JP2021085892A

JP2021085892A - 電気弦楽器

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Publication number: JP2021085892A
Application number: JP2019212050A
Authority: JP
Inventors: 直樹澁谷; Naoki Shibuya
Original assignee: Hoshino Gakki Co Ltd
Current assignee: Hoshino Gakki Co Ltd
Priority date: 2019-11-25
Filing date: 2019-11-25
Publication date: 2021-06-03
Anticipated expiration: 2039-11-25
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Abstract

【課題】本発明は、ボディに形成された部品収容凹部へのカバーの取り付け、又は部品収容凹部からのカバーの取り外しが簡単に行える電気弦楽器を提供することにある。【解決手段】エレクトリックギターは、ボディ１２、ネック１３、トレモロ装置１５を備えている。ボディ１２の裏側には、トレモロスプリング５３を収容するトレモロキャビティ２８が形成されている。トレモロキャビティ２８には、トレモロスプリング５３を外側から覆うように、金属カバー３０が取り付けられる。トレモロキャビティ２８付近には、金属カバー３０をボディ１２に固定するための磁力を発生する磁力発生部４０が設けられている。【選択図】図２

Description

本発明は、弦の振動を電気信号に変換して出力する電気弦楽器に関する。

電気弦楽器として、エレクトリックギター、エレクトリックベース、エレクトリックヴァイオリン等がある。電気弦楽器は、弦の振動を電気的に増幅させて出力するため、ケーブルを用いてアンプに接続された状態で使用される。このため、電気弦楽器には、弦の振動を電気信号に変換するピックアップや、ケーブルの端子プラグが差し込まれるジャックや、音調や音量を調整するときに操作されるノブ等が設けられている。

また、エレクトリックギターの中には、弦の振動音を連続的に揺らすアーミング奏法で操作されるトレモロアームを備えたものがある。この種のエレクトリックギターでは、スイッチや配線等の電子部品以外に、トレモロアームに連結された複数のスプリングが、ボディの裏側に搭載されている。このため、ボディの裏側には、トレモロキャビティと称されるスプリング収容凹部や、コントロールキャビティと称される電子部品収容凹部が形成されている。

また、トレモロキャビティやコントロールキャビティには、スプリングや電子部品を外側から覆うように、専用のカバーがそれぞれ取り付けられている。トレモロキャビティ用カバーやコントロールキャビティ用カバーは、ネジを用いてボディに直接固定されるのが一般的である（例えば、特許文献１参照）。このため、トレモロキャビティ用カバーやコントロールキャビティ用カバーの隅部には、ネジが挿通される挿通孔が形成されている。また、ボディにおけるカバーの取付位置には、ネジが螺合されるネジ穴が形成されている。

特開２０１４−２０６６９８号公報

エレクトリックギターのユーザは、チューニングやメンテナンスのため、トレモロスプリングや電子部品を交換したり、トレモロスプリングの張力を調整したりすることがある。この場合、カバーを取り外してから作業を行うため、ドライバー等の工具を用いて、ボディにカバーを固定している全てのネジを外す必要がある。また、作業後は、カバーを取り付けるため、工具を用いて全てのネジを締め付ける必要がある。ユーザにとって、チューニングやメンテナンスの度にネジを緩めたり締め付けたりする作業は、煩わしく面倒である。

また、カバーの取り付け又は取り外しを繰り返すことで、工具が差し込まれるネジの工具穴や、ボディのネジ穴が潰れて広がることがある。ネジの工具穴が潰れると、工具でネジを回すことが難しくなる。このため、カバーの取り付けや取り外しに要する時間が長くなり、チューニングやメンテナンス等の作業が更に煩わしく面倒になる。また、ボディのネジ穴が潰れると、ネジによってボディにカバーを固定する力が弱くなる。このため、激しい動きを伴うライブ演奏の最中にカバーが外れ易くなる。

本発明の目的は、ボディに形成された部品収容凹部へのカバーの取り付け、又は部品収容凹部からのカバーの取り外しが簡単に行える電気弦楽器を提供することにある。

上記の目的を達成するために、請求項１に記載の発明は、弦の振動を電気信号に変換して出力する電気弦楽器であって、前記弦が張設されるボディと、前記ボディに設けられ、前記電気信号の出力又は前記電気弦楽器の演奏に用いられる部品とを備え、前記ボディは、前記部品を収容する部品収容凹部と、前記部品収容凹部に取り付けられるカバーと、前記カバーを前記ボディに固定するための磁力を発生する磁力発生部とを備えることを要旨とする。

