JP2025023627A - 二軸延伸ポリエチレンフィルム及びラミネートフィルム並びに包装体 - Google Patents
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Abstract
【課題】フィルム表層の剛性を調整してシーラントフィルムとのラミネート強度の向上を図った二軸延伸ポリエチレンフィル及びラミネートフィルム並びに包装体を提供する。
【解決手段】縦(MD)方向及び横(TD)方向の二軸方向に延伸されてなる少なくとも二層以上の積層体である二軸延伸フィルムであって、二軸延伸フィルムの一側表層である第一表層の断面の原子間力顕微鏡(AFM)により測定される弾性率(E1)が1.6GPa以下である。また、二軸延伸フィルムの他側表層である第二表層の断面の原子間力顕微鏡(AFM)により測定される弾性率(E2)が、弾性率(E1)との関係においてE1≦E2を満たすことが好ましい。
【選択図】なし
【解決手段】縦(MD)方向及び横(TD)方向の二軸方向に延伸されてなる少なくとも二層以上の積層体である二軸延伸フィルムであって、二軸延伸フィルムの一側表層である第一表層の断面の原子間力顕微鏡(AFM)により測定される弾性率(E1)が1.6GPa以下である。また、二軸延伸フィルムの他側表層である第二表層の断面の原子間力顕微鏡(AFM)により測定される弾性率(E2)が、弾性率(E1)との関係においてE1≦E2を満たすことが好ましい。
【選択図】なし
Description
本発明は、二軸延伸ポリエチレンフィルム及び二軸延伸ポリエチレンフィルムを使用したラミネートフィルム並びに包装体に関し、特にラミネート強度に優れた二軸延伸ポリエチレンフィルム及びラミネートフィルム並びに包装体に関する。
近年、環境問題に対する意識の高まりから様々な分野で環境に配慮した取り組みがなされており、例えば、使用後の製品を回収し、再度製品として加工して利用するリサイクルが、環境問題に対応した代表的な取り組みの1つとして知られている。
一般に、食品等の包装分野では、高い要求品質の実現のために複数の異なる種類の合成樹脂フィルムを積層した積層体が使用される。環境に配慮する観点から、この種の積層体においても、リサイクル等により環境負荷の低減を図ることが望まれる。通常、廃棄後の積層体をリサイクルする際は、異なる種類のフィルムが積層されていることから、積層体を構成する樹脂を再溶融しても相溶化しない樹脂の混合物となってリサイクル資源の品質が大きく低下するため、リサイクル材料として不向きであった。
そこで、このような問題を解決すべく、積層体の基材フィルムがシーラントフィルムと単一素材(モノマテリアル)とされた積層体が提案されている。この種の積層体は、基材フィルムとシーラントフィルムの双方にポリエチレン系樹脂を用いて単一素材としているため、再溶融による相溶化が良好となり、リサイクル材料として利用することが可能となる。
上記積層体では、基材フィルムとシーラントフィルムのモノマテリアル化を図りながら剛性、靭性、耐熱性等の優れたフィルム性能を備えることが求められる。そこで、シーラントフィルムとしてヒートシール性ポリエチレンフィルムを使用した積層体のモノマテリアル化に対応しつつ、剛性、靭性、耐熱性等の性能を向上させた延伸ポリエチレンフィルムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
この種の積層体では、剛性等の性能の他、基材フィルムとシーラントフィルムの貼り合わせに際してのラミネート強度(接着強度)も重要なフィルム性能として挙げられる。基材フィルムとシーラントフィルムのラミネート強度が低いと、ヒートシール強度や包装袋とした際の耐破袋性等が低下したり、引裂強度が高くなって引き裂きにくくなったりする等の不具合が生じやすくなるおそれがある。
そこで発明者らは、モノマテリアル化に対応した基材フィルムとシーラントフィルムについて、二軸延伸ポリエチレンフィルムを基材フィルムとして使用して、基材フィルムとシーラントフィルムのラミネート強度を向上させるべく鋭意検討を重ねた。その結果、基材フィルムの剛性にかかわらず、フィルム表層の剛性とシーラントフィルムとのラミネート強度とに相関があることを見出した。
本発明は、前記の点に鑑みなされたものであって、フィルム表層の剛性を調整してシーラントフィルムとのラミネート強度の向上を図った二軸延伸ポリエチレンフィル及びラミネートフィルム並びに包装体を提供するものである。
すなわち、第1の発明は、縦(MD)方向及び横(TD)方向の二軸方向に延伸されてなる少なくとも二層以上の積層体である二軸延伸フィルムであって、前記二軸延伸フィルムの一側表層である第一表層の断面の原子間力顕微鏡(AFM)により測定される弾性率(E1)が1.6GPa以下であることを特徴とする二軸延伸ポリエチレンフィルムに係る。
第2の発明は、第1の発明において、前記二軸延伸フィルムの他側表層である第二表層の断面の前記原子間力顕微鏡(AFM)により測定される弾性率(E2)が、前記弾性率(E1)との関係においてE1≦E2を満たす二軸延伸ポリエチレンフィルムに係る。
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記二軸延伸フィルムの前記第一表層に表面処理が施される二軸延伸ポリエチレンフィルムに係る。
第4の発明は、第1又は第2の発明において、前記二軸延伸フィルムが三層以上の積層体である二軸延伸ポリエチレンフィルムに係る。
第5の発明は、第3の発明において、前記二軸延伸フィルムが三層以上の積層体である二軸延伸ポリエチレンフィルムに係る。
第6の発明は、第1又は第2の発明の二軸延伸ポリエチレンフィルムを用いたラミネートフィルムであって、前記二軸延伸ポリエチレンフィルムの前記第一表層に、少なくともポリエチレン樹脂からなるシーラントフィルムが積層されてなるラミネートフィルムに係る。
第7の発明は、第3の発明の二軸延伸ポリエチレンフィルムを用いたラミネートフィルムであって、前記二軸延伸ポリエチレンフィルムの前記第一表層に、少なくともポリエチレン樹脂からなるシーラントフィルムが積層されてなるラミネートフィルムに係る。
