JP2023098210A - 鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】所定の成分組成を有し、面積率で、80.00%以上のフェライト相、0.01%以上10.00%以下のマルテンサイト相および0.05%以上10.00%以下の残留オーステナイト相を含む金属組織を有するフェライト鋼板とする。
【選択図】なし
Description
さらに薄肉化で低下した剛性や強度を補完するため、缶胴部及び缶底部へのビード加工や幾何学的形状を付与して剛性や強度を高める手法がとられており、高い成形性も必要とされる。そのためには、少なくとも20%以上の延性(全伸び)が必要である。
さらに容器用鋼板では自動車用鋼板等とは異なり、成形前にラミネート工程や塗装工程にて鋼板が加熱され、成形前に鋼板の時効が生じるといった問題がある。そのため、缶体成型時のシワ発生の抑制を目的とするのであれば、時効熱処理後のYP-Elも評価する必要がある。よって、かかる目的を達成するために、時効熱処理後のYP-Elは、少なくとも5%以下とすることが求められる。
以上の理由から、優れた延性と引張強さ、低降伏伸びの他に高いHR30Tを兼備した極薄鋼板の開発が望まれている。
なお、上記の鋼板を得るためには、延性向上に寄与する軟質なフェライト相、強度向上および降伏伸び低減に寄与する硬質なマルテンサイト相の2相組織に加えて、延性および強度のどちらの向上にも寄与する残留オーステナイト相を併せて形成することが重要である。
本発明は、上記したそれぞれの知見に基づき、さらに検討を加えた末に完成されたものである。
1.質量%で、C:0.030%以上0.250%以下、Si:0.06%以上3.00%以下、Mn:0.01%以上2.00%以下、P:0.025%以下、S:0.020%以下、Al:3.00%以下およびN:0.0100%以下を含有し、残部が鉄および不可避的不純物の成分組成を有し、
面積率で、80.00%以上のフェライト相、0.01%以上10.00%以下のマルテンサイト相および0.05%以上10.00%以下の残留オーステナイト相を含む金属組織を有する、鋼板。
前記1又は2に記載の成分組成を有する鋼素材を1000℃以上に加熱し、仕上げ温度800℃以上950℃以下、巻き取り温度700℃以下にて熱間圧延を施す熱間圧延工程、該熱間圧延工程を経た熱延板に圧下率50%以上の冷間圧延を施す冷間圧延工程および、 該冷間圧延工程を経た冷延板に平均加熱速度10℃/s以上で加熱を施し、700℃以上900℃以下の温度域で保持後、冷却停止温度まで平均冷却速度70℃/s以上で冷却する焼鈍工程を有する、鋼板の製造方法。
前記1又は2に記載の成分組成を有する鋼素材を1000℃以上に加熱し、仕上げ温度850℃以上950℃以下、巻き取り温度650℃以下にて熱間圧延を施す熱間圧延工程、該熱間圧延工程を経た熱延板に圧下率70%以上の冷間圧延を施す冷間圧延工程および、 該冷間圧延工程を経た冷延板に平均加熱速度10℃/s以上で加熱を施し、700℃以上900℃以下の温度域で保持後、150℃以上600℃以下の冷却停止温度まで平均冷却速度70℃/s以上で冷却する焼鈍工程を有する、鋼板の製造方法。
また、本発明により得られる鋼板を異形缶に適用した場合、高い延性(全伸び)を有するため、拡缶加工・ビード加工などの強い缶胴加工や、フランジ加工などを行うことが可能となる。
加えて、鋼板の高強度化によって缶の薄肉化の進行に伴う強度低下を補うと共に、高い缶体強度を確保することが可能である。
さらに、時効熱処理後も低い降伏伸びを有することから、缶体にシワが発生することを防止することができる。
Cは、鋼の強度に寄与し、固溶強化および析出強化あるいはマルテンサイト相(以下、単にマルテンサイトともいう)の形成により鋼の強度を増加させる。C含有量が0.030%未満となると、残留オーステナイト相(以下、単に残留オーステナイトともいう)及びマルテンサイトの面積率が低下し所望の強度が得られない。そのため、C含有量は0.030%以上とする必要がある。一方、過度の含有は強度上昇による延性の低下を招くとともに、過剰なマルテンサイトの形成、固溶Cの増加による降伏伸びの増加の原因となる場合がある。さらに、溶接部および熱影響部の硬化が著しくなり、溶接部の機械的特性が低下し、溶接性が劣化する場合がある。そのため、C含有量の上限は0.250%とする。
