mm〜3cmの値とする。
【0052】
ここで、上記の電極が設けられた液溜めの構造について、図55および図56を参照して説明する。図55は、図1における液溜め101a付近の拡大図である。また図56は、図55におけるA−A’断面図である。分離用流路112および液溜め101aが設けられた基板110上には、緩衝液を注入できるようにするための開口部802が設けられた被覆801が配設される。また被覆801の上には、外部電源に接続することができるように伝導路803が設けられる。さらに図56に示されるように、電極板804が液溜め101aの壁面と伝導路803とに沿うように配設させる。電極板804と伝導路803とは圧着され、電気的に接続される。なお、その他の液溜めについても上記と同様な構造を有する。
【0053】
再度図1に戻り、この装置を使って試料の分離を行う方法について説明する。まず試料を液溜め102a、もしくは液溜め102bに注入する。液溜め102aに注入した場合は、液溜め102bの方向へ試料が流れるように電圧を印加し、液溜め102bに注入した場合は、液溜め102aの方向へ試料が流れるように電圧を印加する。これにより、試料は投入用流路111へと流入し、結果的に投入用流路111の全体を満たす。この時、分離用流路112上では、試料は投入用流路111との交点にのみ存在し、投入用流路111の幅程度の狭いバンドを形成している。
【0054】
次に、液溜め102a、液溜め102bの間への電圧印加をやめ、液溜め101aと液溜め101bの間に、試料が液溜め101bの方向へ流れるように電圧を印加する。これにより試料は分離用流路112を通過することになり、この間に、分子の大きさと荷電の強さ、および柱状体間の隙間のサイズに応じた速度で、分離用流路112を進んでゆく。その結果、試料中の異なる分子群は、それぞれ異なる速度で移動するバンドに分離される。これらの分離されたバンドは、検出部113に至ると、光学的あるいは、他の物理化学的な方法で検出される。光学的検出とは、例えば、分子に蛍光物質を結合させておき、検出部113においてレーザーを照射し、分子から発せられる蛍光を観測することである。分離されたバンドは、さらに、バンドごとに回収することができる。所望のバンドが検出部113を通過したことを目安に、液溜め101a、液溜め101b間への電圧印加をやめ、代わりに液溜め103a、液溜め103bの間に電圧を印加する。すると分離用流路112中と、回収用流路114の交差点に存在するバンドは、回収用流路114に流れこむ。液溜め103a、液溜め103b間への電圧印加を一定時間の後に停止すると、液溜め103aまたは液溜め103bに、分離されたバンドに含まれる所望の分子が回収される。
【0055】
上記装置は、電界を印加することによって試料を移動させる方式を採用しているが、電界の印加に代え、圧力を加える方式を採用することもできる。図30はこのような装置の一例である。分離用チップの投入用流路と分離用流路の端にある液溜め部分には、ジョイントメスが固着してある。それぞれのジョイントメスには、中空のチューブ13、14、15、16がつながれた、ジョイントオスを接続する。ジョイントを用いる理由は、液漏れを防ぐためである。ジョイントの具体的な構造は、たとえば図41のようにする。
【0056】
ジョイントオスにつながれた各チューブは、それぞれ電磁弁10、4、5、11に接合されている。電磁弁10には、分離用ポンプ8、定速注入装置9を介して、液溜め7からバッファーが供給される。電磁弁4には、投入用ポンプ2、定速注入装置3を介して、サンプル溜め1からサンプルが供給される。電磁弁5には、投入用流路19を介して送られてきたサンプルが供給され、廃液溜め6へと導かれる。電磁弁11には、分離用流路20を介して分離されたサンプルが供給され、オートサンプラー12にて回収される。
【0057】
制御ユニット21は、電磁弁4、5、10、11、および分離用ポンプ8、投入用ポンプ2、定速注入装置9、定速注入装置3、の稼動時点を制御する。
【0058】
この装置を用いた分離回収手順は以下のとおりである。まず、電磁弁10、電磁弁11を閉じる。これにより投入用流路19からサンプルが分離用流路20に流入することを防止できる。ついで電磁弁4、電磁弁5を開く。そして、サンプル溜め1にサンプルを投入する。
【0059】
次に投入用ポンプ2でサンプルを加圧し、サンプルを、定速注入装置3、電磁弁4、チューブ14を介して、投入用流路19へ導く。投入用流路19を介して漏出したサンプルは、チューブ15、電磁弁5を通って、廃液溜め6に導かれる。
【0060】
投入用流路19にサンプルが満たされた後、電磁弁4、電磁弁5を閉じ、電磁弁10、電磁弁11を開く。つづいて分離用ポンプ8でバッファーを加圧し、定速注入装置9、電磁弁10、チューブ13を介してサンプルを分離用流路20へ導く。こうして分離操作が開始する。分離用流路20の先から分離された物質がバッファーとともにチューブ16、電磁弁11を介して出てくるので、これをオートサンプラー12で定時的に回収する。
【0061】
こうした手順により、サンプルの分離が行われる。この装置では、試料を移動させるための外力として圧力を利用しているため、比較的簡素な外力付与装置を設ければ済むので、製造コストの低減、装置の小型化に有利である。
【0062】
上記装置では試料を移動させる外力として圧力を用いたが、圧力に代え、毛細管現象を利用して試料を移動させる方式を採用することもできる。この場合、電力、圧力等の外力の印加が不要で駆動のためのエネルギーが不要となる。以下、毛細管現象を利用する装置の例について図31を参照して説明する。分離用流路540には、分離用ピラーが配置されている。分離用流路540の一端には空気穴560が設けられ、他端には分離時にバッファーを注入するためのバッファー注入口510が設けられている。分離用流路540は、バッファー注入口510、空気穴560以外の部分では密閉されている。分離用流路540の起始部には、サンプル定量管530がつながっており、サンプル定量管530の他方の端は、サンプル注入口520が設けられている。
【0063】
サンプル定量管530には、定量用ピラーが配置されている。定量用ピラーは、分離用ピラーよりも疎につくられており、そこでサンプルの分離が起こることはない。サンプル定量管530のサンプル注入口520以外の部分は密閉されている。
【0064】
図32は、サンプル定量管530の近傍を拡大して示したものである。サンプル定量管530の内部の定量用ピラーとサンプル保持部503の間は、一時停止スリット502によって隔てられている。サンプル保持部503は、バッファー導入部504、分離部506に設置されたピラーよりも、緻密なピラーが設置されている。バッファー導入部504には、分離用ピラーと同等のピラーが設置されている。サンプル保持部503、バッファー導入部504および分離部506は、一時停止スリット505、507で隔てられている。サンプル保持部503の空隙体積は、サンプル定量管530の空隙体積と一時停止スリット502の体積の和にほぼ等しい。一時停止スリット505の幅は、一時停止スリット502の幅よりも狭い。
【0065】
次に、図31の装置を用いた分離操作の手順について説明する。まず、サンプル注入口520にサンプルを徐々に注入しサンプル定量管530を満たす。この時、水面が盛り上がらないようにする。このサンプル注入操作において、サンプルは、図32に示されるサンプル定量管530に設置されたサンプル定量用ピラー間に保持される。サンプル定量管530がサンプルで満たされた後、サンプルは一時停止スリット502に徐々にしみ出してゆく。一時停止スリット502にしみだしたサンプルが、サンプル保持部503の表面に到達すると、一時停止スリット502およびサンプル定量管530の内部のサンプルは、さらに毛細管効果の大きい、サンプル保持部503へとすべて吸い取られる。サンプル定量管530よりもサンプル保持部503の方がより大きい毛細管効果を有する理由は、サンプル保持部503の方が、ピラーが密に形成され、表面積が大きいことによる。サンプル保持部503へのサンプル充填の間は、一時停止スリット505、507が存在するため、サンプルがバッファー導入部504あるいは分離部506に流れ込むことは無い。
