JP3361709B2 - 磁気特性の優れた方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents
磁気特性の優れた方向性電磁鋼板の製造方法Info
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Description
射により磁気特性を改善した方向性電磁鋼板に関し、特
に鋼板表面にレーザ照射痕を発生させず、且つ、磁気特
性を改善する方向性電磁鋼板に係わる。 【0002】 【従来の技術】従来、方向性電磁鋼板の製造方法におい
て、鋼板表面に力学的歪みを導入することで磁区を細分
化し、鉄損を減少させる方法が種々提案されてきた。中
でも特開昭55−18566号公報に開示されるよう
に、鋼板の表面にパルスYAGレーザビームを集光照射
して、被照射部での皮膜の蒸発反力により歪みを導入す
る方法は、鉄損改善効果が大きく、且つ非接触加工であ
ることから信頼性・制御性も高い非常に優れた方向性電
磁鋼板の製造法である。 【0003】しかし、パルスレーザを用いる手法では、
鋼板表面での皮膜蒸発反力は効果的に得られるという利
点はあるものの、表面の絶縁皮膜が破壊されるためレー
ザ照射痕が発生する。従って、レーザ照射の後に絶縁コ
ーティングを行わなければならないという問題があっ
た。そこで瞬間パワーは比較的低い連続波レーザを用い
て皮膜の損傷を抑える方法として、連続波CO2 レーザ
を用いる技術が特公昭62−49322号公報に、また
は連続波YAGレーザを用いる技術が特公平5−328
81号公報に開示されている。特に後者の特許において
はその明細書中でQスイッチYAGレーザはパルス時間
幅が短く、高ピークパワーを持つため、皮膜の蒸発・照
射痕発生は不可避であると明確に記述されている。従っ
て、連続波レーザで照射痕を発生させない手法における
歪み導入の源は皮膜蒸発ではなく、鋼板の急加熱・急冷
却にある。 【0004】連続波レーザはパワー密度が低いため照射
痕の抑制には効果的であるものの、急加熱・急冷却の能
力においても、高ピークパワーのパルスレーザに比べて
低いため、歪み導入効率が低い。そこでパルスレーザ法
並みの歪を導入し、同等の鉄損改善を得るには、鋼板へ
のトータルの照射エネルギーが相対的に増大する。一
方、電磁鋼板の磁歪は、トランスに使用した時の騒音に
比例する特性であり、鉄損と並び電磁鋼板の重要な品質
の一つである。レーザ磁区制御の場合、磁歪はトータル
の照射エネルギーに正の相関があることがわかってお
り、従って、連続波レーザによる磁区制御法ではパルス
レーザ法に比べ磁歪が増大するという問題があり、これ
は照射痕の発生有無に関わらず連続波レーザ法の欠点で
あった。 【0005】この様な背景により、磁気特性の優れた電
磁鋼板の製造方法として、パルスレーザ法で問題となる
レーザ照射痕が発生せず、且つ、連続波レーザ法で困難
である鉄損、磁歪両方の特性向上が可能な手法が望まれ
ていた。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、方向
性電磁鋼板の鉄損を低減させる方法として、従来のパル
スレーザ照射による表面レーザ照射痕を抑制し、連続波
レーザで問題となる磁歪の増加を極力抑え、且つ高速・
連続処理に適したレーザ処理工程を実現する方法を提供
することにある。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明は、方向性電磁鋼
板の表面に、等間隔にレーザビームを照射して、磁気特
性を改善する方向性電磁鋼板製造方法において、当該レ
ーザがパルス発振QスイッチCO2 レーザであり、照射
ビーム形状が板幅方向に長軸を持つ楕円であり、レーザ
パルスの照射パワー密度を鋼板表面の皮膜損傷閾値以下
に設定することで、レーザ照射痕の発生を抑制し、且つ
楕円ビームの長軸長を板幅方向のパルスビーム照射間隔
以上に設定することで、連続するパルスビームを鋼板表
面で重畳させ、磁気特性改善に必要十分な積算照射エネ
ルギーを与えるレーザ照射方法である。 【0008】 【発明の実施の形態】レーザ照射による鉄損改善の原理
は、照射点を熱源にした歪みにより、磁化容易方向(1
80°磁区)と直交する磁区(90°磁区)が発生し、
