JP3385659B2 - 1−ヒドロキシ−2,2,2−トリフルオロエチルアルキルケトンの製造方法 - Google Patents
1−ヒドロキシ−2,2,2−トリフルオロエチルアルキルケトンの製造方法Info
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Description
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば電子デバイスの
素材である反強誘電性液晶化合物の中間原料として、あ
るいは医薬、農薬に用いられる化合物に種々の官能基を
導入出来るビルディングブロック剤等として有用である
新規な含フッ素化合物の製法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】ビルディングブロック剤として有用な含
フッ素カルボニル化合物として、2−アルコキシ−3,
3,3−トリフルオロエチルメチルケトンが知られてい
る。しかしながら、この化合物は沸点が低く、かつ揮発
性が高いため取り扱いづらく、取り扱いが容易で、汎用
性のある含フッ素カルボニル化合物が求められている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、反強誘
電性を有する液晶化合物の原料として期待され、またビ
ルディングブロック剤等として有用で、かつ取り扱いが
容易な新規な含フッ素カルボニル化合物につき鋭意研究
した結果、先に、後述の式(2)で示される1−ヒドロ
キシ−2,2,2−トリフルオロエチルアルキルケトン
を発明し、該化合物を、2−ヒドロキシ−3,3,3−
トリフルオロプロピオニトリルおよび式(3)で示され
るグリニャール試薬を反応させ、得られた反応生成物を
鉱酸で加水分解することにより製造する方法を見出し、
既に出願済である。 RMgBr (3) (ただし、式中Rは炭素数3〜10の直鎖状アルキル基
であり、式(2)のRに対応する。) 【0004】本発明者らは更に研究した結果、反応系の
粘度上昇等の恐れがなく、反応の制御がより容易であ
り、副反応が抑制出来、かつ後処理が簡単で、目的化合
物を効率的に高収率で製造する方法を見い出し、本発明
を完成した。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明は、2−ヒドロキ
シ−3,3,3−トリフルオロプロピオニトリルと、式
(1)で示されるアルキルリチウムを反応させ、次いで
反応生成物を鉱酸で加水分解することを特徴とする式
(2)で示される1−ヒドロキシ−2,2,2−トリフ
ルオロエチルアルキルケトンの製造方法である。 RLi (1) (ただし、式中Rは炭素数3〜10の直鎖状アルキル基
であり、式(2)のRに対応する。) 【0006】 【化2】 【0007】本発明の目的化合物は式(2)に示される
通りであり、式中Rで示されるアルキル基は、炭素数が
3〜10のアルキル基、すなわちn−プロピル基、n−
ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプ
チル基、n−オクチル基、n−ノニル基およびn−デシ
ル基であり、それらの中でも製造の容易性から有用であ
るアルキル基は炭素数4〜8の直鎖状アルキル基であ
る。 【0008】本発明によって好適に製造される目的化合
物を具体的に例示すると、1−ヒドロキシ−2,2,2
−トリフルオロエチル−n−ブチルケトン、1−ヒドロ
キシ−2,2,2−トリフルオロエチル−n−ペンチル
ケトン、1−ヒドロキシ−2,2,2−トリフルオロエ
チル−n−ヘキシルケトン、1−ヒドロキシ−2,2,
2−トリフルオロエチル−n−ヘプチルケトンおよび1
−ヒドロキシ−2,2,2−トリフルオロエチル−n−
オクチルケトンである。 【0009】本発明の目的化合物は、2−ヒドロキシ−
3,3,3−トリフルオロプロピオニトリル(以下出発
化合物ともいう)を出発原料として、これを前記式
