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JP2023114411A - 樹脂組成物、成形体、および、レーザー溶着体 - Google Patents

樹脂組成物、成形体、および、レーザー溶着体 Download PDF

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JP2023114411A JP2022049134A JP2022049134A JP2023114411A JP 2023114411 A JP2023114411 A JP 2023114411A JP 2022049134 A JP2022049134 A JP 2022049134A JP 2022049134 A JP2022049134 A JP 2022049134A JP 2023114411 A JP2023114411 A JP 2023114411A
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Shuta Izeki
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Abstract

【課題】 レーザーマーキング性に優れた樹脂組成物の提供。レーザー溶着時においてレーザー透過樹脂部材として用いられ、レーザーマーキング可能な樹脂組成物の提供。樹脂組成物を用いた成形体、および、レーザー溶着体の提供。【解決手段】 ポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂を含み、ポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂の合計100質量部における、ポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂の質量比が、10/90~90/10であり、ポリカーボネート樹脂に含まれるアルミニウム元素の含有量が、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.50~1000.00質量ppmである、樹脂組成物。【選択図】 図1

Description

本発明は、樹脂組成物、成形体、および、レーザー溶着体に関する。
特に、レーザーマーキングが可能な成形体の製造に用いられる樹脂組成物に関する。
さらには、レーザー溶着時においてレーザー透過樹脂部材として用いられ、レーザーマーキング可能な樹脂組成物に関する。
ポリブチレンテレフタレート樹脂を始めとする熱可塑性ポリエステル樹脂やポリカーボネート樹脂は、機械的強度等に優れており、また、優れた耐熱性、成形性、リサイクル性を有していることから、各種の機器部品に広く用いられている。
一方、近年、熱可塑性樹脂から形成された樹脂部材について、生産性効率化のため溶着加工を行う例が増加してきており、なかでも電子部品への影響が少ないレーザー溶着が多用されてきている(例えば、特許文献1)。
レーザー溶着は、レーザー光透過性の材料からなるレーザー透過樹脂部材(以下、「透過樹脂部材」ということがある)と、レーザー光吸収性の材料からなるレーザー吸収樹脂部材(以下、「吸収樹脂部材」ということがある)を重ねて、透過樹脂部材側からレーザー光を照射し、吸収樹脂部材との界面を発熱させて溶着する技術である。そして、そのような用途の成形体に適用される樹脂組成物としては、レーザー光の照射によって溶着することが可能な性能(レーザー溶着性)を有することが要求される。
一方、成形体において、完成時の意匠性、情報の表示や組立時の部品識別性等の点で、成形体表面に製品情報等の印字、描画を施す場合も多い。そして、それらが長期間にわたって視認性を維持することが求められる場合は、信頼性の観点からレーザーマーキングが用いられることがある。
さらに、近年、レーザー溶着時においてレーザー透過樹脂部材として用いることができる樹脂組成物であって、レーザーマーキング可能な樹脂組成物も検討されている(特許文献2)。
特許第6183822号公報 特開2020-50822号公報
上述の通り、レーザーマーキングできる樹脂の需要は高まっており、かかる樹脂の用途拡大に伴い、新たなレーザーマーキング性に優れた樹脂組成物が求められている。
また、上述の通り、レーザーマーキング性に優れた樹脂組成物についても、レーザー溶着が可能であることが求められる。ここで、レーザー溶着体の意匠性の面から、透過樹脂部材と吸収樹脂部材とは同系色に着色されていることが好ましく、例えば、吸収樹脂部材および透過樹脂部材を黒色に着色することがある。
ここで、透過樹脂部材について、吸収樹脂部材と同様に、レーザー光の吸収率の高い顔料で着色してしまうと、レーザー光が透過しなくなってしまいレーザー溶着が不可能となってしまうことから、透過樹脂部材は、レーザー光の透過をできるだけ阻害しない色素が用いられている。
一方で、透過樹脂部材にレーザーマーキングを施す場合、レーザー光が透過してしまうとマーキングできない。そこで、レーザー光をある程度透過させつつ、レーザーマーキングも可能な樹脂組成物が求められる。
以上の状況に基づき、本発明は、かかる課題を解決することを目的とする。
すなわち、本発明の第一の課題は、レーザーマーキング性に優れた樹脂組成物の提供である。
また、本発明の第二の課題は、レーザー溶着時においてレーザー透過樹脂部材として用いられ、レーザーマーキング可能な樹脂組成物の提供である。
さらに、本発明では、前記樹脂組成物を用いた成形体、および、レーザー溶着体を提供することを目的とする。
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、熱可塑性樹脂として、ポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂を用い、さらに、ポリカーボネート樹脂としてアルミニウム元素を少量含むものを用いることにより、上記課題を解決しうることを見出した。
具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>ポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂を含み、ポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂の合計100質量部における、ポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂の質量比が、10/90~90/10であり、前記ポリカーボネート樹脂に含まれるアルミニウム元素の含有量が、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.50~1000.00質量ppmである、樹脂組成物。
<2>前記ポリエステル樹脂が、ポリブチレンテレフタレート樹脂を含む、<1>に記載の樹脂組成物。
<3>前記ポリカーボネート樹脂が、リサイクル品を含む、<1>または<2>に記載の樹脂組成物。
<4>前記ポリカーボネート樹脂100質量部中、リサイクル品が50質量部以上を占める、<3>に記載の樹脂組成物。
<5>ポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対する、ポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂の質量比が、50/50~90/10である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<6>さらに、無機充填剤を含む、<1>~<5>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<7>前記無機充填剤が、ガラス繊維および/またはガラスフレークを含む、<6>に記載の樹脂組成物。
<8>さらに、リン系安定剤を含む、<1>~<7>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<9>1.5mmの厚さに成形したときの波長1064nmにおける光線透過率が20.0%以上である、<1>~<8>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<10>レーザーマーキング用である、<1>~<9>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<11>レーザー溶着のレーザー光に対する透過樹脂部材に用いる、<1>~<10>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<12><1>~<11>のいずれか1つに記載の樹脂組成物から形成された成形体。
<13>レーザーマーキング用である、<12>に記載の成形体。
<14><12>または<13>に記載の成形体を含む、レーザー溶着体。
本発明により、レーザーマーキング性に優れた樹脂組成物を提供可能になった。
また、本発明により、レーザー溶着時においてレーザー透過樹脂部材として用いられ、レーザーマーキング可能な樹脂組成物を提供可能になった。
さらに、本発明により、前記樹脂組成物を用いた成形体、および、レーザー溶着体を提供可能になった。
実施例1と比較例1~3のレーザー印字後の写真である。 実施例のレーザー溶着強度を測定するための試験片(透過樹脂部材I)を示す概略図である。 実施例のレーザー溶着強度を測定するための試験片(吸収樹脂部材II)を示す概略図である。 実施例のレーザー溶着強度を測定するための試験片(透過樹脂部材Iと吸収樹脂部材IIの組み合わせ)を示す概略図である。 実施例のレーザー溶着強度の測定方法を示す概略図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
