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JP2024103501A - 被験体における虚血再灌流障害のリスクを予防又は軽減するための神経保護特性がある薬物の使用 - Google Patents

被験体における虚血再灌流障害のリスクを予防又は軽減するための神経保護特性がある薬物の使用 Download PDF

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JP2024103501A JP2024076208A JP2024076208A JP2024103501A JP 2024103501 A JP2024103501 A JP 2024103501A JP 2024076208 A JP2024076208 A JP 2024076208A JP 2024076208 A JP2024076208 A JP 2024076208A JP 2024103501 A JP2024103501 A JP 2024103501A
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Abstract

【課題】神経保護化合物の投与を介して、虚血再灌流障害及び慢性間欠性低酸素血症に関連する損傷を治療及び予防するための方法が提供される。【解決手段】本発明の方法による利益を得ることができる被験体は、例えばIVAV治療レジメン等、抗VEGF治療が処方されているか又は抗VEGF治療を受けていてもよく、又は、睡眠時無呼吸症候群等の障害と診断されていてよい。【選択図】 図1

Description

関連出願の相互参照
本出願は、その開示全体を参照によって本明細書に援用する2015年10月9日に出願した米国特許仮出願第62/239,639号明細書、及び、2016年6月27日に出願した米国特許出願第15/193,625号明細書の優先権を主張する。
眼は、中枢神経系の他の部分と同様、再生能力が限られる。したがって、網膜光外傷、網膜虚血再灌流性眼外傷、慢性間欠性低酸素症関連眼外傷、加齢性黄斑変性症(AMD)等、多くの眼性疾患及び眼外傷、並びに、フリーラジカル媒介性疾患は、治療が困難である。AMDは1500万人のアメリカ人に波及し、毎年200,000の新たな症例が生じている。これらのうち、約10~15%がさらに滲出性疾患にかかる。硝子体内抗VEGF注入(IVAV)により、滲出性AMDの治療が促進された。AMDは、硝子体内抗VEGF注入に対する最初の、かつ、依然として最も一般的な指標であるが、さらなる承認された指標には、網膜中心静脈閉塞及び網膜静脈分枝閉塞関連の黄斑浮腫、並びに、糖尿病性黄斑浮腫が含まれる。当該薬剤は、増殖性糖尿病性網膜症、硝子体出血、血管新生緑内障、未熟児網膜症、脈絡膜血管新生及び多くの他の網膜血管系疾患の影響の軽減に用いうる。しかし、IVAV治療は、神経保護が低減されたこと等によるいくつかのメカニズムにより誘因される視神経損傷及び網膜神経線維層(RNFL)減少(非特許文献1~8)並びに一過性の虚血再灌流障害のリスクに被験体を曝す。後者は、RNFL減少の他の原因である慢性間欠性低酸素症(CIH)の結果として生じるものと同様の組織低酸素症の多数の短時間のエピソードを累積的にもたらす。さらに、IVAV治療レジメンは、一般に、RNFLの菲薄化又は損失の累積リスクだけでなく、眼内炎、眼球内炎症、出血、網膜裂孔又は網膜剥離、網膜血管閉塞、失明(非特許文献9)等の他のリスクの増加、及び、財務費用の増加をもたらす多数のIVAV注入を含む。したがって、IVAV等のVEGF治療を受けている被験体を二次的受傷から保護する方法だけでなく、効果的なIVAV治療レジメンに要求されるIVAV注入の総数を減らす方法が当技術分野において必要とされている。本発明はこのニーズを満たす。
Chauhan et al.,Invest Ophthalmol Vis Sci.2002,43(9):2969-76 Weinreb and Khaw,Lancet 2004,363:1711-1720 Michelson et al.,Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol.1998,236:80-5 Bonomi et al.,Ophthalmology,2000,107:1287-93 Kaur et al.,ClinOphthalmol,.2008,2:879-89 Moore D et al.,Clin Ophthalmol,2008,2:849-61 Leung et al.,Br J Ophthalmol.2009;93(7):964-968 Nishijima et al.,Am J Pathol.2007;171(1):53-67 Falavarjani et al.,Eye,2013,27:787-94
一実施形態では、本発明は、虚血再灌流障害から被験体を保護する方法に関し、当該方法は、被験体に神経保護化合物を投与するステップを含み、被験体は、神経保護化合物を用いていない緑内障の被験体及び緑内障ではない被験体を含む群から選択される。
一実施形態では、被験体は、虚血再灌流障害又は慢性間欠性低酸素症のリスクに関連した医学的状態又は処置のうちの1又はそれ以上を経験することになるか、又は、該医学的状態又は処置のうちの1又はそれ以上と診断されている。一実施形態では、上記の状態又は処置は、網膜虚血誘発性眼損傷、加齢性黄斑変性症、睡眠時無呼吸症候群症候群、糖尿病、一過性脳虚血発作、心臓血管手術、及び心停止を含む群から選択される。
一実施形態では、神経保護化合物は、血液脳関門及び血液網膜関門を通過する能力を持つ。一実施形態では、上記の化合物は、局所投与、経口投与及び静脈内投与からなる群から選択される投与経路によって前記被験体に投与される。一実施形態では、上記の化合物は、治療的化合物である。一実施形態では、上記の化合物はタフルプロストである。
一実施形態では、神経保護化合物は、少なくとも3ヶ月間、被験体に毎日投与される。
一実施形態では、被験体は、さらに、抗VEGF治療の必要があるか、又は、抗VEGF治療がすでに施されている。一実施形態では、上記の化合物は、抗VEGF治療の前に少なくとも一度、及び、抗VEGF治療に続き少なくとも一度を含む群から選択される1又はそれ以上の治療レジメンとして被験体に投与される。
一実施形態では、被験体は、虚血再灌流障害のリスクに関連した処置を経験することになるか、又は、上記の処置をすでに経験している。一実施形態では、被験体は、IVAVを経験することになるか、又は、IVAVをすでに経験している。一実施形態では、化合物は、局所投与経路、経口投与経路、静脈内投与経路、眼周囲注入投与経路、及び、眼球内移植薬物送達装置の投与経路を含む群から選択される1又はそれ以上の投与経路を通って被験体に投与される。一実施形態では、上記の化合物は、IVAV治療レジメンに続きある期間、少なくとも3ヶ月間毎日被験体に投与される。一実施形態では、本発明の方法は、注入の時間間隔のうちの1又はそれ以上の時間間隔が長くされ、平均の時間間隔、及び、対照の個々がそれぞれ受ける注入の数に対して注入の数が減らされることを可能にする。
一実施形態では、本発明は、IVAV治療に関連するRNFL菲薄化又は損失及び虚血再灌流損傷から被験体を治療又は保護する方法に関し、この方法は、被験体がIVAV注入を受ける前に神経保護化合物を受け取っていない場合、被験体に対して術中傍注を行うことを含む。一実施形態では、本方法は、IVAV注入の後に少なくとも1回、被験体に対して神経保護化合物を投与することをさらに含む。一実施形態では、化合物は、局所、経口、静脈内、眼周囲注入、及び眼内インプラント薬物送達デバイスからなる群から選択される1つ以上の投与経路によって被験体に投与される。一実施形態では、化合物は、IVAV治療レジメンの期間中、被験体に毎日投与される。一実施形態では、化合物はタフルプロストである。
本発明を例示する目的で、本発明の特定の実施形態が図面において描かれている。しかし、本発明は、図面において描かれている実施形態の正確な配置及び手段に限定されない。
IVAV治療前の眼のベースライン特性を描いた図であり、連続的なデータが、平均(標準偏差)として示され、上付き文字のはANOVAの使用を示し、上付き文字のはカイ二乗検定の使用を示している。 平均が注入後29ヶ月であるフォローアップ検査からの注入後データを描いた図であり、連続的なデータが、平均(標準偏差)として示され、上付き文字のは、ANOVAの使用を示している。 RNFLの菲薄化における速度変化を描いた図であり、連続的なデータが、平均(標準偏差)として示され、上付き文字のは、ANOVAの使用を示している。 注入後すぐのIOPと、RNFLの菲薄化又は損失における変化との相関を示すデータを描いた図である。
本発明は、抗VEGF治療を受けているか又は受けようとしている個体における虚血再灌流障害のリスクの予防又軽減するための方法に関する。一実施形態では、本発明は、眼疾患を治療するため及び眼科手術を行うためのより安全でより効果的な方法を提供する。一実施形態では、本発明は、被験体における視神経損傷及びRNFLの菲薄化又は損失の予防及び治療方法に関する。一実施形態では、本発明は、IVAV治療レジメンの間のIVAV注入の間隔を長くする方法に関する。一実施形態では、本発明は、減少した数のIVAV注入を有するIVAV治療レジメンに関する。
一実施形態では、本発明は、神経保護処置又は治療的有効量の神経保護化合物を被験体に投与することにより、変性眼疾患、眼疾患及び眼科処置の1つ以上に関連する被験体における視神経損傷及びRNFL漸減又は損失を防止又は低減する方法に関する。本発明の方法を用いて治療されうる眼疾患および変性眼疾患としては、加齢性黄斑変性症(AMD)および滲出性AMDまたは湿性AMDを含む黄斑変性症、糖尿病性網膜症及び網膜静脈閉塞症を含む網膜血管系疾患並びに眼内炎症に起因する黄斑浮腫;角膜新生血管、ルベオーシス、虹彩新生血管、血管新生緑内障、増殖性網膜症、放射線網膜症、未熟児網膜症、網膜血管腫性増殖症、コーツ病、イールズ病を含む様々な眼球新生血管;及びぶどう膜炎、傍窩洞炎、血管筋、脈絡膜断裂、近視を含む多数の原因に起因する二次性脈絡膜新生血管があげられるが、それらに限定されない。一実施形態では、本発明の方法は、繊維柱帯切除術等の後の眼球外科手術を含む眼球創傷治癒を調節することができる。
一実施形態では、本発明の方法は、抗VEGF治療が必要なか又は抗VEGF治療を受けた被験体に神経保護化合物を投与することを含む。一実施形態では、本発明は、被験体に神経保護処置を施すか又は治療的有効量の神経保護化合物を投与することによって、被験体におけるIVAV治療に関連する視神経損傷及びRNFLの菲薄化又は損失を軽減する方法に関する。一実施形態では、神経保護化合物は、緑内障の治療のために用いられる医薬である。
一実施形態では、本発明の方法は、神経保護処置としてIVAVの間に術中穿刺を行うことに関する。
定義
本明細書において用いられる以下の各用語には、本項目においてそれに関連する意味がある。
他に特定されない限り、本明細書で用いられる全ての技術用語及び科学用語は、一般的に、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味である。一般的に、本明細書で用いられる命名法及び臨床手順は、当技術分野において周知で一般的に利用されている。
本明細書において用いられる、冠詞「a」及び「an」は、その冠詞の文法的目的語の1又はそれ以上(すなわち、少なくとも1つ)をいう。例として、「ある要素」は、1つの要素又は2つ以上の要素を意味する。
本明細書において用いられる用語「約」は、当業者によって理解され、用いられる状況による。本明細書において用いられる用語「約」は、量及び時間的持続時間等、測定可能な値に言及する場合、
開示される方法を実行するために当該変動が適当であるように、特定された値から±20%又は±10%、より好ましくは±5%、さらにより好ましくは±1%、さらにより好ましくは±0.1%で変動することを包含することを意味する。
生物、組織、細胞またはその成分の文脈で用いられる「異常」という用語は、少なくとも1つの観察可能又は検出可能な特性(例えば、年齢、治療、時間帯等)が、「正常」(期待される)な特性を示す生物、組織、細胞又はその成分と異なる生物、組織、細胞又はその成分を意味する。ある細胞や組織では正常または期待される特性も、異なる細胞や組織では異常でありうる。
本明細書において用いられる用語「自己由来(autologous)」は、材料が後に再導入されるされる個体と同じ個体から得られる生物学的材料をいう。
