次に、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する各実施形態は、電気自動車に搭載されている蓄電池を充電するための電力を、当該蓄電池を備えた電気自動車に対して磁界共鳴方式により非接触で電送する電力伝送システムに対して、本発明を適用した場合の実施形態である。
ここで、各実施形態の磁界共鳴方式による電力伝送システムは、電力を送る後述の送電コイルと、当該送電コイルから離隔して向き合うように(即ち対向するように)配置され且つ送電コイルから送られた電力を受電する後述の受電コイルと、を備える。
(A)第1実施形態
初めに、本発明の第1実施形態について、図1乃至図8を用いて説明する。
(I)第1実施形態の電力伝送システムの全体構成及び動作について
先ず、第1実施形態の電力伝送システムの全体構成及び動作について、図1を用いて説明する。なお図1は、第1実施形態の電力伝送システムの概要構成を示すブロック図である。
図1に示すように、第1実施形態の電力伝送システムSは、受電部RV及び上記受電コイルRC1を備えた受電装置Rと、送電部TR及び上記送電コイルTC1を備えた送電装置Tと、により構成されている。このとき受電装置Rは上記電気自動車に搭載され、且つ当該電気自動車に搭載されている図示しない蓄電池に接続されている。一方送電装置Tは、当該電気自動車が移動又は停車する位置の地面に設置されている。そして、当該蓄電池を充電する場合、受電装置Rの受電コイルRC1と送電装置Tの送電コイルTC1とが対向するように電気自動車が運転又は停車される。なお、第1実施形態の電力伝送システムSによる上記蓄電池の充電に際しては、停車している電気自動車に搭載されている受電装置Rに対して、その停車位置の下方の地面に設置された送電装置Tの送電コイルTC1を介して、当該送電装置Tから電力を伝送するように構成することができる。またこの他、移動中の電気自動車に搭載されている受電装置Rに対して、その電気自動車が移動している道路の一定距離の区間に設置された複数の送電装置Tの送電コイルTC1を介して、当該送電装置Tから連続的に電力を伝送するように構成してもよい。このとき、送電部TRが本発明の「出力手段」の一例に相当し、受電部RVが本発明の「入力手段」の一例に相当する。
そして、上記送電コイルTC1には、送電すべき電力が送電部TRから入力される。そして受電コイルRC1は、磁界共鳴方式により送電コイルTC1から受電した電力を受電部RVに出力する。このとき、送電コイルTC1又は受電コイルRC1が本発明の「コイル」の一例にそれぞれ相当する。
以上の構成において、送電装置Tの送電部TRは、例えば電力伝送システムSが用いられる国における電波法等の法規等に対応しつつ、受電装置Rに伝送すべき電力を送電コイルTC1に出力する。このとき上記法規等は、例えば人体への影響を考慮して漏洩磁界が予め決められた所定のレベル以下になるように規制している。また、全ての送電装置Tと上記受電装置Rとの間における相互接続利用が可能となるためには、結果的に、両者が予め決められた所定範囲の周波数を利用する必要があり、このため上記所定範囲の周波数又は周波数帯域は、上記法規等としてのISO(International Organization for Standardization)又はIEC(International Electrotechnical Commission)等の国際機関の推奨に従う必要がある。また、送電コイルTC1と受電コイルRC1との間の所定の位置ずれも考慮した伝送効率の下限値も上記国際機関により規定されているため、電力伝送システムSとしても高い電力伝送効率が要求される。
一方、上記磁界共鳴方式により送電コイルTC1からの電力を受電した受電装置Rの受電コイルRC1は、当該受電した電力を受電部RVに出力する。これにより受電部RVは、当該電力に対応した出力(例えば、上記85キロヘルツの高周波電力となる)を、例えば図示しない電力変換ユニットによりDC(直流)電流に変換し、電気自動車の蓄電池に出力する。これにより当該蓄電池には、必要量の電力が充電される。
(II)送電コイルTC1(受電コイルRC1)の構成について
次に、上述した第1実施形態の電力伝送システムSに用いられる、第1実施形態の送電コイルTC1及び受電コイルRC1の構成について、図2乃至図4を用いて説明する。なお、第1実施形態の送電コイルTC1と受電コイルRC1とは、基本的に同じ構成を備える。よって以下の説明では、送電コイルTC1について、その構造を説明する。また、図2乃至図4は第1実施形態の送電コイルTC1の構造を示す平面図であり、送電装置Tにおいて、送電部TR側から送電コイルTCを見た場合(図1参照)の平面図である。
図2にその平面図を示すように、第1実施形態の送電コイルTC1は、並行する二本の例えば銅薄膜線TL111及び銅薄膜線TL112により構成されている送電ループコイルTL11と、図2において図示されない送電ループコイルTL12と、が、絶縁性のフィルムBF(詳細は後述する)を介して図2の紙面に垂直な方向に積層されて構成される。以上の構成において、送電ループコイルTL11が本発明の「第1巻回線」の一例に相当し、送電ループコイルTL12が本発明の「第2巻回線」の一例に相当する。また、銅薄膜線TL111及び銅薄膜線TL112が、本発明の「第1並行巻回線」の一例に相当する。なお第1実施形態では、送電ループコイルTL11と送電ループコイルTL12との間の絶縁のためにフィルムBFを用いているが、これらの他に、ガラスエポキシ材料等の絶縁性の材料を用いることもできる。また、送電コイルTC1として発生した熱を効率良く放熱するため、例えばセラミック粒子等を分散した薄膜化材料を用いることもできる。更に適切な空隙保持材を用いて、必要な空隙を介して積層するように構成してもよい。更にまた、送電ループコイルTL11を構成する銅薄膜線TL111及び銅薄膜線TL112の巻回の中心と、送電ループコイルTL12を構成する後述の銅薄膜線の巻回の中心とは、相互に同一又は略同一とされている。
図2に示すように、送電ループコイルTL11は、送電コイルTC1の同じ層内(図2に例示するフィルムBFの表面)を相互に並行して巻回されている銅薄膜線TL111及び銅薄膜線TL112により構成されており、その最外周部の一辺に、銅薄膜線TL111及び銅薄膜線TL112を接続すると共に送電部TRに接続される外部接続端子O1を有している。そして送電ループコイルTL11は、銅薄膜線TL111及び銅薄膜線TL112が、図2において、それらの最外周部から反時計方向に並行して六回転(6ターン)巻回されて構成されており、銅薄膜線TL111及び銅薄膜線TL112それぞれの外周端部(図2に示す場合は右辺部の中央)が上記外部接続端子O1に接続されている。また、銅薄膜線TL111及び銅薄膜線TL112それぞれの内周端部(図2に示す場合は送電コイルTC1の中心側端部)は、フィルムBFを貫通するビアV11及びビアV12により、銅薄膜線TL111及び銅薄膜線TL112ごとに、フィルムBFの裏面に形成されている送電ループコイルTL12を構成する銅薄膜線にそれぞれ接続されている。なお上記銅薄膜線TL111は、送電ループコイルTL11の全周に渡って同一幅w11(図2参照)及び同一厚さとされている。また、銅薄膜線TL112も、送電ループコイルTL11の全周に渡って同一幅w12(図2参照)及び同一厚さとされている。このため、送電ループコイルTL11としての各巻回の幅w10(図2参照)も、送電ループコイルTL11の全周に渡って同一とされている。そして、送電ループコイルTL11では、その全周に渡って、一巻回において内周側にある銅薄膜線TL112の幅w12がその一巻回において外周側にある銅薄膜線TL111の幅w11よりも広くされている。更に銅薄膜線TL111及び銅薄膜線TL112のそれぞれでは、図2におけるその上辺部、下辺部、左辺部及び右辺部それぞれに直線部が設けられており、それぞれの直線部が、略同心円弧状の曲線部により接続されている。
次に、上記フィルムBFを介して上記送電ループコイルTL11の直下に積層されている送電ループコイルTL12の構成について、図3を用いて説明する。なお図3は、当該送電ループコイルTL12のみを取り出して示す平面図である。
図3にその平面図を示すように、フィルムBFを間に挟んで上記送電ループコイルTL11に積層される送電ループコイルTL12は、並行する二本の例えば銅薄膜線TL121及び銅薄膜線TL122により構成されている。この構成において、銅薄膜線TL121及び銅薄膜線TL122が、本発明の「第2並行巻回線」の一例に相当する。このとき上述したように、送電ループコイルTL12を構成する銅薄膜線TL121及び銅薄膜線TL122の巻回の中心と、上記送電ループコイルTL11を構成する銅薄膜線TL111及び銅薄膜線TL112の巻回の中心とは、相互に同一又は略同一とされている。更に、送電ループコイルTL12の全体形状は、送電ループコイルTL11の全体形状と同一の略正方形状とされている。
図3に示すように、送電ループコイルTL12は、送電コイルTC1の同じ層内(図2に例示するフィルムBFの裏面)を相互に並行して巻回されている上記銅薄膜線TL121及び上記銅薄膜線TL122により構成されており、その最外周部の一辺に、銅薄膜線TL121及び銅薄膜線TL122を接続すると共に送電部TRに接続される外部接続端子O2を有している。そして送電ループコイルTL12は、銅薄膜線TL121及び銅薄膜線TL122が、図3においてそれぞれの最内周部から反時計方向に並行して六回転(6ターン)巻回されて構成されており、銅薄膜線TL121及び銅薄膜線TL122それぞれの外周端部(図3に示す場合は右辺部の中央)が上記外部接続端子O2に接続されている。一方、銅薄膜線TL121の内周端部(図3に示す場合は送電コイルTC1の中心側端部)は、上記ビアV12により送電ループコイルTL11の銅薄膜線TL111に接続され、また、銅薄膜線TL122の内周端部は、上記ビアV11により、送電ループコイルTL11の銅薄膜線TL112に接続されている。なお上記銅薄膜線TL121は、送電ループコイルTL12の全周に渡って同一幅w11及び同一厚さとされている。また、銅薄膜線TL122も、送電ループコイルTL12の全周に渡って同一幅w12及び同一厚さとされている。このため、送電ループコイルTL12としての各巻回の幅w10(図3参照)も、送電ループコイルTL12の全周に渡って同一とされている。そして、送電ループコイルTL12では、その全周に渡って、一巻回において内周側にある銅薄膜線TL122の幅w12がその一巻回において外周側にある銅薄膜線TL121の幅w11よりも広くされている。更に銅薄膜線TL121及び銅薄膜線TL122のそれぞれでは、図3におけるその上辺部、下辺部、左辺部及び右辺部それぞれに直線部が設けられており、それぞれの直線部が、略同心円弧状の曲線部により接続されている。
次に、上記銅薄膜線TL111及び上記銅薄膜線TL112からなる上記送電ループコイルTL11と、上記銅薄膜線TL121及び上記銅薄膜線TL122からなる上記送電ループコイルTL12と、の位置関係について、図4を用いて説明する。なお図4は、送電ループコイルTL11と送電ループコイルTL12との重なり状況を示す平面図であり、送電ループコイルTL11を実線で、その直下にフィルムBF(図4において図示を省略している)を介して積層されている送電ループコイルTL12を破線で、それぞれ示している。
図4に実線で示すように、外周から内周に向けて並行して巻回された銅薄膜線TL111及び銅薄膜線TL112からなり、且つその最内周部で、ビアV11及びビアV12により、送電ループコイルTL12を構成する銅薄膜線TL121及び銅薄膜線TL122と接続される送電ループコイルTL11では、その一巻回に含まれる四箇所の上記曲線部のうち一の曲線部(例えば、図4における右下角部分の曲線部CV11)のみにおいて、銅薄膜線TL111及び銅薄膜線TL112それぞれの巻回における一のピッチ(即ち、各辺において隣り合う銅薄膜線TL111及び銅薄膜線TL112の、各巻回における送電コイルTC1の径方向の距離。以下、同様。(図4参照))PT1ずつその直線部の位置が内周側にずれるように(即ち巻回が内周側に遷移するように)、銅薄膜線TL111及び銅薄膜線TL112が反時計回りに巻回されている。これにより、送電ループコイルTL11においてその巻回が一のピッチPT1分内周側に遷移する曲線部は、例えば、図4における右下角部分に外周側から内周側に並ぶ六つの曲線部CV11であることになる。
これに対し、送電ループコイルTL11を構成する銅薄膜線TL111及び銅薄膜線TL112とビアV11及びビアV12によりその最内周部でそれぞれ接続される銅薄膜線TL121及び銅薄膜線TL122が内周から外周に向けて並行して巻回されてなる送電ループコイルTL12では、図4に破線で示すように、その一巻回に含まれる四箇所の上記曲線部のうち一の曲線部(例えば、図4における右下角部分の曲線部CV12)のみにおいて、銅薄膜線TL121及び銅薄膜線TL122それぞれの巻回における一ピッチPT1ずつその直線部の位置が外周側にずれるように(即ち巻回が外周側に遷移するように)、銅薄膜線TL121及び銅薄膜線TL122が反時計回り(即ち送電ループコイルTL11と同方向)に巻回されている。これにより、送電ループコイルTL12においてその巻回が一のピッチPT1分外周側に遷移する曲線部は、例えば、図4における右下角部分に内周側から外周側に並ぶ六つの曲線部CV12であることになる。そして、送電ループコイルTL11の図4中右辺の最外周部が、外側に突出した形状の外部接続端子O1に接続され、送電ループコイルTL12の図4中右辺の最外周部が、外側に突出した形状の外部接続端子O2に接続された形状とされている。
以上のような形状をそれぞれ備える送電ループコイルTL11と送電ループコイルTL12が図4に示すように積層されていることで、送電コイルTC1の中心から見た銅薄膜線TL111の位置と銅薄膜線TL121の位置は、それぞれの巻回が遷移する曲線部並びに外部接続端子O1及び外部接続端子O2への接続部を除いて同一となっている。また同様に、送電コイルTC1の中心から見た銅薄膜線TL112の位置と銅薄膜線TL122の位置も、それぞれの巻回が遷移する曲線部並びに外部接続端子O1及び外部接続端子O2への接続部を除いて同一となっている。よって、送電コイルTC1としては、送電ループコイルTL11の少なくとも各直線部と、送電ループコイルTL12の少なくとも各直線部とが重なった状態で、送電ループコイルTL11と送電ループコイルTL12とがフィルムBFを挟んで積層されている。これにより、送電ループコイルTL11の最外周部(外部接続端子O1)から最内周部への反時計方向の巻回に対して、同じ巻回方向となるように当該最内周部で送電ループコイルTL12が接続され、その巻回方向を維持したまま、送電ループコイルTL12が最内周部から最外周部へ巻回されている。この構造により、第1実施形態の送電コイルTC1としては、送電ループコイルTL11において最外周部から最内周部に向けて反時計方向に電流が流れ、その電流が、送電ループコイルTL12において最内周部から最外周部に向けて同じ反時計方向に流れる。
(III)送電コイルTC1及び受電コイルRC1の製造方法について
次に、第1実施形態の送電コイルTC1及び受電コイルRC1の製造方法について、その概要を説明する。
当該製造方法としては、基本的には従来と同様の、下記(a)-1乃至(a)-6の各工程を含む第1製造方法、又は下記(b)-1乃至(b)-12の各工程を含む第2製造方法等を用いることができる。
(a)第1製造方法
(a)-1:フィルムBFの両面全体に銅薄膜を形成
