JP3598279B2 - 位置検知システム - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、地上一次方式の磁気浮上式鉄道において、車両の走行制御に必要な車両位置を検出するための位置検知システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、新幹線に次ぐ次世代の大量高速輸送システムとして、地上一次方式による磁気浮上式鉄道の開発が進められ、実験線(山梨リニア実験線)において近い将来の実用化に向けての各種試験等が行われている。
【0003】
この地上一次方式の磁気浮上式鉄道は、車両側に搭載した超電導磁石を界磁とし、回転型モータの電機子に当たる推進コイルを地上側の軌道に沿って配置した、リニア同期モータ(LSM:Linear Synchronous Motor)を動力とした鉄道であり、推進コイルへの通電電流の大きさ或いは周波数を変化させることによって車両の推進力や速度が制御される。
【0004】
このようなLSMの同期制御においては、推進コイルへの通電を、車両位置(詳細には、推進コイルに対する超電導磁石の相対的位置)に応じて適切に制御する必要があり、そのためには、車両の位置を高精度で検出する必要がある。
そこで、上記のような山梨リニア実験線における地上一次方式の磁気浮上式鉄道(以下「超電導リニア」と略す)では、従来より、車両位置を検出する方法として、交差誘導線を用いた方式を採用している。これは、所定の間隔で交差させてループを構成した誘導線群からなる交差誘導線を軌道の全線に渡って敷設しておき、車両に搭載した送信機からの電波を交差誘導線で受信して、その受信信号を地上側の位置検知装置で演算・処理することにより車両位置を得るものである。この方法によって、LSMの同期制御が可能な高精度(例えば±20cm程度の誤差)の位置検出を実現している。
【0005】
しかしながら、交差誘導線による車両位置の検出は、高精度の位置検出が可能ではあるものの、交差誘導線を軌道全線に渡って高精度に敷設すると共に所定間隔毎(例えば2km毎)に中継装置を設置し、しかもそれらを維持管理する必要があるため、設備の施工及び保守等に多大な労力・コストが必要となるといった問題があった。
【0006】
そこで、交差誘導線による位置検出に代わる方法として、以下に述べる3つの方式(▲1▼〜▲3▼)が考えられ、それぞれ実用化に向けての検討がなされている。
▲1▼車輪回転パルスカウント方式
これは、車輪の回転数に基づいて車両位置を検出する方式である。超電導リニアでは、推進コイル以外に浮上・案内コイルも地上側の軌道に沿って配置されており、車両が走行(浮上・案内コイルに対して超電導磁石が移動)すると、浮上・案内コイルに起電力が生じ、その起電力による磁界と車両側の超電導磁石との磁気相互作用によって、車両を浮上させようとする浮上力が生じる。
【0007】
ただし、車両が浮上走行するのは高速走行時(例えば100km/h以上)であり、車両速度が低速になると、車両を浮上させ得る程度の浮上力を得ることができず浮上走行できない。そのため、車両には車輪も設けられており、浮上走行できない低速走行時はこの車輪によって軌道上を走行する。
【0008】
そこで、車輪の回転数に応じたパルス信号(例えば車輪一回転あたり数十パルス)を発生してそのパルス数をカウントする装置(例えば光学式エンコーダ等)を車上に設け、そのカウント値を地上側の位置検知装置へ伝送すれば、伝送されたカウント値に基づいて車両位置を検出することができる。
【0009】
即ち、通常は車輪径が予めわかっており、その車輪径から車輪一回転あたりの走行距離(より細かく言えば1パルスあたりの走行距離)もわかるため、車輪径及びパルス数に基づいて車両の走行距離、延いては車両位置を検出するようにしたものである。この方式によれば、例えば車両の出発時に何らかの方法で車両位置を初期設定することにより、それ以降はカウント値に基づいて常に車両位置を算出することができる。
【0010】
▲2▼速度起電力位相方式
これは、推進コイルに生じる速度起電力に基づいて車両位置を検出する方式である。既述の通り、地上一次方式では推進コイルへ通電することにより車両を推進させるが、車両の推進(超電導磁石の移動)によって、推進コイルには逆起電力(速度起電力)が生じる。この速度起電力を、例えば現代制御理論におけるオブザーバ理論を用いて推定し、その値から位相信号(推進コイルに対する超電導磁石の電気的位相;以下「速度起電力位相」ともいう)を算出して位置検知装置へ取り込むことにより、車両位置を得ることができる。
【0011】
尚、速度起電力位相をオブザーバにより推定して車両の走行制御に用いる技術については、従来より公知であり、例えば、特開平5−56511号公報や、平成13年6月発行の電気学会論文誌(Vol.119−D,No.6)に掲載の「磁気浮上式鉄道における速度起電力位相同期方式を用いた自制制御」等に、具体的構成・方法が開示されている。
【0012】
▲3▼コイルカウント方式
これは、地上側に配置された浮上・案内コイルの数をカウントすることにより車両位置を検出する方式である。超電導リニアでは、既述の通り浮上・案内コイルが軌道に沿って所定間隔で配置されているため、車両走行に伴って通過する浮上・案内コイルの数を車上側でカウントすれば、そのカウント値に応じた車両走行距離を算出することができ、延いては車両位置を得ることができるのである。
【0013】
浮上・案内コイルをカウントする具体的方法としては、例えば車両走行(超電導磁石の通過)に伴って浮上・案内コイルに生じる起電力を、車上側に設置した検出コイル等により検出し、その検出コイルからの出力電圧に基づいてカウントする方法などがある。そして、車上側で得られたカウント値を地上側の位置検知装置へ伝送することにより、そのカウント値に基づいて車両位置を検出することができる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記▲1▼〜▲3▼の3つの方式は、いずれも、交差誘導線を軌道全線に渡って敷設するといったような大がかりな設備は不要となるものの、それぞれ問題点があって、単独での実用化は困難である。以下に、各方式▲1▼〜▲3▼がそれぞれ有する特徴・問題点について説明する。
【0015】
まず、▲1▼の車輪回転パルスカウント方式については、軌道上を車輪走行する低速時しか車両位置の検出ができないという問題がある。即ち、超電導リニアでは、車両速度が上昇して浮上走行を開始すると、当然ながら車輪は回転しないため、この方式による車両位置の検出は不可能となる。そのため、この方式▲1▼で車両位置を検出できるのは、車輪走行時のみ、つまり走行開始時(車両速度0km/h)から浮上走行するまでの低速走行時のみとなるのである。
【0016】
尚、この方式▲1▼では、車両に搭載された光学式エンコーダ等のパルスカウント装置からの信号(カウント値)を無線通信等の何らかの信号伝送手段で地上側へ伝送する必要があり、その際に若干の伝送遅れが生じる。しかし、この伝送遅れ量は、方式▲1▼による位置検出が可能な低速走行時(車輪走行時)では、LSMの同期制御にほとんど影響しない無視しうる程度のレベルであるため、特に問題とならない。
【0017】
次に、▲2▼の速度起電力位相方式については、車両走行時に推進コイルに生じる速度起電力に基づいて車両位置を検出するものであるため、所定レベル以上の速度起電力を発生させる必要がある。そのため、この方式▲2▼による位置検出が可能な車両速度には下限があり、速度起電力位相を検出し得る程度の速度起電力が発生しない速度域(例えば0〜30km/h)では、車両位置を検出することができないという問題がある。
【0018】
逆に、車両速度が高速になればなるほど推進コイルに誘起される速度起電力は大きくなるため、高速域での制限はなく、最高速度(例えば500km/h)での走行時でも何ら問題なく高精度で連続的な車両位置の検出が可能である。尚、この方式▲2▼では、速度起電力に基づく車両位置の検出は全て地上側で行われるため、▲1▼の方式で述べたような伝送遅れの問題は生じない。
【0019】
次に、▲3▼のコイルカウント方式については、車上側で得られたコイルカウント値を無線通信等の何らかの信号伝送手段で地上側へ伝送する際に生じる伝送遅れが、高速走行時には無視できなくなる。つまり、車上側で浮上・案内コイルをカウントしてから、そのカウント値が地上側の位置検知装置へ伝送されて車両位置が検出されるまでに要する時間(伝送遅れ)の影響で、地上の位置検知装置にて検出された車両位置が実際の車両位置よりも遅れてしまっている、といった現象が生じるのである。
【0020】
この現象は、車両速度が高速になるほど顕著となり、例えば500km/hでの高速走行時に10msec.の伝送遅れがあったとすると、検出された車両位置とそのときの実際の車両位置との誤差は約1.4m程度となって、LSMの適切な制御が不可能となってしまう。そのため、この方式▲3▼が適用できる速度域には上限がある。
【0021】
また、コイル数をカウントする方法として、上記のような浮上・案内コイルに生じる起電力を検出する方法を用いる場合、▲2▼の方式と同様、車両速度が所定の速度以上でないと、浮上・案内コイルに生じる起電力が小さくなって検出できなくなる。更に、この方式▲3▼により得られる車両位置は、基本的に、浮上・案内コイル単位での離散的な位置(即ち、カウントアップ毎に更新される離散的位置情報)であるため、これをそのままLSMの同期制御に用いること自体、困難である。
【0022】
以上説明したように、▲1▼の車輪回転パルスカウント方式の場合は、浮上走行する速度域(例えば100km/h以上)で車両位置を検出できず、▲2▼の速度起電力位相方式の場合は、速度起電力が小さい低速走行時(例えば0〜30km/h)に車両位置を検出できず、▲3▼のコイルカウント方式の場合は、カウント値を車上側から地上側へ伝送する際の伝送遅れ量が影響してくる高速走行時に車両位置を正確に検出できない、或いはコイル数をカウントする方法によっては低速域でも検出できない場合がある、しかも得られる位置情報が離散的である、といったように、上記各方式▲1▼〜▲3▼は、いずれも、車両位置の検出が全く不可能な速度域、或いは位置検出はできるものの伝送遅れ等の影響で走行制御に用いることが困難な速度域があるなどの問題点により、車両走行の全速度域に渡って使用することはできないのである。
【0023】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、地上一次方式の磁気浮上式鉄道において、交差誘導線を用いることなく、全速度域に渡って車両位置を正確に検出できる位置検知システムを低コストで実現することを目的とする。
【0024】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の位置検知システムは、地上側の軌道に沿って配置された推進コイルへ車両位置に応じた電流を通電することにより、該推進コイルと車両側に搭載された界磁との磁気相互作用によって車両を推進させ、車両速度が所定の浮上速度より低いときは車両に備えられた車輪による車輪走行を行い、浮上速度以上では、軌道に沿って所定間隔で配置された浮上コイルと界磁との磁気相互作用によって車両を浮上させることにより浮上走行を行う地上一次方式の磁気浮上式鉄道において、車両位置を検出するためのものである。
【0025】
そして、車輪の回転数に基づいて、軌道上における車両の位置を検出する車輪回転数位置検出手段と、車両の走行に伴って推進コイルに誘起される速度起電力に基づいて、軌道上における車両の位置を検出する速度起電力位置検出手段とを備えると共に、位置情報選択手段が、いずれか一方の検出手段により検出された位置を選択する。
【0026】
具体的には、位置情報選択手段は、車両速度が所定の位置切換速度未満のときは、車両位置として車輪回転数位置検出手段により検出された位置を選択し、車両速度が位置切換速度以上のときは、車両位置として速度起電力位置検出手段により検出された位置を選択する。位置切換速度は、速度起電力位置検出手段により車両の位置が検出可能であって且つ浮上速度より低い速度域において、任意に設定することができる。
【0027】
車輪回転数位置検出手段による位置の検出は、例えば従来技術で述べた▲1▼の方式(車輪回転パルスカウント方式)など、車輪の回転数に基づいて車両位置を検出できる限り種々の方法を採用できるが、その検出方法の原理上、当然ながら、浮上速度より低くて車輪走行を行っているときは検出可能である反面、浮上速度以上の速度域では検出不可能である。
【0028】
一方、速度起電力位置検出手段による位置の検出についても、例えば従来技術で述べた▲2▼の方式(速度起電力位相方式)など、速度起電力に基づいて車両位置を検出できる限り種々の方法を採用できる。しかし、速度起電力の大きさは、通常は車両速度(推進コイルを通過する界磁の通過速度)に比例するため、車両位置を検出するのに最低限必要なレベルの速度起電力が誘起される速度以上の速度域では検出可能である反面、その速度域より低くて速度起電力が小さくなる低速走行時は検出困難である。
【0029】
このように、上記2つの位置検出手段はいずれも、全速度域で車両の位置を検出することはできない。そのため、本発明では、位置情報選択手段が、位置切換速度を境に2つの位置検出手段を選択切り換えすることにより、この2つの位置検出手段を組み合わせて全速度域での車両位置の検出を可能にしているのである。
【0030】
従って、本発明(請求項1)の位置検知システムによれば、2つの位置検出手段がそれぞれ検出した車両の位置のいずれか一方を、位置情報選択手段が車両速度に応じて選択するため、交差誘導線等を軌道全線に渡って敷設するといった大がかりな設備・施工を行うことなく、簡易的な設備で全速度域に渡って車両位置を正確に検出でき、位置検知システムの簡素化・低コスト化が可能となる。
【0031】
ここで、車輪回転数位置検出手段による車両位置の検出は、車輪の回転数に基づくものであるため、例えば現在山梨リニア実験線で試験走行等を行っている車両と同様、車輪にゴムタイヤを用いている場合、走行時のタイヤ空気圧変化や車両乗員の増減等に起因して車輪径が変化し、検出結果に誤差が生じるおそれがある。また、例えばディスクブレーキ等を使用して車両を減速・停止させるよう構成された車両の場合、ディスクブレーキ作動により車輪が軌道上を滑走してまい、それが原因で検出結果に誤差が生じるおそれもある。
【0032】
これに対し、速度起電力位置検出手段による車両位置の検出は、車両走行に伴って生じる速度起電力に基づいて行われるものであるため、速度起電力を正常に取り込める限り高精度の位置検出が可能である。
そこで、位置情報選択手段が選択切り換えを行う位置切換速度は、上記のように速度起電力位置検出手段により車両の位置が検出可能であって且つ浮上速度より低い速度域(換言すれば、上記各位置検出手段がいずれも車両の位置を検出可能な速度域)において任意に設定できるものの、より好ましくは、例えば請求項2に記載したように、速度起電力位置検出手段により車両の位置が検出可能であって且つ浮上速度より低い速度域における、最低速度にするとよい。このようにすれば、車輪回転数位置検出手段によって検出する速度域を必要最低限に抑え、速度起電力位置検出手段にて検出可能な速度域に入ったらすぐに速度起電力位置検出手段が選択されるため、より精度の高い位置の検出が可能となる。
【0033】
また、位置情報選択手段は、車両位置として選択する位置を各検出手段相互間で切り換える際に、単に位置切換速度を境に切り換えるのではなく、例えば請求項3に記載したように、切り換え先の位置検出手段により検出された位置が正常であるか否かを判断し、正常である場合に切り換えるようにするとよい。
【0034】
この正常であるか否かの判断は、例えば、現在選択している位置とこれから選択しようとする位置とを比較して、両者の差が所定の許容範囲以内にあれば正常と判断するなど、これから選択しようとしている位置が少なくとも推進コイルへの通電を適切に行える(延いては車両走行を適切に制御できる)程度の精度で検出されているか否かを判断できる限り、種々の方法を採りうる。
【0035】
このように、選択しようとする位置が正常である場合にのみ選択切り換えすることにより、位置切換速度を境に無条件に選択切り換えする場合に比べ、位置検知システムの信頼性を向上することができる。
ところで、例えば従来技術で説明した超電導リニアでは、電力変換器からき電線を介して推進コイルへの通電を行う際に、地上に配置された複数の推進コイルを一定の長さ(区間)毎に区切り、各区間毎にき電区分開閉器を通して通電するようにしているが、車両の異常時や、推進コイルへの通電を制御する地上側制御装置の異常時等には、推進コイルへの通電を停止すると共にき電区分開閉器を全て投入することにより保安ブレーキを動作させ、車両を停止させることがある。
【0036】
このような保安ブレーキが動作すると、速度起電力位相が乱れてしまい、車両位置を検出することが不可能となる。その結果、保安ブレーキによって車両が停止した後に異常が回復して再び走行しようとしても、そのときの車両位置は不明のままであるため、車両の適切な再出発制御が困難となる。
【0037】
そこで、請求項1〜3いずれかに記載の位置検知システムは、例えば請求項4記載のように、上記2つの位置検知手段以外に、車両の走行に伴って通過する浮上コイルの数をカウントし、該カウント値に基づいて軌道上における車両の位置を検出するコイルカウント位置検出手段を備えたものであって、位置情報選択手段が、速度起電力位置検出手段により検出された位置の選択中に該位置が正常であるか否かを判断し、異常のときはコイルカウント位置検出手段により検出された位置を選択するものであるとよい。
【0038】
つまり、本発明(請求項4)では、速度起電力位置検出手段の異常等によって正常な位置の検出ができなくなると、コイルカウント位置検出手段により検出された位置に選択切り換えするのである。このようにすれば、たとえその検出される位置が、従来技術の方式▲3▼について説明したような離散的な値或いは伝送遅れを伴う値であって推進コイルの通電制御(延いては車両の走行制御)に使用できなくても、少なくとも浮上コイルのカウント数だけは確実に検出できる。
【0039】
これにより、上記のように、浮上走行中に速度起電力位置検出手段に異常が生じて保安ブレーキの動作等で車両が停止しようとしても、少なくとも異常発生時から車輪走行になるまでの間はコイルカウント位置検出手段によって車両の位置を検出でき、車輪走行になれば車輪回転数位置検出手段によって検出できるため、車両の停止位置を検出することができる。そして、保安ブレーキによる車両停止後に速度起電力位置検出手段が正常状態に回復して再び車両が走行を開始しようとするとき、走行開始時の車両位置がわかっているため、確実に車両を出発させることができるのである。
【0040】
従って、請求項4記載の位置検知システムによれば、速度起電力位置検出手段による位置検出ができなくなっても、そのバックアップとしてコイルカウント位置検出手段により引き続き位置の検出(更新)はなされるため、より信頼性の高い位置検知システムを実現できる。
【0041】
尚、浮上コイルのカウントは、例えば従来技術で説明した▲3▼のコイルカウント方式により可能であるが、これ以外にも、例えば隣接配置された浮上コイル相互間の間隙を光センサ等の何らかの方法で車上側で検出することによってもカウントすることができる。後者の方法だと、車両速度に関係なく全速度域でのカウントが可能であるためより好ましい。
【0042】
ところで、車輪回転数位置検出手段により検出される車両の位置には、既述の通り、車輪径の変化や滑走等に起因する誤差が含まれている可能性があるため、その状態のまま位置の検出を継続すると、誤差も累積されて許容限度をこえてしまうおそれがある。一方、コイルカウント位置検出手段の場合、伝送遅れの問題を除けば、離散的ではあるものの非常に高精度の位置情報を得ることができる。しかも、コイル数をカウントする方法として上記例のような光センサ等を用いて浮上コイル相互間の間隙を検出する方法を採用すれば、車両速度に関係なく全速度域で位置の検出が可能である。
【0043】
そこで、例えば請求項5に記載したように、請求項1〜4いずれかに記載の位置検知システムを、車両の走行に伴って通過する浮上コイルの数をカウントし、該カウント値に基づいて、軌道上における車両の位置を検出するコイルカウント位置検出手段を備えたものであって、さらに、位置情報選択手段によって車輪回転数位置検出手段により検出された位置が選択されている間、該選択されている位置を、コイルカウント位置検出手段により検出された位置に基づいて定期的に再設定する車輪回転数位置再設定手段を備えたものとして構成するとよい。
【0044】
上記構成の位置検知システムでは、車輪回転数位置検出手段による位置が選択されている間、車輪径の変化等に起因する誤差が累積しても、その誤差を含んだ位置は、コイルカウント位置検出手段による位置(高精度な位置)に基づいて定期的(例えば浮上コイルのカウント数が更新される毎、或いは予め設定した複数の浮上コイルを通過する毎など)に再設定される。言い換えれば、累積された誤差が定期的に消去されることになる。
【0045】
そのため、請求項5記載の位置検知システムによれば、コイルカウント位置検出手段により検出された位置に基づいて、車輪回転数位置検出手段による位置が定期的に再設定され、再設定される毎にその位置を起点として引き続き位置の検出を行うことができるため、車輪径の変化等による誤差の影響が累積して制御不能となってしまうおそれがなく、精度の高い位置検知システムを実現できる。
【0046】
そしてこの場合、例えば請求項6に記載したように、車輪回転数位置再設定手段は、コイルカウント位置検出手段により検出された位置が正常であるか否かを判断し、正常であるときのみ再設定を実行するようにするとよい。つまり、車輪回転数位置検出手段による位置の選択中に、その位置を無条件にコイルカウント位置検出手段による位置で再設定するのではなく、コイルカウント位置検出手段による位置が正常である場合にのみ再設定を行うのである。このようにすれば、高精度かつ信頼性の高い位置検知システムの提供が可能となる。