本明細書において用いられる用語「同種異系(allogenic)」は、材料が導入されることになる個体と同じ種であるが、遺伝的に異なる個体から得られる生物学的材料をいう。
疾患又は障害の症状の重症度、当該症状が被験体によって経験される頻度又はその両方が軽減される場合、疾患又は障害は「緩和される」。
本明細書において用いられる用語「疾患」は、被験体が恒常性を維持することができないような被験体の健康状態であり、疾患が寛解されない場合、被験体の健康は悪化し続ける。
本明細書において用いられる、被験体における「障害」は、被験体が恒常性を維持することはできるものの、被験体の健康状態は、障害が存在しない場合よりも好ましくない健康状態である。未治療のまま放置しても、障害は、被験体の健康状態を必ずしもさらに低下させるとは限らない。
本明細書において用いられる用語「予防」又は「防ぐ」は、何も起こらなかった場合には障害又は疾患の発症がないことを意味する、又は、障害又は疾患がすでに発症している場合、さらなる障害又は疾患の発症がないことを意味する。障害又は疾患に関連する症状の一部又は全ての予防能も考慮される。
本明細書において用いられる用語「有効量」、「医薬的有効量」及び「治療的有効量」は、無毒性ではあるが、所望の生物学的結果を提供するのに十分な薬剤の量をいう。その結果は、疾患の徴候、症状、又は誘発の頻度及び/又は重症度の軽減及び/又は緩和、又は、生物系のいかなる他の所望の変化でありうる。いかなる個々のケースにおける適当な治療的量も、常套手段である実験を用いて当業者が決定することができる。
用語「患者」、「被験体」、「個体」等は、本明細書において互換的に用いられ、インビトロ又はin situのいかなる動物又はその細胞であり、本明細書に記載の方法に受け入れられる。特定の非限定的な実施形態では、患者、被験体又は個体はヒトである。
本明細書において用いられる用語「医薬的に許容される」は、化合物の生物学的活性又は特性を抑制しない、担体又は希釈剤等の材料をいい、比較的無毒であり、すなわち、材料は、望ましくない生物学的効果を誘発せず、又は、含有する組成物の成分のいずれかと有害に相互作用せず、個体に投与することができる。
本明細書において用いられる用語「医薬組成物」は、本発明の少なくとも1つの化合物と、担体、安定剤、希釈剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤及び/又は賦形剤等の他の化学成分との混合物をいう。医薬組成物は、化合物の生物への投与を促進する。化合物を投与する多数の技術が当技術分野に存在し、静脈内、経口、エアロゾル、非経口、眼内、肺内及び局所投与を含むが、これらに限定されない、。
本明細書において用いられる用語「医薬的に許容される担体」は、液体充填剤、固体充填剤、安定剤、分散剤、懸濁剤、希釈剤、賦形剤、増粘剤、溶媒又はカプセル化材料等の医薬的に許容される材料、組成物又は担体を意味し、本発明の範囲内で有用な化合物が所定の機能を果たすように被験体に化合物を運搬又は輸送することに関与する。通常、当該構築物は、ある器官、または身体の一部から、他の器官、または身体の一部へ運搬又は輸送される。各担体は、本発明の範囲内で有用な化合物を含む製剤の他の成分と適合性があり、かつ被験体に有害でないという意味で「許容される」ものでなければならない。
本明細書において用いられる用語「治療的」は、治療及び/又は予防を意味する。治療効果は、疾患又は障害の状態の少なくとも1つの徴候又は症状の抑制、減少、緩解又は根絶によって得られる。
本明細書において用いられる、疾患を「治療する」という用語は、被験体が経験する疾患又は障害の少なくとも1つの徴候又は症状の頻度又は重症度を軽減させることを意味する。
範囲:本開示を通じて、本発明の様々な態様を範囲形式で提示することができる。範囲形式の記載は、単に便宜及び簡潔さのためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の記載は、その範囲内の個々の数値だけでなく、すべての可能な部分範囲を具体的に開示したとみなされるべきである。例えば、1~6という範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6等の部分範囲、並びに、例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3及び6等、その範囲内の個々の数を具体的に開示したものとみなされるべきである。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
説明
多数の眼疾患の標準治療であるIVAVは、眼圧(IOP)を一過性に上昇させ、眼内循環を一時的に低下させる。その結果、一過性の虚血再灌流が起こり、慢性的な低酸素症状態を特徴とする睡眠時無呼吸症候群症候群と同様の虚血性組織障害が誘発される。本発明は、有害な血管新生作用と血管拡張作用を調節することを目的としたVEGF抑制が、VEGFの生理的な神経保護機能を慢性的に損ない、眼を虚血再灌流障害に陥れやすくするという知見に基づく。
本発明は、抗VEGF眼内投与に伴うRNFLの菲薄化又は損失及び/又は眼球虚血再灌流障害の予防及び治療に神経保護手段を用いることができるという驚くべき知見に基づく。具体的には、術中穿刺及び神経保護抗緑内障薬の投与がともに、IVAVを受けている患者に投与された場合、RNFLの菲薄化又は損失が低減することが見出された。
一実施形態では、本発明は、抗VEGF治療レジメンを受けているか又は必要である被験体の虚血再灌流障害の予防において予防的及び治療的に神経保護化合物を用いることに関する。一実施形態では、本発明は、慢性間欠性低酸素症による組織損傷の予防において予防的及び治療的に神経保護化合物を用いることに関する。
一実施形態では、神経保護処置は、RNFLの菲薄化又は損失、及び/又は、虚血再灌流障害のうち1つ以上のリスクのある被験体に神経保護化合物の治療レジメンを提供することを含む。一実施形態では、神経保護化合物は、抗緑内障薬物である。一実施形態では、神経保護処置は穿刺を行うことを含む。一実施形態では、穿刺及び神経保護化合物投与の組み合わせが、RNFLの菲薄化又は損失、及び/又は、眼性虚血再灌流障害のうち1つ以上のリスクのある被験体に実施される。
使用
虚血再灌流障害のリスクは、血管及び心臓の手術に関連付けられる場合があるが、移植手術又は糖尿病等の疾患の合併症でも懸念される場合がある。また、睡眠時無呼吸症候群症候群による慢性間欠性低酸素血症の人にも、同様の間欠性虚血による組織傷害が生じる可能性がある。本発明は、抗VEGF治療を受けている個体が、虚血再灌流障害による間欠的な組織虚血から生じる合併症のリスクが高いことを特定するが、虚血再灌流障害又はCIHによる間欠的な組織虚血のリスクがあるいかなる個体も、本発明の方法から利益を得ることができる。
抗緑内障薬物を含むがこれに限定されない神経保護化合物は、虚血組織損傷から起こる合併症のリスクを低減するための保護手段を提供する。したがって、一実施形態では、本発明の方法は、虚血再灌流障害又はCIHのリスクがある被験体に神経保護化合物を投与することに関する。一実施形態では、被験体は抗VEGF薬物療法を受けようとしているか、又は、抗VEGF薬物療法を受けている。一実施形態では、当該方法は、虚血再灌流障害又は慢性間欠性低酸素症のリスクに関連する処置又は状態の前に、同時に又はその後に、抗VEGF薬物療法を受けている被験体に神経保護化合物を投与することに関する。
一実施形態では、虚血再灌流障害のリスクに関連する処置は注入である。一実施形態では、注入は、眼窩内注入である。一実施形態では、虚血再灌流障害のリスクに関連する処置は、外科手術処置である。虚血再灌流障害のリスクに関連する外科的処置の非限定的な例としては、心臓血管手術、肝臓移植手術、硝子体手術、遊離自己組織移植、フラップ手術及び血管手術があげられる。
一実施形態では、虚血再灌流障害及び/又はCIHのリスクに関連する処置は、睡眠時無呼吸症候群症候群である個体において持続的気道陽圧法(CPAP)である。
一実施形態では、虚血再灌流障害のリスクに関連する処置は、非医学的処置である。一実施形態では、虚血再灌流障害のリスクに関連する非医学的処置は、睡眠時無呼吸症候群である被験体において睡眠である。一実施形態では、虚血再灌流障害のリスクに関連する非医学的処置は、糖尿病である被験体において、歩行等の常套手段又は日常の活動を含んでよい。
一実施形態では、本発明の神経保護化合物は、抗VEGF薬物療法を受けているか又は受けようとしている被験体に提供される。当該被験体は、抗VEGF薬物療法が適応とされるいかなる疾患と診断されてよい。一実施形態では、被験体はがんであると診断される。
一実施形態では、抗VEGF薬物療法を受けているか又は受けようとしている被験体は、眼性疾患又は変性眼疾患を有する被験体である。一実施形態では、眼性疾患又は変性眼疾患としては、加齢性黄斑変性症(AMD)及び滲出性AMD又は湿性AMDを含む黄斑変性症、糖尿病性網膜症及び網膜静脈閉塞症を含む網膜血管系疾患並びに眼内炎症に起因する黄斑浮腫;角膜新生血管、ルベオーシス、虹彩新生血管、血管新生緑内障、増殖性網膜症、放射線網膜症、未熟児網膜症、網膜血管腫性増殖症、コーツ病、イールズ病を含む様々な眼球新生血管;及びぶどう膜炎、傍窩洞炎、血管筋、脈絡膜断裂、近視を含む多数の原因に起因する二次性脈絡膜新生血管があげられるが、それらに限定されない。
一実施形態では、抗VEGF薬物療法を受けているか又は受けようとしている被験体は、虚血再灌流障害のリスクがある。一実施形態では、抗VEGF薬物療法を受けているか又は受けようとしている被験体は、虚血再灌流障害に関連する病態のリスクがある。一実施形態では、抗VEGF薬物療法を受けているか又は受けようとしている被験体は、虚血再灌流障害によるRNFLの菲薄化又は損失のリスクがある。
一実施形態では、虚血再灌流障害又は慢性間欠性低酸素症によるRNFLの菲薄化又は損失のリスクがある抗VEGF薬物療法を受けているか又は受けようとしている被験体は、抗VEGF薬剤又は治療が処方又は予定された時点で神経保護抗緑内障薬を服用していないか、又は、緑内障と診断されていない被験体である。
一実施形態では、神経保護処置が、抗VEGF薬剤を含む治療を受けようとしているか又は受けた被験体に施される。抗VEGF薬剤には、ベバシズマブ(例えばAvastin(登録商標)、Genentech/Roche,Inc.,South San Francisco,CA)、ラニビズマブ(例えばLucentis(登録商標)、Genentech/Roche,Inc.,South San Francisco,CA)、ペガブタニブ(例えばMacugen(登録商標)、Eyetech,Inc.,Cedar Knolls,NJ)、アフリベルセプト(例えばEylea(登録商標)、Regeneron Pharmaceuticals,Inc.,Tarrytown,NY)、ブロルシズマブ(Alcon)、コンベルセプト(中国において認可されているLumitin,Chengdu Kang Hong Biotech)、NT-503(Neurotech)、デキサメタゾン、硝子体内移植(例えばOzurdex(登録商標)、Allergan,Inc.,Irvine,CA)、酢酸アネコルタブ、VEGFトラップ、ラパチニブ(Tykerb)、ソラフェニブ(Nexavar)、スニチニブ(Sutent)、アキシチニブ及びパゾパニブ、乳酸スクアラミン、コンブレタスタチンA4プロドラッグ、AdPEDF、SiRNA、Cand5及びTG100801が含まれるが、これらに限定されない。
一実施形態では、本発明の神経保護化合物は、虚血再灌流障害又は慢性間欠性低酸素症のリスクがある被験体に提供される。当該被験体は、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群、一過性脳虚血発作、又は、心臓血管手術、肝臓移植手術、硝子体手術、遊離自己組織移植、フラップ手術及び血管手術のうちの1又はそれ以上の手術が必要な疾患と診断されうる。
一実施形態では、虚血再灌流障害又は慢性間欠性低酸素症のリスクがある被験体は、緑内障と診断されていないか、又は、神経保護抗緑内障薬を服用していない被験体である。
一実施形態では、虚血再灌流障害及び慢性間欠性低酸素症関連の損傷は、いかなる組織又は器官において生じうる。虚血再灌流障害及び慢性間欠性低酸素症関連の損傷の影響を受けやすい器官としては、眼、心臓、肝臓及び脳が含まれるが、これらに限定されない。したがって、いかなる組織、器官又は器官系が、本発明の方法を用いた、虚血再灌流障害及び慢性間欠性低酸素症関連の損傷からの保護の利益を得ることができる。