(a)-2:上記(a)-1で形成された銅薄膜(両面)の上にそれぞれレジストを塗布(a)-3:上記(a)-2で塗布したレジストを、それぞれの面について、送電ループコイルTL11(送電ループコイルTL12)を構成する銅薄膜線TL111及び銅薄膜線TL112(銅薄膜線TL121及び銅薄膜線TL122)にパターニング(このとき、銅薄膜線TL111及び銅薄膜線TL112(銅薄膜線TL121及び銅薄膜線TL122)それぞれの幅及び厚さが、上述したように、送電ループコイルTL11(送電ループコイルTL12)の最外周端部(外部接続端子O1(外部接続端子O2)への接続部)から最内周端部のビアV11及びビアV12が接続されている部分にかけて同じとなるようにパターニングする)
(a)-4:上記(a)-3のパターニング後にエッチング処理を施し、銅薄膜線TL111及び銅薄膜線TL112(銅薄膜線TL121及び銅薄膜線TL122)を形成
(a)-5:送電ループコイルTL11と送電ループコイルTL12とを接続するビアV11及びビアV12を形成し、外部接続端子O1及び外部接続端子O2を含む送電ループコイルTC1を形成
(a)-6:外部接続端子O1及び外部接続端子O2と、送電部TR(送電装置Tの場合)又は受電部RV(受電装置Rの場合)とを接続
(b)第2製造方法
(b)-1:フィルムBFの両面全体に銅薄膜を形成
(b)-2:ビアV11及びビアV12にそれぞれ相当する位置に、レーザ等により貫通穴を形成
(b)-3:当該貫通穴を含む全体に対して無電解銅めっき法及び電解銅めっき法による銅めっき処理を施し上記ビアV11及び上記V12を形成
(b)-4:上記(b)-3で形成された銅めっき(両面)の上にそれぞれレジストを塗布
(b)-5:上記(b)-4で塗布したレジストを、それぞれの面について、上記(a)-3と同様にして、送電ループコイルTL11(送電ループコイルTL12)を構成する銅薄膜線TL111及び銅薄膜線TL112(銅薄膜線TL121及び銅薄膜線TL122)にパターニング
(b)-6:上記(b)-5のパターニング後にエッチング処理を施し、外部接続端子O1(外部接続端子O2)及び銅薄膜線TL111及び銅薄膜線TL112(銅薄膜線TL121及び銅薄膜線TL122)を形成
(b)-7:外部接続端子O1及び外部接続端子O2と送電部TR(送電装置Tの場合)又は受電部RV(受電装置Rの場合)とを接続
第1実施例
次に、図2乃至図4に示す構成を有する第1実施形態の送電コイルTC1又は受電コイルRC1を用いた電力伝送システムSとしての電力伝送の周波数を変更して送電コイルTC1又は受電コイルRC1のインピーダンスを計測した結果(シミュレーション結果)について、第1従来例の送電コイル(受電コイル)との比較において、第1実施例として図5乃至図8を用いて説明する。なお、図5乃至図7は第1従来例のコイルの構造をそれぞれ示す平面図であり、図8は第1実施形態の送電コイルTC1又は受電コイルRC1の構造による効果としての周波数とインピーダンスとの関係を示す図である。
ここで、上記第1実施例を説明する前に、その比較対象たる第1従来例の送電コイル又は受電コイルの構成について、図5乃至図7を用いて、その概要を説明する。なお、第1従来例の送電コイルと受電コイルとは、基本的に同じ構成を備える。よって以下の説明では、第1従来例の送電コイルについて、その構造を説明する。また、図5乃至図7は、第1実施形態の送電コイルTC1と同じ視点から見た場合(図1参照)の、第1従来例の送電コイルの構造を示す平面図である。このとき、図5乃至図7において、第1実施形態の送電コイルTC1と同一の部材については、同一の部材番号を付して、細部の説明を省略する。
図5にその平面図を示すように、第1従来例の送電コイルTCXは、並行する二本の銅薄膜線TLX1及び銅薄膜線TLX2により構成されている送電ループコイルTLXと、図5において図示されない送電ループコイルTLYと、が、第1実施形態の送電コイルTC1と同様の絶縁性のフィルムBFを介して図5の紙面に垂直な方向に積層されて構成されている。このとき、送電ループコイルTLXを構成する銅薄膜線TLX1及び銅薄膜線TLX2の巻回の中心と、送電ループコイルTLYを構成する後述の銅薄膜線の巻回の中心とは、相互に同一又は略同一とされている。
図5に示すように、送電ループコイルTLXは、送電コイルTCXの同じ層内(図5に例示するフィルムBFの表面)を相互に並行して巻回されている銅薄膜線TLX1及び銅薄膜線TLX2により構成されており、その最外周部の一辺に、銅薄膜線TLX1及び銅薄膜線TLX2を接続する外部接続端子O1を有している。そして送電ループコイルTLXは、銅薄膜線TLX1及び銅薄膜線TLX2が、図5において、それらの最外周部から反時計方向に並行して六回転(6ターン)巻回されて構成されており、銅薄膜線TLX1及び銅薄膜線TLX2それぞれの外周端部(図5に示す場合は右辺部の中央)が上記外部接続端子O1に接続されている。また、銅薄膜線TLX1及び銅薄膜線TLX2それぞれの内周端部(図5に示す場合は送電コイルTCXの中心側端部)は、フィルムBFを貫通するビアV11及びビアV12により、銅薄膜線TLX1及び銅薄膜線TLX2ごとに、フィルムBFの裏面に形成されている送電ループコイルTLYを構成する銅薄膜線にそれぞれ接続されている。なお上記銅薄膜線TLX1は、送電ループコイルTLXの全周に渡って同一幅w11(図2及び図5参照)及び同一厚さとされている。また、銅薄膜線TLX2も、送電ループコイルTLXの全周に渡って同一幅w12(図2及び図5参照)及び同一厚さとされている。このため、送電ループコイルTLXとしての各巻回の幅w10(図2及び図5参照)も、送電ループコイルTLXの全周に渡って同一とされている。そして、送電ループコイルTLXでは、その全周に渡って、一巻回において内周側にある銅薄膜線TLX2の幅w12が一巻回において外周側にある銅薄膜線TLX1の幅w11よりも広くされている。更に銅薄膜線TLX1及び銅薄膜線TLX2のそれぞれでは、図5におけるその上辺部、下辺部、左辺部及び右辺部それぞれに直線部が設けられており、それぞれの直線部が、略同心円弧状の曲線部により接続されている。
次に、上記フィルムBFを介して上記送電ループコイルTLXの直下に積層されている送電ループコイルTLYの構成について、図6を用いて説明する。なお図6は、当該送電ループコイルTLYのみを取り出して示す平面図である。
図6にその平面図を示すように、フィルムBFを間に挟んで上記送電ループコイルTLXに積層される送電ループコイルTLYは、並行する二本の銅薄膜線TLY1及び銅薄膜線TLY2により構成されている。このとき、送電ループコイルTLYを構成する銅薄膜線TLY1及び銅薄膜線TLY2の巻回の中心と、上記送電ループコイルTLXを構成する銅薄膜線TLX1及び銅薄膜線TLX2の巻回の中心とは、相互に同一又は略同一とされている。更に、送電ループコイルTLYの全体形状は、送電ループコイルTLXの全体形状と同一の略正方形状とされている。
図6に示すように、送電ループコイルTLYは、送電コイルTCXの同じ層内(図5に例示するフィルムBFの裏面)を相互に並行して巻回されている上記銅薄膜線TLY1及び上記銅薄膜線TLY2により構成されており、その最外周部の一辺に、銅薄膜線TLY1及び銅薄膜線TLY2を接続する外部接続端子O2を有している。そして送電ループコイルTLYは、銅薄膜線TLY1及び銅薄膜線TLY2が、図6においてそれぞれの最内周部から反時計方向に並行して六回転(6ターン)巻回されて構成されており、銅薄膜線TLY1及び銅薄膜線TLY2それぞれの外周端部(図6に示す場合は右辺部の中央)が上記外部接続端子O2に接続されている。一方、銅薄膜線TLY1の内周端部(図6に示す場合は送電コイルTCYの中心側端部)は、上記ビアV12により送電ループコイルTLXの銅薄膜線TLX1に接続され、また、銅薄膜線TLY2の内周端部は、上記ビアV11により、送電ループコイルTLXの銅薄膜線TLX2に接続されている。なお上記銅薄膜線TLY1は、送電ループコイルTLYの全周に渡って同一幅w11及び同一厚さとされている。また、銅薄膜線TLY2も、送電ループコイルTLYの全周に渡って同一幅w12及び同一厚さとされている。このため、送電ループコイルTLYとしての各巻回の幅w10(図6参照)も、送電ループコイルTLYの全周に渡って同一とされている。そして、送電ループコイルTLYでは、その全周に渡って、一巻回において内周側にある銅薄膜線TLY2の幅w12が一巻回において外周側にある銅薄膜線TLY1の幅w11よりも広くされている。更に銅薄膜線TLY1及び銅薄膜線TLY2のそれぞれでは、図6におけるその上辺部、下辺部、左辺部及び右辺部それぞれに直線部が設けられており、それぞれの直線部が、略同心円弧状の曲線部により接続されている。
次に、上記銅薄膜線TLX1及び上記銅薄膜線TLX2からなる上記送電ループコイルTLXと、上記銅薄膜線TLY1及び上記銅薄膜線TLY2からなる上記送電ループコイルTLYと、の位置関係について、図7を用いて説明する。なお図7は、送電ループコイルTLXと送電ループコイルTLYとの重なり状況を示す平面図であり、送電ループコイルTLXを実線で、その直下にフィルムBF(図7において図示を省略している)を介して積層されている送電ループコイルTLYを破線で、それぞれ示している。
図7に実線で示すように、外周から内周に向けて並行して巻回された銅薄膜線TLX1及び銅薄膜線TLX2からなり、且つその最内周部で、ビアV11及びビアV12により、送電ループコイルTLYを構成する銅薄膜線TLY1及び銅薄膜線TLY2と接続される送電ループコイルTLXでは、その四分の一周ごとに、上記ピッチPT1の四分の一ずつその直線部の位置が内周側にずれるように(即ち巻回が内周側に遷移するように)各曲線部が形成されて、銅薄膜線TLX1及び銅薄膜線TLX2が反時計回りに巻回されている。
これに対し、送電ループコイルTLXを構成する銅薄膜線TLX1及び銅薄膜線TLX2とビアV11及びビアV12によりその最内周部でそれぞれ接続される銅薄膜線TLY1及び銅薄膜線TLY2が内周から外周に向けて並行して巻回されてなる送電ループコイルTLYでは、図7に破線で示すように、その四分の一周ごとに、上記ピッチPT1の四分の一ずつその直線部の位置が外周側にずれるように(即ち巻回が外周側に遷移するように)各曲線部が形成されて、銅薄膜線TLY1及び銅薄膜線TLY2が反時計回り(即ち送電ループコイルTLXと同方向)に巻回されている。そして、送電ループコイルTLXの図7中右辺の最外周部が、外側に突出した形状の外部接続端子O1に接続され、送電ループコイルTLYの図7中右辺の最外周部が、外側に突出した形状の外部接続端子O2に接続された形状とされている。
以上のような形状をそれぞれ備える送電ループコイルTLXと送電ループコイルTLYが図7に示すように積層されていることで、送電コイルTCXの中心から見た銅薄膜線TLX1の位置と銅薄膜線TLY1の位置は、図7に示すように異なっている。また同様に、送電コイルTCXの中心から見た銅薄膜線TLX2の位置と銅薄膜線TLY2の位置も、図7に示すように異なっている。よって、送電コイルTCXとしては、送電ループコイルTLXと、送電ループコイルTLYとは重ならない状態で、送電ループコイルTLXと送電ループコイルTLYとがフィルムBFを挟んで積層されている。これにより、送電ループコイルTLXの最外周部(外部接続端子O1)から最内周部への反時計方向の巻回に対して、同じ巻回方向となるように当該最内周部で送電ループコイルTLYが接続され、その巻回方向を維持したまま、送電ループコイルTLYが最内周部から最外周部へ巻回されている。この構造により、第1従来例の送電コイルTCXとしては、送電ループコイルTLXにおいて最外周部から最内周部に向けて反時計方向に電流が流れ、その電流が、送電ループコイルTLYにおいて最内周部から最外周部に向けて同じ反時計方向に流れる。
そして、第1実施例の実験に供される第1実施形態の送電コイルTC1及び第1従来例の送電コイルTCXそれぞれのその他の諸元は、以下の通りである。なお以下の説明では、送電コイルTC1及び送電コイルTCXについての諸元を説明するが、実験に用いられた第1実施形態の受電コイルRC1の諸元は送電コイルTC1の諸元と同一であり、第1従来例の受電コイルの諸元は送電コイルTCXの諸元と同一である。
・送電コイルTC1(受電コイルRC1)及び送電コイルTCX(及び第1従来例の受電コイル)の大きさ:280ミリメートル×280ミリメートル
・ピッチPT1:15ミリメートル
・銅薄膜線TL111等における銅薄膜線の厚さ:0.2ミリメートル
そして図8に示すように、電力伝送システムSによる電力伝送に用いられる周波数(85キロヘルツ)の近辺では、第1実施形態の送電コイルTC1及び受電コイルRC1を用いた方が、第1従来例の送電コイルTCX及び受電コイルを用いる場合よりもインピーダンスが2/3程度低いことが判る。この点につき、上記電力伝送が85キロヘルツの周波数で行われるとき、当該インピーダンスとしては、0.5オーム未満とするのが好ましいことが本願の発明者により発見されているところであるが、この点を踏まえても、上記送電コイルTC1及び上記受電コイルRC1のような構成(即ち、それぞれを構成する銅薄膜線が重なる構成)の方が、インピーダンスの低減についてより好ましいと言える。
以上それぞれ説明したように、第1実施形態の送電コイルTC1及び受電コイルRC1を含む実施形態の電力伝送システムSを用いた電力伝送によれば、送電コイルTC1(受電コイルRC1)が、複数の直線部及び複数の曲線部を有する銅薄膜線TL111等からなる送電ループコイルTL11(外周→内周の巻回)及び送電ループコイルTL12(内周→外周の巻回)がフィルムBFを挟んで積層された構成を備える。そして、送電ループコイルTL11と送電ループコイルTL12それぞれ平面視全体形状が相互に同一の略正方形(正方形以外の多角形でもよい)とされており、送電ループコイルTL11の各巻回の送電コイルTC1(受電コイルRC1)の中心から見た位置と、送電ループコイルTL12の各巻回の送電コイルTC1(受電コイルRC1)の中心から見た位置と、が平面視において一致している(図4参照)。よって、軽量化及び低コスト化のために銅薄膜線により送電コイルTC1及び受電コイルRC1を構成することに起因する、いわゆる表皮効果又は近接効果によるインピーダンスを低減することができ、軽量化及び低コスト化と、伝送効率の向上及び動作温度の上昇の防止と、を両立させることができる。
また、送電ループコイルTL11の巻回において、一の巻回に含まれる一の曲線部(CV11(図4参照))においてのみ一巻回分の巻回遷移が行われており、また、送電ループコイルTL12の巻回において、一の巻回に含まれる一の曲線部(CV12(図4参照))においてのみ一巻回分の巻回遷移が行われているので、対応する薄膜導体の送電コイルTC1及び受電コイルRC1の中心から見た位置同士を、平面視において確実に一致させることができる。
更に、送電ループコイルTL11が銅薄膜線TL111及び銅薄膜線TL112により構成されており、送電ループコイルTL12が銅薄膜線TL121及び銅薄膜線TL122により構成されているので、インピーダンスを更に低減することができることで、軽量化及び低コスト化と、伝送効率の向上及び動作温度の上昇の防止と、をより両立させることができる。
更にまた、内周側の銅薄膜線TL112(銅薄膜線TL122)の幅w12が外周側の銅薄膜線TL111(銅薄膜線TL121)の幅w11より広くなっているので、インピーダンスをより低減することができることで、軽量化及び低コスト化と、伝送効率の向上及び動作温度の上昇の防止と、をより両立させることができる。
(B)第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態について、図9及び図10を用いて説明する。なお、図9及び図10は第2実施形態のコイルの構造をそれぞれ示す平面図である。