第8の発明は、第4の発明の二軸延伸ポリエチレンフィルムを用いたラミネートフィルムであって、前記二軸延伸ポリエチレンフィルムの前記第一表層に、少なくともポリエチレン樹脂からなるシーラントフィルムが積層されてなるラミネートフィルムに係る。
第9の発明は、第6の発明のラミネートフィルムよりなる包装体に係る。
第10の発明は、第7の発明のラミネートフィルムよりなる包装体に係る。
第11の発明は、第8の発明のラミネートフィルムよりなる包装体に係る。
第1の発明に係る二軸延伸ポリエチレンフィルムによると、縦(MD)方向及び横(TD)方向の二軸方向に延伸されてなる少なくとも二層以上の積層体である二軸延伸フィルムであって、前記二軸延伸フィルムの一側表層である第一表層の断面の原子間力顕微鏡(AFM)により測定される弾性率(E1)が1.6GPa以下であることから、第一表層の柔軟性が良好となり、第一表層にシーラントフィルムを積層させた場合にシーラントフィルムとのラミネート強度が良好となる。
第2の発明に係る二軸延伸ポリエチレンフィルムによると、第1の発明において、前記二軸延伸フィルムの他側表層である第二表層の断面の前記原子間力顕微鏡(AFM)により測定される弾性率(E2)が、前記弾性率(E1)との関係においてE1≦E2を満たすことから、第二表層は第一表層に比べて剛性が高まることで包装体としての加工適性が向上する。
第3の発明に係る二軸延伸ポリエチレンフィルムによると、第1又は第2の発明において、前記二軸延伸フィルムの前記第一表層に表面処理が施されることから、シーラントフィルムを前記第一表層に貼り合わせる場合、該第一表層と前記シーラントフィルムの密着性が良好になる。
第4の発明に係る二軸延伸ポリエチレンフィルムによると、第1又は第2の発明において、前記二軸延伸フィルムが、三層以上の積層体であることから、三層以上の積層体からなる二軸延伸ポリエチレンフィルムにおいてラミネート強度を優れたものにすることができる。
第5の発明に係る二軸延伸ポリエチレンフィルムによると、第3の発明において、前記二軸延伸フィルムが、三層以上の積層体であることから、三層以上の積層体からなる二軸延伸ポリエチレンフィルムにおいてラミネート強度を優れたものにすることができる。
第6の発明に係るラミネートフィルムによると、第1又は第2の発明の二軸延伸ポリエチレンフィルムの前記第一表層に、少なくともポリエチレン樹脂からなるシーラントフィルムが積層されてなるため、単一素材(モノマテリアル)を達成してリサイクルを容易としつつ、二軸延伸ポリエチレンフィルムとシーラントフィルムのラミネート強度に優れたラミネートフィルムとすることができる。
第7の発明に係るラミネートフィルムによると、第3の発明の二軸延伸ポリエチレンフィルムの前記第一表層に、少なくともポリエチレン樹脂からなるシーラントフィルムが積層されてなるため、単一素材(モノマテリアル)を達成してリサイクルを容易としつつ、二軸延伸ポリエチレンフィルムとシーラントフィルムのラミネート強度に優れたラミネートフィルムとすることができる。
第8の発明に係るラミネートフィルムによると、第4の発明の二軸延伸ポリエチレンフィルムの前記第一表層に、少なくともポリエチレン樹脂からなるシーラントフィルムが積層されてなるため、単一素材(モノマテリアル)を達成してリサイクルを容易としつつ、二軸延伸ポリエチレンフィルムとシーラントフィルムのラミネート強度に優れたラミネートフィルムとすることができる。
第9の発明に係る包装体によると、第6の発明のラミネートフィルムよりなるため、包装体をリサイクルが容易なラミネートフィルムで構成してリサイクル可能とすることができる。
第10の発明に係る包装体によると、第7の発明のラミネートフィルムよりなるため、包装体をリサイクルが容易なラミネートフィルムで構成してリサイクル可能とすることができる。
第11の発明に係る包装体によると、第8の発明のラミネートフィルムよりなるため、包装体をリサイクルが容易なラミネートフィルムで構成してリサイクル可能とすることができる。
本発明の一実施形態に係る二軸延伸ポリエチレンフィルムは、縦(MD)方向及び横(TD)方向の二軸方向に延伸されてなる少なくとも二層以上の積層体である二軸延伸フィルムである。本発明の二軸延伸ポリエチレンフィルムは、印刷や蒸着等が施されるラミネートフィルムの基材フィルムとして使用することができる。このラミネートフィルムは、例えば食品、日用品、部品等の種々の物品の包装体として好適に使用される。
本発明の二軸延伸ポリエチレンフィルムは、ポリエチレン系樹脂を主原料とする単一素材(モノマテリアル)で構成される。そのため、リサイクル材料としても好適に利用することができる。なお、ここでいう単一素材とは、各層の主原料が同種の樹脂材料であることを意味し、各種添加剤等が少量含有されることは許容される。
二軸延伸ポリエチレンフィルムに用いられる樹脂原料としてのポリエチレン系樹脂は、石油由来、バイオマス由来、マテリアルリサイクル由来、ケミカルリサイクル由来等のポリエチレン系樹脂から適宜選択され、エチレンの単独重合体又はエチレンと炭素数3以上のα-オレフィン、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ヘプテン、1-ヘキセン、1-オクテン等のα-オレフィンとのランダム共重合体である。ポリエチレン系樹脂は、上記の1種ないし2種以上の混合物を用いることもできる。
ポリエチレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は特に制限されない。例えば、JIS K 7210に準拠し、190℃、荷重2.16kgの条件で測定されたMFRが0.1~30g/10分、特には0.1~20g/10分のポリエチレン系樹脂が好ましく用いられる。使用されるポリエチレン系樹脂のMFRが低すぎる場合、押出機の圧力が過度に高くなり、生産性が低下するきらいがある。MFRが高すぎる場合、樹脂の溶融粘度が低くなり、延伸時に破断しやすくなり、フィルム化が難しくなるきらいがある。
二軸延伸ポリエチレンフィルムに用いられる樹脂原料には、本発明の目的を損なわない範囲で、エチレン・α-オレフィンランダム共重合体エラストマー等のポリオレフィン系エラストマーを適宜配合することができる。また、同様に酸化防止剤、中和剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、核剤、着色剤等の添加剤も適宜配合することができる。
