JP3555278B2 - 磁気記録媒体 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗布型の磁気記録媒体に関するものであり、更に詳しくは、磁性塗料の分散安定性の向上が可能なポリウレタン樹脂をバインダーに用いた磁気記録媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
磁性塗料中での磁性粉末の分散性を改善するため、従来から、塗布型の磁気記録媒体(具体的には、オーディオテープ、ビデオテープ、フロッピーディスク、コンピューター用データテープなど)のバインダーに各種の親水性極性基の導入が試みられている。このようなバインダーとして使用されるポリウレタン樹脂についても、SO3 M基、COOH基、PO(OM′)2 基、OH基、第3アミノ基、第4アンモニウム塩基(Mは水素原子、アルカリ金属など、M′は水素原子、アルカリ金属、炭化水素基など)などの導入が試みられている。
例えば、特開昭54−153009号公報、特開昭55−100157号公報、特開平1−223625号公報には、第4アンモニウム塩基を含有するポリウレタン樹脂をバインダーとして使用した磁気記録媒体が開示されている。これらのポリウレタン樹脂は、第3アミノ基含有グリコールをウレタン結合を介して導入し、得られた第3アミノ基含有ポリウレタン樹脂をアルキル化剤(ハロゲン化アルキル)で4級化して製造されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの方法で得られるポリウレタン樹脂では、目標とする磁性塗料の分散性が得にくいばかりか、樹脂分子中に第4アンモニウム塩基が主としてハードセグメントとして導入されるため、一般にその導入量に限界があり、多量に導入された場合には濁りを発生するなどの問題があった。さらに第4アンモニウム塩基の近傍にウレタン結合があるため、ウレタン結合の強い水素結合が極性基としての第4アンモニウム塩基の親水性を阻害し、磁性塗料の分散劣化を生じやすいので、磁性粉末を分散した際の分散安定性を改善しうる、磁気記録媒体の生産上実用的なバインダーが望まれていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記事情に鑑み、磁気記録媒体のバインダーとして使用されるポリウレタン樹脂への第4アンモニウム塩基の導入について鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0005】
即ち本発明は、非磁性支持体上に磁性粉末とバインダーを主体とする磁性層が形成されてなる磁気記録媒体において、該バインダー成分として、下記の一般式(1)、(2)、または(3)で示される部分化学構造を有するポリウレタン樹脂を含有することを特徴とする磁気記録媒体である。
【0006】
【化4】
【0007】
本発明は、非磁性支持体上に磁性粉末とバインダーを主体とする磁性層が形成されてなる磁気記録媒体において、該バインダー成分として、有機ジイソシアネートと、下記の一般式(4)または(5)で示される部分化学構造を有するポリオール(以下、第3アミノエステルポリオールと略称する)を一部または全部として含有する長鎖ポリオールとを反応させた後、アルキル化剤を反応させて第3アミノ基を4級化して得られるポリウレタン樹脂を含有することを特徴とする磁気記録媒体である。
【0008】
【化5】
【0009】
本発明は、非磁性支持体上に磁性粉末とバインダーを主体とする磁性層が形成されてなる磁気記録媒体において、該バインダー成分として、有機ジイソシアネートと、前記第3アミノエステルポリオールを一部または全部として含有する長鎖ポリオールと、鎖延長剤とを反応させた後、アルキル化剤を反応させて第3アミノ基を4級化して得られるポリウレタン樹脂を含有することを特徴とする磁気記録媒体である。
【0010】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の磁気記録媒体において、バインダーとして使用されるポリウレタン樹脂の製造について説明する。
前記ポリウレタン樹脂の製造に使用される有機ジイソシアネートとしては、一般にポリウレタン樹脂の製造に使用できるもの全てが使用可能であり、具体的には、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート、あるいはヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート、またあるいはイソホロンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート、さらにこれらの混合物等が挙げられる。また、これらの有機ジイソシアネートの一部をウレタン化、ウレトジオン化、カルボジイミド化などした変性イソシアネートも使用可能である。
【0011】
長鎖ポリオールは、その一部または全部として、前記一般式(1)、(2)、または(3)で示される部分化学構造を有するポリオール(以下、第4アンモニウムエステルポリオールと略称する)または前記第3アミノエステルポリオールを含有するものであり、ポリウレタン樹脂中への第4アンモニウム塩基の導入量を調整しやすいため、その一部に第4アンモニウムエステルポリオールまたは第3アミノエステルポリオール以外の高分子量のポリオールを併用するのが好ましい。第4アンモニウムエステルポリオールは、第3アミノエステルポリオールの第3アミノ基をアルキル化剤で4級化したものである。第4アンモニウムエステルポリオールは、分子中に前記一般式(1)、(2)、または(3)で示される部分化学構造以外の基や結合を有していてもよい。第3アミノエステルポリオールも、分子中に前記一般式(4)または(5)で示される部分化学構造以外の基や結合を有していてもよい。これらの長鎖ポリオールの分子量はいずれも300以上であり、300〜10000の範囲が好ましい。
【0012】