したがって、本発明において、Cは0.030%以上0.250%以下とする。好ましくは、下限が0.050%であって、上限が0.150%である。
Siは、本発明において重要な添加元素の1つであり、固溶強化による鋼の高強度化に寄与する他、フェライト相(以下、単にフェライトともいう)の加工硬化能を向上させる元素である。かかる作用を得るためには0.06%以上含有させることが必要である。一方で、3.00%を超えて含有するとフェライトの過度な固溶強化によって延性が低下するほか、耐食性が著しく損なわれる。
したがって、Si含有量は3.00%以下とする。好ましくは、下限が0.50%であって、上限が2.00%である。
Mnは、本発明において極めて重要な添加元素の1つであって、焼鈍冷却過程においてオーステナイト相(以下、単にオーステナイトともいう)を安定化させる作用があり、鋼の焼き入れ性を向上させる。ほかにも、固溶強化により、鋼の高強度化に寄与する。よって、本発明で目的とする鋼板の強度を得るためには、Mn含有量を0.01%以上にする必要がある。Mn含有量が0.01%に満たないと、マルテンサイトおよび残留オーステナイトを所望量生成させることができず、目的の強度および成形性を得ることができない。一方で、2.00%を超えて含有すると、マルテンサイトが過剰に生成され、所望の延性が得られない。
したがって、Mnは0.01%以上2.00%以下の範囲とする。好ましくは、下限が0.05%であって、上限が1.80%である。
Pは、0.025%を超えると鋼板が過剰に硬化して延性が低下するほか、溶接性を低下させる。
したがって、P含有量は0.025%以下とする。好ましくは0.020%以下である。
一方、Pは、鋼中に不可避的に混入する元素であるが、鋼の強化には有効である。そのため、0.010%以上含有させることが好ましい。
Sは、鋼中に不可避的に混入する元素であり、MnSなどの介在物を生成して局部変形能を低下させ、延性を劣化させる。そのため、S含有量は0.020%以下とする。好ましくは0.015%以下である。一方、S含有量の下限は特に限定されないが、工業的には0.001%程度とするのが好ましい。なお、0.005%未満とすると鋼の精製に過剰なコストがかかるため、0.005%以上とするのがより好ましい。
Alは、本発明において重要な添加元素の1つであって、フェライトとオーステナイトの二相域を拡大させることで、焼鈍過程において焼鈍温度によらず安定してオーステナイトを生成させることができ、焼鈍時の材質安定性に寄与する。また、脱酸剤として作用し、さらに鋼中のNとAlNを形成することで、鋼中の固溶Nを減少させ、鋼板の降伏伸びの低下に寄与する。かかる作用を得るためには0.03%以上含有させることが好ましい。一方、過剰に添加するとアルミナが多量に生成し延性を低下させるため、Al含有量を3.00%以下とする必要がある。好ましくは2.00%以下である。
Nは、耐時効熱処理性を劣化させ、降伏伸びを増加させてしまう元素である。特に、0.0100%超の添加は、降伏伸びの増加が顕著となる。したがって、Nは0.0100%以下とする。好ましくは0.005%以下である。なお、下限は、0.0000%であってもよい。
Bは、焼き入れ性を向上させる効果があり、焼鈍冷却過程で起こるフェライトの生成を抑制し、所望量のマルテンサイトの生成に寄与する。その効果は0.0200%で飽和する。そのため、B添加量は0.0200%以下とすることが好ましい。一方、上記効果は、0.0001%程度以上の添加で得ることができる。
Tiは、析出強化元素として強度増加に有効であるほか、鋼中のNとTiNを形成しBNの生成を抑制することで、Bの焼入れ性向上効果を十分に得ることができる。かかる効果は、0.001%程度以上の添加で得ることができる。一方で、Tiの過剰添加は強度上昇による加工性の低下を招くので、上限は0.100%とすることが好ましい。より好ましくは、0.050%以下である。
