JP2556081B2 - 圧電素子の運動変換装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） この発明は、主として印字ヘッドに採用される圧電素
子の運動変換装置に関するものである。

（従来の技術） 圧電素子の運動変換機構としては、例えば、すでに同
一出願人によって開発がなされた実願昭62−165955号の
ものがある。

これにおいては、第６図に示すように、圧電素子１の
伸縮に基づいて可動子５を変位させ、フレーム２と可動
子５との相互に一端部が固着された一対の板ばね6,7を
たわませることで、これら両板ばね6,7の他端部に跨が
って結合された傾動体８を傾動させるようになってい
る。

このような構造の運動変換機構においては、圧電素子
１の伸縮に基づいて可動子５を伸縮の方向に平行に変位
させることが望ましい。

すなわち、圧電素子１の伸縮により板ばね７が他の板
ばね６に沿って変位するとき、両板ばねが湾曲するた
め、板ばね７の弾性により可動子５は圧電素子１の伸縮
方向に対し横方向の力を受け、傾く。このように可動子
５が傾いた状態で変位されると、板ばね6,7のたわみ量
に不足が生じ、これによって、傾動体８を所望とする傾
動角度まで傾動させることができない問題点が生じる。

このため、前述したものにおいては、可動子５とフレ
ーム２の基部３との間に弾性変形可能な連結部材12が配
設されている。

（発明が解決しようとする課題） ところで、可動子５とフレーム２の基部３との間に配
設した連結部材12によって可動子５を支持するものにお
いては、板ばね6,7のばね力と均衡を保って連結部材12
のばね力を設定する必要がある。しかしながら、連結部
材12のばね力を板ばね6,7のばね力と均衡を保って設定
することは困難であり、連結部材12のばね力に過不足が
生じる。そして、連結部材12のばね力の過不足が原因と
なって、圧電素子１の伸縮方向に対し可動子５が傾いた
状態で変位されるとともに、板ばね6,7にたわみ不足が
生じる等の問題点があった。

この発明の目的は、前記した問題点に鑑み、圧電素子
の伸縮に際して、その伸縮方向に対して圧電素子の先端
を傾くことなく安定して変位させることができる圧電素
子の運動変換装置を提供することである。

（課題を解決するための手段） 前記目的を達成するために、この発明は、ほぼ平行に
対向配置された一対の板ばねのそれぞれの一端を、傾動
体に固着し、前記両板ばねのうち一方の板ばねの他端を
フレームに固着するとともに、他方の板ばねの他端を圧
電素子の一端に設けられた可動子に固着し、前記圧電素
子の伸縮により前記他方の板ばねを一方の板ばねに沿っ
て変位させて、両板ばねを湾曲させることによって、前
記傾動体を傾動させるようになした運動変換装置であっ
て、前記傾動体の傾動時に、前記圧電素子の一端におけ
る、伸縮方向に対して傾く動きを規制するように、一端
を前記可動子に連結するとともに他端を前記フレームに
連結し、前記圧電素子の伸縮にともない弾性変形可能な
リンク機構を設けたものである。

また上記構成において好ましくは、前記傾動体は印字
ワイヤを備え、前記傾動動作により印字ワイヤで印字動
作をするようにしたものである。

（作 用） したがって、この発明は、圧電素子の伸縮に基づいて
他方の板ばねを一方の板ばねに沿って変位させて、両板
ばねを湾曲させることによって、傾動体を傾動させる
際、圧電素子の一端における、伸縮方向に対して傾く動
きがリンク機構によって規制され、伸縮方向に安定して
変位される。

（実施例１） 以下、この発明の実施例１を第１図〜第３図にしたが
って説明する。

この実施例では印字ヘッドに採用したものを例示する
ものであって、第１図において、電圧の印加によって伸
縮する圧電素子１は、積層状をなす圧電セラミックより
構成されている。

前記圧電素子１を支持するためのフレーム２は、その
圧電素子１の伸縮方向とほぼ平行して延在する縦長四角
形で所定板厚の金属板より構成されている。このフレー
ム２の一端部には圧電素子１の一端（下端）を一対のく
さび部材13,14を介して支持するための基部３が横方向
に突設されている。

前記圧電素子１の他端（上端）にはフレーム２の立上
り部の上端部と対向した状態において、可動子５が配設
されている。前記可動子５とフレーム２との対向面に
は、一対の板ばね6,7がその一端部においてろう付け等
によって固着されている。可動子５に固着された板ばね
７は、フレーム２に固着された板ばね６とその対向面を
互いに接触した状態において移動可能に重合されてい
る。さらに、両板ばね6,7は、フレーム２及び可動子５
の上端面より圧電素子１の伸縮方向に所定長さだけ延出
されている。そして、両板ばね6,7の先端部には傾動体
８が固着されている。傾動体８は、その基部の剛性の高
いホルダ９と、先端側の軽量なアーム10とを主体として
構成されている。

