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JP2025004834A - 高強度鋼管杭用鋼管およびその製造方法 - Google Patents

高強度鋼管杭用鋼管およびその製造方法 Download PDF

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JP2025004834A JP2023104688A JP2023104688A JP2025004834A JP 2025004834 A JP2025004834 A JP 2025004834A JP 2023104688 A JP2023104688 A JP 2023104688A JP 2023104688 A JP2023104688 A JP 2023104688A JP 2025004834 A JP2025004834 A JP 2025004834A
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純二 嶋村
Junji Shimamura
輝 今山
Teru Imayama
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JFE Steel Corp
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JFE Steel Corp
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Abstract

【課題】 本発明は、API X100グレード以上の高強度鋼管であって、靭性に優れ、かつ表層硬さを低減した高強度鋼管杭用鋼管を提供することにある。
【解決手段】 特定の成分組成を有し、特定の関係式を満足する成分組成であり、ミクロ組織はベイナイト組織が80%以上、島状マルテンサイトが20%以下、残部が残留オーステナイト、疑似パーライト、フェライトのうち1種または2種以上かつ残部の合計面積率が20%以下であり、Nb、Ti、Moを1種以上含み且つ円相当径で20nm以下である複合炭化物が5個/μm以上であり、降伏強度が690MPa以上、引張強度が760MPa以上、表面から1mm位置の表層硬さが350HV10以下であることを特徴とする、高強度鋼管杭用鋼管。
【選択図】なし

Description

本発明は、港湾構造物や防潮堤に用いるAPI X100グレード以上(JISのSBHS700グレード以上)の強度を有する高強度鋼管杭用鋼管に関し、特に強度と靭性に優れることを特徴とする。
港湾構造部や防潮堤等に用いられる鋼管杭において、鋼管に対しては高い強度、特に掘削時の海底での外圧による破壊防止のため、高強度かつ高靭性を確保することが要求される。近年、構造物大型化に伴い、API X100グレード以上の高強度鋼管に対する要求も高まっている。
特開平11-50188号公報 特開2001-158939号公報
しかし、特許文献1に記載の鋼板はPWHT処理による強度低下をPWHT時のCr炭化物の析出によって補っているため、多量のCrの添加が必要となっており、素材コストが高いだけでなく、溶接性や靱性の低下が問題となっている。一方、特許文献2に記載の鋼管はシーム溶接金属の特性改善を主眼においており、母材に対しては特段の配慮がなされていない。また、一般的に高強度のX100グレード以上では、表層硬さの増加に伴い、造管溶接後の拡管時の拡管割れが課題となることが多く、抜本的な対策が必要となっている。
本発明の目的は、このような従来技術の課題を解決し、API X100グレード以上の高強度鋼管であって、靭性に優れ、かつ表層硬さを低減した高強度鋼管杭用鋼管を提供することにある。
このような課題を解決するための本発明の特徴は以下の通りである。
[1] 母材部と溶接部を有する高強度鋼管杭用鋼管であって、
母材部が、質量%で、
C:0.04~0.10%、
Si:0.01~0.5%、
Mn:1.5~2.5%、
P:0.015%以下、
S:0.0020%以下、
Al:0.08%以下、
Cr:0.01~0.5%、
Mo:0.01~0.5%、
Ti:0.005~0.025%、
Nb:0.005~0.08%、
N:0.001~0.010%、
O:0.0050%以下、
を含有し、
