[go: up one dir, main page]

JP2023065062A - 人工皮革及びその製法 - Google Patents

人工皮革及びその製法 Download PDF

Info

Publication number
JP2023065062A
JP2023065062A JP2021175633A JP2021175633A JP2023065062A JP 2023065062 A JP2023065062 A JP 2023065062A JP 2021175633 A JP2021175633 A JP 2021175633A JP 2021175633 A JP2021175633 A JP 2021175633A JP 2023065062 A JP2023065062 A JP 2023065062A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
artificial leather
fiber
sheet
fibers
less
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2021175633A
Other languages
English (en)
Inventor
慶一郎 阪田
Keiichiro Sakata
大介 弘中
Daisuke Hironaka
義幸 田所
Yoshiyuki Tadokoro
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Asahi Kasei Corp
Original Assignee
Asahi Kasei Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Asahi Kasei Corp filed Critical Asahi Kasei Corp
Priority to JP2021175633A priority Critical patent/JP2023065062A/ja
Publication of JP2023065062A publication Critical patent/JP2023065062A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Synthetic Leather, Interior Materials Or Flexible Sheet Materials (AREA)

Abstract

Figure 2023065062000001
【課題】図柄保持性に優れる、任意の図柄が付与されたスエード調人工皮革、及びその製法の提供。
【解決手段】外表面を構成する外表面繊維層と高分子弾性体を少なくとも含む起毛調外観を有するスエード調人工皮革であって、該外表面が、少なくとも1色以上の着色部を有し、該外表面が、該着色部により構成される図柄を有し、該着色部において、該外表面繊維層が、該外表面から厚み方向に0.30mm以上の深さまで連続して着色されており、かつ、該外表面繊維層が、平均直径2.0μm以上4.5μm以下の極細繊維により構成されている、スエード調人工皮革、並びに該スエード調人工皮革の製法。
【選択図】図1

Description

本発明は、人工皮革及びその製法に関する。
繊維で構成される繊維ウェブを交絡することによって形成される繊維シートを主材として構成される人工皮革は、イージーケア、機能性、均質性等、天然皮革では実現が難しい優れた特徴を有しており、衣類、靴、鞄、更に、インテリア用、自動車用、航空機用、鉄道車両用等のシートの表皮材及び内装材、リボン、ワッペン基材等の服飾材、等に好適に用いられている。
それらの中でも、自動車用シートなどの表皮材や内装材には、独自の意匠性を持たせる手段として、任意の色調や図柄を付与することが求められている。例えば、人工皮革に任意の色調を付与する手段としては、液流染色機などによる染色が一般的である。起毛面を有する起毛調人工皮革を液流染色機で染色すれば、染色レシピに応じて任意の色に染色でき、さらに、液流染色の揉み効果により、高級感のある柔軟な風合いやスエード調の起毛感を得ることができる。他方、液流染色機での染色は、基材を均一な染色液に含浸した状態で染色するため、得られる人工皮革の全体が単一色で染色される。尚、外表面とは、その素材などが製品として使用される際に接触又は視認されることが想定される面(例えば、自動車用シートの場合、人体や衣服と接触する面)である。
人工皮革に任意の図柄を付与する手段としては、インクジェット印刷が検討されている。以下の特許文献1では、1デニール以下の極細繊維を含有する繊維構造物へのインクジェット印刷に関して述べられている。インクジェット印刷を用いれば、前記繊維構造物の外表面に任意の図柄を印刷できる。また、極細繊維の十分な染色には多量の染料が必要であるが、インクジェット印刷は繊維構造物の外表面の着色に限られるため、染料の使用量を低減できることが記載されている。
以下の特許文献2では、顔料で人工皮革となるシート状物の全体を単一色で一様に着色した後、前記シート状物の外表面をインクジェット印刷している。これにより、インクジェット印刷の問題の一つである、端部における未着色繊維の露出を回避することができる。また、摩耗によりインクジェット印刷された外表面が削られた場合、摩耗後の摩耗面には顔料により着色された繊維層が露出するため、品位を損ないづらいことが記載されている。
特公平7-88635号公報 特開2018-127736号公報
インクジェット印刷により任意の図柄が付与された人工皮革においては、外表面が摩擦により削られても、摩耗前の外表面と同様の図柄が維持されることが求められる。本明細書中、摩耗後の外表面が、摩耗前の外表面と同様の図柄を維持する性能のことを図柄保持性ともいう。
特許文献1と2では、摩耗後の外表面における図柄の維持(図柄保持性)に関しては検討されていない。また、特許文献2では、顔料の定着にバインダーを用いており、得られる人工皮革が硬い風合いとなるため、改善の余地がある。