治療レジメン
本発明は、緑内障を有し、かつ、IVAV治療の前後に抗緑内障薬物を服用していると診断された患者が、抗緑内障薬物を用いていない患者と比較して、RNFLの菲薄化又は損失のレベルを低減させたという知見に基づく。したがって、本発明の一態様は、神経保護抗緑内障薬の治療レジメンを個体へ実施することを通じてIVAVが必要な非緑内障の個体におけるRNFLの菲薄化又は損失を治療又は予防するための方法に関する。一実施形態では、神経保護化合物は、IVAV治療の前、IVAV治療の後に、又はその両方に投与される。一実施形態では、治療レジメンは、IVAV処置の前に、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも5日間又はそれ以上の日数、少なくとも1日1回、神経保護化合物を投与することを含む。一実施形態では、治療レジメンは、個々のIVAV処置後、少なくとも1日、少なくとも7日間、少なくとも10日間、少なくとも1ヶ月間、少なくとも2ヶ月間、少なくとも3ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、少なくとも1年間又は1年を超える間、少なくとも1日1回、神経保護化合物を投与することを含む。一実施形態では、治療レジメンは、IVAV治療レジメンの期間を通じて各個々のIVAV注入後、少なくとも1日、少なくとも7日間、少なくとも10日間、少なくとも1ヶ月間、少なくとも2ヶ月間、少なくとも3ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、少なくとも1年間又は1年を超える間、少なくとも1日1回、神経保護化合物を投与することを含む。一実施形態では、治療レジメンは、IVAV処置の前に、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも5日間又はそれ以上の間、及び、個々のIVAV処置後、少なくとも1日、少なくとも7日間、少なくとも10日間、少なくとも1ヶ月間、少なくとも2ヶ月間、少なくとも3ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、少なくとも1年間又は1年を超える間、少なくとも1日1回、神経保護化合物を投与することを含む。一実施形態では、治療レジメンは、IVAV処置の前に、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも5日間又はそれ以上の間、及び、IVAV治療レジメンの期間を通じて各個々のIVAV注入後、少なくとも1日、少なくとも7日間、少なくとも10日間、少なくとも1ヶ月間、少なくとも2ヶ月間、少なくとも3ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、少なくとも1年間又は1年を超える間、少なくとも1日1回、神経保護化合物を投与することを含む。
ほとんどのIVAV治療レジメンは、数ヶ月、1年又は数年の間隔がある多数のIVAV処置を含む。したがって、一実施形態では、治療レジメンは、多数のIVAV処置に対して、全治療期間中毎日IVAV治療が必要な非緑内障被験体に神経保護化合物を投与することを含む。さらに、本発明の神経保護化合物の投与は、眼症状を治療するのに必要なIVAV治療の期間又はIVAV処置の数を減らすという利点がある。
一実施形態では、神経保護処置は、IVAVを経験しようとしているか又は既に経験した被験体に施される。一実施形態では、本発明は、外科手術処置の前にも後にもIVAVが必要な被験体に対する神経保護処置(例えば、処置の前後に用いるための毎日の点眼薬又は目薬等)の治療的適用に関する。一実施形態では、本発明は、外科手術処置(例えば穿刺)の間にIVAVが必要な被験体に対する神経保護処置の治療的適用に関する。一実施形態では、本発明は、処置の間及びその後にIVAVが必要な被験体に対する神経保護処置(例えば、穿刺と、処置後に用いるための毎日の点眼薬又は目薬との併用)の治療的適用に関する。一実施形態では、本発明の神経保護化合物の投与は、眼症状の治療に必要なIVAV治療の期間及びIVAV処置の数のうち1つ以上を減らすという利点がある。
一実施形態では、神経保護化合物は、抗VEGF薬剤の投与の前に、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10日間又は10日を越える間投与される。一実施形態では、神経保護化合物は、抗VEGF薬剤の投与後、少なくとも1日、少なくとも7日間、少なくとも10日間、少なくとも1ヶ月間、少なくとも2ヶ月間、少なくとも3ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、少なくとも1年間又は1年を超える間、毎日投与される。一実施形態では、神経保護化合物は、慢性的に投与される。
一実施形態では、神経保護化合物は、外科手術処置の前に、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10日間又は10日を越える間抗VEGF薬剤を服用している被験体に投与される。一実施形態では、神経保護化合物は、外科手術処置後、少なくとも1日、少なくとも7日間、少なくとも10日間、少なくとも1ヶ月間、少なくとも2ヶ月間、少なくとも3ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、少なくとも1年間又は1年を超える間毎日抗VEGF薬剤を服用している被験体に投与される。一実施形態では、神経保護化合物は、慢性的に投与される。
一実施形態では、神経保護処置は、神経保護化合物と併用して適用される。一実施形態では、術中穿刺は、神経保護化合物を含む治療レジメンと併用して用いられる。当該組み合わせは、IVAVを受ける前に被験体が神経保護化合物を投与されていない場合にRNFLの菲薄化又は損失から被験体を保護するのに有用でありうる。一実施形態では、神経保護化合物を投与されていない被験体は、IVAV処置の前に少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも5日間又は5日を超える間、少なくとも1日1回、神経保護化合物が提供されていないか又は神経保護化合物を服用していない被験体である。
Treat and Extend法
一般的に、treat and extend戦略(T&E)は、1又はそれ以上の(一般的には1~3の)毎月の負荷注入(monthly loading injection(s))から始まり、その後、患者は、4週間以内に再診し、疾患活動性の徴候が評価される。患者は注入を受け、疾患が活動性である場合には他の評価のために4週間以内に再来院する。疾患活動性の証拠が見られない場合には、患者は5又は6週間以内に再来院する。患者は各訪問時に注入を受け、検査の結果が、次の来院までの間隔を決定する。非活動性である場合、間隔は、1又は2週間延長される。活動性である場合、間隔は、2週間短縮され、次に、一定に保たれる。一般的に、所与の眼に対して最適な治療間隔が決定されると、間隔は、通常一定のままである。
一実施形態では、本発明の方法は、個体が受けるIVAV注入の総数を減らすこと、及び、IVAV注入の間隔を長くすることのうち1つ以上を達成するためにT&E戦略と共に用いられる。一実施形態では、当該方法は、毎月の初回負荷IVAV注入(initial monthly loading IVAV injections)の数を減らす。一実施形態では、当該方法は、より高い割合の患者のIVAV注入の間隔を、最大推奨間隔(一般的に10~12週間)まで延長することができる。
化合物
本発明により投与することができる神経保護化合物には、アセタゾラミド、アルファアゴニスト、ベタキソロール、ビマトプロスト0.01%点眼液、ビマトプロスト0.03%点眼液、ブリモニジン、ブリンゾラミド、ブリモニジンとブリンゾラミドの配合剤、Ca2+チャネル遮断剤、無水炭酸阻害剤、コンドロイチン硫酸塩プロテオグリカン、ドルゾラミド、イチョウ葉エキス、ラタノプロスト、L-グルタミン酸、メマンチン、ニューロトロフィン、ニプラジロール、一酸化窒素合成酵素阻害剤、NMDA拮抗剤、フェニルエフリン、プロスタグランジン類似体、チモロール、チモロールXE、チモロールとブリモニジン配合剤、トラボプロスト0.004%点眼液、トラボプロスト0.004%点眼液-トラバタンZ及びウノプロストンイソプロピル点眼液、ナルメフェン、ミノサイクリン、組換えヒト塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、シチコリン、緑茶エキス、エポエチンアルファが含まれるが、これらに限定されない。一実施形態では、神経保護化合物は、抗緑内障薬物である。
一実施形態では、神経保護化合物を含む組成物は、保存料を含まない。一実施形態では、保存料を含まない神経保護化合物はタフルプロストである。
本発明の他の実施形態では、治療的有効量の神経保護化合物が、広範囲の現在利用可能な眼性治療との併用療法で用いられる。したがって、神経保護化合物は、局所的、経口的又は静脈内に、同じ送達担体/担体において少なくとも1つの他の治療効果のある薬剤と同時投与することができる。あるいは、併用療法は、他の経路及び剤形(例えば、神経保護点眼薬及び経口抗生物質等)を用いて同時投与することができる。本発明の範囲内で、神経保護処置又は化合物は、抗生物質(例えば、βラクタムタイプ、フルオロキノロン、ペプチド抗生物質、広域スペクトルペニシリン、栄養強化抗生物質混合物等)、抗菌薬、フリーラジカル消去抗酸化剤、抗ウイルス薬、副腎皮質ステロイド薬、非ステロイド性抗炎症薬、調節麻痺剤、コリン作動薬、水溶液又は生理食塩水の洗浄液、縮瞳薬、コラゲナーゼ阻害薬、炭酸脱水酵素阻害薬、糖タンパク質、成長因子、硝酸銀、及び、眼組織接着剤/角膜モルタル(corneal mortar)(急性炎症穿孔角膜用)のうち少なくとも1つと効果的に併用される。
一実施形態では、神経保護処置又は化合物は、治療的有効量の、シプロフロキサシン、オフロキサシン、ノルフロキサシン、セファゾリン、トブラマイシン、ゲンタマイシン、アミノグリコシド、ペニシリン、半合成ペニシリン、アモキシシリン、アンピシリン、カルベニシリン、チカルシリン、メズロシリン、セファロスポリン、バンコマイシン、クロラムフェニコール、エリスロマイシン、クリンダマイシン、リファンピン、バシトラシン、ポリミキシン、スペクチノマイシン、スルホンアミド及びトリメトプリムによって例証される抗生物質;スーパーオキシドジスムターゼ、カロテノイド(アスタキサンチン、カンタキサンチン、β-カロテン、ゼアキサンチン、ルテイン及びα-トコフェロール等)、アスコルビン酸、グルタチオン、亜セレン酸又はセレン酸ナトリウム及び特定のアミノステロイド(例えば、米国特許第5,209,926号に開示されているもの等)によって例証されるフリーラジカル消去抗酸化剤;アシクロビル、ガンシクロビル、イドクスウリジン、ビダラビン、トリフルリジン、ブロモビニルデオキシウリジン、アジドチミジン、アマンタジン、リマンタジンによって例証される抗ウイルス薬;デキサメタゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、フルオロメトロン、ベタメタゾン、ヒドロコルチゾンによって例証される副腎皮質ステロイド;ケトロラク、インドメタシン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、ロキソプロフェン及びジクロフェナクによって例証される非ステロイド性抗炎症薬;アトロピンによって例証される調節麻痺剤;フィゾスチグミン、ピロカルピン及びカルバコールによって例証される縮瞳薬;アセチルシステインによって例証されるコラゲナーゼ阻害薬;フィブロネクチン及びビトロネクチン等の糖タンパク質並びにその類似体又は断片;イソブチルシアノアクリレートによって例証される眼組織接着剤;場合によっては、タンパク質架橋剤(例えば、アルデヒド及びジイミデートエステル)と共に、フィブロネクチン/成長因子(例えばEGF等)の組成物によって例証される角膜モルタル;及び、上記の材料の様々な混合物;と同時投与することができる。
採用する神経保護化合物の正確な神経保護処置又は予防的又は治療的投与量は、被験体の年齢及び健康状態、治療されている眼症状の性質及び重症度、並びに、投与経路を含むいくつかの要因に依存する。これらの要因の評価並びに正確な投与量の決定は、治療する眼科医の技量の範囲内である。一実施形態では、神経保護化合物は、眼に実質的な毒性をもたらさない量又は用量で投与される。本明細書で用いられる、実質的な毒性の欠如には、毒性にいかなる顕在化もないことと、当業者が治療を軽減または中止させる程には有害ではないと考える程度の毒性の顕在化があげられる。
