JP3058438B2 - ヒト肝臓組織特異的ウイルスの感染可能な霊長類の不死化肝細胞およびその調製方法 - Google Patents
ヒト肝臓組織特異的ウイルスの感染可能な霊長類の不死化肝細胞およびその調製方法Info
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Description
【発明の詳細な説明】 発明の分野 本発明は、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、非
A非B型肝炎ウイルス等のヒト肝細胞特異性の高いウイ
ルスが感染可能なまたは持続感染した霊長類の不死化肝
細胞、および該不死化肝細胞の調製方法に関する。
A非B型肝炎ウイルス等のヒト肝細胞特異性の高いウイ
ルスが感染可能なまたは持続感染した霊長類の不死化肝
細胞、および該不死化肝細胞の調製方法に関する。
従来の技術及び本発明が解決しようとする問題点 ヒトを宿主とするウイルスの同定および分離が困難と
されてきた理由の1つは、ヒト宿主の他に好適にウイル
スを増殖させるための系が存在しなかったことである。
この問題は、非A非B型肝炎(以下、HNANBと称する)
ウイルスをターゲットとした研究を遂行する上で大きく
クローズアップされた。従来、HNANBウイルスの証明に
は、ヒト以外の宿主系として輸血後HNANBの場合にはチ
ンパンジー、水系HNANBの場合にはカニクイザルの感染
により直接的に(現象論として)証明されている。しか
し、特に前者において保護動物であるチンパンジーがウ
イルス研究のための唯一の実験動物であったことは、こ
のウイルスの分離とその後の研究をかなり制約してしま
った。同様の問題は、B型肝炎(以下、HBと称する)ウ
イルスの場合においても深刻であった。
されてきた理由の1つは、ヒト宿主の他に好適にウイル
スを増殖させるための系が存在しなかったことである。
この問題は、非A非B型肝炎(以下、HNANBと称する)
ウイルスをターゲットとした研究を遂行する上で大きく
クローズアップされた。従来、HNANBウイルスの証明に
は、ヒト以外の宿主系として輸血後HNANBの場合にはチ
ンパンジー、水系HNANBの場合にはカニクイザルの感染
により直接的に(現象論として)証明されている。しか
し、特に前者において保護動物であるチンパンジーがウ
イルス研究のための唯一の実験動物であったことは、こ
のウイルスの分離とその後の研究をかなり制約してしま
った。同様の問題は、B型肝炎(以下、HBと称する)ウ
イルスの場合においても深刻であった。
最近、ヒトの胎児あるいは成人の初代培養肝細胞でHB
ウイルスの感染と増殖が確認され、ヒト肝細胞特異的な
ウイルスの増殖がin vitroの系においても可能であるこ
とが示唆された(Shimizu,Y.et al.,J.Med.Virol.,20:
p.313(1986);Ochiya,T.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U
SA 86:p.1875(1989))。
ウイルスの感染と増殖が確認され、ヒト肝細胞特異的な
ウイルスの増殖がin vitroの系においても可能であるこ
とが示唆された(Shimizu,Y.et al.,J.Med.Virol.,20:
p.313(1986);Ochiya,T.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U
SA 86:p.1875(1989))。
一方、肝細胞癌由来の肝癌細胞株、あるいは正常肝臓
に由来し偶然的に永久増殖性を獲得した細胞において
は、このようなウイルスの増殖は成功していない。この
事実は、初代培養という方法が、増殖は不可能ではある
が、肝特異機能の維持という点では、in vivoをかなり
反映していることを意味している。一方、偶然的に増殖
性を獲得した肝細胞は悪性腫瘍化(トランスフォーム、
transform)の傾向が強く、多くの、例えば、肝炎ウイ
ルスに対する受容体の発現といった肝細胞特異性が消失
してしまっていることが想像される。
に由来し偶然的に永久増殖性を獲得した細胞において
は、このようなウイルスの増殖は成功していない。この
事実は、初代培養という方法が、増殖は不可能ではある
が、肝特異機能の維持という点では、in vivoをかなり
反映していることを意味している。一方、偶然的に増殖
性を獲得した肝細胞は悪性腫瘍化(トランスフォーム、
transform)の傾向が強く、多くの、例えば、肝炎ウイ
ルスに対する受容体の発現といった肝細胞特異性が消失
してしまっていることが想像される。
上記の現象、すなわち、肝細胞の分化・再生・癌化の
関連について説明する次の報告(Marceau,N.et al.,In
Vitro,25:p.336(1989))がある。「肝細胞は未熟胆管
系細胞から分化し成熟化していく。肝再生は成熟肝細胞
が少し、未熟化して小肝細胞となり増殖し再び分化する
機構である。この時期に発癌条件が伴うと過形成状態と
なり、成熟正常細胞に戻れなくなる。したがって、肝癌
細胞株には多くの肝特異機能が存在しなくなる。」 一般に、初代培養した2倍体正常細胞は、細胞に変異
が起こらない限り永久に増殖し続けることはできない。
ところが、細胞が永久増殖性を獲得しても、正常細胞の
形態を維持し、造腫瘍性を示さないものもある。このこ
とは、細胞の癌化が永久増殖性の獲得(immortalizatio
n)と悪性化(transformation)という2つのステップ
に分けることができるという説明によって理解される。
ここで、永久増殖性の獲得(不死化)とは、生体外(in
vitro)に取り出された細胞が、本来の細胞の特異機
能を維持したまま(分化)、増殖し続けることである。
また、不死化細胞がトランスフォームされれば、接触阻
害性の低下、足場依存性の低下、血清依存性の低下、動
物での腫瘍形成等が誘起されるものがあり細胞の特異性
も低下する(未熟化、脱分化)。
関連について説明する次の報告(Marceau,N.et al.,In
Vitro,25:p.336(1989))がある。「肝細胞は未熟胆管
系細胞から分化し成熟化していく。肝再生は成熟肝細胞
が少し、未熟化して小肝細胞となり増殖し再び分化する
機構である。この時期に発癌条件が伴うと過形成状態と
なり、成熟正常細胞に戻れなくなる。したがって、肝癌
細胞株には多くの肝特異機能が存在しなくなる。」 一般に、初代培養した2倍体正常細胞は、細胞に変異
が起こらない限り永久に増殖し続けることはできない。
ところが、細胞が永久増殖性を獲得しても、正常細胞の
形態を維持し、造腫瘍性を示さないものもある。このこ
とは、細胞の癌化が永久増殖性の獲得(immortalizatio
n)と悪性化(transformation)という2つのステップ
に分けることができるという説明によって理解される。
ここで、永久増殖性の獲得(不死化)とは、生体外(in
vitro)に取り出された細胞が、本来の細胞の特異機
能を維持したまま(分化)、増殖し続けることである。
また、不死化細胞がトランスフォームされれば、接触阻
害性の低下、足場依存性の低下、血清依存性の低下、動
物での腫瘍形成等が誘起されるものがあり細胞の特異性
も低下する(未熟化、脱分化)。
これまで、多くの研究者によって、分離した肝細胞に
永久増殖性を与える努力が払われてきた。しかしなが
ら、例えば、種々の増殖因子やホルモン等を培養液へ添
加しただけでは、初代培養肝細胞に一時的なDNAの合
成、あるいは限られた培養時間の増加を与えるに過ぎ
ず、永久増殖性を付与するまでには至らなかった。(To
mita,Y.et al.,Exp.Cell Res.,135:p.363(1981);Naka
mura,T.et al.,J.Biochem.,94:p.1029(1983)) 1970年代に肝細胞に関する研究、とりわけ当該肝細胞
の初代培養系を利用した研究は急速に進展した。コラゲ
ナーゼ灌流法による実質細胞の効率的な分離法が報告さ
れて以来、現在まで数多くの報告が知られている。しか
し、多くの報告はラットのような非霊長類の肝細胞に関
するものであり、培養期間も最長1ケ月程度に限られ
る。また、最近では肝細胞に特異的に作用する増殖因子
(HGF)の分離およびこれをコードする遺伝子の塩基配
列の決定等も報告されているが(Nakamura,T.et al.,Na
ture.342:p.440(1989))、現状ではin vitroでの著し
い肝細胞増殖促進作用は示されていない。
永久増殖性を与える努力が払われてきた。しかしなが
ら、例えば、種々の増殖因子やホルモン等を培養液へ添
加しただけでは、初代培養肝細胞に一時的なDNAの合
成、あるいは限られた培養時間の増加を与えるに過ぎ
ず、永久増殖性を付与するまでには至らなかった。(To
mita,Y.et al.,Exp.Cell Res.,135:p.363(1981);Naka
mura,T.et al.,J.Biochem.,94:p.1029(1983)) 1970年代に肝細胞に関する研究、とりわけ当該肝細胞
の初代培養系を利用した研究は急速に進展した。コラゲ
ナーゼ灌流法による実質細胞の効率的な分離法が報告さ
れて以来、現在まで数多くの報告が知られている。しか
し、多くの報告はラットのような非霊長類の肝細胞に関
するものであり、培養期間も最長1ケ月程度に限られ
る。また、最近では肝細胞に特異的に作用する増殖因子
(HGF)の分離およびこれをコードする遺伝子の塩基配
列の決定等も報告されているが(Nakamura,T.et al.,Na
ture.342:p.440(1989))、現状ではin vitroでの著し
い肝細胞増殖促進作用は示されていない。
ところで、ある種の腫瘍ウイルス、例えばSV40、ポリ
オーマウイルス等を細胞に感染させるか、もしくはそれ
らのウイルスの癌遺伝子であるT抗原を遺伝子の形で挿
入(トランスフェクション、transfection)することに
よって、幾種類かの初代培養細胞は不死化(immortaliz
e)され、さらには悪性化、癌化(transform)されると
いう報告がある。
オーマウイルス等を細胞に感染させるか、もしくはそれ
らのウイルスの癌遺伝子であるT抗原を遺伝子の形で挿
入(トランスフェクション、transfection)することに
よって、幾種類かの初代培養細胞は不死化(immortaliz
e)され、さらには悪性化、癌化(transform)されると
いう報告がある。
例えば、SV40T抗原のN末端側44%だけをコードするD
NA断片には、ラット胎児初代細胞を永久増殖化する活性
