以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明は特許請求の範囲に記載される技術的範囲や用語の意義を限定するものではない。また、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
図1は、本発明の実施形態に係る経皮カテーテルが適用され、患者の心臓が弱っているときに、心機能が回復するまでの間、一時的に心臓と肺の機能を補助・代行する経皮的心肺補助法(PCPS)として使用される体外循環装置の一例を示す系統図である。
体外循環装置1によれば、ポンプを作動して患者の静脈(大静脈)から脱血して、人工肺により血液中のガス交換を行って血液の酸素化を行った後に、この血液を再び患者の動脈(大動脈)に戻す静脈-動脈方式(Veno-Arterial,VA)の手技を行うことができる。この体外循環装置1は、心臓と肺の補助を行う装置である。以下、患者から脱血して体外で所定の処置を施した後、再び患者の体内に送血する手技を「体外循環」と称する。
図1に示すように、体外循環装置1は、血液を循環させる循環回路を有している。循環回路は、人工肺2と、遠心ポンプ3と、遠心ポンプ3を駆動するための駆動手段であるドライブモータ4と、静脈側カテーテル(脱血用の経皮カテーテル)5と、動脈側カテーテル(送血用カテーテル)6と、制御部としてのコントローラ10と、を有している。
静脈側カテーテル(脱血用カテーテル)5は、大腿静脈より挿入され、下大静脈を介して静脈側カテーテル5の先端が右心房に留置される。静脈側カテーテル5は、脱血チューブ(脱血ライン)11を介して遠心ポンプ3に接続されている。脱血チューブ11は、血液を送る管路である。
動脈側カテーテル(送血用カテーテル)6は、大腿動脈より挿入される。
ドライブモータ4がコントローラ10の指令SGにより遠心ポンプ3を作動させると、遠心ポンプ3は、脱血チューブ11から脱血して血液を人工肺2に通した後に、送血チューブ(送血ライン)12を介して患者Pに血液を戻すことができる。
人工肺2は、遠心ポンプ3と送血チューブ12との間に配置されている。人工肺2は、血液に対するガス交換(酸素付加および/または二酸化炭素除去)を行う。人工肺2は、例えば膜型人工肺であるが、特に好ましくは中空糸膜型人工肺を用いる。この人工肺2には、酸素ガス供給部13から酸素ガスがチューブ14を通じて供給される。送血チューブ12は、人工肺2と動脈側カテーテル6を接続している管路である。
脱血チューブ11および送血チューブ12としては、例えば、塩化ビニル樹脂やシリコーンゴムなどの透明性の高い、弾性変形可能な可撓性を有する合成樹脂製の管路を使用することができる。脱血チューブ11内では、液体である血液はV1方向に流れ、送血チューブ12内では、血液はV2方向に流れる。
図1に示す循環回路では、超音波気泡検出センサ20が、脱血チューブ11の途中に配置されている。ファストクランプ17は、送血チューブ12の途中に配置されている。
超音波気泡検出センサ20は、体外循環中に三方活栓18の誤操作やチューブの破損等により循環回路内に気泡が混入された場合に、この混入された気泡を検出する。超音波気泡検出センサ20が、脱血チューブ11内に送られている血液中に気泡があることを検出した場合には、超音波気泡検出センサ20は、コントローラ10に検出信号を送る。コントローラ10は、この検出信号に基づいて、アラームによる警報を報知するとともに、遠心ポンプ3の回転数を低くする、あるいは、遠心ポンプ3を停止する。さらに、コントローラ10は、ファストクランプ17に指令して、ファストクランプ17により送血チューブ12を直ちに閉塞する。これにより、気泡が患者Pの体内に送られることを阻止する。コントローラ10は、体外循環装置1の動作を制御して、気泡が患者Pの身体に混入することを防止する。
体外循環装置1の循環回路のチューブ11(12、19)には、圧力センサが設けられる。圧力センサは、例えば、脱血チューブ11の装着位置A1、循環回路の送血チューブ12の装着位置A2、あるいは遠心ポンプ3と人工肺2との間を接続する接続チューブ19の装着位置A3のいずれか1つあるいは全部に装着することができる。これにより、体外循環装置1によって患者Pに対して体外循環を行っている際に、圧力センサによって、チューブ11(12、19)内の圧力を測定することができる。なお、圧力センサの装着位置は、上記装着位置A1、A2、A3に限定されず、循環回路の任意の位置に装着することができる。
