JP3602725B2 - カルボラン含有ケイ素系重合体 - Google Patents
カルボラン含有ケイ素系重合体 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3602725B2 JP3602725B2 JP24316698A JP24316698A JP3602725B2 JP 3602725 B2 JP3602725 B2 JP 3602725B2 JP 24316698 A JP24316698 A JP 24316698A JP 24316698 A JP24316698 A JP 24316698A JP 3602725 B2 JP3602725 B2 JP 3602725B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- bis
- carborane
- group
- benzene
- trimethylsilylethynyl
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Silicon Polymers (AREA)
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は耐熱性、難燃性に優れた機能性材料として有用なカルボラン含有ケイ素系重合体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、耐熱性、難燃性に優れたケイ素系重合体が開発されてきた。
また、高分子反応により重合体を架橋させる方法で分子量や機械的強度の向上も試みられている(Organometallics, 15, 75(1996) )が、耐熱性、難燃性は必ずしも十分なものではなかった。
【0003】
一方、カルボラン含有ケイ素系重合体については幾つか知られており、例えば、J. Macromol. Sci. −Rev. Macromol. Chem., C17(2), 173−208 (1979) には、ポリ(ドデカカルボラン−シロキサン)について報告されている。
また、特表平8−505649号公報には、有機ホウ素ポリマーが開示されており、カルボランを導入することによりシロキサンポリマーの熱安定性が向上することが報告されている。
【0004】
しかしながら、上記有機ホウ素ポリマーはアセチレン基含有ジリチオ塩と両末端クロロ基含有カルボランシロキサンとの反応により得られるが、モノマーであるカルボラン含有ケイ素系化合物の合成に数段階を要するため、簡便な方法ではなかった。
【0005】
従って、上記従来の有機ホウ素ポリマー以外に、カルボラン含有ケイ素系重合体は殆ど知られておらず、耐熱性に優れた新規なカルボラン含有ケイ素系重合体の開発が期待されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記欠点を鑑み、耐熱性及び難燃性に優れた新規なカルボラン含有ケイ素系重合体を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、反応性二重結合基を側鎖に含有するケイ素系重合体とシリル置換カルボラン誘導体とを複合化させることを試みた。二重結合基とシリル基との反応は非常に効率がよく、しかもカルボランが重合体中に簡便に導入されることが期待できる。また、重合体の側鎖に反応性の二重結合が存在するため、効率的に、より多くのカルボランを導入することができ、重合体の耐熱性及び難燃性のさらなる向上が期待できる。
【0008】
本発明のカルボラン含有ケイ素系重合体は、一般式(1)及び一般式(2)で表される繰り返し単位を持つケイ素系重合体と、一般式(3)で表されるシリル置換カルボラン誘導体とを反応させることにより得られ、重量平均分子量が500以上であることを特徴とする。
【0009】
【化4】
【0010】
【化5】
【0011】
【化6】
【0012】
式中、R1 、R2 、R3 及びR4 は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜30のアリール基を示し、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。なお、二つのエチニレン基及びR1 〜R4 のベンゼン環に対する位置は任意である。R5 は、ケイ素原子に結合した炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜30のアリール基を示し、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。R6 は、炭素数1〜20のアルキレン基又は炭素数6〜30のアリーレン基を示すがなくてもよい。なお、R6 がない場合は、ケイ素原子にビニル基が直接結合している。また、CBxHx’Cは、2価のかご状のホウ素化合物であるカルボランを表し、x,x’は3〜16の整数を示す。
【0013】
上記R1 〜R5 で表される炭化水素基の炭素数は、脂肪族の場合多くなると結合が切れやすくなり耐熱性が低下するため、芳香族の場合多くなると溶媒に対する溶解性が低下するため、上記範囲に限定される。
【0014】
上記R1 〜R5 で表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基などが挙げられる。
【0015】
上記R1 〜R5 で表されるアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
【0016】
上記R6 で表されるアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基、ノナデシレン基、エイコシレン基などが挙げられる。
【0017】
上記R6 で表されるアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、トリレン基、キシリレン基、ビフェニレン基、ナフタレニレン基、アントラセニレン基などが挙げられる。
【0018】
上記CBxHx’Cで表されるカルボランとしては、例えば、ドデカカルボラン、デカカルボラン、ヘプタカルボラン、ヘキサカルボラン、ペンタカルボラン等が挙げられる。
【0019】
上記R1 、R2 、R3 、R4 及びR5 は、以下についても同様の炭化水素基を示し、上記CBxHx’Cは、以下についても同様のカルボランを表す。
【0020】