上述した第1実施形態の送電コイルTC1(受電コイルRC1)では、送電ループコイルTL11が送電コイルTC1における一の層(フィルムBFの表面)内で並行して巻回される銅薄膜線TL111及び銅薄膜線TL121で構成されており、また、送電ループコイルTL12が送電コイルTC1における他の一の層(フィルムBFの裏面)内で並行して巻回される銅薄膜線TL121及び銅薄膜線TL122で構成されている場合について説明した(図2乃至図4参照)。これに対し、以下に説明する第2実施形態の送電コイル(及び受電コイル)では、外周側から内周側に巻回された銅薄膜線からなる第1の送電ループコイルと、当該内周側から当該外周側に巻回された銅薄膜線からなる第2の送電ループコイルであって上記第1の送電ループコイルに直列接続された第2の送電ループコイルと、が、送電コイル(及び受電コイル)における一の層内に合わせて形成されており、更に、そのような層が二層積層されて送電コイル(及び受電コイル)が構成されている。これらに加えて、第2実施形態の送電コイル(及び受電コイル)では、上記第1の送電ループコイル及び第2の送電ループコイルに直列に、電流調整用のコイル(以下、「電流調整コイル」と称する)が接続されている。
なお、第2実施形態の送電コイル及び第2実施形態の受電コイルそれぞれの構成は基本的に同一であり、また、第2実施形態の受電コイルにおける受電ループコイル及び第2実施形態の送電コイルにおける送電ループコイルそれぞれの構成は同一である。更に、第2実施形態の送電コイルにおける電流調整コイル及び第2実施形態の受電コイルにおける電流調整コイルそれぞれの構成も同一である。よって以下の説明では、第2実施形態の送電コイルについてのみ、その構成について説明する。このとき、第1実施形態の送電コイルTC1と同一の構成部材については、同一の部材番号を付して細部の説明を省略する。
即ち、図9(a)にその平面図を示すように、第2実施形態の送電コイルTC2は、並行する二本の銅薄膜線TL211及び銅薄膜線TL212により構成されている送電ループコイルTL21(上記第1の送電ループコイル及び上記第2の送電ループコイルに相当)と、図9(b)にその平面図を示す送電ループコイルTL22と、が、絶縁性のフィルムBFを介して図9の紙面に垂直な方向に積層されて構成される。また、送電ループコイルTL21を構成する銅薄膜線TL211及び銅薄膜線TL212の巻回の中心と、送電ループコイルTL22を構成する銅薄膜線TL221及び銅薄膜線TL222(図9(b)参照)の巻回の中心とは、相互に同一又は略同一とされている。
図9(a)に示すように、送電ループコイルTL21は、送電コイルTC2の同じ層内(図9(a)に例示するフィルムBFの表面)を相互に並行して巻回されている銅薄膜線TL211及び銅薄膜線TL212により構成されており、その最外周部の一辺(図9(a)に示す場合は右辺部の中央)に、銅薄膜線TL211及び銅薄膜線TL212を接続すると共に送電部TRに接続するための外部接続端子O1と、銅薄膜線TL211及び銅薄膜線TL212を後述する第2実施形態の電流調整コイルにそれぞれ別個に接続するための接続端子M1及び接続端子M2と、を有している。そして送電ループコイルTL21は、銅薄膜線TL211及び銅薄膜線TL212が、図9(a)において、それらの最外周部の外部接続端子O1からその最内周部まで反時計方向に並行して二回転半(2.5ターン)巻回され、更に、当該最内周部から接続端子M1及び接続端子M2まで同様に反時計方向に並行して二回転半(2.5ターン)巻回されて構成されている。また、銅薄膜線TL211及び銅薄膜線TL212の巻回における交差部分は、絶縁層を挟み且つビアVVにより当該銅薄膜線TL211及び銅薄膜線TL212ごとに導通された積層構造、又はジャンパ線を用いる方法等により、相互に絶縁されつつ、四箇所(図9(a)参照)で交差されている。更に、銅薄膜線TL211及び銅薄膜線TL212のそれぞれでは、図9(a)におけるその上辺部、下辺部、左辺部及び右辺部それぞれに直線部が設けられており、それぞれの直線部が、略同心円弧状の曲線部により接続されている。なお上記銅薄膜線TL211の幅w21は、送電コイルTC2の内周側ほど広くなっている。この幅w21は、銅薄膜線TL211を構成する各直線部では同一とされており、当該直線部を接続する各曲線部において、当該幅w21が変更(即ち、送電コイルTC2の内周側ほど広くなるように変更)されている。一方、上記銅薄膜線TL211の厚さは、送電ループコイルTL21の全周に渡って同一とされている。他方、上記銅薄膜線TL212の幅w22も、幅w21と同様に、送電コイルTC2の内周側ほど広くなっている。この幅w22は、銅薄膜線TL212を構成する各直線部では同一とされており、当該直線部を接続する各曲線部において、当該幅w22が変更(即ち、送電コイルTC2の内周側ほど広くなるように変更)されている。一方、上記銅薄膜線TL212の厚さは、送電ループコイルTL21の全周に渡って同一とされている。以上の構成により、送電ループコイルTL21としての各巻回の幅w20(図9(a)参照)も、送電コイルTC2の内周側ほど広くなっている。そして、送電ループコイルTL21では、その全周に渡って、一巻回において内周側にある銅薄膜線TL212の幅w22がその一巻回において外周側にある銅薄膜線TL211の幅w21よりも広くされている。
次に、上記フィルムBFを介して上記送電ループコイルTL21の直下に積層されている送電ループコイルTL22の構成について、図9(b)を用いて説明する。なお図9(b)は、当該送電ループコイルTL22のみを取り出して示す平面図である。送電ループコイルTL22の全体形状は、送電ループコイルTL21の全体形状と同一の略長方形状とされている。
図9(b)にその平面図を示すように、フィルムBFを間に挟んで上記送電ループコイルTL21に積層される送電ループコイルTL22は、送電コイルTC2の同じ層内(図9(a)に例示するフィルムBFの裏面)を相互に並行して巻回されている銅薄膜線TL221及び銅薄膜線TL222により構成されており、その最外周部の一辺(図9(b)に示す場合は右辺部の中央)に、銅薄膜線TL221及び銅薄膜線TL222を接続すると共に送電ループコイルTL21と並列に送電部TRに接続するための外部接続端子O1と、銅薄膜線TL221及び銅薄膜線TL222を第2実施形態の電流調整コイルにそれぞれ別個に接続するための接続端子M1及び接続端子M2と、を有している。このとき、上記外部接続端子O1並びに接続端子M1及び接続端子M2は、図9(a)に示す外部接続端子O1並びに接続端子M1及び接続端子M2と同一である。そして送電ループコイルTL22は、銅薄膜線TL221及び銅薄膜線TL222が、図9(b)において、それらの最外周部の外部接続端子O1からその最内周部まで反時計方向に並行して二回転半(2.5ターン)巻回され、更に、当該最内周部から接続端子M1及び接続端子M2まで同様に反時計方向に並行して二回転半(2.5ターン)巻回されて構成されている。また、銅薄膜線TL221及び銅薄膜線TL222の巻回における交差部分は、絶縁層を挟み且つビアVVにより当該銅薄膜線TL221及び銅薄膜線TL222ごとに導通された積層構造又はジャンパ線を用いる方法等により、相互に絶縁されつつ、四箇所(図9(b)参照)で交差されている。更に、銅薄膜線TL221及び銅薄膜線TL222のそれぞれでは、図9(b)におけるその上辺部、下辺部、左辺部及び右辺部それぞれに直線部が設けられており、それぞれの直線部が、略同心円弧状の曲線部により接続されている。なお上記銅薄膜線TL221の幅w21は、図9(a)に示す銅薄膜線TL211の幅w21と同一であり、送電コイルTC2の内周側ほど広くなっている。この幅w21は、銅薄膜線TL221を構成する各直線部では同一とされており、当該直線部を接続する各曲線部において、当該幅w21が変更(即ち、送電コイルTC2の内周側ほど広くなるように変更)されている。一方、上記銅薄膜線TL221の厚さは、送電ループコイルTL22の全周に渡って同一とされている。他方、上記銅薄膜線TL222の幅w22は、図9(a)に示す送電ループコイルTL21の銅薄膜線TL212の幅w22と同一であり、銅薄膜線TL221の幅w21と同様に、送電コイルTC2の内周側ほど広くなっている。この幅w22は、銅薄膜線TL222を構成する各直線部では同一とされており、当該直線部を接続する各曲線部において、当該幅w22が変更(即ち、送電コイルTC2の内周側ほど広くなるように変更)されている。一方、上記銅薄膜線TL222の厚さは、送電ループコイルTL21の全周に渡って同一とされている。以上の構成により、送電ループコイルTL22としての各巻回の幅w20(図9(a)に示す送電ループコイルTL21における幅w20と同一。図9(b)参照。)も、送電コイルTC2の内周側ほど広くなっている。そして、送電ループコイルTL22では、その全周に渡って、一巻回において内周側にある銅薄膜線TL222の幅w22がその一巻回において外周側にある銅薄膜線TL221の幅w21よりも広くされている。
次に、第2実施形態の送電コイルTC2において、図示しないフィルム(上記フィルムBFと同じ材料等により構成されている)を介して上記送電ループコイルTL22の直下に更に積層されている電流調整コイルの構成について、図10(a)を用いて説明する。なお図10(a)は、当該電流調整コイルのみを取り出して示す平面図である。また、電流調整コイルの全体形状は、送電ループコイルTL21及び送電ループコイルTL22それぞれの全体形状と同一の略長方形状とされている。
図10(a)にその平面図を示すように、上記送電ループコイルTL22の直下にフィルムを挟んで積層される電流調整コイルTL23は、送電コイルTC2の同じ層内を相互に並行して巻回されている銅薄膜線TL231及び銅薄膜線TL232により構成されており、その最外周端部が、銅薄膜線TL231及び銅薄膜線TL232を上記銅薄膜線TL211及び銅薄膜線TL212並びに上記銅薄膜線TL221及び銅薄膜線TL222にそれぞれ別個に接続するための接続端子M1及び接続端子M2とされている。このとき、上記接続端子M1及び接続端子M2は、図9にそれぞれ示す接続端子M1及び接続端子M2と同一である。一方、銅薄膜線TL231及び銅薄膜線TL232の最内周端部は、銅薄膜線TL231及び銅薄膜線TL232を接続すると共に送電部TRに接続するための外部接続端子O2とされている。この外部接続端子O2は、電流調整コイルTL23と送電ループコイルTL22との間のフィルム及び送電ループコイルTL22と送電ループコイルTL21との間のフィルムBFを貫通して、図9(a)に示す外部接続端子O1と同じ面に露出するように構成されている。そして電流調整コイルTL23は、銅薄膜線TL231及び銅薄膜線TL232が、図10(a)において、それらの最外周部の接続端子M1及び接続端子M2からその最内周部の外部接続端子O2まで反時計方向に並行して五回転(5ターン)巻回されて構成されている。この結果、送電ループコイルTL21と送電ループコイルTL22とを合わせた電気的な巻回数(五回転)は、電流調整コイルTL23の巻回数の整数倍(一倍)となっている。更に、銅薄膜線TL231及び銅薄膜線TL232のそれぞれでは、図10(a)におけるその上辺部、下辺部、左辺部及び右辺部それぞれに直線部が設けられており、それぞれの直線部が、略同心円弧状の曲線部により接続されている。また、上記銅薄膜線TL211及び銅薄膜線TL212の巻回の中心、上記銅薄膜線TL221及び銅薄膜線TL222の巻回の中心、及び、上記銅薄膜線TL231及び銅薄膜線TL232の巻回の中心は、相互に同一又は略同一とされている。なお上記銅薄膜線TL231の幅w21は、図9(a)に示す送電ループコイルTL21の銅薄膜線TL211の幅w21及び図9(b)に示す送電ループコイルTL22の銅薄膜線TL221の幅w21と同一であり、送電コイルTC2の内周側ほど広くなっている。この幅w21は、銅薄膜線TL231を構成する各直線部では同一とされており、当該直線部を接続する各曲線部において、当該幅w21が変更(即ち、送電コイルTC2の内周側ほど広くなるように変更)されている。一方、上記銅薄膜線TL231の厚さは、電流調整コイルTL23の全周に渡って同一とされている。他方、上記銅薄膜線TL232の幅w22は、図9(a)に示す銅薄膜線TL212の幅w22及び図9(b)に示す銅薄膜線TL222の幅w22と同一であり、銅薄膜線TL231の幅w21と同様に、送電コイルTC2の内周側ほど広くなっている。この幅w23は、銅薄膜線TL232を構成する各直線部では同一とされており、当該直線部を接続する各曲線部において、当該幅w22が変更(即ち、送電コイルTC2の内周側ほど広くなるように変更)されている。一方、上記銅薄膜線TL232の厚さは、電流調整コイルTL23の全周に渡って同一とされている。以上の構成により、電流調整コイルTL23としての各巻回の幅w20(図9(a)に示す送電ループコイルTL21における幅w20及び図9(b)に示す送電ループコイルTL22における幅w20と同一。図10(a)参照。)も、送電コイルTC2の内周側ほど広くなっている。そして、電流調整コイルTL23では、その全周に渡って、一巻回において内周側にある銅薄膜線TL232の幅w22がその一巻回において外周側にある銅薄膜線TL231の幅w21よりも広くされている。
次に、上記銅薄膜線TL211及び上記銅薄膜線TL212からなる上記送電ループコイルTL21と、上記銅薄膜線TL221及び上記銅薄膜線TL222からなる上記送電ループコイルTL22と、上記銅薄膜線TL231及び上記銅薄膜線TL232からなる上記送電ループコイルTL23と、の位置関係について、図10(b)を用いて説明する。なお図10(b)は、送電ループコイルTL21、送電ループコイルTL22及び電流調整コイルTL23の重なり状況を示す平面図であり、送電ループコイルTL21を実線で、その直下にフィルムBF(図10(b)において図示を省略している)を介して積層されている送電ループコイルTL22を破線で、送電ループコイルTL22の直下にフィルムを介して積層されている電流調整コイルTL23を一点鎖線で、それぞれ示している。
図10(b)に実線で示すように、並行して巻回された銅薄膜線TL211及び銅薄膜線TL212からなる送電ループコイルTL21では、その一巻回に含まれる四箇所の上記曲線部のうち一の曲線部(例えば、図10(b)における右下角部分の曲線部)のみにおいて、銅薄膜線TL211及び銅薄膜線TL212それぞれの巻回における一のピッチPT2(図10(b)参照)ずつその直線部の位置が外周側又は内周側にずれるように(即ち巻回が外周側又は内周側に遷移するように)、銅薄膜線TL211及び銅薄膜線TL212が、外部接続端子O1から接続端子M1及び接続端子M2まで反時計回りに巻回されている。これにより、送電ループコイルTL21においてその巻回が一のピッチPT2分外周側又は内周側に遷移する曲線部は、例えば、図10(b)における右下角部分の四つの曲線部群に含まれることになる。
これに対し、送電ループコイルTL21を構成する銅薄膜線TL211及び銅薄膜線TL212と外部接続端子O1並びに接続端子M1及び接続端子M2によりその最外周部でそれぞれ接続される銅薄膜線TL221及び銅薄膜線TL222からなる送電ループコイルTL22では、図10(b)に破線で示すように、その一巻回に含まれる四箇所の上記曲線部のうち一の曲線部(例えば、図10(b)における右下角部分の曲線部)のみにおいて、銅薄膜線TL221及び銅薄膜線TL222それぞれの巻回における一ピッチPT2ずつその直線部の位置が外周側又は内周側にずれるように(即ち巻回が外周側又は内周側に遷移するように)、銅薄膜線TL221及び銅薄膜線TL222が反時計回り(即ち送電ループコイルTL21と同方向)に巻回されている。これにより、送電ループコイルTL22においてその巻回が一のピッチPT2分外周側又は内周側に遷移する曲線部は、例えば、図10(b)における右下角部分の四つの曲線部群に含まれることになる。そして、送電ループコイルTL21及び送電ループコイルTL22の図10(b)中右辺の最外周の一端が、外側に突出した形状の外部接続端子O1に接続され、送電ループコイルTL21及び送電ループコイルTL22の図10(b)中右辺の最外周の他端が、接続端子M1及び接続端子M2とされている。
