以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なときを除き、同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
また、実施の形態で用いられる図面では、図面を見易くするために、断面図であってもハッチングが省略されている場合もあり、平面図であってもハッチングが付されている場合もある。
また、実施の形態では、当業者が本開示を実施するのに十分詳細にその説明がなされているが、他の実装および形態も可能である。本開示の技術的思想の範囲および精神を逸脱することなく、構成および構造の変更と、多様な要素の置き換えとが可能であることを理解する必要がある。従って、以降の記述をそれらに限定して解釈してはならない。
また、以下の実施の形態の説明では、荷電粒子線装置として、電子ビームを使用した走査電子顕微鏡(SEM)に、本開示を適用した例を示す。しかし、この実施の形態は限定的に解釈されるべきではなく、例えば、イオンビーム等の荷電粒子ビームを使用する装置、または一般的な観察装置に対しても、本開示は適用され得る。
また、本願において説明されるX方向、Y方向およびZ方向は互いに直交している。本願では、Z方向をある構造体の上方向または高さ方向として説明する場合もある。また、X方向およびY方向からなる面は平面を成し、Z方向に垂直な平面である。Y方向およびZ方向からなる面は平面を成し、X方向に垂直な平面である。X方向およびZ方向からなる面は平面を成し、Y方向に垂直な平面である。例えば、本願において、「Y方向から見た平面視」と表現した場合、それは、X方向およびZ方向からなる面を、Y方向から見ることを意味する。
(実施の形態1)
<荷電粒子線装置1の構造>
以下に図1および図2を用いて、実施の形態1における荷電粒子線装置1について説明する。荷電粒子線装置1は、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)であり、その応用装置である測長SEMである。測長SEMは、半導体デバイスのような試料に含まれる微細パターンの寸法計測に特化した装置である。図1は、荷電粒子線装置1の全体的な概要を説明する模式図であり、図2は、荷電粒子線装置1の要部を説明する模式図である。
また、実施の形態1で使用される試料10は、例えば半導体技術で製造されたウェハである。ウェハには、半導体基板、上記半導体基板上に形成されたトランジスタなどの半導体素子、および、上記半導体素子上に形成された配線層などが含まれる。また、試料10の状態は、半導体基板のみの場合も含むし、上記半導体基板上に上記半導体素子および上記配線層などが完成されている場合も含むし、これらが製造途中である場合も含む。
まず、図1を用いて、試料10の搬入時および搬出時における、それらの経路および動作について説明する。
荷電粒子線装置1は、測長SEMユニット201および試料搬送ユニット202を備え、荷電粒子線装置1の外部において、1枚または複数枚の試料10が収納されたカセット204が、ユーザインタフェース205に設置されている。試料搬送ユニット202は、カセット204と測長SEMユニット201との間で試料10を搬送するための試料搬送用ロボット203を備えている。
測長SEMユニット201は、試料室171および準備室172を備え、試料室171には、電子光学系170と、試料テーブル20が保持されたホルダ50を設置可能なステージ60とが設けられている。ステージ60は、X方向、Y方向およびZ方向へ移動が可能である。また、準備室172には、ホルダ搬送用ロボット161が設けられている。
カセット204の内部は、窒素などの不活性ガスによって充満され、準備室172では、大気圧および真空のように、圧力の状態遷移が繰り返し行われる。また、試料搬送ユニット202の内部が、窒素などの不活性ガスによって充満されていてもよい。
カセット204は、ユーザまたは工場の自動システムによって、ユーザインタフェース205に手動または自動で載置される。ユーザインタフェース205は、ロードポートまたはカセット置台などと呼ばれる場合もある。試料10を収納するカセット204が載置された後に、ユーザまたは工場の自動システムからコントローラ(図示せず)に対して、寸法計測などの処理および命令が入力される。
上記コントローラは、入力された処理および命令に従って、試料10を測長SEMユニット201内の試料室171へ搬入するための動作を行う。
まず、試料搬送ユニット202内の試料搬送用ロボット203によって、カセット204から試料10が取り出される。次に、出入口173の開閉を伴って、試料搬送用ロボット203に保持されている試料10が、準備室172へ搬入される。
準備室172内に実装されているホルダ搬送用ロボット161のアーム上には、ホルダ50が設置されている。試料10は、準備室172内のホルダ50上に搭載され、ホルダ50によって保持される。
試料10がホルダ50上に保持された後、上記コントローラは、準備室172内を真空にするように命令を発する。出入口174の開閉に伴って、ホルダ搬送用ロボット161は、試料10が保持されたホルダ50を、試料室171へ搬入する動作210を行う。搬入されたホルダ50は、ステージ60の試料テーブル20の上に載置され、ステージ60の移動機構によって、ステージ60は、電子光学系170の視野範囲内に移動される。上記コントローラが制御部101(図2参照)を介して電子光学系170の制御を行うことで、試料10のパターンの寸法計測などが実施され、試料10のSEM画像などの解析データが取得される。