かかる従来技術の水準に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、図柄保持性に優れる、任意の図柄が付与された人工皮革、及びその製法を提供することである。
前記課題を解決すべく、本発明者らは鋭意研究し実験を重ねた結果、インクジェット印刷により任意の図柄が付与された人工皮革において、外表面から厚み方向に所定の深さ以上に着色部を連続して存在させ、かつ、着色部における繊維層を構成する繊維の平均直径を所定の範囲にすることで、摩耗面における未着色繊維又は着色ムラの露出が抑制され、摩耗前の外表面と同様の図柄が維持される、すなわち図柄保持性が向上することを予想外に見出し、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
[1]外表面を構成する外表面繊維層と高分子弾性体を少なくとも含む起毛調外観を有するスエード調人工皮革であって、
該外表面が、少なくとも1色以上の着色部を有し、
該外表面が、該着色部により構成される図柄を有し、
該着色部において、該外表面繊維層が、該外表面から厚み方向に0.30mm以上の深さまで連続して着色されており、かつ、
該外表面繊維層が、平均直径2.0μm以上4.5μm以下の極細繊維により構成されている、スエード調人工皮革。
[2]前記極細繊維がポリエステル繊維である、前記[1]に記載のスエード調人工皮革。
[3]剛柔値が28cm以下である、前記[1]又は[2]に記載のスエード調人工皮革。
[4]前記スエード調人工皮革が、少なくとも織編物であるスクリムと前記外表面繊維層を含む2層以上から構成されるシート状物である、前記[1]~[3]のいずれかに記載のスエード調人工皮革。
[5]以下の工程:
(1)平均直径2.0μm以上4.5μm以下の極細繊維から繊維ウェブを形成する工程;
(2)得られた繊維ウェブを交絡して、繊維シートを得る工程;
(3)場合により、得られた繊維シートの外表面を起毛する工程;
(4)得られた繊維シートに高分子弾性体を充填して、シート状物を得る工程;
(5)前記工程(3)を実施しなかった場合、前記工程(4)で得られたシート状物の外表面を起毛する工程;
(6)得られたシート状物に、該外表面から厚み方向に0.30mm以上の深さまで連続して、インクジェット印刷する工程;及び
(7)インクジェット印刷されたシート状物を還元洗浄して、図柄を有する人工皮革を得る工程;
を含む、前記[1]~[4]のいずれかに記載のスエード調人工皮革の製造方法。
本発明に係る人工皮革は、図柄保持性に優れる、任意の図柄が付与された人工皮革であり、インテリア用、自動車用、航空機用、鉄道車両用等のシートの表皮材又は内装材等、服飾製品等に好適に利用可能である。
着色部深さ測定の概略図である。 繊維平均直径測定の概略図である。 インクジェット印刷の図柄Aである。
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明するが、本発明は実施形態に限定されるものではない。また、本開示の各種値は、特記がない限り、本開示の実施例の項に記載される方法又はこれと同等であることが当業者に理解される方法で得られる値である。
<人工皮革>
本発明の一の実施形態は、外表面を構成する外表面繊維層と高分子弾性体を少なくとも含む起毛調外観を有するスエード調人工皮革であって、
該外表面が、少なくとも1色以上の着色部を有し、
該外表面が、該着色部により構成される図柄を有し、
該着色部において、該外表面繊維層が、該外表面から厚み方向に0.30mm以上の深さまで連続して着色されており、かつ、
該外表面繊維層が、平均直径2.0μm以上4.5μm以下の極細繊維により構成されている、スエード調人工皮革である。
本明細書中、「人工皮革」とは、家庭用品品質表示法に準じ「基材に特殊不織布(ランダム三次元立体構造を有する繊維層を主とし、ポリウレタン(PU)樹脂又はそれに類する可撓性を有する高分子弾性体を含浸させたもの)を用いているもの」である。また、JIS-6601の定義では、人工皮革は、その外観によって、革の銀面様外観を持つ「スムーズ」と、革のスエード、ベロア等の外観を持つ「ナップ」に分類されるが、本実施形態の人工皮革は「ナップ」に分類されるもの(すなわち、起毛調外観を有するスエード調人工皮革)に関するものである。スエード調外観は、人工皮革の外表面(表(おもて)面ともいう)をサンドペーパー等でバフィング処理(起毛処理)することにより形成することができる。尚、本明細書中、人工皮革の外表面とは、人工皮革が使用される際に外部に露出する表面(例えば、椅子用途の場合は人体または衣服と接触する側の表面)である。一態様において、スエード調人工皮革の場合には、人工皮革の外表面が、バフィング加工等により起毛又は立毛されている。これらのうち、本発明はスエード調人工皮革に関する。
本実施形態の人工皮革を構成する繊維としては、合成繊維を用いることができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維のほか、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12等のポリアミド系繊維等の合成繊維が人工皮革を構成する繊維として好適である。それらの中でも、ポリエステル繊維は、カーシート分野等の、耐久性が要求される用途を考慮すると、直射日光に長時間曝露しても繊維自身が黄変等せず、染色堅牢度に優れている点で好ましい。また、環境負荷を低減するという観点から、ケミカルリサイクル若しくはマテリアルリサイクルされたポリエチレンテレフタレート、又は植物由来原料を使ったポリエチレンテレフタレート等が更に好ましい。
本実施形態の人工皮革は、外表面に着色部を有する。着色部とは、着色された繊維で構成されていることにより、又は、繊維のバインダーである高分子弾性体が着色剤を含むことにより、着色されていることが目視により判別できる部分である。このうち繊維の着色は、繊維表面に固着又は繊維内部に拡散浸透した着色剤に起因する。着色剤としては、直接染料、硫化染料、反応染料、酸性染料、含金(金属錯塩)染料、分散染料、カチオン染料などの各種染料や顔料、あるいはそれらを含む混合物(例:インク)などが挙げられ、その種類に限定されない。着色に用いる機器としては、液流染色機やウィンス染色機、チーズ染染色機、ジッガー染色機などの各種染色機や、インクジェット印刷機やローラー捺染機などの各種捺染機が挙げられる。尚、本明細書中では、「着色」は着色剤の種類に拘わらず着色全般を指し、「染色」は使用される機器に関わらず染料を含む着色剤を用いた着色を指す。
本実施形態の人工皮革は、外表面に少なくとも1色以上の着色部を有し、その着色部により図柄が構成される。より具体的には、図柄は、1つの着色部と、それと異なる色の着色部又は非着色部(未染色繊維の色を有する)との色差によってその輪郭が形成される。尚、「色差」とは、各色が相互に異なることを指す。具体的には、色が2種類の場合(色Aと色B)、「色差」とは、各色における任意の2点(点Aと点B)のL*、a*、b*(後述)について、以下の式(1)、式(2)、及び式(3)のうち少なくともいずれか1つの式を満たすことを指す。
|L* A-L* B|>5 …式(1)
|a* A-a* B|>5 …式(2)
|b* A-b* B|>5 …式(3)
色が3種類以上の場合、「色差」とは、すべての2色の組み合わせについて、それぞれ、色Aと色Bとして、前記式(1)、式(2)、及び式(3)のうち少なくともいずれか1つの式を満たすことを指す。
また、例えば、色の境界が複雑に入り組む場合や色の境界が明瞭ではない場合(グラデーションなど)といった、測色機(後述)により各色のL*、a*、b*を再現性良く測定することが困難であるときには、人工皮革の外表面における着色部上で任意の点Aを設定し、点Aを中心とした直径4cmの円周上(且つ前記着色部上)で、且つ、各点を結ぶ線分が正三角形をなす任意の3点(点B1、点B2、及び点B3)を選び、点Aと3つの点Bとの3つの組み合わせが、いずれも前記の式(1)、式(2)、及び式(3)のうち少なくともいずれか1つの式を満たすことを指す。
本実施形態の人工皮革の外表面の着色部上のある点におけるL*、a*、及び、b*は、分光測色計(KONICA MINOLTA製「SPECTROPHOTOMETER CM-5」)を用いた下記条件での測色により得ることができる。
測定タイプ:反射測定(Ref)
測定径:φ8mm
SCI/SCE:SCE(Excluded)
表色系:L*a*b*ΔE*ab
視野:10°
主光源:D65
第2光源:なし
自動白色校正:ON
尚、前記L*、a*、及び、b*は、1点につき5回連続測定した算術平均値とする。
「図柄」とは、1つの着色部と、それと異なる色の着色部又は非着色部(未染色繊維の色を有する)との「色差」によって形成される輪郭が描く図形やパターンである。図柄は、例えば、縞状、格子状、又はそれらのような直線の輪郭からなる幾何模様、マーブルなど曲線の輪郭を有する模様、文字や記号、動植物や風景などのイラストや写真である。尚、図柄の輪郭が繊維外形に一致する場合、例えば、染色の度合いの異なる複数種の繊維からなるメランジ調は、図柄ではない。
本実施形態の人工皮革の外表面繊維層は、着色部において外表面から厚み方向に0.30mm以上の深さまで連続して着色されている。前記外表面繊維層が着色部において外表面から厚み方向に0.30mm以上の深さまで連続して着色されていることで、外表面が摩擦により削られて露出した摩耗面に未着色繊維がなく外表面と同様の図柄となる。前記外表面繊維層が着色部において外表面から厚み方向に0.30mm以上の深さまで連続して着色されるには、例えば、インクジェット印刷時にインクの浸透性を高める手法を採用すること(後述)が好ましい。
尚、人工皮革の全体が色Aで着色された人工皮革に、別の色Bで着色部を設けた場合は、色Bが外表面から厚み方向に0.30mm以上の深さまで連続して着色されていることを要するものとする。
人工皮革の外表面繊維層が着色部において外表面から連続して着色される厚みは、好ましくは0.40mm以上、より好ましくは0.50mm以上である。尚、外表面繊維層が着色部において外表面から連続して着色される厚みの上限は特に定められていないが、耐摩耗性発現とインク量低減(経済性)の観点から、0.70mm以下であることが好ましい。
