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JP2025039249A - 回転電機制御方法、及び、回転電機制御装置 - Google Patents

回転電機制御方法、及び、回転電機制御装置 Download PDF

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JP2025039249A JP2023146201A JP2023146201A JP2025039249A JP 2025039249 A JP2025039249 A JP 2025039249A JP 2023146201 A JP2023146201 A JP 2023146201A JP 2023146201 A JP2023146201 A JP 2023146201A JP 2025039249 A JP2025039249 A JP 2025039249A
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Abstract

【課題】巻線界磁型の回転電機を1つのインバータで駆動するときに、電流リプルを低減することができる回転電機制御方法、及び、回転電機制御装置を提供する。【解決手段】界磁巻線15に流れる電流である界磁巻線電流Ifと、回転電機10の固定子巻線16に流れる電流である固定子巻線電流(IU,IV,IW)と、を検出し、検出した界磁巻線電流If及び固定子巻線電流(IU,IV,IW)に基づいて、界磁磁束Ψを変更することにより、固定子巻線16に印加される電圧である固定子巻線電圧(VU,VV,VW)がゼロとなるタイミングであるゼロ電圧タイミングと、固定子巻線電流(IU,IV,IW)がゼロとなるタイミングであるゼロ電流タイミングと、を近づける。【選択図】図2

Description

本発明は、巻線界磁型回転電機を制御する回転電機制御方法及び回転電機制御装置に関する。
特許文献1は、負荷に対して矩形波状の電圧を出力するときに2つのインバータを使用し、各インバータの動作で生じる特定次数の高調波成分が打ち消し合うように、各インバータを制御することを開示している。
特許第7002924号
電動機等の回転電機は、パルス幅変調制御(以下、PWM制御という)によって制御される。このとき、直流電源であるバッテリから回転電機を駆動するインバータに入力する電流には、リプル(以下、電流リプルという)が生じる。
そして、回転電機に電力を供給するバッテリに補機が接続されているときには、電流リプルが、補機に対する平滑コンデンサ(入力コンデンサ)に流れ込み、無用な発熱を生じさせてしまう場合がある。このため、回転電機に電力を供給するバッテリに補機が接続されているときには、電流リプルを特に低減させることが望ましい。
このとき、回転電機の駆動に2つのインバータを使用し、各インバータの動作によって生じる電流リプルを相殺させることも考えられる。しかし、電流リプルを低減させるためだけに2つ目のインバータを設けることは、システムのサイズやコストにおいて多大なデメリットとなるので、通常は採用し得ない。
本発明は、巻線界磁型の回転電機を1つのインバータで駆動するときに、電流リプルを低減することができる回転電機制御方法、及び、回転電機制御装置を提供することを目的とする。
本発明のある態様は、界磁巻線によって界磁磁束を発生させる巻線界磁型の回転電機と、補機と、回転電機と補機に電力を供給するバッテリと、を有するシステムにおいて、回転電機を制御する回転電機制御方法である。この回転電機制御方法では、界磁巻線に流れる電流である界磁巻線電流と、回転電機の固定子巻線に流れる電流である固定子巻線電流と、を検出し、検出した界磁巻線電流及び固定子巻線電流に基づいて、界磁磁束を変更することにより、固定子巻線に印加される電圧である固定子巻線電圧がゼロとなるタイミングであるゼロ電圧タイミングと、固定子巻線電流がゼロとなるタイミングであるゼロ電流タイミングと、を近づける。
本発明によれば、巻線界磁型の回転電機を1つのインバータで駆動するときに、電流リプルを低減することができる回転電機制御方法、及び、回転電機制御装置を提供することができる。
図1は、車両システムの概略構成を示すブロック図である。 図2は、コントローラの構成を示すブロック図である。 図3は、制御モードの切り替えタイミングを示す説明図である。 図4は、バッテリから回転電機(インバータ)に供給する電力の力率が1となるときのベクトル図である。 図5は、界磁磁束の変更による変化を示すベクトル図である。 図6は、固定子巻線電流が制限されるシーンのベクトル図である。 図7は、インバータの構成を示す回路図である。 図8は、比較例において矩形波制御を行うときのU相電流及びU相電圧等を示すグラフである。 図9は、本実施形態において矩形波制御を行うときのU相電流及びU相電圧等を示すグラフである。 図10は、本実施形態において矩形波制御を行うときに、固定子巻線電流が制限されるシーンのU相電流及びU相電圧等を示すグラフである。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
[第1実施形態]
図1は、車両システム100の概略構成を示すブロック図である。図1に示すように、車両システム100は、回転電機10、バッテリ11、インバータ12、補機13、及び、コントローラ14を備える。
回転電機10は、電動機または発電機である。回転電機10が電動機である場合、車両システム100は、電気自動車やハイブリッド自動車等である電動車両の駆動源である。回転電機10が発電機である場合、車両システム100は、バッテリ11を充電するために発電する発電システムである。本実施形態では、回転電機10は電動機である。
特に、回転電機10は、いわゆる巻線界磁型の交流同期機である。すなわち、回転電機10は、回転子に設けられた界磁巻線15が生じさせる界磁磁束Ψと、固定子巻線16が生じさせる固定子磁束Φと、の相互作用によって回転する。
本実施形態では、回転電機10は、三相同期機であり、固定子巻線16は、U相巻線、V相巻線、及び、W相巻線によって構成される。固定子磁束Φは、各相の固定子巻線16が生じさせる磁束Φ,Φ,Φの合成磁束であり、いわゆる回転磁界を形成する。