が認められ(Colby,W.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,
79:p.5189(1982))、さらに、永久増殖性の株化Rat−
1細胞を完全にトランスフォームする活性も示された
(Clayton,C.et al.,Nature,299:p.59(1982))。これ
らのウイルスによる細胞のトランスフォーメーションに
は2種類の癌遺伝子とそれにより発現される因子が関与
しており、1つは初代培養細胞に永久増殖性を付与する
因子、他の1つは永久増殖化された細胞をトランスフォ
ームする因子に分類される。SV40の場合は大型T抗原遺
伝子が必要な2種の機能を有していることが明かとなっ
ている(Fujinaga,K.Oncologia,8:p.127(1984))。
NA断片には、ラット胎児初代細胞を永久増殖化する活性
が認められ(Colby,W.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,
79:p.5189(1982))、さらに、永久増殖性の株化Rat−
1細胞を完全にトランスフォームする活性も示された
(Clayton,C.et al.,Nature,299:p.59(1982))。これ
らのウイルスによる細胞のトランスフォーメーションに
は2種類の癌遺伝子とそれにより発現される因子が関与
しており、1つは初代培養細胞に永久増殖性を付与する
因子、他の1つは永久増殖化された細胞をトランスフォ
ームする因子に分類される。SV40の場合は大型T抗原遺
伝子が必要な2種の機能を有していることが明かとなっ
ている(Fujinaga,K.Oncologia,8:p.127(1984))。
しかしながら、ヒト細胞の不死化は極めて困難であ
り、とりわけヒトあるいはチンパンジー等の高等霊長動
物の肝細胞に対してはそのような報告を見い出すことは
できない。その困難さの原因は、1つには材料としての
高等霊長動物の正常肝組織の入手困難性と極めて少量の
肝組織からの肝細胞の分離技術の問題、他の1つは、腫
瘍ウイルスもしくはその癌遺伝子による、特性をできる
だけ維持した肝細胞、すなわちトランスフォームされる
ことのない分化型の不死化(immortalized)肝細胞を効
率よく得るための方法が見いだされていないという問題
である。
り、とりわけヒトあるいはチンパンジー等の高等霊長動
物の肝細胞に対してはそのような報告を見い出すことは
できない。その困難さの原因は、1つには材料としての
高等霊長動物の正常肝組織の入手困難性と極めて少量の
肝組織からの肝細胞の分離技術の問題、他の1つは、腫
瘍ウイルスもしくはその癌遺伝子による、特性をできる
だけ維持した肝細胞、すなわちトランスフォームされる
ことのない分化型の不死化(immortalized)肝細胞を効
率よく得るための方法が見いだされていないという問題
である。
後者においては、まず、下記のような肝細胞の特性そ
れ自体に起因する問題が含まれる。まず、肝細胞の持つ
多くの特異機能、例えば血清蛋白質の合成・分泌、肝特
異的蛋白(酵素)の合成、糖新生、尿素形成、脂質合
成、胆汁分泌、解毒は、肝細胞(実質細胞)がin vitro
の培養条件に置かれた時に急速に消失していく。このこ
とは、肝細胞がin vivoにおいて、多くの栄養素、神
経、ホルモンあるいは肝非実質細胞等によって高次に調
節されているという事実に基づいているものと推定され
る。さらに細胞間結合、密度、極性等も変化し本来の
“場”とは著しく異なった環境に置かれたことに依るも
のとも考えられる。
れ自体に起因する問題が含まれる。まず、肝細胞の持つ
多くの特異機能、例えば血清蛋白質の合成・分泌、肝特
異的蛋白(酵素)の合成、糖新生、尿素形成、脂質合
成、胆汁分泌、解毒は、肝細胞(実質細胞)がin vitro
の培養条件に置かれた時に急速に消失していく。このこ
とは、肝細胞がin vivoにおいて、多くの栄養素、神
経、ホルモンあるいは肝非実質細胞等によって高次に調
節されているという事実に基づいているものと推定され
る。さらに細胞間結合、密度、極性等も変化し本来の
“場”とは著しく異なった環境に置かれたことに依るも
のとも考えられる。
次に、肝細胞への癌遺伝子の組込みの困難性の問題で
ある。腫瘍ウイルス、例えばサルのSV40の細胞に感染さ
せると、許容細胞、例えばサル由来細胞では子ウイルス
が産生され細胞は死滅する。一方、ラットあるいはマウ
ス由来の細胞(非許容細胞)にSV40を感染させた場合、
ウイルスDNAの複製は起こらず細胞は死滅しない。そし
て、その中の限られたごく一部の細胞のみが永久増殖化
さらにはトランスフォームされる。これはウイルスDNA
が細胞の遺伝子へ組込まれ、ウイルスの初期遺伝子のみ
が発現し、そのトランスフォーム活性が働くためと考え
られる。ヒトの細胞の場合、SV40に対しては準許容性を
示す。つまり、ウイルス粒子産生は約1%の細胞で起こ
り、1〜2%の細胞でウイルスDNAの複製が生じる。し
たがって、ウイルス粒子あるいはDNA複製の可能性を伴
わず、細胞を不死化あるいはトランスフォームする目的
には合致しにくい。
ある。腫瘍ウイルス、例えばサルのSV40の細胞に感染さ
せると、許容細胞、例えばサル由来細胞では子ウイルス
が産生され細胞は死滅する。一方、ラットあるいはマウ
ス由来の細胞(非許容細胞)にSV40を感染させた場合、
ウイルスDNAの複製は起こらず細胞は死滅しない。そし
て、その中の限られたごく一部の細胞のみが永久増殖化
さらにはトランスフォームされる。これはウイルスDNA
が細胞の遺伝子へ組込まれ、ウイルスの初期遺伝子のみ
が発現し、そのトランスフォーム活性が働くためと考え
られる。ヒトの細胞の場合、SV40に対しては準許容性を
示す。つまり、ウイルス粒子産生は約1%の細胞で起こ
り、1〜2%の細胞でウイルスDNAの複製が生じる。し
たがって、ウイルス粒子あるいはDNA複製の可能性を伴
わず、細胞を不死化あるいはトランスフォームする目的
には合致しにくい。
この問題を解決するために、初期遺伝子そのものを細
胞に挿入する方法が試みられている。しかしながら、ト
ランスフェクションの効率は極めて低く、しかも、とり
わけ初代培養肝細胞においては細胞へのダメージが極め
て大きい。従って、例えば、本発明に示されるようなベ
クターウイルス等を用いる技術を応用するような、効率
的な癌遺伝子の組込みが要求される。
胞に挿入する方法が試みられている。しかしながら、ト
ランスフェクションの効率は極めて低く、しかも、とり
わけ初代培養肝細胞においては細胞へのダメージが極め
て大きい。従って、例えば、本発明に示されるようなベ
クターウイルス等を用いる技術を応用するような、効率
的な癌遺伝子の組込みが要求される。
以上のような背景によって、肝細胞の効率的な不死化
のためには、効率的な肝細胞の分離技術、癌遺伝子の組
込みのためのベクター系の確立、肝細胞の機能維持と増
殖のための培養方法の3つが充足されなければならな
い。そのうえ、さらにそれらの効率的な組み合せが重要
である。本発明を利用することにより、これらの問題を
好適に解決することができる。
のためには、効率的な肝細胞の分離技術、癌遺伝子の組
込みのためのベクター系の確立、肝細胞の機能維持と増
殖のための培養方法の3つが充足されなければならな
い。そのうえ、さらにそれらの効率的な組み合せが重要
である。本発明を利用することにより、これらの問題を
好適に解決することができる。
発明の目的 本発明は、特異機能をできるだけ維持したまま、安定
的な培養が可能で、肝細胞特異的ヒトウイルスに感染さ
れうる霊長類の肝細胞および当該細胞を調製する方法を
提供することを第一義的な目的とする。この目的を達成
することによって、肝細胞特異的なウイルスの培養、ひ
いては該ウイルスに由来するワクチンの製造を容易に行
なうことが可能となる。
的な培養が可能で、肝細胞特異的ヒトウイルスに感染さ
れうる霊長類の肝細胞および当該細胞を調製する方法を
提供することを第一義的な目的とする。この目的を達成
することによって、肝細胞特異的なウイルスの培養、ひ
いては該ウイルスに由来するワクチンの製造を容易に行
なうことが可能となる。
本件発明のもう1つの主要な目的は、細胞のウイルス
感染で産生されるウイルス特異的抗原、およびウイルス
因子に感染されたヒトあるいはサル血清中のウイルス特
異的抗体を検出するための検出系としての抗原を提供す
ることのできる細胞を供給することである。
感染で産生されるウイルス特異的抗原、およびウイルス
因子に感染されたヒトあるいはサル血清中のウイルス特
異的抗体を検出するための検出系としての抗原を提供す
ることのできる細胞を供給することである。
代謝研究、発癌現象の研究等において、初代培養細胞
に代わる安定な不死化肝細胞を調製することも本件発明
の他の重要な目的である。さらにもう一つの目的は、肝
細胞特異的なタンパクを発現し産生するための組換え体
としての細胞を調製することである。
に代わる安定な不死化肝細胞を調製することも本件発明
の他の重要な目的である。さらにもう一つの目的は、肝
細胞特異的なタンパクを発現し産生するための組換え体
としての細胞を調製することである。
本発明のこれらの目的および特徴は、本発明の以下の
詳細な記述から、より充分に明らかとなろう。
詳細な記述から、より充分に明らかとなろう。
発明の構成 上述(本発明が解決しようとする問題点)のように、
ヒトあるいは非ヒト霊長類の肝細胞を効率的に不死化す
るためには次のような要件を満たさなければならない。
ヒトあるいは非ヒト霊長類の肝細胞を効率的に不死化す
るためには次のような要件を満たさなければならない。
極めて少量のヒトあるいは非ヒト霊長類の肝組織から
充分量の肝実質細胞を得る方法。
充分量の肝実質細胞を得る方法。
極めて少量の肝細胞に効率的に癌遺伝子を挿入する方
法。
法。
癌遺伝子が組込まれた肝細胞を、その特異機能を維持
させたまま効率的、且つ充分に増殖相へ移行させるため
の培養方法。
させたまま効率的、且つ充分に増殖相へ移行させるため
の培養方法。
以上三つの要素を充足させるための効率的な組み合せ
方法。
方法。
本発明は、これらのすべての要件を下記の構成により
充分に満足させることができる。
充分に満足させることができる。
(1)肝細胞の分離・精製 不死化肝細胞を作製する基となる細胞は、ヒトあるい
はヒト以外の高等霊長類の肝組織より分離しうる肝実質
細胞である。ヒト以外の霊長類とは、関心のあるウイル
ス、例えばHNANBウイルスの感染において、ヒトと同様
の反応を示す例えばチンパンジーのような類人霊長類を
含む。上記細胞を、正常肝組織、あるいは関心のあるウ
イルス、例えばHNANBウイルスで感染させた肝組織から
分離する。
はヒト以外の高等霊長類の肝組織より分離しうる肝実質
