JP2023028765A - 走査プローブ顕微鏡とそれに使用される試料 - Google Patents
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Abstract
【課題】励起光の照射やラマン散乱光の回収に用いられる対物レンズを試料及び探針のより近傍に配置可能な走査プローブ顕微鏡を提供する。【解決手段】試料を保持する試料ホルダと、前記試料に近接配置される探針と、励起光を出射する励起光源と、前記励起光を集光して前記探針に照射する対物レンズと、前記励起光の照射により前記試料から発生する散乱光を検出する受光部と、を備える走査プローブ顕微鏡であって、前記対物レンズの光軸からずれた位置に前記励起光を入射させる入射位置調整部をさらに備えることを特徴とする。【選択図】図3
Description
本発明は、試料に近接配置される探針を備える走査プローブ顕微鏡に関する。
近接場走査顕微鏡(SNOM:Scanning Near-field Optical Microscope)は、試料の表面の光学的性質や物性情報を高分解能で測定できる装置である。またSNOMを応用した走査プローブ顕微鏡の一つとして、試料に近接配置される探針に励起光を照射し、試料から発生するラマン散乱光を増強する探針増強ラマン分光(TERS:Tip-enhanced Raman scattering)顕微鏡がある。
特許文献1には、TERS顕微鏡においてラマン散乱光が探針の一部によって吸収または反射される割合を低減するために、励起光やラマン散乱光を集光する対物レンズと探針との配置を改めることが開示されている。具体的には、試料の上面側であって上面に直交する面内において、対物レンズの光軸と探針の中心軸とのなす角度が、対物レンズの光軸と試料の上面の垂線とのなす角度よりも大きくなるように、対物レンズと探針が配置される。
しかしながら特許文献1では、励起光の照射に用いられる対物レンズを試料及び探針の近傍に配置することに対する配慮がなされていない。すなわち特許文献1では、試料の上面の垂線に対して傾けられた対物レンズの光軸に沿って励起光が入射するため、試料及び探針に近接し過ぎる対物レンズは試料を保持する試料ホルダと干渉する。
そこで本発明は、励起光の照射に用いられる対物レンズを試料及び探針のより近傍に配置可能な走査プローブ顕微鏡を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために本発明は、試料を保持する試料ホルダと、前記試料に近接配置される探針と、励起光を出射する励起光源と、前記励起光を集光して前記探針に照射する対物レンズと、前記励起光の照射により前記試料から発生する散乱光を検出する受光部と、を備える走査プローブ顕微鏡であって、前記対物レンズの光軸からずれた位置に前記励起光を入射させる入射位置調整部をさらに備えることを特徴とする。
本発明によれば、励起光の照射に用いられる対物レンズを試料及び探針のより近傍に配置可能な走査プローブ顕微鏡を提供することができる。
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
また、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
<走査プローブ顕微鏡の概要>
走査プローブ顕微鏡(SPM:Scanning Probe Microscope)は、走査トンネル顕微鏡や原子間力顕微鏡に代表される顕微鏡の総称である。走査プローブ顕微鏡は、微小な探針(プローブ)で試料を走査して、試料の形状や性質を観察する顕微鏡である。特に、走査プローブ顕微鏡では、探針の頂点部を試料の表面に近づけ、試料と探針との間の力学的・電磁気的相互作用を検出しながら走査することにより、試料表面の拡大像や物性情報を得ることができる。例えば、走査プローブ顕微鏡は、試料に対して原子レベルや分子レベルの分解能を有する。近年では、走査プローブ顕微鏡を使用して試料の光学的性質などの物性情報が調べられている。具体的には、光源から探針に励起光が照射されることにより、局所電界が集中する探針の頂点部に近接場光が形成され、近接場光によって試料から発生する散乱光が検出される。そして検出された散乱光が解析されることにより、試料の物性情報が得られる。例えば、散乱光としてレイリー散乱光が検出される場合、試料の表面の反射率や吸収率、表面粗さなどの物性情報を取得できる。またラマン散乱光が検出される場合、化学結合の種類や試料を構成する物質を同定できる。
走査プローブ顕微鏡(SPM:Scanning Probe Microscope)は、走査トンネル顕微鏡や原子間力顕微鏡に代表される顕微鏡の総称である。走査プローブ顕微鏡は、微小な探針(プローブ)で試料を走査して、試料の形状や性質を観察する顕微鏡である。特に、走査プローブ顕微鏡では、探針の頂点部を試料の表面に近づけ、試料と探針との間の力学的・電磁気的相互作用を検出しながら走査することにより、試料表面の拡大像や物性情報を得ることができる。例えば、走査プローブ顕微鏡は、試料に対して原子レベルや分子レベルの分解能を有する。近年では、走査プローブ顕微鏡を使用して試料の光学的性質などの物性情報が調べられている。具体的には、光源から探針に励起光が照射されることにより、局所電界が集中する探針の頂点部に近接場光が形成され、近接場光によって試料から発生する散乱光が検出される。そして検出された散乱光が解析されることにより、試料の物性情報が得られる。例えば、散乱光としてレイリー散乱光が検出される場合、試料の表面の反射率や吸収率、表面粗さなどの物性情報を取得できる。またラマン散乱光が検出される場合、化学結合の種類や試料を構成する物質を同定できる。
