JP2965650B2 - 筒形アルカリ蓄電池 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、筒形アルカリ蓄電池に係わり、さらに詳し
くはその封口蓋の改良に関する。

〔従来の技術〕

蓄電池としては、ニッケル−カドミウム電池などのア
ルカリ蓄電池が最もよく用いられている。

このアルカリ蓄電池では、正極端子を兼ねる封口蓋を
封口板と端子板との間に形成された空間内に弁体と金属
ばねを収容するか、あるいは上記空間内に弁体のみを収
容することによって構成し、電池内部にガスが発生して
電池の内部圧力が異常上昇したときには、上記封口蓋を
通じて、電池内部のガスを電池外部に放出させることに
より、電池の高圧下での破裂を防止できるようにした安
全弁構造が採用されている（たとえば、実公昭47−3954
2号公報）。

〔発明が解決しようとする課題〕

しかし、従来使用の封口蓋は、第３図に示すように、
封口板（７）の外周部を内方に折り返し、その封口板
（７）上に弁体（９）および金属ばね（10）を配置し、
その上から端子板（８）をかぶせ、端子板（８）の鍔部
（8b）の外周端を封口板（７）の外周折り返し部（7e）
に挿入したものであり、この封口蓋（６）を環状ガスケ
ット（５）を介して電池容器（４）の開口部に配置し、
電池容器（４）の開口端部（4a）を内方に締め付けるこ
とによって電池容器（４）の開口部を封口している（た
とえば、実公昭47−39542号公報）。

この場合、環状ガスケット（５）を曲面状に形成され
た封口板（７）の外周折り返し部（7e）へ圧接するの
で、電池容器（４）の開口端部（4a）の内方への締め付
けは均一に行なわれるものの、環状ガスケット（５）を
曲面状に締め付けているため、高い締付力が得られず、
その結果、電解液の漏出が生じるという問題がある。

したがって、本発明は、上記アルカリ蓄電池の問題点
を解決し、耐漏液性の優れた筒形アルカリ蓄電池を提供
することを目的とする。

〔課題を解決するための手段〕

上記課題を解決するための本発明の構成をその実施例
に対応する第１〜２図を用いて説明すると、本発明は、
封口板（７）の外周部を折り返さず、封口板（７）の外
周端に立ち上がり部（7b）を設け、この立ち上がり部
（7b）の上端を端子板（８）の鍔部（8b）の外周端の上
面より上方に突出させ、電池容器（４）の開口端部（4
a）を曲面状に内方に折り曲げて締め付けたものであ
る。

〔作用〕

上記のように、封口板（７）の外周端における立ち上
がり部（7b）の上端が端子板（８）の鍔部（8b）の外周
端の上面より上方に突出しているので、封口蓋（６）を
電池容器（４）の開口部に環状ガスケット（５）を介し
て配置し、電池容器（４）の開口端部（4a）を曲面状に
内方に折り曲げて締め付けると、封口板（７）の立ち上
がり部（7b）の側面にも均等に強力な締付力が加わり、
環状ガスケット（５）が強力に封口板（７）の立ち上が
り部（7b）の上端の角部に圧接し、その部分で特に強力
に締め付けられ、高い締付力が得られる。その結果、電
解液の漏出が防止されるようになり、耐漏液性の優れた
筒形アルカリ蓄電池が得られるようになる。

〔実施例〕

つぎに実施例をあげて本発明をより詳細に説明する。

第１図は本発明の筒形アルカリ蓄電池の一実施例を示
す断面図であり、第２図は第１図に示す筒形アルカリ蓄
電池に使用された封口蓋の拡大断面図である。

まず、電池全体を第１図に基づいて説明すると、
（１）は正極、（２）は負極、（３）はセパレータ、
（４）は電池容器、（５）は環状ガスケット、（６）は
封口蓋、（７）は封口板、（８）は端子板、（９）は弁
体、（10）は金属ばね、（11）はリード体、（12）は絶
縁体である。

