JP3542441B2 - 記録媒体、これを用いた記録方法及び印字物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクの吸収性と記録画像の色彩性、光沢性、堅牢性に優れた記録媒体、これを用いた記録方式及び印字物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式は、記録の高速化、カラー化、高密度化が容易なことから注目されており、インクジェット記録方式を用いた記録装置も普及している。こうしたインクジェット記録方式に適用される記録紙としては、例えば、特開昭59−35977号公報に記載の専用コート紙が挙げられる。
【0003】
しかし、専用コート紙は、インクの記録面から画像を観察するため、記録剤をできるだけ吸収層表面に残留せしめる構成をとっており、画像の耐水性等の耐久性、保存性に劣るという欠点がある。そこで、インクの吸収性、記録剤の発色性、記録画像の画質、解像度、色彩性、記録画像濃度あるいは光沢等の記録性能を改良するため、特開昭62−140878号公報に記載のような記録面と観察面の異なる記録媒体が提案されている。この記録媒体は、透明な基材上にインク保持層と多孔質な表層を積層し、表層側から記録し、基材側から観察するものである。
【0004】
インクジェット記録方式では、各種の水溶性染料を水、または水と有機溶剤との混合液に溶解させたものがインクとして使用されている。しかしながら、水溶性染料を用いた場合には、これらの水溶性染料は本来耐光性が劣るため、記録画像の耐光性が問題になる場合が多い。
【0005】
また、染料が水溶性であるために、記録画像の耐水性も問題となる場合が多い。即ち、記録画像に雨、汗、あるいは飲食用の水がかかったりした場合、記録画像がにじんだり、消失したりすることがある。
【0006】
一方、ボールペン等の染料を用いた文房具においても同様の問題があり、耐光性、耐水性の問題を解決するために種々の文房具用水性顔料インクの提案がなされている。水性顔料のインクの実用化のために、分散安定性、ペン先でのインクの固化防止、ボールペンのボールの摩耗防止を検討している例として特開昭58−80368号、特開昭61−200182号、特開昭61−247774号、特開昭61−272278号、特開昭62−568号、特開昭62−101671号、特開昭62−101672号、特開平1−249869号、特開平1−301760号等が挙げられる。最近では、水性顔料インクを用いたボールペンや、マーカーが商品として市場にでるようになってきた。また、水性顔料インクを用いたインクジェット用インクとしては、特開昭56−147859号、特開昭56−147860号等に、特定の水溶性溶剤と高分子分散剤を用いた顔料インクが提案されている。
【0007】
このように、インクジェット用顔料インクに関する提案は数多くなされている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
近年、記録の高速化、多色化等のインクジェット記録装置の性能の向上に伴い、インクジェット用記録媒体に対しても、より高度で広範な特性が要求されている。即ち、
(1)染料本来の色調からずれを生じないで、適正な色混合が行えること
(2)インクの吸収能力が高いこと(吸収容量が大きく、吸収時間が速い)
(3)ドットの光学濃度が高く、ドット周辺がぼけないこと
(4)ドット形状が真円に近く、その周辺が滑らかであること
(5)温度、湿度の変化による特性の変化が小さく、カールを起こさないこと
(6)ブロッキングを起こさないこと
(7)画像が長期保存に安定で変質しないこと(特に、高温高湿環境下)
(8)記録媒体自体が長期保存に安定で変質しないこと(特に、高温高湿環境下)
等の特性を同時に満足させることが要求される。
【0009】
前述のように、最近では記録媒体上での画像の耐水性、耐光性を向上させるために、顔料インクをインクジェットに用いたタイプのものが数多く報告されている。
【0010】
しかしながら、前記した記録面と観察面が表裏の関係にある媒体のような記録媒体に顔料インクを用いた場合、観察面から観察した際に画像濃度が低く発色性に劣るという問題が生じる。
【0011】
本発明の目的は、上記した諸特性をバランスよく同時に満足し、前述したような、耐水性、耐光性等の堅牢性を発現する顔料インクを用いて、記録面と観察面の異なる記録媒体に記録した場合に、画像濃度が高く、発色性に優れる記録媒体、これを用いた記録方法及び印字物の製造方法を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、以下の本発明によって達成される。
【0013】
即ち、第1の本発明は、透光性基材上にインク保持層と通液性を有する多孔質表層が積層されたインクジェット用記録媒体において、前記記録媒体がインク中の顔料粒子の平均粒子直径が100nm以上500nm以下である顔料インク用であって、前記表層の空孔分布曲線の100nm以下のピークの空孔容積が0.015cc/g以下で、かつ100nmより大きいピークの少なくとも1つの空孔容積が0.015cc/g以上であり、前記表層のpHが8以上であり、前記保持層がカチオン性樹脂および/または親水性ポリマーを主体として構成され、前記保持層のPHが4以上6以下であることを特徴とする記録媒体である。
【0014】
さらに、第2の発明は、上記及び改良された記録媒体に、インク中の顔料粒子の平均粒子直径が100nm以上500nm以下である顔料インクをインクジェット方式により付与することを特徴とする記録方法である。
【0015】