本明細書で示す規格で説明される測定方法等が年度によって異なる場合、特に述べない限り、2022年1月1日時点における規格に基づくものとする。
本実施形態の樹脂組成物は、ポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂を含み、ポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂の合計100質量部における、ポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂の質量比が、10/90~90/10であり、前記ポリカーボネート樹脂に含まれるアルミニウム元素の含有量が、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.50~1000.00質量ppmであることを特徴とする。
このような構成とすることにより、レーザーマーキング性に優れた樹脂組成物が得られる。さらに、レーザー溶着時においてレーザー透過樹脂部材として用いられ、レーザーマーキング可能な樹脂組成物が得られる。
レーザーマーキングが可能になる理由は、ポリカーボネート樹脂がアルミニウム元素を含むと、成形体表面における樹脂成分の炭化が進行しやすく、成形体の表面における炭化が綺麗に進行するためと推測される。
本実施形態では、カーボンブラック等のレーザーマーキング剤を配合しなくてもレーザー溶着できる点で有益である。すなわち、レーザーマーキング剤は、レーザー溶着の際に照射されるレーザーを吸収してしまうため、従来のレーザーマーキング剤を含む樹脂組成物は、レーザー溶着におけるレーザー透過樹脂部材として用いにくい場合もある。しかしながら、本実施形態においては、レーザーマーキング剤を用いなくてもレーザーマーキングできるため、レーザー溶着時においてレーザー透過樹脂部材として用いられ、レーザーマーキング可能な樹脂組成物とすることができる。
以下、本実施形態の詳細を説明する。
<ポリエステル樹脂>
本実施形態の樹脂組成物は、ポリエステル樹脂を含む。
本実施形態で用いられるポリエステル樹脂は、熱可塑性ポリエステル樹脂である限り、その種類について特に定めるものではないが、ポリブチレンテレフタレート樹脂およびポリエチレンテレフタレート樹脂が例示され、ポリブチレンテレフタレート樹脂が好ましい。
<<ポリブチレンテレフタレート樹脂>>
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、酸成分の主成分としてテレフタル酸を、ジオール成分の主成分として1,4-ブタンジオールを重縮合させて得られる樹脂である。酸成分の主成分がテレフタル酸であるとは、酸成分の50質量%以上がテレフタル酸であることをいい、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上であってもよい。ジオール成分の主成分であるが1,4-ブタンジオールとは、ジオール成分の50質量%以上が1,4-ブタンジオールであることをいい、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上であってもよい。
ポリブチレンテレフタレート樹脂が、他の酸成分を含む場合、イソフタル酸、ダイマー酸が例示される。また、ポリブチレンテレフタレート樹脂が他のジオール成分を含む場合、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)等のポリアルキレングリコール等が例示される。
ポリブチレンテレフタレート樹脂として、ポリテトラメチレングリコールを共重合したものを用いる場合は、共重合体中のテトラメチレングリコール成分の割合は3~40質量%であることが好ましく、5~30質量%がより好ましく、10~25質量%がさらに好ましい。このような共重合割合とすることにより、レーザー溶着性と耐熱性とのバランスにより優れる傾向となり好ましい。
ポリブチレンテレフタレート樹脂として、ダイマー酸共重合ポリブチレンテレフタレートを用いる場合は、全カルボン酸成分に占めるダイマー酸成分の割合は、カルボン酸基として0.5~30モル%であることが好ましく、1~20モル%がより好ましく、3~15モル%がさらに好ましい。このような共重合割合とすることにより、レーザー溶着性、長期耐熱性および靭性のバランスに優れる傾向となり好ましい。
ポリブチレンテレフタレート樹脂として、イソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレートを用いる場合は、全カルボン酸成分に占めるイソフタル酸成分の割合は、カルボン酸基として1~30モル%であることが好ましく、1~20モル%がより好ましく、3~15モル%がさらに好ましい。このような共重合割合とすることにより、レーザー溶着性、耐熱性、射出成形性および靭性のバランスに優れる傾向となり好ましい。
本実施形態で用いるポリブチレンテレフタレート樹脂は、酸成分の90質量%以上がテレフタル酸であり、ジオール成分の90質量%以上が1,4-ブタンジオールである樹脂(ポリブチレンテレフタレートホモポリマー)、または、ポリテトラメチレングリコールを共重合した共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂、イソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂が好ましい。
ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、0.5~2dL/gであるものが好ましい。成形性および機械的特性の点からして、0.6~1.5dL/gの範囲の固有粘度を有するものがより好ましい。固有粘度が0.5dL/g以上のものを用いることにより、得られる成形体の機械的強度がより向上する傾向にある。また、固有粘度が2dL/g以下のものを用いることにより、ポリブチレンテレフタレート樹脂の流動性が向上し、成形性が向上し、レーザー溶着性がより向上する傾向にある。
なお、固有粘度は、テトラクロロエタンとフェノールとの1:1(質量比)の混合溶媒中、30℃で測定される値である。
ポリブチレンテレフタレート樹脂を2種以上含む場合、固有粘度は混合物の固有粘度とする。
ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシ基量は、適宜選択して決定すればよいが、通常、60eq/ton以下であり、50eq/ton以下であることが好ましく、30eq/ton以下であることがさらに好ましい。末端カルボキシ基量を50eq/ton以下とすることにより、ポリブチレンテレフタレート樹脂の溶融成形時のガスの発生をより効果的に抑制できる。また、末端カルボキシ基量の下限値は特に定めるものではないが、通常、5eq/tonである。
ポリブチレンテレフタレート樹脂を2種以上含む場合、末端カルボキシ基量は混合物の末端カルボキシ基量とする。
なお、ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシ基量は、ベンジルアルコール25mLにポリブチレンテレフタレート樹脂0.5gを溶解し、水酸化ナトリウムの0.01モル/Lベンジルアルコール溶液を用いて滴定することにより、求められる値である。末端カルボキシ基量を調整する方法としては、重合時の原料仕込み比、重合温度、減圧方法などの重合条件を調整する方法や、末端封鎖剤を反応させる方法等、従来公知の任意の方法が挙げられる。
<<ポリエチレンテレフタレート樹脂>>
本実施形態で用いられるポリエチレンテレフタレート樹脂は、酸成分の主成分としてテレフタル酸を、ジオール成分の主成分としてエチレングリコールを重縮合させて得られる樹脂である。酸成分の主成分がテレフタル酸であるとは、酸成分の50質量%以上がテレフタル酸であることをいい、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上であってもよい。ジオール成分の主成分がエチレングリコールであるとは、ジオール成分の50質量%以上がエチレングリコールであることをいい、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上であってもよい。
ポリエチレンテレフタレート樹脂が他の酸成分を含む場合、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-フェニレンジオキシジ酢酸およびこれらの構造異性体、マロン酸、コハク酸、アジピン酸等のジカルボン酸およびその誘導体、p-ヒドロキシ安息香酸、グリコール酸等のオキシ酸またはその誘導体が挙げられる。
また、ポリエチレンテレフタレート樹脂が他の酸成分を含む場合、他のジオール成分として、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環式グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS等の芳香族ジヒドロキシ化合物誘導体等が挙げられる。
さらに、ポリエチレンテレフタレート樹脂は、分岐成分、例えばトリカルバリル酸、トリメリシン酸、トリメリット酸等の如き三官能、もしくはピロメリット酸の如き四官能のエステル形成能を有する酸またはグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリット等の如き三官能もしくは四官能のエステル形成能を有するアルコールを1.0モル%以下、好ましくは0.5モル%以下、さらに好ましくは0.3モル%以下を共重合せしめたものであってもよい。