Nbは、熱間圧延時および焼鈍時に微細な析出物を形成し、強度増加に寄与するほか、再結晶粒の粗大化を抑制することで強度の向上に有効である。かかる効果は、0.001%程度以上の添加で得ることができる。一方で、過剰添加は強度上昇による加工性の低下を招く他、コストアップの要因となるため、上限は0.100%とすることが好ましい。より好ましくは、0.050%以下である。
Cr、MoおよびVは強度増加に有効であるほか、焼き入れ性向上に寄与する。かかる効果は、いずれも0.001%程度以上の添加で得ることができる。一方で、過剰添加はマルテンサイトの過剰形成による延性低下のおそれがある。またコストアップの要因となるため、上記元素のそれぞれの添加量はいずれも2.000%以下とすることが好ましい。より好ましくは、Crは1.000%以下、Moは0.500%以下、Vは0.500%以下である。
Niは、残留オーステナイトを安定化させる元素で、固溶強化による強度向上に寄与するほか、焼き入れ性を向上させる効果がある。かかる効果は、0.001%程度以上の添加で得ることができる。一方、過剰添加は強度上昇による加工性の低下を招く他、コストアップの要因となるため、上限を2.000%とすることが好ましい。より好ましくは、1.000%以下である。
Cuは、熱間圧延時および焼鈍時に析出物を形成し、強度増加に寄与するため、強度の向上に有効である。かかる効果は、0.001%程度以上の添加で得ることができる。一方で、過剰添加は強度上昇による加工性の低下を招くため、上限を2.000%とすることが好ましい。より好ましくは、1.000%以下である。
本発明で、以下の面積率を規定する組織とは、圧延方向断面での板厚1/2位置面で走査型電子顕微鏡の倍率3000倍とし,無作為に選んだ計5視野の面積を観察した組織を意味する。
フェライトは鋼の延性向上に寄与する。フェライトの面積率が80.00%未満になると、所望する延性の確保が困難になるため、フェライトの面積率は、80.00%以上とする。好ましくは90.00%以上である。なお、フェライトの面積率の上限は、以下のマルテンサイトと残留オーステナイトの面積率を考慮して99.94%で良い。
マルテンサイトの面積率が10.00%超になると強度が過剰に上昇し、延性が低下するため、マルテンサイトの面積率は10.00%以下とする。一方で、マルテンサイトの面積率が0.01%未満であると所望の強度を得ることができない。したがって、マルテンサイトの面積率は、0.01%以上10.00%以下とする。好ましくは、下限が3.00%であって、上限が8.00%である。
残留オーステナイトは、本発明において重要な組織である。残留オーステナイトは、鋼の延性を低下させることなく強度を向上させることに寄与する。そのため、鋼中に残留オーステナイトを適正量生成させることで、強度と成形性の両方に優れた鋼を得ることができる。かかる作用を得るためには、残留オーステナイトの面積率が0.05%以上必要である。一方で、残留オーステナイトの面積率が10.00%を超えると所望のマルテンサイトを生成できず、HR30Tが低下し、缶体強度の低下が生じるおそれがある。したがって、残留オーステナイトの面積率は0.05%以上10.00%以下とする。好ましくは、下限が0.10%であって、上限が8.00%である。
鋼板のフェライトの平均結晶粒径を10.0μm以下とすることで、結晶粒微細化による強度の向上に寄与する。よって、フェライトの平均結晶粒径は10.0μm以下が好ましい。より好ましくは、7.0μm以下である。なお、フェライトの平均結晶粒径の下限は、特に限定されないが、生産性を考えると0.3μm程度が好ましい。また、個々のフェライトの結晶粒径のうち、0.01μmに満たないものは、上記平均結晶粒径としては計算に含めない。
本発明の鋼板の製造方法は、上記鋼板の成分組成を有する鋼素材を、1000℃以上に加熱し、仕上げ温度800℃以上950℃以下、巻き取り温度700℃以下にて熱間圧延を行って熱延板とする熱間圧延工程、次いで、圧下率50%以上で冷間圧延を行う冷間圧延工程、さらに、焼鈍温度までの平均加熱速度を10℃/s以上として加熱し、焼鈍温度を700℃以上900℃以下の範囲の温度域としてかかる温度域で保持後、所定の冷却停止温度まで平均冷却速度70℃/s以上で冷却する焼鈍を行う焼鈍工程を有する。なお、上記所定の冷却停止温度は150℃以上800℃以下の範囲が好ましい。また、上記焼鈍温度から上記冷却停止温度までは、少なくとも70℃の範囲を設けて設定することが好ましい。
