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JP2021156389A - トルクベクタリング装置 - Google Patents

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JP2021156389A
JP2021156389A JP2020058548A JP2020058548A JP2021156389A JP 2021156389 A JP2021156389 A JP 2021156389A JP 2020058548 A JP2020058548 A JP 2020058548A JP 2020058548 A JP2020058548 A JP 2020058548A JP 2021156389 A JP2021156389 A JP 2021156389A
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宏 磯野
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宏 磯野
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Abstract

【課題】装置を小型化して車両への搭載を容易にし、かつ、制御用アクチュエータの連れ回りを抑制することが可能なトルクベクタリング装置を提供する。【解決手段】動力源の動力トルクが伝達される第1回転軸3と第2回転軸4との差動回転を可能にする差動機構5と、第2回転軸4に差動トルクを付与して各回転軸3,4を差動回転させるアクチュエータ6と、アクチュエータ6が出力する差動トルクを増幅して第2回転軸4に伝達するとともに、第1回転軸3と第2回転軸4との差動回転の差回転数を増速させる減速機構7と、を備えたトルクベクタリング装置1において、減速機構7を複合遊星歯車機構30で構成し、動力源側のギヤ比と、アクチュエータ6側のギヤ比とを互いに異ならせ、動力源とアクチュエータ6との間に、それぞれのリングギヤを互いに連結した増速遊星歯車機構46および減速遊星歯車機構40を更に設けた。【選択図】図1

Description

この発明は、同軸上で対向する二本の回転軸(例えば、左右のドライブシャフト、あるいは、前後のプロペラシャフト)にそれぞれ伝達するトルクの配分(分配率)を積極的に制御することが可能なトルクベクタリング装置に関するものである。
特許文献1には、車両に搭載される電動車軸が記載されている。この特許文献1に記載された電動車軸は、駆動用モータ、合成伝動装置、シフトアクチュエータ、および、分配伝動装置を備えている。駆動用モータは、電動車両の駆動力源として駆動トルクを出力する。合成伝動装置は、二段変速機として駆動用モータの回転速度を減速する。シフトアクチュエータは、摺動スリーブと、摺動スリーブを軸線方向に並進運動させるボールねじ機構と、ボールねじ機構を駆動する電気モータとを有しており、摺動スリーブを軸線方向に移動させて、合成伝動装置の二つのギヤ段を切り替える。分配伝動装置は、駆動用モータが出力する駆動トルクを、第1被動軸および第2被動軸(車両の左右の駆動軸)に分配する。駆動用モータ、合成伝動装置、シフトアクチュエータ、および、分配伝動装置は、いずれも、第1被動軸および第2被動軸と同軸上に配置されている。
更に、特許文献1に記載された電動車軸は、駆動トルクを第1被動軸および第2被動軸に意図的に分配するためのトルクベクタリングユニットを備えている。トルクベクタリングユニットは、トルクベクタリング用モータ、および、トルクベクタリング用モータの回転速度を減速する公転伝動装置を有している。トルクベクタリング用モータは、第1被動軸および第2被動軸の回転軸線と平行な他の回転軸線上に配置されている。
特許第6223445号
特許文献1に記載された電動車軸は、上記のようなトルクベクタリングユニットを備えており、トルクベクタリング用モータの出力トルクを制御することにより、第1の被動軸および第2の被動軸にそれぞれに伝達する駆動トルクの配分(分配率)を積極的に制御することができる。すなわち、第1の被動軸および第2の被動軸に対するいわゆるトルクベクタリングを行うことができる。そのような電動車軸をトルクベクタリング装置として車両に搭載する場合、車両への搭載を容易にするためには、装置の体格をできる限り小型化することが望ましい。しかしながら、特許文献1に記載された電動車軸では、十分に装置を小型化できない可能性がある。特許文献1に記載された電動車軸は、トルクベクタリング用モータが第1被動軸および第2被動軸と異なる別の回転軸線上に配置されている。そのため、特許文献1に記載された電動車軸は、トルクベクタリング用モータを配置する分、装置の径方向に体格が増大してしまう。
また、特許文献1に記載された電動車軸では、トルクベクタリング用モータの回転速度を減速する公転伝動装置を設けることにより、トルクベクタリング用モータの出力トルクを増幅して、トルクベクタリング用モータの小型化を図っている。加えて、上記のようなトルクベクタリング用モータの配置に起因する径方向の大型化を回避するために、トルクベクタリング用モータを第1被動軸および第2被動軸と同軸上に配置する構成も考えられる。しかしながら、その場合は、トルクベクタリング用モータと分配伝動装置との間に配置する公転伝動装置で十分に大きな減速比を設定できない可能性がある。そのため、トルクベクタリング用モータを十分に小型化できず、結局、装置が大型化してしまうおそれがある。
なお、本出願人は、特願2020−58036号の出願において、体格を小型化して車両への搭載性を向上させたトルクベクタリング装置を提案している。この特願2020−58036号の出願におけるトルクベクタリング装置は、同軸上で対向して配置される二本の第1回転軸および第2回転軸を備えている。それら第1回転軸および第2回転軸は、例えば、車両の左右のドライブシャフト、あるいは、前後のプロペラシャフトとして機能する。また、各回転軸と同軸上にそれぞれ配置される差動機構、減速機構、および、アクチュエータ(例えば、差動制御用の電気モータ)を備えている。差動機構は、動力源のトルクを第1回転軸と第2回転軸とに分配して伝達するとともに、第1回転軸と第2回転軸との間の差動回転を可能にする。アクチュエータは、アクチュエータで発生するトルクを第2回転軸に付与し、第1回転軸と第2回転軸とを差動回転させる。減速機構は、複合遊星歯車機構によって構成され、アクチュエータの出力軸の回転速度を減速し、アクチュエータが発生するトルクを増幅する。それとともに、減速機構は、第1回転軸と第2回転軸との間の差動回転の差回転数を増速する。すなわち、差動回転を増大する。
したがって、特願2020−58036号の出願におけるトルクベクタリング装置では、上記のような減速機構のトルク増幅作用により、アクチュエータの小型化および軽量化を図ることができ、その分、トルクベクタリング装置の体格を小型化して車両への搭載性を向上させることができる。また、差動機構、アクチュエータ、および、減速機構の主要な構成要素が、第1回転軸および第2回転軸と同一の回転軸線上に配置されたいわゆる一軸構造となっている。そのため、装置の径方向への大型化を抑制し、コンパクトなトルクベクタリング装置を構成できる。
一方で、上記の特願2020−58036号の出願におけるトルクベクタリング装置は、例えば、そのトルクベクタリング装置を搭載した車両が直進走行する際に、第1回転軸と第2回転軸とが同方向に等速で回転する場合には、差動機構および減速機構が一体となって回転する。そのため、動力源または各回転軸側から、差動機構および減速機構を介して、アクチュエータにトルクが伝達し、アクチュエータが駆動されてしまう。アクチュエータとして電気モータを設けている場合は、いわゆる電気モータの連れ回りが生じてしまう。そのような電気モータの連れ回りによって、トルクベクタリング装置の動力伝達効率、あるいは、トルクベクタリング装置を搭載した車両のエネルギ効率が低下してしまう。また、例えば、車両が直進走行して電気モータの連れ回りが生じている状態で急加速または急減速する場合には、連れ回りしている電気モータの慣性トルクの影響を受けて、車両の加速性能または制動性能が低下してしまう。そのような電気モータの慣性トルクの影響は、慣性トルクを相殺または減殺するトルク(キャンセルトルク)を電気モータ自信で出力することによって抑制できるが、その場合は、キャンセルトルクを発生するための電気モータのトルク制御を別途実行しなければならない。