所望の寸法計測が行われた後に、試料10は、上記説明と逆の手順によって搬出される。ホルダ搬送用ロボット161の動作210によって、ホルダ50は、ステージ60から離脱され、試料室171から準備室172へ搬出される。準備室172において大気開放が行われた後、試料搬送用ロボット203によって、ホルダ50に搭載されていた試料10が取り出され、試料10は、カセット204内へ収納される。
その後、次の試料10または次のカセット204の処理が、同様の手順によって実施される。測長SEMは、24時間365日稼働する半導体工場におけるプロセスのインライン装置として用いられる。従って、荷電粒子線装置1には、稼働率および信頼性などの観点において、高い性能が必要とされる。
図2を用いて、荷電粒子線装置1の一部である測長SEMユニット201の構成について説明する。
まず、電子光学系170の構成および動作の概要について説明する。なお、ここで説明する内容は、基本構成の一例であり、図示および説明を省略している部分も存在する。そのため、様々な機能を実現するために電子光学系170に実装される電子光学系部品およびレンズなどが、図2に追加、削除または置換されても構わない。
図示しない電子光学系電極によって、電子源(荷電粒子源)110から放出され、且つ、加速された電子ビーム(一次電子ビーム、荷電粒子ビーム)EB1は、走査用偏向器113によって、試料10上を一次元または二次元に走査される。この時、電子ビームEB1は、電子レンズ114によって収束され、試料10へ照射される。試料10への照射の際に、電子ビームEB1は、ホルダ50に印加された負電圧であるリターディング電圧31によって減速されている。
電子ビームEB1が試料10に照射されると、照射された場所から二次電子および反射電子のような荷電粒子が放出される。この放出された荷電粒子は、試料10に印加されるリターディング電圧31に基づいた加速作用によって、電子源110の方向へ加速され、変換電極111に衝突し、二次電子EB2を発生させる。変換電極111から放出された二次電子EB2は、検出器112によって捕捉される。捕捉された二次電子EB2の量によって検出器112の出力が変化し、この出力に応じて、SEM画像の各ピクセルの輝度が決定される。
例えば、二次元像を形成する場合には、走査用偏向器113の制御信号と、検出器112の出力との同期をとることで、走査領域の画像が形成される。例えば試料10上のフォトレジストパターンに対する解析を行う場合、測長SEMでは、フォトレジストパターンのSEM画像が取得され、SEM画像の濃淡信号から、フォトレジストパターンの幅が自動で計測される。
電子光学系170の制御およびSEM画像の形成などは、制御部101からの制御信号によって制御される。制御部101には、各種用途の必要数に応じて、コントローラおよび電源が複数実装されている。制御部101は、図1に示されるユーザインタフェース205のコントローラによって制御される。上記コントローラによって、FAPC(Factory Automation PC)、または、その目視確認ができるモニタを有した情報端末へ、その表示、各コントローラ間への通信、または、工場の自動システムへの通信などが行われる。
また、ステージ60は、電子源110側の最表面に試料テーブル20を含み、試料テーブル20は、真空用高電圧ケーブル40、真空封止用のコネクタ46および大気用高電圧ケーブル41を介してリターディング電源30に電気的に接続されている。すなわち、ステージ60は、リターディング電源30に電気的に接続されている。このため、ホルダ50を設置可能なステージ60を介して、ホルダ50および試料テーブル20にリターディング電圧31を印加させることが可能となっている。
真空用高電圧ケーブル40、コネクタ46、大気用高電圧ケーブル41およびリターディング電源30は、測長SEMユニット201に含まれているが、真空用高電圧ケーブル40は試料室171の内部に設けられ、大気用高電圧ケーブル41およびリターディング電源30は試料室171の外部に設けられている。コネクタ46は、セラミックなどからなり、試料室171の壁面に取り付けられている。また、コネクタ46は、試料室171の内外を電気的に接続可能にさせるように、真空用高電圧ケーブル40の端部と、大気用高電圧ケーブル41の端部とに接続されている。
ここで、ホルダ50を介して試料10へ負電圧であるリターディング電圧31を印加する方法は、リターディング法と呼ばれる。
走査型電子顕微鏡において、リターディング法とは、最終加速電圧よりも高い加速電圧の電子ビームEB1を、試料10の直前で減速させることで、高分解能を得る手法である。リターディング法を用いることで、極低加速電圧において、試料10の高分解能の観察が可能となる。この利点として、上記低加速における分解能の改善ができることに加えて、試料10の最表面の微細な状態が観察できること、および、電子ビームEB1によるダメージに敏感な試料10の観察ができることなどが挙げられる。
これらの利点によって、リターディング法は採用されているが、そのためには、試料10へ、比較的に大きな負電圧であるリターディング電圧31を印加する必要がある。このようなリターディング電圧31は、例えばマイナス数kVの電圧である。