本実施形態の人工皮革の外表面の着色部における繊維層を構成する極細繊維の平均直径は、2.0μm以上4.5μm以下である。前記平均直径を2.0μm以上とすることで、人工皮革を構成する繊維層の繊維間空隙が適度な大きさになり、インクジェット印刷時に着色剤が外表面から厚み方向により浸透しやすくなるため、図柄保持性に優れる。また、耐摩耗性、染色による発色性、及び耐光堅牢度が良好な人工皮革が得られる。他方、前記平均直径を4.5μm以下とすることで、人工皮革を構成する繊維層の繊維間空隙がより均一に分布し、インクジェット印刷時に着色剤が外表面から厚み方向により均一に浸透するため、外表面が摩擦により削られた摩耗面の着色ムラが抑えられ、図柄保持性に優れる。また、繊維の本数密度が大きいため、緻密感が高く、表面の触感が滑らかで、表面品位がより良好な人工皮革が得られる。人工皮革の外表面の着色部における繊維層を構成する極細繊維の平均直径は、好ましくは2.0μm以上4.3μm以下、より好ましくは2.0μm以上4.1μm以下である。
また、本実施形態の人工皮革の外表面繊維層の厚みは、0.30mm以上が好ましい。前記外表面繊維層の厚みが0.30mm以上であることで、前記外表面繊維層を構成する十分な数の極細繊維が相互に交絡し、外表面が摩擦により削られにくい。前記外表面繊維層の厚みは、より好ましくは0.50mm以上、さらに好ましくは0.70mm以上である。尚、外表面繊維層の厚みは、柔軟な風合いの観点から、2.0mm以下であることが好ましい。
<人工皮革の製造方法>
本発明の他の実施形態は、以下の工程:
(1)平均直径2.0μm以上4.5μm以下の極細繊維から繊維ウェブを形成する工程;
(2)得られた繊維ウェブを交絡して、繊維シートを得る工程;
(3)場合により、得られた繊維シートの外表面を起毛する工程;
(4)得られた繊維シートに高分子弾性体を充填して、シート状物を得る工程;
(5)前記工程(3)を実施しなかった場合、前記工程(4)で得られたシート状物の外表面を起毛する工程;
(6)得られたシート状物に、該外表面から厚み方向に0.30mm以上の深さまで連続して、インクジェット印刷する工程;及び
(7)インクジェット印刷されたシート状物を還元洗浄して、図柄を有する人工皮革を得る工程;
を含む、前記[1]~[4]のいずれかに記載のスエード調人工皮革の製造方法である。
以下、順番に各工程を説明する。
尚、本明細書中では、繊維を不織布状に形成したものを繊維ウェブ、繊維ウェブを交絡工程により一体化したものを繊維シート、繊維シートに高分子弾性体を充填したものをシート状物、シート状物を着色加工したものを人工皮革と区別する。尚、人工皮革を構成する繊維層は、単一であることに限定されない。例えば、繊維ウェブ、スクリム、繊維ウェブの順に積層された3層構造の積層体を交絡工程により一体化した繊維シートを用いて得られた人工皮革は、スクリムを隔てた2層の繊維層で構成される。また、人工皮革が2層以上の繊維層を含む場合は、それらの構成が同一であることに限定されない。例えば、滑らかな触感が得られやすい極細繊維で外表面側の繊維層を構成し、直径が太く滑らかな触感が得られ難い難燃繊維で外表面の逆面側の繊維層を構成することで、外表面の滑らかな触感を維持しつつ難燃性が付与された人工皮革を得ることができる。
<繊維から繊維ウェブを形成する工程>
平均直径2.0μm以上4.5μm以下の極細繊維の繊維ウェブの製造方法としては、紡糸直結型の方法(例えば、スパンボンド法及びメルトブローン法)、又は、短繊維を用いて繊維ウェブを形成する方法(例えば、カーディング法、エアレイド法等の乾式法、及び、抄造法等の湿式法)が挙げられ、いずれも好適に用いることができる。尚、直接紡糸繊維を短繊維化した原料を用いて抄造法で製造される繊維ウェブは、目付斑が小さく均一性に優れ、且つ、均一な起毛が得られ易いため、人工皮革の表面品位を向上させる点で好適である。
短繊維(ステープル)を用いた方法を選択する場合の短繊維長は、乾式法(カーディング法、エアレイド法等)で、好ましくは13mm以上102mm以下、より好ましくは25mm以上76mm以下、更に好ましくは38mm以上76mm以下であり、湿式法(抄造法等)で、好ましくは1mm以上30mm以下、より好ましくは2mm以上25mm以下、更に好ましくは3mm以上20mm以下である。湿式法(抄造法等)に用いられる短繊維の、長さ(L)と直径(D)との比であるアスペクト比(L/D)は、好ましくは500以上2000以下、より好ましくは700以上1500以下である。このようなアスペクト比は、短繊維を水中に分散してスラリーを調製する際の該スラリー中での短繊維の分散性及び開繊性が良好であること、繊維層強度が良好であること、乾式法と較べて繊維長が短く且つ単繊維分散し易いため、摩擦によってピリングと呼ばれる毛玉状の外観になり難いこと、から好ましい。例えば、直径4μmの短繊維の繊維長は、好ましくは2mm以上8mm以下、より好ましくは3mm以上6mm以下である。
人工皮革を構成する繊維層を構成する繊維、すなわち、繊維ウェブを構成する繊維としては、海島型複合繊維や直接紡糸法により製造された繊維を用いることができる。直接紡糸法により製造された繊維は、前記繊維が単繊維分散している繊維層が得られ易い点で好ましい。
海島型複合繊維(例えば、共重合ポリエステルを海成分、レギュラーポリエステルを島成分に用いたもの等)等の極細繊維発生型繊維を使用し、細繊化処理(海島型複合繊維の海成分を溶解、分解等によって除去)することによって得られる繊維は、繊維層では繊維束として存在することになり、単繊維分散していない。一例として、島成分が単繊維繊度0.2dtex相当で24島/1fである海島型複合短繊維を作製し、該海島型複合短繊維で繊維ウェブを形成した後、ニードルパンチ処理等で繊維シートを得、前記繊維シートにPU樹脂を充填した後、海成分を溶解又は分解することで、単繊維繊度が0.2dtex相当の極細繊維で構成されるシート状物が得られる。この場合、単繊維が24本収束した繊維束の状態(収束状態では4.8dtex相当)で繊維層に存在することになる。
本明細書中、繊維が「単繊維分散している」とは、繊維が、例えば、上記の海島型複合繊維中の島成分のような繊維束を形成していないことを意味する。繊維層が、単繊維分散している繊維から構成されている場合、表面平滑性に優れ、例えば、バフィング加工等によって起毛させた人工皮革の外表面の起毛が均一になり易く、且つ、PU樹脂の付着率が比較的少ない場合でも、摩擦によってピリングと呼ばれる毛玉状の外観が生じ難いため、より優れた表面品位と耐摩耗性とを有する人工皮革が得られる。また、繊維が単繊維分散している場合、繊維間隔が狭く均一になり易いため、PU樹脂が微細な形態で付着していても、良好な耐摩耗性が得られ、インクジェット印刷においては、着色ムラが生じにくい。繊維を単繊維分散させる方法としては、直接紡糸法により製造された繊維を抄造法により繊維ウェブ化する方法、海島型複合繊維で作製された繊維シートの海成分を溶解又は分解して極細繊維束を発生させた後に、極細繊維束面に水流分散処理を施すことで、極細繊維束の単繊維化を促進する方法等が挙げられる。
<繊維ウェブを交絡し繊維シートを得る工程>
繊維ウェブを繊維シートに一体化する交絡方法としては、ニードルパンチやスパンレース法と呼ばれる水流交絡処理を採用することができる。これらの交絡方法により、1枚の繊維ウェブから1枚の繊維シートが得られるが、複数の繊維ウェブに由来する機能を両立した1枚の人工皮革を得る等の目的で、2枚以上の繊維ウェブから成る積層体を一体化して1枚の繊維シートを得てもよい。また、繊維シート及び繊維シートを用いて得られる人工皮革の寸法安定性、引張強度、引裂強度等の機械強度を高める等の目的で、1枚以上の繊維ウェブとスクリムとの積層体を一体化して1枚の繊維シートを得てもよい。前記積層体を交絡させる場合、ニードルパンチや水流交絡処理は、外表面側と外表面の逆面側の双方から施すことが、繊維ウェブとスクリムとの間の剥離強度が高くなりやすい点で好ましい。また、例えば、繊維ウェブ、スクリム、繊維ウェブの順に積層された3層構造の積層体の場合においても、外表面側と外表面の逆面側の双方から交絡処理を施してもかまわない。
ニードルパンチ法では、使用される針のバーブ本数は1~9本が好ましい。バーブの本数を1本以上とすることにより、交絡効果が得られ、且つ、繊維の損傷を抑えることができる。バーブ数を9本以下とすることにより、繊維の損傷を小さくすることができ、また、人工皮革に残る針跡を減らすことができるので、製品の外観を向上させることができる。
繊維の交絡性及び製品外観への影響を考慮すると、バーブのトータルデプス(バーブの先端部からバーブ底部までの長さ)は0.05mm以上0.10mm以下であることが好ましい。バーブのトータルデプスが0.05mm以上であることで、繊維への良好な引掛かりが得られるため効率的な繊維交絡が可能となる。また、バーブのトータルデプスが0.10mm以下であることで、人工皮革に残る針跡が低減され、品位が向上する。バーブ部の強度と繊維交絡とのバランスを考慮すると、バーブのトータルデプスは、0.06mm以上0.08mm以下であることがより好ましい。
ニードルパンチ法により繊維を絡合させる場合は、パンチ密度の範囲を300本/cm2以上6000本/cm2以下とすることが好ましく、1000本/cm2以上6000本/cm2以下とすることがより好ましい。
繊維シートが海島型複合繊維から成る場合は、例えば、98℃の温度の水中に2分間浸漬させて収縮させ、100℃の温度で5分間乾燥させて、脱海前の繊維シートとすることができる。
脱海処理は、溶剤中に海島型繊維を浸漬し、窄液することによって行うことができる。海成分を溶解する溶剤としては、海成分が共重合ポリエステルやポリ乳酸の場合には水酸化ナトリウムなどのアルカリ水溶液を用いることができる。工程の環境配慮の観点からは、水酸化ナトリウムなどのアルカリ水溶液での脱海処理が好ましい。
尚、水流交絡処理は、ニードルパンチで発生する金属混入のおそれがなく、また、繊維シートをより緻密化できる点で好適である。また、2枚以上の繊維ウェブから1枚の繊維シートを得る場合、前記繊維ウェブは同じ繊維ウェブを用いても構わない。
スクリムは、例えば、織編物であることができ、染色による同色性の点から、人工皮革の繊維層を構成する繊維と同じポリマー系であることが好ましい。例えば、前記繊維がポリエステル系であれば、スクリムを構成する繊維もポリエステル系であることが好ましく、前記繊維がポリアミド系であれば、スクリムを構成する繊維もポリアミド系であることが好ましい。編物の場合のスクリムは、22ゲージ以上28ゲージ以下で編み上げたシングルニットが好ましい。スクリムが織物の場合、編物よりも高い寸法安定性及び強度が実現できる。織物の組織は、平織、綾織、朱子織等であってよいが、コスト面、及び交絡性等の工程面から、平織が好ましい。