ポリエチレンテレフタレート樹脂の極限粘度は、好ましくは0.3~1.5dL/gであり、より好ましくは0.3~1.2dL/gであり、さらに好ましくは0.4~0.8dL/gである。
なお、ポリエチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、テトラクロロエタンとフェノールとの1:1(質量比)の混合溶媒中、30℃で測定する値である。
また、ポリエチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシ基の濃度は、好ましくは3~60eq/tonであり、より好ましくは5~50eq/tonであり、さらに好ましくは8~40eq/tonである。末端カルボキシ基濃度を60eq/ton以下とすることで、樹脂材料の溶融成形時にガスが発生しにくくなり、得られる成形体の機械的特性が向上する傾向にあり、逆に末端カルボキシ基濃度を3eq/ton以上とすることで、得られる成形体の耐熱性、滞留熱安定性や色相が向上する傾向にあり、好ましい。
なお、ポリエチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシ基濃度は、ベンジルアルコール25mLにポリエチレンテレフタレート樹脂0.5gを溶解し、水酸化ナトリウムの0.01モル/Lベンジルアルコール溶液を使用して滴定することにより、求められる値である。
<ポリカーボネート樹脂>
本実施形態の樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂を含む。
ポリカーボネート樹脂は、ジヒドロキシ化合物またはこれと少量のポリヒドロキシ化合物を、ホスゲンまたは炭酸ジエステルと反応させることによって得られる、分岐していてもよい単独重合体または共重合体である。ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知のホスゲン法(界面重合法)や溶融法(エステル交換法)により製造したものを使用することができ、溶融法が好ましい。溶融法で得られたポリカーボネート樹脂を用いることにより、ポリカーボネート樹脂が分岐構造を有するものとなり、本発明の効果がより効果的に発揮される傾向にある。
原料のジヒドロキシ化合物としては、芳香族ジヒドロキシ化合物が好ましく、ビスフェノールがより好ましく、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-p-ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4-ジヒドロキシジフェニル等がさらに好ましく、ビスフェノールAが一層好ましい。また、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物を使用することもできる。
ポリカーボネート樹脂としては、上述した中でも、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導される芳香族ポリカーボネート樹脂(ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂)、または、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とから誘導される芳香族ポリカーボネート共重合体が好ましい。また、シロキサン構造を有するポリマーまたはオリゴマーとの共重合体等の、芳香族ポリカーボネート樹脂を主体とする共重合体であってもよい。さらには、上述したポリカーボネート樹脂の2種以上を混合して用いてもよい。
本実施形態では、原料モノマーであるジヒドロキシ化合物の90質量%以上が2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンであるポリカーボネート樹脂が好ましく、95質量%以上が2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンであるポリカーボネート樹脂がより好ましい。
ポリカーボネート樹脂の分子量を調節するには、一価の芳香族ヒドロキシ化合物を用いればよく、例えば、m-およびp-メチルフェノール、m-およびp-プロピルフェノール、p-tert-ブチルフェノール、p-長鎖アルキル置換フェノール等が挙げられる。
本実施形態で用いるポリカーボネート樹脂は、アルミニウム元素の含有量が、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.50~1000.00質量ppmである。前記下限値以上とすることにより、レーザーマーキング性がより向上する傾向にある。前記上限値以下とすることにより、樹脂の長期安定性が向上する傾向にある。前記アルミニウム元素の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、1.00質量ppm以上であることがより好ましく、1.20質量ppm以上であることがさらに好ましく、2.00質量ppm以上であることが一層好ましく、3.00質量ppm以上であることがより一層好ましく、6.00質量ppm以上であることがさらに一層好ましい。前記アルミニウム元素の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、500.00質量ppm以下であることがより好ましく、300.00質量ppm以下であることがさらに好ましく、100.00質量ppm以下であることが一層好ましく、50.00質量ppm以下であることがより一層好ましく、30.00質量ppm以下であることがさらに一層好ましく、15.00質量ppm以下であることがよりさらに一層好ましく、10.00質量ppm以下であることが特に一層好ましい。
本実施形態においては、ポリカーボネート樹脂がカルシウム元素をポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.15~30.00質量ppmの割合で含むことが好ましい。前記カルシウム元素の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.50質量ppm以上であることがより好ましく、1.50質量ppm以上であることがさらに好ましく、2.00質量ppm以上であることが一層好ましく、3.50質量ppm以上であることがより一層好ましく、4.00質量ppm以上であることがさらに一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、レーザーマーキング性がより向上する傾向にある。前記カルシウム元素の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、30.00質量ppm以下であることがより好ましく、25.00質量ppm以下であることがさらに好ましく、20.0質量ppm以下であることが一層好ましく、17.0質量ppm以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、樹脂の長期安定性が向上する傾向にある。
本実施形態においては、ポリカーボネート樹脂がストロンチウム元素をポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.01~1.00質量ppmの割合で含むことが好ましい。前記ストロンチウム元素の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.02質量ppm以上であることがより好ましい。前記下限値以上とすることにより、レーザーマーキング性がより向上する傾向にある。前記ストロンチウム元素の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.50質量ppm以下であることがより好ましく、0.10質量ppm以下であることがさらに好ましく、0.09質量ppm以下であることが一層好ましく、0.08質量ppm以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、樹脂の長期安定性が向上する傾向にある。
本実施形態においては、ポリカーボネート樹脂がバリウム元素をポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.09~10.00質量ppmの割合で含むことが好ましい。前記バリウム元素の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.10質量ppm以上であることがより好ましく、0.13質量ppm以上であることがさらに好ましく、0.15質量ppm以上であることが一層好ましく、0.18質量ppm以上であることがより一層好ましく、0.20質量ppm以上であることがさらに一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、レーザーマーキング性がより向上する傾向にある。前記バリウム元素の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、7.00質量ppm以下であることがより好ましく、3.00質量ppm以下であることがさらに好ましく、1.50質量ppm以下であることが一層好ましく、1.00質量ppm以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、樹脂の長期安定性が向上する傾向にある。