リターディング電圧31は、リターディング電源30の内部で生成され、リターディング電源30の外部へ出力される。出力されたリターディング電圧31は、大気用高電圧ケーブル41およびコネクタ46を介して、試料室171の内部へ導入される。試料室171の内部では、リターディング電圧31は、真空用高電圧ケーブル40を介して、ステージ60の試料テーブル20へ印加される。なお、真空用高電圧ケーブル40は、ステージ60の可動に耐えられるようにステージ60に配線されている。
試料10へリターディング電圧31の印加する工程は、ホルダ50がステージ60の試料テーブル20上に設置された後、SEM画像の取得のためにステージ60が視野範囲まで移動する時に開始される。この時、ホルダ50へリターディング電圧31が印加され、ホルダ50の電位は、基準電位からリターディング電位になる。
逆に、試料10からリターディング電圧31を遮断する工程は、SEM画像の取得などの作業が終了した後、ホルダ搬送用ロボット161がホルダ50を搬出する前まで行われる。この時、リターディング電圧31は遮断され、ホルダ50の電位は基準電位に戻される。その後、準備室172へホルダ50が搬送される。
試料室171の内部において試料10を解析する場合、電子源110から放出された電子ビームEB1が試料10に照射され、電子ビームEB1の照射期間中において、リターディング電圧31は、ホルダ50と試料テーブル20との接触部(接点部)を介してホルダ50へ印加される。ホルダ50へリターディング電圧31が印加されることで、上述のように、ホルダ50と一体になっている試料10へもリターディング電圧31が印加され、試料10の表面がリターディング電位となる。なお、上記接触部は、例えば後述の図3または図4のような等価回路図では、接触部301として示されている。
ここで、試料室171の内部では、高真空が保たれる必要があるので、できる限りその容量を小さく制作する必要がある。通常、リターディング電源30は、測長SEMユニット201の内部に実装され、試料室171の外部に設けられている。このため、リターディング電源30の電源ラインは、一般的に長くなってしまう傾向がある。
<検討例におけるリターディング電源30の電源ラインと、その問題点>
図3は、本願発明者らが検討した検討例における等価回路図であり、リターディング電源30の電源ラインを示す等価回路図である。
リターディング電源30は、リターディング電圧31と、パスコンなどのリターディング電源30の出力容量32と、リターディング電源30の抵抗素子(出力抵抗素子、電流抑制素子)33とを有している。
リターディング電源30の電源ラインにおいて、大気用高電圧ケーブル41および真空用高電圧ケーブル40の等価回路は、ケーブルの抵抗成分42と、ケーブルの誘導成分43と、ケーブルの抵抗成分44と、ケーブルの容量成分45とによって示されている。ここで、ケーブルの容量成分45は、大気用高電圧ケーブル41、真空用高電圧ケーブル40およびコネクタ46などからなるリターディング電源30の電源ラインの浮遊容量の合計である。実際には、リターディング電源30の電源ライン上の様々な箇所には、小さい浮遊容量が存在しているが、ケーブルの容量成分45には、そのような小さい浮遊容量も含まれる。
リターディング電源30の電源ライン上において、試料テーブル20(ステージ60)は、リターディング電源30ラインとホルダ50とが接続される接触部301を有している。リターディング電源30ラインにおいて、ホルダ50の等価回路は、ホルダ50の容量成分51で示すことができる。こちらも上記ケーブルの容量成分45と同様に、実際には、複数の箇所において小さな浮遊容量が存在しており、ここでは、それらの合計をホルダ50の容量成分51として示している。
このように、リターディング電源30から見ると、試料10が載置されたホルダ50は、容量性負荷として考えることができる。そのため、マイナス数kVを出力する高電圧電源であるリターディング電源30では、大きな電流は必要が無い。更に、突入電流を防止する目的もあり、出力側には電流抑制素子として抵抗素子33が実装されている。
この抵抗素子33は、非常に重要である。仮に、人が感電した場合であっても、抵抗素子33は、安全な範囲の電流値に絞ることができる機能を有している。また、抵抗素子33は、リターディング電圧31が高電圧であるので、電圧の印加時および遮断時の過渡応答に対して、急峻な変化を抑制する機能も有している。更に、ステージ60の移動中に、大きな電界が発生することを緩和するために、抵抗素子33は、静電誘導などの影響を抑える機能も有している。
リターディング電圧31が急峻に変化する場合、急激な電荷の移動(電流)が伴われるが、この急峻な変化は、ステップ応答またはインパルス応答として考えることができる。これらの応答をフーリエ変換すればわかるように、その変化点では、高周波成分が多く含まれるので、高周波成分が、放射ノイズとして空間へ伝搬されることがある。また、ケーブルの容量成分45およびホルダ50の容量成分51などに含まれる浮遊容量などを介して、高周波成分が、伝導ノイズとして、真空試料室、他の信号ケーブル、他の電源ケーブルおよび基準フレームなどへ伝搬されることがある。