下記(1)式であらわされるCeq値に対して、Ceq値≧0.48を満足し、かつ下記(2)式であらわされるP値に対して、P値≧0.15を満足し、かつ下記(3)式であらわされる質量%のCr、Moの合計値Q値に対して、Q値≧0.50かつCr≦Moを満足し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、
ミクロ組織はベイナイト組織が80%以上、島状マルテンサイトが20%以下、残部が残留オーステナイト、疑似パーライト、フェライトのうち1種または2種以上かつ残部の合計面積率が20%以下であり、
Nb、Ti、Moを1種以上含み且つ円相当径で20nm以下である複合炭化物が5個/μm以上であり、
降伏強度が690MPa以上、引張強度が760MPa以上、表面から1mm位置の表層硬さが350HV10以下であることを特徴とする高強度鋼管杭用鋼管。
Ceq値=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5・・・(1)
但し、(1)式の元素記号は各含有元素の質量%を示す。
P値=(Mo/95.9+Nb/92.91+V/50.94+Ti/47.9)/(100/55.85)×100・・・・(2)
但し、(2)式の元素記号は各含有元素の質量%である。
Q値= Cr+Mo ・・・(3)
但し、(3)式の元素記号は各含有元素の質量%を示す。
[2] 前記成分組成は、さらに、質量%で、
V:0.005~0.1%、
Cu:0.5%以下、
Ni:0.5%以下、
Ca:0.0005~0.0035%、
REM:0.0005~0.0100%、
B:0.002%以下の中から選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする[1]に記載の高強度鋼管杭用鋼管。
[3] [1]または[2]に記載の成分組成を有する鋼素材を、
1100~1300℃の温度に加熱し、熱間圧延した後、Ar3点以上から冷却開始し、20℃/s以上の平均冷却速度で300℃未満の冷却停止温度まで加速冷却を行い、鋼板とし、
前記鋼板を素材とし、鋼板長手方向に筒状に成形した後、鋼板の端面ともう一方の端面とを突き合せた突合せ部を内外面から1層ずつ長手方向に溶接して管状とし、拡管して製造する、降伏強度が690MPa以上、引張強度が760MPa以上、表面から1mm位置の表層硬さが350HV10以下であることを特徴とする高強度鋼管杭用鋼管の製造方法。
[4] 拡管後、100~300℃に再加熱して製造することを特徴とする[3]に記載の高強度鋼管杭用鋼管の製造方法。
以上述べたように、本発明によれば、API X100グレード以上の高強度を有し、靭性の優れた鋼管が得られる。このため、鋼管杭用鋼管への利用に好適である。
本発明者らは表層硬さの低減と高強度・高靭性の両立のために、鋼板を素材とする鋼管のミクロ組織変化について詳細な検討を行った。一般に溶接鋼管は溶接性の観点から化学成分が厳しく制限されるため、X65グレード以上の高強度鋼は熱間圧延後に加速冷却されて製造されている。そのため、ミクロ組織はベイナイト主体か、またはベイナイト中に島状マルテンサイト(Martensite-Austenite constituent)を含んだ組織となるが、表層の高冷却速度に伴う硬度上昇は避けられない。また、焼戻しによる強度低下を補うために、PWHT時にCr炭化物等を析出させる方法があるが、炭化物が容易に粗大化するために靭性低下を生じてしまう。このように表層硬さを低減しながら、変態強化によって、強度および靭性を確保することには限界があることが明白である。そこで、本発明者らは表層硬さの低減と高強度および高靭性が両立可能なミクロ組織形態に関して鋭意研究を行った結果、以下の知見を得るに至った。
Cr、Moの最適なバランスによって、変態強化と析出強化を同時活用し、表層硬さ低減のための冷却速度低減による板内部の強度低下を抑制することができる。つまり、鋼板のミクロ組織中のベイナイト組織を80%以上、島状マルテンサイトが20%以下、残部が残留オーステナイト、疑似パーライト、フェライトのうち1種または2種以上かつ残部の合計面積率が20%以下とすることで、表層硬さを低減しながら、造管・拡管後の強度・靭性を向上する。