製剤及び投与
被験体、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトに対する本発明の神経保護処置又は神経保護化合物の投与は、虚血再灌流障害又はCIHによる虚血組織の損傷、及び、被験体におけるRNFLの菲薄化又は損失のうちの1又はそれ以上を防ぐ又は治療するのに効果的な投与量及び時間で、既知の手順を用いて実施されてよい。治療効果を達成するのに必要な治療的化合物の有効量は、被験体における疾患又は障害の状態;被験体の年齢、性別及び体重;及び、血液脳関門及び血液網膜関門を通過する治療的化合物の能力;等の因子に応じて変化してよい。
投与のレジメンは、有効量を構成するものに影響を及ぼし得る。神経保護処置又は神経保護化合物は、IVAV治療又は抗VEGF薬剤の投与の前、間及び後のうち1回又は複数回被験体に処置されるか又は投与されてよい。さらに、神経保護化合物の投与量は、治療的又は予防的状況の緊急性によって示されるように、比例して増加又は減少させることができる。本発明の治療的化合物に対する有効用量の範囲の非限定的な例は、1日あたり体重の約1~5,000mg/kgである。当業者は、関連因子を研究し、過度の実験によらずとも治療的化合物の有効量に関する決定を行うことができるであろう。
本発明の医薬組成物における活性成分の実際の投与量レベルは、被験体にとって有毒でなく、特定の被験体、組成及び投与のモードに対して所望の治療反応を達成するのに効果的な活性成分の量がえられるように変化してよい。
特に、選択される投与量レベルは、利用される特定の化合物の活性、投与の時間、化合物の排泄率、治療の期間、当該化合物と併用して用いられる他の薬物、化合物又は材料、治療されている被験体の年齢、性別、体重、状態、全般的な健康状態及び以前の病歴、及び、医学分野において周知の同様の因子を含む様々な因子に依存する。
当技術分野における通常の技能を有する、例えば医師又は獣医師等の医学博士は、必要な医薬組成物の有効量を容易に決定し、かつ、処方することができる。例えば、医師又は獣医師は、所望の治療効果を達成するために要求されるレベルより低いレベルで医薬組成物に利用される本発明の化合物の投与を開始し、さらに、所望の効果が達成されるまで投与量を徐々に増やしてよい。
投与のための本発明の化合物は、約1μg~約10,000mg、約20μg~約9,500mg、約40μg~約9,000mg、約75μg~約8,500mg、約150μg~約7,500mg、約200μg~約7,000mg、約3050μg~約6,000mg、約500μg~約5,000mg、約750μg~約4,000mg、約1mg~約3,000mg、約10mg~約2,500mg、約20mg~約2,000mg、約25mg~約1,500mg、約50mg~約1,000mg、約75mg~約900mg、約100mg~約800mg、約250mg~約750mg、約300mg~約600mg、約400mg~約500mg、及び、その間のいかなる及び全ての全体又は部分的な増分の範囲内にあり得る。
ある実施形態では、本発明の化合物の用量は、約1mg~約2,500mgである。ある実施形態では、本明細書に記載の組成物に用いられる本発明の化合物の用量は、約10,000mg未満、約8,000mg未満、約6,000mg未満、約5,000mg未満、約3,000未満、約2,000mg未満、約1,000mg未満、約500mg未満、約200mg未満又は約50mg未満である。同様に、ある実施形態では、本明細書に記載の第2の化合物(すなわち、アピコンプレクサの寄生虫抗感染薬)の用量は、約1,000mg未満、約800mg未満、約600mg未満、約500mg未満、約400mg未満、約300mg未満、約200mg未満、約100mg未満、約50mg未満、約40mg未満、約30未満、約25mg未満、約20mg未満、約15mg未満、約10mg未満、約5mg未満、約2mg未満、約1mg未満、約0.5mg未満、及び、その間のいかなる及び全ての全体又は部分的な増分を含む。
点眼薬及び硝子体内注入薬又は眼窩周囲(テノン嚢下又は結膜下)注入薬は、現在入手可能な点眼用製剤の90%を超える従来の剤形である。生物学的利用率を改善し、かつ、反復注入に伴う合併症を軽減するために、本発明は、神経保護化合物を単独で又は他の薬物と併用した徐放を考案する。本発明における徐放は、ポリマーゲル、リポソーム及びナノ粒子を含むコロイド系、シクロデキストリン、コラーゲンシールド、拡散チャンバ、可撓性担体ストリップ及び硝子体内移植を含むがこれらに限定されない多くの異なる送達システムを介して達成することができる。
本発明における、眼性及び眼内薬物送達システムは、これらの神経保護化合物を眼の裏側に送達する。当該薬物送達システムには、薬物送達貯蔵器として強膜自体を用いること、組織を通過する「プロドラッグ」製剤、時間の経過に伴い混合物を放出する小さな生分解性ペレット、硝子体内移植、硝子体内シリコーン挿入物、硝子体内及び経強膜の乳酸-グリコール酸共重合体マイクロスフェア、アルギン酸カルシウム挿入物、被包性細胞、経強膜のイオン泳動、ナノ粒子(例えばリン酸カルシウム等)、及び、治療用タンパク質を治療箇所に送達することができる遺伝子組換えウイルスが含まれる。
本発明の神経保護化合物は、溶液の形態でありうる。溶液は、点滴器により制御されるボトル又はディスペンサーから目の結膜嚢に落とすことによって局所的に投与することができる。成人に対する典型的な投与レジメンは、1日あたり約2~約8滴に及んでもよく、就寝時又は一日中適用される。しかし、成人に対する投与量はより多くてもよく、その場合、液滴は、例えば5分という期間にわたって投与される5つの用量等、「バンチング」によって投与され、毎日約4回繰り返される。本発明の一実施形態による局所的な溶液は、人工涙液製剤中の治療的用量の神経保護化合物を含む。当該人工涙液製剤は、手術後に損傷された角膜上皮の正常なバリア機能を回復させるために用いられる。通常、人工涙液組成物は、正常なヒト涙膜中に存在するイオン成分、並びに、等張化剤(例えば、Na、Ca、K及びMg塩化物等の可溶性塩、ブドウ糖及びソルビトール等)、緩衝液(例えばアルカリ金属リン酸緩衝液等)、粘性/潤滑剤(例えば、アルキル及びヒドロキシアルキルセルロース、デキストラン、ポリアクリルアミド等)、非イオン性界面活性剤、封鎖剤(例えば、エデト酸二ナトリウム、クエン酸及びクエン酸ナトリウム等)、及び、保存料(例えば、塩化ベンザルコニウム及びチメロサール等)のうち1又はそれ以上の薬剤の様々な併用を含有する。一実施形態では、人工涙液組成物は、保存料を含まない。人工涙液組成物に組み込まれる当該成分の各量及び相対的割合は、熟練の薬剤処方化学者が容易に決定できる。イオン種の炭酸水素が、例えば米国特許第5,403,598及びUbels,JL,et al,Arch.Ophthalmol.1995,113:371-8において、人工涙液組成物に用いられている。
あるいは、本発明の神経保護化合物は、眼軟膏剤の形態でありうる。眼軟膏剤は、眼表面との薬物接触時間を延長するという利点がある。眼軟膏剤は一般的に、例えば、多くは無水ラノリンと共に白色ワセリン及び鉱物油、ポリエチレン-鉱物油ゲル、及び、眼に非刺激性であると薬剤処方化学者によって認識され、他の物質で構成される基剤を含み、眼液内へ薬物が拡散され、さらに、貯蔵状態下で適当な期間薬物の活性を保持する。
予防的及び治療的量の神経保護化合物は、経口的に投与することができる。これらの経口剤形に対して、神経保護化合物は、医薬的に許容される固体又は液体の担体と共に処方されてよい。固形の調製物には、散剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ剤及び分散性の顆粒剤が含まれる。1回の投与量あたりの投与される神経保護化合物の濃度又は有効量は、実際の化合物に大きく依存する。しかし、1日の総経口投与量は、通常、約50mg~30g、より好ましくは約250mg~25gに及ぶ。固体の担体は、希釈剤、香味料、可溶化剤、潤滑剤、懸濁剤、結合剤、保存料、錠剤分解助剤又は被包材料としても機能し得る1又はそれ以上の物質でありうる。適当な担体には、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプンゼラチン、トラガント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、低融点ワックス及びカカオバター等が含まれる。用語「調製物」は、活性成分が、他の担体の有無によらず、ある担体によって被覆され、したがってそれと付随しているカプセルを提供する担体としての被包材料を有する活性化合物の製剤を含むことが意図されている。同様に、カシェ及びロゼンジも含まれる。錠剤、散剤、カプセル剤、丸剤、カシェ剤及びロゼンジ剤は、経口投与に適した固体剤形として用いることができる。
神経保護化合物は、眼内移植として外科的に投与することもできる。一例として、ポリビニルアルコール又はポリビニルアセテートには拡散性の壁があり、ミリグラム量の神経保護化合物を含有する貯蔵容器を、強膜に移植することができる。他の例として、ミリグラム量の神経保護化合物を、約2mm×4mmの寸法を有し、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸、ポリ乳酸又はポリ無水物等のポリマー又はセバシン酸等の脂質から作製されるポリマーマトリクスに組み込むことができるか、又は、強膜上又は眼内に移植することができる。これは、通常、外用麻酔薬又は局所麻酔薬のいずれかを受け、かつ、角膜の後ろに形成される小さな(3~4mmの)切開部を用いる被験体で成し遂げられる。次に、神経保護化合物を含有するマトリックスが、切開部を介して挿入され、さらに、9-0ナイロンを用いて強膜に縫合される。
神経保護化合物は、眼への局所適用用又は注入用に、不活性マトリックス内に含有されてよい。不活性マトリックスの一例として、リポソームは、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)から調製されてよく、好ましくは卵ホスファチジルコリン(PC)から調製されてよく、これは、この脂質熱転移が低いからである。リポソームは、当業者には既知の標準的な手順を用いて作製される。神経保護化合物は、ナノグラム量からマイクログラム量に及ぶ量で、卵PCの溶液に添加され、親油性薬物はリポソームに結合する。
持続放出型の薬物送達システムが、一定期間にわたり活性剤が徐放されるために眼内に移植されてよい。移植可能な形成物は、ポリマー(例えば、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ無水物等)又はマイクロスフェアとして製剤でありうる脂質のカプセルの形態であってよい。例示的な例として、神経保護化合物は、ポリビニルアルコール(PVA)と混合され、次に、混合物は、乾燥され、エチレン酢酸ビニルで被覆され、次に、PVAで再び冷却されてよい。リポソームと結合した神経保護化合物は、液滴の形態で又は水性クリームとして局所的に適用されてよく、又は、眼内に注入されてよい。局所適用のための製剤では、薬物は、磨耗及び眼表面からの涙によりリポソームカプセルが分解するに従い、時間の経過に伴いゆっくり放出される。眼内注入のための製剤では、リポソームカプセルは、細胞消化により分解する。これらの製剤はいずれも、徐放性薬物送達システムの利点を提供し、被験体が時間の経過に伴い薬物に絶えず曝露されることを可能にする。
持続放出型の製剤では、マイクロスフェア、カプセル、リポソーム等が、ボーラス投与量として投与された場合に有毒でありうる濃度の神経保護化合物を含有し得る。しかし、持続放出型の投与は、いかなる時間に放出される濃度も毒性量を超えないように処方される。これは、例えば、様々な製剤の溶媒(被覆又は非被覆マイクロスフェア、被覆又は非被覆カプセル、脂質又はポリマー成分、単層又は多層の構造体及び上記の組み合わせ等)を介して成し遂げられる。他の変数は、被験体の薬物動態-薬力学パラメータ(例えば、体重、性別、血漿クリアランス率、肝機能等)を含んでもよい。マイクロスフェア、マイクロカプセル、リポソーム等の形成及び添加及びその眼内移植は、当業者には既知の標準的な技術であり、例えば、サイトメガロウイルス網膜炎を治療するためのガンシクロビル徐放性移植の使用は、Vitreoretinal Surgical Techniques,Peyman et al.,Eds.(Martin Dunitz.London 2001,chapter 45)、Handbook of Pharmaceutical Controlled Release Technology,Wise,Ed.(Marcel Dekker,New York 2000)に開示されており、これらの文献のうち関連する部分のその全体が本明細書において参照により援用される。