一般式(1)で表されるケイ素系重合体の構成単位としては、例えば、1,4−ジエチニルベンゼン、1,4−ジエチニルー2ー メチルベンゼン、1,4−ジエチニル−2,3− ジメチルベンゼン、1,4−ジエチニル−2,5− ジメチルベンゼン、1,4−ジエチニル−2,6− ジメチルベンゼン、1,4−ジエチニル−3,5− ジメチルベンゼン、1,4−ジエチニル−2,3,5,6− テトラメチルベンゼン、1,4−ジエチニル−2− (トリメチルシリル)ベンゼン、1,4−ジエチニル−2,3− ビス(トリメチルシリル)ベンゼン、1, 4− ジエチニル−2,5− ビス(トリメチルシリル)ベンゼン、1,4−ジエチニル−2,6− ビス(トリメチルシリル)ベンゼン、1,4−ジエチニル−2,3,5,6− テトラキス(トリメチルシリル)ベンゼン、1,3−ジエチニルベンゼン、1,3−ジエチニル−2− メチルベンゼン、1,3−ジエチニル−4− メチルベンゼン、1,3−ジエチニル−5− メチルベンゼン、1,3−ジエチニル−2,4− ジメチルベンゼン、1,3−ジエチニル−2,5− ジメチルベンゼン、1,3−ジエチニル−4,5− ジメチルベンゼン、1,3−ジエチニル−4,6− ジメチルベンゼン、1,3−ジエチニル−2,4,5,6− テトラメチルベンゼン、1,3−ジエチニル−2− (トリメチルシリル)ベンゼン、1,3−ジエチニル−4− (トリメチルシリル)ベンゼン、1,3−ジエチニル−5− (トリメチルシリル)ベンゼン、1,3−ジエチニル−2,4− ビス(トリメチルシリル)ベンゼン、1,3−ジエチニル−2,5− ビス(トリメチルシリル)ベンゼン、1,3−ジエチニル−4,5− ビス(トリメチルシリル)ベンゼン、1,3−ジエチニル−4,6− ビス(トリメチルシリル)ベンゼン、1,3−ジエチニル−2,4, 5,6−テトラキス(トリメチルシリル)ベンゼン、1,2−ジエチニルベンゼン、1,2−ジエチニル−3− メチルベンゼン、1,2−ジエチニル−4− メチルベンゼン、1,2−ジエチニル−3,4− ジメチルベンゼン、1,2−ジエチニル−3,5− ジメチルベンゼン、1,2−ジエチニル−3,6− ジメチルベンゼン、1,2−ジエチニル−4,5− ジメチルベンゼン、1,2−ジエチニル−3,4,5,6− テトラメチルベンゼン、1,2−ジエチニルベンゼン、1,2−ジエチニル−3− (トリメチルシリル)ベンゼン、1,2−ジエチニル−4− (トリメチルシリル)ベンゼン、1,2−ジエチニル−3,4− ビス(トリメチルシリル)ベンゼン、1,2−ジエチニル3,5−ビス(トリメチルシリル)ベンゼン、1,2−ジエチニル−3,6− ビス(トリメチルシリル)ベンゼン、1,2−ジエチニル−4,5− ビス(トリメチルシリル)ベンゼン、1,2−ジエチニル−3,4,5,6− テトラキス(トリメチルシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリメチルシリルエチニル)ベンゼン、1,4−ビス(トリメチルシリルエチニル)−2− メチルベンゼン、1,4−ビス(トリメチルシリルエチニル)−2,3− ジメチルベンゼン、1,4−ビス(トリメチルシリルエチニル)−2,5− ジメチルベンゼン、1,4−ビス(トリメチルシリルエチニル)−2,6− ジメチルベンゼン、1,4−ビス(トリメチルシリルエチニル)−3,5− ジメチルベンゼン、1,4−ビス(トリメチルシリルエチニル)−2,3,5,6− テトラメチルベンゼン、1,4−ビス(トリメチルシリルエチニル)−2− (トリメチルシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリメチルシリルエチニル)−2,3− ビス(トリメチルシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリメチルシリルエチニル)−2,5− ビス(トリメチルシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリメチルシリルエチニル)−2,6− ビス(トリメチルシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリメチルシリルエチニル)−2,3,5,6− テトラキス(トリメチルシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリメチルシリルエチニル)ベンゼン、1,3−ビス(トリメチルシリルエチニル)−2− メチルベンゼン、1,3−ビス(トリメチルシリルエチニル)−4− メチルベンゼン、1,3−ビス(トリメチルシリルエチニル)−5− メチルベンゼン、1,3−ビス(トリメチルシリルエチニル)−2,4− ジメチルベンゼン、1,3−ビス(トリメチルシリルエチニル)−2,5− ジメチルベンゼン、1,3−ビス(トリメチルシリルエチニル)−4,5− ジメチルベンゼン、1,3−ビス(トリメチルシリルエチニル)−4,6− ジメチルベンゼン、1,3−ビス(トリメチルシリルエチニル)−2,4,5,6− テトラメチルベンゼン、1,3−ビス(トリメチルシリルエチニル)−2− (トリメチルシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリメチルシリルエチニル)−4− (トリメチルシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリメチルシリルエチニル)−5− (トリメチルシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリメチルシリルエチニル)−2,4− ビス(トリメチルシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリメチルシリルエチニル)−2,5− ビス(トリメチルシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリメチルシリルエチニル)−4,5− ビス(トリメチルシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリメチルシリルエチニル)−4,6− ビス(トリメチルシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリメチルシリルエチニル)−2,4,5,6− テトラキス(トリメチルシリル)ベンゼン、1,2−ビス(トリメチルシリルエチニル)ベンゼン、1,2−ビス(トリメチルシリルエチニル)−3− メチルベンゼン、1,2−ビス(トリメチルシリルエチニル)−4− メチルベンゼン、1,2−ビス(トリメチルシリルエチニル)−3,4− ジメチルベンゼン、1,2−ビス(トリメチルシリルエチニル)−3,5− ジメチルベンゼン、1,2−ビス(トリメチルシリルエチニル)−3,6− ジメチルベンゼン、1,2−ビス(トリメチルシリルエチニル)−4,5− ジメチルベンゼン、1,2−ビス(トリメチルシリルエチニル)−3,4,5,6− テトラメチルベンゼン、1,2−ビス(トリメチルシリルエチニル)ベンゼン、1,2−ビス(トリメチルシリルエチニル)−3− (トリメチルシリル)ベンゼン、1,2−ビス(トリメチルシリルエチニル)−4− (トリメチルシリル)ベンゼン、1,2−ビス(トリメチルシリルエチニル)−3,4− ビス(トリメチルシリル)ベンゼン、1,2−ビス(トリメチルシリルエチニル)−3,5− ビス(トリメチルシリル)ベンゼン、1,2−ビス(トリメチルシリルエチニル)−3,6− ビス(トリメチルシリル)ベンゼン、1,2−ビス(トリメチルシリルエチニル)−4,5− ビス(トリメチルシリル)ベンゼン、1,2−ビス(トリメチルシリルエチニル)−3,4,5,6− テトラキス(トリメチルシリル)ベンゼン等が挙げられる。
【0021】