本実施の形態における走査プローブ顕微鏡は、レイリー散乱光やラマン散乱光を検出する技術に幅広く適用可能であり、特にラマン散乱光を検出し分光測定することに有用である。すなわち、本実施の形態における走査プローブ顕微鏡は、探針の頂点部に形成される近接場光を用いて探針増強ラマン分光測定をする顕微鏡であって、探針への励起光の照射に用いられる対物レンズを試料及び探針のより近傍に配置するための工夫が施される。以降では、探針を備える走査プローブ顕微鏡の構成について説明する。
<走査プローブ顕微鏡の構成例1>
図1を用いて、走査プローブ顕微鏡の第一の例の構成について説明する。なお図1は斜視図であり、鉛直方向をZ方向、水平方向をX方向及びY方向とする。図1に例示される走査プローブ顕微鏡100は、例えば、近接場光走査顕微鏡(SNOM)、または探針増強ラマン分光(TERS)顕微鏡とも呼ばれる。走査プローブ顕微鏡100は、試料ホルダ20、カンチレバー40、励起用光源71、対物レンズ75、コリメータ78、制御部90を備える。以下、各部について説明する。
図1を用いて、走査プローブ顕微鏡の第一の例の構成について説明する。なお図1は斜視図であり、鉛直方向をZ方向、水平方向をX方向及びY方向とする。図1に例示される走査プローブ顕微鏡100は、例えば、近接場光走査顕微鏡(SNOM)、または探針増強ラマン分光(TERS)顕微鏡とも呼ばれる。走査プローブ顕微鏡100は、試料ホルダ20、カンチレバー40、励起用光源71、対物レンズ75、コリメータ78、制御部90を備える。以下、各部について説明する。
試料ホルダ20は、測定対象である試料10を搭載し、可動ステージ30の上に配置される。可動ステージ30は、XYの二方向またはXYZの三方向に移動可能なステージであり、例えば圧電素子を用いて構成される。なお、圧電素子はピエゾアクチュエータと呼ばれることがある。
カンチレバー40は、試料10に近接配置される探針を一端に有する片持ち梁である。図2Aを用いてカンチレバー40の構成について説明する。カンチレバー40は、探針40a、梁部40b、被保持部40cを有する。梁部40bはX方向に延在する変形可能な部材であり、一端に探針40aが、他端に被保持部40cが設けられる。被保持部40cは、後述する加振部52に接続される。図2におけるカンチレバーの特徴は、梁部40bと、探針40aと、の境界が屈曲したような形状をしているとも言える。なお、図示では省略したが、梁部40bと、探針40aと、は同じ厚さである必要はなく、また、各部中の厚さが均一である必要もない。
図2AのA-A断面図である図2Bに用いて探針40aについて説明する。探針40aはシリコンや酸化シリコン、窒化シリコン、カーボン等で形成され、Z方向に突出する形状の部材であり、頂点部40d、上角部40e、稜線部40f、斜面部40g(区別して呼びたい場合は下斜面部と呼ぶ)、斜面部40h(区別して呼びたい場合は上斜面部と呼ぶ)を有する。頂点部40dは探針40aの先端であり、試料10に近接配置される。上角部40eは頂点部40dの上方に位置する角(具体的には図2Aに示す角の先端)である。稜線部40fは頂点部40dと上角部40eとをつなぐ箇所(具体的には稜線)である。斜面部40gは頂点部40dと梁部40bの下面とをつなぐ箇所(面)である。斜面部40hは上角部40eと梁部40bの上面とをつなぐ箇所(面)である。探針40aは、少なくとも頂点部40dとその周辺である稜線部40fが、貴金属膜で覆われる。なお探針40aは図2に例示される形状に限定されない。
なお、探針40aの製造技術が理想的で、図2Aおよび図2Bの通り厳密に角を形成できるとした場合、各部は点や線や面そのものである。しかし、カンチレバー40に求められる精度を満たす範囲で、実際には先端、角、線、面のリムは丸みを有す。各部はその丸みの始まり・終わりを含む、周辺領域を含むとしてもよい。
図1の説明に戻る。カンチレバー40の被保持部40cが接続される加振部52は、例えば圧電素子を用いて構成され、カンチレバー40を加振し、Z走査部51に接続される。Z走査部51はZ方向に移動可能なステージであり、例えば圧電素子を用いて構成され、XY走査部50に接続される。XY走査部50はXYの二方向に移動可能なステージであり、例えば圧電素子を用いて構成され、走査プローブ顕微鏡100の筐体に接続される。加振部52はカンチレバー40を加振できるのであれば、ほかのアクチュエータを用いて構成してもよい。
すなわちカンチレバー40は、加振部52、Z走査部51、XY走査部50を介して、走査プローブ顕微鏡100の筐体に保持され、XY走査部50によって試料10を走査可能であり、加振部52によって振動可能である。なお、可動ステージ30によってもカンチレバー40に対して試料10を走査可能であるので、可動ステージ30とXY走査部50のいずれか一方が備えられる構成であっても良い。またカンチレバー40が自己検知性能を有する場合、加振部52は備えられなくても良い。
