以下、本発明の実施例1に関する説明を行う。本実施例1では、製造ライン(製造工程)での不良に対する要因推定を例に説明する。このため、周辺データの例として、製造の要素を示す4M(Man、Machine、Material、Method))の変動度合い(4Mトレンド)を用いるものとする。なお、本実施例では、4Mトレンドを用いるが、他の変動トレンドを用いてもよい。
本実施例を適用する製造ラインの例を、図2に示す。図2では、ワーク206はベルトコンベア205上を移動している。そして、ワーク206がある所定の位置に到達したらロボット203がワーク206をロボット先端のハンドでつかみ上げ、格納箱204に格納する。この製造ラインでは、この一連の動きを、繰り返す。
また、ロボット先端のハンド付近の拡大図を、図2の207に示す。これは、ワーク206(把持物)とロボット203の先端のハンドとの間でずれが生じた際の状況の例を、図示したものである。ワーク206(把持物)とロボット203の先端のハンドとの間でずれが生じ、ワーク206がロボット203の先端のハンドでつかみ切れず、ワークが落下する様子を示している。本実施例の製造ラインにおける不良として、このワークの落下が一例として挙げられる。
この不良が発生した際、作業者201は、ロボット203やベルトコンベア205の動作状況を確認し、ワーク206である把持物の把持状態を確認する。この結果、不良(エラー)が発生した場合、表示・入力端末202を介して、その内容や対策を報告する。また、作業者201は、表示・入力端末202を介して、不良に関する情報を入手可能である。
この製造工程や4Mの内容の説明のために、まず、本実施例の従来技術における要因推定技術を説明し、次に、本実施例を、図面を用いて説明する。
図5は、図2などで示される製造ラインで用いられる、従来のHuman-in-the-loop(HITL)機械学習を活用した要因推定システム500の機能構成を示す例である。なお、本実施例においても、同様にHITL機械学習を活用する。
HITL機械学習を活用した要因推定システム500は、不良パタン107を受け付け、学習済み統計モデル部106、要因絞り込み部102、要因表示・対策入力機能部103、モデル再学習部105を有する。
要因推定システム500は、いわゆるコンピュータシステムで実現されるものである。このため、後述する本実施例の要因推定システム100と似たハードウェア構成である(図15参照)。つまり、不良パタン107を受け付ける入出力部13を備える。そして、要因推定システム500、要因絞り込み部102、モデル再学習部105の各機能は、処理部11で実現できる。そして、学習済み統計モデル部106は、学習済み統計モデル501を記憶する記憶部12ないしバス等の通信路15や内部ネットワーク14を介して接続されるデータベース16で実現できる。また、要因表示・対策入力機能部103は、無線通信を介して接続された表示・入力端末202で実現できる。なお、本実施例では、表示・入力端末202は、無線通信を介した構成としたが、通信路15や内部ネットワーク14を介して接続する構成としてもよい。
以下、各構成の機能について、説明する。なお、従来技術の要因推定システム500は、本実施例の要因推定システム100と比較して、4M潮流判定部104と4M潮流ナレッジ部108がなく、扱っている情報が一部異なっている。このため、従来の要因推定システム500の構成においても、一部本実施例の機能として説明を行う。このため、後述する本実施例の要因推定システム100の説明においては、要因推定システム500との相違点を中心に説明する。
まず、要因絞り込み部102は、不良パタン107の情報をもとに、不良の要因を選択する部位である。一つの例として、不良パタンがロボット203の”PICK NG”である場合、後述する学習済み統計モデル部106を探索し、不良要因として” ロボット先端のハンドの把持パラメータとワークのサイズの不一致”を抽出する。
要因表示・対策入力機能部103は、要因絞り込み部102によって絞り込まれた不良の要因を表示し、現場での対策結果を入力する部位である。これは、図2に示した表示・入力端末202に表示される内容であり、この一例を図4に示す。