一般式(2)で表されるケイ素系重合体の構成単位としては、例えば、メチルビニルシリレン、エチルビニルシリレン、プロピルビニルシリレン、ブチルビニルシリレン、ペンチルビニルシリレン、ヘキシルビニルシリレン、フェニルビニルシリレン、トリルビニルシリレン、キシリルビニルシリレン、メチルアリルシリレン、エチルアリルシリレン、プロピルアリルシリレン、ブチルアリルシリレン、ペンチルアリルシリレン、ヘキシルアリルシリレン、フェニルアリルシリレン、トリルアリルシリレン、キシリルアリルシリレン、メチルプロペニルシリレン、エチルプロペニルシリレン、プロピルプロペニルシリレン、ブチルプロペニルシリレン、ペンチルプロペニルシリレン、ヘキシルプロペニルシリレン、フェニルプロペニルシリレン、トリルプロペニルシリレン、キシリルプロペニルシリレン、メチルブテニルシリレン、エチルブテニルシリレン、プロピルブテニルシリレン、ブチルブテニルシリレン、ペンチルブテニルシリレン、ヘキシルブテニルシリレン、フェニルブテニルシリレン、トリルブテニルシリレン、キシリルブテニルシリレン等が挙げられる。
【0022】
上記シリル置換カルボラン誘導体(3)は、任意の方法で合成することができ、例えば、一般式(4)で表されるジエチニルベンゼン誘導体と、一般式(5)で表されるビスシリルカルボランとを反応させることによって得られる。
【0023】
【化7】
【0024】
【化8】
【0025】
上記ジエチニルベンゼン誘導体(4)は、一般式(1)で表されるケイ素系重合体の構成単位の重合部分に水素原子が結合した化合物と同一である。
【0026】
上記ビスシリルカルボラン(5)としては、例えば、m−ビス(ジメチルシリル)カルボラン、m−ビス(ジエチルシリル)カルボラン、m−ビス(ジプロピルシリル)カルボラン、m−ビス(ジブチルシリル)カルボラン、m−ビス(ジペンチルシリル)カルボラン、m−ビス(ジヘキシルシリル)カルボラン、m−ビス(ジフェニルシリル)カルボラン、m−ビス(ジトリルシリル)カルボラン、m−ビス(ジキシリルシリル)カルボラン、m−ビス(ジビフェニルシリル)カルボラン、m−ビス(ジナフチルシリル)カルボラン、m−ビス(ジアントラセニルシリル)カルボラン、m−ビス(メチルエチルシリル)カルボラン、m−ビス(メチルプロピルシリル)カルボラン、m−ビス(メチルブチルシリル)カルボラン、m−ビス(メチルペンチルシリル)カルボラン、m−ビス(メチルヘキシルシリル)カルボラン、m−ビス(エチルプロピルシリル)カルボラン、m−ビス(エチルブチルシリル)カルボラン、m−ビス(エチルペンチルシリル)カルボラン、m−ビス(エチルヘキシルシリル)カルボラン、m−ビス(プロピルブチルシリル)カルボラン、m−ビス(プロピルペンチルシリル)カルボラン、m−ビス(プロピルヘキシルシリル)カルボラン、m−ビス(ペンチルヘキシルシリル)カルボラン、m−ビス(メチルフェニルシリル)カルボラン、m−ビス(エチルフェニルシリル)カルボラン、m−ビス(プロピルフェニルシリル)カルボラン、m−ビス(ブチルフェニルシリル)カルボラン、m−ビス(ペンチルフェニルシリル)カルボラン、m−ビス(ヘキシルフェニルシリル)カルボラン、及びこれらのo−、p−異性体等が挙げられる。
【0027】
本発明のカルボラン含有ケイ素系重合体の重量平均分子量は小さくなると十分な耐熱性が得られなくなるため500以上に限定され、逆に大きくなると溶媒に対する溶解性が低下するため500万以下が好ましい。
【0028】
上記反応に使用される触媒としては、例えば、塩化白金酸〔H2 PtCl5 ・6H2 O)、ヘキサロジウムヘキサデカカルボニル、ビス(ジビニルテトラメチルジシロキサン)白金{Pt[CH2=CHSi(CH3)2OSi(CH3)2CH=CH2]2}等が挙げられる。
【0029】
上記触媒の使用量は、少なくなると反応が十分進行せず、多くなると合成後の重合体中に残存しやすくなり、耐熱性が低下するため、ケイ素系重合体の構成単位に対して0.001〜20mol%が好ましく、より好ましくは0.01〜10mol%である。
【0030】
上記反応に使用されるケイ素系重合体とシリル置換カルボラン誘導体とのモル比は、カルボランの導入量が少なすぎると得られる重合体の耐熱性、難燃性があまり向上しないため、ケイ素系重合体:シリル置換カルボラン誘導体=1:0.01〜20が好ましく、より好ましくは1:0.1〜10である。
【0031】
上記反応に使用される溶媒は極性、無極性いずれでもよいが、好ましくはトルエン、テトラヒドロフランなどの非プロトン性溶媒である。
上記溶媒の使用量は、ケイ素系重合体の構成単位の濃度で0.01〜50mol/L(リットル)が好ましく、より好ましくは0.05〜5mol/Lである。
【0032】
上記反応は室温から溶媒の沸点の間の温度で行われる。また、この反応は空気中又は不活性ガス雰囲気下のいずれでも行えるが、好ましくはアルゴンガス又は窒素ガス雰囲気下である。
上記反応の反応時間は短すぎるとカルボランの導入反応が十分に進行しないため耐熱性が向上せず、逆に長くなりすぎると架橋反応が進行して溶媒に溶けなくなり、取り扱いが困難になるため、1〜72時間が好ましい。
【0033】
反応終了後、ケイ素系重合体の精製方法としては、再沈殿法又はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分取等が挙げられる。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施例を説明する。
【0035】
(実施例1)
<ポリ(1,3−ジエチニルベンゼン・フェニルビニルシリレン)の合成>
還流管及び滴下ロート付2Lの3つ口フラスコ反応器をアルゴン置換した後、これに1,3−ジエチニルベンゼン25.24g(200.0mmol)を入れ、テトラヒドロフラン900mlに溶解した。反応器をドライアイス・メタノール浴で冷却した後、n−ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.6mol/L)250mlを1時間かけて滴下し、2時間攪拌した。フェニルビニルジクロロシラン40.68g(200.3mmol)のテトラヒドロフラン溶液100mlを40分かけて滴下し、室温で24時間攪拌した。反応液を塩化アンモニウム飽和水溶液1.4L中に投入し、数分攪拌後、テトラヒドロフラン層を分離した。
水層をジエチルエーテルで3回抽出後、有機層を合わせて無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、有機溶媒を濃縮しメタノール4L中に投入した。生成した沈殿を濾別し、黄白色粉末のポリマーを38.46g得た。
【0036】
<カルボラン誘導体の合成>
アルゴン置換した還流管付200mlの枝付ナスフラスコに1,4−ジエチニルベンゼン2.53g(20.0mmol)を入れ、トルエン80mlに溶解した。次いで、1,7−ビス(ジメチルシリル)ドデカカルボラン20.86g(80.1mmol)のトルエン溶液40mlを投入した。この反応液を50℃に昇温し、0.15mmolの触媒〔ビス(ジビニルテトラメチルジシロキサン)白金〕のトルエン溶液を加えた後、オイルバスの温度を125℃に昇温して8時間加熱還流した。次いで反応溶液を減圧留去した後、蒸留により未反応の1,7−ビス(ジメチルシリル)ドデカカルボラン等を除き、一般式(6)で表されるカルボラン誘導体10.45gを得た。