次に、図2~図5を参照して、本発明の実施形態に係るシース40およびスタイレット50(医療用組立体に相当)が挿通される経皮カテーテル(以下、「カテーテル」と称する)30の構成について説明する。図2~図5は、カテーテル30の構成の説明に供する図である。このカテーテル30は、図1の静脈側カテーテル(脱血用カテーテル)5として使用されるものである。なお、以下説明するカテーテル30の構成は一例であって、本実施形態に係るスタイレット50が挿通されるカテーテルは以下の構成に限定されるものではない。
カテーテル30は、図2に示すように、第1側孔63および第2側孔46を備えるチューブ31と、チューブ31の先端に配置され貫通孔47を備える先端チップ49と、チューブ31の基端側に配置されるクランプ用チューブ34と、チューブ31およびクランプ用チューブ34を接続するカテーテルコネクター35と、ロックコネクター36と、を有している。
なお、本明細書では、生体内に挿入する側を「先端」若しくは「先端側」、術者が操作する手元側を「基端」若しくは「基端側」と称する。先端部とは、先端(最先端)およびその周辺を含む一定の範囲を意味し、基端部とは、基端(最基端)およびその周辺を含む一定の範囲を意味する。
カテーテル30は、図3に示すように、先端から基端まで貫通したルーメン30Aを有している。先端チップ49が備える貫通孔47およびチューブ31が備える第1側孔63、ならびに第2側孔46は、生体内の互いに異なる脱血対象に配置されて効率的に脱血を行えるように構成されている。
カテーテル30を生体内に挿入する際には、図2に示すシース40およびスタイレット50を使用する。カテーテル30と、シース40と、スタイレット50と、を予め一体化させた状態で生体内に挿入する。
以下、カテーテル30の各構成について説明する。なお、カテーテル30の構成は下記に限定されるものでない。
チューブ31は、図2に示すように、拡張部32と、拡張部32の基端側に連結されたシャフト部33と、を有している。
拡張部32は、シャフト部33よりも伸縮性が高くなるように構成されている。また、拡張部32は、シャフト部33よりも外径および内径が大きくなるように構成されている。
拡張部32およびシャフト部33の長さは、先端チップ49の貫通孔47、ならびにチューブ31の第1側孔63および第2側孔46を所望の脱血対象に配置するために必要な長さに構成されている。拡張部32の長さは、例えば、20~40cm、シャフト部33の長さは、例えば、20~30cmとすることができる。
本実施形態では、脱血対象は、右心房および下大静脈の2箇所である。カテーテル30は、先端チップ49の貫通孔47、およびチューブ31の第2側孔46が右心房に、チューブ31の第1側孔63が下大静脈に配置されるように生体内に挿入して留置される。
貫通孔47、第2側孔46、および第1側孔63が脱血対象に配置された状態で、拡張部32は比較的太い血管である下大静脈に配置され、シャフト部33は比較的細い血管である大腿静脈に配置される。
また、スタイレット50をカテーテル30のルーメン30Aに挿通すると、伸縮性が高い拡張部32は、図4に示すように、軸方向に伸長して外径および内径が小さくなる。このとき、拡張部32の外径はシャフト部33の外径と略同一になる。拡張部32を軸方向に伸長させて外径および内径が小さくなった状態で、カテーテル30を生体内に挿入するため、低侵襲にカテーテル30の挿入を行うことができる。
また、カテーテル30を生体内に留置した後、シース40およびスタイレット50をカテーテル30のルーメン30Aから抜去すると、拡張部32は軸方向に伸長した状態から収縮して、内径が大きくなる(図7(D)参照)。ここで、拡張部32は、比較的太い血管である下大静脈に配置される。したがって、拡張部32の外径を大きくすることができ、これに伴って内径を大きくすることができる。
ここで、拡張部32内の圧力損失は、それぞれ拡張部32の全長×(平均)通路断面積となる。すなわち、拡張部32の内径を大きくすることによって、拡張部32内の圧力損失が低減される。拡張部32内の圧力損失が低減されると、循環回路を流れる血液の流量は増加する。このため、十分な血液の循環量を得るためには、拡張部32の内径を大きくする必要がある。
一方で、肉厚が略一定の場合、拡張部32、シャフト部33の内径を大きくすると、外径が大きくなるため、生体内へカテーテル30を挿入する際に患者の負担が大きくなり、低侵襲な手技の妨げとなる。
以上の観点から、拡張部32の内径は、例えば、9~11mm、シャフト部33の内径は、例えば、4~8mmとすることができる。また、拡張部32およびシャフト部33の肉厚は、例えば、0.4~0.5mmとすることができる。
また、図2に示すように、拡張部32の先端部は、拡張部32の中央から軸方向の先端側に向かってそれぞれ徐々に細くなるテーパー部を形成することが好ましい。これにより、拡張部32の先端の内径が、先端側に配置される先端チップ49の内径と連続するようになっている。