以下では、界磁巻線15に流れる電流を界磁巻線電流Iといい、固定子巻線16に流れる電流を固定子巻線電流という。固定子巻線電流は、UVW座標系における電流、すなわちU相電流I、V相電流I、及び、W相電流Iで表される。固定子巻線電流は、回転子とともに回転するdq座標系における電流、すなわちd軸電流I及びq軸電流Iで表される場合がある。この他、固定子巻線16に印加される電圧を固定子巻線電圧という。
バッテリ11は、回転電機10に電力を供給する直流電源である。特に、本実施形態では、バッテリ11は、回転電機10だけでなく、補機13に対しても必要に応じて電力を供給する。すなわち、バッテリ11は、回転電機10と補機13に共通の電源である。バッテリ11が出力する直流電圧Vdcは、図示しない電圧センサによって、必要に応じた任意のタイミングで取得され得る。バッテリ11は、例えば、リチウムイオンバッテリである。
インバータ12は、バッテリ11が出力する直流電力を交流電力に変換して回転電機10に供給する。インバータ12は、平滑コンデンサ17(入力コンデンサ)とパワーモジュール18を含む。平滑コンデンサ17は、バッテリ11がインバータ12に供給する電力を平滑化する。パワーモジュール18は、複数のスイッチング素子によって構成されたブリッジ回路を含む。パワーモジュール18の各スイッチング素子は、PWM制御によって、オンまたはオフにするタイミングが制御される。本実施形態では、パワーモジュール18は、UVW各相の固定子巻線16に電力を供給する他、ラインXを通じて界磁巻線15に所定の電力を供給するモジュールも含む。
補機13は、回転電機10以外の電力を消費する1または複数の装置等である。電動車両においては、補機13は、例えば、空調装置の電動コンプレッサ、オンボートチャージャ、及び、DC/DCコンバータ等である。補機13は、前述のとおり、回転電機10に電力を供給するバッテリ11を電源とする。このため、補機13は、平滑コンデンサ19(入力コンデンサ)を介して、回転電機10と並列にバッテリ11に接続される。バッテリ11からインバータ12に入力する電流にリプルが生じると、この電流リプルは補機13のための平滑コンデンサ19に流入し、平滑コンデンサ19を無用に発熱させてしまう場合がある。
コントローラ14は、車両システム100の各部を統括的に制御する制御装置であり、例えば、1または複数のコンピュータその他回路等によって構成される。本実施形態では、コントローラ14は、回転電機10を制御する回転電機制御装置、すなわち、回転電機10を駆動するためにインバータ12の動作を制御する装置として機能する。また、コントローラ14は、補機13の動作を制御する補機制御装置としても機能する。コントローラ14を回転電機制御装置として機能させるためのプログラム(回転電機制御プログラム)やコントローラ14を補機制御装置として機能させるためのプログラム(補機制御プログラム)は、図示しないストレージに予め記憶されているが、所定の記憶媒体に記憶した状態で、または、無線通信等によって提供され得る。
図2は、コントローラ14の構成を示すブロック図である。図2では、回転電機制御装置としての主要部分を示し、その他の要素を省略している。
図2に示すように、コントローラ14は、電流指令値演算部21、電圧指令値演算部22、座標変換部23、PWM信号生成部24、回転検出部25、座標変換部26、及び、力率補正演算部27を備える。
電流指令値演算部21は、トルク指令値τ 、回転電機10(回転子)の角速度ω[rad/s]、及び、直流電圧Vdcに基づいて、d軸電流指令値I 、q軸電流指令値I 、及び、界磁巻線電流指令値I を演算する。d軸電流指令値I は、固定子巻線16に流すべき電流のd軸成分であるd軸電流Iを定める。q軸電流指令値I は、固定子巻線16の流すべき電流のq軸成分であるq軸電流Iを定める。以下では、d軸電流指令値I 及びq軸電流指令値I をまとめてdq軸電流指令値I ,I という。界磁巻線電流指令値I は、界磁巻線15に流すべき電流である界磁巻線電流Iを定める。界磁巻線15が生じさせる界磁磁束Ψは、界磁巻線電流Iの設定及び変更によって調整される。トルク指令値τ は、アクセルの操作量等に基づいて決定される。本実施形態では、簡単のため、トルク指令値τ は、既に与えられたものとする。角速度ωは、回転検出部25から取得される。直流電圧Vdcは、前述のとおり、図示しない電圧センサによって適宜に取得される。
電圧指令値演算部22は、d軸電圧指令値V 及びq軸電圧指令値V (以下、dq軸電圧指令値V ,V という)を演算する。dq軸電圧指令値V ,V は、固定子巻線16に、dq軸電流指令値I ,I に応じたd軸電流I及びq軸電流I(以下、dq軸電流I,Iという)を流すための電圧指令である。また、電圧指令値演算部22は、界磁巻線電圧指令値V を演算する。界磁巻線電圧指令値V は、界磁巻線15に、界磁巻線電流指令値I に応じた界磁巻線電流Iを流すための電圧指令である。
電圧指令値演算部22は、原則として、dq軸電流I,I及び界磁巻線電流Iがdq軸電流指令値I ,I 及び界磁巻線電流指令値I に追従するように、例えばPI(Proportional-Integral)制御等によって、dq軸電圧指令値V ,V 及び界磁巻線電圧指令値V を演算する。すなわち、電圧指令値演算部22は、原則として、フィードバックされたdq軸電流I,I及び界磁巻線電流Iの検出値と、dq軸電流指令値I ,I 及び界磁巻線電流指令値I と、に基づいて、dq軸電圧指令値V ,V 及び界磁巻線電圧指令値V を演算する。
本実施形態では、後述するように、電圧指令値演算部22には、力率補正演算部27によって補正されたdq軸電流I,I及び界磁巻線電流I、すなわち補正dq軸電流I^,I^及び補正界磁巻線電流I^がフィードバックされる。したがって、本実施形態の電圧指令値演算部22は、この補正dq軸電流I^,I^及び補正界磁巻線電流I^と、dq軸電流指令値I ,I 及び界磁巻線電流指令値I と、に基づいて、dq軸電圧指令値V ,V 及び界磁巻線電圧指令値V を演算する。
また、電圧指令値演算部22には、dq軸電圧指令値V ,V 及び界磁巻線電圧指令値V を演算するためのモードが2つある。第1のモードは、いわゆる電流ベクトル制御によって、dq軸電圧指令値V ,V 及び界磁巻線電圧指令値V を演算するモードである。第2のモードは、いわゆる電圧位相制御によって、dq軸電圧指令値V ,V 及び界磁巻線電圧指令値V を演算するモードである。電圧指令値演算部22は、PWM制御の変調率M(図示しない)に応じて、電流ベクトル制御と電圧位相制御を切り替える。電流ベクトル制御と電圧位相制御の切り替えについては、詳細を後述する。