前記ホルダ９は、その下面に凹設された溝に前記両板
ばね6,7の先端部がそれぞれ挿入された状態において、
両板ばね6,7の対向面反対側とろう付けによって固着さ
れている。ホルダ９の前側面に凹設された溝にはアーム
10の基部が挿入されてろう付けによって固着されてい
る。アーム10の先端には印字ワイヤ11の基端がろう付け
によって固着されている。

前記フレーム２と可動子５との間には、圧電素子１の
伸縮方向に弾性伸縮可能な連結部材12が配設されてい
る。この連結部材12は、前記フレーム２と反対側におい
て、圧電素子１の積層方向に沿って縦長で、その下端が
フレーム２の支持部３端面に固着され、上端部が可動子
５の端面に固着されている。

また、前記圧電素子１の一端とフレーム２の基部３と
の間には、上下一対のくさび部材13,14が配設されてい
る。

また、この実施例において、上下の両くさび部材13,1
4は、圧電素子１の負の温度線膨脹率特性とは逆の正の
温度線膨脹率特性を有する材料、例えば亜鉛材によって
構成されている。そして、周囲の温度変化による圧電素
子１の収縮を、上下の両くさび部材13,14の上下方向の
伸びによって修正し、圧電素子１の上面高さを常に一定
に保つようになっている。

さて、フレーム２と可動子５との間には、圧電素子１
の伸縮に基づいて、その伸縮方向と平行に可動子５を案
内するための四節の平行リンク機構16が配設されてい
る。この平行リンク機構16は、第３図に示すように、一
枚の弾性変形可能な板ばね材をプレスの打抜き加工並び
に折曲げ加工することで形成された一対のリンクプレー
ト17と、これら両リンクプレート17を結合している連結
部26とにより構成されている。

一対のリンクプレート17は、圧電素子１の伸縮方向と
平行する縦リンク部18,19と、これら両縦リンク部18,19
の間に弾性変形可能なヒンジ部22,23,24,25をもって架
設された横リンク部20,21とをそれぞれ備えて四節の平
行リンクをなしている。そして、両リンクプレート17の
各一方の縦リンク部18は、フレーム２の両側面にろう付
けなどによって固着され、各他方の縦リンク部19は、可
動子５の両側面にそれぞれろう付けなどによって固着さ
れている。さらに、可動子５の両側面に固着された各縦
リンク部19の先端には、可動子５の上端面に沿って固着
された連結部26が架設されている。

また、この実施例においては、可動子５とフレーム２
の基部３とに両端が固着された連結部材12の弾性力は、
第1,第２の板ばね6,7のばね力よりも小さく設定されて
いる。さらに、圧電素子１の伸縮に基づく可動子５の変
位力の一部を、この可動子５に固着の第２板ばね７と反
対側において、前記連結部材12の弾性力によって相殺す
ることで、前記平行リンク機構16の各リンクプレート17
に作用する応力が軽減され、これによって各リンクプレ
ート17が四節の平行リンクとして正常にかつ円滑に機能
するようになっている。

上述したように構成されるこの実施例１において、圧
電素子１の両電極間に電圧が印加されると、圧電素子１
は、その積層方向、すなわち、第２図において矢印Ｘ方
向に所定長さだけ伸び、これに基づいて連結部材12の弾
性伸縮力に抗して可動子５が変位される。すると、可動
子５の変位力を受けて可動子５側の板ばね７が、フレー
ム２側の板ばね６に沿って押上げられ、両板ばね6,7が
湾曲状にたわむ、特に可動子５側の板ばね７が大きくた
わむことで、第２図において矢印Ｐ方向に回転モーメン
トが生じ、これによって、傾動体８が傾動される。

前記圧電素子１の伸びに基づいて可動子５が変位され
るときには、四節の平行リンク機構16を構成している各
リンクプレート17によって可動子５が圧電素子１の伸縮
方向と平行に案内される。このため、可動子５の傾きが
原因となる両板ばね6,7のたわみ量の不足が防止される
ことから、傾動体８を所定の傾動角度位置まで傾動させ
ることができる。そして、傾動体８先端の印字ワイヤ11
が、所定数の案内部材15に案内された状態で、その先端
が印字位置まで前進される。このようにして、可動子５
側の板ばね７がフレーム２側の板ばね６よりも大きくか
つ不足なくたわむことで、傾動体８を所定角度位置まで
確実に傾動させることができるとともに、圧電素子１の
伸びが著しく拡大されて印字ワイヤ11に伝達され、これ
によって印字不良を防止することができる。