拡張部32は、図5(A)に示すように、交差するように編組されたワイヤーWからなる第1補強体321と、第1補強体321を被覆するように設けられた第1樹脂層322と、を有する。
シャフト部33は、図5(B)に示すように、交差するように編組されたワイヤーWからなる第2補強体331と、第2補強体331を被覆するように設けられた第2樹脂層332と、を有する。
第1補強体321は、図5(A)に示すように、編み角度θ1となるように、ワイヤーWが編組されて構成している。また、第2補強体331は、図5(B)に示すように、編み角度θ2となるように、ワイヤーWが編組されて構成している。
本明細書において、編み角度θ1、θ2は、図5(A)、図5(B)に示すように、交差するワイヤーWがなす角度のうち、軸方向の内角として定義する。
第1補強体321の編み角度θ1は、図5(A)、図5(B)に示すように、第2補強体331の編み角度θ2よりも小さく構成されている。このため、第1補強体321を構成するワイヤーWの軸方向に対する傾斜角度は、第1補強体321の編み角度が第2補強体331の編み角度より大きい場合と比較して、小さくなる。なお、第1補強体321の編み角度θ1は、第2補強体331の編み角度θ2よりも大きく構成されてもよい。
ここで、拡張部32の軸方向の伸長に伴って、拡張部32の第1補強体321を構成するワイヤーWは、軸方向に対する傾斜角度が徐々に小さくなるように変形する。そして、拡張部32の第1補強体321を構成するワイヤーWの軸方向に対する傾斜角度がおよそゼロになったときに、拡張部32の軸方向の伸長が規制される。
したがって、第1補強体321の編み角度θ1を第2補強体331の編み角度θ2よりも小さく構成することによって、第1補強体321の編み角度が第2補強体331の編み角度より大きい場合と比較して、カテーテル30にスタイレット50を挿通するのに伴う拡張部32の軸方向に沿う伸長距離は短くなる。
第1補強体321の編み角度θ1は、特に限定されないが、100度~120度である。また、第2補強体331の編み角度θ2は、特に限定されないが、130度~150度である。このように第2補強体331の編み角度θ2を、第1補強体321の編み角度θ1よりも大きくすることによって、第2補強体331の耐キンク性を向上させることができる。このため、入り組んだ構成となっている大腿静脈において、好適に、カテーテル30を生体内に挿入することができる。
拡張部32の第1補強体321は、図5(A)、(B)に示すように、シャフト部33の第2補強体331よりも、疎となるように編組されて構成している。この構成によれば、シャフト部33に比較して、拡張部32を柔らかくすることができ、伸縮性を高めることができる。
本実施形態においてワイヤーWは、公知の形状記憶金属や形状記憶樹脂の形状記憶材料によって構成される。形状記憶金属としては、例えば、チタン系(Ni-Ti、Ti-Pd、Ti-Nb-Sn等)や、銅系の合金を用いることができる。また、形状記憶樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、トランスイソプレンポリマー、ポリノルボルネン、スチレンーブタジエン共重合体、ポリウレタンを用いることができる。
ワイヤーWが形状記憶材料によって構成されるため、カテーテル30からスタイレット50を抜去するのに伴う拡張部32の軸方向に沿う収縮距離は、カテーテル30にスタイレット50を挿通するのに伴う拡張部32の軸方向に沿う伸長距離と同一になる。
ワイヤーWの線径としては、0.1mm~0.2mmであることが好ましい。
ワイヤーWの線径を0.1mm以上にすることによって、強度を向上する補強体としての機能を好適に発揮することができる。
一方、ワイヤーWの線径を0.2mm以下にすることによって、拡張部32の外径を小さくしつつ内径を大きくすることができるため、カテーテル30挿入時の患者の身体に対する負担抑制、および圧力損失の低減を両立することができる。本実施形態においては、ワイヤーWの断面は、円形であるが、これに限定されず、長方形、正方形、楕円形等であってもよい。
拡張部32の第1樹脂層322は、シャフト部33の第2樹脂層332よりも、硬度の低い柔らかい材料によって構成される。この構成によれば、シャフト部33に比較して、拡張部32を柔らかくすることができ、伸縮性を高めることができる。
第1、第2樹脂層322、332は、塩化ビニル、シリコン、ポリエチレン、ナイロン、ウレタン、ポリウレタン、フッ素樹脂、熱可塑性エラストマー樹脂等を使用して、もしくはこれらの複合材料を用いて形成できる。