前記の第4アンモニウムエステルポリオールまたは第3アミノエステルポリオール以外の、長鎖ポリオールの一部として使用することのできる高分子量のポリオールとしては、ポリエステル系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、これらのコポリオール、これらの混合物などが挙げられる。このうち、親水性を付与しやすいポリエステル系ポリオールが好ましい。
このポリエステル系ポリオールとしては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロオルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸、これらの酸エステルあるいは酸無水物単独またはこれらの混合物と、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイド付加物等のグリコール、あるいはモノエタノールアミン等のアミノアルコール単独またはこれらの混合物との縮合反応で得られるポリエステルポリオールあるいはポリエステルアミドポリオール、またはε−カプロラクトン等の環状エステル(ラクトン)モノマーの開環重合で得られるラクトン系ポリエステルポリオール等が挙げられる。
ポリエーテル系ポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
ポリカーボネート系ポリオールとしては、一般に、多価アルコールと、ジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等のカーボネート類との脱アルコール反応などで得られるものが挙げられる。この多価アルコールとしては、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の単独またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
これらの高分子量のポリオールには、前記のジカルボン酸、酸エステルあるいは酸無水物単独またはこれらの混合物と、ヘキサメチレンジアミン、キシレンジアミン、イソホロンジアミン等のジアミンとの縮合反応で得られるポリアミドポリアミンを併用してもよい。
【0013】
第3アミノエステルポリオールは、好適には、水酸基含有α,β−不飽和カルボキシ化合物とアミン化合物との反応によって得られる。
水酸基含有α,β−不飽和カルボキシ化合物の例としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート、これらのε−カプロラクトン付加物等が挙げられ、アミン化合物の例としてはN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン等のジアルキルジアミン化合物、ピペラジン等のジアルキレンジアミン化合物が挙げられる。
具体的には、下式に示す2−ヒドロキシエチルアクリレート2mol とアルキルアミン1mol との反応物が挙げられる。
【化6】
さらに、下式に示す2−ヒドロキシエチルアクリレート2mol とジアルキレンジアミン1mol との反応物が挙げられる。
【化7】
また更に、第3アミノエステルポリオールと前述の公知のジカルボン酸、それらの酸エステルあるいは酸無水物との反応、またはさらにこれらとグリコール等との反応で得られるものが挙げられる。
本発明におけるポリウレタン樹脂の第4アンモニウム塩基は、前記反応式から明らかなように、2個のカルボン酸残基の間に特定化学構造で導入されることにより、濁りの発生がなく、分散安定性が改善される。特開平1−223625号公報に記載の第4アンモニウム塩基の導入方法では上記のような効果は得られない。
【0014】
第3アミノエステルポリオールまたはこれを用いて合成したポリウレタン樹脂の第3アミノ基を4級化するのに使用されるアルキル化剤としては、ヨウ化メチル等のハロゲン化アルキル、パラトルエンスルフォン酸メチルエステル、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル等のエステルなどを挙げることができる。
【0015】
鎖延長剤は分子量300未満の分子中に2個以上の活性水素(基)を有する化合物である。具体的には、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、あるいはビスフェノールAのエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイド付加物等のグリコール、あるいは、ヘキサメチレンジアミン、キシレンジアミン、イソホロンジアミン、モノエタノールアミン等のジアミン、またはアミノアルコール等が挙げられ、他に水、尿素も鎖延長剤として使用することができる。上記の化合物は単独でまたは混合して使用することができる。
【0016】
前記ポリウレタン樹脂の製造において、樹脂が線状の場合には、有機ジイソシアネートと長鎖ポリオールと場合により鎖延長剤とのNCO/活性水素(基)モル比は0.6/1〜1.15/1が好ましい。ポリウレタン樹脂が枝分れとなる場合には、ゲル化を避ける必要がある。(長鎖ポリオールと場合により鎖延長剤の)活性水素(基)の官能基数が大きくなるとゲル化を生じやすいので、活性水素(基)全体の平均官能基数は2.0〜3.0が好ましい。また、活性水素(基)全体の平均官能基数が3.0を越えるときは、その平均官能基数に応じて、NCO/活性水素(基)モル比を減少させることが好ましい。
ポリウレタン樹脂の分子量範囲は数平均分子量5000〜20万が好ましく、より好ましくは1万〜10万である。
ポリウレタン樹脂中の第4アンモニウム塩基含有濃度は0.001〜1.0mmol/gが望ましい。
【0017】
さらに前記ポリウレタン樹脂の製造には、必要に応じて、(ウレタン化)触媒、安定剤などを使用することができる。このような触媒としては、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン等の第3アミン、酢酸カリウム、ステアリン酸亜鉛等の金属塩、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫オキサイド等の有機金属化合物などが挙げられる。安定剤としては、置換ベンゾトリアゾール類等の紫外線に対する安定剤、フェノール誘導体等の熱酸化に対する安定剤などを挙げることができ、これらを配合することによってポリウレタン樹脂の諸性能を著しく安定化させることができる。