本発明の二軸延伸ポリエチレンフィルムは、Tダイ法やインフレーション法等の公知のフィルムの成形方法により得られる。特には、Tダイ法により賦形されたシートが延伸されて成形されることが好ましい。Tダイ法によるフィルムの成形では、ラミネートフィルムの基材フィルムとして求められる高い厚薄精度が得られる点で優位である。二軸延伸ポリエチレンフィルムは、フィルムの縦(MD)方向及び横(TD)方向の二軸方向に延伸された二軸延伸フィルムとされる。二軸延伸は逐次二軸延伸又は同時二軸延伸のどちらも良好に用いられる。
例として、縦(MD)延伸及び横(TD)延伸の逐次二軸延伸フィルムの製造方法を説明する。ポリエチレン系樹脂を押出機で溶融、混練して、Tダイからシート状に押出し、温度10~70℃のチルロールで冷却させる。70~130℃の延伸ロールでシートをロール間延伸で縦(MD)方向に3~8倍延伸させる。次いで、横(TD)方向に100~160℃の温度で5~15倍延伸させ、少なくとも一方の表面にコロナ放電処理を施し、ワインダーで二軸延伸ポリエチレンフィルムを巻取る。
縦(MD)延伸倍率の下限は、おおむね3倍である。縦(MD)延伸倍率が低すぎると膜厚ムラが生ずるおそれがある。縦(MD)延伸倍率の上限は8倍であり、好ましくは7倍である。縦(MD)延伸倍率が高すぎると横(TD)延伸がし難くなるおそれがある。縦(MD)延伸温度の下限は70℃、好ましくは80℃である。縦(MD)延伸温度が低すぎると均一に延伸されず、膜厚ムラが生ずるおそれがある。縦(MD)延伸温度の上限は130℃である。縦(MD)延伸温度が高すぎるとシートとロールの密着性が向上し、延伸できなくなるおそれがある。横(TD)延伸倍率の下限は5倍であり、好ましくは6倍である。横(TD)延伸倍率が低すぎると膜厚ムラが生ずるおそれがある。横(TD)延伸倍率の上限は15倍であり、好ましくは14倍、さらに好ましくは13倍である。横(TD)延伸倍率が高すぎると延伸時に破断が生ずるおそれがある。横(TD)延伸温度の下限は100℃である。横(TD)延伸温度が低すぎると膜厚ムラが生ずるおそれがある。横(TD)延伸温度の上限は160℃である。横(TD)延伸温度が高すぎると延伸時にフィルムの破断が生ずるおそれがある。
本発明の二軸延伸ポリエチレンフィルムは、第一表層と第二表層を含む二層以上の積層フィルムとされる。第一表層は、当該二軸延伸ポリエチレンフィルムの一側表層であって、特にラミネートフィルムを作製する場合のシーラントフィルムが貼り合わされる側の表層である。一方、第二表層は、第一表層に対する二軸延伸ポリエチレンフィルムの他側表層である。第一及び第二表層には、必要に応じてアンチブロッキング剤が適宜添加される。また、本発明の二軸延伸ポリエチレンフィルムは、三層以上の積層フィルムとしてもよい。三層以上の積層フィルムでは、第一表層と第二表層の他、例えば第一表層と第二表層との間に介在されて両層の支持体となる基材層等が設けられる。基材層には必要に応じて適宜界面活性剤が添加される。積層フィルムでは、所望する機能等に応じて、接着層等の適宜の層を積層することができる。なお、本発明の二軸延伸ポリエチレンフィルムでは、両表層にアンチブロッキング剤を添加する場合、透明性の観点から三層の積層フィルムが好ましい。また、第一表層と基材層との間及び、第二表層と基材層との間にそれぞれ中間層を設けることで、中間層にバリア性などの機能性を付与できる観点から五層の積層フィルムが好ましい。
本発明の二軸延伸ポリエチレンフィルムの表層に添加されるアンチブロッキング剤は、種類等は特に限定されず、有機系又は無機系の粒子、あるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。有機系粒子は、例えば、乳化重合又は懸濁重合等により得られる。有機系粒子としては、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリアミド等が挙げられる。無機系粒子としては、例えば、シリカ、ゼオライト、タルク等が挙げられる。これらのアンチブロッキング剤は1種又は2種以上を組み合わせて用いられてもよい。フィルムの耐ブロッキング性、透視感等の観点から、有機系粒子ではポリメチルメタクリレート、また、無機系粒子ではシリカ、ゼオライトが好ましく用いられる。アンチブロッキング剤の添加方法は特に制限されず、例えば、高濃度のマスターバッチを、フィルムの樹脂原料に混合したり、ドライブレンドで混合する等、公知の方法で添加することができる。なお、アンチブロッキング剤の表層への添加量は特に制限されず適宜とされる。
二軸延伸ポリエチレンフィルムの基材層に添加される界面活性剤は、ラウリルジエタノールアミン、ミリスチルジエタノールアミン、パルミチルジエタノールアミン、オレイルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン等の脂肪族アミン化合物及びこれらのエステル化合物である脂肪族アミンエステル化合物、ラウリルジエタノールアミド、ミリスチルジエタノールアミド、パルミチルジエタノールアミド、オレイルジエタノールアミド、ステアリルジエタノールアミド等の脂肪族アミド化合物及びこれらのエステル化合物である脂肪族アミドエステル化合物、グリセリンモノオレート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート等の多価アルコール、ソルビタンラウレート、ソルビタンパルミテート、ソルビタンオレート、ソルビタンステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩等のスルホン酸類、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩等の硫酸エステル類、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩等のリン酸エステル類があり、適宜選択されて使用される。なお、界面活性剤の基材層への添加量は特に制限されず適宜とされる。