さらに、第3の発明は、上記及び改良された記録媒体の表層にインクジェット方式によりインク中の顔料粒子の平均粒子直径が100nm〜500nmの範囲である顔料インクを付与し、該表層を介してインク保持層に画像を形成することを特徴とする印字物の製造方法である。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明は、顔料を記録剤の主成分として含有するインクを用いて、記録面と観察面が同一である従来の記録媒体とは異なり、記録面と観察面とが表裏関係にある記録媒体に記録を行うことを主たる特徴としている。
【0017】
即ち、本発明は記録側である表層にインクをもって記録を行い、その観察側であるインク保持層側から記録画像を観察するものである。
【0018】
従って、表層は通液性を有し、その表面に付着したインクを速やかに吸収、透過せしめる機能を有するものである。
【0019】
この際、表層は、インク中の液媒体に対して親和性が高くなければならないと同時に、顔料である記録剤に対しては、逆に親和性が低く、かつ、空孔を顔料が通り抜けなくてはならない。この空孔が顔料の粒子径よりも小さい場合には、顔料が空孔を通り抜けることができずに記録面側に残留して、観察面から観察すると画像濃度が低く発色性に劣るという問題が生ずる。
【0020】
従って、表層はインク中の液媒体に対して、濡れ、浸透、拡散等の特性を持たない材料を選択して、空孔が顔料の粒子径よりも大きくなるよう構成されなければならない。また、それと同時に、表層中の空孔をインクが通り抜ける際に、インク中の顔料が凝集を起こさないような適度なpH(pH安定領域)に調整されている必要がある。
【0021】
他方、インク保持層は、表層に一時的に吸収されたインクを吸収、補足するため、インクに対する吸収力が表層よりも強くなければならない。
【0022】
従って、インク保持層は、インク中の液媒体に対すると同様に、記録剤に対しても高い親和性を有していなければならない。さらに好ましくは、インク保持層のpHがインク中の顔料が凝集するpH領域(pH安定領域未満)にあることであり、これによりさらに画像の耐水性や耐湿性が向上する。尚、本発明でいう表層、インク保持層のpHとは、紙面pH測定法(J.TAPPI紙パルプ試験方法、No.6−A法)で測定されたものである。
【0023】
本発明の記録媒体は、支持体としての基材と、該支持体上に形成された実質的にインクあるいは記録剤を吸収、補足するインク保持層と、インク保持層上に形成されたインクを直接受容しかつ実質的に記録剤を残留しない表層より構成され、さらに記録媒体の空孔分布曲線における直径が100nm以下に存在するピークの空孔容積が0.015cc/g以下であり、かつ100nmより大きい直径に存在するピークの少なくとも1つの空孔容積が0.015cc/g以上であるものである。
【0024】
ただし、表層またはインク保持層が基材としての機能を兼備するものである場合には、基材は必ずしも必要ではない。本発明に用いる基材としては、従来公知のものが使用でき、具体的には、ポリエステル樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメタクリレート樹脂、セロハン、セルロイド、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリイミド樹脂等のプラスチックフィルム、板あるいはガラス板等の透光性基材が挙げられる。
【0025】
なお、前述した通り、本発明は記録画像を記録側と反対の側から観察するものであるため、基材の透光性を有していれば、基材に対しいかなる加工を施してもよく、例えば基材に所望の模様や光沢、例えば適度のグロスや絹目模様、を施すことが可能である。
【0026】
さらに、基材として耐水性、耐摩耗性、耐ブロッキング性を付与することもできる。
【0027】
本発明の記録媒体を構成する表層は、通液性を有することが必要である。
【0028】
本発明でいう通液性とは、インクを速やかに通過させ、表層内にインク中の記録剤を実質的に残留せしめない性質をいう。通液性を向上させるための好ましい態様は、表層内部に亀裂、連通孔を有する多孔質構造を有するものである。
【0029】
さらに、本発明においては、使用するインク中の顔料粒子の平均径が一般的には100nm以上500nm以下であるため、記録媒体の空孔分布曲線の100nm以下のピークの空孔容積が0.015cc/g以下であり、かつ100nmより大きいピークの少なくとも1つの空孔容積が0.015cc/g以上であることが必須である。100nm以下のピークの空孔容積が0.015cc/gより大きい場合には、インク中の顔料粒子が表層中に残ってしまい、結果として十分な濃度と明度をもった画像の形成ができない。同様に、空孔分布曲線の100nm以上のピークとなる空孔径は、顔料粒子の平均粒子径以上であることが必要である。
【0030】
100nmより大きいピークの空孔容積が0.015cc/g以下であると、通液性が悪く、画像濃度、明度が低くなる。
【0031】
なお本発明でいう空孔分布曲線とは、水銀圧入法によって測定されるものである。このような測定に用いる機種としては、ポロシメーターポアサイザ9320(商品名)島津製作所製が挙げられる。
【0032】
また、前述したように、本発明では、記録面の反対側から反射記録画像を観察するために、表層が光拡散性を有することが好ましい。
【0033】
上記の特性を満足するための表層は、主として樹脂粒子と結着剤とから構成される。
【0034】