以下、本発明の高強度鋼管杭用鋼管(鋼管)について詳しく説明する。まず、鋼管の母材における成分組成について説明する。以下の説明において%で示す単位は特にことわりのない限り質量%である。
[成分組成]
C:0.04~0.10%
Cは、鋼の強度を増加させる元素であり、所望の組織を得て、所望の強度、靭性とするためには、0.04%以上の含有を必要とする。C含有量は好ましくは0.05%以上である。一方、0.10%を超えて含有すると溶接性が劣化し、溶接割れが生じやすくなるとともに、母材靭性およびHAZ靭性が低下する。このため、C含有量は0.10%以下に限定する。好ましくは0.07%以下である。
Si:0.01~0.5%
Siは、脱酸材として作用し、更に固溶強化により鋼材の強度を増加させる元素であるが、Si含有量が0.01%未満ではその効果がないため、Si含有量は0.01%以上とする。好ましくは、Si含有量は0.05%以上である。一方、0.5%を超えるSiの含有は、HAZ靭性を著しく劣化させる。このため、Si含有量は0.5%以下とする。尚、好ましくは、Si含有量は0.2%以下である。
Mn:1.5~2.5%
Mnは、鋼の焼入れ性を高めるとともに、強度および靭性を向上させる作用を有する元素であり、1.5%以上の含有を必要とするため、Mn含有量は1.5%以上とする。Mn含有量は好ましくは、1.8%以上である。一方、2.5%を超えるMnの含有は、溶接性を劣化させる恐れがある。このため、Mn含有量は2.5%以下に限定する。尚、Mn含有量は、好ましくは、2.0%以下である。
P:0.015%以下、S:0.0020%以下
本発明でP、Sは不可避的不純物であり、含有量の上限を規定する。Pは、含有量が多いと中央偏析が著しく、母材靭性が劣化するため、0.015%以下とする。好ましくは、P含有量は0.008%以下である。Sは、含有量が多いとMnSの生成量が著しく増加し、母材の靭性が劣化するため、0.0020%以下とする。好ましくは、S含有量は0.0008%以下である。なお、含有量は低いほど好ましく、0%であってよい。
Al:0.08%以下
Alは、製鋼時の脱酸剤として作用するが、0.08%を超える含有は、靭性の低下を招くため0.08%以下とする。Al含有量は好ましくは、0.05%以下である。下限については、Al含有量は0.01%以上とすることが好ましい。
Cr:0.01~0.5%
CrはMoと同様に低Cでも十分な強度を得るために有効な元素であるが、多く含有すると溶接性を劣化させるため、Cr含有量を0.5%以下に規定する。Cr含有量は好ましくは0.4%以下である。下限について、Cr含有量は、0.01%以上とする。Cr含有量は、好ましくは0.1%以上である。
Mo:0.01~0.5%
Moは本発明において重要な元素であり、0.01%以上含有させることで、熱間圧延後冷却時のパーライト変態を抑制しつつ、Ti、Nb、Vとの微細な複合炭化物を形成し、強度上昇に大きく寄与する。そのため、Mo含有量は、0.01%以上とする。Mo含有量は、0.2%以上とすることが好ましい。しかし、Mo含有量が0.5%を超えると溶接熱影響部靭性の劣化を招くことから、Mo含有量を0.5%以下に規定する。
Ti:0.005~0.025%
TiはMoと同様に本発明において重要な元素である。Tiを0.005%以上含有させることで、Moと複合析出物を形成し、強度上昇に大きく寄与する。このため、Ti含有量は0.005%以上とする。しかし、0.025%を超えるTiの含有は溶接熱影響部靭性及び母材靱性の劣化を招く。このため、Ti含有量を0.025%以下に規定する。
Nb:0.005~0.08%
Nbは組織の微細粒化により靭性を向上させるとともに、Moと共に複合析出物を形成し、強度上昇に寄与する。しかし、Nb含有量が0.005%未満では効果がないため、Nb含有量は0.005%以上とする。好ましくは、Nb含有量は0.02%以上である。一方、Nb含有量が0.08%を超えると溶接熱影響部の靭性が劣化する。このため、Nb含有量を0.08%以下に規定する。
N:0.001~0.010%
Nは通常鋼中の不可避的不純物として存在するが、Ti含有により、TiNを形成する。TiNによるピンニング効果でオーステナイト粒の粗大化を抑制するためにNは0.001%以上鋼中に存在することが必要であり、N含有量は0.001%以上とする。好ましくは、N含有量は0.002%以上である。一方、0.010%を超える場合、溶接部、特に溶接ボンド近傍で1450℃以上に加熱された領域でTiNが分解し、固溶Nの悪影響が著しく、HAZ靭性が劣化するため、N含有量を0.010%以下とする。N含有量は好ましくは、0.005%以下である。