更に、銅薄膜線TL211及び銅薄膜線TL212、並びに銅薄膜線TL221及び銅薄膜線TL222に接続端子M1及び接続端子M2を介して接続される銅薄膜線TL231及び銅薄膜線TL232が外周から内周に向けて並行して巻回されてなる電流調整コイルTL23では、図10(b)に一点鎖線で示すように、その一巻回に含まれる四箇所の上記曲線部のうち一の曲線部(例えば、図10(b)における右下角部分の曲線部)のみにおいて、銅薄膜線TL231及び銅薄膜線TL232それぞれの巻回における一ピッチPT2ずつその直線部の位置が内周側にずれるように(即ち巻回が内周側に遷移するように)、銅薄膜線TL231及び銅薄膜線TL232が反時計回り(即ち送電ループコイルTL21及び送電ループコイルTL22と同方向)に巻回されている。これにより、電流調整コイルTL23においてその巻回が一のピッチPT2分内周側に遷移する曲線部は、例えば、図10(b)における右下角部分に外周側から内周側に並ぶ四つの曲線部群であることになる。そして、電流調整コイルTL23の最外周端部が接続端子M1及び接続端子M2とされており、その最内周端部が外部接続端子O2とされている。
以上のような形状をそれぞれ備える送電ループコイルTL21、送電ループコイルTL22及び電流調整コイルTL23が図10(b)に示すように積層されていることで、送電コイルTC2の中心から見た銅薄膜線TL211、銅薄膜線TL221及び銅薄膜線TL231それぞれの位置は、それぞれの巻回が遷移する曲線部並びに外部接続端子O1及び外部接続端子O2並びに接続端子M1及び接続端子M2への接続部を除いて同一となっている。また同様に、送電コイルTC2の中心から見た銅薄膜線TL212、銅薄膜線TL222及び銅薄膜線TL232それぞれの位置も、それぞれの巻回が遷移する曲線部並びに外部接続端子O1及び外部接続端子O2並びに接続端子M1及び接続端子M2への接続部を除いて同一となっている。よって、送電コイルTC2としては、送電ループコイルTL21の少なくとも各直線部と、送電ループコイルTL22の少なくとも各直線部と、電流調整コイルTL23の少なくとも各直線部と、が重なった状態で、送電ループコイルTL21乃至電流調整コイルTL23がフィルムBF等を挟んで積層されている。これにより、送電ループコイルTL21の最外周部及び送電ループコイルTL22の最外周部(外部接続端子O1)→それらの最内周部→それらの最外周部の接続端子M1及び接続端子M2、の順で反時計方向に銅薄膜線TL211、銅薄膜線TL212、銅薄膜線TL221及び銅薄膜線TL222が巻回されている。そして、接続端子M1及び接続端子M2から反時計方向に電流調整コイルTL23の銅薄膜線TL231及び銅薄膜線TL232がその最内周部まで巻回され、当該最内周端部が外部接続端子O2に接続されている。この構造により、第2実施形態の送電コイルTC2としては、送電ループコイルTL21及び送電ループコイルTL22において外部接続端子O1から接続端子M1及び接続端子M2まで反時計方向に電流が流れ、その後、接続端子M1及び接続端子M2から電流調整コイルTL23において外部接続端子O2まで同じ反時計方向に流れる。
なお、第2実施形態の送電コイルTC2及び受電コイルRC2の製造方法は、基本的には、第1実施形態の送電コイルTC1及び受電コイルRC1の上記製造方法と同様であるので、細部の説明は省略する。
第2実施例
次に、図9及び図10に示す構成を有する第2実施形態の送電コイルTC2又は受電コイルRC2を用いた電力伝送システムにおいて、送電コイル又は受電コイルの構成を変更した場合のインピーダンス等の計測結果(シミュレーション結果)について、第2実施例として以下の表1を用いて説明する。なお表1は、第2実施形態の送電コイルTC2又は受電コイルRC2の構造による効果としてのインピーダンス等を示しており、後述する第3実施形態の送電コイル又は受電コイルの構造による効果としてのインピーダンス等も併せて記載している。
ここで、上記第2実施例との比較対象である第2従来例は、表1に例示するように、第2実施形態の送電コイルTC2又は受電コイルRC2における送電ループコイルTL21及び送電ループコイルTL22の巻回数をそれぞれ八回としたものであり、その他の、電流調整コイルTL23の巻回数等の構造は、第2実施形態の送電コイルTC2又は受電コイルRC2と同様である。この結果、第2従来例の送電コイル及び受電コイルでは、それらに含まれる各送電ループコイルの巻回数(八回転)が、電流調整コイルRL23の巻回数(五回転)の整数倍になっておらず、よって、送電ループコイル等及び電流調整コイルRL23を構成する銅薄膜線同士の位置が、その中心から見て重なる構成とはなっていない。
また、第2実施例の実験に供される第2実施形態の送電コイルTC2及び第2従来例の送電コイルそれぞれのその他の諸元は、以下の通りである。なお以下の説明では、送電コイルTC2及び第2従来例の送電コイルについての諸元を説明するが、実験に用いられた第2実施形態の受電コイルRC2の諸元は送電コイルTC2の諸元と同一であり、第2従来例の受電コイルの諸元は第2従来例の送電コイルの諸元と同一である。
・送電コイルTC2(受電コイルRC2)及び第2従来例の送電コイル及び受電コイルの大きさ:長辺266ミリメートル×短辺160ミリメートル
・ピッチPT2(図10(b)参照):5.5ミリメートル(最外周部)~9.5ミリメートル(最内周部)
・銅薄膜線TL211等における銅薄膜線の厚さ:0.2ミリメートル
・送電コイルと受電コイルとの距離:40ミリメートル
・送電コイル及び受電コイルそれぞれと同じ厚さのフェライトシートを、送電コイル及び受電コイルそれぞれの対向面と反対の面に備えている。
そして表1にハッチングで示すように、第2実施形態の電力伝送システムによる電力伝送に用いられる周波数(85キロヘルツ)では、第2実施形態の送電コイルTC2及び受電コイルRC2を用いた方が、第2従来例の送電コイル及び受電コイルを用いる場合よりも、インピーダンス及びQ値において良好な性能であることが判る。即ち、上記送電コイルTC2及び上記受電コイルRC2のような構成(それぞれを構成する銅薄膜線が重なる構成)の方が、インピーダンス及びインダクタンスそれぞれの低減並びにQ値の向上について、より好ましいと言える。
以上説明したように、第2実施形態の送電コイルTC2及び受電コイルRC2を含む第2実施形態の電力伝送システムを用いた電力伝送によれば、第1実施形態の電力伝送システムSを用いた電力伝送による効果に加えて、銅薄膜線TL211及び銅薄膜線TL212、銅薄膜線TL221及び銅薄膜線TL222並びに銅薄膜線TL231及び銅薄膜線TL232それぞれの幅w21及び幅w22が、送電コイルTC2等の中心に近い巻回ほど広くなっているので、電流が集中する送電コイルTC2等の中心ほど銅薄膜線としての幅が広くされていることで、送電コイルTC2等としてのインピーダンスをより低減することができる。
(C)第3実施形態
次に、本発明の第3実施形態について、図11乃至図16を用いて説明する。なお、図11は第3実施形態の電力伝送システムに含まれる受電コイルの概要構成を示す回路図であり、図12乃至図14は第3実施形態のコイルの構造を示す平面図であり、図15は第3実施形態の受電コイルの構成による効果としての静電容量と伝送効率との関係を示す図であり、図16は第3実施形態の受電コイルの構造による効果としての静電容量と損失(銅損)との関係を示す図である。
上述した第1実施形態の送電コイルTC1(受電コイルRC1)では、二つの送電ループコイルTL11及び送電ループコイルTL12から送電コイルTC1が構成されている場合について説明した(図2乃至図4参照)。これに対し、以下に説明する第3実施形態の受電コイルは、第2実施形態の上記送電ループコイルTL21と同様の構成の第1の受電ループコイルと、第2実施形態の上記送電ループコイルTL22と同様の構成の第2の受電ループコイルと、当該第1の受電ループコイル及び第2の受電ループコイルからは独立した電流調整用のコイル(以下、「電流調整コイル」と称する)と、が積層された構成されている。
なお、以下の説明では、第3実施形態の受電コイルを中心として説明するが、第3実施形態の受電コイルと第3実施形態の送電コイルとが同一の構成を備えていてもよい。また、以下の説明では、第1実施形態の受電コイルRC1(即ち送電コイルTC1)と同一の構成部材については、同一の部材番号を付して細部の説明を省略する。
初めに、第3実施形態の受電コイルの回路構成について、図11を用いて説明する。第3実施形態の受電コイルRC3は、図11に示すように、外部接続端子O1及び外部接続端子O2と、二つの受電ループコイルRL31及び受電ループコイルRL32と、二つの電流調整コイルRL33及び電流調整コイルRL34と、電流調整用のコンデンサCpと、を備えて構成されている。なお以下の説明において、上記電流調整用のコンデンサを、単に「電流調整コンデンサ」と称する。また、電流調整用コンデンサCpが、本発明の「容量手段」の一例に相当する。以上の構成において、外部接続端子O1及び外部接続端子O2は、それぞれ、受電コイルRC3を受電部RVに接続するための外部接続端子である。また、受電ループコイルRL31及び受電ループコイルRL32は、外部接続端子O1及び外部接続端子O2に直列に接続され且つ相互は並列に接続されている。更に、電流調整コイルRL33及び電流調整コイルRL34は、受電ループコイルRL31及び受電ループコイルRL32からは絶縁され且つ相互に接続端子M3により直列に接続されている。電流調整コンデンサCpは、電流調整コイルRL33及び電流調整コイルRL34の両端部に接続されている。なお、電流調整コンデンサCp並びに電流調整コイルRL33及び電流調整コイルRL34と同様の構成を備える電流調整コンデンサ及び二つの電流調整コイルは、受電コイルRC3と共に第3実施形態の電力伝送システムを構成する第3実施形態の送電コイルに備えられていてもよい。このとき、電流調整コンデンサCp並びに電流調整コイルRL33及び電流調整コイルRL34は、主として、インピーダンスの低減及び伝送効率の向上に資するものである。
次に、第3実施形態の受電コイルRC3の具体的な構成ついて、図12乃至図14を用いて説明する。このとき、以下に説明する第3実施形態の受電ループコイルRL31(上記第1の受電ループコイルに相当)は、その巻回数を除き、第2実施形態の送電ループコイルTL21と基本的に同様の構成を備えている。また同様に、第3実施形態の受電ループコイルRL32(上記第2の受電ループコイルに相当)は、その巻回数を除き、第2実施形態の送電ループコイルTL22と基本的に同様の構成を備えている。
即ち、図12(a)にその平面図を示すように、第3実施形態の受電コイルRC3は、並行する二本の銅薄膜線RL311及び銅薄膜線RL312により構成されている受電ループコイルRL31と、図12(b)にその平面図を示す受電ループコイルRL32と、が、絶縁性のフィルムBFを介して図12の紙面に垂直な方向に積層されて構成される。また、銅薄膜線RL311及び銅薄膜線RL312の巻回の中心と、銅薄膜線RL321及び銅薄膜線RL322(図12(b)参照)の巻回の中心とは、相互に同一又は略同一とされている。
図12(a)に示すように、受電ループコイルRL31は、受電コイルRC3の同じ層内(図12(a)に例示するフィルムBFの表面)を相互に並行して巻回されている銅薄膜線RL311及び銅薄膜線RL312により構成されており、その最外周部の一辺(図12(a)に示す場合は右辺部の中央)に、銅薄膜線RL311及び銅薄膜線RL312を接続すると共に送電部TRに接続するための外部接続端子O1及び外部接続端子O2を有している。そして受電ループコイルRL31は、銅薄膜線RL311及び銅薄膜線RL312が、図12(a)において、それらの最外周部の外部接続端子O1からその最内周部まで反時計方向に並行して四回転(4ターン)巻回され、更に、当該最内周部から外部接続端子O2まで同様に反時計方向に並行して四回転(4ターン)巻回されて構成されている。また、銅薄膜線RL311及び銅薄膜線RL312の巻回における交差部分は、絶縁層を挟み且つビアVVにより当該銅薄膜線RL311及び銅薄膜線RL312ごとに導通された積層構造、又はジャンパ線を用いる方法等により、相互に絶縁されつつ、七箇所(図12(a)参照)で交差されている。更に、銅薄膜線RL311及び銅薄膜線RL312のそれぞれでは、図12(a)におけるその上辺部、下辺部、左辺部及び右辺部それぞれに直線部が設けられており、それぞれの直線部が、略同心円弧状の曲線部により接続されている。なお上記銅薄膜線RL311の幅w31は、受電コイルRC3の内周側ほど広くなっている。この幅w31は、銅薄膜線RL311を構成する各直線部では同一とされており、当該直線部を接続する各曲線部において、当該幅w31が変更(即ち、受電コイルRC3の内周側ほど広くなるように変更)されている。一方、上記銅薄膜線RL311の厚さは、受電ループコイルRL31の全周に渡って同一とされている。他方、上記銅薄膜線RL312の幅w32も、幅w31と同様に、受電コイルRC3の内周側ほど広くなっている。この幅w32は、銅薄膜線RL312を構成する各直線部では同一とされており、当該直線部を接続する各曲線部において、当該幅w32が変更(即ち、受電コイルRC3の内周側ほど広くなるように変更)されている。一方、上記銅薄膜線RL312の厚さは、受電ループコイルRL31の全周に渡って同一とされている。以上の構成により、受電ループコイルRL31としての各巻回の幅w30(図12(a)参照)も、受電コイルRC3の内周側ほど広くなっている。そして、受電ループコイルRL31では、その全周に渡って、一巻回において内周側にある銅薄膜線RL312の幅w32がその一巻回において外周側にある銅薄膜線RL311の幅w31よりも広くされている。
次に、上記フィルムBFを介して上記受電ループコイルRL31の直下に積層されている受電ループコイルRL32の構成について、図12(b)を用いて説明する。なお図12(b)は、当該受電ループコイルRL32のみを取り出して示す平面図である。受電ループコイルRL32の全体形状は、受電ループコイルRL31の全体形状と同一の略長方形状とされている。
図12(b)にその平面図を示すように、フィルムBFを間に挟んで上記受電ループコイルRL31に積層される受電ループコイルRL32は、受電コイルRC3の同じ層内(図12(a)に例示するフィルムBFの裏面)を相互に並行して巻回されている銅薄膜線RL321及び銅薄膜線RL322により構成されており、その最外周部の一辺(図12(b)に示す場合は右辺部の中央)に、銅薄膜線RL321及び銅薄膜線RL322を接続すると共に受電ループコイルRL31と並列に送電部TRに接続するための外部接続端子O1及び外部接続端子O2を有している。このとき、上記外部接続端子O1及び上記外部接続端子O2は、図12(a)に示す外部接続端子O1及び外部接続端子O2と同一である。そして受電ループコイルRL32は、銅薄膜線RL321及び銅薄膜線RL322が、図12(b)において、それらの最外周部の外部接続端子O1からその最内周部まで反時計方向に並行して四回転(4ターン)巻回され、更に、当該最内周部から外部接続端子O2まで同様に反時計方向に並行して四回転(4ターン)巻回されて構成されている。また、銅薄膜線RL321及び銅薄膜線RL322の巻回における交差部分は、絶縁層を挟み且つビアVVにより当該銅薄膜線RL321及び銅薄膜線RL322ごとに導通された積層構造、又はジャンパ線を用いる方法等により、相互に絶縁されつつ、七箇所(図12(b)参照)で交差されている。更に、銅薄膜線RL321及び銅薄膜線RL322のそれぞれでは、図12(b)におけるその上辺部、下辺部、左辺部及び右辺部それぞれに直線部が設けられており、それぞれの直線部が、略同心円弧状の曲線部により接続されている。なお上記銅薄膜線RL321の幅w31は、上記銅薄膜線RL311の幅w31と同一であり、受電コイルRC3の内周側ほど広くなっている。この幅w31は、銅薄膜線RL321を構成する各直線部では同一とされており、当該直線部を接続する各曲線部において、当該幅w31が変更(即ち、受電コイルRC3の内周側ほど広くなるように変更)されている。一方、上記銅薄膜線RL321の厚さは、受電ループコイルRL32の全周に渡って同一とされている。他方、上記銅薄膜線RL322の幅w32は、上記銅薄膜線RL312の幅w32と同一であり、幅w31と同様に、受電コイルRC3の内周側ほど広くなっている。この幅w32は、銅薄膜線RL322を構成する各直線部では同一とされており、当該直線部を接続する各曲線部において、当該幅w32が変更(即ち、受電コイルRC3の内周側ほど広くなるように変更)されている。一方、上記銅薄膜線RL322の厚さは、受電ループコイルRL32の全周に渡って同一とされている。以上の構成により、受電ループコイルRL32としての各巻回の幅w30(図12(b)参照)も、受電コイルRC3の内周側ほど広くなっている。そして、受電ループコイルRL32では、その全周に渡って、一巻回において内周側にある銅薄膜線RL322の幅w32がその一巻回において外周側にある銅薄膜線RL321の幅w31よりも広くされている。
