特に明記されていない限り、本明細書に記載の方法及び手段は、通常、当該技術分野でよく知られている従来の方法にしたがって行ってもよく、本明細書全体で引用、議論されている様々な一般的及びより具体的な参照文献に記載されている。例えば、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」,Sambrookら,第3バージョン,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(2001);「Current Protocolsin Molecular Biology」,Ausubelら,Greene Publishing Associates(1992);及び「Antibodies:A Laboratory Manual」,Harlow及びLane,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1990)を参照してもよい。
定義
明確に理解し、参照を容易にするために、ここで、本明細書全体及び本出願の他の部分において使用される用語のリストを集める。これらの用語のいくつかは、本分野で周知であり、明確のために本明細書で定義されているが、これらの用語のいくつかは、本明細書に特別に使用されており、したがって、本発明を正確に理解するために定義されなければならない。
英語の単数形は、本明細書において、1又は2以上、少なくとも一つを意味する。英語の複数形は、本明細書で使用される場合、一般的に単数の意味も含む。
本明細書で使用される場合、「細胞バンク」という用語は、本開示にかかるプライム化培地で培養された後に、将来の使用のために保管された幹細胞(例えば、間葉系幹細胞、MSC又は多分化能間質細胞)を意味してもよい。このような細胞は、アリコートとして分注保管してもよい。これらは、保管せずにそのまま使用してもよいし、保管後に拡大培養してもよい。これにより、研究、臨床試験又は臨床療法中の投与に有用な「既製の」細胞の提供が可能になるため、便利さをもたらすことができる。これらの細胞株は、薬学的に許容可能な賦形剤中に既に保管されていてもよく、この場合、それらを直接投与してもよいし、又はそれらを保管から解放する際に適切な賦形剤と混合してもよい。細胞は、生存能力を維持するように凍結またはその他の方式で保存してもよい。バンクは、治療対象個体由来の細胞を用いて設立してもよい。或いは、バンクは、同種異体を使用対象とする細胞を含んでもよい。
本明細書で使用される場合、「細胞療法」又は「細胞による療法」という用語は、疾患又は障害(例えば、全身性炎症又は自己炎症)に関連する1つ以上の症状を予防、治療又は改善するために、本開示にかかるヒト又は動物由来の幹細胞(すなわち、本開示にかかるプライム化培地で培養された細胞や、それに接触又は暴露された細胞)を移植することを意味してもよく、上記1つ以上の症状の予防、治療又は改善として、例えば、損傷した組織又は臓器の置換又は修復、免疫反応の調節、炎症症状の軽減などが挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書において「修復」という用語は、損傷した組織に関して直接的に使用される場合、直接的なメカニズム(例えば、損傷した組織の再生)及び間接的なメカニズム(例えば、本開示にかかる幹細胞(すなわち、本開示にかかるプライム化培地で培養された細胞、又は、それに接触又は暴露された細胞)によって炎症を緩和した結果、組織を形成することが可能になる)によって、このような損傷を改善することを意味してもよい。
本明細書で使用される場合、「細胞増殖培地」という用語は、ここで説明されている、本開示にかかる幹細胞(すなわち、本開示にかかるプライム化培地で培養された細胞、又はそれに接触又は暴露された細胞)などの細胞の成長を支持するのに適した因子及び栄養素を含む増殖又は拡大培養用水性培地を意味してもよい。初期接種及び培養(例えば、コンフルエント状態になるまで)には、10%FBSを含むDMEMなどの標準又は既製の培地を使用してもよい。コンフルエント状態になった後、細胞維持のために、低グルコース無血清DMEMなどの支持培地を使用してもよい。応用される細胞培地は、細胞培養分野でよく知られているものであり、全て市販品であってもよい。
「含む」という用語は、特に限定されない限り、対象物が必ず含まれるがその他の含有可能なものについていかなる制限又は排除する意図がない。例えば、「XとYとを含む組成物」は、組成物中に他のいかなる成分が存在するかどうかにかかわらず、XとYとを含有するあらゆる組成物を包含する。同様に、「工程Xを含む方法」は、工程Xが該方法の唯一の工程であるか、又は複数の工程のうちの1つであるかにかかわらず、そして、その他の工程がいくつ存在するか、工程Xがその他の工程に比べてどれほど簡単又は複雑であるかにかかわらず、Xが実施されるあらゆる方法を包含する。「含む」と語根「含む」を用いた類似句は、本明細書では「含む」の同義語として用いられており、「含む」と同じ意味を有する。
本明細書で使用される場合、用語「条件培地」又は「CM」は、本開示にかかる幹細胞(すなわち、本開示にかかるプライム化培地で培養された細胞や、それに接触又は暴露された細胞)を一定の時間培養した培地を意味してもよい。一実施例において、条件培地は、本明細書に開示されるプライム化方法により産生された幹細胞を培養し、次いで培養期間後に上澄み液又は条件培地を採取することにより調製することができる。
本明細書で使用される場合、「合成培地」という用語は、特定の指定因子が添加された細胞培養成長用培地を意味してもよい。この用語はまた、すべての成分がそれらの化学式で表われることが可能であり、且つ既知の濃度で含まれる細胞培養成長用培地を指してもよく、非合成培地とは反対する意味を有する。
本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、所望の局所的又は全身的効果を提供可能な量を意味してもよい。前記「所望の局所的又は全身的効果」として、例えば、望ましくない状態(例えば、移植片対宿主病、全身性エリテマトーデスなどの全身性炎症性又は自己炎症性疾患に関連する炎症)を効果的に改善することが挙げられ、本開示で説明される特定の所望の効果を達成することを含む。例えば、有効量は、有益な又は所望の臨床結果を達成するのに十分な量であってもよい。有効量は、1回の施用で一括して全て提供されてもよいし、数回の施用に分けて提供されてもよい。有効と見なされる量は、各被験者の体型、年齢、損傷及び/又は治療対象とする疾患又は損傷、及び損傷又は疾患が発生してからの時間量などの、各被験者の個々の要因に基づいて正確に決定してもよい。当業者にとって、これらの当分野の従来の考慮要因に基づいて所定の被験者に投与される有効量を決定してもよい。「有効用量」という用語は、「有効量」と同じ意味を有してもよい。
本明細書で使用される場合、「有効な経路」という用語は、薬剤(例えば、幹細胞)を体内における所望の区画、システム、又は位置に送達するための経路を意味してもよい。例えば、有効な経路は、有益な又は所望の臨床結果を達成するのに十分な量の薬剤を所望の作用部位において提供するための、薬剤を投与可能な経路であってもよい。
本明細書で使用される場合、「外来添加」という用語は、培養物又は条件培地の文脈において、培養物又は培地中に既に存在している可能性のある任意の化合物又は成長因子を補充するために、化合物、成長因子、分化因子などを培養物又は培地中に添加することを指しても良い。
本明細書で使用される場合、「単離」という用語は、対象細胞が、それとインビボで関連する1つ以上の細胞又は1つ以上の細胞成分と不関連になることを指しても良い。「増量集団」とは、インビボ又は初代培養物中の1つ以上の他の細胞種と比較して、所望の細胞の数が相対的に増加していることを意味してもよい。しかしながら、本明細書で使用される場合、「単離」という用語は、本明細書に記載される細胞のみが存在することを意味しない。一方、「単離」という用語は、本明細書に記載される細胞がその天然組織環境から除去され、且つ、正常組織環境と比較してより高い濃度で存在することを示唆しても良い。したがって、「単離」細胞集団は、本明細書に記載される細胞以外の細胞種をさらに含んでもよく、さらに別の組織成分を含んでもよい。これは、例えば、細胞倍加で表すことも可能である。細胞は、インビトロ又はエクソビボで10、20、30、40又はこれ以上倍加することで、インビボ又はその元の組織環境(例えば、骨髄、末梢血、胎盤、臍帯、臍帯血、脂肪組織など)における元の量と比較して濃縮されることができる。
本明細書で使用される場合、「間葉系幹細胞」又は「MSC」という用語は、胚中胚葉に由来する、成体骨髄、末梢血、脂肪、胎盤及び臍帯血などの多くの由来から単離し得る細胞を意味してもよい。MSCは、筋肉、骨、軟骨、脂肪、腱を含む多くの中胚葉組織に分化することができる。これらの細胞に関する文献が大量にある。例えば、米国特許番号5,486,389;5,827,735;5,811,094;5,736,396;5,837,539;5,837,670;及び5,827,740を参照すればよい。また、Pittenger・Mら、「Science、284:143-147(1999)」も参照可能である。いくつかの場合、MSCは明らかに健康な被験者(例えば、ヒト被験者)、すなわち、疾患の徴候及び/又は症状がない被験者から由来してもよい。また、当該用語は、「多分化能間質細胞」と置換して使用してもよい。
本明細書で使用される場合、「多分化能(multiponent)」又は「多分化能細胞」という用語は、限られた種類の他の特定の細胞種を産生可能な細胞種を指す。多分化能細胞は、1つ以上の胚性細胞の運命に関与しているので、多能性(pluriponent)細胞と異なり、3種類の胚性細胞系譜のいずれも産生することができず、胚外細胞も産生できない。
「部分的」という用語は、細胞培養物及び/又は細胞集団と組み合わせて使用される場合、ゼロでない量の任意の細胞培養物又は細胞集団を意味してもよく、一個の細胞から細胞培養物又は細胞集団全体までの範囲をカバーすることができる。いくつかの場合、「部分的」という用語は、細胞培養物又は細胞集団の少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも11%、少なくとも12%、少なくとも13%、少なくとも14%、少なくとも15%、少なくとも16%、少なくとも17%、少なくとも18%、少なくとも19%、少なくとも20%、少なくとも21%、少なくとも22%、少なくとも23%、少なくとも24%、少なくとも25%、少なくとも26%、少なくとも27%、少なくとも28%、少なくとも29%、少なくとも30%、少なくとも31%、少なくとも32%、少なくとも33%、少なくとも34%、少なくとも35%、少なくとも36%、少なくとも37%、少なくとも38%、少なくとも39%、少なくとも40%、少なくとも41%、少なくとも42%、少なくとも43%、少なくとも44%、少なくとも45%、少なくとも46%、少なくとも47%、少なくとも48%、少なくとも49%、少なくとも50%、少なくとも51%、少なくとも52%、少なくとも53%、少なくとも54%、少なくとも55%、少なくとも56%、少なくとも57%、少なくとも58%、少なくとも59%、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも94%、又は少なくとも95%を意味しても良い。
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容可能」という用語は、合理的な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、他の問題や合併症を引き起こさず、合理的な利益/リスク比を示す、人間及び動物の組織と接触するように使用するのに適した化合物、材料、組成物(例えば、細胞)、及び/又は剤形を指してもよい。
本明細書で使用される場合、細胞の文脈では、「多能性」又は「多分化能(性)」という用語は、3つの胚性細胞系譜のいずれか及び胚外細胞に由来する複数の組織を産生しうる細胞を指しても良い。この用語は、内部細胞塊状態に限られ、いかなる場合にも、発育期間中に形成した、又は周産期から成体期までに存在する、系譜特異的前駆細胞を説明するために使用されない。多能性細胞の状態は天然の状態であるが、当業者に知られている特定の条件下でインビトロで増殖することも可能である。このような培養条件下では、幹細胞の永続的維持又は多能性状態が生じる。多能性細胞の定義のための性質は、その機能的特徴に限られず、遺伝子発現パターンによっても表されるため、多能性細胞の同定は、それらが示すマーカーの染色パターンや定量的な測定によって実現することができる。タンパク質転写因子Oct3/4、Sox2及びNANOGの存在は、多能性状態の維持に関与する一組のコア転写因子を表し、これらの因子のダウンレギュレーションは分化の前提条件である。上記3つの転写因子は、いずれも相互作用を示し、それらに転写制御される遺伝子には、多くの重複のものが存在する。さらに、多能性維持を担う転写因子は、通常、その上に存在するいくつかの表面マーカーを用いて同定され、最も一般的な表面マーカーは、ステージ特異的胚抗原3及び4(SSEA3及びSSEA4)、TRA-1-61及びTRA-1-81である。胚性幹細胞のような多能性細胞はまた、通常の多能性細胞の同定に用いられるアルカリホスファターゼ活性を示すことが可能である。
本明細書で使用される場合、「前駆細胞」という用語は、いかなる場合にも、分化した細胞の直接系譜の祖先を表す正常な細胞状態を指しても良い。定義によれば、前駆細胞は、不可逆的に上記確定的運命を取らなけばならないことではなく、複数の確定的状態に対して多能性であってもよい。したがって、2つ以上の子孫の運命に分化する能力を示す。任意の生命体において発育が進行するにつれて、徐々に能力が失われ、したがって多能性が失われることは、組織や器官の分化と一時的に定義される形成の指標となる。前駆細胞の一例として、ある遺伝子の挿入によって非多能性細胞(通常は成体体細胞)から人工的に誘導された多能性幹細胞の一種である誘導多能性幹細胞(iPSC)が挙げられる。
本明細書で使用される場合、「自己更新」という用語は、幹細胞が複製娘幹細胞を産生する能力を指してもよく、前記複製娘幹細胞は、それらを産生した幹細胞と同一の分化能を有する。
本明細書で使用される場合、「拡大培養」、及び「増殖」という用語は、細胞数の増加を実現する過程を意味してもよい。この用語はまた、細胞分裂と細胞死や細胞分化による細胞損失との間のバランスを指しても良い。
本明細書で使用される場合、「幹細胞」という用語は、自己更新する(すなわち、同じ分化能を有する子孫を産生する)ことができ、分化能がより制限された子孫細胞を産生することもできる細胞を指しても良い。本開示の文脈において、幹細胞は、例えば、核移殖、より原始的な幹細胞との融合、特定の転写因子の導入、又は特定の条件下での培養によって脱分化された、より分化した細胞も包含する。例えば、Wilmutら,Nature,385:810-813(1997);Yingら,Nature,416:545-548(2002);Guanら,Nature,440:1199-1203(2006);Takahashiら,Cell,126:663-676(2006); Okitaら,Nature,448:313-317(2007); Takahashiら,Cell,131:861-872(2007)を参照してもよい。
脱分化はまた、特定の化合物を投与すること、又は脱分化を誘導可能なインビトロ又はインビボの物理的環境に暴露することによって引き起こすことができ、この過程は実質的に多能性の獲得を反映する。幹細胞はまた、奇形がん腫のような異常組織や胚様体(これらは、直接的に内部細胞塊に由来ではないが、到底、胚性組織に由来する点で胚性幹細胞とも見なされる。)などの他の由来から得られたことも可能である。多能性幹細胞状態は、非幹細胞(例えば、誘導多能性幹細胞)に幹細胞の機能に関連する遺伝子を導入することによっても産生することができる。