この構成によれば、カバーをボディに固定する手段として、ネジ等の固定具に代えて、磁力発生部の磁力が用いられる。この場合、部品収容凹部にカバーを載置するだけで、磁力により、カバーがボディに固定されて、部品収容凹部に取り付けられる。また、磁力に抗して、カバーをボディから引き離すようにして、部品収容凹部から取り外すこともできる。つまり、カバーの取り付け又は取り外しに際し、ネジを緩めたり締め付けたりする面倒な作業が不要となる。よって、部品収容凹部へのカバーの取り付け又はカバーの取り外しが簡単に行える。

請求項２に記載の発明は、請求項１に記載の発明において、前記磁力発生部は、前記部品収容凹部付近に設けられ、前記カバーは、強磁性体を含む金属材料からなることを要旨とする。

この構成によれば、部品収容凹部付近にカバーを近づけるだけで、磁力発生部の磁力により部品収容凹部にカバーが引き付けられる。このため、部品収容凹部にカバーを載置して取り付けることが容易となる。

請求項３に記載の発明は、請求項１又は２に記載の発明において、前記ボディは、更に、前記カバーが配置されるカバー配置凹部を備え、前記カバー配置凹部は、前記部品収容凹部の外周に沿って設けられていることを要旨とする。

この構成によれば、カバー配置凹部を部品収容凹部の外周に沿って設けることで、カバー配置凹部により、部品収容凹部に取り付けられるカバーの位置決めが容易に行える。よって、部品収容凹部へのカバーの取付がより一層簡単に行える。

請求項４に記載の発明は、請求項３に記載の発明において、前記カバー配置凹部は、前記カバーの裏面と対向する底壁と、前記カバーの外周面と対向する側壁とからなり、前記磁力発生部は、前記底壁上に設けられていることを要旨とする。

この構成によれば、磁力発生部をカバー配置凹部の底壁上に設けることで、部品収容凹部にカバーが取り付けられる方向を、磁力発生部の磁力によりカバーが引き付けられる方向と一致させることができる。よって、部品収容凹部へのカバーの取付がより一層簡単に行える。

請求項５に記載の発明は、請求項４に記載の発明において、前記カバー配置凹部は、前記部品収容凹部の全周に亘って設けられ、前記磁力発生部は、前記カバー配置凹部の前記底壁の全面に設けられていることを要旨とする。

この構成によれば、磁力発生部の磁力により、部品収容凹部の底壁の全面にカバーが引き付けられる。これにより、磁力によりカバーをボディに固定することが容易となるだけでなく、ボディからカバーを外れ難くすることもできる。また、部品収容凹部の全周に亘ってカバーが取り付けられるため、塵や埃等の異物が部品収容凹部の中に侵入し難くなる。よって、異物による電子部品等への悪影響を抑制することもできる。

請求項６に記載の発明は、請求項３〜５のうちいずれか一項に記載の発明において、前記カバー配置凹部は、前記ボディの表面からの深さを有し、前記カバー配置凹部の深さは、前記磁力発生部の厚みに前記カバーの厚みを加えた値と同じかその値以上であることを要旨とする。

この構成によれば、カバー配置凹部の深さを、磁力発生部の厚みにカバーの厚みを加えた値と同じかその値以上とすることで、部品収容凹部に取り付けられた状態のカバーの表面を、ボディの表面と面一か、ボディの表面よりも少しだけ低くすることができる。これにより、カバーのエッジ部分が突出しないため、身体に密着させて演奏する電気弦楽器の場合、カバーのエッジ部分が演奏者の衣服に引っ掛かり難くなる。

請求項７に記載の発明は、請求項３〜６のうちいずれか一項に記載の発明において、前記カバー配置凹部の外形は、前記カバーの外形と同じであることを要旨とする。
この構成によれば、カバー配置凹部の外形をカバーの外形と同じにすることで、カバー配置凹部にカバーを嵌め込むようにして取り付けることができる。これにより、カバーがボディから外れ難くなるため、カバーをボディに固定するのに強力な磁力を要しない。よって、磁力発生部の構成を簡素化することができる。