【0018】
また前記ポリウレタン樹脂を製造するにあたっては、従来公知のいずれの方法もとることができ、トルエン、キシレン、ベンゼン、ジオキサン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の単独溶剤系または混合溶剤系で反応させる溶液反応法や、無溶剤下で反応剤を十分に混合後、反応混合物を平板もしくは平らな面上に渡して加熱し、次いで冷却後粉砕する方法、あるいは反応混合物を押出機へ注入する方法等を用いることができる。
【0019】
本発明において、ポリウレタン樹脂の製造は、有機ジイソシアネートと第4アンモニウムエステルポリオールと場合により鎖延長剤とを反応させる方法にくらべて、有機ジイソシアネートと第3アミノエステルポリオールと場合により鎖延長剤とを反応させ、次いで4級化するほうが、反応がスムースであり原料製造、使用上も容易であるため、著しく好ましい。
【0020】
また、磁性粉の分散性や磁性層表面の平滑性を更に改善するため、前記ポリウレタン樹脂には、その他のバインダー成分として、必要に応じて、磁気記録媒体のバインダー成分として通常用いられている前記以外の熱可塑性ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、繊維素系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂、塩化ビニル−プロピオン酸ビニル共重合体、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂等を併用することもできる。
【0021】
さらに、磁性粉の機械的強度や耐摩耗性などを向上させるため、これらのバインダーにポリイソシアネート硬化剤を添加してもよい。このようなポリイソシアネート硬化剤としては、例えば、低分子ポリオールに有機ジイソシアネートを反応させて得られる末端イソシアネート基を持つ化合物が挙げられる。具体的には、日本ポリウレタン工業製のコロネートL、コロネート2030を例示することができる。
【0022】
本発明の磁気記録媒体において、磁性塗料の調製に用いられる磁性粉末としては、γ−Fe2 O3 、Co−γ−Fe2 O3 、Co−FeO・Fe2 O3 等の酸化鉄磁性粉、CrO2 、六方晶系バリウムフェライト微粒子、およびFe、Ni、Co、Fe−Ni−Co合金、Fe−Mn−Zn合金等のFe、Ni、Coを主成分とするメタル磁性粉等各種の強磁性の磁性粉末が挙げられる。
【0023】
本発明の磁気記録媒体には、必要に応じて、帯電防止剤としてカーボン微粒子を、研磨剤として非極性の金属酸化物の微粒子を、摩擦係数低下のための潤滑剤として高級脂肪酸、脂肪酸エステル、流動パラフィン、シロキサン類やフルオロカーボン類を、そして分散剤としてレシチン等を使用することができる。
【0024】
本発明に使用される非磁性支持体の素材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類、ポリイミド類、ポリアミドイミド類、ポリフェニレンスルフィド類等が挙げられ、用途によりテープ、フィルム、シートなどの形態で用いられる。
【0025】
磁気記録媒体の磁性層は、例えば、前記バインダー、磁性粉末、更に必要に応じ添加される各成分を適当な有機溶剤と混練して磁性塗料を調製し、これを非磁性支持体表面に塗布した後、乾燥することによって形成される。
【0026】
【実施例】
以下、本発明を実施例にてさらに詳しく述べるが、本発明は実施例のみに限定して解釈されるべきものではない。なお、合成例、実施例および比較例における「部」および「%」は、特に断りのないかぎり、「重量部」および「重量%」を示す。
【0027】
第3アミノエステルポリオールの合成
合成例1
撹拌機、温度計および冷却管を備えた反応器に、ピペラジン270.6部、2−ヒドロキシエチルアクリレート729.4部を加えて混合し、室温で2時間、次いで60℃で2時間反応させて、第3アミノエステルポリオールを得た。これをPO−A1とする。得られた化合物の1H−NMRスペクトルからイミノ基およびアクリロイル基の消失が確認された。得られたPO−A1の水酸基価は352mgKOH/g であった。
これらをまとめて表2に示す。
【0028】
合成例2
撹拌機、温度計および冷却管を備えた反応器に、ピペラジン86.0部、2−ヒドロキシエチルアクリレートのε−カプロラクトン付加物(ダイセル化学製FA−3、数平均分子量約460)914.0部を加えて混合し、室温で2時間、次いで60℃で2時間反応させ、さらに60℃、20mmHg下で減圧し、未反応のε−カプロラクトンモノマーを除去して、第3アミノエステルポリオールを得た。これをPO−A2とする。得られた化合物の1H−NMRスペクトルからイミノ基およびアクリロイル基の消失が確認された。得られたPO−A2の水酸基価は112mgKOH/g であった。
これらをまとめて表2に示す。
【0029】
合成例3
撹拌機、温度計および冷却管を備えた反応器に、第3アミノエステルポリオールPO−A1 189.3部、表1に示すポリエステルポリオール2 810.7部を加えて混合し、0.01部のテトライソプロピルチタネートを加え130〜150℃でエステル交換反応させて、第3アミノエステルポリオールを得た。これをPO−A3とする。得られたPO−A3の水酸基価は112mgKOH/g であった。
これらをまとめて表2に示す。
【0030】
合成例4
撹拌機、温度計および冷却管を備えた反応器に、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン305.5部、2−ヒドロキシエチルアクリレート694.5部を加えて混合し、室温で2時間、次いで60℃で2時間反応させて、第3アミノエステルポリオールを得た。これをPO−B1とする。得られた化合物の1H−NMRスペクトルからアミノ基、イミノ基およびアクリロイル基の消失が確認された。得られたPO−B1の水酸基価は336mgKOH/g であった。