シリコン素材は、生体適合性が高く、素材自体も柔らかいため、血管を傷つけにくい特長がある。ポリエチレン素材は、柔らかく、且つ、圧力に耐える硬さを有している。しかもポリエチレン素材は、シリコン素材に匹敵する生体適合性を持つ。ポリエチレン素材は、シリコンよりも硬く、細い血管に挿入し易い特長がある。また、ポリウレタン素材は、挿入後には柔らかくなる特長がある。第1、第2樹脂層322、332の材料としては、これらの素材の特長を生かして適用可能な材料を使用することができる。
また、ポリウレタン素材に親水性のコーティングを施してもよい。この場合チューブ表面が滑らかで、血管挿入が行い易く、血管壁を傷つけにくい。血液やタンパク質が付着しにくく、血栓の形成を防ぐことが期待できる。
拡張部32、シャフト部33を形成する方法は特に限定されないが、例えばディップコート(浸漬法)やインサート成形などにより形成することができる。なお、補強体321、331は、少なくとも外表面が樹脂層322、332によって被覆されていればよい。
拡張部32は、図2に示すように、第2側孔46を有する。第2側孔46は、図2に示すように、軸方向に沿って複数(図2では4つ)設けられている。第2側孔46は、周方向にも複数設けられていることが好ましい。第2側孔46は、脱血孔として機能する。
シャフト部33は、図2に示すように、第1側孔63を有する。第1側孔63は脱血孔として機能する。第1側孔63は、周方向に複数有することが好ましい。本実施形態では、シャフト部33には、周方向に4つの第1側孔63が設けられている。これにより、脱血により、一の第1側孔63が血管壁に吸着して塞がれても、他の第1側孔63により脱血を行うことができるため、血液循環を安定して行うことができる。
先端チップ49は、図2~図4に示すように、拡張部32の先端に配置される。先端チップ49は、先端側に向かって徐々に縮径された先が細い形状を備えている。
先端チップ49の内側には、カテーテル30の生体内への挿入に先立って使用されるスタイレット50の平坦面50aと当接する平坦な受け面48が形成されている。
先端チップ49は、図3に示すように、ワイヤーWの先端が収納されるように構成されている。先端チップ49は、貫通孔47を有している。貫通孔47は、脱血用の孔として機能する。先端チップ49の貫通孔47は、カテーテル30のルーメン30Aの一部を構成している。先端チップ49は、例えば、ウレタンによって形成することができる。
硬い先端チップ49を拡張部32の先端部に固定することで、脱血時に拡張部32が潰れることを有効に防止することができる。
クランプ用チューブ34は、図2~図4に示すように、シャフト部33の基端側に設けられる。クランプ用チューブ34の内側には、スタイレット50が挿通可能なルーメンが設けられている。クランプ用チューブ34は、チューブ31と同様の材料を用いて形成することができる。
カテーテルコネクター35は、図2、図4に示すように、シャフト部33およびクランプ用チューブ34を接続する。カテーテルコネクター35の内側には、スタイレット50が挿通可能なルーメンが設けられている。
ロックコネクター36は、図2~図4に示すように、クランプ用チューブ34の基端側に接続されている。ロックコネクター36の内側には、スタイレット50が挿通可能なルーメンが設けられている。ロックコネクター36の基端側の外表面には、ネジ山が設けられた雄ネジ部36Aが設けられている。雄ネジ部36Aは、図4、図6に示すように、シース40の第1保持部44に嵌合されて保持される。
次に、図6等を参照して、本実施形態に係るシース40の構成について説明する。図6は、本実施形態に係るシース40の構成の説明に供する図である。
シース40は、カテーテル30に対して、着脱可能に構成される。シース40は、図6に示すように、軸方向に延在する本体部41と、本体部41の基端側に設けられる保持部42と、を有する。
本体部41の外周は、シース40がカテーテル30に挿入された状態で、シャフト部33の径方向への収縮を規制する規制部43として構成される。本体部41の硬度が、シャフト部33の硬度よりも大きく設定されることによって、規制部43は構成されている。
本体部41の内周には、スタイレット50が挿入される挿入ルーメン41Lが形成されている。本体部41の先端部41Aは、図6に示すように、先細りとなるように構成されている。この構成によれば、シース40のカテーテル30への挿入性が向上する。また、この構成によれば、スタイレット50によって、チューブ31の拡張部32を軸方向に伸長した際(図7(C)参照)に、拡張部32が本体部41の先端部41Aの形状に沿うように変形するため、段差が生じることを防止できる。