正極（１）はオキシ水酸化ニッケルを活物質として含
むシート状の焼結式ニッケル電極からなり、負極（２）
はカドミウムを活物質として含むシート状の焼結式カド
ミウム電極からなる。

セパレータ（３）はナイロン不織布からなり、上記の
正極（１）と負極（２）は、このセパレータ（３）を介
して重ね合わせ、渦巻状に巻回して渦巻状電極体にさ
れ、その渦巻状電極体の状態で電池容器（４）内に挿入
されて電池容器（４）内に収容されている。

電解液には、30重量％水酸化カリウム水溶液からなる
アルカリ電解液が用いられ、この電解液は電池容器
（４）の開口部から電池容器（４）内に注入されて電池
容器（４）内に収容されている。

封口蓋（６）は、第２図に拡大して示すように、封口
板（７）と、端子板（８）と、弁体（９）と、金属ばね
（10）を有している。

封口板（７）は、鉄にニッケルメッキをしたものから
なり、その平面形状は円形状であって、その中心部にガ
ス検知孔（7a）を有し、外周端に立ち上がり部（7b）を
有している。ただし、この実施例に示すものでは、中央
部は弁体（９）などを収容する空間を確保しやすくする
ために、凹部（7c）とし、その周囲を鍔状に形成して鍔
部（7d）としている。したがって、上記のガス検出孔
（7a）は上記凹部（7c）の中心部に設けられ、上記立ち
上がり部（7b）は上記鍔部（7d）の外周端に位置するこ
とになるが、封口板（７）の中央部を凹部にすることは
必ずしも必要でなく、立ち上がり部（7b）以外は平面状
のものであってもよい。上記の立ち上がり部（7b）の上
面は平面状で、特にその外周側の角部は角ばっていて、
丸みが付いてないものがよい。

端子板（８）は、鉄にニッケルメッキをしたものから
なり、中央部における凸出部（8a）と、その周囲に形成
された鍔部（8b）を有し、鍔部（8b）の内周端にガス排
出孔（8c）が設けられている。ただし、このガス排出孔
（8c）は凸出部（8a）に設けてもよい。

端子板（８）の外径は上記封口板（７）の立ち上がり
部（7b）の内径より小さく、この端子板（８）を前記封
口板（７）上に配置した時に、端子板（８）の外周端は
封口板（７）の立ち上がり部（7b）の内周面に接する
か、またはその内周側に位置し、封口板（７）の立ち上
がり部（7b）の上端は端子板（８）の鍔部（8b）の外周
端の上面より上方に突出している。

弁体（９）は、鉄にニッケルメッキをした座板とエチ
レン・プロピレン・ジエンゴムからなる弾性弁体とを一
体化させたものからなり、金属ばね（10）は、ステンレ
ス鋼製のコイルスプリングからなり、これら弁体（９）
と金属ばね（10）は、端子板（８）を封口板（７）上に
配置した時に端子板（８）の凸出部（8a）と封口板
（７）との間に形成される空間内に収容されている。そ
して、その収容の態様としては、弁体（９）が封口板
（７）上に配置して、弁体（９）の弾性弁体側が封口板
（７）のガス検知孔（7a）を覆い、金属ばね（10）が上
記弁体（９）と端子板（８）との間に配置して弁体
（９）を封口板（７）に押圧している。

この封口蓋（６）の組立ては、たとえば、弁体（９）
を封口板（７）の凹部（7b）上に配置し、その上に金属
ばね（10）を配置し、その上から端子板（８）をかぶせ
るようにして封口板（７）上に配置し、端子板（８）の
鍔部（8b）を封口板（７）の鍔部（7d）に溶接すること
によって行なわれる。