本発明のさらなる態様は、術中穿刺である。術中穿刺の実施のために、プロパラカイン又はテトラカインの液滴の局所投与、2%リドカインゲル又は2%リドカイン溶液の結膜下注入を含むがこれらに限定されない当業者には既知の方法を介して麻酔が施されてよい。一般に、硝子体内注入は、マスク、滅菌グローブ、滅菌ドレープ及び滅菌開瞼器を用いて、制御された無菌条件下で施される。注入の前に、眼窩周囲領域が洗浄される。眼窩周囲領域の洗浄において用いるための溶液は、当業者には既知であり、ポビドンヨード調製物を含んでもよい。術中穿刺(PARA)は、IVAV等の硝子体内注入の直後に行うことができる。PARAは、例えば、プランジャーが除去されたツベルクリンシリンジ上の30g針を用いることを含む、当業者には既知の方法によって行われてよい。PARAの後、眼の洗浄が、適当な溶液を用いて行われてよい。一実施形態では、使用に適当な溶液は、平衡塩類溶液である。
実施例
本発明は、以下の実験例を参照してさらに詳細に記載される。これらの実施例は、単に例示を目的として提供されており、特記しない限り、限定的であると意図するものではない。したがって、本発明は、以下の実施例に限定されるものと決して解釈されるべきではなく、正しくは、本明細書において提供される教示の結果として明らかになるいかなる及び全ての変形を包含すると解釈されるべきである。
さらなる説明が必要なことなく、当業者は、上記の説明及び以下の例示的な実施例を用いて、本発明の化合物を作製及び利用することができ、さらに、特許請求の範囲に記載の方法を実施することができると考えられる。したがって、以下の作業用実施例は、本発明の好ましい実施形態を具体的に指摘しており、決して本開示の残りの部分を限定するものとして解釈されるべきではない。
網膜神経線維層の厚さに対する穿刺の有無にかかわらず行われる硝子体内抗VEGF注入の効果
以前の研究では、補助的な穿刺(PARA)なしにIVAVを受けた眼におけるRNFLの菲薄化又は損失に向かう傾向が観察された(Hale et al.,The Retina Society Annual Meeting,2010)。しかし、この研究は、レトロスペクティブな設計、試料数が少なく、注入数が少なく、かつ、経過観察期間が短い点で制限されていた。本研究の目的は、RNFLの菲薄化又は損失に対するPARAの有無にかかわらないIVAVの影響を調査することである。
次に、材料及び方法が記載される。
材料及び方法
治験設計
このコホート研究は、PARAがあるIVAVとPARAがないIVAVとを、少なくとも3ヶ月間経過観察されるAMDを有する2つの並行群において比較した。この研究を、ペンシルベニア州北東部にある単一の施設にて行った。
研究被験体母集団
研究被験体母集団は、2008年1月から2014年5月までにIVAVでの治療を開始した全てのGeisinger Medical Centerの研究被験体を含んだ。研究の治療について伏せられた予定を組むスタッフが、883人の被験体を、2人の網膜専門医のうちの1人に割り当てた。1人の医師が全ての被験体に対して穿刺を行い、もう1人の医師はいかなる被験体に対しても穿刺を行わなかった。可能性のある被験体の数は、その医師が研究場所にて1週間あたり働いた日数がより少なかったため、PARAサブ群において少なかった。各網膜専門医は、最初の試験の時点での可能性のある研究参加者についてClinical Research Coordinator(CRC)に警告した。CRCは候補者と研究について議論し、さらに、参加の誘いを受け入れ、かつ、組み入れ基準を満たした者(168人の被験体、196の眼)を登録させた。中間透光体の混濁又は質の悪い修復により質の悪いOCTを有する5つの眼(3人の被験体)、傍乳頭血管新生を有する8つの眼(8人の被験体)及び3ヶ月未満の経過観察を有する4つの眼(4人の被験体)を除外し、153人の被験体の179の眼をもたらした。Geisinger Institutional Review Boardはこの研究を承認した。書面による同意を全ての参加者から得て、研究を、ヘルシンキ宣言にしたがって実施した。研究はHIPAAに準拠していた。全ての試験及び治療を、米国ペンシルベニア州ダンビルのGeisinger Medical Center Department of Ophthalmologyで行った。
評価
眼科フォトグラファーが、各注入の前にOCT(Cirrus,Carl Zeiss Meditec,Inc.)を得て、電子診療記録に画像をスキャンした。RNFLの厚さを、自動分割アルゴリズムによって計算した。眼科看護師が、注入の前及びその直後及び10分後にトノペンを用いて眼圧を得た。注入直後のIOP測定を容易にするために、圧平の代わりにトノペンを使用した。注入10分後のIOPが30mmhgより大きい場合、追加のIOP読み取り値を、IOPが30mmhg以下になるまで10分間隔で得た。
成果
第一の評価基準は、最初の測定値と最後の測定値間のRNFLの菲薄化又は損失の平均変化(chgRNFLの菲薄化又は損失)、及び、RNFLの菲薄化又は損失の変化率(rate chgRNFLT)であった。各訪問に対して計算された第二の評価基準は、注入前から注入後のIOPの平均変化(chgIOP)、及び、注入後の最大IOP(maxIOP)及び最終IOPであった。治療の過程を通じて各眼に対して記録された最高maxIOP及び最大chglOPを用いて、平均値を計算した。最後の訪問時の注入前のIOPを、最終IOPとして記録した。観察した有害事象には、眼内炎、前房出血、レンズ損傷、注入前IOP>25が含まれた。
介入処置
硝子体内注入を、治療する医師の裁量により3つの抗VEGF薬物(ラニビズマブ、ベバシズマブ、アフリベルセプト)のうちの1つを0.05ml用いて行った。3回の最初の連続した毎月の注入に続いて、再注入を、OCTの所見に基づいて「treat and extend」プロトコルに従い行った。群間の注入間隔を標準化する試みはなかった。麻酔は被験体及び医師の好みに依存し、その方法は、局所的なプロパラカイン又はテトラカインの滴下、2%リドカインゲル又は2%リドカイン溶液の結膜下注入を含んだ。注入前準備は医師の好みに応じて変化した。PARAの眼では、眼瞼を10%のベタジンスワブを用いて準備し、追加のベタジンを結膜内に滴下注入した。非PARAの眼では、眼瞼の準備は行わず、注入直前に10%ベタジンスワブを用いてベタジンを結膜に塗布した。マスキングは、いずれの群でも日常的には使用しなかった。医師の好みにしたがって、上側頭部又は下側頭部の四分円(superotemporal or inferotemporal quadrant)のいずれかにある毛様体扁平部を通して30g針によって注入を実行した。綿棒を注入部位の上に置いた。穿刺を、プランジャーを取り除いたツベルクリンシリンジ上の30g針を用いて、注入直後に側頭部の縁にて行った。注入に続いて、全ての眼を平衡塩類溶液で洗浄した。2008年から2013年の間に、いずれの群においても局所抗生物質を処方し、その後、予防的抗生物質は使用しなかった。
統計解析
標準偏差を有した平均値(連続データ)又は割合(カテゴリデータ)を用いてデータを要約した。必要に応じて分散分析(ANOVA)又はカイ二乗検定を用いて、PARA群(群1)、非PARA群(群2)及び対照群(群3)間でベースライン特性を比較した。注入後の成果は、注入後の最大IOP、ベースラインから注入後までのIOPの変化、最終IOP、RNFLの菲薄化又は損失の変化及びRNFLの菲薄化又は損失の変化率を、ANOVAを用いて治療群間で比較することによって評価した。ピアソン相関係数を用いて、IOPの成果、RNFLの菲薄化又は損失の変化及びRNFLの菲薄化又は損失の変化率の相関の程度を測定した。統計解析にはSASバージョン9.3を使用し、全ての試験は両側性であり、p値<0.05を有意と見なした。年齢、性別、注入の数、経過観察期間、ベースラインのRNFLの菲薄化又は損失及びベースラインのIOPによる調整を行った多重線形回帰を用いて、群間の差が、潜在的な偏りを考慮した後にも残っているかどうかを決定した。
次に、結果が記載される。
結果
参加基準を満たした153人の被験体の179の眼が含まれた。ベースライン特性が、図1に示されている。75の眼がPARAを受け(群1)、104の眼が受けなかった(群2)。追加の44の未治療の人の眼が対照として役立った(群3)。平均年齢は、群1及び群2においてそれぞれ81.0歳及び79.0歳であった。群1の被験体の40%及び群2の42%は男性であった。平均注入回数は9.9(群1)及び12.4(群2)であった。緑内障のEMR診断、及び、局所的な抗高眼圧液滴の使用又は濾過手順の履歴の存在によって定義される緑内障は、群1の20%(15の眼)、群2の13%(13の眼)(p=0.147)及び対照の25%(11の眼)に存在した。これらのうち、11%(群1の8つの眼)及び7%(群2の7つの眼)が、複数の抗高眼圧液滴を服用していた。ベースライン時の平均IOPは、16.0mmhg(群1)及び14.2mmhg(群2)であった。ベースラインの平均RNFLの菲薄化又は損失は、群1で87.8μm及び群2で88.6μmであった。ベースラインのパラメータ間に統計的に有意な差はなかった。
図2は、注入後のデータを示している。平均の経過観察は、群1及び群2においてそれぞれ27.7及び31.3ヶ月であった。平均のmaxIOPは、群1及び群2においてそれぞれ19.1mmhg及び54.1mmhgであった(p<0.0001)。平均のchgIOPは、穿刺後に4.5mmhg(範囲-15~24)、非穿刺の眼において39.9mmhg(範囲13~60)であった(p<0.0001)。平均のchgRNFLの菲薄化又は損失は、-1.3um(群1)、-5.1um(群2)(p<0.0001)及び-0.9um(群3)であった。最終訪問時の平均の注入前IOP(最終IOP)は、群1及び群2においてそれぞれ14.5及び14.0であった。いずれの群でも、最初の訪問と最終訪問との間に、注入前IOPにおいて統計的に有意な変化はなかった。緑内障のない眼の中で、平均のchgRNFLの菲薄化又は損失は、群1及び群2においてそれぞれ-1.0um及び-5.1umであり(p<0.0001)、対照においては-0.3umであった。平均のchgRNFLの菲薄化又は損失は、緑内障の眼では、-2.6um(群1)、-5.0um(群2)(p=0.392)及び-2.6um(対照)であった。複数の滴下を受ける緑内障の眼の中で、chgRNFLの菲薄化又は損失は、群1、2及び対照においてそれぞれ-3.0、-9.6、-1.0umであった(p=0.017)。chgIOP(r=-0.175、p値=0.121)もmaxIOP(r=-0.109、p値=0.382)も、chgRNFLTとは有意に相関しなかった。
同様の結果が、年齢、性別、注入の数、経過観察期間、ベースラインのRNFLの菲薄化又は損失及びベースラインのIOPを考慮した多重線形回帰を使用した場合においても見られた。これらのモデルでは、maxIOP、chgIOP及びchgRNFLは全て有意のままであり(それぞれに対してp<0.0001)、最終IOPは有意でないままであった(p=0.173)。本発明者等はベースライン因子間の相互作用の全てを調べ、モデルにおけるそれらの包含は示される結果を変えないということを確認した。
図3は、RNFLの菲薄化又は損失の変化率を提供している。平均のchgRNFLの菲薄化又は損失の率は、群1及び2においてそれぞれ-1.1um/年対-3.3um/年であった(p=0.0024)。緑内障のない眼のサブ群分析が、平均のchgRNFLの菲薄化又は損失の率は、群1及び2においてそれぞれ-0.88um/年対-3.54um/年であった(p=0.0014)ことを明らかにした。全ての緑内障の眼の中で、平均のchgRNFLの菲薄化又は損失の率は、群1及び2及び対照においてそれぞれ-1.99um/年、-1.65um/年及び-1.45um/年であり(p=0.938)、複数の滴下を受けている者では、群1及び2において-1.39um/年対-3.39um/年であった(p=0.465)。基礎をなす分布の感覚を提供するために、標準偏差が平均値と共に含まれた。RNFLにおける変化とRNFLにおける変化率の分布は、釣鐘状の曲線に似ている。異常値が平均から±4の標準偏差として定義されている場合、RNFLの変化に対する異常値は存在しなかった。RNFLの変化率に対しては、3つの異常値があった。異常値を取り除き、結果を図3の結果と比較することによって、感度分析を実行した。この感度分析は、図3の結果に変化がないことを明らかにし、異常値が示される結果に影響しないことを示唆している。