ここでの静磁エネルギーを最小化にするように180°
磁区が細分化され、その結果、磁区幅に比例した鉄損が
低下することにある。従って、本発明が係わるレーザ磁
区制御法の要点は、表面疵を抑制した上で、且つ効果的
に熱歪みを導入することにある。 【0009】図1(a)は本発明によるレーザ磁区制御
法の実施形態の一例の模式図であり、(b)は照射部の
拡大図である。鋼板は圧延方向(1方向)に磁化容易方
向(180°磁区)が一致した方向性電磁鋼板である。
照射されるQスイッチCO2レーザパルスビームは直交
するl,cの二方向をそれぞれ独立の集光ミラー、ある
いはレンズで圧延方向に短軸dlを、板幅方向に長軸d
cを持つ楕円に集光される。ここでスキャン方向と楕円
ビームの長軸方向は一致しており、集光ビームはポリゴ
ンミラー等で一定間隔Pcでスキャン照射される。また
圧延方向には一定間隔Plで照射される。ここでdcは
Pcより大きくなるように設定することで、連続するパ
ルスレーザ光は鋼板上で重畳する。 【0010】この手法におけるレーザの各照射パラメー
タの関係式は式(1)、(2)に示される。ここでPp
はパルスピークパワー、Ipはピークパワー密度、Ep
はパルスエネルギー、Upはスキャン線上の任意の点で
の積算エネルギー密度である。Sはビーム面積、Vc,
FpはそれぞれC方向スキャン速度、パルスの繰り返し
周波数である。nはパルスの重畳回数である。 【0011】 【数1】 【0012】一方、連続波レーザを用いた場合の照射パ
ラメータは以下の(3)、(4)で表される。ここでP
avは連続波レーザの平均出力、τはスキャン線上の任
意点へのビーム照射時間である。 【0013】 【数2】【0014】次に図2を用いてパルスレーザ、連続波レ
ーザによる照射痕の発生、熱歪みの導入原理について整
理し、本発明のかかわるレーザ磁区制御の作用を説明す
る。図2(a)にはレーザ波形をQスイッチYAGレー
ザ、QスイッチCO2 レーザ、および連続波レーザのそ
れぞれの場合について示した。特公平5−32881号
公報にも示されるように、QスイッチYAGレーザは特
徴としてパルス時間幅が0.01μs程度と非常に短
く、低パルスエネルギーにもかかわらずピークパワーは
非常に高い。それに比べ同じQスイッチレーザでもCO
2 レーザの場合、パルス時間幅は200〜500μsと
長く、ピークパワーは比較的低い。また特徴として初期
パルスに続き、低ピーク・高エネルギーのテール部分が
あり、テール時間長でエネルギーの調整も可能である。 【0015】図2(b)は図2(a)で説明した各種レ
ーザ照射による鋼板表面の任意点における温度履歴の模
式図である。レーザ照射による表面疵の発生は閾値温度
T1によって特徴づけられる。また90°磁区を発生さ
せる熱歪みは閾値温度T2 で特徴づけられる。T1 は表
面絶縁皮膜の軟化・溶融温度に相当し、約800℃であ
る。一方、熱歪みの解放温度から推測して、T2 は約5
00℃である。従って、照射痕を抑制して、且つ熱歪み
を導入するには鋼板温度を500℃以上、且つ800℃
以下に制御すればよい。 【0016】次に温度履歴と歪みの導入効果について説
明する。図2(b)中の温度上昇の傾きに相当する加熱
速度は照射されるレーザの単位時間当たりのエネルギー
密度、すなわちパワー密度Ipに比例する。熱歪みは鋼
板の急加熱・急冷却によって導入されるため、高ピーク
パワーのレーザを用いることで歪み導入効率は高い。従
って、連続波レーザに比べ、パルスQスイッチレーザの
方が低照射エネルギーで磁性改善を行うことが可能であ
る。一方、歪み総体積、および板厚方向への歪み浸透深
さは照射された総エネルギー密度Upに比例し、図2
(b)では温度履歴の時間積分値(図の斜線部面積)に
比例する。 【0017】従って、本発明の係わる理想的なレーザ磁
区制御は、鋼板温度が500〜800℃の範囲で、パル
スレーザ照射により急加熱・急冷却を繰り返し、且つ任
意の点に照射される総エネルギー量Upをできるだけ効
率的に導入することにある。以上の知見を基に、Qスイ
ッチCO2 レーザを用いた本発明の磁気特性改善方法を
詳細に説明する。本発明に用いるQスイッチCO2 レー
ザはピーク出力がQスイッチYAGレーザより低く、連
続波レーザのそれよりは高いパルスレーザ装置である。