本発明で使用される樹脂粒子としては、記録剤に対して非吸着性の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の有機顔料、例えば、ポリエチレン、ポリメタクリレート、エラストマー、エチレン−酢酸ビニル重合体、スチレン−アクリル共重合体、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリビニルエーテル等の樹脂粉体およびエマルジョンのうち少なくとも1種が所望により使用される。
【0035】
なお、本発明で使用される樹脂粒子は、上記の樹脂粒子に限定されるものではなく、記録剤に対して非吸着性のものであれば、周知の材料でも構わない。
【0036】
また、使用する結着剤は、上記樹脂粒子同士および/またはインク保持層を結着させる機能を有するものであり、樹脂粒子と同様に、記録剤に対して非吸着性であることが必要である。
【0037】
好ましい粒子径としては、0.3〜20μm、より好ましくは0.5〜12μmであり、この範囲より小さいと、インク中の顔料粒子の透過性が十分でないために十分な画像濃度が得られにくく、粒子径がこの範囲よりも大きい場合、ドットの真円性が損なわれ易く、形成された画像にザラツキ感が生じ易い。
【0038】
結着剤として好ましい材料は、前記の機能を有するものであれば従来公知の材料が何れも使用でき、例えば、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、澱粉、ポリビニルブチラール、ゼラチン、カゼイン、アイオノマー、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、フェノール、メラミン、エポキシ、スチレン−ブタジエンゴム等の樹脂のうち1種以上が所望により使用できる。
【0039】
以上のような材料を用い、表層のpHを8以上、好ましくは8〜10の範囲に調整される。表層のpHが8未満のとき、表層内でインク中の顔料が凝集され易くなり、インク保持層側から観察したときの画像濃度が不十分となる。逆にpHが高いと、発色性が低下し易い。
【0040】
上記材料のみで所望のpHが得られない場合、各種のカチオン又はアニオンポリマーまたはオリゴマー及び各種のpH調整剤を併用することができる。
【0041】
かかるアニオン性化合物としては、分子内にアニオン性部分を含むものであれば特に限られるものではない。
例えば、アニオン性の界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル等のアニオン性界面活性剤を挙げることができる。さらにはアニオン性部分を含むアルキルベタイン、イミダゾリミウムベタイン、アラニン系の両性界面活性剤でもよい。
【0042】
また、アニオン性ポリマー、或いはオリゴマーとしては、その分子中にスルホン酸基、カルボン酸基、硫酸エステル基、燐酸エステル基、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基を有するものが挙げられる。
例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとを反応させて得られる末端カルボキシル基を有するポリエステル;各種多価カルボン酸で変性した酸性セルロース誘導体;多価カルボン酸のビニルエーテルエステルモノマー等の単独重合体又は他の一般的モノマーとの共重合体;(メタ)アクリル酸の単独重合体又は他の一般的なモノマーとの共重合体;無水マレイン酸やイタコン酸等のα,β−不飽和ビニルモノマー等の単独重合体又は他の一般的モノマーとの共重合体;ポリビニルアルコール又はビニルアルコール共重合体のスルホン酸化合物によるスルホン酸変性ポリマー;エチルセルロース、ベンジルセルロース、ヒドロキエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の水酸基を有する化合物、その他スルホン酸基、カルボン酸基、硫酸エステル基、燐酸エステル基、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基を有するものであれば何れも好適に使用される。
【0043】
またカチオン性化合物としては、分子内にカチオン性部分を含むものであれば特に限られるものではない。
例えば、カチオン界面活性剤として、モノアルキルアンモニウムクロライド、ジアルキルアンモニウムクロライド、テトラアルキルアンモニウムクロライド、トリメチルフェニルアンモニウムクロライド、エチレンオキサイド付加アンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩型のカチオン性界面活性剤、或いはアミン塩型のカチオン性界面活性剤等が挙げられる。
更には、前述したようなカチオン性部分を含むアルキルベタイン、イミダゾリミウムベタイン、アラニン系の両性界面活性剤でもよい。
【0044】
また、カチオン性ポリマー、或いはオリゴマーとしては、ポリアクリルアミドのカチオン変性物或いはアクリルアミドとカチオン性モノマーの共重合体、ポリアリルアミン、ポリアミンスルホン、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、ポリアミド−エピクロルヒドリン樹脂、ポリビニルピリジニウムハライド等が挙げられる。
【0045】
更に、ビニルピロリドン系モノマーの単独或いは、他の一般的モノマーとの共重合体、ビニルオキサゾリドン系モノマーの単独或いは、他の一般的モノマーとの共重合体、ビニルイミダゾール系モノマーの単独或いは、他の一般的モノマーとの共重合体等が挙げられる。
【0046】
上記の一般的モノマーとしては、メタクリレート、アクリレート、アクリロニトリル、ビニルエーテル、酢酸ビニル、エチレン、スチレン等が挙げられる。 また、カチオン変性したポリビニルアルコールセルロース等でもよい。勿論、これ等に限られたものではない。