この発明は上記の技術的課題に着目して考え出されたものであり、装置の体格を小型化して車両への搭載を容易にし、かつ、差動制御用のアクチュエータの連れ回りを抑制することが可能なトルクベクタリング装置を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、この発明は、動力源から動力トルクが入力される入力部材と、同軸上で対向して配置され、互いに相対回転可能な第1回転軸および第2回転軸と、前記動力トルクを前記第1回転軸と前記第2回転軸とに分配して伝達するとともに、前記第1回転軸と前記第2回転軸との間の差動回転を可能にする差動機構と、前記第1回転軸および前記第2回転軸と同軸上に配置され、前記第2回転軸に差動トルクを付与して前記第1回転軸と前記第2回転軸とを差動回転させる(すなわち、差動回転を増速させる)アクチュエータ(例えば、差動制御用の電気モータ、あるいは、差動制限装置として機能するブレーキ機構)と、前記アクチュエータと前記第2回転軸との間に配置され、前記アクチュエータが出力する前記差動トルクを前記第2回転軸に伝達する減速機構と、を備えたトルクベクタリング装置において、前記減速機構は、それぞれ、前記第1回転軸および前記第2回転軸と同軸上に配置される、第1回転要素、第2回転要素、および、第3回転要素を有する複合遊星歯車機構から構成され、前記第1回転要素と前記第2回転要素との差動回転が可能であり、前記入力部材と前記第1回転要素とが連結され、前記第2回転要素と前記第2回転軸とが連結され、前記第3回転要素と、前記差動トルクを出力する前記アクチュエータの差動トルク出力軸とが連結され、前記第1回転要素と前記第3回転要素との間に形成されるギヤ対のギヤ比(または、速度伝達比)と、前記第2回転要素と前記第3回転要素との間に形成されるギヤ対のギヤ比(または、速度伝達比)とが互いに異なっており、前記差動トルクを増幅して前記第2回転軸に伝達するとともに、前記第1回転軸と前記第2回転軸との差動回転の差回転数を増速させ(すなわち、差動回転を増大させ)、それぞれ、前記第1回転軸および前記第2回転軸と同軸上に配置され、増速サンギヤ、増速キャリア、および、増速リングギヤを有する増速遊星歯車機構と、減速サンギヤ、減速キャリア、および、減速リングギヤを有する減速遊星歯車機構とを更に備え、前記増速サンギヤは、回転不可能に固定され、前記増速キャリアは、前記入力部材に連結されて前記入力部材と一体に回転し、前記増速リングギヤは、前記増速キャリアが回転する際に、前記増速キャリアの回転速度に対して回転速度が増速し、前記減速サンギヤは、前記差動トルク出力軸に連結されて前記差動トルク出力軸と一体に回転し、前記減速キャリアは、前記入力部材ならびに前記第1回転軸および前記第2回転軸が一体となって回転する際に、前記減速リングギヤの回転速度に対して回転速度が減速し、前記減速リングギヤは、前記増速リングギヤに連結されて前記増速リングギヤと一体に回転することを特徴とするものである。
なお、この発明では、前記減速サンギヤは、前記第1回転軸と前記第2回転軸とが同方向に等速で回転し、前記減速機構が、前記差動機構、ならびに、前記第1回転軸および前記第2回転軸と共に連れ回りする場合に、前記減速機構と相対回転するように構成してよい。
また、この発明では、前記増速遊星歯車機構のギヤ比と、前記減速遊星歯車機構のギヤ比とが、互いに等しくなるように構成してよい。
また、この発明では、前記第1回転軸、および、第2回転軸は、それぞれ、車両の車幅方向に同軸上で、前記車幅方向の左右に対向して配置してよい。
また、この発明では、前記第1回転軸、および、第2回転軸は、それぞれ、車両の全長方向に同軸上で、前記全長方向の前後に対向して配置してよい。
また、この発明では、前記動力源は、前記動力トルクとして、前記第1回転軸および前記第2回転軸を駆動するトルクを出力する動力用の電気モータ、ならびに、前記第1回転軸および前記第2回転軸を制動するトルクを出力するブレーキ機構の少なくともいずれかであり、前記差動機構、前記アクチュエータ、および、減速機構と一体的に配置してよい。
また、この発明では、前記動力モータは、前記第1回転軸および前記第2回転軸と同軸上に一体的に配置してよい。
そして、この発明では、前記アクチュエータは、前記差動トルクとして、前記第2回転軸を駆動するトルクを出力する差動制御用の電気モータ、または、前記第2回転軸を制動するトルクを出力するブレーキ機構の少なくともいずれかを用いることができる。
この発明のトルクベクタリング装置は、互いに同軸上で対向して配置される第1回転軸および第2回転軸、ならびに、それら第1回転軸および第2回転軸と同軸上に配置される差動機構によって、動力源から入力部材に入力される動力トルクを第1回転軸および第2回転軸に分配して伝達する。それとともに、第1回転軸と第2回転軸との間の回転数差を吸収する。すなわち、第1回転軸と第2回転軸との間に回転数差が生じると、それら第1回転軸と第2回転軸とを差動回転させる。また、この発明のトルクベクタリング装置は、第2回転軸に差動トルクを付与するアクチュエータを備えている。そのため、上記のような差動装置としての作用に加えて、アクチュエータが出力する差動トルクにより、第1回転軸および第2回転軸に対するトルクの分配率、ならびに、第1回転軸と第2回転軸との間の差動回転を、積極的に制御できる。例えば、車両の左右の駆動輪、あるいは、四輪駆動車両の前後の駆動輪に対するいわゆるトルクベクタリングを行うことができる。アクチュエータは、第1回転軸および第2回転軸と同軸上に配置される。そして、この発明のトルクベクタリング装置は、第1回転軸および第2回転軸と同軸上に配置される減速機構を備えている。減速機構は、複合遊星歯車機構によって構成され、アクチュエータの差動トルク出力軸の回転速度を減速して、差動トルクを増幅する。それとともに、減速機構は、第1回転軸と第2回転軸との間の差動回転の差回転数を増速する。すなわち、差動回転を増大する。そのような、減速機構のトルク増幅作用により、アクチュエータの小型化および軽量化を図ることができ、その分、トルクベクタリング装置の体格を小型化して車両への搭載性を向上させることができる。
また、上記のように、差動機構、減速機構、および、アクチュエータは、第1回転軸および第2回転軸と同一の回転軸線上に配置される。すなわち、この発明のトルクベクタリング装置は、基本的に、主要な構成要素を第1回転軸および第2回転軸と同一の回転軸線上に配置するいわゆる一軸構造となっている。そのため、装置の径方向への大型化を抑制し、コンパクトなトルクベクタリング装置を構成できる。
また、この発明のトルクベクタリング装置では、減速機構のトルク増幅機能、すなわち、減速機構の減速比は、複合遊星歯車機構の第1回転要素と第3回転要素との間に形成されるギヤ対の(第1遊星歯車機構側の)ギヤ比(または、速度伝達比)と、第2回転要素と第3回転要素との間に形成されるギヤ対の(第2遊星歯車機構側の)ギヤ比とを互いに異ならせることによって実現される。具体的には、複合遊星歯車機構を構成する第1遊星歯車機構および第2遊星歯車機構の各プラネタリギヤと、各プラネタリギヤに噛み合っている各サンギヤまたは各リングギヤとの間のギヤ比を互いに異ならせることにより、容易に、減速機構で大きな減速比を設定できる。