【0066】
サンプル保持部503にサンプルが導入された後、バッファー注入口510に分離用バッファーを注入する。注入されたバッファーは、バッファー導入部504に一時的に充填されて、サンプル保持部503との界面が直線状になる。さらにバッファーが充填されると、一時停止スリット505にしみだして、サンプル保持部503に流入し、さらに、サンプルをひきずりながら、一時停止スリット507を超えて、分離部506へと進行する。この際、一時停止スリット502の幅が、一時停止スリット505、507の幅よりも大きいため、一時停止スリット502へバッファーが逆流しても、サンプルは既に、サンプル保持部503より先に進行しているため、サンプルの逆流はほとんどない。
【0067】
分離用バッファーは毛細管現象で、分離部506を空気穴560へ向けてさらに進行し、この過程で、サンプルが分離される。分離用バッファーが、空気穴560に到達すると、バッファーの流入が停止する。バッファーの流入が停止した段階、もしくは、バッファーが進行中の段階で、サンプルの分離状態を計測する。
【0068】
上記実施形態は、毛細管現象を用いたサンプルの定量注入の例であるが、この原理を利用した試料注入の他の例について図33、図34を参照して説明する。この装置では、図32におけるサンプル定量管530に代えて、サンプル投入管570が設けられている。サンプル投入管570の両端には、サンプル注入口520と、排出口580が設けられている。サンプル投入管570の内部には、ピラーは設置されていない。サンプル投入管570は、投入穴509を介して、サンプル保持部503に開口している。
【0069】
この装置を用いた分離手順について説明する。まず、サンプルを、サンプル注入口520に投入し、排出口580まで満たす。この間に、サンプルは、投入穴509を介してサンプル保持部503に吸収される。
【0070】
しかる後に、サンプル注入口520に空気を圧入して、サンプルを排出口580から排出することによりサンプル投入管570の内部のサンプルを払拭、乾燥する。毛細管現象による分離の場合は、上記と同様に、分離用バッファーを注入する。電気泳動による分離の場合は、サンプルの投入以前に、バッファー注入口510に相当する液溜め、空気穴560に相当する液溜めから泳動用バッファーを導入しておく。広く作られた一時停止スリット505、507が存在するため、サンプル保持部には、流入しない。
【0071】
サンプル保持部503へのサンプルの保持が終わった段階で、さらに微量の泳動用バッファーを分離用流路の一端の液溜めに加えるか、サンプル保持部503の周辺に軽く振動を与えることで、泳動バッファーを連続させ、電圧を印加して分離する。
【0072】
次に、分離装置中の分離用流路の構造について説明する。図2は、図1中の分離用流路112の構造を詳細に示したものである。なお、図中の構造は図2以降の図においても適用することが可能である。図2中、基板120に幅W、深さDの溝部が形成され、この中に、直径φ、高さdの円柱形状のピラー125が等間隔で規則正しく形成されている。ピラー125間の間隙を試料が透過する。隣接ピラー125間の平均間隔はpである。各寸法は、たとえば図2に示された範囲とすることができる。
【0073】
図3は、図2に示した流路の断面図である。基板120に形成された溝部が被覆部122によって封止され、空間を形成しており、この空間内に多数のピラー125が形成されている。ピラー125の間隙は流路123となる。
【0074】
上記のように多数のピラー125が密集して形成された構造を試料分離手段として用いる場合、主として2つの分離方式が考えられる。一つは、図4に示す分離方式である。この方式では、分子サイズが大きい程、ピラー125が障害となり、図中の分離領域の通過時間が長くなる。分子サイズの小さいものは、ピラー125間の間隙を比較的スムーズに通過し、分子サイズが大きいものに比べて短時間で分離領域を通過する。
【0075】
ところが、この方式では試料中に巨大なサイズの物質を含む場合、目詰まりを起こすことがある。いったん発生した目詰まりを解消することは一般に困難である。
【0076】
目詰まりの問題は、分子サイズの小さい物質を多種類含む試料を高い分離能で分離しようとしたとき、より顕著となる。分子サイズの小さい物質を多種類含む試料を高い分離能で分離するためには、ピラー125間の間隙をある程度小さく設定することが必要となる。ところが、そのようにすると、大きいサイズの分子にとっては、より目詰まりしやすい形態となる。
【0077】
この点、図5に示す分離方式では、このような問題が解消される。図5中、試料分離領域には、複数の柱状体配設部(ピラーパッチ121)が離間して形成されている。各柱状体配設部には、それぞれ、同一サイズのピラー125が等間隔に配置されている。この試料分離領域では、大きな分子が小さな分子よりも先に通過していく。分子サイズが小さいほど、分離領域中でトラップされて長い経路を通ることになる一方、大きいサイズの物質は、隣接ピラーパッチ121間のパスを円滑に通過するからである。この結果、小さいサイズの物質は、大きいサイズの物質よりも後から排出される形で分離がなされる。サイズの大きい物質は比較的スムーズに分離領域を通過する方式となるので、目詰まりの問題が低減され、スループットが顕著に改善される。こうした効果をより顕著にするためには、隣接ピラーパッチ121間のパスの幅を、ピラーパッチ121中のピラー125間の間隙よりも大きくするのが良い。パスの幅は、ピラー125間の間隙の好ましくは2〜20倍程度、より好ましくは5〜10倍程度とする。
【0078】
また、上記実施形態では柱状体を一定間隔で配設した例を示したが、柱状体配設部内において柱状体を異なる間隔で配設することもできる。こうすることで大・中・小等の複数の大きさの分子・イオンを効率的に分離することができる。また、柱状体の配置に関し、試料の進行方向に対して互い違いに柱状体を配置する方法を採用することも有効である。こうすることにより、目詰まりを効果的に防止しつつ目的の成分を効率的に分離することができる。
【0079】
例えば、図49(a)のように、流れの向きに従ってピラーの間隔を小さくした柱状体配設部を採用することができる。この場合、柱状体配設部に進入した分子は移動するほど移動速度が低下するため、柱状体配設部に進入することができない大きめの分子との保持時間差が顕著となる。その結果、分離能の向上が実現される。一方、図49(b)のように、流れの向きに従ってピラーの間隔を大きくした柱状体配設部を採用することもできる。このようにすることにより、柱状体配設部における目詰まりを抑制することができるため、スループットの向上を図ることが可能となる。なお、流れの向きに従ってピラーの間隔を小さくしたり、大きくしたりする形態は、柱状体配設部を有しない分離領域にも適用することができる。
【0080】
さらに、複数の柱状体配設部をまとめて更に大きな柱状体配設部とし、その大きな柱状体配設部同士の間隔を、もとの柱状体配設部同士の間隔よりも広くするような階層的な配置も可能である。その一例を図54に示す。小さなピラーパッチ712が七つ集合することにより中程度のピラーパッチ713を形成し、さらに中程度のピラーパッチ713が七つ集合することにより大きなピラーパッチ714を形成している。このように、柱状体配設部を階層的に構成することにより、幅広いサイズレンジの分子を同時にかつ大きい順に分離することが可能になる。すなわち、より大きな分子はより大きな柱状体配設部の間を通過するのに対して、中等度のサイズの分子は中等度のサイズの柱状体配設部の内部に捕捉されて分離される。さらに小さな分子は、さらに小さな柱状体配設部の内部に捕捉されて分離される。このため、小さな分子ほど流出に時間がかかり、大きさが異なる複数の分子を、大きい順に分離することが可能になる。
【0081】