この表示は、要因絞り込み部102によって絞り込まれた不良の要因を示す要因表示領域403を含む。図4では、要因表示領域403の一の例として、不良要因として”ロボット先端のハンドの把持パラメータとワークのサイズの不一致”を表示する。
現場対策記録領域404は、作業者201が現場で実際に対策した内容であって、入力インターフェースを介して作業者201から入力される内容を受け付ける。図4の例では、”ロボット先端のハンドの把持パラメータの再調整”が入力される。
次に、図5に戻り、モデル再学習部105について、説明する。モデル再学習部105は、不良パタン107や現場対策記録領域404を介して入力された内容をもとに、学習済み統計モデル部106に格納された学習済み統計モデル501を再学習する。
ここで、モデル再学習部105における再学習の方法を、図7を用いて説明する。図7は、モデル再学習部105の処理の流れを示したフローチャートの一例である。
まず、ステップS701で本処理が開始されると、ステップS702において、モデル再学習部105は、学習済み統計モデル部106から学習済み統計モデル501を読み出す。図8に、この学習済み統計モデル501の一例を示す。図8に示すように、学習済み統計モデル501は、不良パタン、対策、それらに対応する重みを格納する表形式のデータである。
図7に戻り、処理の内容について説明を続ける。ステップS703では、モデル再学習部105は、学習済み統計モデル501に対して不良パタン列を探索し、ロボットのPICK NGを検索する。つまり、後述する図6に示すエラー内容に対応する情報を探索する。
次に、ステップS704では、モデル再学習部105は、探索した不良パタンが合致するか判断する。つまり、モデル再学習部105は、学習済み統計モデル501にPICK NGが含まれるかを判断する。本例では含まれる(YES)のため、ステップS706に遷移する。
なお、モデル再学習部105が、学習済み統計モデル501にPICK NGが含まれていない(NO)と判断した場合には、ステップS705に進む。ステップS705において、モデル再学習部105は、学習済み統計モデル501の不良列にロボットのPICK NGを追加する。
また、ステップS706では、モデル再学習部105は、学習済み統計モデル501の対策列を探索し、ロボット先端のハンドの把持パラメータの再調整を探す。これは、不良パタンPICK NGに関連する保持パラメータの再調整を探索することを意味する。
次に、ステップS707では、モデル再学習部105は、対策列が合致するか判断する。上述の例では、合致(YES)のため、ステップS709に遷移する。なお、合致しない場合(NO)には、ステップS708に進み、モデル再学習部105は、対策列にロボット先端のハンドの把持パラメータの再調整を追加する。
次に、ステップS709では、モデル再学習部105は、ロボット先端のハンドの把持パラメータの再調整の重みを+1する。そして、ステップS710では、モデル再学習部105は、学習済み統計モデル501を保存する。以上で、処理を終了(S711)する。
以上のように、モデル再学習部105の処理により、学習済み統計モデルの#13の重みが+1される。
次に、要因絞り込み部102では、上記で重みを更新した学習済み統計モデル501を用い、要因絞り込みの際の参考情報とする。具体的には、不良パタン107が要因絞り込み部102に入力された場合、学習済み統計モデル501内の対応する要因が複数ある場合、より重みが多い行の要因を選択し絞り込む。
なお、異常のHITL機械学習の一例は、要因対策表をベースに現場での実績から重みづけを更新していくものだったが、HITLの実現はこれには限定されない。例えば不良パタンを入力とし対策を出力にとり、間のニューロンの遷移パラメタ(重みづけ)を最適化するニューラルネットワークの考え方で実現する例がある。また、不良パタンを入力とし、バイナリツリー(二分木)で条件を探索していき、最終的に対策を表すノードに到達するバイナリツリーにおいて、その頂点から分岐するスレショルドを最適化する考え方で実現する方法がある。これらのように、HITLを、一般的な多変量解析手法、統計的手法、機械学習手法で実現可能である。このことは、後述する本実施例でも同様である。
なお、これまで説明した従来の要因推定システム500における課題を、以下に説明する。