【0047】
次に、請求項7記載の発明は、請求項1〜6いずれかに記載の位置検知システムであって、車両が通過したことを検知するための車両通過検知手段が軌道上に備えられると共に、該車両通過検知手段にて車両の通過が検知されたとき、位置情報再設定手段が、前記各位置検出手段のうち少なくとも位置情報選択手段にて選択されている位置を、その車両通過検知手段が備えられている位置に基づいて再設定するように構成されたものである。
【0048】
車輪回転数位置検出手段による位置には車輪径の変化等によって誤差が生じている可能性があることは既に述べたが、他の速度起電力位置検出手段又はコイルカウント位置検出手段についても、例えばコイルカウント位置検出手段がカウント忘れ或いは重複カウントしてしまうなど、何らかの要因で、検出した位置に誤差が生じている可能性もある。
【0049】
そのため、位置検出手段の種類に関わらず、車両通過検出手段にて車両の通過が検知されたときは、少なくとも現在選択されている位置を、その車両通過検出手段が設置されている場所の位置情報に基づいて再設定するのである。車両通過検出手段は軌道上に固定され、その位置は正確にわかっているものであるため、現在選択中の位置に誤差が生じていても、その正確な位置に基づく再設定により、誤差のない正確な位置に戻すことができる。
【0050】
尚、選択されていない他の位置検出手段による位置についても、仮にその位置が誤差を含んだ状態になっていると、その位置に選択切り換えされたとき、切り換え後は誤差を含んだままの位置に基づいて各種制御がなされてしまうことになる。そのため、位置情報再設定手段による再設定は、好ましくは、現在選択中の位置に限らず当該位置検知システムが備える全ての位置検出手段がそれぞれ検出する位置について実行するとよい。
【0051】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の位置検知システム全体の概略構成を示す説明図である。本実施形態の位置検知システムは、地上一次方式の磁気浮上式鉄道における車両位置を検出するためのものであり、図1に示す如く、主として、地上側に設置された位置検知装置10,駆動制御部20,電力変換器30,地上コイル装置40,列車無線地上局50,及び地上子55と、車両60に備えられた車輪回転パルスカウント装置61,コイルカウント装置62,列車無線車上局63,及び車上子64とからなるものである。
【0052】
駆動制御部20は、図示しない運行管理システムから与えられたランカーブ(車両60を予め決められたダイヤ通りに走行させるための速度曲線)を基に電力変換器30が出力すべき電流値を計算し、電流指令として電力変換器30へ出力すると共に、位置検知装置10により得られた位置検知位相θoを基に出力電流の位相基準θを演算して電力変換器30へ出力する。
【0053】
より具体的には、ランカーブに基づいて連続データ(速度指令)を生成し、その速度指令と実際の車両速度とを比較して、電力変換器30への電流指令を演算する。また、位置検知装置10からの位置検知位相θoは、それ自体をそのまま位相基準θとして電力変換器30へ出力してもいいが、本実施形態では、二次のPI制御系を通すことにより、加減速時に生じる定常偏差を低減させた値を位相基準θとして出力するようにしている。
【0054】
尚、位置検知位相θo及び位相基準θはいずれも、軌道上における車両60の位置(より詳しくは、地上コイル装置40を構成する推進コイル41(図2参照)に対する、車両60に搭載された超電導磁石66の相対的位置)を電気角で表したものであり、1つの推進コイル41の長さ(本実施形態では2.7m)が電気角の1周期となっている。また、駆動制御部20では、位置検知位相θoから車両速度vも演算され、当該駆動制御部20内で使用されると共に、電力変換器30や図示しない他の各種制御装置等にも出力されている。
【0055】
電力変換器30は、図示しないPWMインバータを内部に備え、外部から取り込んだ商用電源を車両60の走行制御に必要な電力に変換して地上コイル装置40へ出力するためのものであり、駆動制御部20からの電流指令及び位相基準θに基づき、推進コイル41への通電電流が車両位置に応じた適切な値となるように出力電圧を演算して、地上コイル装置40への給電を行う。
【0056】
そして、速度起電力オブザーバ31は、車両60の走行(超電導磁石66の移動)に伴って推進コイル41に誘起される速度起電力を推定し、その推定値から速度起電力位相θeを演算する。この速度起電力位相θeも、推進コイル41に対する超電導磁石66の相対的位置を電気角で表したものである。
【0057】
この速度起電力オブザーバ31は、地上コイル装置40への出力電圧値、それによって推進コイル41に流れる電流値、駆動制御部20からの位相基準θ及び車両速度v等に基づいて、現代制御理論におけるオブザーバ理論を適用して速度起電力を推定し、その推定値から速度起電力位相θeを演算する。推定された速度起電力は、地上コイル装置40への出力電圧の外乱補償にも使用される。
【0058】
速度起電力位相θeは、推進コイル41に誘起される速度起電力に基づいて得られるものであるため、速度起電力が十分に得られない低速度域では速度起電力位相θeを推定するのは困難である。本実施形態の速度起電力オブザーバ31は、30km/h以上の速度域であれば速度起電力位相θeを確実に得ることができるように構成されている。この、速度起電力位相θeを推定可能な速度域における最低速度である30km/hは、本発明の位置切換速度に相当するものである。
【0059】
尚、速度起電力位相θeをオブザーバ理論により推定して車両制御に用いる技術については、従来技術の項で述べた通り既に公知であり、本実施形態の速度起電力オブザーバ31も、既述の公知文献に記載されたものと同様に構成できるため、その詳細な構成についての説明は省略する。
【0060】
地上コイル装置40は、図2に示す通り、既存の山梨リニア実験線と同様、地上側の軌道に沿って推進コイル41及び浮上・案内コイル42がそれぞれ所定の間隔をもって隣接配置された構成となっている。尚、図2では軌道において車両60の左側(進行方向に向かって)にのみ配置されている様子を示しているが、図示は省略したものの、車両60の右側にも同様に配置され、両方併せて地上コイル装置40を構成している。
【0061】
そして、電力変換器30からの電力供給は、推進コイル41に対して行われ、より詳細には、隣接する3つの推進コイル41を一組として三相コイルが構成されており、この三相コイルに三相電流を供給することにより移動磁界を発生させる。
【0062】
軌道に沿って連続配置された推進コイル41には、全線に渡って常時電力を供給するのではなく、一定長のセクション(コイルセクション)に区切って、車両が在線するコイルセクションの推進コイル41にのみ、き電区分開閉器(図示略)を通して電力供給し、車両の移動に伴って、電力供給するコイルセクションを次々に切り替えていくように制御される。また、本実施形態の浮上・案内コイル42は、全体が樹脂製のカバーで覆われており、僅かな間隙を隔てて相互に隣接配置されている。
【0063】
車両60は、その側面に界磁としての超電導磁石66を備えたものであり、この超電導磁石66と地上側の推進コイル41とにより、リニア同期モータ(LSM)が構成される。また、超電導磁石66が浮上・案内コイル42を通過することにより、その浮上・案内コイル42には起電力が生じて磁界が発生する。その磁界と車両側の超電導磁石66との磁気相互作用により、車両60には浮上力が発生する。
【0064】
但し、従来技術でも述べた通り、車両が浮上走行できるのは高速走行時(本実施形態では100km/h以上)であり、100km/h(本発明の浮上速度に相当)より低い速度域では充分な浮上力が得られず浮上走行できない。そのため、ゴムタイヤを備えた車輪67が備えられており、浮上走行できない低速走行時はこの車輪67により車輪走行する。つまり、本実施形態では、地上側の電力変換器30から推進コイル41への通電により生じる移動磁界と超電導磁石66との磁気相互作用によって車両60が推進し、超電導磁石66と浮上・案内コイル42との磁気相互作用によって車両60が浮上するといった、従来の超電導リニアと同様の原理で車両60が推進・浮上する、いわゆる地上一次方式の磁気浮上式鉄道が構成されている。
【0065】
尚、車輪67自体には回転駆動力はなく、車輪67による自力走行はできない。つまり、車両60の推進力はあくまでも推進コイル41と超電導磁石66との磁気相互作用により得られるものであって、車輪67は単に車両60が浮上走行に移行するまでの走行を支える役目に過ぎない。そのため、浮上走行に移行したら、車輪67は台車(図示略)内に格納される。また、浮上・案内コイル42によって、車両60の左右側面が地上側の構造物に接触しないようにするための案内も行われるが、本発明とは直接関係ないためここではその説明を省略する。
【0066】
車両60に備えられた車輪回転パルスカウント装置61は、車輪67の回転数に比例したパルス信号を発生させ、そのパルス数をカウントした車輪回転パルスカウント値Kwを外部(列車無線車上局63)へ出力するよう構成されたものであり、これは、回転電動機や車輪等の回転体の回転数を検出する方法として従来より周知となっている光学式エンコーダと同様の構成であるため、ここではその詳細な構成についての説明は省略する。
【0067】
コイルカウント装置62は、車両60の走行に伴って通過する地上側の浮上・案内コイル42の数をカウントするものであり、図3に示す如く、レーザ変位計62aと、カウンタ部62dと、伝送部62eとで構成されている。レーザ変位計62aは、浮上・案内コイル42に向けてレーザ光を発光する発光部62bと、発光部62bからのレーザ光が浮上・案内コイル42等で反射した反射光を受光する受光部62cとを備えており、受光部62cにて受光される光のレベルを電圧値に変換して、カウンタ部62dへ出力する。
【0068】
浮上・案内コイル42は、図2で説明したように所定間隔で連続配置され、各浮上・案内コイル42は全体が樹脂製カバーで覆われており、隣接する浮上・案内コイル42相互間には僅かな間隙が存在している。そのため、発光部62bからのレーザ光が浮上・案内コイル42に直接当たっているときの反射光の受光レベルと、レーザ光が浮上・案内コイル42相互間の間隙を通過しているときの反射光の受光レベルは異なり、後者の方が前者よりも受光レベルが小さくなる。
【0069】
即ち、レーザ光が浮上・案内コイル42の表面で反射している間は高レベルの電圧値が、レーザ光が間隙部に入ったときは低レベルの電圧値が、カウンタ部62dに出力される。カウンタ部62dでは、この電圧値の変化をみて、電圧レベルが低下する(間隙を通過する)毎にカウントアップし、そのカウント値(コイルカウント値)を伝送部62eへ出力する。つまり、車両走行に伴ってコイルカウント装置62が間隙を通過する(詳細にはコイルカウント装置62からのレーザ光が間隙に入る)毎にカウントアップされていくのであり、結果として浮上・案内コイル42の数をカウントすることになる。カウンタ部62dからのコイルカウント値Kcは、インターフェイスとして機能する伝送部62eを介して列車無線車上局63へ出力される。
【0070】
車輪回転パルスカウント装置61からの車輪回転パルスカウント値Kwと、コイルカウント装置62からのコイルカウント値Kcはいずれも、列車無線車上局63に入力され、無線送信(本実施形態ではミリ波無線)するための変調等の処理がなされて地上側の列車無線地上局50へ送信される。そして、列車無線地上局50では、受信した電波を車輪回転パルスカウント値kw及びコイルカウント値Kcのデータに復調して、位置検知装置10へ出力する。列車無線車上局63及び列車無線地上局50はいずれも、変・復調装置やアンテナ等を備えた周知の無線送受信機として構成されたものである。
【0071】
尚、ミリ波による無線に限らず、例えば新幹線において既に実用化されているLCX(漏洩同軸ケーブル)による無線伝送など、種々の無線方式を採用できるが、伝送の高速化且つ大容量化のためにはLCXによるものよりミリ波による伝送方式が好ましい。
【0072】
また、車両60には車上子64が備えられ、地上側の所定の場所には地上子55が設置されている。車上子64からは、車両60の走行中は常時電波が出力されており、車両60の走行により車上子64が地上子55の上を通過すると、地上子55では車上子64からの電波が受信される。この受信電波は、地上子受信信号Pとして位置検知装置10へ出力される。これにより、地上子55の位置は予めわかっているため、位置検知装置10では、車上子64が地上子55上を通過する度に車両60の位置が正確に検出されることになる。
【0073】
次に、位置検知装置10は、車輪回転パルスカウント値Kwに基づく車両60の実位置(軌道上の絶対位置)及びパルスカウント位相θwの演算、コイルカウント値Kcに基づく車両60の実位置及びコイルカウント位相θcの演算、及び速度起電力位相θeに基づく車両60の実位置の演算を行い、これら3種類の実位置及び位相θe,θw,θcのうちいずれか1種類のみを選択して外部へ出力する(位相についてはθe,θw,θcのいずれか1つが位置検知位相θoとして出力される)もので、CPU1,インターフェイスとして機能する入力部15と出力部16,及び図示しないメモリ等を備えた周知のマイクロコンピュータとして構成されたものである。
【0074】
尚、パルスカウント位相θw及びコイルカウント位相θcはいずれも、速度起電力位相θeと同じく、推進コイル41に対する超電導磁石66の相対的位置を電気角で表したものである。そして、上記各実位置及び各位相θe,θw,θcはいずれも、本発明の車両位置に相当するものである。
【0075】
CPU1は、予め設定されたプログラムを実行することにより、位置情報制御部11,車輪回転位置速度検出部12,コイルカウント位置速度検出部13,及び速度起電力位置速度検出部14としての機能を実現するものである。
車輪回転位置速度検出部12は、インターフェイスとして機能する入力部15を介して入力された車輪回転パルスカウント値Kwから車両60の進行距離を演算し、それを基に車両60の位置(実位置及びパルスカウント位相θw)を検出すると共に、車両速度も検出する。そして、検出された車両位置及び車両速度は、位置情報制御部11へ入力される。車輪67の通常時(タイヤの内圧が所定の適正値のとき)における車輪径は予めデフォルト径としてメモリに記録されており、車輪67が1回転する間にカウントされるパルスの数もメモリに記録されているため、デフォルト径及び車輪回転パルスカウント値Kwとに基づいて車両位置及び車両速度を演算・検出できる。
【0076】
しかし、ゴムタイヤからなる車輪67の車輪径は、タイヤ内圧の変化やタイヤ摩耗等の影響によって、必ずしも常にデフォルト値にあるとは限らず、実際の車輪径とデフォルト径とが異なっていると、車輪回転位置速度検出部12により検出される車両位置が実際の車両位置とは異なったものになる(誤差がある)おそれがある。
【0077】
そこで、本実施形態の位置検知システムが構成された地上一次方式の磁気浮上式鉄道では、車両60が車両基地を出発してから、地上一次方式による車両制御が可能な軌道(推進コイル41及び浮上・案内コイル42が設置され、推進コイル41への通電による車両走行が行われる軌道;以下「ガイドウェイ」ともいう)上へ移動するまでの間に、地上子55が2つ設置されており、車上子64がこの2つの地上子55相互間を通過する間の車輪回転数(車輪回転パルスカウント値Kwの変化分)とその地上子55相互間の距離とに基づいて車輪径を逆算し、その結果をデフォルト径に代わって使用するようにしている。つまり、車両基地からの出発時にそのときの正確な車輪径を算出し、算出された車輪径に基づいて車輪回転位置速度検出部12による車両位置・速度の検出を行うようにしているのである。
【0078】
尚、車両基地からガイドウェイまでの車両60の移動は、例えば牽引車によって牽引するなどの方法で行われる。また、地上子55は、本実施形態では、車両基地からガイドウェイに至るまでの間だけでなく、軌道上の所定の位置(例えば駅の前後)にも設置されている。
【0079】
コイルカウント位置速度検出部13は、入力部15を介して入力されたコイルカウント値Kcから車両60の進行距離を演算し、それを基に車両60の位置(実位置及びコイルカウント位相θc)を検出すると共に、車両速度も検出する。そして、検出された車両位置及び車両速度は、位置情報制御部11へ入力される。また、コイルカウント値Kc自体も、位置情報制御部11へ出力されており、後述する車輪回転パルス位置情報リセット処理(図8参照)で使用される。
【0080】
速度起電力位置速度検出部14は、入力部15を介して入力された速度起電力位相θeに基づいて車両位置及び車両速度を検出するものであるが、速度起電力位相θeはそれ自体がすでに位置検知位相θoとして外部に出力できるものであるため、ここではその速度起電力位相θeに基づいて実位置及び車両速度を演算し、速度起電力位相θeと共に位置情報制御部11へ出力する。
【0081】
そして、本実施形態では、既述の通り、高精度の速度起電力位相θeを確実に得ることができるのは30km/h以上の速度域であるが、30km/h未満であっても、精度は落ちるものの全く速度起電力位相θeが得られないわけではなく、車両位置・速度の検出は実行される。しかし、そのように精度の低下した速度起電力位相θeから得られる車両位置を用いてLSMの同期制御を行うのは、システムの信頼性に欠けるため、本実施形態では、30km/h以上を、速度起電力方式による車両位置検出が可能な速度域としている。そして、この速度起電力方式による位置検出が可能な全速度域で、速度起電力方式を選択するようにしている。
【0082】
上記のように、本実施形態では、車両位置・速度を検出する手段として、車輪回転位置速度検出部12が車輪回転パルスカウント値Kwに基づいて検出する方式(以下「車輪回転パルス方式」ともいう)と、コイルカウント位置速度検出部13がコイルカウント値Kcに基づいて検出する方式(以下「コイルカウント方式」ともいう)と、速度起電力オブザーバ31が速度起電力位相θeを検出し、それに基づいて速度起電力位置速度検出部14が実位置及び車両速度を検出する方式(以下「速度起電力方式」ともいう)と、の3つの方式がある。
【0083】
そして、位置情報制御部11は、後述するように、車両速度或いは電力変換器30からの装置状態信号等に基づいて、上記各位置速度検出部12,13,14にてそれぞれ検出された車両位置及び車両速度のうちいずれか1つの車両位置・速度のみを選択するとともに、選択した車両位置を外部へ出力する。即ち、選択した位相を位置検知位相θoとして出力部16を介して外部(駆動制御部20等)へ出力すると共に、選択された実位置も出力部16を介して外部へ出力するのである。尚、出力部16はインターフェイスとして機能するものである。
【0084】
また、地上子受信信号Pが入力部15を介して入力されており、この信号Pをもとに、各位置速度検出部12,13,14において検出されている車両位置のリセット(再設定又は初期設定)も行う。本実施形態では、上記のように車両基地からガイドウェイまでの間に2つの地上子55が設置されている。そのため、車両60が出発してからガイドウェイに至るまでの間に、車上子64が地上子55上を通過すると、地上子受信信号Pが位置情報制御部11へ入力される。そして、この地上子受信信号Pによって得られる地上子位置情報(地上子55の設置位置)が、各位置速度検出部12,13,14に入力され、各位置速度検出部12,13,14により検出中の車両位置は、入力された地上子位置情報によってそれぞれリセット(初期設定)されることになる。
【0085】
また、電力変換器30から位置情報制御部11には、速度起電力オブザーバ31を含む電力変換器30全体が正常に動作しているか否かを示す装置状態信号が、入力部15を介して入力されており、後述する速度起電力方式の異常時処理において使用される。更に、位置情報制御部11は、各位置速度検出部12,13,14により検出されている車両位置・速度が正常か否かを判断したり、現在選択されている車両位置・速度によって他の位置速度検出部による車両位置・速度をリセット(再設定)する処理等も行うが、これらについても後述する。
【0086】
次に、CPU1が位置情報制御部11の機能として実行する位置選択制御処理について、図4に基づいて説明する。図4は、本実施形態の位置選択制御処理を示すフローチャートであり、CPU1にて所定の周期(例えば5msec.毎)で実行される。以下、車両60が牽引車により軌道上を牽引されながら図示しない車両基地を出庫し、ガイドウェイへの進入後は推進コイル41への通電による地上一次制御が行われるものとする。そして、車両60の速度変化や車両状態に応じて、車両60の出発から停止に至るまでの過程を下記(1)〜(7)の状況に分けて説明する。尚、ガイドウェイに進入するまでは車両60は25km/h未満の速度で牽引されるものとする
(1)出庫して最初の地上子55を通過する直前までの処理
この処理が開始されると、まずステップ(以下「S」と略す)S110にて、地上子55上を車上子64が通過したか否かが判断される。上記の通り、車両基地からガイドウェイに至る軌道上には地上子55が二つ設置されているが、出庫直後でまだ地上子55上を通過しない間は、否定判定されてS150の正常判断処理に移行する。S150は、車輪回転位置速度検出部12からの車両位置及び車両速度(以下これらを「車輪回転パルス位置速度情報」ともいう)と、コイルカウント位置速度検出部13からの車両位置及び車両速度(以下これらを「コイルカウント位置速度情報」ともいう)と、速度起電力位置速度検出部14からの車両位置及び車両速度(以下これらを「速度起電力位置速度情報」ともいう)の各々について、正常であるか否かの判断を行うものであり、その詳細を図5に示す。
【0087】
図5の正常判断処理では、まずS310にて、現在選択されている位置速度情報が正常に検出されているか否かのチェックを行うが、ここではまだ出庫直後で上記3つの位置速度情報のいずれも選択されていないため、そのままS320に進む。S320では、S310のチェック結果に基づいて現在選択中の位置速度情報が正常であるか否かの結果判定を行うが、上記の通りまだ何も選択されていないため、否定判定されてS490に進む。