低電圧回路または小電流回路では、このような放射ノイズまたは伝導ノイズによる影響が大きい。また、共振などの条件によっては、固有な場所で各ノイズが大きくなる場合があるので、制御部101内のコントローラの誤動作を引き起こしたり、最悪の場合は、電子部品の破損に至ったりする可能性がある。これによって荷電粒子線装置1の性能に悪影響が及び、荷電粒子線装置1の信頼性が低下する恐れがある。それらを防ぐためにも、抵抗素子33は重要である。
ところが、上述のように、リターディング電源30の電源ラインの大気用高電圧ケーブル41および真空用高電圧ケーブル40は、荷電粒子線装置1の構成上、やむを得ず長くなってしまう。従って、ケーブルの容量成分45が無視できない状態となる。その場合、供給源であるリターディング電源30に、抵抗素子33が存在しているだけでは、上述の期待する効果を発揮させることが困難である。
例えば、装置実測では、各容量成分の関係は、「ホルダ50の容量成分51<ケーブルの容量成分45」であり、各容量成分の割合は、「ホルダ50の容量成分51:ケーブルの容量成分45=1:2」であった。
ケーブルの容量成分45(静電容量C)が、上述のようにケーブル長などによって大きくなり、リターディング電圧31(電圧V)もマイナス数kVと高いので、Q=CVの関係から、ケーブルの容量成分45に蓄積される電荷Qが非常に大きくなる。
リターディング電圧31が印加された状態、つまり、ケーブルの容量成分45に電荷が蓄積された状態であり、且つ、ホルダ50の容量成分51が空状態(ゼロ状態)において、試料テーブル20とホルダ50とが接触部301で接触すると、ケーブルの容量成分45に蓄積された電荷が、空状態のホルダ50の容量成分51へ急激に移動する。これは、電流が急峻に流れることを意味し、リターディング電圧31の急峻な変化を意味する。すなわち、これは、荷電粒子線装置1の信頼性が低下する可能性があることを意味している。
また、リターディング電圧31を遮断する際に、ホルダ50の容量成分51またはケーブルの容量成分45に電荷が残されている状態で、基準電位であるホルダ搬送用ロボット161と、ホルダ50とが接触すると、急激な電荷の移動が発生する場合がある。従って、上述と同様に、荷電粒子線装置1の信頼性が低下する可能性がある。
電荷の急激な移動が発生した場合、すなわち、急峻な電流が流れた場合には、ケーブルの抵抗成分42およびケーブルの誘導成分43によって、それらが大きな電圧として見えることがある。また、同時にリターディング電圧31の急峻な変化を伴うことになる。
この電源ラインの急峻な変化は、リターディング電圧31の印加時および遮断時以外にも、意図せず発生する場合がある。それは、リターディング電源30の電源ラインと、試料室171を構成するチャンバおよびフレームなどの基準電位との間で、沿面放電または空間放電などのような放電が発生した場合である。これらの放電は、例えば、試料10と共に異物が混入してしまった場合に発生する。この場合、異物の周辺に大きな電界集中が発生する、または、異物自体がキャリアとなることによって絶縁破壊が発生し、絶縁破壊が原因となって放電が発生する。
また、半導体の製造プロセスでは、様々な材料および様々な薬品が使用され、試料10を構成する膜およびパターン形状には、様々な物質が含まれている。そのため、高真空の試料室171へ試料10を搬入した際に、意図せずに試料10からガスが発生してしまう場合がある。そのガスは、準備室172内で発生するとは限らず、ガスは、試料室171内で発生する場合もある。試料10からガスが発生してしまった場合も、局所的に真空度が下がり、沿面距離または空間距離が耐えられなくなり、放電が発生することがある。ここで、低真空状態は、高真空状態または大気状態よりも放電しやすい状態である、というパッシェンの法則が経験的に知られている。
放電時には、本来、電流が流れるはずがない試料室171のフレームまたはケーブルなどに電流が流れると共に、放電時に発生したエネルギーにより、放射ノイズである電磁波も飛び交ってしまう。この放電のインパクトは、多くの電荷の移動を伴った場合に影響が大きくなる。放電が発生すると、ホルダ50の容量成分51およびケーブルの容量成分45に蓄えられていた電荷が、一気に放出されるので、放電のインパクトと共に、上述と同様の急峻な電圧変化が発生し、放射ノイズまたは伝導ノイズが発生する。そのため、放電の影響によって、荷電粒子線装置1の信頼性が低下する可能性がある。
<実施の形態1におけるリターディング電源30の電源ライン>
本願発明者らは、以上のような検討例が有する問題点も考慮し、リターディング電源30とホルダ50とを結ぶ電源ラインに関する工夫を行った。図4は、実施の形態1におけるリターディング電源30の電源ラインの等価回路図を示している。
図4に示される電源ラインの各構成は、検討例の図3に示される電源ラインの各構成とほぼ同様であるが、試料テーブル20(ステージ60)の構成が検討例と異なっている。従って、以下の説明では、試料テーブル20(ステージ60)以外の構成についての説明を省略する。
実施の形態1における試料テーブル20は、第1の抵抗成分R1、第2の抵抗成分R2および第3の抵抗成分R3を有している。実施の形態1においても、試料テーブル20とホルダ50との接触部301を介して、リターディング電圧31の印加および遮断が行われる。また、実施の形態1では、抵抗成分R1、抵抗成分R2および抵抗成分R3を含む配線構造体を、それぞれ端子TR1、端子TR2および端子TR3としている。