【0047】
更に、pH調整剤として、前述したような、例えば、アンモニア、或いはジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の各種有機アミン、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カルウム等のアルカリ金属の水酸化物等の無機アルカリ塩、有機酸や無機酸が挙げられる。
【0048】
そしてこれらの複数の各種化合物を同時に用いることも可能である。
【0049】
さらに、表層としての前記機能を向上させるために、必要に応じて、各種の添加剤、例えば、界面活性剤、浸透剤、架橋剤等を表層に添加してもよい。
【0050】
前記樹脂粒子と結着剤との混合比(重量比)は、樹脂粒子/結着剤=1/2〜50/1の範囲が好ましく、より好適には、3/1〜20/1の範囲である。
【0051】
この混合比が、1/2以下の場合、表層の亀裂や連通孔が小さくなり、インクの吸収効果が減少してしまう。また、混合比が50/1以上の場合、樹脂粒子同士またはインク保持層と樹脂粒子との接着が十分でなくなり、表層を形成し得なくなる。
【0052】
表層の厚さは、インクの液滴量にも依存するが、好ましくは1〜200μmであり、より好適には3〜50μmである。
【0053】
次に、インクまたは記録剤を実質的に捕捉するインク保持層は、表層を通過してきたインクを吸収、捕捉し、実質的に恒久保持するものである。
【0054】
インク保持層は、表層よりもインクの吸収力が強いことが必要である。というのは、インク保持層の吸収力が、表層の吸収力よりも弱い場合、表層表面に付与されたインクが、表層内を通過し、そのインクの先端がインク保持層に到達した際に、表層中にインクが滞留することになり、表層とインク保持層の界面でインクが表層内の横方向に浸透、拡散していくことになる。その結果、記録像の解像力が低下し、高品質の画像を形成し得なくなる。また、前述のように、記録画像の記録面と反対側から観察するため、インク保持層は光透過性であることが必要である。
【0055】
上記の要求を満足するインク保持層は、記録剤を吸着するカチオン性の光透過性樹脂および/または、インクに対して溶解性、膨潤性を有する親水性の光透過性樹脂により構成されることが好ましい。
【0056】
なお、インク保持層を構成する材料は、インクを吸収、捕捉する機能を有し、透明性に優れたものであれば特に限定されるものではない。
【0057】
インク保持層の厚さは、インクを吸収、捕捉するのに十分であればよく、インクの液滴量によっても異なるが、好ましくは、1〜50μmであり、より好適には3〜20μmである。
【0058】
インク保持層のpHは6以下であることが好ましく、4〜6の範囲がより好ましい。pHがこの範囲内であれば、インク保持層に到達した顔料が、インク保持層の表面もしくは内部で適度に凝集を起こすため、画像の滲みが少なく、耐水性や耐湿性により優れた画像が形成できる。
【0059】
上記の材料のみでは所望のpHが得られない場合、上記の各種カチオン又はアニオン活性剤、各種のアニオンまたはカチオンポリマー又はオリゴマー、及び各種のpH調整剤を併用することができる。
【0060】
基板上にインク保持層と表層を形成する方法としては、上記した材料を適当な溶剤に溶解または分散させて塗工液を調整し、該塗工液を例えば、ロールコーティング法、ローッドバーコーティング法、スプレーコティング法、エアナイフコーティング法等の公知の方法により基板上に塗工し、その後速やかに乾燥させる方法が好ましく、前記の材料をホットメルトコーティング法あるいは前記の材料から一旦、単独シートを形成しておき、該シートを基板上にラミネートするような方法でもよい。
【0061】
ただし、基板上にインク保持層を設ける際には、基材とインク保持層との密着を強固にし、空間をなくす必要がある。
【0062】
基材とインク保持層との間に空間が存在すると、記録画像の表面が乱反射し、実質的画像の光学濃度を下げることになるので好ましくない。
【0063】
本発明の記録方法において、記録面と観察面が表裏関係にあるため、文字を印字する場合には、従来とは異なり、鏡文字を印字できるような装置を用いる必要がある。
【0064】
本発明で使用するインクジェット用顔料インクとしては、特に限られるものではないが、以下にその概要を説明する。
【0065】
本発明における顔料インクに含有される顔料の量は重量比で1〜20重量%、好ましくは2〜12重量%の範囲で用いることが好ましい。本発明で使用する顔料はどのようなものでも使用可能であるが、例えば、黒インクに使用されるカーボンブラックとしては、ファーネス法、チャネル法で製造されたカーボンブラックで、一次粒子径が15から40nm、BET法による比表面積が50から300平方m/g、DBP吸油量が40から150ml/100g、揮発分が0.5から10%、pH値が2から9を有し、例えば、No.2300,No.900,MCF88,No.33,No.40,No.45,No.52,MA7,MA8,No.2200B(以上三菱化成製)、RAVEN 1255(コロンビア製)、REGAL 400R,REGAL 330, REGAL 660R, MOGUL L (キャボット製)、Color Black FW1, Color Black FW18, Color Black S170, Color Black S150, Printex 35, Printex U(デグッサ)等の市販品を使用することができる。