(1)で示されるアルキルリチウム(以下、アルキルリ
チウムと称す)と反応させ(第一段反応)、次いで反応
生成物を鉱酸で加水分解する(第二段反応)ことにより
得られる。 【0010】以下、出発化合物からの製造方法について
詳細に説明する。 〔第一段反応〕第一段反応を反応式で示すと、式(4)
の通りであり、この反応によりまず、反応生成物が生成
する。 【0011】 【化3】【0012】アルキルリチウムは式(1)の通りであ
り、好ましくは炭素数4〜8の直鎖状アルキルリチウム
である。具体的なアルキルリチウムは、n−プロピルリ
チウム、n−ブチルリチウム、n−ペンチルリチウム、
n−ヘキシルリチウム、n−ヘプチルリチウム、n−オ
クチルリチウム、n−ノニルリチウムおよびn−デシル
リチウムである。 【0013】アルキルリチウムは有機溶媒に溶解して用
いるのが好ましく、好ましい有機溶媒としてはn−ヘキ
サン等が挙げられる。市販されている代表的なアルキル
リチウムの有機溶媒溶液としては、濃度15%のn−ブ
チルリチウムのn−ヘキサン溶液、あるいは濃度37%
のn−ヘキシルリチウムのn−ヘキサン溶液等が挙げら
れ、それらのどれでも使用することができる。 【0014】式(4)の反応は、2−ヒドロキシ−3,
3,3−トリフルオロプロピオニトリルの有機溶媒溶液
に、アルキルリチウムの有機溶媒溶液を滴下して行う方
法が、反応液の粘度上昇が抑制され、充分安定な反応操
作が行え、また収率も高い等の点から好ましい。すなわ
ち、上記操作で反応を行うと、生成した大部分の反応生
成物が反応系で固体となり、反応系に浮遊し、反応系の
粘度の上昇が起こらず、反応操作が容易であり、この操
作と逆の方法を行った場合に、反応熱の除去が困難なた
めに生じる式(5)で示されるような副反応が抑制さ
れ、反応生成物の収率を高めることが出来る。 【0015】 【化4】 【0016】2−ヒドロキシ−3,3,3−トリフルオ
ロプロピオニトリルのための有機溶媒としては、ジエチ
ルエーテル、THFおよびジグリム等が挙げられ、ジエ
チルエーテルおよびTHFが特に好ましい。 【0017】有機溶媒の好適な混合割合は、2−ヒドロ
キシ−3,3,3−トリフルオロプロピオニトリル1モ
ルに対して、0.5〜3リットルであり、特に1〜2リ
ットルが好適である。0.5リットル未満では、反応温
度の制御が困難となる場合があり、副反応生成物が増加
する恐れがあり、3リットルを超えると経済的とは言え
なくなる。 【0018】式(4)の反応において、アルキルリチウ
ムの供給割合は、2−ヒドロキシ−3,3,3−トリフ
ルオロプロピオニトリル1モルに対して、アルキルリチ
ウム2〜3モルが好ましい。2モル未満では反応生成物
の収率が低下する恐れがあり、3モルを超えると経済的
に有利とはいえなくなる。 【0019】アルキルリチウムの反応系への供給速度
は、アルキルリチウム1モルを45分〜95分程度かけ
て滴下するのが好ましい。供給を短時間で行うと、反応
熱によって反応温度が上昇し、副反応生成物が増加し
て、反応生成物の収率の低下を招く恐れがあり、滴下速
度が遅いと工業的に有利とは言えなくなる。 【0020】式(4)の反応温度は−78℃〜−20℃
が好ましい。−78℃未満では工業操作上有利とは言え
ず、−20℃を超えると副反応生成物が増加して、反応
生成物の収率が低下する傾向がある。 【0021】所要量の出発化合物およびアルキルリチウ
ムの総てを供給し終えた後、30分程度攪拌して、未反
応の2−ヒドロキシ−3,3,3−トリフルオロプロピ
オニトリルを充分反応させ、反応生成物を生成させるこ
とが望ましい。 【0022】〔第二段反応〕第二段反応の反応式の一例
を、鉱酸として塩酸を用いた場合について示すと、式
(6)の通りであり、第一段反応で得られた反応生成物
を鉱酸で加水分解することにより本発明の目的化合物が
生成する。 【0023】 【化5】 【0024】鉱酸としては、塩酸、硫酸、硝酸等が挙げ
られ、特に好ましい鉱酸は塩酸である。鉱酸は、原料と
して使用した2−ヒドロキシ−3,3,3−トリフルオ
