JP3286998B2 - 抗菌性エレクトレット材料 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明はフィルター、食品包
装、医療材料、作業衣料などの分野にて使用できる抗菌
性とエレクトレット性の両特性を持つ材料に関するもの
である。

【０００２】

【従来の技術】抗菌性エレクトレット材料として特開昭
６２−４２７１６号公報に見られるごとく、抗菌剤によ
る抗菌加工を繊維表面にした後に、エレクトレット化処
理したフィルター材料がある。しかし、この材料は繊維
表面に有機系抗菌剤とそれを分散する界面活性剤を用い
ているため表面の体積抵抗率が小さくなり、このためエ
レクトレット化処理しても得られる電荷は少なく、また
電荷減衰が早いという欠点があった。

【０００３】また、特開平３−１８６３０９号公報では
無機系の抗菌性ゼオライトを繊維中に入れた抗菌性不織
布とエレクトレット不織布を２枚積層したエアーフィル
ターが提案されている。

【０００４】しかし、このフィルターでは抗菌性フィル
ター側で捕捉されたバクテリアは繁殖抑制を受けるが、
エレクトレットフィルター側に捕捉されたバクテリヤは
繁殖し、悪臭の発生や再飛散して室内を汚染するという
欠点がある。

【０００５】また、その上、全体がエレクトレット化さ
れていないためフィルター性能が低下するという欠点が
あった。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる従来
技術の背景に鑑み、抗菌性を持ちながらエレクトレット
性も兼ね備え、かつ電荷安定性の良好な抗菌性エレクト
レット材料を提供せんとするものである。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明は、かかる課題を
解決するために、次のような手段を採用する。

【０００８】すなわち、本発明の抗菌性エレクトレット
材料は、体積抵抗率１０¹³Ω・ｃｍ以上の合成有機重合
体よりなり、該合成有機重合体中に、熱安定剤を０．０
１〜２重量％の範囲で含有し、かつ金属イオンを含有す
る無機物を抗菌剤として０．１〜４重量％の範囲で含有
するとともに、その表面電荷密度が１×１０^-10クーロ
ン／ｃｍ² 以上であることを特徴とするものである。

【０００９】

【発明の実施の形態】本発明の具体的内容を以下に示
す。

【００１０】すなわち、体積抵抗率１０¹³Ω・ｃｍ以上
の有機重合体、例えば、ポリオレフィン、ポリエステ
ル、弗素系樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂などの
中に、０．０１〜２重量％の熱安定剤をエレクトレット
安定剤として、また０．１〜４重量％の金属イオン担持
の無機物を抗菌剤として含有する抗菌性エレクトレット
材料である。

【００１１】エレクトレット安定剤としては、熱安定剤
を用いるのが好ましく、該熱安定剤としては、特に限定
されるものではないが、ヒンダードアミン系、含窒素ヒ
ンダードフェノール系、金属塩ヒンダードフェノール
系、フェノール系、硫黄系、燐系のなどのうちから選択
される熱安定剤を用いるのがよい。

【００１２】たとえば、これらの一例として、ヒンダー
ドアミン系のものの場合、ポリ［｛（６−（１，１，
３，３，−テトラメチルブチル）イミノ−１，３，５−
トリアジン−２，４−ジイル｝（２，２，６，６，−テ
トラメチル−４−ピペリジル）イミノ｝ヘキサメチレン
｛（２，２，６，６−テトラメチル−４−ピペリジル）
イミノ｝］、コハク酸ジメチル−１−（２−ヒドロキシ
エチル）−４−ヒドロキシ−２，２，６，６−テトラメ
チルピペリジン重縮合物、２−（３，５−ジ−ｔ−ブチ
ル−４−ヒドロキシベンジル）−２−ｎ−ブチルマロン
酸ビス（１，２，２，６，６−ペンタメチル−４−ピペ
リジル）などがある。

【００１３】また、含窒素ヒンダードフェノール系のも
のでは、１，３，５−トリス（４−ｔ−ブチル−３−ヒ
ドロキシ−２，６−ジメチルベンジル）イソシアヌル
酸、あるいは、１，３，５−トリス（３，５−ジ−ｔ−
ブチル−４−ヒドロキシベンジル）イソシアヌル酸など
がある。

【００１４】また、金属塩ヒンダードフェノール系のも
のでは、３，５−ジ−ｔブチル−４−ヒドロシキ−ベン
ジル−モノ−エチル−ホスホネートのカルシウム塩、
３，５−ジ−ｔブチル−４−ヒドロシキ−ベンジル−モ
ノ−エチル−ホスホネートのニッケル塩、あるいは同上
化合物のマグネシウム塩などがある。