より具体的には、この発明のトルクベクタリング装置では、第1遊星歯車機構を構成する第1プラネタリギヤと第1サンギヤとによるギヤ対のギヤ比と、第2遊星歯車機構を構成する第2プラネタリギヤと第2サンギヤとによるギヤ対のギヤ比とを、互いに異ならせている。あるいは、第1遊星歯車機構を構成する第1プラネタリギヤと第1リングギヤとによるギヤ対のギヤ比と、第2遊星歯車機構を構成する第2プラネタリギヤと第2リングギヤとによるギヤ対のギヤ比とを、互いに異ならせている。例えば、第1サンギヤの歯数と第2サンギヤの歯数とを互いに異ならせることにより、あるいは、第1リングギヤの歯数と第2リングギヤの歯数とを互いに異ならせることにより、あるいは、第1プラネタリギヤの歯数と第2プラネタリギヤの歯数とを互いに異ならせることにより、上記のような各ギヤ比を互いに異ならせることができる。すなわち、各ギヤの歯数をそれぞれ調整することにより、容易に、上記のような各ギヤ比を互いに異ならせることができる。
仮に、第1遊星歯車機構側のギヤ比と第2遊星歯車機構側のギヤ比とが等しくなるように構成すると、減速機構の減速比は、理論上、無限大になる。その場合は、実質的には、減速機構で差動トルク出力軸の回転速度を減速できない状態になってしまい、また、第1回転軸と第2回転軸との間の差動回転も不可能な状態になってしまう。それに対して、この発明のトルクベクタリング装置では、上記のように、第1遊星歯車機構側のギヤ比と第2遊星歯車機構側のギヤ比とを互いに異ならせることにより、減速機構の減速比が無限大になってしまう状態を回避しつつ、減速機構で相対的に大きな減速比を設定できる。各ギヤ比の間の差が大きくなると減速機構の減速比は小さくなる。したがって、各ギヤ比の間の差を小さくするほど、大きな減速比を減速機構で設定できる。
更に、この発明のトルクベクタリング装置は、アクチュエータのいわゆる連れ回りを抑制するための増速遊星歯車機構、および、減速遊星歯車機構を備えている。この発明のトルクベクタリング装置では、第1回転軸と第2回転軸とが同方向に等速で回転する場合には、差動機構および減速機構全体が一体となって回転する(すなわち、連れ回りする)。それに伴い、増速遊星歯車機構の増速キャリアと減速遊星歯車機構の減速キャリアとは、同方向に等速で回転する。その場合、増速遊星歯車機構は、増速サンギヤの回転を止めた状態で、増速キャリアの回転速度に対して増速リングギヤの回転速度が増速する増速機構として機能する。一方、減速遊星歯車機構は、減速リングギヤの回転速度に対して減速キャリアの回転速度が減速する減速機構として機能する。増速キャリアの回転速度および減速キャリアの回転速度は互いに等しい。また、増速リングギヤと減速リングギヤとが連結されているので、それら増速リングギヤの回転速度および減速リングギヤの回転速度も互いに等しくなる。そのため、増速遊星歯車機構の増速比の絶対値と、減速遊星歯車機構の減速比の絶対値とが等しくなり、この場合、増速遊星歯車機構の増速サンギヤの回転速度が0であることから、減速遊星歯車機構では、減速遊星歯車機構のギヤ比に応じて、減速リングギヤまたは減速キャリアの回転速度に対して減速サンギヤの回転速度が0または0近傍の回転数に減速する(増速遊星歯車機構のギヤ比と減速遊星歯車機構のギヤ比とが等しい場合は、減速サンギヤの回転数は0になる)。したがって、上記のように第1回転軸と第2回転軸とが同方向に等速で回転し、差動機構(および反転機構)が一体となって連れ回りする場合に、減速サンギヤに連結している差動トルク出力軸の回転数を0またはほぼ0にすることができる。すなわち、アクチュエータの連れ回りを抑制することができる。
したがって、この発明のトルクベクタリング装置によれば、制御用または差動用のアクチュエータの連れ回りを抑制して、トルクベクタリング装置の動力伝達効率を向上させることができる。ひいては、この発明のトルクベクタリング装置を搭載する車両のエネルギ効率を向上させることができる。また、例えば、車両が直進走行している状態で急加速または急減速する場合に、アクチュエータの連れ回りが抑制されることから、アクチュエータの慣性トルクの影響を排除することができる。そのため、例えば、アクチュエータが連れ回る場合の慣性トルクを相殺または減殺するトルク(キャンセルトルク)の制御を別途実行しなくともよく、その分、アクチュエータを制御する装置の負荷を軽減できる。ひいては、アクチュエータによるトルクベクタリング制御の制御性を向上させることができる。
この発明のトルクベクタリング装置の一例(第1実施形態)を説明するための図である。 この発明のトルクベクタリング装置の他の例(第2実施形態)を説明するための図である。 この発明のトルクベクタリング装置の他の例(第3実施形態)を説明するための図である。 この発明のトルクベクタリング装置におけるアクチュエータの他の例(アクチュエータとして電磁ブレーキを設ける例)を説明するための図である。 この発明のトルクベクタリング装置におけるアクチュエータの他の例(アクチュエータとして電動ブレーキを設ける例)を説明するための図である。
この発明の実施形態を、図を参照して説明する。なお、以下に示す実施形態は、この発明を具体化した場合の一例に過ぎず、この発明を限定するものではない。
〔第1実施形態〕
この発明を適用したトルクベクタリング装置の一例を図1に示してある。この発明の実施形態におけるトルクベクタリング装置1は、基本的な構成要素として、入力部材2、第1回転軸3、第2回転軸4、差動機構5、アクチュエータ6、および、減速機構7を備えている。
入力部材2は、所定の動力源が出力する動力トルクが入力される。図1に示す例では、入力部材2は、後述する差動機構5のいわゆるデフケース17であり、トルクベクタリング装置1のケース8に回転可能に支持されている。入力部材2は、後述する第1回転軸3および第2回転軸4の外周部分に、それら第1回転軸3および第2回転軸4と相対回転可能に配置されている。入力部材2(デフケース17)の外周部分に、入力ギヤ9(図1に示す例では、後述する差動機構5のいわゆるデフリングギヤ18)が取り付けられている。入力部材2と入力ギヤ9とは一体に回転する。入力ギヤ9は、後述するカウンタギヤ16を介して、動力源に連結されている。
図1に示す例では、動力源として、動力モータ10、および、ブレーキ機構11が設けられている。具体的には、動力軸12の一方(図1の右側)の端部に、動力モータ10の出力軸13が連結されている。動力モータ10は、動力トルクとして駆動トルクまたは回生トルクを発生する。動力モータ10は、例えば、永久磁石式の同期モータ、あるいは、誘導モータなどによって構成されている。動力軸12の他方(図1の左側)の端部には、ブレーキ機構11の回転軸14が連結されている。ブレーキ機構11は、動力トルクとして制動トルクを発生する。ブレーキ機構11は、例えば、通電されることにより発生する磁気吸引力を利用して所定の回転部材を制動する励磁作動型の電磁ブレーキ、あるいは、電動モータによって駆動される送りねじ機構を用いて摩擦制動力を発生させる電動ブレーキ、あるいは、モータで発電する際に発生する抵抗力を利用して所定の回転部材を制動する回生ブレーキなどによって構成されている。したがって、この図1に示す例では、動力源として、ブレーキ機能付き電気モータがトルクベクタリング装置1に組み付けられ、ユニット化されている。
上記のような動力モータ10およびブレーキ機構11を、共に、この発明の実施形態におけるトルクベクタリング装置1と一体に組み付けることにより、トルクベクタリング機能および制動機能を有する動力ユニットを構成できる。なお、この発明の実施形態におけるトルクベクタリング装置1は、動力源として、動力モータ10だけを組み付けた構成であってもよい。その場合、トルクベクタリング機能を有するモータ駆動ユニットを構成できる。あるいは、動力源として、ブレーキ機構11だけを組み付けた構成であってもよい。その場合、トルクベクタリング機能を有するブレーキユニットを構成できる。
動力軸12の中央部分には、ピニオン15が取り付けられている。ピニオン15と動力軸12とは一体に回転する。ピニオン15は、カウンタギヤ16と噛み合っている。カウンタギヤ16は、ケース8に回転可能に支持されている。カウンタギヤ16は、ピニオン15と噛み合うのと同時に、上記の入力ギヤ9と噛み合っている。ピニオン15は、入力ギヤ9よりも径が小さく、歯数が少ない。そのため、ピニオン15、カウンタギヤ16、および、入力ギヤ9による歯車列は、ピニオン15の入力回転速度に対して入力ギヤ9の出力回転速度を減速する減速歯車機構を形成している。したがって、動力軸12に入力される動力源(図1に示す例では、動力モータ10、および、ブレーキ機構11)の動力トルクは、上記のような減速歯車機構で増幅されて、入力部材2に伝達される。