細胞である。ヒト以外の霊長類とは、関心のあるウイル
ス、例えばHNANBウイルスの感染において、ヒトと同様
の反応を示す例えばチンパンジーのような類人霊長類を
含む。上記細胞を、正常肝組織、あるいは関心のあるウ
イルス、例えばHNANBウイルスで感染させた肝組織から
分離する。
一般に、ラットやイヌ等、実験目的の屠殺可能な動物
においては、細胞分離の方法としてin situのコラゲナ
ーゼ灌流法により、目的とする肝実質細胞(肝細胞)を
容易に調製することができる(Seglen,P.O.Exp.Cell Re
s.82:391(1973))。しかしながら、多くの霊長類、特
にヒトにおいては、肝臓を新鮮な状態で器官として入手
することは困難であり、従って、極めて少量の肝組織
(多くの場合1グラム以下の組織)から、より多くの肝
細胞を分離する方法が切望される。本発明の第1の特長
は、このような肝細胞の効率的な分離方法を与えるもの
である。
においては、細胞分離の方法としてin situのコラゲナ
ーゼ灌流法により、目的とする肝実質細胞(肝細胞)を
容易に調製することができる(Seglen,P.O.Exp.Cell Re
s.82:391(1973))。しかしながら、多くの霊長類、特
にヒトにおいては、肝臓を新鮮な状態で器官として入手
することは困難であり、従って、極めて少量の肝組織
(多くの場合1グラム以下の組織)から、より多くの肝
細胞を分離する方法が切望される。本発明の第1の特長
は、このような肝細胞の効率的な分離方法を与えるもの
である。
本発明による肝細胞の分離方法は、まず外科的に切除
された肝組織を脱血するために、カニューラのような柔
軟な材質のチューブでEGTA(エチレングリコール−ビス
(β−アミノエチルエーテル)−N,N,N′,N′−四酢
酸)溶液を血管に注入することにより開始され、次いで
コラゲナーゼ、さらにはディスパーゼのような細胞間物
質を消化する酵素を注入して、組織をメスで細切するこ
となく効率的に肝実質細胞を分離するという特徴を有す
るものである。従って、本発明の当該技術は、ヒトある
いはヒト以外の霊長類の肝臓のように、結合組織の発達
した組織より細胞を分離する際に極めて有用である。
された肝組織を脱血するために、カニューラのような柔
軟な材質のチューブでEGTA(エチレングリコール−ビス
(β−アミノエチルエーテル)−N,N,N′,N′−四酢
酸)溶液を血管に注入することにより開始され、次いで
コラゲナーゼ、さらにはディスパーゼのような細胞間物
質を消化する酵素を注入して、組織をメスで細切するこ
となく効率的に肝実質細胞を分離するという特徴を有す
るものである。従って、本発明の当該技術は、ヒトある
いはヒト以外の霊長類の肝臓のように、結合組織の発達
した組織より細胞を分離する際に極めて有用である。
(2)分離肝細胞への永久増殖性の賦与 本発明の原理は次のように説明される。
従来の技術の項で述べたように、種々の癌遺伝子は細
胞を不死化またはトランスフォームすることが知られて
いる。そこで、これらの癌遺伝子を初代培養細胞に組入
れて、その発現タンパクによって細胞に永久増殖性を付
与し、さらにこれらの細胞をトランスフォームすること
が可能となる。しかしながら、前述のように、癌遺伝子
そのものを物理的移入法(リン酸カルシウム法、DEAEデ
キストラン法、電気穿孔法等)によってDNA断片あるい
はプラスミドの形態で肝細胞に挿入する方法は、細胞へ
のダメージあるいはトランスフェクション効率の観点か
ら極めて不利である。
胞を不死化またはトランスフォームすることが知られて
いる。そこで、これらの癌遺伝子を初代培養細胞に組入
れて、その発現タンパクによって細胞に永久増殖性を付
与し、さらにこれらの細胞をトランスフォームすること
が可能となる。しかしながら、前述のように、癌遺伝子
そのものを物理的移入法(リン酸カルシウム法、DEAEデ
キストラン法、電気穿孔法等)によってDNA断片あるい
はプラスミドの形態で肝細胞に挿入する方法は、細胞へ
のダメージあるいはトランスフェクション効率の観点か
ら極めて不利である。
アデノウイルスはその感染域が非常に広く、ほとんど
の培養細胞(初代培養、株化細胞)に感染しうることが
知られている。本件発明者等はアデノウイルス5型にSV
40大型T遺伝子を組込んだ組換えウイルスを構築し、こ
のウイルスをヒトの繊維芽細胞に感染させ、効率的にト
ランスフォームすることに成功した(Gluzman,Y Mol.Ce
ll.Biol.4:1653−1656,1984)。さらに本件発明におい
て、これを利用して、初代培養細胞の永久増殖化、とり
わけ肝細胞のようなin vitroでは殆ど増殖不可能な細胞
への永久増殖性の付加を試みた。
の培養細胞(初代培養、株化細胞)に感染しうることが
知られている。本件発明者等はアデノウイルス5型にSV
40大型T遺伝子を組込んだ組換えウイルスを構築し、こ
のウイルスをヒトの繊維芽細胞に感染させ、効率的にト
ランスフォームすることに成功した(Gluzman,Y Mol.Ce
ll.Biol.4:1653−1656,1984)。さらに本件発明におい
て、これを利用して、初代培養細胞の永久増殖化、とり
わけ肝細胞のようなin vitroでは殆ど増殖不可能な細胞
への永久増殖性の付加を試みた。
前述のように、SV40大型T抗原は、初代細胞の永久増
殖化と当該増殖性細胞のトランスフォームという両方の
機能を有している。従って、人為的にSV40T抗原遺伝子
を組み込み、その発現によって永久増殖性を付与された
細胞は、不死化→トランスフォームの様々な段階に変異
を受けたものが得られる。癌細胞由来あるいは偶発的に
トランスフォームさた株化細胞の場合は、ある特定の未
熟化細胞クローンが高い増殖性を獲得したものであり、
満足される分化型の細胞を得ることは確率的に困難であ
る。
殖化と当該増殖性細胞のトランスフォームという両方の
機能を有している。従って、人為的にSV40T抗原遺伝子
を組み込み、その発現によって永久増殖性を付与された
細胞は、不死化→トランスフォームの様々な段階に変異
を受けたものが得られる。癌細胞由来あるいは偶発的に
トランスフォームさた株化細胞の場合は、ある特定の未
熟化細胞クローンが高い増殖性を獲得したものであり、
満足される分化型の細胞を得ることは確率的に困難であ
る。
それゆえ、より目的に適った分化度の高い不死化細胞
を得るためには、前段階である効率的な細胞分離と、よ
り積極的な癌遺伝子の組込みが要求される。本件発明者
は鋭意研究を重ねた結果、この二つの点を充分に満足さ
せることができる本件発明を完成させるに至った。
を得るためには、前段階である効率的な細胞分離と、よ
り積極的な癌遺伝子の組込みが要求される。本件発明者
は鋭意研究を重ねた結果、この二つの点を充分に満足さ
せることができる本件発明を完成させるに至った。
本発明において使用される組換えウイルスは、肝細胞
に対して細胞を破壊するような生活環を示さないもので
あり、SV40T抗原のみが発現される。同様の機能を有す
る組換えウイルスの構築の際のベクターウイルスの系と
してはアデノウイルスの他にSV40、ポリオーマウイル
ス、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、ヘルペスウ
イルス等が考慮されうる。また、肝細胞に永久増殖性を
付与するための癌遺伝子としてはSV40T遺伝子の他にア
デノウイルスのE1、ポリオーマウイルスT、レトロウイ
ルスのv−onc等のウイルス癌遺伝子、正常細胞のc−m
yc、cH−ras等のc−oncの他に多くの癌遺伝子を利用す
ることができる。ベクターウイルス−癌遺伝子の様々な
組み合せによっては、本発明と同等あるいはそれ以上の
効果を上げうる可能性がある。しかし、それらはどの場
合においても本発明と原理的には同じものであり、すべ
て本発明に包含されるものであることは言うまでもな
い。
に対して細胞を破壊するような生活環を示さないもので
あり、SV40T抗原のみが発現される。同様の機能を有す
る組換えウイルスの構築の際のベクターウイルスの系と
してはアデノウイルスの他にSV40、ポリオーマウイル
ス、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、ヘルペスウ
イルス等が考慮されうる。また、肝細胞に永久増殖性を
付与するための癌遺伝子としてはSV40T遺伝子の他にア
デノウイルスのE1、ポリオーマウイルスT、レトロウイ
ルスのv−onc等のウイルス癌遺伝子、正常細胞のc−m
yc、cH−ras等のc−oncの他に多くの癌遺伝子を利用す
ることができる。ベクターウイルス−癌遺伝子の様々な
組み合せによっては、本発明と同等あるいはそれ以上の
効果を上げうる可能性がある。しかし、それらはどの場
合においても本発明と原理的には同じものであり、すべ
て本発明に包含されるものであることは言うまでもな
い。
本発明の特長を充分に発揮させるためには、さらに以
下の2つの要件に留意すべきであり、それは後述の実施
例3によっても示される。
下の2つの要件に留意すべきであり、それは後述の実施
例3によっても示される。
第1には、組換えウイルスを肝細胞に感染させる際の
方法に関するものである。一般的に、培養細胞は通常の
ウイルス吸着方法によっては殆どダメージを受けずに、
効率的にウイルス吸着が起こる。しかしながら、肝細胞
とりわけ単層で初代培養されたものは極めて低率でしか
感染しない。本発明において、これを満足させる方法と
して、分離直後の肝細胞を浮遊(懸濁)状態で組換えウ
イルスによって感染(吸着)させるという方法が開発さ
れた。
方法に関するものである。一般的に、培養細胞は通常の
ウイルス吸着方法によっては殆どダメージを受けずに、
効率的にウイルス吸着が起こる。しかしながら、肝細胞
とりわけ単層で初代培養されたものは極めて低率でしか
感染しない。本発明において、これを満足させる方法と
して、分離直後の肝細胞を浮遊(懸濁)状態で組換えウ
イルスによって感染(吸着)させるという方法が開発さ
れた。
第2に、組換えウイルスによって感染された肝細胞
は、それが立体的(三次元的)にコラーゲン、フィブロ
ネクチン、ラミニン、プロテオグリカン等からなるゲル
のような細胞間マトリックス中で培養されることで、単
層(平面的)で培養された場合よりも極めて効率的に不
死化肝細胞の誘起に寄与することが示された。これらの
2つの方法は、組換えウイルスによる癌遺伝子の発現
と、その後の肝細胞の増殖(分裂)誘起と安定化に極め
て大きな効果を示した。
は、それが立体的(三次元的)にコラーゲン、フィブロ
ネクチン、ラミニン、プロテオグリカン等からなるゲル
のような細胞間マトリックス中で培養されることで、単