シース40がカテーテル30にセットされた状態で(図7(A)参照)、本体部41の先端部41Aは、拡張部32の内部に配置される。この構成によれば、図7(A)に示す状態で、使用時に拡張部32が意図せず垂れ下がることを防止できる。
また、この構成によれば、シース40によりカテーテル30の内腔表面が保護されるため、スタイレット50を挿入する際、スタイレット先端によりカテーテル30の内腔表面が傷つくことを防止できる。
本体部41を構成する材料としては、特に限定されないが、上述した第1、第2樹脂層322、332と同様のものを用いることができる。
保持部42は、図6に示すように、1つの構成要素からなり、シース40のカテーテル30に対する挿入状態を保持するための第1保持部44と、スタイレット50の挿入ルーメン41Lに対する挿入状態を保持するための第2保持部45と、第1保持部44および第2保持部45の間に介在する隔壁部42Aと、を有する。
第1保持部44は、カテーテル30の雄ネジ部36Aを径方向の内方に向かって押圧可能な弾性片である。第2保持部45は、スタイレット50のスタイレットハブ52を径方向の内方に向かって押圧可能な弾性片である。第2保持部45の保持力は、第1保持部44の保持力より大きい。この構成によれば、図7(D)に示すように、スタイレットハブ52を基端側に引き抜くことで、シース40およびスタイレット50の接続状態を維持したまま、シース40およびスタイレット50をカテーテル30から抜去することができる。
また、第1保持部44と第2保持部45の間には隔壁42Aが介在している。この隔壁42Aによって、第2保持部45を保持した際に、その保持力が第1保持部44に伝わるのを防ぐため、第1保持部44が開く(つまりカテーテル30の保持が解除される)ことを防止できる。
また、第2保持部45は、軸方向の基端側に向かってその内腔が拡径している。これにより、スタイレットハブ52を挿入し易くするとともに、スタイレットハブ52を第2保持部45ごと掴む際に掴みやすくなる。また、スタイレット50を第2保持部45から取り外す際に、第2保持部45の拡張径が拡がる方向に開くため、スタイレット50を容易に脱着することができる。
保持部42は、例えばゴムによって構成されており、弾力性を備える。なお、保持部42は、保持する能力を備えている限りにおいてゴムに限定されず、カテーテル30の雄ネジ部36Aおよびスタイレット50のスタイレットハブ52が強嵌合可能な材料であればよい。
次に、図2に戻って、本実施形態に係るスタイレット50の構成について説明する。
スタイレット50は、図2に示すように、軸方向に延在して設けられるスタイレットチューブ51と、スタイレットチューブ51の基端が固定されるスタイレットハブ52と、を有する。
スタイレットチューブ51は、軸方向に延在し、比較的剛性の高い長尺体である。スタイレットチューブ51の軸方向に沿う全長は、カテーテル30の軸方向に沿う全長と略同一となるように構成されている。スタイレットチューブ51は、ガイドワイヤー(図示せず)が挿通可能なガイドワイヤルーメン54を備えている。スタイレットチューブ51は、ガイドワイヤーに導かれて、シース40およびカテーテル30とともに生体内へ挿入される。スタイレットチューブ51は、カテーテル30を生体内に留置した後に、スタイレットハブ52を基端側に引き抜くことで、シース40とともに、カテーテル30から抜去される。
スタイレットチューブ51は、比較的剛性が高く、手元の操作による先端側への押し込み力をチューブ31へ伝達することを可能にするコシを備えている。このため、スタイレットチューブ51は、カテーテル30に固定した状態で先端側へ押し込むことによって、狭い血管を拡張する役割を果たしている。また、スタイレットチューブ51の硬度は、シース40の本体部41の硬度よりも小さいことが好ましい。この構成によれば、図7に示すように、本体部41からスタイレットチューブ51が露出した箇所を柔軟にしつつ、本体部41の内部にスタイレットチューブ51が配置される箇所を硬質にすることができる。このため、操作性が向上する。
スタイレットハブ52の先端52Aは、保持部42の第2保持部45の内径よりもわずかに大きい外径を備えている。スタイレットハブ52の先端52Aを第2保持部45に対して押し込むことによって、スタイレット50をシース40に対して保持可能に構成されている。
<シースおよびスタイレットの使用方法>
次に、図7を参照して、上述したシース40およびスタイレット50の使用方法について説明する。図7は、本実施形態に係るシース40およびスタイレット50の使用方法を説明するための図である。なお、図7では、カテーテル30において、ワイヤーW、第1側孔63、および第2側孔46等の図示は省略する。
