JP3602325B2 - 動圧型多孔質含油軸受 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、焼結金属等の多孔質体に潤滑油あるいは潤滑グリースを含浸させて自己潤滑機能を持たせると共に、軸受隙間に介在する潤滑油膜(動圧溝の動圧作用によって形成される潤滑油膜)によって軸を非接触支持する動圧型多孔質含油軸受に関し、特にレーザビームプリンタのポリゴンミラーモータ(LBP)や磁気ディスクドライブ用のスピンドルモータ(HDD)など、高速下で高回転精度が要求される機器や、DVD−ROMのように、ディスクが載ることによって大きなアンバランス荷重が作用し高速で駆動する機器などに好適である。
【0002】
【従来の技術】
上記のような情報機器関連の小型スピンドルモータでは、回転性能のより一層の向上と低コスト化が求められており、そのための手段として、スピンドルの軸受部を転がり軸受から多孔質含油軸受に置き換えることが検討されている。しかし、多孔質含油軸受は、真円軸受の一種であるため、軸の偏心が小さいところでは不安定振動が発生しやすく、回転速度の1/2の速度で振れ回るいわゆるホワールが発生しやすい欠点がある。そこで、軸受面にヘリングボーン形やスパイラル形などの動圧溝を設け、軸の回転に伴う動圧溝の作用によって軸受隙間に潤滑油膜を発生させて軸を非接触支持することが従来より試みられている(動圧型多孔質含油軸受)。
【0003】
多孔質含油軸受の軸受面に動圧溝を形成した従来技術としては、実公昭63−19627号に記載のものがある。同号記載の技術は、軸受面における動圧溝の形成領域に表面目つぶし加工を施して、動圧溝の形成領域を封孔したものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
軸の回転精度を確保するため、通常、軸受は複数個、例えば2個を組み合わせて使用される。また、軸受はハウジングに圧入して使用される場合が多い。そこで、2個の軸受の同軸度を確保するため、矯正ピンをハウジングに挿入した後、2個の軸受を同時に圧入する方法が採られている。しかしながら、軸受面に動圧溝を設けた軸受では、矯正ピンを用いて強制的に矯正すると、矯正ピンの食い付きによって軸受面の動圧溝が潰れてしまい、安定した動圧効果が得られなくなる。一方、矯正ピンを用いずに圧入作業を行うと、軸受相互間の必要とする同軸度が得られない。従って、実公昭63−19627号に記載されたような構成は、実用化が難しいと言える。
【0005】
また、2つの軸受面が軸方向に離隔して形成され、軸受面間の領域が軸受面よりも大径になった構成が特開平2−107705号公報に記載されているが、上述したような実用上の問題点はないものの、軸受面には動圧溝が形成されていないので、ホワールなどの不安定振動を防止することができない。
【0006】
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑み、ホワールなどの不安定振動を防止でき、かつ、組込み上の不都合(動圧溝の形状の崩れ、同軸度のずれ)を解消することができる構成を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明では、多孔質体からなる軸受本体に、支持すべき軸の外周面と軸受隙間を介して対向する複数の軸受面を軸方向に離隔して形成すると共に、複数の軸受面の少なくとも1つに傾斜状の動圧溝を形成した。軸受面間の領域の内径寸法は、軸受面の内径寸法よりも大きく設定される。動圧溝が形成された軸受面には、該動圧溝を含めて開孔部がほぼ均一に分布しており、動圧溝が形成された軸受面における開孔部の表面積比率が2%以上15%以下であり、 含有する油の40℃での動粘度が2cSt以上であり、表面積比率と動粘度が、以下の式
(3/5)A−1 ≦ η ≦ (40/6)A+(20/3)
ここで、A;開孔部の表面積比率 [%]
η;油の40℃での動粘度[cSt]