これらをまとめて表2に示す。
【0031】
合成例5
撹拌機、温度計および冷却管を備えた反応器に、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン100.4部、2−ヒドロキシエチルアクリレートのε−カプロラクトン付加物(ダイセル化学製FA−3、数平均分子量約460)899.6部を加えて混合し、室温で2時間、次いで60℃で2時間反応させ、さらに60℃、20mmHg下で減圧し、未反応のε−カプロラクトンモノマーを除去して、第3アミノエステルポリオールを得た。これをPO−B2とする。得られた化合物の1H−NMRスペクトルからアミノ基、イミノ基およびアクリロイル基の消失が確認された。得られたPO−B2の水酸基価は112mgKOH/g であった。
これらをまとめて表2に示す。
【0032】
合成例6
撹拌機、温度計および冷却管を備えた反応器に、第3アミノエステルポリオールPO−B1 200.8部、表1に示すポリエステルポリオール3 799.2部を加えて混合し、0.01部のテトライソプロピルチタネートを加え130〜150℃でエステル交換反応させて、第3アミノエステルポリオールを得た。これをPO−B3とする。得られたPO−B3の水酸基価は112mgKOH/g であった。
これらをまとめて表2に示す。
【0033】
合成例7
撹拌機、温度計および冷却管を備えた反応器に、N−メチルジエタノールアミン238.3部、ε−カプロラクトン761.7部を加えて混合し、温室で2時間、次いで60℃で2時間反応させ、さらに60℃、20mmHg下で減圧し、未反応のε−カプロラクトンモノマーを除去して、第3アミノエステルポリオールを得た。これをPO−C1とする。得られたPO−C1の水酸基価は224mgKOH/g であった。
これらをまとめて表2に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
ポリウレタン樹脂の合成
合成例8
撹拌機、温度計および冷却管を備えた反応器にポリエステルポリオール1(表1参照)251.5部、第3アミノエステルポリオールPO−A1(表2参照)9.6部、メチルエチルケトン/トルエン/シクロヘキサノン=3/3/2の混合溶媒167部を仕込み、50℃で溶解混合した後、(ウレタン化)触媒としてジオクチル錫ジラウレート0.06部を加え、次いで、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート39.0部を加え、75℃にて反応させた。反応が進行するにつれて、粘度が上昇するので、適時、メチルエチルケトン/トルエン/シクロヘキサノン=3/3/2の混合溶媒にて希釈し、赤外スペクトルでイソシアネート基の吸収ピークが消滅したのを確認して反応を止め、均一透明な溶液を得た。このポリウレタン樹脂溶液は、固形分30%であり、GPC測定によるポリスチレン換算での数平均分子量は19000、重量平均分子量は36000であった。
このポリウレタン樹脂溶液にパラトルエンスルフォン酸メチルエステル11.2部を加え、70℃で20時間4級化反応を行い、第4アンモニウム塩基を含有するポリウレタン樹脂溶液を得た。このポリウレタン樹脂溶液をPU−A1−1とする。
この結果をまとめて表3に示す。
【0037】
合成例9〜29
合成例8と同様にして表3〜表5に示す、有機ジイソシアネート、ポリエステルポリオール、第3アミノエステルポリオール、鎖延長剤を(ウレタン化)反応させ、次いで4級化反応を行って、第4アンモニウム塩基を含有するポリウレタン樹脂溶液を合成した。
これらの結果をまとめて表3〜表5に示す。
【0038】
【表3】
【0039】
【表4】
【0040】
【表5】
【0041】
実施例1
この様にして得られた第4アンモニウム塩基含有ポリウレタン樹脂溶液を用いて下記の比率で配合し、サンドグラインドミル(五十嵐機械製)で10時間分散して磁性塗料を調製した。この塗料を直ちにまたは24時間静置後、厚さ15μmのポリエチレンテレフタレートのベースフィルム上に乾燥膜厚3μmになるように塗布し、直ちに磁場をかけ、80℃で3分間乾燥し、カレンダー処理後、更に25℃で72時間キュアして、所定の幅に裁断し磁気フィルムを作製した。
[配合]
メタル磁性粉(BET数56m2 /g) 100部
ポリウレタン樹脂(固形分換算) 20部
メチルエチルケトン 105部
トルエン 105部
シクロヘキサノン 70部
得られた磁気フィルムの光沢度と角型比を測定した。また、磁性塗料調製直後と24時間静置後の磁性塗料の粘度を測定した。
使用したポリウレタン樹脂の種類と磁気フィルムの性能を表6に示す。
[測定方法]
(1)光沢度:得られた磁気フィルムの磁性面について、光沢計(スガ試験機製)を用いて、入射角45度、反射角45度における反射率(割合としての%)を測定した。
(2)角型比:得られた磁気フィルムの電磁変換特性は、振動試料型磁力計VSM−3KA型(東英工業製)を用いて測定した(割合としての%で示す)。
(3)磁性塗料の粘度:E型粘度計(東機産業製)を用いて測定した。
【0042】
実施例2〜18、比較例1〜4
実施例1で用いた第4アンモニウム塩基を含有するポリウレタン樹脂溶液の代わりに、表3〜表5に示す第4アンモニウム塩基を含有するポリウレタン樹脂溶液を用いて磁気フィルムを作製し、これらの磁気フィルムについて実施例1と同様の方法で性能を測定した。
使用したポリウレタン樹脂の種類と磁気フィルムの性能を表6に示す。
【0043】
【表6】
【0044】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明によって、バインダーとして分子中に第4アンモニウム塩基とエステル結合を含む特定の部分化学構造を有するポリウレタン樹脂を用いることにより、ポリウレタン樹脂に濁りを発生することなく必要とする親水性と分散安定性を任意に付与でき、磁気記録媒体製造の際、分散性、分散安定性に優れた磁性塗料が得られ、これを用いて磁性層中の磁性粉末充填率と記録密度が向上した磁気記録媒体を提供し得ると共に、その生産効率を向上させることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗布型の磁気記録媒体に関するものであり、更に詳しくは、磁性塗料の分散安定性の向上が可能なポリウレタン樹脂をバインダーに用いた磁気記録媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