ホルダ50を搬入する動作210に伴って、リターディング電圧31は、端子TR1〜TR3を介して、ホルダ50へ印加される。すなわち、リターディング電圧31は、最初に端子TR3を介してホルダ50へ印加され、次に端子TR2を介してホルダ50へ印加され、最後に端子TR1を介してホルダ50へ印加される。このように、ホルダ50を端子TR3、端子TR2および端子TR1と順番に接触させながら、リターディング電圧31を徐々に上昇させる。なお、ここではリターディング電圧31は負電圧なので、実際には、リターディング電圧31を徐々に降下させる。以降では、リターディング電圧31を大きくすることを「降下」と表現し、リターディング電圧31を小さくすることを「上昇」と表現する。
リターディング電圧31が目標の電位まで到達したら、最終的には、リターディング電圧31が端子TR1を介してホルダ50に印加された状態で、上記SEM画像の取得が行われる。
SEM画像の取得およびパターン計測の処理などが終了した後、ホルダ50が搬出される際には、動作210に伴って、ホルダ50は、端子TR1に接触している状態から、端子TR2および端子TR3に接触している状態へ順番に移行される。そして、リターディング電圧31を徐々に上昇させ、ホルダ50が基準電位まで到達した後、ホルダ搬送用ロボット161によってホルダ50が搬出される。
ここで、端子TR1〜TR3に含まれる抵抗成分R1〜R3は、ホルダ50の容量成分51とローパスフィルタの関係になっているので、RCの時定数によって、リターディング電圧31は、ゆっくりと印加されるようになる。すなわち、ケーブルの容量成分45にたまった電荷が、ホルダ50の容量成分51に流れ込む際、または、容量成分51にたまった電荷が、ケーブルの容量成分45に流れ込む際に、抵抗成分R1〜R3は、これらの電荷の急激な移動を抑制している。言い換えれば、抵抗成分R1〜R3は、突入電流を制限し、電流抑制素子として機能している。
また、試料10またはホルダ50において、意図しない放電が起きた場合には、ホルダ50の容量成分51にたまった電荷は放出される。しかし、リターディング電圧31が抵抗成分R1を介してホルダ50に印加されているので、電流が抑制され、ケーブルの容量成分45からの急激な電荷の放出が抑制され、放電のインパクトが軽減される。
ホルダ50が試料室171へ搬入されてから、SEM画像の取得までの期間には、ホルダ50を電子光学系170の視野範囲へ移動させるので、電気的に見れば、少し時間がある。その時間の範囲内において、リターディング電圧31を目標の電位まで徐々に変化させ、ホルダ50にリターディング電圧31を印加させることができる。リターディング電圧31を遮断する場合も同様である。
リターディング電圧31が印加または遮断される時の過渡応答の影響を下げるために、及び、急激な電界の変化を防ぐために、制御部101は、プログラムに従って、徐々にリターディング電圧31を上昇または降下させる。しかし、ホルダ50と試料テーブル20との接触部301は、メカニカルスイッチと原理的に同じであるが、その機械的な構造に起因して、極々まれに接触が不良となる状況、または、チャタリングのように離脱と着脱とが繰り返される状況が、発生してしまう可能性がある。そのような場合、上述のように、徐々にリターディング電圧31を変化させたとしても、期待する効果が発揮されない可能性がある。
また、例えば、リターディング電圧31の遮断時に、徐々にリターディング電圧31を降下させたとしても、意図せずに電荷が蓄えられている個所が発生していた場合には、電荷が残された状態のまま、ホルダ50と試料テーブル20とが接触する可能性がある。その場合には、上述と同様に、急峻な電荷の移動が発生してしまうことがある。そして、放電のようなイレギュラーな状況の発生の場合には、プログラムで徐々に変化される対応だけでは、急峻な電荷の移動を防ぐことができない。
以上を考慮して、実施の形態1では、制御部101のプログラムは従来通りであるが、機械的な構造の追加が行われているのである。すなわち、接触部301において、抵抗成分R1〜R3のような2つ以上の異なる抵抗成分を含む配線構造体の追加が行われている。
実施の形態1では、抵抗成分R1〜R3の各々のシート抵抗が、互いに異なっている。言い換えれば、端子TR1〜TR3の各々に含まれる導電材料のシート抵抗が、互いに異なっている。また、抵抗成分R1〜R3は、比較的大きな抵抗値に設定されている必要があるので、抵抗成分R1〜R3の各々のシート抵抗は、大気用高電圧ケーブル41および真空用高電圧ケーブル40の各々に含まれる導電材料のシート抵抗よりも大きく設定される。言い換えれば、端子TR1〜TR3の各々に含まれる導電材料のシート抵抗は、大気用高電圧ケーブル41および真空用高電圧ケーブル40の各々に含まれる導電材料のシート抵抗よりも大きく設定される。
また、抵抗成分R3および抵抗成分R1の各々のシート抵抗は、相対的に大きく、抵抗成分R2のシート抵抗は、抵抗成分R3および抵抗成分R1の各々のシート抵抗よりも小さい。抵抗成分R3のシート抵抗が相対的に大きいことで、ファーストコンタクトの影響を和らげることができる。抵抗成分R2のシート抵抗が相対的に小さいことで、所望の時間までにリターディング電圧31の昇圧または降圧を容易に行うことができる。抵抗成分R1のシート抵抗が相対的に大きいことで、放電などのような予期せぬ電荷の移動に対して備えることができる。なお、抵抗成分R3のシート抵抗および抵抗成分R1のシート抵抗は、同じでもよいし、互いに異なっていてもよい。このように抵抗成分R1〜R3の各々のシート抵抗を設定することで、荷電粒子線装置1の信頼性低下を防ぐことが可能となる。