なお、電圧指令値演算部22は、dq軸電圧指令値V ,V 及び界磁巻線電圧指令値V の変動による相互の影響(干渉)を低減する非干渉化する。本実施形態では、非干渉化制御のための具体的なブロックの図示や説明を省略するが、電圧指令値演算部22が出力するdq軸電圧指令値V ,V 及び界磁巻線電圧指令値V は非干渉化されている。
座標変換部23は、dq軸座標系からUVW座標系への座標変換により、dq軸電圧指令値V ,V に基づいて、U相電圧指令値V 、V相電圧指令値V 、及び、W相電圧指令値V (以下、三相電圧指令値V ,V ,V という)を演算する。U相電圧指令値V は、U相の固定子巻線16に印加する電圧であるU相電圧Vを定める。V相電圧指令値V は、V相の固定子巻線16に印加する電圧であるV相電圧Vを定める。同様に、W相電圧指令値V は、W相の固定子巻線16に印加する電圧であるW相電圧Vを定める。以下では、U相電圧V、V相電圧V、及び、W相電圧Vをまとめて三相電圧V,V,Vという。三相電圧V,V,Vは、固定子巻線電圧である。また、U相電流I、V相電流I、及び、W相電流Iをまとめて三相電流I,I,Iという。なお、dq軸座標系からUVW座標系への座標変換は、回転電機10の電気角θ[deg]に基づいて行われる。
PWM信号生成部24は、三相電圧指令値V ,V ,V に基づいて、UVW各相のスイッチング素子がオン/オフするタイミングを定めるPWM信号を生成し、インバータ12に入力する。これにより、固定子巻線16には三相電圧指令値V ,V ,V に応じた三相電圧V,V,Vが印加され、その結果、三相電流I,I,Iが流れる。実際に流れる三相電流I,I,Iは、電流検出器31によって検出される。三相電流I,I,Iは、固定子巻線電流である。
また、本実施形態では、界磁巻線電圧指令値V に基づいて、界磁巻線15に印加する電圧である界磁巻線電圧Vを制御するPWM信号(またはその他の制御信号)を生成し、インバータ12に入力する。これにより、界磁巻線15には界磁巻線電圧指令値V に応じた界磁巻線電圧Vが印加され、その結果、界磁巻線電流Iが流れる。実際に流れる界磁巻線電流Iは、電流検出器32によって検出される。
PWM信号生成部24の動作モードは2つある。第1のモードは、いわゆる非同期PWM制御を行うモードである。第2のモードは、いわゆる同期PWM制御を行うモードである。非同期PWM制御は、回転電機10(回転子)の回転状態にかかわらず、予め定めた所定周波数の三角波等をキャリア信号として用いる制御である。同期PWM制御は、回転電機10(回転子)の回転に同期したキャリア信号を用いる制御である。PWM信号生成部24は、変調率Mに応じて、非同期PWM制御と同期PWM制御を切り替える。非同期PWM制御と同期PWM制御の切り替えについては、詳細を後述する。
回転検出部25は、レゾルバやエンコーダ等の回転検出器33が出力する信号に基づいて、回転電機10(回転子)の回転状態を表すパラメータを演算する。具体的には、回転検出部25は、電気角θ、角速度ω、及び、回転数N[rpm]等を演算する。
座標変換部26は、UVW座標系からdq軸座標系への座標変換により、検出された三相電流I,I,Iに基づいて、dq軸電流I,Iを演算する。dq軸電流I,Iは固定子巻線電流である。なお、UVW座標系からdq軸座標系への座標変換は、回転電機10の電気角θに基づいて行われる。
力率補正演算部27は、バッテリ11から回転電機10(インバータ12)に供給する電力の力率(以下、単に力率という)が1(最大値)にできる限り近づくように、検出されたdq軸電流I,I(固定子巻線電流)及び界磁巻線電流Iを補正する。そして、力率補正演算部27は、補正後のdq軸電流I,Iである補正dq軸電流I^,I^(補正固定子巻線電流)、及び、補正後の界磁巻線電流Iである補正界磁巻線電流I^を電圧指令値演算部22にフィードバックする。
このように補正dq軸電流I^,I^及び補正界磁巻線電流I^を電圧指令値演算部22にフィードバックすることにより、力率補正演算部27は、界磁磁束Ψを変更する。その結果、力率補正演算部27は、固定子巻線電流(I,I,I)がゼロとなるタイミングであるゼロ電流タイミングと、固定子巻線16に印加される電圧である固定子巻線電圧(V,V,V)がゼロとなるタイミングであるゼロ電圧タイミングと、を近づける。
力率補正演算部27は、例えば、検出されたdq軸電流I,I及び界磁巻線電流Iに基づいて、力率及び回転電機10がトルクτを推定し、推定した力率及びトルクτに基づいて、補正dq軸電流I^,I^及び補正界磁巻線電流I^を演算(設定)することができる。本実施形態では、簡単のため、力率補正演算部27は、実験またはシミュレーション等によって、dq軸電流I,I及び界磁巻線電流Iと、補正dq軸電流I^,I^及び補正界磁巻線電流I^と、を予め対応付けた補正マップを有するものとする。このため、力率補正演算部27は、補正マップを参照することにより、検出したdq軸電流I,I及び界磁巻線電流Iに応じて、補正dq軸電流I^,I^及び補正界磁巻線電流I^を設定する。力率の補正、すなわち補正dq軸電流I^,I^及び補正界磁巻線電流I^の演算については、詳細を後述する。
<制御モードの切り替え>
図3は、制御モードの切り替えタイミングを示す説明図である。図3の横軸は回転数Nであり、縦軸は回転電機10のトルクτである。実線は、回転数Nに応じて出力可能なトルクτを示す。全ての回転数Nを通じて回転電機10が出力し得る最大トルクはτe-MAXである。そして、最大トルクτe-MAXを維持し得る限界回転数はNlimである。
ラインLは、PWM制御の変調率Mが1.00となる境界線である。ラインLよりも回転数Nが低い制御領域は、変調率Mが1.00以下であって、三相電流I,I,Iを正弦波状に制御可能な通常の制御領域(以下、通常領域36という)である。ラインLよりも回転数Nが高い制御領域は、変調率Mが1.00を超え、三相電流I,I,Iの波形が一部において制限された過変調状態での制御となる領域(以下、過変調領域37という)である。すなわち、ラインLは、過変調到達線である。
ラインLは、PWM制御の変調率Mが1.05となる境界線である。ラインLは、制御モードの切り替えにヒステリシスを持たせ、頻繁な制御モードの切り替えを抑えるために設定される。