ロプロピオニトリル1モルに対して、3〜4グラム当量
が好ましい。3グラム当量未満では反応生成物の加水分
解が不完全となりやすく、本発明の目的化合物の収率の
低下を招く恐れがあり、4グラム当量を超えると経済的
とはいえない。 【0025】鉱酸で加水分解するにあたり、鉱酸の濃度
は1〜5規定が好ましい。1規定未満では水層の量が多
すぎ、目的化合物が水層にも溶解し、目的化合物の抽出
操作が煩雑となり経済的とはいえず、また好ましくない
副反応が進行する恐れがある。5規定を超えると副反応
生成物が多くなり、目的化合物の収率の低下につながる
恐れがある。 【0026】式(5)の反応は、第一段反応で得られた
反応生成物を含有する反応液に、鉱酸の水溶液を滴下す
るのが、副反応を抑制出来る点で好ましい。。 【0027】鉱酸水溶液の反応系への供給速度は、2−
ヒドロキシ−3,3,3−トリフルオロプロピオニトリ
ル1モルに対して、45分〜95分程度かけて滴下する
のが好ましい。供給を短時間で行うと、反応熱によって
反応温度が上昇し、副反応生成物が増加する恐れがあ
り、目的化合物の収率の低下につながり、滴下速度が遅
いと工業的に有利とは言えなくなる。 【0028】加水分解反応は出来るだけ穏やかな温度、
通常10℃〜30℃が好ましく、常温が特に好適であ
る。あまり高い温度では、好ましくない副反応が進行す
る恐れがあり、あまり低温では加水分解反応速度が遅く
なる恐れがある。鉱酸の滴下後、更に常温付近で20分
程度攪拌放置することにより、反応を完結させるとよ
い。 【0029】加水分解反応終了後、エーテル抽出等の操
作により反応液から目的化合物を分離し、得られた抽出
液を水で洗浄した後、抽出液に無水硫酸マグネシウムを
加えて、水分を除去した後、溶媒を減圧で留去し、シロ
ップ状の粗生成物を得る。得られた粗生成物をシリカゲ
ルカラムクロマトグラフィーにより精製し、無色透明な
液状の目的化合物を取得することができる。 【0030】 【実施例】以下、参考例および実施例に基づいて本発明
を具体的に説明する。 【0031】(参考例) 〔原料化合物すなわち2−ヒド
ロキシ−3,3,3−トリフルオロプロピオニトリルの
製造〕 還流冷却器、温度計、攪拌機を備えた三ツ口丸底フラス
コに、シアン化ナトリウム粉末9.8g(200ミリモ
ル)とテトラヒドロフラン100mlを入れ、60wの超
音波洗浄器中で、超音波(45KHz 60W)を20分
照射し、シアン化ナトリウム粉末が浮遊状態になるまで
粉砕し、シアン化ナトリウムの分散液を調整した。この
分散液を0℃に冷却し、トリフルオロアセトアルデヒド
・エチルヘミアセタール25.6g(200ミリモル)
とテトラヒドロフラン100mlを滴下ロートに入れ、反
応温度を0℃に保ちながら、40分間滴下し、攪拌しな
がら反応させた。滴下終了後、攪拌を止め、超音波(同
上)を1時間照射し、透明な反応液を得た。得られた反
応液を攪拌しながら、室温まで昇温し、2N−塩酸20
0mlを加え、1時間攪拌し、未反応シアン化ナトリウム
より発生した青酸を除去した。青酸を除去した水溶液を
エーテル抽出し、抽出液に無水硫酸マグネシュウムを加
え、水分を除去し、ろ液からエーテルを減圧留出して2
−ヒドロキシ−3,3,3−トリフルオロプロピオニト
リル23.7g(190ミリモル 収率95%)を得
た。この生成物は、核磁気共鳴スペクトル( 1HNMR
スペクル、19FNMRスペクトル)、及び赤外線吸収ス
ペクトル(1R吸収スペクトル)で測定した結果、2−
ヒドロキシ−3,3,3−トリフルオロプロピオニトリ
ルであることが確認された。 【0032】(実施例) 〔本発明の目的化合物すなわち
1−ヒドロキシ−2,2,2−トリフルオロエチルヘキ
シルケトンの製造〕 還流冷却器、温度計、攪拌機、滴下ロートを備えた四ツ
口丸底フラスコに、参考例で得た2−ヒドロキシ−3,
3,3−トリフルオロプロピオニトリル12.5g(1
00ミリモル)とジエチルエーテル150mlを入れ、
攪拌しながら均一な溶液とした。次いで、該溶液の入っ