次に、第3実施形態の受電コイルRC3において、図示しないフィルム(上記フィルムBFと同じ材料等により構成されている)を介して上記受電ループコイルRL32の直下に更に積層されている電流調整コイルRL33の構成について、図13(a)を用いて説明する。なお図13(a)は、当該電流調整コイルRL33のみを取り出して示す平面図である。電流調整コイルRL33及び後述する電流調整コイルRL34の全体形状は、受電ループコイルRL31及び受電ループコイルRL32それぞれの全体形状と同一の略長方形状とされている。
図13(a)にその平面図を示すように、上記受電ループコイルRL32の直下にフィルムを挟んで積層される電流調整コイルRL33は、受電コイルRC3の同じ層内を相互に並行して巻回されている銅薄膜線RL331及び銅薄膜線RL332により構成されており、その最外周端部が、銅薄膜線RL331及び銅薄膜線RL332を、図13(b)を用いて説明する電流調整コイルRL34の銅薄膜線RL341及び銅薄膜線RL342にそれぞれ別個に直列に接続するための接続端子M3とされている。このとき、上記銅薄膜線RL331乃至銅薄膜線RL342が、本発明の「調整用巻回線」の一例に相当する。一方、銅薄膜線RL331及び銅薄膜線RL332の最内周端部は、銅薄膜線RL331及び銅薄膜線RL332を接続すると共に上記電流調整コンデンサCpを接続するため
の接続端子M33とされている。そして電流調整コイルRL33は、銅薄膜線RL331及び銅薄膜線RL332が、図13(a)において、それらの最外周部の接続端子M3からその最内周部の接続端子M33まで時計方向に並行して八回転(8ターン)巻回されて構成されている。更に、銅薄膜線RL331及び銅薄膜線RL332のそれぞれでは、図13(a)におけるその上辺部、下辺部、左辺部及び右辺部それぞれに直線部が設けられており、それぞれの直線部が、略同心円弧状の曲線部により接続されている。また上記銅薄膜線RL311及び銅薄膜線RL312の巻回の中心、上記銅薄膜線RL321及び銅薄膜線RL322の巻回の中心、及び、上記銅薄膜線RL331及び銅薄膜線RL332の巻回の中心は、相互に同一又は略同一とされている。なお上記銅薄膜線RL331の幅w31は、上記銅薄膜線RL311の幅w31及び上記銅薄膜線RL321の幅w31と同一であり、受電コイルRC3の内周側ほど広くなっている。この幅w31は、銅薄膜線RL331を構成する各直線部では同一とされており、当該直線部を接続する各曲線部において、当該幅w31が変更(即ち、受電コイルRC3の内周側ほど広くなるように変更)されている。一方、上記銅薄膜線RL331の厚さは、電流調整コイルRL33の全周に渡って同一とされている。他方、上記銅薄膜線RL332の幅w32は、図12(a)に示す受電ループコイルRL31の銅薄膜線RL312の幅w32及び図12(b)に示す受電ループコイルRL32の銅薄膜線RL322の幅w32と同一であり、銅薄膜線RL331の幅w31と同様に、受電コイルRC3の内周側ほど広くなっている。この幅w32は、銅薄膜線RL332を構成する各直線部では同一とされており、当該直線部を接続する各曲線部において、当該幅w32が変更(即ち、受電コイルRC3の内周側ほど広くなるように変更)されている。一方、上記銅薄膜線RL332の厚さは、電流調整コイルRL33の全周に渡って同一とされている。以上の構成により、電流調整コイルRL33としての各巻回の幅w30(図12(a)に示す受電ループコイルRL31における幅w30及び図12(b)に示す受電ループコイルRL32における幅w30と同一。図13(a)参照。)も、受電コイルRC3の内周側ほど広くなっている。そして、電流調整コイルRL33では、その全周に渡って、一巻回において内周側にある銅薄膜線RL332の幅w32がその一巻回において外周側にある銅薄膜線RL331の幅w31よりも広くされている。
次に、第3実施形態の受電コイルRC3において、図示しないフィルム(上記フィルムBFと同じ材料等により構成されている)を介して上記電流調整コイルRL33の直下に更に積層されている電流調整コイルRL34の構成について、図13(b)を用いて説明する。なお図13(b)は、当該電流調整コイルRL34のみを取り出して示す平面図である。
図13(b)にその平面図を示すように、上記電流調整コイルRL33の直下にフィルムを挟んで積層される電流調整コイルRL34は、受電コイルRC3の同じ層内を相互に並行して巻回されている銅薄膜線RL341及び銅薄膜線RL342により構成されており、その最外周端部が、銅薄膜線RL341及び銅薄膜線RL342を上記電流調整コイルRL33の銅薄膜線RL331及び銅薄膜線RL332にそれぞれ別個に直列に接続するための上記接続端子M3とされている。このとき、当該接続端子M3は、図13(a)に示す接続端子M3と同一である。一方、銅薄膜線RL341及び銅薄膜線RL342の最内周端部は、銅薄膜線RL341及び銅薄膜線RL342を接続すると共に上記電流調整コンデンサCpを接続するための接続端子M34とされている。そして電流調整コイルRL34は、銅薄膜線RL341及び銅薄膜線RL342が、図13(b)において、それらの最内周部の接続端子M34からその最外周部の接続端子M3まで時計方向に並行して八回転(8ターン)巻回されて構成されている。更に、銅薄膜線RL341及び銅薄膜線RL342のそれぞれでは、図13(b)におけるその上辺部、下辺部、左辺部及び右辺部それぞれに直線部が設けられており、それぞれの直線部が、略同心円弧状の曲線部により接続されている。また上記銅薄膜線RL311及び銅薄膜線RL312の巻回の中心、上記銅薄膜線RL321及び銅薄膜線RL322の巻回の中心、上記銅薄膜線RL331及び銅薄膜線RL332の巻回の中心、及び、上記銅薄膜線RL341及び銅薄膜線RL342の巻回の中心、は、相互に同一又は略同一とされている。なお上記銅薄膜線RL341の幅w31は、上記銅薄膜線RL311の幅w31、上記銅薄膜線RL321の幅w31及び上記銅薄膜線RL331の幅w31と同一であり、受電コイルRC3の内周側ほど広くなっている。この幅w31は、銅薄膜線RL341を構成する各直線部では同一とされており、当該直線部を接続する各曲線部において、当該幅w31が変更(即ち、受電コイルRC3の内周側ほど広くなるように変更)されている。一方、上記銅薄膜線RL341の厚さは、電流調整コイルRL34の全周に渡って同一とされている。他方、上記銅薄膜線RL342の幅w32は、上記銅薄膜線RL312の幅w32、上記銅薄膜線RL322の幅w32、及び上記銅薄膜線RL332の幅w32と同一であり、銅薄膜線RL341の幅w31と同様に、受電コイルRC3の内周側ほど広くなっている。この幅w32は、銅薄膜線RL342を構成する各直線部では同一とされており、当該直線部を接続する各曲線部において、当該幅w32が変更(即ち、受電コイルRC3の内周側ほど広くなるように変更)されている。一方、上記銅薄膜線RL342の厚さは、電流調整コイルRL34の全周に渡って同一とされている。以上の構成により、電流調整コイルRL34としての各巻回の幅w30(図12(a)に示す受電ループコイルRL31における幅w30、図12(b)に示す受電ループコイルRL32における幅w30及び図13(a)に示す電流調整コイルRL33における幅w30と同一。図13(b)参照。)も、受電コイルRC3の内周側ほど広くなっている。そして、電流調整コイルRL34では、その全周に渡って、一巻回において内周側にある銅薄膜線RL342の幅w32がその一巻回において外周側にある銅薄膜線RL341の幅w31よりも広くされている。
以上説明したような電流調整コイルRL33及び電流調整コイルRL34、並びに受電ループコイルRL31及び受電ループコイルRL32それぞれの構成により、直列接続された電流調整コイルTL33及び電流調整コイルRL34を合わせた巻回数(十六回転)は、並列接続された受電ループコイルTL31と受電ループコイルTL32とを合わせた(電気的な)巻回数(八回転)の整数倍(二倍)となっている。
次に、上記銅薄膜線RL311及び上記銅薄膜線RL312からなる上記受電ループコイルRL31と、上記銅薄膜線RL321及び上記銅薄膜線RL322からなる上記受電ループコイルRL32と、上記銅薄膜線RL331及び上記銅薄膜線RL332からなる上記電流調整コイルRL33と、上記銅薄膜線RL341及び上記銅薄膜線RL342からなる上記電流調整コイルRL34と、の位置関係について、図14を用いて説明する。なお図14は、受電ループコイルRL31、受電ループコイルRL32、電流調整コイルRL33及び電流調整コイルRL34の重なり状況を示す平面図であり、受電ループコイルRL31を実線で、その直下にフィルムBF(図14において図示を省略している)を介して積層されている受電ループコイルRL32を破線で、受電ループコイルRL32の直下にフィルムを介して積層されている電流調整コイルRL33を一点鎖線で、電流調整コイルRL33の直下にフィルムを介して積層されている電流調整コイルRL34を二点鎖線で、それぞれ示している。
図14に実線で示すように、並行して巻回された銅薄膜線RL311及び銅薄膜線RL312からなる受電ループコイルRL31では、その一巻回に含まれる四箇所の上記曲線部のうち一の曲線部(例えば、図14における右下角部分の曲線部)のみにおいて、銅薄膜線RL311及び銅薄膜線RL312それぞれの巻回における一のピッチPT3(図12(b)及び図14参照)ずつその直線部の位置が外周側又は内周側にずれるように(即ち巻回が外周側又は内周側に遷移するように)、銅薄膜線RL311及び銅薄膜線RL312が、外部接続端子O1から外部接続端子O2まで反時計回りに巻回されている。これにより、受電ループコイルRL31においてその巻回が一のピッチPT3分外周側又は内周側に遷移する曲線部は、例えば、図14における右下角部分の七つ曲線部群に含まれることになる。
これに対し、受電ループコイルRL31を構成する銅薄膜線RL311及び銅薄膜線RL312と外部接続端子O1及び外部接続端子O2によりその最外周部でそれぞれ接続される銅薄膜線RL321及び銅薄膜線RL322からなる受電ループコイルRL32では、図14に破線で示すように、その一巻回に含まれる四箇所の上記曲線部のうち一の曲線部(例えば、図14における右下角部分の曲線部)のみにおいて、銅薄膜線RL321及び銅薄膜線RL322それぞれの巻回における一ピッチPT3ずつその直線部の位置が外周側又は内周側にずれるように(即ち巻回が外周側又は内周側に遷移するように)、銅薄膜線RL321及び銅薄膜線RL322が反時計回り(即ち受電ループコイルRL31と同方向)に巻回されている。これにより、受電ループコイルRL32においてその巻回が一のピッチPT3分外周側又は内周側に遷移する曲線部は、例えば、図14における右下角部分の四つの曲線部群に含まれることになる。そして、受電ループコイルRL31及び受電ループコイルRL32の図14中右辺の最外周の各端部が外部接続端子O1及び外部接続端子O2にそれぞれ接続されている。
更に、銅薄膜線RL331及び銅薄膜線RL332が外周から内周に向けて並行して巻回されてなる電流調整コイルRL33では、図14に一点鎖線で示すように、その一巻回に含まれる四箇所の上記曲線部のうち一の曲線部(例えば、図14における右下角部分の曲線部)のみにおいて、銅薄膜線RL331及び銅薄膜線RL332それぞれの巻回における一ピッチPT3ずつその直線部の位置が内周側にずれるように(即ち巻回が内周側に遷移するように)、銅薄膜線RL331及び銅薄膜線RL332が時計回りに巻回されている。これにより、電流調整コイルRL33においてその巻回が一のピッチPT3分内周側に遷移する曲線部は、例えば、図14における右下角部分に外周側から内周側に並ぶ七つの曲線部群であることになる。そして、電流調整コイルRL33の最外周端部が接続端子M3とされており、その最内周端部が接続端子M33とされている。
最後に、銅薄膜線RL341及び銅薄膜線RL342が内周から外周に向けて並行して巻回されてなる電流調整コイルRL34では、図14に二点鎖線で示すように、その一巻回に含まれる四箇所の上記曲線部のうち一の曲線部(例えば、図14における右下角部分の曲線部)のみにおいて、銅薄膜線RL341及び銅薄膜線RL342それぞれの巻回における一ピッチPT3ずつその直線部の位置が外周側にずれるように(即ち巻回が外周側に遷移するように)、銅薄膜線RL341及び銅薄膜線RL342が時計回りに巻回されている。これにより、電流調整コイルRL34においてその巻回が一のピッチPT3分外周側に遷移する曲線部は、例えば、図14における右下角部分に外周側から内周側に並ぶ七つの曲線部群であることになる。そして、電流調整コイルRL34の最内周端部が接続端子M34とされており、その最外周端部が接続端子M3とされている。
以上のような形状をそれぞれ備える受電ループコイルRL31、受電ループコイルRL32、電流調整コイルRL33及び電流調整コイルRL34が図14に示すように積層されていることで、受電コイルRC3の中心から見た銅薄膜線RL311、銅薄膜線RL321、銅薄膜線RL331及び銅薄膜線RL341それぞれの位置は、それぞれの巻回が遷移する曲線部、外部接続端子O1及び外部接続端子O2、接続端子M3並びに接続端子M33及び接続端子M34への接続部を除いて同一となっている。また同様に、受電コイルRC3の中心から見た銅薄膜線RL312、銅薄膜線RL322、銅薄膜線RL332及び銅薄膜線RL342それぞれの位置も、それぞれの巻回が遷移する曲線部、外部接続端子O1及び外部接続端子O2、接続端子M3並びに接続端子M33及び接続端子M34への接続部を除いて同一となっている。よって、受電コイルRC3としては、受電ループコイルRL31の少なくとも各直線部と、受電ループコイルRL32の少なくとも各直線部と、電流調整コイルRL33の少なくとも各直線部と、電流調整コイルRL34の少なくとも各直線部と、が重なった状態で、受電ループコイルRL31乃至電流調整コイルRL34がフィルムBF等を挟んで積層されている。これにより、受電ループコイルRL31の最外周部及び受電ループコイルRL32の最外周部(外部接続端子O1)→それらの最内周部→それらの最外周部の外部接続端子O2、の順で反時計方向に銅薄膜線RL311、銅薄膜線RL312、銅薄膜線RL321及び銅薄膜線RL322が巻回されている。そして、接続端子M34から時計方向に電流調整コイルRL34の銅薄膜線RL341及び銅薄膜線RL342がその最外周部の接続端子M3まで巻回され、更に、当該接続端子M3から時計方向に電流調整コイルRL33の銅薄膜線RL331及び銅薄膜線RL332がその最内周部の接続端子M33まで巻回され、接続端子M33及び接続端子M34に電流調整コンデンサCpが接続されている。なお、この電流調整コンデンサCpの容量の最適値については、後ほど第3実施例として説明する。以上の構造により、第3実施形態の受電コイルRC3としては、受電ループコイルRL31及び受電ループコイルRL32において外部接続端子O1と外部接続端子O2との間で電流が流れ、その電流値が電流調整コイルRL33及び電流調整コイルRL34並びに電流調整コンデンサCpにより調整される。