【0088】
S490では、選択中情報に関するフラグを「なし」(現在選択されている位置速度情報はないことを示す)にセットして、そのままこの正常判断処理を終了し、図4の位置選択制御処理におけるS160に進む。S160の位置速度情報選択処理は、上記3つの位置速度情報のどれを選択するか、延いては各位置速度検出部12,13,14によりそれぞれ検出された各位相θw,θc,θe、及び各実位置のうちどれを位置検知位相θo及び実位置として外部へ出力するかを選択する処理であり、その詳細を図6に示す。
【0089】
図6の位置速度情報選択処理では、まずS610にて、速度起電力位置速度情報が現在選択されているか否かを判断し、ここではまだ何も選択されていないため、否定判定されてS620に移行する。S620では、コイルカウント位置速度情報が現在選択されているか否かを判断するが、ここでもやはり否定判定され、続くS630における、車輪回転パルス位置速度情報が選択されているか否かの判断においても同様に否定判定されて、そのままこの位置速度情報選択処理を終了し、図4のS170に進む。
【0090】
S170の速度起電力方式の異常時処理は、速度起電力位置速度情報を選択中、その情報が異常となったときにコイルカウント位置速度情報に選択切り換えする処理であり、その詳細を図7に示す。図7の速度起電力方式の異常時処理では、まずS710にて、前回まで(前回のS710の処理実行時)速度起電力位置速度情報が選択されていてしかも今回(現在)は何も選択されていないか否かを判断するが、ここでもやはり、出発してからまだ何も選択されていない状態が続いているため、否定判定されてS750に進む。
【0091】
S750では、速度起電力オブザーバ31を含む電力変換器30の装置状態が異常か否かを、電力変換器30からの装置状態信号に基づいて判断する。以下の説明では、特に断りのない限り電力変換器30は正常に動作しているものとして説明する。そのため、S750で否定判定された後、そのままこのS170の処理を終了し、図4におけるS180の処理に進む。
【0092】
S180では、現在選択されている位置速度情報があるか否かの判断がなされるが、ここではまだ何も選択されていないため、S230の車輪回転パルス位置情報リセット処理に移行する。この処理は、車輪回転パルス位置速度情報が選択されているときに、その車両位置をコイルカウント方式の車両位置に基づいて定期的にリセット(再設定)する処理であり、その詳細を図8に示す。
【0093】
図8の車輪回転パルス位置情報リセット処理では、まずS810にて、車両速度が25km/h以下であるか否かが判断される。この判断処理は、車輪回転パルス位置速度情報が選択されているときに、その選択されている車両速度に基づいて判断される。そしてここでは、実際には出発直後でまだ25km/h以下であったとしても、位置情報制御部11ではまだ何も選択されていない状態であるため、否定判定されてそのままこのS230の処理を終了する。これにより、図4の位置選択制御処理も一旦終了することになる。以後、車両60の車上子64が地上子55上を通過するまでは、どの位置速度情報も選択されることなく上記処理が繰り返される。
(2)地上子55を通過したときの処理
車両60が牽引されながらガイドウェイに向けて走行しているとき、車上子64が地上子55上を通過すると、地上子55では車上子64からの電波が受信され、地上子受信信号Pが位置情報制御部11へ入力される。このように地上子受信信号Pが位置情報制御部11で検出されると、図4のS110で肯定判定され、S120に進む。
【0094】
S120では、各方式における車両位置を、通過した地上子55が設置されている位置(地上子位置情報)に基づいて各々リセット(初期設定)する。即ち、地上子55の設置位置は予め正確にわかっているため、地上子55の通過時に各方式により検出中の車両位置をその地上子55の設置位置に設定するのである。そして、各方式につき、位置情報(車両位置)がリセットされたことを示す「位置リセット」フラグもセットされる。
【0095】
これにより、車輪回転パルス位置速度情報については、以降、その地上子55の位置を起点として車輪回転パルスカウント値Kwに基づいて検出が行われていくことになる。但し、速度起電力位置速度情報及びコイルカウント位置速度情報については、地上子55を通過した瞬間に初期設定はされるものの、以後、少なくともガイドウェイに進入するまでは正常な検出はなされない。
【0096】
S130では、S180と同様、現在選択されている位置速度情報があるか否かを判断し、ここではまだ何も選択されていないため、S140に移行する。そしてS140で、車輪回転パルス位置速度情報を「正常状態」にセットすると共に、その位置速度情報を選択する旨のフラグをセットする。これにより、車輪回転パルス方式による位置情報が、外部の駆動制御部20等へ出力されることになる。つまり、出庫後はじめて車両位置・速度が選択されたわけである。
【0097】
続くS150の正常判断処理(詳細は図5参照)では、まず、S310にて現在選択されている車輪回転パルス位置速度情報のチェックが行われる。このチェックは、例えば、前回のチェック時(S310実行時)における位置速度情報と比較して両者の差が所定の範囲内にあるか否か、言い換えれば前回チェック時の位置速度情報から予測される範囲内にあるか否かを判断することにより行うことができる。そして、異常ならばS320からS490に進んで選択中情報に関するフラグを「なし」にセットし、以降再び地上子55を通過するまで何も選択されない状態が続くが、正常ならばS330に進む。
【0098】
S330では、車輪回転パルス方式以外の他の方式A(ここでは速度起電力方式とする)による位置速度情報(速度起電力位置速度情報)が正常に検出されているかチェックを行う。このチェックは、例えば現在選択されている車輪回転パルス位置速度情報と比較することにより行い、両者の差が所定の許容範囲内(例えば±0.5%以内)にあれば正常、許容範囲内になければ異常と判定することができる。
【0099】
そして、S340では、S330のチェック結果に基づき、車両速度についての判定が行われ、正常ならばS350に進むが、ここではまだ車両60がガイドウェイ内を走行しておらず、速度起電力が発生しない(つまり速度起電力位相θeが正常に得られていない)ため、否定判定されてS390に進む。S390では、速度起電力位置速度情報を「異常状態」にセットし、続くS400で、S120(図4参照)によりセットされた速度起電力方式の「位置リセット」フラグがクリアされる。
【0100】
次に、S410では、車輪回転パルス方式及び上記の他方式A(速度起電力方式)以外の他の方式B、つまりコイルカウント方式によるコイルカウント位置速度情報が正常に検出されているかチェックを行う。このチェックも、S330と同様、例えば現在選択されている車輪回転パルス位置速度情報と比較することにより行うことができる。そして、S420では、S410のチェック結果に基づき車両速度についての判定がなされ、正常ならばS430に進むが、ここではまだ車両60が、浮上・案内コイル42が設置されたガイドウェイ内を走行しておらず、浮上・案内コイル42をカウントすることができないため、否定判定されてS470に進む。S470では、コイルカウント位置速度情報を「異常状態」にセットし、続くS480で、S120(図4参照)によりセットされた、コイルカウント方式の「位置リセット」フラグがクリアされる。これにより、S150の正常判断処理は一旦終了し、続くS160の位置速度情報選択処理に移行する。
【0101】
今、車輪回転パルス位置速度情報が選択されているため、S160(詳細は図6参照)の処理では、S610及びS620で否定判定された後、S630で肯定判定され、S660に進む。S660では、現在の車両速度が30km/h以上であってしかも速度起電力位置速度情報が「正常状態」であるか否かが判断されるが、ここではまだガイドウェイに進入しておらず車両速度は30km/hに満たないため、否定判定されてこのS160の位置速度情報選択処理を終了し、S170に移行する。
【0102】
S170の速度起電力方式の異常時処理(詳細は図7)では、上記(1)の場合と同様、前回の処理実行時に速度起電力位置速度情報は選択されていないため、まずS710にて否定判定される。そして、S750で否定判定されてそのままこのS170の処理を終了し、続くS180に移行する。
【0103】
ここで、現在すでに車輪回転パルス位置速度情報が選択されているため、S180では肯定判定されてS190に移行する。S190では、現在選択されていない他の方式A(ここでは速度起電力方式とする)により検出されている車両速度が「正常状態」であってしかも車両位置がまだリセットされていない状態(つまり「位置リセット」フラグがセットされていない)か否かが判断されるが、上記のようにS150の正常判断処理(図5参照)におけるS390の処理で速度起電力位置速度情報は「異常状態」にセットされている。そのため、このS190では否定判定されてS210に移行する。
【0104】
S210では、他方式B(ここではコイルカウント方式)により検出されている車両速度が「正常状態」であってしかもこの方式につき「位置リセット」フラグがまだセットされていないか否かが判断されるが、S150の正常判断処理(図5参照)におけるS470の処理でコイルカウント位置速度情報も「異常状態」にセットされている。そのため、S210でも否定判定されて、S230に移行する。
【0105】
S230の車輪回転パルス位置情報リセット処理(詳細は図8)では、まずS810にて、現在選択中の位置速度情報に基づいて車両速度が25km/h以下であるか否かが判断されるが、出庫直後の地上子55通過時は25Km/h以下であるため肯定判定されてS820に進む。S820では、コイルカウント位置速度検出部13から入力されているコイルカウント値Kcが、前回のこのS820実行時の値から更新され且つコイルカウント方式による位置情報が「正常状態」であるか否かが判断されるが、ここではまだガイドウェイに進入しておらず浮上・案内コイル42のカウントも行われていない。そのため、S820では否定判定されてそのままこの図8の処理を終了し、これにより図4の位置選択制御処理も一旦終了する。
【0106】
つまり、出庫後、車上子64が地上子55を通過することにより、上記説明したような処理がなされて車輪回転パルス位置速度情報が選択され、実位置と共に、パルスカウント位相θwも位置検知位相θoとして外部へ出力される。但し、他の方式の位置速度情報については、S120で一旦は初期設定されたものの、まだガイドウェイに進入していないため正常に検出されていない「異常状態」にある。
(3)ガイドウェイに進入し、車両速度が25km/h以下であるときの処理
この場合の位置選択制御処理(図4)では、まずS110で否定判定されてS150に進み、図5に示す正常判断処理が実行される。この正常判断処理では、まずS310,S320にて上記(2)と同様の処理がなされ、ここでも現在選択中の車輪回転パルス位置速度情報は正常であるものとしてS330へ進む。そして、S330では、車輪回転パルス方式以外の他の方式A(ここでは速度起電力方式とする)の位置速度情報(速度起電力位置速度情報)のチェックが行われるが、車両速度がまだ30km/hに満たないため、やはり上記(2)と同じくS340で否定判定され、S390,S400の各処理が実行されてS410に進む。
【0107】
そして、S410では、コイルカウント位置速度情報について、上記(2)の場合と同様にチェックが行われるコイルカウント方式による車両速度の検出は、コイルカウント値Kcの変化(カウントアップ)に基づいて得られる車両の進行距離と、その間の所要時間とから演算により求めることができ、ここではガイドウェイを走行しているため正常に得られているものとみなす。そのため、S420では肯定判定されて、S430に進む。
【0108】
S430では、コイルカウント方式について「位置リセット」フラグがセットされているか否かが判断されるが、ここでは、前回までに既に実行済みのS480のクリア処理により、セットされていないため、否定判定されてS460に進む。そして、S460にてコイルカウント方式にて検出される車両速度を「正常状態」にセットして、この正常判断処理を終了し、続くS160の処理に移行する。つまり、現在選択中の車輪回転パルス位置速度情報に加え、コイルカウント方式にて検出されている車両速度も、「正常状態」にセットされたことになる。
【0109】
このとき、車両60がガイドウェイを走行してはいるものの、現在選択されているのが車輪回転パルス位置速度情報であって車両速度もまだ30km/h以上ではないため、S160の位置速度情報選択処理(図6参照)では、上記(2)と同様、S610,S620で否定判定された後S630で肯定判定され、続くS660で否定判定されてそのままこの位置速度情報選択処理を終了する。そして、続くS170の速度起電力方式の異常時処理(図7参照)でも、上記(2)と同様、S710で否定判定されると共にS750でも否定判定され、この処理を終了してS180へ進む。
【0110】
S180では、車輪回転パルス位置速度情報が選択されているため肯定判定される。そして、S190では、現在選択されていない他の方式A(ここでは速度起電力方式とする)による車両速度はまだ「正常状態」でないため、上記(2)と同様に否定判定されてS210に進む。
【0111】
そしてこのとき、他方式B(ここではコイルカウント方式)については、図5の正常判断処理におけるS460の処理によって車両速度は「正常状態」にセットされているが、車両位置については「位置リセット」フラグがクリアされた状態(未リセット状態)にある。そのため、S210では肯定判定されてS220に進み、コイルカウント方式による位置情報を現在選択中の位置情報によってリセット(初期設定)すると共にその初期設定後の車両位置を「正常状態」にセットする。つまり、現在選択されている車両位置をコイルカウント位置速度検出部13へ与えて、コイルカウント方式により検出される車両位置と現在選択中の位置とを同じ値に設定するのである。この初期設定により、以降はコイルカウント方式によっても、コイルカウント値Kcに基づいて車両位置を正常に検出することができるようになる。尚、このリセットにより、コイルカウント方式についての「位置リセット」フラグが再びセットされる。
【0112】
続くS230(詳細は図8)では、まずS810で肯定判断されてS820の処理に移行する。このとき、上記のS220の処理によってコイルカウント方式による位置情報は「正常状態」にセットされている。そのため、コイルカウント値Kcが前回から更新されていなければそのままこの車輪回転パルス位置情報リセット処理を終了するが、更新されていればS830に進む。S830では、車輪回転パルス方式による位置情報が選択されているか否かの判断がなされ、ここでは肯定判定されてS840に進む。
【0113】
そしてS840で、車輪回転パルス方式による位置情報が、コイルカウント方式による位置情報によってリセット(再設定)される。つまり、コイルカウント方式においてコイルカウント値Kcがカウントアップされる毎に得られる高精度の車両位置を、そのカウントアップ時に車輪回転位置速度検出部12へ入力することにより、車輪回転位置速度情報検出部12では、現在検出中の車両位置が、その入力された車両位置によって更新設定されるのである。このようにするのは、既述の通り車輪回転パルス方式による車両位置には車輪径の変化や車輪滑走等による誤差が生じている可能性があって、そのままこの車両位置の検出を継続すると誤差が累積して許容範囲を超えてしまうおそれがあるからである。
【0114】
これに対し、コイルカウント値Kcのカウントアップ時には、浮上・案内コイル42相互間の間隙位置に対応した高精度の車両位置が得られるため、コイルカウント値Kcのカウントアップ毎に、車輪回転パルス方式による車両位置をコイルカウント方式による車両位置に更新すれば、その度に車輪回転パルス方式の車両位置に含まれる誤差も消去されることになり、結果として車輪回転パルス方式による車両位置の検出をより高精度で行うことができることになる。
【0115】
これにより図4の位置選択制御処理が一旦終了し、以降もこの位置選択制御処理は繰り返し実行されるが、このとき既に、S220の処理が実行されたことによってコイルカウント方式についての「位置リセット」フラグがセットされた状態にある。そのため、以後、図5の正常判断処理におけるS430の判断処理では、肯定判定されてS440に進む。
【0116】
そして、S440では、S410でのチェック結果に基づいてコイルカウント方式による位置情報の判定がなされ、異常ならばS470以降の処理に進むが、正常であればS450に進んでコイルカウント位置速度情報を「正常状態」にセットする。尚このとき、コイルカウント位置速度情報は、これまでに実行されたS460及びS220(図4参照)の処理によって既に「正常状態」にセットされているため、このS450の処理は、コイルカウント位置速度情報が正常である間に繰り返しなされる確認的処理である。
【0117】
つまり、ガイドウェイに進入後、車両速度が25km/h以下の間は、上記のように、車輪回転パルス位置速度情報が選択されるが、コイルカウント位置速度情報もコイルカウント値Kcのカウントアップ毎に正常に検出される。そして、車輪回転パルス方式による車両位置を、コイルカウント方式による車両位置によって定期的(本実施形態ではコイルカウント値Kcのカウントアップ毎)に再設定することにより、車輪回転パルス方式による車両位置の高精度化を実現している。(4)ガイドウェイ上で車両速度が30km/hに到達したときの処理
この場合、図4の位置選択制御処理において、まずS110で否定判定されてS150に進む。S150の正常判断処理(詳細は図5)では、現在選択されている車輪回転パルス位置速度情報が正常である限り、S310及びS320を経てS330に進む。そして、S330では、上記(3)と同様、他方式A(ここでは速度起電力方式とする)による位置速度情報が正常であるか否かが判断されるが、本実施形態では車両速度が30km/h以上になると速度起電力方式による車両位置・速度の検出が正常に行えるようになる。
【0118】
そのため、車両速度が30km/hに到達すると、S340で肯定判定されてS350に進む。S350では、既述のS430と同様、速度起電力方式について「位置リセット」フラグがセットされているか否かが判断されるが、ここでは、前回までに既に実行済みのS400の処理によりクリアされているため、否定判定されてS380に進む。そして、速度起電力方式にて検出される車両速度を「正常状態」にセットし、S410に移行する。
【0119】
S410以降は、コイルカウント位置速度情報が正常に得られている限り、上記(3)と同様に処理が実行され、最終的にS450の処理を実行してこの正常判断処理を終了する。つまり、車両速度が30km/hに到達した時点でまず速度起電力方式による車両速度が「正常状態」にセットされるのである。
【0120】
続くS160の位置速度情報選択処理(詳細は図6)では、上記(3)と同様、S610,S620で否定判定された後、S630で肯定判定されてS660に進む。このとき、車両速度は30km/hに到達し、速度起電力方式について車両速度は「正常状態」にセットされているものの、車両位置はまだ「正常状態」にセットされていない。そのためS660では否定判定されてこの位置速度情報選択処理を終了する。続くS170の速度起電力方式の異常時処理(詳細は図7)では、上記(3)と同様、S710からS750を経てこの処理を終了する。
【0121】
そして、S180で肯定判定されてS190に進むが、このとき、他方式A(ここでは速度起電力方式とする)による車両速度は「正常状態」にセットされており、車両位置についてはまだ「位置リセット」フラグがセットされていない未リセット状態にある。そのため、S190で肯定判定されS200に進む。S200では、速度起電力方式による位置情報を現在選択中の位置情報によってリセット(初期設定)すると共にその初期設定後の車両位置を「正常状態」にセットする。つまり、現在選択されている車両位置を速度起電力位置速度検出部14へ与えて、速度起電力方式により検出される車両位置を現在選択中の車両位置と同じ値に設定するのである。このリセットにより、速度起電力方式についての「位置リセット」フラグが再びセットされる。つまり、ここではじめて速度起電力方式による車両位置・速度が「正常状態」にセットされたことになる。
【0122】
続くS210の処理においては、他方式B(ここではコイルカウント方式)については既に「位置リセット」フラグがセットされているため、否定判定されてS230に進む。そして、S230の車輪回転パルス位置情報リセット処理(詳細は図8)では、車両速度が30km/hであるため最初のS810にて否定判定され、そのままこの処理を終了する。
【0123】
これにより図4の位置選択制御処理が一旦終了し、引き続きこの位置選択制御処理が周期的に実行されるが、このとき既に、S200の処理が実行されたことによって速度起電力方式についての「位置リセット」フラグがセットされた状態にある。そのため、次の正常判断処理(図5参照)実行時におけるS350の判断処理では、肯定判定されてS360に進む。
【0124】
そして、S360では、S330でのチェック結果に基づいて速度起電力方式による位置情報の判定がなされ、異常ならばS390以降の処理に進むが、正常であればS370に進んで速度起電力位置速度情報を「正常状態」にセットする。尚このとき、速度起電力位置速度情報は、これまでに実行されたS380及びS200(図4参照)の処理によって既に「正常状態」にセットされているため、このS370の処理は、速度起電力位置速度情報が正常である間に繰り返しなされる確認的処理である。
【0125】