請求項８に記載の発明は、請求項１〜７のうちいずれか一項に記載の発明において、前記磁力発生部は、可撓性を有するマグネットシートからなることを要旨とする。
この構成によれば、マグネットシートは、可撓性を有しかつシート状であるため、切断が容易である。このため、硬くて脆い永久磁石を用いる場合よりも、磁力発生部の生産性が向上する。また、マグネットシートは安価で入手し易い材料であるため、材料コストを低く抑えることもできる。

請求項９に記載の発明は、請求項１〜８のうちいずれか一項に記載の発明において、前記カバーには、前記カバーを部品収容凹部から取り外すときに把持される把持部が設けられ、前記把持部は、前記カバーを厚み方向に貫通する孔からなることを要旨とする。

この構成によれば、把持部がカバーを厚み方向に貫通する孔であるため、カバーを軽くすることができる。このため、部品収容凹部へのカバーの取り付け又はカバーの取り外しが更に簡単に行える。

請求項１０に記載の発明は、請求項１〜９のうちいずれか一項に記載の発明において、前記カバーは、ステンレス鋼からなることを要旨とする。
この構成によれば、カバーの材料として、強磁性を示すと共に錆びにくいステンレス鋼を用いることで、カバーとしての機能を長期に亘って維持することができる。

請求項１１に記載の発明は、請求項１〜１０のうちいずれか一項に記載の発明において、前記部品は、エレクトリックギター又はエレクトリックベースに搭載されるトレモロ装置であることを要旨とする。

ユーザは、トレモロスプリングの張力を調整するため、トレモロキャビティ用カバーの取り付け又は取り外しを頻繁に行うことがある。この点、本発明は、カバーの取り付け又は取り外しが簡単に行えるため、トレモロ装置を備えたエレクトリックギター又はエレクトリックベースにおいて、特に有用である。

本発明によれば、ボディに形成された部品収容凹部へのカバーの取り付け、又は部品収容凹部からのカバーの取り外しが簡単に行える。

本発明の一実施形態に係るエレクトリックギターを表側から見た示す斜視図。エレクトリックギターを裏側から見た示す斜視図。エレクトリックギターのトレモロキャビティ付近を拡大して示す部分平面図。トレモロキャビティ、磁力発生部、及び金属カバーの斜視図。エレクトリックギターのトレモロキャビティ付近を拡大して示す部分断面図。トレモロキャビティへの金属カバーの取り付け又は取り外しの方法を説明する模式斜視図。（ａ）別例の磁力発生部を示す平面図、（ｂ）別例の磁力発生部を示す平面図。

以下、本発明に係る電気弦楽器を、エレクトリックギター１０（以下、エレクトリックギターと称す）に具体化した一実施形態について、図１〜図６を参照して説明する。
図１及び図２に示すように、エレクトリックギター１０は、ボディ１２、ネック１３、６本の弦１４、トレモロ装置１５を備えている。本実施形態において、エレクトリックギター１０は、右利きの演奏者用として形成されている。トレモロ装置１５は、複数の部品からなり、トレモロブロック５１、トレモロアーム５２及びトレモロスプリング５３等の部品を組み付けることにより、ユニット化されている。トレモロ装置１５は、弦１４の振動音を連続的に揺らすアーミング奏法に用いられる。

トレモロブロック５１は、ボディ１２の略中央に取り付けられている。トレモロアーム５２は、トレモロブロック５１上に取り付けられている。トレモロアーム５２は、アーミング奏法を行うときに操作される部材であり、棒状に形成されている。トレモロブロック５１上には、弦１４の基端を支持するブリッジ５４や、弦１４の基端が固定されるテイルピースが取り付けられている。

ネック１３は、ボディ１２から左方に延びている。ネック１３の先端には、ヘッド１６が装着されている。ヘッド１６には、６つのペグ１７が一列に並んで取り付けられている。各ペグ１７には、弦１４の先端が巻回されて固定されている。ペグ１７を回して弦１４の張力を変更することにより、エレクトリックギター１０のチューニングが行われる。