本発明の二軸延伸ポリエチレンフィルムでは、厚さについては特に制限されず、需要や用途等に応じて適宜決定され、例えば5~100μm、好ましくは10~70μmとされるのがよい。このうち、二軸延伸ポリエチレンフィルムの第一表層及び第二表層の厚みは0.3~5μm、好ましくは0.4~4μm、さらに好ましくは0.5~2μmとされるのがよい。表層が薄すぎる場合には、加工時にフィルムがロールを通過する際に、アンチブロッキング剤の脱落のきらいがあり、厚すぎる場合にはアンチブロッキング剤の添加量が多くなってフィルムの透視感が劣るきらいがある。
従来、包装用資材等に用いられるラミネートフィルムの基材フィルムとして使用される二軸延伸ポリエチレンフィルムでは、剛性、靭性、耐熱性等のフィルム性能の他、シーラントフィルムが貼着される場合の接着性(ラミネート強度)が要求される。フィルム同士の接着においては、各フィルムの樹脂の相溶性や添加剤等の調整、フィルムの柔軟性等の種々の要素が接着性に影響すると考えられる。そこで発明者は、フィルムの柔軟性(剛性)に着目し、鋭意検討を重ねた。一般に、フィルムの柔軟性(剛性)は、フィルム全体(全層)の弾性率として把握される。そして、この種の二軸延伸ポリエチレンフィルムでは、フィルムの弾性率を向上させて剛性を高める傾向がある。しかしながら、二軸延伸ポリエチレンフィルムのシーラントフィルムとの密着部分が表層(第一表層)であることから、発明者は、二軸延伸ポリエチレンフィルムの剛性にかかわらず、第一表層の剛性とシーラントフィルムとのラミネート強度とに相関があることを見出した。すなわち、本発明の二軸延伸ポリエチレンフィルムは、第一表層の断面の原子間力顕微鏡(AFM)により測定される弾性率E1が1.6GPa以下、好ましくは0.2GPa~1.5GPa、さらに好ましくは0.2GPa~1.4GPaであることを要する。
原子間力顕微鏡(AFM)を用いた測定は、探針と測定対象との間に作用する原子間力を検出するものであり、積層フィルムの一層(第一又は第二表層)の物性を測定することが可能である。第一表層の弾性率E1は、第一表層の硬さを示す指標であり、原子間力顕微鏡(AFM)により第一表層の表面側から測定される。原子間力顕微鏡(AFM)を用いた測定では、所定寸法に切断した積層フィルムである二軸延伸ポリエチレンフィルムを用意し、この二軸延伸ポリエチレンフィルムの横(TD)方向に切断した断面における第一表層の各位置の弾性率E1が測定される。この弾性率E1は、カンチレバー先端のバネ定数が既知のプローブ(探針)を第一表層の各位置に接触させ、所定の押込み荷重によるプローブの撓み量を測定することに基づいて求められる。
このようにして測定された第一表層の弾性率E1は、後述の実施例から、1.6GPa以下である場合に良好な柔軟性が得られて、第一表層とシーラントフィルムの密着性が向上すると考えられる。第一表層の弾性率E1が大き過ぎると、第一表層の柔軟性が不十分となって第一表層とシーラントフィルムの密着性が低下し、シーラントフィルムが第一表層から剥離し易くなるおそれがある。
さらに、本発明の二軸延伸ポリエチレンフィルムは、フィルムの他側表層である第二表層の断面の前記原子間力顕微鏡(AFM)により測定される弾性率E2が、弾性率E1との関係においてE1≦E2を満たすことが好ましい。この弾性率E2については第二表層の硬さを示す指標であることから、弾性率E2が弾性率E1以上になると、第二表層は第一表層に比べて剛性が高まる。これにより包装体としての加工適性が向上する。また、第二表層が第一表層に比べて剛性が高まると、第二表層は撓み難くなることから、二軸延伸ポリエチレンフィルムは平面形状を維持し易くなって該二軸延伸ポリエチレンフィルムの第一表層にシーラントフィルムを密着させ易くなる。さらに、本発明の二軸延伸ポリエチレンフィルムは、第二表層が撓み難く平面形状が維持し易く包装用資材として取り扱い易いものにもなる。
本発明の二軸延伸ポリエチレンフィルムでは、ラミネートフィルムの基材フィルムとしての利用範囲を広げるために、第一表層に表面処理を施すことが好ましい。表面処理としては、例えば、大気圧プラズマ処理、火炎処理、コロナ放電処理等が挙げられる。表面処理された表面では、JIS K 6768(1999)に準拠したぬれ張力試験方法により測定されるぬれ張力が、36mN/m以上となることが好ましい。ぬれ張力が低すぎる場合、印刷不良やラミネート不良の原因となるため、好ましくない。なお、必要に応じて第二表層に対しても同様に表面処理を施してもよい。
本発明では、二軸延伸ポリエチレンフィルムを基材フィルムとして使用し、印刷加工、ガスバリア層、シーラントフィルム等を適宜積層させたラミネートフィルムを提供することができる。印刷加工は、二軸延伸ポリエチレンフィルムのフィルム表面に施され、公知のスクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷やグラビア印刷等の方法が用いられる。また、本発明の二軸延伸ポリエチレンフィルムに印刷が行われる場合には、印刷に先立ちフィルム表面をコロナ放電処理等で上述した表面処理がなされてインキのなじみや密着性の向上が図られる。その他に二軸延伸ポリエチレンフィルムの第一表層にシーラントフィルムを貼り合わせる場合には、第一表層に表面処理が施されることにより第一表層とシーラントフィルムの密着性が良好になる。
ガスバリア層は、水蒸気や酸素等へのバリア性を付与する目的で、表層上に直接又はアンカーコート層を介して配される。本発明の二軸延伸ポリエチレンフィルムにガスバリア層を配する場合には、フィルム表面をコロナ放電処理等で予め表面処理がなされることによりアンカーコート層やガスバリア層に対するぬれ性、密着性の向上が図られる。
アンカーコート層は特に制限されず、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。ガスバリア層も特に制限されず、金属薄膜層や無機酸化物層等が挙げられる。金属薄膜層はアルミニウム、金、銀、銅、クロム等の公知の金属からなる薄膜層であり、これら金属の酸化物、硫化物、窒化物の薄膜層とされても良い。また、金属薄膜層は1層や、異種又は同種の2種以上の複数層とされても良い。無機酸化物層は、酸化アルミニウム、酸化珪素、フッ化マグネシウム、酸化マグネシウム等の公知の無機酸化物からなり、1種又は2種以上の無機酸化物が用いられた薄膜層とされる。