織物を構成する糸条は、モノフィラメントでもマルチフィラメントでもよい。糸条の単繊維繊度は、柔軟な人工皮革が得られ易い点で5.5dtex以下が好ましい。織物を構成する糸条の形態としては、ポリエステル、ポリアミド等のマルチフィラメントの生糸、又は仮撚り加工を施した加工糸等に撚数0~3000T/mで撚りを施したものが好ましい。該マルチフィラメントは通常のものでよく、例えば、ポリエステル、ポリアミド等の33dtex/6f、55dtex/24f、83dtex/36f、83dtex/72f、110dtex/36f、110dtex/48f、167dtex/36f、166dtex/48f等が好ましく用いられる。織物を構成する糸条は、マルチフィラメントの長繊維であってよい。織物における糸条の織密度は、柔軟で且つ機械強度に優れる人工皮革を得る点で、30本/インチ以上150本/インチ以下が好ましく、更に好ましくは40本/インチ以上100本/インチ以下である。良好な機械強度と適度な風合いとを具備するためには、織物の目付は20g/m2以上150g/m2以下が好ましい。尚、織物における仮撚り加工の有無、撚数、マルチフィラメントの単繊維繊度、織密度等は、繊維層の構成繊維との交絡性、人工皮革の柔軟性に加え、縫目強力、引裂強力、引張強伸度、伸縮性等の機械物性にも寄与するため、目標とする物性及び用途に応じて適宜選択すればよい。
<繊維シート又はシート状物の外表面を起毛する工程(工程(3)又は(5))>
この工程では、繊維シート又はシート状物の外表面に立毛を形成するために、起毛処理を行うことができる。起毛処理は、サンドペーパーやロールサンダーなどを用いて、研削する方法などにより施すことができる。
起毛処理の前に、繊維シート又はシート状物にシリコーン分散液などの滑剤を付与してもよい。繊維シート又はシート状物にシリコーン分散液などの滑剤を付与することにより、表面研削による起毛が容易に可能となり、表面品位が非常に良好となる。また、起毛処理の前に帯電防止剤を付与することは、研削によって繊維シート又はシート状物から発生した研削粉がサンドペーパー上に堆積しにくくする上で好ましい態様である。
<繊維シートに高分子弾性体を充填しシート状物を得る工程>
この工程では、高分子弾性体が充填されたシート状物を得るために、繊維シートに高分子弾性体を充填することができる。高分子弾性体としては、ポリウレタン(PU)樹脂が好ましく、PU樹脂を微細な形態で繊維シートに充填し易く、少量の付着でも風合い及び機械物性等の人工皮革としての要求性能が得られ易く、且つ、有機溶媒を使用する必要がなく環境負荷を低減できる点から、水分散型PU樹脂がより好ましい。すなわち、水分散型PU樹脂は、PU樹脂が所望の粒子径で分散した分散液の形態で繊維シートに含浸させることができるため、当該粒子径の制御によってPU樹脂の繊維シート中での充填形態を良好に制御できる。
水分散型PU樹脂を用いる場合には、繊維シートにPU樹脂分散液を含浸後、乾燥させることにより、PU樹脂が充填されたシート状物を得る。典型的な態様において、PU樹脂は、分散液(例えば、水分散型の場合)等の含浸液の形態で含浸される。含浸液中のPU樹脂固形分の濃度は、例えば、3質量%以上35質量%以下であることができる。繊維シート100質量%に対するPU樹脂の比率は、5質量%以上50質量%以下となるように含浸液の調製及び繊維シートへの含浸を行うことが好ましい。繊維シート100質量%に対するPU樹脂の比率が5質量%以上であることで、PU樹脂が繊維同士のバインダーとして機能し、人工皮革の機械強度を得られ易い。また、繊維シート100質量%に対するPU樹脂の比率を50質量%以下とすることで、PU樹脂が適度なサイズとなりやすく、インクジェット印刷におけるインクの浸透が妨げられにくくなり、着色部の着色ムラを抑えられる。繊維シート100質量%に対するPU樹脂の比率は、より好ましくは5質量%以上40質量%以下、さらに好ましくは5質量%以上30質量%以下である。
[水分散型ポリウレタン樹脂]
水分散型PU樹脂は、界面活性剤を用いて強制的に分散・安定化させる強制乳化型PU樹脂と、PU分子構造中に親水性構造を有し、界面活性剤が存在しなくても水中に分散・安定化する自己乳化型PU樹脂に分類される。本実施形態ではいずれを用いてもよいが、後述する感熱凝固性を付与する観点から、強制乳化型PU樹脂を用いることが好ましい。
また、水分散型PU樹脂分散液としては、感熱凝固性を有するものが好ましい。感熱凝固性を有する水分散型PU樹脂分散液を用いることにより、繊維シートの厚み方向に均一にPU樹脂を付与することができる。感熱凝固性とは、PU樹脂分散液を加熱した際に、ある温度(感熱凝固温度)に達するとPU樹脂分散液の流動性が減少し、凝固する性質のことを言う。PU樹脂が充填されたシート状物の製造においてはPU樹脂分散液を繊維シートに付与後、それを乾熱凝固、湿熱凝固、熱水凝固、あるいはこれらの組み合わせにより凝固させ、乾燥することにより繊維シートにPU樹脂を付与する。感熱凝固性を示さない水分散型PU樹脂分散液を凝固させる方法としては乾熱凝固が工業的な生産において現実的であるが、その場合、シート状物の表層にPU樹脂が集中するマイグレーション現象が発生し、PU樹脂が充填されたシート状物の風合いは硬化する傾向にある。
水分散型PU樹脂分散液の感熱凝固温度は、40℃以上90℃以下であることが好ましい。感熱凝固温度を40℃以上とすることにより、PU樹脂分散液の貯蔵時の安定性が良好となり、操業時のマシンへのPU樹脂の付着等を抑制することができる。また、感熱凝固温度を90℃以下とすることにより、繊維シート中でのPU樹脂のマイグレーション現象を抑制することができる。
感熱凝固温度を前記のとおりとするために、適宜、凝固促進剤を添加してもよい。凝固促進剤としては、例えば、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム等の無機塩や過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル等のラジカル反応開始剤が挙げられる。
水分散型PU樹脂分散液を、繊維シートに含浸、塗布等し、乾熱凝固、湿熱凝固、熱水凝固、あるいはこれらの組み合わせによりPU樹脂を凝固させることができる。湿熱凝固の温度は、PU樹脂の感熱凝固温度以上とし、40℃以上200℃以下であることが好ましい。湿熱凝固の温度を40℃以上、より好ましくは80℃以上とすることにより、PU樹脂の凝固までの時間を短くしてマイグレーション現象をより抑制することができる。他方、湿熱凝固の温度を200℃以下、より好ましくは160℃以下とすることにより、PU樹脂の熱劣化を防ぐことができる。熱水凝固の温度は、PU樹脂の感熱凝固温度以上とし、40℃以上100℃以下とすることが好ましい。熱水中での熱水凝固の温度を40℃以上、より好ましくは80℃以上とすることにより、PU樹脂の凝固までの時間を短くしてマイグレーション現象をより抑制することができる。乾熱凝固温度、及び乾燥温度は、80℃以上180℃以下であることが好ましい。乾熱凝固温度、及び乾燥温度を80℃以上、より好ましくは90℃以上とすることにより、生産性に優れる。他方、乾熱凝固温度、及び乾燥温度を180℃以下、より好ましくは160℃以下とすることにより、PU樹脂の熱劣化を防ぐことができる。
水分散型PU樹脂には、耐湿熱性、耐摩耗性、耐加水分解性等の耐久性を向上させる目的で架橋剤を併用することができる。液流染色加工時の耐久性を向上させ、繊維の脱落を抑制し、優れた表面品位を得るために、架橋剤を添加することが好ましい。架橋剤は、PU樹脂に対し、添加成分として添加する外部架橋剤でもよく、また、PU樹脂構造内に予め架橋構造を採ることができる反応基を導入する内部架橋剤でもよい。
人工皮革に使用される水分散型PU樹脂は、一般的には染色加工耐性を具備させるために架橋構造をとっているため、N,N-ジメチルホルムアミド等の有機溶剤に溶け難い傾向にある。そのため、例えば、人工皮革をN,N-ジメチルホルムアミドに室温で12時間浸漬させて、PU樹脂の溶解処理を行った後、電子顕微鏡等で断面を観察した際に、繊維形状を有しない樹脂状物が残存していれば、該樹脂状物は水分散型PU樹脂であると判断できる。
PU樹脂としては、ポリマージオールと有機ジイソシアネートと鎖伸長剤との反応により得られるものが好ましい。
ポリマージオールとしては、例えば、ポリカーボネート系、ポリエステル系、ポリエーテル系、シリコーン系、フッ素系等のジオールを採用することができ、これらの2種以上を組み合わせた共重合体を用いてもよい。耐加水分解性の観点からは、ポリカーボネート系若しくはポリエーテル系又はこれらの組み合わせのジオールが好ましく用いられる。また、耐光性及び耐熱性の観点からは、ポリカーボネート系、ポリエステル系、又はこれらの組み合わせのジオールが好ましく用いられる。さらに、コスト競争力の観点からは、ポリエーテル系、ポリエステル系、又はこれらの組み合わせのジオールが好ましく用いられる。
ポリカーボネート系ジオールは、アルキレングリコールと炭酸エステルとのエステル交換反応、ホスゲン又はクロル蟻酸エステルとアルキレングリコールとの反応等によって製造することができる。
アルキレングリコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール等の直鎖アルキレングリコール;ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール等の分岐アルキレングリコール;1,4-シクロヘキサンジオール等の脂環族ジオール;ビスフェノールA等の芳香族ジオール;等が挙げられ、これらを1種又は2種以上の組み合わせで使用できる。
ポリエステル系ジオールとしては、各種低分子量ポリオールと多塩基酸とを縮合させて得られるポリエステルジオールを挙げることができる。
低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,8-オクタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノールから選ばれる一種又は二種以上を使用することができる。また、ビスフェノールAに各種アルキレンオキサイドを付加させた付加物も使用可能である。
また、多塩基酸としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、及びヘキサヒドロイソフタル酸からなる群から選ばれる一種又は二種以上が挙げられる。
ポリエーテル系ジオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、又はそれらを組み合わせた共重合ジオールを挙げることができる。
ポリマージオールの数平均分子量は、500以上4000以下であることが好ましい。数平均分子量を500以上、より好ましくは1500以上とすることにより、風合いが硬くなることを防ぐことができる。また、数平均分子量を4000以下、より好ましくは3000以下とすることにより、PU樹脂の強度を良好に維持することができる。