図9は、供給装置901を持つ製造ラインの例である。製造ライン900は、図2で示した製造ライン200に対し、ワーク206を供給する供給装置901を追加した製造ラインである。
供給装置901は、例えば、ワーク206を一定の速度で運び、ベルトコンベア205上の決まった位置にワーク206を置く。一例として、ベルトコンベア205の中心にワーク206を置く。ここで、供給装置901のワーク206を運ぶ速度が何らかの理由で変化したとする。例えば、供給装置901のモータの劣化などによる。ベルトコンベア205上の決まった位置にワーク206がセットされない。
このため、ワーク206とロボット203の先端のハンドとの間でずれが生じ、ワーク206がロボット203の先端のハンドでつかみ切れず、ワークが落下する。ここで、従来の要因推定システム500においては、図2示したように、不良パタン”ロボット PICK NG”からロボット先端のハンドの把持パラメータとワークのサイズの不一致を要因として絞り込んでしまう。このため、作業者201は、表示・入力端末202に、ロボット先端のハンドの把持パラメータの再調整を対策として打ってしまう。または、重みづけの状況によっては、ロボットハンドの先端部摩耗を要因として推定し、ハンド先端部材交換を現場では対策を打ってしまう。
いずれにしろ、図9の製造ライン900では、供給装置901のモータの劣化によるワーク206の搬送速度の変化が要因であるにも係わらず、作業者201は、ロボット先端のハンドもしくはハンドとワーク206の関係を要因として疑い、対策を打ってしまう。このように、作業者201が作業する製造現場においては、要因に対する対策が必ずしも一対一の関係ではない(一致しない)ことや、現場での対策が必ずしも正確ではないことがある。例えば、マシン依存の不良が長く出ているのに、部品(Material)要因を疑って対策し続けてしまう。また、他の例として、不良パタンが出る箇所と要対策箇所が離れている場合もある。このため、誤った対策で学習し続けるため、システム支援が逆効果となる可能性があり、従来の要因推定システム500においては、これら課題は解決されない。
以上のように、図5に一例を示した、従来のHITL機械学習を活用した要因推定システム500を製造現場で用いることにより、不良パタンに対して要因が複数考えられる場合においては、以下の課題があった。以前は作業者201がそれまでの経験などから要因を推定し対策していたため属人化し、短TATで不良対策を完了できるまでに経験を要した。また、不良対策を完了するまでに時間を要する課題があった。これに対し、本実施例では、現場での要因と対策の情報を蓄積することで、過去の実績から対策を打つことができ、作業者の経験によらず、短TATでの不良対策を可能とした。
次に、これらの課題を解決する本実施例について、説明する。図1に、本実施例の要因推定システム100の機能構成の一例を示す。
本実施例の要因推定システム100は、不良パタン107や人の操作、ログ、センサからのセンサデータなどの各種情報を受け付ける。そして、要因推定システム100は上述のとおり、要因推定システム500に対し、4M潮流判定部104と4M潮流ナレッジ部108を有する。
ここで、要因推定システム100のハードウェア構成について説明する。図15に、要因推定システム100のハードウェア構成の一例を示す。上述のように、要因推定システム100は、サーバ装置のようなコンピュータシステムで実現可能である。このため、要因推定システム100は、処理部11、記憶部12、入出力部13を有する。そして、要因推定システム100は、入出力部13と接続される通信路15を介して、内部ネットワーク14に接続されている。なお、内部ネットワーク14とは、製造ライン200や900で用いられることを意味しており、本要因推定システム100をクラウド上に実装する場合などでは、インターネットのような広域ネットワークを用いてもよい。
そして、要因推定システム100は、内部ネットワーク14を介して、製造ラインのセンサ17と接続し、入出力部13を介してセンサデータを取得可能である。また、要因推定システム100は、入出力部13と接続される通信路15を介して、データベース16と接続されている。このため、要因推定システム100は、入出力部13を介して、学習済み統計モデル501、ログ、4M潮流ナレッジへのアクセスが可能になる。さらに、要因推定システム100は、無線通信を介して、要因表示・対策入力機能部103、つまり、表示・入力端末202と接続可能である。表示・入力端末202は、無線通信を介した構成としたが、通信路15や内部ネットワーク14を介して接続する構成としてもよい。また、表示・入力端末202は、スマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータ等の端末装置として、実現できる。