ネック１３の表面には、フィンガーボード１８が取り付けられている。ネック１３の先端部には、フィンガーボード１８の左端と隣接してナット１９が取り付けられている。ナット１９は、ブリッジ５４と共に、各弦１４をフィンガーボード１８から離間させた状態で支持している。この状態で、各弦１４は、ボディ１２とブリッジ５４との間で、ネック１３とボディ１２とに跨がって張設されている。

エレクトリックギター１０は、弦１４の振動を電気的に増幅させて出力するため、ケーブルＣＡを用いてアンプリフィアーＡＭＰに接続された状態で使用される。このため、ボディ１２の表面には、弦１４の振動を電気信号に変換するピックアップ２１が取り付けられている。ピックアップ２１は、ボディ１２の中央付近と、ボディ１２及びネック１３の境界部付近とにそれぞれ配置されている。また、ボディ１２の表面には、ケーブルＣＡの端子プラグが差し込まれるジャック２２や、音調や音量を調整するときに操作されるノブ２３等が取り付けられている。

図２及び図３に示すように、ボディ１２の裏側には、部品収容凹部としてのコントロールキャビティ２５が形成されている。コントロールキャビティ２５の内部には、弦の振動を電気信号にして出力するための電子部品２４が収容されている。電子部品２４には、ピックアップ２１とジャック２２とを接続する電気配線や、ノブ２３に接続されたスイッチ等が含まれる。コントロールキャビティ２５は、図１に示すジャック２２と対応する位置、即ち、ボディ１２の右端部付近に形成されている。コントロールキャビティ２５は、平面視で、角部が丸みを帯びた略正方形状を有している。

コントロールキャビティ２５には、電子部品２４を外側から覆うように、樹脂製のコントロールキャビティカバー（以下、樹脂カバーと称す）が取り付けられている。樹脂カバー２６は、一対のネジを用いて、ボディ１２の裏面に固定されている。樹脂カバー２６は、ドライバー等の工具を用いてネジを緩めたり締め付けたりすることで、コントロールキャビティ２５に取り付けられたり、コントロールキャビティ２５から取り外されたりする。樹脂カバー２６は、例えば、電子部品２４を修理したり新品に交換したりする場合、コントロールキャビティ２５から取り外される。

また、ボディ１２の裏側には、部品収容凹部としてのトレモロキャビティ２８が形成されている。トレモロキャビティ２８の内部には、複数のトレモロスプリング５３が収容されている。トレモロスプリング５３は、トレモロブロック５１を介してトレモロアーム５２に連結されている。また、トレモロキャビティ２８の内部には、トレモロスプリング５３の張力を調整するときに操作される張力調整機構２９が収容されている。トレモロキャビティ２８は、図１に示すトレモロブロック５１と対応する位置、即ち、ボディ１２の略中央に形成されている。トレモロキャビティ２８は、平面視で、略長方形状を有している。

トレモロキャビティ２８には、トレモロスプリング５３を外側から覆うように、金属製のトレモロキャビティカバー（以下、金属カバーと称す）が取り付けられている。金属カバー３０は、金属カバー３０とトレモロキャビティ２８との間に作用する磁力によって、ボディ１２の裏面に固定されている。金属カバー３０は、コントロールキャビティ２５を覆うように載置されることで、コントロールキャビティ２５に取り付けられる。また、金属カバー３０は、ボディ１２から引き離すようにして、コントロールキャビティ２５から取り外される。金属カバー３０は、例えば、トレモロスプリング５３を交換する場合に加え、トレモロスプリング５３の張力を調整する場合にも、トレモロキャビティ２８から取り外される。

図３及び図４に示すように、ボディ１２の裏側には、金属カバー３０が配置されるカバー配置凹部３１が形成されている。カバー配置凹部３１は、トレモロキャビティ２８の全周に沿って設けられている。カバー配置凹部３１は、金属カバー３０の裏面と対向する底壁３２と、金属カバー３０の外周面と対向する側壁３３とから構成されている。カバー配置凹部３１は、金属カバー３０の短辺３０ａに対応する一対の第１凹部３１ａと、金属カバー３０の長辺３０ｂに対応する一対の第２凹部３１ｂとからなる枠状に形成されている。