有機ジイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の脂肪族系ジイソシアネート;ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等の芳香族系ジイソシアネート;が挙げられ、またこれらを組み合わせて用いてもよい。中でも、耐光性の観点から、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート等の脂肪族系ジイソシアネートが好ましく用いられる。
鎖伸長剤としては、エチレンジアミン及びメチレンビスアニリン等のアミン系の鎖伸長剤、又はエチレングリコール等のジオール系の鎖伸長剤を用いることができる。また、ポリイソシアネートと水とを反応させて得られるポリアミンを鎖伸長剤として用いることもできる。
PU樹脂(例えば、水分散型PU樹脂)を含む含浸液には、必要に応じて安定剤(紫外線吸収剤、酸化防止剤等)、難燃剤、帯電防止剤、顔料(カーボンブラック等)等の添加剤を添加してよい。人工皮革中に存在するこれら添加剤の総量は、PU樹脂100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上10.0質量部以下、又は0.2質量部以上8.0質量部以下、又は0.3質量部以上6.0質量部以下であってよい。尚、このような添加剤は、人工皮革のPU樹脂中に分布することになる。本開示において、PU樹脂のサイズ及び繊維シートに対する質量比率について言及するときの値は添加剤(用いる場合)も含んでの値を意図する。
<シート状物に、外表面から厚み方向に0.30mm以上の深さまで連続して、インクジェット印刷する工程>
本実施形態の人工皮革は、感性面の価値(すなわち、視覚効果)を高める目的で、外表面が着色されている。着色剤は、繊維シートを構成する繊維の種類にあわせて選択すればよく、例えば、ポリエステル系繊維であれば分散染料を用いることができ、ポリアミド系繊維であれば酸性染料や含金染料を用いることができ、更にそれらの組み合わせを用いることができる。分散染料で染色した場合は、染色後に還元洗浄を行ってもよい。染色方法としては、染色加工業者に良く知られた通常の方法を用いることができる。染色方法としては、シート状物を染色すると同時に揉み効果を与えてシート状物を柔軟化することができることから、液流染色機を用いることができるが、人工皮革の外表面に任意の図柄を付与できる点で、インクジェット印刷が好ましい。インクジェット印刷はインクジェット印刷機を用いて行うことができる。
インクジェット印刷に用いられるインクは、着色剤として少なくとも染料を含んでもよい。インクは、着色剤を配合して所定の色に調製されている。
染料としては、発色性や耐光性に優れる点から分散染料が好ましい。分散染料の具体例としては、例えば、ベンゼンアゾ系染料(モノアゾ、ジスアゾなど)、複素環アゾ系染料(チアゾールアゾ、ベンゾチアゾールアゾ、キノリンアゾ、ピリジンアゾ、イミダゾールアゾ、チオフェンアゾなど)、アントラキノン系染料、縮合系染料(キノフタリン、スチリル、クマリンなど)等が挙げられる。
また、インクジェット印刷に際しては、インクジェット印刷前のシート状物の外表面を前処理剤で前処理することが好ましい。前処理を施すことにより、染料の滲みを抑えてシャープな図柄を形成しやすくなり、また、濃度が高く鮮明な色の図柄を印刷することができる。
前処理剤としては、水溶性高分子、還元防止剤、pH調整剤、多価金属塩などが挙げられる。水溶性高分子の具体例としては、例えば、アルギン酸ソーダ、ローカストビーン、加工でんぷん、カルボキシメチルセルロース(CMC)などが挙げられる。還元防止剤の具体例としては、例えば、m-ニトロベンゼンスルホン酸ソーダ、塩素酸ソーダなどが挙げられる。pH調整剤の具体例としては、例えば、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、第1リン酸ソーダなどが挙げられる。多価金属塩の具体例としては、例えば、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸マグネシウム、塩化バリウムなどが挙げられる。また、上記のものに限定されるものではなく、ブリード防止剤としてジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合物、N-アジリジル-N’-アルキル尿素やワックスやキレート剤、分散剤、ポリグリセリンなどの多価アルコールなども含んでいてもよい。また、前処理剤は水を溶媒とした水溶液や分散液であっても、また、ターペンなども用いたエマルジョン(ハーフエマルジョン)であってもよい。
インクジェット印刷に先立ち、液流染色機を用いてシート状物を洗浄してもよい。液流染色機を用いてシート状物を洗浄することで、製品内の残留が好ましくない有機物や無機塩を除去でき、且つ、揉み効果により人工皮革の柔軟化を達成し易い。液流染色機を用いたシート状物の洗浄は、水で行うことができるが、例えば、難燃性等の性能の付与のため、水に薬剤や助剤等を加えても実施してもよい。
人工皮革の外表面から任意の深さまでの繊維層を着色することを目的として、インクジェット印刷時にインクの浸透性を高める手法を採用してもよい。前記手法としては、例えば、インクジェット印刷機のインク吐出部において基材の印刷面の逆面側から負圧吸引してインクを浸透させる方法を用いることができる。
インクジェット印刷後には、乾燥によりインクを基材に固着させることが好ましい。着色剤として分散染料を含むインクを用いた場合には、インクを基材に固着させた後に、乾熱又は湿熱により基材を加熱して分散染料を基材の内部に拡散させ定着させることが好ましい。
<インクジェット印刷されたシート状物を還元洗浄し人工皮革を得る工程>
ポリウレタン樹脂が充填された人工皮革は、ソーピング、及び必要に応じて還元洗浄(すなわち化学的還元剤の存在下での洗浄)を実施し、余剰染料を除去することが好ましい。
インクジェット印刷機を用い人工皮革を着色又は染色した場合は、ソーピング、及び必要に応じて還元洗浄を液流染色機で実施することが好ましい。還元洗浄を液流染色機で実施することは、製品内の残留が好ましくない有機物や無機塩を洗浄と併せて効率的に除去できる点や、揉み効果により人工皮革の柔軟化を達成し易い点で好ましい。
[人工皮革]
本実施形態の人工皮革が単一の繊維層(外表面繊維層)のみで構成される場合、繊維層を構成する繊維の目付は、耐摩耗性等の機械強度の観点から、好ましくは40g/m2以上500g/m2以下、より好ましくは50g/m2以上370g/m2以下、更に好ましくは60g/m2以上320g/m2以下である。
人工皮革が繊維層、スクリム、繊維層の順で積層された3層構造で構成される場合、外表面繊維層を構成する繊維の目付は、耐摩耗性等の機械強度の観点から、好ましくは10g/m2以上200g/m2以下、より好ましくは30g/m2以上170g/m2以下、更に好ましくは60g/m2以上170g/m2以下である。また、外表面とは逆側の繊維層を構成する繊維の目付は、コスト及び製造のしやすさの観点から、好ましくは10g/m2以上200g/m2以下、より好ましくは20g/m2以上170g/m2以下とすることができる。スクリムの目付は、機械強度、及び繊維層とスクリムとの交絡性の観点から、好ましくは20g/m2以上150g/m2以下、より好ましくは20g/m2以上130g/m2以下、更に好ましくは30g/m2以上110g/m2以下である。
PU樹脂が充填された人工皮革の目付は、好ましくは50g/m2以上550g/m2以下、より好ましくは60g/m2以上400g/m2以下、更に好ましくは70g/m2以上350g/m2以下である。
[剛柔値]
人工皮革は、剛柔値が28cm以下であることが好ましい。人工皮革の剛柔値が28cm以下であることで、柔軟な風合いとなり易い。人工皮革の剛柔値はより好ましくは27cm以下、さらに好ましくは26cm以下である。尚、人工皮革の剛柔値の下限値は特に設けないが、機械強度の観点から、20cm以上であることが好ましい。
本実施形態の人工皮革は、家具、椅子、壁材、自動車、電車、航空機などの車輛室内における座席、天井、内装などの表皮材として非常に優美な外観を有する内装材、シャツ、ジャケット、カジュアルシューズ、スポーツシューズ、紳士靴、婦人靴等の靴のアッパー、トリム等、鞄、ベルト、財布等、それらの一部に使用した衣料用資材、ワイピングクロス、研磨布、CDカーテン等の工業用資材としても好適に用いることができる。
以下、本発明を実施例、比較例に基づいて具体的に説明するが、実施例は本発明の範囲を限定するものではない。実施例及び比較例に係る繊維シートを用いた人工皮革サンプルについて、各物性、品位等を以下の手順、方法を用いて評価、判定した。
(1)人工皮革の厚み
人工皮革の厚みは、1つのサンプルにつき、相互に5cm以上離れた4点をランダムに選び、厚み測定器(尾崎製作所製「PEACOCK MODEL-H」)で測定した値の平均値とする。
(2)人工皮革断面における厚み方向の着色部の深さ
人工皮革の厚み方向断面のうち、外表面から着色部の境界までを含めた領域をランダムに10か所選ぶ。前記10領域を、画像の長辺が人工皮革の面方向と平行になるよう、マイクロスコープ(キーエンス製「VHX-950F」)を用いて倍率50倍で撮影し、10枚の画像を得る。前記10画像それぞれについて、図1に示すように、各画像がそれぞれ10等分されるよう、前記画像の短辺と平行な線分9本を各画像に作図する。前記の各線分上の、着色部と非着色部との境界を目視で決定し、前記境界から外表面までの線分上の距離Lを求め、1枚の画像につき9つの前記距離Lの算術平均値を算出する。10枚の画像の前記算術平均値から、それらの算術平均値を算出し、人工皮革断面における厚み方向の着色部の深さとする。
(3)外表面繊維層を構成する繊維の平均直径(μm)
外表面繊維層を構成する繊維の平均直径は、人工皮革の厚み方向断面を、走査型電子顕微鏡(SEM、日本電子株式会社製「JSM-5610」)を用いて倍率1500倍で撮影し、得られた1枚の撮像内の人工皮革の外表面繊維層を構成する繊維をランダムに100本選び、単繊維の断面の直径を測定して、100本の測定値の算術平均値として求める。
単繊維の断面の観察形状が円形ではない場合は、単繊維断面の最長径の中点に直交する直線上の外周間距離を繊維径とする。
図2は、繊維直径の求め方を説明する概念図である。例えば、図2のように繊維の断面Aが楕円形である場合、観察像における断面Aの最長径aの中点pに直交する直線b上の外周間距離cを繊維直径とする。
(4)人工皮革の外表面が摩擦により削られた摩耗面の図柄保持性