第1回転軸3、および、第2回転軸4は、同軸上で、前後または左右に(図1に示す例では左右に)、対向して配置されている。また、第1回転軸3、および、第2回転軸4は、後述する差動機構5、アクチュエータ6、および、減速機構7と共に、同一の回転軸線AL上に配置されている。第1回転軸3と第2回転軸4とは、互いに相対回転可能である。第1回転軸3は、突出側(図1の左側)の端部が、ケース8に回転可能に支持されている。同様に、第2回転軸4は、突出側(図1の右側)の端部が、ケース8に回転可能に支持されている。
差動機構5は、上記の第1回転軸3および第2回転軸4を、それぞれ、相対回転に保持している。それとともに、差動機構5は、動力源が出力する動力トルクを第1回転軸3と第2回転軸4とに分配して伝達する。図1に示す例では、差動機構5は、従来、車両に用いられる一般的なデファレンシャルギヤと同様の構成であり、デフケース17(入力部材2)、デフリングギヤ18(入力ギヤ9)、第1サイドギヤ19、第2サイドギヤ20、第1デフピニオン21、第2デフピニオン22、および、ピニオン軸23を有している。
図1に示す例では、デフケース17は、この発明の実施形態におけるトルクベクタリング装置1の入力部材2となっており、外周部分に、デフリングギヤ18が形成されている。デフケース17とデフリングギヤ18とは一体に回転する。デフリングギヤ18は、この発明の実施形態におけるトルクベクタリング装置1の入力ギヤ9となっており、上述のカウンタギヤ16と噛み合っている。
第1サイドギヤ19は、大径のかさ歯車であり、第1回転軸3の後端(図1の右端部)に取り付けられている。第1サイドギヤ19と第1回転軸3とは一体に回転する。第2サイドギヤ20は、大径のかさ歯車であり、第2回転軸4の後端(図1の左端部)に取り付けられている。第2サイドギヤ20と第2回転軸4とは一体に回転する。
第1デフピニオン21は、第1サイドギヤ19および第2サイドギヤ20よりも小径のかさ歯車であり、ピニオン軸23に回転可能に支持されている。第1デフピニオン21は、第1サイドギヤ19および第2サイドギヤ20に、同時に噛み合っている。第2デフピニオン22は、第1サイドギヤ19および第2サイドギヤ20よりも小径のかさ歯車であり、第1デフピニオン21と共に、ピニオン軸23に回転可能に支持されている。第1デフピニオン21は、ピニオン軸23上で、第1デフピニオン21と対向して配置されており、第1サイドギヤ19および第2サイドギヤ20に、同時に噛み合っている。ピニオン軸23は、上記のように第1デフピニオン21および第2デフピニオン22を、それぞれ、相対回転可能に支持している。ピニオン軸23は、その軸線方向が第1回転軸3および第2回転軸4の回転軸線ALと直交して配置され、デフケース17に固定されている。これにより、第1デフピニオン21および第2デフピニオン22は、それぞれ、第1サイドギヤ19および第2サイドギヤ20に噛み合いながら、ピニオン軸23を中心にして自転し、かつ、ピニオン軸23およびデフケース17と共に回転軸線ALを中心にして公転する。
動力源からデフリングギヤ18およびデフケース17に動力トルクが入力されると、動力トルクは、ピニオン軸23を介して、第1デフピニオン21および第2デフピニオン22に伝達される。その際に、第1回転軸3と第2回転軸4とが、いずれも、同方向に等速で回転する場合は、第1デフピニオン21および第2デフピニオン22は、いずれも、自転することなく、第1サイドギヤ19および第2サイドギヤ20の周りを、第1サイドギヤ19および第2サイドギヤ20と噛み合いながら公転する。そのため、動力トルクは、第1サイドギヤ19と第2サイドギヤ20とに等分に分配される。すなわち、動力トルクは、第1回転軸3と第2回転軸4とに等しく分配される。一方、第1回転軸3と第2回転軸4とが差動回転する場合は、第1デフピニオン21および第2デフピニオン22は、それぞれ、自転しつつ、第1サイドギヤ19および第2サイドギヤ20の周りを、第1サイドギヤ19および第2サイドギヤ20と噛み合いながら公転する。そのため、動力トルクは、第1回転軸3および第2回転軸4の回転状態に応じたトルク配分(分配率)で、第1サイドギヤ19と第2サイドギヤ20とに分配される。すなわち、動力トルクは、第1回転軸3と第2回転軸4とに、所定のトルク配分(分配率)で分配される。したがって、差動機構5は、動力源が出力し、入力部材2(デフケース17)に入力される動力トルクを、第1回転軸3と第2回転軸4とに分配して伝達するとともに、第1回転軸3と第2回転軸4との間の差動回転を可能にしている。
アクチュエータ6は、第1回転軸3および第2回転軸4と同軸上(同一の回転軸線AL上)に配置されており、アクチュエータ6で発生するトルクを、差動トルクとして第2回転軸4に付与する。第2回転軸4に差動トルクが付与されることにより、差動機構5では、第1回転軸3と第2回転軸4とが差動回転する。アクチュエータ6としては、例えば、電気モータ、あるいは、ブレーキ機構を用いることができる。電気モータは、差動トルクとして、第2回転軸4、および、差動機構5の第2サイドギヤ20を駆動する力行トルクを出力する。あるいは、差動トルクとして、第2回転軸4、および、差動機構5の第2サイドギヤ20を制動する回生トルクを出力する。ブレーキ機構は、差動トルクとして、第2回転軸4、および、差動機構5の第2サイドギヤ20を制動するトルクを出力する。
また、アクチュエータ6は、差動トルクとして、上記のようなトルクを出力する差動トルク出力軸24を有している。図1に示す例では、差動トルクとして、力行トルクまたは回生トルクを出力する差動制御用(あるいは、トルクベクタリング用)の制御モータ25がアクチュエータ6として用いられている。制御モータ25は、差動トルク出力軸24を駆動するトルクを出力する。制御モータ25は、例えば、永久磁石式の同期モータ、あるいは、誘導モータなどによって構成されている。したがって、制御モータ25のロータ26を支持する回転軸が差動トルク出力軸24になっている。差動トルク出力軸24は、後述する減速機構7を介して、第2回転軸4に連結されている。
上記のように、この発明の実施形態におけるトルクベクタリング装置1では、アクチュエータ6として、例えば、制御モータ25が用いられる。制御モータ25を制御して差動トルクを変化させることにより、第1回転軸3と第2回転軸4との間の差動回転を制御できる。あるいは、制御モータ25の回生トルクによって、第1回転軸3と第2回転軸4との間の差動回転を制限すること(差動制限またはデファレンシャル・ロック)ができる。
減速機構7は、第1回転軸3および第2回転軸4と同軸上に配置されており、アクチュエータ6が出力する差動トルクを増幅して第2回転軸4に伝達する。減速機構7は、第1回転要素27、第2回転要素28、および、第3回転要素29を有する一種の複合遊星歯車機構30から構成されている。第1回転要素27、第2回転要素28、および、第3回転要素29は、いずれも、第1回転軸3および第2回転軸4と同軸上に配置される。第1回転要素27は、上述の入力部材2に連結される。第2回転要素28は、第2回転軸4に連結される。第3回転要素29は、差動トルク出力軸24に連結される。第1回転要素27と第2回転要素28とは、互いに差動回転が可能になっている。そして、第1回転要素27と第3回転要素29との間に形成されるギヤ対のギヤ比(または、速度伝達比)と、第2回転要素28と第3回転要素29との間に形成されるギヤ対のギヤ比(または、速度伝達比)とが互いに異なっている。
具体的には、減速機構7、すなわち、複合遊星歯車機構30は、第1遊星歯車機構31、および、第2遊星歯車機構32から構成されている。第1遊星歯車機構31、および、第2遊星歯車機構32は、いずれも、第1回転軸3および第2回転軸4と同軸上に配置されている。図1に示す例では、第1遊星歯車機構31は、第1サンギヤ33、第1プラネタリギヤ34、および、キャリア35を有している。同様に、第2遊星歯車機構32は、第2サンギヤ36、第2プラネタリギヤ37、および、キャリア35を有している。キャリア35は、第1遊星歯車機構31と第2遊星歯車機構32とで共用されている。