層(平面的)で培養された場合よりも極めて効率的に不
死化肝細胞の誘起に寄与することが示された。これらの
2つの方法は、組換えウイルスによる癌遺伝子の発現
と、その後の肝細胞の増殖(分裂)誘起と安定化に極め
て大きな効果を示した。
(2)不死化肝細胞の選抜 肝細胞特異的ウイルスの不死化肝細胞への感染性の検
討に先立って、該不死化肝細胞が、肝臓、とりわけ肝実
質細胞の分泌する肝特異的タンパクを分泌する能力に関
して確認することは意義深い。
討に先立って、該不死化肝細胞が、肝臓、とりわけ肝実
質細胞の分泌する肝特異的タンパクを分泌する能力に関
して確認することは意義深い。
例えば、アルブミン分泌能の高い細胞は、より生来の
肝細胞としての性質を維持している永久増殖性性を付与
された肝細胞であり、従って、肝細胞特異性の高いウイ
ルスに対する受容体もまた維持していると考えることが
できるからである。
肝細胞としての性質を維持している永久増殖性性を付与
された肝細胞であり、従って、肝細胞特異性の高いウイ
ルスに対する受容体もまた維持していると考えることが
できるからである。
ヒトおよび非ヒト霊長類における分泌タンパク間に構
造上密接な関係があるため、ヒト血清アルブミン(以
下、HSAと称する)のようなヒト分泌タンパクに特異的
な抗体は、対応するヒト以外の霊長類の分泌タンパクの
分析にも用いることができる。不死化肝細胞の培地中に
おけるHSAのような分泌タンパクの存在は、酵素結合免
疫分析(以下、ELISAと称する)等の手段により確認さ
れた。
造上密接な関係があるため、ヒト血清アルブミン(以
下、HSAと称する)のようなヒト分泌タンパクに特異的
な抗体は、対応するヒト以外の霊長類の分泌タンパクの
分析にも用いることができる。不死化肝細胞の培地中に
おけるHSAのような分泌タンパクの存在は、酵素結合免
疫分析(以下、ELISAと称する)等の手段により確認さ
れた。
一般的には、まず、検出しようとするHSAに対する抗
体(免疫動物血清)を固相化し、次に検体(培養上清)
を加え一定時間反応させる。洗浄後、HSAに対する抗体
に発色系としての酵素(例えばパーオキシダーゼのよう
な)を結合させたコンジュゲートを反応させ、発色指示
薬中で発色させる。発色の度合によって、当該不死化肝
細胞のアルブミン分泌能を測定することができる。
体(免疫動物血清)を固相化し、次に検体(培養上清)
を加え一定時間反応させる。洗浄後、HSAに対する抗体
に発色系としての酵素(例えばパーオキシダーゼのよう
な)を結合させたコンジュゲートを反応させ、発色指示
薬中で発色させる。発色の度合によって、当該不死化肝
細胞のアルブミン分泌能を測定することができる。
(4)ウイルス感染性 本発明が提供する重要な利点の1つは、不死化肝細胞
が、これまで培養によって増殖させることができなかっ
たヒトあるいはヒト以外の霊長類の組織特異的ウイル
ス、例えば肝細胞特異的なHBウイルスあるいHNANBウイ
ルスの感染可能な宿主として利用できることにある。A
型肝炎(以下、HAと称する)ウイルスもまた、近年、肝
細胞以外の細胞系において培養が可能となったものの、
本来は肝細胞特異的なウイルスであることが多くの証拠
によって明らかにされている(Ashida,M.et al.,J.Gen.
Virol.,70:p.2487(1989))。従って、これら3種類の
ウイルスの該不死化肝細胞での感染性を示すことは、本
発明のより高い有用性を裏付けることになる。
が、これまで培養によって増殖させることができなかっ
たヒトあるいはヒト以外の霊長類の組織特異的ウイル
ス、例えば肝細胞特異的なHBウイルスあるいHNANBウイ
ルスの感染可能な宿主として利用できることにある。A
型肝炎(以下、HAと称する)ウイルスもまた、近年、肝
細胞以外の細胞系において培養が可能となったものの、
本来は肝細胞特異的なウイルスであることが多くの証拠
によって明らかにされている(Ashida,M.et al.,J.Gen.
Virol.,70:p.2487(1989))。従って、これら3種類の
ウイルスの該不死化肝細胞での感染性を示すことは、本
発明のより高い有用性を裏付けることになる。
一般的には、ウイルス感染の方法は、まず活性のある
既知のウイルスで細胞を感染させ、1週間から数週間に
わたるインキュベーションの間に、ウイルス増殖の有無
について細胞を分析し検出する。
既知のウイルスで細胞を感染させ、1週間から数週間に
わたるインキュベーションの間に、ウイルス増殖の有無
について細胞を分析し検出する。
典型的には細胞を単層培養し、ウイルス接種前に培地
を除き、細胞が浸る程度の少量のウイルス液を加え保温
し細胞に吸着させる。ウイルスの増殖によって引き起こ
される細胞の変化は、容易に且つ明白に検出される細胞
変化であり、例えば、細胞溶解、多核化、凝集のような
細胞変性効果(CPE)として観察される。あるいはま
た、ウイルス増殖の結果として発現されるウイルス特異
的表面抗原または細胞内抗原あるいは細胞外抗原の存在
によって決定される。実施例6において、HAウイルスを
感染させた不死化肝細胞を分析することについて例証さ
れる。また、HAウイルスが感染可能な不死化肝細胞は、
HBウイルスおよびHNANBウイルスも感染し得ることが明
らかとなった。
を除き、細胞が浸る程度の少量のウイルス液を加え保温
し細胞に吸着させる。ウイルスの増殖によって引き起こ
される細胞の変化は、容易に且つ明白に検出される細胞
変化であり、例えば、細胞溶解、多核化、凝集のような
細胞変性効果(CPE)として観察される。あるいはま
た、ウイルス増殖の結果として発現されるウイルス特異
的表面抗原または細胞内抗原あるいは細胞外抗原の存在
によって決定される。実施例6において、HAウイルスを
感染させた不死化肝細胞を分析することについて例証さ
れる。また、HAウイルスが感染可能な不死化肝細胞は、
HBウイルスおよびHNANBウイルスも感染し得ることが明
らかとなった。
以下、本発明の特徴を明らかにするために、実施例に
沿って詳述するが、これらの実施例は本発明の種々の具
体例を説明するものであって、本発明はこれらの実施例
に限定されるものではない。
沿って詳述するが、これらの実施例は本発明の種々の具
体例を説明するものであって、本発明はこれらの実施例
に限定されるものではない。
実施例1.肝細胞の分離 外科的処置により摘出されたヒト肝組織を、できるだ
け短時間のうちに氷冷した前灌流液をその切断面の血管
より注入し脱血した。前灌流液の組成は、Seglenの方法
に従ったEGTAを含むHanks緩衝液を用いた。脱血した肝
組織を氷冷した培養液(Williams E培地、大日本製薬)
に浸し、実験室に搬入した。無菌フード内で、37℃に暖
めた前灌流液を該肝組織に対して切断面の血管より、ペ
リスタリック・ポンプを用いてカニューレーションによ
って注入した。7〜10ml/minの流速で約20分間注入した
後、液を1000unit/mlディスパーゼを含む0.05%コラゲ
ナーゼ液に代え消化した。約10分後、組織表面の粘性が
増加したところで、液をディスパーゼを含有しない0.05
%コラゲナーゼ液に代え、さらに20〜30分間消化を続け
ると、肝小葉が浮き上がって内部がドロドロになり、血
管も不明瞭になった。そこで、掌で組織を解してやり、
消化され流出した細胞をシャーレで受け止めた。この方
法によると、未消化の組織はわずかな結合組織だけであ
り、メスで細切する必要が全くなかった。消化された細
胞を、三重のガーゼを施した細胞過器で過した後、
非実質細胞、細胞破片、損傷肝細胞および赤血球等を除
くために、50×g、2分間の低速遠心操作を行ない、上
清を廃棄した。細胞沈渣に培地を加え、遠心を3回繰り
返し、細胞数を測定した。トリパンブルー排除による細
胞生存率は常に90%を越え、細胞収量も肝臓1g当り約10
7個以上の肝細胞が得られた。
け短時間のうちに氷冷した前灌流液をその切断面の血管
より注入し脱血した。前灌流液の組成は、Seglenの方法
に従ったEGTAを含むHanks緩衝液を用いた。脱血した肝
組織を氷冷した培養液(Williams E培地、大日本製薬)
に浸し、実験室に搬入した。無菌フード内で、37℃に暖
めた前灌流液を該肝組織に対して切断面の血管より、ペ
リスタリック・ポンプを用いてカニューレーションによ
って注入した。7〜10ml/minの流速で約20分間注入した
後、液を1000unit/mlディスパーゼを含む0.05%コラゲ
ナーゼ液に代え消化した。約10分後、組織表面の粘性が
増加したところで、液をディスパーゼを含有しない0.05
%コラゲナーゼ液に代え、さらに20〜30分間消化を続け
ると、肝小葉が浮き上がって内部がドロドロになり、血
管も不明瞭になった。そこで、掌で組織を解してやり、
消化され流出した細胞をシャーレで受け止めた。この方
法によると、未消化の組織はわずかな結合組織だけであ
り、メスで細切する必要が全くなかった。消化された細
胞を、三重のガーゼを施した細胞過器で過した後、
非実質細胞、細胞破片、損傷肝細胞および赤血球等を除
くために、50×g、2分間の低速遠心操作を行ない、上
清を廃棄した。細胞沈渣に培地を加え、遠心を3回繰り
返し、細胞数を測定した。トリパンブルー排除による細
胞生存率は常に90%を越え、細胞収量も肝臓1g当り約10
7個以上の肝細胞が得られた。
ヒト肝細胞の他に、チンパンジーおよびカニクイザル
の肝細胞も同様の方法で分離した。本件発明の肝細胞分
離方法の特徴は、ヒトのような入手の困難な肝組織か
ら、in situ灌流法を用いることなく極めて簡易に新鮮
な肝細胞を与えることである。本方法によって得られた
肝細胞は、その際だった収率およびダメージの少なさの
ために、次の工程である組換えウイルスによる不死化あ
るいは他の目的のための初代培養に極めて良好な結果を
与えることができる。
の肝細胞も同様の方法で分離した。本件発明の肝細胞分
離方法の特徴は、ヒトのような入手の困難な肝組織か
ら、in situ灌流法を用いることなく極めて簡易に新鮮
な肝細胞を与えることである。本方法によって得られた
肝細胞は、その際だった収率およびダメージの少なさの
ために、次の工程である組換えウイルスによる不死化あ
るいは他の目的のための初代培養に極めて良好な結果を
与えることができる。
実施例 2.Ad5SVR4の感染および該組換えウイルスによ
って増殖を刺激された肝細胞の培養方法 実施例1の方法により分離、精製された肝細胞を、下
記に示す方法により不死化した。
って増殖を刺激された肝細胞の培養方法 実施例1の方法により分離、精製された肝細胞を、下
記に示す方法により不死化した。
組換えウイルスAd5SVR4(Gluzman,Y Mol,Cell.Biol.