本実施形態においては、ポリカーボネート樹脂がマグネシウム元素をポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.08~20.00質量ppmの割合で含むことが好ましい。前記マグネシウム元素の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.10質量ppm以上であることがより好ましく、0.15質量ppm以上であることがさらに好ましく、0.50質量ppm以上であることが一層好ましく、0.70質量ppm以上であることがより一層好ましく、1.00質量ppm以上であることがさらに一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、レーザーマーキング性がより向上する傾向にある。前記マグネシウム元素の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、30.00質量ppm以下であることがより好ましく、20.00質量ppm以下であることがさらに好ましく、10.00質量ppm以下であることが一層好ましく、8.00質量ppm以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、樹脂の長期安定性が向上する傾向にある。
本実施形態においては、ポリカーボネート樹脂が亜鉛元素をポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.05~10.00質量ppmの割合で含むことが好ましい。前記亜鉛元素の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.08質量ppm以上であることがより好ましく、0.10質量ppm以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、レーザーマーキング性がより向上する傾向にある。前記亜鉛元素の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、7.00質量ppm以下であることがより好ましく、3.00質量ppm以下であることがさらに好ましく、2.00質量ppm以下であることが一層好ましく、1.00質量ppm以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、樹脂の長期安定性が向上する傾向にある。
本実施形態においては、ポリカーボネート樹脂が鉄元素をポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.35~50.0質量ppmの割合で含むことが好ましい。前記鉄元素の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.80質量ppm以上であることがより好ましく、1.00質量ppm以上であることがさらに好ましく、2.00質量ppm以上であることが一層好ましく、3.00質量ppm以上であることがより一層好ましく、5.00質量ppm以上であることがさらに一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、レーザーマーキング性がより向上する傾向にある。前記鉄元素の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、35.00質量ppm以下であることがより好ましく、20.00質量ppm以下であることがさらに好ましく、15.00質量ppm以下であることが一層好ましく、10.00質量ppm以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、樹脂の長期安定性が向上する傾向にある。
本実施形態においては、ポリカーボネート樹脂がマンガン元素をポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.07~10.00質量ppmの割合で含むことが好ましい。前記マンガン元素の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.08質量ppm以上であることがより好ましい。前記下限値以上とすることにより、レーザーマーキング性がより向上する傾向にある。前記マンガン元素の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、7.00質量ppm以下であることがより好ましく、3.00質量ppm以下であることがさらに好ましく、1.00質量ppm以下であることが一層好ましく、0.50質量ppm以下であることがより一層好ましく、0.20質量ppm以下であることがさらに一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、樹脂の長期安定性が向上する傾向にある。
本実施形態では、ポリカーボネート樹脂が、少なくとも、アルミニウム元素と鉄元素を、それぞれ、上記範囲で含むことが好ましい。
なお、上記金属元素は、ポリカーボネート樹脂の中で必ずしも元素単体として存在している必要はなく、化合物の一部として含まれていてもよい。本実施形態においては、後述する実施例で述べる<金属元素の量の測定>の測定値を前記金属元素の量とする。
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、5,000以上であることが好ましく、10,000以上であることがより好ましく、13,000以上であることがさらに好ましい。粘度平均分子量が5,000以上のものを用いることにより、得られる樹脂組成物の機械的強度がより向上する傾向にある。また、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、60,000以下であることが好ましく、40,000以下であることがより好ましく、30,000以下であることがさらに好ましい。60,000以下のものを用いることにより、樹脂組成物の流動性が向上し、成形性が向上する傾向にある。
ポリカーボネート樹脂を2種以上含む場合、混合物が上記範囲を満たすことが好ましい。
なお、本実施形態において、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、ウベローデ粘度計を用いて、20℃にて、ポリカーボネート樹脂のメチレンクロライド溶液の粘度を測定し固有粘度([η])を求め、次のSchnellの粘度式から算出される値を示す。
[η]=1.23×10-4Mv0.83
ポリカーボネート樹脂のISO1133に準拠して、測定温度300℃、測定荷重1.20kgfでメルトボリュームレート(MVR)は、1cm3/10分以上であることが好ましく、2cm3/10分以上であることがより好ましく、3cm3/10分以上であることがさらに好ましく、4cm3/10分以上であることが一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、射出成形時の樹脂の流動性が向上する傾向にある。また、前記MVRの上限は、13cm3/10分以下であることが好ましく、12cm3/10分以下であることがより好ましく、11cm3/10分以下であることがさらに好ましく、10cm3/10分以下であることが一層好ましく、9cm3/10分以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、機械的強度が向上する傾向にある。
本実施形態で用いるポリカーボネート樹脂は、バージン品であっても、リサイクル品であってもよいが、リサイクル品を含むことが好ましい。
リサイクルポリカーボネート樹脂としては、回収された使用済ポリカーボネート樹脂成形体を粉砕、アルカリ洗浄して繊維等に再利用するマテリアルリサイクルにより得られたもの、ケミカルリサイクル(化学分解法)より得られたものおよびメカニカルリサイクルにより得られたもの等が挙げられる。
ケミカルリサイクルは、回収された使用済ポリカーボネート樹脂成形体を化学分解して、原料レベルに戻してポリカーボネート樹脂を再合成するものである。一方、メカニカルリサイクルは、上述したマテリアルリサイクルにおけるアルカリ洗浄をより厳密に行うこと、あるいは高温で真空乾燥すること等によって、マテリアルリサイクルよりもポリカーボネート樹脂成形体の汚れを確実に取り除くことを可能にした手法である。
例えば、使用済ポリカーボネート樹脂成形体からは、異物が取り除かれた後に、粉砕・洗浄され、次に押出機によりペレット化することにより、リサイクルポリカーボネート樹脂が得られる。
リサイクル品は、通常、バージン品よりも金属元素の含有量が高い。そのため、本実施形態の樹脂組成物に適用しやすい。ただし、リサイクル品であっても、金属元素の含有量が高くないものもある。
また、本実施形態の樹脂組成物は、バージン品や金属元素の含有量が少ないリサイクル品に、所定の金属元素を配合して調整してもよいことは言うまでもない。
本実施形態の樹脂組成物がリサイクル品を含む場合、リサイクル品の含有量は、前記ポリカーボネート樹脂100質量部中、50質量部以上であることが好ましく、60質量部以上であることがより好ましく、70質量部以上であることがさらに好ましく、80質量部以上であることが一層好ましく、90質量部以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、リサイクル性が高まる。また、前記リサイクル品の含有量の上限値は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、100質量部であってもよい。
<ポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂の質量比率>
次に、本実施形態の樹脂組成物における、ポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂の比率について説明する。
本実施形態の樹脂組成物においては、ポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂の合計100質量部における、ポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂の質量比が、10/90~90/10であり、20/80~90/10であることが好ましく、30/70~90/10であることがより好ましく、40/60~90/10であることがさらに好ましく、50/50~90/10であることが一層好ましく、50/50~80/20であることがより一層好ましく、50/50~75/35であることがさらに一層好ましく、55/45~75/35であることが特に一層好ましく、55/45~70/30であることがより特に一層好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、ポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂の合計が、樹脂組成物に含まれる樹脂成分の80質量%以上を占めることが好ましく、85質量%以上を占めることがより好ましく、90質量%以上を占めることがさらに好ましく、95質量%以上を占めることが一層好ましく、98質量%以上を占めることがより一層好ましい。
さらに、本実施形態の樹脂組成物は、ポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂の合計が、樹脂組成物の55質量%以上を占めることが好ましく、60質量%以上を占めることがさらに好ましく、65質量%以上を占めることが一層好ましく、68質量%以上を占めることがより一層好ましい。また、樹脂組成物中のポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂の合計量は、80質量%以下であることが好ましく、75質量%以下であることがより好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、ポリエステル樹脂およびポリカーボネート樹脂をそれぞれ1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<無機充填剤>
本実施形態の樹脂組成物は、さらに、無機充填剤を含むことが好ましい。無機充填剤、好ましくは繊維状または鱗片状の無機充填剤、より好ましくはガラス繊維および/またはガラスフレークを含むことにより、機械的強度を向上させると共に、耐熱強度高くなり、レーザー溶着体の耐久性がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物で用いる含有され得る無機充填剤としては、樹脂に配合することにより得られる樹脂組成物の機械的性質を向上させる効果を有するものであり、常用のプラスチック用無機充填剤を用いることができる。好ましくはガラス繊維、炭素繊維、玄武岩繊維、ウォラストナイト、チタン酸カリウム繊維等の繊維状の無機充填剤を用いることができる。また、炭酸カルシウム、酸化チタン、長石系鉱物、クレー、有機化クレー、ガラスビーズ等の粒状または無定形の充填剤;タルク等の板状の充填剤;ガラスフレーク、マイカ、グラファイト等の鱗片状の無機充填剤を用いることもできる。中でも、機械的強度、剛性および耐熱性の点から、ガラス繊維および/またはガラスフレークを含むことが好ましく、特にはガラス繊維を用いるのが好ましい。ガラス繊維としては、丸型断面形状または異型断面形状のいずれをも用いることができる。
無機充填剤は、カップリング剤等の表面処理剤によって、表面処理されたものを用いることがより好ましい。表面処理剤が付着したガラス繊維は、耐久性、耐湿熱性、耐加水分解性、耐ヒートショック性に優れるので好ましい。
表面処理剤としては、従来公知の任意のものを使用でき、具体的には、例えば、アミノシラン系、エポキシシラン系、アリルシラン系、ビニルシラン系等のシランカップリング剤が好ましく挙げられる。これらの中では、アミノシラン系表面処理剤が好ましく、具体的には例えば、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシランおよびγ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランが好ましい例として挙げられる。
また、その他の表面処理剤として、ノボラック型等のエポキシ樹脂系表面処理剤、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂系表面処理剤等も好ましく挙げられ、特にノボラック型エポキシ樹脂系表面処理剤による処理が好ましい。
シラン系表面処理剤とエポキシ樹脂系表面処理剤は、それぞれ単独で用いても複数種で用いてもよく、両者を併用することも好ましい。本実施形態におけるガラス繊維とは、繊維状のガラス材料を意味し、より具体的には、1,000~10,000本のガラス繊維を集束し、所定の長さにカットされたチョップド形状が好ましい。
本実施形態におけるガラス繊維は、数平均繊維長が0.5~10mmのものが好ましく、1~5mmのものがより好ましい。このような数平均繊維長のガラス繊維を用いることにより、機械的強度をより向上させることができる。数平均繊維長は光学顕微鏡の観察で得られる画像に対して、繊維長を測定する対象のガラス繊維をランダムに抽出してその長辺を測定し、得られた測定値から数平均繊維長を算出する。観察の倍率は20倍とし、測定本数は1,000本以上として行う。概ね、カット長に相当する。
また、ガラス繊維の断面は、円形、楕円形、長円形、長方形、長方形の両短辺に半円を合わせた形状、まゆ型等いずれの形状であってもよいが、円形が好ましい。ここでの円形は、幾何学的な意味での円形に加え、本実施形態の技術分野において通常円形と称されるものを含む趣旨である。
ガラス繊維の数平均繊維径は、下限が、4.0μm以上であることが好ましく、4.5μm以上であることがより好ましく、5.0μm以上であることがさらに好ましい。ガラス繊維の数平均繊維径の上限は、15.0μm以下であることが好ましく、14.0μm以下であることがより好ましい。このような範囲の数平均繊維径を有するガラス繊維を用いることにより、より機械的強度に優れた成形体が得られる傾向にある。なお、ガラス繊維の数平均繊維径は、電子顕微鏡の観察で得られる画像に対して、繊維径を測定する対象のガラス繊維をランダムに抽出し、中央部に近いところで繊維径を測定し、得られた測定値から算出する。観察の倍率は1,000倍とし、測定本数は1,000本以上として行う。円形以外の断面を有するガラス繊維の数平均繊維径は、断面の面積と同じ面積の円に換算したときの数平均繊維径とする。
ガラス繊維は、一般的に供給されるEガラス(Electrical glass)、Cガラス(Chemical glass)、Aガラス(Alkali glass)、Sガラス(High strength glass)、Dガラス、Rガラスおよび耐アルカリガラス等のガラスを溶融紡糸して得られる繊維が用いられるが、ガラス繊維にできるものであれば使用可能であり、特に限定されない。本実施形態では、Eガラスを含むことが好ましい。
本実施形態で用いるガラス繊維は、例えば、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤等の表面処理剤で表面処理されていることが好ましい。表面処理剤の付着量は、ガラス繊維の0.01~1質量%であることが好ましい。さらに必要に応じて、脂肪酸アミド化合物、シリコーンオイル等の潤滑剤、第4級アンモニウム塩等の帯電防止剤、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の被膜形成能を有する樹脂、被膜形成能を有する樹脂と熱安定剤、難燃剤等の混合物で表面処理されたものを用いることもできる。
ガラス繊維は市販品として入手できる。市販品としては、例えば、日本電気硝子社製、T-286H、T-756H、T-127、T-289H、オーウェンスコーニング社製、DEFT2A、PPG社製、HP3540、日東紡社製、CSG3PA820等が挙げられる。
本実施形態の樹脂組成物における無機充填剤(好ましくはガラス繊維)の含有量は、熱可塑性樹脂(ポリエステル樹脂およびポリカーボネート樹脂の合計)100質量部に対し、10質量部以上であることが好ましく、15質量部以上であることがより好ましく、20質量部以上であることがさらに好ましく、25質量部以上であることが一層好ましく、30質量部以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、レーザー溶着体の母材強度が高くなり、また、レーザー溶着体の耐熱性が高くなる傾向にある。また、前記無機充填剤の含有量の上限値は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、70質量部以下であることが好ましく、60質量部以下であることがより好ましく、50質量部以下であることがさらに好ましい。前記上限値以下とすることにより、界面部分の溶着強度が高くなる傾向にある。