なお、第3実施形態の送電コイル及び受電コイルRC3の製造方法は、基本的には、第1実施形態の送電コイルTC1及び受電コイルRC1の上記製造方法と同様であるので、細部の説明は省略する。
第3実施例
次に、図12乃至図14に示す構成を有する第3実施形態の受電コイルRC3を用いた電力伝送システムにおいて、受電コイルの構成を変更した場合のインピーダンス等の計測結果(シミュレーション結果)について、第3実施例として上記表1を用いて説明する。また、当該受電コイルRC3を用いた電力伝送システムにおいて、電流調整コンデンサCpの容量を最適化するための実験結果(シミュレーション結果)についても、第3実施例として図15及び図16を用いて説明する。なお図15において、横軸は電流調整コンデンサCpの容量を示し、縦軸は受電コイルRC3としての伝送効率を示している。また図16において、横軸は電流調整コンデンサCpの容量を示しており、縦軸は電流調整コイルRL33(電流調整コイルRL34)及び受電ループコイルRL31(受電ループコイルRL32)それぞれにおける損失(銅損)を示している。
ここで、上記第3実施例との比較対象である第3従来例は、表1に例示するように、第3実施形態の受電コイルRC3に対して、電流調整コイルRL33及び電流調整コイルRL34以外の部分を、第2実施形態の受電コイルRC2(送電コイルTC2)と同様の構成としたものである。この結果、第3従来例の受電コイルでは、直列接続された電流調整コイルRL33及び電流調整コイルRL34を合わせた巻回数(十六回転)が、並列接続された送電ループコイル及び受電ループコイル等の巻回数(十回転)の整数倍になっておらず、よって、受電ループコイル等及び電流調整コイルを構成する銅薄膜線同士の位置が、その中心から見て重なる構成とはなっていない。
また、第3実施例の実験に供される第3実施形態の受電コイルRC3及び第3従来例の受電コイルそれぞれのその他の諸元は、以下の通りである。
・受電コイルRC3及び第3従来例の受電コイルの大きさ:長辺266ミリメートル×短辺160ミリメートル
・ピッチPT3(図12(b)及び図14参照):5.0ミリメートル(最外周部)~8.0ミリメートル(最内周部)
・銅薄膜線RL311等における銅薄膜線の厚さ:0.2ミリメートル
・送電コイルと受電コイルとの距離:40ミリメートル
・送電コイル及び受電コイルそれぞれと同じ厚さのフェライトシートを、送電コイル及び受電コイルそれぞれの対向面と反対の面に備えている。
そして表1にハッチングで示すように、第3実施形態の電力伝送システムによる電力伝送に用いられる周波数(85キロヘルツ)では、第3実施形態の受電コイルRC3を用いた方が、第3従来例の送電コイル及び受電コイルを用いる場合よりも、インピーダンス及びQ値において良好な性能であることが判る。即ち、上記受電コイルRC3のような構成(それぞれを構成する銅薄膜線が重なる構成)の方が、インピーダンス及びインダクタンスそれぞれの低減並びにQ値の向上について、より好ましいと言える。
また、図15及び図16にそれぞれ示すように、第3実施形態の電力伝送システムによる電力伝送に用いられる上記周波数では、電流調整コンデンサCpの容量が20マイクロファラッド以上である場合に、伝送効率が低下し、一方受電ループコイルRL31(受電ループコイルRL32)における銅損が減少している。以上のことから、上記周波数における電流調整コンデンサCpの容量としては、20マイクロファラッド以下であることが望ましいと言える。
以上それぞれ説明したように、第3実施形態の受電コイルRC3を含む第3実施形態の電力伝送システムを用いた電力伝送によれば、第1実施形態の電力伝送システムS及び第2実施形態の電力伝送システムを用いた電力伝送による効果に加えて、電流調整コイルRL33及び電流調整コイルRL34を更に備え、その平面視全体形状が、受電ループコイルRL31及び受電ループコイルRL32の平面視全体形状と同一の多角形(長方形)とされており、銅薄膜線TL311等を構成する少なくとも直線部の受電コイルRC3の中心から見た位置と、対応する銅薄膜線TL331等を構成する少なくとも直線部の当該中心から見た位置と、が平面視において一致している。よって、電流調整コイルRL33及び電流調整コイルRL34を備える場合でも、インピーダンスを低減することができ、軽量化及び低コスト化と、伝送効率の向上及び動作温度の上昇の防止と、を両立させることができる。
また、電流調整コイルRL33及び電流調整コイルRL34が受電ループコイルRL31及び受電ループコイルRL32と同じ位置に積層されているので、受電ループコイルRL31及び受電ループコイルRL32に流れる電流を効果的に調整しつつ、軽量化及び低コスト化と、伝送効率の向上及び動作温度の上昇の防止と、を両立させることができる。
更に、電流調整コイルRL33と電流調整コイルRL34とがその最外周端部で直列接続されており、その最内周部に電流調整コンデンサCpが接続されており、その容量が電力伝送の周波数に最適化されている(20マイクロファラッド以下とされている)ので、電流調整コンデンサCpを備える場合でも、軽量化及び低コスト化と、伝送効率の向上及び動作温度の上昇の防止と、を両立させることができる。
(D)第4実施形態
次に、本発明の第4実施形態について、図17及び図18を用いて説明する。なお、図17及び図18は第4実施形態のコイルの構造をそれぞれ示す平面図である。
上述した第1実施形態乃至第3実施形態の送電コイルTC1等(受電コイルRC1等)では、例えば送電ループコイルTL11における一巻回に含まれる四箇所の曲線部のうち一の曲線部のみにおいて、当該送電ループコイルTL11の巻回における一ピッチずつその直線部の位置が外周側又は内周側にずれるように(即ち巻回が外周側又は内周側に遷移するように)、当該送電ループコイルTL11を構成する銅薄膜線TL111及び銅薄膜線TL112が巻回されていた(例えば図4又は図10(b)参照)。これらに対し、以下に説明する第4実施形態の送電コイル(及び受電コイル)では、相互に積層されて送電コイル(及び受電コイル)を構成する送電ループコイル(及び受電ループコイル)における一巻回に含まれる四箇所の直線部のうち一の直線部のみにおいて、当該送電ループコイル(及び当該受電ループコイル)の巻回における一ピッチずつその直線部の位置が外周側又は内周側にずれるように(即ち巻回が外周側又は内周側に遷移するように)、当該送電ループコイル(及び当該受電ループコイル)を構成する銅薄膜線が巻回されている。これにより、第4実施形態の送電コイル(及び受電コイル)では、積層される送電ループコイル(及び受電ループコイル)同士の各巻回の、当該送電コイル(受電コイル)の中心から見た位置が平面視において一致する部分がより広くなるように構成されている。
なお、第4実施形態の送電コイル及び第4実施形態の受電コイルそれぞれの構成は基本的に同一であり、また、第4実施形態の受電コイルにおける受電ループコイル及び第4実施形態の送電コイルにおける送電ループコイルそれぞれの構成は同一である。よって以下の説明では、第4実施形態の送電コイルについてのみ、その構成について説明する。このとき、第1実施形態の送電コイルTC1と同一の構成部材については、同一の部材番号を付して細部の説明を省略する。
即ち、図17(a)にその平面図を示すように、第4実施形態の送電コイルTC4は、銅薄膜線TL411により構成されている送電ループコイルTL41と、図17(b)にその平面図を示す送電ループコイルTL42と、が、絶縁性のフィルムBFを介して図17の紙面に垂直な方向に積層されて構成される。また、送電ループコイルTL41を構成する銅薄膜線TL411の巻回の中心と、送電ループコイルTL42を構成する銅薄膜線TL421(図17(b)参照)の巻回の中心とは、相互に同一又は略同一とされている。
図17(a)に示すように、送電ループコイルTL41は、送電コイルTC4の一の層内(図17(a)に例示するフィルムBFの表面)で巻回されている銅薄膜線TL411により構成されており、その最外周部の一辺に、銅薄膜線TL411を図示しない送電部に接続する外部接続端子O1を有している。そして送電ループコイルTL41は、銅薄膜線TL411が、図17(a)において、その最外周部から時計方向に六回転(6ターン)巻回されて構成されており、銅薄膜線TL411の外周端部(図17(a)に示す場合は上辺部の中央)が上記外部接続端子O1に接続されている。また、銅薄膜線TL411の内周端部(図17(a)に示す場合は送電コイルTC4の中心側端部)は、フィルムBFを貫通するビアV11により、フィルムBFの裏面に形成されている送電ループコイルTL42を構成する銅薄膜線に接続されている。なお上記銅薄膜線TL411は、送電ループコイルTL41の全周に渡って同一幅及び同一厚さとされている。更に銅薄膜線TL411では、図17(a)におけるその上辺部、下辺部、左辺部及び右辺部それぞれに直線部が設けられており、それぞれの直線部が、略同心円弧状の曲線部により接続されている。
次に、上記フィルムBFを介して上記送電ループコイルTL41の直下に積層されている送電ループコイルTL42の構成について、図17(b)を用いて説明する。なお図17(b)は、当該送電ループコイルTL42のみを取り出して示す平面図である。
図17(b)にその平面図を示すように、フィルムBFを間に挟んで上記送電ループコイルTL41に積層される送電ループコイルTL42は、例えば銅薄膜線TL421により構成されている。このとき上述したように、送電ループコイルTL42を構成する銅薄膜線TL421の巻回の中心と、上記送電ループコイルTL41を構成する銅薄膜線TL411の巻回の中心とは、相互に同一又は略同一とされている。更に、送電ループコイルTL42の全体形状は、送電ループコイルTL41の全体形状と同一の略長方形状とされている。
図17(b)に示すように、送電ループコイルTL42は、送電コイルTC4の他の一の層内(図17(a)に例示するフィルムBFの裏面)で巻回されている上記銅薄膜線TL421により構成されており、その最外周部の一辺に、銅薄膜線TL421を上記図示しない送電部に接続する外部接続端子O2を有している。そして送電ループコイルTL42は、銅薄膜線TL421が、図17(b)においてその最内周部から時計方向に六回転(6ターン)巻回されて構成されており、銅薄膜線TL421の外周端部(図17(b)に示す場合は上辺部の中央)が上記外部接続端子O2に接続されている。一方、銅薄膜線TL421の内周端部(図17(b)に示す場合は送電コイルTC4の中心側端部)は、上記ビアV11により送電ループコイルTL41の銅薄膜線TL411に接続されている。なお上記銅薄膜線TL421は、送電ループコイルTL42の全周に渡って同一幅及び同一厚さとされている。更に銅薄膜線TL421では、図17(b)におけるその上辺部、下辺部、左辺部及び右辺部それぞれに直線部が設けられており、それぞれの直線部が、略同心円弧状の曲線部により接続されている。
次に、上記銅薄膜線TL411からなる上記送電ループコイルTL41と、上記銅薄膜線TL421からなる上記送電ループコイルTL42と、の位置関係について、図18を用いて説明する。なお図18は、送電ループコイルTL41と送電ループコイルTL42との重なり状況を示す平面図であり、送電ループコイルTL41(銅薄膜線TL411)を実線で、その直下にフィルムBF(図18において図示を省略している)を介して積層されている送電ループコイルTL42(銅薄膜線TL421)を破線で、それぞれ示している。
図18に実線で示すように、外周から内周に向けて巻回された銅薄膜線TL411からなり、且つその最内周部で、ビアV11により、送電ループコイルTL42を構成する銅薄膜線TL421と接続される送電ループコイルTL41では、その一巻回に含まれる四箇所の上記直線部のうち一の直線部(例えば、図18における上辺部)のみにおいて、銅薄膜線TL411の巻回における一のピッチPT4(図17(a)及び図18参照)ずつその直線部の位置が内周側にずれるように(即ち巻回が内周側に遷移するように)、銅薄膜線TL411が時計回りに巻回されている。これにより、送電ループコイルTL41においてその巻回が一のピッチPT4分内周側に遷移する直線部は、例えば、図17(a)及び図18における上辺部に外周側から内周側に並ぶ六つの直線部LA41であることになる。
これに対し、送電ループコイルTL41を構成する銅薄膜線TL411とビアV11によりその最内周部で接続される銅薄膜線TL421が内周から外周に向けて巻回されてなる送電ループコイルTL42では、図18に破線で示すように、その一巻回に含まれる四箇所の上記直線部のうち一の直線部(例えば、図18における上辺部)のみにおいて、銅薄膜線TL421の巻回における一ピッチPT4(図17(b)及び図18参照)ずつその直線部の位置が外周側にずれるように(即ち巻回が外周側に遷移するように)、銅薄膜線TL421が時計回り(即ち送電ループコイルTL41と同方向)に巻回されている。これにより、送電ループコイルTL42においてその巻回が一のピッチPT4分外周側に遷移する直線部は、例えば、図17(b)及び図18における上辺部に内周側から外周側に並ぶ六つの直線部LA42であることになる。そして、送電ループコイルTL41の図18中上辺の最外周部が、外側に突出した形状の外部接続端子O1に接続され、送電ループコイルTL42の図18中右辺の最外周部が、外側に突出した形状の外部接続端子O2に接続された形状とされている。
以上のような形状をそれぞれ備える送電ループコイルTL41と送電ループコイルTL42が図18に示すように積層されていることで、送電コイルTC4の中心から見た銅薄膜線TL411の位置と銅薄膜線TL421の位置は、それぞれの巻回が遷移する直線部並びに外部接続端子O1及び外部接続端子O2への接続部を除いて同一となっている。よって、送電コイルTC4としては、送電ループコイルTL41の各直線部(巻回の遷移部分を除く)及び各曲線部と、送電ループコイルTL42の各直線部(巻回の遷移部分を除く)及び各曲線部とが全て重なった状態で、送電ループコイルTL41と送電ループコイルTL42とがフィルムBFを挟んで積層されている。これにより、送電ループコイルTL41の最外周部(外部接続端子O1)から最内周部への時計方向の巻回に対して、同じ巻回方向となるように当該最内周部で送電ループコイルTL42が接続され、その巻回方向を維持したまま、送電ループコイルTL42が最内周部から最外周部へ巻回されている。この構造により、第4実施形態の送電コイルTC4としては、送電ループコイルTL41において最外周部から最内周部に向けて時計方向に電流が流れ、その電流が、送電ループコイルTL42において最内周部から最外周部に向けて同じ時計方向に流れる。
なお、第4実施形態の送電コイルTC4(及び受電コイル)の製造方法は、基本的には、第1実施形態の送電コイルTC1及び受電コイルRC1の上記製造方法と同様であるので、細部の説明は省略する。
第4実施例
次に、図17及び図18に示す構成を有する第4実施形態の送電コイルTC4(又は受電コイル)を用いた電力伝送システムとしての電力伝送の周波数を変更して送電コイルTC4(又は受電コイル)のQ値及びインピーダンスをそれぞれ計測した結果(シミュレーション結果)について、第4比較例の送電コイル(受電コイル)との比較において、第4実施例として図19乃至図21を用いて説明する。なお、図19及び図20は第4比較例のコイルの構造を示す平面図であり、図21は第4実施形態の送電コイルTC4(又は受電コイル)の構造による効果を示す図である。