また、イエローインクに使用される顔料としては、C.I.Pigment Yellow1, C.I.Pigment Yellow 2, C.I.Pigment Yellow 3, C.I.Pigment Yellow 13, C.I.Pigment Yellow 16, Pigment Yellow 83,マゼンタインクとして使用される顔料としては、C.I.Pigment Red 5, C.I.Pigment Red 7, C.I.Pigment Red 12, C.I.Pigment Red 48(Ca), C.I.Pigment Red 48(Mn), C.I.Pigment Red 57(Ca), C.I.Pigment Red 112, C.I.Pigment Red 122, シアンインクとして使用される顔料としては、C.I.Pigment Blue1, C.I.Pigment Blue 2, C.I.Pigment Blue 3, C.I.Pigment Blue 15:3, C.I.Pigment Blue 16, C.I.Pigment Blue 22, C.I.Vat Blue 4, C.I.Vat Blue 6 等が挙げられるが、これらに限られるものではない。また、本発明のために新たに製造されたものでも使用可能である。
【0066】
本発明で使用するインク中の顔料の分散剤は、水溶性樹脂であれば、特に制限なく使用可能だが、重量平均分子量は1000から30000の範囲が好ましい。さらに、好ましくは3000から15000の範囲である。具体的には、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマール酸、フマール酸誘導体等から選ばれる少なくとも2つ以上の単量体、このうち少なくとも1つは親水性単量体、からなるブロック共重合体、あるいは、ランダム、グラフト共重合体、また、これらの塩等が挙げられる。これらの樹脂は、塩基を溶解させた水溶液に可溶でアルカリ可溶型樹脂である。さらに、親水性単量体からなるホモポリマー、またはそれらの塩でもよい。また、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等の水溶性樹脂も使用することが可能である。
【0067】
さらに、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N、N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド等を塩化メチル、ジメチル硫酸、ベンジルクロライド、エピクロルヒドリン等で4級化したモノマー単位を含むアクリル共重合体等の、カチオン性分散剤を用いたものでもよい。
【0068】
さらに、本発明で使用するインクは、好ましくはインク全体が中性またはアルカリ性に調整されていることが、前記水溶性樹脂の溶解性を向上させ、一層の長期保存性に優れたインクとすることができるので望ましい。但し、この場合、インクジェット記録装置に使われている種々の部材の腐食の原因となる場合があるので好ましくは7〜10のpH範囲とされるのが望ましい。
【0069】
以上のごとき、顔料および水溶性樹脂は、水溶性媒体中に分散または溶解される。
【0070】
本発明で使用するインクにおいて好適な水性媒体は、水および水溶性有機溶剤の混合溶媒であり、水としては種々のイオンを含有する一般の水ではなく、脱イオン水等のイオン交換水を使用するのが好ましい。
【0071】
また、その他、併用し得る任意の溶剤成分としては水と混合して使用される水溶性有機溶剤が挙げられ、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトンまたはケトンアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;グリセリン;エチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル、ジエチレングリコール(またはエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。
【0072】
本発明で使用するインク中の上記水溶性有機溶剤の含有量は、一般にはインク全重量の3〜50重量%の範囲であり、好ましくは、3〜40重量%の範囲であり、使用する水はインク全重量の10〜90重量%、好ましくは30〜80重量%の範囲である。
【0073】
本発明で使用するインクの作成方法としては、はじめに、分散樹脂、水を少なくとも含有する水溶液に顔料を添加し、攪拌した後、後述の分散手段を用いて分散を行い、必要に応じて遠心分離処理を行い、所望の分散液を得る。次に、この分散液に本発明において使用される化合物、または上記で挙げたような成分を加え、攪拌しインクとする。
【0074】
さらに、顔料を含む水溶液を分散処理する前にプレミキシングを30分間以上行うことが効果的である。このプレミキシング操作は、顔料表面の濡れ性を改善し、顔料表面への吸着を促進するものである。
【0075】
一方、本発明に使用する分散機は、一般に使用される分散機なら、如何なるものでもよいが、例えば、ボールミル、ロールミル、サンドミル等が挙げられる。その中でも、高速型のサンドミルが好ましく、例えば、スーパーミル、サンドグラインダー、ビーズミル、アジテータミル、グレンミル、ダイノーミル、パールミル、コボルミル(何れも商品名)等が挙げられる。
【0076】
本発明において、所望の粒度分布を有する顔料を得る方法としては、分散機の粉砕メディアのサイズを小さくする、粉砕メディアの充填率を大きくする、また処理時間を長くする、吐出速度を遅くする、粉砕後フィルターや遠心分離等で分級すること等の手法が用いられる。またはそれらの手法の組み合わせが挙げられる。