第1サンギヤ33は、中空形状のサンギヤ軸38の一方(図1の右側)の端部に取り付けられている。第1サンギヤ33とサンギヤ軸38とは一体に回転する。サンギヤ軸38の他方(図1の左側)の端部は、差動機構5のデフケース17、すなわち、入力部材2に連結されている。サンギヤ軸38とデフケース17とは一体に回転する。したがって、第1サンギヤ33は、複合遊星歯車機構30の第1回転要素27として、入力部材2に連結されている。第1サンギヤ33と入力部材2とは一体に回転する。第1プラネタリギヤ34は、第1サンギヤ33よりも小径の外歯歯車であり、第1サンギヤ33に噛み合っている。キャリア35は、第1プラネタリギヤ34を自転可能に、かつ、第1サンギヤ33の周りを公転可能に保持している。
第2サンギヤ36は、複合遊星歯車機構30の第2回転要素28として、第2回転軸4の外周部分に取り付けられている。第2サンギヤ36と第2回転軸4とは一体に回転する。第2プラネタリギヤ37は、第2サンギヤ36よりも小径の外歯歯車であり、第2サンギヤ36に噛み合っている。第2プラネタリギヤ37は、第1プラネタリギヤ34と共に、キャリア35によって、自転可能に、かつ、第1サンギヤ33の周りを公転可能に保持されている。
上記のサンギヤ軸38は、第2回転軸4の外周部分に、第2回転軸4と相対回転可能に配置されている。したがって、第1サンギヤ33と第2サンギヤ36とは、互いに相対回転する。第1プラネタリギヤ34および第2プラネタリギヤ37は、いずれも、プラネタリギヤ軸39に取り付けられている。プラネタリギヤ軸39は、キャリア35に回転可能に支持されている。第1プラネタリギヤ34と第2プラネタリギヤ37とプラネタリギヤ軸39とは、一体に回転する。したがって、第1プラネタリギヤ34と第2プラネタリギヤ37とは、自転方向に一体に回転する。キャリア35は、複合遊星歯車機構30の第3回転要素29として、アクチュエータ6の差動トルク出力軸24に連結されている。キャリア35と差動トルク出力軸24とは一体に回転する。
なお、複合遊星歯車機構30は、上記のような第1プラネタリギヤ34および第2プラネタリギヤ37ならびにプラネタリギヤ軸39によるプラネタリギヤセットを、少なくとも一組備えていればよい。図1では、二組のプラネタリギヤセットを示してある。プラネタリギヤセットが、各サンギヤ33,36の周りを公転する際のバランスを考慮すると、各サンギヤ33,36の円周方向に等間隔で、少なくとも三組のプラネタリギヤセットを設けることが好ましい。
上記のような構成により、減速機構7は、第1回転軸3と第2回転軸4とが同方向に等速で回転する場合に、入力部材2(すなわち、デフケース17)、ならびに、第1回転軸3および第2回転軸4と共に連れ回りする。
減速機構7は、アクチュエータ6が出力する差動トルクを増幅するためのものであり、できるだけ大きな“減速比”を設定可能なことが好ましい。そのために、この減速機構7(複合遊星歯車機構30)は、第1回転要素27と第3回転要素29との間に形成されるギヤ対のギヤ比と、第2回転要素28と第3回転要素29との間に形成されるギヤ対のギヤ比とを互いに異ならせている。図1に示す例では、第1サンギヤ33と第1プラネタリギヤ34との間のギヤ比(第1ギヤ比u)と、第2サンギヤ36と第2プラネタリギヤ37との間のギヤ比(第2ギヤ比u)とを互いに異ならせている。それにより、減速機構7は、キャリア35すなわち第3回転要素29の回転速度に対して、第2サンギヤ36すなわち第2回転要素28の回転速度が減速するように構成されている。なお、この発明の実施形態では、減速機構7の“減速比”を、第3回転要素29の回転速度に対する第2回転要素28の回転速度の比率として定義する。
図1に示す例では、第1プラネタリギヤ34の歯数と第2プラネタリギヤ37の歯数とを互いに異ならせ、第1サンギヤ33の歯数と第2サンギヤ36の歯数とを互いに異ならせることにより、上記のような第1ギヤ比uと第2ギヤ比uとを互いに異ならせている。あるいは、第1プラネタリギヤ34の歯数と第2プラネタリギヤ37の歯数とを互いに異ならせ、第1サンギヤ33の歯数と第2サンギヤ36の歯数とを互いに等しくすることにより、上記のような第1ギヤ比uと第2ギヤ比uとを互いに異ならせることができる。あるいは、第1プラネタリギヤ34の歯数と第2プラネタリギヤ37の歯数とを互いに等しくし、第1サンギヤ33の歯数と第2サンギヤ36の歯数とを互いに異ならせることにより、上記のような第1ギヤ比uと第2ギヤ比uとを互いに異ならせてもよい。すなわち、各サンギヤ33,36の歯数および各プラネタリギヤ34,37の歯数をそれぞれ調整することにより、容易に、上記のような第1ギヤ比uと第2ギヤ比uとを互いに異ならせることができる。
なお、この発明の実施形態における減速機構7では、複合遊星歯車機構30のプラネタリギヤ(図1に示す例では、第1プラネタリギヤ34および第2プラネタリギヤ37)に噛み合っているサンギヤまたはリングギヤ(図1に示す例では、第1サンギヤ33および第2サンギヤ36)の歯数に対するプラネタリギヤの歯数の比率を、サンギヤまたはリングギヤとプラネタリギヤとの間のギヤ比として定義する。
したがって、第1サンギヤ33の歯数をzS1、第1プラネタリギヤ34の歯数をzP1とすると、第1ギヤ比uは、
=zP1/zS1
となる。同様に、第2サンギヤ36の歯数をzS2、第2プラネタリギヤ37の歯数をzP2とすると、第2ギヤ比uは、
=zP2/zS2
となる。
例えば、図1に示す例では、図中に括弧内の数値で示すように、第1プラネタリギヤ34の歯数zP1が“17”であり、第2プラネタリギヤ37の歯数zP2が“18”であり、第1サンギヤ33の歯数zS1が“40”であり、第2サンギヤ36の歯数zS2が“39”となっている。この場合、第1ギヤ比uは、
=17/40=0.425
となる。同様に、第2ギヤ比uは、
=18/39≒0.462
となる。このように、各サンギヤ33,36の歯数zS1,歯数zS2を互いに異ならせ、また、各プラネタリギヤ34,37の歯数zP1,歯数zP2を互いに異ならせていることにより、第1ギヤ比uと第2ギヤ比uとが互いに異なっている。
図1に示すように構成された複合遊星歯車機構30の減速比、すなわち、減速機構7の減速比Rは、理論上、下記の演算式から算出できる。
R=|1/{1−(zS1/zP1)×(zP2/zS2)}|
したがって、上記の例のように、第1プラネタリギヤ34の歯数zP1が“17”であり、第2プラネタリギヤ37の歯数zP2が“18”であり、第1サンギヤ33の歯数zS1が“40”であり、第2サンギヤ36の歯数zS2が“39”である場合は、減速比Rは、
R=|1/{1−(40/17)×(18/39)}|≒12
となる。従来の一般的な遊星歯車機構で実現可能な減速比が、概ね4から10程度であることと比較して、相対的に、大きな減速比を得ることができる。なお、減速比Rは、図1の括弧内に“R=12”と表示してある。
なお、図1に示す減速機構7において、例えば、第1プラネタリギヤ34の歯数zP1、および、第2プラネタリギヤ37の歯数zP2をいずれも“17”とし、第1サンギヤ33の歯数zS1を“38”、第2サンギヤ36の歯数zS2を“40”とした場合には、減速比Rは、
R=|1/{1−(38/17)×(17/40)}|=20
となる。また、例えば、第1プラネタリギヤ34の歯数zP1、および、第2プラネタリギヤ37の歯数zP2をいずれも“17”とし、第1サンギヤ33の歯数zS1を“39”、第2サンギヤ36の歯数zS2を“40”とした場合には、減速比Rは、
R=|1/{1−(39/17)×(17/40)}|=40
となる。
このように、例えば、第1プラネタリギヤ34の歯数zP1と第2プラネタリギヤ37の歯数zP2とを互いに等しく設定した場合は、第1サンギヤ33の歯数zS1と第2サンギヤ36の歯数zS2とを互いに異ならせることにより、大きな減速比Rを設定できる。その場合、第1サンギヤ33の歯数zS1と第2サンギヤ36の歯数zS2との差が小さいほど、減速比Rは大きくなる。すなわち、二番目の例のように、第1サンギヤ33の歯数zS1と第2サンギヤ36の歯数zS2との差が“1”となるように設定することにより、相対的に大きな減速比Rを設定できる。