ここで、上記第4実施例を説明する前に、その比較対象たる第4比較例の送電コイル又は受電コイルの構成について、図19及び図20を用いて、その概要を説明する。なお、第4比較例の送電コイルと受電コイルとは、基本的に同じ構成を備える。よって以下の説明では、第4比較例の送電コイルについて、その構造を説明する。また、図19及び図20は、第4実施形態の送電コイルTC4と同じ視点から見た場合の、第4比較例の送電コイルの構造を示す平面図である。このとき、図19及び図20において、第4実施形態の送電コイルTC4と同一の部材については、同一の部材番号を付して、細部の説明を省略する。
図19(a)にその平面図を示すように、第4比較例の送電コイルTC4Xは、銅薄膜線TL4X1により構成されている送電ループコイルTL4Xと、図19(a)において図示されない送電ループコイルTL4Yと、が、第4実施形態の送電コイルTC4と同様の絶縁性のフィルムBFを介して図19の紙面に垂直な方向に積層されて構成されている。このとき、送電ループコイルTL4Xを構成する銅薄膜線TL4X1の巻回の中心と、送電ループコイルTL4Yを構成する後述の銅薄膜線の巻回の中心とは、相互に同一又は略同一とされている。
図19(a)に示すように、送電ループコイルTL4Xは、送電コイルTC4Xの一の層内(図19(a)に例示するフィルムBFの表面)で巻回されている銅薄膜線TL4X1により構成されており、その最外周部の一辺に銅薄膜線TL4X1を図示しない送電部に接続する外部接続端子O1を有している。そして送電ループコイルTL4Xは、銅薄膜線TL4X1が、図19(a)において、その最外周部から時計方向に六回転(6ターン)巻回されて構成されており、銅薄膜線TL4X1の外周端部(図19(a)に示す場合は上辺部の中央)が上記外部接続端子O1に接続されている。また、銅薄膜線TL4X1の内周端部(図19(a)に示す場合は送電コイルTC4Xの中心側端部)は、フィルムBFを貫通するビアV11により、フィルムBFの裏面に形成されている送電ループコイルTL4Yを構成する銅薄膜線に接続されている。なお上記銅薄膜線TL4X1は、送電ループコイルTL4Xの全周に渡って同一幅及び同一厚さとされている。更に銅薄膜線TL4X1では、図19(a)におけるその上辺部、下辺部、左辺部及び右辺部それぞれに直線部が設けられており、それぞれの直線部が、略同心円弧状の曲線部により接続されている。
次に、上記フィルムBFを介して上記送電ループコイルTL4Xの直下に積層されている送電ループコイルTL4Yの構成について、図19(b)を用いて説明する。なお図19(b)は、当該送電ループコイルTL4Yのみを取り出して示す平面図である。
図19(b)にその平面図を示すように、フィルムBFを間に挟んで上記送電ループコイルTL4Xに積層される送電ループコイルTL4Yは、銅薄膜線TL4Y1により構成されている。このとき、送電ループコイルTL4Yを構成する銅薄膜線TL4Y1の巻回の中心と、上記送電ループコイルTL4Xを構成する銅薄膜線TL4X1の巻回の中心とは、相互に同一又は略同一とされている。更に、送電ループコイルTL4Yの全体形状は、送電ループコイルTL4Xの全体形状と同一の略長方形状とされている。
図19(b)に示すように、送電ループコイルTL4Yは、送電コイルTC4Xの他の一の層内(図19(a)に例示するフィルムBFの裏面)で巻回されている上記銅薄膜線TL4Y1により構成されており、その最外周部の一辺に、銅薄膜線TL4Y1を図示しない送電部に接続する外部接続端子O2を有している。そして送電ループコイルTL4Yは、銅薄膜線TL4Y1が、図19(b)においてその最内周部から時計方向に六回転(6ターン)巻回されて構成されており、銅薄膜線TL4Y1の外周端部(図19(b)に示す場合は上辺部の中央)が上記外部接続端子O2に接続されている。一方、銅薄膜線TL4Y1の内周端部(図19(b)に示す場合は送電コイルTC4Xの中心側端部)は、上記ビアV11により送電ループコイルTL4Xの銅薄膜線TL4X1に接続されている。なお上記銅薄膜線TL4Y1は、送電ループコイルTL4Yの全周に渡って同一幅及び同一厚さとされている。更に銅薄膜線TL4Y1では、図19(b)におけるその上辺部、下辺部、左辺部及び右辺部それぞれに直線部が設けられており、それぞれの直線部が、略同心円弧状の曲線部により接続されている。
次に、上記銅薄膜線TL4X1からなる上記送電ループコイルTL4Xと、上記銅薄膜線TL4Y1からなる上記送電ループコイルTL4Yと、の位置関係について、図20を用いて説明する。なお図20は、送電ループコイルTL4Xと送電ループコイルTL4Yとの重なり状況を示す平面図であり、送電ループコイルTL4Xを実線で、その直下にフィルムBF(図20において図示を省略している)を介して積層されている送電ループコイルTL4Yを破線で、それぞれ示している。
図20に実線で示すように、外周から内周に向けて巻回された銅薄膜線TL4X1からなり、且つその最内周部で、ビアV11により、送電ループコイルTL4Yを構成する銅薄膜線TL4Y1と接続される送電ループコイルTL4Xでは、その一巻回に含まれる四箇所の上記曲線部のうち一の曲線部(例えば、図20における左上角部分の曲線部)のみにおいて、銅薄膜線TL4X1の巻回における一のピッチPT4ずつその直線部の位置が内周側にずれるように(即ち巻回が内周側に遷移するように)、銅薄膜線TL4X1が時計回りに巻回されている。これにより、送電ループコイルTL4Xにおいてその巻回が一のピッチPT4分内周側に遷移する曲線部は、例えば、図19(a)及び図20における左上角部分に外周側から内周側に並ぶ六つの曲線部CV4Xであることになる。
これに対し、送電ループコイルTL4Xを構成する銅薄膜線TL4X1とビアV11によりその最内周部で接続される銅薄膜線TL4Y1が内周から外周に向けて巻回されてなる送電ループコイルTL4Yでは、図20に破線で示すように、その一巻回に含まれる四箇所の上記曲線部のうち一の曲線部(例えば、図20における左上角部分の曲線部)のみにおいて、銅薄膜線TL4Y1の巻回における一のピッチPT4ずつその直線部の位置が外周側にずれるように(即ち巻回が外周側に遷移するように)、銅薄膜線TL4Y1が時計回りに巻回されている。これにより、送電ループコイルTL4Yにおいてその巻回が一のピッチPT4分外周側に遷移する曲線部は、例えば、図19(b)及び図20における左上角部分に内周側から外周側に並ぶ六つの曲線部CV4Yであることになる。そして、送電ループコイルTL4Xの図20中上辺の最外周部が、外側に突出した形状の外部接続端子O1に接続され、送電ループコイルTL4Yの図20中上辺の最外周部が、外側に突出した形状の外部接続端子O2に接続された形状とされている。
以上のような形状をそれぞれ備える送電ループコイルTL4Xと送電ループコイルTL4Yが図20に示すように積層されていることで、送電コイルTC4Xの中心から見た銅薄膜線TL4X1の位置と銅薄膜線TL4Y1の位置は、図20に示すように二カ所の曲線部並びに外部接続端子O1及び外部接続端子O2への接続部において異なっている。よって、送電コイルTC4Xとしては、送電ループコイルTL4Xと、送電ループコイルTL4Yとが重ならない部分が第4実施形態の送電コイルTC4よりも多い状態で、送電ループコイルTL4Xと送電ループコイルTL4YとがフィルムBFを挟んで積層されている。これにより、送電ループコイルTL4Xの最外周部(外部接続端子O1)から最内周部への時計方向の巻回に対して、同じ巻回方向となるように当該最内周部で送電ループコイルTL4Yが接続され、その巻回方向を維持したまま、送電ループコイルTL4Yが最内周部から最外周部へ巻回されている。この構造により、第4比較例の送電コイルTC4Xとしては、送電ループコイルTL4Xにおいて最外周部から最内周部に向けて時計方向に電流が流れ、その電流が、送電ループコイルTL4Yにおいて最内周部から最外周部に向けて同じ時計方向に流れる。
そして、第4実施例の実験に供される第4実施形態の送電コイルTC4及び第4比較例の送電コイルTC4Xそれぞれのその他の諸元は、以下の通りである。なお以下の説明では、送電コイルTC4及び送電コイルTC4Xについての諸元を説明するが、実験に用いられた第4実施形態の受電コイルの諸元は送電コイルTC4の諸元と同一であり、第4比較例の受電コイルの諸元は送電コイルTC4Xの諸元と同一である。
・送電コイルTC4(及び第4実施形態の受電コイル)並びに送電コイルTC4X(及び第4従来例の受電コイル)の大きさ:160ミリメートル×260ミリメートル
・ピッチPT4:8ミリメートル
・銅薄膜線TL411等における銅薄膜線の厚さ:0.2ミリメートル
そして図21に示すように、電力伝送システムによる電力伝送に用いられる周波数(85キロヘルツ)の近辺では、第4実施形態の送電コイルTC4及び受電コイルを用いた方が、第4比較例の送電コイルTC4X及び受電コイルを用いる場合よりも、インピーダンスについて低くなり、よってQ値について良好な特性が得られている。
以上それぞれ説明したように、第4実施形態の送電コイルTC4及び第4実施形態の受電コイルを含む電力伝送システムを用いた電力伝送によれば、送電ループコイルTL41と送電ループコイルTL42それぞれの平面視全体形状が相互に同一の略長方形とされており、送電ループコイルTL41の各巻回の送電コイルTC4の中心から見た位置と、送電ループコイルTL42の各巻回の送電コイルTC4の中心から見た位置と、が平面視において一致している(図18参照)。よって、軽量化及び低コスト化のために銅薄膜線により送電コイルTC4及び第4実施形態の受電コイルを構成することに起因する、いわゆる表皮効果又は近接効果によるインピーダンスを低減することができ、軽量化及び低コスト化と、伝送効率の向上及び動作温度の上昇の防止と、を両立させることができる。
(E)第5実施形態
次に、本発明の第5実施形態について、図22及び図23を用いて説明する。なお、図22及び図23は第5実施形態のコイルの構造をそれぞれ示す平面図である。
上述した第1実施形態乃至第4実施形態の送電コイルTC1等(受電コイルRC1等)では、例えば送電ループコイルTL11におけるその巻回が一ピッチ分遷移する位置と、送電ループコイルTL12におけるその巻回が一ピッチ分遷移する位置と、が、送電コイルTC1の中心から見て異なるように、当該送電ループコイルTL11を構成する銅薄膜線TL111及び銅薄膜線TL112並びに当該送電ループコイルTL12を構成する銅薄膜線TL121及び銅薄膜線TL122がそれぞれ巻回されていた(例えば図4又は図10(b)参照)。これらに対し、以下に説明する第5実施形態の送電コイル(及び受電コイル)では、相互に積層されて送電コイル(及び受電コイル)を構成する送電ループコイル(及び受電ループコイル)における一巻回に含まれる四箇所の曲線部のうち一の曲線部のみにおいて、当該送電ループコイル(及び当該受電ループコイル)の巻回における一ピッチずつその直線部の位置が外周側又は内周側にずれるように(即ち巻回が外周側又は内周側に遷移するように)、当該送電ループコイル(及び当該受電ループコイル)を構成する銅薄膜線が巻回されている。これに加えて、第5実施形態の送電コイル(及び受電コイル)では、上記巻回遷移が行われる一の曲線部の位置が、送電コイル(及び受電コイル)の中心からみて同じ位置となるように、当該送電ループコイル(及び当該受電ループコイル)を構成する銅薄膜線が巻回されている。これにより、第5実施形態の送電コイル(及び受電コイル)では、積層される送電ループコイル(及び受電ループコイル)同士の各巻回の、当該一巻回における四箇所の直線部と三箇所の曲線部それぞれの当該送電コイル(受電コイル)の中心から見た位置が、平面視において一致するように構成されている。
なお、第5実施形態の送電コイル及び第5実施形態の受電コイルそれぞれの構成は基本的に同一であり、また、第5実施形態の受電コイルにおける受電ループコイル及び第5実施形態の送電コイルにおける送電ループコイルそれぞれの構成は同一である。よって以下の説明では、第5実施形態の送電コイルについてのみ、その構成について説明する。このとき、第1実施形態の送電コイルTC1と同一の構成部材については、同一の部材番号を付して細部の説明を省略する。
即ち、図22(a)にその平面図を示すように、第5実施形態の送電コイルTC5は、銅薄膜線TL511により構成されている送電ループコイルTL51と、図22(b)にその平面図を示す送電ループコイルTL52と、が、絶縁性のフィルムBFを介して図22の紙面に垂直な方向に積層されて構成される。また、送電ループコイルTL51を構成する銅薄膜線TL511の巻回の中心と、送電ループコイルTL52を構成する銅薄膜線TL521(図22(b)参照)の巻回の中心とは、相互に同一又は略同一とされている。
図22(a)に示すように、送電ループコイルTL51は、送電コイルTC5の一の層内(図22(a)に例示するフィルムBFの表面)で巻回されている銅薄膜線TL511により構成されており、その最外周部の一辺に、銅薄膜線TL511を図示しない送電部に接続する外部接続端子O1を有している。そして送電ループコイルTL51は、銅薄膜線TL511が、図22(a)において、その最外周部から反時計方向に五回転(5ターン)巻回されて構成されており、銅薄膜線T511の外周端部(図22(a)に示す場合は上辺部の右端部)が上記外部接続端子O1に接続されている。また、銅薄膜線TL511の内周端部(図22(a)に示す場合は送電コイルTC5の中心側端部)は、フィルムBFを貫通するビアV11により、フィルムBFの裏面に形成されている送電ループコイルTL52を構成する銅薄膜線に接続されている。なお上記銅薄膜線TL511は、送電ループコイルTL51の全周に渡って同一幅及び同一厚さとされている。更に銅薄膜線TL511では、図22(a)におけるその上辺部、下辺部、左辺部及び右辺部それぞれに直線部が設けられており、それぞれの直線部が、略同心円弧状の曲線部により接続されている。
次に、上記フィルムBFを介して上記送電ループコイルTL51の直下に積層されている送電ループコイルTL52の構成について、図22(b)を用いて説明する。なお図22(b)は、当該送電ループコイルTL52のみを取り出して示す平面図である。
図22(b)にその平面図を示すように、フィルムBFを間に挟んで上記送電ループコイルTL51に積層される送電ループコイルTL52は、例えば銅薄膜線TL521により構成されている。このとき上述したように、送電ループコイルTL52を構成する銅薄膜線TL521の巻回の中心と、上記送電ループコイルTL51を構成する銅薄膜線TL511の巻回の中心とは、相互に同一又は略同一とされている。更に、送電ループコイルTL52の全体形状は、送電ループコイルTL41の全体形状と同一の略正方形状とされている。
図22(b)に示すように、送電ループコイルTL52は、送電コイルTC5の他の一の層内(図22(a)に例示するフィルムBFの裏面)で巻回されている上記銅薄膜線TL521により構成されており、その最外周部の一辺に、銅薄膜線TL521を上記図示しない送電部に接続する外部接続端子O2を有している。そして送電ループコイルTL52は、銅薄膜線TL521が、図22(b)においてその最内周部から反時計方向に五回転(5ターン)巻回されて構成されており、銅薄膜線TL521の外周端部(図22(b)に示す場合は上右端部)が上記外部接続端子O2に接続されている。一方、銅薄膜線TL521の内周端部(図22(b)に示す場合は送電コイルTC5の中心側端部)は、上記ビアV11により送電ループコイルTL51の銅薄膜線TL511に接続されている。なお上記銅薄膜線TL521は、送電ループコイルTL52の全周に渡って同一幅及び同一厚さとされている。更に銅薄膜線TL521では、図22(b)におけるその上辺部、下辺部、左辺部及び右辺部それぞれに直線部が設けられており、それぞれの直線部が、略同心円弧状の曲線部により接続されている。