ここで、処理部11は、CPUのような演算部で実現でき、要因絞り込み部102、4M潮流判定部104、モデル再学習部105を有する。これらは、メモリのような記憶部12に格納されたプログラムに従った演算で実現できる。つまり、要因絞り込み部102、4M潮流判定部104、モデル再学習部105は、コンピュータプログラムとして、実装が可能である。
次に、図1に戻り、その内容について説明する。なお、以下では、図5を用いて説明した要因推定システム500と重複する内容については、その内容を省略する。
不良パタン107は、例えば工場の製造ラインなどにおいて、事前の設定や設計通りに生産されなかった際の生産状態を示す情報である。図3に、ワーク落下の際の不良パタン107の一例を示す。図3は、製造ライン200(もしくは製造ライン900、以下同様)における不良パタン107は、例えばロボット203が出力する動作ログ情報が一つの例である。ロボット先端のハンドでつかめたかつかめられなかったかの状態を、日時とともにテキストデータとして生成されるものである。製造ライン200や900における不良発生の際の不良ログ301は、ワーク206がロボット203の先端のハンドでつかみ切れず、ワークが落下したことをロボット203が感知し、”PICK NG”という文字列で不良状態をログに記録した一つの例である。不良パタン107は、事前の設定や設計通りに生産されなかった際の生産状態を示す情報であり、不良ログ301のようにOK/NGという文字列で示されることもある。以上が、ワーク落下時の不良パタン107の一例である。また、不良の様を映したカメラ画像や動画、何らかの物理量をセンサで捉えたセンサ情報も、不良パタンの例として挙げられる。
図2の製造ライン200において、ワーク落下が発生した場合、製造ライン200では製造が停止し、作業者201にその状態が(図2には図示されない)有色ライトの点灯や電子メールなどの通知手段で通知される。
作業者201は、製造ライン200や不良ログ301の情報を確認し、ロボット203の先端のハンドでつかみ切れず、ワークが落下したと認識する。ここで、作業者201は、データベース16に格納されたログ中の不良ログ301から、以下のように不良である落下の要因を推定したとする。例えば、製造ライン200を設計したCAD(Computer Aided Design)ソフトの入力情報に誤りがあり、ワーク206のサイズが微妙に小さいためワーク落下が発生した。この場合、作業者201は、ロボット203の先端のハンドの把持パラメータを再調整する。再調整が終了したら、製造ライン200は生産を再開する。
表示・入力端末202は、こういった製造ライン200における製造不良の状態を表示したり、また、作業者201が推定した不良の要因、また現場での対策内容を記録したりする場合がある。ここで、表示・入力端末202の表示内容は、上述した図4と同じである。以下、その詳細を説明する。不良発生個所表示領域401は、不良ログ301を(図示されない)別のコンピュータなどで受信し、ロボット203の不良とラベルを付け、表示・入力端末202に送信した結果を表示している。不良発生時刻表示領域402は、不良発生個所表示部401同様、不良ログ301を(図示されない)別のコンピュータなどで受信し、時刻情報、エラー内容を表示・入力端末202に送信した結果を表示している。
また、要因表示領域403は、一つの例として、作業者201が、不良発生時刻表示領域402に表示されるエラー内容”PICK NG”を確認し、”ロボット先端のハンドの把持パラメータとワークのサイズの不一致”と入力した例を示す。なお、要因表示領域403の変形例を、図6を用いて説明する。