【0037】
【化9】
【0038】
図1にカルボラン誘導体の 1H−NMRスペクトル(ブルカー社製「DRX300」で測定)を示す。3.9ppmにヒドロシリル基、0.7〜4ppmにかけてカルボラン、0.1〜0.4ppmにケイ素原子に結合したメチル基、7.4ppmにフェニル基、6.2〜6.9ppmにかけて二重結合部分のプロトンのピークがそれぞれ確認される。このことから得られたカルボラン誘導体は一般式(6)の構造であることを確認した。
【0039】
<複合体の合成>
アルゴン置換した還流管付300mlの4つ口フラスコにポリ(1,3−ジエチニルベンゼン・フェニルビニルシリレン)7.75g(30.2mmol)を入れ、トルエン200mlに溶解した。反応液を50℃に昇温し、0.15mmolの触媒〔ビス(ジビニルテトラメチルジシロキサン)白金〕のトルエン溶液を入れ、10分撹拌した。次いで、カルボラン誘導体9.78g(15.1mmol)のトルエン溶液30mlを滴下後、オイルバスの温度を125℃に昇温して10時間加熱還流した。反応溶液を減圧留去した後、メタノール1.7L中に投入した。生成した沈殿を濾別し、黄白色の粉末14.9gを得た。この重合体の重量平均分子量はポリスチレン換算で55,900であった。
【0040】
実施例1で得られた重合体の 1H−NMRスペクトル(ブルカー社製「DRX300」で測定)を図2に、IRスペクトル(バイオラッド社製「FTS135システム」で測定)を図3にそれぞれ示した。
【0041】
図2で、0.7〜4ppmにかけてカルボランに基づくプロトンのピークがみられる。また、0.07〜0.6ppmにケイ素原子に結合したメチル基、メチレン基のプロトンのピークが、7〜8ppmにはフェニル基のプロトンのピークが確認される。また、図3では2590cm−1にカルボランに起因する吸収がみられる。これらのことから実施例1は一般式(7)の構造を持つカルボラン含有ケイ素系重合体であることを確認した。
【0042】
【化10】
【0043】
(比較例1)
アルゴン置換した還流管付100mlの2つ口フラスコにポリ(1,3−ジエチニルベンゼン・フェニルビニルシリレン)0.51g(2.0mmol)を入れ、テトラヒドロフラン10mlに溶解した。反応液を55℃に昇温し、触媒(H2 PtCl5 ・6H2 O)0.005g(0.01mmol)のイソプロパノール溶液1mlを入れ、10分撹拌した後、1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼン0.19g(1.0mmol)のテトラヒドロフラン溶液5mlを滴下後、オイルバスの温度を75℃に昇温し、10時間加熱還流した。
次いで、反応溶液を室温まで冷却し、メタノール500ml中に投入した。
生成した沈殿を濾別し、一般式(8)で表される重合体(黄白色の粉末0.478g)を得た。
【0044】
【化11】
【0045】
実施例1及び比較例1で得られた重合体の熱重量分析をセイコー電子社製「SSC5200システム」で測定した。測定結果を図4に、空気雰囲気下で測定した5重量%分解温度(Td5 )、800℃での重量残存率(W800)を表1に示す。表1、図4から実施例1のカルボラン含有ケイ素系重合体は耐熱性に非常に優れた材料であることがわかる。
【0046】
【表1】
【0047】
【発明の効果】
本発明のカルボラン含有ケイ素系重合体は、上述の通り耐熱性に優れているので、宇宙・航空材料、建築材料などに好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1に用いたカルボラン誘導体の 1H−NMRスペクトルである。
【図2】実施例1で得られた重合体の 1H−NMRスペクトルである。
【図3】実施例1で得られた重合体のIRスペクトルである。
【図4】比較例1及び実施例1で得られた重合体の熱分解曲線である。
【発明の属する技術分野】
本発明は耐熱性、難燃性に優れた機能性材料として有用なカルボラン含有ケイ素系重合体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、耐熱性、難燃性に優れたケイ素系重合体が開発されてきた。
また、高分子反応により重合体を架橋させる方法で分子量や機械的強度の向上も試みられている(Organometallics, 15, 75(1996) )が、耐熱性、難燃性は必ずしも十分なものではなかった。
【0003】
一方、カルボラン含有ケイ素系重合体については幾つか知られており、例えば、J. Macromol. Sci. −Rev. Macromol. Chem., C17(2), 173−208 (1979) には、ポリ(ドデカカルボラン−シロキサン)について報告されている。
また、特表平8−505649号公報には、有機ホウ素ポリマーが開示されており、カルボランを導入することによりシロキサンポリマーの熱安定性が向上することが報告されている。
【0004】
しかしながら、上記有機ホウ素ポリマーはアセチレン基含有ジリチオ塩と両末端クロロ基含有カルボランシロキサンとの反応により得られるが、モノマーであるカルボラン含有ケイ素系化合物の合成に数段階を要するため、簡便な方法ではなかった。
【0005】
従って、上記従来の有機ホウ素ポリマー以外に、カルボラン含有ケイ素系重合体は殆ど知られておらず、耐熱性に優れた新規なカルボラン含有ケイ素系重合体の開発が期待されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記欠点を鑑み、耐熱性及び難燃性に優れた新規なカルボラン含有ケイ素系重合体を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、反応性二重結合基を側鎖に含有するケイ素系重合体とシリル置換カルボラン誘導体とを複合化させることを試みた。二重結合基とシリル基との反応は非常に効率がよく、しかもカルボランが重合体中に簡便に導入されることが期待できる。また、重合体の側鎖に反応性の二重結合が存在するため、効率的に、より多くのカルボランを導入することができ、重合体の耐熱性及び難燃性のさらなる向上が期待できる。
【0008】
本発明のカルボラン含有ケイ素系重合体は、一般式(1)及び一般式(2)で表される繰り返し単位を持つケイ素系重合体と、一般式(3)で表されるシリル置換カルボラン誘導体とを反応させることにより得られ、重量平均分子量が500以上であることを特徴とする。
【0009】
【化4】
【0010】
【化5】
【0011】
【化6】
【0012】
式中、R1 、R2 、R3 及びR4 は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜30のアリール基を示し、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。なお、二つのエチニレン基及びR1 〜R4 のベンゼン環に対する位置は任意である。R5 は、ケイ素原子に結合した炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜30のアリール基を示し、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。R6 は、炭素数1〜20のアルキレン基又は炭素数6〜30のアリーレン基を示すがなくてもよい。なお、R6 がない場合は、ケイ素原子にビニル基が直接結合している。また、CBxHx’Cは、2価のかご状のホウ素化合物であるカルボランを表し、x,x’は3〜16の整数を示す。