を満足し、動圧溝が形成された軸受面において、軸受隙間に介在する油の潤滑油膜によって軸の摺動面が浮上支持されと共に、動圧溝を含む軸受面の開孔部を介して、油が軸受本体の内部と軸受隙間との間で循環する。
【0008】
1つの軸受に複数の軸受面を形成することにより、従来のような複数個の軸受を組み込む場合における同軸度の問題を解消することができる。すなわち、複数の軸受面が1つの軸受に設けられているため、従来のように矯正ピンを用いて同軸度を確保する必要がなく、また、矯正ピンによる動圧溝の形状の崩れも起こらない。少なくとも1つの軸受面に傾斜状の動圧溝を形成することにより、ホワールなどの不安定振動を効果的に防止することができる。
【0009】
軸受面と、軸受面間の領域との境界に段差を設けることにより、軸受面間の領域におけるトルクロスを効果的に低減することができる。
【0010】
軸受面間の領域の軸方向断面を、軸受面と連続する曲線で描がくことにより、軸受面間の領域の開孔部から滲み出した油が、その領域に沿って軸方向に流れて軸受面に供給され易くなるので、油の有効利用、潤滑油膜の形成促進になる。
【0011】
軸受面間の領域の軸方向断面は、その領域の中央部で最も大径になる円弧で描くことができる。その領域の表面開孔から滲み出した油が両側の軸受面に供給され易い。
【0012】
少なくとも1つの軸受面に対応する外径部の外径寸法を、軸受面間の領域に対応する外径部の外径寸法よりも小さく設定することにより、軸受本体をハウジングに圧入固定する場合、圧入力による軸受面の変形を防止または緩和することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0014】
図1は、本発明の第1の実施形態に係わる多孔質含油軸受1をハウジング2に固定した状態を示している。多孔質含油軸受1は、多孔質体からなる軸受本体1aと、軸受本体1aに含浸された潤滑油又は潤滑グリースとで構成される。軸受本体1aは、例えば、銅又は鉄、あるいはその両者を主成分とする焼結金属で形成され、望ましくは銅を20〜95重量%含有し、密度が6.4〜7.2g/cm3 となるように形成される。その他、軸受本体1aの材質として、鋳鉄、合成樹脂、セラミックスなどを焼結または発砲成形等することにより、多数の細孔を有する多孔質体としたものを用いても良い。
【0015】
軸受本体1aの内周には、支持すべき軸の外周面と軸受隙間4(図4参照)を介して対向する複数例えば2つの軸受面1bが軸方向に離隔形成され、2つの軸受面1bの双方に、それぞれ複数の動圧溝1cが円周方向に配列形成される。この実施形態における動圧溝1cは、軸方向に対して一方に傾斜した溝領域と、他方に傾斜した溝領域とが対をなしてV字状に連続した形状を有する。尚、動圧溝1cは少なくとも1つの軸受面1bに形成すれば良い。
【0016】
軸受本体1aにおける軸受面1b間の領域1dの内径寸法D1は、軸受面1bの内径寸法{厳密には動圧溝1c間の背1e(図4参照)の領域の内径寸法)D2よりも大きく設定されている。この実施形態では、領域1dの軸方向断面は軸受面1bに連続した1つの円弧で描かれ、その円弧の最大径部は領域1dの軸方向中央に位置している。尚、領域1dと軸受面1bとの境界に段差を設けても良い。また、領域1dの軸方向断面は、円弧の他、楕円、放物線等の曲線で描くことができる。同種の曲線を2つ組み合わせて(例えば2円弧)、異種の曲線を2つ組み合わせて(例えば円弧と放物線の組み合わせ)、あるいは、曲線と直線とを組み合わせて描いても良い。さらに、領域1dの最大径部は、一方の軸受面1b側に偏在していても良い。
【0017】