【００１５】また、フェノール系のものでは、１，３，
５−トリメチル−２，４，６−トリス（３，５−ジ−ｔ
−ブチル−４−ヒドロキシベンジル）ベンゼン、ペンタ
エリスリチル−テトラキス［３−３，５−ジ−ｔ−ブチ
ル−４−ヒドロキシフェニル）プロピオネート］、オク
タデシル−（３−（３，５−ジ−ｔ−ブチル−４−ヒド
ロキシフェニル）プロピオネートなどがある。

【００１６】また、硫黄系のものとしては、ジステアリ
ルチオジプロピオネート、ジラウリルチオジプロピオネ
ートなどがある。

【００１７】また、燐系のものとしては、ジステアリル
ペンタエリスリトールジホスファイトなどがある。

【００１８】また、抗菌剤中には、金属イオンを含有す
るゼオライト、あるいは、金属イオンを含有する溶解性
ガラス、金属イオン含有のリン酸ジルコニウムなどを好
ましくは使用できる。その量はポリマー中に０．１〜４
重量％の範囲で含有させるのが好ましい。

【００１９】金属イオンは、銀、銅、亜鉛、水銀、錫、
鉛、ビスマス、クロム、またはタリウムなどが使用でき
る。特に銀イオンが効果的で、また他金属イオンとの複
合も効果的である。また、各種抗菌剤の複合化も効果的
である。

【００２０】ここで、溶解性ガラスとはＢ₂ Ｏ₃ 、Ｓｉ
Ｏ₂ 、Ｎａ₂ Ｏなどからなり、これに銀イオン担持の場
合はＡｇ₂ Ｏを含有させるのが好ましい。

【００２１】その他に抗菌剤として金属イオン含有のリ
ン酸チタニウムやリン酸錫などが使用できる。

【００２２】上記添加剤を含むポリマー材料を繊維、フ
ィルム、織物、不織布、紙、あるいは編物等に成形す
る。かかる成形は、従来から知られている通常のこれら
の成形手法によればよい。

【００２３】その後、これらの材料を直流高電圧中でエ
レクトレット化処理して高電荷密度のエレクトレット材
料を得ることができる。

【００２４】繊維、フィルム、織物、不織布、紙、編物
等のエレクトレット化処理も、従来から知られている手
法により行なうことができる。

【００２５】本発明においてエレクトレット材料は、表
面電荷密度で１×１０ ^-10 クーロン／ｃｍ² 以上を一般
に示すものである。

【００２６】また、不織布、フィルム、織物、紙などシ
ート状態でエレクトレット化処理したものは、本発明者
らの知見によれば、一般に、その電荷密度が２×１０
^-10クーロン／ｃｍ² 以上でその上限は１×１０^-8クー
ロン／ｃｍ² を示す。

【００２７】また、そのシートの表裏面の電気極性が異
なるものである。

【００２８】抗菌性を持ちながらエレクトレット性を発
揮するには、エレクトレット安定剤、抗菌剤の添加率が
重要である。エレクトレット安定剤の量は０．０１重量
％以上がエレクトレット性から必要で、また多すぎても
効果なく２重量％以下がよい。

【００２９】また、抗菌剤は０．１重量％以上が抗菌性
から必要で、多すぎてもエレクトレット性を低下させる
ため効果的でなく、４重量％以下が好ましい。

【００３０】上記からなるエレクトレット材料は、エレ
クトレット性と抗菌性の両特性を兼ね備えている。

【００３１】抗菌性は、金属イオンが細菌や微生物の細
胞の生育を阻害して効果を発揮する。 エレクトレット
性は樹脂中のエレクトレット安定剤にトラップされた電
荷により、効果を発揮する。

【００３２】また、これらの電荷は環境条件、湿度、温
度が変化しても安定な電荷を維持する。このため、フィ
ルター、包装材、農業資材、ワイパー、各種カバー材、
帽子、メディカル資材、マスクなどに使用できる。

【００３３】エレクトレット表面電荷密度は図１に示す
方法で測定する。

【００３４】すなわち、同図において、電極間１、２に
エレクトレット試料３を挟み、誘起した電荷を既知コン
デンサー４に蓄え、その電位を電位計５で測定して、下
記式から求める。