図5に示した分離方式を実現する試料分離領域の構造について、図6を参照して説明する。図6に示したように、この試料分離領域は、流路の壁129によって囲まれた空間内にピラーパッチ121が等間隔で配置された構造となっている。ピラーパッチ121は、それぞれ多数のピラー125により構成されている。ここでは、ピラーパッチ121の幅Rは、10μm以下とする。一方ピラーパッチ121間の間隔Qは20μm以下とする。
【0082】
図5においては、ピラー125が密集してなるピラーパッチ121は、上面からみて円形の領域として形成されているが、円形に限らず他の形状であってもよい。図7の例では上面からみてストライプ状の領域にパッチ領域130が形成されている。この形態においては、パッチ領域130の幅Rは10μm以下、パッチ領域130間の間隔Qは10〜100μmとする。
【0083】
また、図50は菱形のピラーパッチ121を採用し、さらにそれぞれのピラーパッチ121を菱形状に配置させた例である。この場合、パスと流れの向きとが一定の角度をなしており、分子とピラーパッチ121との接触頻度が上昇するため、ピラーパッチ121を構成するピラーの間隔よりも小さい分子がピラーパッチ121に捕捉される確率は上昇する。そのため、ピラーパッチ121に捕捉された分子と捕捉されない大きめの分子との保持時間差が顕著となるため、分離装置の分離能の向上を図ることができる。また、分離目的の分子の直径をRとした場合、ピラーパッチ121同士の間隔h、ピラーパッチ121の対角線Dおよびd、ピラーパッチを構成するピラーの間隔pについては次の条件を満たすことが好ましい。こうすることにより、目的とする分子を精度良く分離することができる。
h:R≦h<10R
p:0.5R≦p<2R
D:5h≦D<20h
d:5h≦d<20h
【0084】
また、パッチ領域を構成するものはピラーに限られない。例えば、板状体が一定の間隔で配置されてなるパッチ領域とすることもできる。図51に一例を示す。図51(a)は上面図であり、図中のA−A’断面図を図51(b)に示す。このパッチ領域を図51(c)に示すように配置する。一旦パッチ領域130に捕捉された分子は流路123に脱出するまでパッチ領域130に留まることとなる。従って、パッチ領域に捕捉された分子と捕捉されない分子との保持時間の差が顕著となるため分離能が向上する。また、分離目的の分子の直径をRとした場合、パッチ領域130同士の間隔Λ、パッチ領域130を構成する板状体同士の間隔λについては次の条件を満たすことが好ましい。こうすることにより、目的とする分子を精度良く分離することができる。
Λ:R≦Λ<10R
λ:0.5R≦λ<2R
【0085】
また、本発明において、上記の柱状体または板状体の頂部と流路の上面とは接していてもよいし、離間していてもよい。離間している場合は、柱状体あるいは板状体と流路上面との間に間隙が存在するため、大きな分子の通過機会が増加する。このため、さらなる目詰まりの解消を図ることができる。さらに小さな分子についても、この間隙を経由して上方からパッチ領域へ入り込む機会が増加することから、分離効果がさらに向上する。このような形態は、流路の上面となる部材(カバーガラスなど)にあらかじめ溝部を設けておくこと、または柱状体や板状体の高さを流路の深さよりも低く作製することによって容易に実現することが可能である。
【0086】
本発明において、柱状体配設部間のパスの幅及び、柱状体配設部内の柱状体の間隔は、分離しようとする成分(核酸、アミノ酸、ペプチド・タンパク質などの有機分子、キレートした金属イオンなどの分子・イオン)のサイズに合わせて適宜に選択される。たとえば柱状体の間隔は、分離したい分子群のサイズの中央値に相当する慣性半径と同程度か、それよりもわずかに小さめあるいは大きめとするのが好ましい。具体的には、上記中央値に相当する慣性半径と、柱状体の間隔との差異を、100nm以内、より好ましくは10nm以内、最も好ましくは1nm以内とする。柱状体の間隔を適切に設定することにより、分離能が一層向上する。
【0087】
隣接する柱状体配設部間の間隔(パスの幅)は、試料中に含まれる最大サイズの分子の慣性半径と同程度か、それよりもわずかに小さめあるいは大きめとするのが好ましい。具体的には、試料中に含まれる最大サイズの分子の慣性半径と柱状体配設部間の間隔との差異を、当該分子の慣性半径の10%以内、より好ましくは5%以内、最も好ましくは1%以内とする。柱状体配設部間の間隔が広すぎると、サイズの小さい分子の分離が充分に行われなくなることがあり、柱状体配設部間の間隔が狭すぎると、目詰まりが発生しやすくなる場合がある。
【0088】
また本発明において、流路に設けられた分離領域の直前に、一列の柱状体を配設してもよい。この一例を図47に示した。図47(a)に示されるように、流路上に設けられた分離領域711の直前に一列のピラー列710が配設されている。このピラー列710における各々のピラーの間隔は、分離対象の分子群709に含まれる最小サイズの分子と同程度とすることが好ましい。このような構成を採用することにより、以下に説明する効果が得られる。なお、分離領域711には、上述したようなパッチ領域あるいは柱状体配設部を設けたものであってもよいし、柱状体が満遍なく配設されてなる分離領域であってもよい。
【0089】
図47(a)において、弱い駆動力(たとえば微弱な電界)を分離対象の分子群709に付与すると、広範囲に拡散している分離対象の分子群709は流路を移動するが、ピラー列710に到達すると堰き止められるため、ピラー列に隣接した帯状の狭い領域において細いバンドを形成する(図47(b))。次に、一時的に強い駆動力(たとえば強い電界)を分離対象の分子群に与えることによって、当該分子群は細いバンド状態を保ちつつピラー列を通過する(図47(c))。これは、特にDNAやタンパク質のような高分子の場合、分子サイズがピラー同士の間隔よりも大きい場合であっても、ピラー列が一列ないし数列程度であれば当該分子は伸長することによりピラー間をすり抜けることができることによる(レプテーション効果)。分離対象の分子群がピラー列を通過した後は、分離に適した駆動力を当該分子群に与えることにより効果的に分離することができる(図47(d))。上記したように当該分子群は細いバンド状態を保っているため、分離後のピークの重なりが少なくなることから高精度の分離が実現するためである。
【0090】
さらに、流路壁に対してDNAやタンパク質などの分子が粘着することを防ぐために、流路壁をコーティングすることが好ましい。この結果、分離装置が良好な分離能を発揮することができる。コーティング材料としては、例えば、細胞膜を構成するリン脂質に類似した構造を有する物質を流路壁にコーティングすることが挙げられる。このような物質としてはリピジュア(登録商標、日本油脂社製)などが例示される。リピジュア(登録商標)を用いる場合は、0.5wt%となるようにTBEバッファなどの緩衝液に溶解させ、この溶液を流路内に満たし、数分間放置することによって流路壁をコーティングすることができる。
【0091】
また、流路壁をフッ素系樹脂、あるいは牛血清アルブミンによりコーティングすることによって、DNAなどの分子が流路壁に粘着することを防止することもできる。
【0092】
本発明の分離装置では、図8に示すように、分離用流路112の両端に電圧が印加され、これにより試料が分離用流路112中を移動する。ここで、試料に外力を与えるための電圧以外に、電気浸透流を抑制するための電圧を印加してもよい。図8ではこの目的のため、基板にゼータ補正電圧を印加している。このようにすれば電気浸透流が抑制され、測定ピークのブロードニングを有効に防止することができる。
【0093】
本発明に係る分離装置は、内部に緩衝液を導入した状態で使用されることが好ましい。ここで、流路壁面や被覆部などの流路表面がプラスチックなどの疎水性材料で構成されている場合、緩衝液を導入することは通常、容易ではない。緩衝液を円滑に導入する方法としては、たとえば図9に示す方法を採用することができる。図示した方法では、遠心管151のホルダー153中にチップ150を固定した状態で遠心分離を行うことにより緩衝液がチップ150に導入される。