2つの眼が、治療の過程で、注入前IOP>25の単一エピソードを発生させた。硝子体穿刺と硝子体内抗生物質注入を要求する眼内炎が、群2の2つの眼(2人の被験体)において発生した(注入の0.16%、被験体の1.9%)。どちらの被験体も、抗VEGF注入後に予防的な局所抗生物質を受けた(エリスロマイシン軟膏剤TID、オフロキサシン液滴QID)。非穿刺の眼は、前房出血又は虹彩若しくはレンズの損傷を発生させた。
RNFLの菲薄化又は損失に対するIVAVの効果に関する研究は、相克する結論に達した。12ヶ月間経過観察された49の眼の前向き研究において、Martinez-de-la Casa等は、AMDを治療するために用いられた硝子体内のラニビズマブ注入が、有意なRNFLの菲薄化又は損失を引き起こすことを発見した(Martinez-de-la-Casa et al.,Invest Ophthalmol Vis Sci.(2012)53(10):6214-6218)。3つの(そのうち2つはスペクトルドメインOCTではなく時間ドメインを使用した)より小さい後向きのシリーズは、RNFLの菲薄化又は損失を検出しなかった(Sobaci et al.,Int J Ophthalmol.2013;6(2):211-215;Demirel et al.,Curr Eye Res.2015;40(l):87-92;Horsley et al.,Am J Ophthalmol 2010;150:558-561)。データは、穿刺なしでIVAVを受けた非緑内障の眼におけるRNFLの菲薄化又は損失の統計的に有意な損失を実証している。
以前の研究が、IVAVでの治療の過程で、眼の3~6%におけるベースラインIOPの間欠的又は持続的な上昇を報告している(Adelman et al.,J Ocular Pharmacol Ther.2010;26(1):105-110;Good et al.,Br J Ophthalmol.2011;95(8):1111-1114;Tseng et al.,J Glaucoma.2012;21(4):241-247;Bakri et al.,Ophthalmology.2014;121:1102-1108)。平均の最初のベースラインIOPと最後のベースラインIOP間の有意な差は同定されなかった。Tsengによって報告されたものよりも、平均の経過観察はより短く、平均の注入数は少なかった(Tseng et al.,J Glaucoma.2012;21(4):241-247)が、特定の理論に縛られることなく、ベースラインIOPの持続的な上昇が、この研究で観察されたRNFLの菲薄化又は損失の原因であるようではなかった。
0.05~0.10mlの量の硝子体内注入は、一過性のIOPの増加を引き起こす(Falkenstein et al.,Retina.2007;27(8):1044-1047;Kim et al.,Am J Ophthalmol.2008;146(6):930-934;Sharei et al.,Eur J Ophthlamol.2010;20(1):174-179;Gismondi et al.,J Glaucoma.2009;18(9):658-661)。動物試験が、50mmhgを超える眼圧及び30mmhg未満の眼内灌流圧での血流及び組織酸素添加の低下を実証し(Shonat et al.,Invest Ophthalmol Vis Sci.1992;33(11):3174-3180)並びに110mmhgのIOPが90分間維持されたときの網膜神経節細胞の損傷を実証している(非特許文献7)。IOPにおける最大変化は、ラットにおける進行性視神経カッピングと相関していた(非特許文献1)。ヒトにおいて、眼の灌流及び虚血は、IOPに部分的に依存し、全身の血管因子によって調節され得る(Deb et al.,Indian J Ophthalmol.2014;62(9):917-922;Wang et al.,Curr Eye Res. 2014;9:1-9;Yip et al.,Invest Ophthalmol Vis Sci.2011;52(11):8186-8192)。この研究における群2の眼に対する平均のmaxIOP及び平均のchgIOPは以前に報告されたものよりも高かった(Kim et al.,Am J Ophthalmol.2008;146(6):930-934;Sharei et al.,Eur J Ophthlamol.2010;20(1):174-179;Gismondi et al.,J Glaucoma.2009;18(9):658-661)。認識されている因子(Falkenstein et al.,Retina.2007;27(8):1044-1047;Kim et al.,Am J Ophthalmol.2008;146(6):930-934;Sharei et al.,Eur J Ophthlamol.2010;20(1):174-179;Gismondi et al.,J Glaucoma.2009;18(9):658-661;Bakri et al.,Eye.2009;23(1):181-185)の中で、30g針の日常的な使用が寄与した可能性がある。それにもかかわらず、chgIOPもmaxIOPも、chgRNFLの菲薄化又は損失とは有意に相関しなかった。
VEGF-Aは正常な網膜神経節細胞の維持に要求され(Nishijima et al.,Am J Pathol. 2007;171(1):53-67)、VEGFの維持効果の抑制はRNFLの損傷を引き起こす可能性を有している。抗VEGF薬剤及び穿刺で治療された群1の眼におけるRNFLの菲薄化又は損失は、対照の人の眼において観察されたものと相違しなかった。人の眼における全身的に吸収された抗VEGF薬剤のクロスオーバー効果は排除することはできない(Scartozzi et al.,Eye 2009,23:1229;Bakbak et al.,J Ocul Pharmacol Ther.2013,29:728-32;Bakbak et al.,Oman J Ophthalmol.2016,9:44-8)けれども、VEGF抑制は、どちらの群においても観察される中程度のRNFLの菲薄化又は損失を説明し得る。しかし、VEGF抑制の効果単独では、PARA群と非PARA群との間で観察されるchgRNFLTにおける有意な差を説明しない。
一過性組織虚血損傷は、虚血再灌流及び慢性間欠性低酸素症によって引き起こされ得る。虚血再灌流の損傷は、糖尿病性足部潰瘍をシミュレートする間欠的な機械的圧迫を用いて(Reid RR,et al.J Surg Res.2004 Jan;116:172-80.31)、及び、一過性脳虚血発作(TIA)をシミュレートする血管閉塞を用いて(Lee et al.,AJNR 2004 25:1342-7)皮膚においてモデル化されてきた。睡眠時無呼吸症候群は、RNFLの減少に関連している(Ferrandez et al.BMC Ophthalmol.2016,16:40;Zhao et al.J Glaucoma 2016;25:e413-8)。慢性間欠性低酸素症は、神経組織(Gozal D, et al.J Neuroscience,2001,21:2442-50;Guo et al.,Zhonghua Er Bi Yan Hou Tou Jing Wai Ke Za Zhi.2016,51:282-532)及び心臓組織(Park et al.Appl Physiol.2007;102(5):1806-14)における睡眠時無呼吸症候群をシミュレートする短い期間の低酸素症を用いてモデル化されてきた。
特定の理論に縛られることなく、非PARAの眼における注入直後のIOPの上昇は灌流を減少させ、一過性の組織虚血の期間を引き起こすと考えられる。IOPが正常化するに従い、再灌流が発生する。組織の損傷が、低酸素症又は虚血の期間の後で血液供給が再確立されるに従い発生する。VEGFは、神経保護を与え(Sun et al.,J Clin Invest.2003;111(12):1843-1851;Silverman et al.,Neuroscience.1999;90:1529-1541;Jin et al.,PNAS 2000;97:10242-10247;Matsuzaki et al.,FASEB J.2001;15:1218-1220)、梗塞巣(Dzietko et al.,Transl.Stroke Res.2013,4:189-200;Zhang,et al.,J.Clin.Investig.2000,106:829-838;Zhang et al.,J.Cerebr.Blood Flow Metab.2002,22:379-392;Zhang,et al.,Mol.Med.Rep.2012,6:1315-18)及びアポトーシス(Zhang,et al.,Mol.Med.Rep.2012,6:1315-18)のサイズを減少させ、さらに、脳卒中後の神経発生を増加させる(Yang et al.,Neuromol.Med.2014,16:376-8843)ことが示されている。VEGFはまた、虚血再灌流障害から網膜神経節を保護する(非特許文献8;Hirooka et al.,Invest Ophthalmol Vis Sci.2006;47(4):1653-1657)。VEGF-A遮断は、高眼圧症による神経節細胞死を悪化させ(Foxton et al.,Am J Pathol 2013;182(4):1379-90)、局所性一過性脳虚血に続いて梗塞巣量を増加させる(Bao et al.,Zhongguo Yao Li Xue Bao.1999,20:313-8)。これに関して、有害な血管新生及び血管透過性の影響を調節することを意図した慢性VEGF抑制はまた、VEGFの生理学的神経保護機能を慢性的に損ない、IVAVに関連する一過性虚血再灌流の短い時間のエピソードにも耐えるRNFLの能力を制限し得る。
予期されたものに反して、緑内障を有する非PARAの眼は、有意なRNFLの菲薄化を発生しなかった。全てが、局所的な抗高眼圧剤で治療されていた。局所的な抗高眼圧液滴の神経保護効果(Shih et al.,Expert Rev Ophthalmol.2012;7(2):161-175)は、VEGF由来の神経保護の減少を補うか、又は、残留VEGFと相乗的に作用し、その結果、これらの目におけるRNFLの菲薄化又は損失を制限した。
IVAV、眼窩周囲注入、全身投与又は局所投与による慢性VEGF抑制はまた、一過性虚血再灌流障害に耐えるRNFLの能力を制限し得る。さらに、VEGFはIVAVに続いて体循環に入り、全身の抗VEGFレベルを低下させる(Hard et al.,Acta Paediatr,2011,100:1523-7;Avery et al.,Ophthalmology,2006 113:1695;Qian et al.,Retina,2011,31:161-8)ため、通常VEGFにより保護されている心臓、脳及び肝臓を含む他の組織及び器官(Sun Y et al.J Clin Invest.2003;111(12):1843-51;Silverman,WF et al.Neuroscience.1999;90:1529-41;Jin KL et al.PNAS 2000;97:10242-7;Matsuzaki H et al.FASEB J.2001;15:1218-20;Luo Z,et al.Ann Thorac Surg.1997;64(4):993-8;Tsurui Y et al.Transplantation.2005 May 15;79(9):1110-5)を、他の機構によって開始される虚血再灌流障害による損傷をより受けやすくし得る。これらは、心停止(Crippen,SAS,2005)、心血管ショック、全身性低血圧、低酸素症、低酸素血症、血液量減少、睡眠時無呼吸症候群(Gozal D et al.J Neuroscience,1 April 2001,21(7):2442-50)、移植手術(Lemasters,Annu Rev Pharmacol Toxicol,1997,37:327-38)、TIA(Lee S-K,et al.AJNR 2004 25:1342-77)、脳卒中、脳外傷及び慢性圧創傷(chronic pressure wounds)(Mustoe,Am J Surg,2004,187:65S-70S.)を含む。したがって、追加の神経保護が、抗VEGF治療を受けている人、特に、虚血再灌流障害を引き起こす助けとなる状態を有するか又は発症している人において考慮され得る。