熱間圧延前における鋼素材の加熱温度が低すぎると炭化物が未溶解となり、焼鈍後でも粗大な炭化物が残存し、成形性を低下させるおそれがある。そのほか、圧延荷重の増加による熱間圧延時のトラブル発生の要因ともなるため、鋼素材の加熱温度は1000℃以上とする必要がある。好ましくは1150℃以上である。一方、鋼素材の加熱温度の上限に制限はないが、鋼の加熱コストの低減と加熱炉の耐久性維持のため、好ましくは1250℃以下である。
熱間圧延の仕上げ温度が950℃を超えると、熱間圧延後の組織が粗大化し、その後の冷延鋼板の粒径が増大することで、鋼板の強度低下の原因となる。一方、仕上げ温度が800℃に満たない場合には、フェライトとオーステナイトとの2相域での圧延となり、鋼板表層にフェライトの粗大粒が発生し、その後の冷延鋼板の粒径が増加することで強度低下の原因となる。したがって、仕上げ圧延温度は800℃以上950℃以下の範囲に限定する。また、フェライト粗大粒の発生を確実に防ぐために好ましくは、下限が850℃であって、上限が950℃である。
巻き取り温度が700℃を超えると、巻き取り時に鋼板の結晶粒が粗大化しその後の冷延鋼板の粒径が増加することで鋼板の強度低下の原因となる。したがって、巻き取り温度は700℃以下とする。また、フェライト粒径の増大を防ぐために好ましくは650℃以下である。下限は特に定めないが、低すぎると熱延鋼板が過剰に硬化し、冷間圧延時の作業性を阻害するおそれがあるため、400℃以上が好ましい。
冷間圧延は、本発明において重要な工程の1つである。冷間圧延により、鋼板の組織に転位が導入され、焼鈍中のオーステナイト変態が促進され、第2相組織の形成を促進する効果が得られる。ほかにも冷間圧延率を大きくすることで、フェライト粒が微細となり、引張強さと加工性のバランスを向上させることができる。冷間圧延率が大きいほどこの効果は大きくなる。したがって、圧下率は50%以上であることが必要である。また、フェライトの結晶粒径を下げるために好ましくは70%以上である。一方で、圧下率の上限に特に限定はないが、圧下率が大きくなりすぎると圧延荷重が大幅に増加し、圧延機への負荷が過剰になるので、95%以下であることが好ましい。
焼鈍工程の保持温度である焼鈍温度までの平均加熱速度が10℃/s未満となると、焼鈍温度に達する前に鋼中のオーステナイトに焼入れ性向上元素の分配が完了してしまう。そして、その後の冷却工程で、所望量のフェライトとマルテンサイトを得ることが困難となって、強度-延性バランスが低下するおそれがある。したがって、焼鈍温度までの平均加熱速度は10℃/s以上とする。一方、上限に特に制限はないが、工業的には、50℃/s程度である。
高引張強さと高伸び、また時効熱処理後の低い降伏伸びを得るためには、焼鈍工程においてオーステナイトを生成させることが重要である。焼鈍温度(保持温度)が700℃よりも低い場合、焼鈍後に所望のマルテンサイトおよび残留オーステナイトを得ることができずに鋼板の強度と成形性が低下する。一方、焼鈍温度を900℃超にすると、連続焼鈍においてヒートバックルなどの通板トラブルが発生しやすくなるほか、フェライト粒が粗大化することで強度が低下するおそれがある。したがって、焼鈍温度は700℃以上900℃以下の範囲に制限する。より好ましくは、下限が750℃であって、上限が820℃である。また、かかる温度での保持時間は特に限定されないが5s以上90s以下が好ましい。なお、上記保持時間中の温度は、700℃以上900℃以下の範囲であればよく、必ずしも一定温度である必要はない。
焼鈍後の冷却停止温度を800℃以下とすることにより、鋼中に残留オーステナイトを適正量生成させつつ、マルテンサイト変態を生じさせることができ、所望量のマルテンサイトを得ることができる。一方、冷却停止温度を150℃未満としてもマルテンサイトの生成量増加に寄与せず、冷却コストが過剰となる。したがって、焼鈍後の冷却停止温度は、必要とするマルテンサイトおよび残留オーステナイトの面積率に応じ、150℃以上800℃以下の範囲で決定することができる。より好ましくは、かかる冷却停止温度の上限が600℃である。