励起用光源71は探針40aに照射される励起光73を出射する。励起光73は単一波長のレーザ光であっても良いし、波長変換可能なレーザ光であっても良い。励起用光源71から出射される励起光73はレンズ72で集光され、フィルタ74で反射し、対物レンズ75に入射して集光されたのち、カンチレバー40の探針40aに照射される。励起光73の照射により探針40aの頂点部40dに形成される近接場光は、試料10から散乱光を発生させる。試料10から発生した散乱光のうち、対物レンズ75に回収された光は、フィルタ74を透過し、レンズ77で集光されたのち、コリメータ78に検出光76として入射する。コリメータ78に入射した検出光76は光ファイバー79を通じて分光器80へ送られて分光されたのち、光電子増倍管(PMT)やフォトダイオード(PD)、HgCdTe(MCT)センサ等の光検出器によって強度が測定されることもある。なお、コリメータ78や光ファイバー79を介すことなく、分光器80や光検出器に検出光76が入射しても良い。なお、試料から発生する散乱光を検出するエンティティとしては、前述の分光器80以外でもよく、そうしたエンティティをまとめて受光部と呼ぶ。
図3を用いて、励起光73を対物レンズ75に入射させる位置について説明する。本実施の形態では、対物レンズ75の光軸CLからずれた位置に励起光73を入射させる。対物レンズ75の光軸CLからずれた位置に入射した励起光73は、対物レンズ75によって集光されたのち、光軸CLに対して傾いた方向からカンチレバー40の探針40aに照射される。すなわち、光軸CLからずれた位置に励起光73を入射させることによって、水平方向により近い方向から探針40aに励起光73を照射する場合にも、試料ホルダ20と干渉させることなく試料10及び探針40aのより近傍に対物レンズ75を配置することができる。また垂直方向により近い方向から探針40aに励起光73を照射する場合にも、光てこのハード配置と光路と干渉させることなく、探針40aのより近傍に対物レンズ75を配置することができる。試料10及び探針40aのより近傍に対物レンズ75を配置することによって、試料10から全方位に向けて発生した散乱光のより多くを対物レンズ75によって回収できるので、散乱光の検出効率を向上させることができる。
図1の説明に戻る。走査プローブ顕微鏡100は、カンチレバー40の梁部40bの変形を検出するため、光てこ用光源61と光てこ用検出器63を備える。光てこ用光源61は梁部40bに照射される光てこ光線62を出射する。光てこ用光源61から出射した光てこ光線62はダイクロミラー64で反射して対物レンズ75に入射し、対物レンズ75を透過したのち梁部40bに照射される。梁部40bに照射された光てこ光線62は梁部40bで反射し、対物レンズ75を透過したのちダイクロミラー64で反射して光てこ用検出器63に検出される。光てこ用検出器63は複数の検出素子、例えば四つの検出素子を有し、各検出素子の出力信号に基づいて梁部40bの変形や振動を検出する。なお励起光73の照射に用いられる対物レンズ75を光てこ光線62が共用することにより、光てこ光線62に係る構成を簡素化でき、その他の構成の配置の自由度を向上できる。
制御部90は、各部を制御するとともに、光検出器によって測定された散乱光の強度をグラフ化して出力したり、データを記録したりするコンピュータである。例えば、制御部90は可動ステージ30やXY走査部50、Z走査部51の動作を制御することにより、カンチレバー40と試料10との相対距離を調整し、カンチレバー40の探針40aを試料10に近づけたり、試料10の表面全体を探針40aで走査させたりする。また制御部90は光てこ用検出器63によって検出されたカンチレバー40の梁部40bの変形に基づいて、探針40aと試料10との間に働く力や両者間の距離を算出したり、梁部40bの変形量が一定になるように可動ステージ30やZ走査部51を制御したりする。なお、コンピュータは1以上のプロセッサと、1以上の記憶資源を有し、記憶資源に格納されたプログラムをプロセッサが実行することで、以上又は以下に示す処理を実現する。なお、プロセッサの例はCPUやGPUである。また、記憶資源は、揮発メモリであればRAMであり、不揮発メモリであれば、フラッシュメモリ、HDD、USBメモリが例である。
走査プローブ顕微鏡100の動作について説明する。まず可動ステージ30やXY走査部50の動作によりカンチレバー40の探針40aが試料10の近傍に配置される。次に、光てこ用光源61からカンチレバー40の梁部40bに向けて光てこ光線62が照射され、梁部40bで反射した光てこ光線62が光てこ用検出器63によって検出される。また励起用光源71から探針40aに向けて励起光73が照射され、探針40aの頂点部40dに近接場光が形成される。近接場光は試料10からラマン散乱光を含む散乱光を発生させ、発生した散乱光のうち対物レンズ75に回収された光はダイクロミラー64、フィルタ74、レンズ77を通って検出光76としてコリメータ78に入射し、分光器80によって検出される。さらに制御部90は、分光器80で分光されて検出された信号に基づいて、近接場光照射によるラマンスペクトル画像や走査プローブ顕微鏡による表面凹凸画像を生成し、液晶ディスプレイ等の表示装置に表示させても良い。
<走査プローブ顕微鏡の構成例2>