循環の急な停止が、網膜動脈閉塞症、虚血性視神経症及び脳卒中において発生するように、組織の虚血及び梗塞を引き起こし得るということがよく知られている。本明細書におけるデータは、繰り返し及び一過性の循環不全により引き起こされる短い間欠的な虚血のエピソードが、RNFLの減少を含む組織損傷に至ることがあるということ、及び、神経保護剤が保護的でありうるということを裏付ける証拠を提供する。同様に、組織損傷は、睡眠時無呼吸症候群を特徴付ける慢性間欠性低酸素症として知られる短い間欠的な虚血のエピソードから生じる。睡眠時無呼吸症候群(関連するVEGFの抑制なし)は、網膜感受性の減少及びRNFLの減少(Ferrandez B et al.,Invest Ophthalmol Vis Sci 2014;55:71119-25;Ferrandez B et al.BMC Ophthalmol.2016,16:40;Zhao et al.J Glaucoma 2016;25:e413-8)、脳におけるアポトーシス(Xu W,et al.,Neuroscience.2004;126(2):313-23)、心不全(Lavie L et al.,Eur Respir J.2009;33:1467-84.Constanzo MR et al.J AM Coll Cardiol 2015;65:72-84;Khayat R et al.,Heart Fail Rev 2009;14:143-53)及び不整脈による心臓性突然死(Gami AS et al.,J AM Coll Cardiol 2013;62:610-6)に関連付けられてきた。CNSニューロン組織のプロキシであるRNFLは、対照と比較して睡眠時無呼吸症候群と新たに診断された人の間で有意に薄く、持続的気道陽圧装置(CPAP)による治療にもかかわらず有意な進行性の菲薄化も実証した(Zengin MO et al.,Int J Ophthalmol 2014;7:704-8)。VEGFは睡眠時無呼吸症候群において上昇し、その合併症のうち一部の発病に関与する可能性がある(Ma J et al.,J Huazhong Univ Sci Technolog Med Sci 2007;27:157-60)けれども、VEGFは、低酸素誘導向神経性因子であり(Wick A et al.J Neurosci 2002;22:6401-7;Mu D et al.Neurobiol DIs 2003;14:524-34)、夜間の低酸素血症(Schultz R et al,Am J Respir Crit Care Med 2002;165:67-70;Lavie L et al.,Am J Respir Crit Care Med.2002 Jun 15;165(12):1624-8;Bernaudin M et al.,J Cereb Blood FLow Metab 2002;22:393-403.)及び脳卒中(Mu D et al.Neurobiol DIs 2003;14:524-34)に対する適応応答を促進し得る。IVAV又は全身性抗VEGF投与中の慢性VEGF抑制は、慢性間欠性低酸素症に対する抵抗性を低下させ(Wick A et al.,J Neuroscience 2002;22:6401-7)、その結果、RNFLの減少及びCNS神経変性障害を含む睡眠時無呼吸症候群の結果のリスクを上げ得る。治療的神経保護は、抗VEGF薬剤で治療された者を含む睡眠時無呼吸症候群を有する全ての個体にとって重要でありうる。さらに、神経保護化合物は、CPAPで治療した者の中で及び/又は医原性VEGF抑制の非存在下でさえも、慢性間欠性低酸素症(Gozal D,et al.J Neuroscience,2001,21:2442-50;Guo et al.,Zhonghua Er Bi Yan Hou Tou Jing Wai Ke Za Zhi.2016,51:282-532;Ferrandez et al.BMC Ophthalmol.2016,16:40;Zhao et al.J Glaucoma 2016;25:e413-8)、及び/又は、TIAを含むがこれに限定されない状態によって引き起こされる虚血再灌流障害(Lee et al.,AJNR 2004 25:1342-7)による損傷を防止又は寛解させ得る。
加齢性のRNFLの厚さの減少は、1年あたり0.16から0.5umに及び、50歳以上の人ではより大きいと報告されている(Parikh et al.,Ophthalmology.2007;114(5):921-926;Wang et al.,The Beijing Eye Study 2011.PLOS One June 4,2013)。全ての眼及び非緑内障の眼の中でPARA及び対照の群における年間のRNFLの菲薄化又は損失は、50歳以上の人に対して報告されたものと同様であった(Wang et al.,The Beijing Eye Study 2011.PLOS One June 4,2013)けれども、対応する非PARAの群において3から4倍大きかった。緑内障の疑いがある者の中で、RNFLの厚さにおける1年あたり1umのより急速な年間の減少は、2.05倍高い視野障害を発症するリスクに相当する(Miki et al.,Ophthalmology.2014.121:1350-8)。さらに、RNFLの菲薄化又は損失は、緑内障に関連する障害及び生活の質の低下に関連付けられてきた(Gracitelli et al.,JAMA Ophthalmol.2015,133:384-90)。
全ての眼及び非緑内障の眼の中でPARA及び対照の群における年間のRNFLの減少は、50歳以上の人に対して報告されたものと同様であった(Wang et al.,The Beijing Eye Study 2011.PLOS One,2013)けれども、対応する非PARAの群において3から4倍大きかった。緑内障の眼は異常な視神経血流を有し(Flammer et al.,Prog Retin Eye Res.1998,17:267-89)、進行した疾患を有する者は虚血再灌流障害の影響をより受けやすい可能性がある。穿刺の統計的に有意な効果は、この研究では、進行した緑内障の眼において検出されなかったが、眼の数は少なかった。このサブグループのさらなる研究が是認される。
要約すると、本明細書において示されている結果は、慢性VEGF抑制の設定における短期間のIOPの上昇が、特に緑内障の治療を受けていない眼において、RNFLに対して有害でありうるという証拠を提供する。臨床的意義は、IVAV等の抗VEGF療法の期間、並びに、慢性間欠性低酸素症及び/又は虚血再灌流障害の素因になる進行した緑内障及び眼性又は全身性疾患若しくは障害を含むRNFLを損なう可能性のある併存疾患に依存し得る。本発明者等の観察の臨床的意義のさらなる調査が、治療の期間及び注入の総数が、報告されたものを上回る可能性のある眼において、又は、眼性又は全身性の併存疾患を有する者に対して特に適当である。IVAV又は他の抗VEGF療法中のRNFLの菲薄化又は損失を制限することにおける神経保護剤の潜在的なメカニズム及び役割は、調査を是認する。
IVAVで治療した眼におけるRNFLの菲薄化又は損失を抑え、かつ、IVAV注入の間隔を広げるための、神経保護特性を有する抗高眼圧液滴のタフルプロストの使用
硝子体内抗VEGF注入(IVAV)は、西洋世界における失明の主因である黄斑変性症及び糖尿病性網膜症を含む様々な障害による脈絡膜血管新生及び黄斑浮腫の治療のための標準治療である。IVAVは、眼内循環を一時的に損なう眼圧(IOP)の即時の一過性の上昇を引き起こす。有害な血管新生及び血管透過性の影響を調節することを意図したVEGF抑制はまた、VEGFの生理学的神経保護機能を慢性的に損ない、眼を虚血再灌流損傷の影響をより受けやすくする。生得的なVEGF由来の神経保護によって緩和されない虚血再灌流障害の多数のエピソードが、RNFLの菲薄化又は損失に至るかもしれない。特定の理論に縛られることなく、神経保護特性を有する緑内障液滴の毎日の使用が、IVAVに関連するRNFLの菲薄化又は損失を抑え又は防ぎ、さらに、治療の間隔も広げ得ると考えられる。
0.05~0.10mlの量の硝子体内注入は、一過性にIOPを上昇させる(Falkenstein et al.,Retina 2007;27:1044-7;Kim et al.,Am J Ophthalmic 2008;146:930-4;Sharei et al.,Eur J Ophthalmic 2010;20:174-9;Gismondi et al.,J Glaucoma 2009;18:658-61)。IVAVを用いたIOPの上昇は、動物における眼性血流及び組織酸素添加を損なうのに(Shonat et al.,Invest Ophthalmol Vis Sci 19921 33:3174-80)、及び、ヒトにおいて可視の網膜中心動脈の脈動を引き起こすのに(Nazari et al.,Iranian J Ophthalmology 2009 21:13-18)十分なレベルに達する可能性がある。眼圧が動脈内圧力を超え、網膜循環が損なわれていることを示す網膜動脈の脈動は、30秒から8分間持続し得る(Nazari et al.,Iranian J Ophthalmology 2009 21:13-18)。IOPは、注入直後に最も高い。IOPが正常化し、網膜循環が再確立されるに従い、ほとんどの場合30分以内に、虚血再灌流サイクルが発生する。
図2におけるデータは、補助的な穿刺(PARA)の有無にかかわらずIVAVを受けている眼における注入後最大IOP(maxIOP)においても、注入前ベースラインからのIOPの大きさの変化(chgIOP)においても、統計的に有意な差を実証している。非PARAの眼におけるより高いIOPは、硝子体内注入の量によって引き起こされた。PARAは、眼内量を直ちに正常化し、結果的に注入後のIOPの上昇を防いだ。RNFLの菲薄化又は損失の厚さにおける統計的に有意な変化(chgRNFLの菲薄化又は損失)(非PARAの眼におけるより大きなRNFLの菲薄化又は損失)も検出された(図2)。しかし、chgIOP(r=-0.175、p値=0.121)もmaxIOP(r=-0.109、p値=0.382)も、chgRNFLの菲薄化又は損失とは有意に相関しなかった(図4)。同様の結果が、年齢、性別、注入の数、経過観察期間、ベースラインのRNFLの菲薄化又は損失及びベースラインのIOPを考慮した多重線形回帰を使用した場合にも見られた。これらのモデルにおいて、maxIOP、chgIOP及びchgRNFLは全て有意のままであり(それぞれに対してp<0.0001)、最終IOPは有意ではないままであった(p=0.173)。これらのデータは、上昇したIOPだけでは、観察されたRNFLの菲薄化又は損失を説明するには不十分であることを示唆している。提案されてきたIVAVに先立つ抗緑内障薬物の単一投与による注入直後のIOPの制御(Kim)が、RNFLの菲薄化又は損失を防ぐ可能性は低いということになる。
サブグループの分析により、非PARAの眼におけるRNFLの菲薄化又は損失における有意な低下は、非緑内障の眼においてのみ発生することが明らかになった。RNFLの菲薄化は大きさがより大きく(図2)、非緑内障の眼において統計的に有意に速い速度で進行した(図3)。上昇したIOPの設定における進行性のRNFLの菲薄化又は損失によって特徴づけられる疾患である緑内障を有する眼が、IVAVの間にRNFLの菲薄化又は損失を発生させる可能性は低いというこの逆説は、以下のことを考慮することによって理解され得る。第1に、虚血再灌流は、神経性損傷の確立された原因であり(Winquist and Kerr,Neurology 1997;49(Suppl 4)S23-6)、第2に、虚血再灌流は、内因性VEGF(Nisijima et al.,Am J Pathol 2007;171:53-67)又は虚血再灌流障害に対して神経保護を与える外因性治療薬によって緩和され得る。
VEGFは、正常な網膜神経節細胞の維持に要求され(Nisijima et al.,Am J Pathol 2007;171:53-67)、VEGFの維持効果の阻害は、RNFLの損傷を引き起こす可能性を有する。さらに、VEGFは、通常、虚血再灌流障害から保護する(Nisijima et al.,Am J Pathol 2007;171:53-67)。図2におけるデータは、抗VEGF剤と穿刺で治療した眼におけるchgRNFLの菲薄化又は損失が、対照の人の眼において観察されたものと相違しないことを示している。これは、VEGF阻害自体が、PARAの群と非PARAの群との間で観察したchgRNFLの菲薄化又は損失における有意な差を説明しないということを示唆している。全体として、表におけるデータは、RNFLの菲薄化又は損失が2つの因子が存在することを要求したということを示唆している。すなわち、RNFLの菲薄化又は損失は、虚血再灌流の繰返しのエピソードに曝露された眼において発生し、眼も、欠乏した生得的な慢性医原性VEGF抑制の状態の間に損なった生得的な神経保護のために虚血損傷による影響を受けやすい。