一方、仮に、第1サンギヤ33の歯数zS1と第2サンギヤ36の歯数zS2との差を“0”にすると、すなわち、歯数zS1と歯数zS2とを互いに等しく設定すると、理論上、減速比Rは無限大になる。言い換えると、第1ギヤ比uと第2ギヤ比uとが互いに等しくなると、減速比Rは無限大になってしまう。そのような場合には、実質的には、減速機構7で、第3回転要素29、すなわち、差動トルク出力軸24の回転速度を減速できない状態になってしまう。また、第1回転軸3と第2回転軸4との間の差動回転も不可能な状態になってしまう。それに対して、この発明の実施形態における減速機構7では、上記のように、第1ギヤ比uと第2ギヤ比uとを互いに異ならせている。そのため、減速比Rが無限大になってしまう状態を回避しつつ、相対的に大きな減速比Rを設定できる。上記の例から分かるように、第1ギヤ比uと第2ギヤ比uとの差が“0”にならない範囲で、それら第1ギヤ比uと第2ギヤ比uとの差を小さくするほど、大きい減速比Rを設定できる。
上記のように、この発明の実施形態におけるトルクベクタリング装置1では、差動機構5、アクチュエータ6、および、減速機構7は、第1回転軸3および第2回転軸4と同一の回転軸線AL上に配置される。すなわち、この発明の実施形態におけるトルクベクタリング装置1は、基本的に、主要な構成要素を第1回転軸3および第2回転軸4と同軸上に配置するいわゆる一軸構造となっている。そのため、装置の径方向への大型化を抑制し、コンパクトなトルクベクタリング装置1を構成できる。
また、減速機構7は、アクチュエータ6の差動トルク出力軸24の回転速度を減速して、差動トルクを増幅する。それとともに、減速機構7は、第1回転軸3と第2回転軸4との間の差動回転の差回転数を増速する。すなわち、差動回転を増大する。その減速機構7は、変則的な一種の複合遊星歯車機構30によって構成され、一般的な遊星歯車機構を用いた減速機構と比較して、相当に大きな減速比を設定できる。そのため、減速機構7の大きな減速作用、すなわち、アクチュエータ6の差動トルクに対する大きなトルク増幅作用により、アクチュエータ6の小型化および軽量化を図ることができる。したがって、トルクベクタリング装置1の体格を小型化することができ、ひいては、トルクベクタリング装置1の車両への搭載性を向上させることができる。
更に、この発明の実施形態におけるトルクベクタリング装置1は、第1回転軸3、第2回転軸4、差動機構5、減速機構7、および、アクチュエータ6と同軸上に、後述する増速遊星歯車機構46、および、減速遊星歯車機構40を備えている。そのうち、減速遊星歯車機構40は、アクチュエータ6と減速機構7の第3回転要素29、すなわち、キャリア35との間に配置されており、アクチュエータ6が差動トルクを出力する場合に、その差動トルクを増幅して減速機構7に伝達する。また、後述するように、減速遊星歯車機構40は、入力部材2(すなわち、デフケース17)、ならびに、第1回転軸3および第2回転軸4が一体となって回転する際に、アクチュエータ6の差動トルク出力軸24の回転速度に対して減速機構7のキャリア35の回転速度が減速する減速機構として機能する。
減速遊星歯車機構40は、第1回転軸3および第2回転軸4と同軸上に配置されている。減速遊星歯車機構40は、シングルピニオン型の遊星歯車機構から構成されており、サンギヤ、リングギヤ、および、キャリアを有している。この発明の実施形態では、他の遊星歯車機構の各回転要素と区別するために、減速遊星歯車機構40のサンギヤ、リングギヤ、および、キャリアを、それぞれ、減速サンギヤ41、減速キャリア42、および、減速リングギヤ43と呼称する。
減速サンギヤ41は、中空形状の回転軸の外周部分に形成されており、ケース8に回転可能に支持されている。減速サンギヤ41は、アクチュエータ6の差動トルク出力軸24に連結されている。減速サンギヤ41と差動トルク出力軸24とは一体に回転する。
減速キャリア42は、減速遊星歯車機構40のプラネタリギヤ44を自転かつ公転可能に支持している。減速キャリア42は、差動機構5のキャリア35と兼用されており、それら減速キャリア42とキャリア35とは一体に回転する。後述するように、減速キャリア42は、入力部材2ならびに第1回転軸3および第2回転軸4が一体となって回転する際に、減速リングギヤ43の回転速度に対して回転速度が減速する。
減速リングギヤ43は、プラネタリギヤ44に噛み合う内歯歯車であり、ケース8に回転可能に支持されている。減速リングギヤ43は、減速機構7を覆うカバー状に形成された連結部材45を介して、後述する増速遊星歯車機構46の増速リングギヤ49に連結されている。減速リングギヤ43と連結部材45および増速リングギヤ49とは一体に回転する。
したがって、減速遊星歯車機構40は、差動トルク出力軸24から差動トルクが伝達されて減速サンギヤ41が回転する場合、減速リングギヤ43が反力要素となり、減速サンギヤ41の回転速度に対して減速キャリア42の回転速度が減速する。すなわち、減速遊星歯車機構40は、アクチュエータ6の減速ギヤ機構として機能する。したがって、減速遊星歯車機構40は、アクチュエータ6とキャリア35との間で、アクチュエータ6が出力する差動トルクを増幅して、キャリア35に伝達する。
図1に示す例では、図中に括弧内の数値で示すように、減速遊星歯車機構40における減速サンギヤ41の歯数が“24”、減速リングギヤ43の歯数が“60”、プラネタリギヤ44の歯数が“18”となっており、この減速遊星歯車機構40の減速比は“3.5”となる。したがって、この減速遊星歯車機構40の減速比を加味した、減速機構7(アクチュエータ6と第2回転軸4との間)の実質的な減速比R’は、“R’=12×3.5=42”となる。減速遊星歯車機構40の減速機能により、より一層大きな減速比を得ることができる。
一方、前述したように、この発明の実施形態におけるトルクベクタリング装置1は、第1回転軸3と第2回転軸4とが同方向に等速で回転する場合、減速機構7が一体になって連れ回りする。その場合に、仮に、アクチュエータ6も一緒に連れ回りしてしまうと、トルクベクタリング装置1の動力伝達効率の低下を招いてしまう。あるいは、アクチュエータ6の慣性トルクに対するキャンセルトルクを出力するための制御が別途必要になってしまう。そのため、この発明の実施形態におけるトルクベクタリング装置1では、上記のようなアクチュエータ6の連れ回りを回避または抑制するために、前述した減速遊星歯車機構40と共に、増速遊星歯車機構46が設けられている。
増速遊星歯車機構46は、第1回転軸3および第2回転軸4と同軸上に配置されている。増速遊星歯車機構46は、シングルピニオン型の遊星歯車機構から構成されており、サンギヤ、リングギヤ、および、キャリアを有している。この発明の実施形態では、他の遊星歯車機構の各回転要素と区別するために、増速遊星歯車機構46のサンギヤ、リングギヤ、および、キャリアを、それぞれ、増速サンギヤ47、増速キャリア48、および、増速リングギヤ49と呼称する。
増速サンギヤ47は、中空形状の軸部材の外周部分に形成されており、回転不可能に固定されている。例えば、ケース8と一体に形成されたフランジ部分(図示せず)に取り付けられている。
増速キャリア48は、増速遊星歯車機構46のプラネタリギヤ50を自転かつ公転可能に支持している。増速キャリア48は、入力部材2に連結されている。具体的には、増速キャリア48は、サンギヤ軸38を介して、デフケース17に連結されている。したがって、増速キャリア48は、サンギヤ軸38および入力部材2と一体に回転する。
増速リングギヤ49は、プラネタリギヤ50に噛み合う内歯歯車であり、減速遊星歯車機構40の減速リングギヤ43と共に、ケース8に回転可能に支持されている。増速リングギヤ49は、連結部材45を介して、減速リングギヤ43に連結されている。増速リングギヤ49と減速リングギヤ43とは一体に回転する。増速リングギヤ49は、増速キャリア48が回転する際に、増速キャリア48の回転数に対して回転数が増速する。