このように速度起電力位置速度情報が「正常状態」にセットされると、続くS160の位置速度情報選択処理(詳細は図6)におけるS660の判断処理では肯定判定されてS680に進む。そして、S680で速度起電力位置速度情報が選択される。つまり、車両速度が30km/hに到達したとき、速度起電力位置速度情報が正常状態であることを確認した上で、選択する位置速度情報を車輪回転パルス位置速度情報から速度起電力位置速度情報に切り換えるのである。これにより、以後は速度起電力方式による車両位置(実位置及び速度起電力位相θe)が外部の駆動制御部20等へ出力されることになる。
【0126】
また、このように速度起電力位置速度情報への選択切り換えが行われると、以後再びS160の位置速度情報選択処理が実行されるとき、最初のS610の判断処理では肯定判定されてS640に進む。S640では、車両速度が30km/h未満であってしかも車輪回転パルス位置速度情報が「正常状態」であるか否かが判断されるが、ここでは車両速度が既に30km/hに到達しているため否定判定されることになる。但し、車両速度が再び30km/h未満になって、しかもそのときの車輪回転パルス位置速度情報が「正常状態」であれば、S640では肯定判定されてS670に進み、車輪回転パルス位置速度情報への選択切り換えが行われる。
【0127】
更に、速度起電力位置速度情報が選択されたことにより、以後の位置選択制御処理におけるS190〜S220の処理、及びS150の正常判断処理(詳細は図5)におけるS340以降の処理においては、車輪回転パルス方式又はコイルカウント方式を、他方式A又は他方式Bとして扱えばいい。
【0128】
このように速度起電力位置速度情報が選択された後は、その情報が正常であってしかも車両速度が30km/h以上である限り、速度起電力位置速度情報が選択された状態が続く。その一方で、車輪回転パルス位置速度情報及びコイルカウント位置速度情報についても、選択はされないものの引き続き車両位置・速度の検出が継続される。
【0129】
しかし、車両速度が100km/h以上になって浮上走行が始まると、車輪67が回転しなくなり、車輪回転パルス方式による車両位置・速度の検出は不可能になる。この場合、S150の正常判断処理(詳細は図5)において、車輪回転パルス方式を他方式Aとすると、S340で否定判定され、続くS390にて車輪回転パルス位置速度情報が「異常状態」にセットされると共に、S400にて「位置リセットフラグ」がクリアされる。そして、再び車輪走行に移行して車輪回転パルス方式による検出が可能になるまでは、この状態が続く。
(5)浮上走行から再び車輪走行に移行したときの処理(30km/h以上)
浮上走行中の車両60が、例えば駅に停車するために減速して再び車輪走行になると、車輪67の回転が再開されて車輪回転パルス方式によって車両位置・速度を正常に検出できるようになる。この場合に、S150の正常判断処理(詳細は図5)において車輪回転パルス方式を他方式Aとすると、S340で肯定判定されてS350に進むわけだが、浮上走行を開始したときにこの方式の位置速度情報は「異常状態」にセットされている。つまり、ここではまだこの方式についての「位置リセット」フラグはセットされていないため、S380で速度情報のみが「正常状態」にセットされる。
【0130】
このため、図4におけるS190の処理(車輪回転パルス方式を他方式Aとする)で肯定判定されることになり、続くS200で、車輪回転パルス方式による位置情報が、現在選択されている速度起電力位置速度情報に基づいてリセット(初期設定)される。つまり、現在選択されている車両位置を車輪回転位置速度検出部12へ与えて、車輪回転パルス方式により検出される車両位置を現在選択中の車両位置と同じ値に設定するのである。
【0131】
この初期設定により、以降、車輪回転パルスカウント値Kwに基づく車両位置の検出が可能となる。またS200では、車輪回転パルス方式につき位置情報が「正常状態」にセットされ且つ「位置リセット」フラグがセットされる。つまり、車輪回転パルス位置速度情報が再び「正常状態」にセットされたことになる。
(6)車両速度が30km/h未満になったときの処理
上記(5)のように、車輪走行となって車輪回転パルス位置速度情報が「正常状態」にセットされ、車輪回転パルス方式による車両位置・速度の検出が再開された後、車両速度が30km/h未満になると、S160の位置速度情報選択処理(詳細は図6)におけるS640の判断処理で肯定判定され、S670で車輪回転パルス位置速度情報への選択切り換えが行われる。
【0132】
以後、車両60が停止するまで、車輪回転パルス位置速度情報に基づく地上一次制御が行われる。尚、車両速度が25km/h以下の範囲では、S230(詳細は図8)の実行により、コイルカウント方式の位置情報に基づく車輪回転パルス方式の位置情報のリセット(更新)も行われる。
(7)速度起電力位置速度情報がその選択中に異常となったときの処理
浮上走行中で速度起電力位置速度情報が選択されているときに、速度起電力オブザーバ31を含む電力変換器30に何らかの異常が生じて、速度起電力位置速度情報を正常に検出できなくなると、S150の正常判断処理(詳細は図5)におけるS320の判断処理で否定判定され、選択中情報に関するフラグが「なし」にセットされる。これにより、いずれの位置速度情報も選択されていない状態になる。
【0133】
こうなると、S170の速度起電力方式の異常時処理(詳細は図7)では、最初のS710の処理で肯定判定される。そして、S720では、前回までの速度情報(つまり速度起電力位置情報が正常に検出できなくなる直前の速度情報)に基づき、車両速度が100km/h未満か否かを判断し、100km/h未満であれば車輪走行により車輪回転パルス位置情報が正常に検出されているため、S730に進んで車輪回転パルス方式による車両位置が選択される。
【0134】
一方、100km/h以上の場合、S740に進んでコイルカウント方式による位置情報が選択される。即ち、100km/h以上の浮上走行時に何らかの原因で電力変換器30に異常が生じて速度起電力位置速度情報を正常に検出できなくなったときは、通常は推進コイル41への正常な通電も行われなくなる可能性が高いため、保安ブレーキ(電力変換器30からの電力供給を停止すると共にき電区分開閉器を全て投入)等を動作させて車両を非常停止させる。このとき、地上一次方式による車両走行制御はできないものの、少なくとも車両位置・速度については、コイルカウント方式により検出を継続するのである。
【0135】
このようにコイルカウント位置速度情報が選択された後は、S160の位置速度情報選択処理(詳細は図6)において、S620の判断処理で肯定判定され、S650の処理が実行される。S650では、現在選択中のコイルカウント方式による車両速度が30km/h未満であってしかも車輪回転パルス位置速度情報が正常であるか否かの判断が行われ、車両速度が30km/h以上のときは、たとえ車輪走行に移行していても否定判定されて引き続きコイルカウント方式が選択されている状態が続くが、車両速度が30km/h未満になってそのときに車輪回転パルス位置速度情報が「正常状態」であれば、S670に進んで車輪回転パルス位置速度情報が選択されることになる。
【0136】
つまり、浮上走行時に速度起電力位置速度情報が異常となったとき、コイルカウント方式による車両位置の検出を行うことにより、車輪走行に移行したときに車輪回転パルス方式による位置情報をコイルカウント方式による位置情報でリセット(初期設定)でき、以後、車輪回転パルス方式による車両位置の検出が可能となり、非常停止してもそのときの車両位置を正常に検出できるのである。そのため、その後電力変換器30が正常に回復して再出発するときに、その車両位置を元にスムーズな出発制御を行うことができる。つまり、浮上走行時に速度起電力位置速度情報が正常に検出できなくなった場合のバックアップ用としてコイルカウント方式を用いるのである。
【0137】
尚、30km/h未満になるまでコイルカウント方式の選択を継続するのは、コイルカウント方式が有する既述の伝送遅れの影響を抑えるためである。即ち、コイルカウント方式では、コイルカウント値Kcを車両60側で検出してそれを地上側の位置検知装置10へ無線伝送するため、その際の伝送遅れの影響が、高速走行時に無視できなくなる。そして、伝送遅れが大きい状態で車輪回転パルス方式に選択切り換えすると、切り換え前後の車両位置の差が大きくなってスムーズな切り換えができなくなる。そのため、この伝送遅れの影響を無視できる程度の速度域に減速するまではコイルカウント方式を選択し続けるようにしているのである。
【0138】
また、図7の速度起電力方式の異常時処理では、仮に速度起電力オブザーバ31から速度起電力位相θeが正常に出力されていて速度起電力位置速度情報が正常に検出されていて、S710で否定判定されても、電力変換器30に何らかの異常が生じている旨の装置状態信号が出力されていれば、S750からS720に進み、車輪回転パルス方式或いはコイルカウント方式への選択切り換えを行うようにしている。
【0139】
上記(1)〜(7)で具体的に説明したように、本実施形態の位置検知システムでは、車輪回転パルス方式、コイルカウント方式、及び速度起電力方式の各々について、検出している位置速度情報が正常であるか否かの判定を行い、その判定結果と車両速度とに基づいて、いずれか1つの方式による位置速度情報を選択するようにしている。具体的には、車両速度が30km/h未満のときは車輪回転パルス位置速度情報を選択し、30km/h以上のときは速度起電力位置速度情報を選択する。
【0140】
そして、25km/h以下の速度域では、車輪回転パルス位置速度情報をコイルカウント位置速度情報に基づいてリセット(再設定)する。また、速度起電力位置速度情報を選択中にその情報が異常になったとき、車両速度が100km/h未満であれば車輪回転パルス位置速度情報に選択切り換えするが、100km/h以上であればコイルカウント位置速度情報に選択切り換えする。
【0141】
また、上記(1)〜(7)では具体的に説明しなかったものの、既述の通り本実施形態では、地上子55が、車両基地からガイドウェイに至るまでの軌道上に設けられているだけでなく、ガイドウェイにおいても、例えば駅の前後などに設置されている。そのため、ガイドウェイへの進入後、これらの地上子55を通過する度に、図4の位置選択制御処理におけるS110からS130の処理が実行され、そのときに選択されている位置速度情報を含む全ての位置速度情報が、その地上子55が設置されている場所の位置(地上子位置情報)によってリセット(再設定)される。
【0142】
従って、本実施形態の位置検知システムによれば、速度起電力方式による位置速度情報の検出が困難な30km/h未満の速度域では車輪回転パルス方式を選択し、30km/h以上の速度域(特に100km/h以上では車輪回転パルス方式による検出は不可能)では速度起電力方式を選択するため、従来のように交差誘導線等を軌道全線に渡って敷設するといった大がかりな設備・施工を行うことなく、簡易的な設備で全速度域に渡って車両位置を正確に検出でき、位置検知システムの簡素化・低コスト化が可能となる。
【0143】
また、単に30km/hを境にして選択切り換えするのではなく、これから選択しようとする位置速度情報が正常である場合にのみ選択するようにしており、しかも、速度起電力方式による検出が可能な速度域に入ったらすぐに速度起電力方式を選択することにより、車輪径の変化や滑走等の影響による検出位置の誤差をできる限り抑えることができるため、高精度且つ信頼性の高い位置検知システムが実現されている。
【0144】
さらに、浮上走行中に速度起電力方式による車両位置の検出ができなくなっても引き続き車両位置の検出を行うために、コイルカウント方式をそのバックアップとして用いることにより、位置検知システムの信頼性をより高めている。また、コイルカウント方式による車両位置を、車輪回転パルス方式による位置が選択されているときにその位置をリセット(再設定)する際の再設定値として用いており、車輪回転パルス方式による車両位置は、コイルカウント方式による車両位置で再設定される毎にその位置を起点として引き続き車両位置の検出を行うことができるため、車輪径の変化等による誤差の影響が累積して制御不能となってしまうおそれがなく、精度の高い位置検知システムを実現できる。
【0145】
そして、軌道上に設置された地上子55を通過する毎に、その地上子の設置位置に基づいて各方式の位置情報が再設定されるため、検出中の各位置情報に誤差が生じてしまっていたとしても、この再設定によって、誤差のない正確な位置に戻すことができる。
【0146】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素の対応関係を明らかにする。本実施形態において、車輪回転パルスカウント装置61及び車輪回転位置速度検出部12により本発明の車輪回転数位置検出手段が構成され、速度起電力オブザーバ31及び速度起電力位置速度検出部14により本発明の速度起電力位置検出手段が構成され、コイルカウント装置62及びコイルカウント位置速度検出部13により本発明のコイルカウント位置検出手段が構成され、地上子55は本発明の車両通過検知手段に相当し、位置情報制御部11は本発明の位置情報選択手段に相当する。位置情報制御部11は、本発明の車輪回転数位置再設定手段及び位置情報再設定手段にも相当するものである。
【0147】
また、図4の位置選択制御処理において、S110〜S120の処理は本発明の位置情報再設定手段が実行する処理に相当し、S150,S160,及びS170の処理はいずれも本発明の位置情報選択手段が実行する処理に相当し、S230の処理は本発明の車輪回転数位置再設定手段が実行する処理に相当する。
【0148】
尚、本発明の実施の形態は、上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。
例えば、上記実施形態では、速度起電力方式による位置検出が可能な最低速度である30km/hを境にして選択切り換えを行うようにしたが、これに限らず、速度起電力方式によってさらに低い速度まで検出可能であればその最低速度で選択切り換えすればいいし、また例えば、速度起電力方式で検出可能な最低速度に限らず、例えば50km/hで選択切り換えするなど、車輪回転パルス方式と速度起電力方式との相互切り換えが問題なくできる範囲内で任意に設定可能である。但し、既述の通り、車輪回転パルス方式では車輪径変化や車輪滑走等による影響で誤差を生じやすいため、上記実施形態のように速度起電力方式による検出可能な速度域ではその全速度域で速度起電力方式を採用するのが望ましい。
【0149】
また、図8の車輪回転パルス位置速度情報リセット処理では、車両速度が25km/h以下のときに車輪回転パルス位置情報の更新を行うようにしたが、車輪回転パルス方式が選択される全速度域(ここでは30km/h未満)で実行するようにしてもいい。
【0150】
更に、上記実施形態では、コイルカウント方式における浮上・案内コイル42の数をカウントするために、図3に示すようなレーザ光を利用したコイルカウント装置62を用いるようにしたが、これに限らず、浮上・案内コイル42をカウントできる限りあらゆる方法を採りうる。例えば、車両60の走行に伴って浮上・案内コイル42に誘起される起電力によって発生する磁界を、車両60側で例えば検知コイル等を用いて検出し、その検出結果(例えば電圧波形)に基づいてカウントするようにしてもいい。
【0151】
但しこの方法は、その検出原理からわかるように、浮上・案内コイル42に起電力が誘起されることが条件となるため、速度起電力方式の場合と同様、起電力が十分に得られない(換言すれば起電力による磁界が十分に発生しない)低速度域では検出することが困難になる。そのため、上記実施形態のコイルカウント装置62のように、全速度域に渡ってカウントできるものがより好ましい。
【0152】
また、コイルカウント方式により得られる位置情報は、カウントアップされる毎に得られる離散的なデータであるが、その離散的な位置情報及び速度情報を元に、演算により連続的なデータ(推測値)を生成するようにしてもよい。このようにすれば、その連続データを車両の走行制御にも使用できるため、例えば速度起電力位相θeが正常に得られなくなったものの電力変換器30は正常に動作して推進コイルへの通電が引き続き可能であるときに、コイルカウント方式よる位置情報を使用することができ、バックアップとしてのコイルカウント方式の有用性をより高めることができる。
【0153】
更に、S170の速度起電力方式の異常時処理(詳細は図7)では、100km/h未満のときは車輪回転パルス方式による位置情報を選択するようにしているが、これに限らず、例えば50km/h以上であればコイルカウント方式を選択するなど、車輪回転パルス方式による検出が可能な低速域で速度起電力方式に異常が生じたときであっても、コイルカウント方式を選択するようにしてもいい。
【0154】
更にまた、コイルカウント方式による位置情報が選択された後、車両速度が30km/h未満になれば車輪回転パルス方式に選択切り換えするようにした(図6のS650参照)が、より低速まで(例えば10km/hになるまで)コイルカウント方式を選択し続けてもよく、その切換速度は特に限定されない。但し、完全に停止するまでコイルカウント方式を選択し続けると、停止したときの位置が正確にわからない(何コイル目を通過したかはわかるが、それ以上の細かい位置情報はわからない)ため、停止する前の任意のタイミングで車輪回転パルス方式に選択切り換えして、停止したときにはその車輪回転パルス方式により確実に車両位置を検出できるようにする必要がある。
【0155】
また、上記実施形態では、出庫時に2つの地上子55を通過することによってそのときの正確な車輪径を求め、以降その車輪径に基づいて車輪回転位置速度情報を検出するようにしたが、一旦浮上走行を開始したあと再び減速して車輪走行になり、車輪回転パルス位置情報を選択しようとするとき、タイヤ摩耗や他の何らかの要因によって、出庫時に得た車輪径とは異なった車輪径になっている可能性もある。この場合に、出庫時に得た車輪径に基づいて車両位置の検出を行うと、当然ながら検出される位置に誤差が生じてしまうことになる。
【0156】
そこで、減速して車輪走行になったときに、速度起電力位置速度情報或いはコイルカウント位置速度情報に基づいて、そのときの正確な車輪径を求めるようにしてもよい。つまり、上記2つの情報はいずれも高精度である(但し後者は離散的ではあるが)ため、ある期間内に走行した距離を上記いずれかの情報に基づいて算出し、算出された距離と、その期間の車輪回転数(車輪回転パルスカウント値Kwの変化)とに基づいて、車輪径を演算することができるのである。
【0157】
このようにすれば、出庫時はもちろん、減速時においても常に正確な車輪径を得た上で車輪回転パルス方式による車両位置・速度の検出を行うことができるため、車輪回転パルス位置速度情報の精度をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態の位置検知システム全体の概略構成を示す説明図である。
【図2】本実施形態の地上コイル装置の概略構成、及び、地上コイル装置と車両との位置関係を説明する説明図(平面図)である。
【図3】本実施形態のコイルカウント装置内部の概略構成を示す説明図である。
【図4】本実施形態のCPUが実行する位置選択制御処理を示すフローチャートである。
【図5】図4の位置選択制御処理における、S150の正常判断処理の詳細を示すフローチャートである。
【図6】図4の位置選択制御処理における、S160の位置速度情報選択処理の詳細を示すフローチャートである。
【図7】図4の位置選択制御処理における、S170の速度起電力方式の異常時処理の詳細を示すフローチャートである。
【図8】図4の位置選択制御処理における、S230の車輪回転パルス位置情報リセット処理の詳細を示すフローチャートである。
【符号の説明】
10…位置検知装置、11…位置情報制御部、12…車輪回転位置速度検出部、13…コイルカウント位置速度検出部、14…速度起電力位置速度検出部、15…入力部、16…出力部、20…駆動制御部、30…電力変換器、31…速度起電力オブザーバ、40…地上コイル装置、41…推進コイル、42…浮上・案内コイル、50…列車無線地上局、55…地上子、60…車両、61…車輪回転パルスカウント装置、62…コイルカウント装置、62a…レーザ変位計、62b…発光部、62c…受光部、62d…カウンタ部、62e…伝送部、63…列車無線車上局、64…車上子、66…超電導磁石、67…車輪
【発明の属する技術分野】
本発明は、地上一次方式の磁気浮上式鉄道において、車両の走行制御に必要な車両位置を検出するための位置検知システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、新幹線に次ぐ次世代の大量高速輸送システムとして、地上一次方式による磁気浮上式鉄道の開発が進められ、実験線(山梨リニア実験線)において近い将来の実用化に向けての各種試験等が行われている。
【0003】
この地上一次方式の磁気浮上式鉄道は、車両側に搭載した超電導磁石を界磁とし、回転型モータの電機子に当たる推進コイルを地上側の軌道に沿って配置した、リニア同期モータ(LSM:Linear Synchronous Motor)を動力とした鉄道であり、推進コイルへの通電電流の大きさ或いは周波数を変化させることによって車両の推進力や速度が制御される。
【0004】
このようなLSMの同期制御においては、推進コイルへの通電を、車両位置(詳細には、推進コイルに対する超電導磁石の相対的位置)に応じて適切に制御する必要があり、そのためには、車両の位置を高精度で検出する必要がある。
そこで、上記のような山梨リニア実験線における地上一次方式の磁気浮上式鉄道(以下「超電導リニア」と略す)では、従来より、車両位置を検出する方法として、交差誘導線を用いた方式を採用している。これは、所定の間隔で交差させてループを構成した誘導線群からなる交差誘導線を軌道の全線に渡って敷設しておき、車両に搭載した送信機からの電波を交差誘導線で受信して、その受信信号を地上側の位置検知装置で演算・処理することにより車両位置を得るものである。この方法によって、LSMの同期制御が可能な高精度(例えば±20cm程度の誤差)の位置検出を実現している。
【0005】