シーラントフィルムは、ポリエチレン樹脂からなるヒートシール性を有するフィルムである。シーラントフィルムに使用されるポリエチレン樹脂は、例えば直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)等から単独又は複数を適宜組み合わせて選択される。基材フィルムとなる二軸延伸ポリエチレンフィルムと同じくポリエチレン樹脂からなるシーラント層とすることにより、単一素材(モノマテリアル)を達成してリサイクルを容易としつつ、基材フィルムとシーラント層のラミネート強度を向上させたラミネートフィルムを得ることができる。さらに、該ラミネートフィルムを用いた包装体とすることもできる。これにより既存のラミネートフィルムや包装体につき、リサイクルが容易に可能なフィルムや包装体としての代替品として有望である。
後述の各材料を配合して溶融、混練して、Tダイ法により3層(第一表層、基材層及び第二表層)に押出し、縦(MD)方向に5倍に延伸した後、横(TD)方向に8倍に延伸して、フィルム厚さが20μm、第一表層及び第二表層の厚さが1μm、基材層の厚さが18μmとなるように製膜した。その後、第一表層にコロナ放電処理により表面処理を施して、試作例1~6の二軸延伸ポリエチレンフィルムを得た。
各試作例において、樹脂の配合割合は、基材層又は表層の各層ごとに100重量%となるように配合した。また、二軸延伸ポリエチレンフィルムの製造においてTダイから押出したシートを縦(MD)方向に延伸させる際の延伸ロールの温度は115℃、縦(MD)方向に延伸されたシートからなるフィルムを横(TD)方向に延伸できる温度まで昇温する温度は143℃~145℃、縦(MD)方向に延伸されたフィルムを横(TD)方向に延伸する際のフィルムの加熱温度は122℃~125℃とした。
[使用材料]
各層の材料として、以下の樹脂、アンチブロッキング剤及び界面活性剤を使用した。各樹脂材料において、メルトフローレート(MFR)は、JIS K 7210(2014)に準拠し、試験温度190℃で測定した値である。
各層の材料として、以下の樹脂、アンチブロッキング剤及び界面活性剤を使用した。各樹脂材料において、メルトフローレート(MFR)は、JIS K 7210(2014)に準拠し、試験温度190℃で測定した値である。
[樹脂材料]
・PE1:直鎖状低密度ポリエチレン(ダウ・ケミカル製;TF80)、密度0.926g/cm3、MFR(190℃/2.16Kg):1.7g/10分
・PE2:エチレン・α-オレフィンランダム共重合体エラストマー(三井化学株式会社製:A-4085S)、密度0.885g/cm3、MFR(190℃/2.16Kg):3.6g/10分、コモノマー炭素数4
・PE3:高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製;HY430)、密度0.954g/cm3、MFR(190℃/2.16Kg):0.8g/10分
・PE4:高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製;HF562)、密度0.963g/cm3、MFR(190℃/2.16Kg):7.5g/10分
・PE1:直鎖状低密度ポリエチレン(ダウ・ケミカル製;TF80)、密度0.926g/cm3、MFR(190℃/2.16Kg):1.7g/10分
・PE2:エチレン・α-オレフィンランダム共重合体エラストマー(三井化学株式会社製:A-4085S)、密度0.885g/cm3、MFR(190℃/2.16Kg):3.6g/10分、コモノマー炭素数4
・PE3:高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製;HY430)、密度0.954g/cm3、MFR(190℃/2.16Kg):0.8g/10分
・PE4:高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製;HF562)、密度0.963g/cm3、MFR(190℃/2.16Kg):7.5g/10分
[アンチブロッキング剤(AB剤)]
・AB1:富士シリシア化学株式会社製;SYLYSIA430、平均粒子径4.1μm
・AB1:富士シリシア化学株式会社製;SYLYSIA430、平均粒子径4.1μm
[界面活性剤]
・AS1:グリセリンモノステアレート
・AS2:ステアリルジエタノールアミン
・AS1:グリセリンモノステアレート
・AS2:ステアリルジエタノールアミン
[試作例1]
試作例1は、第一表層にPE1を99.7重量%、AB1を0.3重量%使用し、基材層にPE1を100重量%使用し、第二表層にPE1を99.7重量%、AB1を0.3重量%使用した二軸延伸ポリエチレンフィルムである。
試作例1は、第一表層にPE1を99.7重量%、AB1を0.3重量%使用し、基材層にPE1を100重量%使用し、第二表層にPE1を99.7重量%、AB1を0.3重量%使用した二軸延伸ポリエチレンフィルムである。
[試作例2]
試作例2は、第一表層にPE1を89.7重量%、PE2を10重量%、AB1を0.3重量%使用し、基材層にPE1を99.7重量%、AS1を0.2重量%、AS2を0.1重量%使用し、第二表層にPE1を99.7重量%、AB1を0.3重量%使用した二軸延伸ポリエチレンフィルムである。
試作例2は、第一表層にPE1を89.7重量%、PE2を10重量%、AB1を0.3重量%使用し、基材層にPE1を99.7重量%、AS1を0.2重量%、AS2を0.1重量%使用し、第二表層にPE1を99.7重量%、AB1を0.3重量%使用した二軸延伸ポリエチレンフィルムである。
[試作例3]
試作例3は、第一表層にPE1を39.7重量%、PE2を60重量%、AB1を0.3重量%使用し、基材層にPE1を99.7重量%、AS1を0.2重量%、AS2を0.1重量%使用し、第二表層にPE1を99.7重量%、AB1を0.3重量%使用した二軸延伸ポリエチレンフィルムである。
試作例3は、第一表層にPE1を39.7重量%、PE2を60重量%、AB1を0.3重量%使用し、基材層にPE1を99.7重量%、AS1を0.2重量%、AS2を0.1重量%使用し、第二表層にPE1を99.7重量%、AB1を0.3重量%使用した二軸延伸ポリエチレンフィルムである。
[試作例4]