圧電素子１に対する電圧の印加が断たれると、圧電素
子１は元の状態に短縮される。すると、可動子５、両板
ばね6,7及び傾動体８が連結部材12の弾性も手伝って元
の状態に早期に復帰され、印字ワイヤ11が後退復帰され
る。

（実施例２） 次にこの発明の実施例２を第４図にしたがって説明す
る。この実施例２においては、四節の平行リンク機構16
を構成しているリンクプレート17の横リンク部20,21
を、実施例１のものより、長く設定したものである。そ
の他の部分は実施例１と同様であるため、その説明は省
略する。

（実施例３） 次に、この発明の実施例３を第５図にしたがって説明
する。この実施例３においては、一対の板ばね6,7と、
四節の平行リンク機構16を構成しているリンクプレート
17とを変更したものである。一対の板ばね6,7は、一個
の厚肉のばね板材30の一端から他端部に向けかつ板厚の
中央部に割溝31を形成することで一体に構成されるとと
もに、両板ばね6,7の他端部には、これら板ばね6,7を結
合している傾動体８のホルダ９が両板ばね6,7と一体に
形成されたものである。

また、四節の平行リンク機構16をなす各リンクプレー
ト17のそれぞれの縦リンク部18,19がフレーム２並びに
可動子５の上端面よりも所定長さだけ上方に延出され、
フレーム２の両側面に固着された各縦リンク部18の延長
部分において、これら両体リンク部18が連結部26によっ
て一体に結合されたものである。その他の部分は実施例
１と同様である。したがって、この実施例３において
は、一対の板ばね6,7と、傾動体８のホルダ９を一個の
ばね部材30より一体に構成することで、部品点数が軽減
され、コスト低減が図られる。また、縦リンク部18,19
と横リンク部20,21とが板ばね6,7を囲むように位置して
いることにより、両板ばね6,7のたわみ変形にかかわら
ず、可動子５を、前記両実施例よりも、一層平行運動に
近い状態で案内することができ、安定した動作が得られ
る。なお、平行リンク機構16のヒンジ部22〜25の弾性力
を適宜設定することにより、連結部材12を省略しても、
可動子５、傾動体８を早期に復帰させることができる。

（発明の効果） 以上述べたように、この発明によれば、圧電素子の伸
縮に基づいて他方の板ばねを一方の板ばねに沿って変位
させて、両板ばねを湾曲させることによって、傾動体を
傾動させる際、圧電素子の一端における、伸縮方向に対
して傾く動きがリンク機構によって規制される。この結
果圧電素子が伸縮方向に安定して変位され、板ばねのた
わみ不良を防止することができ、傾動体を所定の傾動角
度まで正確に傾動させることができる。また、圧電素子
の破損も防止できるという効果がある。

【図面の簡単な説明】

図面の第１図〜第３図はこの発明の実施例１を示すもの
で、第１図は印字ヘッドに作用される圧電素子の運動変
換装置を示す斜視図、第２図は同じく側面図、第３図は
平行リンク機構を示す斜視図、第４図は実施例２を示す
側面図、第５図は実施例３の要部を分解して示す斜視図
である。第６図は先行技術のものを示す側面図である。 １……圧電素子 ２……フレーム ５……可動子 6,7……板ばね ８……傾動体 16……平行リンク機構 17……リンクプレート 18,19……縦リンク部 20,21……横リンク部

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】ほぼ平行に対向配置された一対の板ばねの
   それぞれの一端を、傾動体に固着し、前記両板ばねのう
   ち一方の板ばねの他端をフレームに固着するとともに、
   他方の板ばねの他端を圧電素子の一端に設けられた可動
   子に固着し、前記圧電素子の伸縮により前記他方の板ば
   ねを一方の板ばねに沿って変位させて、両板ばねを湾曲
   させることによって、前記傾動体を傾動させるようにな
   した運動変換装置であって、 前記傾動体の傾動時に、前記圧電素子の一端における、
   伸縮方向に対して傾く動きを規制するように、一端を前
   記可動子に連結するとともに他端を前記フレームに連結
   し、前記圧電素子の伸縮にともない弾性変形可能なリン
   ク機構を設けたことを特徴とする圧電素子の運動変換装
   置。
2. 【請求項２】請求項１に記載のものにおいて、前記傾動
   体は印字ワイヤを備え、前記傾動動作により印字ワイヤ
   で印字動作をすることを特徴とする圧電素子の運動変換
   装置。