本明細書で使用される場合、「被験者」という用語は、脊椎動物又は哺乳動物を指しても良い。被験者の例として、家畜、試験動物及びペットが挙げられ、例えば、ヒツジ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、及びネズミなどの哺乳動物や、爬虫類、鳥、及び魚であってもよい。「患者」及び「被験者」という用語は、本明細書では同じ意味で使用してもよい。一例では、被験者は哺乳動物である。哺乳動物としては、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ又はウシであってもよいが、これらに限定されない。
本明細書で使用される場合、細胞培養物又は細胞集団中の細胞について、「実質的に含まれない」という用語は、対象細胞種を、細胞培養物又は細胞集団中に存在する細胞の総数の約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、又は約1%未満の量で、含むことを意味してもよい。
本明細書で使用される場合、「治療有効量」という用語は、被験者中に何らかの治療的反応を生じると確認できる試薬(例えば、本開示にかかるプライム化培地で培養された、又はそれに接触や暴露された1種又は複数種の細胞)の量を意味してもよい。本明細書で使用される用語の意味範囲内で治療的に有効な治療としては、それら自体が疾患の結果を改善しなくても、被験者の生活品質を改善する治療であってもよい。このような治療有効量は、当業者にとって容易に決定することができる。したがって、「治療」とは、そのような量を送達することを意味してもよい。そうすると、治療により、全身性炎症性又は自己炎症性疾患などの疾患又は障害のあらゆる病理的症状を予防又は改善することができる。
本明細書で使用される場合、「治療」という用語は、欠陥、機能障害、疾患、又は他の有害なプロセスを予防、改善、抑制、又は治癒することを含み、前記他の有害なプロセスとして、治療に対して妨害しうるもの、及び/又は治療から生じるものが挙げられる。いくつかの場合、疾患又は障害の症状は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、又は少なくとも50%軽減される。
本明細書で使用される場合、「予防」、又は「予防的に」とは、疾患又は障害(例えば、全身性炎症性又は自己炎症性の疾患又は障害)の少なくとも1つの症状を完全に又は部分的に(例えば、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、又は少なくとも50%)予防又は抑制することを意味してもよく、或いは、このような症状が現れる頻度は、疾患又は障害の症状を完全に又は部分的に(例えば、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、又は少なくとも50%)予防又は抑制することを意味してもよく、あるいは、このような症状が現れる頻度である。
本明細書で使用される場合、本開示のプライム化培地と接触する一つの幹細胞(又は複数の幹細胞)に言及する場合、「誘導」という用語は、プライム化培地との接触に起因する一つの幹細胞(又は複数の幹細胞)の表現型(例えば、表面標識型及び/又は存在及び/又は不存在)及び/又は遺伝子型(例えば、mRNA発現レベル)の変化を指しても良い。
本明細書で使用される場合、「均一誘導」という用語は、幹細胞集団中の少なくとも一部の幹細胞が、本開示のプライム化培地との接触により、幹細胞の表現型及び/又は遺伝子型の1つ以上の変化を得るように誘導されることを意味してもよい。いくつかの場合、実質的に均一な誘導が生じることがある。実質的に均一な誘導は、幹細胞の表現型及び/又は遺伝子型の1つ以上の変化を得るように誘導された大部分の幹細胞(>50%)を意味してもよい。あるいは、実質的に相同の誘導は、幹細胞の表現型及び/又は遺伝子型の1つ以上の変化を得るように誘導された大部分の幹細胞、例えば、約50~55%、約55~60%、約60~65%、約65~70%、約70~75%、約75~80%、約80~85%、約85~90%、約90~95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の幹細胞を指しても良い。
本明細書で使用される場合、「検証」という用語は、確認と意味してもよい。本開示の文脈において、幹細胞は、所望の機能及び/又は表現型を有する特定の細胞種(例えば、MSC)であることが確認できる。これにより、当業者が幹細胞を(治療、バンク設立、薬物スクリーニング等の用途に)使用する際に、当該幹細胞による効能を合理的に期待可能である。したがって、検証とは、所望の活性及び/又は表現型を有することが発見・樹立された幹細胞が、その活性及び/又は表現型を確かに保持していることを確認することを意味してもよい。したがって、検証は、最初の判定とその後の判定とに関する2つのイベントプロセスにおける証明イベントとしてもよい。第2のイベントは、本明細書では「検証」を指しても良い。
本明細書で使用される場合、「既製培地」という用語は、血清含有基礎培地及び他の化合物(例えば、アスコルビン酸、デキサメタゾンなど)を含む培地組成物を意味してもよい。血清は本質的に培地中の不明確な成分である。したがって、異なるロットの血清の異質性のため、市販の「既製の」血清含有培地の正確な組成は不明である。「既製培地」の一例は、1%L-グルタミン(Glutamax;Invitrogen)、10%ウシ胎児血清、100nM デキサメタゾン、50μM アスコルビン酸-2P、及び10mM β-グリセロリン酸エステルを補充したDulbecco改良Eagle培地/Ham栄養混合物F-12(DMEM/F-12 1:1;Invitrogen)である。
本明細書で使用される場合、「全身性自己免疫疾患又は障害」又は「自己炎症性疾患又は障害」という用語は、被験者の自己細胞、組織及び/又は器官に対する免疫反応によって引き起こされた細胞、組織及び/又は器官の損傷を特徴とする被験者の状態を意味してもよい。本開示によって産生された免疫調節細胞によって治療可能な自己免疫疾患の例示的かつ非限定的な例としては、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫性アジソン病、副腎自己免疫疾患、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性卵巣炎や精巣炎、自己免疫性血小板減少症、ベフチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、口内炎性皮膚炎、慢性疲労性免疫不全症候群(CF1DS)、慢性炎症性脱髄性多発性神経障害、チャーグストロース症候群、瘢痕性類天疱瘡、CREST症候群、寒冷凝集素症、円板状エリテマトーデス、原発性混合クリオグロブリン血症、線維筋痛症-線維筋炎、糸球体腎炎、バセドウ病、ギランバレー症候群、橋本甲状腺炎(Hashimoto’s thyroiditis)、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgA神経障害、若年性関節炎、扁平苔、メニエール病、混合性結合組織病、多発性硬化症、1型又は免疫媒介糖尿病、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多動脈炎、多軟骨炎、多腺症候群、リウマチ性多筋痛症、多筋炎と皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、乾癬関節炎、レイノー現象、ライター症候群、結節症、強皮症、進行性全身性強皮症、シェーグレン症候群、Good Pasture症候群、硬直症候群、全身性エリテマトーデス、エリテマトーデス、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、血管炎(例えば、疱疹状皮膚炎型血管炎)、白斑症、ウェゲナー肉芽腫症、抗糸球体基底膜症、抗リン脂質症候群、神経系自己免疫性疾患、家族性地中海熱、Lambert-Eaton筋無力症候群、交感性眼炎、多内分泌症、乾癬などが挙げられる。
一例では、本開示によって治療可能な全身性自己免疫疾患又は自己炎症性疾患は、SLE、混合性結合組織病、シェーグレン症候群、重複症候群(関節リウマチと、SLE及び/又はシェーグレン症候群と)、移植片対宿主病、成人又は幼年特発性乾癬関節炎、皮膚筋炎、多発性筋炎、その他の筋炎、全身性血管炎、CNS血管炎、強皮症、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、リウマチ性関節炎、全身型若年性特発性関節炎、幼年関節炎、成人スティール病、全身性強皮症を含んでもよい。
全身性自己免疫疾患又は自己炎症性疾患の他の例としては、単一遺伝子性インターフェロノパチーが挙げられ、単一遺伝子性インターフェロノパチーの場合、遺伝子変異体によりI型インターフェロン経路の活性化を引き起こし、これにより複雑なリウマチ疾患を引き起こす。これらの疾患は、不調なI型インターフェロン産生の駆動要因に依存する自己免疫-自己炎症スペクトルに基づいくものであると考えられている。これらの疾患は、Aicardi-Goutieres症候群(AGS)、脂肪異栄養症と発熱を伴う慢性非典型的好中球性皮膚病(CANDLE)、乳児発症性STING関連血管炎(SAVI)を含む。血管炎及び高インターフェロンレベルに関連する他の疾患としては、脳白質萎縮症を伴う網膜血管障害(RVCL)及びSingleton-Merten症候群が挙げられ、これらの疾患の場合、臨床徴候は慢性炎症に関連すると考えられ、少なくとも一部がRIG-Iの構成的活性化に起因し、I型インターフェロン活性及びISG発現の向上を引き起こす。
本明細書で使用される場合、「免疫調節」という用語は、免疫系の1つ以上の生物学的活性の修飾、増幅、阻害又は低減を意味してもよく、例えば、免疫応答のダウンレギュレーション、免疫応答の増強、及び、サイトカイン像、細胞毒性活性及び抗体産生の変化を介する炎症性状態の変化、ならびに、上記各状況による免疫及び免疫関連細胞への効果とが挙げられが、これらに限定されない。
本明細書で使用される場合、「細胞集団」という用語は、1を超える任意の数の幹細胞(例えば、MSC)を意味してもよいが、好ましくは、少なくとも1×103個の細胞、少なくとも1×104個の細胞、少なくとも1×105個の細胞、少なくとも1×106個の細胞、少なくとも1×107個の細胞、少なくとも1×108個の細胞、又は少なくとも1×109個の細胞である。いくつかの場合、初期幹細胞集団において、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、又は少なくとも95%の細胞(細胞個数%)(例えば、MSCなどの幹細胞)は、未分化幹細胞(例えば、未分化MSC)である。
本明細書で使用される場合、用語「有意な発現」又はその同義語である「陽性」及び「+」は、細胞表面マーカーに関して使用される場合、細胞集団において、20%超の細胞、好ましくは30%超、40%超、50%超、60%超、70%超、80%超、90%超、95%超、98%超、99%超、又は100%の細胞が細胞表面マーカーを発現することを意味する。
細胞表面マーカーの発現は、例えば、従来の方法及び装置(例えば、市販の抗体及び当該技術分野で知られている標準プロトコルと共に使用されるBECKMAN COULTER EPICS XL FACSシステム)を使用する特定の細胞表面マーカーのフローサイトメトリーによって確認することができ、前記従来の方法及び装置を使用する場合、フローサイトメトリーにおいて、バックグラウンドシグナルよりも高い特定の細胞表面マーカーのシグナルを示す。バックグラウンドシグナルは、従来のFACS分析において各表面マーカーを検出するために使用される特異的抗体と同じアイソタイプの非特異的抗体によるシグナル強度と定義される。陽性とみなされるマーカーについては、従来の方法及び装置を使用する場合、その観察される特定のシグナルは、バックグラウンドシグナル強度より20%強く、好ましくは30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、500%、1000%、5000%、10000%又はそれ以上強い。さらに、前記細胞表面マーカー(例えば、細胞受容体及び膜貫通タンパク質)に対する市販や既知のモノクローナル抗体を用いて、関連する細胞を同定することができる。
本明細書で使用される場合、「プライム化培地」という用語は、新しい成分や特定の成分を含む細胞培地を指してもよく、前記各成分の組み合わせにより、有効な培養条件下で前記培地と接触している幹細胞(例えば、MSC)中に抗炎症表現型を相乗的に誘導する。
本明細書で使用される場合、「I型インターフェロン経路」という用語は、先天的で適応的免疫の制御を機能する炎症性経路を意味してもよい。I型インターフェロン(IFNs)(主にIFN-α及びIFN-β)はI型インターフェロン経路を調節する。I型IFN産生は、パターン認識受容体(PRR)の検出後に誘導される。I型インターフェロンは、抗原提示とナチュラルキラー細胞機能を促進しながら、炎症誘発経路とサイトカイン産生を阻害するようにバランスよく先天性免疫応答を調節する。I型インターフェロンはまた、適応性免疫系を活性化することにより、高親和性抗原特異的T及びB細胞応答及び免疫記憶の発達を促進し、自己免疫疾患(例えば、シェーグレン症候群又はSLE)を引き起こす可能性のある一連のイベントを開始させる。
本明細書で使用される場合、「II型インターフェロン経路」という用語は、主にインターフェロンγ(IFN-γ)によって調節される炎症性経路を指しても良い。IFN-γは遺伝子調節に影響するJAK-STAT経路を主に介してシグナルを発する。JAK-STATシグナル伝達は、Janusファミリーのキナーゼのメンバー(JAKs:JAKs1-3及びTYK2)及びSTATs(STAT5a及びSTAT5bを含むSTATs1-6)の一連の受容体のリクルートメント及び活性化に関与し、特定の応答因子を介して標的遺伝子の転写を制御する。IFN-γは適応性及び先天性免疫において重要な役割を果たすサイトカインである。
本明細書で使用される場合、「I型及びII型インターフェロン経路の機能性活性化剤」という用語は、I型及びII型インターフェロン経路の両方を刺激する分子のいずれか又は複数種の分子の組み合わせを意味してもよい。一例では、IDOの発現レベル及び/又は活性は、I型及びII型インターフェロン経路の活性化の指標として使用可能である(例えば、対照値と比較して増加したIDOの発現及び/又は活性は、I型及びII型インターフェロン経路の活性化を示し得る)。IDOの発現及び活性を測定するための方法は、この分野で知られている。
本明細書で使用される場合、「抗炎症表現型」という用語は、遺伝子及びタンパク質の発現に関与する複数の細胞プロセスの集合体を意味してもよく、前記複数の細胞プロセスにより、細胞の特定の形態及び機能的特徴をもたらすことができ、前記細胞の特定の形態及び機能的特徴は、本開示のプライム化培地を用いる培養の結果として、本開示のプライム化培地と接触していない細胞と比較して1つ以上の抗炎症性又は免疫調節性メディエーター又はマーカーの発現及び/又は分泌が増加することを標識又は特徴とする細胞を産生する。
本明細書で使用される場合、「炎症性サイトカイン」という用語は、免疫細胞(例えば、ヘルパー又は細胞傷害性T細胞(Th)、単球、樹状細胞、及びマクロファージ)から分泌され、炎症を刺激するシグナル伝達分子の一種を意味してもよい。
本明細書で使用される場合、「インターフェロン調節性自己免疫疾患」という用語は、1種のインターフェロン又は複数種のインターフェロンの組み合わせが疾患の病因的又は発症機序に積極的に関与し、自己免疫疾患の進行に積極的に作用する自己免疫疾患を意味してもよい。言い換えれば、インターフェロン活性がその疾患の指標である場合、この疾患はインターフェロン調節性自己免疫疾患である。
本明細書で使用される場合、「I型インターフェロン経路の異常な活性化」という用語は、I型インターフェロン経路の活性化過程中に一般的に予想される応答とは異なる先天性及び適応性免疫系の応答を意味してもよい。例えば、サイトカインストームなどのI型インターフェロン経路の異常な活性化により、過剰な先天性及び適応性免疫応答が生じる可能性がある。
本明細書で使用される場合、「II型インターフェロン経路の異常な活性化」という用語は、I型インターフェロン経路の活性化過程中に一般的に予想される応答とは異なる先天性及び適応性免疫系の応答を意味してもよい。例えば、病原体による誘導がない場合には、過剰な又は有害な先天性及び適応性免疫応答が起こり、終末器官の炎症性変化や損傷を引き起こすことがある。
本明細書で使用される場合、「CAR-T細胞」という用語は、被験者から採取されたT細胞を、それにキメラ抗原受容体(CAR)タンパク質を付加するようにインビトロで修飾してから被験者に再投与されるT細胞を意味してもよい。被験者への再投与前にCAR-T細胞をプライム化するための方法は、本明細書で開示される。
本明細書で使用される場合、「CAR-NK細胞」という用語は、被験者から採取されたNK細胞を、それにCARタンパク質を付加するようにインビトロで修飾してから被験者に再投与されるNK細胞を意味してもよい。被験者への再投与前にCAR-NK細胞をプライム化するための方法は、本明細書で開示される。
本明細書で使用される場合、「免疫調節性メディエーター」という用語は、免疫系の1つ又は複数の成分に影響を与える分子(例えば、細胞によって分泌される分子)を意味してもよい。免疫系成分の例としては、タンパク質(例えば、サイトカイン、インターロイキン、抗体、補体、細胞受容体、リガンド、免疫組織適合性複合体など)、及び免疫細胞(例えば、NK細胞、T細胞及びB細胞などのリンパ球、好中球、マクロファージ/単球)が挙げられる。いくつかの場合、効果は、プラス(例えば、タンパク質レベル及び/又は活性の向上、又は免疫細胞の増殖及び/又は活性の向上)又はマイナス(例えば、タンパク質レベル及び/又は活性の低下、又は免疫細胞の増殖及び/又は活性の低下)であってもよい。免疫調節性メディエーターの非限定的な例としては、IDO、IL-1β、IL-17A、TNF-α、及びTNF-γを含むことができる。
本明細書で使用される場合、「細胞毒性活性」という用語は、細胞(例えばCAR-T細胞又はCAR-NK細胞)が異なる種類の細胞を殺傷する能力を意味してもよく、通常、リンパ球の場合にはポリンを合成することにより前記殺傷を実行する。この能力は、リンパ球と標的細胞とを共培養することにより測定することができる。細胞の細胞毒性活性を確認するための他の測定方法は、当該技術分野で知られている。
本明細書で使用される場合、分子(例えば、免疫調節性メディエーター)の活性及び/又は量の「ダウンレギュレート」又は「ダウンレギュレーション」や、「低下」又は「低減」という用語は、対照値と比較して、分子の活性及び/又は量が、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%までダウンレギュレート、低下、又は減少されることを意味してもよい。いくつかの場合、「ダウンレギュレーション」という用語は、完全な阻害を意味してもよい。
本明細書で使用される場合、分子(例えば、免疫調節性メディエーター)の活性及び/又は量の「アップレギュレート」又は「アップレギュレーション」や、「向上」又は「増加」という用語は、対照値と比較して、分子の活性及び/又は量が、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%までアップレギュレート又は増加されることを意味してもよい。
プライム化培地
本開示の一態様においては、非プライム化幹細胞集団から、非プライム化幹細胞集団と比較して抗炎症表現型を有する単離幹細胞集団を産生するためのプライム化培地を含んでもよい。前記プライム化培地は、無血清培地と、I型IFN経路及びII型IFN経路の機能性活性化剤と、少なくとも2種の炎症性サイトカインとを含んでもよい。機能性活性化剤及び少なくとも2種類の炎症性サイトカインは、抗炎症表現型を有する幹細胞の誘導を促進するのに十分な量で存在してもよい。抗炎症表現型を有する細胞は、非プライム化幹細胞集団と比較して1つ以上の抗炎症性又は免疫調節性メディエーターの発現及び/又は分泌が向上したことを標識としてもよい。
いくつかの場合、本開示のプライム化培地は、合成培地であってもよい。
プライム化培地は無血清培地であってもよい。本開示のプライム化培地に含有可能な無血清培地の例としては、DMEM-F12、DMEM、及びα-MEMを含んでもよい。無血清培地は、いかなる種類の動物血清も含まない培地である。無血清培地は、幹細胞の異種汚染の可能性を回避することが好ましい。血清代替物のない培地は、いずれの市販の血清代替物製剤も補充されていない培地である。無血清培地のプライム化培地における含有量(例えば、w/v)が少なくとも約80~99%、例えば、約80~82%、約82~84%、約84~86%、約86~88%、約88~90%、約90~92%、約92~94%、約94~96%、約96~98%、又は約98~99%となるように、前記無血清培地をプライム化培地中に提供してもよい。
本開示のプライム化培地は、細胞の生存及び汚染防止に必要な他の成分を含んでもよく、このような成分として、例えば、グルコースと、細菌、マイコプラズマ及び真菌による汚染を軽減するための抗菌剤とが挙げられる。したがって、本開示のプライム化培地は、汚染を防止するために1つ以上の抗菌剤又は抗生物質を含んでもよい。通常に使用される抗生物質又は抗真菌化合物は、ペニシリン/ストレプトマイシンの混合物であるが、アンホテリシン(登録商標:アンホテリシンB)、アンピシニシリン、ゲンタマイシン、ボレマイシン、ハイドロマイシン、カナマイシン、マイトマイシンなどを含んでもよいが、これらに限定されない。
いくつかの場合、本開示のプライム化培地は、I型IFN経路及びII型IFN経路の1つ又は複数の機能性活性化剤を含んでもよい。一例では、本開示のプライム化培地は、I型IFN経路及びII型IFN経路の1つの機能性活性化剤(例えば、poly(I:C))のみを含む。いくつかの場合、I型IFN経路及びII型IFN経路の機能性活性化剤は、TLR3などのToll様受容体(TLR)リガンドを含んでもよい。TLRリガンドは、TLRシグナル伝達を活性化し、且つ炎症反応を誘導することができる任意の分子、化合物又は試薬を含んでもよい。TLRリガンドは、任意の公知のTLR(例えば、TLR1-TLR10)と結合又は相互作用することにより、TLRシグナル伝達を活性化することができる。I型IFN経路及びII型IFN経路の機能性活性化剤は、I型IFN経路及びII型IFN経路を刺激又は活性化する合成分子(例えば、TLRリガンドの合成アナログ)を含んでもよい。いくつかの場合、TLRリガンドは、Poly(I:C)、リポ多糖(LPS)、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、及びインターロイキン-1β(IL-1β)を含んでもよい。一例では、TLR3受容体はpoly(I:C)によって誘導されてもよい。別の一例では、TLR4受容体はLPSによって誘導されてもよい。
一例では、本開示のプライム化培地は、I型IFN経路及びII型IFN経路の機能性活性化剤としてpoly(I:C)を含んでもよい。以下の実施例1で説明するように、驚くべきことに、ヒトMSC培養物をpoly(I:C)へ暴露させることにより、IL-1β産生の増加(これによりCCR-8活性化を誘導する)をもたらすこと、5つの古典的な経路が活性化され、3つがダウンレギュレートされること、及び、CD146+/周皮細胞様MSCの顕著な増殖が発見された。
I型IFN経路及びII型IFN経路の1つ以上の機能性活性化剤は、I型及びII型IFN経路を活性化するのに十分な濃度で、本開示のプライム化培地に含まれる。例えば、I型IFN経路及びII型IFN経路の機能性活性化剤は、少なくとも約0.1μg/mL~約500μg/mL、約0.2μg/mL~約450μg/mL、約0.3μg/mL~約400μg/mL、約0.4μg/mL~約350μg/mL、約0.5μg/mL~約300μg/mL、約0.6μg/mL~約250μg/mL、約0.7μg/mL~約200μg/mL、約0.8μg/mL~約150μg/mL、約0.9μg/mL~約100μg/mL、約0.5μg/mL~約50μg/mL、約0.5μg/mL~約25μg/mL、約0.5μg/mL~約10μg/mL、又は約0.5μg/mL~約5μg/mLの濃度でプライム化培地に含まれてもよい。一例では、poly(I:C)は、1μg/mLの濃度で本開示のプライム化培地に提供されてもよい。
いくつかの場合、本開示のプライム化培地は、少なくとも2種の炎症性サイトカイン、少なくとも3種の炎症性サイトカイン、少なくとも4種の炎症性サイトカイン、少なくとも5種の炎症性サイトカイン、少なくとも6種の炎症性サイトカイン、少なくとも7種の炎症性サイトカイン、少なくとも8種の炎症性サイトカイン、又は8種より多くの炎症性サイトカインを含んでもよい。炎症性サイトカインの非限定的な例としては、IFN-α、-β、-γ、TNF-α、-β、IL-1β、IL-1Ra、GM-CSF、IL-2、IL-3、IL-4、IL-6、IL-8、IL-10、IL-13、IL-15、IL-22、-23、MIP-1α/β、MCP-1、IP-10、TGF-β1、SCM-1、及びIL-17Aが挙げられる。
少なくとも2種の炎症性サイトカインは、本開示のプライム化培地に接触していない幹細胞と比較して、抗炎症表現型を有する幹細胞(例えば、MSC)の誘導を促進するのに十分な濃度で、本開示のプライム化培地に含まれていてもよい。例えば、少なくとも2種の炎症性サイトカインは、少なくとも約1ng/ml~約200ng/mlの濃度、例えば、約1~10ng/ml、約10~20ng/ml、約20~30ng/ml、約30~40ng/ml、約40~50ng/ml、約50~60ng/ml、約60~70ng/ml、約70~80ng/ml、約80~90ng/ml、約90~100ng/ml、約100~125ng/ml、約125~150ng/ml、約150~175ng/ml、又は約175~200ng/mlの濃度でプライム化培地に含まれてもよい。一例では、本開示のプライム化培地は、IFN-γ(100ng/ml)及びTNF-α(20ng/ml)を含んでもよい。別の一例では、本開示のプライム化培地は、IFN-γ(100ng/ml)、TNF-α(20ng/ml)、IL-1β(10ng/ml)、及びIL-17A(50ng/ml)を含んでもよい。
いくつかの場合、本開示のプライム化培地は、無血清培地、I型及びII型IFN経路の機能性活性化剤、少なくとも2種の炎症性サイトカイン(例えば、少なくとも4種の炎症性サイトカイン)、及び/又は必須ビタミンのみを含んでもよい。「のみ」とは、本明細書(例えば、実施例1及び2に)に記載されるように、プライム化培地が、プライム化培地の効能(例えば、基本的及び新規な性質)に実質的な影響を及ぼすことが可能な任意の他の免疫調節性メディエーター(例えば、成長因子及びサイトカイン)を含まないことを意味する。しかしながら、「のみ」という用語を使用しても、本出願のプライム化培地の基本的かつ新規な性質に実質的な影響を及ぼさないいくつかの成分を含むことは、依然として許容され、このような成分として、培養中の細胞の生存に必要な物質(例えば、アミノ酸、微量金属、無機塩、炭素エネルギー、緩衝液など)が挙げられる。このような場合、本出願のプライム化培地は、実質的に無血清培地、I型及びII型IFN経路の機能性活性化剤、少なくとも2種の炎症性サイトカイン(例えば、少なくとも4種の炎症性サイトカイン)及び/又は必須ビタミンからなると言える。
本開示の一例では、プライム化培地は、無血清培地と、I型及びII型IFN経路の機能性活性化剤(例えば、poly(I:C))と、2種の炎症性サイトカイン(例えば、IFN-γ及びTNF-α)とを含んでもよい。このようなプライム化培地は、本明細書において「4成分プライム化培地」とも称する。いくつかの場合、4成分プライム化培地は、無血清培地と、I型及びII型IFN経路の機能性活性化剤(例えば、poly(I:C))と、2種の炎症性サイトカイン(例えば、IFN-γ及びTNF-α)とのみを含んでもよい。
別の一態様により、本開示のプライム化培地は、無血清培地と、I型IFN経路及びII型IFN経路の機能性活性化剤と、少なくとも4種の炎症性サイトカインと、必須ビタミンとを含んでもよい。機能性活性化剤及び少なくとも4種の炎症性サイトカインは、抗炎症表現型を有する幹細胞の誘導を促進するのに十分な量で存在してもよい。抗炎症表現型を有する細胞は、非プライム化幹細胞集団と比較して1つ以上の抗炎症性又は免疫調節性メディエーターの発現及び/又は分泌が増加していることを標識としてもよい。
いくつかの場合、本開示のプライム化培地は、少なくとも1つの必須ビタミン、及びその分野で知られている他のビタミンを含んでもよく、前記必須ビタミンとして、アスコルビン酸、チアミン、葉酸、及びリボフラビンが挙げられる。少なくとも1つの必須ビタミンは、約50~300μM、約50~75μM、約75~100μM、約100~125μM、約125~150μM、約150~175μM、約175~200μM、約200~225μM、約225~250μM、約250~275μM、又は約275~300μMの濃度でプライム化培地に存在してもよい。一例では、本開示のプライム化培地は、アスコルビン酸(200μM)を含んでもよい。
本開示の一例では、プライム化培地は、無血清培地と、I型及びII型IFN経路の機能性活性化剤(例えば、Poly(I:C))と、4種の炎症性サイトカイン(例えば、IFN-γ、TNF-α、IL-1β及びIL-17A)と、必須ビタミン(例えば、アスコルビン酸)とを含んでもよい。このようなプライム化培地は、本明細書において「6成分プライム化培地」とも称する。いくつかの場合、6成分プライム化培地は、無血清培地と、I型及びII型IFN経路の機能性活性化剤(例えば、Poly(I:C))と、4種の炎症性サイトカイン(例えば、IFN-γ、TNF-α、IL-1β及びIL-17A)と、必須ビタミン(例えば、アスコルビン酸)とのみを含んでもよい。
いくつかの場合、本開示のプライム化培地は脱イオン蒸留水にて調製してもよい。本開示のプライム化培地は、汚染を防止するために、使用前に紫外線、加熱、放射線照射又は濾過などの手段により滅菌してもよい。本開示のプライム化培地は、保管又は輸送のために凍結(例えば、-20℃又は-80℃で)してもよい。
本開示のプライム化培地は、1×製剤又は濃縮製剤、例えば2×~250×濃縮培地製剤であってもよい。1×製剤において、プライム化培地中の各成分は、いずれも細胞誘導に適する濃度である。濃縮製剤において、1つ以上の成分は、細胞誘導のための濃度よりも高い濃度で存在する。本開示のプライム化培地は、塩析又は選択的濾過などの公知の方法を用いて濃縮してもよい。濃縮されたプライム化培地は、水(好ましくは脱イオン及び蒸留された水)又は任意の適宜な溶液(例えば、塩水溶液、水性緩衝液又は培地)で希釈して使用してもよい。
本開示の別の一態様により、プライム化培地と幹細胞(例えば、MSC)とを含む組成物を含んでもよい。いくつかの場合、プライム化培地は、無血清培地と、I型IFN経路及びII型IFN経路の機能性活性化剤と、少なくとも2種の炎症性サイトカインとを含んでもよい。他の場合、プライム化培地は、無血清培地と、I型IFN経路及びII型IFN経路の機能性活性化剤と、少なくとも4種の炎症性サイトカインと、必須ビタミンとを含んでもよい。機能性活性化剤及び炎症性サイトカインは、抗炎症表現型を有する幹細胞の誘導を促進するのに十分な量で存在してもよい。抗炎症表現型を有する細胞は、非プライム化幹細胞集団と比較して、1つ以上の抗炎症性又は免疫調節性メディエーターの発現及び/又は分泌が増加していることを標識としてもよい。
一例では、組成物は、4成分プライム化培地(例えば、4成分プライム化培地のみ)と幹細胞(例えば、MSC)とを含んでもよい。
別の一例では、組成物は、6成分プライム化培地(例えば、6成分プライム化培地のみ)と幹細胞(例えば、MSC)とを含んでもよい。
培養方法
本開示の別の一態様により、非プライム化幹細胞集団から、非プライム化幹細胞集団と比較して抗炎症表現型を有する単離幹細胞集団を産生するインビトロ方法を含んでもよい。この方法は、抗炎症表現型を有する幹細胞の誘導(例えば、均一な又は実質的に均一な誘導)を促進するのに十分な条件下で、非プライム化幹細胞集団をプライム化培地と所定時間接触させることを含んでもよい。いくつかの場合、プライム化培地は、無血清培地と、I型IFN経路及びII型IFN経路の機能性活性化剤と、少なくとも2種類の炎症性サイトカインとを含んでもよい。他の場合、プライム化培地は、無血清培地と、I型IFN経路及びII型IFN経路の機能性活性化剤と、少なくとも4種類の炎症性サイトカインと、必須ビタミンとを含んでもよい。産生された細胞は抗炎症表現型を有してもよく、非プライム化幹細胞と比較して1つ以上の抗炎症性又は免疫調節性メディエーターの発現が増加していることを標識としてもよい。
インビトロ方法の一例では、プライム化培地は、4成分プライム化培地(例えば、4成分プライム化培地のみ)を含んでもよい。
インビトロ方法の別の例では、プライム化培地は、6成分プライム化培地(例えば、6成分プライム化培地のみ)を含んでもよい。
いくつかの場合、非プライム化幹細胞集団は、本開示のプライム化培地と接触していない、本開示のプライム化培地に暴露されていない、又は本開示のプライム化培地で培養されていない単離幹細胞集団を含んでもよい。この方法で使用される幹細胞は、自己由来、同種異体由来、又は異種由来であってもよい。あるいは、幹細胞は、商業的な供給源(例えば、樹立された細胞系)から入手してもよい。幹細胞の他の由来も当業者に知られている。一例では、非プライム化幹細胞は、一見健康な被験者(例えば、ヒト)の組織(例えば、脂肪組織、骨髄又は臍帯血)に由来する単離MSC集団又は多分化能間質細胞を含む。
非プライム化幹細胞は、当業者が理解できる一般的な細胞培養方法において本開示のプライム化培地を用いて培養してもよい。例えば、非プライム化幹細胞は、被験者から単離されるか、又は商業的な供給源から得られ、適宜な環境条件(例えば、37℃、湿潤雰囲気、5%CO2)で、所望の密度で培養容器に接種されてもよい。任意の適宜な細胞培養容器を支持体として細胞培養を行うことができる。様々な材料(例えば、プラスチック、ガラス)から構成された様々な形状及び大きさの細胞培養容器(例えば、フラスコ、シングルウェルプレート又はマルチウェルプレート、シングルウェルディッシュ又はマルチウェルディッシュ、瓶、缶、バイアル、バッグ、バイオリアクター)は当該技術分野で知られている。当業者であれば、適宜な細胞培養容器を容易に選択することができる。
非プライム化幹細胞は、抗炎症表現型を有する幹細胞の誘導を促進するのに十分な所望の期間、本開示のプライム化培地と接触するか、本開示のプライム化培地に暴露するか、又は本開示のプライム化培地を用いて培養することができる。所望の期間は、1日間又はそれより短い(例えば、6時間又は12時間)、約2日間(例えば、18時間)、2日間、3日間、4日間であってもよく、又は5日間を超えてもよい。
いくつかの場合、非プライム化幹細胞の表現型を検証するために、非プライム化幹細胞をプライム化培地と接触する前にそれを測定する必要がある。例えば、非プライム化幹細胞がMSCを含む場合、MSCの存在を検証するために、1つ以上の既知の測定を行っても良い。一例では、細胞表面マーカーCD90、CD73、CD105の存在及びCD34、HLA-DRの非存在に対するフローサイトメトリー評価を用いて、MSCの存在を検証することができる。
細胞集団(非プライム化幹細胞であるかプライム化された幹細胞であるかを問わない)の同一性を検証する方法は、当該技術分野において既知である。例えば、いくつかのマーカーの発現は、細胞培養物又は細胞集団の細胞中に存在するマーカーのレベルを測定することによって確認することができる。このような過程において、マーカー発現の測定は、定性的又は定量的であってもよい。マーカー遺伝子から産生されたマーカーの発現を定量する方法の1例は、定量PCR(Q-PCR)である。Q-PCRの実行方法は当該技術分野でよく知られている。当該技術分野で知られている他の方法も、マーカー遺伝子発現の定量に使用してもよい。例えば、測定対象とするマーカー遺伝子産物に特異的な抗体を用いてマーカー遺伝子産物の発現を検出してもよい。マーカー発現の測定には、ブロット転写法や免疫細胞化学などの定性的又は半定量的な技術を用いることができる。また、ELISAなどの細胞外マーカーの含有量を測定する技術を使用してもよいと理解される。
別の一態様では、本開示の方法によって産生されたプライム化幹細胞(プライム化された幹細胞)は、当業者に知られている技術に従って濃縮、単離、及び/又は精製されてもよい。いくつかの場合、プライム化幹細胞が濃縮、単離、及び/又は精製された細胞集団は、細胞培養物からこのような細胞を単離することによって産生されてもよい。本明細書に記載の方法により産生されたプライム化幹細胞は、このような細胞に特異的なアフィニティータグを用いて濃縮、単離及び/又は精製されてもよい。本開示のプライム化幹細胞に特異的なアフィニティータグの例として、マーカー分子(例えば、ポリペプチド)に特異的な抗体、抗体フラグメント、リガンド、又は他の結合剤が挙げられ、前記マーカー分子は、プライム化幹細胞の細胞表面上には存在する(例えば、CD146)一方、本明細書に記載の方法によって産生される細胞培養物中に見出される他の細胞種上には存在しない(又は実質的に存在しない)。
抗体の調製方法、及び抗体を使用して細胞を単離するための方法は、当業者に知られており、このような方法は、抗体及び本明細書に記載されたプライム化幹細胞と共に使用するために実施されてもよい。1つのプロセスにおいて、プライム化幹細胞により発現されるマーカーに結合可能な抗体を磁気ビーズに付着させた後、細胞間及び培養基板との接着を軽減させるように酵素処理された細胞培養物中のプライム化幹細胞に結合させてもよい。次いで、細胞/抗体/ビーズ複合体を、移動可能な磁場に置くことにより、ビーズに結合したプライム化幹細胞を結合していない細胞と分離させる。プライム化幹細胞が培養物中の他の細胞と物理的に分離された後、抗体との結合を破壊し、細胞を適宜な組織培地に再接種する。必要に応じて、単離された細胞組成物は、親和性に基づく代替的な方法、又はプライム化幹細胞に特異的な同一の又は異なるマーカーを用いるさらなる回数の濃縮によって、さらに精製されてもよい。
必要に応じて、本開示の方法によって産生されたプライム化幹細胞を分離するための任意の工程及び手順は、人工的に実施されてもよい。或いは、このような細胞を単離するプロセスは、例えば、当業者に知られている1つ又は複数の適宜な装置によって促進及び/又は自動化されてもよい。
本明細書に記載の方法により、細胞集団又は細胞培養物においてプライム化幹細胞の含有量は、プライム化又は濃縮されていない細胞集団又は細胞培養物と比較して、少なくとも約2~約1000倍濃縮されることができる。いくつかの場合、プライム化幹細胞は、プライム化又は濃縮されていない細胞集団又は細胞培養物と比較して、少なくとも約5倍~約500倍濃縮されてもよい。他の場合、プライム化幹細胞は、プライム化又は濃縮されていない細胞集団又は細胞培養物と比較して、少なくとも約10倍~約200倍濃縮されてもよい。他の場合、プライム化幹細胞は、プライム化又は濃縮されていない細胞集団又は細胞培養物と比較して、少なくとも約20倍~約100倍濃縮されてもよい。他の場合、プライム型細胞は、プライム化又は濃縮されていない細胞集団又は細胞培養物と比較して、少なくとも約40倍~約80倍濃縮されてもよい。いくつかの場合、プライム化幹細胞は、プライム化又は濃縮されていない細胞集団又は細胞培養物と比較して、少なくとも約2倍~約20倍濃縮されてもよい。
別の一態様により、本明細書に記載の方法によって産生された組成物に関し、前記組成物として、プライム化幹細胞を主要な細胞種として含む細胞培養物又は細胞集団が挙げられる。いくつかの場合、本明細書に記載の方法により産生された細胞培養物及び/又は細胞集団は、少なくとも約99%、少なくとも98%、少なくとも97%、少なくとも96%、少なくとも95%、少なくとも94%、少なくとも93%、少なくとも92%、少なくとも91%、少なくとも90%、少なくとも89%、少なくとも88%、少なくとも87%、少なくとも86%、少なくとも85%、少なくとも84%、少なくとも83%、少なくとも82%、少なくとも81%、少なくとも80%、少なくとも79%、少なくとも約78%、少なくとも77%、少なくとも76%、少なくとも75%、少なくとも74%、少なくとも73%、少なくとも72%、少なくとも約71%、少なくとも約70%、少なくとも約69%、少なくとも約68%、少なくとも約67%、少なくとも約66%、少なくとも約65%、少なくとも約64%、少なくとも約63%、少なくとも約62%、少なくとも約61%、少なくとも約60%、少なくとも約59%、少なくとも約58%、少なくとも約57%、少なくとも約56%、少なくとも約55%、少なくとも約54%、少なくとも約53%、少なくとも約52%、少なくとも約51%、又は少なくとも約50%のプライム化幹細胞を含む。他の場合、本明細書に記載の方法により産生された細胞培養物又は細胞集団は、少なくとも約50%、少なくとも45%、少なくとも40%、少なくとも35%、少なくとも30%、少なくとも25%、少なくとも24%、少なくとも23%、少なくとも22%、少なくとも約21%、少なくとも20%、少なくとも19%、少なくとも18%、少なくとも17%、少なくとも16%、少なくとも15%、少なくとも14%、少なくとも13%、少なくとも12%、少なくとも11%、少なくとも10%、少なくとも約9%、少なくとも約8%、少なくとも約7%、少なくとも約6%、少なくとも約5%、少なくとも約4%、少なくとも約3%、少なくとも約2%、又は少なくとも約1%のプライム化幹細胞を含む。いくつかの場合、細胞培養物又は細胞集団中のプライム化幹細胞のパーセンテージは、培養物中の残留細胞に関係なく計算される。
いくつかの場合、本開示のインビトロ方法は、フィーダー細胞層(例えば、通常は分裂することができず、他の細胞の増殖を助けるための細胞外分泌物を提供する細胞層;例えば、線維芽細胞)の存在又は非存在下で実施されてもよい。
なお、本明細書で開示された方法における各工程は、場合によっては、任意の適宜な順序で、又は同時に実行されてもよく、必ずしも記載された順序で実行される必要はない。例えば、上記方法において、プライム化培地を供給する工程の前、後、又は同時に、非プライム化幹細胞集団を供給する工程を行ってもよい。
プライム化細胞(プライム化された細胞)
本開示の別の一態様により、本開示のプライム化培地に接触や暴露するか、又は、本開示のプライム化培地で培養することにより抗炎症表現型を有する単離幹細胞集団を含む。このような細胞(プライム化幹細胞(例えば、プライム型MSC)とも称する。)は、非プライム化幹細胞集団と比較して、1つ以上の抗炎症性メディエーター及び/又は独特の表面マーカーの発現及び/又は分泌が増加していることを標識とする。以上のように、本開示のプライム化幹細胞は、天然に存在する幹細胞とは著しく異なり、その原因として、少なくとも、プライム化幹細胞は、不確定な分子(例えば、タンパク質、炭水化物、代謝物など)が多数存在するインビボの炎症状態とは異なる、無血清培地(場合によっては、合成培地)中にユニークな成分の組み合わせを含むプライム化培地に接触や暴露するか、又はこのようなプライム化培地で培養して得られたものであるからである。したがって、驚くべきことに、本開示のプライム化幹細胞は、天然に存在する幹細胞と著しく区別可能でユニークな機能的及び構造的特徴や効果(以下に同定)を有する。
いくつかの場合、本開示は、CD146+である単離プライム型MSC集団(例えば、4成分又は6成分プライム化培地を用いて得られたもの)を含んでもよい。他の場合、本開示は、CD146+及びLep-R+である単離プライム型MSC集団(例えば、4成分又は6成分プライム化培地を用いて得られたもの)を含んでもよい。他の場合、本開示は、CD146+、Lep-R+、ネスチン+、及びSDF-1+である単離プライム型MSC集団(例えば、4成分又は6成分プライム化培地を用いて得られたもの)を含んでもよい。他の場合、本開示は、CD146+、Lep-R+、ネスチン+、及びSDF-1+のうちの少なくとも1つ又はそれらの組み合わせである、単離プライム型MSC集団(例えば、4成分又は6成分プライム化培地を用いて得られたもの)を含んでもよい。
いくつかの場合、本開示は、非プライム化幹細胞(例えば、非プライム化MSC)と比較してIDO、CD274、CD146、及び血小板由来成長因子受容体β(PDGFRB)の発現の向上と、C-X3-Cモチーフケモカインリガンド1(CX3CL1)の発現の低下とを標識とする抗炎症表現型を有するプライム化幹細胞(例えば、MSC)の単離集団(例えば、6成分プライム化培地を用いて得られたもの)を含んでもよい。一例では、プライム型MSC(例えば、6成分プライム化培地を用いて得られたもの)は、非プライム化MSCにおけるIDO発現より約50,000~約150,000倍高いIDO発現を示す。
いくつかの態様では、プライム化幹細胞(例えば、MSC)の単離集団(例えば、4成分又は6成分プライム化培地を用いて得られたもの)は、免疫細胞及び/又は免疫調節性メディエーターの産生をアップレギュレート又はダウンレギュレートすることができる。
いくつかの場合、本開示は、非プライム化幹細胞と比較して、細胞傷害性T細胞の産生を少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、又は少なくとも8倍アップレギュレートするプライム化幹細胞(例えば、MSC)の単離集団(例えば、6成分プライム化培地を用いて得られたもの)を含んでもよい。一例では、プライム化MSC(例えば、6成分プライム化培地を用いて得られたもの)は、非プライム化MSCと比較して、細胞傷害性T細胞の産生を少なくとも6倍アップレギュレートする。
いくつかの場合、本開示は、非プライム化幹細胞と比較して、TH1細胞の産生を少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも11倍、少なくとも12倍、少なくとも13倍、少なくとも14倍、又は少なくとも15倍アップレギュレートするプライム化幹細胞(例えば、MSC)の単離集団(例えば、6成分プライム化培地を用いて得られたもの)を含んでもよい。一例では、プライム型MSC(例えば、6成分プライム化培地を用いて得られたもの)は、少なくとも非プライム化MSCと比較して、細胞傷害性T細胞の産生を少なくとも12倍アップレギュレートする。
いくつかの場合、本開示は、非プライム化幹細胞と比較して、CD4+T細胞の産生を少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも11倍、少なくとも12倍、少なくとも13倍、少なくとも14倍、又は少なくとも15倍アップレギュレートするプライム化幹細胞(例えば、MSC)の単離集団(例えば、6成分プライム化培地を用いて得られたもの)を含んでもよい。一例では、プライム型MSC(例えば、6成分プライム化培地を用いて得られたもの)は、少なくとも非プライム化MSCと比較して、CD4+T細胞の産生を少なくとも12倍アップレギュレートする。
いくつかの場合、本開示は、NK細胞の産生を、非プライム化幹細胞より高くなるようにアップレギュレートするプライム化幹細胞(例えば、MSC)の単離集団(例えば、6成分プライム化培地を用いて得られたもの)を含んでもよい。
いくつかの場合、本開示は、Th17細胞の産生を、非プライム化幹細胞より低くなるように抑制するプライム化幹細胞(例えば、MSC)の単離集団例えば、6成分プライム化培地を用いて得られたもの)を含んでもよい(。
いくつかの場合、本開示は、非プライム化幹細胞と比較して二本鎖DNA自己抗体の産生をインビボで抑制するプライム化幹細胞(例えば、MSC)の単離集団(例えば、6成分プライム化培地を用いて得られたもの)を含んでもよい。
いくつかの場合、本開示は、非プライム化幹細胞と比較してB細胞活性化因子(BAFF)の産生を抑制するプライム化幹細胞(例えば、MSC)の単離集団(例えば、6成分プライム化培地を用いて得られたもの)を含んでもよい。
いくつかの場合、本開示は、非プライム化幹細胞と比較してIL-17の産生を減少するプライム化幹細胞(例えば、MSC)の単離集団(例えば、6成分プライム化培地を用いて得られたもの)を含んでもよい。
なお、プライム化幹細胞(例えば、MSC)の単離集団は、前述の構造的及び/又は機能的効果のいずれか一つ又は複数の組み合わせを標識とする抗炎症表現型を有してもよい。
本開示の別の一態様は、幹細胞(例えば、MSC)を本開示のプライム化培地で所定時間培養し、又は本開示のプライム化培地に所定時間接触又は暴露し、培養期間後に上清又は条件培地を採取することによって製造された条件培地を含んでもよい。好ましくは、本開示の条件培地は、非プライム化幹細胞から調製された条件培地と比較して、レベルが向上した免疫調節性メディエーター(例えばIDO)と、プライム化幹細胞からのエクソソームなどの他の成分とを含んでもいよい。
使用
別の一態様では、本明細書では、プライム化幹細胞の単離集団の使用方法、及び/又はプライム化幹細胞の単離集団から調製された条件培地の使用方法が記載されている。一例では、プライム化幹細胞集団、及び/又はプライム化幹細胞の単離集団から調製された条件培地は、医薬組成物を調製するのに有用であり、前記医薬組成物は、例えば、全身性炎症性又は自己炎症性の疾患又は障害に罹患しているか、又は全身性炎症性又は自己炎症性の疾患又は障害を発症するリスクがある被験者などの、治療を必要とする被験者に使用可能である。
本明細書に開示されるようなプライム化幹細胞集団、及び/又はプライム化幹細胞の単離集団から調製された条件培地を含む組成物は、臨床治療、研究、開発、及び商業目的における様々な用途を有する。治療を目的とする場合、例えば、全身性炎症性又は自己炎症性の疾患又は障害(例えば、インターフェロン調節性自己免疫疾患)に罹患しているか、又は全身性炎症性又は自己炎症性の疾患又は障害を発症するリスクのある被験者を治療するために、本明細書に開示されるようなプライム化幹細胞集団、及び/又はプライム化幹細胞の単離集団から調製された条件培地を投与してもよい。いくつかの場合、本明細書で開示されるようなプライム化幹細胞集団、その細胞膜エクソソーム、及び/又は単離プライム化幹細胞集団から調製された条件培地を被験者に投与するしてもよく、これにより、損傷した又は他の原因で不健康な組織の機能を回復するのに寄与することができるだけでなく、損傷した組織の再構築を促進することもできる。
本明細書に開示されるようなプライ化幹細胞集団及び/又はプライム化幹細胞の単離集団から調製された条件培地は、研究及び開発を目的とする場合、全身性炎症性又は自己炎症性の疾患又は障害に特異的に関連する疾患モデルの開発及び研究に使用することができる。
本開示の一態様は、全身性炎症性又は自己炎症性の疾患又は障害に罹患しているか、罹患していると疑われるか、又は全身性炎症性又は自己炎症性の疾患又は障害を発症するリスクのある被験者の治療方法を含んでもよい。いくつかの場合、全身性炎症性又は自己炎症性の疾患又は障害は、インターフェロン調節自己免疫疾患であってもよく、このような疾患として、I型IFN介在経路及びII型IFN介在経路の異常活性化により調節されるインターフェロン調節性自己免疫疾患が挙げられる。本開示によって治療可能なインターフェロン調節性自己免疫疾患の非限定的な例としては、SLE、シェーグレン症候群、臓器移植拒絶反応(例えば、移植片対宿主病)、成人又は若年性特発性乾癬関節炎、皮膚筋炎、多発性筋炎、CNS血管炎、強皮症、炎症性腸疾患、関節リウマチ、及び全身性強皮症が挙げられる。被験者が前述のインターフェロン調節性自己免疫疾患のいずれかに罹患しているか、罹患している疑いがあるか、又は発症するリスクがあるかを判定する方法は、当該技術分野において公知である。
この方法は、プライム化幹細胞、すなわち、非プライム化幹細胞と比較して1つ以上の抗炎症性又は免疫調節性メディエーターの発現が増加していることを標識とする抗炎症表現型を有する幹細胞を被験者に治療有効量で投与することを含んでもよい。好ましくは、治療的有効量のプライム化幹細胞の投与により、以下の細胞効果のうちのいずれか一つ又は複数の組み合わせを有してもよい:(1)IDO、CD274、CD146及びPDGFRBの発現の増加及びCX3CL1の発現の減少;(2)細胞傷害性T細胞の産生の増加;(3)TH1細胞の産生の増加;(4)CD4+T細胞の産生の増加;(5)NK細胞の産生の増加;(6)Th17細胞の産生の抑制;(7)二本鎖DNAの産生の抑制;(8)BAFFの産生の抑制;及び(9)IL-17の産生の減少。
本出願の発明者は、驚くべきことに、プライム化幹細胞(例えば、プライム型MSC)を一回投与すると、上記のような細胞効果(例えば、細胞効果(1)~(9))が長期間にわたって持続することを発見した。したがって、いくつかの場合、治療有効量のプライム化幹細胞(例えば、プライム型MSC)は、1回の用量として被験者に投与されてもよく、その後、細胞効果(1)~(9)のうちのいずれか一つ又は複数の組み合わせが持続可能な期間としては、約1~12ヶ月、約1~2ヶ月、約1~3ヶ月、約1~4ヶ月、約1~5ヶ月、約1~6ヶ月、約1~7ヶ月、約1~8ヶ月、約1~9ヶ月(例えば、約9ヶ月)、約1~10ヶ月、約1~11ヶ月、又は約1年が挙げられるが、これらに制限されない。
一例では、本明細書に記載された方法により、SLEに罹患している、罹患していると疑われる、又は罹患するリスクのあるヒト被験者を治療することができる。SLEは、自己免疫疾患の一種であり、細胞性と体液性自己免疫の異常を特徴とする。病原性T細胞とB細胞が自己抗原を認識した結果、免疫反応の過剰と自己抗体の産生を引き起こし、最終的に多系統慢性炎症性疾患を引き起こす。SLEの臨床所見は、皮膚あるいは関節に影響する軽度の全身性炎症から深刻な臓器損傷(脳、腎臓など)まで、高度の異質性を示している。残念ながら、SLEの細胞性及び体液性自己免疫に対する統一的で効果的な治療法はまだ存在しない。マルチセンター臨床試験では、細胞性又は体液性免疫系の成分を標的とした療法は、疾患活動性の持続的な緩和を誘導することがまだできない。
好ましくは、SLEに罹患している、罹患していると疑われる、又は罹患するリスクのあるヒトにプライム化幹細胞を治療有効量で投与してもよい。被験者が全身性炎症性又は自己炎症性の疾患又は障害に罹患していると疑われるかどうか、又は全身性炎症性又は自己炎症性の疾患又は障害に罹患しているリスクを有するかどうかを判定するための臨床的方法は、当該分野で知られている。一例では、プライム化幹細胞は、6成分プライム化培地と接触された又はそれで培養されたプライム型MSCを含んでもよい。プライム化培地は、単独で、又は医薬組成物(以下に記載)として投与されてもよい。好ましくは、投与されたプライム型MSCは、細胞効果(1)~(9)(上記したもの)のうちのいずれか一つ又は複数お組み合わせを示すことができ、さらに、SLEにおけるI型及びII型インターフェロン経路の異常調整の原因として知られている免疫細胞に対して正の調節作用を有する。具体的には、本開示のプライム型MSCは、I型(-α、-β)及びII型インターフェロン(-γ)の産生及び活性を制御することによって樹状細胞(DC)及びB細胞を抑制しながら、CD4+T細胞及びCD8+T細胞、NK細胞及び制御性T細胞(Treg)を拡大培養及び活性化することができる。
別の一例では、プライム化幹細胞(例えば、MSC)は、腎硬化及び炎症を有利に予防又は軽減することができるため、臓器(例えば、腎臓、肝臓、肺)移植手順の前、期間、又は後に、治療有効量のプライム化幹細胞(例えば、プライム型MSC)を被験者に投与してもよい。臓器移植の状況において、プライム化幹細胞(例えばMSC)が様々な方式で使用可能である。得られた臓器の品質は、ドナーの年齢と健康状態、臓器のインビトロでの時間(及び保管条件)、及びレシピエントの特徴により大きく変化する。大量の臓器は、外科医の移植基準(通常、トナー脳死後の虚血時間、又はトナーの体外に取り出されてからレシピエントへ移植する前の転移時間)を満たさないため、廃棄されることになる。これは、明らかに、毎回の廃棄も破壊的な損失であり、特に、非常に短い体外離脱タイムラインを持つ臓器にとって重要である。目前、医師は、内皮の炎症/活性化を減少させ、患者の予後をより良くするために、輸送中に特定の培地カクテル混合物を臓器に灌流する(ドナーとレシピエントとのいずれに対しても体外で行う)。また、幹細胞又は幹細胞副産物の使用を含むカクテル混合物に関する研究が積極的に行われている。遅延された移植片の機能(腎臓)及び虚血による炎症/損傷を減少することに寄与するために、及び/又は寛容性(Treg)などを向上させることによって有毒な免疫阻害剤の需要を減少するために、移植時(又は移植直前)のレシピエントに対する療法に関する研究も行われている。好ましくは、プライム化幹細胞(例えばMSC)は、当分野において大きな潜在能力を有する。その理由として、本開示のプライム化幹細胞(例えば、MSC)は、IFN-γ応答を低下させ、制御性T細胞/寛容性を促進させることができるという知見を見出したからであり、この知見は、臓器利用、臓器健康、及び成功的な臓器移植に寄与するように、様々な方法で利用することができる。
別の一態様では、本開示は、被験者における養子免疫療法に用いられる方法を含んでもよい。養子免疫療法は、被験者から免疫細胞を除去すること、エクスビボで処理すること(すなわち、細胞の活性化、精製及び/又は拡大培養)、及びその後に得られた細胞を同一の被験者へ注入することを含む細胞療法である。養子免疫療法の例としては、LAK細胞(Rosenberg,米国特許番号4,690,915)、TIL細胞(Rosenberg,米国特許番号5,126,132)、細胞傷害性T細胞(Caiら、米国特許番号6,255,073;Celisら、米国特許番号5,846,827)、拡大培養された腫瘍流入領域リンパ節細胞(Terman、米国特許番号6,251,385)、各種リンパ球製剤(Bellら、米国特許番号6,194,207;Ochoaら、米国特許番号5,443,983;Riddellら、米国特許番号6,040,180;Babbittら、米国特許番号5,766,920; Bolton、米国特許番号6,204,058)、CD8+TIL細胞(Figlinら、(1997)Journal of Urology 158: 740)、IL-2の存在下で抗CD3モノクローナル抗体を用いて活性化したCD4+T細胞(Nishimura(1992)J.Immunol.148: 285)、IL-2の存在下で抗CD3及び抗CD28を用いて共活性化されたT細胞(Garlieら(1999)Journal of Immunotherapy 22:336)、エクスビボで産生しIL-2の存在下で抗CD3及び抗CD28モノクローナル抗体(mAb)を用いて拡大培養した抗原特異的CD8+CTL T細胞(Oelkeら(2000)Clinical Cancer Research 6:1997)を生産及び使用する方法;及び、BCGワクチン(BCG)と混合され、且つ放射線照射された自己腫瘍細胞を注射することにより被験者に接種してから、7日後に流入領域リンパ節T細胞を回収し、前記流入領域リンパ節T細胞を抗CD3mAbで活性化し、その後IL-2において拡大培養することを含む方法(Changら(1997)Journal of Clinical Oncology 15:796)挙げられる。
いくつかの場合、前記方法は、CAR-T細胞及び/又はCAR-NK細胞を拡大培養してCAR-T細胞及び/又はCAR-NK細胞の細胞毒性活性を増加させるのに十分な条件下で、CAR-T細胞及び/又はCAR-NK細胞の非プライム化集団を本開示のプライム化培地と所定時間接触させることを含んでもよい。プライム化されたCAR-T細胞及び/又はCAR-NK細胞は、本開示のインビトロ方法(例えば、4成分又は6成分プライム化培地を使用する方法)によって産生してもよい。その後、養子免疫療法を必要とする被験者(例えば、全身性炎症性又は自己炎症性の疾患又は障害(例えば、SLE)に罹患しているか、罹患していると疑われるか、又は全身性炎症性又は自己炎症性の疾患又は障害(例えば、SLE)に罹患するリスクのある被験者)に、プライム化されたCAR-T細胞及び/又はCAR-NK細胞を治療有効量で投与してもよい。
いくつかの場合、プライム化幹細胞及び/又は単離プライム型細胞集団から調製された条件培地を含む組成物の適切な投与経路は、動脈内投与又は静脈内投与、非経口投与、髄腔内投与、心室内投与、実質内投与、頭蓋内投与、脳槽内投与、線条体内投与、黒質内投与、筋肉内投与、脊柱内投与、皮下投与、経皮投与、肺内投与、鼻腔内投与、直腸投与及び局所(口腔及び舌下を含む)投与を含んでもよい。
単離プライム化幹細胞集団、及び/又は単離プライム型細胞集団から調製された条件培地を含む組成物は、植え込み可能な装置を用いて被験者に投与されてもよい。植え込み可能な装置及び関連技術は、当該技術分野で知られており、本明細書に記載される組成物を連続的放出又は徐放して送達するのに必要な送達システムとして有用である。また、植え込み可能な装置送達システムは、化合物又は組成物の送達の所定箇所(例えば、局所部位、臓器、骨など)を確定するために使用してもよい(Negrinら、Biomaterials、22(6):563(2001))。本開示のいくつかの態様によれば、代替の送達方法に関する徐放技術も使用可能である。例えば、ポリマー技術、持続放出技術、及びカプセル化技術(例えば、ポリマー、リポソームを使用するもの)に基づく徐放製剤も、本明細書に記載される組成物を送達するために使用することもできる。
いくつかの場合、治療用組成物は、プライム化幹細胞集団を単独で含み、及び/又は、プライム化細胞集団から調製された条件培地を単独で含み、及び/又は、医薬組成物として配合された単離プライム化幹細胞集団及び/又は単離プライム化細胞集団から調製された条件培地を含んでもよい。医薬組成物は、有効量のプライム化幹細胞、及び/又はプライム化幹細胞の単離集団から調製された条件培地の上に、薬学的に受容可能な担体(添加剤)、添加剤、希釈剤又は賦形剤(例えば、無菌塩水、ハンクス平衡塩溶液(HBSS)又はIsolyte S,pH7.4)を併せて含んでもよい。例えば、本明細書に開示されるプライム化幹細胞の単離集団及び/又はプライム化幹細胞の単離集団から調製された条件培地は、ヒトへの投与のために十分な無菌条件下で調製された等張化賦形剤を含む医薬組成物の形態で提供されてもよい。医薬製剤の一般原理については、Cell Therapy:Stem Cell Transplantation,Gene Therapy,and Cellular Immunotherapy,G.Morstyn&W.Sheridan編集,Cambridge University Press,1996;及び、Hematopoietic Stem Cell Therapy,E.D.Ball,J.Lister&P.Law,Churchill Livingstone,2000を参照してもよい。組成物の細胞賦形剤及び任意の随伴成分の選択は、投与のための経路及び装置に応じて調整される。
被験者に投与するためのプライム化幹細胞を調製するのに有用な薬学的に受容可能な担体は、その分野でよく知られており、例えば、水又は緩衝生理食塩水などの水溶液;又はジオール、グリセリン、油(例えば、オリーブ油)、若しくは注射可能な有機エステルなどの他の溶媒又は媒質を含んでもよい。薬学的に許容可能な担体は、例えば、結合体の吸収を安定化又は増加させるように作用する生理学的に許容される化合物を含んでもよい。このような生理学的に許容される化合物は、例えば、炭水化物(例えば、グルコース、ショ糖又はデキストラン)、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸又はグルタチオン)、キレート剤、低分子量タンパク質、又は他の安定化剤又は賦形剤を含む。
いくつかの場合、プライム化幹細胞の単離集団及び/又はプライム化幹細胞の単離集団から調製された条件培地は、必要に応じて、被験者に投与する前にプライム化幹細胞及び/又は条件培地を再構築又は解凍(凍結していた場合)するなどの所望の目的のための、書面による説明書を収容する適宜な容器で包装されてもよい。
いくつかの場合、全身性炎症性又はそれ自己炎症性の疾患又は障害に関連する少なくとも1つの症状に統計学的に有意で測定可能な変化を生じさせるのに十分な治療有効量のプライム化幹細胞及び/又はプライム化幹細胞から調製された条件培地を被験者に投与してもよい。治療有効量の確定は、完全に当業者の能力の範囲内で実現できるものである。通常、治療有効量は、被験者の病歴、年齢、状態、性別、及び被験者の医学的状態の重症度及びタイプ、ならびに他の薬物活性剤の投与によって変化する。
プライム化幹細胞の単離集団及び/又はプライム化幹細胞の単離集団から調製された条件培地を含む組成物は、一回又は数回に分けて被験者に投与されてもよい。被験者に投与するための組成物は、数回に分けて投与される場合、別の1回の投与から5分間、10分間、20分間、60分間、2時間、3時間、4時間、8時間、12時間、24時間以内に投与されてもよい。組成物が異なる医薬組成物の形式で投与される場合、投与経路は異なってもよい。いくつかの場合、プライム化幹細胞を単独で含む組成物及び/又は医薬組成物としてのプライム化幹細胞を含む組成物を被験者に投与する。他の場合、プライム化幹細胞の単離集団から調製された条件培地を単独で含む組成物、及び/又は医薬組成物としての、プライム化幹細胞の単離集団から調製された条件培地を含む組成物を被験者に投与する。別の一態様では、単離プライム化幹細胞集団から調製された条件培地と混合した単離プライム化幹細胞集団を含む組成物を被験者に投与する。別の一態様では、このような複数の組成物は、実質的に同時に、又は別々に連続して投与されてもよい。
他の場合、プライム化幹細胞の単離集団及び/又はプライム化幹細胞の単離集団から調製された条件培地は、後続の移植/注入のために保管されてもよい。プライム化幹細胞の単離集団及び/又はプライム化幹細胞の単離集団から調製された条件培地は、一部が後続の使用のために保留され、一部が被験者に直ちに適用されるように、2以上のアリコート又は単位に分割されてもよい。また、プライム化幹細胞の全部又は一部の細胞バンクにおける中期~長期の保管も本願の範囲に収まっており、例えば、米国特許公開番号2003/0054331に開示されており、当該米国特許の内容は、引用により本明細書に組み込まれている。処理終了時に、濃縮されたプライム化幹細胞及び/又は単離プライム化幹細胞集団から調製された条件培地を送達装置(例えば、注射器)に装入して当業者に知られている任意の方法によってレシピエント体内に配置してもよい。
いくつかの場合、被験者に投与するための、単離プライム化幹細胞集団及び/又は単離プライム化幹細胞集団から調製された条件培地を含む組成物は、医薬活性剤(例えば、免疫調節剤)をさらに含んでもよく、このような医薬活性剤として、当分野で知られている全身性炎症性又は自己炎症性の疾患又は障害を治療するための薬剤が挙げられる。本明細書で使用される場合、「免疫調節剤」という用語は、正常な免疫機能を活性化又は向上させることができる、又は、正常な免疫機能を抑制又は妨害することができる薬剤を含んでもよい。免疫抑制剤としての免疫調節剤の例としては、例えば、T細胞/B細胞共刺激経路を抑制する試薬、具体的には、米国特許番号7,094,874に開示されているCTLA4及びB7経路を介したT細胞及びB細胞の結合を妨害する試薬などが挙げられ、前記米国特許は引用により本明細書に組み込まれている。免疫調節剤は、投与経路に適する製剤の形で投与されてもよく、所望の治療効果を達成するのに十分な用量で被験者に投与する。いくつかの場合、治療過程開始直前に測定された実際の体重を使用して投与量を計算してもよい。このように計算された用量については、治療過程開始前にDubois法により下式で体表面積(m2)を算出する:
m2=(重量kg0.425×身長cm0.725)×0.007184
プライム化幹細胞の単離集団及び/又はプライム化幹細胞の単離集団から調製された条件培地を含む組成物の投与による毒性及び治療効果は、例えば、LD50及びED50を確認するために、細胞培養物又は実験動物に対する標準的な薬学的手順によって測定してもよい。大きな治療指数を示す、プライム化幹細胞の単離集団及び/又はプライム化幹細胞の単離集団から調製された条件培地を含む組成物は好ましい。単離プライム化幹細胞集団及び/又は単離プライム化幹細胞集団から調製された条件培地を含む組成物の量は、いくつかの十分に確立された動物モデルを用いて試験することができる。いくつかの場合、細胞培養アッセイ及び動物モデル研究から得られたデータを用いて、ヒトに適する投与量範囲を制定することができる。このような組成物の投与量は、好ましくは、ED50を含み、毒性が非常に小さい又は全くない血中濃度範囲内である。投与量は、使用される剤形及び利用される投与経路に応じて上記範囲内で変化してもよい。
プライム化幹細胞の単離集団及び/又はプライム化幹細胞の単離集団から調製された条件培地を含む組成物の治療有効用量又は治療有効量はまた、細胞培養アッセイから最初に推定してもよい。あるいは、任意の特定の投与量の効果は、適宜なバイオアッセイによって監視されてもよい。
治療の持続時間及び頻度に関して、熟練した臨床医は、通常、被験者の状態を監視して治療が治療上の利益を生じた時点を確認し、そして、用量を増加又は減少するか、投与頻度を増加又は減少するか、治療を中断又は再開するか、又は治療計画に他の変更を加えるかどうかを決定する。投与計画は、被験者のプライム化幹細胞及び/又はプライム化幹細胞由来の条件培地に対する感受性などの多くの臨床的要因に応じて、週1回から1日1回の頻度で変化してもよい。所望の用量は、1回に限り投与するか、又は、例えば2~4回などのサブ用量に分けて、例えば1日中適宜な間隔又は他の適宜なスケジュールで投与されるように、一定の期間にわたって投与してもよい。このようなサブ用量は、単位剤形として投与することができる。いくつかの場合、投与は長期間にわたって実行し、例えば、数週間又は数か月の期間にわたって1日に1回又は複数回投与する。投与計画の例としては、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月又はそれ以上の期間内に、1日に2回、1日に3回、又は1日に4回以上投与することが挙げられる。
別の一態様では、炎症を抑制するのに有用な遺伝子(例えば、I型及びII型インターフェロン経路の機能性活性化剤又は阻害剤をコードする遺伝子、又は抗炎症性メディエーターをコードする遺伝子)を導入するように、本明細書に開示されるプライム化幹細胞集団を遺伝的に改変してもよい。いくつかの場合、生存率の向上、増殖の制御などのために、プライム化幹細胞集団に対して遺伝子組換えを行ってもよい。本明細書に開示されるようなプライム化幹細胞集団は、適宜なベクターによるトランスフェクションや形質導入、相同組換え、又は他の適宜な技術によって、目標とする遺伝子を発現できるように遺伝的に改変されてもよい。一例では、テロメラーゼ触媒成分(TERT)をコードする遺伝子を用いて、1つ以上のプライム化幹細胞をトランスフェクションしてもよく、このような遺伝子は、通常、内在性プロモーターの作用下で生じるテロメラーゼ発現よりも増加したテロメラーゼ発現を生じうる異種プロモーターに作用される(国際特許出願WO98/14592を参照してもよく、この国際特許出願は、引用により本明細書に組み込まれている。)。別の一例では、より高純度のプライム化幹細胞集団を提供するために、選択マーカーが導入される。別の一例では、ベクターを含む上澄み液を用いて8~16hの期間にわたってプライム化幹細胞集団を遺伝的に改変した後、1~2日間増殖培地に交換されてもよい。ピューロマイシン、G418又はブラストサイジンなどの薬物選択剤を使用して、遺伝的に改変されたプライム化幹細胞を選択してから培養してもよい。
本明細書に開示されるプライム化幹細胞への外来遺伝子の導入に有用な多数のベクターが入手可能である。ベクターは、エピソームベクターであってもよく、例えば、プラスミドや、サイトメガロウイルス、アデノウイルスなどのウイルス由来ベクターなどが挙げられる一方、ベクターは、相同組換え又はランダムインテグレーションによってプライム化幹細胞ゲノムに組み込まれてもよく、例えば、MMLV、HIV-1、ALVなどのレトロウイルス由来ベクターであってもよい。いくつかの場合、レトロウイルスと適宜なパッケージング細胞系との組み合わせも使用可能であり、ここで、キャプシドタンパク質は、本明細書に開示されるプライム化幹細胞を感染することを機能する。通常、プライム化幹細胞は培地中で少なくとも約24時間インキュベートされる。いくつかの場合、いくつかの応用分野では、分析前に、プライム化幹細胞を培地中で短期に(例えば24~73時間)、又は少なくとも2週間成長させ、ひいては、5週間以上成長させてもよい。一般的なレトロウイルスベクターは「不完全」であり、すなわち、増殖感染に必要なウイルスタンパク質を産生することができない。ベクターの複製は、パッケージング細胞系内の成長を必要とする。
レトロウイルスの宿主細胞特異性は、エンベロープタンパク質Env(P120)によって決定される。エンベロープタンパク質は、パッケージング細胞系から提供される。エンベロープタンパク質は、少なくとも、同種指向性、両種指向性及び異種指向性の3つのタイプがある。同種指向性エンベロープタンパク質でパッケージングされたレトロウイルス、例えばMMLVは、マウス及びラットのほとんどの細胞種に感染することができる。同種指向性パッケージング細胞系としては、BOSC23(Pearら(1993)PNAS 90:8392-8396)が挙げられる。両種指向性エンベロープタンパク質(例えば4070A)を含むレトロウイルスは、ヒト、イヌ、マウスを含むほとんどの哺乳動物細胞種に感染することができる。両種指向性パッケージング細胞系としては、pAL2(Millerら(1985)Mol.Cell.Biol. 5:431-437);PA317(Millerら(1986)Mol.Cell.Biol. 6:28 95-2902)GRIP(Danosら(1988)PNAS 85:6460-6464)が挙げられる。異種指向性エンベロープタンパク質(例えばAKREnv)でパッケージングされたレトロウイルスは、マウス細胞を除くほとんどの哺乳動物細胞種に感染することができる。いくつかの場合、ベクターは、後続に、例えばCre/loxなどの組換え酵素系を用いて除去しなければならない遺伝子を含んでもよく、又は、ヘルペスウイルスTK、BC1-XSなどの選択的毒性を産生可能な遺伝子を含むことによりそれらの発現を破壊した細胞を含んでもよい。
適宜な誘導型プロモーターは、所望のプライム化幹細胞(標的)種(トランスフェクションされた細胞又はその子孫)において活性化される。転写活性化により、転写が標的細胞において基礎レベルと比べて少なくとも約100倍、より一般的には少なくとも約1000倍増加していることが期待される。異なる細胞種で誘導される種々のプロモーターが知られている。
別の一態様では、プライム化幹細胞は、潜在的な治療薬のスクリーニングに有用である。潜在的な治療薬を培養物中のプライム化幹細胞に異なる用量で投与してプライム化幹細胞の異なる期間での反応を監視してもよい。プライム化幹細胞の物理的及び/又は機能的特徴は、例えば細胞成長を顕微鏡で観察することにより解明することができる。新たな又は向上したレベルのタンパク質(例えば、酵素、受容体及び他の細胞表面分子)又はアミノ酸の発現の誘導は、そのような分子レベルの変化を同定可能な当該技術分野で知られている任意の技術を用いて分析してもよい。これらの技術としては、このような分子に対する抗体を用いる免疫組織化学的又は生化学的分析技術が挙げられる。このような生化学的分析技術としては、タンパク質アッセイ、酵素アッセイ、受容体結合アッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、電気泳動アッセイ、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いるアッセイ、ウェスタンブロット、及び放射免疫アッセイ(RIA)が挙げられる。ノーザンブロットなどの核酸分析方法を用いて、これらの分子、又はこれらの分子を合成する酵素をコードするmRNAのレベルを測定することができる。
プライム化幹細胞の細胞増殖及び機能に対する潜在的な治療薬の影響を試験することにより、プライム化幹細胞に対する潜在的な薬物の副作用をスクリーニングすることもできる。
以下の実施例は、単に例示のため提供され、添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。
実施例1
実施例1では、多種の自己免疫疾患(例えば、SLE、シェーグレン症候群、全身性強皮症、移植片対宿主病、炎症性腸疾患、多発性硬化症、乾癬様関節炎)におけるI型及びII型インターフェロン経路の活性化により誘導される炎症性活性を制御するために、実験を行って「HXB-319」と称されるMSCプライム化培地を開発した。実施例1で使用される用語「HXB-319」はまた、実施例1で発見されたMSCプライム化培地で処理又はプライム化されたMSCを指しても良い。
危険シグナル刺激を用いた健康骨髄由来MSCのインビトロ実験
<抗炎症反応をもたらすヒトMSC培養物のPoly(I:C)暴露>
本発明者らは、標準的な方法を用いて健康ドナーから混在したMSC集団を単離した後、第2の継代時に、例えばPoly(I:C)(30ng/ml)、リポ多糖(LPS)(10μg/ml)、TNF-α(50ng/ml)、及びIL-1β(25ng/ml)のような危険シグナルでMSCを一晩(18時間)処理した。次に、培地を交換してMSC集団を血清中に静置し、それらを24時間以内に採取して分泌タンパク質を測定した。タンパク質アレイには、Ray Biotechタンパク質アレイを用いる。生体マーカー検出のための経路解析(Ingenuity.com)を用いて、組織培地中のプライム化された及び非プライム化MSCの分泌タンパク質を解析した。本発明者らは、細胞がPoly(I:C)に暴露された後に活性化された5つの古典的な経路、及びダウンレギュレートされた3つの古典的な経路を同定した。活性化された5つの経路は、下記のとおりである。
(1)マクロファージとTヘルパー細胞から産生されると知られているサイトカイン産生のアップレギュレーション:CSF-2(16.5倍)、IL-13(3.7倍)、CCl4(2.8倍)、IL-1β(2.5倍)、及びTNF-α(2.15倍)が増加した一方、IL-10(-4.3倍)、CXCL1(-5.4倍)、IL-3(-1.6倍)が低下した。IL-17A、B、Fを調節するサイトカインシグナル伝達経路及びインターフェロンγ経路(NFκB複合体、インターフェロンγ、IL-17ダイマー及びIL-17受容体は、併せてこの経路における一連のケモカイン及びサイトカイン、例えばCX3CL、CCL1、CCL4、CXCL6、CCL2、CCL11、CCL18及びIL1/IL6/TNF-αを調節する)はダウンレギュレートされた一方、Tヘルパー細胞の分化を助けるサイトカインシグナル伝達経路はアップレギュレートされた(IFN-γ(1.6倍)、IL-4(23倍)、IL-5(3.1倍)、IL-6(1.6倍)、IL-13(3.7倍)、TGF-β(2.3倍)、IL-10(-4.3))。
(2)poly(I:C)処理後、細胞運動、造血、免疫細胞輸送経路がダウンレギュレートされた。本発明者らは、本経路解析において、SLEの発症メカニズムに機能する重要なタンパク質、例えばインターフェロン及びその調節剤、例えばIL-12、インターフェロンγがダウンレギュレートされたことを見出した。さらに、T細胞及びB細胞の活性化に共に作用する炎症性サイトカインIL-6が顕著に抑制された。
(3)細胞の成長と増殖、結合組織の発達と機能、リンパ組織の構造と発達ネットワーク(図1A)はCSF、IGF、HGF、FGF、及びLTAの顕著な抑制を示した。
(4)poly(I:C)処理後、MAPK Erk1/2の活性によるTLR2/TLR4の活性化、及びFGF、FGF6、-4、-7、IL-1、TNFRSF11B及びCSFの活性化に関するネットワーク(図1B)が抑制された。
(5)poly(I:C)でプライム化されたMSCは、IL-1βの産生を増加させ、CCR-8リガンドの活性化を誘導した。CCR-8は、免疫抑制の送達に関与するFoxp3(+)T-調節性細胞がCD4(+)メモリ細胞中に濃縮されたことを確認するためのバイオマーカーである。
また、ダウンレギュレートされた経路は以下のとおりである。
(1)乾癬において機能するシグナル伝達経路、
(2)アテローム性動脈硬化において機能するシグナル伝達経路、及び
(3)関節炎シグナル伝達経路(IL-18が11倍、CXCL5が1.7倍、及び、CXCL1が5倍ダウンレギュレートされた。)。
したがって、驚くべきことに、poly(I:C)でのMSCプライム化は、異常に上昇したINF-γ関連経路をインビトロ及びインビボで制御し、且つSLEなどの、インターフェロンで調節される自己免疫疾患活動性を制御することができることを発見した。
<Poly(I:C)暴露後のMSC細胞選別実験>
細胞選別実験には、ヒトMSC培養物(骨髄単離後には混合集団であると考えられる)のPoly(I:C)暴露により、CD146+/周皮細胞様MSC表現型が有意に増加されたことを示した。我々の観察結果に基づいて、驚くべきことに、hMSCは、特定の危険シグナル(例えば、損傷した組織に見られる炎症性サイトカイン)に暴露されると、インビトロでその表面マーカーの構成が変化し、周皮細胞表現型を獲得できることを発見した。
MSC混合培養物中の周皮細胞様MSCは、有効で重要な免疫調節活性を有する。
MSCの未分画サンプルに含まれる周皮細胞(CD146+及びLep-R+細胞表面受容体と定義される)のパーセンテージと、免疫調節作用をインビトロで誘導するために使用される刺激との間に直接的な関係があることを証明する証拠がある。MSCをPoly(I:C)で刺激したところ、刺激されていないMSCに比べて、CD146+-MSCのパーセンテージが有意に増加した。逆に、MSCをLPSで刺激したところ、CD146+-MSCの減少を示した(図2)。
HXB-319の開発
<細胞培養>
本発明者らは、HXB-319を、従来の臨床試験で一般的に使用されているプライム化されていない初代骨髄由来MSCと比較することにより、HXB-319の免疫刺激作用を検証した。
<ヒト間葉系幹細胞培養物の調製>
HXB-319の開発に使用されたhMSCは、自身のプロトコール(09-90-195)に基づいて独立管理事業体として設立された造血幹細胞機構から取得された。Case Western Reserve University(Cleveland,OH)では、現在承認されているIRBプロトコール#09-90-195に従って、健常者ドナーから骨髄を採取した。HIPAA規則45CFR§164.514(b)(2)(i)の実施細則に記載されるように、サンプルは、匿名化されている。本発明者らは、インビトロで5つのドナーMSCを用いて、マウスで実験を行った。
健康ドナー(2183細胞系)から得られたヒト骨髄由来の多分化能間質細胞(間葉系幹細胞-MSC)をBioSpherix(無菌条件環境、37℃、湿潤雰囲気、5%CO2)においてStemPro MSC SFM無血清培地(Thermo Fisher Scientific)を用いて対数増殖期で培養した。実験では、細胞を飢餓状態にしてStemPro基礎培地で48時間維持した後、摂動基質で処理した。
<RNA抽出及びPCR分析>
製造者の取扱書により、MagMax RNA分離キット(Thermo Fisher Scientific)を用いてトータル細胞mRNAを抽出した。Nano Dropを用いて260/280nmでの吸収を測定することにより、採取されたRNAの品質と量を評価した。その後、高容量cDNA逆転写キット(Thermo Fisher Scientific)を用いてRNAを第1鎖cDNAに転写して遺伝子発現解析を行った。53個の候補遺伝子と3個のハウスキーピング遺伝子を利用して、特注されたオープンアレイ遺伝子チップを構築した。Quant Studio(Thermo Fisher Scientific)によりSYBR(登録商標) Green Iマスターミックスを用いてリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)を行った。転写物の相対発現(RQ)は、2ΔΔCT法を用いて算出された。
<薬物基質及び実験設計(DOE)に基づくプロセス計画>
D-最適実験計画はソフトウェア(Umetrics MODDE)で生成され、96ウェルフォーマットによりFreedom EVO150液体処理ロボット(TECAN,CH)上で実行された。
本発明者らは、Poly(I:C)、TNF-α、IL-1β、IL-17、IFN-α、IFN-β、IFN-α、PDGF-BB、アスコルビン酸2-リン酸、内皮成長因子(EGF)、TGF-β、ビタミンD3という12種類の因子を選択した。その後、本発明者らは96回の運行計画、テストアプリケーションを使用して同時テストを準備した。人工的な予備拡大培養と接種に加えてロボット操作も含む完全な細胞培養は、細胞培養条件のプロセス解析技術(PAT)(%N2、%O2、%CO2、及び温度制御を提供)を提供するモジュラーX-Vivoシステム(Biospherix、NY、USA)に包含されている。各実験条件について、Open Array技術(Life Technologies、Quant Studio FLEX12)を用いて合計53個のカスタム遺伝子発現データを得た。MODDEソフトウェアに含まれるQPCRデータを使用して培養空間の数学的モデリングを行い、前記MODDEソフトウェアは、分散の最小化とモデルフィッティングのための多変量ツールを使用していた。この過程は、主要な効果及び反応パラメータを同定し、また、MSCの抗炎症サイトカイン又は血管周皮細胞様遺伝子の発現などの、目標とする遺伝子の増幅のクエリ最適化を可能にした。このプロセスの実施により、本発明者らは、IDO、CD274、CD146及びPDGFRBの発現を最大化し、且つCX3CL1及びPDL1の発現を最小化する6成分の組み合わせ条件を確定した。
Trailhead Biosystems(Cleveland、OH)により一連の複雑な多次元分析を行い、実行した経路分析実験に関与し、且つインターフェロン活性化シグナル伝達経路に重要な役割を有すると発見された遺伝子に基づいて53個の候補遺伝子標的を分析した。上記53個の候補遺伝子標的は、ANG、BCL2、C3AR1、C5AR1、CCL17、CCL2、CCL5、CD274、CD36、CD44、CD55、CD59、CSF2、CSPG4、CX3CL1、CXCL1、CXCL12、CXCL3、CXCR4、ENG、ENTPD1、HSPA5、IDO1、IFNG、IL10、IL12A、IL17A、IL2、IL4、IL6、IL8、IRF3、LAMA4、LEPR、LIF、MCAM、NES、NGFR、NT5E、PDGFRB、PPBP、PTGS1、PTGS2、RGS5、SEMA3A、TGFB1、THY1、TLR3、TLR4、TLR7、TLR9、TNFAIP6及びVEGFAであった。健康ドナーMSC系由来の骨髄由来間葉系幹細胞において、3種のハウスキーピング遺伝子(GAPDH、YWHAZ、TBP)に対して下記のサイトカイン及びそれらの濃度で、これらの遺伝子複合体の発現レベルを標準化した:TNF-α(20ng/ml)、IFN-α(20ng/ml)、IFN-β(10ng/ml)、PDGF-BB(10ng/ml)、IFN-γ(100ng/ml)、IL-1β(10ng/ml)、IL-17A(50ng/ml)、アスコルビン酸2リン酸エステル(200uM)、poly I:C(1μg/ml)、TGF-β(10ng/ml)、EGF(20ng/ml)、及びビタミンD3(10ng/ml)。
DoE法を用いて、異なる組み合わせと濃度の12種類のエフェクターを同時に考査する96種の条件からなる複雑な多次元実験を設計した。健康ドナーから得られた骨髄由来MSCを96ウェルプレート(12,000細胞/ウェル)に接種し、薬物基質処理から6、12、18、24時間後にqPCRによる分析を行い、その結果をModdeソフトウェアプラットフォームに出力してさらに分析した。これにより、5000以上のデータポイントが生成された。それぞれの反応を統計的回帰モデルにフィッティングし、異なる摂動が遺伝子発現にどのように影響するかを分析した。次に、本発明者らは、IDO1、PDGFRB、LEPR、IL-10、MCAM(CD146)、CD274(PDL-1)の遺伝子発現を最大化し、且つCX3CL1(フラクタルカイン活性)を最小化するための最適化条件を抽出した。得られたMSC集団は、MSCに特徴的なサイトカインを高レベルで発現したため、それらが異なる細胞種に分化していないことを確保した。上記MSCに特徴的なサイトカインは、CD44、CD59、CD73、CD90、CD105、PDGFRB、TNFAIP6、及びCD146であった。過給後のMSC集団は、TLR-3及びTLR-4、IL6、IL8、IL12A、CCL2、CCL5(RANTES)、GMCSF、CXCL1、CXCL12、CXCL3及びENGをより高いレベルで発現した(表1)。
<市販の骨髄由来MSC(例えば、Rooster Bioscience(登録商標);及び異なる骨髄ドナー)を用いたプライム化技術の検証>
本発明者らは、上記と同様の方法を用いて、異なる由来の細胞についてプライム化方法を試験した。同じロボット細胞培養技術を用いて、同じ培養条件とプライム化技術(すなわち、HXB-319)を用いて細胞を培養した。本発明者らは、効能テストとして、IDO遺伝子の発現倍数の差異を研究した。本発明者らは、プライム化期間中の複数の時点(6時間、12時間、18時間及び24時間)でMSCからRNAを採取、単離し、3つの非関連性プライム化MSC源(番号2183、1427の健康ドナー、第3継代細胞;及び継代数が未知のRooster Bioscience細胞製品)において最大IDO遺伝子発現を観察した。条件1はHXB-319条件を表し、条件2は対照条件である(図3)。プライム化MSCにおけるIDO遺伝子の発現は、3つの異なる健康ドナー細胞系からのすべてのMSC源において、一致する倍数増加が確認された(図3)。
以上の実験結果に基づき、驚くべきことに、以下の配合を有するHXB-319を用いて、MSCを誘導又はプライム化してI型及びII型インターフェロン経路の誘導(例えば自己免疫によるもの)後に抗炎症表現型を得、これによって免疫細胞活性を特異的に調節し、免疫細胞機能障害を改善することが可能であることを見出した:
(1)インターフェロン-γ、100ng/ml(eBioscience(BMS303));
(2)Poly(I:C)、1μg/ml(Sigma-Alrich(9582-5mg);
(3)腫瘍壊死因子-α、20ng/ml(Peprotech(300-01A-50μg));
(4)インターロイキン1-β、10ng/ml(Peprotech(200-01B-10μg));
(5)インターロイキン-17-α、50ng/ml(Peprotech(200-17));及び
(6)ASC-AC-21、200μM(Sigma-Alrich(L4524-5MG))。
インビトロ及びインビボ検証実験
<組織培地におけるインビトロ骨髄ドナーhMSC IDO遺伝子発現及びキヌレニン酵素活性>
第3継代以降のMSCを組織培養瓶にトリプリケートで接種した。コンフルエント状態になる後、本発明者らは、10%FBSを含むDMEMを除去し、PBSで細胞を3回洗浄した後、HXB-319で18時間処理した。次に、HXB-319を洗浄し、無血清DMEMを培養プレートに添加し、標準インキュベータにおいてインキュベートした。24時間後、MSCを採取し、RNAを単離した後に、組織培地を採取し、分泌産物を測定した。ここで示される結果は、いずれも少なくとも3つの異なるMSCドナーを使用して重複された。
RT-PCR結果により、未処理のMSCと比較して、IDO発現が50,000倍上昇し、IDO測定ではキヌレニン量(mcg/ml)により測定したIDO酵素活性が有意に向上したことを示した(図4)。さらに、PDGFBPやCD146などの血管周囲MSCマーカーは顕著にアップレギュレートされた(図5)。
<プリスタン誘導されたインターフェロン活性化マウスモデルにおけるHXB-319の有効性>
概念を証明するために、本発明者らは、実証且つ承認されたマウスモデルを使用し、当該マウスモデルに対して、0.5ccのテトラメチルペンタデカン(プリスタン)を腹腔内に注射した後、4週間にわたってI型インターフェロン活性化が誘導された(Freitas,E.C.ら,Clin Rheumatol,2017.36(11):p.2403-2414;Gardet,A.ら,PLoS One,2016.11(10):p.e0164423;及び、Richards,H.B.ら,Kidney Int,2001.60(6):p.2173-80)。
本発明者らは、Jackson Labsから12~14週齢のBALBC/cj雌マウスを取得し、そして、年齢・性別が一致する57BL/6マウスを対照群として取得した。本発明者らは2組のマウスを用いて2つの実験を行った。
本発明者らは、プリスタンが注射されたマウスが、インターフェロン活性化の急性期、及びその後のSLEを模擬した自己免疫疾患の活動の慢性期において、HXB-319に対してどのように反応するかを試験した。I型インターフェロン活性化は、0.5ccのプリスタンを腹腔内に注射してから4週間にわたって誘導された。その後、インターフェロン応答遺伝子(IRG)が活性化され、さらなるインターフェロン活性化から構成される免疫応答プロファイルが大体生成されることが期待された。活性化の経路は、I型IFN-αと-β、II型IFN-γ、炎症性サイトカインの上昇、IL-6とIL-12であった。要するに、上記により、先天免疫系レスポンダー、すなわち、細胞傷害性T細胞(CD8+)、Tヘルパー細胞(CD4+)及びNK細胞の減耗を引き起こす。
第1群の動物(BALBC/jマウス16匹、C57BL/6マウス11匹)は急性実験に用いられた。本発明者らは、プリスタン注射から約4週間後に、未処理マウスと異なり、これらのマウスをMSC又はHXB-319MSCで処理した。処理から1週間後、本発明者らは、急性実験における腹腔洗浄液中の細胞レパートリーを評価した。
簡単に言えば、0日目:I型IFN活性化を誘導するためにプリスタンを注射した;28日目:MSC又はプライム化MSC(1×106)を4週間内に注射した;35日目:MSC注射から1週間後、すべてのマウスから腹腔洗浄液と末梢血を採取した。
別の1群の動物群2(BALBc/j雌67匹、C57BL/6 20匹)は、同じ時点で注射したが、270日間(約9ヶ月)後に処分し、プリスタンモデルの慢性的な効果及びHXB-319処理の結果を獲得した。本発明者らは、尿、血液、腹腔洗浄液、及び、腎臓、肝臓、肺、心臓、リンパ節及び脾臓からの組織を採取した。また、脾臓から脾臓細胞を単離し、細胞選別実験も行った。
我々の急性プリスタン注射マウスモデルの研究では、驚くべきことに、目前のヒト臨床試験中に他の群で使用されている、非プライム化MSCとは異なり、HXB-319でプライム化されたMSCは、ループスマウスモデルにおいて、インターフェロン活性化により調節される炎症を安全、有意に有効、且つ強力に改善可能であることが示された。
<腹腔洗浄液の細胞選別>
本発明者らは、腹腔洗浄液を分離し、赤血球を遠心分離して溶解し、4%pfaで固定化した。次に、本発明者らは、2つの独立したチューブに3×10
7個の細胞(樹状細胞vsリンパ球パネル)を等分してフローに使用した(表2参照)。
プリスタン誘導マウスモデルにおいて、インターフェロン関連炎症性活性のため、腹腔洗浄液の細胞傷害性T細胞サブセット(CD4-CD8+)は正常WTよりも低くなった。驚くべきことに、本発明のプライム化MSCは、細胞傷害性T細胞(CD3+CD4-CD8+)の不足を修正しただけでなく、それらの数を7倍(F=103.8,p=0.003)までにアップレギュレートしており、多変量解析によって、非プライム化MSC(F=3.9,p=0.11)と比較して顕著な効果を示した。さらに、Th1細胞、CD4+T細胞(CD3+CD4+)の数は、多くても4倍まで有意にアップレギュレートされた(p<0.05)。これらのデータは、本発明のHXB-319(プライム化MSC)治療から1週間後に収集された。さらに、驚くべきことに、インビトロ研究では、HXB-319でプライム化されたMSCは、現在臨床試験中のMSCと比較して50,000倍以上のインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)を発現することが示された。
HXB-319によるMSCプライム化は、特定の標的シグナル伝達経路において先天性及び適応性免疫系細胞傷害性細胞を増殖、活性化、及び調節することを証明できる、インビトロ及びインビボの証拠を示している。
T細胞:CD3+CD4+T細胞、CD3+CD8+T細胞、PD-L1+、CD25+CD4+&CD25+CD8+制御性T細胞;すべてのCD25+細胞は、インビボ細胞選別実験により、同じ細胞のIL-2刺激よりも有意に増殖した(図6)。また、インビトロ実験では、調節能力及び抑制能力を有するT細胞サブセット中で、CD-25+が発現されたことが示された。CTLA-4+T細胞もインビボ及びインビトロで増殖されており、抗炎症性共刺激性分子である。
細胞表面受容体の発現から、これらの細胞は機能的に活性化されていることがわかった。HXB-319と共培養したPBMCでは、CD-69+の発現が著しく高くなり、免疫細胞の活性化が示唆された。CD69は、常在性メモリT(TRM)細胞及びγδT細胞などの組織常在性免疫細胞の複数のサブセットで発現されたため、組織保持のマーカーと認識される。CD69は、制御性T(Treg)細胞の分化、及びIFN-γ、IL-17、IL-22の分泌を調節するものである(Eur.J.Immunol.2017.47:946-953)。CD56+は、IL-2のないHXB-319共培養環境でも、T細胞において発現され、活性化が著しく向上された。CD56+T細胞は、CD56-T細胞と比較して、あまり強く増殖しないが、増強された天然の細胞毒性を示している。CD56+T細胞は、TCR刺激後に、インターフェロン-γ(IFN-γ)及びインターロイキン-13(IL-13)を放出したが、IL-10を放出しなかった。向上したCD56+T細胞の割合は、活性化から数時間内にIFN-γ、IL-4及びIL-13を発現した。CD56+T細胞は、これらの細胞溶解活性及びサイトカイン分泌活性を獲得したため、免疫媒介性疾患に対する免疫療法の潜在的な候補となっている。
NK細胞:HXB-319処理の場合、CD25+NK細胞は、マウス中で数量が著しく増加しており、この点について、NKp46、NKp30、NKp44などのNK細胞の細胞表面マーカーによりインビトロ証明された。図7A-Bは、HXB-319及びその3成分誘導体(以下の実施例2ではHXB-319-3とも称する)に暴露した後のPBMCに対して行った細胞選別実験の結果を示している(図7Aにおける符号は、以下のように示している。BはHXB-319、CはHXB-319-3、及びDは2×HXB-319-3である)。CD-56はNK細胞のプロトタイプマーカーであり、NK細胞はHXB-319処理後も顕著に増殖された。図7Bは、HXB-319及びMSC処理から9ヶ月後に腹腔洗浄液NK細胞のパーセンテージを示しており、HXB-319の用量効果及びHXB-319の持続可能な効果を示している。
Tregs:制御性T細胞(Tregs)は、T細胞の特殊なサブ集団であり、免疫応答を抑制する作用を発揮しており、これによってホメオスタシスと自己免疫寛容性を維持する。TregはT細胞増殖とサイトカイン産生を阻害することができ、自己免疫の防止に重要な役割を果たすことを示している。驚くべきことに、HXB-319(図8AのOHA)処理後のインビボ実験ではCD4+Tregは有意に増加した。
Th17細胞(RORgT+):Th17細胞は、IL-17及びその他の炎症性サイトカインの高分泌により確認されるTヘルパーリンパ球の特定サブセットである。
驚くべきことに、HXB-319でプライム化されたMSCは、Th17細胞の活性化を制御し、Th17細胞の増殖を有意に抑制しており、上記結果は、HXB-319(1×106個の細胞)を一回に限り注射してから9か月後までTh17細胞に対する持続可能な免疫系の調節により証明された(図8B)。
脾臓細胞におけるTh17発現:群1:p<0.011、F=5.0、HXB-319、100万のCD8+RORGT+細胞(Th17細胞)は、健常対照より有意に低く、プリスタン-SLEマウスよりも数値的に低く、p<0.06であった(3.33未処理SLE対照の平均値、HXB-319では1.32、変動係数が高い)。一方、慢性実験では、群2:p<0.018、f=3.84、HXB-319、100万注射アームのCD8+RORGT+細胞は、プリスタン対照より有意に高くなかった。
形質細胞様樹状細胞pDC:HXB-319でプライム化されたMSCのインターフェロン活性化をインビボモデルで試験し、脾臓pDCの増殖/活性化を抑制することを示した。本発明者らは、骨髄系樹状細胞mDCについて類似した結果を観察した(表3:慢性モデル群2のMSC及びHXB-319処理から9カ月後の脾臓細胞選別結果及びその有意性)。
形質細胞様樹状細胞はI型IFNの主要な生産者であり、抗原提示を介してT細胞応答に直接影響を与え、PDCA-1+の存在で表される。
PDCA-1は、分子量29-33kDのII型膜貫通糖タンパク質である。主にナイーブ型マウスのI型IFN産生細胞(IPC)で発現されるが、I型IFN及びIFNs-γによる刺激後、ほとんどの細胞種でアップレギュレートされる。終末分化した正常形質細胞様樹状細胞に高度に発現される。
驚くべきことに、プリスタンモデルを2.5×106個のプライム化MSC(HXB-319)で処理した場合、通常のMSC(プライム化されていないもの)100万個とHXB-319 100万個で処理した場合に比べて、PDCA-1+脾細胞と腹腔腔細胞の頻度が著しく低下することがわかった(表3、図9)。PDCA-1+は形質細胞様樹状細胞(pDC)の細胞マーカーでもあるが、B細胞にも見られる。主にI型IFN産生細胞(IPCs)で発現するが、I型IFN及びIFNs-γで刺激した後、ほとんどの細胞型でアップレギュレートされる。
PD-L1+細胞(図10):PD-L1はエフェクターT細胞に発現したPD-1と結合し、アポトーシス又は無反応性を誘導することにより自己免疫疾患を予防することにより、免疫調節において重要な役割を果たす。この分子は正常な免疫防御のバランスが必要なチェックポイント分子である。そのレベルは炎症の間低く、自己免疫疾患の治療中に正常化又は増加していることが望ましい。PD-L1はCD274であることが知られており、抗炎症マーカーと考えられているHXB-319は腹腔洗浄液中のPD-L1発現細胞率及び脾臓細胞率のカウントに積極的に作用しており(図10)、抗炎症作用の証拠が示されている。しかし、このレベルは高すぎず、第1群の急性実験では、野生型の未処理マウスと、プリスタン誘導HXB-319処理マウスの腕の間でPD-L1レベルには統計的な差はなかった。
群1(急性試験、プリスタン誘導後4週間の細胞処理後1週間)のCD4+PDL1+細胞はANOVAを用いて差を示し、未処理のMSCは健常対照よりも高い数を示し、OHA×100万(HXB-319)の1回処理の方が、数量が高かった。
第2群のCD4+PDL1+細胞(慢性実験、プリスタン誘導後4週間の細胞処理後9カ月)は、ANOVAを用いた差を示し、OHA処理MSC×1(HXB-319)×100万は健康対照より有意に高く、数値的にもSLE対照マウス(プリスタン偽手術)より高かった(p<0.030、F=3.33)。
<血清インターフェロンレベル>
急性プリスタンマウスモデルにおいて、プリスタン誘導マウスのHXB-319(2×106個の細胞)でプライム化されたMSCによる1回処理は、驚くべきことに、血清中のIFN-α(p<0.05)とIFN-γ(p<0.001)の全身レベルを阻害した(図11)。
慢性プリスタンマウスモデルにおいて、プリスタン誘導マウスのHXB-319(1×又は2×106個の細胞)でプライム化されたMSCによる1回処理は、驚くべきことに、IFN-α(p<0.05)及びIFN-γ(p<0.001)の持続的阻害の全身レベルを示した(図12)。
さらに、驚くべきことに、HXB-319でプライム化されたMSC処理により、急性又は慢性のプリスタン誘導炎症性疾患において、I型及びII型IFN経路が活性化する炎症を阻害することに成功したことを見出し、I型及びII型インターフェロン活性化経路が制御されている証拠を示した。さらに、HXB-319の治療後に炎症性サイトカインの量が顕著に改善された。
<プリスタン慢性感染モデルにおける血清サイトカインのレベルを低下させる検討>
TNF-α、IL-1β、IL-6などのサイトカインは、通常の非プライム化MSC処理後に上昇したが、HXB-319でプライム化されたMSCは炎症性サイトカインの有意な上昇を示さないため、サイトカインストームの増加には問題がなかった(図13)。図13-14では、これらのサイトカインを、非プライム化MSCとHXB-319プライム化MSCで処理した1週間後に、プリスタン誘導マウスの血清中で調べた。
<血清IL-17レベル>
また、マウス血清中のIL-17Aの血清レベルは、プリスタン注射から270日後にも調べられ、驚くべきことに、非プライム化MSCとHXB-319(図15ではOHA)でプライム化されたMSCで処理したところ、HXB-319で処理すると、用量依存的にサイトカインのレベルが有意に低下することが示された。
<二本鎖DNAの力価変化>
二本鎖DNAは、腎炎のマーカーであり、SLE腎炎の臨床的改善を表す。HXB-319でプライム化されたMSC処理は、より高い用量でこのマーカーの顕著な制御を示す。効果は、X2を使用した後、又はマウス1匹あたり250万を超える用量で顕著であった(図16)。
<血清BAFF>
また、慢性試験群においてBAFFの血清レベルを測定した(図17)。その結果、B細胞の活性化を活性化、刺激する分子であり、SLEにおける主要な治療標的の1つと考えられているHXB-319でプライム化されたMSCを用いてBAFFレベルを低下させたことが示された。ベリキシマブ(FDAにより最近承認された薬物)も、B細胞活性化因子BLySに影響を与えた。
<BALB/cjプリスタンの慢性注射実験の病理学的評価及びスコアリング>
本発明者らは、マウスから取り出した全ての臓器を10%のPBSを含むホルマリンに固定化した。すべての腎臓生検についてH、E及びPAS染色を行い、本発明者らは腎臓病理学の独立病理学専門家を雇った(図18-19)。先に公表された腎臓病理学スコアは、炎症性細胞と硬化症の数値評価に用いられている(Kidney Int,2009年9月;76(5):534-45,Epub2009年7月1日)。驚くべきことに、HXB-319でプライム化されたMSCは、原始的に誘導されたBalbCJヒトSLEマウスモデルにおける糸球体硬化及び全体的な瘢痕形成を改善し、また、HXB-319でプライム化されたMSCは、原始的に誘導されたBALBcjヒトSLEマウスモデルに見られる皮膚炎を改善することを見出した。
要するに、実施例1で概説した実験により、驚くべきことは、次のことを見出した:
(1)原始的に誘導されたBALBcjインターフェロン活性化急性モデル及び慢性プリスタン誘導ヒトSLEマウスモデルにおいて、HXB-319でプライム化されたMSCによりインターフェロン活性化の血清学的及び細胞学的徴候を改善すること;
(2)HXB-319-3でプライム化されたMSCはIDO遺伝子発現よりも有効であり、NK細胞増幅においても有効であり、インビトロ組織培養ではHXB-319でMSCをプライム化した後、IL-6及びIL-8の同量の上昇がなかった。したがって、HXB-319-3でプライム化されたMSCは、多くの自己免疫疾患で観察される重篤な合併症であり、SLE活動性疾患を含む、免疫活性化が制御できないマクロファージ活性化症候群(MAS)でサイトカインストームが観察された場合に使用することができること;
(3)HXB-319でプライム化されたMSCは、原始的に誘導されたBALBcjヒトSLEマウスモデルにおける糸球体硬化及び全体的な瘢痕形成を改良し、したがって進行したSLE腎炎を予防すること;
(4)HXB-319でプライム化されたMSCは、原始的に誘導されたBALBcjヒトSLEマウスモデルで観察された皮膚炎を改善し、したがってSLEの皮膚所見を予防すること;
(5)HXB-319でプライム化されたMSCは、インターフェロン活性化が存在する場合、NK、CD4+及びCD8+T細胞の増幅及び活性を改善すること;及び
(6)HXB-319でプライム化されたMSC、又はHXB-319でプライム化されたMSCから単離されたCCM(MSCの分泌物及びエクソソームを含む)は、CAR-T及びCAR-NK細胞に暴露されると、それらの増幅及び細胞傷害活性を誘導し、それによって効能及び患者の結果の改善に寄与する。CAR-T、CAR-NK、及びさらに設計された変異体、遺伝的変異体、分泌産物、及びエクソソームのような細胞療法製品は、その効力及び寿命を改善するために、HXB-319によってプライム化されることができる。キメラ抗原受容体修飾T細胞(CART)又はCAR-ナチュラルキラー細胞は免疫療法であり、化学療法にとって難治性の血液悪性腫瘍に罹患している一部の患者で緩和を誘導することが示されている。HXB-319は、CAR-T及びCAR-NK細胞の抗炎症効果を高めることにより、CAR-T/CAR-NK療法の効果を改善し、患者の治療結果を改善することができる。
実施例2
様々な自己免疫疾患(例えば、SLE、乾燥症、全身性強皮症、移植片対宿主病、炎症性腸疾患、多発性硬化症、乾癬様関節炎)におけるI型及びII型インターフェロン経路の活性化により誘導される炎症性活性を制御するために、実施例2では「HXB-319-3」と称されるMSCプライム化培地を開発するための実験が行われた。実施例2で使用される用語「HXB-319-3」はまた、実施例2で発見されたMSCプライム化培地で処理又はプライム化されたMSCを意味することができる。
本発明者らは、実施例1に記載された実験と同様に、IDO1、IL-10、PDGFR、MCAM(CD146)及びCD274(PDL-1)の遺伝子発現を最大化し、CX3CL1(ケモカイン)の発現を最小化するために、異なるサブセットのプライム化培地を(HXB-319と比較して)試験した。実施例1のように、本発明者らは、IDOの発現及び活性を最初に評価した。ASC-AC-21、200μM(Sigma-Alrich(L4524-5MG))を全研究群の無血清DMEMに加えた。試験された培地成分の異なる組み合わせは図20A-Bに示されている。
本発明者らは、以下の遺伝子(CTLA4、IL-4、IL-6、IL-8、AKT、IL-17、TLR4、TLR-7、CX3CR3、及びPDGF-R)を用いて、少なくとも5つの異なる骨髄ドナーから単離されたMSCを用いて、IDO酵素アッセイ及びRT-PCRを利用して、HXB-319-3のインビボ効力を評価した。実施例1で説明したようにMSCを成長、増幅し、IFN-γ(100ng/ml)、poly(I:C)(1μg/ml)及びTNF-α(20ng/ml)(総称して「HXB-319-3」)の4成分を含有する無血清培地で18時間処理した。18時間終了時に細胞をPBSで3回洗浄した後、RNA単離Qiagenキットを用いてRNAを単離した。その後、RT-PCRを2回繰り返して行い、同時に処理した2組の細胞を無血清培地にて24時間保持し、MSCの分泌物をELIZA用に採取した。キヌレニン活性(IDO)における2つのドナーのMSC応答の結果を図20A-Bに示す。驚くべきことに、HXB-319-3が最も強力な抗炎症作用と、インビトロにおける抗炎症遺伝子の発現に類似した作用を有することが明らかになった。
本発明者らはまた、、遺伝子標的発現がHXB-319治療群で発現される遺伝子標的発現と類似しているか、又はそれ以上であることを検証するために、研究群で未処理MSC:15(HXB-319);11(TNF-α+IFN-γ);12(TNF-α+INF-γ+IL-1β);14(TNF-α+IFN-γ+Poly I:C)に対してRT-PCRを実施した。本発明者らは特に、IDO1、IL-10、PDGRF及びCD274(PDL-1)と最小化CX3CL1との組み合わせに着目した(図21A-23)。
本発明者らは、TNF-α+IFN-γ+PolyI:Cの3つの培地成分(HXB-319-3)が、HXB-319と同様の抗炎症結果及び遺伝子発現を示すことを見出した後、さらに実験を行った。HXB-319-3で処理したMSCを用いた場合、IL-6及びIL-8炎症性サイトカインを上昇させなかった。次に、本発明者らは、HXB-319-3のインビトロでの用量効果を実証した。本発明者らは、IDO測定とRT-PCRを行った(図24-26)。
本開示は、本明細書で提供される特許請求の範囲及び書類によってさらに説明される。
本開示の好ましい実施例を参照して本開示を具体的に示し、説明したが、当業者であれば、添付の特許請求の範囲によってカバーされる本開示の範囲を逸脱することなく、様々な形態及び詳細な変更が可能であることが理解される。前述の明細書において引用されたすべての特許、出版物及び参照文献は、引用により全体として本明細書に組み込まれている。
本発明者らは、マウスから取り出した全ての臓器を10%のPBSを含むホルマリンに固定化した。すべての腎臓生検についてH、E及びPAS染色を行い、本発明者らは腎臓病理学の独立病理学専門家を雇った(図18-19)。先に公表された腎臓病理学スコアは、炎症性細胞と硬化症の数値評価に用いられている(Kidney Int,2009年9月;76(5):534-45,Epub2009年7月1日)。驚くべきことに、HXB-319でプライム化されたMSCは、プリスタン誘導されたBalbCJヒトSLEマウスモデルにおける糸球体硬化及び全体的な瘢痕形成を改善し、また、HXB-319でプライム化されたMSCは、プリスタン誘導されたBALBcjヒトSLEマウスモデルに見られる皮膚炎を改善することを見出した。