また、本実施形態の樹脂組成物における無機充填剤(好ましくはガラス繊維)の含有量は、樹脂組成物の20質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましい。また、前記無機充填剤(好ましくはガラス繊維)の含有量は、45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、35質量%以下であることがより好ましく、32質量%以下であることがさらに好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、無機充填剤(好ましくはガラス繊維)を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<安定剤>
本実施形態の樹脂組成物は、安定剤を含有することが好ましく、安定剤としてはリン系安定剤やフェノール系安定剤が好ましく、リン系安定剤がより好ましい。リン系安定剤を含むことにより、加工時および高温環境下での樹脂の劣化を抑制することができる。
リン系安定剤としては、公知の任意のものを使用できる。具体例を挙げると、リン酸、ホスホン酸、亜燐酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などのリンのオキソ酸;酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウムなどの酸性ピロリン酸金属塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛など第1族または第2族金属のリン酸塩;有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイト化合物などが挙げられるが、有機ホスファイト化合物が特に好ましい。
フェノール系安定剤としては、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。
これらの詳細は、国際公開第2020/013127号の段落0105~0111の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
安定剤の含有量は、ポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常2質量部以下、好ましくは1.0質量部以下である。安定剤の含有量を前記範囲の下限値以上とすることで、安定剤としての効果をより効果的に得ることができる。また、安定剤の含有量を前記範囲の上限値以下にすることにより、効果が頭打ちになることなく、経済的である。
本実施形態の樹脂組成物は、安定剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<離型剤>
本実施形態の樹脂組成物は、離型剤を含んでいてもよい。離型剤としては、モンタン酸エステルワックス、ポリオレフィンワックス、高級脂肪酸、エステル化合物、エチレンビスステアロアマイドなどが例示され、モンタン酸エステルワックス、ポリオレフィンワックスおよびエチレンビスステアロアマイドから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
離型剤としては、具体的には、特開2018-070722号公報の段落0063~0077の記載、特開2019-123809号公報の段落0090~0098の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本実施形態の樹脂組成物が離型剤を含む場合、その含有量は、ポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対し、0.01質量部以上であることが好ましく、0.08質量部以上であることがより好ましい。また、前記離型剤の含有量の上限値は、ポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対し、5.0質量部以下であることが好ましく、1.0質量部以下であることがより好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、離型剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<着色剤>
本実施形態の樹脂組成物は、着色剤(染料および/または顔料)を含んでいてもよい。着色剤を含むことにより、得られる成形体の意匠性を高めることができる。着色剤としては、染料であっても、顔料であってもよいが、染料が好ましい。
本実施形態で用いる染料は、黒色染料および/または黒色染料組成物であることが好ましい。黒色染料組成物とは、赤、青、緑等の有彩色染料が2種以上組み合わさって、黒色を呈する染料組成物を意味する。黒色染料組成物の第一の実施形態は、緑色染料と赤色染料を含む形態である。黒色染料組成物の第二の実施形態は、赤色染料と青色染料と黄色染料を含む形態である。
本実施形態の樹脂組成物をレーザー溶着用の光透過性樹脂組成物に用いる場合、着色剤(好ましくは染料)は光透過性色素である。光透過性色素とは、例えば、ポリブチレンテレフタレート樹脂(例えば、ノバデュラン(登録商標)5008)と、ガラス繊維(例えば、日本電気硝子社製、商品名:T-127)30質量%と、色素(光透過性色素と思われる色素)0.2質量%を合計100質量%となるように配合し、国際公開第2021/225154号の段落0105に記載の方法で測定した光線透過率が20.0%以上となる色素をいう。光透過性色素の具体例としては、フタロシアニン、アニリンブラック、フタロシアニン、ポルフィリン、ペリノン、クオテリレン、アゾ、アゾメチン、アントラキノン、ピラゾロン、スクエア酸誘導体、ペリレン、クロム錯体、およびインモニウム等が挙げられ、アゾメチン、アントラキノン、ペリノンが好ましく、その中でもアントラキノン、ペリノンがより好ましい。
さらに、本実施形態における光透過性色素を配合することにより、例えば、本実施形態の樹脂組成物を1.5mmの厚さに成形したときの波長1064nmにおける光線透過率が20.0%以上、さらには40.0%以上とすることができ、特には50.0%以上、60.0%以上とすることもできる。上限としては100%が理想であるが、90%以下であってもよい。
また、波長1064nmは、レーザー溶着に用いられるレーザーの波長の例であり、かかる波長におけるレーザー透過率が20%以上であることは、レーザー溶着を良好に行うことができることを意味する。
光透過性染料の市販品としては、有本化学社製の着色剤であるPlast Yellow 8000、Plast Red M 8315、Plast Red 8370、Oil Green 5602、LANXESS社製の着色剤であるMacrolex Yellow 3G、Macrolex Red EG、Macrolex Green 5B、紀和化学工業社製のKP Plast HK、KP Plast Red HG、KP Plast Red H2G、KP Plast Blue R、KP Plast Blue GR、KP Plast Green G等が例示される。
また、特許第4157300号公報に記載の色素、特許第4040460号公報に記載の色素も採用することができ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本実施形態で用いる顔料は無機顔料(カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ランプブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラックなど)などの黒色顔料、酸化鉄赤などの赤色顔料、モリブデートオレンジなどの橙色顔料、酸化チタンなどの白色顔料)、有機顔料(黄色顔料、橙色顔料、赤色顔料、青色顔料、緑色顔料など)などが挙げられ、黒色顔料が好ましく、カーボンブラックがより好ましい。
本実施形態の樹脂組成物が顔料を含む場合、熱可塑性樹脂(好ましくはポリエステル樹脂、より好ましくはポリブチレンテレフタレート樹脂)でマスターバッチ化して用いることが好ましい。マスターバッチにおける顔料の濃度は、1~50質量%が好ましい。
本実施形態の樹脂組成物が着色剤を含む場合、その含有量は、ポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対し、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましく、0.1質量部以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、着色効果がより効果的に発揮される。また、前記着色剤の含有量の上限値は、ポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対し、4質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましく、2質量部以下であることがさらに好ましく、1質量部以下であることが一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、得られる成形体の機械的強度がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、着色剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
また、本実施形態の樹脂組成物は、顔料を実質的に含まない構成とすることができる。顔料を実質的に含まないとは、その含有量が、ポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対し、例えば、0.1質量部未満であることをいい、0.01質量部以下であることが好ましく、0.001質量部以下であることがより好ましく、0.0001質量部以下であることがさらに好ましく、0.00001質量部であることが一層好ましい。