4:1653−1656,1984参照)の細胞への感染方法は、少な
くとも2つの方法で行なうことができた。一般的には、
まず遠心後の分離肝細胞を単層培養することで開始され
る。細胞を、牛胎児血清10%を含有するウイリアムE培
地(ホルモン、例えばインシュリンやデキサメサゾン
等、さらに増殖因子、例えばEGFを添加することがより
好ましい)に懸濁し、2×104〜2×105/cm2に調整して
培養皿に播種した。培養後、典型的には1〜7日後、好
ましくは約2日後に、上述の組換えウイルスをMOI 0.01
〜100で接種した。該ウイルスは、293細胞(ATCC、CRL
−1573)で増殖され、得られた約109PFUの培養上清を希
釈して用いた。該ウイルスの吸着方法はウイルス学で一
般的に用いられる方法に従った。すなわち、ウイルス接
種前の単層培養細胞を血清不含の培地で約3回洗浄し、
該ウイルス液を加え、30〜120分間インキュベートし
た。ウイルス液を除去後、さらに無血清培地で約2回洗
浄し、前述の血清含有の培地を加え、CO2インキュベー
ター(37℃、5%CO2)内で培養した。
4:1653−1656,1984参照)の細胞への感染方法は、少な
くとも2つの方法で行なうことができた。一般的には、
まず遠心後の分離肝細胞を単層培養することで開始され
る。細胞を、牛胎児血清10%を含有するウイリアムE培
地(ホルモン、例えばインシュリンやデキサメサゾン
等、さらに増殖因子、例えばEGFを添加することがより
好ましい)に懸濁し、2×104〜2×105/cm2に調整して
培養皿に播種した。培養後、典型的には1〜7日後、好
ましくは約2日後に、上述の組換えウイルスをMOI 0.01
〜100で接種した。該ウイルスは、293細胞(ATCC、CRL
−1573)で増殖され、得られた約109PFUの培養上清を希
釈して用いた。該ウイルスの吸着方法はウイルス学で一
般的に用いられる方法に従った。すなわち、ウイルス接
種前の単層培養細胞を血清不含の培地で約3回洗浄し、
該ウイルス液を加え、30〜120分間インキュベートし
た。ウイルス液を除去後、さらに無血清培地で約2回洗
浄し、前述の血清含有の培地を加え、CO2インキュベー
ター(37℃、5%CO2)内で培養した。
本発明に特徴的な該ウイルスの第2の感染方法は、分
離肝細胞に直接、該ウイルスを加えることにより開始さ
れた。遠心後の細胞106〜5×107に該ウイルス液をMOI
0.01〜100となるように加え、細胞を懸濁した。室温な
いしは37℃で30〜120分間ウイルスを吸着させた後、前
述の遠心条件で細胞を沈め、上清すなわちウイルス液を
廃棄した。同様の方法で2回洗浄した細胞を、次の3つ
の培養方法により培養した。
離肝細胞に直接、該ウイルスを加えることにより開始さ
れた。遠心後の細胞106〜5×107に該ウイルス液をMOI
0.01〜100となるように加え、細胞を懸濁した。室温な
いしは37℃で30〜120分間ウイルスを吸着させた後、前
述の遠心条件で細胞を沈め、上清すなわちウイルス液を
廃棄した。同様の方法で2回洗浄した細胞を、次の3つ
の培養方法により培養した。
第1の方法では、処理細胞を上記の方法すなわち単層
培養に供した。第2および第3の方法では、処理細胞を
コラーゲン・ゲル上またはゲル内での包埋培養に供し
た。コラーゲン・ゲルは、新田ゼラチン社製セルマトリ
ックス−1Aを用い、同社の使用方法に準じ作製した。ま
ず、0.3%セルマトリックス−1A、10倍濃度ウイリアム
E培地(抗生物質含有)、緩衝液(0.05N NaOH 100ml
に対し、NaHCO32.2g、HAPES 4.77g溶かし、過滅菌し
たもの)を冷却しながら、8:1:1の割合で混合し、さら
にホルモン、増殖因子等を加えた牛胎児血清を最終濃度
10%となるように添加した。
培養に供した。第2および第3の方法では、処理細胞を
コラーゲン・ゲル上またはゲル内での包埋培養に供し
た。コラーゲン・ゲルは、新田ゼラチン社製セルマトリ
ックス−1Aを用い、同社の使用方法に準じ作製した。ま
ず、0.3%セルマトリックス−1A、10倍濃度ウイリアム
E培地(抗生物質含有)、緩衝液(0.05N NaOH 100ml
に対し、NaHCO32.2g、HAPES 4.77g溶かし、過滅菌し
たもの)を冷却しながら、8:1:1の割合で混合し、さら
にホルモン、増殖因子等を加えた牛胎児血清を最終濃度
10%となるように添加した。
ゲル化前のマトリックス溶液を速やかに直径35mmまた
は60mmのプラスチック製の培養皿に注ぎ、37℃で10〜20
分間静置しゲル化させ、ゲル化したセルマトリックス上
に、処理細胞すなわち該ウイルス接種細胞を2×104〜
2×105/cm2の濃度で播種した。または、処理細胞をゲ
ル化前のマトリックスに懸濁しゲル化マトリックス上に
重層した。さらにゲル化後、完全培地を加え、2〜4
日、好ましくは3日毎にゲル上の培地を全量交換し維持
した。
は60mmのプラスチック製の培養皿に注ぎ、37℃で10〜20
分間静置しゲル化させ、ゲル化したセルマトリックス上
に、処理細胞すなわち該ウイルス接種細胞を2×104〜
2×105/cm2の濃度で播種した。または、処理細胞をゲ
ル化前のマトリックスに懸濁しゲル化マトリックス上に
重層した。さらにゲル化後、完全培地を加え、2〜4
日、好ましくは3日毎にゲル上の培地を全量交換し維持
した。
実施例 3.増殖細胞コロニーの単離および継代 単層培養したウイルス感染肝細胞の場合、培養後7〜
10日目に接着した細胞が徐々に剥離し始めたが、3〜6
週後には1個の細胞から増殖したコロニーが多数観察さ
れるようになった。増殖したコロニーは主に次の2つの
方法で単離された。内径3〜8mmのステンレス製シリ
ンダーの一端にシリコングリースを塗布し、分離しよう
とするコロニーの周りを囲む。シリンダー内部の培地を
除去し、細胞消化液(0.05%トリプシン、0.02%EDTAを
含むリン酸緩衝溶液)を少量加え37℃で約5分間保温す
る。完全培地を加え軽くピペッティングし、別の培養
皿、例えば24ウェルプレートに移す。増殖コロニーの
観察される培養皿を顕微鏡で観察しながら、パスツール
ピペットを駆使してコロニーを注意深く剥ぎ取る。シー
ト状に剥離したコロニーを別の培養皿に移す。
10日目に接着した細胞が徐々に剥離し始めたが、3〜6
週後には1個の細胞から増殖したコロニーが多数観察さ
れるようになった。増殖したコロニーは主に次の2つの
方法で単離された。内径3〜8mmのステンレス製シリ
ンダーの一端にシリコングリースを塗布し、分離しよう
とするコロニーの周りを囲む。シリンダー内部の培地を
除去し、細胞消化液(0.05%トリプシン、0.02%EDTAを
含むリン酸緩衝溶液)を少量加え37℃で約5分間保温す
る。完全培地を加え軽くピペッティングし、別の培養
皿、例えば24ウェルプレートに移す。増殖コロニーの
観察される培養皿を顕微鏡で観察しながら、パスツール
ピペットを駆使してコロニーを注意深く剥ぎ取る。シー
ト状に剥離したコロニーを別の培養皿に移す。
上記の2つの方法で単離されたコロニーはウェル内で
単層状に増殖し、約1〜4週間でウェル全体に広がっ
た。充分に増殖したところで、培地を除去し細胞消化液
を加えて37℃で約5分間保温し、細胞を培養皿より剥離
した。完全培地を加えピペッティングし、別の培養皿、
例えば6ウェルプレートに移した。さらに数日後ウェル
全体に細胞が増殖したところで、同様の方法で細胞を継
代し、この操作を繰り返し行なった。
単層状に増殖し、約1〜4週間でウェル全体に広がっ
た。充分に増殖したところで、培地を除去し細胞消化液
を加えて37℃で約5分間保温し、細胞を培養皿より剥離
した。完全培地を加えピペッティングし、別の培養皿、
例えば6ウェルプレートに移した。さらに数日後ウェル
全体に細胞が増殖したところで、同様の方法で細胞を継
代し、この操作を繰り返し行なった。
コラーゲン・ゲル内もしくはゲル上で培養したウイル
ス感染肝細胞の場合、培養の経過に伴って細胞が離脱す
るという現象は見られなかった。しかし単層培養の場合
と同様に、7〜10日目よりゲル内もしくはゲル上の細胞
は萎縮し不透明になるものがあり、このような細胞は死
滅したものと判断された。しかし、多くの細胞は3〜6
週後には肉眼で確認できるほどの増殖コロニーを形成
し、多くの場合、ゲル内で増殖したコロニーは直径0.5
〜1mmの球形にまで発達した。しかし、それ以上の大き
さに成長してもコロニー内部が壊死を起こしてしまうた
め、この時期までに継代を行なうことが好ましいと思わ
れた。
ス感染肝細胞の場合、培養の経過に伴って細胞が離脱す
るという現象は見られなかった。しかし単層培養の場合
と同様に、7〜10日目よりゲル内もしくはゲル上の細胞
は萎縮し不透明になるものがあり、このような細胞は死
滅したものと判断された。しかし、多くの細胞は3〜6
週後には肉眼で確認できるほどの増殖コロニーを形成
し、多くの場合、ゲル内で増殖したコロニーは直径0.5
〜1mmの球形にまで発達した。しかし、それ以上の大き
さに成長してもコロニー内部が壊死を起こしてしまうた
め、この時期までに継代を行なうことが好ましいと思わ
れた。
本発明の重要な特徴の一つは、このようなコラーゲン
・ゲルを用いた培養方法と、該ウイルスの感染を肝細胞
分離直後に行なう方法により、極めて効率的に肝細胞に
永久増殖性を付与することができるという点にある。こ
の重要な特徴は、高等な動物種ほど(例えばカニクイザ
ルよりもチンパンジー、さらにはヒトという順位で)そ
の効果は顕著であった。
・ゲルを用いた培養方法と、該ウイルスの感染を肝細胞
分離直後に行なう方法により、極めて効率的に肝細胞に
永久増殖性を付与することができるという点にある。こ
の重要な特徴は、高等な動物種ほど(例えばカニクイザ
ルよりもチンパンジー、さらにはヒトという順位で)そ
の効果は顕著であった。
まず、第1表によって、Ad5SVR4の肝細胞不死化への
高い有用性を示す。単相培養されたカニクイザル肝細胞
にAd5SVR4を様々なMOIで感染させ、増殖フォーカスの出
現を見た。原SV40ウイルスに比べて非常に高い出現率
(10-3)を示し、高率にSV40T遺伝子が肝細胞に組込ま
れていることが示された。
高い有用性を示す。単相培養されたカニクイザル肝細胞
にAd5SVR4を様々なMOIで感染させ、増殖フォーカスの出