一般にはピーク出力は10〜1000kWの範囲である。
パルス時間幅は初期パルス時間幅が200〜500ns、
テールを含めた全長が1〜10μsである。 【0018】パルスレーザビーム照射方法は図1で説明
したように、l,c方向をそれぞれ独立に集光し、スキ
ャン照射される。特にスキャン方向であるc方向と集光
ビームの長軸は一致し、且つそのスキャン間隔Pcは楕
円の長軸長dc以下に設定し、パルスレーザビームが鋼
板表面で重畳される。パルスピークパワー密度Ipはピ
ークパワーとビーム集光面積を調整し、ビーム重畳条件
下においても鋼板表面温度が皮膜損傷閾値T1 に達しな
いよう調整される。この様にIpを抑制するビーム照射
条件下では、同時に単一パルス当たりの照射エネルギー
密度も減少するため、一般的には効果的な歪み導入は不
可能である。しかし本発明ではビーム重畳により鋼板上
の任意の点には複数のパルスが照射される。各点に照射
されるパルス数nはビーム長軸dcと照射間隔pcによ
り前述の(2)式で与えられる。従って図2(b)に示
すように、パルス繰り返し周波数Fpでn個のパルスに
よる間欠的な急加熱・急冷却が繰り返されるため、パル
スレーザの利点である高い歪み導入能力は確保したま
ま、エネルギー的にはパルス重畳による積分効果でUp
を増加させ、磁区細分化に必要十分な歪みを与えること
が可能である。 【0019】以上説明した作用により、本発明ではレー
ザ照射痕を抑制し、効率的な磁区制御効果が得られると
いう利点がある。次にQスイッチCO2 レーザを用いる
本発明を、QスイッチYAGレーザを用いる場合と比較
する。図2(b)に示すようにQスイッチYAGレーザ
の場合、パルス時間幅が短く、且つピークパワーが高
い。例えばフラッシュランプ励起のYAGレーザ媒質
に、電気光学結晶を用いてQスイッチ発振を行う場合、
一般的にパルス時間幅0.01μs以下、パルスピーク
パワーは1MW以上となる。この様な短時間幅、高ピーク
パルスレーザ光では微妙な鋼板の加熱・温度制御は困難
であり、容易に皮膜損傷が発生する。そこで本発明の照
射法と同様にビーム径を拡大し、単一パルスあたりのI
pを抑制することは可能である。しかし同時に単一パル
スあたりのエネルギー密度も著しく低下し、且つパルス
時間幅が短いため、パルスエネルギー積分効果を得るに
は、1MHz 以上の非常に早いパルス繰り返し周波数での
動作が必要であり、現実的には不可能である。従って、
QスイッチYAGレーザでは照射痕の発生しない方向性
電磁鋼板の特性改善は困難である。 【0020】また工業応用の観点からもQスイッチCO
2 レーザは大きな利点を持つ。電磁鋼板製造工程におけ
るレーザ処理速度を高速化するためには、パルスエネル
ギーとパルス繰り返し周波数の積である平均出力の大き
なQスイッチレーザが望まれる。Qスイッチレーザの平
均出力はベースとなる連続波レーザの平均出力に比例す
る。固体結晶であるYAGレーザの場合、平均出力とし
て5kW程度が限界であり、一方、ガス媒質であるCO2
レーザは大型化が比較的容易で、40kW以上の出力を持
つ連続波レーザ装置も市販されている。またCO2 レー
ザは装置・稼動コストが廉価である。よってQスイッチ
CO2 レーザを使用することで、低コストで、高速・大
型の電磁鋼板製造工程に磁性改善技術の適用が可能であ
るという利点を有する。 【0021】 【実施例】板厚0.23mmの高磁束密度方向性電磁鋼板
の表面に本発明の方法によりQスイッチCO2 レーザを
照射し、照射痕の発生、磁気特性の改善効果を評価し
た。ここでl方向ビーム径dlは約0.30mmに固定
し、C方向ビーム径dcは0.50〜12.00mmで変
更し、Ipを調整した。Qスイッチ発振のピーク出力P
pは20kW、パルスエネルギーEpは8.3mJ,パルス
繰り返し周波数Fpは90kHz であり、平均出力は約7
50Wである。またスキャン速度Vcは43m/sであ
り、Qスイッチレーザ照射時のc方向照射ピッチPcは
約0.50mm、l方向ピッチPlは6.5mmである。連
続波レーザの場合、平均出力Pavは850Wであり、
その他の照射条件はQスイッチレーザの場合と同じであ
る。 【0022】図3はIpと表面のレーザ照射痕グレード
の関係である。レーザ照射痕グレードは目視と耐錆試験