まず、図7(A)に示すように、カテーテル30に対してシース40をセットする。具体的には、カテーテル30のルーメン30Aに対してシース40を挿通する。このとき、シース40は、シャフト部33、拡張部32の内部を順に通過する。そして、シース40の保持部42の第1保持部44に、カテーテル30のロックコネクター36の雄ネジ部36Aが嵌合されて保持される。このとき、シース40の本体部41の先端部41Aは、拡張部32の内部に位置するため、拡張部32が意図せず垂れ下がることを防止でき、結果、カテーテル先端が床等に接触して汚染されるリスクを低減する。
次に、図7(B)に示すように、シース40がセットされたカテーテル30のルーメン30Aに対して、スタイレット50を挿通する。スタイレット50は、シャフト部33、拡張部32の内部を順に通過し、スタイレット50の平坦面50aが先端チップ49の受け面48に当接する。
ここで、図2に示すように、スタイレット50の軸方向の全長は、拡張部32が伸長する前のカテーテル30の軸方向の全長よりも長く構成されている。このため、スタイレット50の平坦面50aが先端チップ49の受け面48に当接した状態で、拡張部32が先端側に押圧される。
そして、図7(C)に示すように、拡張部32の先端が先端側に引っ張られる。これにより、カテーテル30は、軸方向に伸長する力を受け、カテーテル30のうち比較的伸縮性が高い拡張部32が軸方向に伸長する。また、シャフト部33が径方向内方に収縮しようとするが、シース40の規制部43によってシャフト部33の径方向内方への収縮を防止することができる。この状態で、スタイレット50を先端側に移動することによって、拡張部32は、軸方向に伸長して、好適に径方向内方に収縮する。
その後、図7(C)に示すように、シース40の保持部42の第2保持部45に対して、スタイレット50のスタイレットハブ52を嵌合することによって、スタイレット50を、シース40およびカテーテル30に対して取り付ける。
次に、シース40およびスタイレット50が固定されたカテーテル30を、予め生体内の対象部位に挿入されているガイドワイヤー(図示せず)に沿って挿入する。このとき、スタイレット50がカテーテル30に挿通されているため、拡張部32の外径はシャフト部33の外径と略同一になっており、カテーテル30の生体内への挿入を低侵襲で行うことができ、患者の身体に対する負担を抑制することができる。
また、先端チップ49の貫通孔47、およびチューブ31の第2側孔46が右心房に、チューブ31の第1側孔63が下大静脈に配置されるまでカテーテル30を生体内に挿入し、留置する。貫通孔47、第1側孔63、および第2側孔46が脱血対象に配置された状態で、拡張部32は比較的太い血管である下大静脈に配置され、シャフト部33は比較的細い血管である大腿静脈に配置される。
次に、シース40、スタイレット50、およびガイドワイヤーをカテーテル30から抜去する。このとき、第2保持部45の保持力は、第1保持部44の保持力よりも大きいため、図7(D)に示すように、スタイレットハブ52を基端側に引き抜くことで、シース40およびスタイレット50の接続状態を維持したまま、シース40およびスタイレット50をカテーテル30から抜去することができる。
また、シース40、スタイレット50、およびガイドワイヤーは、一旦カテーテル30のクランプ用チューブ34の箇所まで抜いて鉗子(図示せず)によりクランプした後、カテーテル30から完全に抜去する。シース40およびスタイレット50がカテーテル30のルーメンから抜去されることによって、カテーテル30は、カテーテル30がスタイレット50から受けていた軸方向に伸長する力から開放される。このため、拡張部32が軸方向に収縮し、拡張部32の内径は大きくなる。これにより、拡張部32内の圧力損失を低減し必要とする液体の流量を確保することができる。
次に、カテーテル30のロックコネクター36を図1の体外循環装置の脱血チューブ11に接続する。送血側のカテーテルの接続が完了したことを確認後、クランプ用チューブ34の鉗子を解放して、体外循環を開始する。
体外循環が終了したら、カテーテル30を血管から抜去し、挿入箇所必要に応じて外科的手技により止血修復する。