図4を用いて、走査プローブ顕微鏡の第二の例の構成について説明する。図4に例示される走査プローブ顕微鏡200は、試料10から発生した散乱光のうち試料10を透過した光を検出する。すなわち散乱光の検出に係る構成以外は、図1に例示される走査プローブ顕微鏡100と同じであるので、走査プローブ顕微鏡100と同じ構成には同じ符号を付与して説明を省略する。
図4を用いて、走査プローブ顕微鏡の第二の例の構成について説明する。図4に例示される走査プローブ顕微鏡200は、試料10から発生した散乱光のうち試料10を透過した光を検出する。すなわち散乱光の検出に係る構成以外は、図1に例示される走査プローブ顕微鏡100と同じであるので、走査プローブ顕微鏡100と同じ構成には同じ符号を付与して説明を省略する。
走査プローブ顕微鏡200は、試料ホルダ20や、カンチレバー40、励起用光源71、対物レンズ75、コリメータ78、制御部90とともに、可動ステージ31とレンズ21、レンズ22を備える。可動ステージ31は、XYの二方向またはXYZの三方向に移動可能なステージであり、例えば圧電素子を用いて構成され、開口部32を有する。レンズ21とレンズ22は、コリメータ78とともに、可動ステージ31の下方に配置される。
走査プローブ顕微鏡200の動作について説明する。走査プローブ顕微鏡100と同様に、試料10の近傍に配置された探針40aに向けて励起光73が照射されると、探針40aの頂点部40dに近接場光が形成される。近接場光は試料10から散乱光を発生させ、発生した散乱光のうち試料10を透過した光が、試料ホルダ20や開口部32、レンズ21、レンズ22を通って検出光23としてコリメータに入射し、分光器80によって検出される。
走査プローブ顕微鏡200によれば、試料10から発生する散乱光がカンチレバー40や可動ステージ31によって遮られずに検出されるので、散乱光の検出効率を向上させることができる。その結果、高コントラストの近接場光画像やラマンスペクトル画像を得ることができる。
<走査プローブ顕微鏡の構成例3>
図5を用いて、走査プローブ顕微鏡の第三の例の構成について説明する。図5に例示される走査プローブ顕微鏡300は、試料10から発生した散乱光のうちカンチレバー40の側面方向に放射された光を検出する。すなわち散乱光の検出に係る構成以外は、図1に例示される走査プローブ顕微鏡100と同じであるので、走査プローブ顕微鏡100と同じ構成には同じ符号を付与して説明を省略する。
図5を用いて、走査プローブ顕微鏡の第三の例の構成について説明する。図5に例示される走査プローブ顕微鏡300は、試料10から発生した散乱光のうちカンチレバー40の側面方向に放射された光を検出する。すなわち散乱光の検出に係る構成以外は、図1に例示される走査プローブ顕微鏡100と同じであるので、走査プローブ顕微鏡100と同じ構成には同じ符号を付与して説明を省略する。
走査プローブ顕微鏡300は、試料ホルダ20や、カンチレバー40、励起用光源71、対物レンズ75、コリメータ78、制御部90とともに、レンズ21とレンズ22を備える。レンズ21とレンズ22は、コリメータ78とともに、カンチレバー40の側面方向に配置される。
走査プローブ顕微鏡300の動作について説明する。走査プローブ顕微鏡100と同様に、試料10の近傍に配置された探針40aに向けて励起光73が照射されると、探針40aの頂点部40dに近接場光が形成される。近接場光は試料10から散乱光を発生させ、発生した散乱光のうちカンチレバー40の側面方向に放射された光が、レンズ21とレンズ22を通って検出光23としてコリメータに入射し、分光器80によって検出される。
走査プローブ顕微鏡300によれば、多方向から散乱光を収集できるので、試料10の形状の影響を受けにくい測定ができる。特に、探針40aに励起光73が照射される位置と近接場光が発生する位置とが比較的離れていて、近接場光によって試料10から発生する散乱光を対物レンズ75で十分に回収できない場合、走査プローブ顕微鏡300は有用である。なお、励起用光源71や対物レンズ75の位置と、コリメータ78やレンズ21、レンズ22の位置とは図5に例示される位置に限定されず、両者の位置が交換されても良い。
<統合光学系の構成>
図6を用いて、走査プローブ顕微鏡100の励起光73と検出光76に係る統合光学系400の構成について説明する。微小な部材である探針40aの形状は製造時の個体差が大きい。また励起光73の照射によって探針40aの頂点部40dに形成される近接場光の強度は、探針40aの形状や励起光73の照射角度、照射位置に依存する。そこで、探針40aの形状に応じて、励起光73の照射角度や照射位置を調整できることが望ましい。本実施の形態の統合光学系400は、励起光73の照射角度や照射位置を調整する機能を有する。
図6を用いて、走査プローブ顕微鏡100の励起光73と検出光76に係る統合光学系400の構成について説明する。微小な部材である探針40aの形状は製造時の個体差が大きい。また励起光73の照射によって探針40aの頂点部40dに形成される近接場光の強度は、探針40aの形状や励起光73の照射角度、照射位置に依存する。そこで、探針40aの形状に応じて、励起光73の照射角度や照射位置を調整できることが望ましい。本実施の形態の統合光学系400は、励起光73の照射角度や照射位置を調整する機能を有する。