【0013】
上記R1 〜R5 で表される炭化水素基の炭素数は、脂肪族の場合多くなると結合が切れやすくなり耐熱性が低下するため、芳香族の場合多くなると溶媒に対する溶解性が低下するため、上記範囲に限定される。
【0014】
上記R1 〜R5 で表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基などが挙げられる。
【0015】
上記R1 〜R5 で表されるアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
【0016】
上記R6 で表されるアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基、ノナデシレン基、エイコシレン基などが挙げられる。
【0017】
上記R6 で表されるアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、トリレン基、キシリレン基、ビフェニレン基、ナフタレニレン基、アントラセニレン基などが挙げられる。
【0018】
上記CBxHx’Cで表されるカルボランとしては、例えば、ドデカカルボラン、デカカルボラン、ヘプタカルボラン、ヘキサカルボラン、ペンタカルボラン等が挙げられる。
【0019】
上記R1 、R2 、R3 、R4 及びR5 は、以下についても同様の炭化水素基を示し、上記CBxHx’Cは、以下についても同様のカルボランを表す。
【0020】
一般式(1)で表されるケイ素系重合体の構成単位としては、例えば、1,4−ジエチニルベンゼン、1,4−ジエチニルー2ー メチルベンゼン、1,4−ジエチニル−2,3− ジメチルベンゼン、1,4−ジエチニル−2,5− ジメチルベンゼン、1,4−ジエチニル−2,6− ジメチルベンゼン、1,4−ジエチニル−3,5− ジメチルベンゼン、1,4−ジエチニル−2,3,5,6− テトラメチルベンゼン、1,4−ジエチニル−2− (トリメチルシリル)ベンゼン、1,4−ジエチニル−2,3− ビス(トリメチルシリル)ベンゼン、1, 4− ジエチニル−2,5− ビス(トリメチルシリル)ベンゼン、1,4−ジエチニル−2,6− ビス(トリメチルシリル)ベンゼン、1,4−ジエチニル−2,3,5,6− テトラキス(トリメチルシリル)ベンゼン、1,3−ジエチニルベンゼン、1,3−ジエチニル−2− メチルベンゼン、1,3−ジエチニル−4− メチルベンゼン、1,3−ジエチニル−5− メチルベンゼン、1,3−ジエチニル−2,4− ジメチルベンゼン、1,3−ジエチニル−2,5− ジメチルベンゼン、1,3−ジエチニル−4,5− ジメチルベンゼン、1,3−ジエチニル−4,6− ジメチルベンゼン、1,3−ジエチニル−2,4,5,6− テトラメチルベンゼン、1,3−ジエチニル−2− (トリメチルシリル)ベンゼン、1,3−ジエチニル−4− (トリメチルシリル)ベンゼン、1,3−ジエチニル−5− (トリメチルシリル)ベンゼン、1,3−ジエチニル−2,4− ビス(トリメチルシリル)ベンゼン、1,3−ジエチニル−2,5− ビス(トリメチルシリル)ベンゼン、1,3−ジエチニル−4,5− ビス(トリメチルシリル)ベンゼン、1,3−ジエチニル−4,6− ビス(トリメチルシリル)ベンゼン、1,3−ジエチニル−2,4, 5,6−テトラキス(トリメチルシリル)ベンゼン、1,2−ジエチニルベンゼン、1,2−ジエチニル−3− メチルベンゼン、1,2−ジエチニル−4− メチルベンゼン、1,2−ジエチニル−3,4− ジメチルベンゼン、1,2−ジエチニル−3,5− ジメチルベンゼン、1,2−ジエチニル−3,6− ジメチルベンゼン、1,2−ジエチニル−4,5− ジメチルベンゼン、1,2−ジエチニル−3,4,5,6− テトラメチルベンゼン、1,2−ジエチニルベンゼン、1,2−ジエチニル−3− (トリメチルシリル)ベンゼン、1,2−ジエチニル−4− (トリメチルシリル)ベンゼン、1,2−ジエチニル−3,4− ビス(トリメチルシリル)ベンゼン、1,2−ジエチニル3,5−ビス(トリメチルシリル)ベンゼン、1,2−ジエチニル−3,6− ビス(トリメチルシリル)ベンゼン、1,2−ジエチニル−4,5− ビス(トリメチルシリル)ベンゼン、1,2−ジエチニル−3,4,5,6− テトラキス(トリメチルシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリメチルシリルエチニル)ベンゼン、1,4−ビス(トリメチルシリルエチニル)−2− メチルベンゼン、1,4−ビス(トリメチルシリルエチニル)−2,3− ジメチルベンゼン、1,4−ビス(トリメチルシリルエチニル)−2,5− ジメチルベンゼン、1,4−ビス(トリメチルシリルエチニル)−2,6− ジメチルベンゼン、1,4−ビス(トリメチルシリルエチニル)−3,5− ジメチルベンゼン、1,4−ビス(トリメチルシリルエチニル)−2,3,5,6− テトラメチルベンゼン、1,4−ビス(トリメチルシリルエチニル)−2− (トリメチルシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリメチルシリルエチニル)−2,3− ビス(トリメチルシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリメチルシリルエチニル)−2,5− ビス(トリメチルシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリメチルシリルエチニル)−2,6− ビス(トリメチルシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリメチルシリルエチニル)−2,3,5,6− テトラキス(トリメチルシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリメチルシリルエチニル)ベンゼン、1,3−ビス(トリメチルシリルエチニル)−2− メチルベンゼン、1,3−ビス(トリメチルシリルエチニル)−4− メチルベンゼン、1,3−ビス(トリメチルシリルエチニル)−5− メチルベンゼン、1,3−ビス(トリメチルシリルエチニル)−2,4− ジメチルベンゼン、1,3−ビス(トリメチルシリルエチニル)−2,5− ジメチルベンゼン、1,3−ビス(トリメチルシリルエチニル)−4,5− ジメチルベンゼン、1,3−ビス(トリメチルシリルエチニル)−4,6− ジメチルベンゼン、1,3−ビス(トリメチルシリルエチニル)−2,4,5,6− テトラメチルベンゼン、1,3−ビス(トリメチルシリルエチニル)−2− (トリメチルシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリメチルシリルエチニル)−4− (トリメチルシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリメチルシリルエチニル)−5− (トリメチルシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリメチルシリルエチニル)−2,4− ビス(トリメチルシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリメチルシリルエチニル)−2,5− ビス(トリメチルシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリメチルシリルエチニル)−4,5− ビス(トリメチルシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリメチルシリルエチニル)−4,6− ビス(トリメチルシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリメチルシリルエチニル)−2,4,5,6− テトラキス(トリメチルシリル)ベンゼン、1,2−ビス(トリメチルシリルエチニル)ベンゼン、1,2−ビス(トリメチルシリルエチニル)−3− メチルベンゼン、1,2−ビス(トリメチルシリルエチニル)−4− メチルベンゼン、1,2−ビス(トリメチルシリルエチニル)−3,4− ジメチルベンゼン、1,2−ビス(トリメチルシリルエチニル)−3,5− ジメチルベンゼン、1,2−ビス(トリメチルシリルエチニル)−3,6− ジメチルベンゼン、1,2−ビス(トリメチルシリルエチニル)−4,5− ジメチルベンゼン、1,2−ビス(トリメチルシリルエチニル)−3,4,5,6− テトラメチルベンゼン、1,2−ビス(トリメチルシリルエチニル)ベンゼン、1,2−ビス(トリメチルシリルエチニル)−3− (トリメチルシリル)ベンゼン、1,2−ビス(トリメチルシリルエチニル)−4− (トリメチルシリル)ベンゼン、1,2−ビス(トリメチルシリルエチニル)−3,4− ビス(トリメチルシリル)ベンゼン、1,2−ビス(トリメチルシリルエチニル)−3,5− ビス(トリメチルシリル)ベンゼン、1,2−ビス(トリメチルシリルエチニル)−3,6− ビス(トリメチルシリル)ベンゼン、1,2−ビス(トリメチルシリルエチニル)−4,5− ビス(トリメチルシリル)ベンゼン、1,2−ビス(トリメチルシリルエチニル)−3,4,5,6− テトラキス(トリメチルシリル)ベンゼン等が挙げられる。
【0021】
一般式(2)で表されるケイ素系重合体の構成単位としては、例えば、メチルビニルシリレン、エチルビニルシリレン、プロピルビニルシリレン、ブチルビニルシリレン、ペンチルビニルシリレン、ヘキシルビニルシリレン、フェニルビニルシリレン、トリルビニルシリレン、キシリルビニルシリレン、メチルアリルシリレン、エチルアリルシリレン、プロピルアリルシリレン、ブチルアリルシリレン、ペンチルアリルシリレン、ヘキシルアリルシリレン、フェニルアリルシリレン、トリルアリルシリレン、キシリルアリルシリレン、メチルプロペニルシリレン、エチルプロペニルシリレン、プロピルプロペニルシリレン、ブチルプロペニルシリレン、ペンチルプロペニルシリレン、ヘキシルプロペニルシリレン、フェニルプロペニルシリレン、トリルプロペニルシリレン、キシリルプロペニルシリレン、メチルブテニルシリレン、エチルブテニルシリレン、プロピルブテニルシリレン、ブチルブテニルシリレン、ペンチルブテニルシリレン、ヘキシルブテニルシリレン、フェニルブテニルシリレン、トリルブテニルシリレン、キシリルブテニルシリレン等が挙げられる。
【0022】
上記シリル置換カルボラン誘導体(3)は、任意の方法で合成することができ、例えば、一般式(4)で表されるジエチニルベンゼン誘導体と、一般式(5)で表されるビスシリルカルボランとを反応させることによって得られる。
【0023】
【化7】
【0024】
【化8】
【0025】
上記ジエチニルベンゼン誘導体(4)は、一般式(1)で表されるケイ素系重合体の構成単位の重合部分に水素原子が結合した化合物と同一である。
【0026】
上記ビスシリルカルボラン(5)としては、例えば、m−ビス(ジメチルシリル)カルボラン、m−ビス(ジエチルシリル)カルボラン、m−ビス(ジプロピルシリル)カルボラン、m−ビス(ジブチルシリル)カルボラン、m−ビス(ジペンチルシリル)カルボラン、m−ビス(ジヘキシルシリル)カルボラン、m−ビス(ジフェニルシリル)カルボラン、m−ビス(ジトリルシリル)カルボラン、m−ビス(ジキシリルシリル)カルボラン、m−ビス(ジビフェニルシリル)カルボラン、m−ビス(ジナフチルシリル)カルボラン、m−ビス(ジアントラセニルシリル)カルボラン、m−ビス(メチルエチルシリル)カルボラン、m−ビス(メチルプロピルシリル)カルボラン、m−ビス(メチルブチルシリル)カルボラン、m−ビス(メチルペンチルシリル)カルボラン、m−ビス(メチルヘキシルシリル)カルボラン、m−ビス(エチルプロピルシリル)カルボラン、m−ビス(エチルブチルシリル)カルボラン、m−ビス(エチルペンチルシリル)カルボラン、m−ビス(エチルヘキシルシリル)カルボラン、m−ビス(プロピルブチルシリル)カルボラン、m−ビス(プロピルペンチルシリル)カルボラン、m−ビス(プロピルヘキシルシリル)カルボラン、m−ビス(ペンチルヘキシルシリル)カルボラン、m−ビス(メチルフェニルシリル)カルボラン、m−ビス(エチルフェニルシリル)カルボラン、m−ビス(プロピルフェニルシリル)カルボラン、m−ビス(ブチルフェニルシリル)カルボラン、m−ビス(ペンチルフェニルシリル)カルボラン、m−ビス(ヘキシルフェニルシリル)カルボラン、及びこれらのo−、p−異性体等が挙げられる。
【0027】
本発明のカルボラン含有ケイ素系重合体の重量平均分子量は小さくなると十分な耐熱性が得られなくなるため500以上に限定され、逆に大きくなると溶媒に対する溶解性が低下するため500万以下が好ましい。
【0028】
上記反応に使用される触媒としては、例えば、塩化白金酸〔H2 PtCl5 ・6H2 O)、ヘキサロジウムヘキサデカカルボニル、ビス(ジビニルテトラメチルジシロキサン)白金{Pt[CH2=CHSi(CH3)2OSi(CH3)2CH=CH2]2}等が挙げられる。
【0029】
上記触媒の使用量は、少なくなると反応が十分進行せず、多くなると合成後の重合体中に残存しやすくなり、耐熱性が低下するため、ケイ素系重合体の構成単位に対して0.001〜20mol%が好ましく、より好ましくは0.01〜10mol%である。
【0030】
上記反応に使用されるケイ素系重合体とシリル置換カルボラン誘導体とのモル比は、カルボランの導入量が少なすぎると得られる重合体の耐熱性、難燃性があまり向上しないため、ケイ素系重合体:シリル置換カルボラン誘導体=1:0.01〜20が好ましく、より好ましくは1:0.1〜10である。
【0031】
上記反応に使用される溶媒は極性、無極性いずれでもよいが、好ましくはトルエン、テトラヒドロフランなどの非プロトン性溶媒である。