【0094】
緩衝液を導入する困難を解消する方法として、分離装置内の流路表面にシリコン酸化膜等の親水性膜を形成することが有効である。親水性膜の形成により、特に外力を付与しなくとも緩衝液が円滑に導入される。この点については実施例にて後述する(図14(d)の工程で形成されるシリコン熱酸化膜209)。
【0095】
本発明において、柱状体は、その頂部の直径が底部の直径よりも小さい形状を有することが好ましい。すなわち、柱状体が錐体ないし擬錐体形状を有し、断面が末広がりになっていることが好ましい。特に柱状体表面にシリコン酸化膜等の親水性膜を形成する場合、このような形状とすることによる効果が顕著となる。たとえば、柱状体を熱酸化してその表面に熱酸化膜を設けようとすると、柱状体の底部近傍で酸化が進み、柱状体の高さが減少してアスペクト比が低下することがある。柱状体の形状を上記のようにすると、このような酸化によるアスペクト比の低下を効果的に防止することができる。
【0096】
また、柱状体の形状として上記したような形状を採用した上で、試料分離領域に設けられた柱状体を、隣接する柱状体の側面が、該柱状体の底部において互いに接する程度に近接して形成することが望ましい。こうすることによって、酸化によるアスペクト比の低下を一層効果的に防止することができる。図17は、このような構造を採用した柱状体の一例である。図示したように、基板110表面に円錐状の柱状体が設けられ、その表面がシリコン酸化膜104により覆われている。柱状体は、隣接する柱状体の側面が、該柱状体の底部において互いに接する程度に近接して形成されている。このような配置とすることにより、基板110を熱酸化して表面をシリコン酸化膜で覆った場合、柱状体底部の酸化膜厚が薄くなり、柱状体のアスペクト比を良好に維持できる。この理由は必ずしも明らかではないが、円錐状の柱状体の側面が互いに接した構造となっているため、柱状体の底部近傍で酸化が進行した際、圧縮応力が発生し、それ以上の酸化が進みにくくなることによるものと推察される。
【0097】
次に、図17に示した構造体の形成方法について図18を参照して説明する。まず図18(a)のように、基板110上にシリコン酸化膜105、レジスト膜107をこの順で成膜する。次いで電子線露光等によりレジスト膜107をパターニングして所定の開口部を有するパターンが形成される(図18(b))。
【0098】
次いでこのレジスト膜107を用いてシリコン酸化膜105をドライエッチング等することにより、シリコン酸化膜105からなるハードマスクが形成される(図18(c))。レジスト膜107を除去した後(図18(d))、基板110をドライエッチングすることにより(図19(e))、アスペクト比の高い柱状体が得られる。シリコン酸化膜105を除去後(図19(f))、たとえば850℃以上の高温で表面を酸化する。以上の工程により、図19に示すナノ構造体が得られる。このナノ構造体は、分離装置の試料分離部などに好適に利用することができる。
【0099】
以上の実施形態では、レジストマスクを用いて形成したハードマスクにより基板110をエッチングしたが、レジストマスクを用いて直接基板エッチングすることもできる。図20はこの方法を示す図であり、図示したプロセスでは、基板110上にレジスト900を形成した後、パターニングし、これをマスクとして基板110をエッチングしてピラーを形成している。
【0100】
次に、金型を用いてマスクのパターニングを行う方法を採用した、ピラー構造の形成例について説明する。図21は、本発明に係る分離装置の製造方法を示す工程断面図である。まず図21(a)に示すように、表面に樹脂膜160が形成されたシリコンからなる基板110と、成型面を所定の凹凸形状に加工した金型106とを用意する。樹脂膜160の材質はポリメチルメタクリレート系材料とし、その厚みは200nm程度とする。金型106の材質は特に制限がないが、Si、SiO2、SiC等を用いることができる。
【0101】
次いで図21(b)に示すように、金型106成型面を樹脂膜160表面に当接させた状態で加熱しながら加圧する。圧力は600〜1900psi程度とし、温度は140〜180℃程度とする。その後、基板を脱型し、酸素プラズマアッシングを行い、樹脂膜160をパターニングする。
【0102】
つづいて樹脂膜160をマスクとして基板110をドライエッチングする。エッチングガスは、たとえばハロゲン系ガスを用いる。エッチング深さは約0.4μmであり、エッチングにより形成されるピラーの間隔は約100nmである。エッチングのアスペクト比(縦横比)は4:1程度である。このとき、エッチングによって生じた凹部の底近傍では、マイクロローディング効果によりエッチングの進行が鈍化し、凹部の先端が狭まり、曲面となる。この結果、ピラーは末広がりになり、その断面形状は、頂部よりも底部において幅広となる。また、ピラー間の距離が狭いため、各ピラーは、隣接する柱状体の側面が、該柱状体の底部において互いに接する程度に近接して形成されることとなる。
【0103】
図21(d)の後、800〜900℃の炉アニールにより熱酸化を行い、ピラー側壁にシリコン熱酸化膜を形成する。このとき、ピラーおよび凹部の形状が上述のようになっているため、柱状体底部の酸化膜厚が薄くなり、柱状体のアスペクト比を良好に維持できる。この理由は必ずしも明らかではないが、円錐状の柱状体の側面が互いに接した構造となっているため、柱状体の底部近傍で酸化が進行した際、圧縮応力が発生し、それ以上の酸化が進みにくくなることによるものと推察される。
【0104】
以上の工程により、基板110上にピラー群が形成される。本実施形態では、電子線露光によるマスク開口部の形成工程が不要となるため、生産性が顕著に向上する。
【0105】
上記実施形態では、マスクとなる樹脂膜160のパターニングを行う際に金型を用いたが、この金型を用いて直接柱状体を形成することもできる。具体的には、所定のプラスチック材料を基板上にコートした後、上記と同様の工程により囲う成型することができる。基板上にコートするプラスチック材料は、成型性が良好で、かつ、適度な親水性を有するものが好ましく用いられる。たとえば、ポリビニルアルコール系樹脂、特にエチレン−ビニルアルコール樹脂(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート等が好ましく用いられる。疎水性樹脂であっても、成型後、上記コーティングを行えば流路表面を親水性とすることができるので利用可能である。
【0106】
上記実施形態における最終工程であるシリコン熱酸化膜を形成の際に、酸化条件によっては膜が充分に形成されないこともあり得る。このような場合、電流が基板へ漏れてしまうことから、試料の分離を電気泳動により行う際には必要な電界が得られないことになる。これを回避するために、以下のようにして基板に分離用流路および液溜めを設けることができる。
【0107】
まず、図52(a)に示すようにシリコン基板201を熱酸化することによりシリコン酸化膜202を形成する。その後、シリコン酸化膜202上に多結晶シリコンを堆積させ、多結晶シリコン膜707を形成する。つづいて多結晶シリコン膜707を熱酸化することにより酸化膜708を形成する。
【0108】
次に、酸化膜708上にカリックスアレーン電子ビームネガレジストを形成し、電子ビーム(EB)を用い、液溜めおよび試料の流路となる領域をパターン露光することによりレジストをパターニングする。その後、酸化膜708をRIEエッチングし、レジストを除去して図52(b)に示された状態とする。つづいて、エッチングされた酸化膜708を保護膜として多結晶シリコン膜707をECRエッチングする。その後、酸化膜708を除去し、図52(c)に示された状態とする。その後、エッチングされた多結晶シリコン膜707を熱酸化することにより、シリコン酸化膜202と一体化させることにより図52(d)に示された状態とする。
【0109】
上記のようにして加工された分離用流路はシリコン基板201とは完全に絶縁されているため、電気泳動の際の電界を確実に確保することが可能である。
【0110】