人工皮革の外表面の着色部から、図柄が類似する任意の2つの領域を選ぶ。そのうち1つの領域を含むサンプルを切り出し、マーチンデール試験(試験機:JamesH.Heal製「ニューマーチンデール摩耗試験機(モデル:1609(9個型))摩耗布:JamesH.Heal製「ABRASIVECLOTH1575W」)を実施し、摩擦により削られた摩耗面を含むサンプルを得る。尚、マーチンデール試験の条件は以下の回数とする。
サンプル目付200g/m2以上:摩擦回数20千回、荷重12kPa
サンプル目付200g/m2未満:摩擦回数20千回、荷重9kPa。
次に、サンプルに用いなかったもう1つの領域と比べた前記サンプルの摩耗面の図柄について、健康状態の良好な成人男性及び成人女性各10名ずつ、計20名を評価者として、目視及び官能評価によって下記の評価基準で5段階に判定する。人工皮革の外表面が摩擦により削られた摩耗面の図柄保持性は、3.0~5.0級を良好(合格)とする。
[評価基準]
5級:摩耗面の図柄が視認できる。
4級:5級と3級の間の評価である。
3級:摩耗面の図柄がやや視認できる。
2級:3級と1級の間の評価である。
1級:摩耗面の図柄が視認できない。
尚、摩耗面の図柄が残っていても、繊維が顕著に脱落する、又はピリングが著しい場合など、表面品位の観点で好ましくない場合は、等級外とする。
また、1枚のサンプルについての前記20名の評価結果の算術平均値を四捨五入した値を人工皮革の外表面が摩擦により削られた摩耗面の図柄保持性の等級とする。
(5)剛柔値の算出
サンプルを20cm×20cmの正方形にカットし測定サンプルとする。測定サンプルを水平面上に置き、正方形の頂点をA、B、C、Dとして、対角線で対面する頂点Aと頂点Cとを重ね合わせる。頂点Aを水平面に置き、頂点Cを頂点Aに重ね合わせ、次いで、頂点Cを、測定サンプルに接触させた状態で対角線ACに沿って頂点Aから徐々に遠ざけてゆき、頂点Cが測定サンプル面から離れた点を点Eとし、点Eと頂点Cとの距離を剛柔値1とする。頂点Aを頂点Bに、頂点Cを頂点Dにそれぞれ置き換えて上記と同様の手順で剛柔値2を測定する。剛柔値1と剛柔値2との算術平均値をサンプルの剛柔値とする。尚、人工皮革が単層の場合、10枚のサンプルについての平均値を風合い(剛柔値)とする。人工皮革が2層以上の構造である場合、人工皮革の外表面繊維層を上面にして測定した5枚のサンプルと、外表面の逆面側の繊維層を上面にして測定した5枚のサンプルについての平均値をサンプルの剛柔値とする。
[基材A-1]
単繊維の平均直径が3.9μmのポリエチレンテレフタレート繊維を溶融紡糸法により製造し、長さ5mmに切断した(以下、長さ5mmに切断した単繊維の平均直径が4μmのポリエチレンテレフタレート繊維を「PET極細短繊維」ともいう。)。該PET極細短繊維を水中に分散させ抄造法により目付140g/m2の繊維ウェブを製造し、外表面繊維層として用いた。
同様の方法にて、PET極細短繊維を水中に分散させ抄造法により目付60g/m2の繊維ウェブを製造し、外表面の逆面側の繊維層として用いた。
外表面繊維層と外表面の逆面側の繊維層の中間に、166dtex/48fのポリエチレンテレフタレート繊維からなる目付95g/m2のスクリム(平織物)を挿入し、3層積層体とした。
次いで、該3層積層体に対して、直進流噴射ノズルを用いた高速水流を、外表面側から4MPa、外表面の逆面側から3MPaの圧力で水流噴射し、繊維層をスクリムに絡合させて交絡一体化した後に、エアースルー式のピンテンター乾燥機を用いて100℃で乾燥して、3層構造からなる繊維シートを得た。
次に、該繊維シートの外表面を、#400のエメリペーパーを用いて起毛処理した。
続いて、以下の表1に示す水分散型ポリウレタン樹脂含浸液を前記繊維シートに含浸し、次いで、ピンテンター乾燥機を用いて130℃で加熱乾燥した後、90℃に加熱した熱水に浸漬した状態で柔布した後、乾燥することで無水芒硝を抽出、除去し、基材A-1として水分散型ポリウレタン樹脂が充填されたシート状物を得た。このシート状物の繊維総質量に対する水分散型PU樹脂の比率は10質量%であった。
Figure 2023065062000002
[基材A-2]
繊維ウェブに用いる単繊維の平均直径を3.2μm、外表面繊維層を構成する繊維ウェブの目付を80g/m2、外表面の逆面側の繊維層を構成する背にウェブの目付を30g/m2の目付とした他は、基材A-1に記載の方法に則り、基材A-2としてシート状物を得た。このシート状物の繊維総質量に対する水分散型PU樹脂の比率は10質量%であった。
[基材A-3]
繊維ウェブに用いる単繊維の平均直径を4.8μmとした他は、基材A-1に記載の方法に則り、基材A-3としてシート状物を得た。このシート状物の繊維総質量に対する水分散型PU樹脂の比率は10質量%であった。
[基材A-4]
繊維シートを含浸する水分散型ポリウレタン樹脂含浸液として以下の表2に示す顔料を含むものを用いた他は、基材A-1に記載の方法に則り、基材A-4としてグレーのシート状物を得た。このシート状物の繊維総質量に対する水分散型PU樹脂の比率は10質量%であった。
Figure 2023065062000003
[基材B-1]
海成分として、5-スルホイソフタル酸ナトリウムを8モル%共重合したポリエチレンテレフタレートを用い、島成分として、ポリエチレンテレフタレートを用い、海成分が20質量%で島成分が80質量%の複合比率で、島数16島/1f、平均繊維直径が18μmの海島型複合繊維を得た。得られた海島型複合繊維を、繊維長51mmにカットしてステープルとし、カード及びクロスラッパーを通して繊維ウェブを形成し、ニードルパンチ処理により繊維シートを得た。得られた繊維シートを95℃熱水中に浸漬させて収縮させ、そのピンテンター乾燥機を用いて100℃で5分間乾燥し、目付600g/m2の単層の繊維シートを得た。
得られた繊維シートを、95℃の温度に加熱した濃度10g/Lの水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して25分間処理を行い、海島型複合繊維の海成分を除去する脱海処理を行った。脱海後の繊維シートを構成する繊維の単繊維の平均直径は3.9μmであった。
次いで、以下の表3に示す水分散型ポリウレタン樹脂含浸液を前記繊維シートに含浸し平、100℃で5分間湿熱凝固させ、ピンテンター乾燥機を用いて130℃~150℃で2~6分間で熱風乾燥させた。
その後、95℃に加熱した熱水に浸漬させて、含侵した無水芒硝を抽出、除去し、水分散型PU樹脂が充填されたシート状物を得た。このシート状物の繊維総質量に対する水分散型PU樹脂の比率は30質量%であった。
その後、エンドレスのバンドナイフを有する半裁機を用いて、シート状物を厚み方向に対して垂直に半裁し、半裁されていない面を#400のエメリペーパーを用いて起毛処理し、基材B-1として、目付330g/m2のシート状物を得た。
Figure 2023065062000004
[基材B-2]
シート状物の半裁後の目付を150g/m2に調整した他は、基材B-1に記載の方法に則り、基材B-2としてシート状物を得た。このシート状物の繊維総質量に対する水分散型PU樹脂の比率は30質量%であった。
[基材B-3]
脱海後の繊維シートを構成する繊維の単繊維の平均直径が2.5μmとなる海島型複合繊維を繊維ウェブに用いた他は、基材B-1に記載の方法に則り、基材B-3としてシート状物を得た。このシート状物の繊維総質量に対する水分散型PU樹脂の比率は30質量%であった。
[基材B-4]
脱海後の繊維シートを構成する繊維の単繊維の平均直径が1.0μmとなる海島型複合繊維を繊維ウェブに用いた他は、基材B-1に記載の方法に則り、基材B-4としてシート状物を得た。このシート状物の繊維総質量に対する水分散型PU樹脂の比率は30質量%であった。
[インクジェット印刷(浸透手段:吸引)]
基材を前処理剤(CMC,ポリアクリル酸,ポリグリセリン,水の混合物)で満たした浴内に含浸し、120℃で3分間乾燥した。次に、インクジェット印刷機(セイコーエプソン製「MonnaLisa」)を用いて、染料をセットし、インクジェット吐出部の直下部にあり吸引ポンプが接続されたサクションボックスのスリットから基材の外表面の逆面側を-5kPaで吸引しながら、基材の外表面にインクジェット印刷し、図3に示す図柄Aが繰り返し単位として敷き詰められた印刷面を得た。次に、液流染色機を用いた還元洗浄により、未定着染料や、製品内の残留が好ましくない有機物や無機塩の除去と揉み効果による柔布を行い、その後乾燥することにより、任意の図柄が外表面に印刷された人工皮革を得た。
[インクジェット印刷(浸透手段:なし)]
基材を前処理剤(CMC,ポリアクリル酸,ポリグリセリン,水の混合物)で満たした浴内に含浸し、120℃で3分間乾燥した。次に、インクジェット印刷機(セイコーエプソン製「MonnaLisa」)を用いて、染料をセットし、基材の外表面にインクジェット印刷し、図3に示す図柄Aが繰り返し単位として敷き詰められた印刷面を得た。次に、液流染色機を用いた還元洗浄により、未定着染料や、製品内の残留が好ましくない有機物や無機塩の除去と揉み効果による柔布を行い、その後乾燥することにより、任意の図柄が外表面に印刷された人工皮革を得た。
[実施例1]
基材Aを前記インクジェット印刷(浸透手段:吸引)の方法に従い着色し、図3に示す図柄Aが繰り返し単位として印刷面に敷き詰められて印刷された人工皮革を得た。評価結果を以下の表4に示す。
[実施例2~5、比較例1~5]
以下の表4に示す基材と浸透手段(吸引またはなし)とした以外は実施例1と同様に図柄Aが該表面に印刷された人工皮革を得た。評価結果を以下の表4に示す。
Figure 2023065062000005
以上の結果から、各実施例においては、一般的な染色方法に比べて意匠性に優れ、摩耗面の未着色繊維の露出が少なく、かつ、摩耗面の着色ムラが小さいため、図柄保持性に優れる人工皮革が得られたことが分かる。
本発明に係る人工皮革の製造方法で得られる人工皮革は、一般的な染色方法に比べて意匠性に優れ、図柄保持性に優れるため、インテリア用、自動車用、航空機用、鉄道車両用等のシートの表皮材又は内装材等、服飾製品等に好適に利用可能である。具体的には、本発明に係る人工皮革は、家具、椅子、壁材、自動車、電車、航空機などの車輛室内における座席、天井、内装などの表皮材として非常に優美な外観を有する内装材、シャツ、ジャケット、カジュアルシューズ、スポーツシューズ、紳士靴、婦人靴等の靴のアッパー、トリム等、鞄、ベルト、財布等、それらの一部に使用した衣料用資材、ワイピングクロス、研磨布、CDカーテン等の工業用資材として好適に利用可能である。
i 人工皮革の厚み方向断面における着色部の境界から外表面までの距離(i=1~9)
A 繊維の断面
a 最長径
P 最長径aの中点
b Pでaと直交する直線
c b上の外周間距離(繊維直径)