上記溶媒の使用量は、ケイ素系重合体の構成単位の濃度で0.01〜50mol/L(リットル)が好ましく、より好ましくは0.05〜5mol/Lである。
【0032】
上記反応は室温から溶媒の沸点の間の温度で行われる。また、この反応は空気中又は不活性ガス雰囲気下のいずれでも行えるが、好ましくはアルゴンガス又は窒素ガス雰囲気下である。
上記反応の反応時間は短すぎるとカルボランの導入反応が十分に進行しないため耐熱性が向上せず、逆に長くなりすぎると架橋反応が進行して溶媒に溶けなくなり、取り扱いが困難になるため、1〜72時間が好ましい。
【0033】
反応終了後、ケイ素系重合体の精製方法としては、再沈殿法又はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分取等が挙げられる。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施例を説明する。
【0035】
(実施例1)
<ポリ(1,3−ジエチニルベンゼン・フェニルビニルシリレン)の合成>
還流管及び滴下ロート付2Lの3つ口フラスコ反応器をアルゴン置換した後、これに1,3−ジエチニルベンゼン25.24g(200.0mmol)を入れ、テトラヒドロフラン900mlに溶解した。反応器をドライアイス・メタノール浴で冷却した後、n−ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.6mol/L)250mlを1時間かけて滴下し、2時間攪拌した。フェニルビニルジクロロシラン40.68g(200.3mmol)のテトラヒドロフラン溶液100mlを40分かけて滴下し、室温で24時間攪拌した。反応液を塩化アンモニウム飽和水溶液1.4L中に投入し、数分攪拌後、テトラヒドロフラン層を分離した。
水層をジエチルエーテルで3回抽出後、有機層を合わせて無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、有機溶媒を濃縮しメタノール4L中に投入した。生成した沈殿を濾別し、黄白色粉末のポリマーを38.46g得た。
【0036】
<カルボラン誘導体の合成>
アルゴン置換した還流管付200mlの枝付ナスフラスコに1,4−ジエチニルベンゼン2.53g(20.0mmol)を入れ、トルエン80mlに溶解した。次いで、1,7−ビス(ジメチルシリル)ドデカカルボラン20.86g(80.1mmol)のトルエン溶液40mlを投入した。この反応液を50℃に昇温し、0.15mmolの触媒〔ビス(ジビニルテトラメチルジシロキサン)白金〕のトルエン溶液を加えた後、オイルバスの温度を125℃に昇温して8時間加熱還流した。次いで反応溶液を減圧留去した後、蒸留により未反応の1,7−ビス(ジメチルシリル)ドデカカルボラン等を除き、一般式(6)で表されるカルボラン誘導体10.45gを得た。
【0037】
【化9】
【0038】
図1にカルボラン誘導体の 1H−NMRスペクトル(ブルカー社製「DRX300」で測定)を示す。3.9ppmにヒドロシリル基、0.7〜4ppmにかけてカルボラン、0.1〜0.4ppmにケイ素原子に結合したメチル基、7.4ppmにフェニル基、6.2〜6.9ppmにかけて二重結合部分のプロトンのピークがそれぞれ確認される。このことから得られたカルボラン誘導体は一般式(6)の構造であることを確認した。
【0039】
<複合体の合成>
アルゴン置換した還流管付300mlの4つ口フラスコにポリ(1,3−ジエチニルベンゼン・フェニルビニルシリレン)7.75g(30.2mmol)を入れ、トルエン200mlに溶解した。反応液を50℃に昇温し、0.15mmolの触媒〔ビス(ジビニルテトラメチルジシロキサン)白金〕のトルエン溶液を入れ、10分撹拌した。次いで、カルボラン誘導体9.78g(15.1mmol)のトルエン溶液30mlを滴下後、オイルバスの温度を125℃に昇温して10時間加熱還流した。反応溶液を減圧留去した後、メタノール1.7L中に投入した。生成した沈殿を濾別し、黄白色の粉末14.9gを得た。この重合体の重量平均分子量はポリスチレン換算で55,900であった。
【0040】
実施例1で得られた重合体の 1H−NMRスペクトル(ブルカー社製「DRX300」で測定)を図2に、IRスペクトル(バイオラッド社製「FTS135システム」で測定)を図3にそれぞれ示した。
【0041】
図2で、0.7〜4ppmにかけてカルボランに基づくプロトンのピークがみられる。また、0.07〜0.6ppmにケイ素原子に結合したメチル基、メチレン基のプロトンのピークが、7〜8ppmにはフェニル基のプロトンのピークが確認される。また、図3では2590cm−1にカルボランに起因する吸収がみられる。これらのことから実施例1は一般式(7)の構造を持つカルボラン含有ケイ素系重合体であることを確認した。
【0042】
【化10】
【0043】
(比較例1)
アルゴン置換した還流管付100mlの2つ口フラスコにポリ(1,3−ジエチニルベンゼン・フェニルビニルシリレン)0.51g(2.0mmol)を入れ、テトラヒドロフラン10mlに溶解した。反応液を55℃に昇温し、触媒(H2 PtCl5 ・6H2 O)0.005g(0.01mmol)のイソプロパノール溶液1mlを入れ、10分撹拌した後、1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼン0.19g(1.0mmol)のテトラヒドロフラン溶液5mlを滴下後、オイルバスの温度を75℃に昇温し、10時間加熱還流した。
次いで、反応溶液を室温まで冷却し、メタノール500ml中に投入した。
生成した沈殿を濾別し、一般式(8)で表される重合体(黄白色の粉末0.478g)を得た。
【0044】
【化11】
【0045】
実施例1及び比較例1で得られた重合体の熱重量分析をセイコー電子社製「SSC5200システム」で測定した。測定結果を図4に、空気雰囲気下で測定した5重量%分解温度(Td5 )、800℃での重量残存率(W800)を表1に示す。表1、図4から実施例1のカルボラン含有ケイ素系重合体は耐熱性に非常に優れた材料であることがわかる。
【0046】
【表1】
【0047】
【発明の効果】
本発明のカルボラン含有ケイ素系重合体は、上述の通り耐熱性に優れているので、宇宙・航空材料、建築材料などに好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1に用いたカルボラン誘導体の 1H−NMRスペクトルである。
【図2】実施例1で得られた重合体の 1H−NMRスペクトルである。
【図3】実施例1で得られた重合体のIRスペクトルである。
【図4】比較例1及び実施例1で得られた重合体の熱分解曲線である。
Claims (1)