ラインLは、PWM制御の変調率Mが1.10となる境界線である。ラインLよりも回転数Nが高い制御領域は、変調率Mが1.10を超え、過変調領域37の中でも三相電流I,I,Iの波形が実質的に矩形波となる制御領域(以下、矩形波領域38という)である。すなわち、ラインLは矩形波到達線である。矩形波領域38での制御(矩形波制御)は、1パルス制御と称される場合もある。
原則として、通常領域36においては、回転電機10は、電流ベクトル制御及び非同期PWM制御によって制御され、過変調領域37においては、電圧位相制御及び同期PWM制御によって制御される。すなわち、原則として、回転電機10の制御が通常領域36での制御となるときに、電圧指令値演算部22は電流ベクトル制御を選択し、PWM信号生成部24は非同期PWM制御を選択する。そして、回転電機10の制御が過変調領域37での制御となるときに、電圧指令値演算部22は電圧位相制御を選択し、PWM信号生成部24は同期PWM制御を選択する。
本実施形態では、回転電機10の制御が通常領域36での制御から過変調領域37での制御に遷移する場合、ラインLを超えたときに、制御モードは、電圧ベクトル制御及び非同期PWM制御から、電圧位相制御及び同期PWM制御に切り替えられる。一方、回転電機10の制御が過変調領域37での制御から通常領域36での制御に遷移する場合、ラインLを超えたときに、制御モードは、電圧位相制御及び同期PWM制御から、電流ベクトル制御及び非同期PWM制御に切り替えられる。
<力率の補正>
図4は、バッテリ11から回転電機10(インバータ12)に供給する電力の力率が1となるときのベクトル図である。
図4に示すように、dq軸座標系において、固定子巻線電流は電流ベクトルIによって表される。電流ベクトルIは、d軸電流ベクトル(I)とq軸電流ベクトル(I)の合成ベクトルである。そして、固定子巻線電流の位相βは、電流ベクトルIがq軸となす角によって表される。
界磁磁束Ψは、d軸上の正ベクトルによって表される。そして、回転電機10の磁束ベクトルΦは、界磁磁束Ψと、固定子巻線16が生じさせる磁束(以下、固定子磁束Φという)の合成によって表される。固定子磁束Φは、q軸方向に生じる磁束(L)とd軸方向に生じる磁束(L)の合成である。q軸方向に生じる磁束(L)は、固定子巻線16のq軸インダクタンスLとq軸電流Iの積によって表される。同様に、d軸方向に生じる磁束(L)は、固定子巻線16のd軸インダクタンスLとd軸電流Iの積によって表される。そして、回転磁束である固定子磁束Φの位相δは、固定子磁束Φを表すベクトルとq軸のなす角によって表される。
電流ベクトルIと固定子磁束Φを表すベクトルが平行であり、固定子巻線電流の位相βと固定子磁束Φの位相δが等しいとき(β=γ)、バッテリ11から回転電機10に供給する電力の力率は1(最大値)となる。このとき、電流ベクトルIと磁束ベクトルΦは垂直になる。
通常領域36における制御では、トルク指令値τ に対応するトルクτ(要求トルク)を出力させるために、dq軸電流I,Iの組み合わせを殆ど自由に選ぶことができる。すなわち、固定子巻線電流の位相βは実質的に任意に選ぶことができる。したがって、通常領域36における制御では、固定子巻線電流の位相βと固定子磁束Φの位相δが等しくなるように、dq軸電流I,Iが設定(演算)される。
一方、過変調領域37(特に、矩形波領域38)における制御では、インバータ12等の性能的限界により、固定子巻線電流や固定子巻線電圧が制限され、要求トルクを出力させるdq軸電流I,Iの組み合わせが限られる。すなわち、位相βの選択自由度が低下する。このため、例えば制御対象の回転電機が永久磁石埋込型であって、界磁磁束Ψが制御し得ない場合、過変調領域37及び矩形波領域38では、通常、位相βと位相δが等しくなるようにdq軸電流I,Iを設定することができない。その結果、力率の低下が避けられない。
しかし、本実施形態では、回転電機10は巻線界磁型であるから、界磁磁束Ψは界磁巻線電流Iを介して制御可能なパラメータである。このため、本実施形態では、dq軸電流I,Iと併せて、界磁巻線電流Iを調整することによって、界磁磁束Ψを変更し、位相βと位相δが等しくなるようにdq軸電流I,Iを設定する。したがって、本実施形態では、位相βが制限される場合でも、界磁磁束Ψの変更によって、力率は1に維持される。具体的には、前述のように、力率補正演算部27が、電圧指令値演算部22にフィードバックするdq軸電流I,I及び界磁巻線電流Iを補正することによって、これを実現する。すなわち、補正dq軸電流I^,I^及び補正界磁巻線電流I^は、界磁磁束Ψを変更して力率を1に維持するように設定される。
以下、界磁磁束Ψの変更について詳述する。
回転電機10のトルクτは、一般に、下記の式(1)で表される。「P」は回転電機10の極対数である。「L」は、前述のとおり、固定子巻線16のd軸インダクタンス[H]である。同様に、「L」は、固定子巻線16のd軸インダクタンス[H]である。
Figure 2025039249000002
但し、本実施形態の回転電機10は巻線界磁型であるため、リラクタンストルクは、界磁磁束Ψによって生じるトルク(いわゆるマグネットトルク)と比較して、ごく小さい。このため、式(1)において、リラクタンストルクを表す第2項(P(L-L)I)は省略できる。このため、回転電機10のトルクτは、下記の式(2)に示すとおり、界磁磁束Ψによって生じるトルクに等しい。また、界磁磁束Ψは、下記の式(3)に示すとおり、界磁巻線電流Iに比例する。比例係数kは、界磁巻線15の具体的構成によって予め定まる。
Figure 2025039249000003
したがって、式(2)及び式(3)から明らかなとおり、巻線界磁型である回転電機10のトルクτは、下記の式(4)で表される。
Figure 2025039249000004
また、回転電機10の電圧方程式は、一般に、下記の式(5)で表される。「V」はd軸電圧であり、「V」はq軸電圧である。これらのdq軸電圧V,Vは固定子巻線電圧である。「R」は固定子巻線16の抵抗[Ω]である。「s」は微分演算子(d/dt)である。また、「ω」は、前述のとおり、回転電機10の角速度[rad/s]である。
Figure 2025039249000005