O:0.0050%以下
本発明でOは不可避的不純物であり、含有量の上限を規定する。Oは、粗大で靱性に悪影響を及ぼす介在物生成を抑制するために、O含有量は0.0050%以下とする。好ましくは、O含有量は0.0030%以下である。
Ceq値≧0.48、P値≧0.15
Ceq値は合金元素の質量%を用いて下記(1)式で示され、P値は下記(2)式で示される。特に、Ceq値は母材強度と相関があり、強度の指標としてよく用いられる。また、P値は析出強化の指標とする。Ceq値が0.48未満、あるいはP値が0.15未満ではAPI X100グレードの高強度が得られないため、Ceq値≧0.48、P値≧0.15に規定する。
Ceq値=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5・・・(1)
但し、(1)式の元素記号は各含有元素の質量%を示す。
P値はMo、Ti、Nb、Vの質量%での含有量を用いた下記(2)式により求めることもできる。下記(2)式の元素記号は各含有元素の質量%である。P値は鋼に含まれるMo、Ti、Nb、Vの原子%での合計量を意味しており、それは鋼に含まれるMo、Ti、Nb、Vの原子数の和と、Fe、Mo、Ti、Nb、Vおよび他の合金元素の全原子数との比で求められる。
P値=(Mo/95.9+Nb/92.91+V/50.94+Ti/47.9)/(100/55.85)×100・・・・(2)
(2)式の元素記号は各含有元素の質量%である。
Q値≧0.50、Cr≦Mo
Q値は下記(3)式で示され、Cr、Mo系合金炭化物の析出量、形態の指標とする。Cr、Moの合計値Q値が0.50未満ではAPI X100グレードの高強度が得られないため、Q値≧0.50に規定する。また、Cr>MoではCr系合金炭化物の析出量が過大となり、所定のMo系合金炭化物の析出量が確保できず、API X100グレードの高強度が得られないため、Cr≦Moに規定する。
Q値= Cr + Mo ・・・(3)
但し、(3)式の元素記号は各含有元素の質量%を示す。
本発明では鋼板の強度や靱性をさらに改善する目的で、以下に示すV、Cu、Ni、Ca、REM、Bの1種または2種以上を含有してもよい。
V:0.005%以上0.1%以下
VもNbと同様にMoと共に複合析出物を形成し、強度上昇に寄与する。しかし、V含有量が0.1%を超えると溶接熱影響部の靭性が劣化する。このため、添加する場合はV含有量を0.1%以下に規定する。好ましくは、V含有量は0.06%以下である。一方、下限について、V含有量は0.005%以上とする。V含有量は0.01%以上とすることが好ましい。
Cu:0.5%以下
Cuは靭性の改善と強度の上昇に有効な元素であるが、多く含有すると溶接性が劣化するため、添加する場合はCu含有量を0.5%以下とする。
Ni:0.5%以下
Niは靭性の改善と強度の上昇に有効な元素であるが、多く含有すると耐PWHT特性が低下するため、添加する場合はNi含有量を0.5%以下とする。
Ca:0.0005~0.0035%
Caは硫化物系介在物の形態制御による靭性向上に有効な元素であるが、Ca含有量が0.0005%未満ではその効果が十分でないため、Ca含有量は0.0005%以上とする。一方、0.0035%を超えてCaを含有しても効果が飽和し、むしろ、鋼の清浄度の低下により靭性を劣化させるので、添加する場合はCa含有量を0.0035%以下に規定する。
REM:0.0005~0.0100%
REM(希土類金属)もまた鋼中の硫化物系介在物の形態制御による靱性向上に有効な元素であるが,REM含有量が0.0005%未満ではその効果が十分でないため、REM含有量は0.0005%以上とする。一方、0.0100%を超えてREMを含有しても効果が飽和し、むしろ、鋼の清浄度の低下により靭性を劣化させるので、添加する場合はREM含有量を0.0100%以下に規定する。
B:0.002%以下
Bはオーステナイト粒界に偏析し、フェライト変態を抑制することで、特にHAZの強度低下防止に寄与する。ただし、0.002%を超えてBを含有してもその効果は飽和するため、添加する場合はB含有量を0.002%以下とする。