また、本実施形態の樹脂組成物は、カーボンブラックを実質的に含まない構成とすることができる。カーボンブラックを実質的に含まないとは、その含有量が、ポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対し、例えば、0.1質量部未満であることをいい、0.01質量部以下であることが好ましく、0.001質量部以下であることがより好ましく、0.0001質量部以下であることがさらに好ましく、0.00001質量部であることが一層好ましい。
また、本実施形態の樹脂組成物は、レーザーマーキング剤を実質的に含まない構成とすることができる。レーザーマーキング剤を実質的に含まないとは、その含有量が、ポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対し、例えば、0.1質量部未満であることをいい、0.01質量部以下であることが好ましく、0.001質量部以下であることがより好ましく、0.0001質量部以下であることがさらに好ましく、0.00001質量部であることが一層好ましい。
<他の成分>
本実施形態の樹脂組成物は、所望の諸物性を著しく損なわない限り、必要に応じて、上記したもの以外に他の成分を含有していてもよい。他成分の例を挙げると、各種樹脂添加剤などが挙げられる。なお、その他の成分は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせおよび比率で含有されていてもよい。
樹脂添加剤としては、具体的には、反応性化合物、核剤、難燃剤、難燃助剤、充填剤、帯電防止剤、防曇剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。
本実施形態の樹脂組成物は、ポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂と無機充填剤(好ましくはガラス繊維)の合計が樹脂組成物の95質量%以上を占めることが好ましく、98質量%以上を占めることがより好ましい。
<樹脂組成物の製造方法>
本実施形態の樹脂組成物は、樹脂組成物の調製の常法によって製造できる。通常は各成分および所望により添加される種々の添加剤を一緒にしてよく混合し、次いで一軸または二軸押出機で溶融混練する。また、各成分を予め混合することなく、ないしはその一部のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練し、本実施形態の樹脂組成物を調製することもできる。着色剤等の一部の成分を熱可塑性樹脂と溶融混練してマスターバッチを調製し、次いでこれに残りの成分を配合して溶融混練してもよい。
なお、無機充填剤を用いる場合には、押出機のシリンダー途中のサイドフィーダーから供給することも好ましい。
溶融混練に際しての加熱温度は、通常220~300℃の範囲から適宜選ぶことができる。温度が高すぎると分解ガスが発生しやすく、不透明化の原因になる場合がある。それ故、剪断発熱等に考慮したスクリュー構成の選定が望ましい。混練り時や、後行程の成形時の分解を抑制する為、酸化防止剤や熱安定剤の使用が望ましい。
<成形体および成形体の製造方法>
本形態の樹脂組成物は、公知の方法に従って成形される。すなわち、本実施形態の成形体は、本実施形態の樹脂組成物から形成される。
成形体の製造方法は、特に限定されず、ポリエステル樹脂組成物について一般に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法等が挙げられ、中でも射出成形が好ましい。
射出成形の詳細は、特許第6183822号公報の段落0113~0116の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
<レーザーマーキング方法>
本実施形態の樹脂組成物から形成された成形体は、レーザーマーキングが可能である。すなわち、本実施形態の樹脂組成物ないし成形体は、レーザーマーキング用として好ましく用いられる。
レーザーマーキングにより、成形体に文字、標識、バーコード、QRコード(登録商標)、図、パターン等が施すことができる。レーザーマーキングの方法は、公知の方法を広く採用できる。
レーザーマーキング方法で用いるレーザー光としては、500nm以上のものがより好ましい。また、前記レーザー発振波長の上限値は、1200nm以下のものがより好ましい。
具体的には、成形体への発色印字をするアプリケーションでは、1,064nmや1090nm、1060nmなどの波長のレーザーマーカーが使用されている。ネオジウム変性イットリウム-アルミニウム-ガーネット(YAG)、またはネオジウム変性イットリウム-四酸化バナジウム(Nd:YVO4)等の結晶に高出力の光を与えてレーザーを発生させ、さらにミラーの往復反射で増幅させ、Qスイッチ機器によりパルスレーザにする方式のレーザーマーカーを用いることもできる。また、近年の主流となりつつあるファイバー方式(イッテルビウム)が注入されたファイバーに複数のレーザーダイオード(LD)を低出力で使用し、レーザー光を発生・増幅させる方式のもの)のレーザーマーカーも用いることができる。また、波長532nmのグリーンレーザーマーカーも用いることができる。
なお、レーザーマーカーとしては、レーザービームはシングルモードでもマルチモードでもよく、またビーム径が20~40μmのように絞ったもののほか、ビーム径が80~100μmのように広いものについても用いることができるが、シングルモードで、ビーム径が20~40μmの方が、良好なコントラストでマーキングを行えることから好ましい。
<レーザー溶着>
本実施形態の樹脂組成物は、光吸収性樹脂組成物と組みわせて、レーザー溶着用のキットとして用いることができる。すなわち、本実施形態の樹脂組成物は、光透過性樹脂組成物としての役割を果たし、かかる光透過性樹脂組成物から形成された成形体は、レーザー溶着の際のレーザー光に対する透過樹脂部材となる。そして、前記透過樹脂部材は、光吸収性樹脂組成物から形成された成形体(レーザー溶着の際のレーザー光に対する吸収樹脂部材)とレーザー溶着することによってレーザー溶着体として用いることができる。ここで、光吸収性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と光吸収性色素(例えば、カーボンブラック)とを含む。さらに、無機充填剤を含んでいてもよい。
本実施形態の樹脂組成物は、成形体としたとき、レーザーマーキングが可能であることから、レーザーマーキングが可能であり、かつ、レーザー溶着における透過樹脂部材用の樹脂組成物として好ましく用いられる。
レーザー溶着の方法および光吸収性樹脂組成物の詳細は、国際公開第2021/225154号の段落0083~0092の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
なお、レーザー溶着に用いるレーザー光源としては、光吸収性色素の光の吸収波長に応じて定めることができ、波長800~1100nmの範囲のレーザーが好ましい。照射するレーザー光の種類としては、例えば固体レーザー、ファイバーレーザー、半導体レーザー、気体レーザー、液体レーザー等を挙げることができる。例えばYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット結晶)レーザー(波長1064nm、1070nm)、LD(レーザーダイオード)レーザー(波長808nm、840nm、940nm、980nm)等を好ましく用いることができる。中でも、波長940nm、980nm、1070nmのレーザー光が好ましい。
<用途>
本実施形態の樹脂組成物ないし成形体は、種々の用途、具体的には、各種保存容器、電気・電子機器部品、オフィスオートメート(OA)機器部品、家電機器部品、機械機構部品、車両機構部品などに適用できる。特に、食品用容器、薬品用容器、油脂製品容器、車両用中空部品(各種タンク、インテークマニホールド部品、カメラ筐体)、車両用電装部品(各種コントロールユニット、イグニッションコイル部品など)、モーター部品、各種センサー部品、コネクター部品、スイッチ部品、ブレーカー部品、リレー部品、コイル部品、トランス部品、ランプ部品などに好適に用いることができる。
特に、本実施形態のレーザー溶着体は、車載カメラ部品、センサーケース部品、モーター部品、電子制御部品に好ましく用いられる。より具体的には、車載カメラ部品および車載カメラ部品を含む車載カメラモジュール、ミリ波レーダーの筐体、ECUケースの筐体、ソナーセンサー等のセンサーケースの筐体、電動パーキングブレーキ等のモーター部品の筐体に適している。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
実施例で用いた測定機器等が廃番等により入手困難な場合、他の同等の性能を有する機器を用いて測定することができる。
1.原料
以下の原料を用いた。PBTはポリブチレンテレフタレート樹脂の略称である。
Figure 2023114411000002
上記表1における各種ポリカーボネート樹脂100質量部中の金属元素の量を以下に示す。金属元素の単位は、質量ppmである。
Figure 2023114411000003
「<」は検出限界未満であることをいう。
<金属元素の量の測定>