緑内障液滴が、上昇したIOPを制御するために投与される。一部は、実証可能な神経保護特性も有する。例えば、動物において、タフルプロストは、インビトロにおいてもin vivoにおいても、アポトーシスから網膜神経節細胞を保護する(Kanamori et al.,Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 2009;247:1353-60)。さらに、タフルプロストを含むプロスタグランジンF2α類似体は、動物モデルにおいて視神経血流を改善した(Kurishima et al.,Exp Eye Res 2010;91:853-9)。タフルプロストの毎日の局所投与は、動物におけるエンドセリン1誘導虚血性網膜損傷から保護的であるとも示された。RNFLの菲薄化又は損失は、治療された眼においてより厚かった(Nagata et al.,Invest Ophthalmol Vis Sci 2014 55:1040-7)。これらの視神経及び網膜に対する虚血損傷の動物研究は、虚血の設定における緑内障薬物の神経保護特性を実証し、IVAVに付随した虚血再灌流障害に関連し得る。
非緑内障の眼の中で、PARAの眼と非PARAの眼との間でchgRNFLの菲薄化又は損失において統計的に有意な差があった。これは、減少したか又は欠如した生得的なVEGFの設定において上昇したIOP及び繰り返しの虚血再灌流エピソードに曝された非緑内障の非PARAの眼が、RNFLの菲薄化又は損失を被ったということを示唆している。対照的に、PARAの眼と非PARA眼との間のchgRNFLの菲薄化又は損失における有意な差は、緑内障の眼のサブグループ(毎日の緑内障液滴を使用した眼)においては検出されず(図2)、RNFLの菲薄化又は損失は、治療した眼及び対照において同様であった。これらのデータは、IVAVの間に毎日用いられる緑内障の液滴が、虚血再灌流障害からの薬理学的神経保護を提供したという仮説を支持している。この薬理学的保護は、非PARAの眼において統計的に有意なRNFLの菲薄化又は損失を防いだ。
IVAVの過程においてプロスタグランジンF2α類似体のタフルプロストを毎日使用
することによる第2の潜在的な有益な効果がある。タフルプロストの神経保護効果は、エンドセリン1の阻害によって媒介される(Nagata et al.,Invest Ophthalmol Vis Sci 2014 55:1040-7)。VEGF発現の刺激因子であるエンドセリン1の下方制御は、VEGF mRNAの産生を低下させる(Tsuda et al.,J Glaucoma 2013;22:389-403)。毎日の使用は、眼内VEGF濃度も低下させ、その結果、IVAVにおいて用いられる抗VEGF剤を増強し得るということになる。毎日の局所的使用は、抗VEGF注入の間隔を広げることが予期され、したがって、対照と比較してtreat and extendプロトコルにおいて患者ごとに要求される抗VEGF注入の数及び頻度を減らし得る。持続性のIOPの上昇は、注入の数に関連づけられる(Abedi et al.,Semin Ophthamol,2013,28:126-130;Singh and Kim,Drugs Aging,2012,28:949-956)。
本明細書において報告されている年間のRNFLの菲薄化又は損失は、通常、加齢に起因するもの(Parikh et al.,Ophthalmology.2007;114(5):921-6;Wang et al.,PLOS One,2013,0066763)よりも、非緑内障の非PARAの眼において3から4倍大きかった。緑内障の疑いがある者の研究では、RNFLの菲薄化又は損失における1年あたり1umのより急速な年間の低下が、2.05倍高い視野障害を発生するリスクに相当する(Miki et al.,Ophthalmology.2014;121(7):1350-8)。さらに、RNFLの菲薄化又は損失は、緑内障に関連する障害及び生活の質の低下に関連づけられてきた(Gracitelli et al.,JAMA Ophthalmol.2015;133(4):384-90)。IVAVに関連するRNFLの菲薄化又は損失の臨床的意義は、さらなる因子に依存し得る。虚血に対する易罹患性は、糖尿病を含む全身性血管因子によって損なわれ得る眼性潅流(Panes et al.,Circulation 1996;13:161-7)、高血圧及び降圧薬物(Deb et al.,Indian J Ophthalmol.2014;62(9):917-22;Wang et al.,Curr Eye Res.2014;9:1-9;Yip et al.,Invest Ophthalmol Vis Sci.2011;52(11):8186-92)に関連づけられる。したがって、特に全身性血管疾患を有する人、若者、又は、治療の期間及び総注入数がより多いことが予期される者において、RNFLの菲薄化又は損失を最小化する対策を取ることが賢明であるように思われる。
特定の理論に縛られることなく、タフルプロストは、補助的な穿刺が行われない場合にIVAVの間に発生するRNFLの菲薄化を減らす又は防ぐことができるということ、及び、タフルプロストを用いた治療は、抗VEGF注入の間隔の増加を可能にし、したがって、対照と比較してtreat and extendプロトコルにおいて被験体あたりの抗VEGF注入の数及び/又は頻度を減らすことになるということが考えられる。
タフルプロストが、IVAVで治療されている緑内障のない眼においてRNFLの菲薄化を減らすということ、及び、タフルプロストを用いた治療が、多数のIVAV処置の時間間隔をさらに広げることができる、及び/又は、効果的なIVAV治療レジメンに必要なIVAV処置の数を減らすことができるということを実証するために、硝子体内注入が、3つの群においてtreat and extendプロトコルにしたがって行われる(Spaide,Am J Ophthalmol.2007,143:679-80;Engelbert et al.,Retina,2010,30:1368-75;Engelbert et al.,Retina,2009,29:1424-31)。1つの治療群(群1)はタフルプロストを受け(以下)、対照群(群2)はプラセボ(人工涙液)を受ける。
群1:タフルプロスト0.0015%を、IVAVの期間中就寝時に1日1回1滴。
群2:対照、プラセボ(保存料を含まない人工涙液)を、IVAVの期間中就寝時に1日1回1滴。
タフルプロストを用いた治療が、硝子体内抗VEGF注入の間隔を広げ、その結果、treat and extendプロトコルにおいて要求される注入の数を減らすかどうかを決定するために、1年あたりの注入の総数及び注入の間隔が治療群間で比較され、さらに、RNFLの厚さにおける変化の程度、RNFLの厚さにおける変化率、1年あたりの注入の数、眼圧及び視力が決定される。モニターされる有害事象には、眼内炎、前眼部損傷(前房出血、レンズ損傷)及び注入前IOP>25mmhgが含まれる。
ベースラインの屈折が行われる。眼科フォトグラファーが、各注入の前にsd-OCT(Spectralis,Heidelberg Engineering)を得て、電子診療記録に画像をスキャンした。平均の中心、下方、上方、鼻及び側頭の部分の厚さを含む、自動分割アルゴリズムによって計算されたRNFLの厚さが記録される。眼圧は、注入の前及びその直後及び10分後にトノペン(Reichert Technologies)を用いて得られる。トノペンは、注入直後のIOP測定を容易にするために、圧平の代わりに用いられる。注入10分後のIOPが30mmhgより大きい場合、追加のIOP読み取り値を、IOPが30mmhg以下になるまで10分間隔で得た。
硝子体内注入は、医師の好みにしたがって、上側頭部又は下側頭部の四分円のいずれかにある毛様体扁平部を通して30ゲージ針を介して施された。綿棒を注入部位の上に置いた。治療する医師の裁量により選ばれる3つの抗VEGF薬物(ラニビズマブ、ベバシズマブ、アフリベルセプト)のうちの1つが、0.05mlの量で投与される。麻酔は被験体及び医師の好みに基づき選ばれ、その方法は、局所的なプロパラカイン又はテトラカインの滴下、2%リドカインゲル又は2%リドカイン溶液の結膜下注入を含んでもよい。標準的な注入前滅菌は、10%ベタジンスワブ、及び、結膜内に滴下注入される追加のベタジンを使用した眼瞼準備を含むことになる。ベタジンは、注入の直前に10%ベタジンスワブを用いて結膜に塗布される。注入に続いて、全ての目が平衡塩類溶液で洗浄される。
次に、方法及び材料が記載される。
Treat and extendプロトコル
被験体には、3ヶ月間、1ヶ月に1回硝子体内抗VEGFが注入される。毎月の投薬で安定性(安定した視力、黄斑出血の欠如及び乾燥したOCT)が達成されると、被験体は6週間以内に戻ってくるように指示される。視力、臨床所見及びOCTの変化が再び記録され、さらに、被験体は注入を受ける。注入が予定された次の訪問までの間隔は、上記のパラメータにおける観察された変化に基づく。変化がない場合、次の訪問までの間隔は、注入が予定された7週間まで延長される。しかし、疾患の再活性化の証拠がある場合、次の予定された注入及び検査に対する間隔は1週間短縮される。
局所薬物
群1の被験体は、治療の過程を通じて就寝時に毎日1回タフルプロストを用いることになる。対照群(群2)は、治療の過程を通じて就寝時に毎日1回保存料を含まない人工涙液を受けることになる。
統計解析
サンプルサイズを、検定力とリクルートメントの実現可能性のバランスとして決定した。サンプルサイズを評価するために、検出可能な標準偏差単位(SDU)のサイズを使用した。SDUは、標準正規偏差(すなわち、N(0,1))を仮定したときの回帰モデルにおけるベータ係数に対応する。1つの群あたり65のサンプルサイズ(合計130)は、0.50のSDUを検出するために80%の力を有することになる(適度な効果サイズ)。0.50のSDUは、標準偏差のサイズの半分に等しい絶対差に相当し、これは標準正規分布における13%のシフトに変換される。
データは、標準偏差を有する平均値(連続データ)又は割合(カテゴリデータ)を用いて要約される。ベースライン特性(年齢、性別、屈折異常、IOP及び平均の中央RNFL)(Alasil et al.,J Glaucoma 2013,22:532-41)が、必要に応じて分散分析(ANOVA)又はカイ二乗検定を用いて、群間で比較される。注入後の成果は、ANOVAを用いて治療群間で、ベースラインから最終IOPのIOPにおける変化、RNFLの菲薄化又は損失における変化、及び、RNFLの菲薄化又は損失の変化率を比較することによって評価される。ピアソン相関係数が用いられ、IOPの成果、RNFLの菲薄化又は損失の変化及びRNFLの菲薄化又は損失の変化率の相関の程度が測定される。SASバージョン9.3が統計解析に用いられ、全ての試験は両側性であり、p値<0.05が有意と見なされた。年齢、性別、屈折異常、注入の数、経過観察期間、ベースラインのRNFLの菲薄化又は損失及びベースラインのIOPによる調整を行った多重線形回帰が用いられ、群間の差が、潜在的な偏りを考慮した後にも残っているかどうかが決定される。
本明細書において引用した各特許、特許出願及び刊行物の開示は、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、特定の実施形態を参照して開示されてきたけれども、本発明の真意及び範囲から逸脱することなく、本発明の他の実施形態及び変形が当業者によって考案され得ることが明らかである。添付の特許請求の範囲は、当該実施形態及び同等の変形の全てを含むと解釈されることが意図される。

Claims (1)

  1. 被験体を虚血再灌流損傷から保護するための、神経保護化合物を含む医薬組成物であって、前記被験体は、非緑内障である被験体及び前記神経保護化合物の投与前に神経保護化合物の投与を受けていない緑内障である被験体からなる群から選択される、医薬組成物。
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