た四ツ口丸底フラスコをドライアイスアセトンバス中に
挿入し、攪拌しながら−78℃に保持した。 【0033】次に、滴下ロートにn−ヘキシルリチウム
溶液54.7g〔濃度37%のn−ヘキサン溶液,n−
ヘキシルリチウム量20.2g(220ミリモル) メ
タルゲゼルシャフト社製〕を取り、40分間かけて滴下
し、滴下完了後、30分間攪拌した。この間の反応温度
は−78℃〜−50℃であった。 【0034】次いで、ドライアイスアセトンバスを取り
去り、攪拌しながら25℃迄昇温し、3規定塩酸溶液1
25mlを室温で20分間かけて滴下し、滴下完了後、1
0分間攪拌した。 【0035】得られた反応液をエーテル抽出し、抽出液
を水で洗浄した後、無水硫酸マグネシュウムを加え、水
分を除去した後、溶媒を減圧留去し、シロップ状の粗生
成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロ
マトグラフィー(溶離液:n−ヘキサン/クロロホルム
=3/1)で精製し、無色透明な液状の目的化合物〔収
量19.5g(92ミリモル)収率92%〕を得た。 【0036】この化合物の 1HNMRスペクトルおよび
19FNMRスペクトル、IR吸収スペクトルおよびMS
スぺクトルを測定した結果は次の通りであり、1−ヒド
ロキシ−2,2,2−トリフルオロエチルヘキシルケト
ンであることが確認された。また、 1HNMRスペクト
ル図およびIR吸収スペクトル図を、それぞれ図1およ
び図2に示す。1 HNMRスペクトル(CDCl3 ) :0.5 〜2.05ppm(11H,m) :2.20〜2.95ppm( 2H,m) :3.45ppm ( 1H,q J=6.8Hz ) :3.72〜4.50ppm( 1H,br)19 FNMRスペクトル( from ext. CF 3 COOH ) :-2.17 ppm ( q,J=6.8Hz) IR吸収スペクトル(neat) : 3,510cm-1(OH) : 1,730cm-1(CO) MSスペクトル : m/z 212(M+ ) 【0037】 【発明の効果】本発明によれば、電子デバイスの素材で
ある反強誘電性液晶等の中間原料として、また医薬、農
薬に用いられる化合物に種々の官能基を導入出来るビル
ディングブロック剤等として有用である新規な1−ヒド
ロキシ−2,2,2−トリフルオロエチルアルキルケト
ンを、反応系の粘度上昇等の恐れがなく、反応制御がよ
り容易で、副反応が制御出来、かつ後処理が簡単で、効
率的に高収率で製造することが出来る。
素材である反強誘電性液晶化合物の中間原料として、あ
るいは医薬、農薬に用いられる化合物に種々の官能基を
導入出来るビルディングブロック剤等として有用である
新規な含フッ素化合物の製法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】ビルディングブロック剤として有用な含
フッ素カルボニル化合物として、2−アルコキシ−3,
3,3−トリフルオロエチルメチルケトンが知られてい
る。しかしながら、この化合物は沸点が低く、かつ揮発
性が高いため取り扱いづらく、取り扱いが容易で、汎用
性のある含フッ素カルボニル化合物が求められている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、反強誘
電性を有する液晶化合物の原料として期待され、またビ
ルディングブロック剤等として有用で、かつ取り扱いが
容易な新規な含フッ素カルボニル化合物につき鋭意研究
した結果、先に、後述の式(2)で示される1−ヒドロ
キシ−2,2,2−トリフルオロエチルアルキルケトン
を発明し、該化合物を、2−ヒドロキシ−3,3,3−
トリフルオロプロピオニトリルおよび式(3)で示され
るグリニャール試薬を反応させ、得られた反応生成物を
鉱酸で加水分解することにより製造する方法を見出し、
既に出願済である。 RMgBr (3) (ただし、式中Rは炭素数3〜10の直鎖状アルキル基