ポリカーボネート樹脂中の金属元素の定性/半定量分析は、ICP発光分析法によって行った。この場合、前処理として試料200mgを秤量し、ケルダール湿式分解(硫酸/硝酸、硫酸/過酸化水素)を行い、50mLに定容し、続いて、ICP発光分析を酸濃度マッチング一点検量法にて行った。単位は、質量ppmにて示した。
ICP発光分析は、Thrmo Fisher Scientific社製「iCAP76000uo」を用い、axial/radial測光にて行った。
2.実施例1~5、比較例1~4
<コンパウンド>
表1に示す各成分を表3に示す割合(質量%)にて、ガラス繊維以外の成分をタンブラーミキサーで均一に混合した。得られた混合物を、二軸押出機(日本製鋼所社製「TEX30α」)にメインフィード口より供給した。第一混練部のシリンダー設定温度260℃に設定し、ガラス繊維はサイドフィーダーより供給した。ガラス繊維添加以降のシリンダー温度は240℃に設定し、吐出40kg/h、スクリュー回転数200rpmの条件で溶融混練した樹脂組成物を、水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてペレット化し、樹脂組成物のペレットを得た。
<レーザー印字視認性>
上記で得られたペレットを120℃で5時間乾燥したのち60mm四方の1.5mm厚みのプレート状成形体を、射出成形機(日精樹脂工業社製「NEX80」)を用いて、シリンダー温度260℃、金型温度80℃の条件で射出成形した。得られたプレート成形体の表面にレーザーマーキング装置(パナソニックデバイスSUNX社製「LP-Z130」)を用いて、スキャンスピード200mm/s、印字パルス周期50μs、線幅0.1mmの条件で、レーザーマーキングを行い、レーザーマーキング部分の視認性を目視判定で以下の通り評価した。測定は、5人の専門家が行い、多数決で判断した。
A:印字部分と非印字部分の境界が明瞭で滲みがない。
B:滲みが多く、印字部分と非印字部分の境界が判別しづらい。
また、実施例1と比較例1~3のレーザー印字後の写真を図1に示した。実施例1では、印字部分と非印字部分の境界が明瞭で滲みがなく、クリアにレーザー印字がされていた。これに対し、比較例1~3は、滲みが多く、印字部分と非印字部分の境界が判別しづらく、レーザー印字性の精度が劣ることが分かる。
<引張強さおよび引張弾性率>
上記で得られた樹脂ペレットを120℃で5時間乾燥したのちISO多目的試験片(厚さ4mm)を、射出成形機(日本製鋼所社製「J85AD」)を用いて、シリンダー温度250℃、金型温度80℃の条件で射出成形した。
成形した多目的ISO多目的試験片を用い、ISO527-1およびISO527-2に準拠し、引張強さ(単位:MPa)および引張弾性率(単位:MPa)を測定した。
<光線透過率>
上記で得られたペレットを120℃で5時間乾燥したのち60mm四方の1.5mm厚みのプレート状成形体を、射出成形機(日精樹脂工業社製「NEX80」)を用いて、シリンダー温度260℃、金型温度80℃の条件で射出成形した。得られたプレートを、紫外可視分光光度計を用いて、ゲートから45mmの地点、かつ、試験プレート幅の中心部での、1064nmの光線透過率(単位:%)を測定した。
紫外可視分光光度計は、島津製作所社製「UV-3100PC」積分球付きを用いた。
Figure 2023114411000004
上記結果から明らかなとおり、本実施形態の樹脂組成物から形成された成形体は、レーザー印字性に優れていた(実施例1~5)。さらに、前記成形体は機械的強度にも優れていた。また、本実施形態の樹脂組成物は、レーザー透過率が高くレーザー溶着が可能であることが分かった。
また、本実施形態の樹脂組成物においては、着色剤を配合しない場合(実施例1、4、5)や染料(実施例2)を配合しても、レーザーマーキングができるため、レーザーマーキングが可能であり、かつ、レーザー溶着における透過樹脂部材用の樹脂組成物として用いることができる。
レーザー溶着
<第1の部材の成形>
上記樹脂ペレットを120℃で5時間乾燥した後、射出成形機(日本製鋼所社製「J55」)を用いて、シリンダー温度260℃、金型温度60℃で成形して、図2に示すような、厚さ1.5mmの成形体(透過樹脂部材I)を作製した。
<第2の部材の成形>
三菱エンジニアリングプラスチックス社製PBT樹脂(NOVADURAN 5010G30X4/BK2)を120℃で5時間乾燥した後、射出成形機(日本製鋼所社製「J55」)を用いて、シリンダー温度260℃、金型温度80℃で成形して、図3に示すような成形体(吸収樹脂部材II)を作製した。
表4に示した第1の部材を選択し、図4に示すように、それぞれ穴21、22をあけて、溶着力測定用の冶具23、24を内部に入れた状態で、箱状の吸収樹脂部材IIに蓋状の透過樹脂部材Iを重ね、透過樹脂部材Iおよび吸収樹脂部材IIの重なり部分である鍔部の垂直上方位置にレーザー光源を配置し、ガラス板を用いて透過樹脂部材Iおよび吸収樹脂部材IIの重なり部分に厚み方向両側から内側方向に4.92N/mmの押し力(溶着時押力)を掛けつつ、表4に記載の条件にて、レーザーを照射してレーザー溶着体を得た。図4における符号Xの部分がレーザーを照射した部分である。
溶着装置は以下の通りである。
<ガルバノスキャナ式レーザー溶着>
レーザー装置:IPG社製 YLR-300-AC-Y14
波長:1070nm
コリメータ:7.5mm
レーザータイプ:ファイバー
レーザー強度(出力):100W
ガルバノスキャナ:ARGES社製 Fiber Elephants21
アパーチャー:21mm
レーザー照射速度:900mm/s
レーザー照射周数:表4または表5に示す通り
溶着部円周 :137mm
溶着面に照射されるスポット径が直径1mmになるように、レーザー光をデフォーカスしてレーザースキャナの位置調整をした。
<レーザー溶着強度>
図5に示すように、上記で作製した透過樹脂部材Iおよび吸収樹脂部材IIからなる箱体の上面および下面からそれぞれに測定用冶具25、26を挿入して、内部に収納した冶具23、24とそれぞれ結合させ、上下に引っ張って(引張速度:5mm/min)、透過樹脂部材Iおよび吸収樹脂部材IIが離れる強度(溶着強度、単位:N)を測定した。
尚、装置はORIENTEC社製100kNテンシロンの万能型試験機を使用した。
結果を下記表4に示した。
Figure 2023114411000005
本発明の樹脂組成物を用いて得られたレーザー溶着体は、レーザー溶着強度が高った(実施例1)。これに対し、比較例の樹脂組成物を用いて得られたレーザー溶着体は、レーザー溶着強度が低かった。

Claims (14)

  1. ポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂を含み、
    ポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂の合計100質量部における、ポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂の質量比が、10/90~90/10であり、
    前記ポリカーボネート樹脂に含まれるアルミニウム元素の含有量が、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.50~1000.00質量ppmである、樹脂組成物。
  2. 前記ポリエステル樹脂が、ポリブチレンテレフタレート樹脂を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記ポリカーボネート樹脂が、リサイクル品を含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
  4. 前記ポリカーボネート樹脂100質量部中、リサイクル品が50質量部以上を占める、請求項3に記載の樹脂組成物。
  5. ポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対する、ポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂の質量比が、50/50~90/10である、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  6. さらに、無機充填剤を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  7. 前記無機充填剤が、ガラス繊維および/またはガラスフレークを含む、請求項6に記載の樹脂組成物。
  8. さらに、リン系安定剤を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  9. 1.5mmの厚さに成形したときの波長1064nmにおける光線透過率が20.0%以上である、請求項1~8のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  10. レーザーマーキング用である、請求項1~9のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  11. レーザー溶着のレーザー光に対する透過樹脂部材に用いる、請求項1~10のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  12. 請求項1~11のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成された成形体。
  13. レーザーマーキング用である、請求項12に記載の成形体。
  14. 請求項12または13に記載の成形体を含む、レーザー溶着体。
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