以上のように、本実施形態に係るシース40は、軸方向に延在するシャフト部33および血液を流通可能なルーメン30Aを備えたカテーテル30に対して、着脱可能に構成されるシース40である。シース40は、軸方向に延在する本体部41と、本体部41の内部に形成され、スタイレット50が挿入される挿入ルーメン41Lと、カテーテル30に挿入された状態で、シャフト部33の径方向への収縮を規制する規制部43と、を有する。このように構成されたシース40によれば、スタイレット50をカテーテル30に挿入した際に、シャフト部33が径方向内方に収縮しようとするが、シャフト部33が規制部43に接触して、シャフト部33の径方向内方の収縮が規制される。この状態で、スタイレット50を先端側に移動することによって、チューブ31の先端は軸方向に伸長して、好適に径方向内方に収縮する。また、シース40は、カテーテル30に対して着脱可能に構成されるため、容易にカテーテル30の内部から抜去することができる。以上から、スタイレット50を挿入する際に、シャフト部33の径方向の収縮を規制することができるとともに、容易にカテーテル30の内部から抜去されるシース40を提供することができる。
また、本実施形態に係るシース40は、カテーテル30に対する挿入状態を保持するための第1保持部44と、スタイレット50の挿入ルーメン41Lに対する挿入状態を保持するための第2保持部45と、を有する。このように構成されたシース40によれば、シース40およびスタイレット50を、カテーテル30に対して好適に固定することができるため、シース40、スタイレット50、およびカテーテル30を血管内に挿入する際の操作性が向上する。
また、第1保持部44は、カテーテル30を径方向の内方に向かって押圧可能な弾性片である。この構成によれば、簡易な構成によって、シース40のカテーテル30に対する挿入状態を保持することができる。
また、第2保持部45は、スタイレット50を径方向の内方に向かって押圧可能な弾性片である。この構成によれば、簡易な構成によって、スタイレット50の挿入ルーメン41Lに対する挿入状態を保持することができる。
また、第2保持部45の保持力は、第1保持部44の保持力よりも大きい。この構成によれば、図7(D)に示すように、スタイレットハブ52を基端側に引き抜くことで、シース40およびスタイレット50の接続状態を維持したまま、シース40およびスタイレット50をカテーテル30から抜去することができる。したがって、手技の際の操作性が向上する。
また、規制部43は、本体部41の硬度がシャフト部33の硬度より大きいことによって構成される。この構成によれば、簡易な構成によって、規制部43を構成することができる。
また、本体部41の先端部41Aは、カテーテル30のシャフト部33の先端側に形成された拡張部32の内部に位置する。このように構成されたシース40によれば、拡張部32が意図せず垂れ下がることを防止でき、カテーテル先端が汚染されるリスクを低減する。
<カテーテルの変形例>
次に、カテーテルの変形例について説明する。上述した実施形態では、シース40およびスタイレット50は、1つのルーメン30Aを備えるカテーテル30に対して適用された。しかしながら、図8、図9に示すような、ダブルルーメンを備えるカテーテル60に対しても用いることができる。以下、図8、図9を参照して、ダブルルーメンを備えるカテーテル60の構成について説明する。
カテーテル60はいわゆるダブルルーメンカテーテルであって、同時に送血と脱血の双方を行うことができるものである。したがって、本実施形態では、図1の体外循環装置においては、静脈側カテーテル(脱血用カテーテル)5と、動脈側カテーテル(送血用カテーテル)6の2つのカテーテルを用いることはなく、1つのカテーテル60のみを用いて手技を行う。
カテーテル60では、図8、図9に示すように、送血用側孔163に連通する第1ルーメン61を備える第3チューブ161が、シャフト部133の内腔に配置された二重管構造を有する。
カテーテル60によれば、体外循環装置のポンプを作動して患者の静脈(大静脈)から脱血して、人工肺により血液中のガス交換を行って血液の酸素化を行った後に、この血液を再び患者の静脈(大静脈)に戻す静脈-静脈方式(Veno-Venous,VV)の人工肺体外血液循環を行うことができる。
カテーテル60は、図8、図9に示すように、拡張部32と、シャフト部133と、拡張部32の先端に配置される先端チップ49と、シャフト部133の内腔に配置された第3チューブ161と、を有している。拡張部32および先端チップ49の構成は、第1実施形態のカテーテル30と同じ構成であるため、説明は省略する。
カテーテル60は、図9に示すように、送血路として機能する第1ルーメン61と、脱血路として機能する第2ルーメン62と、を有している。
第1ルーメン61は、第3チューブ161の内腔に形成される。第2ルーメン62は、拡張部32およびシャフト部133の内腔に形成され、先端から基端まで貫通している。
シャフト部133には、送血路である第1ルーメン61に連通する送血用側孔163が設けられている。