【００３５】 表面電荷密度Ｑ＝Ｃ×Ｖ Ｃ：既知コンデンサー容量（ファラッド） Ｖ：電圧（ボルト） Ｑ：表面電荷密度（クーロン／ｃｍ² ） 抗菌性はシュークフラスコ法を用いる。試験菌（黄色ブ
ドウ状球菌）の懸濁液中に試料を投入し、密閉容器の中
で１５０回／分、１時間振盪した後に生菌数を調べて、
初期の菌数に対する減少率を求める。

【００３６】

【実施例】以下、実施例に基づき、さらに詳細に説明す
る。

【００３７】実施例１ 体積抵抗率が１０×１０¹⁶Ω・ｃｍのポリプロピレンか
らなる目付１００ｇ／ｍ² のメルトブロー不織布であ
り、かつ、エレクトレット安定剤として金属塩ヒンダー
ドフェノールである３，５−ジ−ｔブチル−４−ヒドロ
シキ−ベンジル−モノ−エチル−ホスホネートのカルシ
ウム塩の０．２重量％とフェノール系であるペンタエリ
スリチル−テトラキス［３−３，５−ジ−ｔ−ブチル−
４−ヒドロキシフェニル）プロピオネート］の０．１重
量％を含有、抗菌剤として銀イオンを担持したゼオライ
トを０．８重量％含有する不織布を製造した。

【００３８】この不織布を３０ＫＶ電圧中で１分間処理
してエレクトレット化した。この表面電荷密度は８×１
０^-10クーロン／ｃｍ² で表裏面の極性は正負に分離さ
れていた。

【００３９】抗菌性はシュークフラスコ法で減少率７５
％を示した。

【００４０】比較に用いた一般のメルトブロー不織布の
抗菌性の減少率は３％であった。

【００４１】この不織布をフィルターとして用いたとこ
ろ、捕集効率９５％を示し、半年間ビル内で使用しても
細菌の発生は見られず、また悪臭の発生もなかった。

【００４２】これに対して一般メルトブロー不織布では
悪臭の発生が認められた。 実施例２ 体積抵抗率が１０×１０¹⁶Ω・ｃｍのポリプロピレンか
らなるスパンボンド不織布であり、かつ、ヒンダードア
ミン系であるエレクトレット安定剤として、ポリ
［｛（６−（１，１，３，３，−テトラメチルブチル）
イミノ−１，３，５−トリアジン−２，４−ジイル｝
（２，２，６，６，−テトラメチル−４−ピペリジル）
イミノ｝ヘキサメチレン｛（２，２，６，６−テトラメ
チル−４−ピペリジル）イミノ｝］の０．１重量％と、
フェノール系であるペンタエリスリチル−テトラキス
［３−３，５−ジ−ｔ−ブチル−４−ヒドロキシフェニ
ル）プロピオネート］の０．１重量％を含有し、銀イオ
ン担持の水溶性ガラスを１重量％含有した不織布を製造
した。

【００４３】この不織布に２５ＫＶの電圧を１分間印加
してエレクトレット化した。

【００４４】表面電荷密度は５×１０^-10クーロン／ｃ
ｍ² で表裏面の極性は正負に分離されていた。

【００４５】抗菌性はシュークフラスコ法で減少率６５
％を示した。

【００４６】この不織布をミカンの包装材として用いた
ところ、３か月間カビが発生しなかった。これに対して
一般のスパンボンド不織布では１か月でカビの発生が認
められた。 実施例３ 体積抵抗率１０×１０¹⁶Ω・ｃｍのポリプロピレンから
なる目付５０ｇ／ｍ²のメルトブロー不織布であり、か
つ、エレクトレット安定剤として金属塩ヒンダードフェ
ノールである３，５−ジ−ｔブチル−４−ヒドロシキ−
ベンジル−モノ−エチル−ホスホネートのカルシウム塩
の０．１重量％とフェノール系であるペンタエリスリチ
ル−テトラキス［３−３，５−ジ−ｔ−ブチル−４−ヒ
ドロキシフェニル）プロピオネート］の０．１重量％を
含有し、抗菌剤として銀イオンを担持したリン酸ジルコ
ニウムを１．１重量％含有する不織布を製造した。