であり、式(2)のRに対応する。) 【0004】本発明者らは更に研究した結果、反応系の
粘度上昇等の恐れがなく、反応の制御がより容易であ
り、副反応が抑制出来、かつ後処理が簡単で、目的化合
物を効率的に高収率で製造する方法を見い出し、本発明
を完成した。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明は、2−ヒドロキ
シ−3,3,3−トリフルオロプロピオニトリルと、式
(1)で示されるアルキルリチウムを反応させ、次いで
反応生成物を鉱酸で加水分解することを特徴とする式
(2)で示される1−ヒドロキシ−2,2,2−トリフ
ルオロエチルアルキルケトンの製造方法である。 RLi (1) (ただし、式中Rは炭素数3〜10の直鎖状アルキル基
であり、式(2)のRに対応する。) 【0006】 【化2】 【0007】本発明の目的化合物は式(2)に示される
通りであり、式中Rで示されるアルキル基は、炭素数が
3〜10のアルキル基、すなわちn−プロピル基、n−
ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプ
チル基、n−オクチル基、n−ノニル基およびn−デシ
ル基であり、それらの中でも製造の容易性から有用であ
るアルキル基は炭素数4〜8の直鎖状アルキル基であ
る。 【0008】本発明によって好適に製造される目的化合
物を具体的に例示すると、1−ヒドロキシ−2,2,2
−トリフルオロエチル−n−ブチルケトン、1−ヒドロ
キシ−2,2,2−トリフルオロエチル−n−ペンチル
ケトン、1−ヒドロキシ−2,2,2−トリフルオロエ
チル−n−ヘキシルケトン、1−ヒドロキシ−2,2,
2−トリフルオロエチル−n−ヘプチルケトンおよび1
−ヒドロキシ−2,2,2−トリフルオロエチル−n−
オクチルケトンである。 【0009】本発明の目的化合物は、2−ヒドロキシ−
3,3,3−トリフルオロプロピオニトリル(以下出発
化合物ともいう)を出発原料として、これを前記式
(1)で示されるアルキルリチウム(以下、アルキルリ
チウムと称す)と反応させ(第一段反応)、次いで反応
生成物を鉱酸で加水分解する(第二段反応)ことにより
得られる。 【0010】以下、出発化合物からの製造方法について
詳細に説明する。 〔第一段反応〕第一段反応を反応式で示すと、式(4)
の通りであり、この反応によりまず、反応生成物が生成
する。 【0011】 【化3】【0012】アルキルリチウムは式(1)の通りであ
り、好ましくは炭素数4〜8の直鎖状アルキルリチウム
である。具体的なアルキルリチウムは、n−プロピルリ
チウム、n−ブチルリチウム、n−ペンチルリチウム、
n−ヘキシルリチウム、n−ヘプチルリチウム、n−オ
クチルリチウム、n−ノニルリチウムおよびn−デシル
リチウムである。 【0013】アルキルリチウムは有機溶媒に溶解して用
いるのが好ましく、好ましい有機溶媒としてはn−ヘキ
サン等が挙げられる。市販されている代表的なアルキル
リチウムの有機溶媒溶液としては、濃度15%のn−ブ
チルリチウムのn−ヘキサン溶液、あるいは濃度37%
のn−ヘキシルリチウムのn−ヘキサン溶液等が挙げら
れ、それらのどれでも使用することができる。 【0014】式(4)の反応は、2−ヒドロキシ−3,
3,3−トリフルオロプロピオニトリルの有機溶媒溶液
に、アルキルリチウムの有機溶媒溶液を滴下して行う方
法が、反応液の粘度上昇が抑制され、充分安定な反応操
作が行え、また収率も高い等の点から好ましい。すなわ
ち、上記操作で反応を行うと、生成した大部分の反応生
成物が反応系で固体となり、反応系に浮遊し、反応系の
粘度の上昇が起こらず、反応操作が容易であり、この操
作と逆の方法を行った場合に、反応熱の除去が困難なた
めに生じる式(5)で示されるような副反応が抑制さ
れ、反応生成物の収率を高めることが出来る。 【0015】 【化4】 【0016】2−ヒドロキシ−3,3,3−トリフルオ
ロプロピオニトリルのための有機溶媒としては、ジエチ
ルエーテル、THFおよびジグリム等が挙げられ、ジエ