試作例4は、第一表層にPE1を70重量%、PE3を29.7重量%、AB1を0.3重量%使用し、基材層にPE1を79.7重量%、PE3を20重量%、AS1を0.2重量%、AS2を0.1重量%使用し、第二表層にPE1を70重量%、PE3を29.7重量%、AB1を0.3重量%使用した二軸延伸ポリエチレンフィルムである。
試作例4は、第一表層にPE1を70重量%、PE3を29.7重量%、AB1を0.3重量%使用し、基材層にPE1を79.7重量%、PE3を20重量%、AS1を0.2重量%、AS2を0.1重量%使用し、第二表層にPE1を70重量%、PE3を29.7重量%、AB1を0.3重量%使用した二軸延伸ポリエチレンフィルムである。
[試作例5]
試作例5は、第一表層にPE1を69.7重量%、PE3を20重量%、PE4を10重量%、AB1を0.3重量%使用し、基材層にPE1を99.7重量%、AS1を0.2重量%、AS2を0.1重量%使用し、第二表層にPE1を99.7重量%、AB1を0.3重量%使用した二軸延伸ポリエチレンフィルムである。
試作例5は、第一表層にPE1を69.7重量%、PE3を20重量%、PE4を10重量%、AB1を0.3重量%使用し、基材層にPE1を99.7重量%、AS1を0.2重量%、AS2を0.1重量%使用し、第二表層にPE1を99.7重量%、AB1を0.3重量%使用した二軸延伸ポリエチレンフィルムである。
[試作例6]
試作例6は、第一表層にPE1を5.7重量%、PE3を62.4重量%、PE4を31.6重量%、AB1を0.3重量%使用し、基材層にPE1を99.7重量%、AS1を0.2重量%、AS2を0.1重量%使用し、第二表層にPE1を99.7重量%、AB1を0.3重量%使用した二軸延伸ポリエチレンフィルムである。
試作例6は、第一表層にPE1を5.7重量%、PE3を62.4重量%、PE4を31.6重量%、AB1を0.3重量%使用し、基材層にPE1を99.7重量%、AS1を0.2重量%、AS2を0.1重量%使用し、第二表層にPE1を99.7重量%、AB1を0.3重量%使用した二軸延伸ポリエチレンフィルムである。
試作例1~6の二軸延伸ポリエチレンフィルムについての引張弾性率及び第一表層のAFM弾性率E1、第二表層のAFM弾性率E2をそれぞれ測定し、この二軸延伸ポリエチレンフィルムを用いたラミネートフィルムについてラミネート強度を測定した。後述の表1に、各試作例1~6に使用した樹脂材料の配合割合とともに、引張弾性率、第一及び第二表層のAFM弾性率E1,E2及びラミネート強度の測定結果を示す。
[二軸延伸ポリエチレンフィルムの引張弾性率の測定]
試作例1~6の二軸延伸ポリエチレンフィルムについて、JIS K 7127(1999)に準拠し、引張弾性率を測定した。引張弾性率は、当該フィルム全体(全層)の剛性を把握するための指標である。この測定では、試作例1~6の二軸延伸ポリエチレンフィルムから15mm×200mm(TD方向×MD方向)の長方形の試験片を切り出し、試験片を保持するチャック間を100mm、試験片に対する引張速度を200mm/分で、雰囲気温度23℃における縦(MD)方向の二軸延伸ポリエチレンフィルムの引張弾性率を測定した。
試作例1~6の二軸延伸ポリエチレンフィルムについて、JIS K 7127(1999)に準拠し、引張弾性率を測定した。引張弾性率は、当該フィルム全体(全層)の剛性を把握するための指標である。この測定では、試作例1~6の二軸延伸ポリエチレンフィルムから15mm×200mm(TD方向×MD方向)の長方形の試験片を切り出し、試験片を保持するチャック間を100mm、試験片に対する引張速度を200mm/分で、雰囲気温度23℃における縦(MD)方向の二軸延伸ポリエチレンフィルムの引張弾性率を測定した。
[第一及び第二表層のAFM弾性率の測定]
AFM弾性率の測定では、原子間力顕微鏡(AFM)により試作例1~6の第一表層の断面に対して垂直方向におけるAFM弾性率E1と、第二表層の断面に対して垂直方向におけるAFM弾性率E2とを測定した。第一表層のAFM弾性率E1及び第二表層のAFM弾性率E2の測定に際して、試作例1~6の二軸延伸ポリエチレンフィルムを30mm×30mm(MD方向×TD方向)に切断して測定片を得た。次に、各試作例の測定片を横(TD)方向に公知のミクロトーム法によって切断して断面を切り出し、この断面を測定面として原子間力顕微鏡「NANOSCOPE V/DIMENSION ICON(ブルガー・エイエックス社製)」に固定する。カンチレバー先端のバネ定数が既知のプローブ(探針)に加える押込み荷重を一定にして、上記測定面を固定した固定台を上下動させて、探針と測定面(測定片)を接触させる。測定片の移動量と前記カンチレバーに働く力(探針の撓み量とバネ定数の積)との関係をプロットした曲線であるフォースカーブの測定を実施した。なお測定条件は下記のとおりである。
測定モード:AFM-MAモード(PeakForce-QNM)
プローブの先端曲率半径:30nm
プローブのバネ定数:40N/m
測定温度:23℃
走査速度:0.25Hz
測定点数:256×256
ポアソン比:0.3
AFM弾性率の測定では、原子間力顕微鏡(AFM)により試作例1~6の第一表層の断面に対して垂直方向におけるAFM弾性率E1と、第二表層の断面に対して垂直方向におけるAFM弾性率E2とを測定した。第一表層のAFM弾性率E1及び第二表層のAFM弾性率E2の測定に際して、試作例1~6の二軸延伸ポリエチレンフィルムを30mm×30mm(MD方向×TD方向)に切断して測定片を得た。次に、各試作例の測定片を横(TD)方向に公知のミクロトーム法によって切断して断面を切り出し、この断面を測定面として原子間力顕微鏡「NANOSCOPE V/DIMENSION ICON(ブルガー・エイエックス社製)」に固定する。カンチレバー先端のバネ定数が既知のプローブ(探針)に加える押込み荷重を一定にして、上記測定面を固定した固定台を上下動させて、探針と測定面(測定片)を接触させる。測定片の移動量と前記カンチレバーに働く力(探針の撓み量とバネ定数の積)との関係をプロットした曲線であるフォースカーブの測定を実施した。なお測定条件は下記のとおりである。
測定モード:AFM-MAモード(PeakForce-QNM)
プローブの先端曲率半径:30nm