なお、少なくとも、上記冷却停止温度が600℃以下の条件、前記仕上げ温度が850℃以上の条件、前記巻き取り温度が650℃以下の条件、さらに前記冷間圧延における圧下率が70%以上の条件、を併せて満足することが、フェライトの平均結晶粒径を10.0μm以下とするために重要な条件である。
本発明の鋼板の製造方法では、焼鈍温度に保持後(以下、単に焼鈍保持後ともいう)冷却を行うが、かかる工程は本発明において重要な工程の1つである。安定的に所望のマルテンサイトおよび残留オーステナイトが生成されるためには、焼鈍保持後の冷却速度を調整する必要があるからである。平均冷却速度が70℃/sに満たない場合、冷却中にフェライトの過剰な生成が生じ、マルテンサイトおよび残留オーステナイトの生成が抑制され、所望量が得られずに鋼板の強度が低下する。従って、平均冷却速度は70℃/s以上とする。一方、過剰な冷却速度では鋼板内の冷却バラツキにより安定した高伸びが得られない。そのため、焼鈍保持後、前記冷却停止温度まで平均冷却速度は250℃/s以下とするのが好ましい。
なお、この冷却は、ガス冷却の他、炉冷、気水冷却、ロール冷却および水冷などのうちから選ばれる1種または2種以上を組み合わせて行うことが可能である。
本発明では、上記焼鈍工程中、焼鈍保持を行い、上記冷却停止温度まで上記冷却速度の冷却を行った後に、さらに、150℃以上800℃以下の温度域に保持する熱処理を追加することにより、組織中の固溶Cや固溶Nを炭化物や窒化物として析出させることができる。固溶Cや固溶Nは固溶強化により強度向上に寄与するが、過剰に含まれると所望の延性や時効熱処理後YP-Elが得にくくなる。したがって、焼鈍保持後に、150℃以上800℃以下の温度域でさらに保持することにより固溶Cおよび固溶Nを析出させ、延性を向上させるほか、時効熱処理後YP-Elを低減することが可能になる。なお、かかる追加の熱処理(2段目の保持およびその後の冷却)での保持温度が800℃を上回ると固溶Cや固溶Nが全て析出し強度が低下するほか、フェライト粒が粗大化することで強度が低下するおそれがある。一方で、150℃を下回るとCおよびNが析出せず固溶してしまい、所望の延性および時効熱処理後YP-Elが得にくくなる。
また、本発明においては、150℃以上800℃以下の温度域で維持できれば固溶Cや固溶Nを析出させることができるため、かかる追加熱処理では同一の温度で保持を行わずにそのまま緩冷却することも可能である。したがって、本発明では、焼鈍保持後に、800℃から150℃までの温度域に滞留(保持)させてもよい。
なお、上記追加熱処理の保持時間の上限および下限は特に限定されないが、工業的には、下限を20秒とし、上限を300秒とすることが好ましい。
前記追加の熱処理では、前記150℃以上800℃以下の温度域での保持後、150℃未満の温度域の第2冷却停止温度まで10℃/s以上の冷却速度で冷却することが望ましい。本工程により、マルテンサイトの過剰な焼き戻しを防ぎ、強度および成形性の低下を防ぐことができる。そのため、前記追加の熱処理での保持温度より150℃未満の温度域まで10℃/s以上で冷却することが好ましい。かかる冷却の速度の上限は特に規定しないが、過剰な冷却速度は冷却コストの高騰につながるため、40℃/s以下が好ましい。なお、第2冷却停止温度の下限は室温である。
焼鈍工程後、圧下率10%以下の調質圧延を行っても良い。圧下率を大きくすると、加工時に導入される歪みが大きくなり、全伸びが低下する。ほかにも、調質圧延工程での転位の導入は、ひずみ時効により時効熱処理後の降伏伸びが増加するおそれがある。そのため、調質圧延工程を行う場合の圧下率は10%以下とすることが好ましい。一方、圧下率の下限は特に規定しないが、調質圧延工程には上降伏応力を増加させる効果や降伏伸びを低減する役割があるため、用途に応じた圧下率とすることでより好ましい鋼板を得ることができる。かかる効果を得るためには、0.1%以上が好ましい。なお、より好ましくは、下限が0.5%であって、上限が5%である。
以上の工程を経ることで、本発明の鋼板が得られる。なお、上記に記載のない工程および条件等は、鋼板の製造にかかる常法によれば良い。