現を見た。原SV40ウイルスに比べて非常に高い出現率
(10-3)を示し、高率にSV40T遺伝子が肝細胞に組込ま
れていることが示された。
第2表では、肝細胞の動物種による不死化効率の差を
示している。通常のウイルス吸着方法と単層培養方法の
場合、チンパンジー肝細胞は非常に低率にしか永久増殖
性は付与されなかった。ヒト肝細胞の場合も同様の結果
が示され、そこで、前述のような本発明に特徴的な方法
が考案された。第2表ではまた、Ad5SVR4感染法とSV40T
遺伝子のみのトランスフェクション法による効率の顕著
な差異も示している。ここで、pX−8はpUC118にori-の
SV40T遺伝子を組込んだプラミドである。
示している。通常のウイルス吸着方法と単層培養方法の
場合、チンパンジー肝細胞は非常に低率にしか永久増殖
性は付与されなかった。ヒト肝細胞の場合も同様の結果
が示され、そこで、前述のような本発明に特徴的な方法
が考案された。第2表ではまた、Ad5SVR4感染法とSV40T
遺伝子のみのトランスフェクション法による効率の顕著
な差異も示している。ここで、pX−8はpUC118にori-の
SV40T遺伝子を組込んだプラミドである。
第3表により、チンパンジーさらにはヒトの肝細胞に
おいても、前述のような2つの特徴的な方法の応用によ
って、非常に効率的に当該細胞を不死化できることが示
される。
おいても、前述のような2つの特徴的な方法の応用によ
って、非常に効率的に当該細胞を不死化できることが示
される。
コラーゲン・ゲルからのコロニーの単離および細胞の
継代は、コラーゲン・ゲルをコラゲナーゼで消化するこ
とにより行なわれた。ゲル消化のためのコラゲナーゼ
は、肝組織から肝細胞を分離する際の0.05%溶液が用い
られた。まず、ゲル上の培地をできるだけ取り除き、ゲ
ルと等量のコラゲナーゼ溶液を加えた。ゲル毎、別の容
器、例えば細胞消化用のフラスコに移し、37℃で30〜60
分間保温、攪拌するとゲルは消化されコロニーが露出し
た。コロニー内の細胞が解離される前に、例えばパスツ
ールピペットのようなものでコロニーを吸引した。該コ
ロニーを新しい培地に移して静置させることによりコロ
ニーを沈め、それにより洗浄を行なった。2〜3回の培
地交換後にコロニーを別の培養皿、例えば24ウェルプレ
ートに移しCO2インキュベーター内で静置した。1〜3
日内にコロニーは培養皿に接着し、周辺部より上皮性の
細胞の伸展が観察された。伸展した細胞は増殖し単層を
形成した。ウェル一杯に増殖したところで、単層培養の
継代方法に従って継代していった。
継代は、コラーゲン・ゲルをコラゲナーゼで消化するこ
とにより行なわれた。ゲル消化のためのコラゲナーゼ
は、肝組織から肝細胞を分離する際の0.05%溶液が用い
られた。まず、ゲル上の培地をできるだけ取り除き、ゲ
ルと等量のコラゲナーゼ溶液を加えた。ゲル毎、別の容
器、例えば細胞消化用のフラスコに移し、37℃で30〜60
分間保温、攪拌するとゲルは消化されコロニーが露出し
た。コロニー内の細胞が解離される前に、例えばパスツ
ールピペットのようなものでコロニーを吸引した。該コ
ロニーを新しい培地に移して静置させることによりコロ
ニーを沈め、それにより洗浄を行なった。2〜3回の培
地交換後にコロニーを別の培養皿、例えば24ウェルプレ
ートに移しCO2インキュベーター内で静置した。1〜3
日内にコロニーは培養皿に接着し、周辺部より上皮性の
細胞の伸展が観察された。伸展した細胞は増殖し単層を
形成した。ウェル一杯に増殖したところで、単層培養の
継代方法に従って継代していった。
実施例 4.不死化肝細胞のアルブミン分泌 HSAに対して特異的なヤギ抗ヒトHSA抗体は、BIOSYS社
製を用いた。1:2000希釈で50μ/ウェルをマイクロタ
イタープレートに注ぎ4℃にして一晩放置した。翌日、
抗体液を吸引し、PBS/0.05%Tween−20で3回洗浄し、2
50μの0.5%ゼラチン溶液を加え室温で1時間放置し
た。次いで、これらのプレートを3回洗浄し、分析試料
(培養上清または標準HSA)を50μ加え、37℃で1時
間インキュベートした。3回洗浄後、HSAに対するパー
オキシダーゼ結合ヤギ抗体(カッペル社)を加え37℃で
1時間インキュベートした後、3回洗浄した。基質混合
液(OPD)を加え、室温で10〜30分間発色させ、1N硫酸
液で反応を停止した。反応後の液を492nmと600nmの2波
長の差で測定した。なお、ヒト精製アルブミンを標準と
した場合の本ELISAの感度は、約0.5ng以下であった。単
離したコロニー(クローン)すべてについてアルブミン
分泌能を調べた結果、多くの場合に陽性と判定され、高
い確率で肝実質細胞が不死化されていることが確認され
た。
製を用いた。1:2000希釈で50μ/ウェルをマイクロタ
イタープレートに注ぎ4℃にして一晩放置した。翌日、
抗体液を吸引し、PBS/0.05%Tween−20で3回洗浄し、2
50μの0.5%ゼラチン溶液を加え室温で1時間放置し
た。次いで、これらのプレートを3回洗浄し、分析試料
(培養上清または標準HSA)を50μ加え、37℃で1時
間インキュベートした。3回洗浄後、HSAに対するパー
オキシダーゼ結合ヤギ抗体(カッペル社)を加え37℃で
1時間インキュベートした後、3回洗浄した。基質混合
液(OPD)を加え、室温で10〜30分間発色させ、1N硫酸
液で反応を停止した。反応後の液を492nmと600nmの2波
長の差で測定した。なお、ヒト精製アルブミンを標準と
した場合の本ELISAの感度は、約0.5ng以下であった。単
離したコロニー(クローン)すべてについてアルブミン
分泌能を調べた結果、多くの場合に陽性と判定され、高
い確率で肝実質細胞が不死化されていることが確認され
た。
実施例 5.不死化肝細胞でのSV40T抗原発現 Ad5SVR4の感染によって不死化された細胞は、その増
殖を、該ウイルス遺伝子に挿入されたSV40T抗原の発現
に依存している。従って、不死化肝細胞がSV40T抗原を
発現していることを確認することは、本発明の妥当性の
一つの根拠となりうる。
殖を、該ウイルス遺伝子に挿入されたSV40T抗原の発現
に依存している。従って、不死化肝細胞がSV40T抗原を
発現していることを確認することは、本発明の妥当性の
一つの根拠となりうる。
発現の確認は、細胞内のSV40T抗原を蛍光抗体法によ
り検出することで行なわれた。不死化肝細胞を、その増
殖期(典型的には継代後2日目)にトリプシン液で培養
皿より剥離し、単離細胞にまで解離した。完全培地で約
105/mlに調整し8ウェルのラブテック・チェンバー・ス
ライド(マイルス社)に300μ/we11を播種した。1〜
2日後、細胞が単層を形成したところで、細胞を乾燥さ
せないようにPBSで5回洗浄した。洗浄後、PBSをすべて
吸引廃棄し、室温でスライドを乾燥させ、4℃に冷却し
たアセトンで細胞を15分間固定した後、再び乾燥し、1:
50希釈のマウス抗SV40T抗体(オンコジーン社)を反応
させた。37℃、1時間反応後、PBSで軽く洗浄し、2次
抗体として1:50希釈のFITC結合抗マウスIgG(カッペル
社)を反応させた。1時間後PBSで洗浄し、グリセリン
で包埋してカバー・グラスで覆い蛍光顕微鏡で観察し
た。
り検出することで行なわれた。不死化肝細胞を、その増
殖期(典型的には継代後2日目)にトリプシン液で培養
皿より剥離し、単離細胞にまで解離した。完全培地で約
105/mlに調整し8ウェルのラブテック・チェンバー・ス
ライド(マイルス社)に300μ/we11を播種した。1〜
2日後、細胞が単層を形成したところで、細胞を乾燥さ
せないようにPBSで5回洗浄した。洗浄後、PBSをすべて
吸引廃棄し、室温でスライドを乾燥させ、4℃に冷却し
たアセトンで細胞を15分間固定した後、再び乾燥し、1:
50希釈のマウス抗SV40T抗体(オンコジーン社)を反応
させた。37℃、1時間反応後、PBSで軽く洗浄し、2次
抗体として1:50希釈のFITC結合抗マウスIgG(カッペル
社)を反応させた。1時間後PBSで洗浄し、グリセリン
で包埋してカバー・グラスで覆い蛍光顕微鏡で観察し
た。
ヒト、チンパンジー、カニクイザルより得た不死化肝
細胞から、それぞれ無作為に数クローンずつ選び、細胞
のSV40Tタンパクの発現を調べた結果、それらすべてに
ついて細胞の核内に特徴的な網目状の明瞭な蛍光が観察
された。さらに、その頻度は100%の細胞で陽性であ
り、本発明による肝細胞の永久増殖性の付与がSV40Tの
発現に起因するものであることが支持された。
細胞から、それぞれ無作為に数クローンずつ選び、細胞
のSV40Tタンパクの発現を調べた結果、それらすべてに
ついて細胞の核内に特徴的な網目状の明瞭な蛍光が観察
された。さらに、その頻度は100%の細胞で陽性であ
り、本発明による肝細胞の永久増殖性の付与がSV40Tの
発現に起因するものであることが支持された。
実施例 6.HAウイルスの増殖 実施例2に従って調製した不死化肝細胞のうち、アル
ブミンを分泌するクローンについてHAウイルスの感染性
を分析した。その不死化肝細胞を24ウェル/プレートに
2×105/ウェルの割合で播種し、ミドリザル腎細胞で維
持されたHAウイルス液100μで覆った。ウイルス液
は、ミドリザル腎細胞で得られた108TCID50感染価のも
のを1:50希釈して用いた。37℃、1時間のインキュベー
ションの後、完全培地500μを加え、37℃、5%CO2イ
ンキュベーター内で培養した。3〜4日毎にほぼ全量の
培地を交換し、3週間維持した。HAウイルスは細胞外に
は分泌されないことから、このような培地交換によって
接種した余分のウイルスは完全に除去された。1週間毎
に細胞を破壊し、細胞内のHAウイルスの存在を調べた。
細胞は、培地を完全に除去し、PBSで3回洗浄した後、
可溶化液(1%NP−40、0.4%デオキシコール酸、15m M
EDTAを含むTris−塩酸緩衝液)を加えることにより細胞
膜が破壊され細胞質が流出された。細胞成分を含んだ可
溶化液は次のような免疫学的方法(ELISA)によって、
当該ウイルスの存在が確かめられた。
ブミンを分泌するクローンについてHAウイルスの感染性
を分析した。その不死化肝細胞を24ウェル/プレートに
2×105/ウェルの割合で播種し、ミドリザル腎細胞で維
持されたHAウイルス液100μで覆った。ウイルス液