上記以外の残部は実質的にFeからなる。残部が実質的にFeからなるとは、本発明の作用効果を無くさない限り、不可避的不純物をはじめ、他の微量元素を含有するものが本発明の範囲に含まれ得ることを意味する。
[ミクロ組織、複合炭化物の析出形態]
本発明の鋼管の母材部のミクロ組織は、ベイナイト組織を80%以上、島状マルテンサイトを20%以下、残部が残留オーステナイト、疑似パーライト、フェライトのうち1種または2種以上かつ残部の合計面積率が20%以下とする必要がある。強度達成のため、ベイナイト組織は80%以上とする必要がある。好ましくは、ベイナイト組織は90%以上である。島状マルテンサイトは20%以下とする必要がある。好ましくは、島状マルテンサイトは10%以下とする。残部については、残留オーステナイト、疑似パーライト、フェライトのうち1種または2種以上かつ残部の合計面積率が20%以下とする必要がある。好ましくは、残部は10%以下とする。残部は0%でもよく、あるいは0%超えの場合は残留オーステナイト、疑似パーライト、フェライトのうち1種または2種以上である。尚、疑似パーライトとは微細に分断されたパーライト組織を指しており、共析組成のラメラーパーライトではない。
また、(2)式の指標となる複合炭化物として、強度向上のため、Nb、Ti、Moを1種以上含み、且つ円相当径で20nm以下である複合炭化物が5個/μm以上とする必要がある。好ましくは上記複合炭化物が10個/μm以上である。
ミクロ組織形態をこのように制御すれば、API X100グレードの高強度を達成することが可能である。
なお、以上のような高強度鋼管杭用鋼管(鋼管)のミクロ組織形態は、鋼管の板厚方向位置にかかわりなく満足する必要がある。
[高強度鋼管杭用鋼管の母材部の特性]
本発明の高強度鋼管杭用鋼管の特性は、降伏強度が690MPa以上、引張強度が760MPa以上、表面から1mm位置の表層硬さが350HV10以下である。
次に、上記組成の鋼を用いた本発明の高強度鋼管杭用鋼管の製造方法例について説明する。
[製造条件]
本発明は、加速冷却時のベイナイト変態による変態強化を活用し、さらなる高強度化を目的として熱間圧延時や加速冷却前後で析出するNb、Ti、Mo系の微細炭化物による析出強化を複合して活用することにより、合金元素を多量に含有することなく高強度化が可能で、表層硬さを低減しながら、焼戻し後の強度特性にも優れる高強度鋼管を製造する技術である。
本発明の高強度鋼管杭用鋼管は上記の成分組成を有する鋼素材を用い、加熱温度:1100~1300℃で加熱した後、熱間圧延を行い、Ar3点以上から20℃/s以上の平均冷却速度で冷却開始し、300℃未満の冷却停止温度まで加速冷却を行い、製造された鋼板を素材とし、鋼板長手方向に筒状に成形した後、鋼板の端面ともう一方の端面とを突き合せた突合せ部を内外面から1層ずつ長手方向に溶接して管状とし、拡管して製造される。これにより、鋼管のミクロ組織中のベイナイト組織を80%以上、島状マルテンサイトが20%以下、残部については、残留オーステナイト、疑似パーライト、フェライトのうち1種または2種以上かつ残部の合計面積率が20%以下とすることができ、所望の機械的特性が得られる。
加熱温度はNb炭化物等粗大析出物を固溶させるために1100℃以上とする必要がある。オーステナイト粒径の過剰な粗大化抑制の観点から加熱温度は1300℃以下とする。
また、オーステナイト単相域から鋼の加速冷却を開始し、ベイナイト変態終了温度以下のできるだけ低い温度で冷却を停止することにより、変態強化と析出強化をもっとも有効に複合して活用することが可能となる。Ar3点未満の2相域から冷却開始すると、ポリゴナルフェライトが混在し、強度低下が大きいため、冷却開始温度はAr3点以上とする。また、Ar3点は下記(4)式にて定義される。
Ar3=910-310C-80Mn-20Cu-15Cr-55Ni-80Mo・・・(4)
(4)式の元素記号は各含有元素の質量%である。
また、加速冷却における平均冷却速度は20℃/s以上とする必要がある。ここで平均冷却速度とは、Ar3点以上の冷却開始温度から300℃未満の温度(冷却停止温度)までの平均冷却速度を指している。
特に冷却停止温度が300℃を超えた場合、所望の強度特性が得られないため、冷却停止温度は300℃以下とする。冷却停止温度の下限については、製造能率の観点から、100℃以上が好ましい。