環状ガスケット（５）は、ナイロン製で、前記封口蓋
（６）はこの環状ガスケット（５）を介して電池容器
（４）の開口部に配置され、電池容器（４）の開口端部
（4a）を曲面状に内方に折り曲げて締め付けることによ
り、電池容器（４）の開口部は封口蓋（６）と環状ガス
ケット（５）とで封口されている。

リード体（11）は、ニッケル製で、このリード体（1
1）の一端は、正極（１）に接触しており、リード体（1
1）の他端は、封口蓋（６）の電池容器（４）の開口部
への配置に先立って、封口板（７）の底面に溶接され
る。このようにして、封口蓋（６）は正極端子としての
機能を兼ねるようになるが、負極側では、渦巻状電極体
の最外周部が負極（２）で構成されていて、この負極
（２）が電池容器（４）の内周面と接触し、その結果、
電池容器（４）が負極端子を兼ねるようになる。

絶縁体（12）は、ポリプロピレン製で、この絶縁体
（12）は、正極（１）、負極（２）およびセパレータ
（３）からなる渦巻状電極体の電池容器（４）内への収
容に先立って、電池容器（４）内に挿入され、電池容器
（４）の底部上に配置される。

電池容器（４）は、鉄にニッケルメッキをしたものか
らなり、有底円筒状に作製されているが、上記絶縁体
（12）および渦巻状電極体の挿入後、あるいはそれに引
き続いて電解液を注入した後、その開口端近くに環状の
溝（4b）を形成し、その溝（4b）の底部で環状ガスケッ
ト（５）を支え、環状ガスケット（５）や封口蓋（６）
が電池容器（４）の開口部から内部に落ち込まないよう
にしている。

この電池では、電池内部にガスが発生して、電池の内
部圧力が異常上昇したときは、電池内部のガスがガス検
知孔（7a）を覆っている弁体（９）を上方に押圧するの
で、金属ばね（10）が収縮し、それに伴って弁体（９）
が上昇して封口板（７）との間に隙間をつくり、ガス検
知孔（7a）を通過したガスは該隙間を通り、さらに端子
板（８）に設けたガス排出孔（8c）を通って電池外部へ
放出される。したがって、この電池では高圧下での破裂
が防止される。

次の第１表は、第１図に示す本発明の実施例の電池と
第３図に示す従来電池との耐漏液性を調べた結果を示す
ものである。

本発明の実施例の電池に使用された封口蓋（６）は第
２図に示す通りであり、封口板（７）の立ち上がり部
（7b）の高さ（下面からの高さ）を1.2mmにし、該立ち
上がり部（7b）の上端が端子板（８）の鍔部（8b）の外
周端の上面より0.3mm上方に突出するようにしている。

これに対し、第３図に示す従来電池では、封口板
（７）の外周部は折り返され、端子板（８）の鍔部（8
b）の外周端を上記封口板（７）の外周折り返し部（7
e）に挿入している。

耐漏液性試験は、本発明の実施例の電池、従来電池と
も20個ずつを用い、各電池に対して、60℃１時間、−10
℃１時間を１サイクルとする加熱、冷却を繰り返し、30
0サイクル後の電池の漏液の有無を調べることによって
行った。その結果を第１表に漏液発生率で示すが、この
第１表では、試験に供した電池個数と漏液が発生した電
池個数とが理解しやすいように、試験に供した電池個数
を分母に示し、漏液の発生した電池個数を分子に示す態
様で漏液発生率を表している。

第１表に示すように、本発明の実施例の電池では、60
℃１時間、−10℃１時間の加熱、冷却を300サイクル繰
り返した後でも、漏液がまったく発生しなかったが、従
来電池では試験に供した20個の電池のうち３個の電池に
漏液が発生した。なお、電池の耐漏液性を調べるにあた
って、電池に対して60℃１時間、−10℃１時間の加熱、
冷却を繰り返したのは、そのような加熱、冷却に伴っ
て、環状ガスケット（５）、封口板（７）、電池容器
（４）が伸縮を繰り返し、それらの熱膨張係数の相違に
よって、封口板（７）と環状ガスケット（５）との間や
環状ガスケット（５）と電池容器（４）との間に隙間を
生じて、締付力の差による耐漏液性の差が顕著に現れる
からである。