チルエーテルおよびTHFが特に好ましい。 【0017】有機溶媒の好適な混合割合は、2−ヒドロ
キシ−3,3,3−トリフルオロプロピオニトリル1モ
ルに対して、0.5〜3リットルであり、特に1〜2リ
ットルが好適である。0.5リットル未満では、反応温
度の制御が困難となる場合があり、副反応生成物が増加
する恐れがあり、3リットルを超えると経済的とは言え
なくなる。 【0018】式(4)の反応において、アルキルリチウ
ムの供給割合は、2−ヒドロキシ−3,3,3−トリフ
ルオロプロピオニトリル1モルに対して、アルキルリチ
ウム2〜3モルが好ましい。2モル未満では反応生成物
の収率が低下する恐れがあり、3モルを超えると経済的
に有利とはいえなくなる。 【0019】アルキルリチウムの反応系への供給速度
は、アルキルリチウム1モルを45分〜95分程度かけ
て滴下するのが好ましい。供給を短時間で行うと、反応
熱によって反応温度が上昇し、副反応生成物が増加し
て、反応生成物の収率の低下を招く恐れがあり、滴下速
度が遅いと工業的に有利とは言えなくなる。 【0020】式(4)の反応温度は−78℃〜−20℃
が好ましい。−78℃未満では工業操作上有利とは言え
ず、−20℃を超えると副反応生成物が増加して、反応
生成物の収率が低下する傾向がある。 【0021】所要量の出発化合物およびアルキルリチウ
ムの総てを供給し終えた後、30分程度攪拌して、未反
応の2−ヒドロキシ−3,3,3−トリフルオロプロピ
オニトリルを充分反応させ、反応生成物を生成させるこ
とが望ましい。 【0022】〔第二段反応〕第二段反応の反応式の一例
を、鉱酸として塩酸を用いた場合について示すと、式
(6)の通りであり、第一段反応で得られた反応生成物
を鉱酸で加水分解することにより本発明の目的化合物が
生成する。 【0023】 【化5】 【0024】鉱酸としては、塩酸、硫酸、硝酸等が挙げ
られ、特に好ましい鉱酸は塩酸である。鉱酸は、原料と
して使用した2−ヒドロキシ−3,3,3−トリフルオ
ロプロピオニトリル1モルに対して、3〜4グラム当量
が好ましい。3グラム当量未満では反応生成物の加水分
解が不完全となりやすく、本発明の目的化合物の収率の
低下を招く恐れがあり、4グラム当量を超えると経済的
とはいえない。 【0025】鉱酸で加水分解するにあたり、鉱酸の濃度
は1〜5規定が好ましい。1規定未満では水層の量が多
すぎ、目的化合物が水層にも溶解し、目的化合物の抽出
操作が煩雑となり経済的とはいえず、また好ましくない
副反応が進行する恐れがある。5規定を超えると副反応
生成物が多くなり、目的化合物の収率の低下につながる
恐れがある。 【0026】式(5)の反応は、第一段反応で得られた
反応生成物を含有する反応液に、鉱酸の水溶液を滴下す
るのが、副反応を抑制出来る点で好ましい。。 【0027】鉱酸水溶液の反応系への供給速度は、2−
ヒドロキシ−3,3,3−トリフルオロプロピオニトリ
ル1モルに対して、45分〜95分程度かけて滴下する
のが好ましい。供給を短時間で行うと、反応熱によって
反応温度が上昇し、副反応生成物が増加する恐れがあ
り、目的化合物の収率の低下につながり、滴下速度が遅
いと工業的に有利とは言えなくなる。 【0028】加水分解反応は出来るだけ穏やかな温度、
通常10℃〜30℃が好ましく、常温が特に好適であ
る。あまり高い温度では、好ましくない副反応が進行す
る恐れがあり、あまり低温では加水分解反応速度が遅く
なる恐れがある。鉱酸の滴下後、更に常温付近で20分
程度攪拌放置することにより、反応を完結させるとよ
い。 【0029】加水分解反応終了後、エーテル抽出等の操
作により反応液から目的化合物を分離し、得られた抽出
液を水で洗浄した後、抽出液に無水硫酸マグネシウムを
加えて、水分を除去した後、溶媒を減圧で留去し、シロ
ップ状の粗生成物を得る。得られた粗生成物をシリカゲ
ルカラムクロマトグラフィーにより精製し、無色透明な
液状の目的化合物を取得することができる。 【0030】 【実施例】以下、参考例および実施例に基づいて本発明