また、この実施形態では、軸受本体1aにおける、2つの軸受面1bにそれぞれ対応する外径部1fの外径寸法D3を、軸受面1b間の領域1dに対応する外径部1gの外径寸法D4よりも小さく設定してある。多孔質含油軸受1を同図に示す態様でハウジング2の内周に圧入固定する場合において、軸受面1bの圧入力による変形を防止し又は緩和することができるので、精度が出し易くなる。固定力は、外径部1gとハウジング2との圧入締め代によって得られる。領域1dは、軸受面1bよりも大径に形成されており、軸の支持には直接関与しないので、圧入力に見合う程度の変形が生じても軸受の精度には影響がない。外径部1fの外径寸法D3と外径部1gの外径寸法D4との寸法差(圧入前の寸法差)は、ハウジング2との圧入締め代(外径部1gの圧入締め代)を考慮し、外径部1fがハウジング2の内周と非接触になるか、軸受精度に影響しない程度の締め代となるように設定する。尚、2つの外径部1fのうち、一方のみの外径寸法を上記のような設定にし、他方に対応するハウジング2の内径を大径にして、外径部1gのみでハウジング2に圧入固定しても良い。
【0018】
図2は、上述した構成の多孔質含油軸受1で軸3を支持する際における、軸方向断面での油の流れを示している。軸3の回転に伴い、軸受本体1aに含浸された油が軸受面1bの軸方向両側およびチャンファー部付近から軸受隙間4に滲み出し、さらに動圧溝によって軸受隙間4の軸方向中央に向けて引き込まれる。その油の引き込み作用(動圧作用)によって軸受隙間4に介在する油膜の圧力が高められ、潤滑油膜5が形成される。この軸受隙間4に形成される潤滑油膜5によって、軸3はホワール等の不安定振動を生じることなく、軸受面1bに対して非接触支持される。軸受隙間4に滲み出した油は、軸3の回転に伴う発生圧力により、主に軸受面1bの表面開孔(多孔質体組織の細孔が外表面に開口した部分の意である。)から軸受本体1aの内部に戻り、軸受本体1aの内部を循環して、再び軸受面1bおよびチャンファー部付近から軸受隙間4に滲み出す。このようにして、軸受本体1aに含浸された油が軸受隙間4と軸受本体1aとの間を循環しながら、上記のような動圧効果によって軸3を継続して非接触支持する。
【0019】
また、この多孔質含油軸受1は、軸方向に離隔形成された2つの軸受面1bで軸3を非接触支持するので、1つの軸受で軸3を高精度に支持することができる。さらに、動圧溝1cの引き込み作用によって、軸受面1b間の領域1dと軸3の外周面との間に形成される空間部に負圧が生じ、領域1dの表面開孔からも油が滲み出して軸受面1bに供給されるので、軸受隙間4における潤滑油膜5の形成が促進され、軸受力が高められる。特に、この実施形態のように、領域1dの軸方向断面が軸受面1bに連続した円弧(又はその他の曲線)で描かれている場合は、領域1dの表面開孔から滲み出した油が、領域1dに沿って軸方向に流れて軸受面1bに効果的に供給されるので、油の有効利用、潤滑油膜の形成促進につながる。
【0020】
ところで、この実施形態では、動圧溝1cの形成領域を含む軸受面1bの全領域に表面開孔が分布している。これは、上述した実公昭63−19627号のように、動圧溝の形成領域が封孔されている場合、以下の問題が生じることに配慮したものである。
【0021】
▲1▼ 動圧溝の形成領域が完全に封孔されていると、その領域では多孔質含油軸受の最大の特徴である油の循環が阻害される。従って、一旦軸受隙間に滲み出した油は動圧溝の作用によって軸受面の軸方向中央部に押し込まれ、そこにとどまることになる。軸受隙間内では大きな剪断作用が働いているので、その剪断力と摩擦熱によって軸受隙間内にとどまった油は変性しやすく、また、温度上昇によって酸化劣化が早まる傾向にある。従って、軸受寿命が短くなる。
【0022】
▲2▼ 動圧溝の形成領域を封孔処理することは極めて困難である。上記公報では塑性加工により封孔できるとしているが、通常、動圧溝の溝深さはμmオーダーのものであり、この程度の圧縮成形で表面開孔が封孔されることはない。また、塑性加工の他の手段としてコーティング等を挙げているが、コーティング被膜の厚さは溝深さよりも薄くする必要があり、数μmのコーティング被膜を傾斜した溝領域にのみ施すのは極めて困難である。
【0023】