による5段階評価であり、グレード4以上で錆は発生せ
ず、グレード5では目視による痕跡も皆無である。図3
より、Qスイッチレーザの照射痕発生閾値パワー密度は
連続波レーザのそれに比べ1桁以上高い。これは図2
(b)で示すようにQスイッチレーザの場合、ピークパ
ワーは高いものの、間欠的照射であるため、ピークパワ
ーは高くても鋼板温度は損傷閾値T1 まで達しないため
である。それに比べ、連続波レーザは瞬時的パワーは低
いものの連続的な熱の蓄積が影響し、低パワーでも皮膜
の溶融損傷が発生するものである。図3よりQスイッチ
CO2 レーザの場合、皮膜損傷閾値パワー密度は12kW
/mm2 であり、Ipをこの値以下に調整することで照射
痕を発生させないパルスレーザによる磁気特性改善が行
えることが明らかである。 【0023】図4は図3で説明した照射条件の中で、特
にレーザ照射痕が発生しなかったc方向ビーム径を選択
し、鉄損改善率をUpをパラメータとして、連続波CO
2 レーザ法とQスイッチCO2 レーザ法を比較した結果
である。ここでC方向ビーム径はQスイッチレーザの場
合8.7mm、連続波レーザでは約10.5mmである。こ
れよりQスイッチCO2 レーザを使用する本発明によ
り、従来の連続波レーザ法に比べ、より低い照射エネル
ギー量で同等以上の鉄損改善率が得られることが明らか
である。 【0024】ところで鉄損と並び電磁鋼板の重要な磁気
特性である磁歪は、鋼板をトランスに使用したときの騒
音に比例する要因であり、これは小さいほど望ましい。
図5は磁歪と総照射エネルギーUpの関係をQスイッチ
CO2 レーザと連続波CO2レーザで比較した結果であ
る。この図に示されるように時歪はUpが大きいほど増
加する。図4で説明したようにQスイッチCO2 レーザ
で処理をする場合、より低い照射エネルギーで高い鉄損
改善効果が得られるため、その結果、連続波レーザ処理
材に比べ磁歪が低減されるという効果がある。 【0025】以上、本発明の基本骨子であるQスイッチ
CO2 レーザの楕円ビーム重畳照射法の基本作用につい
て実施例を示した。しかし、本発明においては鋼板の種
類、楕円ビーム形状、照射ピッチ、照射パワー・エネル
ギー密度、パルス繰り返し周波数等を限定することで更
に高い磁気特性改善効果を得ることが可能である。そこ
で次に照射条件限定による特性改善の一例を挙げる。 【0026】図6および図7は本発明の照射方法を用い
て、楕円ビームの短軸、長軸を種々変更して、短軸長d
lと鉄損改善率、および磁歪の関係をまとめたものであ
る。ここでは被照射素材として板厚0.23mmの高磁束
密度方向性電磁鋼板を用い、照射条件はPc=0.5m
m、Pl=6.5mm、Fp=90kHz、Vs=43m/
s、Ep=8.3mJ、Pp=20kWである。図6はdc
を0.5〜12.0mm、dlを0.20〜0.40mmの
範囲で変更した時の鉄損改善率をdlとの関係でまとめ
た結果である。図6より、dl=0.25〜0.35mm
の範囲において、より高い鉄損改善率が得られることが
明らかである。これは次のように説明される。(2)式
より、Pcが固定された条件ではdlを縮小することで
Upが増加するため、歪みが効果的に導入される。従っ
て、鉄損改善率は向上する。しかしdlが著しく縮小さ
れると歪みのl方向長さも減少し、歪み体積は減少す
る。鉄損改善は歪みを起点とする磁区の細分化にあるた
め、歪み体積が著しく減少すると磁区細分化効果も減少
することになる。その結果、図6のようにdlに関して
は最適点が存在すると考えられる。 【0027】次に図7は同様にdlと磁歪の関係をまと
めたものである。磁歪はdlの縮小で単調に減少する。
磁歪の原因は外部磁界が180°磁区方向に沿って印加
されたときに生ずる90°磁区の伸縮にあるが、特にl
方向の伸縮の影響が大きい。従って、l方向の90°磁
区幅、すなわち歪みのl方向幅が狭い方が磁歪は低い。
従って図7で明らかなように照射ビームのl方向幅dl
の縮小で磁歪が低減されるものである。図6および図7
よりdlは0.25〜0.35mmの範囲で鉄損、磁歪特
性向上の両立が成される。 【0028】次に楕円ビームのC方向径dcについての
最適値を示す。図8および図9は前述の照射条件に同じ
で、更にdlを0.28mmに固定した場合のdcと鉄損