なお、残留オーステナイトの面積率は鋼板を板厚1/2面(鋼板表面から板厚方向に板厚の1/2深さにおける圧延面と平行な面)まで研磨し、この板厚1/2面のX線回折の強度を測定することによって求めた。
また、比較的平滑な表面を有する塊状として観察される白色領域をマルテンサイトおよび残留オーステナイトと見なし、前記方法で測定した残留オーステナイトの面積率を除いた面積率をマルテンサイトの面積率とした。塊状として観察される黒色領域で内部にマルテンサイトを含まないものをフェライトと見なし、その面積率をフェライトの面積率とした。
本発明において、フェライト平均結晶粒径は、圧延方向断面の板厚1/2位置の面にてフェライト組織を3%ナイタール溶液でエッチングして粒界を現出させた面に、光学顕微鏡を用いて撮影した400倍の写真を用い、JIS G 0551の鋼-結晶粒度の顕微鏡試験方法に準拠した切断法により平均結晶粒径を測定して、フェライト平均結晶粒径とした。観察位置は無作為に選んだ計3箇所とした。
機械特性(引張強さTS、降伏伸びYP-El、全伸びEl、HR30T)は、圧延方向を長手方向(引張方向)とし、JIS Z 2241に記載の5号試験片を用い、JIS Z 2241に準拠した引張試験を行って評価した。HR30TはJIS Z 2245に準拠し評価した。
すなわち、焼き入れ性や強度向上に寄与する元素の添加量が少ない鋼種を用いた例(No.2,6)では、残留オーステナイトまたはマルテンサイトといった、強度向上に貢献する合金の析出物が十分に形成できなかったため、引張強さやHR30Tの両方が要求特性未達となった。
Claims (6)
- 質量%で、
C:0.030%以上0.250%以下、
Si:0.06%以上3.00%以下、
Mn:0.01%以上2.00%以下、
P:0.025%以下、
S:0.020%以下、
Al:3.00%以下および
N:0.0100%以下
を含有し、
残部が鉄および不可避的不純物の成分組成を有し、
面積率で、80.00%以上のフェライト相、0.01%以上10.00%以下のマルテンサイト相および0.05%以上10.00%以下の残留オーステナイト相を含む金属組織を有する、鋼板。 - 前記成分組成はさらに、質量%で、
B:0.0200%以下、
Ti:0.100%以下、
Nb:0.100%以下、
Cr:2.000%以下、
Mo:2.000%以下、
V:2.000%以下、
Ni:2.000%以下および
Cu:2.000%以下
より選ばれる1種または2種以上を含有する、請求項1に記載の鋼板。 - 前記フェライト相の平均結晶粒径が10.0μm以下である、請求項1または2に記載の鋼板。
- 請求項1又は2に記載の鋼板を製造する方法であって、
請求項1又は2に記載の成分組成を有する鋼素材を1000℃以上に加熱し、
仕上げ温度800℃以上950℃以下、巻き取り温度700℃以下にて熱間圧延を施す熱間圧延工程、
該熱間圧延工程を経た熱延板に圧下率50%以上の冷間圧延を施す冷間圧延工程および、
該冷間圧延工程を経た冷延板に平均加熱速度10℃/s以上で加熱を施し、700℃以上900℃以下の温度域で保持後、冷却停止温度まで平均冷却速度70℃/s以上で冷却する焼鈍工程を有する、鋼板の製造方法。 - 請求項3に記載の鋼板を製造する方法であって、
請求項1又は2に記載の成分組成を有する鋼素材を1000℃以上に加熱し、
仕上げ温度850℃以上950℃以下、巻き取り温度650℃以下にて熱間圧延を施す熱間圧延工程、
該熱間圧延工程を経た熱延板に圧下率70%以上の冷間圧延を施す冷間圧延工程および、
該冷間圧延工程を経た冷延板に平均加熱速度10℃/s以上で加熱を施し、700℃以上900℃以下の温度域で保持後、150℃以上600℃以下の冷却停止温度まで平均冷却速度70℃/s以上で冷却する焼鈍工程を有する、鋼板の製造方法。 - 前記平均冷却速度70℃/s以上で冷却後にさらに150℃以上800℃以下の温度域にて2段目の保持後、平均冷却速度10℃/s以上で150℃未満の温度域まで冷却する焼鈍工程とする、請求項4または5に記載の鋼板の製造方法。
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