しかしながら、交差誘導線による車両位置の検出は、高精度の位置検出が可能ではあるものの、交差誘導線を軌道全線に渡って高精度に敷設すると共に所定間隔毎(例えば2km毎)に中継装置を設置し、しかもそれらを維持管理する必要があるため、設備の施工及び保守等に多大な労力・コストが必要となるといった問題があった。
【0006】
そこで、交差誘導線による位置検出に代わる方法として、以下に述べる3つの方式(▲1▼〜▲3▼)が考えられ、それぞれ実用化に向けての検討がなされている。
▲1▼車輪回転パルスカウント方式
これは、車輪の回転数に基づいて車両位置を検出する方式である。超電導リニアでは、推進コイル以外に浮上・案内コイルも地上側の軌道に沿って配置されており、車両が走行(浮上・案内コイルに対して超電導磁石が移動)すると、浮上・案内コイルに起電力が生じ、その起電力による磁界と車両側の超電導磁石との磁気相互作用によって、車両を浮上させようとする浮上力が生じる。
【0007】
ただし、車両が浮上走行するのは高速走行時(例えば100km/h以上)であり、車両速度が低速になると、車両を浮上させ得る程度の浮上力を得ることができず浮上走行できない。そのため、車両には車輪も設けられており、浮上走行できない低速走行時はこの車輪によって軌道上を走行する。
【0008】
そこで、車輪の回転数に応じたパルス信号(例えば車輪一回転あたり数十パルス)を発生してそのパルス数をカウントする装置(例えば光学式エンコーダ等)を車上に設け、そのカウント値を地上側の位置検知装置へ伝送すれば、伝送されたカウント値に基づいて車両位置を検出することができる。
【0009】
即ち、通常は車輪径が予めわかっており、その車輪径から車輪一回転あたりの走行距離(より細かく言えば1パルスあたりの走行距離)もわかるため、車輪径及びパルス数に基づいて車両の走行距離、延いては車両位置を検出するようにしたものである。この方式によれば、例えば車両の出発時に何らかの方法で車両位置を初期設定することにより、それ以降はカウント値に基づいて常に車両位置を算出することができる。
【0010】
▲2▼速度起電力位相方式
これは、推進コイルに生じる速度起電力に基づいて車両位置を検出する方式である。既述の通り、地上一次方式では推進コイルへ通電することにより車両を推進させるが、車両の推進(超電導磁石の移動)によって、推進コイルには逆起電力(速度起電力)が生じる。この速度起電力を、例えば現代制御理論におけるオブザーバ理論を用いて推定し、その値から位相信号(推進コイルに対する超電導磁石の電気的位相;以下「速度起電力位相」ともいう)を算出して位置検知装置へ取り込むことにより、車両位置を得ることができる。
【0011】
尚、速度起電力位相をオブザーバにより推定して車両の走行制御に用いる技術については、従来より公知であり、例えば、特開平5−56511号公報や、平成13年6月発行の電気学会論文誌(Vol.119−D,No.6)に掲載の「磁気浮上式鉄道における速度起電力位相同期方式を用いた自制制御」等に、具体的構成・方法が開示されている。
【0012】
▲3▼コイルカウント方式
これは、地上側に配置された浮上・案内コイルの数をカウントすることにより車両位置を検出する方式である。超電導リニアでは、既述の通り浮上・案内コイルが軌道に沿って所定間隔で配置されているため、車両走行に伴って通過する浮上・案内コイルの数を車上側でカウントすれば、そのカウント値に応じた車両走行距離を算出することができ、延いては車両位置を得ることができるのである。
【0013】
浮上・案内コイルをカウントする具体的方法としては、例えば車両走行(超電導磁石の通過)に伴って浮上・案内コイルに生じる起電力を、車上側に設置した検出コイル等により検出し、その検出コイルからの出力電圧に基づいてカウントする方法などがある。そして、車上側で得られたカウント値を地上側の位置検知装置へ伝送することにより、そのカウント値に基づいて車両位置を検出することができる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記▲1▼〜▲3▼の3つの方式は、いずれも、交差誘導線を軌道全線に渡って敷設するといったような大がかりな設備は不要となるものの、それぞれ問題点があって、単独での実用化は困難である。以下に、各方式▲1▼〜▲3▼がそれぞれ有する特徴・問題点について説明する。
【0015】
まず、▲1▼の車輪回転パルスカウント方式については、軌道上を車輪走行する低速時しか車両位置の検出ができないという問題がある。即ち、超電導リニアでは、車両速度が上昇して浮上走行を開始すると、当然ながら車輪は回転しないため、この方式による車両位置の検出は不可能となる。そのため、この方式▲1▼で車両位置を検出できるのは、車輪走行時のみ、つまり走行開始時(車両速度0km/h)から浮上走行するまでの低速走行時のみとなるのである。
【0016】
尚、この方式▲1▼では、車両に搭載された光学式エンコーダ等のパルスカウント装置からの信号(カウント値)を無線通信等の何らかの信号伝送手段で地上側へ伝送する必要があり、その際に若干の伝送遅れが生じる。しかし、この伝送遅れ量は、方式▲1▼による位置検出が可能な低速走行時(車輪走行時)では、LSMの同期制御にほとんど影響しない無視しうる程度のレベルであるため、特に問題とならない。
【0017】
次に、▲2▼の速度起電力位相方式については、車両走行時に推進コイルに生じる速度起電力に基づいて車両位置を検出するものであるため、所定レベル以上の速度起電力を発生させる必要がある。そのため、この方式▲2▼による位置検出が可能な車両速度には下限があり、速度起電力位相を検出し得る程度の速度起電力が発生しない速度域(例えば0〜30km/h)では、車両位置を検出することができないという問題がある。
【0018】
逆に、車両速度が高速になればなるほど推進コイルに誘起される速度起電力は大きくなるため、高速域での制限はなく、最高速度(例えば500km/h)での走行時でも何ら問題なく高精度で連続的な車両位置の検出が可能である。尚、この方式▲2▼では、速度起電力に基づく車両位置の検出は全て地上側で行われるため、▲1▼の方式で述べたような伝送遅れの問題は生じない。
【0019】
次に、▲3▼のコイルカウント方式については、車上側で得られたコイルカウント値を無線通信等の何らかの信号伝送手段で地上側へ伝送する際に生じる伝送遅れが、高速走行時には無視できなくなる。つまり、車上側で浮上・案内コイルをカウントしてから、そのカウント値が地上側の位置検知装置へ伝送されて車両位置が検出されるまでに要する時間(伝送遅れ)の影響で、地上の位置検知装置にて検出された車両位置が実際の車両位置よりも遅れてしまっている、といった現象が生じるのである。
【0020】
この現象は、車両速度が高速になるほど顕著となり、例えば500km/hでの高速走行時に10msec.の伝送遅れがあったとすると、検出された車両位置とそのときの実際の車両位置との誤差は約1.4m程度となって、LSMの適切な制御が不可能となってしまう。そのため、この方式▲3▼が適用できる速度域には上限がある。
【0021】
また、コイル数をカウントする方法として、上記のような浮上・案内コイルに生じる起電力を検出する方法を用いる場合、▲2▼の方式と同様、車両速度が所定の速度以上でないと、浮上・案内コイルに生じる起電力が小さくなって検出できなくなる。更に、この方式▲3▼により得られる車両位置は、基本的に、浮上・案内コイル単位での離散的な位置(即ち、カウントアップ毎に更新される離散的位置情報)であるため、これをそのままLSMの同期制御に用いること自体、困難である。
【0022】
以上説明したように、▲1▼の車輪回転パルスカウント方式の場合は、浮上走行する速度域(例えば100km/h以上)で車両位置を検出できず、▲2▼の速度起電力位相方式の場合は、速度起電力が小さい低速走行時(例えば0〜30km/h)に車両位置を検出できず、▲3▼のコイルカウント方式の場合は、カウント値を車上側から地上側へ伝送する際の伝送遅れ量が影響してくる高速走行時に車両位置を正確に検出できない、或いはコイル数をカウントする方法によっては低速域でも検出できない場合がある、しかも得られる位置情報が離散的である、といったように、上記各方式▲1▼〜▲3▼は、いずれも、車両位置の検出が全く不可能な速度域、或いは位置検出はできるものの伝送遅れ等の影響で走行制御に用いることが困難な速度域があるなどの問題点により、車両走行の全速度域に渡って使用することはできないのである。
【0023】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、地上一次方式の磁気浮上式鉄道において、交差誘導線を用いることなく、全速度域に渡って車両位置を正確に検出できる位置検知システムを低コストで実現することを目的とする。
【0024】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の位置検知システムは、地上側の軌道に沿って配置された推進コイルへ車両位置に応じた電流を通電することにより、該推進コイルと車両側に搭載された界磁との磁気相互作用によって車両を推進させ、車両速度が所定の浮上速度より低いときは車両に備えられた車輪による車輪走行を行い、浮上速度以上では、軌道に沿って所定間隔で配置された浮上コイルと界磁との磁気相互作用によって車両を浮上させることにより浮上走行を行う地上一次方式の磁気浮上式鉄道において、車両位置を検出するためのものである。
【0025】
そして、車輪の回転数に基づいて、軌道上における車両の位置を検出する車輪回転数位置検出手段と、車両の走行に伴って推進コイルに誘起される速度起電力に基づいて、軌道上における車両の位置を検出する速度起電力位置検出手段とを備えると共に、位置情報選択手段が、いずれか一方の検出手段により検出された位置を選択する。
【0026】
具体的には、位置情報選択手段は、車両速度が所定の位置切換速度未満のときは、車両位置として車輪回転数位置検出手段により検出された位置を選択し、車両速度が位置切換速度以上のときは、車両位置として速度起電力位置検出手段により検出された位置を選択する。位置切換速度は、速度起電力位置検出手段により車両の位置が検出可能であって且つ浮上速度より低い速度域において、任意に設定することができる。
【0027】
車輪回転数位置検出手段による位置の検出は、例えば従来技術で述べた▲1▼の方式(車輪回転パルスカウント方式)など、車輪の回転数に基づいて車両位置を検出できる限り種々の方法を採用できるが、その検出方法の原理上、当然ながら、浮上速度より低くて車輪走行を行っているときは検出可能である反面、浮上速度以上の速度域では検出不可能である。
【0028】
一方、速度起電力位置検出手段による位置の検出についても、例えば従来技術で述べた▲2▼の方式(速度起電力位相方式)など、速度起電力に基づいて車両位置を検出できる限り種々の方法を採用できる。しかし、速度起電力の大きさは、通常は車両速度(推進コイルを通過する界磁の通過速度)に比例するため、車両位置を検出するのに最低限必要なレベルの速度起電力が誘起される速度以上の速度域では検出可能である反面、その速度域より低くて速度起電力が小さくなる低速走行時は検出困難である。
【0029】
このように、上記2つの位置検出手段はいずれも、全速度域で車両の位置を検出することはできない。そのため、本発明では、位置情報選択手段が、位置切換速度を境に2つの位置検出手段を選択切り換えすることにより、この2つの位置検出手段を組み合わせて全速度域での車両位置の検出を可能にしているのである。
【0030】
従って、本発明(請求項1)の位置検知システムによれば、2つの位置検出手段がそれぞれ検出した車両の位置のいずれか一方を、位置情報選択手段が車両速度に応じて選択するため、交差誘導線等を軌道全線に渡って敷設するといった大がかりな設備・施工を行うことなく、簡易的な設備で全速度域に渡って車両位置を正確に検出でき、位置検知システムの簡素化・低コスト化が可能となる。
【0031】
ここで、車輪回転数位置検出手段による車両位置の検出は、車輪の回転数に基づくものであるため、例えば現在山梨リニア実験線で試験走行等を行っている車両と同様、車輪にゴムタイヤを用いている場合、走行時のタイヤ空気圧変化や車両乗員の増減等に起因して車輪径が変化し、検出結果に誤差が生じるおそれがある。また、例えばディスクブレーキ等を使用して車両を減速・停止させるよう構成された車両の場合、ディスクブレーキ作動により車輪が軌道上を滑走してまい、それが原因で検出結果に誤差が生じるおそれもある。
【0032】
これに対し、速度起電力位置検出手段による車両位置の検出は、車両走行に伴って生じる速度起電力に基づいて行われるものであるため、速度起電力を正常に取り込める限り高精度の位置検出が可能である。
そこで、位置情報選択手段が選択切り換えを行う位置切換速度は、上記のように速度起電力位置検出手段により車両の位置が検出可能であって且つ浮上速度より低い速度域(換言すれば、上記各位置検出手段がいずれも車両の位置を検出可能な速度域)において任意に設定できるものの、より好ましくは、例えば請求項2に記載したように、速度起電力位置検出手段により車両の位置が検出可能であって且つ浮上速度より低い速度域における、最低速度にするとよい。このようにすれば、車輪回転数位置検出手段によって検出する速度域を必要最低限に抑え、速度起電力位置検出手段にて検出可能な速度域に入ったらすぐに速度起電力位置検出手段が選択されるため、より精度の高い位置の検出が可能となる。
【0033】
また、位置情報選択手段は、車両位置として選択する位置を各検出手段相互間で切り換える際に、単に位置切換速度を境に切り換えるのではなく、例えば請求項3に記載したように、切り換え先の位置検出手段により検出された位置が正常であるか否かを判断し、正常である場合に切り換えるようにするとよい。
【0034】
この正常であるか否かの判断は、例えば、現在選択している位置とこれから選択しようとする位置とを比較して、両者の差が所定の許容範囲以内にあれば正常と判断するなど、これから選択しようとしている位置が少なくとも推進コイルへの通電を適切に行える(延いては車両走行を適切に制御できる)程度の精度で検出されているか否かを判断できる限り、種々の方法を採りうる。
【0035】
このように、選択しようとする位置が正常である場合にのみ選択切り換えすることにより、位置切換速度を境に無条件に選択切り換えする場合に比べ、位置検知システムの信頼性を向上することができる。
ところで、例えば従来技術で説明した超電導リニアでは、電力変換器からき電線を介して推進コイルへの通電を行う際に、地上に配置された複数の推進コイルを一定の長さ(区間)毎に区切り、各区間毎にき電区分開閉器を通して通電するようにしているが、車両の異常時や、推進コイルへの通電を制御する地上側制御装置の異常時等には、推進コイルへの通電を停止すると共にき電区分開閉器を全て投入することにより保安ブレーキを動作させ、車両を停止させることがある。
【0036】
このような保安ブレーキが動作すると、速度起電力位相が乱れてしまい、車両位置を検出することが不可能となる。その結果、保安ブレーキによって車両が停止した後に異常が回復して再び走行しようとしても、そのときの車両位置は不明のままであるため、車両の適切な再出発制御が困難となる。
【0037】
そこで、請求項1〜3いずれかに記載の位置検知システムは、例えば請求項4記載のように、上記2つの位置検知手段以外に、車両の走行に伴って通過する浮上コイルの数をカウントし、該カウント値に基づいて軌道上における車両の位置を検出するコイルカウント位置検出手段を備えたものであって、位置情報選択手段が、速度起電力位置検出手段により検出された位置の選択中に該位置が正常であるか否かを判断し、異常のときはコイルカウント位置検出手段により検出された位置を選択するものであるとよい。
【0038】
つまり、本発明(請求項4)では、速度起電力位置検出手段の異常等によって正常な位置の検出ができなくなると、コイルカウント位置検出手段により検出された位置に選択切り換えするのである。このようにすれば、たとえその検出される位置が、従来技術の方式▲3▼について説明したような離散的な値或いは伝送遅れを伴う値であって推進コイルの通電制御(延いては車両の走行制御)に使用できなくても、少なくとも浮上コイルのカウント数だけは確実に検出できる。
【0039】
これにより、上記のように、浮上走行中に速度起電力位置検出手段に異常が生じて保安ブレーキの動作等で車両が停止しようとしても、少なくとも異常発生時から車輪走行になるまでの間はコイルカウント位置検出手段によって車両の位置を検出でき、車輪走行になれば車輪回転数位置検出手段によって検出できるため、車両の停止位置を検出することができる。そして、保安ブレーキによる車両停止後に速度起電力位置検出手段が正常状態に回復して再び車両が走行を開始しようとするとき、走行開始時の車両位置がわかっているため、確実に車両を出発させることができるのである。
【0040】
従って、請求項4記載の位置検知システムによれば、速度起電力位置検出手段による位置検出ができなくなっても、そのバックアップとしてコイルカウント位置検出手段により引き続き位置の検出(更新)はなされるため、より信頼性の高い位置検知システムを実現できる。
【0041】
尚、浮上コイルのカウントは、例えば従来技術で説明した▲3▼のコイルカウント方式により可能であるが、これ以外にも、例えば隣接配置された浮上コイル相互間の間隙を光センサ等の何らかの方法で車上側で検出することによってもカウントすることができる。後者の方法だと、車両速度に関係なく全速度域でのカウントが可能であるためより好ましい。
【0042】
ところで、車輪回転数位置検出手段により検出される車両の位置には、既述の通り、車輪径の変化や滑走等に起因する誤差が含まれている可能性があるため、その状態のまま位置の検出を継続すると、誤差も累積されて許容限度をこえてしまうおそれがある。一方、コイルカウント位置検出手段の場合、伝送遅れの問題を除けば、離散的ではあるものの非常に高精度の位置情報を得ることができる。しかも、コイル数をカウントする方法として上記例のような光センサ等を用いて浮上コイル相互間の間隙を検出する方法を採用すれば、車両速度に関係なく全速度域で位置の検出が可能である。
【0043】
そこで、例えば請求項5に記載したように、請求項1〜4いずれかに記載の位置検知システムを、車両の走行に伴って通過する浮上コイルの数をカウントし、該カウント値に基づいて、軌道上における車両の位置を検出するコイルカウント位置検出手段を備えたものであって、さらに、位置情報選択手段によって車輪回転数位置検出手段により検出された位置が選択されている間、該選択されている位置を、コイルカウント位置検出手段により検出された位置に基づいて定期的に再設定する車輪回転数位置再設定手段を備えたものとして構成するとよい。
【0044】
上記構成の位置検知システムでは、車輪回転数位置検出手段による位置が選択されている間、車輪径の変化等に起因する誤差が累積しても、その誤差を含んだ位置は、コイルカウント位置検出手段による位置(高精度な位置)に基づいて定期的(例えば浮上コイルのカウント数が更新される毎、或いは予め設定した複数の浮上コイルを通過する毎など)に再設定される。言い換えれば、累積された誤差が定期的に消去されることになる。
【0045】
そのため、請求項5記載の位置検知システムによれば、コイルカウント位置検出手段により検出された位置に基づいて、車輪回転数位置検出手段による位置が定期的に再設定され、再設定される毎にその位置を起点として引き続き位置の検出を行うことができるため、車輪径の変化等による誤差の影響が累積して制御不能となってしまうおそれがなく、精度の高い位置検知システムを実現できる。
【0046】
そしてこの場合、例えば請求項6に記載したように、車輪回転数位置再設定手段は、コイルカウント位置検出手段により検出された位置が正常であるか否かを判断し、正常であるときのみ再設定を実行するようにするとよい。つまり、車輪回転数位置検出手段による位置の選択中に、その位置を無条件にコイルカウント位置検出手段による位置で再設定するのではなく、コイルカウント位置検出手段による位置が正常である場合にのみ再設定を行うのである。このようにすれば、高精度かつ信頼性の高い位置検知システムの提供が可能となる。
【0047】
次に、請求項7記載の発明は、請求項1〜6いずれかに記載の位置検知システムであって、車両が通過したことを検知するための車両通過検知手段が軌道上に備えられると共に、該車両通過検知手段にて車両の通過が検知されたとき、位置情報再設定手段が、前記各位置検出手段のうち少なくとも位置情報選択手段にて選択されている位置を、その車両通過検知手段が備えられている位置に基づいて再設定するように構成されたものである。
【0048】
車輪回転数位置検出手段による位置には車輪径の変化等によって誤差が生じている可能性があることは既に述べたが、他の速度起電力位置検出手段又はコイルカウント位置検出手段についても、例えばコイルカウント位置検出手段がカウント忘れ或いは重複カウントしてしまうなど、何らかの要因で、検出した位置に誤差が生じている可能性もある。
【0049】
そのため、位置検出手段の種類に関わらず、車両通過検出手段にて車両の通過が検知されたときは、少なくとも現在選択されている位置を、その車両通過検出手段が設置されている場所の位置情報に基づいて再設定するのである。車両通過検出手段は軌道上に固定され、その位置は正確にわかっているものであるため、現在選択中の位置に誤差が生じていても、その正確な位置に基づく再設定により、誤差のない正確な位置に戻すことができる。
【0050】
尚、選択されていない他の位置検出手段による位置についても、仮にその位置が誤差を含んだ状態になっていると、その位置に選択切り換えされたとき、切り換え後は誤差を含んだままの位置に基づいて各種制御がなされてしまうことになる。そのため、位置情報再設定手段による再設定は、好ましくは、現在選択中の位置に限らず当該位置検知システムが備える全ての位置検出手段がそれぞれ検出する位置について実行するとよい。