【0077】
本発明の顔料インク中の顔料粒子の平均粒子直径は、1次粒子の凝集体として、100〜500nmの範囲内である。さらに、より好ましくは、100〜200nmの範囲内である。顔料粒子の平均粒子径は、遠心沈降法、X線透過法、レーザー回折法、篩い分け法等、従来公知の方法によって測定できる。
【0078】
本発明の記録媒体を用いて記録を行うのに好適な一例のインクジェット記録装置を以下に説明する。その装置の主要部であるヘッド構成例を図1、図2、および図3に示す。図1において、ヘッド13はインクを通す溝14を有するガラス、セラミックスまたはプラスチック板等を、感熱記録に用いられる発熱ヘッド15(図ではヘッドが示されているが、これに限定されるものではない)とを接着して得られる。発熱ヘッド15は酸化シリコン等で形成される保護膜16、アルミニウム電極17−1,17−2、ニクロム等で形成される発熱抵抗体層18、蓄熱層19、アルミナ等の放熱性のよい基板20よりなっている。インク21は吐出オリフィス(微細孔)22まで来ており、圧力Pによりメニスカス23を形成している。
【0079】
いま、電極17−1,17−2に電気信号が加わると、発熱ヘッド15のnで示される領域が急激に発熱し、ここに接しているインク21に気泡が発生し、その圧力でメニスカス23が突出し、インク21が吐出し、オリフィス22より記録小滴24となり、被記録媒体25に向かって飛翔する。図3には図2に示すヘッドを多数並べたマルチヘッドの外観図を示す。マルチヘッドはマルチ溝26を有するガラス板27と、図2に説明したものと同様な発熱ヘッド28を密着して作製されている。
【0080】
なお、図2は、インク流路に沿ったヘッド13の断面図であり、図2は図1の2−2’線での切断図である。
【0081】
図4に、かかるヘッドを、組み込んだインクジェット記録装置の1例を示す。図4において、61はワイピング部材としてのブレードであり、その一端はブレード保持部材によって保持されて固定端となり、カンチレバーの形態をなす。ブレード61は記録ヘッドにより記録領域に隣接した位置に配設され、また本例の場合、記録ヘッドの移動経路中に突出した形態で保持される。62はキャップであり、ブレード61に隣接するホームポジションに配設され、記録ヘッドの移動方向と垂直な方向に移動して吐出口面と当接し、キャッピングを行う構成を備える。さらに63はブレード61に隣接して設けられるインク吸収体であり、ブレード61と同様、記録ヘッドの移動経路中に突出した形態で保持される。上記ブレード61、キャップ62、吸収体63によって吐出回復部64が構成され、ブレード61および吸収体63によってインク吐出口面に水分、塵埃等の除去が行われる。
【0082】
65は吐出エネルギー発生手段を有し、吐出口を配した吐出口面に対向する記録媒体にインクを吐出して記録を行う記録ヘッド、66は記録ヘッド65を搭載して記録ヘッド65の移動を行うためのキャリッジである。キャリッジ66はガイド軸67と摺動可能に係合し、キャリッジ66の一部はモータ68によって駆動されるベルト69と接続(不図示)している。これによりキャリッジ66はガイド軸67に沿った移動が可能となり、記録ヘッド65による記録領域およびその隣接した領域の移動が可能となる。
【0083】
51は記録媒体を挿入するための給紙部、52は不図示のモータにより駆動される紙送りローラである。これらの構成によって記録ヘッドの吐出口面と対向する位置へ記録媒体が給紙され、記録が進行するにつれて排紙ローラ53を配して排紙される。
【0084】
上記構成において記録ヘッド65が記録終了等でホームポジションに戻る際、ヘッド回復部64のキャップ62は記録ヘッド65の移動経路から退避しているが、ブレード61は移動経路中に突出している。この結果、記録ヘッド65の吐出口面がワイピングされる。なお、キャップ62が記録ヘッド65の突出面に当接してキャッピングを行う場合、キャップ62は記録ヘッドの移動経路中に突出するように移動する。
【0085】
記録ヘッド65がホームポジションから記録開始位置へ移動する場合、キャップ62およびブレード61は上述したワイピング時の位置と同一の位置にある。この結果、この移動においても記録ヘッド65の吐出口面はワイピングされる。上述の記録ヘッドのホームポジションへの移動は、記録終了時や吐出回復時ばかりでなく、記録ヘッドが記録のための記録領域を移動する間に所定の間隔で記録領域に隣接したホームポジションへ移動し、この移動に伴って上記ワイピングが行われる。
【0086】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。文中の部または%とあるのは、特に断りのない限りは、重量基準である。
【0087】
実施例1
使用インク、マゼンタ色
顔料分散液の作成:
スチレン−アクリル酸−アクリル酸エチル共重合体 1.5部
(酸価140、重量平均分子量5000)
エタノールアミン 1部
イオン交換水 81.5部
ジエチレングリコール 5部
上記成分を混合し、ウオーターバスで70℃に加温し、樹脂分を完全に溶解させる。この溶液にC.I.Pigment Red 112 の10部、イソプロピルアルコール1部を加え、30分間プレミキシングを行った後、下記の条件で分散処理を行った。
分散機 サンドグラインダー(五十嵐機械製)
粉砕メデイア ジルコニウムビーズ 1mm径
粉砕メデイアの充填率 50%(体積)
粉砕時間 3時間
さらに遠心分離処理(12000RPM、20分間)を行い、粗大粒子を除去して分散液とした。
【0088】
インクの作成:
上記分散液 30部
グリセリン 10部
エチレングリコール 5部