磁性塗料中での磁性粉末の分散性を改善するため、従来から、塗布型の磁気記録媒体(具体的には、オーディオテープ、ビデオテープ、フロッピーディスク、コンピューター用データテープなど)のバインダーに各種の親水性極性基の導入が試みられている。このようなバインダーとして使用されるポリウレタン樹脂についても、SO3 M基、COOH基、PO(OM′)2 基、OH基、第3アミノ基、第4アンモニウム塩基(Mは水素原子、アルカリ金属など、M′は水素原子、アルカリ金属、炭化水素基など)などの導入が試みられている。
例えば、特開昭54−153009号公報、特開昭55−100157号公報、特開平1−223625号公報には、第4アンモニウム塩基を含有するポリウレタン樹脂をバインダーとして使用した磁気記録媒体が開示されている。これらのポリウレタン樹脂は、第3アミノ基含有グリコールをウレタン結合を介して導入し、得られた第3アミノ基含有ポリウレタン樹脂をアルキル化剤(ハロゲン化アルキル)で4級化して製造されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの方法で得られるポリウレタン樹脂では、目標とする磁性塗料の分散性が得にくいばかりか、樹脂分子中に第4アンモニウム塩基が主としてハードセグメントとして導入されるため、一般にその導入量に限界があり、多量に導入された場合には濁りを発生するなどの問題があった。さらに第4アンモニウム塩基の近傍にウレタン結合があるため、ウレタン結合の強い水素結合が極性基としての第4アンモニウム塩基の親水性を阻害し、磁性塗料の分散劣化を生じやすいので、磁性粉末を分散した際の分散安定性を改善しうる、磁気記録媒体の生産上実用的なバインダーが望まれていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記事情に鑑み、磁気記録媒体のバインダーとして使用されるポリウレタン樹脂への第4アンモニウム塩基の導入について鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0005】
即ち本発明は、非磁性支持体上に磁性粉末とバインダーを主体とする磁性層が形成されてなる磁気記録媒体において、該バインダー成分として、下記の一般式(1)、(2)、または(3)で示される部分化学構造を有するポリウレタン樹脂を含有することを特徴とする磁気記録媒体である。
【0006】
【化4】
【0007】
本発明は、非磁性支持体上に磁性粉末とバインダーを主体とする磁性層が形成されてなる磁気記録媒体において、該バインダー成分として、有機ジイソシアネートと、下記の一般式(4)または(5)で示される部分化学構造を有するポリオール(以下、第3アミノエステルポリオールと略称する)を一部または全部として含有する長鎖ポリオールとを反応させた後、アルキル化剤を反応させて第3アミノ基を4級化して得られるポリウレタン樹脂を含有することを特徴とする磁気記録媒体である。
【0008】
【化5】
【0009】
本発明は、非磁性支持体上に磁性粉末とバインダーを主体とする磁性層が形成されてなる磁気記録媒体において、該バインダー成分として、有機ジイソシアネートと、前記第3アミノエステルポリオールを一部または全部として含有する長鎖ポリオールと、鎖延長剤とを反応させた後、アルキル化剤を反応させて第3アミノ基を4級化して得られるポリウレタン樹脂を含有することを特徴とする磁気記録媒体である。
【0010】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の磁気記録媒体において、バインダーとして使用されるポリウレタン樹脂の製造について説明する。
前記ポリウレタン樹脂の製造に使用される有機ジイソシアネートとしては、一般にポリウレタン樹脂の製造に使用できるもの全てが使用可能であり、具体的には、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート、あるいはヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート、またあるいはイソホロンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート、さらにこれらの混合物等が挙げられる。また、これらの有機ジイソシアネートの一部をウレタン化、ウレトジオン化、カルボジイミド化などした変性イソシアネートも使用可能である。
【0011】
長鎖ポリオールは、その一部または全部として、前記一般式(1)、(2)、または(3)で示される部分化学構造を有するポリオール(以下、第4アンモニウムエステルポリオールと略称する)または前記第3アミノエステルポリオールを含有するものであり、ポリウレタン樹脂中への第4アンモニウム塩基の導入量を調整しやすいため、その一部に第4アンモニウムエステルポリオールまたは第3アミノエステルポリオール以外の高分子量のポリオールを併用するのが好ましい。第4アンモニウムエステルポリオールは、第3アミノエステルポリオールの第3アミノ基をアルキル化剤で4級化したものである。第4アンモニウムエステルポリオールは、分子中に前記一般式(1)、(2)、または(3)で示される部分化学構造以外の基や結合を有していてもよい。第3アミノエステルポリオールも、分子中に前記一般式(4)または(5)で示される部分化学構造以外の基や結合を有していてもよい。これらの長鎖ポリオールの分子量はいずれも300以上であり、300〜10000の範囲が好ましい。
【0012】
前記の第4アンモニウムエステルポリオールまたは第3アミノエステルポリオール以外の、長鎖ポリオールの一部として使用することのできる高分子量のポリオールとしては、ポリエステル系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、これらのコポリオール、これらの混合物などが挙げられる。このうち、親水性を付与しやすいポリエステル系ポリオールが好ましい。