この実施形態のように、動圧溝1cの形成領域を含む軸受面1bの表面開孔を介して、油を軸受本体1aの内部と軸受隙間4との間で循環させる構成とすることにより、上記のような問題点を解消することができる。
【0024】
上記のような油の循環を適性に保つためには、軸受面1bにおける動圧溝1cおよび背1eの領域で表面開孔がほぼ均一に分布しているのが望ましい。表面開孔の割合が小さくなると、油は動きにくくなり、逆に大きくなると油は動きやすくなる。また、含浸油の粘度も油の動きやすさに関係し、粘度が低いと動きやすく、粘度が高いと動きにくくなる。
【0025】
表面開孔率(外表面の単位面積内に占める表面開孔の面積割合をいう。)が大きく、粘度が低い場合には、油は極めて動きやすくなるが、動圧溝の作用によって軸受隙間に滲み出した油は簡単に軸受本体の内部に戻されるため、動圧効果が小さくなり、高回転精度を維持できないばかりか、軸と軸受面とが接触してしまう可能性がある。逆に表面開孔率が小さく、粘度が高い場合は、油は極めて動きにくくなるので、発生圧力は大きくなるが、適切な循環が阻害され、またトルクも大きくなるため、軸受部分の昇温によって油の劣化が促進される。
【0026】
従って、表面開孔率と油の粘度には、軸を非接触支持するために必要な潤滑油膜の形成を確保し、同時に、油の適切な循環を確保し得る最適な範囲が存在する。
【0027】
この最適範囲を明らかにすべく、LBP実機モータを用いて評価試験を行った。評価試験に用いた実機モータは、軸径がφ4のもので、ミラーを実装した状態であり、また、回転数は10000rpm、雰囲気温度は40℃とした。
【0028】
図5に評価試験の結果を示す。図5中、「○」は1000時間連続運転した耐久試験で問題のなかったことを示す。「Δ」は500〜1000時間の間で軸振れ上昇(5μm以上)、トルク上昇=回転数低下(10000rpmまで回転数が上がらない)、異音発生などのトラブルを発生し、正常な運転が不可能になったことを示す。「×」は500時間までに上記のようなトラブルが発生したことを示す。
【0029】
以上の評価実験から、表面開孔率と油の粘度の最適範囲(「×」の存在しない範囲)は、図5に実線で区画する領域、すなわち、以下の条件
▲1▼ 動圧溝の形成領域を含む軸受面の表面開孔率が2%以上20%以下であり、
▲2▼ 含浸される油の40℃での動粘度が2cSt以上であり、
▲3▼ 軸受面の表面開孔率と油の40℃での動粘度が
(3/5)A−1 ≦ η ≦ (40/6)A+(20/3)
ここで、A;表面開孔率 [%]
η;油の40℃での動粘度[cSt]
を満たす場合であることが理解できる。このような範囲で表面開孔率と油の粘度を選定することにより、軸を非接触支持するために充分な潤滑油膜が形成されると同時に、油の適切な循環が確保されるので、高回転精度、長寿命を達成することができる。
【0030】
なお、軸受面の表面開孔率は望ましくは2%以上、15%以下とするのが良い。
【0031】
動圧溝の溝深さ(h)と軸受隙間の大きさ(半径隙間:c)との比には最適な範囲があり、この範囲外では充分な動圧効果が得られないと考えられる。この最適範囲を明らかにすべく、LBP実機モータの軸を軸振れが測定できるように長いものに入れ替えて評価試験を行った。回転数は10000rpm、試験雰囲気は常温常湿であり、LBP実機モータはφ4でミラー未実装としている。なお、軸振れは非接触型の変位計によって測定した。
【0032】
以上の条件の下、c/h(c;半径隙間、h;溝深さ)に対する軸振れの値をそれぞれプロットしたところ、図6に示す結果を得た。図6より、c/hが0.5〜4.0の範囲内であれば、軸振れは5μm以下になるが、0.5未満、あるいは4.0より大きくなると5μm以上となる。従って、高精度を維持するためには、c/h=0.5〜4.0の範囲内とするのが望ましい。尚、軸受隙間の大きさc(半径隙間)は、軸の半径をRとした場合、c/R=1/2000〜1/400の範囲内で設定するのが良い。