シャフト部133は、脱血路である第2ルーメン62に連通する脱血用側孔164を備えている。
送血用側孔163および脱血用側孔164は、楕円形状に構成されている。
第3チューブ161は、シャフト部133の基端側から第2ルーメン62に挿入されて送血用側孔163に連結している。
送血用側孔163は、生体内の送血対象に配置され、人工肺により酸素化が行われた血液は送血用側孔163を介して生体内に送出される。
先端チップ49が備える貫通孔47、拡張部32が備える第2側孔46、およびシャフト部133が備える脱血用側孔164は、生体内の異なる脱血対象に配置されて効率的に脱血を行えるように構成されている。また、貫通孔47、第2側孔46、または脱血用側孔164が血管壁に吸着して塞がれても、塞がれていない方の孔から脱血を行うことができるため、体外循環を安定して行うことができる。
本実施形態では、カテーテル60は、首の内頸静脈から挿入され、上大静脈、右心房を介して先端が下大静脈に留置される。送血対象は、右心房であり、脱血対象は、上大静脈および下大静脈の2箇所である。
カテーテル60は、シース40およびスタイレット50が挿入された状態で、先端チップ49の貫通孔47、拡張部32の第2側孔46が下大静脈に、シャフト部133の脱血用側孔164が内頸静脈に配置されるように生体内に挿入して留置される。
拡張部32は、シャフト部133よりも内径が大きくなるように構成されている。貫通孔47、第2側孔46、および脱血用側孔164が脱血対象に配置された状態で、拡張部32は比較的太い血管である下大静脈に配置され、シャフト部133は比較的細い血管である大腿静脈に配置される。
図9に示すように、ロックコネクター136は、第1ルーメン61に連通する第1ロックコネクター137と、第1ロックコネクター137に対して並列に設けられ、第2ルーメン62に連通する第2ロックコネクター138と、を有している。ロックコネクター136は、第1ロックコネクター137が第2ロックコネクター138から分岐して形成されたY字状のYコネクターである。
第1ロックコネクター137は、第3チューブ161の基端部に連結されている。第2ロックコネクター138は、シャフト部133の基端部に同軸的に連結されている。第1ロックコネクター137には、送血チューブ(送血ライン)が接続され、第2ロックコネクター138には脱血チューブ(脱血ライン)が接続される。
以上のように、本実施形態に係るカテーテル60によれば、一つのカテーテルで脱血と送血の両方の機能を果たすことができる。
以上、実施形態を通じて本発明に係るカテーテルを説明したが、本発明は実施形態および変形例において説明した構成のみに限定されることはなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
例えば上述した実施形態では、第1保持部44は、チューブ31を径方向の内方に向かって押圧可能な弾性片であった。しかしながら、第1保持部は、ロックコネクター36の雄ネジ部36Aに対して螺合可能な雌ネジ部であってもよい。
また、ワイヤーWを構成する材料は、変形して元の形状に戻る復元力を備え、かつ、樹脂層を補強する機能を備える材料であれば形状記憶材料にさせる構成に限定されず、例えば、公知の弾性材料により構成することができる。
また、上述した実施形態では、第2保持部45の保持力は、第1保持部44の保持力よりも大きかったが、第2保持部45の保持力は、第1保持部44の保持力よりも小さくてもよい。このとき、シース40およびスタイレット50を抜去する際、第2保持部45からスタイレット50が抜けないように手で押さえつつ、シース40およびスタイレット50を抜去する。
また、上述した実施形態では、カテーテル30として拡張部32を備える構成を例に挙げて説明した。しかしながら、カテーテルは拡張部を備えない構成であってもよい。
また、シース140は、図10に示すように、ホルダー141を有する構成であって、スタイレット150は、図11に示すように、ハブ151を有する構成であってもよい。この構成の場合、シース140は、図12に示すように、カテーテル30に対してスライド可能に挿入されるが、ホルダー141によってカテーテル30の軸方向先端側への移動が規制される。そして、図12に示すように、シース140の基端側から挿入されるスタイレット150が、カテーテル30と例えば螺合によって固定されることによって、シース140は、カテーテル30の基端部に固定される。そして、カテーテル30およびスタイレット150がホルダー141で嵌合することにより、スタイレット150を取り外す際に、シース140を容易に抜去することができる。