このポリエステル系ポリオールとしては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロオルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸、これらの酸エステルあるいは酸無水物単独またはこれらの混合物と、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイド付加物等のグリコール、あるいはモノエタノールアミン等のアミノアルコール単独またはこれらの混合物との縮合反応で得られるポリエステルポリオールあるいはポリエステルアミドポリオール、またはε−カプロラクトン等の環状エステル(ラクトン)モノマーの開環重合で得られるラクトン系ポリエステルポリオール等が挙げられる。
ポリエーテル系ポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
ポリカーボネート系ポリオールとしては、一般に、多価アルコールと、ジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等のカーボネート類との脱アルコール反応などで得られるものが挙げられる。この多価アルコールとしては、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の単独またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
これらの高分子量のポリオールには、前記のジカルボン酸、酸エステルあるいは酸無水物単独またはこれらの混合物と、ヘキサメチレンジアミン、キシレンジアミン、イソホロンジアミン等のジアミンとの縮合反応で得られるポリアミドポリアミンを併用してもよい。
【0013】
第3アミノエステルポリオールは、好適には、水酸基含有α,β−不飽和カルボキシ化合物とアミン化合物との反応によって得られる。
水酸基含有α,β−不飽和カルボキシ化合物の例としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート、これらのε−カプロラクトン付加物等が挙げられ、アミン化合物の例としてはN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン等のジアルキルジアミン化合物、ピペラジン等のジアルキレンジアミン化合物が挙げられる。
具体的には、下式に示す2−ヒドロキシエチルアクリレート2mol とアルキルアミン1mol との反応物が挙げられる。
【化6】
さらに、下式に示す2−ヒドロキシエチルアクリレート2mol とジアルキレンジアミン1mol との反応物が挙げられる。
【化7】
また更に、第3アミノエステルポリオールと前述の公知のジカルボン酸、それらの酸エステルあるいは酸無水物との反応、またはさらにこれらとグリコール等との反応で得られるものが挙げられる。
本発明におけるポリウレタン樹脂の第4アンモニウム塩基は、前記反応式から明らかなように、2個のカルボン酸残基の間に特定化学構造で導入されることにより、濁りの発生がなく、分散安定性が改善される。特開平1−223625号公報に記載の第4アンモニウム塩基の導入方法では上記のような効果は得られない。
【0014】
第3アミノエステルポリオールまたはこれを用いて合成したポリウレタン樹脂の第3アミノ基を4級化するのに使用されるアルキル化剤としては、ヨウ化メチル等のハロゲン化アルキル、パラトルエンスルフォン酸メチルエステル、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル等のエステルなどを挙げることができる。
【0015】
鎖延長剤は分子量300未満の分子中に2個以上の活性水素(基)を有する化合物である。具体的には、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、あるいはビスフェノールAのエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイド付加物等のグリコール、あるいは、ヘキサメチレンジアミン、キシレンジアミン、イソホロンジアミン、モノエタノールアミン等のジアミン、またはアミノアルコール等が挙げられ、他に水、尿素も鎖延長剤として使用することができる。上記の化合物は単独でまたは混合して使用することができる。
【0016】
前記ポリウレタン樹脂の製造において、樹脂が線状の場合には、有機ジイソシアネートと長鎖ポリオールと場合により鎖延長剤とのNCO/活性水素(基)モル比は0.6/1〜1.15/1が好ましい。ポリウレタン樹脂が枝分れとなる場合には、ゲル化を避ける必要がある。(長鎖ポリオールと場合により鎖延長剤の)活性水素(基)の官能基数が大きくなるとゲル化を生じやすいので、活性水素(基)全体の平均官能基数は2.0〜3.0が好ましい。また、活性水素(基)全体の平均官能基数が3.0を越えるときは、その平均官能基数に応じて、NCO/活性水素(基)モル比を減少させることが好ましい。
ポリウレタン樹脂の分子量範囲は数平均分子量5000〜20万が好ましく、より好ましくは1万〜10万である。
ポリウレタン樹脂中の第4アンモニウム塩基含有濃度は0.001〜1.0mmol/gが望ましい。
【0017】
さらに前記ポリウレタン樹脂の製造には、必要に応じて、(ウレタン化)触媒、安定剤などを使用することができる。このような触媒としては、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン等の第3アミン、酢酸カリウム、ステアリン酸亜鉛等の金属塩、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫オキサイド等の有機金属化合物などが挙げられる。安定剤としては、置換ベンゾトリアゾール類等の紫外線に対する安定剤、フェノール誘導体等の熱酸化に対する安定剤などを挙げることができ、これらを配合することによってポリウレタン樹脂の諸性能を著しく安定化させることができる。