プローブのバネ定数:40N/m
測定温度:23℃
走査速度:0.25Hz
測定点数:256×256
ポアソン比:0.3
次に、探針先端の形状を球と仮定した接触モデルの理論計算式により探針と測定面の接触面積を算出し、該接触面積を用い上記の測定により得られた結果(フォースカーブ)について解析ソフト「NanoScope Analysis」を用いて解析を行い、解析によって得られる第一表層にあたる512点の弾性率の平均値を第一表層のAFM弾性率E1、第二表層にあたる512点の弾性率の平均値を第二表層のAFM弾性率E2として算出した。
[ラミネートフィルムの作製]
試作例1~6の二軸延伸ポリエチレンフィルムの第一表層に無延伸ポリエチレンフィルム(フタムラ化学株式会社製;LL-XMTN#50)をドライラミネート(接着層)により積層してラミネートフィルムを作製した。接着層は、主剤(東洋モートン株式会社製,TM-329)と、硬化剤(東洋モートン株式会社製,CAT-8B)と、酢酸エチルを混合して調整し第一表層の表面に2g/m2を塗布し80℃で乾燥させた。その後、第一表層の表面に上記の無延伸ポリエチレンフィルムを貼り合わせてラミネートフィルムを作製した。
試作例1~6の二軸延伸ポリエチレンフィルムの第一表層に無延伸ポリエチレンフィルム(フタムラ化学株式会社製;LL-XMTN#50)をドライラミネート(接着層)により積層してラミネートフィルムを作製した。接着層は、主剤(東洋モートン株式会社製,TM-329)と、硬化剤(東洋モートン株式会社製,CAT-8B)と、酢酸エチルを混合して調整し第一表層の表面に2g/m2を塗布し80℃で乾燥させた。その後、第一表層の表面に上記の無延伸ポリエチレンフィルムを貼り合わせてラミネートフィルムを作製した。
[ラミネート強度の測定]
ラミネート強度は、接着適性の指標の1つであって、JIS K 6854-3(1999)に準拠して測定した。この測定では、試作例1~6の二軸延伸ポリエチレンフィルムを用いて作製したラミネートフィルムから15mm×200mm(フィルムのTD方向×MD方向)の長方形の試験片を切り出し、無延伸ポリエチレンフィルムと二軸延伸ポリエチレンフィルムを上下に180度広げて引張試験機(株式会社島津製作所製,EZ-SX)に固定する。その後、試験速度50mm/minで無延伸ポリエチレンフィルムと二軸延伸ポリエチレンフィルムを上下方向(MD方向)に引っ張り両者の接着部分を剥離させてラミネート強度を求めた。ラミネート強度は0.7N/15mm以上の場合を良好とした。
ラミネート強度は、接着適性の指標の1つであって、JIS K 6854-3(1999)に準拠して測定した。この測定では、試作例1~6の二軸延伸ポリエチレンフィルムを用いて作製したラミネートフィルムから15mm×200mm(フィルムのTD方向×MD方向)の長方形の試験片を切り出し、無延伸ポリエチレンフィルムと二軸延伸ポリエチレンフィルムを上下に180度広げて引張試験機(株式会社島津製作所製,EZ-SX)に固定する。その後、試験速度50mm/minで無延伸ポリエチレンフィルムと二軸延伸ポリエチレンフィルムを上下方向(MD方向)に引っ張り両者の接着部分を剥離させてラミネート強度を求めた。ラミネート強度は0.7N/15mm以上の場合を良好とした。
[結果と考察]
試作例1~6の二軸延伸ポリエチレンフィルム及び該二軸延伸ポリエチレンフィルムの第一表層にシーラントフィルムを積層させたラミネートフィルムついて検討する。これらの二軸延伸ポリエチレンフィルムについてはそれぞれ第一及び第二表層の樹脂の種類、基材層の樹脂の種類及び基材層の界面活性剤の含有量を変更したものである。表1から理解されるように、試作例1~4のラミネート強度が良好であったのに対し、試作例5,6ではラミネート強度が不足していた。
試作例1~6の二軸延伸ポリエチレンフィルム及び該二軸延伸ポリエチレンフィルムの第一表層にシーラントフィルムを積層させたラミネートフィルムついて検討する。これらの二軸延伸ポリエチレンフィルムについてはそれぞれ第一及び第二表層の樹脂の種類、基材層の樹脂の種類及び基材層の界面活性剤の含有量を変更したものである。表1から理解されるように、試作例1~4のラミネート強度が良好であったのに対し、試作例5,6ではラミネート強度が不足していた。
ここで、試作例1~4と試作例5,6の物性を比較すると、まずラミネート強度が良好な試作例1~4とラミネート強度が不足する試作例5,6とでは、引張弾性率の測定結果の傾向に差異は見られなかった。また、ラミネート強度が同等である試作例1と試作例4では引張弾性率が大きく異なり、引張弾性率が同等である試作例2と試作例3や、引張弾性率が近似する試作例1と試作例6ではラミネート強度が大きく異なっていた。これらのことから、二軸延伸ポリエチレンフィルム全体の剛性(引張弾性率)とラミネート強度との間に明確な相関を確認することができなかった。
次に、試作例1~4の第一表層のAFM弾性率E1と試作例5,6の第一表層のAFM弾性率E1を比較すると、ラミネート強度が良好な試作例1~4の第一表層のAFM弾性率E1は、いずれもラミネート強度が不足する試作例5,6のAFM弾性率E1よりも低い値であった。また、試作例1~4の第一表層のAFM弾性率E1を比較すると、当該弾性率E1が0.2GPaの時にラミネート強度が1.8N/15mm、弾性率E1が0.8GPaの時にラミネート強度が1.4N/15mm、弾性率E1が1.3GPaや1.4GPaの時にラミネート強度が1.1N/15mmというように、当該弾性率E1の値が低くいほどラミネート強度が高くなる傾向がみられた。このことから、第一表層のAFM弾性率E1とラミネート強度との間に相関があると考えられる。
一方、試作例1~4の第二表層のAFM弾性率E2と試作例5,6の第二表層のAFM弾性率E2を比較すると、第二表層のAFM弾性率E2が近似する試作例1,4と試作例5,6ではラミネート強度が大きく異なっていた。また、ラミネート強度が良好な試作例1~4では、第二表層のAFM弾性率E2の値とラミネート強度の値との間に明確な関連性は認められなかった。これらのことから、第二表層のAFM弾性率E2とラミネート強度との間に相関があることは確認できなかった。