上記実施例では、正極（１）にオキシ水酸化ニッケル
を活物質として含む焼結式ニッケル電極を用い、負極
（２）にカドミウムを活物質として含む焼結式カドミウ
ム電極を用いた場合について説明したが、本発明はその
場合のみに限られるものではなく、正極（１）は金属酸
化物または金属水酸化物を含むものであればよいし、負
極（２）はカドミウム、亜鉛、鉄、それらの酸化物また
はそれらの水酸化物を含むものであればよい。

なお、本発明は、封口蓋（６）として、封口板（７）
と端子板（８）の凸出部（8a）との間に形成される空間
内に弁体（９）と金属ばね（10）を収容したものを用い
るが、本発明は上記空間内に弁体（９）のみを収容した
封口蓋（６）を用いる場合にも適用することが可能であ
る。

〔発明の効果〕

以上説明したように、本発明によれば、耐漏液性の優
れた筒形アルカリ蓄電池が提供される。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の筒形アルカリ蓄電池の一実施例を示す
断面図であり、第２図は第１図に示す筒形アルカリ蓄電
池に使用された封口蓋の拡大断面図である。第３図は従
来の筒形アルカリ蓄電池の一例を示す断面図である。 （１）……正極、（２）……負極、（３）……セパレー
タ、 （４）……電池容器、（4a）……開口端部、 （５）……環状ガスケット、（６）……封口蓋、 （７）……封口板、（7a）……ガス検知孔、 （7b）……立ち上がり部、（８）……端子板、 （8a）……凸出部、（8b）……鍔部、 （8c）……ガス排出孔、（９）……弁体、 （10）……金属ばね

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】正極（１）と、負極（２）と、セパレータ
   （３）と、アルカリ電解液と、電池容器（４）と、環状
   ガスケット（５）と、封口蓋（６）を有し、 上記封口蓋（６）は、封口板（７）と、端子板（８）
   と、弁体（９）と、金属ばね（10）を有し、 上記封口板（７）は、中心部にガス検知孔（7a）と、外
   周端に立ち上がり部（7b）を有し、 上記端子板（８）は、凸出部（8a）と、該凸出部（8a）
   の周囲に形成された鍔部（8b）を有し、この端子板
   （８）の凸出部（8a）または鍔部（8b）にはガス排出孔
   （8c）が設けられ、 上記端子板（８）は、封口板（７）上に配置され、端子
   板（８）の鍔部（8b）の外周端は、封口板（７）の外周
   端における立ち上がり部（7b）の内周面に接するか、ま
   たはその内周側に位置し、 上記封口板（７）の立ち上がり部（7b）の上端は、端子
   板（８）の鍔部（8b）の外周端の上面より上方に突出
   し、 上記弁体（９）および金属ばね（10）は、封口板（７）
   と端子板（８）の凸出部（8a）との間に形成される空間
   内に収容され、 上記弁体（９）は、封口板（７）の上部に配置されてガ
   ス検知孔（7a）を覆っており、 上記金属ばね（10）は、弁体（９）と端子板（８）との
   間に配置し、弁体（９）を封口板（７）に押圧してい
   て、 上記正極（１）、負極（２）、セパレータ（３）および
   アルカリ電解液は、電池容器（４）内に収容され、 上記環状ガスケット（５）および封口蓋（６）は、電池
   容器（４）の開口部に配置され、環状ガスケット（５）
   が封口蓋（６）と電池容器（４）との間に介在し、電池
   容器（４）の開口端部（4a）を曲面状に内方に折り曲げ
   て締め付けることにより、電池容器（４）の開口部が封
   口されていることを特徴とする、 筒形アルカリ蓄電池。