次に、上記銅薄膜線TL511からなる上記送電ループコイルTL51と、上記銅薄膜線TL521からなる上記送電ループコイルTL52と、の位置関係について、図23を用いて説明する。なお図23は、送電ループコイルTL51と送電ループコイルTL52との重なり状況を示す平面図であり、送電ループコイルTL51(銅薄膜線TL511)を実線で、その直下にフィルムBF(図23において図示を省略している)を介して積層されている送電ループコイルTL52(銅薄膜線TL521)を破線で、それぞれ示している。
図23に実線で示すように、外周から内周に向けて巻回された銅薄膜線TL511からなり、且つその最内周部で、ビアV11により、送電ループコイルTL52を構成する銅薄膜線TL521と接続される送電ループコイルTL51では、その一巻回に含まれる四箇所の上記曲線部のうち一の曲線部(例えば、図23における右上部)のみにおいて、銅薄膜線TL511の巻回における一のピッチPT5(図22(a)及び図23参照)ずつその直線部の位置が内周側にずれるように(即ち巻回が内周側に遷移するように)、銅薄膜線TL511が反時計回りに巻回されている。これにより、送電ループコイルTL51においてその巻回が一のピッチPT5分内周側に遷移する直線部は、例えば、図22(a)及び図23における右上部に外周側から内周側に並ぶ五つの曲線部CV51であることになる。
これに対し、送電ループコイルTL51を構成する銅薄膜線TL511とビアV11によりその最内周部で接続される銅薄膜線TL521が内周から外周に向けて巻回されてなる送電ループコイルTL52では、図23に破線で示すように、その一巻回に含まれる四箇所の上記曲線部のうち一の曲線部(例えば、図18における右上部)のみにおいて、銅薄膜線TL521の巻回における一ピッチPT5(図22(b)及び図23参照)ずつその直線部の位置が外周側にずれるように(即ち巻回が外周側に遷移するように)、銅薄膜線TL521が反時計回り(即ち送電ループコイルTL51と同方向)に巻回されている。これにより、送電ループコイルTL52においてその巻回が一のピッチPT5分外周側に遷移する曲線部は、例えば、図22(b)及び図23における右上部に内周側から外周側に並ぶ五つの曲線部CV52であることになる。そして、送電ループコイルTL51の図23中上辺の右端部が、外側に突出した形状の外部接続端子O1に接続され、送電ループコイルTL52の図23中上右端部が、外側に突出した形状の外部接続端子O2に接続された形状とされている。
以上のような形状をそれぞれ備える送電ループコイルTL51と送電ループコイルTL52が図23に示すように積層されていることで、送電コイルTC5の中心から見た銅薄膜線TL511の位置と銅薄膜線TL521の位置は、それぞれの巻回が遷移する一の曲線部並びに外部接続端子O1及び外部接続端子O2への接続部を除いて同一となっている。よって、送電コイルTC5としては、送電ループコイルTL51の各直線部及び各曲線部(巻回の遷移部分を除く)と、送電ループコイルTL52の各直線部及び各曲線部(巻回の遷移部分を除く)とが全て重なった状態で、送電ループコイルTL51と送電ループコイルTL52とがフィルムBFを挟んで積層されている。これにより、送電ループコイルTL51の最外周部(外部接続端子O1)から最内周部への反時計方向の巻回に対して、同じ巻回方向となるように当該最内周部で送電ループコイルTL52が接続され、その巻回方向を維持したまま、送電ループコイルTL52が最内周部から最外周部へ巻回されている。この構造により、第5実施形態の送電コイルTC5としては、送電ループコイルTL51において最外周部から最内周部に向けて反時計方向に電流が流れ、その電流が、送電ループコイルTL52において最内周部から最外周部に向けて同じ時計方向に流れる。
なお、第5実施形態の送電コイルTC5(及び受電コイル)の製造方法は、基本的には、第1実施形態の送電コイルTC1及び受電コイルRC1の上記製造方法と同様であるので、細部の説明は省略する。
第5実施例
次に、図22及び図23に示す構成を有する第5実施形態の送電コイルTC5(又は受電コイル)を用いた電力伝送システムとしての電力伝送の周波数を変更して送電コイルTC5(又は受電コイル)のインダクタンス、インピーダンス及びQ値をそれぞれ計測した結果(シミュレーション結果)について、第5比較例の送電コイル(受電コイル)との比較において、第5実施例として図24乃至図26を用いて説明する。なお、図24及び図25は第5比較例のコイルの構造を示す平面図であり、図26は第5実施形態の送電コイルTC5(又は受電コイル)の構造による効果を示す図である。
ここで、上記第5実施例を説明する前に、その比較対象たる第5比較例の送電コイル又は受電コイルの構成について、図24及び図25を用いて、その概要を説明する。なお、第5比較例の送電コイルと受電コイルとは、基本的に同じ構成を備える。よって以下の説明では、第5比較例の送電コイルについて、その構造を説明する。また、図24及び図25は、第5実施形態の送電コイルTC5と同じ視点から見た場合の、第5比較例の送電コイルの構造を示す平面図である。このとき、図24及び図25において、第5実施形態の送電コイルTC5と同一の部材については、同一の部材番号を付して、細部の説明を省略する。
図24(a)にその平面図を示すように、第5比較例の送電コイルTC5Xは、銅薄膜線TL5X1により構成されている送電ループコイルTL5Xと、図24(a)において図示されない送電ループコイルTL5Yと、が、第5実施形態の送電コイルTC5と同様の絶縁性のフィルムBFを介して図24の紙面に垂直な方向に積層されて構成されている。このとき、送電ループコイルTL5Xを構成する銅薄膜線TL5X1の巻回の中心と、送電ループコイルTL5Yを構成する後述の銅薄膜線の巻回の中心とは、相互に同一又は略同一とされている。
図24(a)に示すように、送電ループコイルTL5Xは、送電コイルTC5Xの一の層内(図24(a)に例示するフィルムBFの表面)で巻回されている銅薄膜線TL5X1により構成されており、その最外周部の一辺に銅薄膜線TL5X1を図示しない送電部に接続する外部接続端子O1を有している。そして送電ループコイルTL5Xは、銅薄膜線TL5X1が、図24(a)において、その最外周部から反時計方向に五回転(5ターン)巻回されて構成されており、銅薄膜線TL5X1の外周端部(図24(a)に示す場合は上辺部の中央)が上記外部接続端子O1に接続されている。また、銅薄膜線TL5X1の内周端部(図24(a)に示す場合は送電コイルTC5Xの中心側端部)は、フィルムBFを貫通するビアV11により、フィルムBFの裏面に形成されている送電ループコイルTL5Yを構成する銅薄膜線に接続されている。なお上記銅薄膜線TL5X1は、送電ループコイルTL5Xの全周に渡って同一幅及び同一厚さとされている。更に銅薄膜線TL5X1では、図24(a)におけるその上辺部、下辺部、左辺部及び右辺部それぞれに直線部が設けられており、それぞれの直線部が、略同心円弧状の曲線部により接続されている。
次に、上記フィルムBFを介して上記送電ループコイルTL5Xの直下に積層されている送電ループコイルTL5Yの構成について、図24(b)を用いて説明する。なお図24(b)は、当該送電ループコイルTL5Yのみを取り出して示す平面図である。
図24(b)にその平面図を示すように、フィルムBFを間に挟んで上記送電ループコイルTL5Xに積層される送電ループコイルTL5Yは、銅薄膜線TL5Y1により構成されている。このとき、送電ループコイルTL5Yを構成する銅薄膜線TL5Y1の巻回の中心と、上記送電ループコイルTL5Xを構成する銅薄膜線TL5X1の巻回の中心とは、相互に同一又は略同一とされている。更に、送電ループコイルTL5Yの全体形状は、送電ループコイルTL5Xの全体形状と同一の略正方形状とされている。
図24(b)に示すように、送電ループコイルTL5Yは、送電コイルTC5Xの他の一の層内(図24(a)に例示するフィルムBFの裏面)で巻回されている上記銅薄膜線TL5Y1により構成されており、その最外周部の一辺に、銅薄膜線TL5Y1を図示しない送電部に接続する外部接続端子O2を有している。そして送電ループコイルTL5Yは、銅薄膜線TL5Y1が、図24(b)においてその最内周部から時計方向に五回転(5ターン)巻回されて構成されており、銅薄膜線TL5Y1の外周端部(図24(b)に示す場合は上辺部の中央)が上記外部接続端子O2に接続されている。一方、銅薄膜線TL5Y1の内周端部(図24(b)に示す場合は送電コイルTC5Xの中心側端部)は、上記ビアV11により送電ループコイルTL5Xの銅薄膜線TL5X1に接続されている。なお上記銅薄膜線TL5Y1は、送電ループコイルTL5Yの全周に渡って同一幅及び同一厚さとされている。更に銅薄膜線TL5Y1では、図24(b)におけるその上辺部、下辺部、左辺部及び右辺部それぞれに直線部が設けられており、それぞれの直線部が、略同心円弧状の曲線部により接続されている。
次に、上記銅薄膜線TL5X1からなる上記送電ループコイルTL5Xと、上記銅薄膜線TL5Y1からなる上記送電ループコイルTL5Yと、の位置関係について、図25を用いて説明する。なお図25は、送電ループコイルTL5Xと送電ループコイルTL5Yとの重なり状況を示す平面図であり、送電ループコイルTL5Xを実線で、その直下にフィルムBF(図25において図示を省略している)を介して積層されている送電ループコイルTL5Yを破線で、それぞれ示している。
図25に実線で示すように、外周から内周に向けて巻回された銅薄膜線TL5X1からなり、且つその最内周部で、ビアV11により、送電ループコイルTL5Yを構成する銅薄膜線TL5Y1と接続される送電ループコイルTL5Xでは、その一巻回に含まれる四箇所の上記曲線部のうち一の曲線部(例えば、図25における右上角部分の曲線部)のみにおいて、銅薄膜線TL5X1の巻回における一のピッチPT5ずつその直線部の位置が内周側にずれるように(即ち巻回が内周側に遷移するように)、銅薄膜線TL5X1が反時計回りに巻回されている。これにより、送電ループコイルTL5Xにおいてその巻回が一のピッチPT5分内周側に遷移する曲線部は、例えば、図24(a)及び図25における左上角部分に外周側から内周側に並ぶ五つ曲線部CV5Xであることになる。
これに対し、送電ループコイルTL5Xを構成する銅薄膜線TL5X1とビアV11によりその最内周部で接続される銅薄膜線TL5Y1が内周から外周に向けて巻回されてなる送電ループコイルTL5Yでは、図25に破線で示すように、その一巻回に含まれる四箇所の上記曲線部のうち一の曲線部(例えば、図25における左上角部分の曲線部)のみにおいて、銅薄膜線TL5Y1の巻回における一のピッチPT5ずつその直線部の位置が外周側にずれるように(即ち巻回が外周側に遷移するように)、銅薄膜線TL5Y1が時計回りに巻回されている。これにより、送電ループコイルTL5Yにおいてその巻回が一のピッチPT5分外周側に遷移する曲線部は、例えば、図24(b)及び図24における左上角部分に内周側から外周側に並ぶ五つの曲線部CV5Yであることになる。そして、送電ループコイルTL5Xの図25中上辺の最外周部が、外側に突出した形状の外部接続端子O1に接続され、送電ループコイルTL5Yの図25中上辺の最外周部が、外側に突出した形状の外部接続端子O2に接続された形状とされている。
以上のような形状をそれぞれ備える送電ループコイルTL5Xと送電ループコイルTL5Yが図25に示すように積層されていることで、送電コイルTC5Xの中心から見た銅薄膜線TL5X1の位置と銅薄膜線TL5Y1の位置は、図25に示すように二カ所の曲線部並びに外部接続端子O1及び外部接続端子O2への接続部において異なっている。よって、送電コイルTC5Xとしては、送電ループコイルTL5Xと、送電ループコイルTL5Yとが重ならない部分が第5実施形態の送電コイルTC5よりも多い状態で、送電ループコイルTL5Xと送電ループコイルTL5YとがフィルムBFを挟んで積層されている。これにより、送電ループコイルTL5Xの最外周部(外部接続端子O1)から最内周部への時計方向の巻回に対して、同じ巻回方向となるように当該最内周部で送電ループコイルTL5Yが接続され、その巻回方向を維持したまま、送電ループコイルTL5Yが最内周部から最外周部へ巻回されている。この構造により、第5比較例の送電コイルTC5Xとしては、送電ループコイルTL5Xにおいて最外周部から最内周部に向けて時計方向に電流が流れ、その電流が、送電ループコイルTL5Yにおいて最内周部から最外周部に向けて同じ時計方向に流れる。
そして、第5実施例の実験に供される第5実施形態の送電コイルTC5及び第5比較例の送電コイルTC5Xそれぞれのその他の諸元は、以下の通りである。なお以下の説明では、送電コイルTC5及び送電コイルTC5Xについての諸元を説明するが、実験に用いられた第5実施形態の受電コイルの諸元は送電コイルTC5の諸元と同一であり、第5比較例の受電コイルの諸元は送電コイルTC5Xの諸元と同一である。
・送電コイルTC5(及び第5実施形態の受電コイル)並びに送電コイルTC5X(及び第5従来例の受電コイル)の大きさ:300ミリメートル×300ミリメートル
・ピッチPT5:18ミリメートル
・銅薄膜線TL511等における銅薄膜線の厚さ:0.2ミリメートル
そして図26に示すように、電力伝送システムによる電力伝送に用いられる周波数(85キロヘルツ)の近辺では、第5実施形態の送電コイルTC5及び受電コイルを用いた方が、第5比較例の送電コイルTC5X及び受電コイルを用いる場合よりも、インダクタンスにおいて高く、またインピーダンスについて低くなり、よってQ値について良好な特性が得られている。
以上それぞれ説明したように、第5実施形態の送電コイルTC5及び第5実施形態の受電コイルを含む電力伝送システムを用いた電力伝送によれば、送電ループコイルTL51と送電ループコイルTL52それぞれの平面視全体形状が相互に同一の略正方形とされており、送電ループコイルTL51の各巻回の送電コイルTC5の中心から見た位置と、送電ループコイルTL52の各巻回の送電コイルTC5の中心から見た位置と、が平面視において一致している(図23参照)。よって、軽量化及び低コスト化のために銅薄膜線により送電コイルTC5及び第5実施形態の受電コイルを構成することに起因する、いわゆる表皮効果又は近接効果によるインピーダンスを低減することができ、軽量化及び低コスト化と、伝送効率の向上及び動作温度の上昇の防止と、を両立させることができる。
変形形態
次に、本発明の変形形態について説明する。上述した各実施形態の電力伝送システムの構成については、以下の(A)及び(B)に示すような変形を加えてもよい。本発明では、当該各変形を加えても、上記電力伝送システムと同等の効果を奏し得る。
(A)第1変形形態
初めに、第1変形形態として、第2実施形態の電力伝送システムにおいて、電流調整コイルTL23は、送電ループコイルTL21と送電ループコイルTL22の間以外の位置であれば、送電コイルTC2において受電装置R側に積層されていてもよいし、受電装置Rと反対側に積層されていてもよい。
(B)第2変形形態
次に、第2変形形態として、第3実施形態の電流調整コイルRL33及び電流調整用コイルRL34と、受電ループコイルRL31及び受電ループコイルRL32の位置関係については、受電ループコイルRL31及び受電ループコイルRL32が電流調整コイルRL33及び電流調整用コイルRL34に対して送電装置T側(即ち対向する側)に積層されているのが好ましい。
(C)第3変形形態
次に、第3変形形態として、第2実施形態の送電ループコイルTL21と送電ループコイルTL22を並列接続した巻回数が、電流調整コイルRL23の巻回数に対して二倍以上の整数倍であってもよい。また、第3実施形態の電流調整コイルRL33及び電流調整用コイルRL34を直列接続した巻回数が、受電ループコイルRL31と受電ループコイルRL32を並列接続した巻回数の三倍以上の整数倍であってもよい。いずれの場合でも、それぞれを構成する銅薄膜線が重なる構成となり、各実施形態と同様の効果が期待できる。