は、ミドリザル腎細胞で得られた108TCID50感染価のも
のを1:50希釈して用いた。37℃、1時間のインキュベー
ションの後、完全培地500μを加え、37℃、5%CO2イ
ンキュベーター内で培養した。3〜4日毎にほぼ全量の
培地を交換し、3週間維持した。HAウイルスは細胞外に
は分泌されないことから、このような培地交換によって
接種した余分のウイルスは完全に除去された。1週間毎
に細胞を破壊し、細胞内のHAウイルスの存在を調べた。
細胞は、培地を完全に除去し、PBSで3回洗浄した後、
可溶化液(1%NP−40、0.4%デオキシコール酸、15m M
EDTAを含むTris−塩酸緩衝液)を加えることにより細胞
膜が破壊され細胞質が流出された。細胞成分を含んだ可
溶化液は次のような免疫学的方法(ELISA)によって、
当該ウイルスの存在が確かめられた。
まず、HAウイルスに対して特異的なウサギ抗血清を
得、1:5000希釈で50μ/ウェルをマイクロタイタープ
レートに注ぎ、4℃で一夜放置した。翌日、液を除き、
PBS/0.05%Tween20で3回洗浄した後、非特異結合部位
を飽和させるために0.2%ウシ血清アルブミンを加え、
4℃で保存した。必要に応じてこのプレートを洗浄し、
細胞可溶化液およびHAウイルス標準液を50μ/ウェル
注ぎ、4℃で一夜静置した。
得、1:5000希釈で50μ/ウェルをマイクロタイタープ
レートに注ぎ、4℃で一夜放置した。翌日、液を除き、
PBS/0.05%Tween20で3回洗浄した後、非特異結合部位
を飽和させるために0.2%ウシ血清アルブミンを加え、
4℃で保存した。必要に応じてこのプレートを洗浄し、
細胞可溶化液およびHAウイルス標準液を50μ/ウェル
注ぎ、4℃で一夜静置した。
翌日、洗浄し、パーオキシダーゼ結合抗HAウイルス抗
体を1:5000希釈で注ぎ、37℃で3時間反応させた。同様
の方法で洗浄した後、前述の基質混合液を加え室温で30
分間反応させた。1%硫酸液を加え反応を停止させ、吸
光度を測定した。HAウイルスの定量は、HAウイルス標準
液を10、20、30ng/mlで測定し、サンプルとの平行線検
定により算出した。
体を1:5000希釈で注ぎ、37℃で3時間反応させた。同様
の方法で洗浄した後、前述の基質混合液を加え室温で30
分間反応させた。1%硫酸液を加え反応を停止させ、吸
光度を測定した。HAウイルスの定量は、HAウイルス標準
液を10、20、30ng/mlで測定し、サンプルとの平行線検
定により算出した。
ヒト、チンパンジー、カニクイザルより選択した不死
化肝細胞についてHAウイルスの増殖性を調べた結果、ア
ルブミン分泌能を有する多くのクローンで陽性と判定さ
れた(第4表)。ウイルス量においては、カニクイザ
ル、ヒト、チンパンジーの順に減少したが、これはウイ
ルス側の問題と考えられた。つまり、ヒトから分離され
たウルスが、カニクイザルにより近縁と考えられるミド
リザルの腎細胞にかなり馴化したためと考えられた。従
って、本発明により永久増殖性を付与された肝細胞は多
くの肝細胞としての特徴を維持しているものと考えられ
た。
化肝細胞についてHAウイルスの増殖性を調べた結果、ア
ルブミン分泌能を有する多くのクローンで陽性と判定さ
れた(第4表)。ウイルス量においては、カニクイザ
ル、ヒト、チンパンジーの順に減少したが、これはウイ
ルス側の問題と考えられた。つまり、ヒトから分離され
たウルスが、カニクイザルにより近縁と考えられるミド
リザルの腎細胞にかなり馴化したためと考えられた。従
って、本発明により永久増殖性を付与された肝細胞は多
くの肝細胞としての特徴を維持しているものと考えられ
た。
実施例 7.HBウイルスの増殖 実施例6によってHAウイルスの感染が確認されたヒト
不死化肝細胞H6Ad−1およびH8Ad−17について、HBウイ
ルスの感染性を分析した。当該2種類のヒト肝細胞を、
プラスチック製培養フラスコ(ファルコン、3013)にウ
イルス接種時1〜3×106/フラスコでほぼ単層になるよ
うに播種した。通常のウイルス吸着の方法に従い、培地
を完全に除去しHBウイルス液0.5mlを接種した。HBウイ
ルスはHB611細胞(HBウイルス遺伝子を組み込んだヘパ
トーマ細胞系、デーン粒子を約107/106細胞産生してい
る(Turimoto,T.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:444−4
48(1987))の培養上清を用いた。37℃、2時間の吸着
後、ウイルス液を除去し、培地で2回洗浄して余分なウ
イルスを除去後、新鮮な培地を加え37℃で培養した。2
日毎に培地を採取し、培地中のHBs抗原およびHBe抗原を
アボットRIAまたはEIAキットにて測定した。結果を第1
図に示す。HBウイルス特異的タンパクは感染後6日目に
検出され、14日目まで上昇し続けた。このことは、当該
細胞がウイルス粒子を産生していることを明らかに示し
ている。
不死化肝細胞H6Ad−1およびH8Ad−17について、HBウイ
ルスの感染性を分析した。当該2種類のヒト肝細胞を、
プラスチック製培養フラスコ(ファルコン、3013)にウ
イルス接種時1〜3×106/フラスコでほぼ単層になるよ
うに播種した。通常のウイルス吸着の方法に従い、培地
を完全に除去しHBウイルス液0.5mlを接種した。HBウイ
ルスはHB611細胞(HBウイルス遺伝子を組み込んだヘパ
トーマ細胞系、デーン粒子を約107/106細胞産生してい
る(Turimoto,T.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:444−4
48(1987))の培養上清を用いた。37℃、2時間の吸着
後、ウイルス液を除去し、培地で2回洗浄して余分なウ
イルスを除去後、新鮮な培地を加え37℃で培養した。2
日毎に培地を採取し、培地中のHBs抗原およびHBe抗原を
アボットRIAまたはEIAキットにて測定した。結果を第1
図に示す。HBウイルス特異的タンパクは感染後6日目に
検出され、14日目まで上昇し続けた。このことは、当該
細胞がウイルス粒子を産生していることを明らかに示し
ている。
次に、細胞内でのウイルス核酸の複製とウイルス特異
的転写を以下の方法で確認した。まず、染色体外DNAはH
irtの方法(J.Mol.Biol.26:365−369,1967)により調製
された。HBウイルス接種後の細胞を0.5M NaCl/10mM T
ris−Hcl,1mM EDTA/1%SDSで溶解し、4℃で一夜静置し
た。1600×g,1時間の遠心処理後、上清中の染色体外DNA
はプロナーゼEで37℃、1時間反応させ、フェノール/
クロロフォルム処理しエタノール沈澱で回収した。得ら
れたDNAは、TE緩衝液(10mM Tris−HCl,pH7.4/1mM EDT
A)に溶解し、1.5%アガロース電気泳動後、ニトセルロ
ース膜に写し、サザンブロット法により分析した。プロ
ーブは32Pラベルした全HBウイルスDNAを用いた。全RNA
は、グアニジン・チオシアネート中で細胞をホモジェナ
イズし、塩化セシウム平衝密度勾配遠心法により調製し
た。得られたRNAは、6.6%ホルムアルデヒドを含有する
1%アガロースゲルで電気泳動を行なうことにより精製
し、ニトロセルロース膜に写し、ノーザンブロット法に
より分析した。
的転写を以下の方法で確認した。まず、染色体外DNAはH
irtの方法(J.Mol.Biol.26:365−369,1967)により調製
された。HBウイルス接種後の細胞を0.5M NaCl/10mM T
ris−Hcl,1mM EDTA/1%SDSで溶解し、4℃で一夜静置し
た。1600×g,1時間の遠心処理後、上清中の染色体外DNA
はプロナーゼEで37℃、1時間反応させ、フェノール/
クロロフォルム処理しエタノール沈澱で回収した。得ら
れたDNAは、TE緩衝液(10mM Tris−HCl,pH7.4/1mM EDT
A)に溶解し、1.5%アガロース電気泳動後、ニトセルロ
ース膜に写し、サザンブロット法により分析した。プロ
ーブは32Pラベルした全HBウイルスDNAを用いた。全RNA
は、グアニジン・チオシアネート中で細胞をホモジェナ
イズし、塩化セシウム平衝密度勾配遠心法により調製し
た。得られたRNAは、6.6%ホルムアルデヒドを含有する
1%アガロースゲルで電気泳動を行なうことにより精製
し、ニトロセルロース膜に写し、ノーザンブロット法に
より分析した。
サザンブロットの結果は、染色体外DNAにウイルス特
異的な存在を明らかにした。一方、ノーザンブロットの
結果によって、感染後14日目の細胞に3.6,2.4,2.1キロ
ベースのRNAが確認された。これはin vivoにおいてHBウ
イルスの感染した肝臓より得られた結果と一致し、3.6
キロベースのmRNAはウイルスの全ゲノムの転写を意味し
ている。また、他の2.4,2.1キロベースのmRNAはラージH
BsとスモールHBsに対する転写を意味している。
異的な存在を明らかにした。一方、ノーザンブロットの
結果によって、感染後14日目の細胞に3.6,2.4,2.1キロ
ベースのRNAが確認された。これはin vivoにおいてHBウ
イルスの感染した肝臓より得られた結果と一致し、3.6
キロベースのmRNAはウイルスの全ゲノムの転写を意味し
ている。また、他の2.4,2.1キロベースのmRNAはラージH
BsとスモールHBsに対する転写を意味している。
実施例 8.HNANBウイルスの増殖 実施例7によってHBウイルスの増殖性が確認されたヒ
ト不死化肝細胞クローンH6Ad−1について、HNANBウイ
ルスの感染性を分析した。
ト不死化肝細胞クローンH6Ad−1について、HNANBウイ
ルスの感染性を分析した。
細胞を6ウェル培養プレート(ファルコン、3046)に
約1×106/ウェルの濃度で播種し、一夜、CO2インキュ
ベータで培養し単層のの細胞シートを形成させた。この
細胞に、ウイルス感染因子を含むと考えられる次の2種
類の血清または血漿および陰性対象としての正常ヒト血
清を0.5ml加え、37℃で2時間保温した。
約1×106/ウェルの濃度で播種し、一夜、CO2インキュ
ベータで培養し単層のの細胞シートを形成させた。この
細胞に、ウイルス感染因子を含むと考えられる次の2種
類の血清または血漿および陰性対象としての正常ヒト血