を具体的に説明する。 【0031】(参考例) 〔原料化合物すなわち2−ヒド
ロキシ−3,3,3−トリフルオロプロピオニトリルの
製造〕 還流冷却器、温度計、攪拌機を備えた三ツ口丸底フラス
コに、シアン化ナトリウム粉末9.8g(200ミリモ
ル)とテトラヒドロフラン100mlを入れ、60wの超
音波洗浄器中で、超音波(45KHz 60W)を20分
照射し、シアン化ナトリウム粉末が浮遊状態になるまで
粉砕し、シアン化ナトリウムの分散液を調整した。この
分散液を0℃に冷却し、トリフルオロアセトアルデヒド
・エチルヘミアセタール25.6g(200ミリモル)
とテトラヒドロフラン100mlを滴下ロートに入れ、反
応温度を0℃に保ちながら、40分間滴下し、攪拌しな
がら反応させた。滴下終了後、攪拌を止め、超音波(同
上)を1時間照射し、透明な反応液を得た。得られた反
応液を攪拌しながら、室温まで昇温し、2N−塩酸20
0mlを加え、1時間攪拌し、未反応シアン化ナトリウム
より発生した青酸を除去した。青酸を除去した水溶液を
エーテル抽出し、抽出液に無水硫酸マグネシュウムを加
え、水分を除去し、ろ液からエーテルを減圧留出して2
−ヒドロキシ−3,3,3−トリフルオロプロピオニト
リル23.7g(190ミリモル 収率95%)を得
た。この生成物は、核磁気共鳴スペクトル( 1HNMR
スペクル、19FNMRスペクトル)、及び赤外線吸収ス
ペクトル(1R吸収スペクトル)で測定した結果、2−
ヒドロキシ−3,3,3−トリフルオロプロピオニトリ
ルであることが確認された。 【0032】(実施例) 〔本発明の目的化合物すなわち
1−ヒドロキシ−2,2,2−トリフルオロエチルヘキ
シルケトンの製造〕 還流冷却器、温度計、攪拌機、滴下ロートを備えた四ツ
口丸底フラスコに、参考例で得た2−ヒドロキシ−3,
3,3−トリフルオロプロピオニトリル12.5g(1
00ミリモル)とジエチルエーテル150mlを入れ、
攪拌しながら均一な溶液とした。次いで、該溶液の入っ
た四ツ口丸底フラスコをドライアイスアセトンバス中に
挿入し、攪拌しながら−78℃に保持した。 【0033】次に、滴下ロートにn−ヘキシルリチウム
溶液54.7g〔濃度37%のn−ヘキサン溶液,n−
ヘキシルリチウム量20.2g(220ミリモル) メ
タルゲゼルシャフト社製〕を取り、40分間かけて滴下
し、滴下完了後、30分間攪拌した。この間の反応温度
は−78℃〜−50℃であった。 【0034】次いで、ドライアイスアセトンバスを取り
去り、攪拌しながら25℃迄昇温し、3規定塩酸溶液1
25mlを室温で20分間かけて滴下し、滴下完了後、1
0分間攪拌した。 【0035】得られた反応液をエーテル抽出し、抽出液
を水で洗浄した後、無水硫酸マグネシュウムを加え、水
分を除去した後、溶媒を減圧留去し、シロップ状の粗生
成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロ
マトグラフィー(溶離液:n−ヘキサン/クロロホルム
=3/1)で精製し、無色透明な液状の目的化合物〔収
量19.5g(92ミリモル)収率92%〕を得た。 【0036】この化合物の 1HNMRスペクトルおよび
19FNMRスペクトル、IR吸収スペクトルおよびMS
スぺクトルを測定した結果は次の通りであり、1−ヒド
ロキシ−2,2,2−トリフルオロエチルヘキシルケト
ンであることが確認された。また、 1HNMRスペクト
ル図およびIR吸収スペクトル図を、それぞれ図1およ
び図2に示す。1 HNMRスペクトル(CDCl3 ) :0.5 〜2.05ppm(11H,m) :2.20〜2.95ppm( 2H,m) :3.45ppm ( 1H,q J=6.8Hz ) :3.72〜4.50ppm( 1H,br)19 FNMRスペクトル( from ext. CF 3 COOH ) :-2.17 ppm ( q,J=6.8Hz) IR吸収スペクトル(neat) : 3,510cm-1(OH) : 1,730cm-1(CO) MSスペクトル : m/z 212(M+ ) 【0037】 【発明の効果】本発明によれば、電子デバイスの素材で