【0051】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の位置検知システム全体の概略構成を示す説明図である。本実施形態の位置検知システムは、地上一次方式の磁気浮上式鉄道における車両位置を検出するためのものであり、図1に示す如く、主として、地上側に設置された位置検知装置10,駆動制御部20,電力変換器30,地上コイル装置40,列車無線地上局50,及び地上子55と、車両60に備えられた車輪回転パルスカウント装置61,コイルカウント装置62,列車無線車上局63,及び車上子64とからなるものである。
【0052】
駆動制御部20は、図示しない運行管理システムから与えられたランカーブ(車両60を予め決められたダイヤ通りに走行させるための速度曲線)を基に電力変換器30が出力すべき電流値を計算し、電流指令として電力変換器30へ出力すると共に、位置検知装置10により得られた位置検知位相θoを基に出力電流の位相基準θを演算して電力変換器30へ出力する。
【0053】
より具体的には、ランカーブに基づいて連続データ(速度指令)を生成し、その速度指令と実際の車両速度とを比較して、電力変換器30への電流指令を演算する。また、位置検知装置10からの位置検知位相θoは、それ自体をそのまま位相基準θとして電力変換器30へ出力してもいいが、本実施形態では、二次のPI制御系を通すことにより、加減速時に生じる定常偏差を低減させた値を位相基準θとして出力するようにしている。
【0054】
尚、位置検知位相θo及び位相基準θはいずれも、軌道上における車両60の位置(より詳しくは、地上コイル装置40を構成する推進コイル41(図2参照)に対する、車両60に搭載された超電導磁石66の相対的位置)を電気角で表したものであり、1つの推進コイル41の長さ(本実施形態では2.7m)が電気角の1周期となっている。また、駆動制御部20では、位置検知位相θoから車両速度vも演算され、当該駆動制御部20内で使用されると共に、電力変換器30や図示しない他の各種制御装置等にも出力されている。
【0055】
電力変換器30は、図示しないPWMインバータを内部に備え、外部から取り込んだ商用電源を車両60の走行制御に必要な電力に変換して地上コイル装置40へ出力するためのものであり、駆動制御部20からの電流指令及び位相基準θに基づき、推進コイル41への通電電流が車両位置に応じた適切な値となるように出力電圧を演算して、地上コイル装置40への給電を行う。
【0056】
そして、速度起電力オブザーバ31は、車両60の走行(超電導磁石66の移動)に伴って推進コイル41に誘起される速度起電力を推定し、その推定値から速度起電力位相θeを演算する。この速度起電力位相θeも、推進コイル41に対する超電導磁石66の相対的位置を電気角で表したものである。
【0057】
この速度起電力オブザーバ31は、地上コイル装置40への出力電圧値、それによって推進コイル41に流れる電流値、駆動制御部20からの位相基準θ及び車両速度v等に基づいて、現代制御理論におけるオブザーバ理論を適用して速度起電力を推定し、その推定値から速度起電力位相θeを演算する。推定された速度起電力は、地上コイル装置40への出力電圧の外乱補償にも使用される。
【0058】
速度起電力位相θeは、推進コイル41に誘起される速度起電力に基づいて得られるものであるため、速度起電力が十分に得られない低速度域では速度起電力位相θeを推定するのは困難である。本実施形態の速度起電力オブザーバ31は、30km/h以上の速度域であれば速度起電力位相θeを確実に得ることができるように構成されている。この、速度起電力位相θeを推定可能な速度域における最低速度である30km/hは、本発明の位置切換速度に相当するものである。
【0059】
尚、速度起電力位相θeをオブザーバ理論により推定して車両制御に用いる技術については、従来技術の項で述べた通り既に公知であり、本実施形態の速度起電力オブザーバ31も、既述の公知文献に記載されたものと同様に構成できるため、その詳細な構成についての説明は省略する。
【0060】
地上コイル装置40は、図2に示す通り、既存の山梨リニア実験線と同様、地上側の軌道に沿って推進コイル41及び浮上・案内コイル42がそれぞれ所定の間隔をもって隣接配置された構成となっている。尚、図2では軌道において車両60の左側(進行方向に向かって)にのみ配置されている様子を示しているが、図示は省略したものの、車両60の右側にも同様に配置され、両方併せて地上コイル装置40を構成している。
【0061】
そして、電力変換器30からの電力供給は、推進コイル41に対して行われ、より詳細には、隣接する3つの推進コイル41を一組として三相コイルが構成されており、この三相コイルに三相電流を供給することにより移動磁界を発生させる。
【0062】
軌道に沿って連続配置された推進コイル41には、全線に渡って常時電力を供給するのではなく、一定長のセクション(コイルセクション)に区切って、車両が在線するコイルセクションの推進コイル41にのみ、き電区分開閉器(図示略)を通して電力供給し、車両の移動に伴って、電力供給するコイルセクションを次々に切り替えていくように制御される。また、本実施形態の浮上・案内コイル42は、全体が樹脂製のカバーで覆われており、僅かな間隙を隔てて相互に隣接配置されている。
【0063】
車両60は、その側面に界磁としての超電導磁石66を備えたものであり、この超電導磁石66と地上側の推進コイル41とにより、リニア同期モータ(LSM)が構成される。また、超電導磁石66が浮上・案内コイル42を通過することにより、その浮上・案内コイル42には起電力が生じて磁界が発生する。その磁界と車両側の超電導磁石66との磁気相互作用により、車両60には浮上力が発生する。
【0064】
但し、従来技術でも述べた通り、車両が浮上走行できるのは高速走行時(本実施形態では100km/h以上)であり、100km/h(本発明の浮上速度に相当)より低い速度域では充分な浮上力が得られず浮上走行できない。そのため、ゴムタイヤを備えた車輪67が備えられており、浮上走行できない低速走行時はこの車輪67により車輪走行する。つまり、本実施形態では、地上側の電力変換器30から推進コイル41への通電により生じる移動磁界と超電導磁石66との磁気相互作用によって車両60が推進し、超電導磁石66と浮上・案内コイル42との磁気相互作用によって車両60が浮上するといった、従来の超電導リニアと同様の原理で車両60が推進・浮上する、いわゆる地上一次方式の磁気浮上式鉄道が構成されている。
【0065】
尚、車輪67自体には回転駆動力はなく、車輪67による自力走行はできない。つまり、車両60の推進力はあくまでも推進コイル41と超電導磁石66との磁気相互作用により得られるものであって、車輪67は単に車両60が浮上走行に移行するまでの走行を支える役目に過ぎない。そのため、浮上走行に移行したら、車輪67は台車(図示略)内に格納される。また、浮上・案内コイル42によって、車両60の左右側面が地上側の構造物に接触しないようにするための案内も行われるが、本発明とは直接関係ないためここではその説明を省略する。
【0066】
車両60に備えられた車輪回転パルスカウント装置61は、車輪67の回転数に比例したパルス信号を発生させ、そのパルス数をカウントした車輪回転パルスカウント値Kwを外部(列車無線車上局63)へ出力するよう構成されたものであり、これは、回転電動機や車輪等の回転体の回転数を検出する方法として従来より周知となっている光学式エンコーダと同様の構成であるため、ここではその詳細な構成についての説明は省略する。
【0067】
コイルカウント装置62は、車両60の走行に伴って通過する地上側の浮上・案内コイル42の数をカウントするものであり、図3に示す如く、レーザ変位計62aと、カウンタ部62dと、伝送部62eとで構成されている。レーザ変位計62aは、浮上・案内コイル42に向けてレーザ光を発光する発光部62bと、発光部62bからのレーザ光が浮上・案内コイル42等で反射した反射光を受光する受光部62cとを備えており、受光部62cにて受光される光のレベルを電圧値に変換して、カウンタ部62dへ出力する。
【0068】
浮上・案内コイル42は、図2で説明したように所定間隔で連続配置され、各浮上・案内コイル42は全体が樹脂製カバーで覆われており、隣接する浮上・案内コイル42相互間には僅かな間隙が存在している。そのため、発光部62bからのレーザ光が浮上・案内コイル42に直接当たっているときの反射光の受光レベルと、レーザ光が浮上・案内コイル42相互間の間隙を通過しているときの反射光の受光レベルは異なり、後者の方が前者よりも受光レベルが小さくなる。
【0069】
即ち、レーザ光が浮上・案内コイル42の表面で反射している間は高レベルの電圧値が、レーザ光が間隙部に入ったときは低レベルの電圧値が、カウンタ部62dに出力される。カウンタ部62dでは、この電圧値の変化をみて、電圧レベルが低下する(間隙を通過する)毎にカウントアップし、そのカウント値(コイルカウント値)を伝送部62eへ出力する。つまり、車両走行に伴ってコイルカウント装置62が間隙を通過する(詳細にはコイルカウント装置62からのレーザ光が間隙に入る)毎にカウントアップされていくのであり、結果として浮上・案内コイル42の数をカウントすることになる。カウンタ部62dからのコイルカウント値Kcは、インターフェイスとして機能する伝送部62eを介して列車無線車上局63へ出力される。
【0070】
車輪回転パルスカウント装置61からの車輪回転パルスカウント値Kwと、コイルカウント装置62からのコイルカウント値Kcはいずれも、列車無線車上局63に入力され、無線送信(本実施形態ではミリ波無線)するための変調等の処理がなされて地上側の列車無線地上局50へ送信される。そして、列車無線地上局50では、受信した電波を車輪回転パルスカウント値kw及びコイルカウント値Kcのデータに復調して、位置検知装置10へ出力する。列車無線車上局63及び列車無線地上局50はいずれも、変・復調装置やアンテナ等を備えた周知の無線送受信機として構成されたものである。
【0071】
尚、ミリ波による無線に限らず、例えば新幹線において既に実用化されているLCX(漏洩同軸ケーブル)による無線伝送など、種々の無線方式を採用できるが、伝送の高速化且つ大容量化のためにはLCXによるものよりミリ波による伝送方式が好ましい。
【0072】
また、車両60には車上子64が備えられ、地上側の所定の場所には地上子55が設置されている。車上子64からは、車両60の走行中は常時電波が出力されており、車両60の走行により車上子64が地上子55の上を通過すると、地上子55では車上子64からの電波が受信される。この受信電波は、地上子受信信号Pとして位置検知装置10へ出力される。これにより、地上子55の位置は予めわかっているため、位置検知装置10では、車上子64が地上子55上を通過する度に車両60の位置が正確に検出されることになる。
【0073】
次に、位置検知装置10は、車輪回転パルスカウント値Kwに基づく車両60の実位置(軌道上の絶対位置)及びパルスカウント位相θwの演算、コイルカウント値Kcに基づく車両60の実位置及びコイルカウント位相θcの演算、及び速度起電力位相θeに基づく車両60の実位置の演算を行い、これら3種類の実位置及び位相θe,θw,θcのうちいずれか1種類のみを選択して外部へ出力する(位相についてはθe,θw,θcのいずれか1つが位置検知位相θoとして出力される)もので、CPU1,インターフェイスとして機能する入力部15と出力部16,及び図示しないメモリ等を備えた周知のマイクロコンピュータとして構成されたものである。
【0074】
尚、パルスカウント位相θw及びコイルカウント位相θcはいずれも、速度起電力位相θeと同じく、推進コイル41に対する超電導磁石66の相対的位置を電気角で表したものである。そして、上記各実位置及び各位相θe,θw,θcはいずれも、本発明の車両位置に相当するものである。
【0075】
CPU1は、予め設定されたプログラムを実行することにより、位置情報制御部11,車輪回転位置速度検出部12,コイルカウント位置速度検出部13,及び速度起電力位置速度検出部14としての機能を実現するものである。
車輪回転位置速度検出部12は、インターフェイスとして機能する入力部15を介して入力された車輪回転パルスカウント値Kwから車両60の進行距離を演算し、それを基に車両60の位置(実位置及びパルスカウント位相θw)を検出すると共に、車両速度も検出する。そして、検出された車両位置及び車両速度は、位置情報制御部11へ入力される。車輪67の通常時(タイヤの内圧が所定の適正値のとき)における車輪径は予めデフォルト径としてメモリに記録されており、車輪67が1回転する間にカウントされるパルスの数もメモリに記録されているため、デフォルト径及び車輪回転パルスカウント値Kwとに基づいて車両位置及び車両速度を演算・検出できる。
【0076】
しかし、ゴムタイヤからなる車輪67の車輪径は、タイヤ内圧の変化やタイヤ摩耗等の影響によって、必ずしも常にデフォルト値にあるとは限らず、実際の車輪径とデフォルト径とが異なっていると、車輪回転位置速度検出部12により検出される車両位置が実際の車両位置とは異なったものになる(誤差がある)おそれがある。
【0077】
そこで、本実施形態の位置検知システムが構成された地上一次方式の磁気浮上式鉄道では、車両60が車両基地を出発してから、地上一次方式による車両制御が可能な軌道(推進コイル41及び浮上・案内コイル42が設置され、推進コイル41への通電による車両走行が行われる軌道;以下「ガイドウェイ」ともいう)上へ移動するまでの間に、地上子55が2つ設置されており、車上子64がこの2つの地上子55相互間を通過する間の車輪回転数(車輪回転パルスカウント値Kwの変化分)とその地上子55相互間の距離とに基づいて車輪径を逆算し、その結果をデフォルト径に代わって使用するようにしている。つまり、車両基地からの出発時にそのときの正確な車輪径を算出し、算出された車輪径に基づいて車輪回転位置速度検出部12による車両位置・速度の検出を行うようにしているのである。
【0078】
尚、車両基地からガイドウェイまでの車両60の移動は、例えば牽引車によって牽引するなどの方法で行われる。また、地上子55は、本実施形態では、車両基地からガイドウェイに至るまでの間だけでなく、軌道上の所定の位置(例えば駅の前後)にも設置されている。
【0079】
コイルカウント位置速度検出部13は、入力部15を介して入力されたコイルカウント値Kcから車両60の進行距離を演算し、それを基に車両60の位置(実位置及びコイルカウント位相θc)を検出すると共に、車両速度も検出する。そして、検出された車両位置及び車両速度は、位置情報制御部11へ入力される。また、コイルカウント値Kc自体も、位置情報制御部11へ出力されており、後述する車輪回転パルス位置情報リセット処理(図8参照)で使用される。
【0080】
速度起電力位置速度検出部14は、入力部15を介して入力された速度起電力位相θeに基づいて車両位置及び車両速度を検出するものであるが、速度起電力位相θeはそれ自体がすでに位置検知位相θoとして外部に出力できるものであるため、ここではその速度起電力位相θeに基づいて実位置及び車両速度を演算し、速度起電力位相θeと共に位置情報制御部11へ出力する。
【0081】
そして、本実施形態では、既述の通り、高精度の速度起電力位相θeを確実に得ることができるのは30km/h以上の速度域であるが、30km/h未満であっても、精度は落ちるものの全く速度起電力位相θeが得られないわけではなく、車両位置・速度の検出は実行される。しかし、そのように精度の低下した速度起電力位相θeから得られる車両位置を用いてLSMの同期制御を行うのは、システムの信頼性に欠けるため、本実施形態では、30km/h以上を、速度起電力方式による車両位置検出が可能な速度域としている。そして、この速度起電力方式による位置検出が可能な全速度域で、速度起電力方式を選択するようにしている。
【0082】
上記のように、本実施形態では、車両位置・速度を検出する手段として、車輪回転位置速度検出部12が車輪回転パルスカウント値Kwに基づいて検出する方式(以下「車輪回転パルス方式」ともいう)と、コイルカウント位置速度検出部13がコイルカウント値Kcに基づいて検出する方式(以下「コイルカウント方式」ともいう)と、速度起電力オブザーバ31が速度起電力位相θeを検出し、それに基づいて速度起電力位置速度検出部14が実位置及び車両速度を検出する方式(以下「速度起電力方式」ともいう)と、の3つの方式がある。
【0083】
そして、位置情報制御部11は、後述するように、車両速度或いは電力変換器30からの装置状態信号等に基づいて、上記各位置速度検出部12,13,14にてそれぞれ検出された車両位置及び車両速度のうちいずれか1つの車両位置・速度のみを選択するとともに、選択した車両位置を外部へ出力する。即ち、選択した位相を位置検知位相θoとして出力部16を介して外部(駆動制御部20等)へ出力すると共に、選択された実位置も出力部16を介して外部へ出力するのである。尚、出力部16はインターフェイスとして機能するものである。
【0084】
また、地上子受信信号Pが入力部15を介して入力されており、この信号Pをもとに、各位置速度検出部12,13,14において検出されている車両位置のリセット(再設定又は初期設定)も行う。本実施形態では、上記のように車両基地からガイドウェイまでの間に2つの地上子55が設置されている。そのため、車両60が出発してからガイドウェイに至るまでの間に、車上子64が地上子55上を通過すると、地上子受信信号Pが位置情報制御部11へ入力される。そして、この地上子受信信号Pによって得られる地上子位置情報(地上子55の設置位置)が、各位置速度検出部12,13,14に入力され、各位置速度検出部12,13,14により検出中の車両位置は、入力された地上子位置情報によってそれぞれリセット(初期設定)されることになる。
【0085】
また、電力変換器30から位置情報制御部11には、速度起電力オブザーバ31を含む電力変換器30全体が正常に動作しているか否かを示す装置状態信号が、入力部15を介して入力されており、後述する速度起電力方式の異常時処理において使用される。更に、位置情報制御部11は、各位置速度検出部12,13,14により検出されている車両位置・速度が正常か否かを判断したり、現在選択されている車両位置・速度によって他の位置速度検出部による車両位置・速度をリセット(再設定)する処理等も行うが、これらについても後述する。
【0086】
次に、CPU1が位置情報制御部11の機能として実行する位置選択制御処理について、図4に基づいて説明する。図4は、本実施形態の位置選択制御処理を示すフローチャートであり、CPU1にて所定の周期(例えば5msec.毎)で実行される。以下、車両60が牽引車により軌道上を牽引されながら図示しない車両基地を出庫し、ガイドウェイへの進入後は推進コイル41への通電による地上一次制御が行われるものとする。そして、車両60の速度変化や車両状態に応じて、車両60の出発から停止に至るまでの過程を下記(1)〜(7)の状況に分けて説明する。尚、ガイドウェイに進入するまでは車両60は25km/h未満の速度で牽引されるものとする
(1)出庫して最初の地上子55を通過する直前までの処理
この処理が開始されると、まずステップ(以下「S」と略す)S110にて、地上子55上を車上子64が通過したか否かが判断される。上記の通り、車両基地からガイドウェイに至る軌道上には地上子55が二つ設置されているが、出庫直後でまだ地上子55上を通過しない間は、否定判定されてS150の正常判断処理に移行する。S150は、車輪回転位置速度検出部12からの車両位置及び車両速度(以下これらを「車輪回転パルス位置速度情報」ともいう)と、コイルカウント位置速度検出部13からの車両位置及び車両速度(以下これらを「コイルカウント位置速度情報」ともいう)と、速度起電力位置速度検出部14からの車両位置及び車両速度(以下これらを「速度起電力位置速度情報」ともいう)の各々について、正常であるか否かの判断を行うものであり、その詳細を図5に示す。
【0087】
図5の正常判断処理では、まずS310にて、現在選択されている位置速度情報が正常に検出されているか否かのチェックを行うが、ここではまだ出庫直後で上記3つの位置速度情報のいずれも選択されていないため、そのままS320に進む。S320では、S310のチェック結果に基づいて現在選択中の位置速度情報が正常であるか否かの結果判定を行うが、上記の通りまだ何も選択されていないため、否定判定されてS490に進む。
【0088】
S490では、選択中情報に関するフラグを「なし」(現在選択されている位置速度情報はないことを示す)にセットして、そのままこの正常判断処理を終了し、図4の位置選択制御処理におけるS160に進む。S160の位置速度情報選択処理は、上記3つの位置速度情報のどれを選択するか、延いては各位置速度検出部12,13,14によりそれぞれ検出された各位相θw,θc,θe、及び各実位置のうちどれを位置検知位相θo及び実位置として外部へ出力するかを選択する処理であり、その詳細を図6に示す。
【0089】
図6の位置速度情報選択処理では、まずS610にて、速度起電力位置速度情報が現在選択されているか否かを判断し、ここではまだ何も選択されていないため、否定判定されてS620に移行する。S620では、コイルカウント位置速度情報が現在選択されているか否かを判断するが、ここでもやはり否定判定され、続くS630における、車輪回転パルス位置速度情報が選択されているか否かの判断においても同様に否定判定されて、そのままこの位置速度情報選択処理を終了し、図4のS170に進む。
【0090】
S170の速度起電力方式の異常時処理は、速度起電力位置速度情報を選択中、その情報が異常となったときにコイルカウント位置速度情報に選択切り換えする処理であり、その詳細を図7に示す。図7の速度起電力方式の異常時処理では、まずS710にて、前回まで(前回のS710の処理実行時)速度起電力位置速度情報が選択されていてしかも今回(現在)は何も選択されていないか否かを判断するが、ここでもやはり、出発してからまだ何も選択されていない状態が続いているため、否定判定されてS750に進む。
【0091】