図6は、表示・入力端末202における不良要因表示領域の変形例を示す図である。表示・入力端末202は、図4の要因表示領域403に代わり、不良要因リスト表示領域1501を用いる。表示・入力端末202は、不良発生個所表示領域401と不良発生時刻表示領域402の情報から、データベース16を検索して、ロボット先端のハンドの把持パラメータとワークのサイズの不一致であると要因を推定する。なお、本推定は、要因推定システム100の処理部11が実行してもよい。
そして、表示・入力端末202は、不良要因リスト表示領域1501に”ロボット先端のハンドの把持パラメータとワークのサイズの不一致”と表示する。この結果、作業者201が不良要因リスト表示領域1501の表示内容を確認し、チェックボックスなどにチェックを入力することが可能になる。
図4に戻り、その表示内容の説明を行う。現場対策記録領域404は、一つの例として、作業者201が現場で実際に対策し、表示・入力端末202を介して記録した内容を表示する。現場対策記録領域404の他の例としては、要因推定システム100の処理部11もしくは表示・入力端末202が、あらかじめ対策内容をリストの形で記憶しておく。そして、処理部11もしくは表示・入力端末202が、それをリストの形で現場対策記録領域404に一覧表示することで、作業者201に選択させる例も考えられる。表示・入力端末202では、現場対策記録領域404への作業者201の入力や選択が完了したのち、これらの情報を、表示・入力端末202もしくはデータベース16に記憶する。このために、表示・入力端末202は、作業者201からOKボタンの選択を受け付ける。
これら現場で入力された情報を生かし、本実施例のおける要因推定システム100が、不良パタン107の発生に対し、その要因を推定する。また、要因推定システム100は、対策を容易化する方法として、要因の推定結果を、表示・入力端末202に表示させる。この結果、表示・入力端末202は、作業者201は、その内容を参照して、表示・入力端末202に、実際の対策結果を入力する。以下、図1に戻り、この要因推定システム100について、HITLに活用した例を用いて、説明する。
図1に示す4M情報101は、例えば、製造ライン900の要素であり、4Mを示す4M情報(Man、Machine、Material、Method)である。この4M情報101は、製造ラインにおけるセンサからのセンサデータ、作業者201等の製造ラインに対する操作やログの組み合わせでも実現できる。本実施例では、図9の製造ライン900において、ロボット203の先端のハンドに、この4M情報101を取得するためのセンサを付加したとする。
図10に、ロボット先端のハンドへのカメラ1000の取り付け例を示す。このカメラ1000により、例えば、ハンドの位置と、ワーク206との位置関係を逐次取得するものとする。ここで、図11に、ロボット先端のハンドに取り付けたカメラ1000の出力の例を示す。図中の〇は、ロボット203での把持ごとの、カメラ1000でセンシングした、ハンドとワークの位置関係を示す。センタリングと書かれた箇所に〇がある場合はハンドとワークの位置関係はちょうど真ん中をとらえており、そこからずれた場合に〇は上下どちらかに移動する。図11では、把持回数が増えるにともない、〇の位置もセンタリングから、ずれが拡大し、ある所からずれ量が一定でキープされていること、そのトレンドが把持不良発生タイミングよりも前から発生しているということがわかる。
そこで、本実施例では、4M潮流判定部104が、不良パタンおよび4M情報101の4Mトレンドから、4M潮流ナレッジを活用し、不良要因となり得る箇所を推定し、重みづけを生成する。例えば、4M潮流判定部104は、このようなカメラ1000の出力を受けた場合、ロボット203の先端のハンドとワーク206との間のずれは把持不良発生から一定のずれ量をキープしている、と判断する。このことから、4M潮流判定部104は、不良の要因として、ロボットハンドの先端部摩耗という要因ではないことを推定する。
また、図11において一定のずれ量をキープしていることから、4M潮流判定部104は、4M潮流ナレッジを用いて、以下のように推定を行う。4M潮流判定部104は、ロボット203のハードウェアそのものの問題か、それよりも前段の、例えば供給装置901に継続的に何らかの問題が発生していることが推定する。