位相βと位相δが等しく、力率が1となる場合、dq軸電流I,Iの比とdq軸電圧V,Vの比が等しい。すなわち、I/I=V/Vである。したがって、界磁磁束Ψとして式(3)を使用し、I/I=V/Vの条件の下で、式(5)の電圧方程式を解けば、d軸電流Iは、下記の式(6)で表される。また、q軸電流Iは下記の式(7)で表される。
Figure 2025039249000006
トルク指令値τ によって回転電機10が出力すべきトルクτが定まれば、式(4)及び式(7)を満たす範囲内で、q軸電流Iと界磁巻線電流Iを設定することができる。要求トルクが定まっている場合、q軸電流Iと界磁巻線電流Iは概ね反比例の関係にあり、界磁巻線電流Iを増加すればq軸電流Iは減少し、界磁巻線電流Iを減少させればq軸電流Iは増加する。また、d軸電流Iは、式(6)に示すとおり、q軸電流Iと界磁巻線電流Iが決定されると、一義的に定まる。例えば、界磁巻線電流Iを増加すればd軸電流Iの大きさ増加し、界磁巻線電流Iを減少させればd軸電流Iの大きさは減少する。
図5は、界磁磁束Ψの変更による変化を示すベクトル図である。ここでは、説明のため、図5(A)に示すように、ある特定のdq軸電流I,I及び界磁巻線電流Iで回転電機10を制御しているシーンを基準として、界磁磁束Ψの変化による影響について説明する。また、回転電機10のトルクτは維持するものとする。
図5(B)に示すように、界磁巻線電流IをI に減少させると、界磁磁束ΨはΨに減少する。このとき、q軸電流IはI に増加し、d軸電流IはI に減少する。したがって、固定子磁束ΦはΦ′に変化し、その位相δはδに減少する。なお、磁束ベクトルΦはΦ′に変化する。
図5(C)に示すように、界磁巻線電流IをI に増加させると、界磁磁束ΨはΨに増加する。このとき、q軸電流IはI に減少し、d軸電流IはI に増加する。したがって、固定子磁束ΦはΦ″に変化し、その位相δはδに増加する。なお、磁束ベクトルΦはΦ″に変化する。
このように、巻線界磁型の回転電機10では、界磁巻線電流Iの調整によって界磁磁束Ψを変更することにより、トルクτ(要求トルク)を維持しながら、固定子磁束Φの位相δを変更することができる。このとき、dq軸電流I,Iも変化するが、界磁磁束Ψの変更によれば、dq軸電流I,Iの変化をインバータ12等の性能的限界による固定子巻線電流や固定子巻線電圧の制限の範囲内に収めることができる。すなわち、界磁磁束Ψを変更すれば、電流ベクトルIの位相βと固定子磁束Φの位相δを近づけ、力率を1またはそれに近い値に維持しやすい。
図6は、固定子巻線電流が制限されるシーンのベクトル図である。図6では、固定子巻線電流の最大値(最大電流Iam)を表す電流制限楕円を破線で示し、回転数Nに応じた最大誘起電圧Vamを表す電圧制限楕円を点線で示す。固定子巻線電流の制限下で、3000rpm、4000rpm、5000rpm、及び、6000rpmの各回転数Nにおいて出力し得る最大のトルクτを出力する場合の電流ベクトルIをそれぞれIa1,Ia2,Ia3,Ia4で示す。また、これらの電流ベクトルIa1,Ia2,Ia3,Ia4に対して、力率を1(β=δ)に維持するための界磁磁束ΨがΨ、Ψ、Ψ、Ψである。但し、Ψは図示しない。電流ベクトルIa1,Ia2,Ia3,Ia4及び界磁磁束Ψ、Ψ、Ψ、Ψに対応する界固定子磁束ΦがΦs1、Φs2、Φs3、Φs4である。同様に、電流ベクトルIa1,Ia2,Ia3,Ia4及び界磁磁束Ψ、Ψ、Ψ、Ψに対応する磁束ベクトルΦがΦ01、Φ02、Φ03、Φ04である。なお、電流ベクトルIa1,Ia2,Ia3,Ia4の各位相β、及び、界磁磁束Ψ、Ψ、Ψ、Ψの各位相δは、図示を省略する。
図6に示すように、固定子巻線電流の制限があるときには、電流ベクトルIa1,Ia2,Ia3,Ia4に示すように、回転数Nに応じて位相βは大きくなる。このため、固定子巻線電流が制限されている場合に回転数Nが大きくなったときには、界磁磁束Ψを大きくすることによって力率を1に維持することができる。
なお、界磁磁束Ψ(界磁電流I)を大きくするにも限界はある。固定子巻線電流が制限されていると、例えば、電流ベクトルIa3に対応する界磁磁束Ψを実現することができても、電流ベクトルIa4に対応する界磁磁束Ψは実現し得ない場合がある。このような場合、力率補正演算部27は、界磁磁束Ψを変更して、実現可能な範囲内において、できる限り力率を1に近づけるように補正dq軸電流I^,I^及び補正界磁巻線電流I^を設定する。例えば、電流ベクトルIa4に対応する界磁磁束Ψが必要であるときに、界磁磁束Ψは実現不能であって、界磁磁束Ψまで実現し得るときには、力率補正演算部27は、界磁磁束Ψを界磁磁束Ψに変更して、できる限り力率を1に近づけるように補正dq軸電流I^,I^及び補正界磁巻線電流I^を設定する。
図7は、インバータ12の構成を示す回路図である。図7では、固定子巻線電流を流すための構成だけを示し、その他の要素の図示を省略する。
図7に示すように、インバータ12のパワーモジュール18は、UVW各相に対応するレグL,L,Lを有する。各相のレグL,L,Lは、上アームと下アームを備え、これらの間に各相の固定子巻線が接続される。上アーム及び下アームは、いずれもスイッチング素子と還流ダイオードによって構成される。本実施形態では、バッテリ11からインバータ12(回転電機10)に供給される直流電流をIdcとする。UVW各相の上アームに流れる電流をそれぞれI,I,Iとする。また、平滑コンデンサ17と各相のレグL,L,Lの間を流れる直流電流をIとする。
以下、上記のように構成されるコントローラ14(回転電機制御装置)の作用を説明する。
図8は、比較例において矩形波制御を行うときのU相電流I及びU相電圧V等を示すグラフである。比較例は、永久磁石埋込型の回転電機等であって、界磁磁束Ψの変更による力率の補正を行わない制御例である。それ以外の制御構成は、本実施形態と同様である。
図8(A)は、比較例におけるU相電流I及びU相電圧Vを示す。図8(A)では、U相電圧Vがゼロとなるゼロ電圧タイミングを◇印で示し、U相電流Iがゼロとなるゼロ電流タイミングを▽印で示す。図8(A)では、U相電流I及びU相電圧Vだけを示すが、V相及びW相における電流及び電圧の関係もこれと同様である。図8(B)は、比較例において、インバータ12の各所を流れる電流I,I,I,Iを示す。図8(B)では、電流I,I,I,Iは、それぞれ、細実線、破線、一点鎖線、及び、太実線で示されている。図8(C)は、比較例において、バッテリ11からインバータ12(回転電機10)に供給される直流電流Idcを示す。図8の各グラフにおける横軸は時間である。