S750では、速度起電力オブザーバ31を含む電力変換器30の装置状態が異常か否かを、電力変換器30からの装置状態信号に基づいて判断する。以下の説明では、特に断りのない限り電力変換器30は正常に動作しているものとして説明する。そのため、S750で否定判定された後、そのままこのS170の処理を終了し、図4におけるS180の処理に進む。
【0092】
S180では、現在選択されている位置速度情報があるか否かの判断がなされるが、ここではまだ何も選択されていないため、S230の車輪回転パルス位置情報リセット処理に移行する。この処理は、車輪回転パルス位置速度情報が選択されているときに、その車両位置をコイルカウント方式の車両位置に基づいて定期的にリセット(再設定)する処理であり、その詳細を図8に示す。
【0093】
図8の車輪回転パルス位置情報リセット処理では、まずS810にて、車両速度が25km/h以下であるか否かが判断される。この判断処理は、車輪回転パルス位置速度情報が選択されているときに、その選択されている車両速度に基づいて判断される。そしてここでは、実際には出発直後でまだ25km/h以下であったとしても、位置情報制御部11ではまだ何も選択されていない状態であるため、否定判定されてそのままこのS230の処理を終了する。これにより、図4の位置選択制御処理も一旦終了することになる。以後、車両60の車上子64が地上子55上を通過するまでは、どの位置速度情報も選択されることなく上記処理が繰り返される。
(2)地上子55を通過したときの処理
車両60が牽引されながらガイドウェイに向けて走行しているとき、車上子64が地上子55上を通過すると、地上子55では車上子64からの電波が受信され、地上子受信信号Pが位置情報制御部11へ入力される。このように地上子受信信号Pが位置情報制御部11で検出されると、図4のS110で肯定判定され、S120に進む。
【0094】
S120では、各方式における車両位置を、通過した地上子55が設置されている位置(地上子位置情報)に基づいて各々リセット(初期設定)する。即ち、地上子55の設置位置は予め正確にわかっているため、地上子55の通過時に各方式により検出中の車両位置をその地上子55の設置位置に設定するのである。そして、各方式につき、位置情報(車両位置)がリセットされたことを示す「位置リセット」フラグもセットされる。
【0095】
これにより、車輪回転パルス位置速度情報については、以降、その地上子55の位置を起点として車輪回転パルスカウント値Kwに基づいて検出が行われていくことになる。但し、速度起電力位置速度情報及びコイルカウント位置速度情報については、地上子55を通過した瞬間に初期設定はされるものの、以後、少なくともガイドウェイに進入するまでは正常な検出はなされない。
【0096】
S130では、S180と同様、現在選択されている位置速度情報があるか否かを判断し、ここではまだ何も選択されていないため、S140に移行する。そしてS140で、車輪回転パルス位置速度情報を「正常状態」にセットすると共に、その位置速度情報を選択する旨のフラグをセットする。これにより、車輪回転パルス方式による位置情報が、外部の駆動制御部20等へ出力されることになる。つまり、出庫後はじめて車両位置・速度が選択されたわけである。
【0097】
続くS150の正常判断処理(詳細は図5参照)では、まず、S310にて現在選択されている車輪回転パルス位置速度情報のチェックが行われる。このチェックは、例えば、前回のチェック時(S310実行時)における位置速度情報と比較して両者の差が所定の範囲内にあるか否か、言い換えれば前回チェック時の位置速度情報から予測される範囲内にあるか否かを判断することにより行うことができる。そして、異常ならばS320からS490に進んで選択中情報に関するフラグを「なし」にセットし、以降再び地上子55を通過するまで何も選択されない状態が続くが、正常ならばS330に進む。
【0098】
S330では、車輪回転パルス方式以外の他の方式A(ここでは速度起電力方式とする)による位置速度情報(速度起電力位置速度情報)が正常に検出されているかチェックを行う。このチェックは、例えば現在選択されている車輪回転パルス位置速度情報と比較することにより行い、両者の差が所定の許容範囲内(例えば±0.5%以内)にあれば正常、許容範囲内になければ異常と判定することができる。
【0099】
そして、S340では、S330のチェック結果に基づき、車両速度についての判定が行われ、正常ならばS350に進むが、ここではまだ車両60がガイドウェイ内を走行しておらず、速度起電力が発生しない(つまり速度起電力位相θeが正常に得られていない)ため、否定判定されてS390に進む。S390では、速度起電力位置速度情報を「異常状態」にセットし、続くS400で、S120(図4参照)によりセットされた速度起電力方式の「位置リセット」フラグがクリアされる。
【0100】
次に、S410では、車輪回転パルス方式及び上記の他方式A(速度起電力方式)以外の他の方式B、つまりコイルカウント方式によるコイルカウント位置速度情報が正常に検出されているかチェックを行う。このチェックも、S330と同様、例えば現在選択されている車輪回転パルス位置速度情報と比較することにより行うことができる。そして、S420では、S410のチェック結果に基づき車両速度についての判定がなされ、正常ならばS430に進むが、ここではまだ車両60が、浮上・案内コイル42が設置されたガイドウェイ内を走行しておらず、浮上・案内コイル42をカウントすることができないため、否定判定されてS470に進む。S470では、コイルカウント位置速度情報を「異常状態」にセットし、続くS480で、S120(図4参照)によりセットされた、コイルカウント方式の「位置リセット」フラグがクリアされる。これにより、S150の正常判断処理は一旦終了し、続くS160の位置速度情報選択処理に移行する。
【0101】
今、車輪回転パルス位置速度情報が選択されているため、S160(詳細は図6参照)の処理では、S610及びS620で否定判定された後、S630で肯定判定され、S660に進む。S660では、現在の車両速度が30km/h以上であってしかも速度起電力位置速度情報が「正常状態」であるか否かが判断されるが、ここではまだガイドウェイに進入しておらず車両速度は30km/hに満たないため、否定判定されてこのS160の位置速度情報選択処理を終了し、S170に移行する。
【0102】
S170の速度起電力方式の異常時処理(詳細は図7)では、上記(1)の場合と同様、前回の処理実行時に速度起電力位置速度情報は選択されていないため、まずS710にて否定判定される。そして、S750で否定判定されてそのままこのS170の処理を終了し、続くS180に移行する。
【0103】
ここで、現在すでに車輪回転パルス位置速度情報が選択されているため、S180では肯定判定されてS190に移行する。S190では、現在選択されていない他の方式A(ここでは速度起電力方式とする)により検出されている車両速度が「正常状態」であってしかも車両位置がまだリセットされていない状態(つまり「位置リセット」フラグがセットされていない)か否かが判断されるが、上記のようにS150の正常判断処理(図5参照)におけるS390の処理で速度起電力位置速度情報は「異常状態」にセットされている。そのため、このS190では否定判定されてS210に移行する。
【0104】
S210では、他方式B(ここではコイルカウント方式)により検出されている車両速度が「正常状態」であってしかもこの方式につき「位置リセット」フラグがまだセットされていないか否かが判断されるが、S150の正常判断処理(図5参照)におけるS470の処理でコイルカウント位置速度情報も「異常状態」にセットされている。そのため、S210でも否定判定されて、S230に移行する。
【0105】
S230の車輪回転パルス位置情報リセット処理(詳細は図8)では、まずS810にて、現在選択中の位置速度情報に基づいて車両速度が25km/h以下であるか否かが判断されるが、出庫直後の地上子55通過時は25Km/h以下であるため肯定判定されてS820に進む。S820では、コイルカウント位置速度検出部13から入力されているコイルカウント値Kcが、前回のこのS820実行時の値から更新され且つコイルカウント方式による位置情報が「正常状態」であるか否かが判断されるが、ここではまだガイドウェイに進入しておらず浮上・案内コイル42のカウントも行われていない。そのため、S820では否定判定されてそのままこの図8の処理を終了し、これにより図4の位置選択制御処理も一旦終了する。
【0106】
つまり、出庫後、車上子64が地上子55を通過することにより、上記説明したような処理がなされて車輪回転パルス位置速度情報が選択され、実位置と共に、パルスカウント位相θwも位置検知位相θoとして外部へ出力される。但し、他の方式の位置速度情報については、S120で一旦は初期設定されたものの、まだガイドウェイに進入していないため正常に検出されていない「異常状態」にある。
(3)ガイドウェイに進入し、車両速度が25km/h以下であるときの処理
この場合の位置選択制御処理(図4)では、まずS110で否定判定されてS150に進み、図5に示す正常判断処理が実行される。この正常判断処理では、まずS310,S320にて上記(2)と同様の処理がなされ、ここでも現在選択中の車輪回転パルス位置速度情報は正常であるものとしてS330へ進む。そして、S330では、車輪回転パルス方式以外の他の方式A(ここでは速度起電力方式とする)の位置速度情報(速度起電力位置速度情報)のチェックが行われるが、車両速度がまだ30km/hに満たないため、やはり上記(2)と同じくS340で否定判定され、S390,S400の各処理が実行されてS410に進む。
【0107】
そして、S410では、コイルカウント位置速度情報について、上記(2)の場合と同様にチェックが行われるコイルカウント方式による車両速度の検出は、コイルカウント値Kcの変化(カウントアップ)に基づいて得られる車両の進行距離と、その間の所要時間とから演算により求めることができ、ここではガイドウェイを走行しているため正常に得られているものとみなす。そのため、S420では肯定判定されて、S430に進む。
【0108】
S430では、コイルカウント方式について「位置リセット」フラグがセットされているか否かが判断されるが、ここでは、前回までに既に実行済みのS480のクリア処理により、セットされていないため、否定判定されてS460に進む。そして、S460にてコイルカウント方式にて検出される車両速度を「正常状態」にセットして、この正常判断処理を終了し、続くS160の処理に移行する。つまり、現在選択中の車輪回転パルス位置速度情報に加え、コイルカウント方式にて検出されている車両速度も、「正常状態」にセットされたことになる。
【0109】
このとき、車両60がガイドウェイを走行してはいるものの、現在選択されているのが車輪回転パルス位置速度情報であって車両速度もまだ30km/h以上ではないため、S160の位置速度情報選択処理(図6参照)では、上記(2)と同様、S610,S620で否定判定された後S630で肯定判定され、続くS660で否定判定されてそのままこの位置速度情報選択処理を終了する。そして、続くS170の速度起電力方式の異常時処理(図7参照)でも、上記(2)と同様、S710で否定判定されると共にS750でも否定判定され、この処理を終了してS180へ進む。
【0110】
S180では、車輪回転パルス位置速度情報が選択されているため肯定判定される。そして、S190では、現在選択されていない他の方式A(ここでは速度起電力方式とする)による車両速度はまだ「正常状態」でないため、上記(2)と同様に否定判定されてS210に進む。
【0111】
そしてこのとき、他方式B(ここではコイルカウント方式)については、図5の正常判断処理におけるS460の処理によって車両速度は「正常状態」にセットされているが、車両位置については「位置リセット」フラグがクリアされた状態(未リセット状態)にある。そのため、S210では肯定判定されてS220に進み、コイルカウント方式による位置情報を現在選択中の位置情報によってリセット(初期設定)すると共にその初期設定後の車両位置を「正常状態」にセットする。つまり、現在選択されている車両位置をコイルカウント位置速度検出部13へ与えて、コイルカウント方式により検出される車両位置と現在選択中の位置とを同じ値に設定するのである。この初期設定により、以降はコイルカウント方式によっても、コイルカウント値Kcに基づいて車両位置を正常に検出することができるようになる。尚、このリセットにより、コイルカウント方式についての「位置リセット」フラグが再びセットされる。
【0112】
続くS230(詳細は図8)では、まずS810で肯定判断されてS820の処理に移行する。このとき、上記のS220の処理によってコイルカウント方式による位置情報は「正常状態」にセットされている。そのため、コイルカウント値Kcが前回から更新されていなければそのままこの車輪回転パルス位置情報リセット処理を終了するが、更新されていればS830に進む。S830では、車輪回転パルス方式による位置情報が選択されているか否かの判断がなされ、ここでは肯定判定されてS840に進む。
【0113】
そしてS840で、車輪回転パルス方式による位置情報が、コイルカウント方式による位置情報によってリセット(再設定)される。つまり、コイルカウント方式においてコイルカウント値Kcがカウントアップされる毎に得られる高精度の車両位置を、そのカウントアップ時に車輪回転位置速度検出部12へ入力することにより、車輪回転位置速度情報検出部12では、現在検出中の車両位置が、その入力された車両位置によって更新設定されるのである。このようにするのは、既述の通り車輪回転パルス方式による車両位置には車輪径の変化や車輪滑走等による誤差が生じている可能性があって、そのままこの車両位置の検出を継続すると誤差が累積して許容範囲を超えてしまうおそれがあるからである。
【0114】
これに対し、コイルカウント値Kcのカウントアップ時には、浮上・案内コイル42相互間の間隙位置に対応した高精度の車両位置が得られるため、コイルカウント値Kcのカウントアップ毎に、車輪回転パルス方式による車両位置をコイルカウント方式による車両位置に更新すれば、その度に車輪回転パルス方式の車両位置に含まれる誤差も消去されることになり、結果として車輪回転パルス方式による車両位置の検出をより高精度で行うことができることになる。
【0115】
これにより図4の位置選択制御処理が一旦終了し、以降もこの位置選択制御処理は繰り返し実行されるが、このとき既に、S220の処理が実行されたことによってコイルカウント方式についての「位置リセット」フラグがセットされた状態にある。そのため、以後、図5の正常判断処理におけるS430の判断処理では、肯定判定されてS440に進む。
【0116】
そして、S440では、S410でのチェック結果に基づいてコイルカウント方式による位置情報の判定がなされ、異常ならばS470以降の処理に進むが、正常であればS450に進んでコイルカウント位置速度情報を「正常状態」にセットする。尚このとき、コイルカウント位置速度情報は、これまでに実行されたS460及びS220(図4参照)の処理によって既に「正常状態」にセットされているため、このS450の処理は、コイルカウント位置速度情報が正常である間に繰り返しなされる確認的処理である。
【0117】
つまり、ガイドウェイに進入後、車両速度が25km/h以下の間は、上記のように、車輪回転パルス位置速度情報が選択されるが、コイルカウント位置速度情報もコイルカウント値Kcのカウントアップ毎に正常に検出される。そして、車輪回転パルス方式による車両位置を、コイルカウント方式による車両位置によって定期的(本実施形態ではコイルカウント値Kcのカウントアップ毎)に再設定することにより、車輪回転パルス方式による車両位置の高精度化を実現している。(4)ガイドウェイ上で車両速度が30km/hに到達したときの処理
この場合、図4の位置選択制御処理において、まずS110で否定判定されてS150に進む。S150の正常判断処理(詳細は図5)では、現在選択されている車輪回転パルス位置速度情報が正常である限り、S310及びS320を経てS330に進む。そして、S330では、上記(3)と同様、他方式A(ここでは速度起電力方式とする)による位置速度情報が正常であるか否かが判断されるが、本実施形態では車両速度が30km/h以上になると速度起電力方式による車両位置・速度の検出が正常に行えるようになる。
【0118】
そのため、車両速度が30km/hに到達すると、S340で肯定判定されてS350に進む。S350では、既述のS430と同様、速度起電力方式について「位置リセット」フラグがセットされているか否かが判断されるが、ここでは、前回までに既に実行済みのS400の処理によりクリアされているため、否定判定されてS380に進む。そして、速度起電力方式にて検出される車両速度を「正常状態」にセットし、S410に移行する。
【0119】
S410以降は、コイルカウント位置速度情報が正常に得られている限り、上記(3)と同様に処理が実行され、最終的にS450の処理を実行してこの正常判断処理を終了する。つまり、車両速度が30km/hに到達した時点でまず速度起電力方式による車両速度が「正常状態」にセットされるのである。
【0120】
続くS160の位置速度情報選択処理(詳細は図6)では、上記(3)と同様、S610,S620で否定判定された後、S630で肯定判定されてS660に進む。このとき、車両速度は30km/hに到達し、速度起電力方式について車両速度は「正常状態」にセットされているものの、車両位置はまだ「正常状態」にセットされていない。そのためS660では否定判定されてこの位置速度情報選択処理を終了する。続くS170の速度起電力方式の異常時処理(詳細は図7)では、上記(3)と同様、S710からS750を経てこの処理を終了する。
【0121】
そして、S180で肯定判定されてS190に進むが、このとき、他方式A(ここでは速度起電力方式とする)による車両速度は「正常状態」にセットされており、車両位置についてはまだ「位置リセット」フラグがセットされていない未リセット状態にある。そのため、S190で肯定判定されS200に進む。S200では、速度起電力方式による位置情報を現在選択中の位置情報によってリセット(初期設定)すると共にその初期設定後の車両位置を「正常状態」にセットする。つまり、現在選択されている車両位置を速度起電力位置速度検出部14へ与えて、速度起電力方式により検出される車両位置を現在選択中の車両位置と同じ値に設定するのである。このリセットにより、速度起電力方式についての「位置リセット」フラグが再びセットされる。つまり、ここではじめて速度起電力方式による車両位置・速度が「正常状態」にセットされたことになる。
【0122】
続くS210の処理においては、他方式B(ここではコイルカウント方式)については既に「位置リセット」フラグがセットされているため、否定判定されてS230に進む。そして、S230の車輪回転パルス位置情報リセット処理(詳細は図8)では、車両速度が30km/hであるため最初のS810にて否定判定され、そのままこの処理を終了する。
【0123】
これにより図4の位置選択制御処理が一旦終了し、引き続きこの位置選択制御処理が周期的に実行されるが、このとき既に、S200の処理が実行されたことによって速度起電力方式についての「位置リセット」フラグがセットされた状態にある。そのため、次の正常判断処理(図5参照)実行時におけるS350の判断処理では、肯定判定されてS360に進む。
【0124】
そして、S360では、S330でのチェック結果に基づいて速度起電力方式による位置情報の判定がなされ、異常ならばS390以降の処理に進むが、正常であればS370に進んで速度起電力位置速度情報を「正常状態」にセットする。尚このとき、速度起電力位置速度情報は、これまでに実行されたS380及びS200(図4参照)の処理によって既に「正常状態」にセットされているため、このS370の処理は、速度起電力位置速度情報が正常である間に繰り返しなされる確認的処理である。
【0125】
このように速度起電力位置速度情報が「正常状態」にセットされると、続くS160の位置速度情報選択処理(詳細は図6)におけるS660の判断処理では肯定判定されてS680に進む。そして、S680で速度起電力位置速度情報が選択される。つまり、車両速度が30km/hに到達したとき、速度起電力位置速度情報が正常状態であることを確認した上で、選択する位置速度情報を車輪回転パルス位置速度情報から速度起電力位置速度情報に切り換えるのである。これにより、以後は速度起電力方式による車両位置(実位置及び速度起電力位相θe)が外部の駆動制御部20等へ出力されることになる。
【0126】
また、このように速度起電力位置速度情報への選択切り換えが行われると、以後再びS160の位置速度情報選択処理が実行されるとき、最初のS610の判断処理では肯定判定されてS640に進む。S640では、車両速度が30km/h未満であってしかも車輪回転パルス位置速度情報が「正常状態」であるか否かが判断されるが、ここでは車両速度が既に30km/hに到達しているため否定判定されることになる。但し、車両速度が再び30km/h未満になって、しかもそのときの車輪回転パルス位置速度情報が「正常状態」であれば、S640では肯定判定されてS670に進み、車輪回転パルス位置速度情報への選択切り換えが行われる。
【0127】
更に、速度起電力位置速度情報が選択されたことにより、以後の位置選択制御処理におけるS190〜S220の処理、及びS150の正常判断処理(詳細は図5)におけるS340以降の処理においては、車輪回転パルス方式又はコイルカウント方式を、他方式A又は他方式Bとして扱えばいい。
【0128】
このように速度起電力位置速度情報が選択された後は、その情報が正常であってしかも車両速度が30km/h以上である限り、速度起電力位置速度情報が選択された状態が続く。その一方で、車輪回転パルス位置速度情報及びコイルカウント位置速度情報についても、選択はされないものの引き続き車両位置・速度の検出が継続される。
【0129】