- 一般式(1)及び一般式(2)で表される繰り返し単位を持つケイ素系重合体と、一般式(3)で表されるシリル置換カルボラン誘導体とを反応させることにより得られ、重量平均分子量が500以上であることを特徴とするカルボラン含有ケイ素系重合体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP24316698A JP3602725B2 (ja) | 1998-08-28 | 1998-08-28 | カルボラン含有ケイ素系重合体 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP24316698A JP3602725B2 (ja) | 1998-08-28 | 1998-08-28 | カルボラン含有ケイ素系重合体 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2000072878A JP2000072878A (ja) | 2000-03-07 |
JP3602725B2 true JP3602725B2 (ja) | 2004-12-15 |
Family
ID=17099801
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP24316698A Expired - Fee Related JP3602725B2 (ja) | 1998-08-28 | 1998-08-28 | カルボラン含有ケイ素系重合体 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3602725B2 (ja) |
-
1998
- 1998-08-28 JP JP24316698A patent/JP3602725B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2000072878A (ja) | 2000-03-07 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
Foucher et al. | Synthesis, characterization, and properties of high molecular weight unsymmetrically substituted poly (ferrocenylsilanes) | |
Crivello et al. | Polydimethylsiloxane–vinyl block polymers. I. The synthesis of polydimethylsiloxane macroinitiators containing thermolyzable bis (silyl pinacolate) groups in their backbones | |
Li et al. | Catalytic cross-dehydrocoupling polymerization of 1, 4-bis (dimethylsilyl) benzene with water. A new approach to poly [(oxydimethylsilylene)(1, 4-phenylene)(dimethylsilylene)] | |
EP1164156B1 (en) | Method of polymerizing silalkylenesiloxane | |
JP3602725B2 (ja) | カルボラン含有ケイ素系重合体 | |
JP3041424B1 (ja) | カルボシランボラジン系ポリマ―およびその製造方法 | |
JP3459985B2 (ja) | ボラジン含有ケイ素系ポリマーの薄膜の製造方法及びボラジン含有ケイ素ポリマー | |
JP3468680B2 (ja) | カルボラン含有ケイ素系重合体の製造方法 | |
Achar et al. | Oxidative addition as a route to organometallic polymers | |
JP3602754B2 (ja) | カルボラン含有ケイ素系重合体及びその製造方法 | |
JP3468685B2 (ja) | カルボラン含有ケイ素系重合体及びその製造方法 | |
JP3602701B2 (ja) | カルボラン含有ケイ素系重合体及びその製造方法 | |
Majchrzak et al. | An efficient catalytic synthesis and characterization of new styryl-ferrocenes and their trans-π-conjugated organosilicon materials | |
JP2917619B2 (ja) | ポリシラン共重合体及びその製造方法 | |
JPH06128381A (ja) | 高分子量ポリシランの製造法 | |
JP3636904B2 (ja) | カルボラン含有ケイ素系重合体及びその製造方法 | |
JP3468716B2 (ja) | カルボラン含有ケイ素系樹脂硬化物の製造方法 | |
Kumar et al. | Hydrosilylation synthesis of new ferrocenylene copolymers containing carbosilylene, carbosiloxy and cyclopentadienyliron dicarbonyl bridges | |
US6271280B1 (en) | Diacetylenic polyorganosiloxanes, intermediates therefor, and cured compositions prepared therefrom | |
EP0661332A2 (en) | Silicon-containing reactive polymer and curable resin composition comprising the same | |
JP3468665B2 (ja) | カルボラン基含有ケイ素系重合体及びその製造方法 | |
서일권 et al. | Synthesis and Properties of Conjugated Polycarbosilanes with 1, 4-Bis (thiophene or phenylene)-buta-1, 3-diyne | |
JP5152783B2 (ja) | Si−Si結合を有する高分子化合物の製造方法 | |
JPH05214107A (ja) | 高分子量ポリシランの製造法 | |
Kim et al. | Synthesis and Properties of Poly (1, 1-diethynyl-1-silacyclopent-3-enes and-1-silacyclobutane) |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20040830 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20040901 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20040924 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20081001 Year of fee payment: 4 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |