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JP2022054847A - 繊維基材、炭素繊維強化複合材料、及び繊維基材の製造方法 - Google Patents

繊維基材、炭素繊維強化複合材料、及び繊維基材の製造方法 Download PDF

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JP2022054847A
JP2022054847A JP2020162087A JP2020162087A JP2022054847A JP 2022054847 A JP2022054847 A JP 2022054847A JP 2020162087 A JP2020162087 A JP 2020162087A JP 2020162087 A JP2020162087 A JP 2020162087A JP 2022054847 A JP2022054847 A JP 2022054847A
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耕志 原田
Koji Harada
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Mitsubishi Chemical Corp
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Abstract

Figure 2022054847000001
【課題】強化繊維として炭素繊維マルチフィラメント糸条を用いて容易に製造することができ、かつ、マトリックス樹脂組成物を含侵させて一体化させた際に表面平滑性に優れる成型品を製造可能な繊維基材を提供する。
【解決手段】複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条が一方向に配列されたシートと、複数の補助繊維糸条とを含む繊維基材である。シートの少なくとも一方の面でシートと複数の補助繊維糸条とが接着されている。複数の補助繊維糸条が炭素繊維と異なる材質の繊維からなる。複数の補助繊維糸条の長さがシートの繊維方向に対して垂直な方向の幅よりも短い。複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条の各々は、隣接する炭素繊維マルチフィラメント糸条といずれかの補助繊維糸条で接続されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、繊維基材、炭素繊維強化複合材料、及び繊維基材の製造方法に関する。本発明に係る繊維基材は、炭素繊維強化複合材料の基材として優れた特性を発揮し、土木建築業における各種部材の補強や各種の一般的な産業への適用が可能であり、広範な用途に適する。
各種の強化繊維基材(以下、単に「繊維基材」とも称する)と各種のマトリックス樹脂とを複合化した繊維強化複合材料は、軽量で優れた機械特性を有するため、様々な技術分野及び用途で使用されている。例えば、繊維強化複合材料は、土木建築用途(例えば建造物の補強材料等)、一般産業用途、自動車用途(自動車部材)、スポーツ用途(スポーツ用具、自転車部材等)、航空宇宙用途(航空機部材等)等に広く用いられている。
繊維強化複合材料の製造方法としては、例えば、成形型の上にマトリックス樹脂組成物が未含浸の強化繊維基材を積み重ねた後、当該繊維基材にマトリックス樹脂組成物を含浸させ、当該マトリックス樹脂組成物を硬化させる成形法(ハンドレイアップ法、レジントランスファーモールディング(RTM)法、バキュームアシストレジントランスファーモールディング(VaRTM)法等)が知られている。
含浸に用いられる繊維基材としては、たて糸に強化繊維糸条、よこ糸に当該強化繊維糸条よりも小さい糸条繊度の補助繊維糸条を使用する一方向性補強繊維織物が知られている。
特許文献1に記載された繊維基材は、たて糸を炭素繊維マルチフィラメント糸条にて構成し、多数のたて糸を横に並べた状態とし、これらの炭素繊維マルチフィラメント糸条と細くかつ織密度の低いガラス繊維からなる補助繊維糸条とを平組織で織り合わせることで、繊維強化複合材料の成形に適したシート状の織物としたものである。特許文献1に開示された繊維基材は、強化繊維である炭素繊維マルチフィラメント糸条が一方向に並べられた織物であるため、一方向性補強繊維基材とも称される。
特許文献1に開示される一方向性補強繊維基材においては、たて糸である炭素繊維マルチフィラメント糸条の配列に対しよこ糸である補助繊維糸条を挿入する際、各炭素繊維マルチフィラメント糸条はよこ糸である補助繊維糸条に絞られる。この結果、各炭素繊維マルチフィラメント糸条は略楕円形の断面形状となる。各炭素繊維マルチフィラメント糸条は、成型時(つまり繊維基材にマトリックス樹脂組成物を含浸させて硬化させる際)に金型などの平面に押し付けられる。この際にも各炭素繊維マルチフィラメント糸条はよこ糸である補助繊維糸条に拘束されるため、各炭素繊維マルチフィラメント糸条の断面方向端部は中央部に対して薄くなる。そうすると、成型品(つまり繊維強化複合材料)においては、炭素繊維マルチフィラメント糸条同士の間の領域で樹脂量過剰となり、ひけの発生によって表面平滑性が低下する。ここで、ひけとは、樹脂量過剰となった部分が成型時に他の部分(つまり炭素繊維マルチフィラメント糸条が多く存在する部分)よりも大きく熱収縮するために生じる表面形状の凹みである。
含浸に用いられる他の繊維基材としては、特許文献2に記載された一方向性編物基材が知られている。この一方向性編物基材においては、炭素繊維マルチフィラメント糸条が平行に配列されたシートと、無機または有機繊維糸条からなるメッシュ状体と、これらを一体化するように編成されたステッチング糸条とを備える。ステッチング糸条は、拘束編地として上記シート及びメッシュ状体を拘束する。この一方向性編物基材を用いて成型品(つまり繊維強化複合材料)を製造する際にも、ステッチ糸貫入部付近の領域で樹脂量過剰となり、ひけの発生によって表面平滑性が低下するという問題がある。
また、一方向性編物基材は、その製造に必要な多軸織機が汎用的に使用される織機とは異なり、複雑かつ大がかりとなるためコスト面で不利な場合がある。また、連続したメッシュを使用しなければならないため成型品における強化繊維(つまり炭素繊維マルチフィラメント糸条)の割合を高くすることができないという問題がある。さらに、成型品中の層間(つまり炭素繊維マルチフィラメント糸条が平行に配列されたシートと、無機または有機繊維糸条からなるメッシュ状体との間)において樹脂量過剰となるため層間せん断強度や衝撃強度に劣るという問題点もある。
含浸に用いられる他の繊維基材としては、特許文献3に記載された炭素繊維マルチフィラメント糸条が平行に配列されたシートとメッシュ状体とを当該シートの両面で粘着固定した一方向性強化繊維複合基材が知られている。しかし、このような一方向性強化繊維複合基材は、その製造に必要な多軸織機が汎用的に使用される織機とは異なり、複雑かつ大がかりとなるため、コスト面で不利な場合がある。また、連続したメッシュ状体を使用しなければならないため成型品における強化繊維(つまり炭素繊維マルチフィラメント糸条)の割合を高くすることができないという問題がある。さらに、成型品中の層間(つまり炭素繊維マルチフィラメント糸条が平行に配列されたシートと、無機または有機繊維糸条からなるメッシュ状体との間)が樹脂量過剰となるため層間せん断強度や衝撃強度に劣るという問題点もある。
特許第3991440号公報 特開2004-209667号公報 特許第3099730号公報
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、強化繊維として炭素繊維マルチフィラメント糸条を用いて容易に製造することができ、かつ、マトリックス樹脂組成物を含侵させて一体化させた際に表面平滑性に優れる成型品を製造可能な繊維基材、炭素繊維強化複合材料、及び繊維基材の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条が一方向に配列されたシートと、複数の補助繊維糸条とを含む繊維基材であって、シートの少なくとも一方の面でシートと複数の補助繊維糸条とが接着されており、複数の補助繊維糸条が炭素繊維と異なる材質の繊維からなり、複数の補助繊維糸条の長さがシートの繊維方向に対して垂直な方向の幅よりも短く、複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条の各々は、隣接する炭素繊維マルチフィラメント糸条といずれかの補助繊維糸条で接続されていることを特徴とする繊維基材が提供される。
ここで、複数の補助繊維糸条がシートの一方の面に他方の面よりも多く接着されていてもよい。
また、複数の補助繊維糸条がシートの一方の面のみに接着されていてもよい。
また、複数の補助繊維糸条同士が相互に離間していてもよい。
また、複数の補助繊維糸条のうち、少なくとも一部の補助繊維糸条が直線状に延びていてもよい。
また、複数の補助繊維糸条のうち、少なくとも一部の補助繊維糸条は、シート上に一定の周期で配置されていてもよい。
また、複数の補助繊維糸条のうち、少なくとも一部の補助繊維糸条は、シート上で同一直線上に互いに離間して配置されていてもよい。
また、複数の補助繊維糸条のすべてが直線状に延びていてもよい。
また、複数の補助繊維糸条のすべてが同一方向かつ直線状に延びていてもよい。
また、補助繊維糸条の延びる方向がシートを構成する複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条の繊維方向に対して垂直であってもよい。
また、複数の補助繊維糸条の延びる方向と複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条の幅方向との成す角度をθ、シートを構成する複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条の幅をWとし、複数の補助繊維糸条の長さをそれぞれLfx(Lf1、Lf2、Lf3、…)としたとき、複数の補助繊維糸条の長さLfxのうち、90%以上のLfxがm×W/COS(θ)±5%の範囲に存在し、複数の補助繊維糸条同士の間隔の長さをLgy(Lg1、Lg2、Lg3、…)としたとき、複数の補助繊維糸条同士の間隔の長さLgyのうち、90%以上のLgyがn×W/COS(θ)±5%の範囲に存在してもよい。
(x、y、m、nは任意の正の整数であって、xは補助繊維糸条の本数であり、yは補助繊維糸条同士の間隔の数、mは1本の補助繊維糸条と接する炭素繊維マルチフィラメント糸条の本数、nは同一直線上に互いに離間して隣り合う補助繊維糸条同士の端部間に存在する炭素繊維マルチフィラメント糸条の本数を示す。)
また、複数の補助繊維糸条が、熱可塑性ポリマーを含むガラス繊維であってもよい。
また、複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条の各々のフィラメント数が24000~100000本であってもよい。
本発明の他の観点によれば、熱硬化性樹脂組成物と上記繊維基材とを含む炭素繊維強化複合材料が提供される。
本発明の他の観点によれば、熱可塑性樹脂組成物と上記繊維基材とを含む炭素繊維強化複合材料が提供される。
本発明の他の観点によれば、複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条をたて糸、複数の補助繊維糸条をよこ糸として織り合わせることで、繊維織物を製造する工程と、複数の補助繊維糸条を熱可塑性ポリマーによって複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条に接着する工程と、繊維織物から複数の補助繊維糸条を部分的に除去する工程と、を含み、複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条の各々は、隣接する炭素繊維マルチフィラメント糸条といずれかの補助繊維糸条で接続されていることを特徴とする、繊維基材の製造方法が提供される。
ここで、繊維織物の他方の面に配置された複数の補助繊維糸条を繊維織物の一方の面に配置された複数の補助繊維糸条よりも多く除去してもよい。
また、繊維織物の加熱される面の温度をTa(℃)、加熱される面と逆側の面の温度をTb(℃)、熱可塑性ポリマーの融点をTm(℃)としたとき、Ta>Tm>Tbの関係が成り立つようにしてもよい。
また、繊維織物の一方の面側から熱可塑性ポリマーを加熱することによって複数の補助繊維糸条が複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条に接着されてもよい。
また、室温をTr(℃)、繊維織物の単位面積当たり重量をH(g/m)としたとき、Tm<Ta<{Tm×(H+1300)-Tr×H}/1300の関係が成り立っていてもよい。
以上説明したように、本発明の上記観点によれば、強化繊維として炭素繊維マルチフィラメント糸条を用いて容易に製造することができ、かつ、マトリックス樹脂組成物を含侵させて一体化させた際に表面平滑性に優れる成型品を製造可能な繊維基材、炭素繊維強化複合材料、及び繊維基材の製造方法を提供することができる。
本実施形態に係る繊維基材の構成例を模式的に示す平面図である。 本実施形態に係る繊維基材の詳細な構成例を模式的に示す平面図である。 本実施形態に係る繊維基材の詳細な構成例を模式的に示す平面図である。 本実施形態に係る繊維基材の詳細な構成例を模式的に示す平面図である。 本実施形態に係る繊維基材の詳細な構成例を模式的に示す平面図である。 本実施形態に係る繊維基材の製造装置である織機の一例を模式的に示す側面図である。 上記織機によって製造された繊維織物として好適な例と好適でない例とを示す平面写真である。 上記織機によって製造された繊維織物を加熱する際の特徴点を詳細に説明するための説明図である。 繊維織物から補助繊維糸条を部分的に除去する手順を説明するための平面図である。 繊維織物から本実施形態に係る繊維基材を製造する手順を説明するためのフローチャートである。 実施形態の繊維基材を製造する他の手順を説明するためのフローチャートである。
<1.繊維基材の概要>
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。まず、図1に基づいて、本実施形態に係る繊維基材20の概要について説明する。図1(A)は、繊維基材20の一方の面10の構成例を模式的に示す平面図であり、図1(B)は、繊維基材20の他方の面11の構成例を模式的に示す平面図である。図1(B)は図1(A)を左右方向に反転させた図である。なお、以下の説明において、一方の面10、他方の面11という用語は繊維基材20及びその前駆体である繊維織物4(図6~図8等参照)の両方に使用することとする。繊維基材20の一方の面10と繊維織物4の一方の面10とは同じ面を指し、繊維基材20の他方の面11と繊維織物4の他方の面11とは同じ面を指すものとする。
本実施形態に係る繊維基材20は、複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条1が平行に(一方向に)配列されたシート3と、複数の補助繊維糸条2とを含む一方向性補強繊維基材である。
詳細は後述するが、炭素繊維マルチフィラメント糸条1とは、炭素繊維単フィラメントが多数本、ほぼ同一方向に引き揃えられ、サイズ剤などにより一体化された糸条である。補助繊維糸条2とは、荷重を負担することを目的とせず、荷重を負担する強化繊維、すなわち炭素繊維マルチフィラメント糸条1を拘束し繊維基材20を一体化することを目的に繊維基材20中に導入される糸条である。補助繊維糸条2は、炭素繊維とは異なる材質からなる糸条である。
図1(A)、(B)から明らかな通り、シート3の少なくとも一方の面10でシート3と複数の補助繊維糸条2とが接着されている。なお、図1(A)、(B)の例では複数の補助繊維糸条2がシート3の一方の面10にのみ接着されているが、本実施形態に係る繊維基材20がこの例に限られないことは勿論である。本実施形態に係る繊維基材20が取りうる形態の詳細については後述する。
また、複数の補助繊維糸条2の長さは、シート3の繊維方向、すなわち炭素繊維マルチフィラメント糸条1の繊維方向(図1の上下方向)に対して垂直な方向(図1の左右方向)の幅(長さ)よりも短い。
また、複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条1の各々は、隣接する(より詳細には、炭素繊維マルチフィラメント糸条1の幅方向の両側にそれぞれ隣接する)炭素繊維マルチフィラメント糸条1といずれかの補助繊維糸条2で接続されている。言い換えれば、各補助繊維糸条2は、複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条1と接着されている。これにより、シート3を構成する複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条1は互いに離間せず、シート3の形状が維持される。
繊維基材20は例えば以下の工程で製造される。ここでは概要のみを簡潔に説明し、詳細は後述する。図6に示すように、まず、複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条1をたて糸、複数の補助繊維糸条2をよこ糸として織り合わせて繊維織物4(一方向性補強繊維織物)を製造する。この繊維織物4の織組織は、例えばk/j綾織(平織、すだれ織とも称される)(k、jは任意の正の整数であるが、少なくとも一方は2以上となる)となっている。kは例えば補助繊維糸条2がシート3の一方の面10の炭素繊維マルチフィラメント糸条1を跨ぐ本数を意味し、jは補助繊維糸条2がシート3の他方の面11の炭素繊維マルチフィラメント糸条1を跨ぐ本数を意味する。したがって、他方の面11から例えばすべての補助繊維糸条2を除去する場合、kは2以上の整数となる。これにより、シート3を構成する複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条1は互いに離間せず、シート3の形状が維持される。ついで、複数の補助繊維糸条2を熱可塑性ポリマーによって複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条1に接着する(図6参照)。
この繊維織物4においては、各補助繊維糸条2が炭素繊維マルチフィラメント糸条1の本数分の長さ(つまりシート3の繊維方向に垂直な方向の長さ)を有する。さらに、各補助繊維糸条2は、シート3の繊維方向に垂直な方向の長さに延びている。つまり、複数の同じ長さの補助繊維糸条2が一定間隔で平行に配置されている。もちろん、繊維織物4の態様はこの例に限られない。
ついで、繊維織物4から複数の補助繊維糸条2を部分的に除去する。例えば、他方の面11上に存在する複数の補助繊維糸条2を除去する。この時、例えばシート3の一方の面10にのみ複数の補助繊維糸条2を接着し、他方の面11と複数の補助繊維糸条2とを接着しない(つまり、互いに離間可能な)状態としておくとよい。ついで、他方の面11上に存在する複数の補助繊維糸条2を除去する。なお、図1(A)、(B)は2/2綾織の繊維織物4の他方の面11から補助繊維糸条2をすべて除去した例である。なお、綾織では、補助繊維糸条2が繊維織物4を厚み方向で貫通する部分(一方の面10から他方の面11に貫通する部分、及び他方の面11から一方の面10に貫通する部分)が炭素繊維マルチフィラメント糸条1の繊維方向に沿って炭素繊維マルチフィラメント糸条1の1本分だけずれている。このように、本実施形態に係る繊維基材20は、繊維織物4から複数の補助繊維糸条2を部分的に除去するだけで製造することが可能なので、炭素繊維マルチフィラメント糸条1を用いて容易に製造することができる。なお、詳細は後述するが、繊維織物4から複数の補助繊維糸条2を部分的に除去する方法はこの例に限られない。
本実施形態に係る繊維基材20には、補助繊維糸条2が接着されていない面(図1の例では他方の面11)が存在する。このような面が成形型などの平滑面に接した際、炭素繊維マルチフィラメント糸条1を構成する炭素繊維単フィラメントが平滑面に沿って広がる。このとき、隣接する炭素繊維マルチフィラメント糸条1同士の間にほとんど空隙ができないため、繊維基材20とマトリックス樹脂とを一体化して成型品とする際に、樹脂量過剰となる部分の形成を抑制することができる。したがって、ヒケの発生が抑制された成型品を製造することができる。すなわち、繊維基材20にマトリックス樹脂組成物を含侵させて一体化させた際に表面平滑性に優れる成型品を製造することができる。
<2.炭素繊維マルチフィラメント糸条>
次に、繊維基材20を構成する炭素繊維マルチフィラメント糸条1の構成について説明する。上述したように、本実施形態に係る繊維基材20には、補助繊維糸条2が接着されていない面が存在する。本実施形態の場合、図1に示す第2の面11には、補助繊維糸条2は接着されていない。このような面が成形型などの平滑面に接した際、炭素繊維マルチフィラメント糸条1を構成する炭素繊維単フィラメントが平滑面に沿って広がる。このとき、隣接する炭素繊維マルチフィラメント糸条1同士の間にほとんど空隙ができないため、繊維基材20とマトリックス樹脂とを一体化して成型品とする際に、樹脂量過剰となる部分の形成を抑制することができる。したがって、ヒケの発生が抑制された成型品を製造することができる。すなわち、繊維基材20にマトリックス樹脂組成物を含侵させて一体化させた際に表面平滑性に優れる成型品を製造することができる。
ここで、炭素繊維マルチフィラメント糸条1の糸条繊度が高いほど平滑面と接する炭素繊維マルチフィラメント糸条1が成形型などの平滑面に沿って広がりやすく、より表面平滑性の高い成型品を得ることができる。このような観点から、炭素繊維マルチフィラメント糸条1のフィラメント数(単フィラメントの数)は24000本以上が好ましく、40000本以上がより好ましい。一方、フィラメント数が過剰に大きいと炭素繊維マルチフィラメント糸条1の生産性が低下し、ひいては成型品の生産性が低下する可能性があることから、炭素繊維マルチフィラメント糸条1のフィラメント数は100000本以下が好ましく、60000本以下がより好ましい。
炭素繊維マルチフィラメント糸条1の糸条繊度は、成型品の表面平滑性を高める観点から、1600mg/m以上が好ましく、3000mg/mがより好ましい。一方、糸条繊度が過剰に大きいと炭素繊維マルチフィラメント糸条1の生産性が低下し、ひいては成型品の生産性が低下する可能性があることから、糸条繊度は7500mg/m以下が好ましく、4500mg/m以下がより好ましい。
炭素繊維マルチフィラメント糸条1を構成する炭素繊維単フィラメントの径(断面形状の直径)は、炭素繊維マルチフィラメント糸条1の生産性向上の観点から、4μm以上が好ましく、6μm以上がより好ましい。一方、炭素繊維マルチフィラメント糸条1の内部と外周部との間の均質性を高め、ひいては炭素繊維マルチフィラメント糸条1の物性を高めるという観点から、炭素繊維単フィラメントの径は16μm以下が好ましく、14μm以下がより好ましい。
さらに、繊維基材20を用いた成型品(すなわち炭素繊維強化複合材料)の用途においては、成型品が負担可能な荷重が重要となる。繊維基材20を用いた成型品の用途としては、例えば、土木建築用途(例えば建造物の補強材料等)、一般産業用途、自動車用途(自動車部材)、スポーツ用途(スポーツ用具、自転車部材等)、航空宇宙用途(航空機部材等)等である。
このような観点から、炭素繊維マルチフィラメント糸条1の引張強度は3000MPa以上が好ましく、4000MPa以上がより好ましい。また炭素繊維マルチフィラメント糸条1は高価格となるため、費用対効果の観点から、炭素繊維マルチフィラメント糸条1の引張強度は8000以下が好ましく、7000MPa以下がより好ましい。なお、本実施形態において、炭素繊維マルチフィラメント糸条1の引張強度とは、JIS R7608に準拠して測定したストランド強度を指すものとする。
炭素繊維マルチフィラメント糸条1の集束性は、炭素繊維マルチフィラメント糸条1を構成する炭素繊維単フィラメントがどの程度整列して束ねられているかを示す指標でありフックドロップ値で評価することができる。炭素繊維マルチフィラメント糸条1の集束性が高い(後述するフックドロップ値が高い)ほど、例えば成型品の製造時に炭素繊維マルチフィラメント糸条1の断面形状が適切に変形し、成型品において高い表面平滑性を得ることができる。一方で、交絡が適度に存在することで炭素繊維マルチフィラメント糸条1の製織性や引張強度が向上する。
これらの観点から、炭素繊維マルチフィラメント糸条1のフックドロップ値は100mm以上が好ましく、500mm以上がより好ましい。一方で、炭素繊維マルチフィラメント糸条1の取り扱いが容易となり製織性が向上すること、及び引張強度が向上することから、フックドロップ値は1000mm以下が好ましく、900mm以下がより好ましい。
フックドロップ値は、以下の方法で測定される。
まず、炭素繊維マルチフィラメント糸条1を鉛直方向に配し、上端を固定しておく。ついで、錘を付けた合計重量30gのフックを炭素繊維マルチフィラメント糸条1に差し入れる。ここで用いるフックは、直径1mm金属製ワイヤーを成形することで作製されるフックであり、フック部分の半径が5mmのものである。
ついで、フックを炭素繊維マルチフィラメント糸条1に差し入れたまま自由落下させる。上述したように、炭素繊維マルチフィラメント糸条1とは、炭素繊維単フィラメントが多数本、ほぼ同一方向に引き揃えられサイズ剤などにより一体化された糸条である。しかしながら、いずれかの箇所で炭素繊維単フィラメント同士が絡み合っていることが多い。このような部分でフックが止まることが多い。したがって、フックを炭素繊維マルチフィラメント糸条1に差し入れた位置からフックが止まった位置までの距離を測定することができる。差し入れた位置から停止位置までのフックの落下距離がフックドロップ値となる。
炭素繊維マルチフィラメント糸条1に用いられるサイズ剤の種類は特に問われない。サイズ剤の種類としては、例えば、エポキシ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、アクリレート基およびメタクリレート基から選ばれる1種類以上の官能基を持つ物質等が挙げられる。このようなサイズ剤を、例えばほぼ同一方向に引き揃えられた多数本の炭素繊維単フィラメントに含侵させ、固着させることで、炭素繊維マルチフィラメント糸条1を製造する。サイズ剤の含侵量は特に制限されず、一般的なサイズ剤の含侵量であればよい。具体的には、例えば炭素繊維単フィラメントの束に対して0.01~5質量%であってもよい。なお、サイズ剤は、炭素繊維マルチフィラメント糸条1の集束性を高めるだけでなく、炭素繊維マルチフィラメント糸条1とマトリックス樹脂組成物との接着性を改善することもできる。
<3.補助繊維糸条>
本実施形態で使用される補助繊維糸条2は、荷重を負担する複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条1を拘束し繊維基材20を一体化することを目的に繊維基材20中に導入される。
補助繊維糸条2は荷重を負担しないため、強度の高さよりも取り扱い性の良好さや単位長さ当たりのコストが小さいことなどが重要視される。このため、補助繊維糸条2は強化繊維として使用される炭素繊維とは異なる材質で構成されることが好ましい。
補助繊維糸条2の材質としては、例えば、ガラス繊維、バサルト繊維などの無機繊維、ポリアラミド繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維などの有機繊維等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
補助繊維糸条2は、製織や取扱いに際して切断されにくいことが好ましい。このような観点から、補助繊維糸条2の糸条繊度は2mg/m以上が好ましく、5mg/m以上がより好ましく、10mg/m以上がさらに好ましい。一方で、成型品の表面平滑性を高め、ヒケを抑制するという観点から、補助繊維糸条2の糸条繊度は2000mg/m以下が好ましく、200mg/m以下がより好ましく、50mg/m以下がさらに好ましい。
また、繊維基材20全体の集束性の観点から、補助繊維糸条2の糸条繊度は炭素繊維マルチフィラメント糸条1の糸条繊度に対し、0.01%以上が好ましく、0.05%以上がより好ましく、0.1%以上がさらに好ましい。一方、成型品の表面平滑性を高める観点からは、補助繊維糸条2の糸条繊度は炭素繊維マルチフィラメント糸条1の糸条繊度に対し、100%以下が好ましく、10%以下がより好ましく、1%以下がさらに好ましい。
炭素繊維マルチフィラメント糸条1と補助繊維糸条2とを効率的に接着するために、補助繊維糸条2として、熱可塑性ポリマーが連続的に付着した補助繊維糸条2を使用することができる。ここで、補助繊維糸条2に使用される熱可塑性ポリマーとしては、例えば、ナイロン、共重合ナイロン、ポリエステル、塩化ビニリデン、塩化ビニル、ポリウレタン等が挙げられる。これらのうちでも、成型品を構成するマトリックス樹脂との接着性に優れる樹脂が好ましい。例えば、共重合ナイロン、例えば、ナイロン6、ナイロン66およびナイロン610等の共重合ナイロンは、マトリックス樹脂の一種である熱硬化性樹脂との接着が良好であるので好ましい。
繊維基材20全体をより効率よく集束させるという観点から、補助繊維糸条2は、熱可塑性ポリマーが付着したガラス繊維であることが好ましい。熱可塑性ポリマーを補助繊維糸条2に付着する方法は特に制限されず、例えば合撚、カバリング、引き揃え等であってもよい。なお、熱可塑性ポリマーは必ずしも補助繊維糸条2に付着させなくてもよい。この場合の接着方法については後述する。
<4.繊維基材の詳細構成>
つぎに、図1~3に基づいて、本実施形態に係る繊維基材20の詳細構成について説明する。図1(A)、(B)の記載内容は上述した通りである。図2及び図3は、繊維基材20の詳細な構成例を模式的に示す平面図である。図2、図3が示す構成例については後述する。
本実施形態に係る繊維基材20は、図1(A)、(B)に示すように、複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条1が一方向に配列されたシート3と、複数の補助繊維糸条2とを含む繊維基材、すなわち、一方向性補強繊維基材である。図1(A)、(B)の例では、シート3を構成する複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条1は互いに平行に図示上下方向に延びており、図示左右方向に配列されている。図示左右方向に延びる複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条1が、図示上下方向に配列されていてもよい。
さらに、シート3の少なくとも一方の面でシート3と複数の補助繊維糸条2とが接着されている。より詳細には、複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条1のうち、一方の面を構成する部分に複数の補助繊維糸条2が接着されている。図1(A)、(B)の例では、複数の補助繊維糸条2がシート3の一方の面10にのみ接着されているが、本実施形態に係る繊維基材20はこの例に限られない。ただし、シート3の両面に同程度の補助繊維糸条2が存在することは好ましくなく、複数の補助繊維糸条2がシート3の一方の面10に他方の面11よりも多く接着されていることが好ましい。そして、図1(A)、(B)に示すように、複数の補助繊維糸条2がシート3の一方の面10にのみ接着されていることがより好ましい。
上述したように、本実施形態の目的は成型品の表面平滑性を高めることにある。このような目的を達成するため、本実施形態では、繊維基材20の少なくとも一部に補助繊維糸条2が接着されていない部分を形成する。このような部分(図1(A)、(B)の例では他方の面11の全面)が成形型などの平滑面に接した際、炭素繊維マルチフィラメント糸条1を構成する炭素繊維単フィラメントが平滑面に沿って広がる。このとき、隣接する炭素繊維マルチフィラメント糸条1同士の間にほとんど空隙ができないため、繊維基材20とマトリックス樹脂とを一体化して成型品とする際に、樹脂量過剰となる部分の形成を抑制することができる。したがって、ヒケの発生が抑制された成型品を製造することができる。すなわち、繊維基材20にマトリックス樹脂組成物を含侵させて一体化させた際に表面平滑性に優れる成型品を製造することができる。
成型品の表面平滑性をより高めるためには、補助繊維糸条2が接着されていない部分が繊維基材20になるべく広く形成されていることが好ましい。このような観点から、図1(A)、(B)の例では、補助繊維糸条2が接着されていない部分を他方の面11の全面としている。
ここで、シート3と複数の補助繊維糸条2とを接着する方法としては、上述した通り、予め複数の補助繊維糸条2に熱可塑性ポリマーを付着させておく方法が挙げられる。この場合、複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条1と複数の補助繊維糸条2とを織り合わせて繊維織物4を製造した後に、熱可塑性ポリマーを加熱溶融することでシート3と複数の補助繊維糸条2とを接着することができる。これらについては製造方法の項目で詳細に説明する。
なお、熱可塑性ポリマーの供給方法としては、補助繊維糸条2に熱可塑性ポリマーを付着させておく例に限られず、例えば炭素繊維マルチフィラメント糸条1に熱可塑性ポリマーを付着させておく方法、炭素繊維マルチフィラメント糸条1のシート3に熱可塑性ポリマーを塗布する(塗布の方法としてはスプレー等が挙げられる)方法等が挙げられる。熱可塑性ポリマーを用いる方法では、繊維織物4を製造した後に熱可塑性ポリマーを加熱溶融することで、シート3と複数の補助繊維糸条2とを接着することができる。なお、シート3と補助繊維糸条2との接着方法は熱可塑性ポリマーを用いた方法に限られない。例えば、熱硬化樹脂、2液反応型接着剤、あるいはUV硬化樹脂を用いてシート3と補助繊維糸条2とを接着してもよい。
複数の補助繊維糸条2は、炭素繊維と異なる材質の繊維からなる。詳細は上述した通りである。さらに、複数の補助繊維糸条2の長さは、シート3の繊維方向(炭素繊維マルチフィラメント糸条1の繊維方向)に対して垂直な方向の幅よりも短い。これにより、補助繊維糸条2の取り扱いを容易にするだけでなく、繊維基材20の一方の面10(または他方の面11)に補助繊維糸条2が接着されていない部分を形成することができる。このような部分(図1(A)、(B)の例では他方の面11の全面)による効果は上述した通りであり、成型品の表面平滑性を高めることができる。各補助繊維糸条2の具体的な長さについては図2から図5を用いて後述する。
さらに、複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条1の各々は、隣接する炭素繊維マルチフィラメント糸条1といずれかの補助繊維糸条2で接続されている。言い換えれば、各補助繊維糸条2は、複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条1に接着(接続)されている。これにより、複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条1は互いに離間せず、シート3の形状が維持される。
また、補助繊維糸条2同士が交差していると、その部分において補助繊維糸条2による形状保持性が小さくなる。より具体的には、炭素繊維マルチフィラメント糸条1を拘束し繊維基材20を一体化する特性が小さくなる。このため、補助繊維糸条2同士は交差していない、言い換えれば、互いに離間していることが好ましい。
補助繊維糸条2の炭素繊維マルチフィラメント糸条1の繊維方向のピッチ(当該繊維方向における補助繊維糸条2同士の間隔)は特に制限されない。ただし、補助繊維糸条2のピッチが広すぎると繊維基材20の形状保持性が低下し、補助繊維糸条2のピッチが狭すぎると成型品の表面平滑性が低下する可能性がある。このような観点から、補助繊維糸条2のピッチは2~50mmピッチであることが好ましい。
繊維基材20の平面視において直線状に延びている補助繊維糸条2は、平面視において曲線状に延びる補助繊維糸条2よりも単位長さあたりに接続する炭素繊維マルチフィラメント糸条1の数が多くなる。このため、複数の補助繊維糸条2のうち、少なくとも一部の補助繊維糸条2が繊維基材20の平面視で直線状に延びていることが好ましく、すべての補助繊維糸条2が繊維基材20の平面視で直線状に延びていることがより好ましい。これにより、シート3の形状保持性を高めることができる。もちろん、一部の補助繊維糸条2が繊維基材20の平面視で曲線状に延びていてもよい。
また、補助繊維糸条2による形状保持性のむらがシート3の場所ごとに少なくなるため、複数の補助繊維糸条2のうち、少なくとも一部の補助繊維糸条2は、シート3上で同一直線上に互いに離間して配置されていることが好ましい。これに加えて、複数の補助繊維糸条のすべてが同一方向かつ繊維基材20の平面視で直線状に延びていることがより好ましい。もちろん、互いに異なる方向に延びている補助繊維糸条2が存在していてもよい。
また、補助繊維糸条2による形状保持性のむらがシート3の場所ごとに少なくなるため、複数の補助繊維糸条2のうち、少なくとも一部、好ましくはすべての補助繊維糸条2は、シート3上に一定の周期で配置されていることが好ましい。ここで、「一定の周期」とは、シート3のある範囲内での補助繊維糸条2の配置がシート3上で繰り返されることを意味する。図1の例では、領域X内の補助繊維糸条2の配置がシート3の繊維方向と垂直な方向に繰り返される。
また、シート3の形状保持性をより高めるという観点から、補助繊維糸条2の延びる方向がシート3を構成する複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条1の繊維方向に対して垂直であることが好ましい。
したがって、補助繊維糸条2の配置の好ましい態様の一例は以下の通りである。すなわち、補助繊維糸条2同士が互いに離間しており、すべての補助繊維糸条2が同一方向かつ繊維基材20の平面視で直線状に延びている。さらに、一部の補助繊維糸条2は、シート3上で同一直線上に互いに離間して配置されている。このような直線は、例えば一方の面10に複数本(図1(A)の例では5本)引かれる。さらに、すべての補助繊維糸条2が平面方向に一定の周期で配置されており、補助繊維糸条2の延びる方向がシート3を構成する複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条1の繊維方向に対して垂直である。図1(A)、(B)に示す補助繊維糸条2はこの態様で配列されている。
なお、補助繊維糸条2が上記態様で配列されている場合、後述する織機100を一定の周期で駆動する(より具体的には、複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条1からなるシート3を一定の周期で上下に開口させ補助繊維糸条2を挿入する)ことで繊維織物4を製造し、この繊維織物4から一部の補助繊維糸条2を除去するだけで繊維基材20を製造できるので、より容易に繊維基材20を製造することができる。もちろん、このような補助繊維糸条2がこのような態様で配列されていない場合であっても、織機100を用いて製造された繊維織物4から一部の補助繊維糸条2を除去するだけで繊維基材20を製造できる。したがって、この場合であっても容易に繊維基材20を製造することができる。
次に、図2及び図3を用いて、上記態様の配列の一例を説明する。なお、図2及び図3は繊維基材20の一方の面10を示す。他方の面11には補助繊維糸条2は存在しない。複数の補助繊維糸条2の延びる方向と複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条1の幅方向との成す角度をθ(図3参照)、シート3を構成する複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条1の幅をWとする。さらに、複数の補助繊維糸条2の長さをそれぞれLfx(Lf1、Lf2、Lf3、…)とする。このとき、複数の補助繊維糸条2の長さLfxのうち、90%(個数の%)以上のLfxがm×W/COS(θ)±5%の範囲に存在する。
さらに、複数の補助繊維糸条2同士の間隔の長さ(隣接する補助繊維糸条2同士の端部間の距離)をLgy(Lg1、Lg2、Lg3、…)としたとき、複数の補助繊維糸条2同士の間隔の長さLgyのうち、90%(個数の%)以上のLgyがn×W/COS(θ)±5%の範囲に存在する。
ここで、x、y、m、nは任意の正の整数である。より具体的には、xは補助繊維糸条2の本数であり、yは補助繊維糸条2同士の間隔の数である。mは1本の補助繊維糸条2と接する炭素繊維マルチフィラメント糸条1の本数、nは同一直線上に互いに離間して隣り合う補助繊維糸条2同士の端部間に存在する炭素繊維マルチフィラメント糸条1の本数を示す。m、nの上限は特に制限されないが、例えば2~100が好ましい。また、W/COS(θ)は、各補助繊維糸条2のうち、1本の炭素繊維マルチフィラメント糸条1を跨ぐ部分の長さを意味する。図2はθ=0の例であり、図3はθ>0の例である。図2、3の例では、繊維基材20が2/2綾織で織り合わせられているので、k=m=2となり、j=n=2となる。また、図2の例では、各補助繊維糸条2の長さは、2×W±5%の範囲内の値となる。なお、Lfxの5%は、m×W/COS(θ)の5%の値を意味し、Lfyの5%は、n×W/COS(θ)の5%の値を意味する。
次に、図4及び図5を用いて、補助繊維糸条2を他の態様とした場合について説明する。図4及び図5は繊維基材20の一方の面10を示す。図4および図5に示す繊維基材20も、図1から図3の繊維基材20と同様に、他方の面11には補助繊維糸条2が存在しない。なお、図4および図5に示す構成においても、他方の面11に補助繊維糸条2が接着されている構成としてもよい。
図4および図5に示す繊維基材20は、複数の補助繊維糸条2が一方の面10上で曲線状に延びている構成を有する。各々の補助繊維糸条2は、少なくとも、隣接する2本の炭素繊維マルチフィラメント糸条1に接着される。図4および図5に示す構成では、複数の補助繊維糸条2として、様々な長さを有する補助繊維糸条2が混在している。複数の補助繊維糸条2は、2~5本の炭素繊維マルチフィラメント糸条1に接着されている。
補助繊維糸条2の長さは、炭素繊維マルチフィラメント糸条1の幅Wに対して、2×W以上であることが好ましい。これにより、複数の補助繊維糸条2が、隣接する2本の炭素繊維マルチフィラメント糸条1にまたがって配置されやすくなる。炭素繊維マルチフィラメント糸条1同士を連結する補助繊維糸条2の割合が多くなるので、繊維基材20の形状保持性が高まる。補助繊維糸条2の長さの上限は特に限定されないが、補助繊維糸条2が長くなると、補助繊維糸条2同士が重なりやすく、かつ絡まりやすくなって、成形品の表面平滑性が低下しやすくなる。補助繊維糸条2同士の重なり合いを制御するために、補助繊維糸条2の長さを、10×W以下、8×W以下、あるいは6×W以下としてもよい。
補助繊維糸条2が平面視で曲線状に延びる態様である場合、補助繊維糸条2は、一方の面10の面内で、図示左右方向だけでなく、図示上下方向にも広がる。様々な方向に延びる補助繊維糸条2によって繊維基材20の形状が保持されるため、繊維基材20の形状保持性が高まる。
図4に示す例では、一部の補助繊維糸条2が、平面視で互いに重なり合って配置されている。この構成によれば、補助繊維糸条2同士が接着されることにより、複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条1同士の連結がより強固になる。繊維基材20の形状保持性を高めることができる。
図5に示す例では、一方の面10上で複数の補助繊維糸条2が互いに重なり合わず、相互に離間されている。この構成によれば、一方の面10上における複数の補助繊維糸条2による凹凸が小さくなる。一方の面10側において成型品の表面平滑性を高めることができる。
なお、図4および図5に示す構成では、複数の補助繊維糸条2がランダムに配置されるため、隣接する炭素繊維マルチフィラメント糸条1同士を連結しない補助繊維糸条2が一部に含まれ得る。このような補助繊維糸条2を含む場合であっても、他の一部の補助繊維糸条2によって隣接する炭素繊維マルチフィラメント糸条1同士が連結されていればよい。炭素繊維マルチフィラメント糸条1同士を連結しない補助繊維糸条2であっても、図4に示すように他の補助繊維糸条2に接着されていれば、繊維基材20の形状保持に寄与できる。
図4および図5に示す例では、複数の補助繊維糸条2の配置と長さの両方がランダムである場合について説明したが、この構成に限られない。例えば、均一な長さの複数の補助繊維糸条2が、一方の面10上にランダムに配置されている構成としてもよい。あるいは、ランダムな長さの補助繊維糸条2が、一方の面10上に規則的に配列されている構成としてもよい。
<5.繊維基材の製造方法>
つぎに、図6~図8に基づいて、本実施形態に係る繊維基材20の製造方法について説明する。
(5-1.織機の構成)
まず、図6に基づいて、繊維基材20の製造方法に使用される織機100の全体構成について説明する。織機100は加熱装置118の構造が従来と異なる他は、従来の織機とほぼ同様の構成を有する。織機100は、炭素繊維マルチフィラメント糸条1をたて糸、補助繊維糸条2をよこ糸としてk/j綾織の繊維織物4を製造するものである。もちろん、繊維織物4の織組織はk/j綾織に限られない。
具体的に説明すると、織機100は、たて糸供給クリール104と、第1筬105と、複数の第1搬送ローラ106と、製織部129と、第2搬送ローラ117と、加熱装置118と、切断装置119と、繊維基材回収ローラ126とを備える。製織部129は、複数のヘルド114と、補助繊維糸条供給リール2Aと、補助繊維糸条挿入装置2Bと、第2筬116とを備える。
たて糸供給クリール104は、複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条1をたて糸としてよこ取りで供給する。第1筬105は、たて糸供給クリール104から供給された複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条1を平行に揃えることで、シート3を形成する。形成されたシート3は複数の搬送ローラ106で製織部129まで搬送される。
複数のヘルド114には、炭素繊維マルチフィラメント糸条1を通すメールが設けられており、目的とする織組織に応じた態様で各ヘルド114のメールに炭素繊維マルチフィラメント糸条1が通される。そして、各ヘルド114が上下することでシート3が開口する。
補助繊維糸条供給リール2Aは、補助繊維糸条挿入装置2Bに補助繊維糸条2を供給し、補助繊維糸条挿入装置2Bは、各ヘルド114の上下運動によって形成されたシート3の開口に補助繊維糸条2をよこ糸として挿入する。上述したように、補助繊維糸条2は2~50mmピッチで炭素繊維マルチフィラメント糸条1のシート3に挿入されることが好ましい。ここで、補助繊維糸条挿入装置2Bは、例えばレピア装置、シャトル装置、エアージェット装置、ウォータージェット装置等であってもよいし、これら以外の装置であってもよい。つまり、補助繊維糸条挿入装置2Bの種類は問われない。なお、図6の例では、補助繊維糸条2に予め熱可塑性ポリマーが付着されているものとする。もちろん、上述したように、炭素繊維マルチフィラメント糸条1に熱可塑性ポリマーを付着させておいてもよいし、製造されたシート3に熱可塑性ポリマーを塗布するようにしてもよい。あるいは、これらの方法を適宜組み合わせてもよい。
第2筬116は、複数のヘルド114及び補助繊維糸条挿入装置2Bと連動して駆動することで、シート3と、シート3の開口に挿入された補助繊維糸条2とを織り合わせていく。これにより、繊維織物4を順次形成(製造)していく。ここで、製織部129によって製造可能な繊維織物4の例を図7(A)、(B)に示す。図7(A)の織組織は平織(1/1綾織)となっており、図7(B)の織組織は2/2綾織となっている。仮に図7(A)の織組織で繊維織物4を製造し、繊維織物4の他方の面11上の複数の補助繊維糸条2をすべて除去した場合、炭素繊維マルチフィラメント糸条1同士が離間してしまう。一方、図7(B)の例では、仮に第2の面11上の複数の補助繊維糸条2をすべて除去したとしても、第1の面10上で複数の補助繊維糸条2が隣接する炭素繊維マルチフィラメント糸条1同士を接続するため、炭素繊維マルチフィラメント糸条1同士が離間しない。すなわち、シート3の形状が維持される。
このため、k/j綾織の織組織で繊維織物4を製造する場合、k、jのうち、補助繊維糸条2を残す面に対応する値は2以上である必要がある。例えば、図7(B)の例を用いて上述したように、第2の面11から複数の補助繊維糸条2を除去する場合、第1の面10に対応するkの値は2以上となっている必要がある。これにより、第2の面11から複数の補助繊維糸条2を除去しても、炭素繊維マルチフィラメント糸条1同士は離間せず、シート3の形状が維持される。
図6に戻り、第2搬送ローラ117は、製織部129で製造された繊維織物4を加熱装置118に搬送する。加熱装置118は繊維織物4を片面(例えば一方の面10)から加熱することで熱可塑性ポリマーを溶融し、複数の補助繊維糸条2をシート3に接着する。
ここで、図8(A)、(B)を用いて加熱装置118の詳細構成について説明する。図8は、織機100によって製造された繊維織物4を加熱する際の特徴点を詳細に説明するための説明図である。より具体的には、図8(A)は製織部129及びそれより下流の部分を示す図であり、図8(B)は図8(A)の領域A(加熱装置118と繊維織物4との界面部分)を拡大して示す説明図である。
加熱装置118は所謂加熱ロールである。ここで、たて糸である炭素繊維マルチフィラメント糸条1とよこ糸である補助繊維糸条2とはシート3の片面(例えば一方の面10)のみで接着されていると、他方の面11から容易に補助繊維糸条2を部分的に取り除き目的とする繊維基材20を得ることができる。
このため、繊維織物4の加熱される面(加熱装置118に接触している面。例えば一方の面10)の表面温度(=加熱装置118の表面温度)をTa(℃)、加熱される面と逆側の面(例えば他方の面11)の表面温度をTb(℃)、熱可塑性ポリマーの融点をTm(℃)としたとき、Ta>Tm>Tbの関係が成り立っていることが好ましい。なお、各表面温度は例えば熱電対や赤外線放射温度計等によって測定することができる。
このような条件が成立する場合、繊維織物4の加熱される面(例えば一方の面10)の熱可塑性ポリマーをより確実に溶融させることができる一方で、加熱される面と逆側の面(例えば他方の面11)の熱可塑性ポリマーをなるべく溶融させずに維持させることができる。したがって、他方の面11から容易に複数の補助繊維糸条2を除去することができる。
なお、室温をTr(℃)、シート3の単位面積当たり重量(質量)をH(g/m)とした場合、本発明者の実験から、自然対流状態でTb=(Ta×1300-Tr×H)/(1300+H)(℃)となることが確かめられている。このため、繊維織物4の加熱される面の温度Ta(℃)は、Tm<Ta<{Tm×(H+1300)-Tr×H}/1300の条件を満たすことが好ましい。なお、室温Trは、加熱装置118が設置されている場所の温度である。室温Trは、多くの場合、25℃±5℃程度である。
なお、上述した例では、加熱装置118として加熱ロールを使用したが、加熱装置118は、繊維織物4を加熱できる装置(好ましくは繊維織物4の片面のみを重点的に加熱できる装置)であればどのようなものであってもよい。加熱装置118の他の例としては、例えば赤外線ヒーターなどの非接触的な加熱装置等が挙げられる。もちろん、加熱装置118はこれら以外のものであってもよい。
また、Ta>Tm>Tbの条件をより確実に満たすために、繊維織物4の加熱される面と逆側の面に冷却ロール等の冷却装置を設けてもよい。
また、加熱装置118を繊維織物4の両面に配置してもよい。この場合、例えば繊維織物4の両面を熱可塑性ポリマーの融点Tm(℃)以上に加熱してもよい。したがって、この場合、いずれの面からも補助繊維糸条2を除去することに若干手間が掛かることになるが、繊維基材20の両面に補助繊維糸条2を残すことができる。例えば、他方の面11の表面平滑性をより高めたい場合、他方の面11からより多くの補助繊維糸条2を除去すればよい。
図6に示す切断装置119は、繊維織物4から複数の補助繊維糸条2を部分的に除去する装置である。切断装置119としては、例えば補助繊維糸条2の挿入密度と対応する周期で動作する直刃、回転刃、レーザーなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ここで、図9を用いて、切断装置119の機能の一例について説明する。図9は繊維織物4から補助繊維糸条2を部分的に除去する手順を説明するための平面図である。より具体的には、図9(A)、(B)は加熱装置118を通過した繊維織物4の一例を示しており、図9(A)は一方の面10を、図9(B)は他方の面11を示している。図9(C)は図9(B)における切断箇所2Cを示している。なお、ここでは一方の面10が加熱されているものとする。つまり、一方の面10において、熱可塑性ポリマーが溶融し、シート3と複数の補助繊維糸条2とが接着されているものとする。したがって、他方の面11では、複数の補助繊維糸条2がシート3に接着されていない状態となっている。
切断装置119は、図9(C)に示すように、補助繊維糸条2が繊維織物4を厚み方向で貫通する部分(一方の面10から他方の面11に貫通する部分、及び他方の面11から一方の面10に貫通する部分)を切断箇所2Cとし、これらの切断箇所2Cで複数の補助繊維糸条2を切断する。切断箇所2C間の補助繊維糸条2はシート3から完全に遊離される。そこで、切断装置119は、例えばエアー等を繊維織物4に吹き付けることで、シート3から遊離した補助繊維糸条2を除去する。すなわち、切断装置119は、繊維織物4から複数の補助繊維糸条2を部分的に除去する。この例では、繊維織物4の他方の面11に存在する複数の補助繊維糸条2はすべて除去されることになる。
もちろん、除去の態様はこの例に限られない。例えば、他方の面11上に若干の補助繊維糸条2を残してもよい。また、一方の面10を再加熱して熱可塑性ポリマーを溶融した後、一方の面10からも上記と同様の方法で補助繊維糸条2を部分的に除去してもよい。繊維織物4の両面で補助繊維糸条2がシート3に接着されている場合、少なくともいずれかの面を再加熱して熱可塑性ポリマーを溶融した後、上記と同様の方法で補助繊維糸条2を部分的に除去してもよい。
切断装置119が複数の補助繊維糸条2を部分的に除去することによって、繊維基材20を製造する。なお、補助繊維糸条2を部分的に除去するに際しては、少なくとも、複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条1の各々は、隣接する炭素繊維マルチフィラメント糸条1といずれかの補助繊維糸条2で接続されている必要がある。繊維基材20は、繊維基材回収ローラ126に巻き取られる。
(5-2.繊維基材の製造方法)
つぎに、織機100を用いた繊維基材20の製造方法を図10に示すフローチャートに沿って説明する。
まず、ステップS10において、繊維織物製造工程を行う。この工程では、複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条1をたて糸、複数の補助繊維糸条2をよこ糸として織り合わせることで、繊維織物4を製造する。
より具体的には、図6に示すように、たて糸供給クリール104は、複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条1をたて糸としてよこ取りで供給する。たて糸供給クリール104から供給された複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条1は、第1筬105によって平行に揃えられる。これにより、シート3が形成される。形成されたシート3は複数の第1搬送ローラ106で製織部129まで搬送される。
ついで、目的とする織組織に応じた態様で各ヘルド114のメールに炭素繊維マルチフィラメント糸条1が通される。そして、各ヘルド114が上下することでシート3が開口する。
一方で、補助繊維糸条挿入装置2Bは、各ヘルド114の上下運動によって形成されたシート3の開口に補助繊維糸条2をよこ糸として挿入する。なお、本例では、補助繊維糸条2に予め熱可塑性ポリマーが付着されているものとする。もちろん、上述したように、炭素繊維マルチフィラメント糸条1に熱可塑性ポリマーを付着させておいてもよいし、製造されたシート3に熱可塑性ポリマーを塗布するようにしてもよい。あるいは、これらの方法を適宜組み合わせてもよい。
ついで、複数のヘルド114、補助繊維糸条挿入装置2B、及び第2筬116が連動して駆動することで、シート3と、シート3の開口に挿入された補助繊維糸条2とを織り合わせていく。これにより、繊維織物4を順次形成(製造)していく。繊維織物4の織組織は、例えば図7(B)に示すように、2/2綾織となっている。これにより、仮に第2の面11上の複数の補助繊維糸条2をすべて除去したとしても、第1の面10上の複数の補助繊維糸条2が隣接する炭素繊維マルチフィラメント糸条1同士を接続するため、炭素繊維マルチフィラメント糸条1同士が離間しない。すなわち、シート3の形状が維持される。
ステップS20において、接着工程が行われる。この接着工程では、複数の補助繊維糸条2を熱可塑性ポリマーによって複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条1に接着する。具体的には、第2搬送ローラ117によって繊維織物4が加熱装置118に搬送される。ついで、加熱装置118は繊維織物4を片面(例えば一方の面10)から加熱することで補助繊維糸条2に付着している熱可塑性ポリマーを溶融させる。繊維織物4が加熱装置118から排出されると熱可塑性ポリマーが硬化し、複数の補助繊維糸条2がシート3(すなわち複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条1)に接着される。
ここで、たて糸である炭素繊維マルチフィラメント糸条1とよこ糸である補助繊維糸条2とはシート3の片面(例えば一方の面10)のみで接着されていると、他方の面11から容易に補助繊維糸条2を部分的に取り除き目的とする繊維基材20を得ることができる。
このため、繊維織物4の加熱される面(加熱装置118に接触している面。例えば一方の面10)の表面温度(=加熱装置118の表面温度)をTa(℃)、加熱される面と逆側の面(例えば他方の面11)の表面温度をTb(℃)、熱可塑性ポリマーの融点をTm(℃)としたとき、Ta>Tm>Tbの関係が成り立っていることが好ましい。なお、各表面温度は例えば熱電対等によって測定することができる。
このような条件が成立する場合、繊維織物4の加熱される面(例えば一方の面10)の熱可塑性ポリマーをより確実に溶融させることができる一方で、加熱される面と逆側の面(例えば他方の面11)の熱可塑性ポリマーをなるべく溶融させずに維持させることができる。したがって、他方の面11から容易に複数の補助繊維糸条2を除去することができる。
なお、室温をTr(℃)、シート3の単位面積当たり重量(質量)をH(g/m)とした場合、本発明者の実験から、自然対流状態でTb=(Ta×1300-Tr×H)/(1300+H)(℃)となることが確かめられている。このため、繊維織物4の加熱される面の温度Ta(℃)は、Tm<Ta<{Tm×(H+1300)-Tr×H}/1300の条件を満たすことが好ましい。
ステップS30において、繊維織物4から複数の補助繊維糸条2を部分的に除去する。より具体的には、切断装置119を用いて繊維織物4から複数の補助繊維糸条2を部分的に除去する。例えば、切断装置119は、図9(C)に示すように、補助繊維糸条2が繊維織物4を厚み方向で貫通する部分(一方の面10から他方の面11に貫通する部分、及び他方の面11から一方の面10に貫通する部分)を切断箇所2Cとし、これらの切断箇所2Cで複数の補助繊維糸条2を切断する。切断箇所2C間の補助繊維糸条2はシート3から完全に遊離される。そこで、切断装置119は、例えばエアー等を繊維織物4に吹き付けることで、シート3から遊離した補助繊維糸条2を除去する。すなわち、切断装置119は、繊維織物4から複数の補助繊維糸条2を部分的に除去する。この例では、繊維織物4の他方の面11に存在する複数の補助繊維糸条2はすべて除去されることになる。
もちろん、除去の態様はこの例に限られない。例えば、他方の面11上に若干の補助繊維糸条2を残してもよい。また、一方の面10を再加熱して熱可塑性ポリマーを溶融させた後、一方の面10からも上記と同様の方法で補助繊維糸条2を部分的に除去してもよい。繊維織物4の両面で補助繊維糸条2がシート3に接着されている場合、少なくともいずれかの面を再加熱して熱可塑性ポリマーを溶融させた後、上記と同様の方法で補助繊維糸条2を部分的に除去してもよい。
切断装置119が複数の補助繊維糸条2を部分的に除去することによって、繊維基材20が製造される。なお、補助繊維糸条2を部分的に除去するに際しては、少なくとも、複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条1の各々は、隣接する炭素繊維マルチフィラメント糸条1といずれかの補助繊維糸条2で接続されている必要がある。
ステップS40において、切断装置119から繰り出される繊維基材20が、繊維基材回収ローラ126に巻き取られる。以上の工程により、繊維基材20が製造される。
(5-3.製造方法の変形例)
図11は、繊維基材20の製造方法の変形例を示すフローチャートである。
図11に示すように、変形例の製造方法は、ステップS10、S20、S30、およびステップS40を有する点は、図10に示す製造方法と同様であるが、ステップS20とステップS30との間に、繊維織物4を移送するステップS50を有する。
変形例の製造方法は、複数の装置を用いて繊維基材20を製造する方法である。具体的に、変形例の製造方法では、例えば、繊維織物4を織る工程と、炭素繊維マルチフィラメント糸条1と補助繊維糸条2とを接着する工程とを実施可能な第1装置と、繊維織物4の繊維織物4の補助繊維糸条2を部分的に除去する補助繊維糸条除去工程を実施可能な第2装置と、が用いられる。
より具体的に図6の織機100を例にして説明すると、変形例の製造方法に使用される織機は、糸供給クリール104から加熱装置118までを第1装置、切断装置119以降を第2装置とし、加熱装置118から排出される繊維織物4を回収する機構と、回収した繊維織物4を第2装置の切断装置119に供給する機構とを備える構成である。
なお、上記に説明した第1装置および第2装置の構成は一例であり、上記第1装置または第2装置をさらに複数の装置に細分化してもよい。
繊維織物4を移送するステップS50は、図11に示すように、繊維織物4を移送ローラに巻き取る工程を有するステップS51と、移送ローラに巻かれた繊維織物4を運搬する工程を有するステップS52と、繊維織物4を移送ローラから巻き出す工程を有するステップS53と、を含む。
ステップS20において、炭素繊維マルチフィラメント糸条1と補助繊維糸条2とを接着する接着工程を経た繊維織物4は、ステップS51において、第1装置から着脱可能な移送ローラ(図示略)に巻き取られる。ステップS52において、繊維織物4が巻き回された移送ローラが、第1装置から取り外されて第2装置へ搬送され、第2装置に装着される。ステップS53では、移送ローラから切断装置119へ繊維織物4が繰り出される。その後、ステップS30において、繰り出された繊維織物4に対して、補助繊維糸条除去工程が実施される。例えば他方の面11のみから補助繊維糸条2が除去されることにより、一方の面10にのみ補助繊維糸条2が接着された繊維基材20が得られる。ステップS40において、繊維基材20が繊維基材回収ローラ126に巻き取られる。
変形例の製造方法によれば、互いに遠隔の地に設置される第1装置と第2装置とを用いて、繊維基材20を製造することができる。また、第1装置と第2装置のスループットが大きく異なる場合に、第1装置および第2装置の台数調整によりスループットを一致させることができる。これにより、より効率的な製造が可能になる。
<6.成型品>
つぎに、本実施形態に係る繊維基材20を用いた成型品、すなわち炭素繊維強化複合材料について説明する。成型品は、本実施形態に係る繊維基材20にマトリックス樹脂組成物を含浸させ、当該マトリックス樹脂組成物を硬化させることで製造することができる。
ここで、繊維基材20に含侵させるマトリックス樹脂組成物は特に制限されないが、例えば熱硬化性樹脂組成物または熱可塑性樹脂組成物であってもよい。熱硬化性樹脂としては特に制限はないが、従来のRTM成形やVaRTM成形で使用されている、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シアネートエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂などが挙げられる。また、熱可塑性樹脂としては特に制限はなく、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ABS樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル、ポリアミド6等のポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルスルフォン、ポリサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンなどが挙げられる。また、これら各樹脂の変性体を用いてもよいし、複数種の樹脂をブレンドして用いてもよい。また、熱可塑性樹脂は、各種添加剤、フィラー、着色剤等を含んでいてもよい。
成型品の製造方法の一例として、VaRTM法を用いた製造方法を詳細に説明する。まず、本実施形態に係る繊維基材20を成形型内に配置する。ここで、繊維基材20には、補助繊維糸条2が接着されていない面(図1の例では他方の面11)が存在する。したがって、このような面が成形型などの平滑面に接した際、炭素繊維マルチフィラメント糸条1を構成する炭素繊維単フィラメントが平滑面に沿って広がる。このとき、隣接する炭素繊維マルチフィラメント糸条1同士の間にほとんど空隙ができないため、繊維基材20とマトリックス樹脂とを一体化して成型品とする際に、樹脂量過剰となる部分の形成を抑制することができる。
ついで、繊維基材20をバギングフィルムで覆い、成形型とバギングフィルムとの間をシールしてキャビティを形成し、キャビティ内を減圧して、液状のマトリックス樹脂組成物を吸引・注入する。バギングフィルム、シール材には特に限定は無く、使用するマトリクス樹脂組成物の種類に応じて耐熱性を有する材質などを選ぶことができる。また、必要に応じてマトリックス樹脂組成物の拡散を促進するフローメディアを用いることができる。マトリックス樹脂組成物の注入方式としては、成型品の任意の地点から同心円状にマトリックス樹脂組成物を拡散・含浸させる多点注入方式や、成型品の任意の辺から一方向に平行にマトリックス樹脂組成物を拡散・含浸させる辺注入方式など必要に応じた方式をとることができる。
もちろん、成型品の製造方法はVaRTM法に限られるものではなく、例えば繊維基材20を分割成形型内に配置し、分割型を閉じてキャビティを形成し、キャビティ内に液状のマトリックス樹脂組成物を注入させるRTM法、ハイサイクルRTM法、ハイプレッシャーRTM法等を用いてもよい。
以上説明した通り、本実施形態によれば、繊維基材20において、シート3の少なくとも一方の面でシート3と複数の補助繊維糸条2とが接着されており、複数の補助繊維糸条2の長さがシート3の繊維方向に対して垂直な方向の幅よりも短い。つまり、複数の補助繊維糸条2が部分的に除去されている。さらに、複数の補助繊維糸条2が炭素繊維と異なる材質の繊維で構成されている。さらに、複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条1の各々は、隣接する炭素繊維マルチフィラメント糸条1といずれかの補助繊維糸条2で接続されている。
このような繊維基材20を用いた成型品では、ヒケの発生を抑制することができるので、表面平滑性に優れる。また、繊維基材20において、炭素繊維マルチフィラメント糸条1同士の離間を抑制することができる。
さらに、本実施形態では、複数の補助繊維糸条2がシート3の一方の面10に他方の面11よりも多く接着されていてもよい。これにより、他方の面11の表面平滑性がより高くなるので、より表面平滑性の高い成型品を製造することができる。
さらに、本実施形態では、複数の補助繊維糸条2がシート3の一方の面10のみに接着されていてもよい。これにより、他方の面11の表面平滑性がより高くなるので、より表面平滑性の高い成型品を製造することができる。
さらに、複数の補助繊維糸条2同士が相互に離間していてもよい(互いに交差していなくてもよい)ので、シート3の形状保持性を高めることができる。
さらに、複数の補助繊維糸条2のうち、少なくとも一部の補助繊維糸条2が直線状に伸びていてもよいので、単位長さあたりに接続する炭素繊維マルチフィラメント糸条1の数が多くなる。このため、シート3の形状保持性を高めることができる。
さらに、複数の補助繊維糸条2のうち、少なくとも一部の補助繊維糸条2は、シート3上に一定の周期で配置されていてもよい。これにより、補助繊維糸条2による形状保持性のむらがシート3の場所ごとに少なくなる。
さらに、複数の補助繊維糸条2のうち、少なくとも一部の補助繊維糸条2は、シート3上で同一直線上に互いに離間して配置されていてもよい。これにより、補助繊維糸条2による形状保持性のむらがシート3の場所ごとに少なくなる。
さらに、複数の補助繊維糸条のすべてが直線状に延びていてもよい。これにより、補助繊維糸条2による形状保持性のむらがシート3の場所ごとに少なくなる。
さらに、複数の補助繊維糸条のすべてが同一方向かつ直線状に延びていてもよい。これにより、補助繊維糸条2による形状保持性のむらがシート3の場所ごとに少なくなる。
さらに、補助繊維糸条2の延びる方向がシート3を構成する複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条1の繊維方向に対して垂直であってもよい。これにより、補助繊維糸条2による形状保持性をより高めることができる。
さらに、複数の補助繊維糸条2の延びる方向と複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条1の幅方向との成す角度をθ、シート3を構成する複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条1の幅をWとし、複数の補助繊維糸条2の長さをそれぞれLfx(Lf1、Lf2、Lf3、…)としたとき、複数の補助繊維糸条2の長さLfxのうち、90%以上のLfxがm×W/COS(θ)±5%の範囲に存在してもよい。
さらに、複数の補助繊維糸条2同士の間隔の長さをLgy(Lg1、Lg2、Lg3、…)としたとき、複数の補助繊維糸条2同士の間隔の長さLgyのうち、90%以上のLgyがn×W/COS(θ)±5%の範囲に存在してもよい。(x、y、m、nは任意の正の整数)
これらの条件が満たされる場合、補助繊維糸条2による形状保持性をより高めることができ、さらに、シート3の場所ごとの形状保持性のむらも少なくすることができる。
さらに、複数の補助繊維糸条2が、熱可塑性ポリマーを含むガラス繊維であってもよい。これにより、繊維基材20全体をより効率よく集束させることができる。
さらに、複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条の各々のフィラメント数が24000~100000本であってもよい。これにより、成型品の表面平滑性を高めつつ、炭素繊維マルチフィラメント糸条1の生産性を高めることができる。
さらに、本実施形態では、熱硬化性樹脂組成物と上記繊維基材20とを含む成型品(炭素繊維強化複合材料)を製造してもよく、熱可塑性樹脂組成物と上記繊維基材20とを含む成型品(炭素繊維強化複合材料)を製造してもよい。これにより、表面平滑性の優れた成型品を製造することができる。
さらに、本実施形態に係る繊維基材20の製造方法は、繊維織物製造工程と、接着工程と、補助繊維糸条除去工程とを含む。繊維織物製造工程では、複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条1をたて糸、複数の補助繊維糸条2をよこ糸として織り合わせることで、繊維織物4を製造する。接着工程では、複数の補助繊維糸条2を熱可塑性ポリマーによって複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条1に接着する。補助繊維糸条除去工程では、繊維織物4から複数の補助繊維糸条2を部分的に除去する。ここで、複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条1の各々は、隣接する炭素繊維マルチフィラメント糸条1といずれかの補助繊維糸条2で接続されている。したがって、繊維織物4から複数の補助繊維糸条2を部分的に除去するだけで本実施形態に係る繊維基材20を製造することができるので、繊維基材20を容易に製造することができる。
ここで、繊維織物4の他方の面11に配置された複数の補助繊維糸条2を繊維織物4の一方の面10に配置された複数の補助繊維糸条2よりも多く除去してもよい。これにより、より表面平滑性に優れた成型品を製造することができる。
さらに、繊維織物4の加熱される面の温度をTa(℃)、加熱される面と逆側の面の温度をTb(℃)、熱可塑性ポリマーの融点をTm(℃)としたとき、Ta>Tm>Tbの関係が成り立つようにしてもよい。これにより、繊維織物4の加熱される面(例えば一方の面10)において補助繊維糸条2をシート3に接着させることができる。このため、他方の面11から容易に補助繊維糸条2を部分的に取り除き目的とする繊維基材20を得ることができる。
さらに、繊維織物4の一方の面10側から熱可塑性ポリマーを加熱することによって複数の補助繊維糸条2がシート3に接着されてもよい。これにより、繊維織物4の一方の面10において補助繊維糸条2をシート3に接着させることができる。このため、他方の面11から容易に補助繊維糸条2を部分的に取り除き目的とする繊維基材20を得ることができる。
さらに、室温をTr(℃)、繊維織物4の単位面積当たり重量をH(g/m)としたとき、Tm<Ta<{Tm×(H+1300)-Tr×H}/1300の関係が成り立っていてもよい。これにより、繊維織物4の加熱される面(例えば一方の面10)において補助繊維糸条2をシート3に接着させることができる。このため、他方の面11から容易に補助繊維糸条2を部分的に取り除き目的とする繊維基材20を得ることができる。
つぎに、本実施形態の実施例について説明する。本実施例では、本実施形態の効果を確認するために、以下の実験を行った。もちろん、本発明は以下に説明する実施例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
(実施例1)
炭素繊維マルチフィラメント糸条として50K(フィラメント数:50000本)の三菱ケミカル株式会社製パイロフィル(製品名)を準備した。この炭素繊維マルチフィラメント糸条をたて糸に用いて単位面積当たりの重量(質量)が400(g/m)のシートを製造した。一方で、22.5texのガラス繊維(ユニチカグラスファイバー社製)糸条に熱融着繊維(融点110℃、東レ株式会社製)を付着させた補助繊維糸条を準備した。この補助繊維糸条をよこ糸として上記炭素繊維マルチフィラメント糸条と織り合わせ、2/2綾織の繊維織物を製造した。ついで、室温25℃の環境下で115℃の加熱ロールに繊維織物の片面(一方の面)を接触させることで炭素繊維マルチフィラメント糸条と補助繊維糸条をシートの片面において接着させた。ついで、この繊維織物の他方の面において、補助繊維糸条が繊維織物を厚み方向で貫通する部分(一方の面から他方の面に貫通する部分、及び他方の面から一方の面に貫通する部分)を切断箇所とし、これらの切断箇所で複数の補助繊維糸条を切断した。ついで、他方の面上の補助繊維糸条(シートに接着されていない補助繊維糸条)をすべて除去した。以上の工程により、実施例1に係る繊維基材を製造した。
ついで、上記の繊維基材から、縦方向が炭素繊維マルチフィラメント糸条の配向方向(繊維方向)と一致するように縦400mm、横160mmの長方形形状のカットシートを4枚切り出した。炭素繊維マルチフィラメント糸条が補助繊維糸条と接着されていない面が下になるように1枚目を配置し、同じ向きで2枚目をその上に積層し、上下の向きが逆になるように3枚目をその上に積層し、3枚目と同じ向きで4枚目をその上に積層し、計4枚からなる積層体を得た。得られた積層体を離形剤が塗された成形型の上に配置し、上面をバギングフィルム(AIRTECH社製、製品名:ライトロンWL8400)で覆いシーラントテープ(RICHMOND社製、製品名:RS200)によって封止した。繊維配向と直角な向かい合い二辺のそれぞれ中央には樹脂注入口および真空ポンプ接続口として内径4mmのポリウレタン製チューブを配置した。
ついで、上記真空ポンプ接続口から真空引きを行い、上記樹脂注入口よりマトリックス樹脂組成物(ナガセケムテックス株式会社製のエポキシ樹脂XNR6815と硬化剤XNH6815を100:27の質量比で配合、樹脂粘度260mPa・s)を流し込み、常温環境下でのVaRTM成型を実施した。その後、硬化条件24℃24時間、ポストキュア80℃2時間で含浸硬化を行った。以上の工程により、両面に炭素繊維マルチフィラメント糸条が補助繊維糸条と接しない面が存在する炭素繊維強化複合材料(成型品)を得た。
ついで、得られた成型品の表面平滑性の指標として、表面粗さを測定した。具体的には、成型品の表面部分のうち、炭素繊維マルチフィラメント糸条同士の間(トウ間)の部分の表面粗さを表面粗さ測定機サーフコム(株式会社東京精密製)で測定した。炭素繊維マルチフィラメント糸条の繊維方向と平行な方向を評価軸とし、測定距離30mmの範囲で算術平均粗さRaを測定した。この測定を任意に選択した5箇所で行い、これらの平均値を実施例1に係る成形品の表面粗さとした。表面粗さは0.035μmであった。
(比較例1)
補助繊維糸条を繊維織物から除去しなかった他は実施例1と同様の処理を行うことで、比較例1に係る成型品を製造し、表面粗さを測定した。表面粗さの測定方法も実施例1と同様とした。この結果、比較例1に係る成型品の表面粗さは0.048μmであった。したがって、実施例1に係る成型品の表面平滑性は、比較例1に係る成型品の表面平滑性よりも優れていることがわかった。
以上説明した通り、本実施形態によって得られる繊維基材を用いることにより、表面平滑性に優れた成型品を得ることができる。この成型品は上述した土木建築用補強や一般的な産業用途などの広範な用途に適し、本発明は工業上極めて有用である。
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1 炭素繊維マルチフィラメント糸条
2 補助繊維糸条
3 シート
4 繊維織物
20 繊維基材
100 織機
118 加熱装置

Claims (20)

  1. 複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条が一方向に配列されたシートと、複数の補助繊維糸条とを含む繊維基材であって、
    前記シートの少なくとも一方の面で前記シートと前記複数の補助繊維糸条とが接着されており、
    前記複数の補助繊維糸条が炭素繊維と異なる材質の繊維からなり、
    前記複数の補助繊維糸条の長さが前記シートの繊維方向に対して垂直な方向の幅よりも短く、
    前記複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条の各々は、隣接する前記炭素繊維マルチフィラメント糸条といずれかの前記補助繊維糸条で接続されていることを特徴とする繊維基材。
  2. 前記複数の補助繊維糸条が前記シートの一方の面に他方の面よりも多く接着されていることを特徴とする、請求項1に記載の繊維基材。
  3. 前記複数の補助繊維糸条が前記シートの一方の面のみに接着されていることを特徴とする、請求項2記載の繊維基材。
  4. 前記複数の補助繊維糸条同士が相互に離間していることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の繊維基材。
  5. 前記複数の補助繊維糸条のうち、少なくとも一部の前記補助繊維糸条が直線状に延びていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の繊維基材。
  6. 前記複数の補助繊維糸条のうち、少なくとも一部の補助繊維糸条は、前記シート上に一定の周期で配置されていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の繊維基材。
  7. 前記複数の補助繊維糸条のうち、少なくとも一部の補助繊維糸条は、同一直線上に互いに離間して配置されていることを特徴とする、請求項5または6に記載の繊維基材。
  8. 前記複数の補助繊維糸条のすべてが直線状に延びていることを特徴とする、請求項5~7のいずれか1項に記載の繊維基材。
  9. 前記複数の補助繊維糸条のすべてが同一方向かつ直線状に延びていることを特徴とする、請求項8に記載の繊維基材。
  10. 前記補助繊維糸条の延びる方向が前記シートを構成する前記複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条の繊維方向に対して垂直であることを特徴とする、請求項9に記載の繊維基材。
  11. 前記複数の補助繊維糸条の延びる方向と前記複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条の幅方向との成す角度をθ、前記シートを構成する前記複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条の幅をWとし、
    前記複数の補助繊維糸条の長さをそれぞれLfx(Lf1、Lf2、Lf3、…)としたとき、
    前記複数の補助繊維糸条の長さLfxのうち、90%以上のLfxがm×W/COS(θ)±5%の範囲に存在し、
    前記複数の補助繊維糸条同士の間隔の長さをLgy(Lg1、Lg2、Lg3、…)としたとき、
    前記複数の補助繊維糸条同士の間隔の長さLgyのうち、90%以上のLgyがn×W/COS(θ)±5%の範囲に存在することを特徴とする、請求項9または10に記載の繊維基材。
    (x、y、m、nは任意の正の整数であって、xは補助繊維糸条の本数であり、yは補助繊維糸条同士の間隔の数、mは1本の補助繊維糸条と接する炭素繊維マルチフィラメント糸条の本数、nは同一直線上に互いに離間して隣り合う補助繊維糸条同士の端部間に存在する炭素繊維マルチフィラメント糸条の本数を示す。)
  12. 前記複数の補助繊維糸条が、熱可塑性ポリマーを含むガラス繊維であることを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載の繊維基材。
  13. 前記複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条の各々のフィラメント数が24000~100000本であることを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載の繊維基材。
  14. 熱硬化性樹脂組成物と請求項1~13のいずれか1項に記載の繊維基材とを含む炭素繊維強化複合材料。
  15. 熱可塑性樹脂組成物と請求項1~13のいずれか1項に記載の繊維基材とを含む炭素繊維強化複合材料。
  16. 複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条をたて糸、複数の補助繊維糸条をよこ糸として織り合わせることで、繊維織物を製造する工程と、
    前記複数の補助繊維糸条を熱可塑性ポリマーによって前記複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条に接着する工程と、
    前記繊維織物から前記複数の補助繊維糸条を部分的に除去する工程と、を含み、
    前記複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条の各々は、隣接する前記炭素繊維マルチフィラメント糸条といずれかの前記補助繊維糸条で接続されていることを特徴とする、繊維基材の製造方法。
  17. 前記繊維織物の他方の面に配置された前記複数の補助繊維糸条を前記繊維織物の一方の面に配置された前記複数の補助繊維糸条よりも多く除去することを特徴とする、請求項16に記載の繊維基材の製造方法。
  18. 前記繊維織物の加熱される面の温度をTa(℃)、加熱される面と逆側の面の温度をTb(℃)、前記熱可塑性ポリマーの融点をTm(℃)としたとき、Ta>Tm>Tbの関係が成り立つことを特徴とする、請求項17に記載の繊維基材の製造方法。
  19. 前記繊維織物の前記一方の面側から前記熱可塑性ポリマーを加熱することによって前記複数の補助繊維糸条が前記複数の炭素繊維マルチフィラメント糸条に接着される、請求項17または18に記載の繊維基材の製造方法。
  20. 室温をTr(℃)、前記繊維織物の単位面積当たり重量をH(g/m)としたとき、
    Tm<Ta<{Tm×(H+1300)-Tr×H}/1300
    の関係が成り立っていることを特徴とする、請求項19に記載の繊維基材の製造方法。
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