【0033】
図3は、本発明の第2の実施形態に係わる多孔質含油軸受1’を示している。この実施形態の多孔質含油軸受1’が上述した第1の実施形態の多孔質含油軸受1と異なる点は、軸受面1b’の形状と、軸受面1b’間の領域1d’の形状である。その他の構成は、第1の実施形態の構成に準ずるので、対応する部材及び部分には同一の符号を付して示し、重複する説明を省略する。
【0034】
この実施形態の多孔質含油軸受1’における軸受面1b’は、軸方向に対して一方に傾斜した複数の動圧溝1c1を円周方向に配列形成した第1領域m1と、第1領域m1から軸方向に離隔し、軸方向に対して他方に傾斜した複数の動圧溝1c2を円周方向に配列形成した第2領域m2と、第1領域m1と第2領域m2との間に位置する環状の平滑部nとを備えている。第1領域m1の背1e1、第2領域m2の背1e2は、平滑部nに連続している。軸受本体1a’と軸との間に相対回転が生じると、第1領域m1と第2領域m2にそれぞれ逆向きに傾斜形成された動圧溝1c1、1c2によって油が平滑部nに引き込まれ、油が平滑部nを中心に集められるため、軸受隙間内の油膜圧力が高められる。しかも、図1に示すような軸受面に比べ、平滑部nには動圧溝が形成されていないため、その部分における潤滑油膜の形成効果が高く、また、背1e1、1e2に加え、平滑部nも軸を支持する支持面になるので、支持面積が拡大し、軸受剛性が高められる。
【0035】
また、軸受面1b’間の領域1d’の軸方向断面は軸方向の直線で描かれ、かつ、領域1d’と軸受面1b’との境界は段差1hになっている。尚、領域1d’の軸方向断面は、軸方向に対して傾斜した2つの直線を組み合わせて描いても良い(V字状)。
【0036】
尚、第1の実施形態と同様に、領域1d’の内径寸法は、軸受面1b’の内径寸法よりも大きく設定され、軸受面1b’に対応した外径部1fの外径寸法は、領域1d’に対応した外径部1gの外径寸法よりも小さく設定されている。
【0037】
【実施例】
(1)ハウジングへの圧入比較試験
比較例品:動圧溝が形成された1つの軸受面を備えた構成。圧入前の内径寸法がφ3.006mmのテストピースを2個製作し、ハウジングとの締め代18μm、矯正ピン径φ3.000mmでハウジングに圧入した。
【0038】
実施例品:動圧溝が形成された2つの軸受面を備えた構成。テストピースを上記と同一条件でハウジングに圧入した。
【0039】
試験結果:比較例品では2個とも軸受面の動圧溝の一部が押しつぶされた。 モータに組み込んで試験を行ったが、回転が不安定となり、軸振れなどは通常の真円軸受(軸受面に動圧溝を形成していない軸受)よりも悪い結果が得られた。動圧溝の一部が押しつぶされた原因は、テストピースには偏肉があり(軸受製品でも同じ)、このため動圧溝の一部に矯正ピンの矯正力が強く作用したためと考えられる。
【0040】
これに対し、実施例品では、全体的に溝深さは浅くなったものの(4μmから3.5μmに減少)、一部が押しつぶされてしまう現象は見られなかった。モータに組み込んで軸振れを測定したところ、2000〜15000rpmで2μm以下という優れた性能を示した。
(2)回転精度比較試験
比較例品:動圧溝が形成されていない2つの軸受面を備え構成。
【0041】
実施例品:動圧溝が形成された2つの軸受面を備えた構成(図1の構成)。
【0042】
試験結果:試験結果を図7に示す。同図に示すように、実施例品は比較例品に比べて優れた性能を示した(黒四角は実施例品、黒丸は比較例品の測定データである)。
【0043】
【発明の効果】
本発明は以下に示す効果を有する。
【0044】