しかし、車両速度が100km/h以上になって浮上走行が始まると、車輪67が回転しなくなり、車輪回転パルス方式による車両位置・速度の検出は不可能になる。この場合、S150の正常判断処理(詳細は図5)において、車輪回転パルス方式を他方式Aとすると、S340で否定判定され、続くS390にて車輪回転パルス位置速度情報が「異常状態」にセットされると共に、S400にて「位置リセットフラグ」がクリアされる。そして、再び車輪走行に移行して車輪回転パルス方式による検出が可能になるまでは、この状態が続く。
(5)浮上走行から再び車輪走行に移行したときの処理(30km/h以上)
浮上走行中の車両60が、例えば駅に停車するために減速して再び車輪走行になると、車輪67の回転が再開されて車輪回転パルス方式によって車両位置・速度を正常に検出できるようになる。この場合に、S150の正常判断処理(詳細は図5)において車輪回転パルス方式を他方式Aとすると、S340で肯定判定されてS350に進むわけだが、浮上走行を開始したときにこの方式の位置速度情報は「異常状態」にセットされている。つまり、ここではまだこの方式についての「位置リセット」フラグはセットされていないため、S380で速度情報のみが「正常状態」にセットされる。
【0130】
このため、図4におけるS190の処理(車輪回転パルス方式を他方式Aとする)で肯定判定されることになり、続くS200で、車輪回転パルス方式による位置情報が、現在選択されている速度起電力位置速度情報に基づいてリセット(初期設定)される。つまり、現在選択されている車両位置を車輪回転位置速度検出部12へ与えて、車輪回転パルス方式により検出される車両位置を現在選択中の車両位置と同じ値に設定するのである。
【0131】
この初期設定により、以降、車輪回転パルスカウント値Kwに基づく車両位置の検出が可能となる。またS200では、車輪回転パルス方式につき位置情報が「正常状態」にセットされ且つ「位置リセット」フラグがセットされる。つまり、車輪回転パルス位置速度情報が再び「正常状態」にセットされたことになる。
(6)車両速度が30km/h未満になったときの処理
上記(5)のように、車輪走行となって車輪回転パルス位置速度情報が「正常状態」にセットされ、車輪回転パルス方式による車両位置・速度の検出が再開された後、車両速度が30km/h未満になると、S160の位置速度情報選択処理(詳細は図6)におけるS640の判断処理で肯定判定され、S670で車輪回転パルス位置速度情報への選択切り換えが行われる。
【0132】
以後、車両60が停止するまで、車輪回転パルス位置速度情報に基づく地上一次制御が行われる。尚、車両速度が25km/h以下の範囲では、S230(詳細は図8)の実行により、コイルカウント方式の位置情報に基づく車輪回転パルス方式の位置情報のリセット(更新)も行われる。
(7)速度起電力位置速度情報がその選択中に異常となったときの処理
浮上走行中で速度起電力位置速度情報が選択されているときに、速度起電力オブザーバ31を含む電力変換器30に何らかの異常が生じて、速度起電力位置速度情報を正常に検出できなくなると、S150の正常判断処理(詳細は図5)におけるS320の判断処理で否定判定され、選択中情報に関するフラグが「なし」にセットされる。これにより、いずれの位置速度情報も選択されていない状態になる。
【0133】
こうなると、S170の速度起電力方式の異常時処理(詳細は図7)では、最初のS710の処理で肯定判定される。そして、S720では、前回までの速度情報(つまり速度起電力位置情報が正常に検出できなくなる直前の速度情報)に基づき、車両速度が100km/h未満か否かを判断し、100km/h未満であれば車輪走行により車輪回転パルス位置情報が正常に検出されているため、S730に進んで車輪回転パルス方式による車両位置が選択される。
【0134】
一方、100km/h以上の場合、S740に進んでコイルカウント方式による位置情報が選択される。即ち、100km/h以上の浮上走行時に何らかの原因で電力変換器30に異常が生じて速度起電力位置速度情報を正常に検出できなくなったときは、通常は推進コイル41への正常な通電も行われなくなる可能性が高いため、保安ブレーキ(電力変換器30からの電力供給を停止すると共にき電区分開閉器を全て投入)等を動作させて車両を非常停止させる。このとき、地上一次方式による車両走行制御はできないものの、少なくとも車両位置・速度については、コイルカウント方式により検出を継続するのである。
【0135】
このようにコイルカウント位置速度情報が選択された後は、S160の位置速度情報選択処理(詳細は図6)において、S620の判断処理で肯定判定され、S650の処理が実行される。S650では、現在選択中のコイルカウント方式による車両速度が30km/h未満であってしかも車輪回転パルス位置速度情報が正常であるか否かの判断が行われ、車両速度が30km/h以上のときは、たとえ車輪走行に移行していても否定判定されて引き続きコイルカウント方式が選択されている状態が続くが、車両速度が30km/h未満になってそのときに車輪回転パルス位置速度情報が「正常状態」であれば、S670に進んで車輪回転パルス位置速度情報が選択されることになる。
【0136】
つまり、浮上走行時に速度起電力位置速度情報が異常となったとき、コイルカウント方式による車両位置の検出を行うことにより、車輪走行に移行したときに車輪回転パルス方式による位置情報をコイルカウント方式による位置情報でリセット(初期設定)でき、以後、車輪回転パルス方式による車両位置の検出が可能となり、非常停止してもそのときの車両位置を正常に検出できるのである。そのため、その後電力変換器30が正常に回復して再出発するときに、その車両位置を元にスムーズな出発制御を行うことができる。つまり、浮上走行時に速度起電力位置速度情報が正常に検出できなくなった場合のバックアップ用としてコイルカウント方式を用いるのである。
【0137】
尚、30km/h未満になるまでコイルカウント方式の選択を継続するのは、コイルカウント方式が有する既述の伝送遅れの影響を抑えるためである。即ち、コイルカウント方式では、コイルカウント値Kcを車両60側で検出してそれを地上側の位置検知装置10へ無線伝送するため、その際の伝送遅れの影響が、高速走行時に無視できなくなる。そして、伝送遅れが大きい状態で車輪回転パルス方式に選択切り換えすると、切り換え前後の車両位置の差が大きくなってスムーズな切り換えができなくなる。そのため、この伝送遅れの影響を無視できる程度の速度域に減速するまではコイルカウント方式を選択し続けるようにしているのである。
【0138】
また、図7の速度起電力方式の異常時処理では、仮に速度起電力オブザーバ31から速度起電力位相θeが正常に出力されていて速度起電力位置速度情報が正常に検出されていて、S710で否定判定されても、電力変換器30に何らかの異常が生じている旨の装置状態信号が出力されていれば、S750からS720に進み、車輪回転パルス方式或いはコイルカウント方式への選択切り換えを行うようにしている。
【0139】
上記(1)〜(7)で具体的に説明したように、本実施形態の位置検知システムでは、車輪回転パルス方式、コイルカウント方式、及び速度起電力方式の各々について、検出している位置速度情報が正常であるか否かの判定を行い、その判定結果と車両速度とに基づいて、いずれか1つの方式による位置速度情報を選択するようにしている。具体的には、車両速度が30km/h未満のときは車輪回転パルス位置速度情報を選択し、30km/h以上のときは速度起電力位置速度情報を選択する。
【0140】
そして、25km/h以下の速度域では、車輪回転パルス位置速度情報をコイルカウント位置速度情報に基づいてリセット(再設定)する。また、速度起電力位置速度情報を選択中にその情報が異常になったとき、車両速度が100km/h未満であれば車輪回転パルス位置速度情報に選択切り換えするが、100km/h以上であればコイルカウント位置速度情報に選択切り換えする。
【0141】
また、上記(1)〜(7)では具体的に説明しなかったものの、既述の通り本実施形態では、地上子55が、車両基地からガイドウェイに至るまでの軌道上に設けられているだけでなく、ガイドウェイにおいても、例えば駅の前後などに設置されている。そのため、ガイドウェイへの進入後、これらの地上子55を通過する度に、図4の位置選択制御処理におけるS110からS130の処理が実行され、そのときに選択されている位置速度情報を含む全ての位置速度情報が、その地上子55が設置されている場所の位置(地上子位置情報)によってリセット(再設定)される。
【0142】
従って、本実施形態の位置検知システムによれば、速度起電力方式による位置速度情報の検出が困難な30km/h未満の速度域では車輪回転パルス方式を選択し、30km/h以上の速度域(特に100km/h以上では車輪回転パルス方式による検出は不可能)では速度起電力方式を選択するため、従来のように交差誘導線等を軌道全線に渡って敷設するといった大がかりな設備・施工を行うことなく、簡易的な設備で全速度域に渡って車両位置を正確に検出でき、位置検知システムの簡素化・低コスト化が可能となる。
【0143】
また、単に30km/hを境にして選択切り換えするのではなく、これから選択しようとする位置速度情報が正常である場合にのみ選択するようにしており、しかも、速度起電力方式による検出が可能な速度域に入ったらすぐに速度起電力方式を選択することにより、車輪径の変化や滑走等の影響による検出位置の誤差をできる限り抑えることができるため、高精度且つ信頼性の高い位置検知システムが実現されている。
【0144】
さらに、浮上走行中に速度起電力方式による車両位置の検出ができなくなっても引き続き車両位置の検出を行うために、コイルカウント方式をそのバックアップとして用いることにより、位置検知システムの信頼性をより高めている。また、コイルカウント方式による車両位置を、車輪回転パルス方式による位置が選択されているときにその位置をリセット(再設定)する際の再設定値として用いており、車輪回転パルス方式による車両位置は、コイルカウント方式による車両位置で再設定される毎にその位置を起点として引き続き車両位置の検出を行うことができるため、車輪径の変化等による誤差の影響が累積して制御不能となってしまうおそれがなく、精度の高い位置検知システムを実現できる。
【0145】
そして、軌道上に設置された地上子55を通過する毎に、その地上子の設置位置に基づいて各方式の位置情報が再設定されるため、検出中の各位置情報に誤差が生じてしまっていたとしても、この再設定によって、誤差のない正確な位置に戻すことができる。
【0146】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素の対応関係を明らかにする。本実施形態において、車輪回転パルスカウント装置61及び車輪回転位置速度検出部12により本発明の車輪回転数位置検出手段が構成され、速度起電力オブザーバ31及び速度起電力位置速度検出部14により本発明の速度起電力位置検出手段が構成され、コイルカウント装置62及びコイルカウント位置速度検出部13により本発明のコイルカウント位置検出手段が構成され、地上子55は本発明の車両通過検知手段に相当し、位置情報制御部11は本発明の位置情報選択手段に相当する。位置情報制御部11は、本発明の車輪回転数位置再設定手段及び位置情報再設定手段にも相当するものである。
【0147】
また、図4の位置選択制御処理において、S110〜S120の処理は本発明の位置情報再設定手段が実行する処理に相当し、S150,S160,及びS170の処理はいずれも本発明の位置情報選択手段が実行する処理に相当し、S230の処理は本発明の車輪回転数位置再設定手段が実行する処理に相当する。
【0148】
尚、本発明の実施の形態は、上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。
例えば、上記実施形態では、速度起電力方式による位置検出が可能な最低速度である30km/hを境にして選択切り換えを行うようにしたが、これに限らず、速度起電力方式によってさらに低い速度まで検出可能であればその最低速度で選択切り換えすればいいし、また例えば、速度起電力方式で検出可能な最低速度に限らず、例えば50km/hで選択切り換えするなど、車輪回転パルス方式と速度起電力方式との相互切り換えが問題なくできる範囲内で任意に設定可能である。但し、既述の通り、車輪回転パルス方式では車輪径変化や車輪滑走等による影響で誤差を生じやすいため、上記実施形態のように速度起電力方式による検出可能な速度域ではその全速度域で速度起電力方式を採用するのが望ましい。
【0149】
また、図8の車輪回転パルス位置速度情報リセット処理では、車両速度が25km/h以下のときに車輪回転パルス位置情報の更新を行うようにしたが、車輪回転パルス方式が選択される全速度域(ここでは30km/h未満)で実行するようにしてもいい。
【0150】
更に、上記実施形態では、コイルカウント方式における浮上・案内コイル42の数をカウントするために、図3に示すようなレーザ光を利用したコイルカウント装置62を用いるようにしたが、これに限らず、浮上・案内コイル42をカウントできる限りあらゆる方法を採りうる。例えば、車両60の走行に伴って浮上・案内コイル42に誘起される起電力によって発生する磁界を、車両60側で例えば検知コイル等を用いて検出し、その検出結果(例えば電圧波形)に基づいてカウントするようにしてもいい。
【0151】
但しこの方法は、その検出原理からわかるように、浮上・案内コイル42に起電力が誘起されることが条件となるため、速度起電力方式の場合と同様、起電力が十分に得られない(換言すれば起電力による磁界が十分に発生しない)低速度域では検出することが困難になる。そのため、上記実施形態のコイルカウント装置62のように、全速度域に渡ってカウントできるものがより好ましい。
【0152】
また、コイルカウント方式により得られる位置情報は、カウントアップされる毎に得られる離散的なデータであるが、その離散的な位置情報及び速度情報を元に、演算により連続的なデータ(推測値)を生成するようにしてもよい。このようにすれば、その連続データを車両の走行制御にも使用できるため、例えば速度起電力位相θeが正常に得られなくなったものの電力変換器30は正常に動作して推進コイルへの通電が引き続き可能であるときに、コイルカウント方式よる位置情報を使用することができ、バックアップとしてのコイルカウント方式の有用性をより高めることができる。
【0153】
更に、S170の速度起電力方式の異常時処理(詳細は図7)では、100km/h未満のときは車輪回転パルス方式による位置情報を選択するようにしているが、これに限らず、例えば50km/h以上であればコイルカウント方式を選択するなど、車輪回転パルス方式による検出が可能な低速域で速度起電力方式に異常が生じたときであっても、コイルカウント方式を選択するようにしてもいい。
【0154】
更にまた、コイルカウント方式による位置情報が選択された後、車両速度が30km/h未満になれば車輪回転パルス方式に選択切り換えするようにした(図6のS650参照)が、より低速まで(例えば10km/hになるまで)コイルカウント方式を選択し続けてもよく、その切換速度は特に限定されない。但し、完全に停止するまでコイルカウント方式を選択し続けると、停止したときの位置が正確にわからない(何コイル目を通過したかはわかるが、それ以上の細かい位置情報はわからない)ため、停止する前の任意のタイミングで車輪回転パルス方式に選択切り換えして、停止したときにはその車輪回転パルス方式により確実に車両位置を検出できるようにする必要がある。
【0155】
また、上記実施形態では、出庫時に2つの地上子55を通過することによってそのときの正確な車輪径を求め、以降その車輪径に基づいて車輪回転位置速度情報を検出するようにしたが、一旦浮上走行を開始したあと再び減速して車輪走行になり、車輪回転パルス位置情報を選択しようとするとき、タイヤ摩耗や他の何らかの要因によって、出庫時に得た車輪径とは異なった車輪径になっている可能性もある。この場合に、出庫時に得た車輪径に基づいて車両位置の検出を行うと、当然ながら検出される位置に誤差が生じてしまうことになる。
【0156】
そこで、減速して車輪走行になったときに、速度起電力位置速度情報或いはコイルカウント位置速度情報に基づいて、そのときの正確な車輪径を求めるようにしてもよい。つまり、上記2つの情報はいずれも高精度である(但し後者は離散的ではあるが)ため、ある期間内に走行した距離を上記いずれかの情報に基づいて算出し、算出された距離と、その期間の車輪回転数(車輪回転パルスカウント値Kwの変化)とに基づいて、車輪径を演算することができるのである。
【0157】
このようにすれば、出庫時はもちろん、減速時においても常に正確な車輪径を得た上で車輪回転パルス方式による車両位置・速度の検出を行うことができるため、車輪回転パルス位置速度情報の精度をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態の位置検知システム全体の概略構成を示す説明図である。
【図2】本実施形態の地上コイル装置の概略構成、及び、地上コイル装置と車両との位置関係を説明する説明図(平面図)である。
【図3】本実施形態のコイルカウント装置内部の概略構成を示す説明図である。
【図4】本実施形態のCPUが実行する位置選択制御処理を示すフローチャートである。
【図5】図4の位置選択制御処理における、S150の正常判断処理の詳細を示すフローチャートである。
【図6】図4の位置選択制御処理における、S160の位置速度情報選択処理の詳細を示すフローチャートである。
【図7】図4の位置選択制御処理における、S170の速度起電力方式の異常時処理の詳細を示すフローチャートである。
【図8】図4の位置選択制御処理における、S230の車輪回転パルス位置情報リセット処理の詳細を示すフローチャートである。
【符号の説明】
10…位置検知装置、11…位置情報制御部、12…車輪回転位置速度検出部、13…コイルカウント位置速度検出部、14…速度起電力位置速度検出部、15…入力部、16…出力部、20…駆動制御部、30…電力変換器、31…速度起電力オブザーバ、40…地上コイル装置、41…推進コイル、42…浮上・案内コイル、50…列車無線地上局、55…地上子、60…車両、61…車輪回転パルスカウント装置、62…コイルカウント装置、62a…レーザ変位計、62b…発光部、62c…受光部、62d…カウンタ部、62e…伝送部、63…列車無線車上局、64…車上子、66…超電導磁石、67…車輪
Claims (7)
- 地上側の軌道に沿って配置された推進コイルへ車両位置に応じた電流を通電することにより、該推進コイルと車両側に搭載された界磁との磁気相互作用によって前記車両を推進させ、車両速度が所定の浮上速度より低いときは前記車両に備えられた車輪による車輪走行を行い、前記浮上速度以上では、前記軌道に沿って所定間隔で配置された浮上コイルと前記界磁との磁気相互作用によって前記車両を浮上させることにより浮上走行を行う地上一次方式の磁気浮上式鉄道において、
前記車両位置を検出するための位置検知システムであって、
前記車輪の回転数に基づいて、前記軌道上における前記車両の位置を検出する車輪回転数位置検出手段と、
前記車両の走行に伴って前記推進コイルに誘起される速度起電力に基づいて、前記軌道上における前記車両の位置を検出する速度起電力位置検出手段と、
車両速度が、前記速度起電力位置検出手段により前記車両の位置が検出可能であって且つ前記浮上速度より低い速度域における所定の位置切換速度未満のときは、前記車両位置として前記車輪回転数位置検出手段により検出された位置を選択し、車両速度が前記位置切換速度以上のときは、前記車両位置として前記速度起電力位置検出手段により検出された位置を選択する位置情報選択手段と、
を備えたことを特徴とする位置検知システム。 - 前記位置切換速度は、前記速度起電力位置検出手段により前記車両の位置が検出可能であって且つ前記浮上速度より低い速度域における、最低速度である
ことを特徴とする請求項1記載の位置検知システム。 - 前記位置情報選択手段は、前記車両位置として選択する位置を前記各検出手段相互間で切り換える際に、切り換え先の位置が正常であるか否かを判断し、正常である場合に切り換える
ことを特徴とする請求項1又は2記載の位置検知システム。 - 前記車両の走行に伴って通過する前記浮上コイルの数をカウントし、該カウント値に基づいて、前記軌道上における前記車両の位置を検出するコイルカウント位置検出手段を備え、
前記位置情報選択手段は、前記速度起電力位置検出手段により検出された位置の選択中に、該位置が正常であるか否かを判断し、異常のときは、前記コイルカウント位置検出手段により検出された位置を選択する
ことを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の位置検知システム。 - 前記車両の走行に伴って通過する前記浮上コイルの数をカウントし、該カウント値に基づいて、前記軌道上における前記車両の位置を検出するコイルカウント位置検出手段を備え、
前記位置情報選択手段によって前記車輪回転数位置検出手段により検出された位置が選択されている間、該選択されている位置を、前記コイルカウント位置検出手段により検出された位置に基づいて定期的に再設定する車輪回転数位置再設定手段を備えている
ことを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の位置検知システム。 - 前記車輪回転数位置再設定手段は、前記コイルカウント位置検出手段により検出された位置が正常であるか否かを判断し、正常であるときのみ、前記再設定を実行する
ことを特徴とする請求項5記載の位置検知システム。 - 前記軌道上には、前記車両が通過したことを検知するための車両通過検知手段が備えられており、
更に、該車両通過検知手段にて前記車両の通過が検知されたとき、前記各位置検出手段のうち少なくとも前記位置情報選択手段にて選択されている位置を、前記軌道上における前記車両通過検知手段が備えられている位置に基づいて再設定する位置情報再設定手段を備えている
ことを特徴とする請求項1〜6いずれかに記載の位置検知システム。
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