【0018】
また前記ポリウレタン樹脂を製造するにあたっては、従来公知のいずれの方法もとることができ、トルエン、キシレン、ベンゼン、ジオキサン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の単独溶剤系または混合溶剤系で反応させる溶液反応法や、無溶剤下で反応剤を十分に混合後、反応混合物を平板もしくは平らな面上に渡して加熱し、次いで冷却後粉砕する方法、あるいは反応混合物を押出機へ注入する方法等を用いることができる。
【0019】
本発明において、ポリウレタン樹脂の製造は、有機ジイソシアネートと第4アンモニウムエステルポリオールと場合により鎖延長剤とを反応させる方法にくらべて、有機ジイソシアネートと第3アミノエステルポリオールと場合により鎖延長剤とを反応させ、次いで4級化するほうが、反応がスムースであり原料製造、使用上も容易であるため、著しく好ましい。
【0020】
また、磁性粉の分散性や磁性層表面の平滑性を更に改善するため、前記ポリウレタン樹脂には、その他のバインダー成分として、必要に応じて、磁気記録媒体のバインダー成分として通常用いられている前記以外の熱可塑性ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、繊維素系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂、塩化ビニル−プロピオン酸ビニル共重合体、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂等を併用することもできる。
【0021】
さらに、磁性粉の機械的強度や耐摩耗性などを向上させるため、これらのバインダーにポリイソシアネート硬化剤を添加してもよい。このようなポリイソシアネート硬化剤としては、例えば、低分子ポリオールに有機ジイソシアネートを反応させて得られる末端イソシアネート基を持つ化合物が挙げられる。具体的には、日本ポリウレタン工業製のコロネートL、コロネート2030を例示することができる。
【0022】
本発明の磁気記録媒体において、磁性塗料の調製に用いられる磁性粉末としては、γ−Fe2 O3 、Co−γ−Fe2 O3 、Co−FeO・Fe2 O3 等の酸化鉄磁性粉、CrO2 、六方晶系バリウムフェライト微粒子、およびFe、Ni、Co、Fe−Ni−Co合金、Fe−Mn−Zn合金等のFe、Ni、Coを主成分とするメタル磁性粉等各種の強磁性の磁性粉末が挙げられる。
【0023】
本発明の磁気記録媒体には、必要に応じて、帯電防止剤としてカーボン微粒子を、研磨剤として非極性の金属酸化物の微粒子を、摩擦係数低下のための潤滑剤として高級脂肪酸、脂肪酸エステル、流動パラフィン、シロキサン類やフルオロカーボン類を、そして分散剤としてレシチン等を使用することができる。
【0024】
本発明に使用される非磁性支持体の素材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類、ポリイミド類、ポリアミドイミド類、ポリフェニレンスルフィド類等が挙げられ、用途によりテープ、フィルム、シートなどの形態で用いられる。
【0025】
磁気記録媒体の磁性層は、例えば、前記バインダー、磁性粉末、更に必要に応じ添加される各成分を適当な有機溶剤と混練して磁性塗料を調製し、これを非磁性支持体表面に塗布した後、乾燥することによって形成される。
【0026】
【実施例】
以下、本発明を実施例にてさらに詳しく述べるが、本発明は実施例のみに限定して解釈されるべきものではない。なお、合成例、実施例および比較例における「部」および「%」は、特に断りのないかぎり、「重量部」および「重量%」を示す。
【0027】
第3アミノエステルポリオールの合成
合成例1
撹拌機、温度計および冷却管を備えた反応器に、ピペラジン270.6部、2−ヒドロキシエチルアクリレート729.4部を加えて混合し、室温で2時間、次いで60℃で2時間反応させて、第3アミノエステルポリオールを得た。これをPO−A1とする。得られた化合物の1H−NMRスペクトルからイミノ基およびアクリロイル基の消失が確認された。得られたPO−A1の水酸基価は352mgKOH/g であった。
これらをまとめて表2に示す。
【0028】
合成例2
撹拌機、温度計および冷却管を備えた反応器に、ピペラジン86.0部、2−ヒドロキシエチルアクリレートのε−カプロラクトン付加物(ダイセル化学製FA−3、数平均分子量約460)914.0部を加えて混合し、室温で2時間、次いで60℃で2時間反応させ、さらに60℃、20mmHg下で減圧し、未反応のε−カプロラクトンモノマーを除去して、第3アミノエステルポリオールを得た。これをPO−A2とする。得られた化合物の1H−NMRスペクトルからイミノ基およびアクリロイル基の消失が確認された。得られたPO−A2の水酸基価は112mgKOH/g であった。
これらをまとめて表2に示す。
【0029】
合成例3
撹拌機、温度計および冷却管を備えた反応器に、第3アミノエステルポリオールPO−A1 189.3部、表1に示すポリエステルポリオール2 810.7部を加えて混合し、0.01部のテトライソプロピルチタネートを加え130〜150℃でエステル交換反応させて、第3アミノエステルポリオールを得た。これをPO−A3とする。得られたPO−A3の水酸基価は112mgKOH/g であった。
これらをまとめて表2に示す。
【0030】
合成例4
撹拌機、温度計および冷却管を備えた反応器に、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン305.5部、2−ヒドロキシエチルアクリレート694.5部を加えて混合し、室温で2時間、次いで60℃で2時間反応させて、第3アミノエステルポリオールを得た。これをPO−B1とする。得られた化合物の1H−NMRスペクトルからアミノ基、イミノ基およびアクリロイル基の消失が確認された。得られたPO−B1の水酸基価は336mgKOH/g であった。
これらをまとめて表2に示す。
【0031】