なお、上記実施形態におけるシリコン基板201およびシリコン酸化膜202を石英基板で代替してもよい。また、シリコン基板201、シリコン酸化膜202および多結晶シリコン膜707の代わりにSOI(Silicon On Insulator)基板を利用することもできる。
【0111】
以上述べた実施形態においては、柱状体としてピラーを形成した例を示したが、カーボンナノチューブやカーボンナノホーンを用いて柱状体を形成することもできる。
【0112】
カーボンナノチューブは直径が1〜30nmのチューブ形状を有する。カーボンナノホーンは、たとえば先端が1nm程度、根本が4nmの微細な形状を有している。本発明における「柱状体」は、これらのものも含む用語として定義される。
【0113】
試料分離領域にカーボンナノチューブやカーボンナノホーンを形成する方法としては、核付け法や、親水性の樹脂にカーボンナノチューブ、カーボンナノホーンを混入し、その後樹脂からカーボンナノチューブ、カーボンナノホーンを引き出す方法等を採用することができる。
【0114】
カーボンナノチューブやカーボンナノホーンは撥水性であるため、表面を親水性に変換した上で本発明に適用することが望ましい。親水性に変換する方法としては、酸化処理等、カーボンナノチューブの親水化処理方法として公知の方法を用いることができる。なお、カーボンナノチューブの親水化処理方法は、カーボンナノホーンに対しても適用することができる。
【0115】
次に、スリットを介して複数に分割された分離領域を流路に設けた例について図35を参照して説明する。図示した構成では、流路中に、試料分離領域601が流路を塞ぐように形成されている。この試料分離領域601は、スリット602を介して複数に分割されている。壁603と試料分離領域601の間には間隙は存在しない。このような構成を採用した場合、分離された試料のバンドの形状が好適になり、分離能が向上する。この点について図36を参照して説明する。スリットがなく単一の試料分離領域601を設けた場合は、図中左の分図中、上部から下部に流動する試料の液面は、曲面となる。これは、壁に沿った部分では毛細管現象により試料の移動が促進される一方、流路断面中央部では毛細管現象の効果が少ないことによる。壁近傍では試料の流動が速められる結果、図示したようなバンド形状となるのである。これに対して、試料分離領域601を、スリット602を介して複数に分割した場合、スリットの存在により、分離中の液はいったんスリット上部の試料分離領域に保持されることとなる。スリット中には空気が存在しているため、スリット上部の試料分離領域に存在する試料の圧力がスリット中の空気に由来する圧力を超えたとき、はじめて試料分離領域からスリットへの液の移動が開始する。このように、試料を含む液がいったん試料分離領域に保持されるため、壁部および中央部で移動距離の差が生じても、保持される時間中にその差が解消されることとなる。この結果、スリットを抜けた段階では、液面は分離方向にほぼ垂直な平面となる(図36の右図)。これにより、分離方向に垂直な面での計測が正確に行われ、分離能が向上する。なお、試料分離領域601は、上述したようなパッチ領域あるいは柱状体配設部を設けたものであってもよいし、柱状体が満遍なく配設されてなる試料分離領域であってもよい。
【0116】
図37および図38は、上記した毛細管現象による試料のバンド形状の相違を示す図である。図37のように、試料分離領域として単一人工ゲルを設けた場合はバンド形状が試料進行方向に対して曲がった形状となる。これに対して、図38では、ピラーが疎に形成された領域と密に形成された領域を交互に形成した構成を採用している。ピラーが疎に形成された領域は、図35、36におけるスリットと同様の役割を果たす。すなわち、ピラーが疎に形成された領域の手前で試料を含む液がいったん停止し、この間にピラーが密に形成された領域において生じた液の移動距離の差が解消され、この結果、試料進行方向に対してほぼ平面のバンド形状が得られるのである。
【0117】
以上、毛細管現象を利用した分離装置におけるスリットおよびピラーが疎に形成された領域についての効果を説明したが、電界を利用した分離装置においても、スリット等を配設することにより上記と同様の効果を得ることができる。電気泳動などによる分離の場合でも、泳動するに従ってバンドは曲がった形状となることが知られている。このバンドの形状をスリット等によって整えることができる。なおこの場合、スリットが緩衝液で満たされていても、バンド形状を整える効果を得ることができる。
【0118】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、それぞれの実施の形態で用いた構成を任意に組み合わせることもできる。たとえば、図49(a)に示される柱状体配設部を有する分離領域の直前に、図47に示されるピラー列710を設け、さらに流路壁をコーティングした分離装置を実現することができる。
【0119】
【実施例】
実施例1
(分離装置の作製)
本発明に係る分離装置を、以下に示す手順で作製した。工程の詳細について図11〜15を参照して説明する。
【0120】
まず、図11(a)に示すように、シリコン基板201上にシリコン酸化膜202、カリックスアレーン電子ビームネガレジスト203(55nm)をこの順で形成する。シリコン酸化膜202、カリックスアレーン電子ビームネガレジスト203の膜厚は、35nm、55nmとする。次に、電子ビーム(EB)を用い、試料の流路となるアレー領域を露光する。現像はキシレンを用いて行い、イソプロピルアルコールによりリンスする。この工程により、図11(b)に示すように、パターニングされたレジスト204が得られる。
【0121】
つづいて全面にポジフォトレジスト205を塗布する(図11(c))。膜厚は1.8μmとする。その後、アレー領域が露光するようにマスク露光をし、現像を行う(図11(d))。
【0122】
次に、シリコン酸化膜202をCF4、CHF3の混合ガスを用いてRIEエッチングする。エッチング後の膜厚を35nmとする(図12(a))。レジストをアセトン、アルコール、水の混合液を用いた有機洗浄により除去した後、酸化プラズマ処理をする(図12(b))。つづいて、シリコン基板201をHBrガスを用いてECRエッチングする。エッチング後のシリコン基板の膜厚を400nmとする(図12(c))。つづいてBHFバッファードフッ酸でウェットエッチングを行い、シリコン酸化膜を除去する(図12(d))。
【0123】
次に、シリコン基板201上にCVDシリコン酸化膜206を堆積する(図13(a))。膜厚は100nmとする。つづいて全面にポジフォトレジスト207を塗布する(図13(b))。膜厚は1.8μmとする。つづいて図13(c)のように、流路領域をマスク露光し(アレー領域を保護)、現像する。その後、CVDシリコン酸化膜206をバッファードフッ酸でウェットエッチングした(図13(d))。その後、有機洗浄によりポジフォトレジストを除去した後(図14(a))、TMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド)を用いてシリコン基板201をウェットエッチングする(図14(b))。つづいてCVDシリコン酸化膜206をバッファードフッ酸でウェットエッチングして除去する(図14(c))。この状態の基板を炉に入れてシリコン熱酸化膜209を形成する(図14(d))。酸化膜の膜厚が20nmとなるように熱処理条件を選択する。このような膜を形成することにより、分離装置内に緩衝液を導入する際の困難を解消することができる。その後、ガラス210で静電接合を行いシーリングして分離装置を完成する(図15)。
【0124】
以上のようにして作製した分離装置は、外観上、問題がないことを確認した。
【0125】
(外観観察)
図14(d)の状態の試料を電子顕微鏡により外観観察した。ただし、シリコン酸化膜の厚みは30nmとした。結果を図10および図16に示す。多数のピラーが規則正しく配列していることがわかる。各ピラーの平均間隔は60nm程度である。
【0126】
実施例2
本実施例では、実施例1と同様のエッチング工程によりアスペクト比の異なる2種類のピラーを作製した後、これらを熱酸化したときの酸化の進行の程度について比較検討した。エッチングによりピラー形状に加工した後、試料1では、高さ440nm、ピラー間隔80nmであり、隣接する柱状体の側面が、該柱状体の底部において互いに接する程度に近接して形成されている(図22)。一方、試料2では、高さ200nm、ピラー間隔100nmであり、隣接する柱状体間に平坦な基板面が露出した状態となっている(図26)。柱状体の断面形状は、いずれも、頂部よりも底部において幅広となっており、末広がりな形状となっている。
【0127】
各試料の断面を電子顕微鏡観察した結果を図22〜29に示す。試料1は図22〜25に、試料2は図26〜29に対応している。図中、「10nm酸化」とは、ピラー側壁の酸化膜厚みが10nmとなる状態をいう。
【0128】
観察の結果、試料1ではピラー側壁の酸化膜厚みが増加しても、ピラー底部での酸化の進行は認められなかったのに対し、試料2では、20nmの酸化でピラーの側壁酸化はストップしているが、30nm酸化では周囲の酸化が進んでいるためにピラーの高さが小さくなっている様子がわかる。
【0129】
以上のことから、ピラー断面形状を、頂部よりも底部において幅広にし、隣接する柱状体の側面が、該柱状体の底部において互いに接する程度に近接して形成することによって、ばらつきの少ない高いアスペクト比のピラー群を好適に形成できることが確認された。
【0130】
実施例3
本実施例では、ピラーを高密度に形成した試料分離領域と、試料分離領域よりもピラーが疎に形成された調整領域と流路中の試料進行方向に対して交互に形成された構成を有している。試料分離領域は、電子線露光およびドライエッチングにより形成され、その領域サイズは40μm×60μmである。
【0131】
試料分離領域内では、ピッチ100nmで、図39のように三角格子状にピラーが並んでいる。各試料分離領域間には、ピラーが疎に並んでいる幅50nm程度の調整領域が形成されている。
【0132】
この装置を用いて試料を分離した結果を図40に示す。この図は、試料分離領域に試料を導入したときの試料の浸透の程度を経時的に観察した結果である。図中、左側から右側へ、時間が進行している。最上段の左端の分図が、開始時の状態を示す。試料が、試料分離領域の1段目を通過するのに0.73秒、2段目を通過するのに0.1秒、3段目を通過するのに0.12秒、4段目を通過するのに0.15秒、5段目を通過するのに0.2秒を要した。各段階において、試料が試料分離領域に保持され、この間に壁面近傍と断面中央部との移動距離の差が解消され、試料液面先端が平面になっている。この結果、検出部でのバンドの形状が直線的となり、検出領域を広げることが可能となり検出感度を向上できた。
【0133】
このように、本実施例の構成を採用することにより、ピラーの直径や密度で、毛細管現象でバッファ溶液が浸透していくスピードを制御することができ、特に、1秒以下の速さで進行する現象を制御することが可能となる。ピラーの密度分布を最適に設計すると、サンプルローディングの均一性を向上できる。
【0134】
実施例4
本実施例の分離装置は次のようなプロセスで作製した。まず、図45(a)に示すように、シリコン基板201上に膜厚35nmのシリコン酸化膜202を形成した。次に、膜厚55nmのカリックスアレーン電子ビームネガレジストを形成し、電子ビーム(EB)を用い、試料の流路となるアレー領域を露光した。現像はキシレンを用いて行い、イソプロピルアルコールによりリンスした。この工程により、図45(b)に示すように、パターニングされたレジスト204が得られた。次に、シリコン酸化膜202をCF4、CHF3の混合ガスを用いてRIEエッチングした(図45(c))。続いて、レジストをアセトン、アルコール、水の混合液を用いた有機洗浄により除去した後、酸化プラズマ処理し、シリコン基板201をHBrガスおよび酸素ガスを用いてECRエッチングした(図46(d))。その後、BHFバッファードフッ酸でウェットエッチングを行い、シリコン酸化膜を除去した。こうして得られた基板を炉に入れてシリコン熱酸化膜209を形成した(図46(e))。
【0135】
上記のようにして得られた基板の表面の走査型電子顕微鏡写真を図42に示す。この基板におけるピラーの寸法は図43に示されるとおり、ピラーの直径は約150nm、ピラーの高さは370nm、ピラーのピッチは350nmであった。また、パッチ領域の幅は2500nm、パッチ領域間の間隔は1000nmであった。
【0136】
なお、流路長は40mm、流路幅は80μm、流路の深さは370nmであった。
【0137】
図44は、本実施例の以降の工程を示す図であり、図44(a)〜(c)のいずれも左側が上面図を表し、右側が当該上面図のA−A’断面図を表している。
【0138】
図44(a)は、上記のようにして作製されたパッチ領域を備えた分離用流路701、液溜め702,703を備えた基板の上面図およびそのA−A’断面図である。なお、図44においてはピラーの表示を省略している。この基板上に、あらかじめ直径2mmの穴部705が設けられたカバーガラス704を静電接合させた(図44(b))。続いて、図44(c)に示されるように、内径3mm、外径5mm、高さ5mmのガラス管706を穴部705の周囲にエポキシ樹脂により接着した。
【0139】
次に、1×TBEバッファ(0.09Mトリスボレイト+2mM EDTA)をガラス管706から注入した。その後、2kbpのDNAを含むバッファを一方のリザーバーから注入した。その後、両方のガラス管706から白金線を挿入し、電圧(60V)を印加することによりDNAを電気泳動させた。同様の操作を5kbp、10kbpのDNAについても実施した。このときの各DNAの平均泳動速度を図53のグラフに示した。DNAのサイズが大きいほど泳動速度が大きくなる傾向が明らかとなった。
【0140】
なお、DNAの泳動速度は次のような操作により決定した。DNAをあらかじめ蛍光色素YOYO−1(Molecular probe社製)で処理しておき、蛍光顕微鏡で1000倍に拡大した。得られた映像をイメージインテンシファイア(浜松ホトニクス社製)により感度増強し、個々のDNAをトレースした。
【0141】
次に、統計的な傾向につき精査するために、5kbpおよび10kbpのDNA各々100個について、上記と同様の操作を実施した。図48は電気泳動の際のDNAの泳動速度分布を示したグラフである。10kbpおよび5kbpのDNAの平均泳動速度はそれぞれ40μm/s、34μm/sであり、DNAのサイズによって、泳動速度分布の差が認められ、分離能を有することが示唆された。
【0142】
100個ずつのDNAについて計測した上記の結果では,両分子の速度分布の裾野が広く見えるが、次の理由で十分高い分離能を持つことが判明した。すなわち、トレースする分子数をNとするとき、ピークの標準偏差は1/N1/2に比例して小さくなることが知られている(中央極限定理)。一般に、電気泳動でできるバンドには約数十万個(10の7乗個)のDNA分子が含まれるので、同数のDNAについてトレースすれば、100個の場合と比較して,ピークの標準偏差は1000001/2分の1、すなわち0.003倍程度に小さくなる。従って、上記分離結果のピークは極めて鋭いものになるに間違いないからである。
【0143】
そこで上記分離装置に、10kbp、5kbpのDNAを含むバッファを適用してピークの保持時間を正確に計測してみたところ、表1に示すように、10kbp、5kbpのDNAの保持時間がそれぞれ995秒、1170秒となり、互いに分離することが判明した。
【0144】
【表1】
【0145】
ここで、分離流路長14mmのアジレント社製の分離装置(バイオアナライザ)を用いたときの電気泳動分析結果を表2に示す。
【0146】
【表2】
【0147】
上記アジレント製の分離装置と比較するため、上記と同じ方法で流路長が2.8mmの分離装置を作製し、10kbp、5kbpのDNAを分析した。表3にその結果を示す。