したがって、増速遊星歯車機構46は、入力部材2から動力トルクが伝達されて増速キャリア48が回転する場合、増速サンギヤ47が反力要素となり、増速キャリア48の回転速度に対して増速リングギヤ49の回転速度が増速する増速機構として機能する。
図1に示す例では、図中に括弧内の数値で示すように、増速遊星歯車機構46における増速サンギヤ47の歯数が“24”、増速リングギヤ49の歯数が“60”、プラネタリギヤ50の歯数が“18”となっている。すなわち、増速サンギヤ47の歯数、増速リングギヤ49の歯数、および、プラネタリギヤ50の歯数は、それぞれ、前述の減速遊星歯車機構40にける減速サンギヤ41の歯数、減速リングギヤ43の歯数、および、プラネタリギヤ44の歯数と等しい。したがって、増速遊星歯車機構46と、減速遊星歯車機構40とは、ギヤ比(または、速度伝達比、速度比)が互いに等しい。
この発明の実施形態におけるトルクベクタリング装置1では、第1回転軸3と第2回転軸4とが同方向に等速で回転する場合には、差動機構5および減速機構7の全体が一体となって連れ回りする。それに伴い、増速遊星歯車機構46の増速キャリア48と減速遊星歯車機構40の減速キャリア42とは、同方向に等速で回転する。その場合、増速遊星歯車機構46は、増速サンギヤ47の回転を止めた状態で、増速キャリア48の回転速度に対して増速リングギヤ49の回転速度が増速する増速機構として機能する。一方、減速遊星歯車機構40は、減速リングギヤ43の回転速度に対して減速キャリア42の回転速度が減速する減速機構として機能する。増速キャリア48の回転速度および減速キャリア42の回転速度は互いに等しい。また、増速リングギヤ49と減速リングギヤ43が連結されていることから、それら増速リングギヤ49の回転速度および減速リングギヤ43の回転速度も互いに等しい。そのため、増速遊星歯車機構46の増速比の絶対値と、減速遊星歯車機構40の減速比の絶対値とが等しくなる。この場合、増速サンギヤ47の回転速度が0であることから、減速遊星歯車機構40では、減速遊星歯車機構40のギヤ比に応じて、減速リングギヤ43の回転速度に対して減速サンギヤ41の回転速度が0または0近傍の回転速度に減速する。図1に示す例では、増速遊星歯車機構46のギヤ比と減速遊星歯車機構40のギヤ比とが等しいので、減速サンギヤ41の回転数は0になる。したがって、上記のように第1回転軸3と第2回転軸4とが同方向に等速で回転し、差動機構5および減速機構7が一体となって連れ回りする場合に、減速サンギヤ41に連結しているアクチュエータ6の差動トルク出力軸24は、回転数が0になる。すなわち、アクチュエータ6の連れ回りが抑制される。
したがって、この発明の実施形態におけるトルクベクタリング装置1によれば、差動トルクを出力するアクチュエータ6の連れ回りを抑制して、トルクベクタリング装置1の動力伝達効率を向上させることができる。ひいては、トルクベクタリング装置1を搭載する車両のエネルギ効率を向上させることができる。また、例えば、車両が直進走行している状態で急加速または急減速する場合に、アクチュエータ6の連れ回りが抑制されることから、アクチュエータ6の慣性トルクの影響を排除することができる。そのため、例えば、アクチュエータ6が連れ回る場合の慣性トルクを相殺または減殺するトルクの制御を別途実行しなくともよく、その分、アクチュエータ6を制御する装置の負荷を軽減できる。ひいては、アクチュエータ6によるトルクベクタリング制御の制御性を向上させることができる。
図2から図5に、この発明を適用したトルクベクタリング装置1の他の実施形態を示してある。なお、以下に図示して説明するトルクベクタリング装置1において、上述した図1、あるいは、既出の図面で示したトルクベクタリング装置1と構成や機能が同じ部材もしくは部品等については、図1、あるいは、既出の図面で用いた参照符号と同じ参照符号を付けてある。
〔第2実施形態〕
図2に示すトルクベクタリング装置1は、いわゆる左右デファレンシャル装置として車両に搭載することを想定して構成されている。すなわち、この図2に示すトルクベクタリング装置1では、第1回転軸3、および、第2回転軸4が、それぞれ、車両(図示せず)の車幅方向(回転軸線AL方向、図2の左右方向)に同軸上で、車幅方向の左右に対向して配置される。
図2に示すトルクベクタリング装置1では、入力部材2、すなわち、差動機構5のデフケース17の外周部分に、デフリングギヤ101が取り付けられている。デフリングギヤ101とデフケース17とは一体に回転する。デフリングギヤ101は、大径のかさ歯車であり、プロペラシャフト102の先端(図2の下端)に設けられたドライブピニオン103に噛み合っている。ドライブピニオン103は、デフリングギヤ101よりも小径で歯数の少ないかさ歯車である。したがって、ドライブピニオン103、および、デフリングギヤ101によって、車両の終減速装置(ファイナルギヤ)が構成されている。
プロペラシャフト102は、プロペラシャフト102の軸線方向が回転軸線AL方向に直交するように配置されている。プロペラシャフト102の一方の端部に、ドライブピニオン103が取り付けられている。プロペラシャフト102とドライブピニオン103とは一体に回転する。プロペラシャフト102の他方の端部(図示せず)は、例えばエンジンや電気モータなどの動力源の出力軸(図示せず)が連結される。したがって、デフケース17、すなわち、入力部材2は、デフリングギヤ101、ドライブピニオン103、および、プロペラシャフト102を介して、動力源に連結される。
このように、この発明の実施形態におけるトルクベクタリング装置1は、第1回転軸3、および、第2回転軸4を、それぞれ、車両の車幅方向に同軸上で、車幅方向の左右に対向して配置して、車両に搭載できる。すなわち、トルクベクタリング装置1は、アクチュエータ6を一体に組み込んだ、左右の駆動軸に対するデファレンシャル装置として、車両に搭載できる。したがって、トルクベクタリング装置1は、いわゆるトルクベクタリング機能を備えたコンパクトなデファレンシャル装置として、容易に車両に搭載できる。そのため、従来のデファレンシャル装置としての機能に加えて、アクチュエータ6が出力する差動トルクにより、車両の左右の駆動輪に対するトルクの分配率、ならびに、車両の左右の駆動輪の間の差動回転を、積極的に制御できる。すなわち、左右の駆動輪に対するトルクベクタリングを行うことができる。
〔第3実施形態〕
図3に示すトルクベクタリング装置1は、いわゆるセンターデファレンシャル装置として四輪駆動車両に搭載することを想定して構成されている。すなわち、この図3に示すトルクベクタリング装置1では、第1回転軸3、および、第2回転軸4が、それぞれ、車両(図示せず)の全長方向(回転軸線AL方向、図3の左右方向)に同軸上で、全長方向の前後に対向して配置される。
図3に示すトルクベクタリング装置1では、動力源として動力モータ111を備えている。動力モータ111は、前述した動力モータ10と同様に、例えば、永久磁石式の同期モータ、あるいは、誘導モータなどによって構成されている。動力モータ111は、第1回転軸3および第2回転軸4と同軸上(同一の回転軸線AL1上)に、一体的に配置されている。動力モータ111は、第1回転軸3および第2回転軸4を駆動または制動する動力トルクを出力する。
動力モータ111は、中空形状のロータ112、および、ロータ112を回転可能に支持する中空形状のロータ軸113を有している。ロータ軸113は、ケース8に回転可能に支持されている。ロータ軸113の内周部分に、第1回転軸3が配置されている。ロータ軸113と第1回転軸3とは、互いに相対回転する。ロータ軸113は、減速ギヤ機構114を介して、入力部材2に連結されている。
減速ギヤ機構114は、動力モータ111の出力トルクを増幅して、トルクベクタリング装置1の入力部材2、すなわち、デフケース17に伝達する。減速ギヤ機構114は、サンギヤ115、キャリア116、および、リングギヤ117を有するシングルピニオン型の遊星歯車機構から構成されている。