トレモロキャビティ２８付近には、金属カバー３０をボディ１２に固定するための磁力を発生する磁力発生部４０が設けられている。磁力発生部４０は、マグネットシートからなる。マグネットシートは、強磁性体からなるフェライト(酸化鉄)の粉末を塩素化ポリエチレン等の樹脂に混合し、シート状に成形することにより形成されている。マグネットシートは、フェライトによる磁力と、樹脂による可撓性とを有している。

磁力発生部４０は、市販されているマグネットシートをカットすることにより、カバー配置凹部３１の平面形状と同形状に形成されている。このため、磁力発生部４０は、トレモロキャビティ２８の平面形状と同形状の開口４１を有している。磁力発生部４０は、マグネットシートに含まれるフェライト粉末の量を調節することで、所望の磁力を有している。磁力発生部４０の磁力は、トレモロキャビティ２８に金属カバー３０を着脱容易な程度の大きさであり、具体的には、フェライト磁石の約１／２〜１／４の磁力に設定されている。

磁力発生部４０は、カバー配置凹部３１の底壁３２の全面を覆うように設けられている。磁力発生部４０は、接着剤や両面テープ等の接合材を用いて、カバー配置凹部３１の底壁３２上に固定されている。磁力発生部４０がカバー配置凹部３１に固定されている状態で、磁力発生部４０の内周縁は、カバー配置凹部３１の内周縁と一致し、トレモロキャビティ２８の外周縁と一致している。また、磁力発生部４０の外周縁は、カバー配置凹部３１の外周縁と一致し、トレモロキャビティ２８に取り付けられた金属カバー３０の外周縁とほぼ一致する。

図４及び図５に示すように、カバー配置凹部３１は、ボディ１２の表面からの深さＤを有している。カバー配置凹部３１の深さＤは、ボディ１２の表面からカバー配置凹部３１の底壁３２までの距離である。カバー配置凹部３１の深さＤは、磁力発生部４０の厚みＴ４０に金属カバー３０の厚みＴ３０を加えた値と同じである。このため、トレモロキャビティ２８に金属カバー３０が取り付けられた状態で、金属カバー３０の表面はボディ１２の表面と面一である。

金属カバー３０は、強磁性体を含む金属材料からなる。強磁性体として、鉄、ニッケル、コバルト、フェライト等が挙げられる。金属カバー３０には、鉄の合金材料が用いられ、加工性や耐食性に優れるとの観点から、ステンレス鋼が用いられる。金属カバー３０は、ステンレス鋼板を所定の形状にカットし、孔加工することにより形成されている。

金属カバー３０は、角部が丸みを帯びた略長方形状を有している。金属カバー３０は、カバー配置凹部３１の平面形状と同形状で、かつカバー配置凹部３１よりも少しだけ小さく形成されている。金属カバー３０の中央には、金属カバー３０を厚み方向に貫通する一対の孔３５が形成されている。一対の孔３５は、金属カバー３０をカバー配置凹部３１から取り外すときに把持される把持部として機能する。孔３５の形状、数及び位置等の組み合わせは、金属カバー３０の把持し易さと見た目の美しさの両方を満たすようにデザインされている。

次に、上記のエレクトリックギター１０の作用について、図１、図３及び図６を参照して説明する。
図１及び図３に示すように、ユーザは、トレモロアーム５２の操作性や弦１４の振動音を調整するため、トレモロスプリング５３の張力を調整することがある。この場合、トレモロスプリング５３の張力調整機構２９を操作するため、トレモロキャビティ２８から金属カバー３０を取り外す必要がある。ユーザは、例えば、以下のようにして、トレモロキャビティ２８から金属カバー３０を取り外すことができる。

図６に示すように、まず、一方の孔３５に親指を他方の孔３５に人差し指をそれぞれ引っ掛けることにより、金属カバー３０を把持する。この状態で、磁力発生部４０の磁力に抗して、金属カバー３０を、ボディ１２から引き離すようにして、トレモロキャビティ２８から取り外す。上述したように、磁力発生部４０は、マグネットシートからなり、フェライト磁石等の永久磁石よりも弱い磁力を有している。このため、ユーザは、過度な力を加えなくても、トレモロキャビティ２８から金属カバー３０を簡単に取り外すことができる。