【0148】
【表3】
【0149】
アジレント社の分離装置が異なる大きさのDNAを2〜4秒の保持時間の差で分離している(表2)のに対し、本実施例の分離装置は、10kbpおよび5kbpのDNAを12秒という長い保持時間差で分離している(表3)ことから優れた分離能を有していることがわかる。また、本実施例の分離装置は、アジレント社製の分離装置よりも短い分離流路により上記の分離能を実現していることから、理論段数の高い優れた分離装置であることが証明された。さらに、アジレント社製の分離装置はゲルを用いた電気泳動によるものであるため、10kbp程度またはそれ以上の大きさのDNAは目詰まりが起こり得るため、分析することができない場合もある。一方、本実施例の分離装置の場合は、パッチ領域間に適度な間隔が設けられているため、比較的大きなDNAはパッチ領域を回避しつつ、流路を通過することができる。そのため、目詰まりが生じることなく円滑に分析することが可能である。
【0150】
このように、本分離装置は優れた分離能を有し、その有用性が示された。
【0151】
実施例5
本発明の分離装置の性能をさらに確認するため、下記のような分離実験を行った。
【0152】
本実施例の分離装置は、長さ42mm、幅80μmの分離用流路と、長さ18mm、幅40μmの試料導入用流路が十文字状にクロスして設けられている。分離用流路内には、クロス点の下流、約30μmの位置から5.6mmにわたってピラー領域を配設した。ピラー配設部は、図51(c)の平面図のように配置された、高さ約0.4μm、長さ3μmの壁状ナノピラーから成る。各壁状ナノピラーは、700nmピッチでラダー状に設け、それらのラダー間に幅1200nmの溝が設けてある。これらの壁状ナノピラーは、EB露光とガスエッチングにより作製した。
【0153】
試料には、2kbp、5kbp、および10kbpの長さのDNAを用いた。観察のために、それぞれYOYO−1(Molecular probe社製)で染色して用いた。DNAの長さに関しては、蛍光の強度と分子形状から長さを容易に判別できるようにするという観点から選択した。これら3種類の長さのDNAを含む試料を、次の手順でパルス状に分離用流路に導入した。パルス状に導入するため、まず試料を試料導入用流路の一端に導入し、その端を−50V、他端を+30Vになるように電圧を印加して試料導入用流路に試料を導入した。この時、分離用流路の両端には−40Vの電圧を印加して、試料導入用流路から分離用流路への試料の拡散が生じないようにした。次に、0.5秒間だけ試料導入用流路にかけた電圧を反転させて、試料を引き戻すことにより、分離用流路にかかる部分の試料の幅を細くした。最後に、試料導入用流路の両端を−15V、分離用流路の遠位端を0V、近位端を−10Vにセットすることで、試料導入用流路から分離用流路へ試料がさらに引き込まれることを防ぎつつ、試料導入用流路と分離用流路の交点に存在する試料の細いパルス状のバンドだけを分離用流路に導入した。
【0154】
導入された試料は、分離用流路を通過するに従って、3種の長さのDNAそれぞれが構成する3つのバンドに分離された。試料導入用流路と分離用流路のクロス点から下流に1mmの位置において次の手法で蛍光量を実測した。蛍光顕微鏡を用い、染色したDNAを蛍光ランプで励起するとDNAの長さに応じて蛍光を発する。この蛍光を、蛍光顕微鏡に取り付けたフォトマルチプレクサ(浜松ホトニクス社製 H7467)で受け、その強度信号を記録した。同時に、流れている分子をハーフミラーを介して1000倍にて観察し、どの長さのDNAが通過しているかについても確認を行った。
【0155】
図57は、フォトマルチプレクサの信号強度(フォトンカウント)を縦軸、試料の導入からの経過時間を横軸としたグラフである。試料が導入された時点から、まず10kbpのDNAが160秒で最初にピークを形成し、ついで220秒後に5kbpのDNAが、そして290秒後に2kbpのDNAがピークを形成し、3種類の長さのDNAが明瞭に分離されていることがわかる。この結果から、この分離装置においては、サイズの大きな分子ほど分離用流路を速く通過することが示され、目詰まりをおこしにくいゲル濾過的分離機構を実現していることが明らかとなった。さらに、この分離結果をもとに理論カラム高さ(HETP:height equivalent to a theoretical plate)を計算した結果、2kbpのDNAについては、4.85μm、10kbpのDNAについては0.81μmという結果が得られた。理論カラム高さは、分離装置の分離能を計る指標の1つで、その長さが短いほど高い分離能である。通常のゲルろ過カラム、例えば、DNAを含む生体高分子の分離に用いられるカラムの理論カラム高さは、概ね10μm〜100μmである。例えば、市販のカラム、Ohpack SB−80シリーズ(昭和電工株式会社製)の理論カラム高さは、25μmであり、同社の高分解能カラムGPC KF−40シリーズでも10μmであることから、本発明の分離装置は、理論カラム高さの観点から、それらのカラムよりも優れた分離能を持つことが明らかである。
【0156】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、試料分離領域中に、多数の柱状体が所定の間隔で配設されてなる柱状体配設部を設けており、また、柱状体の表面が親水性膜で覆われているため、目詰まり等の問題を生じることなく様々なサイズの物質を含む試料を短時間かつ優れた分解能で分別できる。また核酸やタンパク質等のサイズの小さい分子を少量の試料で短時間に優れた分解能で分別できる。
【0157】
また本発明によれば、試料分離領域中に、多数の柱状体が配設された柱状体配設部を複数形成し、柱状体の表面が親水性膜で覆われており、また、隣接する柱状体配設部間に前記試料が通過するパスを設けた構成を採用しているため、サイズの分布が広い試料についても、目詰まりの発生やスループットの低下をもたらすことなく高い分解能で分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る分離装置の一例を示す図である。
【図2】図1中の分離用流路の構造を詳細に示した図である。
【図3】図1中の分離用流路の構造を詳細に示した図である。
【図4】試料の分離方式を説明するための図である。
【図5】試料の分離方式を説明するための図である。
【図6】ピラーパッチの配置を示す平面図である。
【図7】ピラーパッチの配置を示す平面図である。
【図8】電気浸透流を調節するための補正電圧の印加方法を示す図である。
【図9】チップに緩衝液を導入する方法を説明する図である。
【図10】電子顕微鏡によるピラーの外観観察結果を示す図である。
【図11】本発明の分離装置の製造方法を説明するための図である。
【図12】本発明の分離装置の製造方法を説明するための図である。
【図13】本発明の分離装置の製造方法を説明するための図である。
【図14】本発明の分離装置の製造方法を説明するための図である。
【図15】本発明の分離装置の製造方法を説明するための図である。
【図16】電子顕微鏡によるピラーの外観観察結果を示す図である。
【図17】本発明に係るナノ構造体の断面図である。
【図18】本発明の分離装置の製造方法を説明するための図である。
【図19】本発明の分離装置の製造方法を説明するための図である。
【図20】本発明の分離装置の製造方法を説明するための図である。
【図21】本発明の分離装置の製造方法を説明するための図である。
【図22】電子顕微鏡によるピラーの外観観察結果を示す図である。
【図23】電子顕微鏡によるピラーの外観観察結果を示す図である。
【図24】電子顕微鏡によるピラーの外観観察結果を示す図である。
【図25】電子顕微鏡によるピラーの外観観察結果を示す図である。
【図26】電子顕微鏡によるピラーの外観観察結果を示す図である。
【図27】電子顕微鏡によるピラーの外観観察結果を示す図である。
【図28】電子顕微鏡によるピラーの外観観察結果を示す図である。
【図29】電子顕微鏡によるピラーの外観観察結果を示す図である。