なお、実施の形態1では、3種類の抵抗成分R1〜R3を例示しているが、互いにシート抵抗の異なる抵抗成分R1および抵抗成分R2のみを適用してもよいし、互いにシート抵抗の異なる抵抗成分R3および抵抗成分R2のみを適用してもよい。すなわち、ステージ60には、少なくとも、互いにシート抵抗の異なる2種類の抵抗成分が備えられていればよい。
例えば、システムとして放電が多いようなアプリケーションの場合には、小さいシート抵抗を有する抵抗成分R2および大きいシート抵抗を有する抵抗成分R1を適用する。前段に抵抗成分R2を適用することで、速やかにリターディング電圧31を目標の電位まで降下させることができ、後段に抵抗成分R1を適用することで、放電などの予期せぬ電荷の移動を防ぐことができる。
また、システムとして、放電は少ないが、ステージの移動が急速であり、チャタリングまたはファーストコンタクトの影響が避けられないアプリケーションの場合などには、上述の例と逆の設計を行ってもよい。その場合、大きいシート抵抗を有する抵抗成分R3を適用することで、ファーストコンタクトの影響を和らげることができ、後段に小さいシート抵抗を有する抵抗成分R2を適用することで、速やかにリターディング電圧31を目標の電位まで降下させることができる。
また、ステージ60には、3種類以上の抵抗成分が設けられていてもよい。その場合でも、3種類以上の抵抗成分のシート抵抗は、それぞれ異なっており、大気用高電圧ケーブル41および真空用高電圧ケーブル40の各々に含まれる導電材料のシート抵抗よりも大きい。
<端子TR1〜TR3を有するステージ60の構造>
図5は、実施の形態1におけるステージ60のうち試料テーブル20周辺の構造を示す断面図である。
実施の形態1では、ステージ60(試料テーブル20)に、抵抗成分を含む配線構造体として端子TR1〜TR3が設けられている。ステージ60の一部は、ホルダ50を搬送させるための搬送経路A1を構成し、搬送経路A1は、ホルダ50がステージ60に設置されてから電子光学系170の視野範囲内に移動するための移動領域A2、および、ホルダ50が移動を完了し、ステージ60に固定されるための固定領域A3を含む。なお、ここでは図示はしないが、ステージ60には、搬送経路A1に沿ってレールおよびベアリングなどのガイド部材が設けられている。
端子TR1は、ステージ60の表面(試料テーブル20の表面)に設けられた電極EL1と、抵抗成分R1を構成する導電材料を含む抵抗素子RE1とを有する。また、端子TR2は、ステージ60の表面に設けられた電極EL2と、抵抗成分R2を構成する導電材料を含む抵抗素子RE2とを有し、端子TR3は、ステージ60の表面に設けられた電極EL3と、抵抗成分R3を構成する導電材料を含む抵抗素子RE3とを有する。電極EL1〜EL3は、それぞれ抵抗素子RE1〜RE3に電気的に接続され、それぞれステージ60の別の表面に設けられている。
実施の形態1では、抵抗素子RE1〜RE3は、試料テーブル20の内部に設けられ、絶縁層ILによって互いに物理的に絶縁されている。抵抗素子RE1〜RE3は、それぞれ、電極EL1〜EL3と真空用高電圧ケーブル40との間に設けられ、真空用高電圧ケーブル40に電気的に接続されている。
ホルダ50は、搬入または搬出の動作210によって、ステージ60の搬送経路A1を移動する。搬入時では、ホルダ50が搬送経路A1に設置された時から、ホルダ50が固定領域A3に到達するまでの期間において、端子TR1〜TR3には、リターディング電圧31が印加されている。すなわち、リターディング電圧31は、最初、端子TR3の電極EL3を介してホルダ50へ印加され、次に、端子TR2の電極EL2を介してホルダ50へ印加され、最後に、端子TR1の電極EL1を介してホルダ50へ印加される。
搬出時には、搬入時と逆の動作が行われる。ホルダ50が固定領域A3から準備室172側へ移動し、ホルダ搬送用ロボット161によってホルダ50がステージ60から離脱する前までの期間において、端子TR1〜TR3には、リターディング電圧31が印加されている。すなわち、リターディング電圧31は、最初、端子TR1の電極EL1を介してホルダ50へ印加され、次に、端子TR2の電極EL2を介してホルダ50へ印加され、最後に、端子TR3の電極EL3を介してホルダ50へ印加される。
なお、ホルダ50の移動中では、例えば、ホルダ50が電極EL3および電極EL2の両方に接触し、抵抗素子RE3および抵抗素子RE2が並列接続となる場合がある。その場合、抵抗成分R3と抵抗成分R2との合成抵抗成分が発生するが、抵抗成分R1〜R3の値を、その際に最適な挙動となるように設定しておけば、特に問題はない。
また、試料室171の内部において試料10を解析する場合、解析は、ホルダ50が固定領域A3に固定された状態で行われる。電子ビームEB1の照射期間中において、ホルダ50には、端子TR1を介してリターディング電源30からリターディング電圧31が印加される。
従って、ホルダ50が固定領域A3に到達し、ステージ60に固定された後には、端子TR1は、固定領域A3においてホルダ50と接触する。一方で、端子TR2および端子TR3は、ホルダ50が固定領域A3に到達する前にはホルダ50に接触するが、ホルダ50が固定領域A3に到達した後にはホルダ50に接触しない。