上記の通り、引張弾性率、第一表層のAFM弾性率E1、第二表層のAFM弾性率E2と、ラミネート強度との関係を検討すると、引張弾性率や第二表層のAFM弾性率E2とラミネート強度との間に相関が確認されなかったのに対して、シーラントフィルムと密着する第一表層のAFM弾性率E1とラミネート強度との間に相関が確認されたことから、第一表層のAFM弾性率E1が良好なラミネート強度を表す指標として有効であると考えられる。そこで、第一表層のAFM弾性率E1について測定結果から検討すると、ラミネート強度が良好な試作例1~4の第一表層のAFM弾性率E1の最大値は1.4GPaであり、ラミネート強度が不足した試作例5,6の第一表層のAFM弾性率E1の最小値は1.7GPaであることが確認された。これらのことから、ラミネート強度を良好とする第一表層のAFM弾性率E1は、1.6GPa以下程度であることが好ましいと考えられる。また、試作例1~4の測定結果から、第一表層のAFM弾性率E1が低いほどラミネート強度が向上する傾向があると考えられる。従って、二軸延伸ポリエチレンフィルムでは、フィルム全体の剛性(引張弾性率)にかかわらず、シーラントフィルムと密着する第一表層が柔軟(AFM弾性率E1が1.6GPa以下)であることによって良好なラミネート強度を得ることができる。
また、上述したように第二表層のAFM弾性率E2とラミネート強度の間に直接的な相関があることは確認できなかったが、各弾性率の関係について試作例1~4と試作例5,6とを比較すると、ラミネート強度が良好な試作例1~4では第一表層のAFM弾性率E1と第二表層のAFM弾性率E2との間でE1≦E2の関係が成立したのに対し、ラミネート強度が不足した試作例5,6ではE1≦E2の関係が成立しなかった。これらのことから、第二表層はラミネートフィルムを作製する場合にシーラントフィルムが貼り合わされる面ではないものの、第二表層のAFM弾性率E2が第一表層とシーラントフィルムのラミネート強度の良否に関与すると思われる。すなわち、試作例1~4のように第二表層のAFM弾性率E2が第一表層のAFM弾性率E1以上になると、第二表層は第一表層に比べて剛性が高まる。これにより第二表層は撓み難くなることから、二軸延伸ポリエチレンフィルムは平面形状を維持し易くなって該二軸延伸ポリエチレンフィルムの第一表層にシーラントフィルムを密着させ易くなる。したがって、第二表層のAFM弾性率E2が第一表層のAFM弾性率E1以上になると、試作例1~4のようにラミネート強度が良好になると思われる。
以上より、本発明の二軸延伸ポリエチレンフィルムは、縦(MD)方向及び横(TD)方向の二軸方向に延伸されてなる少なくとも二層以上の積層体である二軸延伸フィルムであって、二軸延伸フィルムの一側表層である第一表層の断面の原子間力顕微鏡(AFM)により測定される弾性率(E1)が1.6GPa以下であると、第一表層の柔軟性が良好となり、例えばシーラントフィルムを第一表層に積層する場合、第一表層とシーラントフィルムの密着性が向上することとなり第一表層とシーラントフィルムのラミネート強度が優れたものになる。
さらに、本発明の二軸延伸ポリエチレンフィルムにおいて、第一表層のAFM弾性率E1と第二表層のAFM弾性率E2の関係がE1≦E2となる場合に、第二表層は第一表層に比べて剛性が高まる。これにより、該二軸延伸ポリエチレンフィルムは包装体としての加工適性が向上する。また、第二表層は第一表層に比べて剛性が高まることで撓み難くなるため、二軸延伸ポリエチレンフィルムの第一表層にシーラントフィルムを密着させ易くなる。さらに、本発明の二軸延伸ポリエチレンフィルムは、第二表層が撓み難く平面形状が維持し易く包装用資材として取り扱い易いものにもなる。
本発明の二軸延伸ポリエチレンフィルムは、第一表層の柔軟性が良好となり、例えばシーラントフィルムを第一表層に積層する場合、第一表層とシーラントフィルムの密着性が良好となり第一表層とシーラントフィルムのラミネート強度が優れたものになる。さらに、本発明の二軸延伸ポリエチレンフィルムの前記第一表層に少なくともポリエチレン樹脂からなるシーラントフィルムが積層されたラミネートフィルムとすることにより、単一素材(モノマテリアル)を達成してリサイクルを容易としつつ、二軸延伸ポリエチレンフィルムとシーラントフィルムのラミネート強度に優れたラミネートフィルムとすることができる。加えて、ラミネートフィルムを用いた包装体とすることができる。そのため、リサイクルが容易な包装体として有望である。
Claims (11)
- 縦(MD)方向及び横(TD)方向の二軸方向に延伸されてなる少なくとも二層以上の積層体である二軸延伸フィルムであって、
前記二軸延伸フィルムの一側表層である第一表層の断面の原子間力顕微鏡(AFM)により測定される弾性率(E1)が1.6GPa以下であることを特徴とする二軸延伸ポリエチレンフィルム。 - 前記二軸延伸フィルムの他側表層である第二表層の断面の前記原子間力顕微鏡(AFM)により測定される弾性率(E2)が、前記弾性率(E1)との関係においてE1≦E2を満たす請求項1に記載の二軸延伸ポリエチレンフィルム。
- 前記二軸延伸フィルムの前記第一表層に表面処理が施される請求項1又は2に記載の二軸延伸ポリエチレンフィルム。
- 前記二軸延伸フィルムが三層以上の積層体である請求項1又は2に記載の二軸延伸ポリエチレンフィルム。
- 前記二軸延伸フィルムが三層以上の積層体である請求項3に記載の二軸延伸ポリエチレンフィルム。
- 請求項1又は2に記載の前記二軸延伸ポリエチレンフィルムの前記第一表層に、少なくともポリエチレン樹脂からなるシーラントフィルムが積層されてなるラミネートフィルム。
- 請求項3に記載の前記二軸延伸ポリエチレンフィルムの前記第一表層に、少なくともポリエチレン樹脂からなるシーラントフィルムが積層されてなるラミネートフィルム。
- 請求項4に記載の前記二軸延伸ポリエチレンフィルムの前記第一表層に、少なくともポリエチレン樹脂からなるシーラントフィルムが積層されてなるラミネートフィルム。
- 請求項6に記載のラミネートフィルムよりなる包装体。
- 請求項7に記載のラミネートフィルムよりなる包装体。
- 請求項8に記載のラミネートフィルムよりなる包装体。
Priority Applications (1)
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