統合光学系400は、励起用光源71、対物レンズ75、コリメータ78、光てこ用光源61、光てこ用検出器63とともに、様々な光学フィルタや光学ミラー、レンズを備える。以下、各部について、励起光73や光てこ光線62の進行とともに説明する。
励起用光源71から出射した励起光73は、光学フィルタ402によってノイズとなる波長がカットされ、ポラライザ403によって偏光されたのち、位置・角度調整部404に入射する。位置・角度調整部404は励起光73をフィルタ74に向けて反射するミラーと、励起光73の入射方向(図6ではX方向)にミラーを平行移動させる機構と、ミラーを傾ける機構を有する。これら機構は、例えばステッピングモータや圧電素子を採用してもよく、他のアクチュエータを用いてもよい。位置・角度調整部404のミラーで反射した励起光73は、レンズ405、レンズ406を通過したのちフィルタ74で反射し、ダイクロミラー64を通過して対物レンズ75に入射し集光される。対物レンズ75によって集光された励起光73は、カンチレバー40の探針40aに照射され、探針40aの頂点部40dに近接場光を形成させる。頂点部40dに形成された近接場光によって試料10から発生する散乱光の一部は、対物レンズ75に回収され、ダイクロミラー64、フィルタ74、ビームスプリッタ410を透過し、レンズ77に集光されたのちコリメータ78に検出光76として入射する。
なお位置・角度調整部404は制御部90によって制御され、ミラーを平行移動させたり、傾けたりする。ミラーの平行移動により励起光73が対物レンズ75へ入射する位置が調整され、対物レンズ75への入射位置が変わると探針40aへの励起光73の照射角度が変わる。またミラーが傾けられることにより励起光73が対物レンズ75へ入射する角度が調整され、対物レンズ75への入射角度が変わると探針40aへの励起光73の照射角度と照射位置が変わる。すなわち位置・角度調整部404によって、励起光73が探針40aに照射される角度や位置が調整される。なお、位置・角度調整部は、このように励起光を入射させる入射位置を調整する構成物であるため、入射位置調整部と呼ぶことがある。なお、励起光の方向を変化させるための光学素子は、前述のミラー以外のプリズム等の素子を用いてもよい。
また対物レンズ75は焦点調整部409に接続される。焦点調整部409は対物レンズ75を励起光73の入射方向(図6ではX方向)に平行移動させる機構であり、対物レンズ75で集光される光の焦点を調整する。
光てこ用光源61から出射した光てこ光線62は、ビームスプリッタ415を通過し、ダイクロミラー64で反射したのち、対物レンズ75に入射する。対物レンズ75に入射した光てこ光線62は、カンチレバー40の梁部40bで反射し、再び対物レンズ75に入射したのち、ダイクロミラー64とビームスプリッタ415のそれぞれで反射して光てこ用検出器63に検出される。
統合光学系400は、カンチレバー40と試料10の観察に用いられる観察用光源411と観察用カメラ414を備えても良い。観察用光源411は観察光412を出射する。観察用光源411から出射された観察光412は、ビームスプリッタ413を通過したのちビームスプリッタ410で反射し、フィルタ74とダイクロミラー64を通過して対物レンズ75に入射する。対物レンズ75に入射した観察光412は、試料10とカンチレバー40で反射して再び対物レンズ75に入射し、ダイクロミラー64とビームスプリッタ415を通過してビームスプリッタ410とビームスプリッタ413で反射したのち観察用カメラ414に入射する。観察用カメラ414は入射した観察光412に基づいて観察用画像を出力する。観察用画像は、カンチレバー40と試料10との位置合わせに用いられる。
なおビームスプリッタ410は抜き取り可能であり、試料10から発生した散乱光の検出効率を向上させるために観察終了後に抜き取られても良い。さらに観察終了後に、観察用光源411の電源もオフにされることが望ましい。
図7Aを用いて、統合光学系400を傾ける機構である傾斜機構500について説明する。傾斜機構500は、XYZステージ501と固定用プレート502を有する。XYZステージ501はXYZの三方向に移動可能なステージであり、走査プローブ顕微鏡100の筐体に接続される。固定用プレート502は、回転軸503と穴504、穴505、穴506を有する部材であり、XYZステージ501に接続される。回転軸503には、統合光学系400の位置・角度調整部404が回転可能に接続される。穴504、穴505、穴506は、回転軸503を中心とし、位置・角度調整部404とフィルタ74の間の距離を半径とする円の円周上に所定の間隔をあけて設けられる。穴504、穴505、穴506のいずれかにはフィルタ74が固定される。
図7Bを用いて、傾斜機構500により傾けられた統合光学系400について説明する。図7Bにはフィルタ74が穴506に固定された状態が例示される。対物レンズ75の光軸と水平線とのなす角度φは、フィルタ74がどの穴に固定されるかによって調整され、例えば穴504ではφ=60°、穴505ではφ=45°、穴506ではφ=30°に調整される。そして穴504、穴505、穴506のいずれかにフィルタ74が固定された状態で、位置・角度調整部404のミラーを平行移動させることにより、カンチレバー40の探針40aに対する励起光73の照射角度が連続かつ精密に調整される。