図8(A)に示すように、U相の固定子巻線16は、矩形波状のU相電圧Vが印加され、正弦波状のU相電流Iが流れる。このとき、比較例では、ゼロ電圧タイミング(▽)とゼロ電流タイミング(◇)がずれる。ゼロ電圧タイミング(▽)とゼロ電流タイミング(◇)の差Δは、過変調領域37での制御、特に、矩形波領域38での制御において顕著になる。また、力率は約0.9程度にまで低下する。
このとき、U相レグLのスイッチング素子はU相電圧Vを出力するように駆動しているので、図8(B)に示すように、U相レグLの上アームに流れる電流Iは、一時的に負になる。具体的には、U相電圧Vが負から正に転じるときに、電流Iが一時的に負になる。破線及び一点鎖線で示すとおり、V相レグL及びW相レグLの上アームに流れる電流I,Iも、電流Iと同様に一時的に負になる。そして、平滑コンデンサ17と各相のレグL,L,Lの間を流れる電流Iは、電流I,I,Iの和である。このため、図8(B)に示すとおり、電流I,I,Iが一時的に負になると、そのタイミングで電流Iが落ち窪む。
すなわち、ゼロ電圧タイミング(▽)とゼロ電流タイミング(◇)に差Δがあると、各相レグL,L,Lの上アームに流れる電流I,I,Iが一時的に負値となって、電流Iにリプルを生じさせる。図8(B)に示す電流Iの実効値は約550Aであり、リプルの振幅(ピーク間の電流値の差)は約300Aである。
そして、電流Iのリプルは平滑コンデンサ17によって平滑化されるものの、図8(C)に示すように、バッテリ11がインバータ12に供給する直流電流Idcにも大きなリプルが生じる。図8(C)に示す直流電流Idcの実効値は約540Aであり、リプルの振幅は約180Aである。前述のとおり、バッテリ11は補機13にも接続されているので、直流電流Idcに生じたリプルは、補機13を接続する平滑コンデンサ19に流入し、平滑コンデンサ19を発熱させる。
図9は、本実施形態におけるU相電流I及びU相電圧V等を示すグラフである。図9(A)は、本実施形態におけるU相電流I及びU相電圧Vを示す。
図9(A)では、U相電圧V及びU相電流Iがゼロとなるタイミングを○印で示す。図9(A)では、U相電流I及びU相電圧Vだけを示すが、V相及びW相における電流及び電圧の関係もこれと同様である。図9(B)は、本実施形態において、インバータ12の各所を流れる電流I,I,I,Iを示す。図9(B)では、電流I,I,I,Iは、それぞれ、細実線、破線、一点鎖線、及び、太実線で示されている。図9(C)は、本実施形態において、バッテリ11からインバータ12(回転電機10)に供給される直流電流Idcを示す。図9の各グラフにおける横軸は時間である。
図9(A)に示すように、本実施形態では、界磁磁束Ψの変更によって力率を補正することによって、U相電圧VとU相電流Iが同期する。すなわち、○印で示すとおり、ゼロ電圧タイミングと、ゼロ電流タイミングと、が一致し、力率は約1となる。
このため、図9(B)に示すように、U相レグLの上アームに流れる電流Iは、常にゼロ以上(実質的に正の電流成分のみ)となる。V相レグL及びW相レグLの上アームに流れる電流I,Iについても電流Iと同様に、常にゼロ以上となる。したがって、平滑コンデンサ17と各相のレグL,L,Lの間を流れる電流Iのリプルは、比較例に対して、低減される。特に、図9(B)では、ゼロ電圧タイミングとゼロ電流タイミングが完全に一致しているので、電流Iのリプルは最小限に抑えられている。図9(B)に示す電流Iの実効値は約600Aであり、リプルの振幅は約100Aである。
電流Iのリプルが抑えられたことによって、図9(C)に示すように、バッテリ11がインバータ12に供給する直流電流Idcのリプルも、比較例に対して低減される。その結果、補機13を接続する平滑コンデンサ19に流入するリプルも減り、平滑コンデンサ19の発熱が抑えられる。図9(C)に示す直流電流Idcの実効値は約600Aであり、リプルの振幅は約60Aである。
図10は、本実施形態において矩形波制御を行うときに、固定子巻線電流が制限されるシーンのU相電流I及びU相電圧V等を示すグラフである。
図10(A)は、U相電流I及びU相電圧Vを示す。図10(A)では、U相電圧Vがゼロとなるタイミングを◇印で示し、U相電流Iがゼロとなるタイミングを▽印で示す。図10(A)では、U相電流I及びU相電圧Vだけを示すが、V相及びW相における電流及び電圧の関係もこれと同様である。図10(B)は、インバータ12の各所を流れる電流I,I,I,Iを示す。図10(B)では、電流I,I,I,Iは、それぞれ、細実線、破線、一点鎖線、及び、太実線で示されている。図10(C)は、比較例において、バッテリ11からインバータ12(回転電機10)に供給される直流電流Idcを示す。図10の各グラフにおける横軸は時間である。
図10(A)に示すように、固定子巻線電流が制限されるシーンでは、界磁磁束Ψの変更によって、ゼロ電圧タイミング(▽)とゼロ電流タイミング(◇)を完全に一致させ、力率を完全に1に維持することができない場合がある。しかし、力率補正演算部27は、界磁磁束Ψを変更して、実現可能な範囲内において界磁磁束Ψを変更し、できる限り力率を1に近づけるように補正dq軸電流I^,I^及び補正界磁巻線電流I^を設定している。すなわち、力率補正演算部27は、ゼロ電圧タイミング(▽)とゼロ電流タイミング(◇)の差Δが最小化するように、界磁磁束Ψを変更する。このため、ゼロ電圧タイミング(▽)とゼロ電流タイミング(◇)の差Δは、比較例よりも低減され、力率は約0.95程度になる。
このため、図10(B)に示すように、U相レグLの上アームに流れる電流Iは、一時的に負になるものの、その負電流の大きさは、比較例よりも低減される。V相レグL及びW相レグLの上アームに流れる電流I,Iも、電流Iと同様に一時的に負になるものの、その負電流の大きさは、比較例よりも低減される。このため、平滑コンデンサ17と各相のレグL,L,Lの間を流れる電流Iは、電流I,I,Iが一時的に負になるタイミングで落ち窪むものの、この落ち窪みの程度は、比較例よりも抑えられている。すなわち、電流Iに生じるリプルの振幅は、比較例よりも抑えられる。図10(B)に示す電流I4の実効値は約580Aであり、リプルの振幅は約150Aである。