合成例5
撹拌機、温度計および冷却管を備えた反応器に、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン100.4部、2−ヒドロキシエチルアクリレートのε−カプロラクトン付加物(ダイセル化学製FA−3、数平均分子量約460)899.6部を加えて混合し、室温で2時間、次いで60℃で2時間反応させ、さらに60℃、20mmHg下で減圧し、未反応のε−カプロラクトンモノマーを除去して、第3アミノエステルポリオールを得た。これをPO−B2とする。得られた化合物の1H−NMRスペクトルからアミノ基、イミノ基およびアクリロイル基の消失が確認された。得られたPO−B2の水酸基価は112mgKOH/g であった。
これらをまとめて表2に示す。
【0032】
合成例6
撹拌機、温度計および冷却管を備えた反応器に、第3アミノエステルポリオールPO−B1 200.8部、表1に示すポリエステルポリオール3 799.2部を加えて混合し、0.01部のテトライソプロピルチタネートを加え130〜150℃でエステル交換反応させて、第3アミノエステルポリオールを得た。これをPO−B3とする。得られたPO−B3の水酸基価は112mgKOH/g であった。
これらをまとめて表2に示す。
【0033】
合成例7
撹拌機、温度計および冷却管を備えた反応器に、N−メチルジエタノールアミン238.3部、ε−カプロラクトン761.7部を加えて混合し、温室で2時間、次いで60℃で2時間反応させ、さらに60℃、20mmHg下で減圧し、未反応のε−カプロラクトンモノマーを除去して、第3アミノエステルポリオールを得た。これをPO−C1とする。得られたPO−C1の水酸基価は224mgKOH/g であった。
これらをまとめて表2に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
ポリウレタン樹脂の合成
合成例8
撹拌機、温度計および冷却管を備えた反応器にポリエステルポリオール1(表1参照)251.5部、第3アミノエステルポリオールPO−A1(表2参照)9.6部、メチルエチルケトン/トルエン/シクロヘキサノン=3/3/2の混合溶媒167部を仕込み、50℃で溶解混合した後、(ウレタン化)触媒としてジオクチル錫ジラウレート0.06部を加え、次いで、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート39.0部を加え、75℃にて反応させた。反応が進行するにつれて、粘度が上昇するので、適時、メチルエチルケトン/トルエン/シクロヘキサノン=3/3/2の混合溶媒にて希釈し、赤外スペクトルでイソシアネート基の吸収ピークが消滅したのを確認して反応を止め、均一透明な溶液を得た。このポリウレタン樹脂溶液は、固形分30%であり、GPC測定によるポリスチレン換算での数平均分子量は19000、重量平均分子量は36000であった。
このポリウレタン樹脂溶液にパラトルエンスルフォン酸メチルエステル11.2部を加え、70℃で20時間4級化反応を行い、第4アンモニウム塩基を含有するポリウレタン樹脂溶液を得た。このポリウレタン樹脂溶液をPU−A1−1とする。
この結果をまとめて表3に示す。
【0037】
合成例9〜29
合成例8と同様にして表3〜表5に示す、有機ジイソシアネート、ポリエステルポリオール、第3アミノエステルポリオール、鎖延長剤を(ウレタン化)反応させ、次いで4級化反応を行って、第4アンモニウム塩基を含有するポリウレタン樹脂溶液を合成した。
これらの結果をまとめて表3〜表5に示す。
【0038】
【表3】
【0039】
【表4】
【0040】
【表5】
【0041】
実施例1
この様にして得られた第4アンモニウム塩基含有ポリウレタン樹脂溶液を用いて下記の比率で配合し、サンドグラインドミル(五十嵐機械製)で10時間分散して磁性塗料を調製した。この塗料を直ちにまたは24時間静置後、厚さ15μmのポリエチレンテレフタレートのベースフィルム上に乾燥膜厚3μmになるように塗布し、直ちに磁場をかけ、80℃で3分間乾燥し、カレンダー処理後、更に25℃で72時間キュアして、所定の幅に裁断し磁気フィルムを作製した。
[配合]
メタル磁性粉(BET数56m2 /g) 100部
ポリウレタン樹脂(固形分換算) 20部
メチルエチルケトン 105部
トルエン 105部
シクロヘキサノン 70部
得られた磁気フィルムの光沢度と角型比を測定した。また、磁性塗料調製直後と24時間静置後の磁性塗料の粘度を測定した。
使用したポリウレタン樹脂の種類と磁気フィルムの性能を表6に示す。
[測定方法]
(1)光沢度:得られた磁気フィルムの磁性面について、光沢計(スガ試験機製)を用いて、入射角45度、反射角45度における反射率(割合としての%)を測定した。
(2)角型比:得られた磁気フィルムの電磁変換特性は、振動試料型磁力計VSM−3KA型(東英工業製)を用いて測定した(割合としての%で示す)。
(3)磁性塗料の粘度:E型粘度計(東機産業製)を用いて測定した。
【0042】
実施例2〜18、比較例1〜4
実施例1で用いた第4アンモニウム塩基を含有するポリウレタン樹脂溶液の代わりに、表3〜表5に示す第4アンモニウム塩基を含有するポリウレタン樹脂溶液を用いて磁気フィルムを作製し、これらの磁気フィルムについて実施例1と同様の方法で性能を測定した。
使用したポリウレタン樹脂の種類と磁気フィルムの性能を表6に示す。
【0043】
【表6】
【0044】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明によって、バインダーとして分子中に第4アンモニウム塩基とエステル結合を含む特定の部分化学構造を有するポリウレタン樹脂を用いることにより、ポリウレタン樹脂に濁りを発生することなく必要とする親水性と分散安定性を任意に付与でき、磁気記録媒体製造の際、分散性、分散安定性に優れた磁性塗料が得られ、これを用いて磁性層中の磁性粉末充填率と記録密度が向上した磁気記録媒体を提供し得ると共に、その生産効率を向上させることができる。
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