【００４７】この不織布を３０ＫＶ電圧中で１分間処理
してエレクトレット化した。

【００４８】この表面電荷密度は９×１０^-10クーロン
／ｃｍ² で表裏面の極性は正負に分離されていた。

【００４９】抗菌性はシュークフラスコ法で減少率７２
％を示した。

【００５０】比較に用いた一般のメルトブロー不織布の
抗菌性の減少率は４％であった。

【図面の簡単な説明】

【図１】表面電荷密度の測定法を示す概略図である。

【符号の説明】

１、２：電極 ３：試料 ４：コンデンサー ５：電位計

フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭62−282077（ＪＰ，Ａ) 特開 昭63−175117（ＪＰ，Ａ) 特開 昭63−280408（ＪＰ，Ａ) 特開 昭61−102476（ＪＰ，Ａ) 特開 昭61−174471（ＪＰ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) D06M 10/00 - 11/84 B01D 39/14 H01G 7/02 D01F 1/00 - 6/96

Claims (14)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】体積抵抗率１０¹³Ω・ｃｍ以上の合成有機
   重合体よりなり、該合成有機重合体中に、熱安定剤を
   ０．０１〜２重量％の範囲で含有し、かつ金属イオンを
   含有する無機物を抗菌剤として０．１〜４重量％の範囲
   で含有するとともに、その表面電荷密度が１×１０^-10
   クーロン／ｃｍ² 以上であることを特徴とする抗菌性エ
   レクトレット材料。
2. 【請求項２】該熱安定剤が、ヒンダードアミン系、含窒
   素ヒンダードフェノール系、金属塩ヒンダードフェノー
   ル系、フェノール系、硫黄系、燐系の熱安定剤のうちの
   少なくとも１種類であることを特徴とする請求項１記載
   の抗菌性エレクトレット材料。
3. 【請求項３】該金属イオンを含有する無機物が、金属イ
   オンを含有するゼオライト、金属イオンを含有する溶解
   性ガラス、または金属イオンを含有するリン酸ジルコニ
   ウムであり、これらのうちの少なくとも１種類を抗菌剤
   として含有することを特徴とする請求項１記載の抗菌性
   エレクトレット材料。
4. 【請求項４】該合成有機重合体が、体積抵抗率１０¹⁵Ω
   ・ｃｍ以上のオレフィン系重合体からなることを特徴と
   する請求項１記載の抗菌性エレクトレット材料。
5. 【請求項５】該熱安定剤が、ヒンダードアミン系、含窒
   素ヒンダードフェノール系、金属塩ヒンダードフェノー
   ル系、フェノール系、硫黄系、燐系の熱安定剤のうちの
   少なくとも２種類を含有し、その全含有率が０．０１〜
   ２重量％であることを特徴とする請求項１または２記載
   の抗菌性エレクトレット化材料。
6. 【請求項６】該抗菌性エレクトレット化材料が、繊維形
   態のものであることを特徴とする請求項１〜５のいずれ
   かに記載の抗菌性エレクトレット材料。
7. 【請求項７】該抗菌性エレクトレット化材料が、不織布
   形態のものであることを特徴とする請求項１〜５のいず
   れかに記載の抗菌性エレクトレット材料。
8. 【請求項８】該抗菌性エレクトレット材料が、フィルム
   形態のものであることを特徴とする請求項１〜５のいず
   れかに記載の抗菌性エレクトレット材料。
9. 【請求項９】該抗菌性エレクトレット材料が、紙形態の
   ものであることを特徴とする請求項１〜５のいずれかに
   記載の抗菌性エレクトレット材料。
10. 【請求項１０】該抗菌剤が、Ａｇイオンを含有するゼオ
    ライトを使用したものであることを特徴とする請求項１
    〜９のいずれかに記載の抗菌性エレクトレット化材料。
11. 【請求項１１】該抗菌剤が、Ａｇイオンを含有するゼオ
    ライトと他金属イオンを含有するゼオライトが併用され
    たものであることを特徴とする請求項１〜１０のいずれ
    かに記載の抗菌性エレクトレット材料。
12. 【請求項１２】該抗菌剤が、Ａｇイオンを含有する溶解
    性ガラスであることを特徴とする請求項１〜１１のいず
    れかに記載の抗菌性エレクトレット材料。
13. 【請求項１３】該抗菌剤が、Ａｇイオンを含有するゼオ
    ライトとＡｇイオンを含有する溶解性ガラスが併用され
    たものであることを特徴とする請求項１〜１２のいずれ
    かに記載の抗菌性エレクトレット材料。
14. 【請求項１４】該抗菌剤が、Ａｇイオンを含有するリン
    酸ジルコニウムを含有するものであることを特徴とする
    請求項１〜１３のいずれかに記載の抗菌性エレクトレッ
    ト材料。