このように、電流Iのリプルが抑えられたことによって、図10(C)に示すように、バッテリ11がインバータ12に供給する直流電流Idcのリプルも、比較例に対して低減される。その結果、補機13を接続する平滑コンデンサ19に流入するリプルも減り、平滑コンデンサ19の発熱が抑えられる。図10(C)に示す直流電流Idcの実効値は約580Aであり、リプルの振幅は約120Aである。
上記のように、本実施形態によれば、界磁磁束Ψの変更によって、力率を1にできる限り近づける補正を行うことにより、バッテリ11がインバータ12(回転電機10)に供給する直流電流Idcに生じるリプルが低減される。その結果、補機13を接続する平滑コンデンサ19に流入するリプルが減り、平滑コンデンサ19の発熱が抑えられる。
特に、本実施形態は、巻線界磁型の回転電機10を1つのインバータ12で駆動する場合に、直流電流Idcのリプルを抑え、平滑コンデンサ19の発熱を抑えることができる。すなわち、本実施形態のように界磁磁束Ψの変更によって力率の補正を行えば、インバータを2つ用いなくても、直流電流Idcのリプルを抑え、平滑コンデンサ19の発熱を抑えることができる。
なお、上記実施形態では、矩形波領域38での制御において、界磁磁束Ψの変更による力率の補正を行う例を示したが、これに限らない。過変調領域37での制御では、ゼロ電圧タイミング(▽)とゼロ電流タイミング(◇)の差Δが特に顕著になるので、少なくとも過変調領域37での制御において、界磁磁束Ψの変更による力率の補正を行うことが好ましい。また、通常領域36での制御では、相対的に、ゼロ電圧タイミング(▽)とゼロ電流タイミング(◇)の差Δが目立たないが、通常領域36の制御においても、過変調領域37及び矩形波領域38での制御と同様に、界磁磁束Ψの変更による力率の補正を行えば、直流電流Idcのリプルを抑え、平滑コンデンサ19の発熱を抑えることができる。
以上のように、本実施形態に係る回転電機制御方法は、界磁巻線15によって界磁磁束Ψを発生させる巻線界磁型の回転電機10と、補機13と、回転電機10と補機13に電力を供給するバッテリ11と、を有するシステム(100)において、回転電機10を制御する回転電機制御方法である。この回転電機制御方法では、界磁巻線15に流れる電流である界磁巻線電流Iと、回転電機10の固定子巻線16に流れる電流である固定子巻線電流(I,I,I)と、を検出し、検出した界磁巻線電流I及び固定子巻線電流(I,I,I)に基づいて、界磁磁束Ψを変更することにより、固定子巻線16に印加される電圧である固定子巻線電圧(V,V,V)がゼロとなるタイミングであるゼロ電圧タイミングと、固定子巻線電流(I,I,I)がゼロとなるタイミングであるゼロ電流タイミングと、を近づける。
このように、界磁磁束Ψの変更によってゼロ電圧タイミングとゼロ電流タイミングとを近づけることにより、1つのインバータ12で回転電機10駆動する場合でも、バッテリ11がインバータ12(回転電機10)に供給する直流電流Idcに生じるリプルを低減することができる。その結果、補機13を接続する平滑コンデンサ19に流入するリプルが減り、平滑コンデンサ19の発熱が抑えられる。なお、回転電機10の制御に2つのインバータを用いる場合、通常領域36の制御においても、固定子巻線電流(I,I,I)の波形が理想的な正弦波となり難い場合があるが、本実施形態では、このような問題も生じない。
上記実施形態に係る回転電機制御方法では、原則として、ゼロ電圧タイミングと、ゼロ電流タイミングと、を一致させる。
このように、ゼロ電圧タイミングとゼロ電流タイミングと一致させる場合、力率を1に維持し、バッテリ11がインバータ12に供給する直流電流Idcのリプルを最小限に抑えることができる。このため、補機13を接続する平滑コンデンサ19に流入するリプルも最小となり、平滑コンデンサ19の発熱が最も抑えられる。
上記実施形態に係る回転電機制御方法では、固定子巻線電流(I)が制限され、ゼロ電圧タイミングと、ゼロ電流タイミングと、を一致させることができない場合、ゼロ電圧タイミングと、ゼロ電流タイミングと、の差Δが最小化するように、界磁磁束Ψを変更する。
このように、固定子巻線電流(I)が制限され、ゼロ電圧タイミングと、ゼロ電流タイミングと、を一致させることができない場合でも、実現可能な範囲内において、これらの差Δが最小となるように、界磁磁束Ψを変更すれば、界磁磁束Ψを全く変更しない場合よりも、バッテリ11がインバータ12に供給する直流電流Idcのリプルを抑えることができる。このため、補機13を接続する平滑コンデンサ19に流入するリプルを抑え、平滑コンデンサ19の発熱を低減することができる。
上記実施形態に係る回転電機制御方法では、回転電機10をパルス幅変調制御(PWM制御)によって制御し、少なくとも、パルス幅変調制御における変調率Mが1よりも大きいときに、界磁磁束Ψを変更する。
変調率Mが1よりも大きくなる過変調領域37(特に矩形波領域38)では、ゼロ電圧タイミングと、ゼロ電流タイミングと、の差Δが顕著になり、バッテリ11がインバータ12に供給する直流電流Idcのリプルが大きくなりやすい。このため、上記のように、少なくとも過変調領域37(特に矩形波領域38)での制御において、界磁磁束Ψを変更(調整)し、平滑コンデンサ19の発熱を低減することが好ましい。
上記実施形態に係る回転電機制御方法では、検出した界磁巻線電流I及び固定子巻線電流(I,I,I)に基づいて、バッテリ11から回転電機10に供給する電力の力率が1に近づくように、界磁磁束Ψを変更する。
このように、バッテリ11から回転電機10に供給する電力の力率が1に近づくように界磁磁束Ψを変更すれば、容易に、ゼロ電圧タイミングとゼロ電流タイミングを近づけることができる。したがって、バッテリ11がインバータ12(回転電機10)に供給する直流電流Idcに生じるリプルを低減することができる。その結果、補機13を接続する平滑コンデンサ19に流入するリプルが減り、平滑コンデンサ19の発熱が抑えられる。
上記実施形態に係る回転電機制御方法では、具体的に、要求トルク(τ )に基づいて、界磁巻線電流Iを定める界磁巻線電流指令値I と、固定子巻線電流(I,I,I)を定める固定子巻線電流指令値(I ,I )と、を演算し、力率が1になるときの界磁磁束Ψに基づいて、検出した界磁巻線電流I及び固定子巻線電流(I,I)を補正することにより、補正界磁巻線電流I^及び補正固定子巻線電流(I^,I^)を演算し、補正界磁巻線電流I^及び補正固定子巻線電流(I^,I^)を、界磁巻線電流指令値I 及び固定子巻線電流指令値(I ,I )にフィードバックする。