Claims (5)

  1. 外表面を構成する外表面繊維層と高分子弾性体を少なくとも含む起毛調外観を有するスエード調人工皮革であって、
    該外表面が、少なくとも1色以上の着色部を有し、
    該外表面が、該着色部により構成される図柄を有し、
    該着色部において、該外表面繊維層が、該外表面から厚み方向に0.30mm以上の深さまで連続して着色されており、かつ、
    該外表面繊維層が、平均直径2.0μm以上4.5μm以下の極細繊維により構成されている、スエード調人工皮革。
  2. 前記極細繊維がポリエステル繊維である、請求項1に記載のスエード調人工皮革。
  3. 剛柔値が28cm以下である、請求項1又は2に記載のスエード調人工皮革。
  4. 前記スエード調人工皮革が、少なくとも織編物であるスクリムと前記外表面繊維層を含む2層以上から構成されるシート状物である、請求項1~3のいずれか1項に記載のスエード調人工皮革。
  5. 以下の工程:
    (1)平均直径2.0μm以上4.5μm以下の極細繊維から繊維ウェブを形成する工程;
    (2)得られた繊維ウェブを交絡して、繊維シートを得る工程;
    (3)場合により、得られた繊維シートの外表面を起毛する工程;
    (4)得られた繊維シートに高分子弾性体を充填して、シート状物を得る工程;
    (5)前記工程(3)を実施しなかった場合、前記工程(4)で得られたシート状物の外表面を起毛する工程;
    (6)得られたシート状物に、該外表面から厚み方向に0.30mm以上の深さまで連続して、インクジェット印刷する工程;及び
    (7)インクジェット印刷されたシート状物を還元洗浄して、図柄を有する人工皮革を得る工程;
    を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のスエード調人工皮革の製造方法。
JP2021175633A 2021-10-27 2021-10-27 人工皮革及びその製法 Pending JP2023065062A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021175633A JP2023065062A (ja) 2021-10-27 2021-10-27 人工皮革及びその製法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021175633A JP2023065062A (ja) 2021-10-27 2021-10-27 人工皮革及びその製法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2023065062A true JP2023065062A (ja) 2023-05-12