図4に示されるケーブルの容量成分45の影響を小さくするためには、接触部301の近傍に、抵抗成分R1〜R3が実装される必要がある。接触部301は、端子TR1〜TR3とホルダ50との接触面、ここでは電極EL1〜EL3とホルダ50との接触面に相当する。図5に示されるように、ステージ60の試料テーブル20に抵抗成分R1〜R3を含む端子TR1〜TR3が設けられていることで、ケーブルの容量成分45の影響を小さくすることができる。従って、リターディング電圧31の印加時に、電源ラインの急峻な電荷の移動を抑制することができ、荷電粒子線装置1の信頼性を向上させることができる。
また、ステージ60の搬送経路A1に端子TR1〜TR3が設けられているので、端子TR1〜TR3(電極EL1〜EL3)とホルダ50との接触面を確保し易い。すなわち、接触部301の面積を大きくすることができる。このため、接触不良またはチャタリングに関する不具合が発生し難いので、ホルダ50へリターディング電圧31を安定して印加させることができる。
(変形例1)
以下に図6を用いて、変形例1における荷電粒子線装置1を説明する。なお、以下の説明では、主に実施の形態1との相違点を説明する。
実施の形態1では、抵抗素子RE1〜RE3が試料テーブル20の内部に設けられていた。変形例1では、図6に示されるように、ステージ60に端子TR1〜TR3が設けられているが、抵抗素子RE1〜RE3は、試料テーブル20の外部に設けられ、試料テーブル20の近傍に設けられている。
上述のように、ケーブルの容量成分45の影響を小さくするためには、接触部301の近傍に、抵抗成分R1〜R3(抵抗素子RE1〜RE3)が実装されていることが望ましい。従って、変形例1では、抵抗素子RE1〜RE3と電極EL1〜EL3との距離が若干遠くなるので、その観点においては、実施の形態1の方が変形例1よりも優れている。
しかしながら、抵抗素子RE1〜RE3の配置の自由度を高めるという観点、および、抵抗素子RE1〜RE3の配置の容易性という観点においては、変形例1の方が実施の形態1よりも優れている。
(実施の形態2)
以下に図7を用いて、実施の形態2における荷電粒子線装置1を説明する。なお、以下の説明では、主に実施の形態1との相違点を説明する。
実施の形態1では、端子TR1〜TR3は、電極EL1〜EL3および抵抗素子RE1〜RE3によって構成されていたが、実施の形態2では、図7に示されるように、端子TR1〜TR3のそれら自体が抵抗成分R1〜R3を構成している。すなわち、端子TR1〜TR3の各々は、試料テーブル20の表面に設けられた導電材料によって構成されている。また、端子TR1〜TR3の下部には、端子TR1〜TR3に接触するように共通電極CELが設けられ、共通電極CELが、真空用高電圧ケーブル40に電気的に接続されている。
実施の形態2でも実施の形態1と同様に、端子TR1〜TR3の各々に含まれる導電材料のシート抵抗が、互いに異なっており、大気用高電圧ケーブル41および真空用高電圧ケーブル40の各々に含まれる導電材料のシート抵抗よりも大きい。
実施の形態2でも実施の形態1と同様の効果を得ることができるが、実施の形態2では、抵抗素子RE1〜RE3となる部材を用意する必要が無い分、端子TR1〜TR3を作製するための製造コストを抑制することができる。
(実施の形態3)
以下に図8〜図11を用いて、実施の形態3における荷電粒子線装置1を説明する。なお、以下の説明では、主に実施の形態1および実施の形態2との相違点を説明する。
図8および図9は、実施の形態3におけるステージ周辺の構造を示す斜視図および断面図であり、図10および図11は、実施の形態3における回転部材を示す斜視図および側面図である。なお、図9では、回転部材RMを見易くするために、試料テーブル20のハッチングが省略されている。
実施の形態1および実施の形態2では、試料テーブル20の表面を加工して端子TR1〜TR3となる部材を設けていたが、実施の形態3では、図8に示されるように、固定領域A3において、試料テーブル20には試料テーブル20を貫通する孔THが設けられ、孔THの内部に端子TR1、TR2が設けられている。また、端子TR1、TR2は、それぞれ回転部材RMの一部として構成されている。
図10および図11に示されるように、回転部材RMは、基体BSを母材として有し、基体BSの表面に端子TR1、TR2が設けられている。実施の形態3では、端子TR1、TR2のそれら自体が抵抗成分R1、R2を構成し、端子TR1、TR2の各々は、回転部材RMの一部である導電材料によって構成されている。なお、ここでは、2種類の端子TR1、TR2の各々が、回転部材RMの一部を構成する場合を例示しているが、実施の形態1のように、3種類の端子TR1〜TR3またはそれ以上の端子が、それぞれ回転部材RMの一部を構成してもよい。
回転部材RM(基体BS)の断面形状は、円形であり、端子TR1は、回転部材RM(基体BS)の円周の一部に沿って形成され、端子TR2は、回転部材RM(基体BS)の円周の他の一部に沿って形成されている。
回転部材RM(基体BS)の中心CC付近には回転軸ARが設けられている。言い換えれば、回転部材RMの円の中心および回転軸ARの円の中心は、互いに一致し、中心CCとして表されている。回転軸ARは、基体BS、端子TR1、TR2および真空用高電圧ケーブル40に電気的に接続され、端子TR1、TR2にリターディング電圧31を印加させることができる。