なお、傾斜機構500は必ずしも離散角度に統合光学系400を傾けるものだけを意味するものではなく、連続した角度に傾けてもよい。また、角度はステッピングモータや圧電素子等のアクチュエータで変更できてもよい。
<励起光の照射角度の影響>
図8を用いて、探針40aへの励起光73の照射角度の影響について説明する。図8に例示されるグラフは、探針40aの頂点部40dと試料10との中間点Pにおける電場強度(V/m)と励起光73の照射角度θ(°)との関係のシミュレーション結果である。励起光73は波長が660nmであり、探針40aの上角部40eに照射される。照射角度θは水平線に対する角度である。また探針40aの形状の影響を示すために、稜線部40fの長さLが1028nmと1980nmの2種類についてシミュレーションがなされた。
図8を用いて、探針40aへの励起光73の照射角度の影響について説明する。図8に例示されるグラフは、探針40aの頂点部40dと試料10との中間点Pにおける電場強度(V/m)と励起光73の照射角度θ(°)との関係のシミュレーション結果である。励起光73は波長が660nmであり、探針40aの上角部40eに照射される。照射角度θは水平線に対する角度である。また探針40aの形状の影響を示すために、稜線部40fの長さLが1028nmと1980nmの2種類についてシミュレーションがなされた。
図8のグラフに示されるように、電場強度は照射角度θに依存し、特定の照射角度で最大となる。また電界強度が最大となる照射角度は、稜線部40fの長さLによって異なる。すなわち、異なる形状の探針40aに応じて、励起光73の照射角度θを調整することにより、近接場光の電界強度を向上させることができる。
なお、励起光73の波長は660nmに限定されず、可視光領域や近紫外領域、赤外領域の波長であっても良い。ただし、励起光73の波長に応じて、探針40aを被覆する金属膜の材質が選択されることが好ましい。探針40aは例えば金膜や銀膜、アルミニウム膜によって被覆される。また稜線部40fの長さLは、励起光73の波長の5倍より短いことが好ましい。
<励起光の照射角度の調整方法>
図9A、図9B、図9Cを用いて励起光73の照射角度の調整方法について説明する。図9Aには統合光学系400を15°~135°(ただし、X軸と平行な場合が0°)の範囲で傾けることで、カンチレバー40への励起光73の照射角度を調整することが示される。統合光学系400を傾けるには、例えば傾斜機構500が用いられる。なお対物レンズ75と試料ホルダ20等との干渉がなければ、励起光73の照射角度は15°~135°の範囲に限定されない。例えば、X軸と平行な0°から135°の範囲で傾けてもよい。
図9A、図9B、図9Cを用いて励起光73の照射角度の調整方法について説明する。図9Aには統合光学系400を15°~135°(ただし、X軸と平行な場合が0°)の範囲で傾けることで、カンチレバー40への励起光73の照射角度を調整することが示される。統合光学系400を傾けるには、例えば傾斜機構500が用いられる。なお対物レンズ75と試料ホルダ20等との干渉がなければ、励起光73の照射角度は15°~135°の範囲に限定されない。例えば、X軸と平行な0°から135°の範囲で傾けてもよい。
図9Bには対物レンズ75に入射する励起光73の位置を変えることで、カンチレバー40への励起光73の照射角度を調整することが示される。励起光73の対物レンズ75への入射位置を変えるには、例えば統合光学系400の位置・角度調整部404が用いられる。
図9Cには統合光学系400に対してカンチレバー40を傾けることで、励起光73の照射角度を調整することが示される。カンチレバー40を傾けるには、例えばXY走査部50やZ走査部51が用いられる。
図9A、図9B、図9Cに例示される方法により、カンチレバー40への励起光73の照射角度の調整が可能であり、励起光73の照射角度の調整により、頂点部40dに形成される近接場光の強度をより向上させることができる。
<励起光の照射角度の最適化>
図10A、図10B、図10Cを用いて励起光73の照射角度の最適化について説明する。すなわち、以降で説明するいずれかの方法によって出力信号を検出しながら励起光73の照射角度を調整することにより、出力信号が最大となる照射角度が探索される。
図10A、図10B、図10Cを用いて励起光73の照射角度の最適化について説明する。すなわち、以降で説明するいずれかの方法によって出力信号を検出しながら励起光73の照射角度を調整することにより、出力信号が最大となる照射角度が探索される。
図10Aには、探針40aの頂点部40d近傍に形成される近接場光の強度を直接検出する方法が示される。すなわち基板が貴金属である貴金属基板試料1001に近接配置されたカンチレバー40を加振部52で共振させながら、励起光73の照射で形成される近接場光が発生させる近接場光散乱光1011を加振周波数でロックイン検出する。ロックイン検出された信号は励起光73の照射角度の調整に用いられる。
図10Bには、探針40aに付着する物質のラマン散乱光1012を測定する方法が示される。探針40aには大気中のカーボンが付着するので、測定されるラマン散乱光1012には付着したカーボンのDバンドやGバンドのラマン信号が含まれる。そこで測定されるラマン散乱光1012からカーボンのDバンドやGバンドのラマン信号が抽出され、抽出されたラマン信号が励起光73の照射角度の調整に用いられる。なおDバンドは欠陥構造によるラマン信号であり、Gバンドはグラファイト構造によるラマン信号である。