上記に記載の鋼板(高強度鋼管杭用鋼板)を素材とし、鋼板長手方向に筒状に成形した後、鋼板の端面ともう一方の端面とを突き合わせた突合せ部を内外面から1層ずつ長手方向に溶接して管状とし、拡管して製造する。なお、内外面から1層ずつとは、内面側から1層盛溶接を実施した後、外面側から1層盛溶接を実施することを意味する。その際に溶接部断面において内面溶接金属と外面溶接金属はラップしている必要がある。
また、鋼管を100~300℃に再加熱することで、さらに安定した高強度が得られる。そのため、拡管後の再加熱は100~300℃とすることが好ましい。ここで、温度は鋼管の平均温度、すなわち表面温度と板厚から計算される平均温度とする。
表1に示す化学成分の鋼(鋼種A~M)を連続鋳造法によりスラブとし、これを用いて板厚32mmの厚鋼板(No.1~17)を製造した。
Figure 2025004834000001
加熱したスラブを熱間圧延により圧延した後、直ちに水冷型の加速冷却設備を用いて冷却を行った。各鋼板(No.1~17)の製造条件を表2に示す。
Figure 2025004834000002
これら鋼板を素材とし、長手方向に筒状に成形した後、突合せ部を内外面から1層ずつ長手方向に溶接し、拡管して、外径40インチ(1016mm)の鋼管を製造した。一部の鋼管については、高周波加熱のラインで100~300℃に再加熱した。
以上のようにして製造した鋼管の管軸方向と同一方向および管周方向それぞれJIS Z 2201の規定に準拠して5号引張試験片を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠して、引張強度を行い、降伏強度、引張強度を測定した。降伏強度(0.5%YS)で690MPa以上かつ引張強度(TS)で760MPa以上を本発明に必要な強度(合格)とした。
また、鋼管のミクロ組織形態および析出物形態を調査するとともに、板厚中心からシャルピー衝撃試験片を採取してシャルピー衝撃特性を評価した。
得られた鋼板の板厚方向1/2板厚位置から、組織観察用試験片を採取し、観察対象面を鏡面として、ナイタールでエッチングし、走査型電子顕微鏡(SEM)により、加速電圧が1~15kv、観察倍率を2000倍として、5視野について組織観察を行い、組織の同定、および組織分率を求めた。組織分率は5視野の平均値とした。組織同定としては、SEM写真において、多角形でラス状あるいは粒状の領域がベイナイト組織、白い領域が島状マルテンサイト、灰色の領域が残留オーステナイト、細かくセメンタイトが分断された領域が疑似パーライト、ポリゴナルな粒状の組織をフェライトと判断した。
また、鋼板の板厚方向1/2板厚位置から、析出物観察用試験片を採取し、析出物形態は透過型電子顕微鏡により求めた。倍率10000倍で5視野の平均値でNb、Ti、Moを1種以上含む複合炭化物の析出物サイズ、個数密度を求めた。なお、析出物の成分はエネルギー分散型X線分光法(EDX)により分析した。
その際、鋼管の管厚方向1/2の位置から圧延方向と垂直になるようにJIS Z 2202の規定に準拠して、Vノッチ標準寸法のシャルピー衝撃試験片を採取し、JIS Z 2242の規定に準拠して衝撃試験を実施した。そして、-10℃でのシャルピー吸収エネルギーが200J以上の物を良好(合格)とした。また、鋼管の外面側表面から1mm位置のビッカース硬さを荷重10kgfで5点測定し、その平均値を評価した。測定結果を表3に併せて示す。
Figure 2025004834000003
溶接熱影響部(HAZ)靭性については、実継手の試験片を用いてシャルピー試験を行った。管厚方向外面下1mm以下の位置から圧延方向と垂直になるようにJIS Z 2202の規定に準拠して、Vノッチ標準寸法のシャルピー衝撃試験片をHAZ全体が入るように採取し、JIS Z 2242の規定に準拠して衝撃試験を実施した。そして、-10℃でのシャルピー吸収エネルギーが100J以上の物を良好(〇)とした。
表3において、本発明例であるNo.1~7はいずれも、成分組成、ミクロ組織形態および析出物形態が本発明の範囲内であり、降伏強度(YS)690MPa以上、引張強度(TS)760MPa以上の高強度であり、さらに表面硬さ、母材靱性及び溶接熱影響部靭性も良好であった。