トレモロスプリング５３の張力を調整後は、トレモロキャビティ２８に金属カバー３０を取り付ける必要がある。この場合、トレモロキャビティ２８から金属カバー３０を取り外すときと同様に金属カバー３０を把持して、トレモロキャビティ２８に金属カバー３０を近づける。すると、金属カバー３０は、磁力発生部４０の磁力によりトレモロキャビティ２８に引き付けられる。そして、金属カバー３０は、カバー配置凹部３１に嵌め込まれると共に、トレモロキャビティ２８に取り付けられる。

従って、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
（１）トレモロキャビティ２８付近には、金属カバー３０をボディ１２に固定するための磁力を発生する磁力発生部４０が設けられている。この構成によれば、金属カバー３０をボディ１２に固定する手段として、ネジ等の固定具に代えて、磁力発生部４０の磁力が用いられる。この場合、トレモロキャビティ２８付近に金属カバー３０を載置するだけで、磁力により、金属カバー３０がボディ１２に固定されて、トレモロキャビティ２８に取り付けられる。また、磁力に抗して、金属カバー３０を、ボディ１２から引き離すようにして、トレモロキャビティ２８から取り外すこともできる。つまり、金属カバー３０の取り付け又は取り外しに際し、ネジを緩めたり締め付けたりする面倒な作業が不要となる。よって、トレモロキャビティ２８への金属カバー３０の取り付け又は取り外しが簡単に行える。

（２）金属カバー３０は、強磁性体を含む金属材料からなる。この構成によれば、トレモロキャビティ２８付近に金属カバー３０を近づけるだけで、金属カバー３０は、磁力発生部４０の磁力によりトレモロキャビティ２８に引き付けられる。このため、トレモロキャビティ２８に金属カバー３０を載置して取り付けることが容易となる。

（３）ボディ１２の裏側には、金属カバー３０が配置されるカバー配置凹部３１が形成されている。カバー配置凹部３１は、トレモロキャビティ２８の外周に沿って設けられている。この構成によれば、カバー配置凹部３１により、トレモロキャビティ２８に取り付けられる金属カバー３０の位置決めが容易に行える。よって、トレモロキャビティ２８への金属カバー３０の取付がより一層簡単に行える。

（４）カバー配置凹部３１は、金属カバー３０の裏面と対向する底壁３２と、金属カバー３０の外周面と対向する側壁３３とからなる。また、磁力発生部４０は、カバー配置凹部３１の底壁３２上に固定されている。この構成によれば、トレモロキャビティ２８に金属カバー３０が取り付けられる方向を、磁力発生部４０の磁力により金属カバー３０が引き付けられる方向と一致させることができる。よって、トレモロキャビティ２８への金属カバー３０の取付がより一層簡単に行える。

（５）カバー配置凹部３１は、トレモロキャビティ２８の全周に沿って設けられている。また、磁力発生部４０は、カバー配置凹部３１の底壁３２の全面に固定されている。この構成によれば、磁力発生部４０の磁力により、カバー配置凹部３１の底壁３２の全面に金属カバー３０が引き付けられる。これにより、磁力により金属カバー３０をボディ１２に固定することが容易となるだけでなく、ボディ１２から金属カバー３０を外れ難くすることもできる。よって、激しい動きを伴うライブ演奏中においても、トレモロキャビティ２８から金属カバー３０を外れ難くすることができる。また、トレモロキャビティ２８の全周に亘って金属カバー３０が取り付けられるため、塵や埃等の異物がトレモロキャビティ２８の中に侵入し難くなる。よって、異物による電子部品２４等への悪影響を抑制することもできる。

（６）カバー配置凹部３１の深さＤは、磁力発生部４０の厚みＴ４０に金属カバー３０の厚みＴ３０を加えた値と同じである。この構成によれば、トレモロキャビティ２８に取り付けられた金属カバー３０の表面を、ボディ１２の表面と面一にすることができる。これにより、金属カバー３０のエッジ部分が突出しないため、身体に密着させて演奏するエレクトリックギター１０の場合、金属カバー３０のエッジ部分が演奏者の衣服に引っ掛かり難くなる。

（７）金属カバー３０は、カバー配置凹部３１と同じ外形を有している。この構成によれば、カバー配置凹部３１に金属カバー３０を嵌め込むようにして取り付けることができる。これにより、金属カバー３０がボディ１２から外れ難くなるため、金属カバー３０をボディ１２に固定するのに強力な磁力を要しない。よって、磁力発生部４０の構成を簡素化することができる。