図10Cには、標準試料1002を測定する方法が示される。すなわち標準試料1002に近接配置されたカンチレバー40の探針40aに励起光73を照射し、探針40aの頂点部40dに形成される近接場光が発生させる特定ラマン散乱光1013を検出する。検出された散乱光信号は励起光73の照射角度の調整に用いられる。
なお標準試料1002には、単結晶シリコン基板やダイヤモンド等が用いられる。また探針増強ラマン分光用の標準試料として、貴金属基板の上に有機物が成膜された試料、例えば金基板の上に単分子膜が成膜された試料が用いられても良い。また貴金属基板の上にグラフェンやMoS2等の2D材料薄膜が付いた試料が標準試料として用いられても良い。
図11に示されるように、金基板の上に4-PBTが成膜された試料は、一般的なラマン分光システムではラマンスペクトルが検出されないのに対し、探針増強ラマン分光ではラマンスペクトルが検出される。したがって、金基板上の4-PBT膜を標準試料として用いることにより、探針40aの頂点部40d近傍に形成される近接場光の強度をより正確に評価することができる。このような標準試料は、励起光73の照射角度の最適化だけでなく、探針増強ラマン分光装置の性能確認や他の光学系の調整に用いられても良い。また標準試料からラマン散乱光とは別にレイリー散乱光や蛍光が発生する場合は、レイリー散乱光や蛍光から抽出される散乱光信号が励起光73の照射角度の調整に用いられても良い。
<液中測定の構成>
図12を用いて、液中の試料10を測定するときのカンチレバー40と対物レンズ75の配置について説明する。図12に例示される構成には、対物レンズ75やカンチレバー40とともに、容器601が含まれる。本構成の場合、カンチレバー40と試料10は、容器601に収容される液体の中に配置される。また対物レンズ75の先端も液体の中に入れられる。対物レンズ75からはカンチレバー40へ励起光73や光てこ光線62が照射される。また試料から発生する散乱光のうちの検出光76やカンチレバー40で反射した光てこ光線62は対物レンズ75に回収される。なお、その他の構成、動作は、走査プローブ顕微鏡100と同様であるので、説明を省略する。
図12を用いて、液中の試料10を測定するときのカンチレバー40と対物レンズ75の配置について説明する。図12に例示される構成には、対物レンズ75やカンチレバー40とともに、容器601が含まれる。本構成の場合、カンチレバー40と試料10は、容器601に収容される液体の中に配置される。また対物レンズ75の先端も液体の中に入れられる。対物レンズ75からはカンチレバー40へ励起光73や光てこ光線62が照射される。また試料から発生する散乱光のうちの検出光76やカンチレバー40で反射した光てこ光線62は対物レンズ75に回収される。なお、その他の構成、動作は、走査プローブ顕微鏡100と同様であるので、説明を省略する。
本構成において、防水ケース602を導入してもよい。例えば、探針40aにより近い箇所にXY走査部50、Z走査部51、又は加振部52を設置したが、液体に接触すると機能が果たせないこれら構成物を守るために、防水ケース602で囲ってもよい。この防水ケース602は特に液体の水位が高い場合に有効である。
<対物レンズの変形例>
図13A、図13B、図13Cを用いて対物レンズ75の変形例について説明する。図1に例示される走査プローブ顕微鏡100が備える対物レンズ75は透過型対物レンズである。これに対して図13Aには反射型対物レンズ901が、図13Bには放物面鏡902が、図13Cには積分鏡903がそれぞれ示される。すなわち透過型対物レンズである対物レンズ75の代わりに、反射型対物レンズ901、放物面鏡902、積分鏡903のいずれかが用いられても良い。
図13A、図13B、図13Cを用いて対物レンズ75の変形例について説明する。図1に例示される走査プローブ顕微鏡100が備える対物レンズ75は透過型対物レンズである。これに対して図13Aには反射型対物レンズ901が、図13Bには放物面鏡902が、図13Cには積分鏡903がそれぞれ示される。すなわち透過型対物レンズである対物レンズ75の代わりに、反射型対物レンズ901、放物面鏡902、積分鏡903のいずれかが用いられても良い。
以上、本発明の実施の形態について説明した。本発明はこれらの形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形したり、適宜組み合わせたりしても良い。
10…試料、20…試料ホルダ、21…レンズ、22…レンズ、23…検出光、30…可動ステージ、31…可動ステージ、32…開口部、40…カンチレバー、40a…探針、40b…梁部、40c…被保持部、40d…頂点部、40e…上角部、40f…稜線部、40g…斜面部、40h…斜面部、50…XY走査部、51…Z走査部、52…加振部、61…光てこ用光源、62…光てこ光線、63…光てこ用検出器、64…ダイクロミラー、71…励起用光源、72…レンズ、73…励起光、74…フィルタ、75…対物レンズ、76…検出光、77…レンズ、78…コリメータ、79…光ファイバー、80…分光器、90…制御部、100…走査プローブ顕微鏡、200…走査プローブ顕微鏡、300…走査プローブ顕微鏡、400…統合光学系、402…光学フィルタ、403…ポラライザ、404…位置・角度調整部、405…レンズ、406…レンズ、409…焦点調整部、410…ビームスプリッタ、411…観察用光源、412…観察光、413…ビームスプリッタ、414…観察用カメラ、415…ビームスプリッタ、500…傾斜機構、501…XYZステージ、502…固定用プレート、503…回転軸、504…穴、505…穴、506…穴、601…容器、602…防水ケース、901…反射型対物レンズ、902…放物面鏡、903…積分鏡、1001…貴金属基板試料、1002…標準試料、1011…近接場光散乱光、1012…ラマン散乱光、1013…特定ラマン散乱光、CL…対物レンズの光軸