ここで、作業者201が誤った要因推定を行い、誤った対策を行う場合が存在する。但し、4M潮流判定部104では、4M情報101の4Mトレンドと、例えば4M潮流ナレッジなどの製造ライン900に関する知識を組み合わせることで、明らかに異なる要因は優先度を下げることを行うことが可能である。また、4M潮流判定部104では、不良パタン107や4M情報101の取得対象(ロボット203)以外に起因する製造不良の要因として、供給装置901の問題を推定することとになる。
以上の処理により、本実施例のモデル再学習部105の再学習が可能になる。この再学習の内容は、図7で説明した内容がベースであり、以下その相違のみ説明する。
本実施例のモデル再学習部105では、4M潮流判定部104で推定した要因、不良パタン、4M情報101を用いたモデル再学習を行う。本実施例の例では、不良パタンはロボットの"PICK NG"である。そして、その要因として、4M潮流判定部104は、図11において一定のずれ量をキープしていることから、ロボットハンドの先端部摩耗いう要因ではないとと判定している。このため、モデル再学習部105は、先端部摩耗との要因の重みは減らして再学習することになる。
また、要因として、ロボット203のハードウェアそのものの問題という要因の重みを増やすことも考えられる。しかし、一つの例として、4M情報101にてロボット203からのログ情報を逐次収集した場合、ロボット203のハードウェアそのものの問題がレポートされていない場合は、ロボットのハードウェアそのものの問題という要因の重みも増やさなくてもよい。このため、モデル再学習部105は、ステップS709において、供給装置901に何らかの不具合が出ている可能性があるため、供給装置901が要因に存在する行の重みを+1して、モデルの再学習を行う。この結果、図12に示す再学習された学習済み統計モデルが生成される。図12に、4M情報101を用いた4M潮流判定部104の処理結果を用いた学習済み統計モデル1201の一例を示す。
以上から、本実施例の要因推定システム100により、製造ライン900において、供給装置901のモータの劣化が原因で、ワーク206の搬送速度の変化が把持不良の要因であると推定することをすることになる。つまり、要因推定システム100では、不良の要因として、供給装置901を正しく推定可能となる。
本実施例は、製造現場に存在する、要因に対する対策が必ずしも一対一の関係ではない(一致しない)ことや、現場での対策が必ずしも正確ではなくとも、より正確に対応することができる。例えば、本実施例では、マシン依存の不良が長く出ているのに、部品(Material)要因を疑って対策し続ける、不良パタンが出る箇所と要対策箇所が離れている場合、などを抑止できる。
次に、実施例1に対し、推定要因箇所を表示する機能を設けた実施例2について説明する。本実施例では、周辺データ(例えば4M(Man、Machine、Material、Method))の変動度合い(トレンド)から、不良要因箇所を作業者201に提示することで、作業者201が高効率に詳細要因推定を実現可能としている。さらに、本実施例では、近視眼的に事象をとらまえて誤った要因推定、対策試行の抑止も可能とする。
図13は、本実施例の要因推定システム1300の機能構成の一例である。要因推定システム1300は、実施例1の要因推定システム100の要因表示・対策入力機能部103が推定要因箇所表示・要因表示・対策入力機能1301に変更されている。そして、推定要因箇所表示・要因表示・対策入力機能1301は、4M潮流判定部104に接続し、その入力を受け付けている。また、推定要因箇所表示・要因表示・対策入力機能1301の出力先がモデル再学習部105である。なお、推定要因箇所表示・要因表示・対策入力機能1301からモデル再学習部105への出力は、4M潮流判定部104から出力してもよい。なお、推定要因箇所表示・要因表示・対策入力機能1301は、要因表示・対策入力機能部103と同様に、スマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータ等の端末装置で実現できる。
図14に、推定要因箇所表示・要因表示・対策入力機能1301(表示・入力端末)における表示内容の一例を示す。推定要因箇所表示・要因表示・対策入力機能1301は、要因表示・対策入力機能部103の表示内容に、4M潮流判定部104の出力、つまり、4Mトレンドからの推定箇所を表示する推定要因箇所表示領域1302を有する。その他は、実施例1と同様に、不良要因リスト表示領域1501、現場対策記録領域404を有するが、これらの情報の取得元などが実施例1とは、異なっている。これらについて、以下説明する。