サンギヤ115は、中空形状の回転軸の外周部分に形成されて、動力モータ111のロータ軸113に連結されている。例えば、サンギヤ115が一体に形成された中空軸とロータ軸113とが連結されている。あるいは、ロータ軸113の先端部分に、サンギヤ115が一体に形成されている。したがって、サンギヤ115とロータ軸113とは一体に回転する。キャリア116は、減速ギヤ機構114を構成する遊星歯車機構のプラネタリギヤ118を自転かつ公転可能に支持している。キャリア116は、デフケース17に連結されている。キャリア116は、デフケース17、すなわち、入力部材2と一体に回転する。リングギヤ117は、プラネタリギヤ118に噛み合う内歯歯車である。リングギヤ117は、ケース8の内壁部分に、回転不可能に固定されている。
減速ギヤ機構114は、動力モータ111が出力する動力トルクがサンギヤ115に伝達されると、リングギヤ117が反力要素となり、サンギヤ115の回転速度に対してデフケース17に連結されたキャリア116の回転速度が減速する。すなわち、減速ギヤ機構114は、動力モータ111が出力した動力トルクを増幅して、入力部材2へ伝達する。したがって、減速ギヤ機構114によって、車両の終減速装置(ファイナルギヤ)が構成されている。
上記のように、この図3に示すトルクベクタリング装置1を用いて、動力源として動力モータ111を同軸上に一体に内蔵した、いわゆる動力ユニットを構成することができる。そして、この図3に示す例のように、一軸構造のトルクベクタリング装置1を、センターデファレンシャル装置として、四輪駆動車両に搭載できる。すなわち、この発明の実施形態におけるトルクベクタリング装置1によれば、センターデファレンシャル装置の機能とトルクベクタリング装置の機能とを兼ね備えた、コンパクトな動力ユニットを構成することができる。
なお、この図3に示すトルクベクタリング装置1においても、前述した他の実施形態と同様に、差動トルクを発生するアクチュエータ6として、制御モータ25が用いられている。それに対して、前述したように、この発明の実施形態におけるトルクベクタリング装置1では、アクチュエータ6として、制御モータ25の他に、差動トルクとして、第2回転軸4、および、差動機構5の第2サイドギヤ20を制動するトルクを発生するブレーキ機構を用いてもよい。例えば、図4に示すように、アクチュエータ6として、コイル122に通電されることにより発生する磁気吸引力を利用して第2回転軸4、および、差動機構5の第2サイドギヤ20を制動する励磁作動型の電磁ブレーキ121を用いることができる。あるいは、図5に示すように、アクチュエータ6として、電気モータ132によって駆動される送りねじ機構133を用いて摩擦制動力を発生させる電動ブレーキ131などを用いることができる。
1 トルクベクタリング装置
2 入力部材
3 第1回転軸
4 第2回転軸
5 差動機構
6 アクチュエータ
7 減速機構
8 ケース
9 入力ギヤ
10 動力モータ(動力源)
11 ブレーキ機構(動力源)
12 動力軸
13 (動力モータ10の)出力軸
14 (ブレーキ機構11の)回転軸
15 (動力軸12の)ピニオン
16 カウンタギヤ
17 (差動機構5の)デフケース
18 (差動機構5の)デフリングギヤ
19 (差動機構5の)第1サイドギヤ
20 (差動機構5の)第2サイドギヤ
21 (差動機構5の)第1デフピニオン
22 (差動機構5の)第2デフピニオン
23 (差動機構5の)ピニオン軸
24 (アクチュエータ6の)差動トルク出力軸
25 制御モータ(アクチュエータ)
26 (制御モータ25の)ロータ
27 (減速機構7の)第1回転要素
28 (減速機構7の)第2回転要素
29 (減速機構7の)第3回転要素
30 (減速機構7の)複合遊星歯車機構
31 (複合遊星歯車機構30の)第1遊星歯車機構
32 (複合遊星歯車機構30の)第2遊星歯車機構
33 (第1遊星歯車機構31の)第1サンギヤ
34 (第1遊星歯車機構31の)第1プラネタリギヤ
35 (第1遊星歯車機構31および第2遊星歯車機構32の)キャリア
36 (第2遊星歯車機構32の)第2サンギヤ
37 (第2遊星歯車機構32の)第2プラネタリギヤ
38 (第1サンギヤ33の)サンギヤ軸
39 (キャリア35の)プラネタリギヤ軸
40 減速遊星歯車機構
41 (減速遊星歯車機構40の)減速サンギヤ
42 (減速遊星歯車機構40の)減速キャリア
43 (減速遊星歯車機構40の)減速リングギヤ
44 (減速遊星歯車機構40の)プラネタリギヤ
45 連結部材
46 増速遊星歯車機構
47 (増速遊星歯車機構46の)増速サンギヤ
48 (増速遊星歯車機構46の)増速キャリア
49 (増速遊星歯車機構46の)増速リングギヤ
50 (増速遊星歯車機構46の)プラネタリギヤ
101 (差動機構5の)デフリングギヤ
102 プロペラシャフト
103 ドライブピニオン
111 動力モータ(動力源)
112 (動力モータ111の)ロータ
113 (動力モータ111の)ロータ軸
114 減速ギヤ機構
115 (減速ギヤ機構114の)サンギヤ
116 (減速ギヤ機構114の)キャリア
117 (減速ギヤ機構114の)リングギヤ
118 (減速ギヤ機構114の)プラネタリギヤ
121 電磁ブレーキ(アクチュエータ)
122 (電磁ブレーキ121の)コイル
131 電動ブレーキ(アクチュエータ)
132 (電動ブレーキ131の)電気モータ
133 (電動ブレーキ131の)送りねじ機構
AL (第1回転軸3および第2回転軸4の)回転軸線

Claims (1)

  1. 動力源から動力トルクが入力される入力部材と、同軸上で対向して配置され、互いに相対回転可能な第1回転軸および第2回転軸と、前記動力トルクを前記第1回転軸と前記第2回転軸とに分配して伝達するとともに、前記第1回転軸と前記第2回転軸との間の差動回転を可能にする差動機構と、前記第1回転軸および前記第2回転軸と同軸上に配置され、前記第2回転軸に差動トルクを付与して前記第1回転軸と前記第2回転軸とを差動回転させるアクチュエータと、前記アクチュエータと前記第2回転軸との間に配置され、前記アクチュエータが出力する前記差動トルクを前記第2回転軸に伝達する減速機構と、を備えたトルクベクタリング装置において、
    前記減速機構は、
    それぞれ、前記第1回転軸および前記第2回転軸と同軸上に配置される、第1回転要素、第2回転要素、および、第3回転要素を有する複合遊星歯車機構から構成され、
    前記第1回転要素と前記第2回転要素との差動回転が可能であり、
    前記入力部材と前記第1回転要素とが連結され、
    前記第2回転要素と前記第2回転軸とが連結され、
    前記第3回転要素と、前記差動トルクを出力する前記アクチュエータの差動トルク出力軸とが連結され、
    前記第1回転要素と前記第3回転要素との間に形成されるギヤ対のギヤ比と、前記第2回転要素と前記第3回転要素との間に形成されるギヤ対のギヤ比とが互いに異なっており、
    前記差動トルクを増幅して前記第2回転軸に伝達するとともに、前記第1回転軸と前記第2回転軸との差動回転の差回転数を増速させ、
    それぞれ、前記第1回転軸および前記第2回転軸と同軸上に配置され、増速サンギヤ、増速キャリア、および、増速リングギヤを有する増速遊星歯車機構と、減速サンギヤ、減速キャリア、および、減速リングギヤを有する減速遊星歯車機構とを更に備え、
    前記増速サンギヤは、回転不可能に固定され、
    前記増速キャリアは、前記入力部材に連結されて前記入力部材と一体に回転し、
    前記増速リングギヤは、前記増速キャリアが回転する際に、前記増速キャリアの回転速度に対して回転速度が増速し、
    前記減速サンギヤは、前記差動トルク出力軸に連結されて前記差動トルク出力軸と一体に回転し、
    前記減速キャリアは、前記入力部材ならびに前記第1回転軸および前記第2回転軸が一体となって回転する際に、前記減速リングギヤの回転速度に対して回転速度が減速し、
    前記減速リングギヤは、前記増速リングギヤに連結されて前記増速リングギヤと一体に回転する
    ことを特徴とするトルクベクタリング装置。
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