（８）磁力発生部４０は、マグネットシートからなる。この構成によれば、マグネットシートは、可撓性を有しかつシート状であるため、切断が容易である。これに対し、硬くて脆い永久磁石を用いる場合よりも、磁力発生部４０の生産性が向上する。また、マグネットシートは安価で入手し易い材料であるため、材料コストを低く抑えることもできる。

（９）金属カバー３０の中央には、金属カバー３０を厚み方向に貫通する一対の孔３５が形成されている。一対の孔３５は、金属カバー３０をカバー配置凹部３１から取り外すときに把持される把持部として機能する。この構成によれば、把持部が金属カバー３０を厚み方向に貫通する孔であるため、金属カバー３０を軽くすることができる。このため、トレモロキャビティ２８への金属カバー３０の取り付け又は取り外しが更に簡単に行える。

（１０）金属カバー３０は、ステンレス鋼からなる。この構成によれば、金属カバー３０の材料として、強磁性を示すと共に錆びにくいステンレス鋼を用いることで、金属カバー３０としての機能を長期に亘って維持することができる。

（１１）ユーザは、トレモロスプリング５３の張力を調整するため、金属カバー３０の取り付け又は取り外しを頻繁に行うことがある。この点、本発明は、金属カバー３０の取り付け又は取り外しが簡単に行えるため、トレモロ装置１５を備えたエレクトリックギター１０に、特に有用である。

本実施形態は、以下のように変更してもよい。
・本実施形態において、磁力発生部による磁気ノイズの影響を無視できるのであれば、コントロールキャビティ２５付近にも、樹脂カバー２６をボディ１２に固定するための磁力を発生する磁力発生部を設けてもよい。この場合、トレモロキャビティ２８と同様に、樹脂カバー２６が配置されるカバー配置凹部を、コントロールキャビティ２５の外周に沿って設ければよい。

・本実施形態において、金属カバー３０をボディ１２に固定するための磁力を発生することができれば、磁力発生部４０の構成は任意である。例えば、磁力発生部４０として、マグネットシート以外に、フェライト磁石等の永久磁石を用いてもよい。また、スイッチを入れて通電すると磁石になる電磁石を用いて金属カバー３０がボディ１２に固定されるように、エレクトリックギター１０を構成してもよい。

・本実施形態において、トレモロキャビティ２８付近にマグネットシートからなる磁力発生部４０を設け、トレモロキャビティカバーを金属カバー３０としたが、磁力発生部４０をトレモロキャビティカバーに設けてもよい。この場合、トレモロキャビティカバーを樹脂カバーとし、トレモロキャビティカバーの裏面にマグネットシートからなる磁力発生部４０を設け、カバー配置凹部３１の底壁３２上にステンレス鋼板を固定すればよい。

・本実施形態において、カバー配置凹部３１を省略し、金属カバー３０をボディ１２の表面に直接固定してもよい。この場合、ボディ１２の表面において、金属カバー３０が取り付けられる箇所に、マグネットシートや永久磁石を固定すればよい。また、この場合、マグネットシートや永久磁石は、接着剤や両面テープを用いてボディ１２の表面に貼り付けたり、ボディ１２の表面に形成した凹部に埋設したりしてもよい。

・本実施形態において、磁力発生部４０は、カバー配置凹部３１の底壁３２上に設けたが、カバー配置凹部３１の側壁３３上に設けてもよい。磁力発生部４０は、カバー配置凹部３１の底壁３２及び側壁３３の両方に設けてもよい。

・本実施形態において、磁力により金属カバー３０をボディ１２に固定できるのであれば、磁力発生部４０を、カバー配置凹部３１の全周でなく、カバー配置凹部３１の一部にのみ設けてもよい。例えば、図７（ａ）に示すように、カバー配置凹部３１において、左側の第１凹部３１ａと下側の第２凹部３１ｂとに跨がるように、略Ｌ字状の磁力発生部７０を設けてもよい。また、図７（ｂ）に示すように、カバー配置凹部３１において、左右一対の第１凹部３１ａに磁力発生部７１ａ，７１ｂを設けてもよい。また、カバー配置凹部３１において、上下一対の第２凹部３１ｂに磁力発生部をそれぞれ設けてもよい。