推定要因箇所表示領域1302は、4M潮流判定部104で推定された要因箇所をリストで表示する。なお、実施例1で示した例と同様、ロボット203のハードウェアに関するエラーが4M情報101に含まれていない場合には、供給装置901の不具合がロボットハードウェアよりも疑われる。このため、推定要因箇所表示領域1302においては、その疑いの高い順(優先度順)にその内容を表示している。
そして、不良要因リスト表示領域1501には、最も不良の要因の可能性が高い(疑いが高い)供給装置の不具合がチェックされた形で表示されている。
また、現場対策記録領域404は、作業者201が、推定要因箇所表示領域1302や不良要因リスト表示領域1501を確認して、例えば、優先度順に対策したものを入力する欄である。
以上から、本実施例の要因推定システム1300により、製造現場に存在する、要因に対する対策が必ずしも一対一の関係ではない(一致しない)ことへ対応が可能になる。また、本実施例では、現場での対策が必ずしも正確ではないこと(例えばマシン依存の不良が長く出ているのに、部品(Material)要因を疑って対策し続ける、不良パタンが出る箇所と要対策箇所が離れている場合、など)などの課題への対応も可能である。つまり、作業者201に、4Mトレンドからの推定要因箇所を示すことで、効率的な対策を促すことができる。
最後に、実施例1および2の実装に関する変形例について、説明する。上述のとおり、実施例1の要因推定システム100や実施例2の要因推定システム1300は、コンピュータシステムで実現できる。このため、これらを、製造ラインやその運用企業に設置するサーバ装置やいわゆるクラウドシステムとして実現することが可能になる。
まず、図16に、要因推定システムをサーバ装置として、実装した場合の機能構成を示す。なお、本構成は、実施例1の要因推定システム100を例に説明するが、実施例2の要因推定システム1300でも同様に実装できる。図16では、ロボット等の各種装置1601、サーバ装置1602、要因表示・対策入力機能部103が、互いに内部ネットワーク14を接続する構成となっている。そして、サーバ装置1602が要因推定システム100である。このため、本変形例は、図15に示すハードウェア構成で実現できる。
次に、図17に、要因推定システムをクラウドシステム1700として、実装した場合の機能構成を示す。なお、本例も実施例1の要因推定システム100を例に説明するが、実施例2の要因推定システム1300でも同様に実装できる。本例では、クラウド装置1703に各機能を設ける。このため、製造ライン側に設置されるサーバ装置1602には、各種装置1601、要因表示・対策入力機能部103およびクラウド装置1703の通信を中継する機能があればよい。但し、クラウド装置1703は、4M潮流判定部104やモデル再学習部105を有し、要因絞り込み部102、学習済み統計モデル1201、および4M潮流ナレッジを、サーバ装置1602が有してもよい。
また、図17に示すクラウドシステム1700に、要因推定システムを実装する場合、図15に示すハードウェア構成との関係は、以下のとおりである。図15の要因推定システム100は、クラウド装置1703に実装される。そして、クラウド装置1703は、各種装置1601、サーバ装置1602、要因表示・対策入力機能部103とインターネットのような広域ネットワークを介して接続されることになる。なお、各種装置1601、サーバ装置1602、要因表示・対策入力機能部103については、互いに内部ネットワーク14を介して接続されることが望ましい。
以上の各実施例によれば、周辺データ(例えば4M(Man、Machine、Material、Method))の変動度合い(トレンド)から、推定精度を自動で高精度化することができる。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
さらに、本実施例では工程の例として、製造ラインを例示したが、いわゆる自動倉庫のような物流拠点、廃品回収施設、発電所などの各種プラン等への適用も可能である。