N−メチルピロリドン 5部
エチルアルコール 2部
アセチレノール EH(川研ファインケミカル工業製) 0.2部
イオン交換水 47.8部
上記成分を混合し、インクを調整した。
【0089】
上記の平均粒子径をコールターカウンターを用いて測定して求めたところ、120nmであった。
【0090】
この顔料のインクのpH安定領域は7.2以上であった。尚、顔料インクのpH安定領域については、良好な分散状態にある顔料インクのpHを、モノエタノールアミン、及び塩酸を加えることによりそのpHを変化させて、沈澱凝集が発生しない範囲のpHを測定した。
【0091】
(シアン色)
マゼンタインクにおいて、顔料をC.I.Pigment Blue 22 に代えたほかは全く同様にして顔料インクを調整した。同様に測定したpH安定領域は7.4以上であった。
【0092】
上記の平均粒子径をコールターカウンターを用いて測定して求めたところ、130nmであった。
分子量12000)アミノメチルプロパノール:
(イエロー色)
マゼンタインクにおいて、顔料をC.I.Pigment Yellow 13 に代えたほかは全く同様にして顔料インクを調整した。同様に測定したpH安定領域は8.0以上であった。
【0093】
上記の平均粒子径をコールターカウンターを用いて測定して求めたところ、125nmであった。
【0094】
(ブラック色)
実施例1で用いたインクにおいて、顔料をカーボンブラック(MCF88、三菱化成製)に変えたほかは全く同様にして顔料インクを調整した。同様に測定したpH安定領域は7.8以上であった。
【0095】
上記の平均粒子径をコールターカウンターを用いて測定して求めたところ、100nmであった。
【0096】
記録媒体1の調製:
透光性基材としてポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ100μm、東レ製)を使用し、この基材上に下記組成物Aを乾燥膜厚8μmになるようにバーコーター法により塗工し、120℃、5分乾燥炉内で乾燥した。
【0097】
組成物A
ポリビニルピロリドン(PVPK−90,GAF製) 78部
<10%DMF溶液>
ノボラック型フェノ−ル樹脂(レジトップPSK−2320、群栄化学製)
<10%DMF溶液> 12部
ポリアリルアミン塩酸塩(PAA−Hcl、日東紡製) 10部
さらに、その上に下記組成物Bを乾燥膜厚15μmとなるようにバーコーター法により塗工し80℃、10分乾燥炉内で乾燥した。得られた層のpHは5.4であった。
【0098】
組成物B
シリコーン樹脂微粉末(トスパール120、
東芝シリコーン(株)製、粒径2μm) 100重量部
エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂
(ケミパールV−100、三井石油化学工業(株)製、固型分40%、
粒径5μm) 10重量部
ポリカルボン酸ナトリウム系界面活性剤
(デモールEP、花王(株)製) 1重量部
このようにして得られた記録媒体は、白色、不透明であった。得られた表層のpHは8.3であった。
【0099】
実施例2
透光性基材として実施例1で使用したポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、この基材上に下記組成物Cを乾燥膜厚5μmになるようにバーコーター法により塗工し、110℃、10分乾燥炉内で乾燥した。
【0100】
組成物C
ポリビニルピロリドン(PVPK−90、GAF製) 74部
<10%DMF溶液>
スチレン−アクリル酸共重合体 16部
(オキシラックSH−2100、日本触媒化学製)
<10%DMF溶液>
ポリアリルアミン塩酸塩(PAA−Hcl、日東紡製) 10部
さらに、その上に下記組成物Dを乾燥膜厚20μmとなるようにバーコーター法により塗工し、80℃、10分乾燥炉内で乾燥した。得られた層のpHは4.6であった。
【0101】
このようにして得られた記録媒体は白色の不透明なものであった。得られた表層のpHは8.2であった。
【0102】
実施例3
透光性基材として実施例1で使用したポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、この基材上に下記組成物Eに酢酸を加えてpHが5.8になるように調整し、乾燥膜厚10μmとなるようにバーコーター法により塗工し、100℃、12分乾燥炉内で乾燥した。
【0103】
組成物E
*櫛形ポリマー(LHM−108、総研化学製) 60部
<25%メチルセロソルブ溶液>
メチルビニルエーテル/無水マレイン酸モノエチルエステル 40部
(GanterzEZ−425,GAF製)
<10%水/エタノール溶液>
*主鎖(2−ヒドロキシエチルメタアクリレート64部とジメチルアクリルアミド16部とのコポリマー)80部に対し、20部のMMAマクロマーをグラフト重合したもの。
【0104】
さらに、その上に下記組成物Fを乾燥膜厚10μmとなるようにバーコーター法により塗工し、70℃、10分乾燥炉内で乾燥した。
【0105】
このようにして得られた記録媒体は白色の不透明なものであった。得られた表層のpHは8.7であった。
【0106】
実施例4
実施例3で用いた組成物Fの架橋ポリメチルメタクリレートを、ベンゾグアナミン樹脂(エポスタ−S、日本触媒化学工業(株)、粒径0.3μm)に代えた以外は実施例3と全く同様に形成し、白色不透明な記録媒体を得た。得られた表層のpHは8.6であった。
【0107】
実施例5
テフロンフィルム上に実施例3で用いた組成物Eおよび組成物Fを実施例3と同様の方法で形成させた後、テフロンフィルムを剥離して白色不透明な記録媒体を得た。