・本実施形態において、カバー配置凹部３１の深さＤは、磁力発生部４０の厚みＴ４０に金属カバー３０の厚みＴ３０を加えた値以上であってもよい。この場合、トレモロキャビティ２８に取り付けられた金属カバー３０の表面を、ボディ１２の表面よりも少しだけ低くすることができる。また、金属カバー３０のエッジ部分が突出していても演奏に支障が無ければ、カバー配置凹部３１の深さＤは、磁力発生部４０の厚みＴ４０に金属カバー３０の厚みＴ３０を加えた値より小さくてもよい。

・本実施形態において、カバー配置凹部３１や金属カバー３０や樹脂カバー２６の外形は、任意であり、四角形以外に、三角形等の多角形でも、円でも、楕円でもよい。
・本実施形態において、金属カバー３０に設けられる把持部は、指が引っ掛けられるように構成された孔３５以外に、指で摘まめるように構成された突起であってもよい。

・本実施形態において、電気弦楽器は、エレクトリックギター１０以外に、エレクトリックベース、エレクトリックヴァイオリン、エレクトリックハープ、エレクトリックマンドリン等であってもよい。

１０…エレクトリックギター、１２…ボディ、１４…弦、１５…トレモロ装置、２４…電子部品、２５…コントロールキャビティ（部品収容凹部）、２６…樹脂カバー、２８…トレモロキャビティ（部品収容凹部）、３０…金属カバー、３１…カバー配置凹部、３２…底壁、３３…側壁、３５…孔、４０…磁力発生部。

Claims

弦の振動を電気信号に変換して出力する電気弦楽器であって、
前記弦が張設されるボディと、
前記ボディに設けられ、前記電気信号の出力又は前記電気弦楽器の演奏に用いられる部品とを備え、
前記ボディは、
前記部品を収容する部品収容凹部と、
前記部品収容凹部に取り付けられるカバーと、
前記カバーを前記ボディに固定するための磁力を発生する磁力発生部と
を備える、電気弦楽器。
請求項１に記載の電気弦楽器において、
前記磁力発生部は、前記部品収容凹部付近に設けられ、
前記カバーは、強磁性体を含む金属材料からなる、電気弦楽器。
請求項１又は２に記載の電気弦楽器において、
前記ボディは、更に、前記カバーが配置されるカバー配置凹部を備え、
前記カバー配置凹部は、前記部品収容凹部の外周に沿って設けられている、電気弦楽器。
請求項３に記載の電気弦楽器において、
前記カバー配置凹部は、前記カバーの裏面と対向する底壁と、前記カバーの外周面と対向する側壁とからなり、
前記磁力発生部は、前記底壁上に設けられている、電気弦楽器。
請求項４に記載の電気弦楽器において、
前記カバー配置凹部は、前記部品収容凹部の全周に亘って設けられ、
前記磁力発生部は、前記カバー配置凹部の前記底壁の全面に設けられている、電気弦楽器。
請求項３〜５のうちいずれか一項に記載の電気弦楽器において、
前記カバー配置凹部は、前記ボディの表面からの深さを有し、
前記カバー配置凹部の深さは、前記磁力発生部の厚みに前記カバーの厚みを加えた値と同じかその値以上である、電気弦楽器。
請求項３〜６のうちいずれか一項に記載の電気弦楽器において、
前記カバー配置凹部の外形は、前記カバーの外形と同じである、電気弦楽器。
請求項１〜７のうちいずれか一項に記載の電気弦楽器において、
前記磁力発生部は、可撓性を有するマグネットシートからなる、電気弦楽器。
請求項１〜８のうちいずれか一項に記載の電気弦楽器において、
前記カバーには、前記カバーを部品収容凹部から取り外すときに把持される把持部が設けられ、前記把持部は、前記カバーを厚み方向に貫通する孔からなる、電気弦楽器。
請求項１〜９のうちいずれか一項に記載の電気弦楽器において、
前記カバーは、ステンレス鋼からなる、電気弦楽器。
請求項１〜１０のうちいずれか一項に記載の電気弦楽器において、
前記部品は、エレクトリックギター又はエレクトリックベースに搭載されるトレモロ装置である、電気弦楽器。