(1)1つの軸受に複数の軸受面を形成したので、従来のような複数個の軸受を組み込む場合における同軸度の問題を解消することができる。すなわち、複数の軸受面が1つの軸受に設けられているため、従来のように矯正ピンを用いて同軸度を確保する必要がなく、また、矯正ピンによる動圧溝の形状の崩れも起こらない。また、少なくとも1つの軸受面に傾斜状の動圧溝を形成したので、ホワールなどの不安定振動を効果的に防止することができる。また、動圧溝を有する軸受面において、表面開孔の分布態様、表面開孔率、及び油の動粘度を最適設定したので、軸を非接触支持するために充分な潤滑油膜が形成されると同時に、油の適切な循環が確保され、高回転精度、長寿命を達成することができる。
【0045】
(2)軸受面と、軸受面間の領域との境界に段差を設けることにより、軸受面間の領域におけるトルクロスを効果的に低減することができる。
【0046】
(3)軸受面間の領域の軸方向断面を、軸受面と連続する曲線で描がくことにより、軸受面間の領域の表面開孔から滲み出した油が、その領域に沿って軸方向に流れて軸受面に供給され易くなるので、油の有効利用、潤滑油膜の形成促進になる。
【0047】
(4)軸受面間の領域の軸方向断面を、その領域の中央部で最も大径になる円弧で描くことにより、その領域の表面開孔から滲み出した油を両側の軸受面に効果的に供給することができる。
【0048】
(5)軸受面に対応する外径部の外径寸法を、軸受面間の領域に対応する外径部の外径寸法よりも小さく設定することにより、軸受本体をハウジングに圧入固定する場合、圧入力による軸受面の変形を防止または緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す断面図である。
【図2】実施形態の多孔質含油軸受で軸を支持する際における、軸方向断面での油の流れを模式的に示す図である。
【図3】本発明の第2の実施形態を示す断面図である。
【図4】軸受面の一部横断面を示す図である。
【図5】評価試験の結果を示す図である。
【図6】評価試験の結果を示す図である。
【図7】評価試験の結果を示す図である。
【符号の説明】
1 多孔質含油軸受
1a 軸受本体
1b 軸受面
1c 動圧溝
Claims (7)
- 多孔質体からなり、支持すべき軸の外周面と軸受隙間を介して対向する複数の軸受面が軸方向に離隔して形成され、前記軸受面間の領域の内径寸法が軸受面の内径寸法よりも大きく設定された軸受本体と、前記軸受本体に含浸された潤滑油又は潤滑グリースと、前記複数の軸受面の少なくとも1つに形成された傾斜状の動圧溝とを備え、
前記動圧溝が形成された軸受面には、該動圧溝を含めて開孔部がほぼ均一に分布しており、
前記動圧溝が形成された軸受面における開孔部の表面積比率が2%以上15%以下であり、
含有する油の40℃での動粘度が2cSt以上であり、
前記表面積比率と前記動粘度が、以下の式
(3/5)A−1 ≦ η ≦ (40/6)A+(20/3)
ここで、A;開孔部の表面積比率 [%]
η;油の40℃での動粘度[cSt]
を満足し、
前記動圧溝が形成された軸受面において、前記軸受隙間に介在する油の潤滑油膜によって軸の摺動面を浮上支持すると共に、前記動圧溝を含む軸受面の開孔部を介して、油を前記軸受本体の内部と軸受隙間との間で循環させる動圧型多孔質含油軸受。 - 上記軸受本体が焼結金属で形成されている請求項1記載の動圧型多孔質含油軸受。
- 上記焼結金属が銅又は鉄、あるいは、その両者を主成分とする請求項2記載の動圧型多孔質含油軸受。
- 前記軸受面と、前記軸受面間の領域との境界が、段差になっている請求項1、2又は3記載の動圧型多孔質含油軸受。
- 前記軸受面間の領域の軸方向断面が、前記軸受面と連続する曲線で描かれている請求項1、2又は3記載の動圧型多孔質含油軸受。
- 前記曲線が、前記軸受面間の領域の中央部で最も大径になる円弧である請求項5記載の動圧型多孔質含油軸受。
- 前記少なくとも1つの軸受面に対応する外径部の外径寸法が、前記軸受面間の領域に対応する外径部の外径寸法よりも小さく設定されている請求項1、2、3、4、5又は6記載の動圧型多孔質含油軸受。
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