改善率、および磁歪の関係である。図8よりdcを拡大
することで鉄損改善率は向上し、10mm以上では急激に
劣化する。ここでdcが6mm以上でレーザ照射痕は発生
しない。dcが1mm程度に小さい場合は(1)式で示さ
れるようにピークパワー密度Ipが高くなり、その結
果、レーザ照射痕も発生するが、その際、皮膜の蒸発に
より鋼板表面でプラズマが発生する。プラズマはレーザ
光の吸収媒質であるため鋼板へのレーザ入熱効率が減少
する。しかし、dcが拡大されるとIpは低下し、プラ
ズマ発生はほとんど観測されない。また(2)式よりU
pはdcに対して一定であるため、プラズマが抑制され
た分、より効果的に入熱が行われ、鉄損改善効果が上昇
するものである。しかし、更にdcを拡大すると、単一
パルスのエネルギー密度が著しく減少するため、パルス
の重畳によっても十分な加熱・歪み導入が成されず、鉄
損改善は劣化する。従って、レーザ照射痕の抑制、鉄損
改善の観点でdcは6.0〜10.0mmが最適である。 【0029】図9より磁歪はdcの拡大で単調に減少す
る。これもやはりプラズマの有無で説明される。レーザ
による直接加熱を一次熱源とすると、鋼板の極近傍で発
生するプラズマは二次熱源として働く。プラズマはレー
ザビーム径よりも鋼板面上での面積が大きいため、プラ
ズマを熱源とした歪み幅は、レーザビームのl方向径よ
り大きくなる。前述したように磁歪は歪みのl方向幅に
比例するため、プラズマの存在で磁歪は増大する。一
方、dc拡大でプラズマ影響は軽減されるが、dc=1
0mm以上の領域では図8に示した通り十分な歪みが導入
されていないため、磁歪も低いと理解される。従って、
dcの最適な範囲はやはり6.0〜10.0mmと限定さ
れる。 【0030】これらの実施例より、本発明のレーザ照射
法は、レーザビーム形状を最適化し、限定することでレ
ーザ照射痕を発生させずに、より高い磁気特性を得るこ
とができるという利点を有する。 【0031】 【発明の効果】以上に説明したごとく本発明のQスイッ
チCO2 レーザを用いた方向性電磁鋼板の鉄損改善法に
よれば、従来パルスレーザ法で問題であった表面のレー
ザ照射痕が発生せず、且つ連続波レーザ法で問題であっ
た磁歪の劣化を抑制できるという利点を有する。またレ
ーザ照射条件に合わせて集光ビーム形状を限定すること
で、より高い磁気特性を得ることが可能である。更に、
YAGレーザに比べ高平均出力発振が可能で、設備・稼
働コストが廉価なQスイッチCO2 レーザを使用するこ
とから、高速・大規模の連続処理に対しても対応可能で
あり、且つ製造コストを低減できるという効果がある。
り、(a)は全体を示す模式図、(b)は照射部の拡大
図である。 【図2】(a)各種レーザの出力波形の説明図である。 (b)各種レーザに本発明のレーザ照射方法を用いたと
きのスキャン線上の任意点の温度履歴の説明図である。 【図3】表面皮膜損傷グレードとレーザピークパワー密
度の関係図である。 【図4】鉄損改善率と照射エネルギー密度の関係図であ
る。 【図5】磁歪と照射エネルギー密度の関係図である。 【図6】鉄損改善率と楕円ビームのl方向ビーム径の関
係図である。 【図7】磁歪と楕円ビームのl方向ビーム径の関係図で
ある。 【図8】鉄損改善率と楕円ビームのC方向ビーム径の関
係図である。 【図9】磁歪と楕円ビームのC方向ビーム径の関係図で
ある。
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 方向性電磁鋼板の表面にQスイッチパル
スCO 2 レーザビームを板幅方向に走査照射して、磁気
特性を改善する方向性電磁鋼板の製造方法において、照
射レーザビームの集光形状が板幅方向に長軸を持つ楕円
であり、該楕円の短軸長が0.25〜0.35mm、長軸
長が6.0〜10.0mmであり、単一集光パルスのピー
クパワー密度が12kW/mm 2 以下であり、且つ照射パル
スの走査方向ピッチを楕円の長軸長さ以下とすることで
連続するパルス照射位置がビーム走査方向に重畳するこ
とを特徴とする磁気特性の優れた方向性電磁鋼板の製造
方法。
Priority Applications (6)
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