図9に示されるように、ホルダ50の搬入時および搬出時には、ホルダ50の移動に伴って、回転部材RMが円周方向に回転するので、端子TR1または端子TR2が、順番にホルダ50に接触する。固定領域A3において、ホルダ50が試料テーブル20に固定された際には、端子TR1がホルダ50に接触するように、端子TR1、TR2の初期位置または回転部材RMの回転数などが予め計算されている。
また、ホルダ50には、回転部材RMの基準点となる複数の位置決め機構70が設けられている。例えば、二つの位置決め機構70の間の距離は、回転部材RMが一回転する距離(回転部材RMの円周の長さ)に相当している。位置決め機構70は、例えばホルダ50の一部に設けられた凹部、凸部または傾斜部によって構成される。
実施の形態3でも実施の形態1および実施の形態2と同様の効果を得ることができるが、実施の形態3における回転部材RMを用いることで、以下の利点も得ることができる。そのような利点としては、端子TR1、TR2をコンパクトに設計できること、ホルダ50に接触した際の摩耗を抑制できること、ホルダ50の搬入および搬出の動作210がスムーズになること等が挙げられる。
(変形例2)
以下に図12および図13を用いて、変形例2における半導体装置を説明する。なお、以下の説明では、主に実施の形態3との相違点を説明する。図12および図13は、図10および図11に対応する斜視図および側面図である。
変形例2でも実施の形態3と同様に、端子TR1、TR2は、それぞれ回転部材RMの一部として構成されているが、回転部材RMは、基体BSを有しておらず、端子TR1、TR2の各々を構成する導電材料によって構成されている。
図12および図13に示されるように、端子TR1および端子TR2の各々の断面形状は、円形であり、端子TR2の断面積は、端子TR1の断面積よりも小さい。端子TR2は、端子TR1の一部に嵌め込まれており、端子TR1に囲まれている。言い換えれば、端子TR2は、端子TR1に内包されている。
また、端子TR1の円の中心は、回転部材RMの中心を成し、回転軸ARの円の中心と一致し、中心CC1として表されているが、端子TR2の円の中心CC2は、端子TR1および回転軸ARの各々の円の中心CC1とずれている。
このような回転部材RMの場合、端子TR2がホルダ50に直接接触する箇所は、ホルダ50が接線として、端子TR1および端子TR2の各々の接点が一致する箇所のみとなり、回転の大部分において端子TR1がホルダ50に直接接触する。また、回転部材RMが回転する度に、回転軸ARからホルダ50への電流経路が連続的に変化する。すなわち、端子TR1の抵抗成分R1および端子TR2の抵抗成分R2からなる合成抵抗成分の値が連続的に変化する。従って、変形例2においても、リターディング電圧31の印加時に、電源ラインの急峻な電荷の移動を抑制することができ、荷電粒子線装置1の信頼性を向上させることができる。
(実施の形態4)
以下に図14を用いて、実施の形態4における半導体装置を説明する。なお、以下の説明では、主に実施の形態1との相違点を説明する。図14は、実施の形態4におけるステージ60(試料テーブル20)の周辺の構造を示す平面図である。
図14に示されるように、搬送経路A1に沿って延在するように、試料テーブル20には、レール80が設けられている。レール80には、複数のベアリング81a、81bが設けられている。ホルダ搬送用ロボット161によって、ホルダ50の搬入および搬出の動作210が行われる際には、試料10が搭載されたホルダ50は、複数のベアリング81a、81bに接触しながら搬送経路A1を通過する。
ここで、複数のベアリング81aは、絶縁材料からなり、固定領域A3に設けられているが、複数のベアリング81bは、導電材料からなり、移動領域A2に設けられている。移動領域A2において、複数のベアリング81bは、端子TR3に含まれる電極EL3または端子TR2に含まれる電極EL2を構成している。
なお、実施の形態4における端子TR1の構造には、変形例1および変形例2を含む実施の形態1〜3における構造の何れかと同じ構造が採用できる。
このように、ホルダ50への接触は、ホルダ50の底面に限られず、ホルダ50の側面で行われてもよい。実施の形態4でも、実施の形態1とほぼ同様の効果を得ることができる。
また、実施の形態4では、複数のベアリング81bは、搬入および搬出の動作210におけるガイド部材としての役割と、リターディング電圧31の導入させるための端子の一部としての役割とを兼ねている。このため、端子TR2、TR3を設けるためのスペースを省略させることができる。
また、試料テーブル20には、ホルダ50の両側面に接触するように、一対のレール80および複数のベアリング81a、81bが設けられている。従って、端子TR2とホルダ50との接触、および、端子TR3とホルダ50との接触に対して、それぞれ二重化が図られているので、互いの接触の信頼性を向上させることができる。
以上、本願の発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本願の発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。