Family

ID=86282015

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2021175633A Pending JP2023065062A (ja) 2021-10-27 2021-10-27 人工皮革及びその製法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2023065062A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2024252933A1 (ja) * 2023-06-06 2024-12-12 Dic株式会社 合成皮革の製造方法、合成皮革の製造装置

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2024252933A1 (ja) * 2023-06-06 2024-12-12 Dic株式会社 合成皮革の製造方法、合成皮革の製造装置
JP7622912B1 (ja) 2023-06-06 2025-01-28 Dic株式会社 合成皮革の製造方法、合成皮革の製造装置

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP7165199B2 (ja) 人工皮革、及び、その製造方法
JP7282908B2 (ja) 人工皮革及びその製法
JP6613764B2 (ja) 人工皮革およびその製造方法
KR20160137579A (ko) 인공 피혁과 그의 제조 방법
CN112218982A (zh) 片状物及其制造方法
EP3816342B1 (en) Artificial leather and production method therefor
JP2023065062A (ja) 人工皮革及びその製法
JP2022038822A (ja) 繊維シート及び該繊維シートを用いた人工皮革の製造方法
JP2011153389A (ja) 人工皮革およびその製造方法
EP3816343B1 (en) Artificial leather and production method therefor
JP2006241620A (ja) ヌバック調皮革様シート状物ならびにその製造方法
JP2012136801A (ja) 新規模様を有する人工皮革およびその製造方法
US20250059705A1 (en) Artificial Leather and Method for Manufacturing Same
TWI865837B (zh) 人工皮革
TW202100622A (zh) 片狀物
WO2024004475A1 (ja) 人工皮革及びその製法
JP2024099270A (ja) 人工皮革及びその製法
JP2024134605A (ja) 人工皮革およびその製造方法ならびに積層体、乗物用内装材、衣類、雑貨
WO2023189269A1 (ja) 人工皮革およびその製造方法、複合人工皮革
CN118679291A (zh) 人造皮革及其制造方法、复合人造皮革
JP2024052600A (ja) 人工皮革
CN116018439A (zh) 人造皮革、其制造方法及人造皮革基材
JP2021134457A (ja) シート状物
JP2013044073A (ja) 人工皮革およびその製造方法