【0108】
比較例1
透光性基材として実施例1で使用したポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、この基材上に下記組成物Gを乾燥膜厚6μmになるようにバーコーター法により塗工し、120℃、5分乾燥炉内で乾燥した。
【0109】
組成物G
カチオン変性ポリビニルアルコール
(C−ポリマー、(株)クラレ製)<10%水溶液>100部
ブロックドポリイソシアネート(エラストロンBN−5、
第一工業製薬(株)製、固形分30%) 3部
さらに、その上に下記組成物Hを乾燥膜厚25μmとなるようにバーコーター法により塗工し、80℃、10分乾燥炉内で乾燥した。
【0110】
組成物H
尿素−ホルマリン樹脂(有機フィラー、日本化成(株)製、
一次粒子径0.01〜0.02μm) 100重量部
アセタール化ポリビニルアルコール(エスレックKX−1、
積水化学工業(株)製、不揮発分8%) 500重量部
パーフルオロアルキルベタイン(サーフロンS−131、
セイミケミカル(株)製、固形分30%) 0.3重量部
このようにして得られた記録媒体は、白色の不透明であった。
【0111】
比較例2
比較例1で用いた組成物Hの尿素−ホルマリン樹脂を合成シリカ(サイリシア、富士シリシア化学(株)製、一次粒子径0.02〜0.03μm)に代えた以外は比較例1と全く同様に形成し、白色不透明な記録媒体を得た。
【0112】
それぞれの記録媒体の空孔分布を水銀圧入ポロシメータを用いて測定し、その結果を表1に示した。
【0113】
次に、上記記録媒体に、上記組成のインクを用いて、熱エネルギーによりインクを発泡させてインクを吐出させるインクジェット記録装置により下記条件で記録を行った。その後、下記の項目について評価を行った。
【0114】
記録条件:
吐出周波数 : 4KHz
吐出液滴の容量 : 45pl
記録密度 : 360DPI
最大単色インク付与量: 8nl/mm2
評価項目:
(1)画像濃度
上記のプリンターを用いてベタ印字(100%Duty)した印画物のマゼンタ(M)の画像濃度を、透光性基材側からマクベス濃度計RD−918を用いて評価した。
【0115】
評価結果をまとめて、表1に示した。
【0116】
【表1】
【0117】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明により通液性を有する表層とインク保持層を有する記録面と観察面が表裏関係にある記録媒体において、特定範囲の粒子径を有し耐水性、耐光性を発現する顔料インクを用いかつそれに見合った空孔分布曲線のピークを有する記録媒体を用いて、画像濃度が高く、発色性に優れるインクジェット記録方法の実施が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の記録媒体を用いて記録を行うのに好適なインクジェット記録装置のヘッド構成例の1例である。
【図2】インク流路に沿ったヘッド断面図の1例である。
【図3】マルチヘッド外観の斜視図の1例である。
【図4】ヘッドを組み込んだインクジェット記録装置の1例を示す。
【符号の説明】
13 ヘッド
14 インクを通す溝
15 発熱ヘッド
16 保護膜
17−1,17−2 アルミニウム電極
18 発熱抵抗体層
19 蓄熱層
20 基板
21 インク
22 吐出オリフィス
23 メニスカス
24 記録小滴
25 被記録媒体
26 マルチ溝
27 ガラス板
28 発熱ヘッド
Claims (12)
- 透光性基材上にインク保持層と通液性を有する多孔質表層が積層されたインクジェット用記録媒体において、前記記録媒体がインク中の顔料粒子の平均粒子直径が100nm以上500nm以下である顔料インク用であって、前記表層の空孔分布曲線の100nm以下のピークの空孔容積が0.015cc/g以下で、かつ100nmより大きいピークの少なくとも1つの空孔容積が0.015cc/g以上であり、前記表層のpHが8以上であり、前記保持層がカチオン性樹脂および/または親水性ポリマーを主体として構成され、前記保持層のPHが4以上6以下であることを特徴とする記録媒体。
- 前記記録媒体の表層が、樹脂粒子と結着材を主体として構成される請求項1に記載の記録媒体。
- 前記記録媒体のインク保持層が透明である請求項1に記載の記録媒体。
- 前記記録媒体の表層が、光拡散性であり、インク保持層が表層よりも光透過性である請求項1に記載の記録媒体。
- 前記記録媒体のインク保持層が表層よりインク吸収力が強いものである請求項1に記載の記録媒体。
- 前記記録媒体の表層が連通孔を有する請求項1に記載の記録媒体。
- 前記記録媒体の表層が亀裂を内在する請求項1に記載の記録媒体。
- 請求項1から7のいずれかの記録媒体に、インク中の顔料粒子の平均粒子直径が100nm以上500nm以下である顔料インクをインクジェット方式により付与することを特徴とする記録方法。
- 記録媒体の表層の空孔分布曲線の100nmより大きいピークを示す空孔径が、インク中の顔料の凝集粒子径より大きい請求項13の記録方法。
- 記録媒体の表層のpHが顔料インクのpH安定領域と同等もしくはそれ以上である請求項13の記録方法。
- 記録媒体のインク保持層のpHが顔料インクのpH安定領域未満である請求項13の記録方法。
- 請求項1〜7のいずれかの記録媒体の表層にインクジェット方式によりインク中の顔料粒子の平均粒子直径が100nm〜500nmの範囲である顔料インクを付与し、該表層を介してインク保持層に画像を形成することを特徴とする印字物の製造方法。
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