Claims (18)
- 試料を保持する試料ホルダと、
前記試料に近接配置される探針と、
励起光を出射する励起光源と、
前記励起光を集光して前記探針に照射する対物レンズと、
前記励起光の照射により前記試料から発生する散乱光を検出する受光部と、
を備える走査プローブ顕微鏡であって、
前記対物レンズの光軸からずれた位置に前記励起光を入射させる入射位置調整部をさらに備えることを特徴とする走査プローブ顕微鏡。 - 請求項1に記載の走査プローブ顕微鏡であって、
前記入射位置調整部は、前記励起光を反射するミラーと、前記励起光の入射方向に前記ミラーを平行移動させる機構と、前記ミラーを傾ける機構を有し、前記ミラーを傾けることで前記励起光の照射位置を調整し、前記ミラーを平行移動させることで前記励起光の照射角度を調整することを特徴とする走査プローブ顕微鏡。 - 請求項2に記載の走査プローブ顕微鏡であって、
前記入射位置調整部を制御する制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記受光部によって検出される散乱光に基づいて、前記ミラーの位置や角度を制御することを特徴とする走査プローブ顕微鏡。 - 請求項3に記載の走査プローブ顕微鏡であって、
前記制御部は、前記受光部によって検出される散乱光から抽出される散乱光信号に基づいて、前記ミラーの位置や角度を制御することを特徴とする走査プローブ顕微鏡。 - 請求項4に記載の走査プローブ顕微鏡であって、
前記散乱光信号は:
前記探針の先端に付着したカーボンから発生したラマン散乱光、
又は標準試料から発生した、レイリー散乱光、ラマン散乱光、または蛍光、
の少なくとも1つの散乱光から抽出される信号であることを特徴とする走査プローブ顕微鏡。 - 請求項5に記載の走査プローブ顕微鏡であって、
前記散乱光信号は、前記標準試料から発生したラマン散乱光から抽出される信号であり、
前記標準試料は、前記励起光が照射された時のみラマン散乱光を発生させることを特徴とする走査プローブ顕微鏡。 - 請求項2に記載の走査プローブ顕微鏡であって、
前記励起光源と前記入射位置調整部と前記対物レンズを傾ける傾斜機構をさらに備えることを特徴とする走査プローブ顕微鏡。 - 請求項1に記載の走査プローブ顕微鏡であって、
前記受光部は前記対物レンズによって回収される散乱光を検出することを特徴とする走査プローブ顕微鏡。 - 請求項1に記載の走査プローブ顕微鏡であって、
前記探針を有するカンチレバーと、
光てこ光線を出射する光てこ用光源と、
光てこ用検出器をさらに備え、
前記光てこ用検出器が検出する光は、光てこ光線が前記対物レンズを通過し、次いで前記カンチレバーで反射し、次いで前記対物レンズを再び通過した光てこ光線であることを特徴とする走査プローブ顕微鏡。 - 請求項9に記載の走査プローブ顕微鏡であって、
前記対物レンズは前記受光部に検出される散乱光を回収することを特徴とする走査プローブ顕微鏡。 - 請求項1に記載の走査プローブ顕微鏡であって、
液体を収容する容器と、
前記探針を有するカンチレバーと、
前記カンチレバーを振動させる加振部と、
前記加振部を液体から守る防水ケースをさらに備え、
前記試料と前記カンチレバーと前記対物レンズの先端は、前記液体の中に配置されることを特徴とする走査プローブ顕微鏡。 - 請求項1に記載の走査プローブ顕微鏡であって、
前記探針は、頂点部と、上角部と、前記頂点部と前記上角部をつなぐ稜線部と、を有することを特徴とする走査プローブ顕微鏡。 - 請求項12に記載の走査プローブ顕微鏡であって、
前記稜線部の長さは前記励起光の波長の5倍より短いことを特徴とする走査プローブ顕微鏡。 - 請求項1に記載の走査プローブ顕微鏡であって、
前記対物レンズは、透過型対物レンズと、反射型対物レンズと、放物面鏡と、積分鏡と、の少なくとも1つより構成されることを特徴とする走査プローブ顕微鏡。 - 請求項1に記載の走査プローブ顕微鏡であって、
前記入射位置調整部は、前記受光部によって検出される散乱光から抽出された散乱光信号に基づいて、前記励起光の照射角度を調整することを特徴とする走査プローブ顕微鏡。 - 請求項15に記載の走査プローブ顕微鏡であって、
前記照射角度は15°~135°の範囲で調整されることを特徴とする走査プローブ顕微鏡。 - 走査プローブ顕微鏡に使用される試料であって、
基板が貴金属であることを特徴とする試料。 - 請求項17に記載の試料であって、
前記基板の上に有機膜が成膜されることを特徴とする試料。
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