このように、力率が1になるときの界磁磁束Ψに基づいて、検出した界磁巻線電流I及び固定子巻線電流(I,I)を補正することにより、補正界磁巻線電流I^及び補正固定子巻線電流(I^,I^)を演算し、これをフィードバックすれば、容易に、ゼロ電圧タイミングとゼロ電流タイミングを近づけることができる。したがって、バッテリ11がインバータ12(回転電機10)に供給する直流電流Idcに生じるリプルを低減することができる。その結果、補機13を接続する平滑コンデンサ19に流入するリプルが減り、平滑コンデンサ19の発熱が抑えられる。
上記実施形態に係る回転電機制御装置は、界磁巻線15によって界磁磁束Ψを発生させる巻線界磁型の回転電機10と、補機13と、回転電機10と補機13に電力を供給するバッテリ11と、を有するシステム(100)において、回転電機10を制御する回転電機制御装置(コントローラ14)である。この回転電機制御装置は、界磁巻線15に流れる電流である界磁巻線電流Iと、回転電機10の固定子巻線16に流れる電流である固定子巻線電流(I,I,I)と、を検出し、検出した界磁巻線電流I及び固定子巻線電流(I,I,I)に基づいて、界磁磁束Ψを変更することにより、固定子巻線16に印加される電圧である固定子巻線電圧(V,V,V)がゼロになるタイミングであるゼロ電圧タイミングと、固定子巻線電流(I,I,I)がゼロとなるタイミングであるゼロ電流タイミングと、を近づける。
このように、界磁磁束Ψの変更によってゼロ電圧タイミングとゼロ電流タイミングとを近づけることにより、1つのインバータ12で回転電機10駆動する場合でも、バッテリ11がインバータ12(回転電機10)に供給する直流電流Idcに生じるリプルを低減することができる。その結果、補機13を接続する平滑コンデンサ19に流入するリプルが減り、平滑コンデンサ19の発熱が抑えられる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態で説明した構成は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を限定する趣旨ではない。例えば、上記実施形態及び変形例においては、巻線界磁型の回転電機10を備えるシステムとして車両システム100を例示したが、本発明は、巻線界磁型の回転電機10を備えるシステムであれば、車両以外のシステムにおいても好適である。
10:回転電機,11:バッテリ,12:インバータ,13:補機,14:コントローラ,15:界磁巻線,16:固定子巻線,17:平滑コンデンサ,18:パワーモジュール,19:平滑コンデンサ,21:電流指令値演算部,22:電圧指令値演算部,23:座標変換部,24:PWM信号生成部,25:回転検出部,26:座標変換部,27:力率補正演算部,31:電流検出器,32:電流検出器,33:回転検出器,36:通常領域,37:過変調領域,38:矩形波領域,100:車両システム

Claims (7)

  1. 界磁巻線によって界磁磁束を発生させる巻線界磁型の回転電機と、補機と、前記回転電機と前記補機に電力を供給するバッテリと、を有するシステムにおいて、前記回転電機を制御する回転電機制御方法であって、
    前記界磁巻線に流れる電流である界磁巻線電流と、前記回転電機の固定子巻線に流れる電流である固定子巻線電流と、を検出し、
    検出した前記界磁巻線電流及び前記固定子巻線電流に基づいて、前記界磁磁束を変更することにより、前記固定子巻線に印加される電圧である固定子巻線電圧がゼロとなるタイミングであるゼロ電圧タイミングと、前記固定子巻線電流がゼロとなるタイミングであるゼロ電流タイミングと、を近づける、
    回転電機制御方法。
  2. 請求項1に記載の回転電機制御方法であって、
    前記ゼロ電圧タイミングと、前記ゼロ電流タイミングと、を一致させる、
    回転電機制御方法。
  3. 請求項2に記載の回転電機制御方法であって、
    前記固定子巻線電流が制限され、前記ゼロ電流タイミングと、前記ゼロ電圧タイミングと、を一致させることができない場合、前記ゼロ電圧タイミングと、前記ゼロ電流タイミングと、の差が最小化するように、前記界磁磁束を変更する、
    回転電機制御方法。
  4. 請求項1~3のいずれか1項に記載の回転電機制御方法であって、
    前記回転電機をパルス幅変調制御によって制御し、
    少なくとも、前記パルス幅変調制御における変調率が1よりも大きいときに、前記界磁磁束を変更する、
    回転電機制御方法。
  5. 請求項1~3のいずれか1項に記載の回転電機制御方法であって、
    検出した前記界磁巻線電流及び前記固定子巻線電流に基づいて、前記バッテリから前記回転電機に供給する電力の力率が1に近づくように、前記界磁磁束を変更する、
    回転電機制御方法。
  6. 請求項5に記載の回転電機制御方法であって、
    要求トルクに基づいて、前記界磁巻線電流を定める界磁巻線電流指令値と、前記固定子巻線電流を定める固定子巻線電流指令値と、を演算し、
    前記力率が1になるときの前記界磁磁束に基づいて、検出した前記界磁巻線電流及び前記固定子巻線電流を補正することにより、補正界磁巻線電流及び補正固定子巻線電流を演算し、
    前記補正界磁巻線電流及び前記補正固定子巻線電流を、前記界磁巻線電流指令値及び前記固定子巻線電流指令値にフィードバックする、
    回転電機制御方法。
  7. 界磁巻線によって界磁磁束を発生させる巻線界磁型の回転電機と、補機と、前記回転電機と前記補機に電力を供給するバッテリと、を有するシステムにおいて、前記回転電機を制御する回転電機制御装置であって、
    前記界磁巻線に流れる電流である界磁巻線電流と、前記回転電機の固定子巻線に流れる電流である固定子巻線電流と、を検出し、
    検出した前記界磁巻線電流及び前記固定子巻線電流に基づいて、前記界磁磁束を変更することにより、前記固定子巻線に印加される電圧である固定子巻線電圧がゼロになるタイミングであるゼロ電圧タイミングと、前記固定子巻線電流がゼロとなるタイミングであるゼロ電流タイミングと、を近づける、
    回転電機制御装置。
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