No.8は、成分組成は本発明の範囲内であるが、加熱温度が本発明の範囲外であり、微細炭化物が分散析出せず、母材強度あるいは母材靭性が劣化した。No.9は、成分組成は本発明の範囲内であるが、冷却開始温度が本発明の範囲外であり、鋼管ミクロ組織中のベイナイト組織の面積率が80%未満となり、母材強度が劣化した。No.10、11は、成分組成は本発明の範囲内であるが、平均冷却速度や冷却停止温度が本発明の範囲外であり、鋼管ミクロ組織中のベイナイト組織分率が80%を下回っており、母材強度や靭性が劣化した。
No.12~14は成分組成が本発明の範囲外であるので、十分な母材強度または靭性が得られなかった。
No.15はQ値が本発明の範囲外であり、母材強度、母材靭性およびHAZ靭性が劣化した。
No.16はCeq値が本発明の範囲外であり、母材強度が劣化した。
No.17はP値、Q値が本発明の範囲外であり、母材強度が劣化した。

Claims (4)

  1. 母材部と溶接部を有する高強度鋼管杭用鋼管であって、
    母材部が、質量%で、
    C:0.04~0.10%、
    Si:0.01~0.5%、
    Mn:1.5~2.5%、
    P:0.015%以下、
    S:0.0020%以下、
    Al:0.08%以下、
    Cr:0.01~0.5%、
    Mo:0.01~0.5%、
    Ti:0.005~0.025%、
    Nb:0.005~0.08%、
    N:0.001~0.010%、
    O:0.0050%以下、
    を含有し、
    下記(1)式であらわされるCeq値に対して、Ceq値≧0.48を満足し、かつ下記(2)式であらわされるP値に対して、P値≧0.15を満足し、かつ下記(3)式であらわされる質量%のCr、Moの合計値Q値に対して、Q値≧0.50かつCr≦Moを満足し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、
    ミクロ組織はベイナイト組織が80%以上、島状マルテンサイトが20%以下、残部が残留オーステナイト、疑似パーライト、フェライトのうち1種または2種以上かつ残部の合計面積率が20%以下であり、
    Nb、Ti、Moを1種以上含み且つ円相当径で20nm以下である複合炭化物が5個/μm以上であり、
    降伏強度が690MPa以上、引張強度が760MPa以上、表面から1mm位置の表層硬さが350HV10以下であることを特徴とする高強度鋼管杭用鋼管。
    Ceq値=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5・・・(1)
    但し、(1)式の元素記号は各含有元素の質量%を示す。
    P値=(Mo/95.9+Nb/92.91+V/50.94+Ti/47.9)/(100/55.85)×100・・・・(2)
    但し、(2)式の元素記号は各含有元素の質量%である。
    Q値= Cr+Mo ・・・(3)
    但し、(3)式の元素記号は各含有元素の質量%を示す。
  2. 前記成分組成は、さらに、質量%で、
    V:0.005~0.1%、
    Cu:0.5%以下、
    Ni:0.5%以下、
    Ca:0.0005~0.0035%、
    REM:0.0005~0.0100%、
    B:0.002%以下の中から選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の高強度鋼管杭用鋼管。
  3. 請求項1または2に記載の成分組成を有する鋼素材を、
    1100~1300℃の温度に加熱し、熱間圧延した後、Ar3点以上から冷却開始し、20℃/s以上の平均冷却速度で300℃未満の冷却停止温度まで加速冷却を行い、鋼板とし、
    前記鋼板を素材とし、鋼板長手方向に筒状に成形した後、鋼板の端面ともう一方の端面とを突き合せた突合せ部を内外面から1層ずつ長手方向に溶接して管状とし、拡管して製造する、降伏強度が690MPa以上、引張強度が760MPa以上、表面から1mm位置の表層硬さが350HV10以下であることを特徴とする高強度鋼管杭用鋼管の製造方法。
  4. 拡管後、100~300℃に再加熱して製造することを特徴とする請求項3に記載の高強度鋼管杭用鋼管の製造方法。
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