ある反強誘電性液晶等の中間原料として、また医薬、農
薬に用いられる化合物に種々の官能基を導入出来るビル
ディングブロック剤等として有用である新規な1−ヒド
ロキシ−2,2,2−トリフルオロエチルアルキルケト
ンを、反応系の粘度上昇等の恐れがなく、反応制御がよ
り容易で、副反応が制御出来、かつ後処理が簡単で、効
率的に高収率で製造することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例で得た1−ヒドロキシ−2,
2,2−トリフルオロエチルヘキシルケトンの 1HNM
Rスペクトル図である。 【図2】本発明の実施例で得た1−ヒドロキシ−2,
2,2−トリフルオロエチルヘキシルケトンのIR吸収
スペクトル図である。
2,2−トリフルオロエチルヘキシルケトンの 1HNM
Rスペクトル図である。 【図2】本発明の実施例で得た1−ヒドロキシ−2,
2,2−トリフルオロエチルヘキシルケトンのIR吸収
スペクトル図である。
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フロントページの続き
(58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名)
C07C 49/173
C07C 45/44
CA(STN)
REGISTRY(STN)
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 2−ヒドロキシ−3,3,3−トリフル
オロプロピオニトリルと、式(1)で示されるアルキル
リチウムを反応させ、次いで反応生成物を鉱酸で加水分
解することを特徴とする式(2)で示される1−ヒドロ
キシ−2,2,2−トリフルオロエチルアルキルケトン
の製造方法。 RLi (1) (ただし、式中Rは炭素数3〜10の直鎖状アルキル基
であり、式(2)のRに対応する。) 【化1】
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP22393693A JP3385659B2 (ja) | 1993-08-18 | 1993-08-18 | 1−ヒドロキシ−2,2,2−トリフルオロエチルアルキルケトンの製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP22393693A JP3385659B2 (ja) | 1993-08-18 | 1993-08-18 | 1−ヒドロキシ−2,2,2−トリフルオロエチルアルキルケトンの製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0753438A JPH0753438A (ja) | 1995-02-28 |
JP3385659B2 true JP3385659B2 (ja) | 2003-03-10 |
Family
ID=16806032
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP22393693A Expired - Fee Related JP3385659B2 (ja) | 1993-08-18 | 1993-08-18 | 1−ヒドロキシ−2,2,2−トリフルオロエチルアルキルケトンの製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3385659B2 (ja) |
-
1993
- 1993-08-18 JP JP22393693A patent/JP3385659B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH0753438A (ja) | 1995-02-28 |
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