【図30】本発明の分離装置の一例を示す図である。
【図31】本発明の分離装置の一例を示す図である。
【図32】本発明の分離装置の一例を示す図である。
【図33】本発明の分離装置の一例を示す図である。
【図34】本発明の分離装置の一例を示す図である。
【図35】本発明の分離装置の一例を示す図である。
【図36】本発明の分離装置の一例を示す図である。
【図37】流路構造の一例を示す図である。
【図38】流路構造の一例を示す図である。
【図39】本発明の分離装置中の試料分離領域の外観を示す電子顕微鏡写真である。
【図40】本発明の分離装置を用いた試料の分離の様子を示す図である。
【図41】本発明の分離装置に用いるジョイントの具体的な構造を示す図である。
【図42】本発明の分離装置の表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図43】本発明の分離装置におけるピラーの寸法を示した図である。
【図44】本発明の分離装置の作製の工程を説明するための図である。
【図45】本発明の分離装置の作製の工程を説明するための図である。
【図46】本発明の分離装置の作製の工程を説明するための図である。
【図47】本発明の一実施形態を示した図である。
【図48】本発明の分離装置におけるDNAの泳動速度分布を示したグラフである。
【図49】本発明の一実施形態を示した図である。
【図50】本発明の一実施形態を示した図である。
【図51】本発明の一実施形態を示した図である。
【図52】本発明の分離装置の作製の工程を説明するための図である。
【図53】本発明の分離装置におけるDNAの平均泳動速度を示したグラフである。
【図54】本発明の一実施形態を示した図である。
【図55】本発明の実施形態の一例における液溜めの構造を説明するための図である。
【図56】本発明の実施形態の一例における液溜めの構造を説明するための図である。
【図57】本発明の分離装置におけるDNAの分離データを示すグラフである。
【符号の説明】
1 サンプル溜め
2 投入用ポンプ
3 定速注入装置
4 電磁弁
5 電磁弁
6 廃液溜め
7 液溜め
8 分離用ポンプ
9 定速注入装置
10 電磁弁
11 電磁弁
12 オートサンプラー
13,14,15,16 チューブ
17 ジョイント
19 投入用流路
20 分離用流路
21 制御ユニット
101a、b 液溜め
102a、b 液溜め
103a、b 液溜め
104 シリコン酸化膜
105 シリコン酸化膜
106 金型
107 レジスト膜
110 基板
111 投入用流路
112 分離用流路
113 検出部
114 回収用流路
120 基板
121 ピラーパッチ
122 被覆部
123 流路
125 ピラー
129 流路の壁
130 パッチ領域
150 チップ
151 遠心管
153 ホルダー
160 樹脂膜
201 シリコン基板
202 シリコン酸化膜
203 カリックスアレーン電子ビームネガレジスト
204 パターニングされたレジスト
205 ポジフォトレジスト
206 CVDシリコン酸化膜
207 ポジフォトレジスト
209 シリコン熱酸化膜
210 ガラス
502 一時停止スリット
503 サンプル保持部
504 バッファー導入部
505 一時停止スリット
506 分離部
507 一時停止スリット
509 投入穴
510 バッファー注入口
520 サンプル注入口
530 サンプル定量管
540 分離用流路
550 基板
560 空気穴
570 サンプル投入管
580 排出口
601 試料分離領域
602 スリット
603 壁
701 分離用流路
702,703 液溜め
704 カバーガラス
705 穴部
706 ガラス管
707 多結晶シリコン膜
708 酸化膜
709 分離対象の分子群
710 ピラー列
711 分離領域
712 小さなピラーパッチ
713 中程度のピラーパッチ
714 大きなピラーパッチ
801 被覆
802 開口部
803 伝導路
804 電極板
900 レジスト
Claims (21)
- 試料の通る流路と、該流路中に設けられた試料分離領域とを備える分離装置であって、前記試料分離領域は、複数の柱状体が配設された柱状体配設部を含み、前記柱状体の表面が親水性膜で覆われたことを特徴とする分離装置。
- 基板上に形成された溝部からなる試料の通る流路と、前記流路に試料を導く試料導入部と、前記流路中に設けられた、試料を複数の成分に分離する試料分離領域と、前記試料分離領域で分離された試料を分析または分取する試料回収部と、を備え、前記試料分離領域は、前記流路内壁に複数の柱状体が形成されてなる柱状体配設部を含み、前記柱状体の表面が親水性膜で覆われたことを特徴とする分離装置。
- 請求項1または2に記載の分離装置において、前記親水性膜は、前記柱状体を構成する材料の酸化膜であることを特徴とする分離装置。
- 請求項1乃至3いずれかに記載の分離装置において、前記柱状体の断面形状が、頂部よりも底部において幅広となっていることを特徴とする分離装置。
- 請求項1乃至4いずれかに記載の分離装置において、前記複数の柱状体は、隣接する柱状体の側面が、該柱状体の底部において互いに接する程度に近接して形成されたことを特徴とする分離装置。
- 請求項1乃至5いずれかに記載の分離装置において、前記試料分離領域が前記柱状体配設部を複数含み、隣接する柱状体配設部間に前記試料が通過するパスが設けられたことを特徴とする分離装置。
- 請求項6に記載の分離装置において、前記パスの幅は、柱状体配設部中の柱状体間の平均間隔よりも大きいことを特徴とする分離装置。
- 請求項6または7に記載の分離装置において、前記パスが流路の試料進行方向とは異なる方向に設けられたことを特徴とする分離装置。
- 請求項6乃至8いずれかに記載の分離装置において、前記柱状体配設部中の柱状体間の平均間隔が100nm以下であることを特徴とする分離装置。
- 請求項1乃至9いずれかに記載の分離装置において、前記柱状体配設部を構成する複数の柱状体の密度が、流路の試料進行方向に向かって次第に低くなっていることを特徴とする分離装置。
- 請求項1乃至10いずれかに記載の分離装置において、前記柱状体配設部を構成する複数の柱状体の密度が、流路の試料進行方向に向かって次第に高くなっていることを特徴とする分離装置。
- 請求項1乃至11いずれかに記載の分離装置において、前記柱状体の頂部と前記流路の壁面とが離間していることを特徴とする分離装置。
- 請求項1乃至12いずれかに記載の分離装置において、柱状体が一列に配設された堰止部をさらに有することを特徴とする分離装置。
- 請求項13に記載の分離装置において、前記堰止部が前記試料分離領域に隣接して配設されていることを特徴とする分離装置。
- 請求項1乃至14いずれかに記載の分離装置において、前記流路内壁の表面が親水化処理されたことを特徴とする分離装置。
- 請求項1乃至15いずれかに記載の分離装置において、前記試料分離領域が、スリットを介して複数に分割されたことを特徴とする分離装置。
- 請求項1乃至16いずれかに記載の分離装置において、前記試料分離領域と、前記試料分離領域よりも柱状体が疎に形成された調整領域とが、流路中の試料進行方向に対して交互に形成されたことを特徴とする分離装置。
- 請求項1乃至17いずれかに記載の分離装置において、前記試料に外力を付与して前記試料を前記流路中で移動せしめる外力付与手段をさらに備えたことを特徴とする分離装置。
- 請求項18に記載の分離装置において、前記外力が圧力であることを特徴とする分離装置。
- 請求項1乃至19いずれかに記載の分離装置において、前記試料が核酸またはタンパク質を含むことを特徴とする分離装置。
- 基板表面に複数の柱状体が配設されてなるナノ構造体であって、前記柱状体の断面形状が、頂部よりも底部において幅広となっており、前記複数の柱状体は、隣接する柱状体の側面が、該柱状体の底部において互いに接する程度に近接して形成されていることを特徴とするナノ構造体。
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