清を0.5ml加え、37℃で2時間保温した。
HNANAB肝炎を発症した急性期のチンパンジーの血清 激症HNANB炎患者の交換血漿 2時間の保温後、接種物を完全に除去し、完全培地2m
lを加え培養維持した。3〜4日毎に培地を交換し、2
週毎にトリプシン処理により細胞を回収し、8ウェルの
チェンバースライド(マイルス社)に再び播種し、以下
に示した蛍光抗体法によりHNANBウイルス抗原の検出を
行なった。
lを加え培養維持した。3〜4日毎に培地を交換し、2
週毎にトリプシン処理により細胞を回収し、8ウェルの
チェンバースライド(マイルス社)に再び播種し、以下
に示した蛍光抗体法によりHNANBウイルス抗原の検出を
行なった。
細胞の接着したチェンバースライドから培地を除去
し、PBSで3回洗浄し乾燥させた。4℃アセトンに10分
間浸して固定化し、再び乾燥させた。この固定細胞をHN
ANBウイルス特異的抗体を含むと考えられるチンパンジ
ーのHNANB肝炎回復期血清(1:50希釈)で覆った。湿箱
中で4℃、一夜反応後、PBSで3回洗浄し、2次抗体と
して抗ヒトIgG−FITC結合抗体(MBL社)を1:100希釈し
て加えた。37℃、2時間反応後PBSで洗浄して80%グリ
セリンで包埋し、蛍光顕微鏡で観察した。その結果、接
種後4〜6週で細胞質に特異的な顆粒状の蛍光が観察さ
れ、陰性対照においては認められなかった(第5表)。
し、PBSで3回洗浄し乾燥させた。4℃アセトンに10分
間浸して固定化し、再び乾燥させた。この固定細胞をHN
ANBウイルス特異的抗体を含むと考えられるチンパンジ
ーのHNANB肝炎回復期血清(1:50希釈)で覆った。湿箱
中で4℃、一夜反応後、PBSで3回洗浄し、2次抗体と
して抗ヒトIgG−FITC結合抗体(MBL社)を1:100希釈し
て加えた。37℃、2時間反応後PBSで洗浄して80%グリ
セリンで包埋し、蛍光顕微鏡で観察した。その結果、接
種後4〜6週で細胞質に特異的な顆粒状の蛍光が観察さ
れ、陰性対照においては認められなかった(第5表)。
8週後にはこの蛍光は消失したが、これは6〜8週後
に細胞が培養皿より剥離し始めたことに起因するものと
考えられる。このような細胞の剥離は、ウイルス増殖に
よるCPEの特徴とは異なっており、培養維持の限界によ
るものと考えられた。そこで、次のような方法で感染性
因子(ウイルス)の継代を証明した。
に細胞が培養皿より剥離し始めたことに起因するものと
考えられる。このような細胞の剥離は、ウイルス増殖に
よるCPEの特徴とは異なっており、培養維持の限界によ
るものと考えられた。そこで、次のような方法で感染性
因子(ウイルス)の継代を証明した。
接種後5週後の細胞を倍地ごとセルスクレイパーで回
収し、3回の凍結融解により細胞膜を破壊し、低速遠心
により上清のみを得、その0.5mlを新たにH6Ad−1に接
種した。この操作を繰り返し(継代感染)、継代毎に蛍
光抗体法により分析した。その結果を第6表に示す。第
5表により示された特異的蛍光が継代可能な感染性因子
によるものであることが証明され、この因子が未確認の
HNANBウイルスであることが強く支持された。
収し、3回の凍結融解により細胞膜を破壊し、低速遠心
により上清のみを得、その0.5mlを新たにH6Ad−1に接
種した。この操作を繰り返し(継代感染)、継代毎に蛍
光抗体法により分析した。その結果を第6表に示す。第
5表により示された特異的蛍光が継代可能な感染性因子
によるものであることが証明され、この因子が未確認の
HNANBウイルスであることが強く支持された。
以上の結果より、ヒトおよび非ヒト霊長類の不死化肝
細胞が肝細胞特異的ウイルス(HAV、HBV、HNANBV)いず
れにおいても増殖性を付与できることが明らかになっ
た。
細胞が肝細胞特異的ウイルス(HAV、HBV、HNANBV)いず
れにおいても増殖性を付与できることが明らかになっ
た。
第1図は本件発明によって得られた不死化肝細胞でのHB
ウイルス特異タンパクの産生を示す。
ウイルス特異タンパクの産生を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 Proc.Am.Assoc.Can cer Res.Annu.Mee t.,Vol.28,No.0(1997) p.123 Proc.Natl.Acad.Sc i.USA,Vol.86,No.6 (1989)p.1875−1879 Mol.Cell.Biol.,Vo l.4,No.8(1984)p.1653− 1656 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12N 5/10 C12N 15/86 C12N 7/00 BIOSIS(DIALOG) WPI(DIALOG) JICSTファイル(JOIS)
Claims (10)
- 【請求項1】肝炎ウイルス感受性を有する非ヒト霊長類
由来の不死化肝細胞であって、下記〜の工程を含む
方法により得ることができる前記細胞。 外科的に切除された肝組織にコラゲナーゼ及びディス
パーゼを作用させて肝実質細胞を分離する工程、 該肝実質細胞にSV40T遺伝子を挿入した組換えアデノ
ウイルスを浮遊状態で感染させる工程、 該感染細胞を三次元的に細胞間マトリックス中で培養
する工程。 - 【請求項2】肝炎ウイルスが、A型肝炎ウイルス、B型
肝炎ウイルス及び非A非B型肝炎ウイルスからなる群よ
り選択される特許請求の範囲第(1)項記載の細胞。 - 【請求項3】非ヒト霊長類が、チンパンジー、カニクイ
ザル、ミドリザル、アカゲザル、ニホンザル及びマーモ
セットからなる群より選択される特許請求の範囲第
(1)項叉は第(2)項記載の細胞。 - 【請求項4】細胞間マトリックスが、コラーゲン、フィ
ブロネクチン、ラミニン、プロテオグリカンからなる群
から選択される物質で構成される特許請求の範囲第
(1)項ないし第(3)項記載のいずれかの細胞。 - 【請求項5】下記〜の工程を含むことを特徴とす
る、肝炎ウイルス感受性を有する非ヒト霊長類由来の不
死化肝細胞を調製する方法。 外科的に切除された肝組織にコラゲナーゼ及びディス
パーゼを作用させて肝実質細胞を分離する工程、 該肝実質細胞にSV40T遺伝子を挿入した組換えアデノ
ウイルスを浮遊状態で感染させる工程、 該感染細胞を三次元的に細胞間マトリックス中で培養
する工程。 - 【請求項6】肝炎ウイルスが、A型肝炎ウイルス、B型
肝炎ウイルス及び非A非B肝炎ウイルスからなる群より
選択される特許請求の範囲第(5)項記載の方法。 - 【請求項7】非ヒト霊長類が、チンパンジー、カニクイ
ザル、ミドリザル、アカゲザル、ニホンザル及びマーモ
セットからなる群より選択される特許請求の範囲第
(5)項叉は第(6)項記載の細胞。 - 【請求項8】細胞間マトリックスが、コラーゲン、フィ
ブロネクチン、ラミニン、プロテオグリカンからなる群
から選択される物質で構成される特許請求の範囲第
(5)項ないし第(7)項記載のいずれかの細胞。 - 【請求項9】特許請求の範囲第(1)ないし(4)項記
載のいずれかの細胞を用いることを特徴とする肝炎ウイ
ルスの増殖方法。 - 【請求項10】肝炎ウイルスが、A型肝炎ウイルス、B
型肝炎ウイルス及び非A非B型肝炎ウイルスからなる群
より選択される特許請求の範囲第(9)項記載の増殖方
法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2283030A JP3058438B2 (ja) | 1990-10-19 | 1990-10-19 | ヒト肝臓組織特異的ウイルスの感染可能な霊長類の不死化肝細胞およびその調製方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2283030A JP3058438B2 (ja) | 1990-10-19 | 1990-10-19 | ヒト肝臓組織特異的ウイルスの感染可能な霊長類の不死化肝細胞およびその調製方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH04158786A JPH04158786A (ja) | 1992-06-01 |
JP3058438B2 true JP3058438B2 (ja) | 2000-07-04 |
Family
ID=17660311
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2283030A Expired - Fee Related JP3058438B2 (ja) | 1990-10-19 | 1990-10-19 | ヒト肝臓組織特異的ウイルスの感染可能な霊長類の不死化肝細胞およびその調製方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP3058438B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US5672485A (en) * | 1996-08-13 | 1997-09-30 | Regents Of The University Of Minnesota | Immortalized cell lines for virus growth |
-
1990
- 1990-10-19 JP JP2283030A patent/JP3058438B2/ja not_active Expired - Fee Related
Non-Patent Citations (3)
Title |
---|
Mol.Cell.Biol.,Vol.4,No.8(1984)p.1653−1656 |
Proc.Am.Assoc.Cancer Res.Annu.Meet.,Vol.28,No.0(1997)p.123 |
Proc.Natl.Acad.Sci.USA,Vol.86,No.6(1989)p.1875−1879 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
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JPH04158786A (ja) | 1992-06-01 |
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